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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230110BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230110BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20230110BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230110BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08J5/18 CES
C09J7/24
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021210416
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2018533286の分割
【原出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2022044604
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2017020184
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久万 琢也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一馬
(72)【発明者】
【氏名】山中 康平
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189795(JP,A)
【文献】特開2014-114419(JP,A)
【文献】特開2003-257777(JP,A)
【文献】特開平07-214660(JP,A)
【文献】特開2011-122142(JP,A)
【文献】特開2018-127620(JP,A)
【文献】特開2015-107612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
C08J 5/18
C09J 7/38
C09J 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向ポリプロピレンフィルムの片面の最大高さ粗さをSz1、もう一方の面の最大高さ粗さをSz2(ただしSz1≦Sz2とする)としたとき、Sz1が50~500nmであり、少なくとも片面に長辺が10μm以下、高さが50~200nmの突起が100μm四方に5個以上の頻度で存在し、表層(I)と基層(II)の少なくとも2層からなり、前記表層(I)が、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂を0.1~4.5質量%含有する二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
最大高さ粗さSz2が100~1000nmである、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
Sz2/Sz1の値が3以下である、請求項1または2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
フィッシュアイの個数が20個/m以下である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
ヘイズが1%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
粘着フィルム用の塗工基材として用いられる、請求項1~のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に粘着層を設けてなる粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着層の厚みが1.0μm以下である、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
請求項またはに記載の粘着フィルムを、離型フィルムを介さずに巻き取ったフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性、透明性に優れ、かつ滑り性やハンドリング性や巻取性に優れたポリプロピレンフィルムおよび、それを用いた粘着フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、離型用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。特に、表面の離型性や機械特性に優れることから、プラスチック製品や建材や光学部材など、様々な部材の離型用フィルムや工程フィルムとして好適に用いられる。
【0003】
離型用フィルムへの要求特性はその使用用途によって適宜設定されるが、近年の機器の小型化、高精度化により、保護する対象となる製品にも薄膜かつ高品位が求められる場合があり、ポリプロピレンフィルムの表面平滑性が悪いと、たとえば光学用部材の離型フィルムとして用いたときに、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写して製品の視認性に影響を及ぼす場合がある。また、ポリプロピレンフィルムの透明性が悪いと、製品と貼り合わせた後、欠点観察などの工程検査を行う際に妨げとなる場合がある。
【0004】
一方、表面平滑性や透明性に優れたフィルムは一般的に滑り性が悪く、製膜中の搬送工程や巻取り工程、また後加工工程などでシワが発生したりハンドリング性が低下する場合があった。
【0005】
ポリプロピレンフィルムの滑り性を向上させる手段として、たとえば特許文献1~3に、フィルム表層に易滑粒子を用いる例が記載されている。
【0006】
易滑粒子を用いない例として、特許文献4には、エチレン系樹脂を添加して表面に凹凸を形成する例が記載されている。
【0007】
特許文献5~8に、フィルム表層に4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂を用いる例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-105893号公報
【文献】特開2005-138386号公報
【文献】特開平11-048335号公報
【文献】特開2002-40667号公報
【文献】特開2015-107612号公報
【文献】特開2004-114419号公報
【文献】特開2008-189795号公報
【文献】特開2005-280125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3では、しかしポリプロピレンは離型性が高いため粒子との親和性が低く、製膜工程や後加工工程で粒子が脱落したり、離型用フィルムや工程フィルムとして用いた場合、製品に粒子が付着する場合があった。また、特許文献1、2は、ヘイズが高く透明性が十分でないため、欠点検出を実施する工程に用いることができない場合があった。特許文献3は、透明性には優れているが、使用している粒子の粒子径が大きいため、表面平滑性が十分でない場合があった。
【0010】
特許文献4では、背面の表面平滑性が不十分であり、製品と貼り合わせて巻き取った際に背面の形状が製品に転写する場合があった。また、滑り性が不十分であり、粘着層を塗工して保護フィルムとして使用する際など、巻取りが困難な場合においてエア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合があった。
【0011】
