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特許7205499連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材及び連続焼鈍炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材及び連続焼鈍炉
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20230110BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20230110BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C21D9/56 101J
C21D1/00 112J
C21D1/00 115Z
F27D7/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019570767
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004141
(87)【国際公開番号】W WO2019156100
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018019476
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522123566
【氏名又は名称】マフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】田口 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晃啓
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104088910(CN,A)
【文献】特開2016-183784(JP,A)
【文献】特開2006-010107(JP,A)
【文献】実開昭54-079547(JP,U)
【文献】特開2014-020464(JP,A)
【文献】実開平02-011154(JP,U)
【文献】特開平04-226211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/56
C21D 1/00
F27D 7/06
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍炉のロール挿通孔とロール軸受との間に設置されるロール軸部断熱部材であって、
ロール外周面に接するか又は近接する、45μm以上のショット含有率が3%以下である無機繊維ブランケットを有し、該無機繊維ブランケットの1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上であり、
前記ロール軸部断熱部材は、炉壁又はロール軸受支持部材と結合されるロール外周面を取り巻くドラム部をもつケーシングを有しており、前記無機繊維ブランケットは該ケーシングのドラム部の内周面に沿って保持されており、
前記無機繊維ブランケットは板状であり、複数枚の無機繊維ブランケットが、各々の板面をドラム部の軸心線方向と平行方向として、ドラム部内周面に沿って周回方向に配列設置されており、
前記ケーシングがロール軸とロール軸部断熱部材の距離を調整するための締め付け機構を有する、連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【請求項2】
前記無機繊維ブランケットにおいて、以下の測定条件での最大荷重が5.0kgf以上である、請求項1に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
[測定条件]
無機繊維ブランケットサンプル(縦210mm、横80mm)に対して、横方向の中央部、先端から40mmの位置にコルクボーラー(内径14mm)を用いて貫通部を作成し、該貫通部に内径12mmの棒を通し、該貫通部からより離れた横端面を固定した上で、該棒を水平に保ちつつ、サンプルの縦方向に上昇させ、破断する荷重(最大荷重)を測定する。
【請求項3】
前記無機繊維ブランケットはアルミナ繊維ブランケットである、請求項1に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【請求項4】
前記アルミナ繊維ブランケットを構成するアルミナ繊維のムライト結晶率が85%以下である、請求項に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のロール軸部断熱部材を備えた連続焼鈍炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材に係り、特にロールの端部側のロール軸部とロール挿通孔との間から軸受けへ熱が伝わること及び/又はロール軸受から漏れ出る潤滑材がロール軸に沿って炉内に到達することを防止するためのロール軸部断熱部材に関する。また、本発明は、このロール軸部断熱部材を有する連続焼鈍炉に関する。
