(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230110BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F37/00 G
H01F27/06
(21)【出願番号】P 2020555655
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019044004
(87)【国際公開番号】W WO2020100772
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2018214504
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】三崎 貴史
(72)【発明者】
【氏名】舌間 誠二
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-150250(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014160(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193854(WO,A1)
【文献】特開平11-238629(JP,A)
【文献】特開2017-98426(JP,A)
【文献】特開2016-66750(JP,A)
【文献】特開平11-297540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F37/00
H01F27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと磁性コアとを組み合わせた組合体と、前記組合体を内部に収納するケースとを備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部、前記組合体の外周を囲む側壁部、及び開口部を有し、
前記磁性コアは、前記コイルの内部に配置される内側コア部、及び前記コイルの外側に配置される外側コア部を有するリアクトルであって、
前記ケースの内部で、前記底板部側と前記開口部側とから前記組合体を挟み込む把持部材と、
前記底板部の外部から前記ケースの内部に貫通し、前記把持部材を前記底板部に固定するネジ部材とを備え、
前記組合体は、前記コイルの一端面と前記外側コア部との間、及び前記コイルの他端面と前記外側コア部との間に一つずつ設けられ、前記コイルと前記外側コア部とを保持する保持部材を備え、
前記把持部材は、
前記組合体のうち、前記開口部側にある面に当接する第一片と、
前記組合体のうち、前記底板部側にある面に当接する第二片と、
前記第一片と前記第二片とを、前記ケースの深さ方向に繋ぐ第三片とを備え
、
前記第一片と前記第二片は、前記保持部材に当接している、
リアクトル。
【請求項2】
前記保持部材は、前記第一片が嵌め込まれる第一溝部と、前記第二片が嵌め込まれる第二溝部と、を備える
請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記組合体は、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備える請求項1
又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
コイルと磁性コアとを組み合わせた組合体と、前記組合体を内部に収納するケースとを備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部、前記組合体の外周を囲む側壁部、及び開口部を有し、
前記磁性コアは、前記コイルの内部に配置される内側コア部、及び前記コイルの外側に配置される外側コア部を有するリアクトルであって、
前記ケースの内部で、前記底板部側と前記開口部側とから前記組合体を挟み込む把持部材と、
前記底板部の外部から前記ケースの内部に貫通し、前記把持部材を前記底板部に固定するネジ部材とを備え、
前記組合体は、
前記コイルの一端面と前記外側コア部との間、及び前記コイルの他端面と前記外側コア部との間に一つずつ設けられ、前記コイルと前記外側コア部とを保持する保持部材と、
前記外側コア部の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部と、を備え、
前記把持部材は、
前記組合体のうち、前記開口部側にある面に当接する第一片と、
前記組合体のうち、前記底板部側にある面に当接する第二片と、
前記第一片と前記第二片とを、前記ケースの深さ方向に繋ぐ第三片とを備え
、
前記第一片と前記第二片は、前記樹脂モールド部に当接している、
リアクトル。
【請求項5】
前記樹脂モールド部は、前記第一片が嵌め込まれる第一溝部と、前記第二片が嵌め込まれる第二溝部とを備える
請求項4に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部は、前記底板部に直交する方向に積み重ねられ、前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸は共に、前記底板部に平行に配置されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸は、前記底板部に直交して配置されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部は共に、前記底板部上に横並びに配置されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記コイルは、第一巻回部を有し、
前記第一巻回部の軸は、前記底板部に平行に配置されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項10】
前記コイルは、第一巻回部を有し、
前記第一巻回部の軸は、前記底板部に直交して配置されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項11】
前記ネジ部材は、軸部とヘッド部とを備え、
前記底板部における前記ケースの外方の面は、前記ヘッド部の全体を収納するヘッド収納部を備える請求項1から
請求項10のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項12】
前記ケースは、
前記ケースの内周面における前記把持部材が配置される側と反対側にある対向面と、
前記対向面のうち、前記開口部側の位置から前記ケースの内方に向って突出する押え部とを備え、
前記押え部は、前記組合体における前記開口部側にある面に対向している請求項1から
請求項11のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項13】
前記第二片は、前記ネジ部材がネジ結合されるネジ孔を備える請求項1から