特許文献5、6は4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂の添加濃度が5%以上と高いことから、フィルム表面の突起が粗大となり、粘着層を塗工して保護フィルムとして使用する際など、巻取りが困難な場合においてエア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合があり、またフィルムのヘイズも高いため欠点検出を実施することができない場合があった。また、特許文献7、8は4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂の添加濃度が低いものの、押出温度やキャスティングドラムの温度が高く、フィルム表面の突起が粗大となり、製品と貼り合わせて巻き取った際に背面の形状が製品に転写する場合があった。
【0012】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、表面平滑性、透明性に優れ、かつ滑り性やハンドリング性や巻取性に優れたポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、二軸配向ポリプロピレンフィルムの片面の最大高さ粗さをSz1、もう一方の面の最大高さ粗さをSz2(ただしSz1≦Sz2とする)としたとき、Sz1が50~500nmであり、少なくとも片面に長辺が10μm以下、高さが50~200nmの突起が100μm四方に5個以上の頻度で存在し、表層(I)と基層(II)の少なくとも2層からなり、前記表層(I)が、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂を0.1~4.5質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、表面平滑性、透明性に優れ、かつ滑り性やハンドリング性や巻取性に優れることから、塗工用の基材フィルムやカバーフィルムや保護フィルムなどの工業用フィルムとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、片面の最大高さ粗さをSz1、もう一方の面の最大高さ粗さをSz2(ただしSz1≦Sz2とする)としたとき、Sz1が50~500nmである。最大高さ粗さとは、最大山高さと最大谷深さの和を表す。Sz1は、より好ましくは50~400nm、更に好ましくは100~300nm、さらに好ましくは120~280nmである。Sz1が50nm未満であると、フィルム表面が平滑すぎて、製膜したフィルムを搬送したり巻き取る際に、ハンドリング性や巻取性が低下する場合がある。Sz1が500nmを超えると、基材フィルムやカバーフィルムとして用いた際、製品の表面に凹凸を転写してしまう場合がある。Sz1を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成やフィルムの積層構成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時のキャスト(溶融押出した樹脂のシート化工程)条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、キャストシートのβ晶を低減させることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂と他の樹脂とのブレンド条件、及び、溶融押出時の条件を後述の範囲内とし、樹脂の分散をコントロールすることが特に好ましい。ただし、両面の最大高さ粗さの値が等しい場合には、キャスティングドラムとの接触面の最大高さ粗さをSz1とした。
【0016】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面に長辺が10μm以下、高さが50~200nmの突起が100μm四方に5個以上の頻度で存在する。これにより、フィルムを巻き取る際のエア噛みやエア抜け性が適正に制御され、平滑なフィルムをシワなく、きれいに巻き取ることが可能となる。特に二軸配向ポリプロピレンフィルムに粘着層を塗工して、離型フィルムを介さずにフィルムロールを巻き取る際は、摩擦係数が大きくなるため、巻き取り時にシワが入りやすくなる。ポリプロピレンフィルムの背面は粘着層表面と接する為、背面の表面形状が巻き取り性に大きな影響を及ぼすため、上記の突起密度とすることにより、粘着層表面と背面の接触面積を小さくでき、巻きシワが入りにくく巻き取り性が良好となることが見出された。ポリプロピレンフィルム表面にはフィブリルなどの粗大突起部と平滑部が存在するが、フィブリル等の粗大突起は長径が大きく、粘着層と面接触し、巻き取り性改善にあまり寄与せず、エア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合があった。平滑部に粘着層と点接触が可能となる特定の突起高さ、長径を有する微小突起を数多く存在させることで、平滑性を維持したまま巻き取り性を改善できることが見出された。突起の高さが50nm未満であると、滑り性向上に寄与せず、巻取性向上に寄与しない場合がある。一方突起の高さが200nmを超えると、巻き取る際、突起間にエアが噛み込みやすくなり欠点が生じやすくなる場合がある。また、長辺が10μmを超える突起は巻取性向上への寄与が小さく、エア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合がある。巻取性向上の観点から突起頻度は7個以上であることがより好ましく、10個以上であることが更に好ましく、50個以上が特に好ましく、100個以上が最も好ましい。突起頻度が5個未満であると、滑り性向上に寄与せず、巻取性が低下する場合がある。フィルム表面の突起状態を上記範囲内とするためには、フィルムの原料の組成や調整方法、フィルムの積層構成、フィルム製膜時のキャスト(溶融押出した樹脂のシート化工程)条件や縦延伸条件を後述する範囲内とすることが効果的である。
【0017】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、片面の最大高さ粗さをSz1、もう一方の面の最大高さ粗さをSz2(ただしSz1≦Sz2とする)としたとき、最大高さ粗さSz2が100~1000nmであることが好ましい。Sz2は、より好ましくは200~800nm、更に好ましくは300~700nm、さらに好ましくは500~700nmである。Sz2が100nm未満であると、フィルム表面が平滑すぎて、製膜したフィルムを搬送したり巻き取る際に、ハンドリング性や巻取性が低下する場合がある。Sz2が1000nmを超えると、基材フィルムやカバーフィルムとして用いた際、製品の表面に凹凸が転写されてしまう場合がある。Sz2を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成やフィルムの積層構成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時のキャスト(溶融押出した樹脂のシート化工程)条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、キャストシートのβ晶を低減させることが好ましい。
【0018】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、Sz2/Sz1の値が1以上3以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以上3以下である。Sz2/Sz1の値が3を超えると、Sz1が小さすぎて、フィルム表面が平滑すぎて、製膜したフィルムを搬送したり巻き取る際に、ハンドリング性や巻取性が低下する場合や、Sz2が大きすぎて、基材フィルムやカバーフィルムとして用いた際、製品の表面に凹凸を転写してしまう場合がある。Sz2/Sz1の値を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成やフィルムの積層構成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時のキャスト(溶融押出した樹脂のシート化工程)条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、キャストシートのβ晶を低減させることが好ましい。
