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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】産業車両のバッテリ温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20230110BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230110BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230110BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230110BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230110BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230110BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230110BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20230110BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230110BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230110BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230110BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20230110BHJP
   H01M 10/663 20140101ALN20230110BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/00 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/651
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/24
H01M10/663
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019171093
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048737
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】松久 朋弘
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013726(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093137(WO,A1)
【文献】特開2015-180179(JP,A)
【文献】国際公開第1997/027495(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021364(WO,A1)
【文献】特開2014-087243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H01M 10/42-10/667
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの充放電を制御するバッテリコントローラと、
前記バッテリの温度調節を行うバッテリ温度調節装置と、
前記バッテリの温度に基づいて前記バッテリ温度調節装置を制御する温調コントローラと、を備え、
前記バッテリコントローラには、前記バッテリの機能を制限する機能制限温度と、前記バッテリの充放電に最適な温度である目標温度よりも低い充電前目標温度と、が設定され、
前記バッテリコントローラは、前記バッテリの放電中に次回の充電タイミングを取得し、
前記温調コントローラは、前記充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングから前記充電タイミングにかけて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御し、
前記バッテリコントローラは、前記バッテリの充電毎に変化する前記バッテリの内部抵抗による温度変化差分を充電前目標温度に反映させ、
直近の充電時における内部抵抗により変化した温度変化差分を、次回の充電時の温度変化差分として前記充電前目標温度に反映させることを特徴とする産業車両のバッテリ温度調節システム。