【背景技術】
【0002】
連続焼鈍炉は、還元雰囲気にした炉内部にコイル状の鋼板を順次受け入れ、搬送ロール(ハースロール)によって搬送しつつ、連続して焼鈍する炉である。特許文献1の通り、鋼板を搬送するロールの長手方向(ロール軸心方向)の両端部は、それぞれ炉壁に設けられたロール挿通孔を通って炉外に延出し、軸受けによって回転自在に支承されている。炉体と軸受けとの間には、炉内ガスの流出を防止するための筒状部材がロール端部を取り巻くように設けられている。軸受けに対しグリス等の潤滑材が供給される。
【0003】
従来、連続焼鈍処理設備等の炉内ライニングには、軽量の耐火材、断熱材として優れた特性を有するセラミックファイバーが用いられている(例えば、特許文献2)。セラミックファイバーは、遠心力を利用したスピニング法や高速の圧縮空気で吹き飛ばすブローイング法によって、高温溶融状態のセラミック材料を繊維化させることにより製造される。このセラミックファイバーには、繊維になりきれない粒子状のままで残る非繊維状粒子、すなわちショットが含まれており、このショットは、粉塵の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-170254号公報
【文献】特開2006-10107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
連続焼鈍炉は、高温(例えば1000℃)まで昇温されるため、高温の炉内ガスがハースロール端部とロール挿通孔との隙間を通って軸受けまで侵入し、この熱によってグリスが蒸発したり炭化したりするか、又は高温の炉内ガスによりグリスがロール軸受から漏れ出で、ロール軸に沿って炉内に到達した結果、炉内で炭化する。これによって、炉内に煤が飛散し、搬送される鋼板に付着し、後工程のメッキ工程で不メッキ等の表面欠陥が生じていた(特許文献1の0005段落)。また、本来鋼鈑を温めるためのエネルギーが煤に取られ、加熱効率が悪化するなどの問題があった。
【0006】
特許文献1には、炉内ガスが軸受けまで侵入することを防止するためにシール円盤を設けることが記載されているが、このシール円盤の構成材料の詳細については記載されていない。
【0007】
本発明は、連続焼鈍炉の炉内の高温ガスの熱が軸受けに伝わること及び/又はロール軸受から漏れ出る潤滑材がロール軸に沿って炉内に到達することを防ぐためのロール軸部断熱部材と、このロール軸部断熱部材を備えた連続焼鈍炉とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は次の通りである。
【0009】
[1] 連続焼鈍炉のロール挿通孔とロール軸受との間に設置されるロール軸部断熱部材であって、
ロール外周面に接するか又は近接する、45μm以上のショット含有率が3%以下である無機繊維ブランケットを有し、該無機繊維ブランケットの1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上であることを特徴とする連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0010】
[2] 前記無機ブランケットにおいて、以下の測定条件での最大荷重が5.0kgf以上である、[1]に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
[測定条件]
無機ブランケットサンプル(縦210mm、横80mm)に対して、横方向の中央部、先端から40mmの位置にコルクボーラー(内径14mm)を用いて貫通部を作成し、該貫通部に内径12mmの棒を通し、該貫通部からより離れた横端面を固定した上で、該棒を水平に保ちつつ、サンプルの縦方向に上昇させ、破断する荷重(最大荷重)を測定する。
【0011】
[3] 前記無機繊維ブランケットはアルミナ繊維ブランケットである、[1]に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0012】
[4] 前記アルミナ繊維ブランケットを構成するアルミナ繊維のムライト結晶率が85%以下である、[2]に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0013】
[5] 前記ロール軸部断熱部材は、炉壁又はロール軸受支持部材と結合されるロール外周面を取り巻くドラム部をもつケーシングを有しており、前記無機繊維ブランケットは該ケーシングのドラム部の内周面に沿って保持されている、[1]~[4]のいずれかに記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0014】
