(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】金属線、及びゴム複合体
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20230110BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 J
(21)【出願番号】P 2022560529
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2022004947
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021098516
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 映史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 賢
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹也
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-039510(JP,A)
【文献】特開2017-094960(JP,A)
【文献】国際公開第00/071809(WO,A1)
【文献】特開平11-093088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 - 9/00
B60C 1/00 - 19/12
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線であって、
前記金属線の長手方向に直交する断面において、互いに直交する長径方向と短径方向とを有する扁平形状の断面を有し、
前記断面は、
前記短径方向に向かい合う第一の長辺及び第二の長辺と、
前記長径方向に向かい合う第一の短辺及び第二の短辺と、
の四つの辺に囲まれた形状を有し、
前記第一の長辺は、第一変曲点と第二変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第二の長辺は、第三変曲点と第四変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第一変曲点は、前記第一の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第二変曲点は、前記第一の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第三変曲点は、前記第二の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第四変曲点は、前記第二の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間の第一の間隔が一定ではなく、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間に挟まれた領域に薄肉部を有し、
前記薄肉部は、前記断面の前記長径方向の中間領域に設けられ、前記第一の間隔が最も小さい部分を含み、
前記断面の形状は、前記短径方向に対称な形状であり、かつ、前記長径方向に対称な形状であり、
前記第一の長辺の形状は、前記断面の中心に向けて凹む円弧状であり、
前記第二の長辺の形状は、前記断面の中心に向けて凹む円弧状であり、
前記第一の短辺の形状は、前記断面の中心から離れる方向に凸となる円弧状であり、
前記第二の短辺の形状は、前記断面の中心から離れる方向に凸となる円弧状であり、
前記第一変曲点、前記第二変曲点、前記第三変曲点、及び前記第四変曲点のそれぞれの位置に前記長手方向に沿った稜線を有する、
金属線。
【請求項2】
前記第一の長辺の曲率半径及び前記第二の長辺の曲率半径が、前記第一の短辺の曲率半径及び前記第二の短辺の曲率半径よりも大きい、請求項1に記載の金属線。
【請求項3】
前記第一の間隔の最大値が0.2mm以上0.35mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の金属線。
【請求項4】
前記第一の間隔の最大値と、前記第一の短辺と前記第二の短辺との間の第二の間隔の最大値との比が1.2以上3.9以下である、請求項3に記載の金属線。
【請求項5】
前記第一の長辺における前記第一の短辺につながる端部、前記第一の長辺における前記第二の短辺につながる端部、前記第二の長辺における前記第一の短辺につながる端部、及び前記第二の長辺における前記第二の短辺につながる端部のいずれか一つの端部の形状は、円弧状である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金属線。
【請求項6】
前記金属線の表面にめっき層を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属線。
【請求項7】
前記長手方向に波打った形状を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金属線。
【請求項8】
前記金属線の表面は、前記長手方向に間隔をあけて設けられた複数の凹部を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金属線。
【請求項9】
前記金属線は鋼線である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の金属線。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の金属線と、
前記金属線を被覆するゴムとを備える、
ゴム複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属線、及びゴム複合体に関する。
本出願は、2021年6月14日付の日本国出願の特願2021-098516に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム物品にゴム複合体が利用されている。ゴム物品は、例えば、自動車用のタイヤ、コンベアベルト、エスカレータのハンドレール、ホースなどである。ゴム複合体は、ゴムを補強する目的で、ゴムに補強材が埋め込まれている。補強材は、例えば、スチールコードなどの金属線である。
【0003】
特許文献1から特許文献3は、扁平形状の断面を有する金属線をタイヤの補強材として用いることを開示する。特許文献1から特許文献3では、金属線の断面形状が、一対の平行な直線部と、一対の円弧部とを有するトラック形である。
図15は、トラック形の断面形状を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-41170号公報
【文献】特開2011-25795号公報
【文献】特開2012-91614号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の金属線は、
前記金属線の長手方向に直交する断面において、互いに直交する長径方向と短径方向とを有する扁平形状の断面を有し、
前記断面は、
前記短径方向に向かい合う第一の長辺及び第二の長辺と、
前記長径方向に向かい合う第一の短辺及び第二の短辺と、
の四つの辺に囲まれた形状を有し、
