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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】走行車システム、及び走行車の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230110BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021532712
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021297
(87)【国際公開番号】W WO2021010035
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019130470
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 亘
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 栄二郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 敏一
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134794(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087618(WO,A1)
【文献】特開平7-219633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行車と、
第1方向に延在する複数の第1軌道と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する複数の第2軌道とが格子状に設けられ、前記走行車が前記第1方向及び前記第2方向のいずれかへ選択的に進行可能な軌道と、
前記複数の走行車と相互に通信可能であり、前記複数の走行車を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
平面視において相互に隣り合う2本の前記第1軌道及び相互に隣り合う2本の前記第2軌道によって画定されるセル毎に、当該セルについて所定の走行車に占有許可を出した占有状態及びいずれの走行車にも占有許可を出さない非占有状態のいずれかを設定可能であり、
所定の前記セルから目的地に向けて前記第1方向へ進行しようとする前記走行車が存在する場合、前記所定のセルに対し前記第1方向に隣接する前記セルの占有許可を当該走行車に与えるか否かを判断し、
前記走行車は、
前記コントローラから前記隣接するセルの占有許可を得た場合に前記第1方向へ進行する一方、占有許可を得られない場合に前記所定のセルにおいて停止し、
前記コントローラは、前記走行車が前記隣接するセルの占有許可が得られず前記所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合、前記所定のセルから前記第2方向における複数である第1所定数先の前記セルを前記目的地に向かうための経由地とする走行指令を前記走行車に割り付け、
前記走行指令を前記走行車に割り付けるときに、前記所定のセルから前記第2方向における前記第1所定数先に前記セルが存在しない場合、又は、前記所定のセルから前記第2方向における前記第1所定数先の前記セルまでの間に他の走行車が存在している場合、前記所定のセルから前記第2方向における、前記第1所定数よりも少ない第2所定数先のセルを前記経由地とする走行指令を前記走行車に割り付け、
前記第2所定数は、前記走行車が前記所定のセルから前記第2方向に進行可能な最大数である、走行車システム。
【請求項5】
複数の走行車と、
第1方向に延在する複数の第1軌道と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する複数の第2軌道とが格子状に設けられ、前記走行車が前記第1方向及び前記第2方向のいずれかへ選択的に進行可能な軌道と、を備える走行車システムにおける、前記走行車を制御する方法であって、
平面視において相互に隣り合う2本の前記第1軌道及び相互に隣り合う2本の前記第2軌道によって画定されるセル毎に、当該セルについて所定の走行車に占有許可を出した占有状態及びいずれの走行車にも占有許可を出さない非占有状態のいずれかを設定することと、
所定の前記セルから目的地に向けて前記第1方向へ進行しようとする前記走行車が存在する場合、前記所定のセルに対し前記第1方向に隣接する前記セルの占有許可を当該走行車に与えるか否かを判断することと、
前記走行車に前記隣接するセルの占有許可を与えた場合、当該走行車を前記第1方向へ進行させ、前記走行車に前記隣接するセルの占有許可を与えない場合、当該走行車を前記所定のセルにおいて停止させることと、
前記走行車が前記隣接するセルの占有許可が得られず前記所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合、前記所定のセルから前記第2方向における複数である第1所定数先の前記セルを前記目的地に向かうための経由地とする走行指令を前記走行車に割り付けることと、を含み、
前記走行指令を前記走行車に割り付けるときに、前記所定のセルから前記第2方向における前記第1所定数先に前記セルが存在しない場合、又は、前記所定のセルから前記第2方向における前記第1所定数先の前記セルまでの間に他の走行車が存在している場合、前記所定のセルから前記第2方向における、前記第1所定数よりも少ない第2所定数先のセルを前記経由地とする走行指令を前記走行車に割り付け、
前記第2所定数は、前記走行車が前記所定のセルから前記第2方向に進行可能な最大数である、走行車の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車システム、及び走行車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工場では、半導体ウエハあるいはレチクルを収容する搬送容器(FOUP、レチクルPod)等の物品を走行車により搬送する走行車システムが用いられている。この走行車システムとして、軌道を走行する複数の走行車と、複数の走行車を制御するコントローラとを備えるシステムが知られている。複数の走行車は、それぞれ、無線通信等によって自己の現在位置等の情報をコントローラに送信する。コントローラは、走行車の位置等に基づいて、物品の搬送を担当する走行車を決定し、その走行車に走行指令を送信する。
【0003】
上記の走行車システムに用いられる軌道は、一般的に交差点を複数有している。交差点には、複数の走行車のうちいずれか1台により占有される場合に他の走行車を進入させない排他制御が行われるブロッキング区間が定められる。走行車は、コントローラからブロッキング区間の占有許可を得た場合にそのブロッキング区間を占有して通過可能となるが、コントローラから占有許可が得られない場合にはそのブロッキング区間に進入しないように制御される。上記の排他制御として、ブロッキング区間の通過許可が所定時間得られなければ、別方向の通過許可要求に変更する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-313461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような走行車システムでは、軌道の一部において走行車の渋滞が生じると、渋滞の先頭の走行車が移動するまで後の走行車が移動できなくなる、いわゆるデッドロック現象が発生する場合がある。特許文献1の構成では、別方向の通過許可を得た場合であっても、渋滞個所から十分に離れることができない場合がある。その結果、渋滞している走行車の近傍を通過するときなどに渋滞の影響を受けて、円滑に走行できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、走行車の渋滞を緩和してデッドロック現象の発生を抑制することが可能な走行車システム、及び走行車の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る走行車システムは、複数の走行車と、第1方向に延在する複数の第1軌道と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数の第2軌道とが格子状に設けられ、走行車が第1方向及び第2方向のいずれかへ選択的に進行可能な軌道と、複数の走行車と相互に通信可能であり、複数の走行車を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、平面視において相互に隣り合う2本の第1軌道及び相互に隣り合う2本の第2軌道によって画定されるセル毎に、当該セルについて所定の走行車に占有許可を出した占有状態及びいずれの走行車にも占有許可を出さない非占有状態のいずれかを設定可能であり、所定のセルから目的地に向けて第1方向へ進行しようとする走行車が存在する場合、所定のセルに対し第1方向に隣接するセルの占有許可を当該走行車に与えるか否かを判断し、走行車は、コントローラから隣接するセルの占有許可を得た場合に第1方向へ進行する一方、占有許可を得られない場合に所定のセルにおいて停止し、コントローラは、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合、所定のセルから第2方向における複数先のセルを目的地に向かうための経由地とする走行指令を走行車に割り付ける。
