(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20230110BHJP
G09B 7/02 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B7/02
(21)【出願番号】P 2021041678
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渥美 広城
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-49679(JP,A)
【文献】特開2011-43917(JP,A)
【文献】特開2012-242887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56、17/00-19/26
G06F 15/02、15/04-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部と、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測する計時部と、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる制御部と、
を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、入力された前記計算式に従った計算の結果が不正解である場合には、正解である場合よりも前記所定の関数の理解度を低くした学習進捗情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、入力された前記計算式に従った計算の結果が不正解である場合には、前記計算式に含まれる前記所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との前記時間間隔を、正解である場合の時間間隔よりも長くして前記所定の関数の理解度を低くする
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記問題集から選択された問題を解く計算式に従った計算を行う毎に、前記所定の関数の理解度を示す前記学習進捗情報を前記記憶部の第2の記憶領域に記憶させ、
前記第2の記憶領域に記憶させた前記学習進捗情報を時系列で前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記入力部は、1桁の数値を入力するキーと、算術演算子を入力するキーと、前記所定の関数を入力するキーとを含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記入力部の各キーがハードウェアキーの関数電卓である
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記所定の関数は、三角関数を含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置が、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置に、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、情報処理装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の情報処理装置を利用した学習の普及が進んでいる。例えば、特許文献1には、学習者端末に表示された問題に対する学習者の解答や解答に要した時間等に基づいて、学習者の理解度を判定するオンライン学習支援システムが記載されている。
【0003】
また、学校での授業等において、学習者が、関数電卓と呼ばれる計算機を使用することがある。関数電卓は、例えば、三角関数等の関数を含む計算式を入力した後で、その計算式に従った計算を行うことができる。本明細書における関数電卓は、例えば、関数を含む計算式の計算等を実施可能なアプリケーションプログラムを実行する情報処理装置を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、関数電卓を利用した従来の学習では、問題に対する解答(すなわち計算結果)の正誤のみが評価の対象になっていることが多い。また、上述した特許文献1のオンライン学習支援システムにおいても、1つの問題に対する解答に要した時間等に基づいて学習者の理解度を判定する。このため、関数電卓を利用した従来の学習では、思考過程(例えば、どのような計算式で問題を解いたか等)における学習者の理解度を判定し、分析することができなかった。