請求項12のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項14】
前記第二片は、前記ネジ孔の近傍の部分を他の部分より厚くする補強部を備える
請求項13に記載のリアクトル。
【請求項15】
前記補強部は、前記第二片に溶接されたナットによって形成されている
請求項14に記載のリアクトル。
【請求項16】
前記底板部は、前記把持部材が設けられる側と反対側に向って前記補強部をスライド可能に収納するスライド凹部を備え、
前記補強部は、前記スライド凹部の端部の位置で前記ネジ部材により固定される
請求項14又は請求項15に記載のリアクトル。
【請求項17】
前記ケース内に充填される封止樹脂を備える請求項1から
請求項16のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
本出願は、2018年11月15日付の日本国出願の特願2018-214504に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、巻線を巻回してなる一対の巻回部を有するコイルと、閉磁路を形成する磁性コアとを備え、ハイブリッド自動車のコンバータの構成部品などに利用されるリアクトルが開示されている。このリアクトルでは、コイルと磁性コアと端面介在部材とを組み合わせた組合体がケースに収納されている。端面介在部材は、コイルの端面と磁性コアの間に介在され、両者を保持する保持部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のリアクトルは、
コイルと磁性コアとを組み合わせた組合体と、前記組合体を内部に収納するケースとを備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部、前記組合体の外周を囲む側壁部、及び開口部を有し、
前記磁性コアは、前記コイルの内部に配置される内側コア部、及び前記コイルの外側に配置される外側コア部を有するリアクトルであって、
前記ケースの内部で、前記底板部側と前記開口部側とから前記組合体を挟み込む把持部材と、
前記底板部の外部から前記ケースの内部に貫通し、前記把持部材を前記底板部に固定するネジ部材とを備え、
前記把持部材は、
前記組合体のうち、前記開口部側にある面に当接する第一片と、
前記組合体のうち、前記底板部側にある面に当接する第二片と、
前記第一片と前記第二片とを、前記ケースの深さ方向に繋ぐ第三片とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態1のリアクトルのケースを切断して示すリアクトルの部分縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の保持部材に対する把持部材の取付状態を説明する概略説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態2のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態3のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態4のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態5のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態6のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態8のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態9のリアクトルの部分縦断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態10のリアクトルの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
・本開示が解決しようとする課題
近年、ハイブリッド自動車及び電気自動車の普及に伴い、リアクトルが高周波の大電流で使用される傾向にある。そのため、リアクトルの使用時にリアクトルの組合体が激しく振動する。リアクトルの設置スペースの関係で、ケースの開口部を横向きあるいは下向きにしてリアクトルを設置することもある。その場合、組合体が激しく振動すると、ケース内から組合体が脱落する恐れもある。特許文献1の構成では、ケース内の四隅に設けられた台座部に、組合体の上面を押えるステーがネジ止めされている。その結果、ケースに対して確りと組合体が固定される。しかし、特許文献1の構成では、ケースの四隅に設けた台座部の分だけケースが大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リアクトルを大型化することなく、ケース内に組合体を確りと固定できるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【0008】
・本開示の効果
上記構成によれば、リアクトルが大型化することなく、ケース内に組合体が確りと固定される。
【0009】
・本開示の実施形態の説明
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
コイルと磁性コアとを組み合わせた組合体と、前記組合体を内部に収納するケースとを備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部、前記組合体の外周を囲む側壁部、及び開口部を有し、
前記磁性コアは、前記コイルの内部に配置される内側コア部、及び前記コイルの外側に配置される外側コア部を有するリアクトルであって、
前記ケースの内部で、前記底板部側と前記開口部側とから前記組合体を挟み込む把持部材と、
前記底板部の外部から前記ケースの内部に貫通し、前記把持部材を前記底板部に固定するネジ部材とを備え、
前記把持部材は、
前記組合体のうち、前記開口部側にある面に当接する第一片と、
前記組合体のうち、前記底板部側にある面に当接する第二片と、
前記第一片と前記第二片とを、前記ケースの深さ方向に繋ぐ第三片とを備える。
【0011】
上記構成によれば、把持部材を介してケースに組合体が確りと固定される。そのため、リアクトルが振動しても、ケース内から組合体が脱落することを抑制できる。
【0012】
また、把持部材はケースの深さ方向に延びる部材で、その把持部材をケースに固定するネジ部材は底板部に配置される。そのため、把持部材を設けても、ケースを開口部側から見たときの平面面積が大きくなることがない。ケースの大型化が回避されることで、リアクトルの大型化が抑制される。
【0013】
<2>上記<1>のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部は、前記底板部に直交する方向に積み重ねられ、前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸は共に、前記底板部に平行に配置されているが挙げられる。
