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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】容積式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/18 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
G01F3/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020541136
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033097
(87)【国際公開番号】W WO2020050064
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018167502
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018208547
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】小池 毅
(72)【発明者】
【氏名】竹島 亜弓
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-301797(JP,A)
【文献】特開2012-103011(JP,A)
【文献】米国特許第05094106(US,A)
【文献】米国特許第02465997(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にピストンを備えるピストンロッドと、
該ピストンロッドの両端のピストンの各々を収容するシリンダと、
本体に穿設され、前記各々のシリンダが収容されるシリンダ室と、
前記各々のシリンダの外側に位置する各々のシリンダ室の近傍に開口して各々のシリンダ室に連通し、切替えバルブにより流入路と流出路とに交互に切り替わる流路と、
前記各々のシリンダ室及び前記各々の流路に対向するピストンカバーとを備え、
該各々のピストンカバーの内面又は前記本体の前記各々のピストンカバーの内面に対向する位置で、かつ前記各々の流路と前記各々のシリンダ室の間に凸部が形成されていることを特徴とする容積式流量計。
【請求項2】
前記凸部は、前記各々のシリンダ室の上部近傍に設けられることを特徴とする請求項1に記載の容積式流量計。
【請求項3】
記凸部は複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の容積式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積式流量計に関し、特に、燃料に添加剤を混入させるためなどの目的で使用される2ピストン型の容積式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車は走行距離が増すにつれてカーボンの蓄積や摩擦抵抗によりエンジン本来の力を発揮できなくなる。その失われたパワーを引き出すため、燃料に添加剤を混入している。そこで、本出願人は、特許文献1で添加剤を混入する装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平4-327198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の発明も有効であるが、上記装置に用いられる、添加剤を計量をするための流量計には、モータで入力軸を回転させ、入力軸に取り付けられた切替えバルブによりシリンダ室(計量室)への流入と流出とを切換える2ピストン型の容積式流量計が用いられる。
【0005】
しかし、この容積式流量計で計量される添加剤は微量であるため、容積式流量計の設置時において、シリンダ室及び流路に滞留していたエアを出口(切替えバルブの流出口)まで押し出すことが容易ではなく、特に粘度の高い添加剤の場合にはエア溜りが生じていた。エア溜りが存在すると、添加剤の吐出量に誤差が生じて計量精度が悪化するため、流路を小さくして流速を上げて脱泡することも考えられる。しかし、流路を小さくすることで圧力損失が大きくなり、ポンプ圧を高くしなければ添加剤を吐出できなくなる。また、ポンプ圧を高くすると、オイルシールやピストン等の機器の耐久性能が低下する虞があった。
【0006】
そこで、本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、ポンプ圧を高くしなくとも脱泡を容易に行うことができる容積式流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の容積式流量計は、両端にピストンを備えるピストンロッドと、該ピストンロッドの両端のピストンの各々を収容するシリンダと、本体に穿設され、前記各々のシリンダが収容されるシリンダ室と、前記各々のシリンダの外側に位置する各々のシリンダ室の近傍に開口して各々のシリンダ室に連通し、切替えバルブにより流入路と流出路とに交互に切り替わる流路と、前記各々のシリンダ室及び前記各々の流路に対向するピストンカバーとを備え、該各々のピストンカバーの内面又は前記本体の前記各々のピストンカバーの内面に対向する位置で、かつ前記各々の流路 前記各々のシリンダ室の間に凸部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の容積式流量計によれば、ピストンカバーの内面又は本体の前記各々のピストンカバーの内面に対向する位置に凸部を形成したことにより、シリンダ室から流路へ通じる箇所の流体の流れを乱し、エア溜りが生ずることを防止した。また、エア溜りが生じたとしてもエアが凸部によって撹拌されて排出され易くなる。これにより、ポンプ圧を高くしなくとも脱泡を容易に行うことができる。
