(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20230110BHJP
H01F 6/00 20060101ALI20230110BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01N24/00 600C
G01N24/00 600D
H01F6/00
H01F5/00 C
(21)【出願番号】P 2020549455
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038234
(87)【国際公開番号】W WO2020067458
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018184892
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】森田 充
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/117658(WO,A1)
【文献】特開2018-018924(JP,A)
【文献】特表2017-529201(JP,A)
【文献】米国特許第7498810(US,B2)
【文献】特開2016-006825(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021507(WO,A1)
【文献】特開平08-168476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-24/14
G01R 33/28-33/64
A61B 5/055
H01F 5/00-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶状のREBa2Cu3Oy相にRE2BaCuO5相が分散した組織(REは希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素であり、yは、6.8≦y≦7.1を満たす。)を有し、かつ、リング状である、複数の酸化物超電導バルク体を備え、
複数の前記酸化物超電導バルク体のそれぞれは、同軸に、かつ同軸方向に積層して積層体を形成し、
複数の前記酸化物超電導バルク体は、
前記積層体の片端又は両端に配置された第1酸化物超電導バルク体及び前記第1酸化物超電導バルク体に隣接した第2酸化物超電導バルク体を備え、
下記(A)~(C)の少なくとも
(A)の条件を満たす酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
(A)前記第1酸化物超電導バルク体の外径は、前記第2酸化物超電導バルク体の外径より小さい
(B)前記第1酸化物超電導バルク体の径方向の厚みは、前記第2酸化物超電導バルク体の径方向の厚みより小さい
(C)前記第1酸化物超電導バルク体の体積は、前記第2酸化物超電導バルク体の体積より小さい
【請求項2】
前記(B)又は(C)の条件を満たす請求項1に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項3】
前記第1酸化物超電導バルク体は、(A)~(C)のすべての条件を満たす請求項1に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項4】
少なくとも、前記第1酸化物超電導バルク体の外周面側及び前記第2酸化物超電導バルク体の外周面側に設けられる支持部材を更に備え、
前記支持部材における前記第1酸化物超電導バルク体の外周面側に位置する部分の厚みは、前記支持部材における前記第2酸化物超電導バルク体の外周面側に位置する部分の厚みよりも大きい、請求項1
~3のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項5】
前記支持部材は、前記第1酸化物超電導バルク体の外表面側端面の少なくとも一部を覆うように延長されている、請求項
4に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項6】
前記第1酸化物超電導バルク体の内径は、前記第2酸化物超電導バルク体の内径に対して、80%以上140%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項7】
前記第1酸化物超電導バルク体の外表面側端面と内周面とがなす角部が面取りされている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項8】
前記積層体の前記第1酸化物超電導バルク体が配置された一端とは反対側の他端には、前記組織を有し、かつ、板状の酸化物超電導バルク体が配置されている、請求項1~
7のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニット。
【請求項9】
請求項
8に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニットと、
低温部を有する冷却装置と、
を備え、
前記板状の酸化物超電導バルク体は、前記低温部に接続された、核磁気共鳴用磁場発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置に関する。
本願は、2018年9月28日に、日本に出願された特願2018-184892号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置(以下、「NMR装置」とも呼称する。)は、強磁場を発生し、この強磁場中に配置された試料に電磁波を照射して試料中の原子核の核スピンを共鳴させ、この共鳴時に試料に吸収されるエネルギーをNMR信号として検出することで、試料の分子構造や物理的・化学的物性などの情報を得ることに用いられる分析装置である。
【0003】
NMR装置の磁場発生源である超電導マグネットとして、単結晶状の酸化物超電導材料をバルク化した酸化物超電導バルク体が用いられることがある。酸化物超電導材料は高い臨界電流密度を有する。そのため、酸化物超電導バルク体は、外部磁場を捕捉することで強力な磁場を発生することが可能な酸化物超電導バルクマグネットとなる。
【0004】
一般の大きさ(例えば、直径40~100mm程度)の単結晶状の酸化物超電導バルク体に高強度の磁場を着磁して、着磁された酸化物超電導バルク体から強磁場を発生させるためには、複数の酸化物超電導バルク体をリング状に加工し、複数のリング状の酸化物超電導バルク体を中心軸方向に積層させることが有効である。
【0005】
例えば、酸化物超電導バルクマグネットを小型NMR装置や小型MRI装置へ応用する場合、リング状であり外径60mm、高さ20mm程度の酸化物超電導バルク体を、6個~8個程度、酸化物超電導バルク体の中心軸に沿った方向に積層して積層体を製造する。この積層体を着磁して酸化物超電導バルクマグネットとして、小型NMR装置や小型MRI装置へ応用する技術がある。上記の酸化物超電導バルクマグネットを小型NMR装置や小型MRI装置に用いることで、強磁場かつ均一な磁場が酸化物超電導バルクマグネットの中心部に形成され、良好な信号が得られるとされている。
【0006】
酸化物超電導バルクマグネットは、非常に強力な磁場を狭い空間に発生できるという特長を有する。しかし、酸化物超電導バルク体には、酸化物超電導バルク体が強力な外部磁場を捕捉する際に、捕捉された磁場が広がるように作用する電磁応力(フープ応力)が作用する。酸化物超電導バルク体は小さな体積で強力な磁場を捕捉するため、大きなフープ応力が作用することになる。例えば、酸化物超電導バルク体が5T~10Tの外部磁場を捕捉する場合には、酸化物超電導バルク体に作用する電磁応力が酸化物超電導バルク体自身の強度を超え、この酸化物超電導バルク体が破損する可能性がある。
【0007】
また、リング状の酸化物超電導バルク体が中心軸方向に積層されて形成される酸化物超電導バルクユニットを着磁する場合、外径に対する中心軸方向の長さ(積層高さ)の比が小さい酸化物超電導バルクユニットでは、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部付近の応力は、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部から離れた位置の応力と同程度である。一方、外径に対する積層高さの比が大きい酸化物超電導バルクユニットでは、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部に電磁応力が集中する。そのため、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部で大きくひずみ、割れが生じやすくなる。
【0008】
着磁時の酸化物超電導バルク体の割れを防止するために、酸化物超電導バルク体に印加する外部磁場を低くすることがあり、その結果、着磁後の酸化物超電導バルク体である酸化物超電導バルクマグネットは、強磁場を発生することができない場合がある。そのため、酸化物超電導バルク体に強磁場を着磁する場合における酸化物超電導バルク体の破損を防止するための技術開発が進められている。
【0009】
例えば、特許文献1には、円柱状の酸化物超電導バルク体と、この酸化物超電導バルク体を囲む金属リングとにより構成された超電導バルクマグネットが開示されている。
【0010】
例えば、特許文献2には、六角柱状の酸化物超電導バルク体を7個組み合わせ、その7個の酸化物超電導バルク体の周囲に繊維強化樹脂等からなる支持部材を配置し、更に支持部材の外周に、ステンレスやアルミ等の金属からなる支持部材が配置された超電導磁場発生素子が開示されている。
【0011】
例えば、特許文献3には、酸化物超電導バルク体の側面、及び上面の少なくとも一部又は上下面の少なくとも一部が補強された酸化物超電導バルク磁石が開示されている。