【0008】
また、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合において、所定のセルから第2方向における第1所定数先のセルを経由地として設定できない場合、又は、所定のセルから第2方向における経由地である第1所定数先のセルまで走行車が進行できない場合、コントローラは、所定のセルから第2方向における、第1所定数よりも少ない第2所定数先のセルを経由地とする走行指令を走行車に割り付けてもよい。また、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合において、コントローラは、走行車に割り付けられていた目的地までの走行指令を自己の管理下に維持しつつ当該走行指令を取り消してもよい。また、コントローラは、走行車が経由地に到達又は接近した場合、走行車に対して当該経由地から、取り消した走行指令における目的地までの走行指令を割り付けてもよい。
【0009】
本発明の態様に係る走行車の制御方法は、複数の走行車と、第1方向に延在する複数の第1軌道と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数の第2軌道とが格子状に設けられ、走行車が第1方向及び第2方向のいずれかへ選択的に進行可能な軌道と、を備える走行車システムにおける、走行車を制御する方法であって、平面視において相互に隣り合う2本の第1軌道及び相互に隣り合う2本の第2軌道によって画定されるセル毎に、当該セルについて所定の走行車に占有許可を出した占有状態及びいずれの走行車にも占有許可を出さない非占有状態のいずれかを設定することと、所定のセルから目的地に向けて第1方向へ進行しようとする走行車が存在する場合、所定のセルに対し第1方向に隣接するセルの占有許可を当該走行車に与えるか否かを判断することと、走行車に隣接するセルの占有許可を与えた場合、当該走行車を第1方向へ進行させ、走行車に隣接するセルの占有許可を与えない場合、当該走行車を所定のセルにおいて停止させることと、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合、所定のセルから第2方向における複数先のセルを目的地に向かうための経由地とする走行指令を走行車に割り付けることと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
上記した走行車システム、及び走行車の制御方法によれば、第1方向に進行する走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合、コントローラの制御により、第2方向における複数先のセルに進行することになる。そのため、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定時間以上継続して1つのセルに停止することを抑制することができる。その結果、渋滞に巻き込まれた走行車を渋滞個所からある程度離すことができ、格子状軌道における走行車の渋滞を緩和し、デッドロック現象の発生を抑制することが可能となる。
【0011】
また、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合において、所定のセルから第2方向における第1所定数先のセルを経由地として設定できない場合、又は、所定のセルから第2方向における第1所定数先の経由地まで走行車が進行できない場合、コントローラが、エリアから第2方向における、第1所定数よりも少ない第2所定数先のセルを経由地とする走行指令を走行車に割り付ける構成では、軌道のレイアウト又は経路閉鎖等により第1所定数先のセルを経由地に設定できない場合、又は他の走行車の存在等により第1所定数先のセルである経由地まで進行できない場合でも、第2所定数先のセルを経由地とする走行指令により、停止中のセルから確実に進行させることができる。
【0012】
また、走行車が隣接するセルの占有許可が得られず所定のセルにおいて所定時間継続して停止していた場合において、コントローラが、走行車に割り付けられていた目的地までの走行指令を自己の管理下に維持しつつ当該走行指令を取り消す構成では、取り消された走行指令の目的地を自己の管理下に維持しているため、経由地からその目的地を行先とする走行指令を容易に生成できる。また、コントローラが、走行車が経由地に到達又は接近した場合、走行車に対して当該経由地から、取り消した走行指令における目的地までの走行指令を割り付ける構成では、走行車の渋滞を緩和しつつ、走行車を当初の目的地に円滑に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る走行車システムの一例を示す斜視図である。
図2】走行車の一例を示す斜視図である。
図3】走行車の一例を示す側面図である。
図4】コントローラ及び車載コントローラの一例を示す機能ブロック図である。
図5】走行車システムの動作シーケンスの一例を示す図である。
図6】走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る走行車の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8図7に続いて、走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図9図8に続いて、走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図10図9に続いて、走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図11】実施形態に係る走行車の制御方法の他の例を示すフローチャートである。
図12】走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図13図12に続いて、走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図14】実施形態に係る走行車の制御方法の他の例を示すフローチャートである。
図15】走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
図16図15に続いて、走行車システムにおける走行車の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載する等適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ直交座標系により図中の方向を説明する。このXYZ直交座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に沿った一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。なお、走行車Vの走行方向は、以下の図に示された状態から他の方向に変化可能であり、例えば曲線方向に走行する場合もある。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向と反対の方向が-方向であるとして説明する。また、垂直軸まわり又はZ軸まわりの旋回方向をθZ方向と表記する。
