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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】洗浄器
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B08B3/02 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019005777
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020110783
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 俊郎
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-313633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
A47L 15/00-15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を収容すると共に下部に傾斜面を介して液貯留部が設けられた洗浄槽と、前記液貯留部内に設けられるストレーナと、このストレーナよりも下方から前記液貯留部内の液体を吸い込むポンプとを備え、
前記ストレーナは、前記液貯留部の上下方向中途部に保持され、
前記ポンプの作動中、前記液貯留部内の液位は、前記液貯留部の上端開口縁よりも下方にあると共に、前記ストレーナを水没させる位置にあり、
前記ポンプは、前記液貯留部内の液体を前記洗浄槽内の洗浄ノズルへ供給し、
前記液貯留部から前記洗浄ノズルへ供給する液体の流量を変更可能とされ、
この流量の変更に応じて、前記液貯留部への液体の貯留量が変更され、
前記ポンプの回転数が高いほど、前記液貯留部への液体の貯留量を増し、前記ポンプの回転数が低いほど、前記液貯留部への液体の貯留量を減らし、
前記貯留量が最も少ない場合でも、前記ポンプの作動中の液位は、前記ストレーナよりも上方にあり、
前記貯留量が最も多い場合でも、前記ポンプの作動中の液位は、前記液貯留部の上端開口縁よりも下方にあり、
前記洗浄槽と前記液貯留部との間は、網材または多孔板から構成される仕切材で仕切られており、
前記ストレーナの目の粗さは、前記仕切材よりも細かい
ことを特徴とする洗浄器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物に液体を噴射して洗浄する洗浄器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、洗浄室(2)内にノズルアーム(18~21)を回転自在に設け、そのノズルアーム(18~21)から被洗浄物に水を噴射して、被洗浄物の洗浄を図る洗浄器が知られている。洗浄室(2)の底部には貯水槽(8)が設けられ、貯水槽(8)の上面にはフィルタ(9)が設けられている。また、洗浄室(2)の底部には、溜まった水を温めるためのヒータ(32)が設けられている。
【0003】
下記特許文献2にも同様に、洗浄槽(1)内に噴射ノズル(7)を回転自在に設け、その噴射ノズル(7)から被洗浄物に水を噴射して、被洗浄物の洗浄を図る洗浄器が開示されている。この洗浄器では、洗浄槽(1)内の下部に貯水部(2)が設けられ、貯水部(2)の上部開口を覆うように、貯水部(2)の上部開口にフィルタ(3)が取り付けられている。また、洗浄槽(1)内の底部には、溜まった水を温めるためのヒータ(不図示)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-180215号公報(段落[0014]-[0019]、図1
【文献】特開2014-124241号公報(請求項1、段落[0022]、[0026]、[0037]、[0038]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、洗浄槽(洗浄室2)内の底部に液貯留部(貯水槽8)が設けられ、その液貯留部の上部開口にストレーナ(フィルタ9)が設けられる。そして、ヒータ(32)の設置位置から明らかなとおり、液貯留部の上端開口縁よりも上方、つまり洗浄槽内の底部全体に水が貯留された状態で、水が循環される。
【0006】
特許文献2に記載の発明も同様に、洗浄槽(1)内の底部に液貯留部(貯水部2)が設けられ、その液貯留部の上部開口にストレーナ(フィルタ3)が設けられる。そして、ストレーナよりも上方(液貯留部の上端開口縁よりも上方)、つまり洗浄槽内の底部全体に水が貯留された状態で、水が循環される。