【0019】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィッシュアイの個数が20個/m以下であることが好ましい。フィッシュアイの個数はより好ましくは10個/m以下、更に好ましくは5個/m以下である。フィッシュアイの個数が20個/mを超えると、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いた際に歩留まりが低下する場合がある。フィッシュアイの個数を上記範囲とするためには、原料の組成や調整方法、フィルムの積層構成を後述する範囲内とし、原料中の添加剤成分や熱劣化してフィッシュアイの原因となるような樹脂の使用量を低減させることが効果的である。また、フィルム製膜時の条件を後述する範囲内とし、原料を溶融してシート化するまでにろ過により異物を除去することや、樹脂の滞留部を低減させることが効果的である。
【0020】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましい。より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.7%以下である。ヘイズが1%を超えると、フィルム表面の表面粗さが大きく、表面形状が被着体に転写する場合がある。また、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いた際に製品と貼り合わせた状態で欠点検出を実施できない場合がある。ヘイズは透明性の観点から低いほど好ましいが、実施的には0.05%程度が下限である。ヘイズを上記範囲とするためには、フィルムの原料組成やフィルムの積層構成を後述する範囲とし粒子などによる透明性の悪化を防ぐこと、また、フィルム製膜時のキャスト条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、キャストシートのβ晶を低減させることが好ましい。また、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂の添加濃度に関わらず、フィルムの透明平滑性を向上させるために、押出後のキャストドラムの温度を30℃以下に急冷させることや、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂をポリプロピレン樹脂に微細に分散させるために、あらかじめ二軸押出機で混練させてチップ化しておく手法が特に好ましい。
【0021】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、長手方向のヤング率EMDが1GPa以上であることが好ましい。長手方向のヤング率EMDが1GPa未満であると、表面保護フィルムとして用い被着体から剥離する際に剥離張力でフィルムが伸びて破れたり、被着体に剥離痕が残る場合がある。また、貼り合わせ時の搬送張力でフィルムが伸びてしまう場合がある。EMDはより好ましくは1.2GPa以上、更に好ましくは1.4GPa以上である。EMDは強いほど好ましいが、実質的には10GPa程度が上限である。EMDの値を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、フィルムを高倍率で二軸延伸して基材フィルムを得ることが好ましい。
【0022】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、幅方向のヤング率ETDが1GPa以上であることが好ましい。ETDが1GPa未満であると、搬送時にフィルムにシワが入りやすくなったり、被着体であるフィルムと貼り合わせてロール状に巻き取り、保管した際にフィルムの寸法変化によりロールにシワなどが発生する場合がある。ETDはより好ましくは1.5GPa以上、更に好ましくは2.0GPa以上、さらに好ましくは2.5GPa以上である。ETDは強いほど好ましいが、実質的には10GPa程度が上限である。ETDの値を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、フィルムを高倍率で二軸延伸して基材フィルムを得ることが好ましい。
【0023】
なお、本願においては、フィルムの製膜する方向に平行な方向を、製膜方向あるいは長手方向あるいはMD方向と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
【0024】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、幅方向の110℃熱処理後の熱収縮率が1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。幅方向の熱収縮率が1.0%を超えると、たとえば、保護フィルムやカバーフィルムとして他の素材と貼り合わせた後、熱がかかる乾燥工程等を通過する際などに、フィルムが変形して剥がれたり、しわが入る場合がある。また、被着体であるフィルムと貼り合わせてロール状に巻き取り、保管した際に環境温度が上がるとフィルムの寸法変化によりロールにシワなどが発生する場合がある。熱収縮率の下限は特に限定されないが、フィルムが膨張する場合もあり、実質的には-2.0%程度が下限である。熱収縮率を上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に二軸延伸後の熱固定、弛緩条件を後述する範囲とすることが効果的である。ここで熱収縮率とは、フィルムの幅方向について、幅10mm、長さ200mm(測定方向)の試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に標線として印しを付けて、万能投影機で標線間の距離を測定し試長(l)とし、次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で110℃に保温されたオーブン内で60分加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l)を万能投影機で測定して下記式にて求めたものであり、5本の平均値を熱収縮率とした。
熱収縮率={(l-l)/l}×100(%)。
【0025】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは用途によって適宜調整されるものであり特に限定はされないが、5μm以上100μm以下であることが好ましい。厚みが5μm未満であると、ハンドリングが困難になる場合があり、100μmを超えると、樹脂量が増加して生産性が低下する場合がある。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、厚みを薄くしても、強度(ヤング率)に優れるためハンドリング性を保つことができる。このような特徴を活かすためには、厚みは、5μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、5μm以上25μm以下であることが最も好ましい。厚みは他の物性を悪化させない範囲内で、押出機のスクリュウ回転数、未延伸シートの幅、製膜速度、延伸倍率などにより調整可能である。
【0026】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性と滑り性との両立の観点から、少なくとも2層からなる
【0027】
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの原料について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを主成分とするフィルムである。ここで、本発明において「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0029】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン原料は、上述した物性を満足すれば特に限定されないが、強度や耐熱性の観点から結晶性ポリプロピレン(以下、ポリプロピレン原料A)を用いることが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン原料Aは、好ましくは冷キシレン可溶部(以下CXS)が4質量%以下でありかつメソペンタッド分率が0.90以上であるポリプロピレンであることが好ましい。これらを満たさないと製膜安定性に劣ったり、フィルムの強度が低下したり、寸法安定性および耐熱性の低下が大きくなる場合がある。