【請求項2】
車体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの充放電を制御するバッテリコントローラと、
前記バッテリの温度調節を行うバッテリ温度調節装置と、
前記バッテリの温度に基づいて前記バッテリ温度調節装置を制御する温調コントローラと、を備え、
前記車体は荷台を備え、
前記バッテリコントローラには、前記バッテリの機能を制限する機能制限温度と、前記バッテリの充放電に最適な温度である目標温度よりも低い充電前目標温度と、が設定され、
前記バッテリコントローラは、前記バッテリの放電中に次回の充電タイミングを取得し、
前記温調コントローラは、前記充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングから前記充電タイミングにかけて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御し、
前記荷台に搭載が予定される荷の重量の多寡に応じて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御する制御タイミングを変更することを特徴とする産業車両のバッテリ温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両のバッテリ温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両のバッテリ温度調節システムに関連する従来の技術として、例えば、特許文献1に開示されたバッテリ充電方法が知られている。特許文献1には、モータを備えた車両が開示されており、この車両には充電可能なバッテリが搭載されている。このバッテリへの急速充電モードでは、車両に搭載されているECUが充電開始時のバッテリ温度を検出し、充電中のバッテリ温度の上限値を設定している。そして、ECUは充電開始時のバッテリ温度と、充電電流によるバッテリの温度上昇特性に基づいて、充電中のバッテリ温度がバッテリ温度の上限値を越えないようなバッテリ充電電流の最大値を決定する。ECUはバッテリ充電電流の最大値に基づいてバッテリを充電する。
【0003】
ところで、産業車両が港湾等でコンテナの荷役を行う無人搬送車の場合、無人搬送車は周回軌道において予め定められた荷役を行う。つまり、周回軌道におけるコンテナの荷役はほぼルーティン化されている。バッテリを搭載する電動式の無人搬送車では、バッテリの充電が必要であるが、荷役のルーティンを狂わせないように適切に充電を行うことが好ましい。通常、バッテリには、バッテリの機能を制限する機能制限温度がバッテリの上限温度として設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-145213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンテナの荷役を行う無人搬送車の場合、充電時においてバッテリの温度が上限温度を越えそうな場合には、充電電流を抑制してバッテリの温度上昇を抑制するので、充電時間が長くなる。とりわけ、急速充電時にはバッテリの温度が上限温度を越えやすくなり、充電時間が長くなりやすい。また、充電が終了してもバッテリの温度が上限温度に達している場合には、機能制限を受けて直ちに放電できないため、バッテリの温度が下がるまで無人搬送車は稼働不可の状態が続く。このように、充電時間が長くなることや無人搬送車の稼働不可の状態の発生は、荷役のルーティンを狂わせるという問題がある。一方、特許文献1に開示されたバッテリへの充電では、ECUが上限温度未満で充電する充電最大電流を決定し、充電開始後に充電最大電流を制御するが、上記の問題を解決することはできない。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、予め設定された充電タイミングで充電を可能とするとともに充電時に機能制限を確実に回避することができる産業車両のバッテリ温度調節システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体に搭載されたバッテリと、前記バッテリの充放電を制御するバッテリコントローラと、前記バッテリの温度調節を行うバッテリ温度調節装置と、前記バッテリの温度に基づいて前記バッテリ温度調節装置を制御する温調コントローラと、を備え、前記バッテリコントローラには、前記バッテリの機能を制限する機能制限温度と、前記バッテリの充放電に最適な温度である目標温度よりも低い充電前目標温度と、が設定され、前記バッテリコントローラは、前記バッテリの放電中に次回の充電タイミングを取得し、前記温調コントローラは、前記充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングから前記充電タイミングにかけて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御し、前記バッテリコントローラは、前記バッテリの充電毎に変化する前記バッテリの内部抵抗による温度変化差分を充電前目標温度に反映させ、直近の充電時における内部抵抗により変化した温度変化差分を、次回の充電時の温度変化差分として前記充電前目標温度に反映させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、バッテリコントローラは、バッテリの放電中に次回の充電タイミングを取得し、取得された充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングを設定する。温調コントローラは、前記充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングから充電タイミングにかけてバッテリの温度が前記充電前目標温度になるようにバッテリ温度調節装置を制御する。このため、充電タイミングでは、バッテリの温度はバッテリ温度調節装置によりバッテリの目標温度よりも低い充電前目標温度となる。よって、充電タイミングからバッテリが急速充電されても、バッテリはバッテリの目標温度よりも低い充電前目標温度から温度上昇する。したがって、バッテリは、バッテリの機能を制限する機能制限温度まで温度上昇することはない。つまり、充電前にバッテリ温度を目標温度よりも低い充電前目標温度にしておくことで、バッテリの充電時に機能制限を回避することができる。その結果、産業車両の効率的な運用を維持することができる。
【0009】
また、充電毎に増大するバッテリの内部抵抗による温度変化差分が、充電前目標温度に反映される。したがって、充電時のバッテリの温度上昇分に内部抵抗による温度変化差分が加算されても、バッテリの温度はバッテリの機能を制限する機能制限温度まで温度上昇することはない。
【0010】
また、直近の充電における温度変化差分を計測しておき、計測された温度変化差分を次回の充電時における内部抵抗による温度変化差分として予測する。直近に計測された温度変化差分を用いるため、次回の充電時における内部抵抗による温度変化差分の予測値として精度が良い。
【0011】
また、本発明は、車体に搭載されたバッテリと、前記バッテリの充放電を制御するバッテリコントローラと、前記バッテリの温度調節を行うバッテリ温度調節装置と、前記バッテリの温度に基づいて前記バッテリ温度調節装置を制御する温調コントローラと、を備え、前記車体は荷台を備え、前記バッテリコントローラには、前記バッテリの機能を制限する機能制限温度と、前記バッテリの充放電に最適な温度である目標温度よりも低い充電前目標温度と、が設定され、前記バッテリコントローラは、前記バッテリの放電中に次回の充電タイミングを取得し、前記温調コントローラは、前記充電タイミングの所定時間前の充電前タイミングから前記充電タイミングにかけて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御し、前記荷台に搭載が予定される荷の重量の多寡に応じて前記バッテリの温度が前記充電前目標温度になるように前記バッテリ温度調節装置を制御する制御タイミングを変更することを特徴とする。
この発明では、荷台に搭載される荷の重量が予め把握できる場合には、温調コントローラは荷の重量の多寡によってバッテリの温度が充電前目標温度になるようにバッテリ温度調節装置を制御する制御タイミングを変更する。荷の重量の多寡によって変更される充電タイミングに合わせてバッテリを冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め設定された充電タイミングで充電を可能とするとともに充電時に機能制限を確実に回避することができる産業車両のバッテリ温度調節システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るバッテリ温度調節システムが適用されるコンテナ用無人搬送車のコンテナターミナルの概要図である。
図2】コンテナ用無人搬送車の側面図である。
図3】コンテナ用無人搬送車のバッテリ温度調節システムのブロック構成図である。
図4】コンテナ用無人搬送車のバッテリ温度調節システムによるバッテリの温度調節を説明するグラフ図である。
図5】充電回数と内部抵抗による温度上昇の関係を模式的に示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の産業車両のバッテリ温度調節システムについて図面を参照して説明する。本実施形態では、港湾設備としてのコンテナターミナルにおいて稼働する産業車両としてコンテナ用無人搬送車を例示し、コンテナ用無人搬送車のバッテリ温度調節システムを説明する。