【0015】
図1は、実施形態に係る走行車システムSYSの一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す走行車システムSYSで用いられる走行車Vの斜視図である。図3は、走行車Vの一例を示す側面図である。図4は、コントローラTC、及び、車載コントローラVCの一例を示すブロック図である。
【0016】
走行車システムSYSは、例えば半導体製造工場のクリーンルームにおいて、物品Mを走行車Vにより搬送するためのシステムである。走行車システムSYSは、第1走行車V1~第n走行車Vn(以下、走行車Vと総称する場合もある)(図4参照)と、複数の走行車Vを制御するコントローラ(コントローラTC、車載コントローラVC)と、を備える。本実施形態では、走行車Vが天井走行車である例を説明する。走行車Vは、走行車システムSYSの軌道Rに沿って走行し、半導体ウエハを収容するFOUP、又はレチクルを収容するレチクルPod等の物品Mを搬送する。走行車Vは、物品Mを搬送するため、搬送車と称する場合がある。
【0017】
軌道Rは、クリーンルーム等の建屋の天井又は天井付近に敷設されている。軌道Rは、処理装置(図示せず)、ストッカ(自動倉庫、図示せず)、バッファ(図示せず)等に対して上方に設けられる。上記の処理装置は、例えば、露光装置、コータディベロッパ、製膜装置、エッチング装置等であり、走行車Vが搬送するFOUP内の半導体ウエハに各種処理を施す。上記のストッカは、図示しないスタッカクレーン等を備え、走行車Vが搬送する物品Mを保管する。上記のバッファは、処理装置のロードポート近傍に設置された棚であり、走行車Vが搬送する物品Mを一時的に保管する。
【0018】
軌道Rは、第1軌道R1と、第2軌道R2と、交差用軌道R3と、を有する格子状軌道である。以下、軌道Rを格子状軌道Rと称する。第1軌道R1は、X方向(第1方向DR1)に沿って延在する。第2軌道R2は、Y方向(第2方向DR2)に沿って延在する。本実施形態では、第1方向DR1と第2方向DR2とが直交しており、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2とは、互いに直交する方向に沿って設けられるが、互いに接触しないように配置されている。
【0019】
交差用軌道R3は、第1軌道R1と第2軌道R2との交差部に配置される。交差用軌道R3は、第1軌道R1に対して第1方向DR1に隣り合うと共に第2軌道R2に対して第2方向DR2に隣り合っている。交差用軌道R3は、第1軌道R1と共に第1方向DR1の軌道を形成し、かつ、第2軌道R2と共に第2方向DR2の軌道を形成する。格子状軌道Rは、第1軌道R1と第2軌道R2とが互いに直交する方向に設けられることで、平面視で複数のマスが相互に隣り合った状態で縦横(第1方向DR1、第2方向DR2)に並んでいる。後述するように、各マスがグリッドセルC(セル)に相当する。1つのグリッドセルCは、平面視において、第2方向DR2において隣り合った2つの第1軌道R1と、第1方向DR1において隣り合った2つの第2軌道R2と、に囲まれた部分である。なお、図1では格子状軌道Rの一部について示しており、格子状軌道Rは、図示している構成から第1方向DR1(X方向)及び第2方向DR2(Y方向)に同様の構成が連続して形成されている。
【0020】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差用軌道R3は、吊り下げ部材H(図1参照)によって不図示の天井に吊り下げられている。吊り下げ部材Hは、第1軌道R1を吊り下げるための第1部分H1と、第2軌道R2を吊り下げるための第2部分H2と、交差用軌道R3を吊り下げるための第3部分H3と、を有する。第1部分H1及び第2部分H2は、それぞれ第3部分H3を挟んだ二か所に設けられている。
【0021】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差用軌道R3は、それぞれ、走行面R1a、R2a、R3aを有する。後述する走行車Vの走行車輪21は、走行面R1a、R2a、R3a上を転動する。第1軌道R1と交差用軌道R3との間、第2軌道R2と交差用軌道R3との間には、それぞれ間隙Dが形成される。間隙Dは、走行車Vが第1軌道R1を走行して第2軌道R2を横切る際、又は第2軌道R2を走行して第1軌道R1を横切る際に、走行車Vの一部である後述の連結部30が通過する部分である。従って、間隙Dは、連結部30が通過可能な幅に設けられている。第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差用軌道R3は、同一又はほぼ同一の水平面に沿って設けられる。本実施形態において、第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差用軌道R3は、走行面R1a、R2a、R3aが同一又はほぼ同一の水平面上に配置される。
【0022】
走行車システムSYSは、通信システムCSを備えている。通信システムCSは、走行車VとコントローラTCとの間の通信に用いられる。走行車VとコントローラTCとは、通信システムCSを介して通信可能に接続される。
【0023】
格子状軌道Rは、走行車Vが第1方向DR1及び第2方向DR2のいずれかへ選択的に進行可能となっている。各グリッドセルCには、複数の走行車Vのうちいずれか1台により占有される場合に他の走行車Vを進入させない排他制御が行われるブロッキング区間が設定される。すなわち、グリッドセルCは、ブロッキング区間としてのエリアでもある。所定のグリッドセルCにいる走行車Vは、コントローラTCから隣接するグリッドセルCの占有許可を得た場合にはそのグリッドセルCに進行可能であるが、コントローラTCから占有許可が得られない場合にはそのグリッドセルCに進行せず、所定のグリッドセルCにおいて停止する。このようなグリッドセルCにおける占有許可の付与により走行車V同士の干渉を防止することができる。
【0024】
走行車Vの構成について説明する。図2から図4に示すように、走行車Vは、本体部10と、走行部20と、連結部30と、車載コントローラVCとを有する。本体部10は、格子状軌道Rの下方(-Z側)に配置される。本体部10は、平面視で例えば矩形状に形成される。本体部10は、平面視で格子状軌道Rにおける1つのグリッドセルC(図1参照)に収まる寸法に形成される。このため、隣り合う第1軌道R1又は第2軌道R2を走行する他の走行車Vとすれ違うときに本体部10同士が干渉しない。
【0025】
本体部10は、上部ユニット17と、移載装置18とを備える。上部ユニット17は、連結部30を介して走行部20から吊り下げられる。上部ユニット17は、例えば平面視で矩形状であり、上面17aに4つのコーナー部を有する。4つのコーナー部のそれぞれが走行部20に連結されている。4つのコーナー部が走行部20に連結されることで、本体部10を安定して吊り下げることができ、かつ、本体部10を安定して走行させることができる。
【0026】
移載装置18は、上部ユニット17の下方に設けられる。走行車Vは、移載装置18を用いることにより、所定位置に対して物品Mの受け渡しをすることができる。移載装置18は、物品Mを保持する物品保持部13と、物品保持部13を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部14と、昇降駆動部14を水平方向にスライド移動させる横出し機構11と、横出し機構11を回転させる回動部12とを有する。
【0027】
物品保持部13は、物品Mのフランジ部Maを把持することにより、物品Mを吊り下げて保持する。物品保持部13は、例えば、水平方向に移動可能な爪部13aを有するチャックであり、爪部13aを物品Mのフランジ部Maの下方に進入させ、物品保持部13を上昇させることで、物品Mを保持する。物品保持部13は、ワイヤあるいはベルト等の吊り下げ部材13bに接続されている。爪部13aの動作は、車載コントローラVCにより制御される。
【0028】
昇降駆動部14は、例えばホイストであり、吊り下げ部材13bを繰り出すことにより物品保持部13を下降させ、吊り下げ部材13bを巻き取ることにより物品保持部13を上昇させる。昇降駆動部14は、車載コントローラVCに制御され、所定の速度で物品保持部13を下降又は上昇させる。また、昇降駆動部14は、車載コントローラVCに制御され、物品保持部13を目標の高さに保持する。