【0031】
ここで冷キシレン可溶部(CXS)とは試料をキシレンで完全溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性の低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当しているものと考えられる。このような成分が多く樹脂中に含まれているとフィルムの熱寸法安定性に劣ることがある。従って、CXSは4質量%以下であることが好ましいが、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。このようなCXSを有するポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法、メタロセンPPを用いる方法等の方法が使用できる。
【0032】
同様な観点からポリプロピレン原料Aのメソペンタッド分率は0.90以上であることが好ましく、更に好ましくは0.94以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温での寸法安定性が高くなるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。このように立体規則性の高い樹脂を得るには、n-ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。
【0033】
また、ポリプロピレン原料Aとしては、より好ましくはメルトフローレート(MFR)が1~10g/10分(230℃、21.18N荷重)、特に好ましくは2~5g/10分(230℃、21.18N荷重)の範囲のものが、製膜性やフィルム強度の観点から好ましい。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0034】
ポリプロピレン原料Aとしては、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンが単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1、3-メチルブテンー1、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、5-エチルヘキセン-1、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、耐絶縁破壊特性、寸法安定性の点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
【0035】
また本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述したポリプロピレン原料Aの他に、強度向上や寸法安定性向上の観点から分岐鎖状ポリプロピレンHを含有させてもよい。ここでいう分岐鎖状ポリプロピレンHとは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の分岐構造を有するポリプロピレンである。この分岐構造の存在はH-NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。含有せしめる場合は、0.05~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~8質量%、さらに好ましくは1~5質量%含有せしめることが好ましい。上記分岐鎖状ポリプロピレンHを含有させることで溶融押出した樹脂シートの冷却(キャスト)工程で生成する球晶サイズを小さく制御でき、透明性や強度や表面平滑性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0036】
上記の分岐鎖状ポリプロピレンHとしては、製膜性の観点からメルトフローレート(MFR)は1~20g/10分の範囲にあるものが好ましく、1~10g/10分の範囲にあるものがより好ましい。また溶融張力については、1~30cNの範囲にあるものが好ましく、2~20cNの範囲にあるものがより好ましい。
【0037】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルムを構成するポリプロピレンポリマー中に含まれるエチレン成分の含有量が10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。エチレン成分の含有量が多いほど、結晶性が低下して、透明性を向上させやすいが、エチレン成分の含有量が10質量%を超えると、強度が低下したり、耐熱性が低下して熱収縮率が悪化したりする場合がある。また、押出工程中で樹脂が劣化しやすくなり、フィルム中のフィッシュアイが生じやすくなる場合がある。エチレン成分の含有量は0%でも良いが、結晶性が低下して、透明性を向上させやすい観点から0.1%以上含有されていることが好ましい。
【0038】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、耐熱性、強度の観点からフィルムを構成するポリマー中に含まれるポリプロピレンポリマーの含有量が95質量%以上であることが好ましい。より好ましくは96質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0039】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、融点が180℃以上の樹脂(以下、高融点樹脂)を含有することが好ましい。融点はより好ましくは180℃以上240℃以下である。フィルムの表層に高融点樹脂を含有させ、後述する条件でフィルム化することにより、上述した長辺が10μm以下、高さが50~200nmの突起を形成させることが可能となり、滑り性を向上させることができる。このような場合は、表層(I)と基層(II)の少なくとも2層からなるフィルムであって、表層(I)には高融点樹脂が含まれることが好ましい。高融点樹脂を表層(I)に存在させると、後述する溶融押出工程では、融解してポリプロピレン中に分散し、延伸工程では変形せず上述した突起を形成させることが可能となる。形成させる突起を上述したような微細なものにするためには、溶融押出工程においてポリプロピレン中に微分散させることが必要であり、ポリプロピレンとの親和性が高いことが重要である。この観点から、高融点樹脂はオレフィン系樹脂であることが好ましいが、オレフィン系樹脂の中でも、特に、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。4-メチルペンテン-1単位を含む樹脂は非オレフィン系樹脂と比較して、ポリプロピレン樹脂との親和性が高いため、分散性を高めることができる。4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製、“TPX”(登録商標)DX310、“TPX”(登録商標)DX231、“TPX”(登録商標)MX004などが例示できる。
【0040】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、表層(I)の樹脂組成物のうち、4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂の含有量は、0.1~4.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~4質量%、更に好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.1~2.5質量%である。4-メチルペンテン-1単位を含んでなるオレフィン系樹脂の含有量が5質量%より多い場合、突起が長手方向に長い山脈状になることがあり、形成される突起の長辺が10μmを超える場合や、突起の高さが200nmを超える場合があり、基材フィルムやカバーフィルムとして用いた際、製品の表面に凹凸が転写されてしまう場合や、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに粘着層を塗工して保護フィルムとして使用する際など、巻取りが困難な場合においてエア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合がある。含有量が0.1質量%より少ない場合、形成される突起の頻度が低くなりすぎて、滑り性向上に寄与せず、巻取性が低下する場合がある。