[6] 前記無機繊維ブランケットはリング形であり、同軸状に積層配置された複数枚のリング形の無機繊維ブランケットが前記ケーシングに取り付けられている、[5]に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0015】
[7] 前記無機繊維ブランケットは板状であり、複数枚の無機繊維ブランケットが、各々の板面をドラム部の軸心線方向と平行方向として、ドラム部内周面に沿って周回方向に配列設置されており、
前記ケーシングがロール軸とロール軸部熱遮断部材の距離を調整するための締め付け機構を有する、[6]に記載の連続焼鈍炉のロール軸部断熱部材。
【0016】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載のロール軸部断熱部材を備えた連続焼鈍炉。
【発明の効果】
【0017】
45μm以上のショット含有率が3%以下であり、かつ1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上である無機繊維ブランケットを有するロール軸部断熱部材をロール挿通孔とロールとの間に設置することにより、炉内の熱の侵入を防ぐことができる。その結果、軸受けの昇温が抑制され、グリス炭化による煤発生が防止される。これにより、不めっき等の表面欠陥が防止されると共に、堆積した煤を除去するための炉内清掃作業の頻度を減少させることができる。
【0018】
また、ロール軸部断熱部材の材料として45μm以上のショット含有率が3%以下である無機繊維ブランケットを用いるため、炉内に無機繊維ブランケット由来の粒子状異物が混入せず、鋼板及びロールに当該異物による傷が生じない点で好ましく、また、ロール軸部熱遮断部材にロール軸が接触した状態で回転しても磨かれるのみで大きな傷がつかず、ロール軸を劣化させることがない点で好ましい。1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上無機繊維ブランケットを用いることで、高温条件下でのロールの軸ブレ等の動きに対して寸法が変化しにくく、結果としてロールと断熱部材との隙間が生じにくい点で好ましい。
【0019】
また、炉内に煤が侵入すると、本来鋼鈑を温めるためのエネルギーを煤に奪われるが、煤の侵入を防いだことで、加熱効率の低下も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る連続焼鈍炉のロール軸部付近の縦断面図である。
図2】実施の形態に係る連続焼鈍炉のロール軸部付近の縦断面図である。
図3】実施の形態に係る連続焼鈍炉のロール軸部付近の縦断面図である。
図4】実施の形態に係るロール軸部断熱部材の縦断面図である。
図5図4の一部の拡大図である。
図6】実施の形態に係るロール軸部断熱部材の正面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8図6,7のロール軸部断熱部材の製作途中を示す斜視図である。
図9図6,7のロール軸部断熱部材の製作途中を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る連続焼鈍炉1のロール軸部付近の縦断面図を示している。
【0022】
連続焼鈍炉1は、被処理鋼板を搬送するための、水平に配置された多数のロール2を備えている。ロール2は、等径の大径部2aと、該大径部2aの両端側のロール軸部2bとを有している。ロール軸部2bは、大径部2aから両端に向って徐々に径が減少するテーパ状部2cと、該テーパ状部よりも両端側の等径部2d,2e,2fを有している。等径部2d,2e,2fの直径は、この順に小さくなっている。等径部2fがベアリング3を介してロール支持部材4に支持されている。ベアリング3には、注入管(図示略)を介してグリスが供給される。
【0023】
ロール支持部材4は、炉体1に対面する第1プレート4aと、該第1プレート4aに垂直に交わる第2プレート4bと、ベアリング保持ハウジング4cとを有している。第1プレートにロール挿通口4dが設けられている。
【0024】
連続焼鈍炉1の炉体側壁10は、鉄皮11と、該鉄皮11の内側に設けられたセラミックファイバー製ライナー12とを有する。
【0025】
炉体側壁10に設けられた開口13にライナーブロック20が装着されている。このライナーブロック20は、鉄皮21と、該鉄皮21の炉内側に設けられたセラミックファイバー製ライナー22とを有する。該ライナー22及び鉄皮21を貫通するようにロール挿通孔23が設けられている。鉄皮21には、ロール挿通孔23の周縁部に、環状鉄板よりなる座板21aが固着されている。
【0026】
ロール挿通孔23は、炉内側が炉内側ほど大径となるテーパ状であり、炉外側が円筒形の等径孔となっている。ロール軸部2bは、このロール挿通孔23を通って炉外へ延出している。
【0027】