前記第一の長辺は、第一変曲点と第二変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第二の長辺は、第三変曲点と第四変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第一変曲点は、前記第一の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第二変曲点は、前記第一の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第三変曲点は、前記第二の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第四変曲点は、前記第二の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間の第一の間隔が一定ではなく、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間に挟まれた領域に薄肉部を有し、
前記薄肉部は、前記第一の間隔が最も小さい部分を含む。
【0006】
本開示のゴム複合体は、本開示の金属線と、前記金属線を被覆するゴムとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る金属線の実施例1を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の変形例1-1を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る金属線の実施例2を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2の変形例2-1を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、実施例2の変形例2-2を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例2の変形例2-3を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、めっき層を有する金属線の一例を示す概略断面図である。
【
図8A】
図8Aは、凹部を有する金属線の一例を示す概略平面図である。
【
図9A】
図9Aは、凹部を有する金属線の別の一例を示す概略平面図である。
【
図10】
図10は、波打った形状を有する金属線の一例を示す概略側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る金属線の製造に用いる圧延ローラを示す概略図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るゴム複合体の一例を示す概略斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るゴム複合体の一例を示す概略部分断面図である。
【
図14】
図14は、断面形状が円形の金属線を示す概略断面図である。
【
図15】
図15は、断面形状がトラック形の金属線を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
ゴム複合体の補強材を構成する金属線は、縦方向の剛性が小さく、かつ、横方向の剛性が大きいことが求められている。より具体的には、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好な金属線が求められている。縦方向の剛性、及び横方向の剛性については後述する。
【0009】
本開示は、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である金属線を提供することを目的の一つとする。本開示は、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好であるゴム複合体を提供することを別の目的の一つとする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の金属線は縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。本開示のゴム複合体は縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本発明者らは、金属線の断面が特定の扁平形状であることにより、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスを良好にできることを見出した。金属線の断面は、金属線の長手方向に直交する断面である。縦方向の剛性は、金属線を厚さ方向に曲げるときの曲げ剛性である。横方向の剛性は、金属線を幅方向に曲げるときの曲げ剛性である。金属線の厚さ方向は、金属線の断面における短径方向である。金属線の幅方向は、金属線の断面における長径方向である。金属線を厚さ方向に曲げるとは、例えば
図1に示す金属線1において、第一の長辺151と第二の長辺152のうち一方の長辺が曲げの内側、他方の長辺が曲げの外側となるように曲げることをいう。金属線を幅方向に曲げるとは、例えば
図1に示す金属線1において、第一の短辺161と第二の短辺162のうちの一方の短辺が曲げの内側、他方の短辺が曲げの外側となるように曲げることをいう。金属線の曲げ剛性は、ヤング率と断面2次モーメントとの積で表される。ヤング率は、金属線の材質により決まる。断面2次モーメントは、金属線を曲げる向きと断面形状とにより決まる。同じ材質の金属線であれば、断面2次モーメントが小さいほど、曲げ剛性が小さくなる。縦方向の剛性は、金属線の厚さ方向の断面2次モーメントが小さいほど、小さくなる。上記厚さ方向の断面2次モーメントは、金属線の厚さが小さいほど、小さくなる。横方向の剛性は、金属線の幅方向の断面2次モーメントが大きいほど、大きくなる。上記幅方向の断面2次モーメントは、金属線の幅が大きいほど、大きくなる。
【0012】
本開示は、上記知見に基づいてなされたものである。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
(1)本開示の実施形態に係る金属線は、
前記金属線の長手方向に直交する断面において、互いに直交する長径方向と短径方向とを有する扁平形状の断面を有し、
前記断面は、
前記短径方向に向かい合う第一の長辺及び第二の長辺と、
前記長径方向に向かい合う第一の短辺及び第二の短辺と、
の四つの辺に囲まれた形状を有し、
前記第一の長辺は、第一変曲点と第二変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第二の長辺は、第三変曲点と第四変曲点とを結ぶ辺であり、
前記第一変曲点は、前記第一の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第二変曲点は、前記第一の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第三変曲点は、前記第二の長辺と前記第一の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第四変曲点は、前記第二の長辺と前記第二の短辺とを含む連続線において、前記断面の中心から前記長径方向の最も外側に位置する変曲点であり、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間の第一の間隔が一定ではなく、
前記第一の長辺と前記第二の長辺との間に挟まれた領域に薄肉部を有し、
前記薄肉部は、前記第一の間隔が最も小さい部分を含む。
【0014】
