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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20230110BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G7/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019036635
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137481
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-074129(JP,A)
【文献】実開平03-112277(JP,U)
【文献】実公昭14-016762(JP,Y1)
【文献】実開昭57-062580(JP,U)
【文献】特開2001-000022(JP,A)
【文献】実公昭07-007595(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/32
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状の基板、及び、前記基板からその長手方向に沿って末広がり状に林立し、先端が尖った複数の針体を有する防止具本体と、
これらの針体を仕切り自在に前記針体が挿入される複数の規制孔を開口すると共に、複数の前記針体を横断した状態で、複数の前記針体と移動自在に連結したバー部材と、を備え、
前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態では、複数の前記針体を開角し、
前記バー部材を前記針体の先端部側に向かって移動した状態では、複数の前記針体を閉角する、鳥害防止具。
【請求項2】
前記基板は、
上面から長手方向に沿って穿設し、前記針体の基端部を差し込みできる凹部と、
側面から挿入し、前記針体の基端部と回動自在に連結した連結ピンと、を有している、請求項1記載の鳥害防止具。
【請求項3】
複数の前記針体は、前記バー部材の両端部と係合し、前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態で、前記バー部材を所定の位置で停止できる一対の切り欠き部を両端部に有している、請求項1又は2記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記針体は、前記バー部材と係合し、前記バー部材が前記針体の先端部側に向かって移動した状態で、前記バー部材を所定の位置で停止できる突起を有している、請求項1から3のいずれかに記載の鳥害防止具。
【請求項5】
複数の前記針体は、前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態で、これらの針体の先端部が前記バー部材に直交する上方に向かって突出可能に、前記針体が延びる方向に対して屈曲し、前記バー部材が前記針体の先端部側に向かって移動した状態で、これらの針体の先端部が内側に向かって屈曲している、請求項1から4のいずれかに記載の鳥害防止具。
【請求項6】
複数の前記針体が起立した状態で、前記基板を底部から支持する支持部を一端部側に有し、腕金に着脱自在な保持部を他端部側に有する腕金取り付け金具を更に備えている、請求項1から5のいずれかに記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具に関する。特に、絶縁操作棒を用いて、無停電状態で電気工事を実施できる間接活線工事に適した鳥害防止具であって、カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣することで発生する鳥害を防止する鳥害防止具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電柱は、四角パイプ状の腕金を略水平状態で装架している。腕金は、ピン碍子を介して、架空送電線を支持している。カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣すると、鳥類の糞が電気装柱物に付着するなどの鳥害が発生する心配がある。このため、複数の傘の骨組み状の鳥害防止具、いわゆる、アンブレラボーン形の鳥害防止具を腕金に立設することで、鳥類の飛来を防止する鳥害対策が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、先端の尖った針体を林立した、いわゆる、針山形の鳥害防止具を腕金の上面に設置することで、鳥類の飛来を防止する鳥害対策も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-110571号公報
