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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
H02K1/18 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018183955
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020054182
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】今泉 紀寿
(72)【発明者】
【氏名】仲川 剛史
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-032458(JP,A)
【文献】中国実用新案第205304430(CN,U)
【文献】特開平06-253522(JP,A)
【文献】特開2005-323477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を
備え、
前記ステータは、
環状のコアバックおよび前記コアバックから径方向に延びる複数のティースを有するステータコアと、
を有し、
前記ステータコアは、
複数の電磁鋼板を前記中心軸方向に重ねた積層鋼板と、
前記積層鋼板の表面を覆う第1防錆層と、
前記第1防錆層の表面を覆う第2防錆層と、
を有し、
前記第1防錆層は、含浸接着剤由来であり、
前記第2防錆層は、固体潤滑剤由来であり、
前記第2防錆層は、荷重が加わると横滑り現象を起こす多数の鱗片状の層であり、
前記複数のティースのそれぞれに径方向に取り付けられた複数のボビンと、
前記ボビンに巻かれるコイル線と、
を有し、
前記ボビンは、前記ティースに対して径方向に着脱可能である、
モータ。
【請求項2】
前記複数の電磁鋼板は、前記含浸接着剤により互いに接着されて前記中心軸方向に重ねられている、請求項1に記載のモータ。

【請求項3】
前記ロータは、環状の円筒部および前記円筒部から径方向に突出する複数の突出部を有するヨークを有し、
前記ヨークは、
複数の電磁鋼板を前記中心軸方向に重ねた積層鋼板と、
前記積層鋼板の表面を覆う第3防錆層と、
前記第3防錆層の表面を覆う第4防錆層と、
を有し、
前記第3防錆層は、前記含浸接着剤由来であり、
前記第4防錆層は、前記固体潤滑剤由来である、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記複数の電磁鋼板は、前記含浸接着剤により互いに接着されて前記中心軸方向に重ねられている、請求項3に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータでプロペラを回転させて空中を飛行するマルチコプタ(特許文献1)が知られている。
【0003】
特許文献2には、錆防止のために、永久磁石の表面に低透磁率の酸化防止層として酸化膜が設けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-184504号公報
【文献】特開2010-273426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチコプタ等の飛行体で用いられるモータは、高出力が求められる。飛行体が農業用途に利用される場合、農薬に曝されるため、特許文献2に記載された酸化防止層では十分とは言えない。防錆処理として、例えば、粉体を用いた場合には膜が厚くなり、メッキ処理を施した場合には防錆処理として確実ではない。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、高出力化が図られ十分な防錆性を有するモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、中心軸を中心として回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を備え、前記ステータは、環状のコアバックおよび前記コアバックから径方向に延びる複数のティースを有するステータコアと、を有し、前記ステータコアは、複数の電磁鋼板を前記中心軸方向に重ねた積層鋼板と、前記積層鋼板の表面を覆う第1防錆層