【0015】
図1に示すコンテナターミナル10は、船舶としてのコンテナ船11が接岸可能な岸壁12を有する。コンテナ船11は、多数のISO規格コンテナ(以下、「コンテナ」と表記する)Cを積載可能な船体を有し、舷側と岸壁12とを対向した状態で接岸可能である。コンテナターミナル10には、接岸状態のコンテナ船11との間でコンテナCの受け渡しを行う荷移載機としてのガントリークレーン13が岸壁12に沿って配設されている。ガントリークレーン13は岸壁12に対して平行に往復走行自在である。
【0016】
コンテナターミナル10は、コンテナCを一時保管するための領域としてのコンテナヤード14を備えている。コンテナヤード14には、コンテナCの荷役を行う荷移載機としてのラバータイヤクレーン15が備えられている。
【0017】
コンテナターミナル10は、コンテナ用無人搬送車17の走行経路16を備えている。走行経路16は、ガントリークレーン13とラバータイヤクレーン15との間にてコンテナ用無人搬送車17を一方向へ循環走行させるための経路である。コンテナターミナル10には、コンテナ用無人搬送車17の運行を制御する運行制御装置18が管制塔19に備えられている。産業車両としてのコンテナ用無人搬送車17の構成は後述する。運行制御装置18は、コンテナ用無人搬送車17と無線通信可能であり、コンテナ用無人搬送車17に対して走行経路16に沿って走行するように指示する。
【0018】
走行経路16におけるガントリークレーン13の陸側と対向する位置は、荷移載位置である停車位置P1である(図1を参照)。ガントリークレーン13によりコンテナCを移載するとき、コンテナ用無人搬送車17は停車位置P1に停車する。ガントリークレーン13が走行可能であるため、停車位置P1は、ガントリークレーン13の位置に応じて移動する。
【0019】
走行経路16におけるラバータイヤクレーン15の陸側と対向する位置は、荷移載位置である停車位置P2である(図1を参照)。ラバータイヤクレーン15によるコンテナCの移載を行うとき、コンテナ用無人搬送車17は停車位置P2に停車する。ラバータイヤクレーン15が走行可能であるため、停車位置P2は、ラバータイヤクレーン15の位置に応じて移動する。本実施形態では、コンテナトレーラー(図示せず)の走行経路Lが走行経路16と平行に設定されている(図1を参照)。
【0020】
次に、本実施形態のコンテナ用無人搬送車17について説明する。図2に示すように、コンテナ用無人搬送車17の車体20には、コンテナCを搭載可能とする荷台21および車体20を支持する複数の駆動輪22が備えられている。各駆動輪22には走行モータとしての電動モータ23が備えられている。コンテナ用無人搬送車17は電動モータ23の駆動力の伝達を受けることにより走行する。
【0021】
コンテナ用無人搬送車17の車体20には、バッテリ24と、バッテリ温度調節装置25と、コントローラ27と、通信部28と、電力変換装置29と、が搭載されている。バッテリ24は電動モータ23へ電力供給を可能とするほか、外部電源との接続により充電可能である。バッテリ24は、例えば、リチウムイオン二次電池である。バッテリ24には温度を検出する温度センサ30が備えられている。温度センサ30により検出されたバッテリ24の温度を示す信号はコントローラ27へ伝達される。
【0022】
バッテリ温度調節装置25は、バッテリ24の温度を調節する装置であり、具体的には、空調機(エアコン)であり、バッテリ24を冷風によって冷却することによりバッテリ24の温度を調節する。バッテリ温度調節装置25はバッテリ24の電力により駆動される。
【0023】
コントローラ27は、電動モータ23、電力変換装置29を含むコンテナ用無人搬送車17の各部を制御する。コントローラ27は、プログラムの実行や各種の演算処理を行う演算処理部(図示せず)およびプログラムやデータを記憶する記憶部(図示せず)を備えている。図3に示すように、本実施形態のコントローラ27では、バッテリ24の充放電を制御するバッテリコントローラとして機能するバッテリ制御部31のほか、バッテリ24の温度に基づいてバッテリ温度調節装置25を制御する温調コントローラとして機能する温調制御部32を有する。本実施形態のバッテリ温度調節システムは、バッテリ24と、バッテリ温度調節装置25と、バッテリ制御部31と、温調制御部32と、温調コントローラと、を備えている。
【0024】
バッテリ制御部31は、バッテリ24の温度に応じて充放電時の電流を制御する。図4に示すように、バッテリ制御部31には、バッテリ24の上限温度である機能制限温度Thおよび目標温度Ttが設定されている。図4は急速充電および放電時のバッテリ24の温度変化を模式的に示すグラフのほか、バッテリ24の残容量(SOC)の変化を模式的に示すグラフである。
【0025】
