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特許7205370モデル特性算出装置、モデル特性算出方法、及びプログラム
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  • 特許-モデル特性算出装置、モデル特性算出方法、及びプログラム 図1
  • 特許-モデル特性算出装置、モデル特性算出方法、及びプログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】モデル特性算出装置、モデル特性算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230110BHJP
【FI】
H02P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019084124
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020182324
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】岩井 良樹
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 紀元
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110396(JP,A)
【文献】特開2010-68627(JP,A)
【文献】特開2007-274864(JP,A)
【文献】特開2013-126284(JP,A)
【文献】特開2018-207772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機または発電機のモデルの特性を算出するモデル特性算出装置であって、
前記モデルのコイルに流れる電流に関する第1の変数を算出する第1の変数算出部と、
前記モデルの回転子の角速度に関する第2の変数を算出する第2の変数算出部と、
前記第1の変数を用いて、前記モデルに生じる磁束を算出もしくは参照する磁束導出部と、
前記第1の変数及び前記第2の変数を用いて、前記モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、前記磁束導出部により算出もしくは参照された磁束を補正する磁束補正部と、
を備え、
前記第1の変数算出部は、前記電流及び前記磁束補正部により補正される磁束を用いて前記モデルのコイルのインダクタンスを算出し、前記モデルのコイルにかかる目標電圧、前記インダクタンス、前記角速度、前記モデルのコイルの抵抗、及び前記モデルに生じる起電力を用いて前記第1の変数を算出する
ことを特徴とするモデル特性算出装置。
【請求項2】
電動機または発電機のモデルの特性を算出するモデル特性算出装置であって、
前記モデルのコイルに流れる電流に関する第1の変数を算出する第1の変数算出部と、
前記モデルの回転子の角速度に関する第2の変数を算出する第2の変数算出部と、
前記第1の変数及び前記第2の変数と、前記第1の変数及び前記第2の変数を用いて前記モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように補正された前記モデルに生じる磁束である補正後の磁束とが対応付けられた情報を記憶するメモリと、
前記情報を参照して、前記第1の変数算出部により算出された第1の変数及び前記第2の変数算出部により算出された第2の変数に対応する補正後の磁束を取得する磁束補正部と、
を備え、
前記第1の変数算出部は、前記磁束補正部により取得される補正後の磁束を用いて前記モデルのインダクタンスを算出し、前記モデルのコイルにかかる目標電圧、前記インダクタンス、前記角速度、前記モデルのコイルの抵抗、及び前記モデルに生じる起電力を用いて前記第1の変数を算出する
ことを特徴とするモデル特性算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のモデル特性算出装置であって、
前記磁束補正部は、前記モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、変数としての前記電流及び前記角速度の次数が設定されている多項式を用いて、前記磁束導出部により算出もしくは参照された磁束を補正する
ことを特徴とするモデル特性算出装置。
【請求項4】
プロセッサを備えるモデル特性算出装置において、電動機または発電機のモデルの特性を算出するモデル特性算出方法であって、
前記プロセッサは、
前記モデルのコイルに流れる電流に関する第1の変数を算出する第1の変数算出ステップと、
前記モデルの回転子の角速度に関する第2の変数を算出する第2の変数算出ステップと、
前記第1の変数を用いて、前記モデルに生じる磁束を算出もしくは参照する磁束導出ステップと、
前記第1の変数及び前記第2の変数を用いて、前記モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、前記磁束導出ステップにより算出もしくは参照された磁束を補正する磁束補正ステップと、
を有し、
前記第1の変数算出ステップは、前記磁束補正ステップにより補正される磁束を用いて前記モデルのコイルのインダクタンスを算出し、前記モデルのコイルにかかる目標電圧、前記インダクタンス、前記角速度、前記モデルのコイルの抵抗、及び前記モデルに生じる起電力を用いて前記第1の変数を算出する
ことを特徴とするモデル特性算出方法。
【請求項5】
プロセッサを備えるモデル特性算出装置において、電動機または発電機のモデルの特性を算出するためのプログラムであって、
前記プロセッサに、
磁束補正ステップにより補正される磁束を用いて前記モデルのコイルのインダクタンスを算出し、前記モデルのコイルにかかる目標電圧、前記インダクタンス、前記モデルの回転子の角速度、前記モデルのコイルの抵抗、及び前記モデルに生じる起電力を用いて前記モデルのコイルに流れる電流に関する第1の変数を算出する第1の変数算出ステップと、