と、前記第1防錆層の表面を覆う第2防錆層と、を有し、前記第1防錆層は、含浸接着剤由来であり、前記第2防錆層は、固体潤滑剤由来であり前記第2防錆層は、荷重が加わると横滑り現象を起こす多数の燐片状の層であり、前記複数のティースのそれぞれに径方向に取り付けられた複数のボビンと、前記ボビンに巻かれるコイル線と、を有し、前記ボビンは、前記ティースに対して径方向に着脱可能である、モータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、高出力化が図られ十分な防錆性を有するモータを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のモータを上側から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態のモータを下側から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態のモータを示す断面図である。
図4図4は、ボビンの取り付け構造を示す斜視図である。
図5図5は、ステータコアおよびベース部を上側から見た斜視図である。
図6図6は、カシメダボ部周辺のステータコアおよびベース部を拡大して上側から見た平面図である。
図7図7は、カシメダボ部周辺のヨークおよびロータ外縁部を拡大して下側から見た平面図である。
図8図8は、ステータの斜視図である。
図9図9は、ボビンの取り付け構造を示す斜視図である。
図10図10は、ステータの断面図である。
図11図11は、ボビンが配置されていない周方向の位置におけるステータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態のモータを上側から見た斜視図である。図2は、本実施形態のモータを下側から見た斜視図である。図3は、本実施形態のモータを示す断面図である。
【0011】
なお、本願では、図3に示すモータ11のシャフト21の回転軸Jと平行な方向を「軸方向」、回転軸Jに直交する方向を「径方向」、回転軸Jを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、ベース部40に対してステータ30側である軸方向一方側を上側として、各部の形状や位置関係を説明する。すなわち、回転軸Jの延びる一方向を上下方向とする。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るモータの使用時の向きを限定する意図はない。
【0012】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0013】
本実施形態のモータ11は、例えばマルチコプタにおいて回転翼を回転させるモータとして用いられる。以下では、マルチコプタに搭載される実施形態について説明するが、モータ11の用途はマルチコプタに限定されない。
【0014】
図1および図2に示すように、本実施形態のモータ11は、アウターロータ型のモータである。モータ11は、回転翼が固定されるロータ13と、マルチコプタに取り付けられる静止部14と、を備える。図3に示すように、ロータ13と静止部14とは、ロータ13を回転可能に支持する軸受部51,52を介して接続される。ロータ13は、静止部14の径方向の外側(一方側)に配置され、回転軸Jを中心に周方向に回転する部位である。
【0015】
ロータ13は、シャフト21、ロータ本体20、マグネット23、およびヨーク22を有する。シャフト21は、回転軸Jを中心に軸方向に延びる。シャフト21は、軸受部51,52によって回転可能に支持される。軸受部51,52は、内輪、外輪、ボールおよびリテーナで構成される玉軸受である。なお、軸受部51,52は、すべり軸受であってもよい。シャフト21は、後述するベース部40のベース貫通孔41aに挿入され、軸受部51,52の内輪に挿入される。
【0016】
ロータ本体20は、シャフト21の上端に接続される。ロータ本体20は、シャフト21の上端からステータ30の上面を通ってステータ30の外周面に延びる。ロータ本体20は、シャフト21の上端から回転軸Jに直交する方向に広がるロータ円板部24と、ロータ円板部24の外周端から径方向外側に延びる複数のロータリブ部27と、ロータリブ部27の外端から軸方向下側に延びる略円筒状のロータ外縁部(ロータ周縁部)26とを有する。本実施形態の場合、シャフト21とロータ本体20は、単一の部材である。