【0029】
横出し機構11は、例えばZ方向に重ねて配置された複数の可動板を有する。可動板は、Y方向に相対的に移動可能である。最下層の可動板には、昇降駆動部14が取り付けられている。横出し機構11は、不図示の駆動装置により可動板を移動させ、最下層の可動板に取り付けられた昇降駆動部14及び物品保持部13を例えば、走行車Vの走行方向に対して直交する水平方向に横出しさせる(スライド移動させる)ことができる。可動板の動作は、車載コントローラVCにより制御される。
【0030】
回動部12は、横出し機構11と上部ユニット17との間に設けられる。回動部12は、回動部材12aと、回動駆動部12bとを有する。回動部材12aは、鉛直方向の軸周り方向に回動可能に設けられる。回動部材12aは、下面側で横出し機構11を支持する。回動駆動部12bは、例えば電動モータ等が用いられ、回動部材12aを回転軸AX1の軸周り方向に回動させる。回動部12は、回動駆動部12bからの駆動力によって回動部材12aを回動させ、横出し機構11(昇降駆動部14及び物品保持部13)を回転軸AX1の軸周り方向に回転させる。つまり、回動部12は、移載装置18を回転軸AX1まわりに回転させる。
【0031】
また、図2及び図3に示すように、移載装置18及び移載装置18で保持している物品Mを囲むようにカバーWが設けられてもよい。カバーWは、下端を開放した筒状であって、横出し機構11の可動板が突出する部分を切り欠いた形状を有している。カバーWは、上端が回動部12の回動部材12aに取り付けられており、回動部材12aの回動に伴って回転軸AX1の軸まわりに回動する。
【0032】
走行部20は、走行車輪21と、補助車輪22とを有する。走行車輪21は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ配置される。走行車輪21のそれぞれは、連結部30に設けられた車軸に取り付けられている。車軸は、XY平面に沿って平行又はほぼ平行に設けられている。走行車輪21のそれぞれは、後述する走行駆動部33の駆動力により回転駆動する。走行車輪21のそれぞれは、格子状軌道Rにおいて、第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差用軌道R3の走行面R1a、R2a、R3a上を転動し、走行車Vを走行させる。なお、4つの走行車輪21の全てが走行駆動部33の駆動力により回転駆動することに限定されず、4つの走行車輪21のうち一部が回転駆動する構成であってもよい。
【0033】
走行車輪21は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。補助車輪22は、走行車輪21の走行方向の前後にそれぞれ1つずつ配置される。補助車輪22のそれぞれは、走行車輪21と同様に、XY平面に沿って平行又はほぼ平行な車軸の軸周りに回転可能となっている。補助車輪22の下端は、走行車輪21の下端より高くなるように設定されている。従って、走行車輪21が走行面R1a、R2a、R3aを走行しているときは、補助車輪22は、走行面R1a、R2a、R3aに接触しない。また、走行車輪21が間隙D(図1参照)を通過する際には、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、走行車輪21の落ち込みを抑制している。なお、1つの走行車輪21に2つの補助車輪22を設けることに限定されず、例えば、1つの走行車輪21に1つの補助車輪22が設けられてもよいし、補助車輪22が設けられなくてもよい。
【0034】
図2に示すように、連結部30は、本体部10の上部ユニット17と走行部20とを連結する。連結部30は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ設けられる。この連結部30によって本体部10は、走行部20から吊り下げられ、格子状軌道Rより下方に配置される。連結部30は、支持部材31と、接続部材32とを有する。支持部材31は、走行車輪21の回転軸及び補助車輪22の回転軸を回転可能に支持する。支持部材31により、走行車輪21と補助車輪22との相対位置を保持する。支持部材31は、例えば板状に形成され、間隙D(図1参照)を通過可能な厚さに形成される。
【0035】
接続部材32は、支持部材31から下方に延びて上部ユニット17の上面17aに連結され、上部ユニット17を保持する。接続部材32は、後述する走行駆動部33の駆動力を走行車輪21に伝達する伝達機構を内部に備える。この伝達機構は、チェーン又はベルトが用いられる構成であってもよいし、歯車列が用いられる構成であってもよい。接続部材32は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。この接続部材32が旋回軸AX2を中心として旋回することで、支持部材31を介して走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させることができる。
【0036】
連結部30は、走行駆動部33と、方向転換機構34とを備える。走行駆動部33は、接続部材32に取り付けられる。走行駆動部33は、走行車輪21を駆動する駆動源であり、例えば電動モータ等が用いられる。4つの走行車輪21は、それぞれ走行駆動部33によって駆動されて駆動輪となる。4つの走行車輪21は、同一又はほぼ同一の回転数となるように車載コントローラVCによって制御される。なお、4つの走行車輪21のうちいずれかを駆動輪として用いない場合は、その接続部材32に走行駆動部33は取り付けられない。
【0037】
方向転換機構34は、連結部30の接続部材32を、旋回軸AX2を中心として旋回させることにより、走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させる。走行車輪21をθZ方向に旋回させることにより、走行車Vの走行方向を第1方向DR1とする第1状態から走行方向を第2方向DR2とする第2状態に、又は走行方向を第2方向DR2とする第2状態から走行方向を第1方向DR1とする第1状態に切り替えることができる。
【0038】
方向転換機構34は、駆動源35と、ピニオンギア36と、ラック37とを有する。駆動源35は、走行駆動部33において旋回軸AX2から離れた側面に取り付けられている。駆動源35は、例えば電動モータ等が用いられる。ピニオンギア36は、駆動源35の下面側に取り付けられており、駆動源35で発生した駆動力によりθZ方向に回転駆動する。ピニオンギア36は、平面視で円形状であり、外周の周方向に複数の歯を有する。ラック37は、上部ユニット17の上面17aに固定される。ラック37は、上部ユニット17の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ設けられ、走行車輪21の旋回軸AX2を中心とした円弧状(扇形状)に設けられる。ラック37は、外周側の周方向に、ピニオンギア36の歯と噛み合う複数の歯を有する。
【0039】
ピニオンギア36及びラック37は、互いの歯が噛み合った状態で配置される。ピニオンギア36がθZ方向に回転することにより、ラック37の外周に沿うようにピニオンギア36が旋回軸AX2を中心とする円周方向に移動する。このピニオンギア36の移動により、接続部材32が旋回し、走行駆動部33及び方向転換機構34がピニオンギア36と共に旋回軸AX2を中心とする円周方向に旋回する。
【0040】
方向転換機構34の旋回により、上面17aの4つのコーナー部に配置された走行車輪21及び補助車輪22のそれぞれが旋回軸AX2を中心としてθZ方向に90度の範囲で旋回する。方向転換機構34の駆動は、車載コントローラVCによって制御される。車載コントローラVCは、4つの走行車輪21を同一のタイミングで旋回させてもよいし、異なるタイミングで旋回させてもよい。走行車輪21及び補助車輪22を旋回させることにより、走行車輪21が第1軌道R1及び第2軌道R2の一方に接触した状態から他方に接触した状態に移行する。換言すれば、走行車輪21の回転軸の方向が第1方向DR1及び第2方向DR2の一方とされた状態から他方とされる状態に移行する。このため、走行車Vの走行方向を第1方向DR1(X方向)とする第1状態と、走行方向を第2方向DR2(Y方向)とする第2状態とで切り替えることができる。
【0041】