このロール軸部2bのうちロール挿通孔23から炉外へ延出した部分を囲むように筒状カバー30が設けられている。この筒状カバー30は、筒軸心方向に伸縮可能なベローズ状である。筒状カバー30の一端側に設けられた第1フランジ31がロール支持部材4の第1プレート4aにボルト及びナット等によって取り付けられている。
【0028】
カバー30の他端側に設けられた第2フランジ32が、鉄皮21の座板21aにボルト及びナットによって取り付けられている。この実施の形態では、この第2フランジ32と座板21aとの間に、ロール軸部断熱部材40のフランジ部41bが挟持されている。
【0029】
この実施の形態では、ロール軸部断熱部材40は、図4,5の通り、ケーシング41と、該ケーシング41に保持された無機繊維ブランケット42等を有する。ケーシング41は、円筒状のドラム部41aと、該ドラム部41aの一端から放射方向(外方)に張り出すフランジ部41bと、該ドラム部41aの筒軸方向の一端から内方に張り出す内向きの鍔部41cと、ドラム部41aの筒軸方向の他端にビス等により着脱可能に取り付けられた押えリング43とを有する。
【0030】
フランジ部41bに設けられたボルト挿通孔41dにボルト(図示略)が挿通される。このボルトは、筒状カバー30の第2フランジ32及び鉄皮21の座板21aにそれぞれ設けられたボルト挿通孔(図示略)にも挿通され、ナットが螺着される。これにより、フランジ部41bが第2フランジ32と座板21aとの間で挟持され、ロール軸部断熱部材40がライナーブロック20に固定される。
【0031】
無機繊維ブランケット42は、この実施の形態ではリング形(円環形)の盤状である。複数枚の無機繊維ブランケット42が同軸状に重ね合わされ、アルミナ繊維のロープ47によって縫合されて一体化され、無機繊維ブランケット積層体48とされる。この無機繊維ブランケット積層体48の積層方向の一端面が鍔部41cに重ね合わされ、他端面の外周縁が押えリング43で押えられる。これにより、無機繊維ブランケット積層体48がケーシング41に保持される。
【0032】
各無機繊維ブランケット42は、各々の内周面42aが同軸状に揃うように重ね合わされており、無機繊維ブランケット積層体48が円筒形の内孔48aを有したものとなっている。各無機繊維ブランケット42の間に、モルタルなどの不定形耐火物を付着させ、不定形耐火物層を形成させてもよい。各無機繊維ブランケット42の間に、不定形耐火物層を有することで、各無機繊維ブランケット42の間の接着強度を高める点、及び炉外で揮発したグリス又は炉外で生成した煤の炉内への侵入を防ぐ点で好ましい。また、各無機繊維ブランケット42の間に金属板等の遮蔽層を有していてもよい。各無機繊維ブランケット42の間に遮蔽層を有することで、炉外で揮発したグリス又は炉外で生成した煤の炉内への侵入を防ぐ点で好ましい。
【0033】
この無機繊維ブランケット積層体48の内孔48aにロール軸部2bが挿通されている。該内孔48aの内周面がロール軸部2b(この実施の形態では小径部2c)の外周面に弾性的に押し付けられている。
【0034】
このように構成された、ロール軸部断熱部材40を有する連続焼鈍炉1にあっては、炉内の高温ガスがロール軸部挿通孔23に入り込んで来ても、ロール軸部断熱部材40によってそれ以上ベアリング3側へ侵入することが防止される。このため、ベアリング3の昇温が抑制され、グリスの気化や炭化が防止される。
【0035】
炉内ガスの一部がロール軸部断熱部材40よりもカバー30側へ侵入したとしても、その量は少量であると共に、カバー30からの放熱によって冷却されるので、ベアリング3の昇温が抑制される。
【0036】
また、このロール軸部断熱部材40を設けたことにより、グリスの蒸発物がベアリング3からカバー30内に入り込んできても、ロール軸部断熱部材40によってそれ以上炉内側へ侵入することが防止されるので、炉内におけるグリス炭化物の生成が防止される。また、ロール軸部断熱部材40が、ロールに沿って侵入してくる液化したグリスを吸収するため、グリス炭化物の生成が防止される。
【0037】
図1では、ロール軸部断熱部材40のドラム部41aはフランジ部41bよりも炉内方向に配置されているが、図2の通り、ドラム部41aをフランジ部41bよりも炉外方向に配置されてもよい。
【0038】
また、本発明では、図3の通り、ロール軸部断熱部材40をロール支持部材4の第1プレート4aに取り付けてもよい。
【0039】
図2,3のその他の構成は図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0040】
図4,5では、無機繊維ブランケット42の板面は内孔48aの軸心線と垂直方向となっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明では、図6~9のロール軸部断熱部材40’のように、無機繊維ブランケット42’の板面をドラム部41aの軸心線と平行方向としてもよい。
【0041】