バッテリ制御部31は、充電時にバッテリ24の温度が機能制限温度Thに達すると、バッテリ制御部31は充電時の電流を抑制して、バッテリ24の温度上昇を抑制する。また、バッテリ制御部31は、機能制限温度Thに達した状態ではバッテリ24の放電できないようにバッテリ24を制御する。つまり、機能制限温度Thに達した状態では、バッテリ24の温度が上昇しないようにバッテリ24の機能制限が行われる。目標温度Ttは、バッテリ24の充放電に最適な温度である。バッテリ24を目標温度Ttで充放電することにより、充放電時のバッテリ24の劣化は最小限にとどめられる。
【0026】
バッテリ制御部31は、バッテリ24の残容量(SOC:state of charge)を監視している。本実施形態では、バッテリ制御部31は、例えば、放電が可能な残容量を20~95%と設定している。したがって、バッテリ制御部31は、放電によって残容量が20%になると充電タイミングtcであることを認識する(図4を参照)。バッテリ制御部31は、温度センサ30の検出結果の伝達を受けることにより、バッテリ24の温度を監視しており、温度センサ30の検出結果は、バッテリ制御部31から温調制御部32に伝達される。
【0027】
次に、温調制御部32について説明する。温調制御部32は、温度センサ30によって検出されたバッテリ24の温度に応じて、バッテリ温度調節装置25を制御する。具体的には、温調制御部32は、バッテリ24の機能制限温度Thに近づくにつれてバッテリ24を強く冷却するようにバッテリ温度調節装置25を作動させる。また、バッテリ24の温度が目標温度Tt以下の場合には、バッテリ24の冷却を停止するか、あるいはバッテリ24の冷却を弱めるようにバッテリ温度調節装置25を制御する。因みに、急速充電では、図4に示すようにバッテリ24の温度上昇は、通常の充電と比較して急激であり、バッテリ温度調節装置25はバッテリ24を冷却する。
【0028】
車体20に搭載された通信部28は、運行制御装置18と無線通信により通信する機能を備えており、コントローラ27と接続されている。したがって、運行制御装置18からの運行指令を通信部28が受けると、コントローラ27は、コンテナ用無人搬送車17が運行指令に基づいて走行経路16を走行するように各部を制御する。電力変換装置29はインバータ(図示せず)を備えており、バッテリ24の直流電力を交流電力に変換して電動モータ23に供給する。
【0029】
ところで、本実施形態のコンテナ用無人搬送車17は走行経路16を周回するが、走行経路16におけるコンテナ用無人搬送車17の作業(走行、荷役のための停車)はほぼルーティン化されている。具体的には、例えば、走行経路16における走行と、停車位置P1、P2におけるコンテナCの移載(荷役)は、荷役すべきコンテナCが存在する限り、各周回においてほぼ同じ動作となる。つまり、走行経路16の周回におけるコンテナ用無人搬送車17によるコンテナCの荷役はほぼルーティン化されていると言える。
【0030】
走行経路16におけるコンテナCの荷役はほぼルーティン化されているから、例えば、コンテナ用無人搬送車17が走行経路16を1周したときに減少するバッテリ24の残容量は、どの周回でもほぼ一定である。したがって、コンテナ用無人搬送車17がバッテリ満充電の状態から稼働してバッテリ24の残容量が20%となる充電タイミングtcが何周目(又は充電後何分後)になるかは予め判明している。バッテリ制御部31において予め判明している充電タイミングtcは周回数(又は時間)によって設定されている。
【0031】
図4に示すように、バッテリ24が急速充電後にコンテナ用無人搬送車17の周回によって放電され、バッテリ温度調節装置25が作動されると、バッテリ24は冷却風を受けるので、バッテリ24の温度は低下する。バッテリ温度調節装置25は、バッテリ24の温度が目標温度Ttになるように温調制御部32により制御される。バッテリ24の温度が目標温度Ttになると、温調制御部32はバッテリ温度調節装置25を停止、もしくは作動を抑制する。バッテリ24が目標温度Ttで放電される状態では、バッテリ24の劣化が最小限に抑制される。
【0032】
本実施形態では、バッテリ制御部31は、放電中に次回の充電タイミングtcを取得するとともに、充電タイミングtcの所定時間前のタイミングである充電前タイミングtbを設定する。温調制御部32は、充電前タイミングtbから充電タイミングtcにかけてバッテリ24の温度が充電前目標温度Tuになるようにバッテリ温度調節装置25を制御する。したがって、バッテリ24の温度が目標温度Tt付近であっても、温調制御部32は、充電前タイミングtbから充電タイミングtcにかけてバッテリ24を充電前目標温度Tuまで冷却するようにバッテリ温度調節装置25を制御する。つまり、温調制御部32は、充電前タイミングtbになると、バッテリ24の温度が充電タイミングtcにおいて充電前目標温度Tuになるようにバッテリ温度調節装置25を制御する。充電タイミングtcと充電前タイミングtbとの時間差は、バッテリ温度調節装置25のバッテリ24に対する冷却能力等によって設定される。