本開示の金属線は、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。本開示の金属線は、長径方向と短径方向とを有する扁平形状の断面を有する。このような断面を有する金属線は、金属線の厚さが金属線の幅よりも小さい。本開示の金属線は、厚さが薄く、幅が広い形状であることから、縦方向の剛性が小さく、かつ、横方向の剛性が大きい。つまり、本開示の金属線は、縦方向の剛性に比べて横方向の剛性が大きい。更に、本開示の金属線は、薄肉部を有することで、縦方向の剛性を低く抑えつつ、横方向の剛性を向上させることができる。
【0015】
(2)上記本開示の金属線において、前記薄肉部は、前記断面の前記長径方向の中間領域に設けられていてもよい。
【0016】
上記の金属線は、縦方向の剛性を低く抑え易い。
【0017】
(3)上記本開示の金属線において、前記断面の形状は、前記短径方向に非対称な形状であり、前記薄肉部は、前記断面の前記長径方向の端部領域に設けられていてもよい。
【0018】
上記の金属線は、横方向の剛性を向上させ易い。
【0019】
(4)上記本開示の金属線において、前記第一の間隔の最大値が0.2mm以上0.35mm以下であってもよい。
【0020】
第一の間隔の最大値は金属線の厚さに相当する。金属線の厚さが上記範囲であると、適度な縦方向の剛性を確保できる。また、金属線の厚さが0.2mm以上であれば、金属線の強度を確保し易い。金属線の厚さが0.35mm以下であれば、金属線の厚さ方向に金属線を曲げ易く、かつ金属線の軽量化を図ることができる。
【0021】
(5)上記(4)に記載の金属線において、前記第一の間隔の最大値と、前記第一の短辺と前記第二の短辺との間の第二の間隔の最大値との比が1.2以上3.9以下であってもよい。
【0022】
第二の間隔の最大値は金属線の幅に相当する。第一の間隔の最大値と第二の間隔の最大値との比は、金属線の厚さと幅との比である。金属線の厚さと幅との比が上記範囲であると、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスを取り易い。厚さと幅との比は、(幅/厚さ)である。
【0023】
(6)上記本開示の金属線において、前記第一の長辺における前記第一の短辺につながる端部、前記第一の長辺における前記第二の短辺につながる端部、前記第二の長辺における前記第一の短辺につながる端部、及び前記第二の長辺における前記第二の短辺につながる端部のいずれか一つの端部の形状は、円弧状であってもよい。
【0024】
上記の金属線は、ゴムを被覆したとき、ゴムに亀裂が発生することを抑制し易い。第一の長辺における各端部が円弧状に形成されていると、第一の長辺と第一の短辺との境界、及び、第一の長辺と第二の短辺との境界に丸みを持たせることができる。第二の長辺における各端部が円弧状に形成されていると、第二の長辺と第一の短辺との境界、及び、第二の長辺と第二の短辺との境界に丸みを持たせることができる。そのため、上記の金属線によれば、上記境界を起点にゴムに亀裂が発生することを抑制し易い。
【0025】
(7)上記本開示の金属線は、前記金属線の表面にめっき層を有してもよい。
【0026】
上記の金属線は、ゴムを被覆する場合、めっき層によってゴムとの接着性を高めることができる。
【0027】
(8)上記本開示の金属線は、前記長手方向に波打った形状を有してもよい。
【0028】
上記の金属線は、ゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。上記の金属線は、長手方向に波打った形状であることで、金属線にゴムを被覆したとき、金属線の長手方向に沿った単位長さあたりの金属線とゴムとの接触面積が増える。そのため、金属線とゴムとの接着力が向上する。また、波の山と山との間の谷の部分にゴムが入り込むことによって、金属線からゴムが剥離し難くなる。
【0029】
(9)上記本開示の金属線において、前記金属線の表面は、前記長手方向に間隔をあけて設けられた複数の凹部を有してもよい。
【0030】
上記の金属線は、ゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。金属線の表面に凹部を有する金属線は、金属線にゴムを被覆したとき、凹部がない金属線に比べて金属線とゴムとの接触面積が増える。そのため、金属線とゴムとの接着力が向上する。また、凹部にゴムが入り込むことによって、金属線からゴムが剥離し難くなる。
【0031】
(10)上記本開示の金属線において、前記金属線は鋼線であってもよい。
【0032】
鋼線は高強度である。上記の金属線は、ゴム複合体の補強材に使用した場合、補強材としての強度を確保し易い。鋼線からなる金属線はスチールコードとも呼ばれることがある。
【0033】
(11)本開示の実施形態に係るゴム複合体は、上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の金属線と、前記金属線を被覆するゴムとを備える。
【0034】
本開示のゴム複合体は、本開示の金属線を備えることから、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の金属線、ゴム複合体の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
<金属線>
図1から
図11を参照して、実施形態に係る金属線1を説明する。
図1から
図6は、金属線1の長手方向に直交する断面を示す。金属線1は金属からなる単線である。金属線1は扁平形状の断面10を有する。金属線1の特徴の一つは、断面10において薄肉部20を有する点にある。金属線1は、特定の断面10を有することで、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスを図ることができる。金属線1は、
図12に示すゴム複合体100の補強材に好適である。以下、金属線1の構成を詳細に説明する。なお、各図において、図面上の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0037】
(材質)
金属線1の材質は、例えば、鉄又は鉄合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金などの金属である。特に、金属線1は鋼線、即ちスチールコードであることが好ましい。鋼線は高強度である。鋼線からなる金属線1、即ちスチールコードは、ゴム複合体100の補強材に好適である。鋼線の組成は、例えば、炭素を0.7質量%以上1.0質量%以下含有する炭素鋼である。鋼線は、例えばJIS G3502:2019に規定されるSWRS72A、SWRS72B、SWRS75A、SWRS75B、SWRS77A、SWRS77B、SWRS80A、SWRS80B、SWRS82A、SWRS82B、SWRS87A、及びSWRS87Bなどである。
【0038】
(断面)
金属線1の断面10は扁平形状である。断面10は、金属線1の長手方向に直交する断面である。扁平形状とは、
図1から
図6に示すように、厚さtが幅wよりも小さい形状をいう。断面10は、長径方向と短径方向とを有する。長径方向と短径方向とは互いに直交する。長径方向は、断面10の長径11に沿った方向である。短径方向は、断面10の短径12に沿った方向である。長径方向は金属線1の幅方向に対応し、短径方向は金属線1の厚さ方向に対応する。以下の説明では、長径方向を幅方向といい、短径方向を厚さ方向という。図中、矢印Xは幅方向を示し、矢印Yは厚さ方向を示す。実施形態の金属線1は、扁平形状の断面10を有することで、縦方向の剛性に比べて横方向の剛性が大きい。実施形態では、断面10は、第一の長辺151及び第二の長辺152と、第一の短辺161及び第二の短辺162とを有し、これら四つの辺に囲まれた形状である。第一の長辺151と第二の長辺152との間の第一の間隔15dは幅方向Xに一定ではない。なお、断面10は、金属線1が後述する凹部40(