【0009】
上記容積式流量計において、前記凸部を前記各々のシリンダ室の上部近傍に設けることができ、エア溜まりが形成される箇所の流体の流れを乱すことでエア溜りが生じ難くなり、エア溜りが生じたとしても排出され易くなる。
【0010】
上記容積式流量計において、前記凸部は複数設けることができ、凸部を複数設けることで脱泡効率が向上して高粘度の液体に対しても有効に機能する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ポンプ圧を高くしなくとも脱泡を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る容積式流量計を備える給油装置を示す概略図である。
図2図1の容積式流量計及びモータを示す斜視図である。
図3図2に示す容積式流量計のA-A面断面図である。
図4図2の容積式流量計のピストンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図5図2の容積式流量計のピストンカバーの内面及びその近傍の流路を示す概略図(図3のB矢視図)である。
図6図2の容積式流量計の流路に生ずるエア溜まりを示す概略図(図3のB矢視図に相当)である。
図7図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に形成した凸部の他の例を示す概略図である。
図8図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に形成した凸部の他の例を示す概略図である。
図9図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に形成した凸部の他の例を示す概略図である。
図10図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に形成した凸部の他の例を示す概略図である。
図11図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に形成した凸部の他の例を示す概略図である。
図12図2の容積式流量計のピストンカバーの内面に対向する本体に形成した凸部の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る容積式流量計を備える給油装置を示し、この給油装置80は、ガソリン等の燃料の供給系統として、地下タンク(不図示)等から燃料を汲み上げる燃料用ポンプ94、95と、燃料用ポンプ94、95を回転駆動するための燃料用モータ96、97と、車両等へ供給する燃料の量を計量する燃料用流量計92、93の2系統を備える。
【0015】
また、給油装置80は、燃料に添加剤を混入させるための添加剤供給系統として、添加剤容器86、87と、各々の添加剤容器86、87から添加剤を汲み上げる添加剤用ポンプ82、83と、添加剤用ポンプ82、83を回転駆動するための添加剤用モータ84、85と、添加剤用ポンプ82、83から供給された添加剤を計量するための添加剤用流量計(本発明に係る容積式流量計)1と、添加剤用流量計1の回転軸12(図3参照)を回転させるための添加剤用第2モータ81を備え、2種類の添加剤を添加することができる。
【0016】
さらに、給油装置80は、添加剤用流量計1によって計量された添加剤を燃料供給系統に供給するための逆止弁90、91と、給油装置80全体を制御するための給油制御装置89と、給油量等を表示するための表示器88を備える。
【0017】
上記構成により、添加剤供給系統から添加剤を所定の割合で燃料に混入させながら、燃料供給系統によって添加剤が混入した燃料を車両に供給する。
【0018】
図2は、添加剤用流量計1及び添加剤用第2モータ81を示し、これらはボルト4、5等の締結部材で共通のベース3上に固定される。添加剤用流量計1は、流路切替機構1Aと計量機構1Bとで構成される。
【0019】
図3に示すように、流路切替機構1Aは、ハウジング11を貫通し、添加剤用第2モータ81(図2参照)に接続される回転軸12と、ハウジング11の内面にビス14によって固定されて回転軸12が貫通する支持部13と、支持部13の左側面に固定される皿状部15と、回転軸12の左端部に固定されて回転軸12と共に回転する切替えバルブ17と、切替えバルブ17と皿状部15との間に介装されるコイルばね16と、ハウジング11を貫通する2つの流入口18とを備える。
【0020】
計量機構1Bは、本体21の内部に、両端にピストン22、23を備えるピストンロッド24と、ピストン22、23を収容するシリンダ25、26と、シリンダ25、26のシリンダ室21f、21gに対向するピストンカバー29、30と、流路切替機構1Aの切替えバルブ17に当接するバルブシート31とを備える。
【0021】
切替えバルブ17は、本体17aの右側面から右方に突出する突出部17eと、左方に開口する凹部17bと、左方に突出する突出部17hを備える。凹部17bは、図3において上部の方が下部より容量が大きく、上部がバルブシート31の流路31cに連通し、下部は流路31bと連通しない。突出部17eの右方に開口する孔部17fに回転軸12の左端部が挿入される。突出部17hの孔部17gに、計量機構1B側に固定されたピン32が遊嵌される。この構成により、切替えバルブ17全体がコイルばね16によってバルブシート31側に付勢されながら、回転軸12の回転に伴って切替えバルブ17もピン32を中心に回転し、切替えバルブ17の左側面17dがバルブシート31の右側面31d上を摺動する。
【0022】