【0007】
このように、従来技術は、いずれも、液貯留部の上部開口にストレーナが設けられ、液貯留部の上端開口縁よりも上方に液位を配置して、水が循環される。ヒータの設置位置との関係からも、洗浄槽内の底部全体に水を貯留して運転する必要がある。
【0008】
ところが、このような構成では、液貯留部内に液位を配置して循環させる場合よりも、多くの液体が必要となる。具体的には、まず前提として、通常、液貯留部の底部に循環ポンプへの循環口(吸込口)があるが、この場合、液位が高いほど循環ポンプへ吸い込まれる気泡を抑制して、循環ポンプでのエアがみを防止できることになる。そして、液貯留部は洗浄槽よりも断面積が小さいため、(液貯留部の上端開口縁を越えて)洗浄槽内の底部全体に水を溜めるよりも、(液貯留部の高さを調整して)液貯留部内に水を溜める方が、少ない水量で液位を確保でき、エアがみを防止できることになる。従来技術では、液貯留部の上端開口縁よりも上方、つまり洗浄槽内の底部全体にまで水を貯留するため、液位を確保するのに比較的多くの水が必要となる。
【0009】
また、従来技術では、洗浄槽内の底部全体に水が貯留されるため、洗浄ノズルからの噴射液の全量が液面に直に落ちることになり、貯留液中に気泡を生じやすい。そして、その気泡を循環ポンプが吸い込むことでエアがみが生じやすい。液面を上げることで循環ポンプへ吸い込まれる気泡を減少させる場合、洗浄器の保有水量(循環のために投入される水量)を多く確保する必要がある。エアがみを防止しつつ洗浄器の保有水量を減らすことができれば、単に給水量を削減できるだけでなく、給水に薬液を投入する場合には薬液投入量を削減することもでき、また給水を加熱して温水とする場合には加熱量(使用エネルギ)を削減することもできる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、液貯留部での気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止し、水や薬液などの使用量を削減することができる洗浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被洗浄物を収容すると共に下部に傾斜面を介して液貯留部が設けられた洗浄槽と、前記液貯留部内に設けられるストレーナと、このストレーナよりも下方から前記液貯留部内の液体を吸い込むポンプとを備え、前記ストレーナは、前記液貯留部の上下方向中途部に保持され、前記ポンプの作動中、前記液貯留部内の液位は、前記液貯留部の上端開口縁よりも下方にあると共に、前記ストレーナを水没させる位置にあり、前記ポンプは、前記液貯留部内の液体を前記洗浄槽内の洗浄ノズルへ供給し、前記液貯留部から前記洗浄ノズルへ供給する液体の流量を変更可能とされ、この流量の変更に応じて、前記液貯留部への液体の貯留量が変更され、前記ポンプの回転数が高いほど、前記液貯留部への液体の貯留量を増し、前記ポンプの回転数が低いほど、前記液貯留部への液体の貯留量を減らし、前記貯留量が最も少ない場合でも、前記ポンプの作動中の液位は、前記ストレーナよりも上方にあり、前記貯留量が最も多い場合でも、前記ポンプの作動中の液位は、前記液貯留部の上端開口縁よりも下方にあり、前記洗浄槽と前記液貯留部との間は、網材または多孔板から構成される仕切材で仕切られており、前記ストレーナの目の粗さは、前記仕切材よりも細かいことを特徴とする洗浄器である。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ポンプの作動中の液位は、ストレーナを水没させる位置とされる。仮に、ストレーナよりも下方に離隔して液位が配置されると、ストレーナから液面への落水により、貯留液に気泡が生じやすく、ポンプでのエアがみの原因となるが、貯留液にストレーナを水没させることで、気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止することができる。また、液貯留部の上下方向中途部にストレーナを保持し、ポンプの作動中の液位を液貯留部の上端開口縁よりも下方とすることで、液貯留部の上端開口縁よりも上方(つまり洗浄槽内の底部全体)に液位を配置する場合と比較して、少ない液量で液位を確保して、ポンプでのエアがみを防止することができる。つまり、液貯留部は洗浄槽よりも断面積が小さいため、洗浄槽内の底部全体にまで液体を溜めるよりも、(液貯留部の高さを調整して)液貯留部に液体を溜める方が、少ない液量で液位を確保して、ポンプでのエアがみを防止することができる。このようにして、簡易な構成で、液貯留部での気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止し、液体(水や薬液など)の使用量を削減することができる。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、ポンプの作動中の液位を、液貯留部内で且つストレーナを水没させる位置とすることで、少ない液量で、液貯留部での気泡の発生を抑えることができる。それにより、ポンプでのエアがみを防止して、液体の使用量を削減することができる。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、液貯留部から洗浄ノズルへ供給する液体の流量を変更することで、洗浄ノズルからの噴射流量を変更することができる。そのため、たとえば、被洗浄物(特にその汚れ具合)に応じて、洗浄ノズルからの噴射流量を変更することができる。そして、液貯留部から洗浄ノズルへの流量の変更に応じて、液貯留部への液体の貯留量を変更するが、貯留量が最も少ない場合でも、ポンプの作動中の液位は、ストレーナよりも上方とされる。そのため、ストレーナよりも下方に離隔して液位が配置される場合のように、ストレーナから液面への落水がなく、気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止することができる。一方、貯留量が最も多い場合でも、ポンプの作動中の液位は、液貯留部の上端開口縁よりも下方とされる。そのため、液貯留部の上端開口縁を越えて洗浄槽内の底部全体にまで液体を貯留する場合と比較して、液体の使用量を削減することができる。また、仮に液貯留部だけでなく洗浄槽内の底部全体に液体を貯留した場合には、洗浄ノズルからの噴射液の全量が液面に直に落ちることになり、液面での気泡が生じ易くなるが、液貯留部の上端開口縁よりも下方に液位を配置することで、気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止することができる。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、仕切材とストレーナとにより、異物の除去を確実に図ることができる。また、液貯留部内の液面に仕切材からの落水があっても、液中に配置されたストレーナにより、気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄器によれば、簡易な構成で、液貯留部での気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止し、水や薬液などの使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の洗浄器を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
図2図1の洗浄器の下部を示す正面視の縦断面図である。
図3図2に対する比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の洗浄器1を示す概略図であり、一部を断面にして示している。また、図2は、図1の洗浄器1の下部を示す概略図であり、一部構成を省略して示している。
【0022】
以下、説明の便宜上、図1における横方向を洗浄器1の左右方向とし、図1における縦方向を洗浄器1の上下方向とし、図1における紙面と直交方向を洗浄器1の前後方向(手前側が前方)として説明する。
【0023】
本実施例の洗浄器1は、被洗浄物を収容する洗浄槽2と、洗浄槽2の下部に設けられる液貯留部3と、液貯留部3内に設けられるストレーナ4と、洗浄槽2内の被洗浄物へ液体を噴射する洗浄ノズル5と、液貯留部3への給水手段6と、液貯留部3からの排水手段7と、液貯留部3への薬液供給手段8と、液貯留部3内の液体を洗浄ノズル5へ供給する循環手段9と、液貯留部3内の液体を加熱する加熱手段10と、これら各手段6~10を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0024】
被洗浄物は、特に問わないが、たとえば鉗子などの医療器具である。洗浄槽2内には、上下複数段に洗浄ノズル5が設けられるが、被洗浄物は上下の洗浄ノズル5間に配置される。その際、被洗浄物は、格子状または網状の棚(図示省略)に載せられる。また、被洗浄物は、所望によりバスケットなどに収容されていてもよい。