【0033】
充電前目標温度Tuは、目標温度Ttよりも低い温度であり、充電タイミングtcにおいて急速充電が行われても、バッテリ24の温度が機能制限温度Thに確実に達しないようにするための設定温度である。充電前タイミングtbにバッテリ24の温度をさらに下げておくことで、急速充電時において最も上昇したバッテリ24の温度と機能制限温度Thとの間に余裕が生じる。充電前目標温度Tuは、機能制限温度Thおよび目標温度Ttとともにバッテリ制御部31に設定されている温度である。目標温度Ttと充電前目標温度Tuとの温度差は、バッテリ24の仕様、コンテナ用無人搬送車17の運用状況等によって適宜設定される。このように、本実施形態では、バッテリ24が予め設定された充電タイミングtcで急速充電されるので、急速充電前にバッテリ24の目標温度Ttよりも低い充電前目標温度Tuまでバッテリ24の温度を調節できる。
【0034】
図4における実線のグラフG1は、バッテリ温度調節システムにより充電タイミングtcにおいて充電前目標温度Tuとなるようにバッテリ24を充電前タイミングtbから冷却した場合のバッテリの温度変化を示すグラフである。図4における破線のグラフG2は、バッテリ24を充電前タイミングtbから冷却しない場合のバッテリの温度変化を示すグラフである。図4における実線のグラフG3は残容量(SOC)の変化を示すグラフである。
【0035】
ところで、バッテリ24が急速充電の回数を重ねる度に、バッテリ24の内部抵抗は変化する。一般的には、バッテリ24が急速充電の回数を重ねることで劣化するに伴い、バッテリ24の内部抵抗は増加する。バッテリ24の内部抵抗の増大による温度変化差分△Tが生じるので、図5に示すように、充電回数が増えると、温度変化差分△Tは増大する。そこで、本実施形態では、バッテリ制御部31は、バッテリ24の急速充電毎の温度変化差分△Tを取得して記憶する。N回目の急速充電時の温度変化差分△T(n)から(N-1)回目の急速充電時の温度変化差分△T(n-1)を差し引いた差δを求め、温度変化差分(△T(n)+δ)を、バッテリ制御部31は(N+1)回目の急速充電時の温度変化差分△T(n+1)として予測する。
【0036】
このため、直近の急速充電時の温度変化差分△Tを、次回の内部抵抗の増大による急速充電時の温度変化差分△Tと予測し、充電前目標温度Tuに温度変化差分△Tを反映させることで、充電タイミングtcにおいて急速充電が行われても、バッテリ24の温度が機能制限温度Thに確実に達しない。具体的には、バッテリ24の充電回数が増える毎の温度変化差分△Tを考慮して次回の充電前目標温度Tuを前回の充電前目標温度Tuよりも温度を下げて設定すればよい。
【0037】
なお、本実施形態では、温調制御部32は、荷台21に搭載が予定されるコンテナCの重量の多寡に応じてバッテリ24の温度が充電前目標温度Tuになるようにバッテリ温度調節装置25を制御する制御タイミングを変更する。例えば、コンテナCの重さが想定されている重さよりも重いとき、バッテリ24の電力の消費は増大するので、バッテリ24の充電タイミングtcが当初の見込みよりも早まる。このため、温調制御部32は、バッテリ24の温度が充電前目標温度Tuになるようにするためのバッテリ温度調節装置25に対する制御タイミングを早くする。
【0038】
逆に、コンテナCが想定されている重さよりも軽いとき、バッテリ24の充電タイミングtcが当初の見込みよりも遅くなる。このため、温調制御部32は、バッテリ24の温度が充電前目標温度Tuになるようにするためのバッテリ温度調節装置25に対する制御タイミングを遅らせる。なお、コンテナCの重量は、ガントリークレーン13やラバータイヤクレーン15がコンテナCを移載するときに取得される。取得されたコンテナCの重量は、運行制御装置18に伝達され、通信部28を通じてコントローラ27へ伝達される。
【0039】
次に、本実施形態のコンテナ用無人搬送車17のバッテリ温度調節システムは以下の作用効果を奏する。
(1)バッテリ制御部31は、バッテリ24の放電中に次回の充電タイミングtcを取得し、取得された充電タイミングtcの所定時間前の充電前タイミングtbを設定する。温調制御部32は、充電前タイミングtbから充電タイミングtcにかけてバッテリ24の温度が充電前目標温度Tuになるようにバッテリ温度調節装置25を制御する。充電タイミングtcでは、バッテリ24の温度はバッテリ温度調節装置25によりバッテリ24の目標温度Ttよりも低い充電前目標温度Tuとなる。このため、バッテリ24が引き続き急速充電されても、バッテリ24は目標温度Ttよりも低い充電前目標温度Tuから温度上昇する。したがって、バッテリ24は、バッテリ24の機能を制限する機能制限温度Thまで温度上昇することはない。つまり、充電前にバッテリ温度を目標温度Ttよりも低い充電前目標温度Tuにしておくことで、バッテリ24の充電時に機能制限を回避することができる。その結果、コンテナ用無人搬送車17の効率的な運用を維持することができる。コンテナ用無人搬送車17によるコンテナCの荷役のルーティンを狂わせないように適切に急速充電を行うことが可能である。