走行車Vは、自車の位置情報を検出する位置検出部(図示せず)を備える。この位置検出部は、位置情報を示す位置マーカ(図示せず)を検出することにより、自車の現在位置を検出する。位置検出部は、非接触により位置マーカを検出する。位置マーカは、例えば、格子状軌道RのグリッドセルC毎(エリア毎)に設置される。
【0042】
車載コントローラVCは、走行車Vを統括的に制御する。車載コントローラVCは、図4に示すように、各種データを記憶(格納)する記憶部51と、通信部52と、走行制御部53と、移載制御部54と、状態情報処理部55と、占有許可要求部56とを備える。車載コントローラVCは、例えば、コンピュータ装置である。車載コントローラVCは、本実施形態では本体部10の上部ユニット17に設けられる例を示しているが、カバーWに設けられてもよいし、本体部10の外部に設けられてもよい。
【0043】
通信部52は、無線により、コントローラTC又は他の装置(外部装置)との間で通信を行う。走行制御部53は、走行駆動部33及び方向転換機構34を制御することにより、走行車Vの走行を制御する。走行制御部53は、例えば、走行(走行速度)、停止に関する動作、方向転換に関する動作を制御する。走行制御部53は、後述する走行指令CMに基づいて、走行を制御する。移載制御部54は、移載装置18を制御することにより、移載動作を制御する。移載制御部54は、所定の場所に配置される物品Mを把持して保持する荷つかみ動作、保持した物品Mを所定の場所に下ろして開放する荷下ろし動作を制御する。
【0044】
状態情報処理部55は、周期的に状態情報Aを生成し更新する。状態情報Aは記憶部51に格納される。状態情報処理部55は、状態情報Aを、通信部52を介してコントローラTCに送信する。状態情報Aは、例えば、自車の現在位置の情報、現在の移動速度を示す情報、荷の有無を示す情報、走行指令CM等の各種指令の実行状態(実行中、実行完了、実行失敗)に関する情報などを含む。
【0045】
占有許可要求部56は、走行車Vが走行指令CMにより格子状軌道Rを走行する場合、現在のグリッドセル(所定のグリッドセル)Cからこの走行指令CMに定められた走行方向において隣接するグリッドセルCに進行するための占有許可要求を生成する。占有許可要求部56は、走行方向において現在のグリッドセルCに隣接するグリッドセルCについて1つずつ占有許可要求を生成してもよいし、現在のグリッドセルCから走行方向における複数のグリッドセルCについて複数の占有許可要求を生成してもよい。占有許可要求部56が生成した占有許可要求は、通信部52を介してコントローラTCに送信される。占有許可要求は、状態情報Aに含まれて送信されてもよいし、状態情報Aとは別に送信されてもよい。
【0046】
コントローラTCは、各種指令を走行車Vに送信することにより、走行車Vを制御する。コントローラTCは、各種データを記憶(格納)する記憶部61と、通信部62と、走行指令生成部63と、割り付け部64と、状態情報要求部65と、占有許可判断部66と、判定部67と、タイマ68と、を有する。コントローラTCは、例えば、CPU、メインメモリ、記憶装置、通信装置等を備え、各種情報の処理を行うコンピュータ装置である。コントローラTCは、例えば、各種の情報(データ)の処理、情報の記憶、情報の入出力、情報の通信(送受信)等を行う。コントローラTCには、各走行車Vの制御に必要な情報又は制御プログラムが記憶部61に格納されている。なお、図4に示すコントローラTCの構成は一例であり、他の構成が適用されてもよい。
【0047】
通信部62は、無線により、車載コントローラVC又は他の装置(外部装置)との間で通信を行う。走行指令生成部63は、走行指令CMを生成する。走行指令CMは、走行車Vを所定の経路に沿って走行させる指令である。なお、走行指令CMには、走行車Vの走行経路を含む指令であってもよいし、走行車Vの走行経路を含まず目的地が指定された指令であってもよい。走行指令CMが走行経路を含まない場合、走行車Vの車載コントローラVCがこの走行指令CMに指定された目的地までの走行経路を生成する。割り付け部64は、走行指令生成部63において生成された走行指令CMを走行車Vに割り付ける。状態情報要求部65は、走行車Vに対して状態情報Aを送信するように要求する状態情報要求指令RQを送信する。
【0048】
占有許可判断部66は、車載コントローラVCから送信された占有許可要求を受け付けて、占有許可の対象であるグリッドセルCの占有許可を、占有許可要求を出した走行車Vに与えるか否かを判断する。占有許可判断部66は、そのグリッドセルCの占有許可を他の走行車Vに既に送信している場合(いずれかの走行車VによってグリッドセルCが占有されている場合)は、他の走行車Vが他のグリッドセルCに進行したことを確認した後(そのグリッドセルCにおける占有が解除された後)でなければ占有許可を与えない。占有許可判断部66は、グリッドセルCにおける占有許可を与える場合、占有許可に関する情報を生成し、通信部62を介して、占有許可要求を送信した走行車Vに送信する。
【0049】
本実施形態では、コントローラTCが占有許可判断部66を備えているが、この形態に限定されない。例えば、占有許可判断部66がコントローラTCとは別のコントローラ(例えばブロッキングコントローラ)に設けられる形態であってもよい。
【0050】
判定部67は、走行車Vからの状態情報Aに基づいて、各種の判定を行う。例えば、判定部67は、走行車Vが所定のグリッドセルCにおいて所定時間継続して停止しているか否かを判定する。換言すれば、走行車Vが停止した時点を始点として、走行車Vが停止したまま所定時間経過したか否かを判定する。この場合、判定部67は、状態情報Aのうち現在の移動速度がゼロか否かを検出し、移動速度がゼロ(又はほぼゼロ)の場合に走行車Vが停止中であると判定する。走行車Vが停止中であると判定した場合、判定部67は、タイマ68により停止時間を計測し、走行車Vが停止中でなくなった場合(移動速度がゼロではなくなった場合)には計測を中止するが、停止したままの状態が継続すれば計測を続行する。そして、判定部67は、タイマ68により計測される停止時間が所定の閾値に到達したか否かを判定する。停止時間が所定の閾値に到達したことが検出された場合、判定部67は、走行車Vが所定時間継続して停止していると判定する。
【0051】
判定部67により、走行車Vが所定時間継続して停止していると判定された場合、走行指令生成部63は、先の走行指令CMにより進行しようとしている方向(第1方向DR1)に代えて、走行車Vが停止しているグリッドセル(所定のグリッドセル)Cから、異なる方向(第2方向DR2)における複数先(複数マス先)のグリッドセルCを目的地に向かうための経由地とする新たな走行指令CMを生成する。走行指令生成部63が生成した新たな走行指令CMは、割り付け部64により、所定時間継続して停止している走行車Vに割り付けられる。
【0052】
また、判定部67は、新たな走行指令CMを割り付けられた走行車Vが、この走行指令CMにより指示された経由地に到達又は近接したか否かを判定する。判定部67は、例えば、状態情報Aのうち走行車Vの現在位置であるグリッドセルCを検出し、現在のグリッドセルCと経由地のグリッドセルCとの距離(又は、間に配置されるグリッドセルCの数)を算出する。判定部67は、算出結果が0である場合に、走行車Vが経由地に到達したと判定し、又は、算出結果が所定の閾値以下となった場合に、走行車Vが経由地に近接したと判定する。
【0053】
また、判定部67は、新たな走行指令CMの走行経路に進行できない区間が存在するか否かを判定してもよい。判定部67により、新たな走行指令CMの走行経路に進行できない区間が存在すると判定された場合、走行指令生成部63は、その進行できない区間の手前のグリッドセルCを経由地とする新たな走行指令CMを生成してもよい。走行指令生成部63が生成した新たな走行指令CMは、割り付け部64により、所定時間継続して停止している走行車Vに割り付けられる。
【0054】
次に、走行車システムSYSの動作について説明する。図5は、走行車システムSYSの動作シーケンスの一例を示す図である。図6は、走行車システムSYSにおける走行車Vの動作の一例を示す図である。なお、図6及び後述する図8から図10では、格子状軌道Rの一部を示している。また、図6及び図8から図10において、数字「1~60」又は「1~120」で示される数字は、それぞれ、グリッドセルC1~C60、又はグリッドセルC1~C120を示している。
