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特許7205229無線通信デバイス、おむつおよび水分検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】無線通信デバイス、おむつおよび水分検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20230110BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20230110BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20230110BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20230110BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20230110BHJP
   A41B 13/04 20060101ALI20230110BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230110BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01N27/00 H
G01N27/02 E
G01N27/22 B
G01N27/06
G01N27/02 D
G01N27/12 B
G01N27/12 C
A41B13/04
A61F13/15 310
A61F13/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018546058
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2018032025
(87)【国際公開番号】W WO2019049758
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017173692
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017230735
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】假家 義裕
(72)【発明者】
【氏名】脇田 潤史
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-349418(JP,A)
【文献】特開2017-150889(JP,A)
【文献】特表2014-529732(JP,A)
【文献】特開2016-038256(JP,A)
【文献】特開2017-102028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
A41B 13/00-13/10
A61F 5/44
A61F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、
前記回路部は、ダイオードを有し、
前記回路部は、前記ダイオードが水分と接触した場合に、前記ダイオードが水分と接触していない場合とは異なる信号を前記送受信装置に送信する無線通信デバイス。
【請求項2】
前記回路部がカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子であって水分との接触により特性が変化する素子を有する請求項1に記載の無線通信デバイス。
【請求項3】
前記素子の特性が変化した場合、前記送受信装置から受信した信号に対して返信する信号の少なくとも一つのパラメータが変化する請求項2に記載の無線通信デバイス。
【請求項4】
前記ダイオードは、可変容量ダイオードであり、
前記回路部は、前記可変容量ダイオードが水分と接触した場合に、前記可変容量ダイオードが水分と接触していない場合とは強度が異なる信号を前記送受信装置に送信する請求項1に記載の無線通信デバイス。
【請求項5】
前記回路部は、発振回路をさらに有し、
前記回路部は、前記ダイオードが水分と接触した場合に、前記ダイオードが水分と接触していない場合とは周波数が異なる信号を前記送受信装置に送信する請求項1または4に記載の無線通信デバイス。
【請求項6】
回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、
前記回路部は、リングオシレータを有し、
前記回路部は、前記リングオシレータが水分と接触した場合に、前記リングオシレータが水分と接触していない場合とは周波数が異なる信号を前記送受信装置に送信する無線通信デバイス。
【請求項7】
回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、
前記回路部は、メモリ素子を有し、
前記回路部は、前記メモリ素子が水分と接触した場合に、前記メモリ素子が水分と接触していない場合とは異なる信号を前記送受信装置に送信する無線通信デバイス。
【請求項8】
前記素子の半導体層がカーボンナノチューブを用いて構成される請求項2または3に記載の無線通信デバイス。
【請求項9】
回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、
前記回路部が有する配線の少なくとも一部と水分との接触の有無に応じて異なる情報を含む信号を前記送受信装置に送信し、
前記回路部は、
前記配線と接続するとともに所定の情報を記録するメモリ素子と、
前記メモリ素子から情報を読み出して前記送受信装置へ送信する制御回路と、
を有し、
前記制御回路が前記メモリ素子から読み出す情報は、前記配線と水分が接触したことによる前記配線の断線により読み出される情報が変化する無線通信デバイス。
【請求項10】
回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、
前記回路部が有する配線の少なくとも一部と水分との接触の有無に応じて異なる情報を含む信号を前記送受信装置に送信し、
前記回路部は、
アレイ状に配列されている複数のメモリ素子と、
前記複数のメモリ素子から情報を読み出して前記送受信装置へ送信する制御回路と、
を有し、
前記制御回路が前記複数のメモリ素子から読み出す情報は、前記配線と水分が接触したことによる前記配線の断線により読み出される情報が変化する無線通信デバイス。
【請求項11】
前記回路部がデジタル回路を有し、前記デジタル回路の配線の少なくとも一部が水分と接触した場合に、前記デジタル回路の特性が変化し、前記配線の少なくとも一部が水分と接触していない場合とは異なる情報を含む信号を前記送受信装置に送信する請求項9または10に記載の無線通信デバイス。
【請求項12】
前記配線の少なくとも一部が水分と接触した場合に、前記配線の電気抵抗が変化する請求項9~11のいずれか一項に記載の無線通信デバイス。
【請求項13】
水分を吸収して保持する吸水材と、防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材とを備え、人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつであって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の無線通信デバイスを備え、
前記無線通信デバイスが前記吸水材と前記防水材との間に位置するおむつ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の無線通信デバイスと、
前記無線通信デバイスと非接触に通信可能であり、前記無線通信デバイスに送信した信号に対して返信される信号に基づいて前記無線通信デバイスの水分との接触の有無を検知する送受信装置と、
を備えた水分検知システム。
【請求項15】
前記無線通信デバイスは、
水分を吸収して保持する吸水材と、
防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材とを備え、