【0041】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表層に高融点樹脂を含有することが好ましいが、フィルム表面に形成させる突起を微細なものにするためには、高融点樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド条件、及び、フィルム製膜時の溶融押出条件を制御することが非常に重要である。
【0042】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの表層に使用する原料は、高融点樹脂とポリプロピレン樹脂をブレンドするが、あらかじめ二軸押出機で混練させてチップ化しておくことが好ましい。この際の混練温度は高融点樹脂の融点より高い方が分散均一性の観点から好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。混練温度が高融点樹脂の融点より低い場合、分散性が低下し、突起が粗大になる場合がある。混練温度の上限は特に定めないが、あまり高い場合、ポリプロピレン樹脂の熱分解が起きる場合があり、280℃が上限である。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、溶融押出する際の押出温度が高融点樹脂の融点以下であることが好ましい。より好ましくは10℃以下であり、20℃以下が更に好ましい。高融点樹脂の融点以上の温度で溶融押出をした場合、ポリプロピレン樹脂中に均一微細分散した高融点樹脂が溶融し、融合粗大化したり、押出時の剪断流動により長く伸ばされる場合がある。その結果、フィルム表面の突起が粗大になる場合や長辺が10μmを超える場合がある。溶融温度の下限は特に定めないが、あまり低い場合、押出時のろ圧上昇やポリプロピレン樹脂の未溶融物が発生する場合があり、200℃が下限である。
【0044】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン原料には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0045】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は酸化防止剤のブリードアウトの観点から重要である。すなわち、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン原料全量に対して0.03~1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると押出工程でポリマーが劣化してフィルムが着色したり、長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトにより透明性が低下する場合がある。より好ましい含有量は0.05~0.9質量%であり、特に好ましくは0.1~0.8質量%である。
【0046】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン原料には、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。既述の通り、分岐鎖状ポリプロピレン(H)は既にそれ自身でα晶またはβ晶の結晶核剤効果を有するものであるが、別種のα晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2-ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナクリドン系化合物等)等が例示される。但し、上記別種の核剤の過剰な添加は延伸性の低下やボイド形成等による透明性や強度の低下を引き起こす場合があるため、添加量は通常0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0047】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムには、有機粒子および無機粒子を含まないことが好ましい。ポリプロピレンは、有機粒子や無機粒子との親和性が低いため、2軸延伸フィルムに用いると延伸工程でボイドを発生させて透明性が悪化したり、粒子が脱落して工程や製品を汚染する場合があるため、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いる際は、有機粒子や無機粒子等の滑剤を含有しないことが好ましい。
【0048】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述した原料を用い、二軸延伸されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点においてステンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0049】
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を一態様を例にして説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0050】
まず、ポリプロピレン原料Aを90質量部と4-メチル-1-ペンテン系重合体を10質量部、二軸押出機に投入し、230~280℃、より好ましくは240~280℃、更に好ましくは250~280℃で溶融混練し、マスター原料を作製する。マスター原料20質量部とポリプロピレン原料A80質量部をドライブレンドしてA層(表層(I))用の単軸押出機に供給し、ポリプロピレン原料AをB層(基層(II))用の単軸押出機に供給し、200~260℃、より好ましくは200~230℃、更に好ましくは200~220℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、マルチマニホールド型のA層/B層/A層複合Tダイにて積層し、キャスティングドラム上に吐出し、A層/B層/A層の層構成を有する積層未延伸シートを得る。この際、積層厚み比は、1/8/1~1/50/1が好ましい。また、キャスティングドラムは表面温度が10~40℃であることが、透明性の観点から好ましい。また、A層/B層の2層積層構成としても構わない。
【0051】
キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアナイフ法が好ましい。エアナイフのエア温度は、0~50℃、好ましくは0~30℃で、吹き出しエア速度は130~150m/sが好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアが流れるようにエアナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
【0052】
また、キャスティングドラムへ密着させた後に、フィルムの非キャスティングドラム面をさらに強制的に冷却させることで、非キャスティングドラム面のβ晶生成を抑えることができ、フィルムの平滑性や透明性を向上させることができる。非キャスティングドラム面の冷却方法は、エアによる空冷、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、設備として簡易で、表面粗さの制御がし易く、平滑性が良好であるエアによる空冷が好ましい。
【0053】