【0014】
上記構成によれば、ケースを開口側から見たときの平面面積が小さくなる。そのため、リアクトルの設置面積が小さくなる。ここで、本明細書における『平行』は、『実質的に平行』を意味する。具体的には、幾何学的平行だけでなく、幾何学的平行に対して±5°以内のずれを持ったものも平行に含まれる。
【0015】
<3>上記<1>のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸は、前記底板部に直交して配置されている形態が挙げられる。
【0016】
上記構成によれば、ケースを開口側から見たときの平面面積が小さくなる。そのため、リアクトルの設置面積が小さくなる。ここで、本明細書における『直交』は、『実質的に直交』を意味する。具体的には、幾何学的直交だけでなく、幾何学的直交に対して±5°以内のずれをもったものも直交に含まれる。
【0017】
<4>上記<1>のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、互いに平行な軸を持った第一巻回部及び第二巻回部を有し、
前記第一巻回部と前記第二巻回部は共に、前記底板部上に横並びに配置されている形態を挙げることができる。
【0018】
上記構成によれば、ケースの深さが浅くなる。そのため、リアクトルの設置箇所から直交する方向にリアクトルの設置スペースが小さい場合でも、リアクトルの設置が容易になる。
【0019】
<5>上記<1>のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、第一巻回部を有し、
前記第一巻回部の軸は、前記底板部に平行に配置されている形態が挙げられる。
【0020】
上記構成によれば、ケースの深さが浅くなる。そのため、リアクトルの設置箇所から直交する方向にリアクトルの設置スペースが小さい場合でも、リアクトルの設置が容易になる。
【0021】
<6>上記<1>のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、第一巻回部を有し、
前記第一巻回部の軸は、前記底板部に直交して配置されている形態が挙げられる。
【0022】
上記構成によれば、ケースを開口側から見たときの平面面積が小さくなる。そのため、リアクトルの設置面積が小さくなる。
【0023】
<7>上記<1>から<6>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記組合体は、前記コイルの一端面と前記外側コア部との間、及び前記コイルの他端面と前記外側コア部との間に一つずつ設けられ、前記コイルと前記外側コア部とを保持する保持部材を備える形態が挙げられる。
【0024】
保持部材によれば、コイルと外側コア部との絶縁の確保が容易になる。また、保持部材によれば、コイルと磁性コアとの位置決めが容易になる。
【0025】
<8>上記<7>のリアクトルの一形態として、
前記第一片と前記第二片は、前記保持部材に当接している形態が挙げられる。
【0026】
保持部材は、リアクトルの磁気特性に関与しない部材である。従って、把持部材の強度を確保するために金属製の把持部材が使用された場合であっても、その把持部材がリアクトルの磁気特性に悪影響を与え難い。また、把持部材によって保持部材に傷がついても、リアクトルの磁気特性が悪化することもない。
【0027】
<9>上記<8>のリアクトルの一形態として、
前記保持部材は、前記第一片が嵌め込まれる第一溝部と、前記第二片が嵌め込まれる第二溝部と、を備える形態が挙げられる。
【0028】
上記構成によれば、組合体と把持部材とが機械的に嵌め合わされる。そのため、振動によって把持部材が組合体からずれることが抑制される。
【0029】
<10>上記<1>から<9>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記組合体は、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備える形態が挙げられる。
【0030】
樹脂モールド部によって外側コア部が外部環境から保護される。ここで、保持部材を備える構成では、樹脂モールド部は、コイルと磁性コアと保持部材とを強固に一体化する役割を担う。そのため、樹脂モールド部は、組合体が振動したときに組合体を構成する部材が分解することを効果的に抑制できる。
【0031】
<11>上記<7>の実施形態の一形態として、
前記組合体は、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備え、
前記第一片と前記第二片は、前記樹脂モールド部に当接している形態が挙げられる。
【0032】
樹脂モールド部は、リアクトルの磁気特性に関与しない部材である。従って、把持部材の強度を確保するために金属製の把持部材が使用された場合であっても、その把持部材がリアクトルの磁気特性に悪影響を与え難い。また、把持部材によって樹脂モールド部に傷がついても、リアクトルの磁気特性が悪化することもない。
【0033】
<12>上記<11>の実施形態として、
前記樹脂モールド部は、前記第一片が嵌め込まれる第一溝部と、前記第二片が嵌め込まれる第二溝部とを備える形態が挙げられる。
【0034】
上記構成によれば、組合体と把持部材とが機械的に嵌め合わされる。そのため、振動によって把持部材が組合体からずれることが抑制される。
【0035】
<13>上記<1>から<12>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記ネジ部材は、軸部とヘッド部とを備え、
前記底板部における前記ケースの外方の面は、前記ヘッド部の全体を収納するヘッド収納部を備える形態が挙げられる。
【0036】
上記構成によれば、ネジ部材が底板部の外方の面から突出することが無い。そのため、平坦な設置対象に対してケースが密着し易く、設置対象への放熱性、及び設置対象に対するケースの安定性が向上する。
【0037】
<14>上記<1>から<13>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記ケースは、
前記ケースの内周面における前記把持部材が配置される側と反対側にある対向面と、
前記対向面のうち、前記開口部側の位置から前記ケースの内方に向って突出する押え部とを備え、
前記押え部は、前記組合体における前記開口部側にある面に対向している形態が挙げられる。
【0038】
上記構成によれば、把持部材と反対側においてケースからの組合体の脱落が防止される。この構成では、把持部材が一つで済むので、リアクトルの作製を容易にできる。
【0039】
<15>上記<1>から<14>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記第二片は、前記ネジ部材がネジ結合されるネジ孔を備える形態が挙げられる。
【0040】
上記構成によれば、ネジ結合によって把持部材が強固にケースに固定される。その結果、ケースに対する組合体の固定が強固になる。