前記モデルの回転子の角速度に関する第2の変数を算出する第2の変数算出ステップと、
前記第1の変数を用いて、前記モデルに生じる磁束を算出もしくは参照する磁束導出ステップと、
前記第1の変数及び前記第2の変数を用いて、前記モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、前記磁束導出ステップにより算出もしくは参照された磁束を補正する前記磁束補正ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションにおいて電動機または発電機のモデルの特性を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モデル特性算出装置として、三次元解析を用いて、電動機または発電機のモデルの特性を算出するものがある。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-7079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記モデル特性算出装置では、三次元解析を行っているため、モデルの特性を実際の電動機の特性に近づけることができるが、計算量が膨大となるため、三次元解析に多くの時間がかかるという懸念がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、電動機または発電機のモデルの特性を実際の電動機または発電機の特性に近づけるとともに、モデルの特性を算出する際の計算量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態であるモデル特性算出装置は、電動機または発電機のモデルの特性を算出するモデル特性算出装置であって、第1の変数算出部と、第2の変数算出部と、磁束導出部と、磁束補正部とを備える。
【0007】
第1の変数算出部は、モデルのコイルに流れる電流に関する第1の変数を算出する。
第2の変数算出部は、モデルの回転子の角速度に関する第2の変数を算出する。
【0008】
磁束導出部は、第1の変数を用いて、モデルに生じる磁束を算出もしくは参照する。
磁束補正部は、第1の変数及び第2の変数を用いて、モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、磁束導出部により算出もしくは参照された磁束を補正する。
【0009】
これにより、三次元解析を行うことなく、コに生じる渦電流が磁界に与える影響や回転子の角速度によりコの磁化特性が変わることを考慮してモデルの特性を算出することができるため、モデルの特性を実際の電動機の特性に近づけるとともに、モデルの特性を算出する際の計算量を低減することができる。
【0010】
また、モデル特性算出装置は、第1の変数及び第2の変数と、補正後の磁束とが対応付けられた情報を記憶するメモリを備え、磁束補正部は、メモリに記憶されている情報を参照して、第1の変数算出部により算出された第1の変数及び第2の変数算出部により算出された第2の変数に対応する補正後の磁束を取得するように構成してもよい。
【0011】
これにより、磁束を補正する際の計算量を低減することができるため、モデルの特性を算出する際の計算量をさらに低減することができる。
【0012】
また、磁束補正部は、モデルの特性が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、変数としての電流及び角速度の次数が設定されている多項式を用いて、磁束導出部により算出もしくは参照された磁束を補正するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動機または発電機のモデルの特性を実際の電動機または発電機の特性に近づけるとともに、モデルの特性を算出する際の計算量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のモデル特性算出装置の一例を示す図である。
図2】モデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態のモデル特性算出装置の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すモデル特性算出装置1は、例えば、シミュレーションにおいて、電気自動車やハイブリッド車などの車両に搭載される電動機または発電機のモデルの特性を算出するものである。
【0017】
また、モデル特性算出装置1は、プロセッサ2と、メモリ3と、入出力インターフェイス4と、入出力部5とを備える。なお、モデル特性算出装置1を構成するハードウェアは、クラウドなどを用いて実現してもよい。
【0018】
プロセッサ2は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)またはProgrammable Logic Device(PLD))などにより構成される。また、プロセッサ2は、メモリ3に記憶されているプログラムを実行することにより、電動機または発電機のモデルを構成する各構成要素(例えば、後述する、電流算出部21、磁束導出部22、トルク算出部23、鉄損算出部24、損失算出部25、トルク補正部26、角速度算出部27、鉄損補正部28、及び磁束補正部29)を実現する。なお、上記プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDigital Versatile Disc(DVD)やCompact Disc Read Only Memory(CD-ROM)などの記録媒体が販売される。また、上記プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に記録しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0019】
メモリ3は、例えば、Read Only Memory(ROM)またはRandom Access Memory(RAM)などにより構成され、上記プログラムの他に、磁束算出結果31、トルク算出結果32、及び鉄損算出結果33などを記憶する。