【0012】
例えば、特許文献4には、外周及び内周が補強された複数のリング状超電導バルク体を積層した超電導バルク磁石が開示されている。
【0013】
例えば、特許文献5には、複数のリング状の酸化物超電導バルク体及びリング状の支持部材、及び外周補強リングを備え、リング状の酸化物超電導バルク体とリング状の支持部材が積層された積層体の外周に外周補強リングが設けられた超電導バルクマグネットが開示されている。
【0014】
また、例えば、非特許文献1には、リング状の酸化物超電導バルク体が積層されて構成され、それぞれ異なる補強を行った酸化物超電導バルクユニットに対して、外部磁場を印加して冷却したときに、酸化物超電導バルクユニットに発生する電磁応力のシミュレーション試験の結果が開示されている。非特許文献1では、酸化物超電導バルクユニットにおける、外周面、中心軸に垂直な端面、及び酸化物超電導バルクユニットの端部に位置する酸化物超電導バルク体の内周面を補強することにより、電磁応力を低減可能であり、酸化物超電導バルクユニットの割れを抑制可能であることが示されている。
【0015】
電磁応力による酸化物超電導バルク体の破損を防止することができれば、NMR装置の高性能化、小型化又は軽量化が期待される。
【0016】
そこで、近年、コンパクトで強磁場の発生が可能であるという酸化物超電導バルクマグネットの特長を利用した、小型NMR装置又は小型MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像)装置の磁石部材、磁気力を利用した薬物輸送システム等の技術開発が進められている。
【0017】
例えば、特許文献6には、酸化物超電導バルクユニットを着磁して超電導バルクマグネットとして用いた小型のNMR装置が開示されている。
【0018】
例えば、特許文献7には、酸化物超電導バルクユニットの一部に超電導テープ線材を用いて中空部により均一な磁場を発生するNMR装置が開示されている。
【0019】
例えば、非特許文献2には、種々のリング状酸化物超電導バルク体を用いた小型NMR用磁石ユニットの開発状況が紹介されている。
【0020】
例えば、特許文献8には、複数の超電導バルク体と、複数積層された前記超電導バルク体の外周面を覆うように嵌合された少なくとも1つの外周補強リングと、を備えるバルクマグネット構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】日本国特開平11-335120号公報
【文献】日本国特開平11-284238号公報
【文献】日本国特開2014-146760号公報
【文献】日本国特開2014-75522号公報
【文献】日本国国際公開第2016/117658号
【文献】日本国特開2002-6021号公報
【文献】日本国特開2016-6825号公報
【文献】日本国特開2018-18924号公報
【非特許文献】
【0022】
【文献】H.Fujishiro, et al., "New proposal of mechanical reinforcementstructures to annular REBaCuO bulk magnet for compact and cryogen-free NMRspectromrter", Physica C: Superconductivity and its applications,550(2018), p52-56
【文献】中村高志ら、「特集:小型NMR用円筒状超伝導バルク磁石の開発と信号検出」、低温工学、公益社団法人低温工学・超電導学会、2017年1月、52巻、1号、p.3~43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載された技術では、酸化物超電導バルク体の内部に形成する磁場の均一性は不十分であり、改善の余地がある。
【0024】
特許文献4、及び特許文献5に記載された技術では、酸化物超電導バルクユニットにおける外径に対する積層高さの比が大きい場合、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部付近のひずみ量は、縁部以外の酸化物超電導バルクユニットの内周面付近のひずみ量と比較して極めて大きくなる。そのため、例えば、6~10T程度の強磁場を酸化物超電導バルクユニットに着磁する際に、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部付近で酸化物超電導バルクユニットが破損する可能性があるため、安定して着磁することは困難である。
【0025】
非特許文献1におけるシミュレーション試験では、酸化物超電導バルク体と金属リングが強固に固定されていると仮定されている。しかしながら、実際の物を用いて試験した場合には、酸化物超電導バルク体とその酸化物超電導バルク体の内周面に配置された金属リングとには、互いに押し付けあう力が常に働くわけではない。酸化物超電導バルク体の熱収縮率と金属リングの熱収縮率の違いによって冷却時に酸化物超電導体と金属リングとの間に生じる力により、酸化物超電導バルク体と金属リングとの界面付近で剥離する可能性がある。このように、シミュレーション試験において仮定する境界条件は、実際の状況では満足されないことがあるため、非特許文献1に記載されたシミュレーション試験の結果を基に実際の酸化物超電導バルクユニットを補強しても、十分な効果が得られなかった。
【0026】
特許文献6、特許文献7及び非特許文献2に記載されたNMR装置に用いられる超電導体の補強は十分でないため、高強度の磁場をこの高温超電導体に捕捉させることが困難な場合がある。
【0027】
特許文献8に記載された外径が同一である複数のバルク体を用いるバルクマグネット構造体では、バルク体の耐久性に改善の余地がある。
【0028】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、超電導バルク体の破損が防止され、より高強度の磁場を発生させることが可能な核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題の解決のため、本発明者らは、鋭意検討した結果、リング状の酸化物超電導バルク体が中心軸方向に複数積層した積層体において、積層方向の片端又は両端に位置する酸化物超電導バルク体の外径、厚み又は体積を、当該酸化物超電導バルク体に隣接した酸化物超電導バルク体の外径、厚み又は体積より小さくすることにより、内周面の縁部に生じる電磁応力の集中を緩和することが可能であることを見出し、さらに検討した結果、本発明に至った。本発明は、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部を機械的に補強する従来の方法と異なり、縁部に集中する電磁応力を緩和することで割れを防止することを可能とするものである。
【0030】
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)本発明の第1の態様に係る酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニットは、単結晶状のREBa2Cu3Oy相にRE2BaCuO5相が分散した組織(REは希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素であり、yは、6.8≦y≦7.1を満たす。)を有し、かつ、リング状である、複数の酸化物超電導バルク体を備え、複数の前記酸化物超電導バルク体のそれぞれは、同軸に、かつ同軸方向に積層して積層体を形成し、複数の前記酸化物超電導バルク体は、前記積層体の片端又は両端に配置された第1酸化物超電導バルク体及び前記第1酸化物超電導バルク体に隣接した第2酸化物超電導バルク体を備え、下記(A)~(C)の少なくとも(A)の条件を満たす。
(A)前記第1酸化物超電導バルク体の外径は、前記第2酸化物超電導バルク体の外径より小さい。
(B)前記第1酸化物超電導バルク体の径方向の厚みは、前記第2酸化物超電導バルク体の径方向の厚みより小さい。
(C)前記第1酸化物超電導バルク体の体積は、前記第2酸化物超電導バルク体の体積より小さい。
(2)上記(1)に記載の態様において、前記(B)又は(C)の条件を満たしてもよい。
(3)上記(1)に記載の態様において、前記第1酸化物超電導バルク体は、(A)~(C)のすべての条件を満たしてもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の態様において、少なくとも、前記第1酸化物超電導バルク体の外周面側及び前記第2酸化物超電導バルク体の外周面側に設けられる支持部材を更に備え、前記支持部材における前記第1酸化物超電導バルク体の外周面側に位置する部分の厚みは、前記支持部材における前記第2酸化物超電導バルク体の外周面側に位置する部分の厚みよりも大きくてもよい。
(5)上記(4)に記載の態様において、前記支持部材は、前記第1酸化物超電導バルク体の外表面側端面の少なくとも一部を覆うように、延長されてもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の態様において、前記第1酸化物超電導バルク体の内径は、前記第2酸化物超電導バルク体の内径に対して、80%以上140%以下であってもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の態様において、前記第1酸化物超電導バルク体の外表面側端面と内周面とがなす角部が面取りされていてもよい。
(8)上記(1)~(7)のいずれか1項に記載の態様において、前記積層体の前記第1酸化物超電導バルク体が配置された一端とは反対側の他端には、前記組織を有し、かつ、板状の酸化物超電導バルク体が配置されていてもよい。