【文献】特開平11-289644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。なお、本願の図9は、特許文献1の図9に相当している。
【0006】
図9を参照すると、電柱Pは、その上部に一組の腕金A・Aを水平状態で固定している。ストラップStは、ピン碍子Piを介して、腕金Aに固定されている。一組の腕金A・Aの両側には、一組の耐張碍子Si・Siを配置している。一組の耐張碍子Si・Siは、揺動自在に互いに連結している。一方の耐張碍子Siは、ストラップStを介して、腕金Aに連結している。他方の耐張碍子Siは、引留クランプCiを揺動自在に連結している。
【0007】
図9を参照すると、引留クランプCiは、絶縁カバーで覆われている。引留クランプCiは、その内部で架空配電線(以下、電線という)Wを挟持している。図9に示した引留め装柱は、電線Wを挟持する引留クランプCiに連結した耐張碍子Siを電柱Pに支持した腕金Aに取り付けて、電線Wを電柱Pに支持している。一対の引留クランプCi・Ciの間には、張力を要することなく電線Wを架設している。電柱Pを迂回する電線Wの部位は、例えば、縁線Weと呼ばれている。なお、特許文献1には、縁線Weを図示していないが、実態の多くは、縁線Weを配設している。
【0008】
図9を参照すると、鳥害防止具8は、鉛直状態に配置された主軸部材81、主軸部材81の軸方向に連設された複数の分岐部材82、及び、分岐部材82から下り傾斜した状態で、基端部が分岐部材82に固定された枝棒83を備えている。
【0009】
図9を参照すると、腕金Aには、腕金取り付け金具Brを介して、鳥害防止具8を固定している。腕金取り付け金具Brの先端部側に設けた筒部に、主軸部材81の下端部を挿入することで、主軸部材81を鉛直状態に配置できる。
【0010】
図9を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、複数の枝棒83を放射状に配置することで、鳥類の飛来及び営巣を防止できる、としている。又、枝棒83は、下向きに傾斜した状態で支持されているので、巣作りのための針金などが運び込まれても、これが傾斜に沿って落下し、営巣を困難にできる、としている。
【0011】
図9を参照して、特許文献1による鳥害防止具8は、カッターを用いて、枝棒83を適当な長さに簡単に切断できるので、開閉器や変圧器などに接触しないように、かつ、電柱P上の営巣のおそれのある空間に複数の枝棒83を自由に延設できる、としている。
【0012】
図10は、従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、針山形の鳥害防止具を腕金に取り付けた状態図である。図11は、従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。なお、本願の図10図11は、特許文献2の図5図2に相当している。
【0013】
図10又は図11を参照すると、従来技術による針山形の鳥害防止具9は、防止具本体91とC形の支持金具92で構成している。防止具本体91は、鳥類が腕金Aに飛来して営巣することを防止できる。防止具本体91は、絶縁性を有する合成樹脂で成形されている。支持金具92は、防止具本体91を腕金Aに取り付けでき、防止具本体91を支持できる。
【0014】
図10又は図11を参照すると、防止具本体91は、帯板状の格子板91gと先端の尖った複数の針体91pを備えている。格子板91gは、長手方向に延びる複数の竪桟部材911と、竪桟部材911と略直交する複数の横桟部材912で構成している。針体91pは、竪桟部材911と横桟部材912の交点、又は、横桟部材912の端縁部から立設している。
【0015】
図10又は図11を参照すると、支持金具92は、一組の把持片92a・92bと連結片92cを有している。一組の把持片92a・92bは、所定の間隔を設けて略平行に配置されている。一組の把持片92a・92bは、それらの先端部にボルト挿通孔92hを開口している。連結片92cは、一組の把持片92a・92bの基端部同士を連結している。
【0016】
図10又は図11を参照すると、一組の把持片92a・92bの間には、腕金Aをその側面方向から導入できる。腕金Aを一組の把持片92a・92bの間に導入後に、ボルト挿通孔92hにボルト部材93を挿通し、ボルト部材93の先端部側に図示しないナット部材を締結することで、支持金具92を腕金Aに固定できる。
【0017】
図10又は図11を参照すると、支持金具92は、矩形の挟持板94を更に備えている。挟持板94は、一方の把持片92aの上面に溶接で接合している。挟持板94は、その一側部から一対の鉤状の嵌合片94a・94aを立設している。又、挟持板94は、その他側部から一対の鉤状の係止片94b・94bを立設している。そして、嵌合片94aと係止片94bは、対向配置されている。
【0018】