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、関数電卓を利用して学習する学習者の思考過程における理解度を判定することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部と、前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測する計時部と、前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる制御部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る制御方法は、所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置が、前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置に、前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、関数電卓を利用して学習する学習者の思考過程における理解度を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態に係る関数電卓の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る関数電卓が行う処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る関数電卓を用いた学習方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る情報処理装置の一例として、関数電卓と呼ばれる計算機を挙げる。以下の説明では、関数電卓における周知の機能、構成、動作等についての詳細な説明は省略する。
【0013】
図1は、関数電卓の外観の一例を示す正面図である。
図1に例示した関数電卓1は、筐体の一表面に、キー配列部2と、ディスプレイ3とが設けられている。
【0014】
キー配列部2には、数値を入力するキー、四則演算の演算子を入力するキー、三角関数等の所定の関数の計算に用いる関数キー等の複数のキー(例えば、ハードウェアキー)が配置されている。
【0015】
数値を入力するキーは、「0」を入力する0入力キー200、「1」を入力する1入力キー201、「2」を入力する2入力キー202、及び「3」を入力する3入力キー203を含む。四則演算の演算子を入力するキーは、加算の算術演算子「+」を入力する加算キー220、及び乗算の算術演算子「×」を入力する乗算キー222を含む。また、
図1に例示した関数電卓1では、四則演算の演算子を入力するキーの近傍に、計算式の入力を完了させる「=(イコール)」を入力するイコールキー230が配置されている。
【0016】
所定の関数の計算に用いる関数キーは、サイン(sin)の計算を行うsinキー240、コサイン(cos)の計算を行うcosキー241、タンジェント(tan)の計算を行うtanキー242を含む。また、関数キーは、対数(log、ln等)の計算を行うキー等を含む。
【0017】
また、本実施形態の関数電卓1は、関数電卓1を利用して問題を解く学習を実行する学習キー280が配置されている。
【0018】
キー配列部2に配置されたキーの幾つかは、複数の機能が割り当てられており、例えば、シフトキー260やファンクションキー(図示せず)と組み合わせることにより複数の機能のうちの1つの機能を選択することが可能になっている。例えば、シフトキー260を押してからsinキー240を押すと、サインの逆関数(sin-1、arcsin等と表記される)の計算を行うことができる。
【0019】
ディスプレイ3は、キー配列部2のキーを利用して入力された計算式や計算の結果、メニュー画面等を表示する表示装置である。ディスプレイ3は、例えば、ドットマトリクス型液晶ディスプレイ等である。
【0020】
図1に例示した関数電卓1は、キー配列部2に配置されたキーを押して三角関数等の関数を含む計算式を入力し、その計算式に沿った計算を行わせることができる。入力された計算式や計算結果は、ディスプレイ3に表示される。
【0021】
また、
図1に例示した関数電卓1は、学習キー280を押すと、関数電卓1を利用して問題を解くことができる。学習キー280を押すと、例えば、三角関数を利用して解く問題がディスプレイ3に表示され、関数電卓1の利用者(学習者)が表示された問題を解くための計算式を入力すると、入力された計算式に従った計算の結果と、正解及び不正解のどちらであるかの判定結果がディスプレイ3に表示される。更に、本実施形態の関数電卓1は、後述するように、学習者が計算式を入力したときのキー入力の時間間隔に基づいて学習者の理解度を判定し、分析することができる。
【0022】
図2は、一実施形態に係る関数電卓の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態に係る関数電卓1は、
図2に示すように、制御部100、記憶部110、入力部120、表示部130、及び計時部140を含む。入力部120は、上述したキー配列部2の複数のキーと対応し、表示部130は、上述したディスプレイ3と対応する。入力部120は、上述したハードウェアキーに限らず、例えば、表示部130(ディスプレイ3)の表示領域に重ねて配置されたデジタイザ(位置検出器)を含んでもよい。
【0024】