人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつに設けられている請求項14に記載の水分検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、該無線通信デバイスを用いたおむつおよび水分検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水分の存在を検知する技術として、RFID(Radio Frequency Identification)を用いたシステムが知られている。特に、医療用途として、被介護者の排尿等に起因して発生する水分を検知するために、おむつにICタグ等の無線通信デバイスを埋め込む技術が知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、リーダが周波数950MHz(UHF帯)の電波信号をICタグに送信し、その反射信号を用いて水分を検知する技術が開示されている。この技術では、アンテナが濡れて反射係数が変化することを利用して水分の発生を検知している。
【0004】
また、特許文献1では、濡れ検知端子を備えたICタグをおむつに設けることにより、濡れ検知端子の電圧値の変動に応じて水分の有無を検知する技術が開示されている。この技術では、濡れ検知端子が濡れを検知した場合、ICタグが乾いた状態とは異なる信号を発信する、または信号を発信しないため、ICタグと通信するリーダは、受信する信号の種類または信号の有無に応じてICタグの濡れ状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-349418号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】中嶋宏昌、外3名、「RFID技術を用いた排尿検知システムの開発」、電子情報通信学会論文誌 B Vol.J96-B No.12 pp.1378-1385、2013年12月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載された技術では、水分の発生に伴って電波が吸収されるとともにアンテナのインピーダンスが大きく変化し、ICタグの受信感度が著しく低下してリーダとの通信ができなくなるため、リーダ側ではICタグ内のICチップが壊れた場合との判別ができない。
【0008】
また、特許文献1に記載された技術では、濡れ検知端子の検知結果に応じてICチップの状態または機能を変化させるための複雑な構成が必要である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる無線通信デバイス、おむつおよび水分検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る無線通信デバイスは、回路部と、前記回路部に接続されており、非接触で送受信装置と信号の送受信を行うアンテナと、を備えた無線通信デバイスであって、前記回路部の少なくとも一部と水分との接触の有無に応じて異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0011】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部がカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子であって水分との接触により特性が変化する素子を有する。
【0012】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子の特性が変化した場合、前記送受信装置から受信した信号に対して返信する信号の少なくとも一つのパラメータが変化する。
【0013】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子はダイオードを含み、前記回路部は、前記ダイオードが水分と接触した場合に、前記ダイオードが水分と接触していない場合とは異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0014】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記ダイオードは可変容量ダイオードであり、前記回路部は、前記可変容量ダイオードが水分と接触した場合に、前記可変容量ダイオードが水分と接触していない場合とは強度が異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0015】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部は発振回路をさらに有し、前記回路部は、前記ダイオードが水分と接触した場合に、前記ダイオードが水分と接触していない場合とは周波数が異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0016】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記発振回路がリングオシレータを含む。
【0017】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子はリングオシレータであり、前記回路部は、前記リングオシレータが水分と接触した場合に、前記リングオシレータが水分と接触していない場合とは周波数が異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0018】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子はメモリ素子であり、前記回路部は、前記メモリ素子が水分と接触した場合に、前記メモリ素子が水分と接触していない場合とは異なる信号を前記送受信装置に送信する。
【0019】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子はカーボンナノチューブを用いて構成される。
【0020】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記素子の半導体層がカーボンナノチューブを用いて構成される。
【0021】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部が有する配線の少なくとも一部と水分との接触の有無に応じて異なる情報を含む信号を前記送受信装置に送信する。
【0022】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部がデジタル回路を有し、前記デジタル回路の配線の少なくとも一部が水分と接触した場合に、前記デジタル回路の特性が変化し、前記配線の少なくとも一部が水分と接触していない場合とは異なる情報を含む信号を前記送受信装置に送信する。
【0023】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が水分と接触した場合に、前記配線の電気抵抗が変化する。
【0024】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が、導電性粒子および水溶性樹脂を含む。
【0025】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が、水溶性導電性高分子を含む。
【0026】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が、導電性粒子および吸水性樹脂を含む。
【0027】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が水溶性樹脂を含む層上に配置されており、前記層が水分と接触した場合に、前記配線の電気抵抗が変化する。
【0028】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記配線の少なくとも一部が吸水性樹脂を含む層上に配置されており、前記層が水分と接触した場合に、前記配線の電気抵抗が変化する。
【0029】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部は、前記配線と接続するとともに所定の情報を記録するメモリ素子と、前記メモリ素子から情報を読み出して前記送受信装置へ送信する制御回路と、を有し、前記制御回路が前記メモリ素子から読み出す情報は、前記配線と水分との接触の有無に応じて異なる。
【0030】
本発明に係る無線通信デバイスは、上記発明において、前記回路部は、アレイ状に配列されている複数のメモリ素子と、前記複数のメモリ素子から情報を読み出して前記送受信装置へ送信する制御回路と、を有し、前記制御回路が前記複数のメモリ素子から読み出す情報は、前記配線と水分との接触の有無に応じて異なる。