図10又は図11を参照すると、嵌合片94aと係止片94bとの間隔は、防止具本体91に形成した一組の竪桟部材911・911が嵌合する寸法を有している。一方の竪桟部材911を一対の嵌合片94a・94aに嵌合させた後に、他方の竪桟部材911を一対の係止片94b・94bに押し込むことにより、防止具本体91を挟持板94に取り付けることができる。
【0019】
図10又は図11に示した鳥害防止具9は、間接活線工事用の図示しない絶縁操作棒(いわゆる、絶縁ヤットコ)を用いて、腕金Aに取り付けることができる。そして、予め、防止具本体91を挟持板94に取り付けておく。
【0020】
次に、図10又は図11を参照すると、図示しない絶縁ヤットコを用いて、支持金具92の連結片92cを把持する。次に、連結片92cを絶縁ヤットコで把持した状態で、絶縁ヤットコを操作して、腕金Aを一組の把持片92a・92bの間に導入する。
【0021】
次に、図10又は図11を参照すると、図示しない絶縁ヤットコを用いて、ボルト挿通孔92hにボルト部材93を挿通する。次に、ボックスレンチ付きの絶縁操作棒(図示せず)を用いて、ボルト部材93の先端部側に図示しないナット部材を締結する。これにより、鳥害防止具9を腕金Aの上面に取り付けることができる(図10参照)。
【0022】
図9に示したアンブレラボーン形の鳥害防止具8と、図10又は図11に示した針山形の鳥害防止具9を対比すると、アンブレラボーン形の鳥害防止具8は、針山形の鳥害防止具9と比べて、構成が複雑なので、一般に単価が高い。したがって、複数の針山形の鳥害防止具9を腕金に配列することが、設置費用の面では好ましい。
【0023】
特許文献1による鳥害防止具8は、腕金Aの上方から鳥害防止具8を降ろすことで、腕金取り付け金具Brに固定しているが、腕金Aの下方から鳥害防止具8を持ち上げるほうが作業性がよい。これは、針山形の鳥害防止具9も同様である。
【0024】
しかし、腕金の下方から鳥害防止具を持ち上げると、一組の縁線We・Weの間を通過必要があり、放射状に拡がった複数の枝棒が邪魔になって、一組の縁線We・Weの間を通過することが困難である、という問題がある。
【0025】
一組の縁線We・Weの間に、鳥害防止具を無理矢理に通過させようとすると、縁線Weを絶縁シートなどの防具で事前に覆う必要があるので、作業工程を増やすという問題がある。一組の縁線の間を容易に通過できる鳥害防止具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0026】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、一組の縁線の間を容易に通過でき、一組の縁線の間を通過後は、鳥類が電柱上に巣作りすることを防止する鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者は、基板から末広がり状に林立した複数の針体を有する防止具本体と、針体が挿入される規制孔を開口すると共に、複数の針体を横断した状態で、複数の針体と連結したバー部材で、鳥害防止具を構成し、一組の縁線の間に鳥害防止具を通過させるときは、バー部材を針体の先端部側に向かって移動して複数の針体を閉角し、鳥害防止具を腕金に設置するときは、バー部材を針体の基端部側に向かって移動して複数の針体を開角することで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな鳥害防止具を発明するに至った。
【0028】
(1)本発明による鳥害防止具は、帯板状の基板、及び、前記基板からその長手方向に沿って末広がり状に林立し、先端が尖った複数の針体を有する防止具本体と、これらの針体を仕切り自在に前記針体が挿入される複数の規制孔を開口すると共に、複数の前記針体を横断した状態で、複数の前記針体と連結したバー部材と、を備え、前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態では、複数の前記針体を開角し、前記バー部材を前記針体の先端部側に向かって移動した状態では、複数の前記針体を閉角する。
【0029】
(2)前記基板は、上面から長手方向に沿って穿設し、前記針体の基端部を差し込みできる凹部と、側面から挿入し、前記針体の基端部と回動自在に連結した連結ピンと、を有していることが好ましい。
【0030】
(3)複数の前記針体は、前記バー部材の両端部と係合し、前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態で、前記バー部材を所定の位置で停止できる一対の切り欠き部を両端部に有していることが好ましい。
【0031】
(4)前記針体は、前記バー部材と係合し、前記バー部材が前記針体の先端部側に向かって移動した状態で、前記バー部材を所定の位置で停止できる突起を有していることが好ましい。
【0032】
(5)複数の前記針体は、前記バー部材が前記針体の基端部側に向かって移動した状態で、これらの針体の先端部が上方に向かって突出可能に、前記針体が延びる方向に対して屈曲していることが好ましい。
【0033】