得られた未延伸シートは、縦延伸工程に導入される。縦延伸工程ではまず複数の120℃以上150℃未満、好ましくは140℃以上150℃未満、更に好ましくは144℃以上149℃未満に保たれた金属ロールに未延伸シートを接触させて予熱し延伸温度まで昇温され、周速差を設けたロール間で長手方向に3~8倍に延伸した後、室温まで冷却する。予熱温度が120℃未満であると、延伸温度が150℃以上であると、フィルムの配向が弱くなり、強度が低下する場合がある。また延伸倍率が3倍未満であるとフィルムの配向が弱くなり、強度が低下する場合がある。また、この際、周速差を設けたロールの内、下流側の速度の速いロールの温度は、上流側のロールの温度より10℃以上低いことが好ましい。温度差が10℃未満であると、フィルム表面に形成される突起が長手方向に長い山脈状になり、形成される突起の長辺が10μmを超える場合があり、基材フィルムやカバーフィルムとして用いた際、製品の表面に凹凸を転写してしまう場合や、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに粘着層を塗工して保護フィルムとして使用する際など、巻取りが困難な場合においてエア噛みなどの欠点が生じやすくなる場合がある。上述した観点から上流側のロールの温度は120℃以上150℃未満であることが好ましく、下流側のロールの温度は30℃以上100℃未満であることがより好ましい。
【0054】
次いで縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し140~165℃の温度で幅方向に7~13倍に横延伸する。延伸温度が低いと、フィルムが破断したり透明性が低下する場合があり、延伸温度が高すぎると、フィルムの配向が弱く強度が低下する場合がある。また、倍率が高いとフィルムが破断する場合があり、倍率が低いとフィルムの配向が弱く強度が低下する場合がある。
【0055】
続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2~20%の弛緩率で弛緩を与えつつ、100℃以上160℃度未満の温度で熱固定し、クリップで幅方向を緊張把持したまま80~100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。
【0056】
以上のようにして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムは、包装用フィルム、表面保護フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができるが、特に表面平滑性に優れることから、表面保護フィルム、工程フィルム、離型フィルムとして好ましく用いることができる。
【0057】
次に、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを粘着フィルム用の塗工基材(基材フィルム)として用いる場合の例について説明する。
【0058】
粘着層に用いる粘着剤は、特に限定されず、ゴム系、ビニル重合系、縮合重合系、熱硬化性樹脂系、シリコーン系などを用いることができる。この中で、ゴム系の粘着剤としては、ブタジエン-スチレン共重合体系、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体系、イソブチレン-イソプレン共重合体系などを挙げることができる。ビニル重合系の粘着剤としては、アクリル系、スチレン系、酢酸ビニル-エチレン共重合体系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系などを挙げることができる。また、縮合重合系の粘着剤としては、ポリエステル系を挙げることができる。さらに熱硬化樹脂系の粘着剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系などを挙げることができる。
【0059】
これらの中でも透明性に優れ、耐候性、耐熱性、耐湿熱性、基材密着性等を考慮すると、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。かかるアクリル系粘着剤の具体例としては、綜研化学(株)製 “SKダイン”(登録商標)1310、1435、SKダイン1811L、SKダイン1888、SKダイン2094、SKダイン2096、SKダイン2137、SKダイン3096、SKダイン1852等が好適な例として挙げられる。
【0060】
また、前記のアクリル系粘着剤には、硬化剤をともに用いることが好ましい。硬化剤の具体例としては、例えばイソシアネートの場合、トルエンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4-4‘-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2-4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4-4‘―ジイソシアネート、ジシキウロヘキシルメタン-2-4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどがあげられる。硬化剤の混合割合は、粘着剤100質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。0.1質量部より少ないと乾燥炉内で粘着剤層の硬化が不十分となり、裏取られが生じる場合がある。10質量部を超えると、余剰となった硬化剤が基板に移行したり高温時にガス化して汚染原因となることがある。
【0061】
また、アクリル系粘着剤には、被着体(ガラスや機能フィルム)の材質に応じて、酸化防止剤や紫外線吸収剤、シランカップリング剤、金属不活性剤などを適宜添加配合してもよい。
【0062】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いた粘着フィルムは、粘着層の厚みdが1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは400nm以下である。粘着層の厚みdが1.0μmを超えると、基材フィルムの背面と粘着層表面との滑り性が悪化して巻取りが困難となる場合がある。また、粘着層の裏取られが生じる場合がある。裏取られとは、基材フィルムの片面に粘着層の溶液を塗工後、乾燥炉内で乾燥・硬化して本発明の粘着フィルムを、離型フィルムを介することなくロール状に巻き取った後、使用時に粘着フィルムを巻き出す際、基材フィルムの背面に粘着層の一部が移行してしまう現象をさす。粘着層の厚みdが1.0μmを超えると、乾燥炉での粘着層の乾燥が不十分となり、裏取られが生じる場合がある。粘着層の厚みを上記範囲とする方法は公知の技術を用いることができ、粘着層の溶液の固形分濃度や各種塗工方法における塗工厚み調整により制御可能である。粘着層の厚みは薄すぎると安定した塗工が困難であったり、粘着力が低すぎて被着体に粘着しない場合があるため、0.1μm程度が下限である。
【0063】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いた粘着フィルムは、ガラス板に貼り合わせた後の180°剥離力が1N/25mm以下であることが好ましい。剥離力はより好ましくは、0.5N/25mm以下、更に好ましくは0.2N/25mm以下、さらに好ましくは0.05N/25mm以下である。剥離力が1N/25mmを超えると、基材フィルムの背面と粘着層表面との滑り性が悪化して巻取りが困難となる場合や裏取られが生じる場合がある。剥離力を上記範囲とするには、粘着層の組成や厚みを後述する範囲とすること、また、フィルムの原料組成や製膜条件を後述する範囲とし、基材フィルムの表面粗さを制御することが効果的である。剥離力が0.01N/25mm未満であると、被着体との貼り合わせ後、搬送中などに粘着フィルムが剥がれてしまう場合があるため、下限は0.01N/25mm程度である。
【0064】
次に粘着層の製造方法を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0065】
まず、粘着層用の塗剤を準備する。塗剤は、上述した粘着剤や硬化剤などの添加剤を溶媒に溶かし用いることができる。溶剤は、コーターでの乾燥温度や塗剤の粘度などによって適宜調整して用いることができ、具体例としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール、n一ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンから選ばれる少なくとも1種以上の溶剤を用いることができる。
【0066】