【0040】
(2)急速充電毎に増大するバッテリ24の内部抵抗による温度変化差分△Tが、充電前目標温度Tuに反映される。したがって、急速充電時のバッテリ24の温度上昇分に内部抵抗による温度変化差分△Tが加算されても、バッテリ24の温度はバッテリ24の機能を制限する機能制限温度Thまで温度上昇することはない。
【0041】
(3)直近の充電における温度変化差分△Tを計測しておき、計測された温度変化差分△Tを次回の充電時における内部抵抗による温度変化差分として予測する。直近に計測された温度変化差分を用いるため、次回の充電時における内部抵抗による温度変化差分の予測値として精度が良い。
【0042】
(4)荷台21に搭載されるコンテナCの重量が予め把握できる場合には、温調制御部32はコンテナCの重量の多寡によってバッテリ温度調節装置25に対する制御タイミングを変更する。例えば、コンテナCの重量が通常よりも重い場合には、充電タイミングtcが早まるので、早めにバッテリ24の冷却を開始する。逆に、コンテナCの重量が通常よりも軽い場合には、バッテリ24の冷却を遅らせて開始する。コンテナCの重量の多寡によって変更される充電タイミングtcに合わせてバッテリ24を冷却することができる。
【0043】
上記の実施形態では、急速充電前にバッテリ24を必ず充電前目標温度Tuなるように冷却した。しかし、急速充電後のコンテナ用無人搬送車17がバッテリ24の機能制限を受けてもよい場合には、急速充電前にバッテリ24を充電前目標温度Tuとなるようにバッテリ24を冷却しなくてもよい。急速充電後のコンテナ用無人搬送車17がバッテリ24の機能制限を受けてもよい場合として、例えば、コンテナCを搭載せずに低速で走行する場合等が考えられる。急速充電後のコンテナ用無人搬送車17がバッテリ24の機能制限を受けてもよい場合には、急速充電前のバッテリ24を充電前目標温度Tuにする冷却を行わないことで、コンテナCの荷役のルーティンを狂わせることなくバッテリ24の電力の消費を低減できる。
【0044】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0045】
○ 上記の実施形態では、コントローラが、バッテリコントローラとして機能するバッテリ制御部のほか、温調コントローラとして機能する温調制御部を有したが、この限りではない。例えば、バッテリコントローラと温調制御部とが一体的に構成されてもよい。この場合、バッテリと、バッテリ温度調節装置と、一体的に構成されたバッテリコントローラおよび温調制御部と、を有するバッテリユニットとしてもよい。
○ 上記の実施形態では、直近の急速充電毎の温度変化差分を求め、直近の急速充電に基づく温度変化差分を次に予定される急速充電時の内部抵抗による温度変化差分としたが、この限りではない。例えば、直近の急速充電時の温度上昇結果から充電前目標温度が低すぎたと判断できる場合には、バッテリコントローラは、その温度上昇結果に基づいて、次の急速充電前の充電前目標温度を高くする補正を行うようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、バッテリ温度調節装置は空調機(エアコン)としたがこれに限定されない。バッテリ温度調節装置は、例えば、バッテリを冷媒によって直接的に温度調節する液冷式のバッテリ温度調節装置であってもよく、バッテリの温度を調節することが可能であれば特にその形式・構造は問われない。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてのコンテナ用無人搬送車のバッテリ温度調節システムを例示して説明したがこの限りではない。例えば、産業車両としてのフォークリフトのバッテリ温度調節システムとしてもよい。この場合、フォークリフトがコンテナ用無人搬送車と同様にほぼルーティン化された動作を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
10 コンテナターミナル
17 コンテナ用無人搬送車(産業車両)
20 車体
21 荷台
23 電動モータ
24 バッテリ
25 バッテリ温度調節装置
27 コントローラ
31 バッテリ制御部(バッテリコントローラ)
32 温調制御部(温調コントローラ)
Th 機能制限温度
Tt 目標温度
Tu 充電前目標温度
tc 充電タイミング
△T 温度変化差分
図1
図2
図3
図4
図5