【0025】
洗浄槽2は、被洗浄物が収容される中空容器である。洗浄槽2は、本実施例では略矩形の中空ボックス状である。洗浄槽2は、ドア(図示省略)により開閉可能とされる。ドアを開けることで、洗浄槽2に対し被洗浄物を出し入れすることができる。ドアは、洗浄槽2の正面に設けられるが、洗浄槽2の正面および背面の双方に設けられてもよい。
【0026】
洗浄槽2内の下部には、平面視中央部に液貯留部3が設けられると共に、その液貯留部3の周囲に傾斜面2aが設けられる。この際、傾斜面2aは、液貯留部3の上端開口縁へ近づくについて下方へ傾斜して形成されている。より具体的には、洗浄槽2内の下部には、左右両端部に、左右方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面2aが設けられると共に、前後両端部に、前後方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面2aが設けられる。そして、洗浄槽2の左右方向中央部で且つ前後方向中央部には、下方へ略矩形状に凹んで液貯留部3が設けられている。
【0027】
洗浄槽2と液貯留部3との間は、網材または多孔板から構成される仕切材11で仕切られるのが好ましい。たとえば、洗浄槽2と液貯留部3とは、金網またはパンチングメタルから構成される仕切材11で仕切られる。仕切材11は、図示例では、液貯留部3の上端開口縁の高さに設けられるが、最下段の洗浄ノズル5よりも下方であれば、液貯留部3の上端開口縁よりも上方に設けられてもよい。
【0028】
ストレーナ4は、液貯留部3を上下に仕切るように、液貯留部3内に設けられる。後述するように、循環ポンプ12の作動中(定常時)の液位は、液貯留部3の上端開口縁よりも下方で且つストレーナ4を水没させる位置とするのが好ましいが、仮に液貯留部3の上端部にストレーナ4を設けると、ストレーナ4を水没させるには、液貯留部3の上端開口縁を越えて(つまり洗浄槽2内の底部全体に)液体を貯留する必要が生じる。一方、仮に液貯留部3の下端部にストレーナ4を設けると、循環ポンプ12による吸込時の圧力損失が大きくなる。そこで、本実施例では、ストレーナ4は、液貯留部3の上下方向中途部に設けられる。そして、循環ポンプ12の作動中の液位は、ストレーナ4の少なくとも一部を浸漬(好ましくは全体を水没)する位置とされる。
【0029】
ストレーナ4は、網状または多孔板状の部材を用いて構成される。たとえば、略矩形板状の金網またはパンチングメタルが、図2に示すように、正面視で三角波状にジグザグに折り曲げられて構成される。ジグザグに折り曲げられた金網等は、略矩形状の枠体(図示省略)内に隙間なくはめ込まれ、その枠体が液貯留部3内に水平に保持される。その際、ストレーナ4は、液貯留部3を上下に仕切るように、液貯留部3の上下方向中途部に保持される。
【0030】
ストレーナ4の目の粗さは、仕切材11よりも細かいものが好ましい。また、液貯留部3に設定液位まで液体を貯留後、循環手段9を作動させると、液貯留部3の液位は低下するが、その状態(つまり循環手段9による循環中)において、ストレーナ4は、少なくとも一部(下端部)が貯留液に浸漬される。好ましくは、ストレーナ4は、全体が貯留液に水没される。すなわち、循環ポンプ12の作動中の液位は、ストレーナ4の少なくとも一部を浸漬する位置とされ、好ましくは図示例のように、ストレーナ4の全体を水没させる位置とされる。しかも、循環ポンプ12の作動中の液位は、液貯留部3の上端開口縁よりも下方とされる。このような液位を実現するために、液貯留部3への液体の貯留量、液貯留部3に対するストレーナ4の設置位置、および循環ポンプ12の回転数などが設定される。
【0031】
洗浄ノズル5は、洗浄槽2内の被洗浄物へ液体を噴射する。洗浄ノズル5は、洗浄槽2内に、上下複数段に設けられる。本実施例では、洗浄槽2の前後方向中央部の一側部に、上下複数段にアーム状の支持部材13の基端部が保持され、各支持部材13は、洗浄槽2の一側部から左右方向中央部へ向けて延出する。そして、その延出先端部に、洗浄ノズル5の長手方向中央部が縦軸まわりに回転自在に保持される。
【0032】
洗浄ノズル5は、支持部材13内を介して供給される液体を噴射させる噴射口(図示省略)が複数形成されている。支持部材13を介して洗浄ノズル5内に液体が供給されると、その液体は洗浄ノズル5の噴射口から噴射される。この噴流により、洗浄ノズル5が水平方向に回転する。なお、洗浄槽2内の上端部に設けられる洗浄ノズル5は、下方へのみ液体を噴射し、洗浄槽2内の下端部に設けられる洗浄ノズル5は、上方へのみ液体を噴射し、上下両端部以外の洗浄ノズル5は、上下両方へ液体を噴射する。