【0041】
<16>上記<15>のリアクトルの一形態として、
前記第二片は、前記ネジ孔の近傍の部分を他の部分より厚くする補強部を備える形態が挙げられる。
【0042】
ネジ部材がネジ結合されるネジ孔の近傍は、組合体が振動したときに応力が作用し易い部分である。この部分を局所的に厚くすることで、把持部材が損傷することを抑制できる。
【0043】
<17>上記<16>のリアクトルの一形態として、
前記補強部は、前記第二片に溶接されたナットによって形成されている形態が挙げられる。
【0044】
この構成では、ナットの孔がネジ孔の一部を構成する。第二片にナットを後付けすることで、局所的に厚くなった補強部が容易に形成される。また、ナットにネジ部材がネジ結合されるので、ネジ部材による把持部材の固定が強固になる。
【0045】
<18>上記<16>又は<17>のリアクトルの一形態として、
前記底板部は、前記把持部材が設けられる側と反対側に向って前記補強部をスライド可能に収納するスライド凹部を備え、
前記補強部は、前記スライド凹部の端部の位置で前記ネジ部材により固定される形態が挙げられる。
【0046】
上記構成によれば、スライド凹部がガイドとなって、ケース内の所定位置に組合体を配置し易い。上記構成は特に、ケースが押え部を備える構成と組み合わせると、押え部による効果を得つつ、組み立て易いリアクトルとなる。この点に関しては、後述する実施形態4で詳しく述べる。
【0047】
<19>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記ケース内に充填される封止樹脂を備える形態が挙げられる。
【0048】
封止樹脂によって、ケースに対する組合体の固定状態がより強固になる。また、封止樹脂によって組合体からケースへの伝熱経路が確保されるので、リアクトルの放熱性が高まる。
【0049】
・本開示の実施形態の詳細
以下、本開示のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0050】
<実施形態1>
実施形態1では、
図1~
図3に基づいてリアクトル1の構成を説明する。
図1に示すリアクトル1は、コイル2及び磁性コア3を有する組合体10と、組合体10を収納するケース6とを備える。このリアクトル1の特徴の一つとして、ケース6内からの組合体10の脱落を防止する脱落防止機構を備えることが挙げられる。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0051】
≪組合体≫
図1に示すように、組合体10は、コイル2と磁性コア3と第一保持部材4Cと第二保持部材4Dとを備える。本例では更に、組合体10は、これらの部材2,3,4C,4Dを一体化する樹脂モールド部5を備える。
【0052】
[コイル]
本実施形態のコイル2は、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bと連結部2Rとを備える。第一巻回部2Aと第二巻回部2Bは、互いの軸が平行となるようにケース6内に縦積みされている。連結部2Rは、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとを連結する。本例では、両巻回部2A,2Bと連結部2Rとは一本の巻線で構成されている。各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。本例とは異なり、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとは、巻数が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。
【0053】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0054】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0055】
コイル2は、外部機器の端子部材に接続される第一巻線端部と第二巻線端部を備える。本例では両巻線端部の図示は省略されている。第一巻線端部は、第一巻回部2Aの軸方向の一端側(連結部2Rの反対側)で第一巻回部2Aから引き出される。第二巻線端部は、第二巻回部2Bの軸方向の一端側で第二巻回部2Bから引き出される。巻線端部ではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。巻線端部に接続される端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0056】
[磁性コア]
本例の磁性コア3は、第一コア片3A、第二コア片3B、第三コア片3C、及び第四コア片3Dを備える。第一コア片3Aは、第一巻回部2Aの内部に配置される内側コア部31である。第二コア片3Bは、第二巻回部2Bの内部に配置される内側コア部31である。第三コア片3Cは、第一コア片3Aの一端(巻線端部側:紙面左側)と、第二コア片3Bの一端とを繋ぐ外側コア部32である。第四コア片3Dは、第一コア片3Aの他端(連結部2R側:紙面右側)と、第二コア片3Bの他端とを繋ぐ外側コア部32である。これらコア片3A,3B,3C,3Dが環状に繋がることで閉磁路が形成される。本例とは異なり、磁性コア3は、二つのU字型のコア片が環状に繋がることで構成されていても良い。
【0057】
[[内側コア部]]
内側コア部31,31は、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分である。本例では、内側コア部31,31のうち、巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分の両端部が巻回部2A,2Bの端面から突出している。その突出する部分も内側コア部31,31の一部である。
【0058】
内側コア部31,31の形状は、巻回部2A,2Bの内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例の内側コア部31は、略直方体状である。内側コア部31は、複数の分割コアとギャップ板とを連結した構成としても良いが、本例のように一つの部材とすると、リアクトル1の組み立てが容易となるため好ましい。
【0059】
[[外側コア部]]
外側コア部32,32は、磁性コア3のうち、巻回部2A,2Bの外部に配置される部分である。外側コア部32,32の形状は、一対の内側コア部31,31の端部を繋ぐ形状であれば特に限定されない。本例の外側コア部32は、略直方体状である。本例では、外側コア部32は、内側コア部31,31の軸方向の端面と接触しているか、又は接着剤を介して実質的に接触している。
【0060】
[[材質など]]
内側コア部31と外側コア部32は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる圧粉成形体、あるいは軟磁性粉末と樹脂との複合材料の成形体で構成することができる。例えば、内側コア部31を複合材料の成形体、外側コア部32を圧粉成形体とすることが挙げられる。