(9)本発明の第2の態様に係る核磁気共鳴用磁場発生装置は、上記(8)に記載の酸化物超電導バルク体を用いた核磁気共鳴用磁石ユニットと、低温部を有する冷却装置と、を備え、前記板状の酸化物超電導バルク体は、前記低温部に接続される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、超電導バルク体の破損が防止され、より高強度の磁場を発生させることが可能な核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置が適用され得る核磁気共鳴装置の概略構成の一例を示す部分断面図である。
【
図2】同実施形態に係る磁石ユニットを中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【
図3】同実施形態に係る酸化物超電導バルク体の積層状態の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【
図4】同実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの別の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【
図5】同実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの別の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【
図6】同実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの別の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【
図7】同実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの変形例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【
図8】コールドヘッドに載置された同実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの一例を示す断面図である。
【
図9A】従来の磁石ユニットに着磁後のその断面の超電導電流の分布を示す模式図である。
【
図9B】
図9Aで示すように超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【
図9D】本発明の一実施形態に係る磁石ユニットの超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【
図10A】本発明の一実施形態に係る磁石ユニットに着磁後のその断面の超電導電流の分布を示す模式図である。
【
図10B】
図10Aで示すように超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【
図11A】本発明の一実施形態に係る磁石ユニットに着磁後のその断面の超電導電流の分布を示す模式図である。
【
図11B】
図11Aで示すように超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【
図12A】本発明の一実施形態に係る磁石ユニットに着磁後のその断面の超電導電流の分布を示す模式図である。
【
図12B】
図12Aで示すように超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【
図13A】本発明の一実施形態に係る磁石ユニットに着磁後のその断面の超電導電流の分布を示す模式図である。
【
図13B】
図13Aで示すように超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図中の各構成要素の比率、寸法は、実際の各構成要素の比率、寸法を表すものではない。
【0034】
<1.NMR装置1>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るNMR用磁石ユニット及び本発明の一実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得るNMR装置1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置が適用され得る核磁気共鳴装置の概略構成の一例を示す部分断面図である。
図2は、本実施形態に係る磁石ユニットを中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【0035】
なお、本実施形態に係るNMR用磁石ユニット及びNMR用磁場発生装置が適用されるNMR装置は、ここで説明するNMR装置1に限定されるものではない。
【0036】
NMR装置1は、磁場中に配置された試料に電磁波を照射して試料中の原子核の核スピンを共鳴させ、この共鳴時に吸収されるエネルギーをNMR信号として検出することで、試料の分子構造や物理的・化学的物性などの情報を得ることに用いられる分析装置である。NMR装置1は、
図1に示すように、磁場発生装置10、制御装置20、高周波発生装置30、及び検出コイル40を備える。磁場発生装置10は、本発明に係るNMR用磁場発生装置の一実施形態に係るものである。
【0037】
磁場発生装置10は、NMR分析に用いられる磁場を発生させる。磁場発生装置10は、磁石ユニット110、冷却装置120、断熱容器130、及び磁場発生コイル140を備える。
【0038】
磁石ユニット110は、高強度の外部磁場を捕捉することで超電導マグネットとして機能し、NMR分析用の磁場をNMR装置のボア空間に形成する。詳細は後述するが、磁石ユニット110は、単結晶状のREBa
2Cu
3O
y相にRE
2BaCuO
5相が分散した組織(REは希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素であり、yは、6.8≦y≦7.1を満たす。)を有し、かつ、
図2に示すように、リング状である、複数の酸化物超電導バルク体112を備える。磁石ユニット110は、複数の酸化物超電導バルク体112が、同軸上に、かつ同軸方向に積層されて形成される積層体111を含む。
複数の前記酸化物超電導バルク体112は、積層体の片端又は両端に配置された第1酸化物超電導バルク体113及び前記第1酸化物超電導バルク体113に隣接した第2酸化物超電導バルク体114を備え、下記(A)~(C)の少なくともいずれか一つの条件を満たす。
(A)前記第1酸化物超電導バルク体の外径は、前記第2酸化物超電導バルク体の外径より小さい。
(B)前記第1酸化物超電導バルク体の径方向の厚みは、前記第2酸化物超電導バルク体の径方向の厚みより小さい。
(C)前記第1酸化物超電導バルク体の体積は、前記第2酸化物超電導バルク体の体積より小さい。
これにより、磁石ユニット110の破損が防止され、より高強度の磁場を発生させることが可能となる。なお、前記「径方向の厚み」とは、酸化物超電導バルク体113、114の径方向の長さである。
図2は、酸化物超電導バルク体113(第1酸化物超電導バルク体)の外径が、酸化物超電導バルク体113に隣接した酸化物超電導バルク体114(第2酸化物超電導バルク体)の外径より小さい場合を示す。なお、磁石ユニット110は、本発明に係るNMR用磁石ユニットの一態様に係るものである。磁石ユニット110は、必要に応じて、後述する支持部材115を備える。
【0039】
磁石ユニット110は、冷却装置120のコールドヘッド(低温部)121上に載置された状態で、断熱容器130内に配置される。すなわち、磁石ユニット110は、コールドヘッド121に隣接して配置されている。これにより、磁石ユニット110は、コールドヘッド121と熱的に接続され、冷却装置120により冷却可能となる。
【0040】
冷却装置120の低温部とは、コールドヘッド121を含む室温に対して低温に冷却される部分を意味する。冷却装置120は、コールドヘッド121を介して磁石ユニット110を冷却する。冷却装置120は、磁石ユニット110を構成する酸化物超電導バルク体の超電導転移温度Tc以下の温度まで磁石ユニット110を冷却することができれば特段制限されず、例えば、液体ヘリウムまたは液体ネオン等の冷媒や、GM冷凍機(Gifford-McMahon cooler)、パルスチューブ冷凍機等を用いることができる。冷却装置120は、温度制御装置(図示せず。)によって制御される。
【0041】
断熱容器130は、磁石ユニット110及びコールドヘッド121を収容し、断熱容器130の外部から磁石ユニット110への熱の移動を抑制する。断熱容器130は、例えば、
図1に示すように、磁石ユニット110及びコールドヘッド121を収容する。断熱容器130は、例えば、その上面から容器に収容された磁石ユニット110の中空部に向かって形成される凹部131を有している。この凹部131に、分析試料P及び検出コイル40が配置される。なお、断熱容器130の素材としては、例えば、非磁性材料を使用することができ、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス等を使用することができる。
【0042】
磁場発生コイル140は、磁石ユニット110に対して磁場を印加する。磁場発生コイル140は、例えば、磁石ユニット110を囲むように設けられる。磁場発生コイル140に通電することにより磁場(印加磁場)が発生し、磁石ユニット110に磁場が印加される。
【0043】
磁場発生コイル140には、例えば、金属系低温超電導体や酸化物系超電導体、鉄系超電導体を用いることができる。金属系低温超電導体としては、例えば、ニオブ―チタン合金や、ニオブ―スズ合金を用いることができる。酸化物系超電導体としては、例えば、ビスマス系超電導体やRE系超電導体等を用いることができる。
【0044】