制御部100は、関数電卓1全体の動作を制御する。制御部100は、計算処理部101、表示処理部102、及び解答処理部103を含む。計算処理部101は、入力部120により入力された入力情報に基づいて、数値計算やプログラムの作成等の各種の処理を行う。表示処理部102は、入力部120により入力された入力情報、計算処理部101の処理結果等の表示部130への表示を制御する。解答処理部103は、ディスプレイ3に表示した問題に対する関数電卓1の利用者(学習者)の解答に関する処理を行う。解答処理部103は、例えば、学習者が問題を解くための計算式を入力したときのキー入力の時間間隔を計測して保持する。解答処理部103は、また、例えば、学習者が入力した計算式に沿った計算結果が正解及び不正解のどちらであるかの判定(以下「正誤判定」という)を行う。解答処理部103は、学習者が計算式を入力したときのキー入力の時間間隔に基づいて、学習者が問題を解いたときの思考過程における理解度を示す情報(学習進捗情報)を導出する。このとき、解答処理部103は、例えば、計算結果の正誤判定と関連付けて理解度を示す学習進捗情報を導出する。解答処理部103が導出した学習進捗情報は、表示処理部102によって表示部130に表示される。また、本実施形態の関数電卓1では、例えば、学習者が問題を解く毎に導出した学習進捗情報を記憶部110に記憶させ、記憶させた学習進捗情報を時系列で表示部130に表示させることもできる。より具体的には、関数電卓1は、所定の関数を含む計算式を入力して解く問題の理解度を示す学習進捗情報を時系列で表示部130に表示させることができる。
【0025】
制御部100の上述した各部の機能は、例えば、幾つかのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサにより実現される。制御部100の上述した各部の機能の一部は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現されてもよい。制御部100は、1つのハードウェアプロセッサにより実現されてもよいし、2つ以上のハードウェアプロセッサの組み合わせにより実現されてもよい。
【0026】
記憶部110は、関数電卓1の動作に関連する各種の情報を記憶する。
図2に例示した記憶部110は、第1の記憶領域、第2の記憶領域、第3の記憶領域、及び第4の記憶領域を含む。第1の記憶領域には、例えば、予め用意された関数及びプログラム等のデータ(プリセットデータ)111が格納される、第2の記憶領域には、例えば、関数電卓1の利用者が作成した関数、プログラム、及びテーブル等のデータ(ユーザデータ)112が格納される。第3の記憶領域には、関数電卓1の利用者(学習者)に提供する問題、その問題の解法(使用する計算式)、及びその問題の正解を含むデータ(問題集)113が格納される。第4の記憶領域には、関数電卓1の利用者が問題集の問題を解いた結果を示す結果情報を含むデータ(結果リスト)114が格納される。結果リスト114は、後述するように、学習進捗状況と関連付けられる、学習者が問題を解くための計算式を入力したときのキー入力の時間間隔に関する情報を含む。
【0027】
記憶部110は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。すなわち、記憶部110は、第1の記憶領域、第2の記憶領域、第3の記憶領域、及び第4の記憶領域の全てを含む1つのメモリ装置(記憶装置)ではなく、複数のメモリ装置の組み合わせによって実現される。記憶部110の一部として、例えば、プロセッサに内蔵されるバッファ等のメモリを利用することもできる。
【0028】
計時部140は、学習者が問題を解くための計算式を入力するときのキー入力の時間間隔を計測する。
【0029】
本実施形態の関数電卓1の利用者は、上述のように、学習キー280を押すことにより関数電卓1に表示された問題を解くことができる。学習キー280が押されると、関数電卓1は、例えば、
図3に例示したような処理を行う。
【0030】
図3は、一実施形態に係る関数電卓が行う処理の一例を説明するフローチャートである。
図3には、学習キー280に対して問題集の問題を解く機能と学習進捗情報を表示する機能とが割り当てられている場合に、関数電卓1が行う処理を例示している。
【0031】
学習キー280が押されると、関数電卓1は、問題集からの出題と学習進捗情報の表示とのどちらを行うかを利用者に選択させる選択画面を表示し(ステップS1)、出題と学習進捗情報表示のどちらが選択されたかを判定する(ステップS2)。ステップS1では、制御部100(より具体的には表示処理部102)が選択画面を表示部130に表示させる。ステップS2の判定は、制御部100(より具体的には、例えば、解答処理部103)が行う。学習進捗情報表示が選択された場合(ステップS2;学習進捗情報表示)、関数電卓1は、結果リスト114に基づく学習進捗情報を表示し(ステップS11)、処理を終了する。ステップS11では、制御部100が、記憶部110から結果リスト114を読み出し、読み出した結果リスト114に基づく学習進捗情報を表示部130に表示させる。より具体的には、例えば、結果リスト114の読出しは解答処理部103が行い、学習進捗情報の表示部130への表示は表示処理部102が行う。
【0032】