塗剤中の固形分濃度は、塗剤の粘度や粘着層の厚みにより適宜選択されるものであるが、5~20質量%であることが好ましい。
【0067】
次に、コーターに上述した基材フィルムを搬送させ、粘着層用の塗剤を塗工する。ここで、粘着層を塗工する面は、基材フィルムのどちらの面でも構わないが、塗工面には予めコロナ処理などの前処理により、塗剤との濡れ性を向上しておくことが好ましい。一方、基材フィルムの背面は離型性を向上させるため、コロナ処理などの前処理を実施しないことが好ましい。塗布方式(塗工方式)は特に限定されず、メタバー方式、ドクターブレード方式、グラビア方式、ダイ方式、ナイフ方式、リバース方式、ディップ方式など既存の塗工方式を採用することができる。ただし、上述したとおり粘着層厚みは、1.0μm以下と薄膜であり、薄膜の塗工層を安定して得られる観点から、グラビア方式やリバース方式が好ましい。
【0068】
基材フィルムに粘着層用の塗剤を塗工後、乾燥炉に導き塗剤中の溶媒を除去して粘着フィルムを得る。ここでの乾燥温度は基材フィルムの耐熱性や溶剤の沸点により適宜設定されるものであるが、60~170℃であることが好ましい。60℃未満であると、粘着層の硬化が十分に進まず裏取られが生じる場合がある。170℃を超えると、基材フィルムが変形し平面性が悪化する場合がある。また乾燥時間は、15~60秒であることが好ましい。15秒未満では、粘着層の硬化が十分に進まず裏取られが生じる場合がある。60秒を超えると生産性が低下するため好ましくない。
【0069】
乾燥後の粘着フィルムを、その粘着面に離型フィルム等を貼り合わせずに巻取機で巻取り、粘着フィルムロールを得る。本発明の粘着フィルムは、上述した構成とすることにより、粘着層の硬化が十分進み、基材フィルムの背面と粘着層表面との滑り性も良好なことから、離型フィルムを介することなく巻き取っても裏取られや巻取り時のシワ発生などの問題がなく、品位の良い粘着フィルムロールを得ることができる。
【0070】
以上のようにして得られた本発明の粘着フィルムは、包装用フィルム、表面保護フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができるが、特に表面平滑性に優れることから、表面保護フィルム、工程フィルムとして好ましく用いることができる。
【実施例
【0071】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0072】
(1)フィルム厚み
マイクロ厚み計(アンリツ社製)を用いて測定した。フィルムを10cm四方にサンプリングし、任意に5点測定し、平均値を求めた。
【0073】
(2)粘着層の厚み
フィルメトリクス株式会社の「膜厚測定システム」型番F20を用いて測定した。フィルムを10cm四方にサンプリングし、任意に15点測定し、平均値を求めた。
【0074】
(3)最大高さ粗さ(Sz)
測定は(株)菱化システムVertScan2.0 R5300GL-Lite-ACを使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似にて面補正して表面形状を求めた。測定条件は下記のとおり。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=3で行い、その平均値を各面のSzとして採用した。
製造元 :株式会社菱化システム
装置名 :VertScan2.0 R5300GL-Lite-AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR-57 1/2インチ
対物レンズ:5x
中間レンズ:0.5x
波長フィルタ:530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS-Measure Version5.5.1
解析ソフトウェア:VS-Viewer Version5.5.1
測定領域:1.252mm×0.939mm 。
【0075】
(4)表面突起の個数
二軸配向ポリプロピレンフィルムの最大高さ粗さSzの値が高いフィルム表面(粗面)に対して原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定した。得られた画像について、Off-Line機能のRoughness Analysisにて各画像の突起高さを求めた後、長径が10μm以下、かつ、突起高さが50~200nmである突起の個数をカウントした。上記作業をn=12で実施し、その平均値(50μm四方の突起個数)を4倍して100μm四方当たりの表面突起個数とした。なお、長径は、突起高さが上記の突起に対して、突起の長手方向に断面プロファイルを表示させ、断面プロファイル曲線と平均高さ線である高さ0nmの線が交わった2点間の距離として読み取った。
測定装置 :NanoScope (R)IIIa AFM
(Digital Instruments社製)
カンチレバー :シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :50μm
走査速度 :0.7978Hz
Flatten Auto :オーダー3。
【0076】
(5)フィルムのヘイズ
フィルムを、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いて、JIS K7136(2000)に準じて23℃でのヘイズ値(%)を3回測定し、平均値を用いた。
【0077】
(6)フィッシュアイの個数
A4版に切り出したフィルムを黒色の紙上におき、蛍光灯下で目視により、光の透過度合いが弱い部分をマーキングした。それらの部分を光学顕微鏡で観察し、最大長さが50μm以上の部分をフィッシュアイとし、フィッシュアイの個数をカウントした。評価はA4サンプルで8枚分実施し、1m四方当たりに換算した。
【0078】
(7)巻取性評価
二軸配向ポリプロピレンフィルムの最大高さ粗さSzの値が低いフィルム表面(平滑面)の片面にアクリル系粘着剤(綜研化学社製、“SKダイン”(登録商標)1310)を酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)にて希釈し、粘着剤の固形分100質量部に対して硬化剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートD-90)2.0質量部を混合した塗剤を、グラビアコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン中で30秒間乾燥して、粘着層厚み300nmの粘着フィルムをそのまま(離型フィルムを介することなく)2,000m巻き取り、粘着フィルムロールとし、以下の基準で評価した。
【0079】
A:ロール巻取り時のシワやエア噛みなどはなく、外観は良好
B:巻取り中に小さなシワやエア噛みが見られるが巻き続けると解消する
C:シワやエア噛みが発生し、巻取り困難。
【0080】
(8)被着体への転写評価
二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび厚み40μmの日本ゼオン株式会社製“ゼオノアフィルム”(登録商標)を幅100mm、長さ100mmの正方形にサンプリングし、二軸配向ポリプロピレンフィルムの粗面と“ゼオノアフィルム”とが接触するように重ねて、それを2枚のアクリル板(幅100mm、長さ100mm)に挟んで、2kgの荷重をかけ、23℃の雰囲気下で24時間静置した。24時間後に、“ゼオノアフィルム”の表面(二軸配向ポリプロピレンフィルムが接していた面)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0081】
A:きれいであり、荷重をかける前と同等
B:弱い凹凸が確認される
C:強い凹凸が確認される。
【0082】
(実施例1)
結晶性ポリプロピレン(PP(a))(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分、メソペンタッド分率:0.94)90質量部、4-メチル-1-ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX004、融点:230℃)10質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、260℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてA層用のポリプロピレン原料(1)を得た。