【0020】
磁束算出結果31は、事前に実施された算出(FEM(Finite Element Method)など)の結果を示す情報であり、電動機または発電機のモデルのコイルに流れる電流(Id,Iq)と、電動機または発動機のモデルに生じる磁束(Φd,Φq)とが対応付けられている情報である。
【0021】
トルク算出結果32は、事前に実施された算出(FEMなど)の結果を示す情報であり、電動機または発電機のモデルのコイルに流れる電流(Id,Iq)と、電動機または発電機のモデルに生じるトルク(T)とが対応付けられている情報である。
【0022】
鉄損算出結果33は、事前に実施された算出(FEMなど)の結果を示す情報であり、電動機または発電機のモデルのコイルに流れる電流(Id,Iq)と、電動機または発電機のモデルに生じる鉄損(Wi)とが対応付けられている情報である。
【0023】
入出力インターフェイス4は、ユーザにより入出力部5から入力された情報をプロセッサ2に送る。また、入出力インターフェイス4は、プロセッサ2から送られてくる情報を入出力部5に送る。
【0024】
入出力部5は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(マウスなど)、タッチパネル、ディスプレイ、プリンタなどが考えられる。
【0025】
通信インターフェイス6は、Local Area Network(LAN)やインターネットなどのネットワークと接続するためのインターフェイスである。
【0026】
図2は、電動機または発電機のモデルの一例を示す図である。なお、図2に示すモデルは、三相(U相、V相、W相)交流の電動機または発電機のモデルとする。
【0027】
図2に示すモデルは、電流算出部21と、磁束導出部22と、トルク算出部23と、鉄損算出部24と、損失算出部25と、トルク補正部26と、角速度算出部27と、鉄損補正部28と、磁束補正部29とを備える。
【0028】
電流算出部21(第1の変数算出部)は、モデルのコイルにかかる目標電圧(Vu,Vv,Vw)、モデルのコイルのインダクタンス(Ld,Lq)、モデルの回転子の電気角速度(ω)、モデルのコイルの抵抗(R)、及びモデルに生じる起電力(Ke)を用いて、モデルのコイルに流れる電流(Id,Iq)を第1の変数として算出する。例えば、電流算出部21は、目標電圧(Vu,Vv,Vw)をトルク成分と磁界成分で示すために目標電圧(Vd,Vq)に座標変換し、下記式1に示す電圧方程式を用いて、電流(Id,Id)を算出する。
【0029】
【数1】
【0030】
なお、電流算出部21は、電流(Id,Iq)及び磁束補正部29により補正される磁束(Φd´、Φq´)を用いて、インダクタンス(Ld,Lq)を算出する。また、電流算出部21は、モデルの温度に応じて、モデルのコイルの抵抗(R)及びモデルに生じる起電力(Ke)を補正してもよい。
【0031】
磁束導出部22は、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)を用いて、モデルに生じる磁束(Φd,Φq)を算出もしくは参照する。例えば、磁束導出部22は、メモリ3に記憶されている磁束算出結果31を参照して、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)に対応する磁束(Φd,Φq)を、モデルに生じる磁束(Φd,Φq)とする。あるいは、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)と、モデルに生じる磁束(Φd,Φq)の対応関係を示す情報を、メモリ3にあらかじめ記憶させておき、磁束導出部22は、当該情報を用いて電流(Id,Iq)に対応する磁束(Φd,Φq)を参照してもよい。当該対応関係は、例えば、パーミアンス法を用いて計算して得られていてもよいし、電磁場解析を用いて計算して得られていてもよい。
【0032】
トルク算出部23は、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)を用いて、モデルに生じるトルク(T)を算出する。例えば、トルク算出部23は、メモリ3に記憶されているトルク算出結果32を参照して、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)に対応するトルク(T)を、モデルに生じるトルク(T)とする。
【0033】
鉄損算出部24は、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)を用いて、モデルに生じる鉄損(Wi)を算出する。例えば、鉄損算出部24は、メモリ3に記憶されている鉄損算出結果33を参照して、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)に対応する鉄損(Wi)を、モデルに生じる鉄損(Wi)とする。
【0034】
損失算出部25は、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)及びモデルのコイルの抵抗(R)を用いて、モデルに生じる銅損(Wc)を算出する。また、損失算出部25は、角速度算出部27により算出される電気角速度(ω)を用いて、モデルに生じるメカ損(Wm)を算出する。
【0035】
トルク補正部26は、トルク算出部23により算出されるトルク(T)を電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)を用いてトルク(T´)に補正する。
【0036】
角速度算出部27(第2の変数算出部)は、トルク補正部26により補正されるトルク(T´)を用いて、モデルの回転子の電気角速度(ω)を第2の変数として算出する。
【0037】
鉄損補正部28は、角速度算出部27により算出される電気角速度(ω)及び電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)を用いて、鉄損算出部24により算出される鉄損(Wi)を鉄損(Wi´)に補正する。