これに対し、選択画面における出題が選択された場合(ステップS2;出題)、関数電卓1は、問題を表示し(ステップS3)、キー入力の有無を判定する(ステップS4)。ステップS3では、制御部100が、記憶部110に記憶させた問題集113から問題を読み出し、読み出した問題を表示部130に表示させる。より具体的には、例えば、問題の読出しは解答処理部103が行い、問題の表示部130への表示は表示処理部102が行う。ステップS3では、関数電卓1の利用者が問題を選択可能であってもよいし、関数電卓1が所定の出題規則に従って又はランダムに問題を選択してもよい。制御部100は、問題を表示した後、その問題を解くための計算式を入力するキー入力を受け付けるまで、ステップS4の判定を行う(ステップS4;NO)。
【0033】
問題表示後にキー入力を受け付けた場合(ステップS4;YES)、関数電卓1は、受け付けたのがイコールキー(「=」)230の入力であるか否かを判定する(ステップSS5)。ステップS5の判定は、制御部100(より具体的には、例えば、計算処理部101)が行う。
【0034】
イコールキー230の入力でない場合(ステップS5;NO)、関数電卓1は、次に、入力間隔を計測中であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定は、制御部100(より具体的には、解答処理部103)が行う。制御部100は、計時部140によりキー入力の時間間隔を計測中である場合に、入力間隔を計測中であると判定する。
【0035】
入力間隔を計測していない場合(ステップS6:NO)、関数電卓1は、受け付けたキー入力と対応する入力情報を保持し、入力間隔の計測を開始する(ステップS7)。ステップS7では、例えば、制御部100(より具体的には、解答処理部103)が、入力情報を保持し、計時部140に計時処理を開始させる。
【0036】
入力間隔を計測中である場合(ステップS6:YES)、関数電卓1は、受け付けたキー入力と対応する入力情報及び入力間隔を保持し、入力間隔の計測をリセットする(ステップS8)。ステップS8では、制御部100(より具体的には、例えば、解答処理部103)が、計時部140から計測中の時間情報を取得し、取得した時間情報に基づいて導出される入力情報間の時間間隔を入力間隔として入力情報と関連付けて保持する。また、ステップS8では、制御部100(より具体的には、解答処理部103)が、計時部140に時間の計測をリセットさせる。
【0037】
ステップS7又はS8の処理を終えると、関数電卓1が行う処理は、ステップS4の判定に戻る。その後、関数電卓1は、入力間隔を計測しているので、イコールキー230の入力を受け付けるまで、キー入力を受け付けるたびにステップS8の処理を繰り返す。
【0038】
イコールキー230の入力を受け付けると、上述したステップS5の判定結果がYESとなる。イコールキー230の入力を受け付けると、関数電卓1は、入力された計算式に従った計算及び正誤判定の結果を表示し、結果リスト114を更新する(ステップS9)。ステップS9では、制御部100が、入力された計算式に従った計算と、その計算の結果が正解か不正解かの判定を行い、表示部130に計算の結果及び正誤判定の結果(正解又は不正解)を表示させる。入力された計算式に従った計算は、計算処理部101が行う。計算の結果の正誤判定は、解答処理部103が行う。解答処理部103は、学習者に解かせた問題の正解情報と、計算処理部101が行った計算の結果とを比較して、正解か不正解かを判定する。表示部130に計算の結果及び正誤判定の結果を表示させる処理は、表示処理部102が行う。表示処理部102は、例えば、問題と、計算処理部101が行った計算の結果と、解答処理部103が行った正誤判定の結果(例えば「正解」又は「不正解」)とを含む画面を表示部130に表示させる。また、ステップS9では、制御部100が、記憶部110に格納された結果リスト114を更新する。結果リスト114の更新は、解答処理部103が行う。解答処理部103は、保持している入力情報及び入力間隔と、正誤判定の結果とに基づいて、入力された計算式に含まれる所定の関数についての理解度と関連付ける情報(結果情報)を、結果リスト114に登録する。例えば、解答処理部103は、計算式に含まれる所定の関数についての入力間隔に対し正誤判定の結果に基づく重みづけを行った時間情報を、結果情報として結果リスト114に登録する。
【0039】
ステップS9の後、関数電卓1は、次の問題を表示するか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10の判定は、制御部100(より具体的には、解答処理部103)が行う。例えば、関数電卓1の利用者が次の問題を表示することと関連付けられたキーを押した場合に、制御部100は、次の問題を表示すると判定する。次の問題を表示する場合(ステップS10;YES)、関数電卓1が行う処理は、ステップS3に戻る。次の問題を表示しない場合(ステップS10;NO)、関数電卓1は、処理を終了する。
【0040】