バルブシート31は、円板状に形成され、計量機構1Bの本体21の右方凹部21aに収容される。バルブシート31の本体31aを2つの流路31b、31cが貫通する。
【0023】
計量機構1Bの本体21は、上下方向に貫通する貫通穴21hと、流路21b~21e、21jを備える。流路21b、21cは、各々バルブシート31の流路31b、31cに連通する。流路21b、21cに連続する流路21d、21eは、各々貫通穴21hの上下端部のシリンダ室21f、21gに連通する。流路21jは、貫通穴21h並びに本体21及びバルブシート31に形成された流路(不図示)を介して凹部17bに連通する。
【0024】
流路切替機構1Aのハウジング11と計量機構1Bの本体21は、ボルト34によって一体化される。また、本体21の上下端面には、ピストンカバー29、30がボルト35によって固定される。
【0025】
図4に示すように、ピストンカバー30の内面30aには、直方体状の凸部30bが設けられる。図示を省略するが、もう一方のピストンカバー29の内面にも、同様の凸部が設けられる。凸部30bは、図5に示すように、流路21dとシリンダ室21fの間においてシリンダ室21fの上部近傍に位置する。
【0026】
次に、上記構成を有する添加剤用流量計1の動作について、図6を参照しながら説明する。同図では、添加剤の流れ及びピストン22、23の移動方向を矢印で示している。
【0027】
流入口18から流入した添加剤は、バルブシート31の流路31b、本体21の流路21b、21dを通ってシリンダ室21fに達し、ピストン23を上方に移動させる。ピストン23の上方への移動に伴い、ピストン22も上方へ移動し、これによって、シリンダ室21gに充満していた添加剤が本体21の流路21e、21c、バルブシート31の流路31c、及び本体21及びバルブシート31に形成された流路(不図示)を通って貫通穴21hに達し、最終的に流路21jから図1の給油装置80の給油系統へ供給される。その後、添加剤用第2モータ81によって回転軸12が180度回転し、これに伴い切替えバルブ17も180度回転し、流路21c、21eが流入路となり、流路21d、21b及び流路31bが流出路となり、上記とは反対の流れとなる。尚、添加剤用流量計1の運転当初は、シリンダ室21f、21gに添加剤は充満していないが、回転軸12が一回転するとシリンダ室21f、21gに添加剤が充満し、回転軸12の回転に伴って上記動作を交互に繰り返すことで、添加剤が連続して所定の割合で給油装置80の給油系統へ供給される。
【0028】
しかし、従来、容積式流量計1を給油装置80に設置した当初は、図7に示すように、シリンダ室21fの上部から流路21dの上部にかけてエア36が滞留し、容積式流量計1で計量される添加剤は微量であるため、このエア36を切替えバルブ17の凹部17bまで押し出すことが容易ではなかった。
【0029】
そこで、本発明では、図5に示したように、流路21dとシリンダ室21fのエア36が滞留し易いシリンダ室21fの上部近傍に凸部30bを設け、この凸部30bによって流路21dとシリンダ室21fの間で流体の流れを乱し、エア溜りが生ずることを防止した。また、エアが溜まったとしてもエアが凸部30bによって撹拌されて排出され易くなる。
【0030】
図8は、上記凸部30bに代えて、複数の円柱状の凸部30eを流路21dとシリンダ室21fに設けた例を示している。凸部30eを複数設けることで脱泡効率が向上し、高粘度の添加剤に対しても有効である。
【0031】
図9は、上記凸部30bを流路21dとシリンダ室21fの高さ方向の中間部に設けた例を示している。この例では、凸部30bの位置決めを容易に行うことができる。
【0032】
図10は、上記凸部30bより若干小型の凸部30fを流路21dとシリンダ室21fの間の上部と下部に各々一つずつ設けた例を示している。この例では、容積式流量計1の取付姿勢が問われることがない。
【0033】
図11は、上記凸部30bを流路21dとシリンダ室21fの間の高さ方向の中間部から下部にかけて設けた例を示している。この例では、ある程度の脱泡機能を発揮しつつ、容積式流量計1の設置を上下逆向きにした場合にも有効である。
【0034】
図12は、上記凸部30bを各々のピストンカバー30の内面に対向する本体21側に設けた場合を示している。この凸部30bは、図5に示したように、流路21dとシリンダ室21fの間においてシリンダ室21fの上部近傍に位置する。図示を省略するが、もう一方のピストンカバー29の内面に対向する本体21側にも、同様の凸部が設けられる。また、本体21側にも、図8図11で示したような種々の凸部を設けることができる。
【0035】
左右一対のピストンカバー29、30の内面に凸部30b等を設けた場合には、凸部30b等の形状によっては左右で異なるピストンカバー29、30となるため、左右で付け間違えるおそれがあるが、凸部30b等を本体21側に設けることで、そのようなおそれがない。また、ピストンカバー29、30に凸部30b等を設けないため、ピストンカバー29、30を共通にできる。さらに、ピストンカバー29、30に凸部30b等を設けた場合には、寸法誤差やねじのガタによって凸部30b等の位置がずれるおそれがあるが、本体21側に設けることで、そのようなおそれもない。
【符号の説明】
【0036】
1 容積式流量計
1A 流路切替機構
1B 計量機構
3 ベース
4、5 ボルト
11 ハウジング
12 回転軸
13 支持部
14 ビス
15 皿状部
16 コイルばね
17 切替えバルブ
18 流入口
21 本体
22、23 ピストン
24 ピストンロッド
25、26 シリンダ
29、30 ピストンカバー
31 バルブシート
32 ピン
34、35 ボルト
36 エア
80 給油装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12