【0017】
ロータ円板部24は、回転翼が固定される複数の回転部材固定部24aを有する。本実施形態では、回転部材固定部24aは、ロータ円板部24を軸方向に貫通する貫通孔である。回転部材固定部24aの内周面には雌ネジが設けられる。回転翼は、回転部材固定部24aに締め込まれるネジによってロータ本体20に固定される。回転翼は、接着またはカシメなどネジ以外の方法でロータ本体20に固定されてもよい。
【0018】
ロータリブ部27は、ロータ円板部24の外周端から径方向外側に延びる。ロータリブ部27は、ロータ円板部24とロータ外縁部26とを接続する。図1に示すように、ロータリブ部27は、径方向に延びる棒状の部位である。ロータリブ部27は、ロータ外縁部26の上端面まで延びる。複数のロータリブ部27は、例えば、周方向に沿って不等間隔に配置される。ロータリブ部27とロータ外縁部26の上端面との交差部は、例えば、周方向に60°間隔で六箇所設けられる。六箇所の交差部は、一本のロータリブ部27とロータ外縁部26の上端面と交差する交差部と、径方向外側に向かって互いに接近する二本のロータリブ部27とロータ外縁部26の上端面と交差する交差部とが、周方向に60°間隔で交互に配置された構成である。
【0019】
ロータ本体20は、ロータ円板部24とロータ外縁部26とが複数のロータリブ部27で接続されることで、ロータリブ部27の周方向にロータ孔部28を有する。ロータ孔部28は、ロータ本体20を軸方向に貫通する孔である。ロータ孔部28は、例えば、6つ設けられる。
【0020】
ロータ本体20がロータ孔部28を有することで、モータ11の内部、つまりステータ30への空気循環経路が構成される。この空気循環経路を設けることで、モータ11の駆動時において、ステータ30を冷却することができる。本実施形態では、ロータ孔部28がステータ30の上方に開口しており、外気が直接、コイル32に当たる。これにより、発熱したコイル線を効率的に冷却できる。
【0021】
図2に示すように、ヨーク22は、回転軸Jを中心とする略円筒状の部材である。ヨーク22は、ロータ外縁部26の内周面26aに配置される。ヨーク22は、強磁性材料からなる。図4は、ヨーク22を軸方向に切断した部分断面図である。なお、図4は、ステータコア31を軸方向に切断した部分断面図と兼ねている。図4では、ヨーク22に関する符号をカッコ内に付記している。本実施形態のヨーク22は、図4に示すように、電磁鋼板222Aを軸方向に重ねて構成された積層鋼板222により構成される(詳細については後述する)。ヨーク22は、マグネット23の外周面の少なくとも一部を覆う。これにより、マグネット23の外周面から磁力が漏れることが抑制される。
【0022】
ヨーク22は、回転軸Jを中心とする円環状のヨーク円筒部(円筒部)22aと、ヨーク円筒部22aの内周面から径方向内側に突出する複数のヨーク突出部(突出部)22bと、を有する。ヨーク円筒部22aは、ステータ30の径方向外側に配置される。複数のヨーク突出部22bは、周方向に略等間隔に配置される。
【0023】
マグネット23は、軸方向に長い矩形の板状である。本実施形態においてマグネット23は、複数設けられる。マグネット23は、本実施形態では42個設けられる。マグネット23は、例えば接着剤によって、ヨーク22の内周面に固定される。より詳細には、複数のマグネット23は、ヨーク円筒部22aの径方向内側を向く面において、周方向に隣り合う2つのヨーク突出部22bに挟まれる部分に固定される。マグネット23は、内周面にN極またはS極の磁極を有する。N極の磁極を有するマグネット23とS極の磁極を有するマグネット23とは、周方向に沿って交互に配置される。
【0024】
図2および図3に示すように、マグネット23の内周面は、後述する複数のティース31bの径方向外側の端面と、僅かな間隙を介して径方向に対向する。すなわち、マグネット23は、ステータ30と径方向に対向する磁極面を有する。なお、マグネットは、ステータ30の外周面全体を囲む略円筒形状であってもよい。この場合、マグネットの内周面には、N極とS極とが、周方向に交互に着磁される。
【0025】