制御装置20は、分析試料Pへの電磁波の照射の制御、電磁波照射により生じる核磁気共鳴によって検出コイル40に流れる信号電流のNMR信号への変換、NMR信号の増幅、増幅されたNMR信号に基づくNMRスペクトルを生成する。
【0045】
高周波発生装置30は、高周波パルスを発生し、検出コイル40から分析試料Pに対してパルス電磁波を照射する。
【0046】
検出コイル40は、断熱容器130の凹部131に配設される。検出コイル40の中心軸側に分析試料Pは配置される。検出コイル40は、高周波発生装置30により発生した高周波パルスを通電し、分析試料Pにパルス電磁波を照射する。また、磁石ユニット110が発生する磁場中に配置された分析試料Pにパルス電磁波が照射されると、核磁気共鳴が起こり、検出コイル40に分析試料Pの構造に応じた信号電流が流れる。検出コイル40は、この信号電流を制御装置20に伝達する。
【0047】
ここでNMR装置1の動作について簡単に説明する。NMR装置1の動作には、磁石ユニット110を着磁する着磁ステップと、着磁された磁石ユニット110が発生する磁場を利用して試料を分析する分析ステップとを含む。
【0048】
着磁ステップでは、磁場発生コイル140に電流を流し、印加磁場を発生させ、所定の磁場強度となるまで磁場強度を高める。所定の強度の印加磁場が発生した後、冷却装置120によって磁石ユニット110を超電導転移温度(Tc)以下の所定の温度(着磁温度)に冷却する。そして、磁石ユニット110が着磁温度まで冷却された後、磁場発生コイル140の印加磁場を徐々に減らし、最終的に磁場発生コイル140への通電を停止して印加磁場を消滅させる。これにより、磁石ユニット110に印加磁場が着磁する。
【0049】
なお、着磁完了前には、冷却装置120を用いて、磁石ユニット110の温度を着磁温度からさらに所定の温度まで温度を下げることが好ましい。着磁ステップ終了前に磁石ユニット110の温度を着磁温度未満に下げることで、磁石ユニット110に捕捉された磁束が低下するフラックスクリープを抑制することができ、磁石ユニット110に複写された磁場分布を安定化させることが可能となる。
【0050】
磁石ユニット110により発生する磁場は、NMR分析に十分な総磁束量であり、凹部131において優れた均一性を有する。
【0051】
分析ステップでは、均一で高強度の磁場分布となった凹部131に分析試料Pを配置する。次いで、高周波発生装置30を作動させて高周波パルスを発生させ、検出コイル40から分析試料Pに向けてパルス電磁波を照射する。すると核磁気共鳴が起こり、分析試料Pの構造に応じた信号電流が検出コイル40に流れる。制御装置20は、この信号電流をNMR信号に変換、増幅し、NMRスペクトルを生成する。そして、ユーザによって、NMRスペクトルから分析試料Pの構造が解析される。ここまで、本発明の一実施形態に係るNMR用磁石ユニット及びNMR用磁場発生装置が使用され得るNMR装置1について説明した。
【0052】
<2.磁石ユニット110>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る磁石ユニット110について説明する。
【0053】
磁石ユニット110は、先立って説明したように、複数の酸化物超電導バルク体112を備える。磁石ユニット110は、必要に応じて、支持部材115を備える。
【0054】
ここで、酸化物超電導バルク体112を構成する酸化物超電導バルク材料について説明する。酸化物超電導バルク材料は、単結晶状のREBa2Cu3Oy相(123相)に非超電導相であるRE2BaCuO5相(211相)が分散した組織を有する。ここで、REは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素であり、yは、6.8≦y≦7.1を満たす。単結晶状の123相に211相が微細分散した組織は、所謂QMG(登録商標)材料と呼ばれる。123相及び211相を構成するREは、例えば、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む。また、123相を構成するRE、及び211相を構成するREは、互いに異なる元素であってもよい。ただし、La、Nd、Sm、Eu又はGdの少なくともいずれかを含む123相は、RE:Ba:Cu=1:2:3の化学量論組成から外れ、REが配置される位置(REサイト)に存在するREの一部がBaで置換される場合がある。また、非超電導相である211相においても、La及びNdは、Y、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuとは異なり、211相を構成する金属元素の比が非化学量論的組成となる場合があり、また、211相の結晶構造が異なる場合があることが知られている。なお、ここでいう、「単結晶状」とは、完全な単結晶のみを指すのではなく、単結晶中に小傾角粒界等のような実用に差し支えない欠陥が存在するものも包含するものとする。
【0055】
上述した、BaによるREの置換は、酸化物超電導バルク材料の臨界温度を低下させる傾向がある。また、より酸素分圧の小さい環境においては、BaによるREの置換が抑制される傾向にある。
【0056】
123相は、以下に示すような、211相と、BaとCuとの複合酸化物からなる液相との包晶反応により生成する。
211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相
【0057】
そして、この包晶反応によって123相が生成する温度である生成温度Tfは、RE元素のイオン半径にほぼ関連し、イオン半径が小さいREが含有されるほど、生成温度Tfは低くなる。また、上記の包晶反応時の酸素分圧が低いほど生成温度Tfは低下する。また、123相及び211相を構成する元素としてAgが更に含有されることで、生成温度Tfは低下する傾向にある。
【0058】
単結晶状の123相に211相が微細分散した組織は、123相が結晶成長する際、未反応の211相からなる粒子が123相中に取り残されるためにできる。すなわち、酸化物超電導バルク材料は、以下に示す反応により生成する。
211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相+211相
【0059】
123相への211相の微細分散は、臨界電流密度Jc向上の観点から極めて重要である。上記した元素に加え、Pt、RhまたはCeの少なくともいずれかが原料の一つとして用いられることで、半溶融状態(211相と液相とからなる状態)において、211相の粒成長が抑制される。その結果、酸化物超電導バルク材料中に、粒径が約1μm程度の211相が分散する。Pt、RhまたはCeの少なくともいずれか一つの元素は、微細化効果が現れる量が含有されることが好ましい。また、Pt、RhまたはCeの含有量は、材料コストを考慮して定められることが好ましい。Ptの含有量は、酸化物超電導バルク材料の質量に対して、好ましくは0.2質量%以上2.0質量%以下であり、更に好ましくは、0.4質量%以上0.8質量%以下である。Rhの含有量は、酸化物超電導バルク材料の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.05質量%以上0.4質量%以下である。Ceの含有量は、酸化物超電導バルク材料の質量に対して、好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下であり、更に好ましくは、1.0質量%以上1.5質量%以下である。また、Pt、RhまたはCeのうちの複数を用いる場合、含有されるPt、RhまたはCeの合計量は、酸化物超電導バルク材料の質量に対して、好ましくは、0.1質量%以上2.0質量%以下であり、更に好ましくは、0.2質量%以上1.5質量%以下である。123相に211相が微細分散した酸化物超電導バルク材料において、Pt、Rh及びCeの一部は、123相中に固溶し、Pt、Rh及びCeのうち、123相に固溶しなかった残分は、BaやCuとの複合酸化物を形成し、酸化物超電導バルク材料中に点在することになる。
【0060】
酸化物超電導バルク材料が超電導マグネットとして機能するためには、酸化物超電導バルク材料は、磁場中において高い臨界電流密度(Jc)を有する必要がある。酸化物超電導バルク材料が磁場中で高い臨界電流密度を有するには、123相は、超電導的に弱結合となる大傾角粒界を含まない単結晶状である必要がある。更に高いJc特性を有するためには、磁束の動きを止めるためのピンニングセンターが必要となる。このピンニングセンターとして機能するものが微細分散した211相である。211相は、より細かく多数分散していることが好ましい。先に述べたように、Pt、RhやCeは、この211相の微細化を促進する作用を有する。また、211相等の非超電導相は、劈開し易い123相中に微細分散することによって、超電導体を機械的に強化し、バルク材料として成り立たす重要な働きをも担っている。なお、例えば、BaCeO3、BaSiO3、BaGeO3、BaSnO3等の化合物がピンニングセンターとして機能する可能性が知られている。そのため、酸化物超電導バルク材料には、BaCeO3、BaSiO3、BaGeO3、BaSnO3から選択される1又は2以上が含まれていてもよい。
【0061】
ここで、酸化物超電導バルク材料における123相に対する211相の割合は、臨界電流密度(Jc)の特性及び機械強度の観点から、好ましくは、5体積%以上35体積%以下であり、さらに好ましくは、15体積%以上30体積%以下である。更に、酸化物超電導バルク材料は、上記の元素に加えてAgを更に含有することもできる。酸化物超電導バルク材料がAgを含む場合、酸化物超電導バルク材料は、Agの含有量に応じて、例えば、粒径が1~500μm程度のAgまたはAg化合物を0体積%超25体積%以下含むことができる。
【0062】