図8A及び
図8B、
図9A及び
図9Bを参照)を有する場合、凹部40が設けられていない部分での断面である。
【0039】
厚さtは、断面10の輪郭を挟む2本の平行線の組み合わせのうち、2本の平行線の間隔が最短になる平行線間の距離である。厚さ方向Yは、これら平行線に直交する方向である。短径12は、断面10における厚さ方向Yの寸法である。幅wは、断面10の輪郭を挟む2本の平行線の組み合わせのうち、厚さ方向に直交する2本の平行線の間隔が最長になる平行線間の距離である。幅方向Xは、これら平行線に直交する方向である。長径11は、断面10における幅方向Xの寸法である。短径12は長径11よりも小さい。
【0040】
〈長辺〉
第一の長辺151と第二の長辺152とは、金属線1の厚さ方向Yに向かい合う。第一の長辺151は、第一変曲点P11と第二変曲点P12とを結ぶ辺である。第二の長辺152は、第三変曲点P21と第四変曲点P22とを結ぶ辺である。第一変曲点P11は、第一の長辺151と第一の短辺161とを含む連続線において、断面10の中心C10から幅方向Xの最も外側に位置する変曲点である。第二変曲点P12は、第一の長辺151と第二の短辺162とを含む連続線において、断面10の中心C10から幅方向Xの最も外側に位置する変曲点である。第三変曲点P21は、第二の長辺152と第一の短辺161とを含む連続線において、断面10の中心C10から幅方向Xの最も外側に位置する変曲点である。第四変曲点P22は、第二の長辺152と第二の短辺162とを含む連続線において、断面10の中心C10から幅方向Xの最も外側に位置する変曲点である。断面10の幅方向Xの外側とは、幅方向Xにおいて中心C10から遠い側をいう。断面10の幅方向Xの内側とは、幅方向Xにおいて中心C10に近い側をいう。断面10の中心C10は、幅wの二等分線と厚さtの二等分線との交点である。第一の長辺151における幅方向Xの中心は、第一の長辺151上の点のうち、第一の長辺151の両端からの距離が等しい点である。第二の長辺152における幅方向Xの中心は、第二の長辺152上の点のうち、第二の長辺152の両端からの距離が等しい点である。
【0041】
実施形態では、金属線1の断面10において、厚さ方向Yを上下方向とする。厚さ方向Yの第一の方向Y
1側、即ち第一の長辺151が位置する側を上側とする。また、厚さ方向Yの第二の方向Y
2側、即ち第二の長辺152が位置する側を下側とする。
図1から
図6において、厚さ方向Yは上下方向である。厚さ方向Yの第一の方向Y
1は上方向である。厚さ方向Yの第二の方向Y
2は下方向である。
【0042】
〈短辺〉
第一の短辺161と第二の短辺162とは、金属線1の幅方向Xに向かい合う。第一の短辺161は、第一の長辺151と第二の長辺152とをつなぐ辺であって、第一変曲点P11と第三変曲点P21とを結ぶ辺である。第二の短辺162は、第一の長辺151と第二の長辺152とをつなぐ辺であって、第二変曲点P12と第四変曲点P22とを結ぶ辺である。第一の短辺161及び第二の短辺162は第一の長辺151及び第二の長辺152よりも短い。換言すれば、第一の長辺151及び第二の長辺152は第一の短辺161及び第二の短辺162よりも長い。
【0043】
実施形態では、金属線1の断面10において、幅方向Xを左右方向とする。幅方向Xの第一の方向X
1側、即ち第一の短辺161が位置する側を左側とする。また、幅方向Xの第二の方向X
2側、即ち第二の短辺162が位置する側を右側とする。
図1から
図6において、幅方向Xは左右方向である。幅方向Xの第一の方向X
1は左方向である。幅方向Xの第二の方向X
2は右方向である。
【0044】
上述した第一変曲点P11は、第一の長辺151と第一の短辺161との接続点である。第二変曲点P12は、第一の長辺151と第二の短辺162との接続点である。第三変曲点P21は、第二の長辺152と第一の短辺161との接続点である。第四変曲点P22は、第二の長辺152と第二の短辺162との接続点である。各々の変曲点は、曲線と曲線との接続点、曲線と直線との接続点、及び直線と直線との接続点のいずれかである。
【0045】
〈薄肉部〉
金属線1の断面10は、第一の長辺151と第二の長辺152との間に挟まれた領域に薄肉部20を有する。薄肉部20は、第一の間隔15dが最も小さくなる部分を含む。断面10において、薄肉部20は、例えば
図1などに示すように金属線1の幅方向Xの中間領域13に設けられていてもよいし、例えば
図3などに示すように金属線1の幅方向Xの端部領域14に設けられていてもよい。中間領域13は、断面10を幅方向Xに三等分したときの内側の部分をいう。端部領域14は、断面10を幅方向Xに三等分したときの外側の部分をいう。断面10が薄肉部20を有することで、金属線1の縦方向の剛性を低く抑えつつ、横方向の剛性を向上させることができる。
以下、薄肉部20を有する断面10の構成を詳細に説明する。
【0046】
《実施例1》
図1に示す断面10aを有する金属線1を実施例1とする。実施例1では、薄肉部20が断面10aの幅方向Xの中間領域13に設けられている。断面10aの形状は、厚さ方向Yに対称な形状であり、かつ、幅方向Xに対称な形状である。厚さ方向Yに対称な形状とは、幅方向Xに沿う線に対して線対称であることをいう。幅方向Xに対称な形状とは、厚さ方向Yに沿う線に対して線対称であることをいう。第一の長辺151の中央部には、金属線1の厚さ方向Yの第二の方向Y
2、即ち下方に向けて凹む屈曲部21を有する。第二の長辺152の中央部には、金属線1の厚さ方向Yの第一の方向Y
1、即ち上方に向けて凹む屈曲部22を有する。第一の長辺151と第二の長辺152の各々の中央部が凹むことによって、断面10aの幅方向Xの中間領域13がくびれている。屈曲部21と屈曲部22との間に、薄肉部20が形成されている。各屈曲部21、22は円弧状である。第一の長辺151及び第二の長辺152はそれぞれ、金属線1の幅方向Xの全長にわたって円弧状に湾曲している。第一の長辺151と第二の長辺152とは、厚さ方向Y及び幅方向Xに対して対称な形状である。
図1では、便宜上、屈曲部21、22を強調して示している。この点は、後述する
図2も同じである。
【0047】
実施例1とは異なり、各屈曲部21、22はV字状であってもよい。この場合、第一の長辺151及び第二の長辺152の各々の端部は直線状である。つまり、第一の長辺151において、第一変曲点P11及び第二変曲点P12と屈曲部21の谷とを結ぶ各線分が直線状である。また、第二の長辺152において、第三変曲点P21及び第四変曲点P22と屈曲部22の谷とを結ぶ各線分が直線状である。屈曲部21及び屈曲部22は、第一の長辺151及び第二の長辺152の各々の中央部にのみ形成されていてもよい。第一の長辺151と第二の長辺152とは、厚さ方向Y及び幅方向Xに対して非対称な形状であってもよい。厚さ方向Yに非対称な形状とは、幅方向Xに平行ないずれの直線に対しても非対称であることをいう。幅方向Xに非対称な形状とは、厚さ方向Yに平行ないずれの直線に対しても非対称であることをいう。
【0048】
第一の短辺161は、金属線1の幅方向Xの第一の方向X1、即ち左方に向けて凸となる円弧状である。第二の短辺162は、金属線1の幅方向Xの第二の方向X2、即ち右方に向けて凸となる円弧状である。実施例1とは異なり、第一の短辺161及び第二の短辺162は、金属線1の厚さ方向Yに沿う直線状でもよい。第一の短辺161と第二の短辺162とは、厚さ方向Y及び幅方向Xに対して対称な形状でもよいし、非対称な形状でもよい。
【0049】
《変形例1-1》