静止部14は、ベース部40とステータ30とセンサーSと配線部140(図8および図11参照)と、を有する。ベース部40は、図2および図3に示すように、いずれも回転軸Jを中心に軸方向に延びるベース円筒部41と、ベース円筒部41の下端部から径方向外側に広がるベース底部42と、ベース底部42の径方向外側の端部から軸方向の上側に延びる円筒状のステータ支持筒部43と、を有する。ステータ支持筒部43の外周面43aには、ステータ30の後述するステータコア31が固定される。
【0026】
ベース円筒部41は、回転軸Jを中心にベース円筒部41を軸方向に貫通するベース貫通孔41aを有する。ベース貫通孔41aの内側には、軸受部51,52が配置される。2つの軸受部51,52が、ベース貫通孔41aの内側に軸方向に並んで配置される。蓋部44は、軸受部51を下側から押さえる。軸受部51,52は、シャフト21およびベース部40に固定されることで、回転軸Jを中心にロータ13を回転可能に支持する。
【0027】
図3に示すように、ステータ30は、ロータ13と径方向に隙間を介して対向する。図3に示すように、ステータ30は、ステータコア31と電流が供給される複数のコイル32とを有する電機子である。すなわち、静止部14は、複数のコイル32を有する。
【0028】
ステータコア31は、磁性体である。図4は、ステータコア31を軸方向に切断した部分断面図である。図4に示すように、本実施形態のステータコア31は、複数の電磁鋼板231Aを軸方向に重ねて構成された積層鋼板231により構成される。電磁鋼板231Aの厚さは、一例として.0.2mmである。薄い電磁鋼板231Aを用いることにより、渦電流等の磁束損失を低減でき高出力化および軽量化を図ることができる。
【0029】
なお、図4においては、理解を容易にするために、4枚の電磁鋼板231Aを図示しているが、電磁鋼板231Aの枚数については特に限定されない。
【0030】
複数の電磁鋼板231Aのそれぞれは、圧入されて軸方向に隣り合う電磁鋼板231A同士が連結されるカシメダボ部150を有する。カシメダボ部150において、プレス加工時に各電磁鋼板231Aの軸方向上側の面にダボ穴151、下側の面にダボ152が設けられる。積層時に隣り合う電磁鋼板231Aのダボ穴151にダボ152を圧入してカシメることにより、積層鋼板231が製作される。
【0031】
複数の電磁鋼板231Aを軸方向に重ねた積層鋼板231は、含浸接着剤で接着される。積層鋼板231は、液体状の接着剤に浸漬されることで電磁鋼板231A同士の隙間に接着剤が浸入し接着固定される。含浸接着剤としては、例えば、アクリル系含浸接着剤が用いられる。
【0032】
積層鋼板231は、表面を覆う第1防錆層241と、第1防錆層241の表面を覆う第2防錆層242とを有する。第1防錆層241は、含浸接着剤由来の防錆層である。第2防錆層242は、固体潤滑剤由来の防錆層である。
【0033】
第1防錆層241は、複数の電磁鋼板231A同士を接着した際に積層鋼板231の表面に被覆された防錆層である。
【0034】
第2防錆層242を構成する固体潤滑剤としては、一般的に、二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が多く用いられている。固体潤滑剤は、第1防錆層241で覆われた積層鋼板231の表面に塗布された後に、加熱処理またはUV処理によって硬化して第2防錆層242として、第1防錆層241の表面を覆う。
【0035】
硬化した第2防錆層242は、荷重が加わると横滑り現象を起こす多数の鱗片状の層である。多数の鱗片が防錆機能を有すると考えられる。
【0036】
上述したヨーク22は、ステータコア31と同様に、複数の電磁鋼板222Aを軸方向に重ねて構成された積層鋼板222により構成される。ヨーク22の断面形状は、ステータコア31と同様であるため、ヨーク22の構成要素については図4におけるカッコ内に符号を付記する。
【0037】
電磁鋼板222Aの厚さは、一例として.0.2mmである。薄い電磁鋼板222Aを用いることにより、渦電流等の磁束損失を低減でき高出力化および軽量化を図ることができる。
【0038】
複数の電磁鋼板222Aのそれぞれは、圧入されて軸方向に隣り合う電磁鋼板222A同士が連結されるカシメダボ部160を有する。カシメダボ部160において、プレス加工時に各電磁鋼板222Aの軸方向上側の面にダボ穴161、下側の面にダボ162が設けられる。積層時に隣り合う電磁鋼板222Aのダボ穴161にダボ162を圧入してカシメることにより、積層鋼板222が製作される。複数の電磁鋼板231Aを軸方向に重ねた積層鋼板222は、積層鋼板231と同様の含浸接着剤で接着される。