なお、酸化物超電導バルク材料には、一般に、50~500μm程度のボイド(気泡)が5~20体積%程度存在する。
【0063】
酸化物超電導バルク材料は、123相の種結晶を用いて、結晶方位を制御した状態で、123相を単結晶成長させることで製造される。結晶の成長速度は温度条件に依存し、生成温度Tfと結晶成長時の雰囲気温度との差が大きい場合、結晶の成長速度は大きくなる。しかし、生成温度Tfと結晶成長時の雰囲気温度との差が大きい場合、123相が多結晶になりやすい。大型の単結晶状酸化物超電導バルク材料を製造する場合、多結晶化を抑制しながら結晶成長させることが重要となる。そのため、一般に、製造しようとする単結晶状酸化物超電導バルク材料のサイズが大きくなるに従い、単結晶状酸化物超電導バルク材料の製造は難しくなる。
【0064】
酸化物超電導バルク材料が良好な超電導特性を示すには、123相の酸素量が重要であり、酸素量は、REBa2Cu3Oyにおいて、yは、6.8≦y≦7.1である。結晶成長後の材料は、酸素欠損量が0.5程度、すなわちyが6.5程度であり、半導体的な抵抗率の温度変化を示す。このような結晶成長後の材料を、REに応じて623K~873Kの温度で100時間程度、酸素雰囲気中においてアニールすることにより、酸素が結晶成長後の材料に取り込まれ、酸素欠損量は、0.2以下、すなわちyは6.8以上となる。その結果、アニール後の材料は良好な超電導特性を示し、酸化物超電導バルク材料となる。なお、アニール後の123相中には双晶構造が生成するが、本明細書においては、このような双晶構造も含め、「単結晶状」と称する。ここまで、酸化物超電導バルク体112について説明した。
【0065】
続いて、
図2~
図6を参照して、本実施形態に係る磁石ユニットの構造について説明する。
図3は、本実施形態に係る酸化物超電導バルク体の積層状態の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
図4~
図6は、本実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの別の一例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
【0066】
本実施形態の磁石ユニット110は、
図2に示すように、リング状の複数の酸化物超電導バルク体112を有し、これが、同軸に、かつ同軸方向に積層されて積層体111を形成している。すなわち、複数の酸化物超電導バルク体112は、これらの中心軸Cが同一の軸をなすようにして、中心軸C方向に積層されている。
【0067】
酸化物超電導バルク体112は、リング状(筒状)をなし、先立って説明した酸化物超電導バルク材料で構成される。酸化物超電導バルク体112は、例えば、円筒状又は矩形環状、六角環状等の多角環状とすることができる。酸化物超電導バルク体112は、好ましくは、円筒状である。酸化物超電導バルク体112を円筒状とすることで、より均一な磁場をボア空間に形成することが可能となる。
【0068】
酸化物超電導バルク体112において、中心軸C方向(高さ方向)に、酸化物超電導バルク材料のいわゆるab面が積層している。
【0069】
なお、本明細書における「酸化物超電導バルク体」とは、上述した超電導体の特性を発現するための酸化物の微細組織を有する酸化物超電導バルク材料を一部または全部に含む超電導バルク体を意味する。例えば、当該「超電導バルク体」は、全体が酸化物超電導材料からなるバルク体(すなわち「バルク体」)、および酸化物超電導バルク材料と非超伝導バルク材料との組み合わせからなる積層物をも含み得る。
【0070】
非特許文献1のFig.2の(b)及び(c)に示されているように、着磁中または着磁後の超電導電流および捕捉磁場分布は、端部のリングの特に端面付近に多くの超電導電流が流れ、端部近傍では捕捉磁場が急激に低下している。これに対して、中央部分のリングには外周部からほぼ均一な超電導電流が誘起され、ほぼ均一な磁場が捕捉されている。
このような挙動は、着磁条件(温度、磁場強度)によって異なるが、定性的には類似していることから、本発明の技術内容に関してこのようなモデルを使用し説明する。
【0071】
図9Aに、外径、厚み及び体積が等しい酸化物超電導バルク体112を8個積層した場合の、着磁後の磁石ユニットにおける断面の超電導電流の分布の模式図を示す。着磁過程では酸化物超電導バルク体112の外周部から超電導電流が誘起される。特に端部の酸化物超電導バルク体112(114)内では、磁束密度の変化が大きいため、中央部の酸化物超電導バルク体112に比べ、リングの内側まで、超電導電流が流れている領域が拡大する。超電導電流が流れている領域と流れていない領域の境界(線)のイメージを
図9A中に実線(116)で示した。
図9Bに、
図9Aのように着磁後、超電導電流が流れている場合の磁場分布を示す(対称性から
図9Aの右上部分のみを図示)。磁場分布の様子を示すため磁力線のイメージを、
図9Bに複数の実線(118)で示した。
図9Bに示すように、
図9Aの中央部では、中心軸C方向に略均一な磁場を捕捉しているが、酸化物超電導バルク体112の端部では、磁場が急激に酸化物超電導バルク体112の径方向に広がり、磁場強度が低下している。このような状況においては、端部の酸化物超電導バルク体112(114)内では、広い領域に超電導電流が流れており、かつ超電導電流は、特に端部内周部では、高い磁束密度の磁力線と鎖交している。このため、端部の酸化物超電導バルク体112(114)には酸化物超電導バルク体112を径方向に膨らますようなフープ応力が発生し、特に端部内周部付近では強くなる傾向がある。この端部内周部付近での電磁応力の集中が原因となり、端部内周部付近が起点となる割れが発生しやすくなる傾向がある。このことが、積層した酸化物超電導バルク体112全体の発生可能な磁場強度を低下させる原因となる。
ここでは、具体的な応力分布は示さないが、リング状の酸化物超電導バルク体を積層した場合の応力分布の計算例が、非特許文献1に示されている。非特許文献1のFig.1には、積層したバルク体の寸法が記載されている。また、非特許文献1のFig.2の(b)及び(c)には、磁場分布およびバルク体中を流れる超電導電流の分布が示されており、非特許文献1のFig.4の(a)及びFig.6の(a)のグラフ中に対応する応力分布が示されている。色分けされた応力分布図から、端部に配置された酸化物超電導バルク体の端面の内周エッジ部分が赤になっており、応力集中が起きている様子が分かる。
着磁時に発生する応力は、酸化物超電導バルク体の形状・配置および温度や印加磁場などの着磁条件によって異なるが、概ね端部に配置された酸化物超電導バルク体の端面の内周エッジ部分に同様の応力集中が起こる。
次に、このような端部に配置された酸化物超電導バルク体112(114)の端面の内周エッジ部分の応力の最大値が、酸化物超電導バルク体113を配置することによって、低下し、応力集中が緩和されることに関して、その原理を定性的に説明する。
図9Cに、
図9Bに対応する状況における応力分布の概略図を示す。応力の分布を示すための応力の等高線を、点線1190から点線1194で示す。応力の大きさは、1190<1191<1192<1193<1194の関係にある。非特許文献1のFig.4の(a)及びFig.6の(a)のグラフ中に示されている応力分布と同様に、酸化物超電導バルク体114の内周の端部のエッジ部分にフープ応力が最大値を有する分布となる。
次に酸化物超電導バルク体113を配置した時の応力分布の概略図を
図9Eに示す。酸化物超電導バルク体113を配置した場合、酸化物超電導バルク体113中にも超電導電流が誘起される。酸化物超電導バルク体113に誘起された超電導電流によって、酸化物超電導バルク体112(114)が遮蔽されるため、酸化物超電導バルク体112(114)中に誘起される誘導電流は減少する。そのため、超電導電流が流れている領域と流れていない領域との境界は、
図9Cの実線116から
図9Eの実線1161に変化する。また、この時、磁場の様子を示す磁力線のイメージを
図9Dに示す。酸化物超電導バルク体113がない場合の実線(118)から酸化物超電導バルク体113を配置した場合の点線(119)に変化し、酸化物超電導バルク体113近傍で、中心軸C方向の磁場強度の低下が減少する傾向がある。なお、「磁場強度の低下が減少する」とは、酸化物超電導バルク体112の中央部では均一で高い強度の磁場が捕捉されているが、端部では減少する。
図9Dでは、酸化物超電導バルク体112の中央部で等間隔な磁力線が、端部では間隔が広がってきて、磁場強度が低下している様子を示している。酸化物超電導バルク体113を配置することによって、端部での磁力線の広がりは緩やかになる。これは、端部(酸化物超電導バルク体113近傍)で磁場強度の低下が減少していることを意味する。主に酸化物超電導バルク体112(114)に流れる超電導電流の減少によって、電流と磁場の相互作用で発生する酸化物超電導バルク体112(114)が受ける電磁応力は減少する。このような原理によって、
図9Cで示した応力の分布は、
図9Eのように変化し、応力集中が緩和する方向に変化する。一例を具体的に示すと、応力の分布は、
図9Eの点線1190から1192で示す等高線となる。応力の大きさは、1190<1191<1192<1193<1194の関係にあり、応力の最大値が減少し、応力集中が緩和されたことを示す。また、この時、配置された酸化物超電導バルク体113には、同様の応力が作用する。この酸化物超電導バルク体113に作用した応力の分、酸化物超電導バルク体112(114)に作用する応力が減少し、応力集中が緩和したといえる。
【0072】
本実施形態において、磁石ユニット110は、
図2に示すように、上述したような酸化物超電導バルク体112が高さ方向に複数積層されている。
図3に示すように、積層された複数の酸化物超電導バルク体112のうち、積層体111の片端又は両端に配置された酸化物超電導バルク体113(第1酸化物超電導バルク体)の外径D