(6)本発明による鳥害防止具は、複数の前記針体が起立した状態で、前記基板を底部から支持する支持部を一端部側に有し、腕金に着脱自在な保持部を他端部側に有する腕金取り付け金具を更に備えている。
【発明の効果】
【0034】
本発明による鳥害防止具は、基板から末広がり状に林立した複数の針体を有する防止具本体と、針体が挿入される規制孔を開口すると共に、複数の針体を横断した状態で、複数の針体と連結したバー部材で、鳥害防止具を構成し、バー部材を針体の先端部側に向かって移動することで、複数の針体を閉角でき、一組の縁線の間に鳥害防止具を容易に通過でき、バー部材を針体の基端部側に向かって移動することで、複数の針体を開角でき、鳥類の営巣を困難にできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による鳥害防止具の正面図であり、図2(A)は、複数の針体を閉角した状態図、図2(B)は、複数の針体を開角した状態図である。
図3】前記実施形態による鳥害防止具に備わる腕金取り付け金具の構成を示す図であり、図3(A)は、腕金取り付け金具の正面図、図3(B)は、腕金取り付け金具の右側面図、図3(C)は、腕金取り付け金具の背面図、図3(D)は、腕金取り付け金具の下面図である。
図4】前記実施形態による鳥害防止具の使用状態を示す右側面図であり、鳥害防止具を腕金に装着する前の状態図である。
図5】前記実施形態による鳥害防止具の使用状態を示す右側面図であり、鳥害防止具を腕金に装着した状態図である。
図6】前記実施形態による鳥害防止具を取り付けようとする腕金の装柱図である。
図7】本発明による鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
図8図7の要部を拡大した正面図である。
図9】従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の装柱状態を示す斜視図である。
図10】従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、針山形の鳥害防止具を腕金に取り付けた状態図である。
図11】従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0037】
本発明による鳥害防止具の構成を説明する前に、本発明による鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を説明する。
【0038】
(絶縁操作棒の構成)
図7又は図8を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と工具部52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。工具部52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0039】
図7又は図8を参照すると、工具部52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0040】
図7を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0041】
図7を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。図7又は図8は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0042】
図7又は図8を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。図7又は図8を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0043】
図7又は図8に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0044】
[鳥害防止具の構成]
(全体構成)
次に、本発明の一実施形態による鳥害防止具の構成を説明する。なお、従来技術で使用した符号と同じ符号を有する構成品は、その作用を同じとするので、以下説明を省略することがある。
【0045】
図1から図6を参照すると、本発明の一実施形態による鳥害防止具10は、腕金Aに設置できる。腕金Aは、略水平状態で電柱Pに装架されている(図6参照)。図6に示した例では、腕金Aは、三つのピン碍子Pi、及び、ピン碍子Piに隣接した避雷器Arを支持している。
【0046】
図1から図6を参照して、鳥害防止具10を腕金Aに設置することで、鳥類などが飛来して腕金Aに営巣することを防止できる。
【0047】
図1から図6を参照すると、鳥害防止具10は、防止具本体1、帯板状のバー部材2、及び、C形の腕金取り付け金具3を備えている。防止具本体1は、帯板状の基板11と先端の尖った複数の四角錐体状の針体12を備えている。複数の針体12は、基板11からその長手方向に沿って末広がり状に林立している。基板11及び複数の針体12は、絶縁性を有する合成樹脂でそれぞれ成形することが好ましい。