図6~9では、無機繊維ブランケット42’は、方形板状であり、ドラム部41aの内周面の周回方向に積層されている。各無機繊維ブランケット42’は、外周側の方が内周側よりも厚みが大きいものとなっている。重ね合わされた無機繊維ブランケット42’は、アルミナ繊維のロープ47によって結束されて一体化され、円筒状の無機繊維ブランケット積層体48’とされる。
【0042】
図9の通り、この円筒状無機繊維ブランケット積層体48’の外周に無機繊維シート49が巻かれ、その外周に締付けバンド50が巻かれる。この締付けバンド50の両端は、締付けロッド51のスロット(長孔)に挿通される。締付けロッド51を矢印Rの通りそのロッド軸心回りに回転させることにより、締付けバンド50の両端が該ロッド51に巻き取られ、無機繊維ブランケット積層体48’が締付けバンド50によって締め付けられる。これにより、ハースロールが膨張・収縮で変位した際、締め付けに応じて追随することができて、ロール軸とロール軸部熱遮断部材の隙間を極力小さくすることができる。締付けバンド50の外周側に無機繊維シート49が折り返されて重ね合わされる。
【0043】
この無機繊維ブランケット積層体48’も、図6,7の通り、無機繊維ブランケット積層体48と同様にケーシング41に保持される。図7の通り、締付けロッド51は、ケーシング41の鍔部41cと押えリング43との間に架け渡される。
【0044】
図6~9のその他の構成は図4,5と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0045】
上記説明では、無機繊維ブランケット積層体48,48’の内孔48aの内周面がロール軸部2bの外周面に接触するとしているが、内孔48aの内周面とロール軸部2bの外周面との間に若干(好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下)のクリアランスが存在してもよい。
【0046】
本発明では、無機繊維ブランケットはアルミナ繊維ブランケットであることが好ましい。次に、本発明で用いるのに好適な45μm以下のショット含有率が3%以下かつ無機繊維ブランケットの1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上のアルミナ繊維ブランケットについて説明する。
【0047】
連続焼鈍炉内で、鋼板傷に影響する45μm以上の粒子状異物がないことが好ましいので、アルミナ繊維ブランケットは、45μm以上のショット含有率が3%以下特に2%以下のものが好ましい。アルミナ繊維ブランケットに含まれる45μm以上のショット含有率の測定は、JIS R3311のセラミックファイバーブランケットに含まれるショット含有率の測定(ふるい JIS Z 8801の呼び寸法 212μm)に準拠して、325メッシュの45μmのふるいを用いて、測定する。
【0048】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットは、実質的に繊維径3μm以下の繊維を含まず、かつニードリング処理が施されたものが好ましい。なお、このニードルブランケットを用いることにより、耐荷重の点からも、好ましい。ここで、繊維径3μm以下の繊維を実質的に含まないとは、繊維径3μm以下の繊維が、全繊維重量の0.1wt%以下であることを表わす。
【0049】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットを構成するアルミナ繊維の平均繊維径は、5~7μmであることが好ましい。アルミナ繊維の平均繊維径が大きすぎると、ブランケットの反発力、靱性が失われ、小さすぎると、空気中に浮遊する発塵量が多くなり、繊維径3μm以下の繊維が含有される確率が高くなる。
【0050】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットを構成するアルミナ繊維のアルミナ/シリカの組成比(wt%)が、65~98/35~2の範囲にあるが好ましく、より好ましくは68~85/32~15の範囲であり、さらに好ましくは70~80/30~20であり、特に好ましくは70~76/30~24の範囲である。また、本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットを構成するアルミナ繊維のムライト結晶率(アルミナ繊維中のムライト(3Al・2SiO)の割合)は、特段の制限はないが、通常85%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは30%以下、ことさらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。ムライト結晶率は、以下のように測定される。測定サンプルを乳鉢にて粉砕し、X線回折装置(例えばRIGAKU社製)で感電圧30kv、感電流40mA、4°/分の速度で測定し、ムライトのピークである2θ=26.3°のピーク高さhを読み取る。また、同じ条件で標準品(例えばムライト標準物質(日本セラミックス協会認証標準物質JCRM-R041)又はアルミナ繊維(アルミナ:シリカ=72:28、ムライト結晶率65~75%)を1500℃で8時間にわたって加熱処理した繊維等)を測定し、2θ=26.3°のピーク高さhを読み取る。このときのムライト結晶率は以下の式で表す値となる。