【0033】
ところで、図1において一点鎖線で示すように、洗浄槽2に対し洗浄ラック14を出し入れ可能としてもよい。図示例では、上下両端部に設けられる洗浄ノズル5は、洗浄槽2自体に設けられ、それ以外の洗浄ノズル5は、洗浄ラック14に設けられている。洗浄ラック14には、一側部に配水部材15が設けられており、その配水部材15に上下複数段に支持部材13が設けられ、各支持部材13に洗浄ノズル5が回転自在に保持される。また、洗浄ラック14には、各洗浄ノズル5の上部と洗浄ラック14の下部とに、被洗浄物の載置棚(図示省略)が設けられている。洗浄槽2内に洗浄ラック14を格納すると、循環ポンプ12からの配管が、配水部材15に接続される。
【0034】
給水手段6は、給水路16を介して、液貯留部3に水を供給する。給水路16には、給水弁17が設けられている。給水弁17を開けることで、液貯留部3に給水することができる。図示例では、洗浄槽2に給水路16を接続することで、給水は洗浄槽2を介して液貯留部3に供給されるが、液貯留部3に給水路16を接続することで、給水は液貯留部3に直接に供給されてもよい。なお、給水手段6は、複数種の水(たとえば水道水、温水、膜濾過水、軟水など)から選択された水を供給可能に構成されてもよい。
【0035】
排水手段7は、液貯留部3から排水路18を介して水を排出する。排水路18には、排水弁19が設けられている。排水弁19を開けることで、洗浄槽2や液貯留部3から排水することができる。
【0036】
薬液供給手段8は、薬液タンク20から給液路21を介して、液貯留部3に薬液を供給する。給液路21には、薬液ポンプ22が設けられている。薬液ポンプ22を作動させることで、設定量の薬液を液貯留部3に供給することができる。図示例では、液貯留部3に給液路21を接続することで、薬液は液貯留部3に直接に供給されるが、洗浄槽2に給液路21を接続することで、薬液は洗浄槽2を介して液貯留部3に供給されてもよい。なお、薬液供給手段8は、複数種の薬液(たとえばアルカリ性洗剤、酵素配合洗剤、潤滑防錆剤、乾燥促進剤など)から選択された薬液を供給可能に構成されてもよい。
【0037】
循環手段9は、液貯留部3内の液体を洗浄ノズル5へ循環供給する。具体的には、循環手段9は、循環配管23と循環ポンプ12とを備える。循環配管23は、液貯留部3から各洗浄ノズル5の支持部材13への配管であり、その途中に循環ポンプ12が設けられている。なお、図示例では、循環配管23の内、液貯留部3から循環ポンプ12への配管は、上流側において、排水路18と共通管路とされている。また、循環配管23の内、循環ポンプ12の出口側には、逆止弁24が設けられている。循環ポンプ12を作動させると、液貯留部3内の液体を、循環配管23および支持部材13を介して洗浄ノズル5へ供給して噴射し、洗浄槽2下部の液貯留部3へ戻すことができる。
【0038】
加熱手段10は、本実施例では、液貯留部3に設けられたヒータ25から構成される。ヒータ25は、図示例では電気ヒータであるが、場合により蒸気ヒータであってもよい。電気ヒータの場合、典型的にはオンオフ制御されるが、場合により出力を調整されてもよい。一方、蒸気ヒータの場合、蒸気管内に蒸気が供給可能とされ、蒸気の凝縮水は蒸気トラップを介して外部へ排出される。そして、給蒸路に設けた給蒸弁の開閉または開度が制御される。いずれにしても、ヒータ25の発熱部は、ストレーナ4よりも下方の液貯留部3内に設けられるのがよい。
【0039】
液貯留部3には、貯留液の液位を検出する液位検出器26が設けられる。液位検出器26は、その構成を特に問わないが、たとえば、液貯留部3の底部に設置した圧力センサから構成される。この場合、液貯留部3や洗浄槽2内の液位に応じて、水圧が変わることを利用して液位を把握する。
【0040】
液貯留部3には、貯留液の温度を検出する温度センサ27が設けられる。温度センサ27の検出温度に基づきヒータ25を制御することで、液貯留部3の貯留液の温度を調整することができる。
【0041】
その他、洗浄器1には、所望により、超音波振動子28が設けられる。図示例では、洗浄槽2下部の左右の傾斜面2aに、それぞれ超音波振動子28が設けられている。超音波振動子28は、超音波発振器(図示省略)に接続されて、発振を制御される。被洗浄物を浸漬した状態で超音波振動子28を作動させることで、被洗浄物を超音波洗浄することができる。