QRは、酸化物超電導バルク体113に隣接した酸化物超電導バルク体114(第2酸化物超電導バルク体)の外径D
QUよりも小さい。一般に、酸化物超電導バルク体が積層して形成された酸化物超電導バルクユニットに強磁場を着磁する場合、着磁過程で、酸化物超電導バルクユニットには径方向に膨張する方向に電磁応力が生じる。この電磁応力は、酸化物超電導バルクユニット端部の内周面の縁部、特に角部で最大となる。特に、外径に対する積層高さの比が大きい酸化物超電導バルクユニットでは、酸化物超電導バルクユニットの内周面の縁部に電磁応力が集中する。酸化物超電導バルクユニットに割れが発生する場合、この縁部で割れが発生することが多い。しかしながら、端部の酸化物超電導バルク体113の外径を、隣接した酸化物超電導バルク体114の外径よりも小さくすることで、酸化物超電導バルク体113における内周面の縁部に生じる電磁応力の集中を緩和することが可能となる。その結果、酸化物超電導バルク体113の内側壁の縁部の割れを防止することが可能となり、磁石ユニット110Aの割れが防止される。これにより、磁石ユニット110Aは、高強度の磁場を捕捉することが可能となる。好ましくは、酸化物超電導バルク体113の外径は、酸化物超電導バルク体114の内径と外径の平均以下である。
【0073】
磁石ユニット110Aが、高強度の磁場を捕捉することが可能となることについて、
図10A及び
図10Bを用いて更に詳細に説明する。
図10Aに、
図9Aに示す8個積層した酸化物超電導バルク体112(114)の上下端部に、酸化物超電導バルク体112より外径が小さいリングバルクマグネット(酸化物超電導バルク体)113を配置した場合の、着磁後の磁石ユニットにおける断面の超電導電流の分布の模式図を示す。リングバルクマグネット113を配置することにより、リングバルクマグネット113中に超電導電流が流れるため、超電導電流が流れている領域と流れていない領域の境界(線)は、1161(実線)から1162(点線)のように変化する。
図10Bに、
図10Aのように超電導電流が流れている場合の磁場分布の様子を示すための磁力線のイメージを1182(点線)で示す。リングバルクマグネット113がない場合の磁力線のイメージ1181(実線)に対して、リングバルクマグネット113を配置することにより、リングバルクマグネット113中に超電導電流が流れるため、リングバルクマグネット113近傍では、中心軸C方向の磁場強度の低下が減少する傾向がある。これは、リングバルクマグネット113に超電導電流が流れることによって、その分、端部に配置された酸化物超電導バルク体112(114)内に流れる超電導電流が少なくなるためである。この効果によって、端部に配置された酸化物超電導バルク体112(114)内の磁束と鎖交する電流が減り、フープ応力が低下する。この低下した応力は、ほぼ、リングバルクマグネット113に作用するフープ応力分に対応する。このように、電磁応力の集中が起きていた酸化物超電導バルク体112(114)の内周付近で電磁応力が分散され、積層したマグネット全体として、より高い磁場を捕捉することが可能となる。
【0074】
同様のことが、体積が小さいリングバルクマグネット(酸化物超電導バルク体)117を配置した場合にも起きる。
図11Aに、
図9Aに示す8個積層した酸化物超電導バルク体112の上下端部に、酸化物超電導バルク体112より体積が小さいリングバルクマグネット117を配置した場合の、着磁後の磁石ユニットにおける断面の超伝導電流の分布の模式図を示す。リングバルクマグネット117を配置することにより、リングバルクマグネット117中に超電導電流が流れるため、超電導電流が流れている領域と流れていない領域の境界(線)は、1163(実線)から1164(点線)のように変化する。
図11Bに、
図11Aのように超電導電流が流れている場合の磁場分布の様子を示すための磁力線のイメージを1184(点線)で示す。リングバルクマグネット117がない場合の磁力線のイメージ1183(実線)に対して、リングバルクマグネット117を配置することにより、リングバルクマグネット117中に超電導電流が流れるため、リングバルクマグネット117近傍では、中心軸C方向の磁場強度の低下が減少する傾向がある。これは、同様に、リングバルクマグネット117に超電導電流が流れることよって、その分、端部に配置された酸化物超電導バルク体112(114)内に流れる超電導電流が少なくなるためである。この効果によって、端部に配置された酸化物超電導バルク体112(114)内の磁束と鎖交する電流が減り、フープ応力が低下する。この低下した応力は、ほぼ、リングバルクマグネット117に作用するフープ応力分に対応する。このように、電磁応力の集中が起きていた酸化物超電導バルク体112(114)の内周付近で電磁応力が分散・緩和され、積層されたマグネット全体として、より高い磁場を捕捉することが可能となる。
【0075】
同様のことが、酸化物超電導バルク体112の上下端部に、径方向の厚みが小さいリングバルクマグネット(酸化物超電導バルク体)を配置した場合にも起きる。すなわち、
図12A~
図13Bに示すように、酸化物超電導バルク体112の上下端部に、径方向の厚みが小さいリングバルクマグネット(酸化物超電導バルク体)1131、1171を配置した場合には、上述の酸化物超電導バルク体112より外径が小さいリングバルクマグネット113を配置した場合及び酸化物超電導バルク体112より体積が小さいリングバルクマグネット117を配置した場合と同様の効果を得ることができる。
また、径方向の厚みを小さくして高さを高くした場合は、外周補強を強化できるので、望ましい。さらに、外径を小さくすることで、製造費等のコストメリットが得られるとともに外周補強の強化を図れより望ましい。さらに体積が小さいことがより望ましい。
【0076】
上述したように、複数の酸化物超電導バルク体のうち、積層体の片端又は両端に配置された酸化物超電導バルク体(第1酸化物超電導バルク体)113、117の外径、径方向の厚み又は体積が、酸化物超電導バルク体(第1酸化物超電導バルク体)113、117に隣接した酸化物超電導バルク体(第2酸化物超電導バルク体)114の外径、径方向の厚み又は体積より小さいことにより、より高い磁場を発生させることができるが、酸化物超電導バルク体(第1酸化物超電導バルク体)113、117の外径、径方向の厚み及び体積が、酸化物超電導バルク体(第1酸化物超電導バルク体)113、117に隣接した酸化物超電導バルク体(第2酸化物超電導バルク体)114の外径、径方向の厚み及び体積より小さい場合において、最も効果が大きくなる。
【0077】
さらに、上記の記載では積層体111の片端又は両端に配置された酸化物超電導バルク体113(第1酸化物超電導バルク体)を1層として記載したが、酸化物超電導バルク体113を2層にし、電磁応力の集中を2段階で分散して緩和することも可能である。この場合、酸化物超電導バルク体113に対応する2層の酸化物超電導バルク体の外径は、より端部に位置する層の酸化物超電導バルク体113の外径の方がより小さくなる。同様に、酸化物超電導バルク体117を2層にし、電磁応力の集中を2段階で分散して緩和することも可能である。この場合、酸化物超電導バルク体117に対応する2層の酸化物超電導バルク体の体積は、より端部に位置する層の酸化物超電導バルク体117の体積の方がより小さくなる。同様に、厚みが小さい酸化物超電導バルク体を2層にし、電磁応力の集中を2段階で分散して緩和することも可能である。この場合、酸化物超電導バルク体に対応する2層の酸化物超電導バルク体の厚みは、より端部に位置する層の酸化物超電導バルク体の厚みの方がより小さくなる。
【0078】
酸化物超電導バルク体113の内径I
QRは、
図4に示すように、酸化物超電導バルク体114の内径I
QUに対して80%以上140%以下とすることが好ましい。酸化物超電導バルク体113の内径I
QRを酸化物超電導バルク体114の内径I
QUに対して80%以上とすることで、ボア空間の広さを、分析試料を挿入するのに十分な広さとすることが可能となる。また、酸化物超電導バルク体113の内径I
QRを酸化物超電導バルク体114の内径I
QUに対して140%以下とすることで、酸化物超電導バルク体113の内周部が応力集中部分である酸化物超電導バルク体114の内周エッジから離れすぎないようにし、応力緩和効果を確保できるため、酸化物超電導バルク体114の内周部の縁部への電磁応力の集中をより緩和することが可能となる。このように、酸化物超電導バルク体113の内径I
QRを上記範囲とすることで、酸化物超電導バルク体113の内周面に生じる電磁応力及び酸化物超電導バルク体114の内周面に生じる電磁応力を緩和することが可能となる。その結果、酸化物超電導バルク体113の内周面における割れの発生及び酸化物超電導バルク体114の内周面における割れの発生を防止することが可能となる。酸化物超電導バルク体113は、酸化物超電導バルク体114の内径と等しい内径を有することが更に好ましい。また、酸化物超電導バルク体113の内径は、分析試料挿入の観点からも、酸化物超電導バルク体114の内径と実質的に合わせることが好ましい。
【0079】
酸化物超電導バルク体113の中心軸C方向の長さ(高さ)は、例えば、積層体111の高さに対して1%以上50%以下とすることができる。電磁応力の緩和の観点、及び製造コストの観点から、酸化物超電導バルク体113の高さは、好ましくは、積層体111の高さに対して2%以上30%以下であり、更に好ましくは、3%以上20%以下である。
【0080】
本実施形態に係る磁石ユニットの内側の空間には、先立って説明したように、断熱容器130の凹部131が配置され、凹部131に分析試料が挿入される。分析試料は、均一磁場空間に挿入することが重要である。本実施形態に係る磁石ユニットの軸方向における中央部分の内径を、端部の内径より大きくすることで、酸化物超電導バルク体112の磁化により生じる不均一な磁場を相殺するような磁場が、本実施形態に係る磁石ユニットのボア空間に形成される。そのため、例えば、本実施形態に係る磁石ユニットの内側の空間は大きい方が好ましい。