ムライト結晶率 = h/h
【0051】
ムライト結晶率を上記の範囲にすることで、断熱性と加工性、クッション性を両立することができる点で好ましい。
【0052】
このようなアルミナ繊維ブランケットの一例として、三菱ケミカル株式会社製マフテック(登録商標)が挙げられる。
【0053】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットの厚みは、好ましくは、6~25mm、さらに好ましくは、7~13mmである。このアルミナ繊維ブランケットは、5℃/minで昇温し、1500℃で8時間保持した条件における収縮率(測定方法はJIS R3311に準拠)が1%未満であることが好ましい。
【0054】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットの坪量は、好ましくは、1000~3000g/m、より好ましくは、1200~2800g/mであり、特に好ましくは、1400~2500g/mである。
【0055】
本発明では、アルミナ繊維ブランケット等の無機繊維ブランケットは、以下に記載する測定方法における1000℃のサイクル試験後の残存厚みが70%以上であり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、殊更に好ましくは90%以上、特に好ましくは96%以上である。
【0056】
測定方法:無機ブランケットを縦10mm横50mmに複数枚切断したサンプルを調整し、該サンプルの切断端面を出すように並べ、該サンプルをアルミナ糸で縫合し、一体化させたサンプル(縦45mm×横50mm×高さ10mm)を作製する。該サンプルの高さが8.25mmで30分間圧縮した後、上下のプレートを1000℃まで昇温し、高さ9.5mm(開放側)から高さ7mm(圧縮側)まで圧縮することを800回繰り返す。その測定前後の残存厚みを、測定前の無機繊維ブランケット厚みに対する測定後の無機繊維ブランケット厚みの比率(%)を算出する。
【0057】
前記残存厚みが上記範囲にあることで、炉の操業時に発生する振動が加わっても無機繊維ブランケットの反発力が維持され、無機繊維ブランケット積層体48,48’の内孔48aの内周面とロール軸部外周面の間に隙間が発生せず、炉内ガスの流出が十分に防止される。
【0058】
本発明で用いるアルミナ繊維ブランケットとしては、アルミナ繊維ニードルブランケットが好ましく、アルミナ繊維ブランケットの剥離が発生しにくい点で好ましい。
【0059】
本発明で用いるアルミナ繊維ニードルブランケットにおけるニードル痕密度、すなわちマット面の単位面積(1cm)当りのニードル痕の数はマット面全体の平均値として1.0~50.0個/cm、好ましくは15.0~40.0個/cmであり、特に好ましくは20.0~35.0個/cmあることが好ましい。ニードル痕の算出方法は、50×50mmの正方形に切断してサンプルとし、サンプルの一方の面から可視光を当て、他方の面に投影されるニードル痕の陰にマジックペンで点描する。この点の数をカウントしてニードル痕密度を算出する。
【0060】
本発明で用いる、アルミナ繊維ブランケット等の無機繊維ブランケットは、以下の測定条件での最大荷重が5.0kgf以上であることが好ましく、より好ましくは6.5kgf以上、さらに好ましくは8.0kgf以上、特に好ましくは8.5kgf以上である。無機繊維ブランケットの最大荷重が上述の範囲にあることにより、ロールの軸ブレ等の外力に対して耐久性を有し、結果としてロールとロール軸部断熱部材の隙間が生じにくくなる点で好ましい。
【0061】
[測定条件]
無機ブランケットサンプル(縦210mm、横80mm)に対して、横方向の中央部、先端から40mmの位置にコルクボーラー(内径14mm)を用いて貫通部を作成し、該貫通部に内径12mmの棒を通し、該貫通部からより離れた横端面を固定した上で、該棒を水平に保ちつつ、サンプルの縦方向に上昇させ、破断する荷重(最大荷重)を測定する。
【0062】
本発明で用いる、アルミナ繊維ブランケット等の無機繊維ブランケットは、以下の測定条件での潤滑材吸収高さが9.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは8.5mm以下、特に好ましくは8.0mm以下である。無機繊維ブランケットの潤滑材吸収高さが上述の範囲にあることにより、ロール軸受から漏れ出る潤滑材を徐々に吸収するため、炉内に侵入する潤滑材を少なくすることができる点で好ましい。
【0063】
[測定条件]