【0039】
積層鋼板222は、表面を覆う第3防錆層251と、第3防錆層251の表面を覆う第4防錆層252とを有する。第3防錆層251は、第1防錆層241と同様に、含浸接着剤由来の防錆層である。第4防錆層252は、第2防錆層242と同様に、固体潤滑剤由来の防錆層である。
【0040】
上記のように、組成の異なる第1防錆層241及び第2防錆層242で覆われた積層鋼板231と、組成の異なる第3防錆層251及び第4防錆層252で覆われた積層鋼板222と、防錆層を有さない積層鋼板の各試験片に対して農薬試験を行った。農薬試験は、各試験片の表面を農薬の原液で覆い、一定の期間を経過してから、試験片(対象物)の農薬の除去し表面を確認した。防錆層を有さない積層鋼板の試験片については錆(腐食)が生じ、防錆層を有する積層鋼板231の試験片と、積層鋼板222の試験片については錆(腐食)が生じないことを確認できた。
【0041】
従って、積層鋼板231により構成されるステータコア31および積層鋼板222により構成されるヨーク22は、農薬に対して十分な防錆性を有することが確認できた。
【0042】
ステータコア31は、ベース部40に固定される。ステータコア31は、コアバック31aおよび複数のティース31bを有する。コアバック31aは、回転軸Jを中心とする円環状である。複数のティース31bは、コアバック31aから径方向外側に延びる。複数のティース31bは、周方向に略等間隔に配置される。コイル32は、ティース31bのそれぞれに巻き回された導線によって構成される。
【0043】
図5は、本実施形態のモータ11のうち、ステータコア31およびベース部40を上側から見た斜視図である。
図5に示すように、カシメダボ部150は、ステータコア31のうちコアバック31aに設けられている。カシメダボ部150は、周方向に60°間隔をあけて六つ設けられている。カシメダボ部150は、径方向でティース31bと重なる位置に設けられている。カシメダボ部150とティース31bとが径方向で重なることにより、プレス加工時のカシメダボ部150の強度低下を抑えることができる。
【0044】
図6は、カシメダボ部150周辺のステータコア31およびベース部40を拡大して上側から見た平面図である。
カシメダボ部150は、コアバック31aの内周面31dから径方向の内側(他方側)に突出する突部153を有する。コアバック31aの内周面31dは、ステータ支持筒部43の外周面43aと固定される面である。
【0045】
コアバック31aの内周面31dから径方向の内側に突出するカシメダボ部150の突部153は、軸方向視において、カシメダボ部150を中心とする円弧形状である。カシメダボ部150の突部153を内側に突出させない場合には、次のような懸念が生じる。例えば、図4に示すように、カシメダボ部150とコアバック31aの内周面31dとの距離が短い場合には、強度不足によりプレス加工時にダボ穴151およびダボ152を圧入可能な形状とできない可能性がある。また、圧入可能な形状とした場合でも、圧入時に薄肉部が変形して、積層した電磁鋼板231A同士の相対位置関係が不安定となる可能性がある。カシメダボ部150の突部153が内側に突出していることにより、圧入時の変形を抑えることが可能になり、複数の電磁鋼板231Aを精度良く重ねることができる。
【0046】
カシメダボ部150は、ステータコア31の径方向の内側に配置されているため、径方向の外側に位置するティース31bにおいては、積層鋼板231を構成する電磁鋼板231A同士が軸方向に開きやすくなる。そのため、複数の電磁鋼板231Aをカシメて積層鋼板231を製作する際および複数の電磁鋼板231Aを軸方向に重ねた積層鋼板231を含浸接着する際には、治具を用いて径方向の外側の領域を軸方向に圧縮して開きを抑えた状態で実施することが好ましい。
【0047】
図2に示すように、カシメダボ部160は、ヨーク22のうちヨーク円筒部22aに設けられている。カシメダボ部160は、周方向に60°間隔で六つ設けられている。カシメダボ部160は、径方向でヨーク突出部22bと重なる位置に設けられている。カシメダボ部160とヨーク突出部22bとが径方向で重なることにより、プレス加工時のカシメダボ部160の強度低下を抑えることができる。