【0048】
図1を参照すると、バー部材2は、針体12が挿入される複数の規制孔2hを一列に開口している。針体12を規制孔2hに一対一に挿入することで、複数の針体12を互いに仕切ることができる。又、バー部材2は、複数の針体12を横断した状態で、複数の針体12と移動自在に連結している。なお、図1では、説明の便宜上、バー部材2を重複して記載している。
【0049】
図2(B)を参照して、バー部材2を針体12の基端部側に向かって移動した状態では、鳥害防止具10は、複数の針体12を開角している。一方、図2(A)を参照して、バー部材2を針体12の先端部側に向かって移動した状態では、鳥害防止具10は、複数の針体12を閉角している。
【0050】
図1から図6を参照すると、実施形態による鳥害防止具10は、基板11から末広がり状に林立した複数の針体12を有する防止具本体1と、針体12が挿入される規制孔2hを開口すると共に、複数の針体12を横断した状態で、複数の針体12と連結したバー部材2で構成している。
【0051】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させるときは、バー部材2を針体12の先端部側に向かって移動することで、複数の針体12を閉角できる(図2(A)参照)。これにより、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過できる。
【0052】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させた後に、バー部材2を針体12の基端部側に向かって移動することで、複数の針体12を開角できる(図2(B)参照)。図1又は図2(B)及び図4の右側に示した状態では、複数の針体12を開角しているので、鳥類の営巣を困難にできる。
【0053】
(防止具本体の構成)
次に、実施形態による防止具本体1の構成を説明する。図1又は図2を参照すると、基板11は、矩形に開口した凹部11aと複数の連結ピン11pを有している。
【0054】
図1を参照すると、凹部11aは、基板11の上面から、基板11の長手方向に沿って穿設している。凹部11aには、複数の針体12の基端部を差し込みできる。図1又は図2を参照すると、連結ピン11pは、基板11の側面から挿入できる。そして、連結ピン11pは、針体12の基端部と回動自在に連結している。これにより、防止具本体1は、複数の針体12を開角した状態と、複数の針体12を閉角した状態に可変できるように、複数の針体12を揺動できる。
【0055】
(針体の構成)
次に、実施形態による針体12の構成を説明する。図1から図5を参照すると、複数の針体12は、一対の切り欠き部12a・12aを両端部に有している。一対の切り欠き部12a・12aは、相反する向きに切り欠いている。又、一対の切り欠き部12a・12aは、針体12の基端部側に切り欠いている。
【0056】
図2を参照して、バー部材2を針体12の基端部側に向かって移動すると、一対の切り欠き部12a・12aには、バー部材2の両端部の規制孔2h・2hと係合できる。これにより、複数の針体12に対して、バー部材2を所定の位置で停止できる。そして、複数の針体12が開角した状態を維持できる。
【0057】
図1から図4を参照すると、中央部の針体12は、半球状の突起12bを一方の側面から突出している。突起12bは、針体12の先端部側に配置している。図2(B)に示した状態から、バー部材2を針体12の先端部側に向かって移動すると、複数の針体12を閉角できる。バー部材2が突起12bを乗り越えると、バー部材を所定の位置で停止できる。これにより、複数の針体12が閉角した状態を維持できる。
【0058】
図1又は図2(B)を参照して、複数の針体12は、バー部材2が針体12の基端部側に向かって移動した状態で、複数の針体12の先端部が上方に向かって突出可能に、針体12が延びる方向に対して屈曲していることが好ましい。これにより、鳥類が鳥害防止具10に飛来することを抑制できる。
【0059】
(腕金取り付け金具の構成)
次に、実施形態による腕金取り付け金具3の構成を説明する。図1から図5を参照すると、腕金取り付け金具3は、一組の把持片3a・3bと連結片3cを有している。一組の把持片3a・3bは、所定の間隔を設けて略平行に配置されている。一組の把持片3a・3bには、腕金Aをその側面側から導入できる。連結片3cは、一組の把持片3a・3bの基端部同士を連結している。
【0060】
図1から図5を参照すると、腕金取り付け金具3は、一方の把持片3aから立設した支持部31を有している。実体として、支持部31は、円柱部材で構成している。支持部31は、基板11をその底部側から支持している。
【0061】
一方、図1から図5を参照すると、腕金取り付け金具3は、他方の把持片3bから突出した把持部32を有している。実体として、把持部32は、連結片3cの外面に溶接で接合した矩形板で構成している(図3(A)参照)。把持部32は、間接活線工事用の絶縁操作棒5で把持できる(図7又は図8参照)。