図2を参照して、実施例1の変形例1-1を説明する。変形例1-1では、断面10aの形状が厚さ方向Yに非対称な形状である。変形例1-1の断面10aは、第一の長辺151にのみ、屈曲部21を有する。第二の長辺152は金属線1の幅方向Xに沿う直線状である。変形例2の断面10aでは、第一の長辺151の屈曲部21と第二の長辺152との間に、薄肉部20が形成されている。変形例1-1とは異なり、第二の長辺152にのみ、屈曲部22を有していてもよい。第一の長辺151が金属線1の幅方向Xに沿う直線状でもよい。つまり、実施例1において、第一の長辺151及び第二の長辺152の一方にのみ、屈曲部が形成されていてもよい。実施例1のように、第一の長辺151及び第二の長辺152の各々に屈曲部21、22を有する場合、変形例1-1に比べて、薄肉部20の厚さt
20が薄くなり易い。
【0050】
実施例1、変形例1-1では、薄肉部20で金属線1の厚さ方向Yの曲げ易さを確保しつつ、薄肉部20の両側の厚肉部で幅方向Xの曲げに対する剛性を確保することができる。実施例1や変形例1-1のように、薄肉部20が断面10aの幅方向Xの中間領域13に設けられていると、金属線1の縦方向の剛性が効果的に低減される。また、中間領域13に薄肉部20が設けられていると、金属線1にゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。第一の長辺151の中央部や第二の長辺152の中央部が凹むことによって、金属線1にゴムを被覆するときに、この凹みにゴムが入り込む。そのため、金属線1とゴムとの接着性が改善される。
【0051】
《実施例2》
図3に示す断面10bを有する金属線1を実施例2とする。実施例2では、薄肉部20が断面10bの幅方向Xの端部領域14に設けられている。
図3に示す断面10bでは、左側の端部領域14及び右側の端部領域14のいずれにも薄肉部20が設けられている。断面10bの形状は、厚さ方向Yに非対称な形状であり、かつ、幅方向Xに対称な形状である。第一の長辺151の両方の端部17は、金属線1の厚さ方向Yの第二の方向Y
2、即ち下方に向けて傾斜する斜辺部24を有する。斜辺部24は、円弧状の湾曲線のみならず、直線状の傾斜線も含まれる。各斜辺部24は円弧状に形成されている。つまり、第一の長辺151における幅方向Xの両側の領域が円弧状に形成されている。斜辺部24の曲率半径は、例えば0.1mm以上0.3mm以下、更に0.1mm以上0.23mm以下である。第一の長辺151の中央部は、金属線1の幅方向Xに沿う直線状である。第二の長辺152は、金属線1の幅方向Xに沿う直線状である。第二の長辺152は、金属線1の幅方向Xの全長にわたって直線状に形成されている。第一の長辺151の中央部と第二の長辺152とは平行である。第一の長辺151の端部17が斜辺部24を有することで、斜辺部24と第二の長辺152との間に、薄肉部20が形成されている。左右の斜辺部24は、幅方向Xに対称に形成されている。各斜辺部24の長さは同等である。
図3では、便宜上、斜辺部24を強調して示している。この点は、後述する
図3から
図6も同じである。
【0052】
断面10bでは、第一の長辺151の途中に第五変曲点P13と第六変曲点P14とが存在する。第一の長辺151は、第一変曲点P11と第二変曲点P12との間を、第五変曲点P13及び第六変曲点P14を経て結ぶ辺である。第五変曲点P13は、第一変曲点P11よりも幅方向Xの内側であって、左側の斜辺部24と第一の長辺151の中央部との間に位置する。第六変曲点P14は、第二変曲点P12よりも幅方向Xの内側であって、右側の斜辺部24と第一の長辺151の中央部との間に位置する。
【0053】
実施例2とは異なり、各斜辺部24は直線状に形成されていてもよい。斜辺部24は、第一の長辺151の一方の端部17、即ち幅方向Xの片側の領域にのみ設けられていてもよい。第一の長辺151の中央部と第二の長辺152とは非平行でもよい。左右の斜辺部24は、幅方向Xに非対称に形成されていてもよい。各斜辺部24の長さは異なっていてもよい。
【0054】
第一の短辺161及び第二の短辺162は、金属線1の厚さ方向Yに沿う直線状である。第一の短辺161と第二の短辺162とは平行で、かつ、第一の短辺161の長さと第二の短辺162の長さとが同等である。実施例2とは異なり、第一の短辺161と第二の短辺162とは非平行でもよい。
【0055】
《変形例2-1》
図4を参照して、実施例2の変形例2-1を説明する。変形例2-1の断面10bは、第一の長辺151の中央部が、金属線1の厚さ方向Yの第一の方向Y
1、即ち上方に向けて凸となるように形成されている。変形例2-1も、薄肉部20が断面10bの幅方向Xの各端部領域14に設けられている。
【0056】
《変形例2-2》
図5を参照して、実施例2の変形例2-2を説明する。変形例2-2の断面10bは、第一の長辺151の中央部が、金属線1の厚さ方向Yの第二の方向Y
2、即ち下方に向けて凹となるように形成されている。変形例2-2も、薄肉部20が断面10bの幅方向Xの各端部領域14に設けられている。変形例2-2では、断面10bの幅方向Xの中間領域13の厚さが、幅方向Xの中心に向けて薄くなっている。
【0057】
《変形例2-3》
図6を参照して、実施例2の変形例2-3を説明する。変形例2-3は、第一の長辺151の端部17のみならず、第二の長辺152の端部18にも斜辺部を有する例である。第一の長辺151は、
図3と同様である。以下、第一の長辺151については説明を省略し、第二の長辺152について説明する。変形例2-3の断面10bは、第二の長辺152の両方の端部18が、金属線1の厚さ方向Yの第一の方向Y
1、即ち上方に向けて傾斜する斜辺部26を有する。斜辺部26の長さは、第一の長辺151の斜辺部24の長さよりも短い。各斜辺部26は円弧状に形成されている。つまり、第二の長辺152における幅方向Xの両側の領域が円弧状に形成されている。斜辺部24の曲率半径は斜辺部26の曲率半径よりも大きい。斜辺部26の曲率半径は、例えば0.1mm以上0.3mm以下、更に0.1mm以上0.23mm以下である。左右の斜辺部26は、幅方向Xに対称に形成されている。各斜辺部26の長さは同等である。変形例2-3も、薄肉部20が断面10bの幅方向Xの各端部領域14に設けられている。
図6では、便宜上、斜辺部26を強調して示している。
【0058】
変形例2-3とは異なり、各斜辺部26は直線状に形成されていてもよい。斜辺部26は、第二の長辺152における第一の短辺161又は第二の短辺162につながる一方の端部18、即ち幅方向Xの片側の領域にのみ設けられていてもよい。左右の斜辺部26は、幅方向Xに非対称に形成されていてもよい。各斜辺部26の長さは異なっていてもよい。
【0059】
実施例2のように、第一の長辺151における第一の短辺161につながる端部17、及び第一の長辺151における第二の短辺162につながる端部17が円弧状に形成されていると、第一の長辺151と第一の短辺161との境界、及び、第一の長辺151と第二の短辺162との境界に丸みを持たせることができる。上記境界が滑らかな曲線で形成されているため、上記境界が角張っていない。そのため、金属線1にゴムを被覆したとき、上記境界を起点にゴムに亀裂が発生することを抑制し易い。更に、変形例2-3のように、第二の長辺152における第一の短辺161につながる端部18、及び第二の長辺152における第二の短辺162につながる端部18も円弧状に形成されていると、第二の長辺152と第一の短辺161との境界、及び、第二の長辺152と第二の短辺162との境界に丸みを持たせることができる。よって、ゴムに亀裂が発生することをより抑制できる。
【0060】
金属線1のその他の構成について詳細に説明する。以下の説明は、上述した実施例1、実施例2、及びそれらの変形例の全てに共通する事項である。