このように、本実施形態の関数電卓1は、選択された問題を解くための計算式が入力される過程でキー入力の時間間隔を計測する。選択された問題を解くために利用する関数についての理解度が高い学習者は、理解度が低い学習者と比べて計算式の入力をスムーズに行うことができるため、キー入力の時間間隔が相対的に短くなる。また、本実施形態の関数電卓1では、後述するように、選択された問題に対する解答が不正解であった場合には所定の関数の入力に要した時間を計測した時間よりも長くする等の方法で、正解であった場合と比べて理解度が低くなるように、理解度の判定に用いる情報に重みづけをする。このようにすることで、キー入力の時間間隔が短い場合であっても、解答が不正解であれば学習者の理解度は低いと判定することができる。このため、本実施形態の関数電卓1では、計算式を入力するときの関数の入力に要した時間に関する情報に基づいて、その関数に対する学習者の理解度を判定することができる。言い換えると、本実施形態の関数電卓1では、問題を解く際の思考過程(例えば、どのような計算式で問題を解いたか等)における学習者の理解度を判定し、分析することができる。更に、本実施形態の関数電卓1では、所定の関数の入力に要した時間に関する情報を結果リスト114として記憶部110に記憶させることにより、その所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を時系列で表示部130に表示させることができる。
【0041】
図4は、一実施形態に係る関数電卓を用いた学習方法の一例を説明する図である。
図4の(A)には、関数電卓1のディスプレイ3に表示される出題画面の例が示している。
図4の(B)には、(A)のディスプレイ3に表示された問題を解くときの解答入力操作の例を示している。
図4の(C)には、計算及び正誤判定の結果のディスプレイ3への表示例を示している。
【0042】
学習者が、関数電卓1の学習キー280を押して問題集からの出題を選択すると(ステップS2;出題)、関数電卓1のディスプレイ3には、例えば、
図4の(A)に示したような、直角三角形における斜辺との角度が30°である隣辺の長さaを求める問題が表示される。この問題を解くための計算式は、下記数式(1)で表される。
a=120×cos30° (1)
【0043】
三角関数を理解している学習者は、問題を解くために、
図4の(B)に示したように、数式(1)の右辺を関数電卓1に入力する。具体的には、1入力キー201、2入力キー202、0入力キー200、乗算キー222、cosキー241、3入力キー203、及び0入力キー200を、この順番で押して計算式を入力する(ここでは、cosθにおけるθを度(°)として計算するように関数電卓1が設定されているとしている)。このとき、本実施形態の関数電卓1は、
図3を参照して上述した処理を行っているため、入力情報とともに、キー入力の時間間隔TD0~TD5を保持する。数値を入力するキー同士の時間間隔TD0、TD1、及びTD5の長さは、学習者の理解度の差の影響を受けにくい。しかしながら、「0」を入力してから「×」を入力するまでの時間間隔TD2や、「×」を入力してから「cos」を入力するまでの時間間隔TD3の長さは、三角関数に対する学習者の理解度の差の影響を受けやすい。一般的には、三角関数の理解度が低い学習者が計算式を入力したときの時間間隔TD2、及びTD3は、十分に理解している学習者が入力したときの時間間隔TD2、及びTD3よりも長くなる。
【0044】
計算式を入力した後、学習者がイコールキー230を押すと、関数電卓1は、計算式に従った計算及び計算の結果の正誤判定を行い、計算の結果及び正誤判定の結果をディスプレイ3に表示する(ステップS9)。
図4の(B)に例示したような正しい計算式が入力された場合、例えば、
図4の(C)に示したように、ディスプレイ3における問題が表示された領域の下方に位置する領域301及び領域302のそれぞれに、計算の結果及び正誤判定の結果が表示される。正解の場合、関数電卓1は、例えば、コサイン(cos)の理解度を示す情報として、「×」を入力してから「cos」を入力するまでの時間間隔TD3を正解であることと関連付けて、結果リスト114に登録する。
【0045】
図5は、結果リストの一例を示す図である。
図5に例示した結果リスト114では、理解度の判定の対象とする関数毎に、その関数を含む計算式を入力したときのキー入力の時間間隔(単位は秒)の履歴が記録(登録)されている。
【0046】
図5に例示した結果リスト114では、計算の結果に基づいて記録する時間間隔に重みづけがされている。具体的には、計算の結果が正解であった場合には計時部140で計測した時間間隔を記録し、計算の結果が不正解であった場合には計時部140で計測した時間間隔を4倍にして記録している。例えば、コサイン(cos)についての時間間隔のうちの3.28秒という時間間隔は、計時部140で計測した時間間隔が3.28秒でありかつ計算の結果が正解であったこと、又は計時部140で計測した時間間隔が0.82秒でありかつ計算の結果が不正解であったことを示す。しかしながら、いずれの場合も、0.68秒、0.59秒等の時間間隔と比べて十分に長いことから、学習者はコサイン(cos)の理解度が低いと判定することができる。
【0047】
計算の結果が不正解であった場合の時間間隔の重みづけは、例えば、入力された計算式におけるどの部分が誤りであるか(正解の計算式と異なるか)に応じて重みを変えてもよい。例えば、入力された計算式における理解度の判定の対象である関数が誤っている場合(例えば、cosを入力すべき部分にsinを入力している等)にのみ時間間隔を4倍にし、関数とは別の部分(例えば、数値の部分)が誤っている場合には計時部140で計測した時間間隔を結果リスト114に記録してもよい。また、例えば、入力された計算式における理解度の判定の対象である関数が誤っている場合(例えば、cosを入力すべき部分にsinを入力している等)の重みの値を、関数とは別の部分(例えば、数値の部分)が誤っている場合の重みの値よりも大きくしてもよい。