【0055】
コントローラTCの走行指令生成部63は、走行指令CM1を生成する。走行指令CM1は、例えば、図6に示すように、グリッドセルC42からグリッドセルC19までの2点鎖線として示される走行経路に沿って進行させる指令である。この走行指令CM1は、グリッドセルC42の対応位置に載置された物品MをグリッドセルC19に搬送させる搬送指令であってもよい。
【0056】
割り付け部64は、図5に示すように、生成された走行指令CM1を走行車Vに割り付ける(ステップS1)。ステップS1において、割り付け部64は、例えば、複数の走行車Vのうち、物品Mを搬送可能な走行車V1を選択し、選択した走行車V1に走行指令CM1を割り付ける。コントローラTCは、各走行車Vの状態情報、走行車システムSYSに関連する各部(例、処理装置、保管装置、バッファ)の位置を示すマップ情報、物品Mの位置情報等(以下、これらの情報をシステム情報と称す)を有している。割り付け部64は、これらの情報に基づいて、物品Mを搬送可能な走行車V1に走行指令CM1を割り付ける。なお、コントローラTCは、走行車V1~Vnとの間で周期的な通信を行うことにより、システム情報を更新している。
【0057】
走行車V1は、走行指令CM1を受信すると、車載コントローラVCの走行制御部53により、走行指令CM1に基づいて走行が制御され、その走行指令CM1を実行する(ステップS2)。ステップS2において、走行車V1が格子状軌道Rを走行する場合、上記したように、グリッドセルC42(所定のグリッドセルC)から走行方向における次のグリッドセルC(隣接するグリッドセルCであり、図6ではグリッドセルC32)について、占有許可要求部56(図4参照)は、占有許可要求をコントローラTCに送信する。コントローラTCは、占有許可判断部66(図4参照)により、占有許可要求の対象であるグリッドセルC32について進行の可否を判断し、進行可能であれば、走行車V1に対してグリッドセルC32の占有許可を送信する。
【0058】
走行車V1は、占有許可を得たことによりグリッドセルC32に進行する。このような占有許可要求及び占有許可の取得を次のグリッドセルCに対して順次繰り返すことで、走行車V1は、走行指令CM1に定められた経路に沿って進行する。なお、上記した実施形態では、走行車V1が走行方向において隣接するグリッドセルCに1つずつ占有許可要求を出しているが、この形態に限定されない。例えば、走行車V1が走行方向における方向転換地であるグリッドセルC12までの複数のグリッドセルC32、C22、C12について、複数の占有許可要求をまとめて出してもよい。この場合、コントローラTCの占有許可判断部66は、複数の占有許可要求に対してそれぞれ占有許可を与えるか否かを判定し、複数の占有許可をまとめて走行車V1に送信してもよい。
【0059】
コントローラTCは、状態情報要求部65により、走行車V1に対して状態情報要求指令RQを送信する(ステップS3)。なお、コントローラTCは、走行車Vが走行指令CMを実行しているか否かにかかわらず、定期的に状態情報Aの要求を行っている。状態情報要求指令RQを受信した車載コントローラVCの状態情報処理部55(図4参照)は、状態情報要求指令RQに基づいて、コントローラTCに状態情報Aを送信する(ステップS4)。コントローラTCは、走行車V1からの状態情報Aにより、その走行車V1の現在の状態を把握することが可能となる。
【0060】
図7は、実施形態に係る走行車の制御方法の一例を示すフローチャートである。図7では、走行車V1に走行指令CM1を割り付けた後のコントローラTCの制御フローを示している。また、図8から図10は、走行車システムSYSの動作の一例を示す図である。図8に示す例では、走行車V1は、走行指令CM1によりグリッドセルC42から第2方向DR2に進行してグリッドセル(エリア)C12に到着し、グリッドセルC12において走行方向を第1方向DR1として進行しようとしている状態を示す。
【0061】
図8に示すように、グリッドセルC12からグリッドセルC19に向かう第1方向DR1には、グリッドセルC13からグリッドセルC16に他の走行車V2~V5が停止している。これら走行車V2~V5は、例えば、物品Mの移載作業を実行中のため停止している。この場合、グリッドセルC13からC16は、走行車V2~V5により占有された状態であるため、他の走行車Vを侵入させない排他制御が行われる。つまり、走行車V1は、グリッドセルC13に対する占有許可が得られないため、グリッドセルC12で停止する。
【0062】
コントローラTCは、上記した図5のステップS3で、状態情報要求部65により走行車V1に対して状態情報要求指令RQを送信する。走行車V1は、図5のステップS4で、状態情報処理部55によりコントローラTCに状態情報Aを送信する。コントローラTCは、受信した状態情報Aから、走行車V1が、走行指令CM1の実行状態が実行中であること、現在位置がグリッドセルC12であること、現在停止していること(速度が0であること)等を取得する。
【0063】
図7に示すように、コントローラTCの判定部67(図4参照)は、走行車V1が所定時間継続して停止しているか否かの判定を行う(ステップS11)。ステップS11において、判定部67は、状態情報Aのうち走行車V1の現在の状態が停止状態であることを認識した場合、タイマ68により走行車V1の停止時間を計測する。判定部67は、タイマ68の計測結果が予め設定された閾値を超える場合、走行車V1が所定時間継続して停止していると判定する。
【0064】
走行車V1がグリッドセルC12に停止後、所定時間継続して停止していないと判定された場合(ステップS11のNO)、判定部67は、ステップS11の判定を繰り返し行う。一方、走行車V1がグリッドセルC12に停止後、所定時間継続して停止していると判定された場合(ステップS11のYES)、走行指令生成部63は、走行車V1の移動先である経由地のグリッドセルCを設定する(ステップS12)。経由地は、例えば、走行指令CM1で指定された目的地に向かうための仮の目的地である。ステップS12において、走行指令生成部63は、走行車V1が停止しているグリッドセルC12に対して、第2方向DR2における複数先(複数マス先)のグリッドセルCを、走行車V1の経由地として設定する。走行指令生成部63は、グリッドセルC12から、予め設定されている第1所定数先のグリッドセルCを、走行車V1の経由地として設定する。本実施形態では、第1所定数を6とした例を示している。従って、走行指令生成部63は、図9に示すように、グリッドセルC12から第2方向DR2における6つ先(6マス先)のグリッドセルC72を、走行車V1の経由地として設定する。
【0065】
走行指令生成部63は、経由地を設定した後、走行車V1に割り付けられていた目的地までの走行指令CM1を自己(又はコントローラTC)の管理下に維持しつつその走行指令CM1を取り消す(ステップS13)。走行指令生成部63(又はコントローラTC)は、元の走行指令CM1を取り消す際、走行指令CM1(又は走行指令CM1のうちの目的地であるグリッドセルC19)を記憶部61等に記憶させることにより、目的地までの走行指令CM1を自己(又はコントローラTC)の管理下に維持する。その後、割り付け部64は、図9に示すように、ステップS12において設定されたグリッドセルC72を経由地とする走行指令CM2を走行車V1に割り付ける(ステップS14)。走行車V1が走行指令CM2を受信すると、車載コントローラVCの走行制御部53は、走行指令CM2に基づいて走行車V1の走行を制御する。走行車V1は、グリッドセルC72に向けて第2方向DR2に進行を開始する。
【0066】
なお、走行車V1の走行に際して、走行車V1は、第2方向DR2における次のグリッドセルC2の占有許可要求を行い、占有許可が得られればグリッドセルC2に進行するといった動作を繰り返して、グリッドセルC72に向けて第2方向DR2に進行する。走行車V1がグリッドセルC12からグリッドセルC2に進行することにより、グリッドセルC12の占有状態が解消される。このため、例えば、図10に示すように、グリッドセルC11から他の走行車V6がグリッドセルC12に進行することが可能となる。
【0067】