【0081】
なお、積層された複数の酸化物超電導バルク体112は、例えば、はんだ、樹脂、又はグリース等で隣接した酸化物超電導バルク体112と接着することができる。
【0082】
本実施形態において、磁石ユニット110Cは、例えば、
図5に示すように、酸化物超電導バルク体113及び酸化物超電導バルク体114の外周面側に支持部材115を有する。
【0083】
支持部材115は、少なくとも酸化物超電導バルク体113及び酸化物超電導バルク体114の外周面側に設けられる。支持部材115は、隣接する酸化物超電導バルク体113及び酸化物超電導バルク体114を物理的に補強する。支持部材115の素材としては、例えば、高強度、非磁性であり、酸化物超電導バルク体112より熱収縮率が大きい材料を使用することができる。また、支持部材115の素材としては、好ましくは、熱伝導率が高い材料を使用することができる。支持部材115には、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス、又は炭素繊維強化プラスチック等を用いることが好ましい。
【0084】
支持部材115の形状は、少なくとも酸化物超電導バルク体113及び酸化物超電導バルク体114を補強することができれば特段制限されないが、例えば、酸化物超電導バルク体113及び酸化物超電導バルク体114の形状に応じた形状の中空部を有するリング状(筒状)とすることができる。
【0085】
また、支持部材115は、本実施形態に係る磁石ユニットの外周面に接して配設されている。本実施形態に係る磁石ユニットの外周面に接して配設された支持部材115は、例えば、
図1に示すように、その一端がコールドヘッド121に熱的に接続される。これにより、支持部材115は、本実施形態に係る磁石ユニットを外側からより効率的に冷却することが可能となる。
【0086】
図2に示すように、支持部材115がリング状である場合、複数の支持部材115のそれぞれに、酸化物超電導バルク体112それぞれが嵌め込まれている。しかしながら、本発明は図示の態様に限定されず、例えば、支持部材は一体成型されたものであってもよい。
【0087】
支持部材115と酸化物超電導バルク体112とは、例えば、はんだ、樹脂、又はグリース等で接着することができる。また、複数の支持部材115が用いられる場合、それぞれの支持部材115の間は、例えば、はんだ、樹脂、又はグリース等で接着することができる。
【0088】
酸化物超電導バルク体113の外周面に位置する部分の支持部材115の厚みT
MRは、
図5に示すように、酸化物超電導バルク体114の外周面に位置する部分の支持部材115の厚みT
MUよりも大きいことが好ましい。酸化物超電導バルク体113の外径D
QRは、酸化物超電導バルク体114の外径D
QUよりも小さいため、磁石ユニットの外径を大きくすることなく、酸化物超電導バルク体113の外周面に厚い支持部材115を配置することができる。外径が小さい酸化物超電導バルク体113は、中心軸C方向に垂直な断面の面積が小さいため、酸化物超電導バルク体113には、比較的小さな超電導電流が流れる。その結果、酸化物超電導バルク体113に作用する電磁応力は限定的になる。この比較的小さな電磁応力が作用する酸化物超電導バルク体113は、厚みの大きな支持部材115で支持されるため、磁石ユニット110Cは、酸化物超電導バルク体113が割れることなく強磁場を保持することが可能となる。また、磁石ユニット110Cは、酸化物超電導バルク体113を有していない磁石ユニットと比較して、積層体111の体積が大きくなるため、より大きな超電導電流を流すことが可能である。その結果、磁石ユニット110Cは、ボア空間により均一な磁場を発生することが可能となる。更に好ましくは、厚みT
MRは、厚みT
MUよりも大きく、かつ、酸化物超電導バルク体113の外周面に位置する部分の支持部材115の外径は、酸化物超電導バルク体114の外周面に位置する部分の支持部材115の外径以下である。例えば、酸化物超電導バルク体114の外周面に位置する部分の支持部材115の外径は、酸化物超電導バルク体113の外周面に位置する部分の支持部材115の外径の120%以下である。
【0089】
なお、酸化物超電導バルク体113の外周面側に位置する支持部材115は、その外径が大きい方が望ましいが、酸化物超電導バルク体113の外周面側に位置する部分の支持部材115の外径が大きくなると、着磁用の超電導マグネットの室温ボアの内径も支持部材115に合わせて大きくする必要がある。そのため、酸化物超電導バルク体113の外周面側に位置する部分の支持部材115の外径と、酸化物超電導バルク体113以外の酸化物超電導バルク体112の外周面側に位置する部分の支持部材115の外径とは等しいことが好ましい。
【0090】
また、本実施形態においては、
図6に示すように、支持部材115は、酸化物超電導バルク体113の外表面側端面(上面)の少なくとも一部を覆うように延長されている。ここでいう端面は、筒状の酸化物超電導バルク体113における中心軸C方向に位置する面である。
磁石ユニット110Dの着磁過程において、酸化物超電導バルク体113の内周面の縁部に応力が集中するが、支持部材115が酸化物超電導バルク体113の上面に密着することで、ひずみを抑制することができ、酸化物超電導バルク体113の内周面の縁部での割れを防止することが可能となる。
【0091】
従来の酸化物超電導バルクユニット、例えば、非特許文献1に記載された、外周面及び中心軸に垂直な端面に金属リングが固定された酸化物超電導バルクユニットは、端部に配置された酸化物超電導バルク体の外径と、当該酸化物超電導バルク体に隣接した酸化物超電導バルク体の外径は等しい。従来の酸化物超電導バルクユニットでは、酸化物超電導バルク体の熱収縮率と金属リングの熱収縮率の違いにより、外周面に配置された外周補強リングと酸化物超電導バルク体の接触面から中心軸方向に向かうにつれて、酸化物超電導バルク体と金属リングの接触面で互いにずれようとする力(剥離しようとする力)が大きくなる。また、一般に、酸化物超電導バルク体の中心軸に垂直な面は、ab面と呼ばれる劈開しやすい面である。そのため、従来の酸化物超電導バルクユニットは端部の酸化物超電導バルク体の外径が大きいため、上記の張力が作用すると、酸化物超電導バルク体と金属リングの接着面付近で剥離が生じる可能性がある。しかし、酸化物超電導バルク体113は、酸化物超電導バルク体114よりも外径が小さい。酸化物超電導バルク体113は外径が小さいため、酸化物超電導バルク体113と、その外周面に配置された支持部材115との接触面から中心軸までの距離が短くなる。これにより、酸化物超電導バルク体113の熱収縮率と支持部材115の熱収縮率の差によって生じる剥離しようとする力は、従来の酸化物超電導バルクユニットにおける酸化物超電導バルク体と金属リングとの間に働く力と比較して小さくなる。そのため、酸化物超電導バルク体113とその上面に配設される支持部材115との接触面付近での剥離は抑制される。その結果、支持部材115が酸化物超電導バルク体113の上面に密着することで、ひずみを抑制することができ、酸化物超電導バルク体113の内周面の縁部での割れを防止することが可能となる。
【0092】
なお、酸化物超電導バルク体113の上面に配置される支持部材115は、酸化物超電導バルク体113の外周に配置される部分と一体であってもよいし、酸化物超電導バルク体113の上面に配置される支持部材115と、別に製造された酸化物超電導バルク体113の外周に配置される支持部材115とが互いに固定されて一体化されたものであってもよい。
【0093】
本発明によれば、超電導バルク体の破損が防止され、より高強度の磁場を発生させることが可能な核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置を提供することが可能となる。
【0094】
本実施形態に係る磁石ユニットは、コールドヘッドを備える冷凍装置が用いられるNMR装置、及び、冷媒を用いて酸化物超電導バルク材料を冷却する方式が適用されるNMR装置に適用可能である。本実施形態に係る磁石ユニットは、更に、冷媒をより低温にするための減圧装置を有するNMR装置に適用可能である。
【0095】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態を説明した。以下では、
図7及び
図8を参照して、本発明の上記実施形態の変形例を説明する。
図7は、本実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの変形例を示す、核磁気共鳴用磁石ユニットの断面図である。
図8は、コールドヘッドに載置された本実施形態に係る核磁気共鳴用磁石ユニットの一例を示す断面図である。なお、以下に説明する変形例は、本発明の上記実施形態で説明した構成に対して追加的に適用することができる。
【0096】
磁石ユニット110Eの外表面側端面の内周部には、
図7に示すように、面取りを施すことができる。ここでいう端面は、筒状の酸化物超電導バルク体113における中心軸C方向に位置する面である。磁石ユニット110Eの外表面側端面の内周部に面取りが施されることで、磁場応力の集中を緩和することが可能となる。筒状の酸化物超電導バルク体113の端部(外側)の内周エッジ部においても、酸化物超電導バルク体113全体からみると、同様に応力集中が起きる。そのため、このような応力集中を緩和するためには、内周エッジ部を除去すればよく、
図7に示すように内周エッジ部を面取りすることで応力集中は、面取りした面周辺に分散し緩和されることになる。
【0097】