【0031】
本発明に係るおむつは、水分を吸収して保持する吸水材と、防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材とを備え、人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつであって、上記発明に記載した無線通信デバイスを備えた。
【0032】
本発明に係るおむつは、上記発明において、前記無線通信デバイスが前記吸水材と前記防水材との間に位置する。
【0033】
本発明に係る水分検知システムは、上記発明に記載の無線通信デバイスと、前記無線通信デバイスと非接触に通信可能であり、前記無線通信デバイスに送信した信号に対して返信される信号に基づいて前記無線通信デバイスの水分との接触の有無を検知する送受信装置と、を備えた。
【0034】
本発明に係る水分検知システムは、上記発明において、前記送受信装置は、UHF帯またはマイクロ波帯の周波数を有する信号を送信する。
【0035】
本発明に係る水分検知システムは、上記発明において、前記無線通信デバイスは、水分を吸収して保持する吸水材と、防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材とを備え、人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつに設けられている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る水分検知システムの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスの回路構成を示す図である。
図3図3は、おむつの要部の構成を示す部分断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態3に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3の変形例1に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態3の変形例2に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態4に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態4に係る無線通信デバイスが備えるメモリの要部の構成を模式的に示す図である。
図10図10は、メモリ素子の積層構造を模式的に示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態4の変形例に係る無線通信デバイスが備えるメモリの要部の構成を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態5に係る無線通信デバイスが備えるメモリの要部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る水分検知システムの構成を示す図である。同図に示す水分検知システム1は、所定の周波数帯域の信号を無線で送受信する送受信装置2と、送受信装置2と非接触の通信(無線通信)が可能な無線通信デバイス3が設けられており、人体に装着されて排尿時の水分を吸収可能なおむつ4とを備える。水分検知システム1は、おむつ4を履いた人の排尿等に起因する水分の発生を検知するシステムであり、おむつ4を用いた濡れ検知システムということもできる。
【0040】
送受信装置2は、所定の周波数帯域の信号を送受信するアンテナ、動作を制御するCPU(Central Processing Unit)および各種情報を記憶するメモリを有する。送受信装置2は、無線通信デバイス3に対して所定の周波数帯域の信号(搬送波)を送信し、その信号に対する返信信号を受信する。この返信信号には、無線通信デバイス3に固有の情報が含まれる。送受信装置2は、無線通信デバイス3から受信する信号に基づいて無線通信デバイス3を識別するとともに、その無線通信デバイス3が水分と接触した状態にあるか否かを検知する。送受信装置2が送信する信号は、例えばUHF帯(860~960MHz)またはマイクロ波帯(2.45GHz)の周波数を有する電波である。このような送受信装置2は、例えばリーダライタのような専用の端末として構成してもよいし、スマートフォン等の携帯端末を用いて構成してもよい。
【0041】
図2は、無線通信デバイス3の回路構成を示す図である。無線通信デバイス3は、回路部31と、回路部31に接続されるアンテナ32とを備える。無線通信デバイス3は、送受信装置2によって送信された信号(搬送波)を受信し、この信号をエネルギー源として、無線通信デバイス3に固有の情報を加えた信号(反射波)を返信する。
【0042】
回路部31は、ダイオード33を有する。ダイオード33は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子である。
【0043】
ダイオード33を構成する有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリ(p-フェニレンビニレン)などのポリ(p-フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン類、ポリヘテロアリール類、縮合多環系の低分子化合物半導体、複素芳香環を有する低分子化合物半導体が挙げられる。ポリチオフェン類としては、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどが挙げられる。ポリフラン類としては、ポリフラン、ポリベンゾフランなどが挙げられる。ポリヘテロアリール類としては、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするものが挙げられる。縮合多環系の低分子化合物半導体としては、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどが挙げられる。複素芳香環を有する低分子化合物半導体としては、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどが挙げられる。これらの材料は、塗布法によりフィルム上への形成が可能であるため、通常用いられるシリコン等の材料と比較して製造が容易であるとともに、コストを低く抑えることができて経済的である。
【0044】
また、200℃以下の低温で形成できることおよび半導体特性が高いことなどの観点から、ダイオード33は、カーボンナノチューブを含むことがより好ましい。カーボンナノチューブの中でも、その表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体が特に好ましい。何故ならば、カーボンナノチューブの保有する高い電気特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを、溶液中で均一に分散することが可能になるからである。カーボンナノチューブが均一に分散した溶液を用いることで、インクジェット法等の塗布法により、カーボンナノチューブが均一に分散した膜を形成することができる。
【0045】
ダイオード33は、例えば絶縁性基材の表面上に設けられた一対の電極と、一対の電極の間に形成された半導体層とを有する。半導体層は、例えばカーボンナノチューブを含有する。なお、ダイオード33の構成はこれに限定されるものではなく、その他の構成は、例えば国際公開第2016/158862号に開示されている。
【0046】
アンテナ32は、回路部31に接続されており、送受信装置2との間で信号の送受信を行う。アンテナ32は、ダイポールアンテナであり、ダイオード33とのインピーダンス整合が取られている。なお、アンテナ32はループアンテナ等でもよい。
【0047】
図3は、おむつ4の要部の構成を模式的に示す部分断面図である。おむつ4は、不織布等を用いて構成され、人の肌が直接接触する表面材41と、高吸水性高分子等を用いて構成され、表面材41を通過した水分を吸収して保持する吸水材42と、防水性を有するシート状の材料からなり、吸水材42の表面のうちおむつ4の外表面側の外装体をなす防水材43とを有する。吸水材42と防水材43との間には、無線通信デバイス3が設けられている。無線通信デバイス3の設置位置は、排尿によって吸水材42が水分を吸収しやすい位置、換言すれば、人がおむつ4を装着して排尿したときに尿があたる可能性が高い領域内の位置であるのが好ましい。