【0061】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末と未固化の樹脂との混合物を金型に充填し、樹脂を固化させることで製造できる。軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe-Si合金、Fe-Ni合金など)などで構成される軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。原料粉末には潤滑材などが含まれていてもかまわない。一方、複合材料に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂などが挙げられる。
【0062】
複合材料中の軟磁性粉末の含有量は、30体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、軟磁性粉末の含有量は更に、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上とすることができる。製造過程での流動性の向上の観点から、軟磁性粉末の含有量を75体積%以下とすることが好ましい。複合材料の成形体では、軟磁性粉末の充填率が低くなれば、その比透磁率は小さくなり易い。例えば複合材料の成形体の比透磁率は5以上50以下とすることが挙げられる。
【0063】
圧粉成形体は、複合材料の成形体よりも軟磁性粉末の含有量を高め易く(例えば80体積%超、更に85体積%以上)、飽和磁束密度や比透磁率がより高いコア片を得易い。例えば圧粉成形体の比透磁率は50以上500以下とすることが挙げられる。
【0064】
[保持部材]
図1に示す本例のリアクトル1は更に、コイル2と外側コア部32を保持する第一保持部材4Cと第二保持部材4Dとを備える。第一保持部材4Cは、図示しないコイル2の巻線端部側(紙面左側)で、コイル2の巻回部2A,2Bの端面と、磁性コア3の外側コア部32を構成する第三コア片3Cとの間に介在される。一方、第二保持部材4Dは、コイル2の連結部2R側で、コイル2の巻回部2A,2Bの端面と、磁性コア3の外側コア部32を構成する第四コア片3Dとの間に介在される。保持部材4C,4Dは、代表的にはPPS樹脂などの絶縁材料で構成される。保持部材4C,4Dは、コイル2と磁性コア3との間の絶縁部材や、巻回部2A,2Bに対する内側コア部31,31、及び外側コア部32,32の位置決め部材として機能する。
【0065】
保持部材4C,4Dは枠状に形成されており、一対の貫通孔4hとコア収納部4dとを備えている。貫通孔4hは、内側コア部31,31の端部が挿通される孔である。コア収納部4dは、外側コア部32,32が嵌め込まれる凹みである。貫通孔4hは、コア収納部4dの底部に連通している。従って、保持部材4C,4Dの内部で、内側コア部31,31と外側コア部32,32とが連結される。
【0066】
本例では、連結部2R側の第二保持部材4Dが第一溝部41と第二溝部42とを備える。これら溝部41,42は、後述する脱落防止機構の一部を構成する。溝部41,42の位置及び役割については、脱落防止機構の説明の際に述べる。
【0067】
[樹脂モールド部]
樹脂モールド部5は、外側コア部32,32における保持部材4C,4Dから露出する部分を覆うように配置される。樹脂モールド部5によって、外側コア部32,32が保持部材4C,4Dに固定されると共に、外側コア部32,32が外部環境から保護される。本例の樹脂モールド部5は、保持部材4C,4Dの内部に入り込み、内側コア部31,31の端面近傍に及んでいる。そのため、樹脂モールド部5によって、コイル2と磁性コア3と保持部材4C,4Dとが一体化されている。樹脂モールド部5は、巻回部2A,2Bの内部に及んでいても良い。その場合、組合体10の結合がより強固になる。更に、第一保持部材4C側の樹脂モールド部5と、第二保持部材4D側の樹脂モールド部5とは、巻回部2A,2Bの内部で繋がっていても良い。
【0068】
樹脂モールド部5には、例えば、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂などを利用することができる。これらの樹脂にアルミナやシリカなどのセラミックスフィラーが含有されていれば、樹脂モールド部5の放熱性が向上し易い。
【0069】
ここで、本例の樹脂モールド部5は、保持部材4C,4Dにおける外側コア部32,32が配置される側にのみ設けられ、巻回部2A,2Bの外周面に及んでいない。樹脂モールド部5の機能に鑑みれば、樹脂モールド部5の形成範囲は図示する程度で十分である。樹脂モールド部5の形成範囲を限定することで、樹脂の使用量を低減できるといった利点、及び樹脂モールド部5によってリアクトル1が不必要に大型化することを抑制できるといった利点がある。また、巻回部2A,2Bの外周面が樹脂モールド部5に覆われることなく露出しているので、組合体10の放熱性を高められる。
【0070】
[ケース]
ケース6は、組合体10が載置される底板部60と、組合体10の外周を囲む側壁部61と、側壁部61の端部に形成される開口部63とを備える。底板部60と側壁部61とは一体に形成しても良いし、別々に用意した底板部60と側壁部61とを連結しても良い。ケース6の材料としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金などの非磁性金属、あるいは樹脂などを利用することができる。底板部60と側壁部61とを別体とするのであれば、底板部60の材料と側壁部61の材料を異ならせることもできる。例えば、底板部60を非磁性金属、側壁部を樹脂とする、あるいはその逆とすることが挙げられる。
【0071】
本例では、組合体10の巻回部2A,2Bがケース6内で縦積みされている。つまり、巻回部2A,2Bが底板部60に直交する方向に積み重ねられ、巻回部2A,2Bの軸が共に、底板部60に平行になっている。
【0072】
本例のケース6の開口部63は長方形状になっている。巻回部2A,2Bの軸方向に沿った開口部63の長さ(紙面左右方向の長さ)は80mm以上120mm以下、巻回部2A,2Bの軸方向に直交する開口部63の長さ(紙面奥行き方向の長さ)は40mm以上80mm以下とすることが好ましい。一方、ケース6の深さは80mm以上150mm以下とすることが好ましい。これらの寸法から、ケース6の内容積は250cm
3
以上1450cm
3
以下となる。
【0073】
ケース6には、後述する脱落防止機構を構成する貫通孔6h(
図2)が形成されている。貫通孔6hの位置及び機能については脱落防止機構の説明の際に述べる。
【0074】
≪封止樹脂≫
本例では、ケース6内に封止樹脂69が充填されている。封止樹脂69は、組合体10の少なくとも一部を覆う。封止樹脂69は、以下の(a)~(d)に示す種々の機能を有する。(a)組合体10の熱をケース6へ伝達する機能。(b)組合体10を機械的保護及び外部環境から保護(防食性の向上)する機能。(c)組合体10とケース6との間の電気的な絶縁性を向上する機能。(d)組合体10とケース6との一体化によるリアクトル1の強度及び剛性を向上する機能。