また、面取りが施された部分である面取り部bの形状は、磁場の均一性を維持しつつ、磁場応力の集中を緩和することが可能であれば特段制限されず、例えば、角面や丸面などにすることができる。また、面取り部bには、支持部材115が接して配設されることができる。
【0098】
なお、ここまで、本実施形態に係る磁石ユニットの構造に関し、主に酸化物超電導バルク体113が本実施形態に係る磁石ユニットの一端に配置される場合を説明したが、酸化物超電導バルク体113は、本実施形態に係る磁石ユニットの両端に設けられてもよい。このとき、本実施形態に係る磁石ユニットの一端に配置される酸化物超電導バルク体113と、本実施形態に係る磁石ユニットの他端に配置される酸化物超電導バルク体113とは、互いに同じ構造にすることができ、また、上記した構造のうちで、互いに異なる構造とすることができる。
【0099】
磁石ユニット110Fは、
図8に示すように、板状の酸化物超電導バルク体125を更に備える。磁石ユニット110Fの一端には、酸化物超電導バルク体113が配置され、酸化物超電導バルク体113が配置された一端とは反対側の他端には、板状の酸化物超電導バルク体125を配置することができる。板状の酸化物超電導バルク体125は、リング状のバルク体と異なり、応力集中が発生する内周エッジ部がない。そのため、磁石ユニット110Fの他端に生じる電磁応力は、バルク体内で比較的分散され、緩和されることになる。また、酸化物超電導バルク体125がコールドヘッド121(
図1参照)に接続されるように磁石ユニット110Fをコールドヘッド121に載置することで、コールドヘッド121との接触面積が増大し、磁石ユニット110Fの冷却効率を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例を示しながら、本発明の実施形態について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明のあくまでも一例であって、本発明が、下記の例に限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
REとしてGdを用い、外径が40mmであり、内径が24mmであり、高さが15mmであるリング状の酸化物超電導バルク体を作製した。支持部材として、肉厚が17mmであり、高さが15mmであるアルミニウム合金リングを用いた。このアルミニウム合金リングの内周面に樹脂(ヘンケルエイブルスティックジャパン株式会社製 スタイキャスト)を塗布して、作製した酸化物超電導バルク体をアルミニウム合金リングに嵌めた後に樹脂を固化し、第1嵌合体を作製した。この第1嵌合体を2つ製造した。
【0102】
また、REとしてGdを用い、外径が60mmであり、内径が24mmであり、高さが20mmであるリング状の酸化物超電導バルク体を作製した。支持部材として、肉厚が7mmであり、高さが20mmであるアルミニウム合金リングを用いた。このアルミニウム合金リングの内周面に上と同様の樹脂を塗布して、作製した酸化物超電導バルク体をアルミニウム合金リングに嵌め、第2嵌合体を作製した。この第2嵌合体を6つ製造した。
【0103】
6つの第2嵌合体を積層し、2つの端面のそれぞれに第1嵌合体を配置し、第1嵌合体と第2嵌合体、及び第2嵌合体同士を真空グリースで接着して磁石ユニットを製造した。このとき、磁石ユニットを構成する嵌合体の中心軸が一致するようにそれぞれの嵌合体を接着した。磁石ユニットのアルミニウム合金リングには、コールドヘッドに固定するためのねじ止め孔を設けた。
【0104】
酸化物超電導バルク体は、123相と211相とがモル比で3:1で構成されており、211相の平均粒径は、1μmであった。
【0105】
磁石ユニットの一端に真空グリースを塗布してコールドヘッドに載置し、ねじ止め孔にねじを通して磁石ユニットをコールドヘッドに固定した。この磁石ユニットを冷却装置を用いて100Kに冷却した後、磁場発生コイルの中空空間に配置し、8.5Tの磁場を印加した。続いて磁石ユニットを40Kに冷却し、磁場発生コイルの印加磁場を減磁して、磁石ユニットに磁場を着磁させ、酸化物超電導バルクマグネットとした。
【0106】
得られた酸化物超電導バルクマグネットは、その中心部で8.5Tの捕捉磁場が確認された。この酸化物超電導バルクマグネットを昇温して消磁した後、室温まで冷却して磁石ユニットの外観を観察したところ、割れ等の損傷は生じていなかった。
【0107】
比較例として、上記と同様に、6つの第2嵌合体を作製した。作製した6つの第2嵌合体を積層し、第2嵌合体同士を真空グリースで接着して磁石ユニットを製造した。このとき、磁石ユニットを構成する嵌合体の中心軸が一致するようにそれぞれの嵌合体を接着した。磁石ユニットのアルミニウム合金リングには、コールドヘッドに固定するためのねじ止め孔を設けた。
【0108】
6つの第2嵌合体で構成される磁石ユニットを、上記と同様にして、コールドヘッドに固定し、上記と同様の条件で着磁して酸化物超電導バルクマグネットとした。
【0109】
この酸化物超電導バルクマグネットは、その中心部で8.2Tの捕捉磁場が確認された。この酸化物超電導バルクマグネットを昇温して消磁した後、室温まで冷却して磁石ユニットの外観を観察したところ、割れが生じていた。
【0110】
(実施例2)
REとしてEuを用い、外径が46mmであり、内径が24mmであり、高さが10mmであるリング状の酸化物超電導バルク体を作製した。支持部材として、肉厚が14mmであり、高さが10mmである銅合金リングを用いた。この銅合金リングの内周面に半田を塗布して、作製した酸化物超電導バルク体を銅合金リングに嵌めた後に半田を固化し、第1嵌合体を作製した。この第1嵌合体を2つ製造した。
【0111】
また、REとしてEuを用い、外径が60mmであり、内径が24mmであり、高さが20mmであるリング状の酸化物超電導バルク体を作製した。支持部材として、肉厚が7mmであり、高さが20mmであるアルミニウム合金リングを用いた。このアルミニウム合金リングの内周面に実施例1と同様の樹脂を塗布して、作製した酸化物超電導バルク体をアルミニウム合金リングに嵌め、第2嵌合体を作製した。この第2嵌合体を2つ製造した。
【0112】
さらに、REとしてEuを用い、外径が60mmであり、内径が35mmであり、高さが20mmであるリング状の酸化物超電導バルク体を作製した。支持部材として、肉厚が7mmであり、高さが20mmであるアルミニウム合金リングを用いた。このアルミニウム合金リングの内周面に実施例1と同様の樹脂を塗布して、作製した酸化物超電導バルク体をアルミニウム合金リングに嵌め、第3嵌合体を作製した。この第3嵌合体を4つ製造した。
【0113】
4つの第3嵌合体を積層し、2つの端面のそれぞれに第2嵌合体を配置し、さらにその両端のそれぞれに第1嵌合体を配置し、第1嵌合体と第2嵌合体、第2嵌合体と第3嵌合体、及び第3嵌合体同士を真空グリースで接着して磁石ユニットを製造した。このとき、磁石ユニットを構成する嵌合体の中心軸が一致するようにそれぞれの嵌合体を接着した。磁石ユニットの銅合金リングには、コールドヘッドに固定するためのねじ止め孔を設けた。
【0114】
酸化物超電導バルク体は、123相と211相とがモル比で3:1で構成されており、211相の平均粒径は、1μmであった。
【0115】
磁石ユニットの一端に真空グリースを塗布してコールドヘッドに載置し、ねじ止め孔にねじを通して磁石ユニットをコールドヘッドに固定した。この磁石ユニットを冷却装置を用いて100Kに冷却した後、磁場発生コイルの中空空間に配置し、9.0Tの磁場を印加した。続いて磁石ユニットを35Kに冷却し、磁場発生コイルの印加磁場を減磁して、磁石ユニットに磁場を着磁させ、酸化物超電導バルクマグネットとした。
【0116】
得られた酸化物超電導バルクマグネットは、その中心部で9.0Tの捕捉磁場が確認された。この酸化物超電導バルクマグネットを昇温して消磁した後、室温まで冷却して磁石ユニットの外観を観察したところ、割れ等の損傷は生じていなかった。
【0117】
比較例として、上記と同様に、2つの第2嵌合体と4つの第3嵌合体を作製した。4つの第3嵌合体を積層し、2つの端面のそれぞれに第2嵌合体を配置し、第2嵌合体と第3嵌合体および第3嵌合体同士を真空グリースで接着して磁石ユニットを製造した。このとき、磁石ユニットを構成する嵌合体の中心軸が一致するようにそれぞれの嵌合体を接着した。磁石ユニットのアルミニウム合金リングには、コールドヘッドに固定するためのねじ止め孔を設けた。
【0118】
2つの第2嵌合体と4つの第3嵌合体で構成される磁石ユニットを、上記と同様にして、コールドヘッドに固定し、上記と同様の条件で着磁して酸化物超電導バルクマグネットとした。
【0119】
この酸化物超電導バルクマグネットは、その中心部で7.0Tの捕捉磁場が確認された。この酸化物超電導バルクマグネットを昇温して消磁した後、室温まで冷却して磁石ユニットの外観を観察したところ、第2嵌合体に割れが生じていた。
【0120】
以上、本発明によれば、磁石ユニットは、破損が防止され、より高強度の磁場を発生することが可能となる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、超電導バルク体の破損が防止され、より高強度の磁場を発生させることが可能な核磁気共鳴用磁石ユニット及び核磁気共鳴用磁場発生装置を提供することができる。そのため、本発明は、産業上の利用可能性が極めて大である。
【符号の説明】
【0123】
1 NMR装置
10 磁場発生装置
20 制御装置
30 高周波発生装置
40 検出コイル
110、110A、110B、110C、110D、110E、110F 磁石ユニット
111 積層体
112、113、114、117、125、1131、1171 酸化物超電導バルク体
115 支持部材
120 冷却装置
121 コールドヘッド
130 断熱容器
140 磁場発生コイル