【0048】
なお、結果リスト114に記録(登録)する情報は、
図5を参照して上述した時間間隔に限らず、所定の関数に対する学習者の理解度の判定に利用可能な別の情報であってもよい。例えば、結果リスト114には、計時部140で計測した時間間隔と正誤判定の結果(正解又は不正解)を示す情報との組を記録してもよい。結果リスト114には、例えば、計時部140で計測した時間間隔と正誤判定の結果とに基づいて導出されるスコアを記録してもよい。
【0049】
更に、結果リスト114に記録する情報は、例えば、時間間隔、正誤判定の結果、及び問題の難易度に基づいて導出される情報であってもよい。
【0050】
関数電卓1の利用者(学習者)は、上述したように、結果リスト114に基づく学習進捗情報を表示部130(ディスプレイ3)に表示させることができる。学習進捗情報は、例えば、結果リスト114における選択された関数についての時間間隔等の情報であってもよいし、その情報に基づいて導出された別の情報であってもよい。学習進捗情報は、例えば、結果リスト114に記録された時間間隔等の情報をグラフ化した情報であってもよい。また、学習進捗情報は、例えば、結果リスト114に記録されたキー入力の時間間隔に基づいて導出された時間間隔の移動平均をグラフ化した情報であってもよい。
【0051】
図6は、学習進捗情報の表示例を示す図である。
図6には、関数電卓1のディスプレイ3に表示される学習進捗情報の一例として、サイン(sin)、コサイン(cos)、及びタンジェント(tan)についての、結果リスト114に記録された時間間隔に基づいて導出された移動平均311、312、及び313をグラフ化した情報を示している。
【0052】
図6に例示した学習進捗情報では、サイン及びタンジェントの移動平均311及び313が問題を解く毎に低下している一方で、コサインの移動平均312は、直近で上昇している。このような学習進捗情報(移動平均311、312、及び313)を見た学習者は、例えば、サイン及びタンジェントと比べてコサインの理解が不十分であると把握(判定)することができ、コサインを理解するための学習を優先的に行うようにすることができる。
【0053】
なお、関数電卓1のディスプレイ3に表示する学習進捗情報は、
図6を参照して上述した移動平均に限らず、学習者が所定の関数に対する理解度を把握(判定)することに利用可能な別の情報であってもよい。
【0054】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る情報処理装置、制御方法、及びプログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0055】
例えば、選択された問題を解くときに入力される計算式におけるキー入力の時間間隔の測定方法は、関数電卓1における計算式(特に関数部分)の入力方式に応じて変更することが可能である。また、関数電卓1の制御部100は、計算式の入力中にキー入力を取り消す操作が行われた場合、計算式から削除された入力情報とその入力情報に関連付けられるキー入力の時間間隔を削除(クリア)してもよい。また、関数電卓1の制御部100は、計算式の入力中に所定の関数についてのキー入力を取り消す操作が行われた場合には、そのキー入力についての入力情報とキー入力の時間間隔を保持し、結果リスト114に記録する情報に反映させてもよい。例えば、三角関数の理解度が低い学習者は、
図4を参照して上述した問題を解く計算式を入力するときに、「120×sin」と入力した後で関数の入力の誤りに気付き、「sin」を削除して「cos」を入力することがある。このような場合、「cos」を入力する直前に行われたのは「sin」を削除するキー入力であり、「cos」の入力に関連付けられる時間間隔は短くなる。しかしながら、学習者は「sin」と「cos」を間違えているため、正解したとしても理解度が十分に高いとはいえない。このため、正解した場合であっても、結果リスト114に記録させる時間情報に計算式の入力中に関数を間違えたことを反映させる。例えば、上述した不正解である場合に時間間隔を4倍にする例の場合、正解でありかつ計算式の入力中に関数を間違えたときには時間間隔を2倍にする。これにより、関数を間違えずに入力して正解した場合との差が生じ、この差が学習進捗情報に反映されるため、学習者は、三角関数を十分に理解できていないことを判定(把握)することができる。
【0056】
また、関数電卓1は、
図2に例示した制御部100、記憶部110、入力部120、表示部130、及び計時部140に加え、外部端末との通信を制御する通信部を含んでもよい。通信部は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))等の周知の近距離無線通信規格に従った無線通信により、外部端末と通信を行うことが可能な無線通信インタフェースであってもよい。また、通信部は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の伝送ケーブルを介して外部端末と通信可能に接続される通信インタフェース(入出力インタフェース)であってもよい。通信部を含む関数電卓1は、例えば、外部端末から問題集を取得すること、結果リスト114を外部端末に送信すること、及び外部端末で行われた結果リスト114に基づく学習者の理解度の詳細な分析結果を取得すること等を行うことができる。これにより、例えば、関数電卓1の問題集113を学習者の理解度に応じた難易度の問題に更新することが可能になる。