【0061】
(金属線の厚さ)
金属線1の厚さtは、例えば0.2mm以上0.35mm以下であることが好ましい。厚さtは、第一の長辺151と第二の長辺152との間の第一の間隔15dの最大値である。第一の間隔15dの最大値は、第一の長辺151と第二の長辺152との間の厚さ方向Yに沿う距離の最大値に等しい。厚さtが上記範囲であると、適度な縦方向の剛性を確保できる。また、厚さtが0.2mm以上であれば、金属線1の強度を確保し易い。そのため、金属線1を
図12に示すゴム複合体100の補強材に使用した場合、補強材としての強度を確保し易い。厚さtが0.35mm以下であれば、金属線1の厚さ方向Yに曲げ易く、かつ金属線1の軽量化を図ることができる。厚さtが0.35mm以下であれば、ゴム複合体100の薄型化を図ることができる。特に、厚さtが0.25mm以上であると、強度と靭性との両立を図り易い。厚さtは、更に0.31mm以上0.34mm以下であることが好ましい。
【0062】
(金属線の幅)
金属線1の幅wは、例えば0.4mm以上0.8mm以下であることが好ましい。幅wは、第一の短辺161と第二の短辺162との間の第二の間隔16dの最大値である。第二の間隔16dの最大値は、第一の短辺161と第二の短辺162との間の幅方向Xに沿う距離の最大値に等しい。幅wが上記範囲であると、適度な横方向の剛性を確保できる。また、幅wが0.4mm以上であれば、金属線1の強度を確保し易い。そのため、金属線1を
図12に示すゴム複合体100の補強材に使用した場合、補強材としての強度を確保し易い。幅wが0.4mm以上であれば、ゴム複合体100に埋め込む金属線1の本数を減らすことができる。そのため、ゴム複合体100を軽量化できる。幅wが0.8mm以下であれば、金属線1の軽量化を図ることができる。特に、幅wが0.49mm以上であると、良好な強度を確保し易い。更に、幅wが0.54mm以上であると、金属線1の埋め込み本数を十分に減らし易い。幅wは、更に0.44mm以上0.76mm以下、0.49mm以上0.56mm以下であることが好ましい。
【0063】
(金属線の幅と厚さとの比)
金属線1の厚さtと幅wとの比は、例えば1.2以上3.9以下であることが好ましい。厚さtと幅wとの比は、第一の間隔15dの最大値と第二の間隔16dの最大値との比である。厚さtと幅wとの比はw/tで表される。厚さtと幅wとの比が上記範囲であると、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスを取り易い。厚さtと幅wとの比は、更に1.26以上3.86以下、1.63以上3.45以下であることが好ましい。
【0064】
金属線1の断面積は、例えば0.10mm2以上0.16mm2以下であることが好ましい。断面積が0.10mm2以上であれば、金属線1の強度を確保し易い。断面積が0.16mm2以下であれば、金属線1の軽量化を図ることができる。金属線1の断面積は、更に0.130mm2以上0.156mm2以下であることが好ましい。
【0065】
薄肉部20の厚さt
20は、例えば、金属線1の厚さtの20%以上95%以下であることが好ましい。厚さt
20は、薄肉部20の最も薄い部分の厚さである。厚さt
20は、第一の間隔15dの最小値である。第一の間隔15dの最小値は、第一の長辺151と第二の長辺152との間の厚さ方向Yに沿う距離の最小値に等しい。厚さt
20が厚さtの20%以上であることで、金属線1の強度を確保し易い。厚さt
20が厚さtの95%以下であることで、縦方向の剛性を低く抑え易い。厚さt
20の好ましい範囲は、断面10の形状によって異なる。
図1などに示すように、薄肉部20が幅方向Xの中間領域13に設けられた断面10aでは、厚さt
20は、例えば、厚さtの50%以上95%以下であることが好ましい。断面10aの場合、厚さt
20は、更に、厚さtの55%以上92%以下、厚さtの60%以上90%以下であることが好ましい。
図3などに示すように、薄肉部20が幅方向Xの端部領域14に設けられた断面10bでは、厚さt
20は、例えば、厚さtの20%以上70%以下であることが好ましい。断面10bの場合、厚さt
2
0は、更に、厚さtの25%以上65%以下、厚さtの30%以上60%以下であることが好ましい。
【0066】
(めっき層)
金属線1は、
図7に示すように、めっき層30を有してもよい。金属線1の材質が、例えば、鉄又は鉄合金である場合、ゴムとの接着性が低い。金属線1の表面にめっき層30を有することで、金属線1にゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。めっき層の材質は、例えば、銅、亜鉛、黄銅などの金属である。めっき層を形成する上記金属は添加元素を含有してもよい。添加元素は、例えばコバルト、ニッケルなどである。めっき層30は、公知のめっき法により形成することができる。めっき法は、例えば、電解めっき法、無電解めっき法などが利用できる。
【0067】
(凹部)
金属線1は、
図8A及び
図8B、並びに、
図9A及び
図9Bに示すように、複数の凹部40を有してもよい。凹部40は、金属線1の表面に設けられている。凹部40は、金属線1の長手方向に間隔をあけて形成されている。
図8A及び
図9Aは、金属線1を上面側から見た平面図である。金属線1の上面側とは、例えば
図1、
図3などに示す第一の長辺151が位置する側である。
図8A及び
図9Aの左右方向は、金属線1の長手方向である。
図8B及び
図9Bは、金属線1の長手方向に沿った断面を金属線1の右側から見た断面図である。金属線1の右側は、例えば
図1、
図3などに示す第二の短辺162が位置する側である。
【0068】
図8A及び
図8Bに示す凹部40は、金属線1の幅方向に延びる直線状の凹部41である。凹部41は、金属線1の上面において、金属線1の幅方向の全長にわたって形成されている。本例では、凹部41は、
図8Bに示すように、断面が半円状の溝である。凹部41の断面形状は、例えば、V字状、矩形状、台形状などであってもよい。
【0069】
図9A及び
図9Bに示す凹部40は、ドット状の凹部42である。凹部42は、金属線1の上面において、金属線1の長手方向に並んで形成されている。本例では、凹部42は、金属線1の長手方向に一列に並んでいるが、複数列に並んでいてもよい。本例では、凹部42の形状は、半球状である。凹部42の形状は、例えば、円錐状、円錐台状、直方体状、立方体状、角錘状、角錐台状などであってもよい。
【0070】
凹部40は、金属線1の上面及び下面の少なくとも一方に有していればよい。凹部40は、金属線1の上面及び下面の両方に有していることが好ましい。金属線1の上面及び下面の両方に凹部40を有する場合、金属線1を平面透視したときに、上面の凹部40と下面の凹部40とが重なることなく、ずれていることが好ましい。上面の凹部40と下面の凹部40とがずれていることで、凹部40が形成された箇所で金属線1が過度に薄くなることを抑制できる。凹部40の間隔iや深さdは適宜選択すればよい。間隔iは、例えば1mm以上30mm以下、更に5mm以上20mm以下である。深さdは、例えば0.01mm以上0.1mm以下である。特に、深さdが0.05mm以下であると、金属線1の耐久性の低下を抑制し易い。深さdは、更に0.02mm以上0.03mm以下であることが好ましい。
【0071】
金属線1の表面に凹部40を有することで、金属線1にゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。金属線1の表面に凹部40が形成されていると、金属線1にゴムを被覆したとき、金属線1とゴムとの接触面積が増える。そのため、金属線1とゴムとの接着力が向上する。また、凹部40にゴムが入り込むことによって、金属線1からゴムが剥離し難くなる。