【0075】
本例の封止樹脂69は、実質的にケース6の開口端まで充填されていて、組合体10の全体を埋設している。即ち、封止樹脂69の上面はケース6の側壁部61の端面と実質的に面一である。封止樹脂69の材質には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが利用される。これらの樹脂には、上述のセラミックスフィラーなどが含有されていてもよい。
【0076】
≪脱落防止機構≫
本実施形態のリアクトル1は、ケース6内からの組合体10の脱落を防止する脱落防止機構を備える。脱落防止機構は主に、組合体10を把持する把持部材7と、把持部材7をケース6にネジ止めするネジ部材8とで構成される。
【0077】
[把持部材]
把持部材7は、第一片71と第二片72と第三片73とを備える概略C字状の部材である。把持部材7は、ケース6の内部で底板部60側と開口部63側とから組合体10を挟み込み、組合体10を把持する。第一片71は、組合体10のうち、ケース6の開口部63側にある面に当接する部分である。第二片72は、組合体10のうち、ケース6の底板部60側にある面に当接する部分である。第三片73は、第一片71と第二片72とをケース6の深さ方向に繋ぐ部分である。
【0078】
本例では、第一片71は、第二保持部材4Dの第一溝部41に嵌まり込んでいる。第一溝部41は、第二保持部材4Dにおける開口部63側の面に形成されている。より具体的には、第一溝部41は、第二保持部材4Dの外端面(コイル2と反対側の端面)からコイル2側に向って延びている。第一溝部41は、第二保持部材4Dの内端面(コイル2側の端面)に至っていない。そのため、第一溝部41に嵌め込まれた第一片71の先端は、第一溝部41の延伸方向の端面に当て止めされる。また、第一溝部41は、
図3に示すように、第二保持部材4Dの幅よりも狭くなっている。そのため、第一溝部41に嵌め込まれた第一片71の側端は、第一溝部41の幅方向の側壁面に当て止めされる。従って、第一片71は、第一溝部41に嵌まり込んで組合体10に対して位置決めされる。
【0079】
本例の第二片72は、第二保持部材4Dの第二溝部42に嵌まり込んでいる。第二溝部42は、第二保持部材4Dにおける底板部60側の面に形成されている。第二溝部42の形成状態は、第一溝部41と同じである(
図3を合わせて参照)。従って、第二片72は、第二溝部42に嵌まり込んで組合体10に対して位置決めされる。
【0080】
上記第一片71(第二片72)と第一溝部41(第二溝部42)とは凹凸の嵌合によって結合しても良い。例えば、第一片71(第二片72)の先端側に爪状の凸部を、第一溝部41(第二溝部42)の底面に凹部を形成することが挙げられる。もちろん、第一片71(第二片72)に凹部、第一溝部41(第二溝部42)に凸部が設けられていても良い。このような構成によれば、把持部材7から組合体10が外れることを効果的に抑制できる。
【0081】
本例の第三片73は、直線状に延びる矩形板である。本例とは異なり、第三片73の少なくとも一部が、第四コア片3Dから離れる方向に湾曲していても良い。
【0082】
把持部材7は、その機械的強度を高める観点から金属で構成することが好ましい。例えば、アルミニウム合金、又はマグネシウム合金などの非磁性金属で把持部材7を構成することが挙げられる。本例の把持部材7は、樹脂製の第二保持部材4Dに係合しているので、把持部材7が金属製であっても組合体10の磁気特性及び組合体10とケース6との絶縁特性に影響を与え難い。本例では、第四コア片3Dを覆う樹脂モールド部5と第三片73との間に配置される絶縁材7rが、第二保持部材4Dと把持部材7との間の絶縁を確実にしている。樹脂モールド部5による絶縁が十分であれば、絶縁材7rを省略し、第三片73が樹脂モールド部5に接触するようにしても良い。また、第三片73が外側に湾曲し、樹脂モールド部5から確実に離隔されている場合も絶縁材7rを省略できる。その他、把持部材7の外周を被覆する樹脂によって、第二保持部材4Dと把持部材7との間の絶縁が確保されていても良い。この場合、第四コア片3Dを把持部材7で把持する構成とすることもできる。
【0083】
ここで、把持部材7の機械的強度を確保できるのであれば、把持部材7は樹脂で構成しても構わない。例えば、繊維強化プラスチックなどで把持部材7を構成することができる。樹脂製の把持部材7であれば、第四コア片3Dを把持部材7で把持する構成とすることもできる。
【0084】
[ネジ部材とその配置状態]
ネジ部材8は、底板部60の外部からケース6の内部に貫通し、把持部材7を底板部60に固定する部材である。
図2に示すように、ネジ部材8は、雄ネジ部が形成された軸部80と、軸部80の一端に形成されるヘッド部81とを備える。本例では、ネジ部材8で把持部材7を底板部60に固定するために、底板部60に貫通孔6hとヘッド収納部6dとが設けられると共に、第二片72にネジ孔7hが設けられている。
【0085】
ケース6の底板部60に設けられる貫通孔6hは、軸部80が貫通される馬鹿孔である。本例とは異なり、貫通孔6hの内周面に、軸部80に対応する雌ネジ部が形成されていても良い。一方、底板部60に設けられるヘッド収納部6dは、ヘッド部81全体を収納する凹みである。ヘッド収納部6dの深さはヘッド部81の長さ以上となっている。そのため、ヘッド収納部6dに収納されたヘッド部81は、底板部60の外方面から突出しない。貫通孔6hとヘッド収納部6dは同軸で、貫通孔6hの内径よりもヘッド収納部6dの内径が大きくなっている。貫通孔6hとヘッド収納部6dとの間に形成される段差が、ネジ部材8の座面となる。
【0086】
第二片72に設けられるネジ孔7hには、ネジ部材8の軸部80が挿入される。本例のネジ孔7hは、第二片72を厚み方向に貫通しており、その内周面には雌ネジ部が形成されている。つまり、ネジ部材8がネジ孔7hにネジ結合することで、ネジ部材8によって把持部材7を底板部60に強固に固定できる。本例とは異なり、ネジ孔7hは第二片72を貫通していなくても構わない。また、ネジ孔7hの近傍は、他の部分よりも厚くしても良い。
【0087】
本例の軸部80の先端は、第二保持部材4Dに接触している。軸部80の先端が第二保持部材4Dを押圧することで、ネジ部材8によって第二保持部材4Dが底板部60に固定される。その結果、ネジ部材8による組合体10の固定がより強固になる。ネジ部材8による固定をより強固にするために、第二保持部材4Dの底板部60側の面に、軸部80の先端を受け入れるネジ孔が設けられていても良い。
【0088】
[その他]
本例のリアクトル1は、把持部材7で組合体10を片持ちする構成である。ケース6内における組合体10の安定性を高めるために、本例ではケース6の底板部60にL字型の台座部65(