【0048】
以上の構成を有するおむつ4を装着した人が排尿等によって水分を体外に放出すると、吸水材42がその水分を吸収する。吸水材42によって吸収された水分がダイオード33に到達すると、ダイオード33が水分と接触して濡れた状態となることにより、その整流特性が変化する。ダイオード33の整流特性が変化すると、ダイオード33が乾いた状態にある場合と比較して、無線通信デバイス3が送受信装置2に返信する信号のパラメータの一つである信号の強度が変化する。送受信装置2は、無線通信デバイス3から受信した信号の強度に基づいて、ダイオード33が水分と接触しているか否か、すなわちおむつ4が濡れた状態にあるか否かを検知する。
【0049】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成されるダイオード33を用いて回路部31を構成し、ダイオード33が水分に接触すると、その半導体特性または絶縁層の静電容量が変化することによって水分に接触していない場合と強度が異なる信号を出力するため、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。
【0050】
また、本実施の形態1によれば、回路部31にフィルム形成が可能な材料を適用しているため、通常半導体の材料として用いられるシリコン等の材料と比較して製造が容易であるとともに、コストを低く抑えることができて経済的である。この意味で、本実施の形態1の無線通信デバイス3は、おむつ4のような量産品に好適である。
【0051】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Aは、実施の形態1と同様におむつ4に設けられており、回路部31Aと、アンテナ32とを備える。回路部31Aは、印加電圧に応じて静電容量が変化する可変容量ダイオード34を有する。回路部31Aを除く水分検知システムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0052】
可変容量ダイオード34は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子である。上述した材料を用いて構成される可変容量ダイオード34は、水分との接触によりその特性が変化する。ここでいう可変容量ダイオード34の特性とは、半導体特性または絶縁層の静電容量である。可変容量ダイオード34の特性が変化した結果、送受信装置2に返信する信号のパラメータの一つである強度が、乾いた状態で返信する信号の強度と異なる。
【0053】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、実施の形態1と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様、製造も容易で経済的である。
【0054】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Bは、実施の形態1と同様におむつ4に設けられており、回路部31Bと、アンテナ32とを備える。回路部31Bは、ダイオード33と、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)35とを有する。回路部31Bを除く水分検知システムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0055】
電圧制御発振器35は、電圧によって発振周波数を制御する発振器である。電圧制御発振器35は、例えばコイルやキャパシタを用いて構成される発振回路である。なお、回路部31Bは、さらにトランジスタなどのスイッチング素子を有しても良い。この場合、スイッチング素子は、電圧制御発振器35により制御される発振周波数の信号に応じてオン、オフされる。このスイッチング素子のオン、オフに応じて、無線通信デバイス3Bから送受信装置2に信号を返信するか否かが決まる。また、電圧制御発振器35はリングオシレータを用いて構成されても良い。リングオシレータを用いることにより、コイルやキャパシタを用いて構成するよりもシンプルな発振回路を構成することができる。なお、リングオシレータは、シリコン等の材料を用いて構成されており、水分との接触に起因した特性の変化は生じない。
【0056】
以上の構成を有する無線通信デバイス3Bにおいて、ダイオード33が水分と接触して濡れた状態になってその整流特性が変化すると、電圧制御発振器35の発振特性が変化する。この結果、回路部31Bを通過する信号のパラメータの一つである周波数が変化する。したがって、ダイオード33が濡れた状態にある無線通信デバイス3Bが送受信装置2に対して返信する信号の周波数は、ダイオード33が水分と接触せず乾いた状態にある無線通信デバイス3Bが返信する信号の周波数と異なる。送受信装置2は、無線通信デバイス3Bから受信した信号の周波数に基づいて水分の有無を検知する。
【0057】
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、実施の形態1と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様、製造も容易で経済的である。
【0058】
また、本実施の形態3によれば、送受信装置2が受信する信号の周波数の変化に基づいて水分を検知するため、距離の変化に敏感なパラメータである強度の変化を検出する実施の形態1と比較して、適切な通信を行うための送受信装置2と無線通信デバイス3Bとの位置関係の自由度が高い。
【0059】
(実施の形態3の変形例1)
図6は、本発明の実施の形態3の変形例1に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Cは、回路部31Cと、アンテナ32とを備える。回路部31Cは、ダイオード33と、カソード側がダイオード33に並列接続される一方、アノード側がグラウンドに接続された可変容量ダイオード36とを有する。
【0060】
可変容量ダイオード36は、電圧制御発振器の機能を有する。可変容量ダイオード36は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子であり、水分との接触により半導体特性または絶縁層の静電容量が変化する。
【0061】
このような構成を有する無線通信デバイス3Cにおいて、ダイオード33が濡れた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の周波数は、ダイオード33が乾いた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の周波数と異なる。また、可変容量ダイオード36が濡れた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の強度は、可変容量ダイオード36が乾いた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の強度と異なる。送受信装置2は、無線通信デバイス3Cから受信した信号の周波数および/または強度に基づいて水分の有無を検知する。
【0062】
以上説明した実施の形態3の変形例1によれば、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(実施の形態3の変形例2)
図7は、本発明の実施の形態3の変形例2に係る無線通信デバイスの構成を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Dは、回路部31Dと、アンテナ32とを備える。回路部31Dは、ダイオード37と、ダイオード37に直列接続されたリングオシレータ(RO)38とを有する。本変形例2において、ダイオード37は、シリコン等の材料を用いて構成されており、水分との接触に起因した特性の変化は生じない。
【0064】