【0072】
(波打った形状)
金属線1は、
図10に示すように、金属線1の長手方向に波打った形状を有していてもよい。
図10は、金属線1を右側から見た側面図である。
図10の左右方向は、金属線1の長手方向である。金属線1の断面の形状は長手方向に一様であり、金属線1の長手方向の任意の位置で切断した断面形状が同じである。金属線1が波打った形状であることで、金属線1にゴムを被覆する場合、ゴムとの接着性を高めることができる。金属線1が波打った形状であると、金属線1にゴムを被覆したとき、金属線1の単位長さあたりにおける金属線1とゴムとの接触面積が増える。そのため、金属線1とゴムとの接着力が向上する。また、波の山と山との間の谷の部分にゴムが入り込むことによって、金属線1からゴムが剥離し難くなる。波付けピッチpは適宜選択すればよい。波付けピッチpとは、隣り合う山と山との間の距離である。波付けピッチpは、例えば1mm以上30mm以下、更に5mm以上15mm以下である。
【0073】
<金属線の製造方法>
金属線1は、
図14に示すような断面形状が円形の金属線1xを扁平に加工することによって製造できる。金属線1xを扁平加工する方法は、例えば、圧延ローラによる圧延加工、ダイスによる引き抜き加工などが利用できる。金属線1の製造方法の一例として、
図1に示す断面10aを有する実施例1の金属線1を圧延加工により製造する場合について、
図11を参照して説明する。圧延に使用する圧延ローラ50は、
図11に示すように、第一ローラ51と第二ローラ52とを有する。第一ローラ51と第二ローラ52とは、金属線1の厚さ方向に向かい合う。第一ローラ51及び第二ローラ52の各々の周面は、
図1に示す断面10aの第一の長辺151及び第二の長辺152に対応した形状である。本例では、第一ローラ51及び第二ローラ52は、ローラの幅方向の中央部が凸となるように湾曲している。第一ローラ51と第二ローラ52との間で金属線1が圧延されることで、金属線1の断面を断面10aの形状に加工することができる。
【0074】
金属線1を引き抜き加工により製造する場合は、図示しないダイスの孔の形状を断面10aに対応した形状とすればよい。
【0075】
圧延加工や引き抜き加工は複数回行ってもよい。この場合、金属線1の断面を断面10aの形状に徐々に近づけるように加工する。また、圧延加工や引き抜き加工は温間で行うことが好ましい。圧延加工や引き抜き加工を温間で行うことにより、金属線1xの加工が容易になる。
【0076】
また、
図8A及び
図8B、並びに、
図9A及び
図9Bに示すように、金属線1の表面に凹部40を形成する場合は、第一ローラ51及び第二ローラ52の各々の表面に、凹部40に対応した凸部を設けておくとよい。圧延加工した際にローラの凸部が金属線1に押し付けられることによって、金属線1の表面に凹部40を形成することができる。
図10に示すように、波打った形状を有する金属線1は、金属線1に対して波付け加工を施すことによって製造できる。
【0077】
<ゴム複合体>
図12、
図13を参照して、実施形態に係るゴム複合体100を説明する。ゴム複合体100は、上述した実施形態の金属線1と、ゴム110とを備える。以下、ゴム複合体100の構成を詳細に説明する。
【0078】
ゴム複合体100はシート状である。ゴム複合体100には、複数の金属線1が埋め込まれている。複数の金属線1は、ゴム複合体100の補強材として機能する。ゴム複合体100の長さ、厚さ、及び幅は特に限定されない。実施形態では、ゴム複合体100の長手方向は、金属線1の長手方向に一致する。ゴム複合体100の幅方向は複数の金属線1が並ぶ方向に一致する。ゴム複合体100の厚さ方向は、長手方向と幅方向に直交する方向である。ゴム複合体100の厚さ方向は金属線1の厚さ方向に一致する。ゴム複合体100の厚さは、金属線1の厚さtに応じて適宜調整する。ゴム複合体100の厚さは、例えば0.5mm以上1.0mm以下である。
【0079】
(金属線)
金属線1は、
図1から
図6に示す薄肉部20を有する断面10を有する。実施形態では、金属線1は、
図1に示す断面10aを有する実施例1の金属線1である。金属線1は、
図12、
図13に示すように、ゴム複合体100の幅方向に一列に並んでいる。金属線1は、金属線1の幅方向がゴム複合体100の幅方向に沿うように配置されている。このように、金属線1の幅方向とゴム複合体100の幅方向とが揃うように金属線1が配置されている形態を横向き配置と呼ぶ。金属線1が横向きに配置されていれば、ゴム複合体100の厚さを薄くできる。断面10を有する金属線1は縦方向の剛性が小さい。よって、金属線1を備えるゴム複合体100は縦方向の剛性が小さい。また、断面10を有する金属線1は横方向の剛性が大きい。よって、金属線1を備えるゴム複合体100は横方向の剛性が大きい。更に、断面10が薄肉部20を有する金属線1は、金属線1の縦方向の剛性を低く抑えつつ、横方向の剛性を向上させることができる。よって、金属線1を備えるゴム複合体100は、縦方向の剛性を低く抑えつつ、横方向の剛性を向上させることができる。
【0080】
隣り合う金属線1の隙間gは、例えば0.18mm以上0.68mm以下である。隙間gが上記範囲であると、適度な縦方向の剛性を確保できる。隙間gが0.18mm以上であれば、一定幅のゴム複合体100に埋め込まれる金属線1の本数を減らすことができる。そのため、ゴム複合体100を軽量化できる。また、隙間gが0.18mm以上であれば、ゴム複合体100を厚さ方向に曲げ易い。隙間gが0.68mm以下であれば、金属線1によるゴム複合体100を補強する効果が十分に得られる。また、隙間gが0.68mm以下であれば、ゴム複合体100の厚さ方向に尖った部材が突き刺さったときに、当該部材が金属線1に当たり易くなる。そのため、当該部材がゴム複合体100を貫通することを抑制し易い。特に、隙間gが0.3mm以上であると、金属線1の埋め込み本数を十分に減らし易い。隙間gが0.6mm以下であると、金属線1によるゴム複合体100を補強する効果が得られ易い。更に、隙間gが0.4mm以下であると、上記部材が金属線1により当たり易くなる。隙間gは、更に0.27mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
【0081】
(ゴム)
ゴム110は金属線1を被覆する。ゴム110の材質は、天然ゴムでもよいし、合成ゴムでもよいし、天然ゴムと合成ゴムの複合ゴムでもよい。合成ゴムは、例えばジエン系合成ゴムである。ジエン系合成ゴムは、例えば、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどである。
【0082】
ゴム110には、例えばカーボンブラック、シリカなどの充填材が含まれていてもよい。その他、ゴム110には、例えば可塑剤、軟化剤、加硫助剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0083】
上述した
図1から
図10に示す実施形態の金属線1は、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。金属線1は、扁平形状の断面10を有することから、縦方向の剛性が小さく、かつ、横方向の剛性が大きい。更に、断面10が薄肉部20を有することで、縦方向の剛性を低く抑えつつ、横方向の剛性を向上させることができる。
【0084】