【0062】
図1から図5を参照すると、腕金取り付け金具3は、回動軸33s、ボルト部材33、及び、一つ以上のナット部材Nを更に備えている。回動軸33sは、その両端部を一方の把持片3aに形成した折り曲げ片と回動自在に連結している。ボルト部材33は、その頭部を回動軸33sにT字状に接合している。ナット部材Nは、ボルト部材33のねじ部と螺合できる。
【0063】
図1又は図3(D)を参照すると、他方の把持片3bは、先端縁から切り欠いた切り欠き部33dを有している。切り欠き部33dには、ボルト部材33を外周方向から導入できる。
【0064】
図3又は図5を参照して、切り欠き部33dにボルト部材33を導入した状態から、ナット部材Nを他方の把持片3bに締結することで、腕金取り付け金具3を腕金Aに固定できる。
【0065】
[鳥害防止具の作用]
次に、実施形態による鳥害防止具10の操作手順を説明しながら、鳥害防止具10の作用及び効果を説明する。
【0066】
最初に、図2(A)又は図3(A)を参照して、鳥害防止具10は、防止具本体1を腕金取り付け金具3に固定した状態で、バー部材2を針体12の先端部側に向かって移動し、複数の針体12が閉角しておくことが好ましい。
【0067】
次に、絶縁操作棒5を用いて(図6又は図7参照)、腕金取り付け金具3に設けた把持片24を把持し、腕金取り付け金具3付き鳥害防止具10を上昇させることで、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過できる(図9参照)。
【0068】
又、図4を参照して、ボルト部材33を起立した状態で、一対の把持腕5a・5bで把持部32を把持する。次に、絶縁操作棒5を操作して、一組の把持片3a・3bの間に、腕金Aをその側面側から導入する。
【0069】
次に、図5を参照して、ボルト部材33を時計方向に回動して、ボルト部材33の先端部側を切り欠き部33dに導入する(図3(D)参照)。次に、図5を参照して、ボルト部材33にナット部材Nを締結することで、一組の把持片3a・3bで腕金Aを挟持できる。
【0070】
次に、図6を参照して、腕金取り付け金具3を腕金Aに固定後は、鉤状のフック工具(いわゆる、バインド打ち器)を先端部に有する絶縁操作棒(図示せず)を用いて、バー部材2を針体12の基端部側に向かって移動することで、複数の針体12が閉角した状態を維持できる。これにより、鳥類の飛来を防止でき、鳥害を防止できる。なお、図6の右側は、複数の針体12が閉角した状態を示している。
【0071】
図1から図6を参照すると、実施形態による鳥害防止具10は、基板11から末広がり状に林立した複数の針体12を有する防止具本体1と、針体12が挿入される規制孔2hを開口すると共に、複数の針体12を横断した状態で、複数の針体12と連結したバー部材2で構成している。
【0072】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させるときは、バー部材2を針体12の先端部側に向かって移動することで、複数の針体12を閉角できる(図2(A)参照)。これにより、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を容易に通過できる。
【0073】
図9を参照して、一組の縁線We・Weの間に鳥害防止具10を通過させた後に、バー部材2を針体12の基端部側に向かって移動することで、複数の針体12を開角できる(図2(B)参照)。図1又は図2(B)及び図4の右側に示した状態では、複数の針体12を開角しているので、鳥類の営巣を困難にできる。
【0074】
実施形態による鳥害防止具10は、バー部材2が針体12の基端部側に向かって移動した状態で、バー部材2を所定の位置で停止できる。又、実施形態による鳥害防止具10は、バー部材2が針体12の先端部側に向かって移動した状態で、バー部材2を所定の位置で停止できる。実施形態による鳥害防止具10は、複数のバー部材2が開角した状態と閉角した状態をそれぞれ維持できる。
【0075】
本発明による鳥害防止具は、次のような効果が期待できる。
(1)比較的安価な針山形の鳥害防止具を活用して、間接活線作業で容易に腕金に取り付けることができる。
(2)縁線など配設された狭いスペースでも、鳥害防止具を通過できる。
(3)鳥害防止具を腕金に取り付け後に、複数の針体を開閉できる。
(4)鳥害防止器具の取り付け時間を短縮できる。
【0076】
本発明による鳥害防止具は、九本の飛来防止棒を放射状に配置した実施形態を開示したが、これらの飛来防止棒は、増減することも考えられる。
【符号の説明】
【0077】
1 防止具本体
2 バー部材
2h 規制孔
10 鳥害防止具
11 基板
12 針体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11