図1)が設けられている。台座部65は、第一保持部材4Cを下方から支えると共に、ケース6内における第一保持部材4Cの位置を決める部材である。台座部65のうち、底板部60に平行な部分の高さは、底板部60からの第一保持部材4Cの高さと、底板部60からの第二保持部材4Dの高さと、が同じとなるように形成されている。台座部65のうち、開口部63に向って延びる部分は、第一保持部材4Cの外端面に対向し、組合体10が把持部材7から離れる方向に移動することを抑制する。
【0089】
台座部65は、底板部60に一体に形成しても良いし、底板部60に後付けしても良い。機械的強度を確保する観点から、台座部65は金属製とすることが好ましい。
【0090】
≪使用態様≫
本例のリアクトル1は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC-DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。
【0091】
≪効果≫
本例のリアクトル1の構成によれば、把持部材7を介してケース6に組合体10が確りと固定される。そのため、リアクトル1が振動しても、ケース6内から組合体10が脱落することを抑制できる。
【0092】
本例では、ケース6内で巻回部2A,2Bが縦積みされている。そのため、本例のリアクトル1は、ケース6の底板部60に巻回部2A,2Bを並列する平置き型のリアクトルに比べて、開口部63側から見たときの平面面積(即ち、リアクトル1の設置面積)を小さくできる。また、本例では、把持部材7はケース6の深さ方向に延びる部材で、その把持部材7をケース6に固定するネジ部材8は底板部60に配置される。そのため、把持部材7を設けても、ケース6を開口部63側から見たときの平面面積が大きくなることがない。ケース6の大型化が回避されることで、リアクトル1の大型化が抑制される。
【0093】
<実施形態2>
実施形態2では、二つの把持部材7を用いて組合体10を固定する構成を
図4に基づいて説明する。
図4では、構成の説明に関係の無い符号の一部が省略されている。この点は、後述する
図5~9でも同様である。
【0094】
図4に示す本例のリアクトル1では、第二保持部材4Dだけでなく、第一保持部材4Cも把持部材7で底板部60に固定されている。本例の構成によれば、実施形態1の構成よりも強固に組合体10がケース6に固定される。
【0095】
ここで、第一保持部材4Cは、図示しないコイル2の巻線端部が引き出される側である。巻線端部の邪魔にならないように、第一保持部材4Cの把持部材7は、第二保持部材4Dの把持部材7よりも幅(紙面奥行き方向の長さ)を小さくすると良い。
【0096】
<実施形態3>
実施形態3のリアクトル1を
図5に基づいて説明する。
【0097】
本例のリアクトル1のケース6は、その内周面における把持部材7が配置される側と反対側にある対向面に押え部67を備える。つまり、押え部67は、開口部63の短辺に設けられている。この押え部67は、ケース6の内周面の開口部63側の位置からケース6の内方に向って突出している。その押え部67は、樹脂モールド部5の開口部63側の面に当接している。そのため、組合体10の第三コア片3C側がケース6内から飛び出さないように機械的に当て止めされる。そのため、本例の構成によれば、実施形態1の構成よりも強固に組合体10がケース6に固定される。
【0098】
本例のリアクトル1を作製するには、組合体10に把持部材7を取付け、押え部67を避けるように組合体10をケース6に収納すると良い。具体的には、
図5のケース6の右寄りの位置に組合体10を入れる。次いで、ケース6内で組合体10を押え部67側にスライドさせ、把持部材7のネジ孔7h(
図2を参照)とケース6の貫通孔6h(
図2を参照)とを位置合わせする。そして、ネジ部材8でケース6に組合体10をネジ止めする。
【0099】
<実施形態4>
実施形態4のリアクトル1を
図6,7に基づいて説明する。本例のリアクトル1は、実施形態3の変形例である。
【0100】
図6に示す本例のリアクトル1は、ネジ部材8近傍の構成が、実施形態3と異なる。
図7の部分拡大図に示すように、本例の把持部材7の第二片72は、ネジ孔7hの近傍の部分を、他の部分よりも厚くする補強部75を備える。本例の補強部75は、ナットを第二片72に溶接することで形成されている。ナットを用いることで、補強部75が容易に把持部材7に形成される。例えば、板材をプレス加工して把持部材7を作製し、その把持部材7にナットを溶接するだけで、補強部75を備える把持部材7が作製される。また、ナットはその内周面に雌ネジ部が形成されているので、ナットの孔を除くネジ孔7hにネジ加工を施す必要がないという利点もある。もちろん、補強部75は、把持部材7を作製する際、第二片72に一体に形成することもできる。
【0101】
本例のケース6の底板部60は、スライド凹部6sを備える。スライド凹部6sは、底板部60の内面のうち、貫通孔6hに対応する位置に設けられている。スライド凹部6sは、押え部67(
図6)が設けられる側に向って延びる長孔状の溝である。本例のスライド凹部6sの延伸方向は、巻回部2A,2B(
図6)の軸方向に一致している。
【0102】
スライド凹部6sの深さは、補強部75全体を収納できる深さになっている。そのため、補強部75がスライド凹部6sに嵌め込まれると、第二片72は底板部60に面接触される。その結果、ケース6内における組合体10の安定性が確保される。このスライド凹部6sに嵌め込まれた補強部75は、スライド凹部6sにおける押え部67(
図6)側の端部の位置でネジ部材8により固定されている。補強部75が図示する位置にあるとき、
図6の押え部67は、第三コア片3Cの樹脂モールド部5を開口部63側から押えている。
【0103】
このリアクトル1を作製する場合、把持部材7を取り付けた組合体10をケース6に収納する。その際、把持部材7の補強部75を、スライド凹部6sの紙面右側の位置(
図6の押え部67から離れる側の位置)に嵌め込む。押え部67は、組合体10に干渉しない長さになっているので、押え部67は組合体10の収納の邪魔とならない。その後、組合体10を押え部67側にスライドさせ、
図7に示すように、把持部材7のネジ孔7hとケース6の貫通孔6hとを同軸に位置合わせし、ネジ部材8で締結する。
【0104】
本例のリアクトル1は、実施形態3の構成よりもケース6への組合体10の配置が容易である。補強部75が嵌め込まれるスライド凹部6sがガイドとなって、把持部材7のネジ孔7hとケース6の貫通孔6hとの位置合わせが容易なるからである。
【0105】
<実施形態5>
実施形態5のリアクトル1を
図8に基づいて説明する。本例の脱落防止機構は、実施形態4と同様の構成を備えるので詳しい説明は省略する。
【0106】
本例のリアクトル1では、巻回部2A,2Bの軸が底板部60に直交するように配置されている。つまり、ケース6内で巻回部2A,2Bが直立した状態で配置されている。本例では、第一保持部材4Cが開口部63側に、第二保持部材4Dが底板部60側に配置されている。その結果、コイル2の巻線端部側が開口部63側に配置されるので、ケース6外へ巻線端部を引き出すことが容易になる。