【0038】
磁束補正部29は、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)及び角速度算出部27により算出される角速度(ω)を用いて、磁束導出部22により算出もしくは参照される磁束(Φd,Φq)を磁束(Φd´,Φq´)に補正する。例えば、磁束補正部29は、モデルの特性(インダクタンス(Ld,Lq)、銅損(Wc)、トルク(T)、及び鉄損(Wi)など)が実際の電動機または発電機の特性に近づくように、変数としての電流(Id,Iq)及び角速度(ω)の次数が設定されている多項式を用いて、磁束(Φd,Φq)を磁束(Φd´,Φq´)に補正する。
【0039】
このように、実施形態のモデル特性算出装置1では、電流算出部21により算出される電流(Id,Iq)及び角速度算出部27により算出される角速度(ω)を用いて、磁束導出部22により算出もしくは参照される磁束(Φd,Φq)を磁束(Φd´,Φq´)に補正している。これにより、三次元解析を行うことなく、コに生じる渦電流が磁界に与える影響や回転子の電気角速度によりコの磁化特性が変わることを考慮してモデルの特性を算出することができるため、モデルの特性(インダクタンス(Ld,Lq)、銅損(Wc)、トルク(T)、及び鉄損(Wi)など)を実際の電動機の特性に近づけるとともに、モデルの特性を算出する際の計算量を低減することができる。
【0040】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0041】
<変形例1>
電流算出部21は、電流(Id,Iq)を、第1の変数として、三相交流電流(Iu,Iv,Iw)、二相電流(Iα,Iβ)、極座標で表現される電流(I,β)、または他の座標系で表現される電流に変換してもよい。このように構成される場合、磁束導出部22、トルク算出部23、及び鉄損算出部24は、電流算出部21により変換された電流を用いて、磁束(Φd,Φq)、トルク(T)、及び鉄損(Wi)を算出する。損失算出部25は、電流算出部21により変換された電流を用いて、銅損(Wc)を算出する。また、磁束補正部29は、電流算出部21により変換された電流及び角速度算出部27により算出される角速度(ω)を用いて、磁束(Φd,Φq)を磁束(Φd´,Φq´)に補正する。
【0042】
<変形例2>
モデルは、電流算出部21の代わりに第1の変数算出部として磁束導出部22´を備え、その磁束導出部22´は、上記電圧方程式を時間で積分することで得られる磁束方程式を用いて、第1の変数として、モデルに生じる磁束(Φd,Φq)または他の座標系に変換された磁束を算出するように構成してもよい。すなわち、図2に示すモデルは、電圧方程式をベースとして全体を構成しているが、磁束方程式をベースとして全体を構成してもよい。このように構成する場合、トルク算出部23及び鉄損算出部24は、磁束導出部22´により算出された磁束を用いて、トルク(T)及び鉄損(Wi)を算出する。また、損失算出部25は、磁束導出部22´により算出された磁束を用いて、銅損(Wc)を算出する。また、磁束補正部29は、角速度算出部27により算出される角速度(ω)を用いて、磁束導出部22´により算出される磁束を補正する。
【0043】
<変形例3>
モデルは、電流算出部21の代わりに第1の変数算出部として起電力算出部を備え、その起磁力算出部は、第1の変数として、モデルに生じる起磁力(Fd,Fq)または他の座標系に変換された起磁力を算出するように構成してもよい。このように構成する場合、磁束導出部22、トルク算出部23、及び鉄損算出部24は、起電力算出部により算出された起電力を用いて、磁束(Φd,Φq)、トルク(T)、及び鉄損(Wi)を算出する。また、損失算出部25は、起電力算出部により算出された起電力を用いて、銅損(Wc)を算出する。また、磁束補正部29は、起磁力算出部により算出される起磁力及び角速度算出部27により算出される角速度(ω)を用いて、磁束を補正する。
【0044】
<変形例4>
角速度算出部27は、電気角速度(ω)を、第2の変数として、モデルの回転子の回転数、周波数、または機械角速度に変換してもよい。このように構成される場合、鉄損補正部28は、角速度算出部27により変換された回転数、周波数、または機械角速度を用いて、鉄損(Wi)を鉄損(Wi´)に補正する。また、損失算出部25は、角速度算出部27により変換された回転数、周波数、または機械角速度を用いて、メカ損(Wm)を算出する。また、磁束補正部29は、電流算出部21により算出される電流(Id、Iq)及び角速度算出部27により変換された回転数、周波数、または機械各速度を用いて、磁束を補正する。または、磁束補正部29は、電流算出部21により変換された電流(三相交流電流(Iu,Iv,Iw)、二相電流(Iα,Iβ)、極座標で表現される電流(I,β)、または他の座標系で表現される電流)及び角速度算出部27により変換された回転数、周波数、または機械各速度を用いて、磁束を補正する。または、磁束補正部29は、磁束導出部22´により算出される磁束または起電力算出部により算出される起磁力及び角速度算出部28により変換された回転数、周波数、または機械各速度を用いて、磁束を補正する。
【0045】
<変形例5>
ある動作点における第1の変数及び第2の変数と、補正後の磁束(Φd´,Φq´)との対応関係を示す情報をメモリ3に記憶させておき、磁束補正部29は、その情報を参照して、第1の変数及び第2の変数に対応する補正後の磁束(Φd´,Φq´)を取得するように構成してもよい。
【0046】
これにより、磁束(Φd,Φq)を補正する際の計算量を低減することができるため、モデルの特性を算出する際の計算量をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 モデル特性算出装置
2 メモリ
3 プロセッサ
4 入出力インターフェイス
5 入出力部
6 通信インターフェイス
21 電流算出部
22 磁束導出部
23 トルク算出部
24 鉄損算出部
25 損失算出部
26 トルク補正部
27 角速度算出部
28 鉄損補正部
29 磁束補正部
図1
図2