上述した実施形態のゴム複合体100は、例えば、自動車用のタイヤ、コンベアベルト、エスカレータなどのハンドレール、ホースなどのゴム物品に好適に利用できる。ゴム複合体100は、金属線1を備えることから、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好である。ゴム複合体100は、縦方向の剛性が小さい。そのため、ゴム複合体100は、厚さ方向の曲げに対して高い柔軟性を発揮する。ゴム複合体100は、横方向の剛性が大きい。そのため、ゴム複合体100は、幅方向の曲げに対して高い剛性を発揮する。例えば、ゴム複合体100をタイヤに利用した場合、ゴム複合体100は、厚さ方向に高い柔軟性を有することで、乗り心地を向上させることができる。また、ゴム複合体100は、幅方向に高い剛性を有することで、操縦安定性を向上させることができる。
【0085】
[試験例1]
金属線の断面形状と、縦方向の剛性及び横方向の剛性との関係について調べた。
【0086】
試験例1では、断面形状が異なる試料No.0から試料No.3の金属線を用意した。試料No.1の金属線は、
図1に示す断面10aを有する実施例1の金属線1である。試料No.2の金属線は、
図3に示す断面10bを有する実施例2の金属線1である。試料No.0の金属線は、
図14に示す比較例となる金属線1xである。金属線1xの断面形状は円形である。試料No.3の金属線は、
図15に示す比較例となる金属線1yである。金属線1yの断面形状はトラック形である。より詳しくは、第一の長辺151及び第二の長辺152は、金属線1yの幅方向に沿う直線状である。第一の長辺151と第二の長辺152とは平行で、かつ、第一の長辺151の長さと第二の長辺152の長さとが同等である。第一の長辺151と第二の長辺152との間の第一の間隔15dは幅方向に一定である。そのため、トラック形の断面は、第一の長辺151と第二の長辺152との間に挟まれた領域に薄肉部を有していない。第一の短辺161及び第二の短辺162は、金属線1の幅方向の外側に向けて凸となる円弧状である。第一の短辺161及び第二の短辺162は、円弧状であるため、いずれの短辺も途中に変曲点を有していない。第一の短辺161と第二の短辺162とは左右に対称形状である。
【0087】
各試料の金属線の厚さt、幅w、及び断面積を表1に示す。試料No.0の金属線の厚さtと幅wとは等しい。試料No.0では、厚さtと幅wとの比が1である。試料No.1から試料No.3の金属線のそれぞれの厚さtと幅wは同じとした。試料No.1から試料No.3では、厚さtと幅wとの比が1.63である。試料No.1から試料No.3の金属線は、試料No.0の金属線を圧延加工により扁平に加工したものである。金属線を圧延加工した際、金属線が長手方向に延ばされる。そのため、試料No.1から試料No.3の金属線の断面積は、試料No.0の金属線の断面積よりも若干小さくなる。
【0088】
試料No.1と試料No.2の金属線の断面は薄肉部を有している。これに対し、試料No.0と試料No.3の金属線の断面は薄肉部を有していない。試料No.1では、
図1に示す薄肉部20の厚さt
20が0.2mmである。つまり、第一の長辺151及び第二の長辺152の各屈曲部21、22の深さが0.05mmである。試料No.1において、金属線の厚さtに対する薄肉部20の厚さt
20の比率は66.6%である。試料No.2では、
図3に示す薄肉部20の厚さt
20が0.15mmである。試料No.2における金属線の厚さtに対する薄肉部20の厚さt
20の比率は50%である。表1中、「薄肉部(有/無)」は、有の場合、薄肉部を有していることを示す。無の場合、薄肉部を有していないことを示す。
【0089】
各試料の金属線について、断面2次モーメントを計算して求めた。断面2次モーメントの計算には、市販の構造解析ソフトを使用した。断面2次モーメントは、金属線の厚さ方向の断面2次モーメントと、金属線の幅方向の断面2次モーメントとを求めた。断面2次モーメントは、有効数字3桁で、4桁目を切り上げた。その結果を表1に示す。また、断面2次モーメントの計算結果に基づいて、剛性指数を求めた。剛性指数とは、試料No.0の金属線の剛性を100として表した値である。剛性指数は、金属線の縦方向の剛性指数と、金属線の横方向の剛性指数とを求めた。その結果を表1に示す。縦方向の剛性は、厚さ方向の断面2次モーメントに比例する。そのため、各試料の縦方向の剛性指数は、(各試料の厚さ方向の断面2次モーメント)/(試料No.0の厚さ方向の断面2次モーメント)×100として求められる。横方向の剛性は、幅方向の断面2次モーメントに比例する。そのため、各試料の横方向の剛性指数は、(各試料の幅方向の断面2次モーメント)/(試料No.0の幅方向の断面2次モーメント)×100として求められる。表1中、「厚さ断面2次モーメント」とは、厚さ方向の断面2次モーメントである。「幅断面2次モーメント」とは、幅方向の断面2次モーメントである。「縦剛性指数」とは、縦方向の剛性指数である。「横剛性指数」とは、横方向の剛性指数である。「断面2次モーメント比」とは、幅方向の断面2次モーメントを厚さ方向の断面2次モーメントで割った値である。
【0090】
【0091】
表1の結果から、扁平形状の断面を有する試料No.1と試料No.2は、円形の断面を有する試料No.0に比べて、縦方向の剛性が小さく、かつ、横方向の剛性が大きいことが分かる。また、試料No.1は、トラック形の断面を有する試料No.3に比べて、縦方向の剛性を低く抑えることができる。一方、試料No.2は、試料No.3に比べて、横方向の剛性を向上させることができる。更に、試料No.1と試料No.2のそれぞれの断面2次モーメント比は2.5以上である。そのため、試料No.1と試料No.2は、試料No.3に比べて、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスが良好であるといえる。試料No.1及び試料No.2のように、断面が薄肉部を有する場合、縦方向の剛性と横方向の剛性とのバランスを良好にできることが確認できた。特に、薄肉部が中間領域に設けられた試料No.1は、薄肉部が端部領域に設けられた試料No.2に比べて縦方向の剛性を効果的に低減できる。
【符号の説明】
【0092】
1,1x,1y 金属線
10,10a,10b 断面
11 長径、12 短径
13 中間領域、14 端部領域
151 第一の長辺、152 第二の長辺
161 第一の短辺、162 第二の短辺
15d 第一の間隔、16d 第二の間隔
17 第一の長辺の端部、18 第二の長辺の端部
C10 中心
P11 第一変曲点、P12 第二変曲点
P21 第三変曲点、P22 第四変曲点
P13 第五変曲点、P14 第六変曲点
20 薄肉部
21,22 屈曲部
24 斜辺部、26 斜辺部
30 めっき層
40,41,42 凹部
50 圧延ローラ、51 第一ローラ、52 第二ローラ
100 ゴム複合体
110 ゴム
t,t20 厚さ、w 幅
i 間隔、d 深さ、p 波付けピッチ
g 隙間
X 幅方向、X1 第一の方向、X2 第二の方向
Y 厚さ方向、Y1 第一の方向、Y2 第二の方向
【要約】
金属線(1)の長手方向に直交する断面(10)において、互いに直交する長径方向(X)と短径方向(Y)とを有する扁平形状の断面(10)を有し、前記断面(10)は、前記短径方向(Y)に向かい合う第一の長辺(151)及び第二の長辺(152)と、前記長径方向(X)に向かい合う第一の短辺(161)及び第二の短辺(162)と、の四つの辺に囲まれた形状を有し、前記第一の長辺(151)と前記第二の長辺(152)との間の第一の間隔(15d)が一定ではなく、前記第一の長辺(151)と前記第二の長辺(152)との間に挟まれた領域に薄肉部(20)を有し、前記薄肉部(20)は、前記第一の間隔(15d)が最も小さい部分を含む、金属線(1)。