【0107】
本例の場合、把持部材7の第一片71は第一保持部材4Cに当接し、第二片72は第二保持部材4Dに当接する。つまり、第一溝部41は第一保持部材4Cに、第二溝部42は第二保持部材4Dに形成される。
【0108】
本例では、ケース6内で巻回部2A,2Bが直立されている。そのため、本例のリアクトル1は、平置き型のリアクトルに比べて、リアクトル1の設置面積が小さくなる。
【0109】
<実施形態6>
実施形態6のリアクトル1を
図9に基づいて説明する。本例の脱落防止機構は、実施形態4と同様の構成を備えるので詳しい説明は省略する。
【0110】
本例のリアクトル1では、第一巻回部2Aと第二巻回部2B(紙面奥側に隠れている)は共に、底板部60上に横並びに配置されている。本例のリアクトル1によれば、ケース6の深さが浅くても組合体10全体がケース6に収納される。そのため、リアクトル1の設置箇所から直交する方向にリアクトル1の設置スペースが小さい場合でも、リアクトル1の設置が容易になる。
【0111】
<実施形態7>
実施形態1~6の構成は適宜組み合わせることができる。例えば、実施形態5,6の脱落防止機構として、実施形態1~3の脱落防止機構が採用されても良い。
【0112】
<実施形態8>
実施形態8では、コイル2が一つの第一巻回部2Cを備えるリアクトル1を
図10に基づいて説明する。本例では、コイル2の形状に合わせて、磁性コア3の形状、保持部材4E,4Fの形状、及び樹脂モールド部5の形成範囲が、実施形態1から実施形態6とは異なる。
図10において、実施形態1から実施形態6と同様の構成については同一の符号が付されている。
【0113】
本例のコイル2の第一巻回部2Cは、ケース6の底板部60に平行に配置されている。巻線端部は適宜、ケース6の開口部に向かって引き出されている。
【0114】
本例の磁性コア3は、概略E字型の第一コア片3Eと、概略E字型の第二コア片3Fとを備える。第一コア片3Eと第二コア片3Fはそれぞれ、基部と三つの脚部とを備える。基部における一端、他端、及び中間にそれぞれ脚部が配置されている。脚部の延伸方向は、基部の延伸方向に直交している。そのため、第一コア片3Eの外観と第二コア片3Fの外観はそれぞれ、概略E字型となっている。第一コア片3Eの各脚部の端面と、第二コア片3Fの各脚部の端面とが突き合わされている。第一コア片3Eの中間の脚部と、第二コア片3Fの中間の脚部とで内側コア部31が構成されている。一方、第一コア片3Eにおける中間の脚部を除く部分と、第二コア片3Fにおける中間の脚部を除く部分とで、環状の外側コア部32が形成されている。本例では、外側コア部32の環形状の中心軸が底板部60に平行でかつ第一巻回部2Cの軸方向に直交するように、外側コア部32が配置されている。本例とは異なり、磁性コア3は、概略E字型のコア片と、概略I字型のコア片とを備えていても良い。
【0115】
第一保持部材4Eは、第一巻回部2Cの一端面に配置され、第一巻回部2Cの一端面と第一コア片3Eとの間の絶縁を確保する。第二保持部材4Fは、第一巻回部2Cの他端面に配置され、第一巻回部2Cの他端面と第二コア片3Fとの間の絶縁を確保する。保持部材4E,4Fはいずれも、コア片3E,3Fの中間の脚部が貫通される貫通孔を有する枠状部材である。
【0116】
本例の樹脂モールド部5は、環状の外側コア部32全体を覆っている。第一巻回部2Cは、この樹脂モールド部5に覆われることなく、樹脂モールド部5から露出している。ケース6の開口部63側に配置される樹脂モールド部5の上端面には第一溝部51が設けられている。また、ケース6の底板部60側に配置される樹脂モールド部5の下端面には第二溝部52が設けられている。
【0117】
本例の把持部材7は、組合体10における樹脂モールド部5の上端面と下端面とを挟み込み、組合体10をケース6に固定する。より具体的には、把持部材7に備わる第一片71及び第二片72はそれぞれ、樹脂モールド部5に備わる第一溝部51及び
第二溝部52に嵌め込まれている。ネジ部材8によるケース6に対する把持部材7の固定構造、台座部65による組合体10の支持構造、及び押え部67による組合体10の脱落防止構造は、
図6,7を参照する実施形態4の構造と同様である。
【0118】
本例の構成によれば、ケース6を開口部63側から見たときの平面面積が小さい。そのため、ケース6の大型化及びリアクトル1の大型化が抑制される。
【0119】
<実施形態9>
実施形態9では、実施形態8に示される組合体10がケース6内で平置きされたリアクトル1を
図11に基づいて説明する。実施形態8と同様の構成については説明を省略する。
【0120】
実施形態9の第一巻回部2Cの軸線は、底板部60に平行に配置されている。一方、磁性コア3の外側コア部32の環形状の中心軸は、ケース6の深さ方向に沿って配置されている。つまり、当該軸線は底板部60に直交している。
【0121】
本例では、樹脂モールド部5から露出する第一巻回部2Cの外周面の一部が、ケース6の底板部60に向いている。そこで本例では、第一巻回部2Cの外周面と底板部60との間に絶縁層9が配置されている。絶縁層9は所定の絶縁性を有する材料によって構成されている。絶縁層9が粘着性を有していれば、ケース6に対する組合体10の固定がより強固になる。
【0122】
本例の構成によれば、ケース6の深さが浅くても、組合体10全体がケース6内に収納される。リアクトル1の設置箇所から直交する方向にリアクトル1の設置スペースが小さい場合でも、リアクトル1の設置が容易になる。
【0123】
<実施形態10>
実施形態10では、実施形態8,9に示される組合体10がケース6内で直立した状態で配置されるリアクトル1を
図12に基づいて説明する。実施形態8と同様の構成については説明を省略する。
【0124】
実施形態10の第一巻回部2Cの軸線は、底板部60に直交して配置されている。一方、磁性コア3の外側コア部32の環形状の中心軸は、底板部60に平行に配置されている。
【0125】
本例の構成によれば、ケース6を開口部63側から見たときの平面面積が小さい。そのため、ケース6の大型化及びリアクトル1の大型化が抑制される。
【符号の説明】
【0126】
1 リアクトル
10 組合体
2 コイル
2A,2C 第一巻回部、2B 第二巻回部、2R 連結部
3 磁性コア
31 内側コア部、32 外側コア部
3A,3E 第一コア片、3B,3F 第二コア片
3C 第三コア片、3D 第四コア片
4C,4E 第一保持部材、4D,4F 第二保持部材
4d コア収納部、4h 貫通孔
41 第一溝部、42 第二溝部
5 樹脂モールド部
51 第一溝部、52 第二溝部
6 ケース
60 底板部、61 側壁部、63 開口部、65 台座部
67 押え部、69 封止樹脂
6d ヘッド収納部、6h 貫通孔、6s スライド凹部
7 把持部材
7h ネジ孔、7r 絶縁材
71 第一片、72 第二片、73 第三片、75 補強部
8 ネジ部材
80 軸部、81 ヘッド部
9 絶縁層