リングオシレータ38は、電圧制御発振器の機能を有する。リングオシレータ38は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成されたトランジスタを有する。このようなトランジスタを用いて構成されるリングオシレータ38は、水分との接触により発振特性が変化する。リングオシレータ38の発振特性が変化すると、回路部31Dを通過する信号の周波数が変化する。なお、回路部31Dは、さらにトランジスタなどのスイッチング素子を有しても良い。スイッチング素子は、リングオシレータ38により制御される発振周波数の信号に応じてオン、オフされる。このスイッチング素子のオン、オフに応じて、無線通信デバイス3Dから送受信装置2に信号を返信するか否かが決まる。なお、リングオシレータ38の構成によっては、発振特性が変化することによって回路部31Dを通過する信号の強度が変化する場合もある。リングオシレータ38は、例えば複数の薄膜トランジスタを組み合わせてなる。薄膜トランジスタの半導体層は、例えばカーボンナノチューブを含有している。
【0065】
このような構成を有する無線通信デバイス3Dにおいて、リングオシレータ38が濡れた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の周波数は、リングオシレータ38が乾いた状態にある場合に送受信装置2に対して返信する信号の周波数と異なる。送受信装置2は、無線通信デバイス3Dから受信した信号の周波数に基づいて水分の有無を検知する。
【0066】
以上説明した実施の形態3の変形例2によれば、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、本変形例2において、ダイオード37の代わりに、実施の形態1で適用したダイオード33を適用してもよい。この場合、送受信装置2は、無線通信デバイスによって返信される信号の強度をさらに用いて水分の有無を検知してもよい。
【0068】
また、本変形例2において、ダイオード37の代わりに、実施の形態1で適用したダイオード33を適用し、ダイオード33に対して保護層を設けることにより、ダイオード33を水分の影響から保護してもよい。この場合、送受信装置2は、無線通信デバイスから受信した信号の周波数に基づいて水分の有無を検知する。
【0069】
保護層は、少なくともダイオード37の半導体層を覆っていればよく、ダイオード37全体を覆っていてもよい。また、保護層は、リングオシレータ38を除く送受信装置2全体を覆っていてもよい。
【0070】
保護層に用いられる材料は特に限定されないが、例えば以下のような材料を挙げることができる。
・酸化シリコンやアルミナ等の無機材料
・ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などの有機高分子材料
・無機材料粉末と有機高分子材料の混合物、有機低分子材料と有機高分子材料の混合物
これらの中でも、塗布法で作製できる有機高分子材料を用いることが好ましい。
【0071】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成例を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Eは、実施の形態1と同様におむつ4に設けられており、回路部31Eと、アンテナ32とを備える。回路部31Eは、制御回路39と、メモリ40とを有するデジタル回路である。制御回路39は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路や整流回路などを含む。制御回路39は、送受信装置2からの信号を受信すると、メモリ40が記録している情報を読み取って送受信装置2に返信する。回路部31Eを除く水分検知システムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0072】
図9は、メモリ40の要部の構成を模式的に示す図である。メモリ40は、1つのメモリ素子50を備える。メモリ素子50は、ソース51、ゲート52およびドレイン53を有する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)である。ソース51は配線W1を介してビット線BLに接続し、ゲート52は配線W2を介してワード線WLに接続し、ドレイン53は接地されている。
【0073】
図10は、メモリ素子50の積層構造を模式的に示す図である。なお、図10は各層の位置関係を示すための図であり、各層の厚さには意味がない。メモリ素子50は、基板54上にゲート52、配線W2およびワード線WLが一括形成されており、その上に絶縁層55が積層されている。絶縁層55の上には、半導体層56が形成されている。半導体層56は、ソース51、ドレイン53、配線W1およびビット線BLと一括形成されている。このように、メモリ素子50は、いわゆるボトムゲート型の構成を有している。なお、メモリ素子50をトップゲート型の構成とすることも可能である。
【0074】
基板54は、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性を有していれば、いかなる材料でもよい。例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料などが好適に用いられる。また、例えばシリコンウエハ上にPVP膜を形成したものやポリエチレンテレフタレート上にポリシロキサン膜を形成したものなど、複数の材料を積層したものであってもよい。
【0075】
絶縁層55の材料は、正常に機能する程度の絶縁性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、芳香族ポリエーテル、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等を用いることができる。また、これらのポリマーに他のポリマーを共重合したもの、混合したものを用いることもできる。これらの内、トランジスタのオン電流の向上、リーク電流の低減の観点から、ポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0076】
絶縁層55は、単層または複数層からなる。複数層の場合には、絶縁層55を複数積層してもよいし、絶縁層55と公知のゲート絶縁層を積層してもよい。また、絶縁層55と半導体層56の間に配向性層を設けることもできる。配向性層には、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。
【0077】
半導体層56は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成される。
【0078】
半導体層56を構成する有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリ(p-フェニレンビニレン)などのポリ(p-フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン類、ポリヘテロアリール類、縮合多環系の低分子化合物半導体、複素芳香環を有する低分子化合物半導体が挙げられる。ポリチオフェン類としては、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどが挙げられる。ポリフラン類としては、ポリフラン、ポリベンゾフランなどが挙げられる。ポリヘテロアリール類としては、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするものが挙げられる。縮合多環系の低分子化合物半導体としては、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどが挙げられる。複素芳香環を有する低分子化合物半導体としては、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどが挙げられる。これらの材料は、塗布法によりフィルム上への形成が可能であるため、通常用いられるシリコン等の材料と比較して製造が容易であるとともに、コストを低く抑えることができて経済的である。
【0079】
また、半導体層56は、200℃以下の低温で形成できることおよび半導体特性が高いことなどの観点から、カーボンナノチューブを含むことがより好ましい。カーボンナノチューブの中でも、その表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体が特に好ましい。カーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブが保有する高い電気特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを溶液中で均一に分散することが可能であるからである。カーボンナノチューブが均一に分散した溶液を用いることで、インクジェット法等の塗布法により、カーボンナノチューブが均一に分散した膜を形成することができる。