【0042】
制御手段は、前記各手段6~10の他、液位検出器26および温度センサ27などに接続された制御器(図示省略)である。具体的には、給水弁17、排水弁19、薬液ポンプ22、循環ポンプ12、ヒータ25、超音波発振器(図示省略)、液位検出器26および温度センサ27などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽2内の被洗浄物の洗浄を図る。この際、少なくとも、次に述べるシャワー洗浄動作を実行可能とされる。
【0043】
シャワー洗浄動作では、液貯留部3内に液体を貯留し、その液体を循環手段9により洗浄ノズル5へ循環供給して、洗浄ノズル5から被洗浄物に噴射する。具体的には、まず、液位検出器26が設定水位を検出するまで、給水手段6により液貯留部3に給水する。のちに循環ポンプ12を作動させると水位は下がるので、初期給水時の設定水位は、液貯留部3の上端開口縁よりも上方にあってもよい。その場合でも、循環ポンプ12の作動中の水位は、液貯留部3内に収まることになる。
【0044】
液貯留部3への給水後、必要に応じて、薬液供給手段8により液貯留部3に所望の薬液を投入する。薬液供給手段8による薬液は、給水手段6による給水に対し、設定濃度になるように設定量だけ投入される。さらに、同じく必要に応じて、加熱手段10により、液貯留部3内の貯留水を設定温度まで加熱する。薬液の投入や貯留水の加熱は、循環手段9の作動前に限らず、循環手段9の作動中に行ってもよい。
【0045】
いずれにしても、液貯留部3に所望量の液体を貯留した状態で、循環ポンプ12を作動させて、貯留液を循環配管23および支持部材13を介して洗浄ノズル5へ供給して噴射し、被洗浄物を洗浄する。そして、洗浄ノズル5から噴射された液体は、洗浄槽2下部の液貯留部3へ戻される。その際、洗浄ノズル5から噴射された液体の大部分は、傾斜面2aに落下し、傾斜面2aを介して液貯留部3内へ流入する。所定の終了条件(たとえば設定時間の経過)を満たすと、循環ポンプ12を停止して、液貯留部3内の液体を排水手段7により排出する。
【0046】
典型的には、このようなシャワー洗浄動作を繰り返して、被洗浄物を洗浄および濯ぎする。たとえば、薬液を投入しない常温水による予備洗浄、所望により薬液を投入した温水による本洗浄(典型的には複数回)、所望により薬液を投入した温水による濯ぎ洗浄(典型的には複数回)などが順次になされる。
【0047】
次に、本実施例の洗浄器1のストレーナ4の作用効果について説明する。
図3は、図2に対する比較例を示す図であり、シャワー洗浄動作において、液面よりも上方にストレーナ4が配置される場合を示している。この図では、液貯留部3の上端部にストレーナ4が設けられ、循環ポンプ12の作動中の液位は、ストレーナ4よりも下方とされる。この場合、洗浄槽2から液貯留部3へ流れ込む液体は、ストレーナ4を介して液貯留部3内の液面に落下することになる。そのため、ストレーナ4から液面への落水により、貯留液に気泡が生じやすく、それが循環ポンプ12でのエアがみの原因となる。液貯留部3の液面と循環口3a(循環ポンプ12への接続口)との距離を確保して、循環ポンプ12でのエアがみを防止するには、液貯留部3の貯水量、ひいては洗浄器1の保有水量を比較的多めに確保する必要があるが、それでは、給水量および薬液量を削減することができないし、ヒータ25による加熱量(使用エネルギ)を削減することもできない。また、ヒータ25による加熱時間を短縮して、運転時間の短縮を図ることもできない。
【0048】
これに対し、本実施例の洗浄器1によれば、図2に示すように、シャワー洗浄動作において、ストレーナ4の少なくとも一部(好ましくは全部)が液貯留部3の貯留液中に配置される。つまり、循環ポンプ12の作動中の液位は、ストレーナ4の少なくとも一部を浸漬(好ましくは全部を水没)する位置となる。この場合、洗浄槽2から液貯留部3内へ流れ込んだ液体は、液中に配置されたストレーナ4を通過する際に、気泡の除去が図られて、循環ポンプ12に吸い込まれる。そのため、循環ポンプ12でのエアがみを防止し、洗浄器1の保有水量の削減を図ることができる。つまり、給水量および薬液量を削減することができ、ヒータ25による加熱量(使用エネルギ)を削減することもできる。また、ヒータ25による加熱時間を短縮して、運転時間の短縮を図ることもできる。
【0049】