このように、走行車V1をグリッドセルC12から進行させることにより、走行車V1の停止に起因する走行車Vの渋滞が発生することを防止できる。すなわち、走行車V1が進行できない状態になったとき、走行指令CM1に基づく走行方向とは異なる方向の複数マス先まで進行させることで、格子状軌道Rにおいて複数の走行車Vの分散を図り、複数の走行車Vの過密状態を解消することができる。また、グリッドセルC12の占有が解消されるため、他の走行車V6がグリッドセルC12に進行可能となり、このグリッドセルC12において物品Mの移載作業等を遅滞なく実行できるので、物品Mの搬送効率が低下するのを防止できる。
【0068】
コントローラTCは、走行車V1に対して、状態情報要求部65により状態情報要求指令RQを送信する。走行車V1は、状態情報要求指令RQを受信すると、車載コントローラVCの状態情報処理部55により状態情報AをコントローラTCに送信する。コントローラTCの判定部67は、図7に示すように、走行車V1からの状態情報Aに基づいて、走行車V1が経由地であるグリッドセルC72に到達又は接近したか否かの判定を行う(ステップS15)。ステップS15において、判定部67は、状態情報Aのうち走行車V1の現在位置を検出し、経由地であるグリッドセルC72までのグリッドセルCの数を算出し、算出した数が0の場合は走行車V1がグリッドセルC72に到達したと判定し、又は、算出した数が予め設定された所定数(例えば2)以下の場合は走行車V1がグリッドセルC72に接近したと判定する。
【0069】
走行車V1がグリッドセルC72に到達又は接近していないと判定された場合(ステップS15のNO)、判定部67は、ステップS15の判定を繰り返し行う。一方、図10に示すように、走行車V1がグリッドセルC72に到達又は接近したと判定された場合(ステップS15のYES)、走行指令生成部63は、グリッドセルC72から、ステップS13において記憶していた目的地であるグリッドセルC19までの走行指令CM3を生成する。走行指令CM3は、図10に示すように、例えば、経由地であるグリッドセルC72からC19までの二点鎖線として示される走行経路に沿って進行させる指令である。
【0070】
上記のように、取り消された走行指令CM1の目的地を走行指令生成部63(又はコントローラTC)の管理下に維持しておくことで、その目的地を走行指令CM3において容易に設定可能となる。割り付け部64は、生成した走行指令CM3を走行車V1に割り付ける(ステップS16)。走行車V1が走行指令CM3を受信すると、車載コントローラVCの走行制御部53は、走行指令CM3に基づいて走行車V1の走行を制御する。走行車V1は、グリッドセルC72から第1方向DR1に進行してグリッドセルC79に達した後、グリッドセルC79において走行方向を第2方向DR2に変えて進行することで、走行車V1の当初の目的地であるグリッドセルC19に到着する。なお、走行車V1は、グリッドセルC72からC19に進行する場合においても、上記したように、現在のグリッドセルC(所定のグリッドセルC)から次のグリッドセルC(隣接するグリッドセルC)に進行する際に占有許可要求をコントローラTCに送信し、コントローラTCから占有許可を得られれば次のグリッドセルCに進行するが、占有許可を得られなければ現在のグリッドセルCで停止する。
【0071】
このように、本実施形態によれば、第1方向DR1に向かう走行車VがグリッドセルCにおいて所定時間継続して停止していた場合、コントローラTCは、そのグリッドセルCから第2方向DR2における複数先(複数マス先)のグリッドセルCを経由地とする走行指令を走行車Vに割り付けるので、走行車Vが所定時間以上継続して1つのグリッドセルCに停止することを防止でき、走行車Vの渋滞を緩和してデッドロック現象の発生を抑制することができる。
【0072】
図11は、実施形態に係る走行車の制御方法の他の例を示すフローチャートである。図12及び図13は、走行車システムSYSの動作の一例を示す図である。本実施形態では、ステップS12の処理について説明する。なお、ステップS11及びステップS13については、上記と同様の処理を行う。ステップS11の後、コントローラTCの判定部67は、ステップS12において経由地を設定可能か否かを判定する(ステップS21)。
【0073】
走行指令生成部63は、グリッドセルC12から第2方向DR2に予め設定された6マス先のグリッドセルCを走行車V1の経由地として設定し、走行指令CMを生成するが、図12に示すように、格子状軌道Rのレイアウトにより、グリッドセルC12から第2方向DR2の6マス先にグリッドセルCが存在しない場合がある。また、6マス先にグリッドセルCが存在してもメンテナンス等による経路閉鎖等により使用できない場合がある。このように、予め設定された6マス先では、経由地とするグリッドセルCを指定できない場合がある。
【0074】
ステップS21において、判定部67は、グリッドセルC12から6マス先にグリッドセルCが存在するか否か、又はグリッドセルC12から6マス先のグリッドセルCが使用可能か否かを確認する。判定部67により、6マス先にグリッドセルCが存在し、そのグリッドセルCが使用可能であると判定された場合(ステップS21のYES)、走行指令生成部63は、そのグリッドセルCを経由地として設定した走行指令CMを生成する。また、6マス先にグリッドセルCが存在しない、又はグリッドセルC12から6マス先のグリッドセルCが使用できないと判定された場合、すなわち経由地を設定できないと判定された場合(ステップS21のNO)、判定部67は、走行車V1が停止しているグリッドセルC12から第2方向DR2における、第1所定数(マス数)よりも少ない第2所定数(マス数)先のグリッドセルCを経由地として指定する(ステップS22)。例えば、図12に示すように、第2方向DR2において、グリッドセルC12から5マス先以降にグリッドセルCが存在しない場合を例に挙げて説明する。
【0075】
判定部67は、ステップS22により、第1所定数(6)より少ない第2所定数(5)を用いて、グリッドセルC12から5マス先にグリッドセルCが存在するか否かを確認する。判定部67は、例えば、予め設定された値(本実施形態では1)を第1所定数から引いて第2所定数とするが、第1所定数から引く値は、任意に設定可能である。ステップS22の後、ステップS21に戻り、5マス先にグリッドセルCが存在するか、すなわち経由地を設定可能か否かを判定する。図12に示すように、第2方向DR2においてグリッドセルC12から5マス先にグリッドセルCが存在しないので、判定部67は、経由地を設定できないと判定する(ステップS21のNO)。
【0076】
図11に示すように、ステップS21のNOによりステップS22を行い、先のステップS22で設定した第1所定数(5:先の第2所定数)から1を引いた4を第2所定数として設定し、4マス先のグリッドセルCを指定する。ステップS22の後、ステップS21に戻り、4マス先のグリッドセルCが存在するか否かを判定する。図12に示すように、第2方向DR2においてグリッドセルC12から4マス先にグリッドセルC62が存在するので、判定部67は、経由地を設定可能と判定する(ステップS21のYES)。
【0077】
判定部67により経由地を設定可能と判定されると、走行指令生成部63は、そのグリッドセルC62を経由地として設定した走行指令CM4を生成する。割り付け部64は、図12に示すように、ステップS22において設定されたグリッドセルC62を経由地とする走行指令CM4を走行車V1に割り付ける(ステップS14)。走行車V1は、走行指令CM4によりグリッドセルC62まで進行する。
【0078】
図13に示すように、走行車V1がグリッドセルC62に到達(又は接近した)場合(ステップS15のYES)、走行指令生成部63は、グリッドセルC62から、管理していた走行指令CM1の目的地であるグリッドセルC19までの走行指令CM5を生成する。走行指令CM5は、図13に示すように、例えば、グリッドセルC62からC19までの二点鎖線で示される走行経路に沿って進行させる指令である。割り付け部64は、生成した走行指令CM5を走行車V1に割り付ける(ステップS16)。走行車V1は、走行指令CM5により、グリッドセルC62から第1方向DR1に進行してグリッドセルC69に達した後、グリッドセルC69において走行方向を第2方向DR2に変えて進行することで、走行車V1の当初の目的地であるグリッドセルC19に到着する。なお、走行車V1は、グリッドセルC92からC19に進行する場合においても、上記したように、現在のグリッドセルC(所定のグリッドセルC)から次のグリッドセルC(隣接するグリッドセルC)に進行する際に占有許可要求をコントローラTCに送信し、コントローラTCから占有許可を得られれば次のグリッドセルCに進行するが、占有許可を得られなければ現在のグリッドセルCで停止する。