【0080】
以上の構成を有する無線通信デバイス3Eにおいて、メモリ40が水分と接触して濡れた状態になって、メモリ40が有するメモリ素子50の半導体層の特性が変化する。その結果、回路部31Eの回路特性、具体的には電気抵抗が変化し、制御回路39がメモリ40から読み取る情報(信号値)が変化する。例えば、メモリ40が水分に触れていない通常状態における1ビットの情報として「1」を記録している場合において、半導体層56が水分に触れたとき、制御回路39がメモリ40から読み取って送受信装置2へ送信する1ビットの情報は「0」に変化する。送受信装置2は、無線通信デバイス3Eから受信する信号に含まれる1ビットの情報が通常状態と異なる場合、無線通信デバイス3Eに水分が付着したことを検知する。
【0081】
以上説明した本発明の実施の形態4によれば、実施の形態1と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態4によれば、実施の形態1と同様、製造も容易で経済的である。
【0082】
また、本実施の形態4によれば、送受信装置2が受信するメモリ40に記録している情報の変化に基づいて水分を検知するため、距離の変化に敏感なパラメータである強度の変化を検出する実施の形態1と比較して、適切な通信を行うための送受信装置2と無線通信デバイス3Eとの位置関係の自由度が高い。
【0083】
(実施の形態4の変形例)
図11は、実施の形態4の変形例に係る無線通信デバイスが備えるメモリの要部の構成を示す図である。同図に示すメモリ40Aは、2つのメモリ素子50a、50bをアレイ状に配置してなる。メモリ素子50aのソース51aは配線W11を介してビット線BL1に接続し、メモリ素子50bのソース51bは配線W12を介してビット線BL2に接続し、メモリ素子50aのゲート52aおよびメモリ素子50bのゲート52bは、配線W21およびW22をそれぞれ介して共通のワード線WLに接続している。メモリ素子50aのドレイン53aおよびメモリ素子50bのドレイン53bはそれぞれ接地されている。
【0084】
メモリ素子50aの基板54a、絶縁層55aおよび半導体層56aは、メモリ素子50bの基板54b、絶縁層55bおよび半導体層56bとそれぞれ共通の層をなしてもよいし、個別に層をなしてもよい。2つのメモリ素子50aおよび50bを1つの構造体として一体形成すれば、製造も容易で小型化にも寄与し得るのでより好ましい。
【0085】
本変形例において、制御回路39は、メモリ40Aから2ビットの情報を読み取って送受信装置2に送信する。例えば、通常時の2ビットの情報が「11」である場合、制御回路39が他の2ビットの情報「10」、「01」、または「00」をメモリ40Aから読み取って送受信装置2に送信したとき、送受信装置2は、本変形例に係る無線通信デバイスが水分に触れたことを検知する。
【0086】
以上説明した実施の形態4の変形例によれば、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。なお、メモリを構成するメモリ素子の数は3以上であってもよい。この場合にも、ワード線を共通にして複数のメモリ素子をアレイ状に配置すればよい。
【0087】
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5に係る無線通信デバイスが備えるメモリの要部の構成を模式的に示す図である。本実施の形態5に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成例は、図8に示す実施の形態4に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスと同様の構成例をとることができる。同図に示すメモリ40Bは、ボトムゲート型のメモリ素子50Bを備える。メモリ素子50Bは、ソース51、ゲート52、ドレイン53、基板54、絶縁層55、半導体層56および第2絶縁層57を有する。ソース51は、配線W3を介してビット線BLに接続される。ゲート52は、配線W4を介してワード線WLに接続される。メモリ素子50Bは、基板54上にゲート52、配線W4およびワード線WLが一括形成されており、その上に絶縁層55が積層されている。絶縁層55の上には半導体層56が形成されている。半導体層56は、ソース51、ドレイン53、配線W3およびビット線BLと一括形成されている。第2絶縁層57は、半導体層56に対して絶縁層55と反対側に形成される。半導体層56に対して絶縁層55と反対側とは、図12に示すように半導体層56の下側に絶縁層55を有する場合は、半導体層56の上側を指す。なお、メモリ素子50Bをトップゲート型の構成とすることも可能である。
【0088】
半導体層56を構成する半導体材料としては、実施の形態4と同様と同様に、ペンタセンやポリチオフェン誘導体等の有機半導体、カーボンナノチューブやグラフェン、フラーレン等のカーボン半導体を挙げることができる。
【0089】
第2絶縁層57に用いられる材料は特に限定されないが、例えば以下のような材料を挙げることができる。
・酸化シリコンやアルミナ等の無機材料
・ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などの有機高分子材料
・無機材料粉末と有機高分子材料の混合物、有機低分子材料と有機高分子材料の混合物
これらの中でも、塗布法で作製できる有機高分子材料を用いることが好ましい。
【0090】
メモリ素子50Bは第2絶縁層57を有するため、外部からの半導体材料への水分の接触を防ぎ、水分との接触に起因した特性の変化を生じさせない。なお、第2絶縁層57を形成する代わりに、シリコン等のように元来水分との接触に起因して特性が変化しない材料を用いて半導体層を構成してもよい。
【0091】
配線W3、W4は、水溶性導電性高分子を含む。配線W3、W4が含む水溶性導電性高分子は、自己ドーピング型よりは外部ドーピング型のものの方が好ましい。具体的には、水溶性導電性高分子として、無置換または置換基を有するポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリイソチアナフテン、ポリフラン、ポリカルバゾール、ポリジアミノアントラキノン、ポリインドールからなる群より選ばれた少なくとも1種のπ共役系高分子中の骨格に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩、またはスルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩で置換されたアルキル基もしくはエーテル結合を含むアルキル基を有しているものを挙げることができる。また、水溶性導電性高分子として、π共役系高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩、またはスルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは置換アンモニウム塩で置換されたアルキル基もしくはエーテル結合を含むアルキル基を有しているものを挙げることができる。
【0092】
図12に示すボトムゲート型のメモリ素子50Bの場合には、配線W4よりも水分と接触しやすい配線W3が、少なくとも上述した材料を用いて構成されていることが好ましい。この場合、配線W4は導電性材料を用いて構成してもよい。なお、トップゲート型のメモリ素子の場合には、ゲート52と接続する配線W4がソース51と接続する配線W3よりも水分と接触しやすいため、少なくとも配線W4が上述した材料を用いて構成されていることが好ましく、配線W3は導電性材料を用いて構成してもよい。
【0093】
本実施の形態5に係る無線通信デバイスにおいて、メモリ40Bが水分と接触して濡れた状態になって、配線W3および/またはW4が水分に触れると、水溶性導電性高分子が溶解して断線を生じて高抵抗化する。その結果、実施の形態4と同様に、制御回路39がメモリ40Bから読み取る情報が変化する。送受信装置2は、本実施の形態5に係る無線通信デバイスから受信する信号に含まれる1ビットの情報が通常状態と異なる場合、本実施の形態5に係る無線通信デバイスに水分が付着したことを検知する。