【0057】
また、関数電卓1は、例えば、問題を選択して表示部130(ディスプレイ3)に表示するときに、学習者の理解度が相対的に低い関数を含む計算式を使って解く問題を優先的に選択することが可能であってもよい。
【0058】
また、問題集113に含まれる問題は、数学等の教科や検定試験等の学習に利用可能な問題に限らず、例えば、関数電卓1における計算式の入力方法等の操作方法の学習(練習)に利用可能な問題を含んでもよい。操作方法の学習に利用可能な問題を含むことにより、関数電卓1の利用者は、例えば、メーカーや機種毎に異なるキー配列、関数の入力方法等を早期に学習し、操作が不慣れなことによりキー入力の時間間隔が長くなること(理解度が低いと判定されること)を早期に解消することができる。
【0059】
また、本発明に係る情報処理装置は、上述した実施形態で例示した関数電卓1に限らず、関数電卓1と同等の機能を有する他の電子装置、例えば、
図3に例示した処理を含むプログラムを実行することにより関数電卓として動作させることが可能なスマートフォンやタブレット型コンピュータ等であってもよい。
【0060】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部と、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測する計時部と、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる制御部と、
を含むことを特徴とする情報処理装置。
[付記2]
前記制御部は、入力された前記計算式に従った計算の結果が不正解である場合には、正解である場合よりも前記所定の関数の理解度を低くした学習進捗情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする付記1に記載の情報処理装置。
[付記3]
前記制御部は、入力された前記計算式に従った計算の結果が不正解である場合には、前記計算式に含まれる前記所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との前記時間間隔を、正解である場合の時間間隔よりも長くして前記所定の関数の理解度を低くする
ことを特徴とする付記2に記載の情報処理装置。
[付記4]
前記制御部は、
前記問題集から選択された問題を解く計算式に従った計算を行う毎に、前記所定の関数の理解度を示す前記学習進捗情報を前記記憶部の第2の記憶領域に記憶させ、
前記第2の記憶領域に記憶させた前記学習進捗情報を時系列で前記表示部に表示させる
ことを特徴とする付記1~3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
[付記5]
前記入力部は、1桁の数値を入力するキーと、算術演算子を入力するキーと、前記所定の関数を入力するキーとを含む
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
[付記6]
前記情報処理装置は、
前記入力部の各キーがハードウェアキーの関数電卓である
ことを特徴とする付記5に記載の情報処理装置。
[付記7]
前記所定の関数は、三角関数を含む
ことを特徴とする付記1~6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
[付記8]
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置が、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、
ことを特徴とする制御方法。
[付記9]
所定の関数を含む計算式を用いて解く問題及びその問題の正解を含む問題集を記憶させる第1の記憶領域を有する記憶部を含む情報処理装置に、
前記問題集から選択された問題を解く計算式が所定の入力部により入力されたときに、入力された入力情報間の時間間隔を計測し、
前記計算式に含まれる所定の関数を示す入力情報とその入力情報の前に入力された入力情報との時間間隔に基づいて、前記所定の関数の理解度を示す学習進捗情報を表示部に表示させる、
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0061】
1 関数電卓
2 キー配列部
200 0入力キー
201 1入力キー
202 2入力キー
203 3入力キー
220 加算キー
222 乗算キー
230 イコールキー
240 sinキー
241 cosキー
242 tanキー
260 シフトキー
280 学習キー
3 ディスプレイ
100 制御部
101 計算処理部
102 表示処理部
103 解答処理部
110 記憶部
111 プリセットデータ
112 ユーザデータ
113 問題集
114 結果リスト
120 入力部
130 表示部
140 計時部
311、312、313 移動平均