【0083】
表層(A)用のポリプロピレン原料として上記ポリプロピレン原料(1)20質量部と上記結晶性PP(a)80質量部とをドライブレンドして、A層用の単軸の溶融押出機に供給し、コア層(B)用のポリプロピレン原料として、上記結晶性PP(a)100質量部をB層用の単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/22/1の厚み比で積層し、25℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、温度30℃、圧力0.3MPaの圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて145℃に予熱し、周速差を設けたロール間でフィルムの長手方向に4.2倍延伸を行った。この時、周速差を設けたロールの内、上流側のロールの温度は140℃、下流側の速度の速いロールの温度は、70℃とした。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、170℃で3秒間予熱後、165℃で8.0倍に延伸し、幅方向に10%の弛緩を与えながら150℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機に、ポリプロピレン原料(1)40質量部と上記結晶性PP(a)60質量部とをドライブレンドして供給し、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0085】
(実施例3)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機に、ポリプロピレン原料(1)10質量部と上記結晶性PP(a)90質量部とをドライブレンドして供給し、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
実施例2において、縦延伸の周速差を設けたロールの内、下流側のロールの温度を125℃とし、それ以外は実施例2と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0087】
(実施例5)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機およびB層用の単軸の溶融押出機のスクリュー回転数を下げてフィルムの最終厚みを6μmとし、更にキャスティングドラムの温度を20℃とし、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み6μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例6)
実施例1において、キャスティングドラムの温度を35℃とし、更に縦延伸の周速差を設けたロールの内、上流側のロールの温度を143℃とし、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例7)
実施例1において、表層(A)用のポリプロピレン原料として上記ポリプロピレン原料(1)20質量部と上記結晶性PP(a)40質量部、及び、自己回収PP原料40質量部とをドライブレンドして、A層用の単軸の溶融押出機に供給し、コア層(B)用のポリプロピレン原料として、上記結晶性PP(a)100質量部をB層用の単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。この際、自己回収PP原料とは、実施例1のフィルムを生産する際に生じたロス分をリサイクルした原料を示す。
【0090】
(実施例8)
実施例1のフィルムの巻取性評価において、粘着層厚みを1.2μmとして粘着フィルムを採取し、そのまま(離型フィルムを介することなく)2,000m巻き取り、粘着フィルムロールを採取した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。基材フィルムの背面と粘着層表面との滑り性が悪く、シワが発生した。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機に供給する原料を、ポリプロピレン原料(1)100質量部とし、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面に突起は観察されず、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機に供給する原料を、ポリプロピレン原料(1)50質量部と上記結晶性PP(a)50質量部とをドライブレンドして供給し、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面の突起がMD方向に10μmを超えて山脈状に連なった形状となり、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、A層用の単軸の溶融押出機に供給する原料を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX004)2質量部と上記結晶性PP(a)98質量部とをドライブレンドして供給し、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面の突起がMD方向に10μmを超えて山脈状に連なった形状となり、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0093】
(比較例4)
実施例2において、縦延伸の周速差を設けたロールの内、下流側のロールの温度を140℃とし、それ以外は実施例2と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面の突起がMD方向に10μmを超えて山脈状に連なった形状となり、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0094】
(比較例5)
実施例1において、キャスティングドラムの温度を45℃とし、更に縦延伸の上流側のロールの温度を145℃とし、それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面が粗く、転写評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0095】
(比較例6)
実施例1において、フィルム製膜時、250℃で溶融押出を行った以外は、実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面の突起がMD方向に10μmを超えて山脈状に連なった形状となり、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0096】
(比較例7)
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(PP(a))(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分、メソペンタッド分率:0.94)90質量部、4-メチル-1-ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX004、融点:230℃)10質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてA層用のポリプロピレン原料(1)を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で厚み24μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム表面の突起がMD方向に10μmを超えて山脈状に連なった形状となり、巻取性評価が悪化した。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】