【0094】
本実施の形態5は、図11に示す実施の形態4の変形例と同様に、2つのメモリ素子をアレイ状に配置することで、実施の形態4の変形例と同様の効果を得ることができる。なお、メモリを構成するメモリ素子の数は3以上であってもよい。この場合にも、ワード線を共通にして複数のメモリ素子をアレイ状に配置すればよい。
【0095】
以上説明した本発明の実施の形態5によれば、回路部31Eが有する配線の少なくとも一部と水分との接触の有無に応じて、異なる情報を含む信号を送受信装置2に送信するため、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態5によれば、実施の形態4と同様、製造も容易で経済的である。
【0096】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成は、実施の形態5と同様である。本実施の形態6において実施の形態5と異なる点は、メモリ40Bの配線W3、W4が、導電性粒子および水溶性樹脂を含む点である。
【0097】
導電性粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)または炭素(C)等を挙げることができる。中でも金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウムおよび炭素からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する導電性粒子であることが好ましい。
【0098】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどのホモポリマーおよびそれらの成分を含むコポリマーなどを挙げることができる。また、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン等も挙げることができる。また、カルボキシル基もしくはスルホン基等の親水基を導入した水溶性ポリエステルまたは水溶性ポリウレタン等も挙げることができる。
【0099】
以上の構成を有する配線W3およびW4は、水分に触れると水溶性樹脂が溶解してその組成が変化して電気抵抗が高抵抗化する。これにより、実施の形態4と同様に、制御回路39がメモリ40Bから読み取る1ビットの情報が変化する。送受信装置2は、本実施の形態6に係る無線通信デバイスから受信する信号に含まれる1ビットの情報が通常状態と異なる場合、本実施の形態6に係る無線通信デバイスに水分が付着したことを検知する。
【0100】
以上説明した本発明の実施の形態6によれば、実施の形態4と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態6によれば、実施の形態4と同様、製造も容易で経済的である。
【0101】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7に係る水分検知システムが備える無線通信デバイスの構成は、実施の形態5と同様である。本実施の形態7において実施の形態5と異なる点は、メモリ40Bの配線W3、W4が、導電性粒子および吸水性樹脂を含む点である。このうち、導電性粒子は、実施の形態6と同様の材料を用いて構成される。
【0102】
吸水性樹脂としては、例えば、デンプンまたはセルロースと、カルボキシル基もしくはスルホン基等の親水基を含有する水溶性単量体および/または加水分解により水溶性となる単量体と、架橋剤とを必須成分として重合させ、必要により加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂、デンプン-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン-アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、セルロース-アクリロニトリルグラフト重合物の加水分解物、カルボキシメチルセルロースの架橋物、架橋ポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸-アクリルアミド共重合体、架橋されたスルホン化ポリスチレン、ビニルエステル-不飽和カルボン酸共重合体ケン化物、ポリアクリル酸ナトリウム等の架橋されたポリアクリル酸(塩)、架橋されたアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合物、ナトリウム塩架橋物無水マレイン酸等の架橋されたイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコール、自己架橋型ポリアクリル酸塩、架橋された酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体物、ノニオン型ポリアルキレンオキサイド等を挙げることができる。吸水性樹脂としては、上記以外にも従来公知の吸水性樹脂を使用することができ、特に限定されるものではない。
【0103】
以上の構成を有する配線W3およびW4は、水分に触れると吸水性樹脂が吸水して配線W3およびW4が膨潤し、導電性粒子が離間することによって実質的な断線を生じ、高抵抗化する。その結果、実施の形態1と同様に、制御回路39がメモリ40から読み取る情報が変化する。送受信装置2は、無線通信デバイス3から受信する信号に含まれる1ビットの情報が通常状態と異なる場合、無線通信デバイス3に水分が付着したことを検知する。
【0104】
以上説明した本発明の実施の形態7によれば、実施の形態5と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態7によれば、実施の形態5と同様、製造も容易で経済的である。
【0105】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8に係る無線通信システムは、実施の形態5に係る無線通信システムと同様の構成を有する。本実施の形態8において実施の形態5と異なる点は、メモリ素子50Bの絶縁層55が、さらに、感光性有機成分としてラジカル重合性化合物の付加反応体を含む点と、配線W3、W4が導電性材料を用いて構成される点である。
【0106】
ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物のことである。紫外(UV:Ultraviolet)光の照射により、後述する光重合開始剤から発生するラジカルによって、ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、絶縁層55の架橋密度が向上し、絶縁層55の硬度を向上させることができる。
【0107】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。UV光の照射時の感度向上および絶縁層55の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子内に2つ以上有する化合物がより好ましい。
【0108】
ラジカル重合性化合物としては、UV光の照射時の感度向上および硬化膜の耐クラック性向上の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸もしくは9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレンまたはそれらの酸変性体が好ましい。また、ラジカル重合性化合物としては、UV光の照射時の感度向上および硬化膜の耐クラック性向上の観点から、エチレンオキシド変性体またはプロピレンオキシド変性体も好ましい。
【0109】
絶縁層55は、さらに感光性有機成分として、UV光の照射によって結合開裂および/または反応してラジカルを発生する化合物(以下、「光重合開始剤」という)を含んでもよい。光重合開始剤を含むことで、前述したラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、UV光の照射時の付加反応を促進することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤または安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、UV光の照射時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。光重合開始剤の具体的な例としては、オキシムエステル系光重合開始剤として、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシムおよび1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシムを挙げることができるが、他の公知の材料も利用することができる。