【0079】
このように、本実施形態によれば、走行車Vを第1方向DR1から第2方向DR2に向きを変えて進行させる際に、第2方向DR2におけるグリッドセルCの数が少ない場合であっても、経由地を設定した走行指令CM4を走行車Vに割り付けるので、停止している走行車Vを確実に停止中のグリッドセルCから進行させることができる。
【0080】
図14は、実施形態に係る走行車の制御方法の他の例を示すフローチャートである。図15及び図16は、走行車システムSYSの動作の一例を示す図である。本実施形態において、ステップS11及びステップS12については、上記と同様の処理を行う。ステップS12の後、コントローラTCの判定部67は、ステップS12において経由地として設定されたグリッドセルC72まで走行車V1が走行可能か否かを判定する(ステップS31)。
【0081】
ステップS31において、判定部67は、走行指令CMにより設定された走行経路上の各グリッドセルC(C2、C112、C102、C92、C82、C72)が他の走行車Vによって占有されていないか否か、又は走行経路上の各グリッドセルCに対して他の走行車Vに既に占有許可を与えていないか否かを確認する。判定部67は、走行経路上のグリッドセルCが他の走行車Vによって占有されていない、又は、他の走行車Vに占有許可を与えていないと判定した場合、経由地であるグリッドセルC72まで走行車V1が進行可能であると判定する。また、走行経路上のグリッドセルCのいずれかが他の走行車Vに占有されている、又は、他の走行車Vに占有許可を与えている場合、経由地であるグリッドセルC72まで走行車V1が進行できないと判定する。
【0082】
判定部67により、走行車V1がグリッドセルC72まで進行可能と判定された場合(ステップS31のYES)、コントローラTCは、上記した実施形態と同様にステップS13以降の処理を行う。走行車V1は、グリッドセルC72まで進行する。グリッドセルC72まで進行した走行車V1が、グリッドセルC79まで第1方向DR1に進行した後、目的地であるグリッドセルC19まで第2方向DR2に進行する点(図10参照)は上記と同様である。
【0083】
また、判定部67により、走行車V1がグリッドセルC72まで進行できないと判定された場合(ステップS31のNO)、コントローラTCの走行指令生成部63は、走行車V1が停止しているグリッドセルC12から第2方向DR2における、第1所定数よりも少ない第2所定数先のグリッドセルCを経由地とする走行指令を生成する(ステップS32)。例えば、図15に示すように、走行車V1の経由地がグリッドセルC72であり、グリッドセルC72、C82に走行車V7、V8で停止している場合を例に挙げて説明する。
【0084】
判定部67は、ステップS32により、第1所定数(6)より少ない第2所定数(5)を用いて、その5マス先のグリッドセルC82を経由地として設定する。判定部67は、例えば、予め設定された値(本実施形態では1)を第1所定数から引いて第2所定数とするが、第1所定数から引く値は、任意に設定可能である。ステップS32の後、ステップS31に戻り、走行車V1が、経由地のグリッドセルC82まで進行可能か否かを判定する。図15に示すように、グリッドセルC82には走行車V8が停止しているので、判定部67は、走行車V1がグリッドセルC82まで進行できないと判定する(ステップS31のNO)。
【0085】
図14に示すように、ステップS31のNOによりステップS32を行い、先のステップS32で設定した第1所定数(5:先の第2所定数)から1を引いた4を第2所定数として設定し、4マス先のグリッドセルC92を経由地として設定する。ステップS32の後、ステップS31に戻り、走行車V1が、経由地のグリッドセルC92まで進行可能か否かを判定する。図15に示すように、グリッドセルC2からグリッドセルC92までは走行車Vが停止していないので、判定部67は、走行車V1がグリッドセルC92まで進行可能と判定する(ステップS31のYES)。
【0086】
グリッドセルC92まで進行可能である場合、走行指令生成部63は、走行車V1に割り付けられていた目的地までの走行指令CM1を自己(又はコントローラTC)の管理下に維持しつつその走行指令CM1を取り消す(ステップS13)。また、割り付け部64は、図15に示すように、ステップS32において設定されたグリッドセルC92を経由地とする走行指令CM6を走行車V1に割り付ける(ステップS14)。走行車V1は、走行指令CM6によりグリッドセルC92まで進行する。
【0087】
図16に示すように、走行車V1がグリッドセルC92に到達(又は接近した)場合(ステップS15のYES)、走行指令生成部63は、グリッドセルC92から、管理していた走行指令CM1の目的地であるグリッドセルC19までの走行指令CM7を生成する。走行指令CM7は、図16に示すように、例えば、グリッドセルC92からC19までの二点鎖線で示される走行経路に沿って進行させる指令である。割り付け部64は、生成した走行指令CM7を走行車V1に割り付ける(ステップS16)。走行車V1は、走行指令CM7により、グリッドセルC92から第1方向DR1に進行してグリッドセルC99に達した後、グリッドセルC99において走行方向を第2方向DR2に変えて進行することで、走行車V1の当初の目的地であるグリッドセルC19に到着する。なお、走行車V1は、グリッドセルC92からC19に進行する場合においても、上記したように、現在のグリッドセルC(所定のグリッドセルC)から次のグリッドセルC(隣接するグリッドセルC)に進行する際に占有許可要求をコントローラTCに送信し、コントローラTCから占有許可を得られれば次のグリッドセルCに進行するが、占有許可を得られなければ現在のグリッドセルCで停止する。
【0088】
このように、本実施形態によれば、走行車Vを第1方向DR1から第2方向DR2に向きを変えて進行させる際に、経由地である第1所定数先のグリッドセルCまで走行車Vが進行できない場合、第1所定数よりも少ない第2所定数先のグリッドセルCを経由地とする走行指令を走行車Vに割り付けるので、停止している走行車Vを確実に停止中のグリッドセルCから進行させることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。上記した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0090】
また、上記した実施形態では、走行車VがグリッドセルCにおいて所定時間継続して停止していた場合、走行車Vが走行する方向として第2方向DR2のうち図面の紙面上方に向かう方向を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。例えば、第2方向DR2のうち図面の紙面下方に向かう方向であってもよい。
【0091】
なお、上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2019-130470、及び、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0092】
A・・・状態情報
C(C1~C120)・・・グリッドセル(セル)
V、V1~V8・・・走行車
M・・・物品
R・・・格子状軌道(軌道)
R1・・・第1軌道
R2・・・第2軌道
W・・・カバー
CM、CM1~CM7・・・走行指令
DR1・・・第1方向
DR2・・・第2方向
TC・・・コントローラ
VC・・・車載コントローラ
SYS・・・走行車システム
10・・・本体部
20・・・走行部
51、61・・・記憶部
52、62・・・通信部
53・・・走行制御部
54・・・移載制御部
55・・・状態情報処理部
56・・・占有許可要求部
63・・・走行指令生成部
64・・・割り付け部
65・・・状態情報要求部
66・・・占有許可判断部
67・・・判定部
68・・・タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
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図15
図16