潤滑剤(エーゼット社製、型番ISOVG68)に無機繊維ブランケット縦120mm、横20mmとしたサンプルを、サンプル端面が液面下20mmとなる状態で90秒間浸し、回収後、浸した端面から潤滑剤を吸収している位置の最上部までの距離を測定する。
【0064】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【実施例
【0065】
<測定方法>
[1000℃のサイクル試験後の残存厚み]
無機ブランケットを縦10mm横50mmに複数枚切断したサンプルを調整し、該サンプルの切断端面を出すように並べ、該サンプルをアルミナ糸で縫合し、一体化させたサンプル(縦45mm×横50mm×高さ10mm)を作製した。該サンプルの高さが8.25mmで30分間圧縮した後、上下のプレートを1000℃まで昇温し、高さ9.5mm(開放側)から高さ7mm(圧縮側)まで圧縮することを800回繰り返した。その測定前後の残存厚みを、測定前の無機繊維ブランケット厚みに対する測定後の無機繊維ブランケット厚みの比率(%)を算出した。
【0066】
[ムライト結晶率の測定]
測定サンプルを乳鉢にて粉砕し、X線回折装置(RIGAKU社製)で感電圧30kv、感電流40mA、4°/分の速度で測定し、ムライトのピークである2θ=26.3°のピーク高さhを読み取った。また、アルミナ繊維ブランケット(アルミナ:シリカ=72:28、ムライト結晶率68%、マフテック(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製)由来のアルミナ繊維を1500℃で8時間にわたって加熱処理した繊維を標準品として、測定サンプルと同じ条件で測定し、2θ=26.3°のピーク高さhを読み取った。このときのムライト結晶率は以下の式で表す値となる。
【0067】
ムライト結晶率 = h/h
【0068】
[無機繊維ブランケット最大荷重]
無機ブランケットサンプル(縦210mm、横80mm)に対して、横方向の中央部、先端から40mmの位置にコルクボーラー(内径14mm)を用いて貫通部を作成し、該貫通部に内径12mmの棒を通し、該貫通部からより離れた横端面を固定した上で、該棒を水平に保ちつつ、サンプルの縦方向に上昇させ、破断する荷重(最大荷重)を測定した。
【0069】
[潤滑材吸収高さ]
潤滑剤(エーゼット社製、型番ISOVG68)に無機繊維ブランケット縦120mm、横20mmとしたサンプルを、サンプル端面が液面下20mmとなる状態で90秒間浸し、回収後、浸した端面から潤滑剤を吸収している位置の最上部までの距離を測定した。
【0070】
[実施例1]
アルミナ繊維ブランケット1(商品名:マフテック(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製、アルミナ:シリカ=72:28、ムライト結晶率1.5%、坪量1500g/m)について、上述の測定方法に基づき測定した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
アルミナ繊維ブランケット2(商品名:マフテック(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製、アルミナ:シリカ=72:28、ムライト結晶率70.8%、坪量1600g/m)について、上述の測定方法に基づき測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例3]
アルミナ繊維ブランケット3(アルミナ:シリカ=80:20、ムライト結晶率50.0%、坪量1600g/m)について、上述の測定方法に基づき測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
非晶質繊維ブランケット3(アルミナ:シリカ:ジルコニア=35.5:49:15、坪量2000g/m)について、上述の測定方法に基づき測定した。結果を表1に示す。なお、シリカ繊維ブランケット3の繊維は非晶質繊維であるため、ムライト結晶率を測定できなかった。
【0074】
【表1】
【0075】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2018年2月6日付で出願された日本特許出願2018-019476に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0076】
1 連続焼鈍炉
2 ロール
2b ロール軸部
3 ベアリング
4 ロール支持部材
10 炉体
20 ライナーブロック
21 鉄皮
21a 座板
22 セラミックファイバーライナー
23 ロール挿通孔
30 筒状カバー
31,32 フランジ
40 ロール軸部断熱部材
41 ケーシング
41a ドラム部
41b フランジ部
41c 鍔部
42 無機繊維ブランケット
43 押えリング
48,48’ 無機繊維ブランケット積層体
50 締付けバンド
51 締付けロッド
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9