【0110】
絶縁層55は、さらに感光性有機成分として、光により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」という)を含有してもよい。光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などを例示することができる。ジアゾケトン化合物の具体的な例としては、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などを挙げることができ、パターン加工精度や絶縁層55の耐クラック性の観点から、ジアゾナフトキノン化合物が好ましい。好ましいジアゾケトン化合物として、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸と2,2,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノンとのエステル、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸と1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル等を挙げることができる。
【0111】
光重合開始剤および光酸発生剤は、感光性有機成分である増感剤と組み合わせて用いられることが好ましい。増感剤は、光退色反応で着色を生じないため、絶縁層55中でも、高い透明性を維持しつつ、高感度化を達成することができる。増感剤としては特に制限はなく公知の材料を用いることができるが、9,10-二置換アントラセン系化合物が特に好ましい。
【0112】
絶縁層55は、感光性有機成分として、連鎖移動剤の付加反応体をさらに含んでもよい。連鎖移動剤とは、UV光の照射時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端からラジカルを受け取り、他のポリマー鎖へのラジカル移動を介することが可能な化合物をいう。連鎖移動剤を含むことにより、UV光の照射時の感度を向上させることができる。これは、UV光の照射によって発生したラジカルが、連鎖移動剤によって他のポリマー鎖へラジカル移動することで、膜の深部にまでラジカル架橋をするためであると推測される。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0113】
絶縁層55は、感光性有機成分として、重合禁止剤をさらに含んでもよい。重合禁止剤とは、UV光の照射時に発生したラジカル、またはUV光照射時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することにより、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。重合禁止剤を適量含有させることで、UV光照射時に発生する過剰量のラジカルを抑制し、ラジカル重合を制御することができる。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。
【0114】
絶縁層55は、無機粒子が結合したポリマーに加えて、さらに、ポリマーが結合していない無機粒子を含有してもよい。ポリマーが結合していない無機粒子の好ましい材質や形状としては、上述のような、ポリマーが結合された場合のものと同様である。
【0115】
絶縁層55は、必要に応じて、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤などを含有してもよい。また、絶縁層55は、残留溶媒を含有していても構わない。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤等を挙げることができる。フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、NBX-15、FTX-218、DFX-18((株)ネオス製)等を挙げることができる。また、シリコーン系界面活性剤としては、BYK-333(ビックケミー・ジャパン(株)製)等を挙げることができる。
【0116】
本実施の形態8においては、感光性有機物を含む絶縁層55を有する薄膜トランジスタを用いてメモリ素子50Bを構成しているため、フォトリソグラフィーにより、選択的にビアを形成することができる。これにより、例えば、配線W3、W4が接触する絶縁層55の領域に対して選択的にビアを形成し、このビアに対して、インクジェット法やディスペンサー法などの塗布法により水溶性樹脂からなる膜(水溶性樹脂膜)を塗布形成すれば、水溶性樹脂膜が水分と接触した際に溶解し、それに伴い、水溶性樹脂膜と接している配線が断線して高抵抗化する。なお、絶縁層55に対して、水溶性樹脂膜の代わりに吸水性樹脂からなる膜(吸水性樹脂膜)を同様に塗布形成してもよい。この場合には、吸水性樹脂膜が水分に接触すると吸水性樹脂膜が膨潤し、吸水性樹脂膜と接している配線が断線する。
【0117】
以上説明した本発明の実施の形態8によれば、実施の形態5と同様、簡易な構成によって水分の発生を的確に検知することができる。また、本実施の形態8によれば、実施の形態5と同様、製造も容易で経済的である。
【0118】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、おむつに複数の無線通信デバイスを設置してもよい。具体的には、男性と女性では排尿時に濡れやすい場所が異なるため、尿の放出が想定されるすべての場所に無線通信デバイスを設置してもよい。これにより、おむつを使用する人の性別によらず、的確な水分検知を行うことができ、汎用性の高いおむつを提供することが可能となる。
【0119】
また、回路部が、1つの制御回路と、互いに異なる位置に配置された複数のメモリとを備えてもよい。この場合には、アンテナも1つでよい。この場合にも、複数の無線通信デバイスを設置する場合と同様の効果を、より簡易な構成によって得ることができる。
【0120】
また、電池を内蔵したアクティブ型の無線通信デバイスに、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよび有機半導体からなる群の一つ以上の材料を用いて構成された素子を適用してもよい。
【0121】
また、無線通信デバイスが水分と接触した場合には、無線通信デバイスが送受信装置に対して信号を返信しないような回路構成としてもよい。
【0122】
また、送受信装置と無線通信デバイスとの間の通信を周波数が13.56MHzのNFC(Near Field Communication)通信によって実現してもよい。この場合には、例えば無線通信デバイスをベッドのシーツ等に設置して水分を検知することも可能である。
【0123】
また、水分検知システムとして、自動車の製造時における室内の防水チェック、トンネル製造時における水濡れ検知、排水管の水漏れ検知等を目的とするシステムに適用することも可能である。
【0124】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含み得るものである。
【符号の説明】
【0125】
1 水分検知システム
2 送受信装置
3、3A、3B、3C、3D、3E 無線通信デバイス
4 おむつ
31、31A、31B、31C、31D、31E 回路部
32 アンテナ
33、37 ダイオード
34、36 可変容量ダイオード
35 電圧制御発振器
38 リングオシレータ
39 制御回路
40、40A メモリ
41 表面材
42 吸水材
43 防水材
50、50a、50b、50B メモリ素子
51、51a、51b ソース
52、52a、52b ゲート
53、53a、53b ドレイン
54、54a、54b 基板
55、55a、55b 絶縁層
56、56a、56b 半導体層
57 第2絶縁層
BL、BL1、BL2 ビット線
W1、W2、W3、W4、W11、W12、W21、W22 配線
WL ワード線
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