しかも、液貯留部3の上下方向中途部にストレーナ4を保持し、循環ポンプ12の作動中の液位を液貯留部3の上端開口縁よりも下方とすることで、液貯留部3の上端開口縁よりも上方(つまり洗浄槽2内の底部全体)に液位を配置する場合と比較して、少ない液量で液位を確保して、循環ポンプ12でのエアがみを防止することができる。つまり、液貯留部3は洗浄槽2よりも断面積が小さいため、洗浄槽2内の底部全体にまで液体を溜めるよりも、(液貯留部3の高さを調整して)液貯留部3に液体を溜める方が、少ない液量で液位を確保(液面と循環口3aとの距離を確保)して、循環ポンプ12でのエアがみを防止することができる。このようにして、簡易な構成で、液貯留部3での気泡の発生を抑えて、循環ポンプ12でのエアがみを防止し、液体(水や薬液など)の使用量を削減することができる。
【0050】
ところで、シャワー洗浄動作において、液貯留部3から洗浄ノズル5へ供給する液体の流量を変更可能としてもよい。たとえば、インバータを用いて循環ポンプ12の回転数を変更することで、循環流量を変更する。それにより、被洗浄物(特にその汚れ具合)に応じて、洗浄ノズル5からの噴射流量を変更することができる。循環流量の変更は、運転開始前に、制御器に接続された設定器を用いて、二段階もしくは三段階、あるいはそれ以上、または無段階に設定される。たとえば、循環ポンプ12の回転数を所定回転数(最大循環量)とするパワフル運転と、それよりも回転数を下げた省エネ運転との二段階で、切替可能とすればよい。
【0051】
そして、制御器は、循環流量の変更に応じて、給水手段6による液貯留部3への貯水量を変更するのがよい。循環ポンプ12の回転数が高いほど、液貯留部3への貯水量(洗浄器1の保有水量)を増し、循環ポンプ12の回転数が低いほど、液貯留部3への貯水量を減らすことができる。
【0052】
但し、貯留量が最も少ない場合でも、循環ポンプ12の作動中の液位は、ストレーナ4の下端部よりも上方(好ましくはストレーナ4を水没させる位置)とされる。そのため、ストレーナ4の下端部よりも下方に離隔して液位が配置される場合のように、ストレーナ4から液面への落水がなく、気泡の発生を抑えて、循環ポンプ12でのエアがみを防止することができる。
【0053】
一方、貯留量が最も多い場合でも、循環ポンプ12の作動中の液位は、液貯留部3の上端開口縁よりも下方とされる。そのため、液貯留部3の上端開口縁を越えて洗浄槽2内の底部全体にまで液体を貯留する場合と比較して、液体の使用量を削減することができる。また、仮に液貯留部3だけでなく洗浄槽2内の底部全体に液体を貯留した場合には、洗浄ノズル5からの噴射液の全量が液面に直に落ちることになり、液面での気泡が生じ易くなるが、液貯留部3の上端開口縁よりも下方に液位を配置することで、気泡の発生を抑えて、循環ポンプ12でのエアがみを防止することができる。
【0054】
本発明の洗浄器1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、(a)被洗浄物を収容すると共に下部に傾斜面2aを介して液貯留部3が設けられた洗浄槽2と、液貯留部3内に設けられるストレーナ4と、このストレーナ4よりも下方から液貯留部3内の液体を吸い込むポンプ12とを備え、(b)ストレーナ4は、液貯留部3の上下方向中途部に保持され、(c)ポンプ12の作動中、液貯留部3内の液位は、液貯留部3の上端開口縁よりも下方にあると共に、ストレーナ4の少なくとも一部を浸漬する位置にあるのであれば、その他の構成は、適宜に変更可能である。
【0055】
たとえば、液貯留部3付きの洗浄槽2の平面視形状は、略矩形状に限らず、円形または楕円形の他、矩形以外の多角形状などであってもよい。その場合も、好ましくは、洗浄槽2下部の傾斜面2aは、液貯留部3の上端開口縁へ近づくにつれて下方へ傾斜して形成される。
【0056】
さらに、前記実施例において、洗浄後の被洗浄物を乾燥可能に、送風機をさらに備えてもよい。この場合、洗浄後の濡れた被洗浄物は、洗浄槽2内へ供給される温風により乾燥を図られる。
【符号の説明】
【0057】
1 洗浄器
2 洗浄槽(2a:傾斜面)
3 液貯留部(3a:循環口)
4 ストレーナ
5 洗浄ノズル
6 給水手段
7 排水手段
8 薬液供給手段
9 循環手段
10 加熱手段
11 仕切材
12 循環ポンプ
13 支持部材
14 洗浄ラック
15 配水部材
16 給水路
17 給水弁
18 排水路
19 排水弁
20 薬液タンク
21 給液路
22 薬液ポンプ
23 循環配管
24 逆止弁
25 ヒータ
26 液位検出器
27 温度センサ
28 超音波振動子
図1
図2
図3