【0048】
図7は、カシメダボ部160周辺のヨーク22およびロータ外縁部26を拡大して下側から見た平面図である。
カシメダボ部160は、ヨーク円筒部22aの外周面22cから径方向の外側に突出する突部(第2突部)163を有する。ヨーク円筒部22aの外周面22cは、ロータ外縁部26の内周面26aと固定される面である。
【0049】
ヨーク円筒部22aの外周面22cから径方向の外側に突出するカシメダボ部160の突部163は、軸方向視において、カシメダボ部160を中心とする円弧形状である。カシメダボ部160の突部163を外側に突出させない場合には、次のような懸念が生じる。例えば、カシメダボ部160とヨーク円筒部22aの外周面22cとの距離が短い場合には、強度不足によりプレス加工時にダボ穴161およびダボ162を圧入可能な形状とできない可能性がある。また、圧入可能な形状とした場合でも、圧入時に薄肉部が変形して、積層した電磁鋼板222A同士の相対位置関係が不安定となる可能性がある。カシメダボ部160の突部163が外側に突出していることにより、圧入時の変形を抑えることが可能になり、複数の電磁鋼板222Aを精度良く重ねることができる。
【0050】
カシメダボ部160は、ヨーク22の径方向の外側に配置されているため、径方向の内側に位置するヨーク突出部22bにおいては、積層鋼板222を構成する電磁鋼板222A同士が軸方向に開きやすくなる。そのため、複数の電磁鋼板222Aをカシメて積層鋼板222を製作する際および複数の電磁鋼板222Aを軸方向に重ねた積層鋼板222を含浸接着する際には、治具を用いて径方向の内側の領域を軸方向に圧縮して開きを抑えた状態で実施することが好ましい。
【0051】
図6に示すように、ステータコア31の径方向の内側に配置されたベース部40におけるステータ支持筒部43の外周面43aは、窪み81を有する。窪み81は、軸方向視において、コアバック31aの内周面31dから径方向の内側に突出するカシメダボ部150の突部153よりも大きい。窪み81は、周方向に60°間隔で六つ配置されている。従って、六つの窪み81と、内周面31dから突出する六つの突部153は、それぞれ径方向で対向可能である。窪み81のそれぞれは、内周面31dから突出するカシメダボ部150の突部153と周方向で対向する対向部82を有する。対向部82のそれぞれは、内周面31dから突出するカシメダボ部150の突部153と周方向で重なる。
【0052】
六つの窪み81と、内周面31dから突出する六つのカシメダボ部150の突部153とが、それぞれ径方向で対向可能であり、対向部82のそれぞれが、内周面31dから突出する突部153と周方向で重なることから、ステータコア31とベース部40におけるステータ支持筒部43とは周方向に互いに位置決めされる。
【0053】
図7に示すように、ヨーク22の径方向の外側に配置されたロータ外縁部26の内周面26aは、窪み91を有する。窪み91は、軸方向視において、ヨーク円筒部22aの外周面22cから径方向の外側に突出するカシメダボ部160の突部163よりも大きい。窪み91は、周方向に60°間隔で六つ配置されている。従って、六つの窪み91と外周面22cから突出するカシメダボ部160の突部163は、それぞれ径方向で対向可能である。窪み91のそれぞれは、外周面22cから突出する突部163と周方向で対向する対向部92を有する。対向部92のそれぞれは、外周面22cから突出するカシメダボ部160の突部163と周方向で重なる。
【0054】
六つの窪み91と、外周面22cから突出するカシメダボ部160の突部163とが、それぞれ径方向で対向可能であり、対向部92のそれぞれが、外周面22cから突出する突部163と周方向で重なることから、ヨーク22とロータ外縁部26とは周方向に互いに位置決めされる。従って、ロータ13の回転時、ヨーク22とロータ外縁部26とは一体的に回転する。
【0055】
図8は、ステータの斜視図である。図9は、ボビンの取り付け構造を示す斜視図である。図10は、ステータの断面図である。図11は、ボビンが配置されていない周方向の位置におけるステータの断面図である。図5および図9に示されるように、複数のティース31bは、外周端にアンブレラ部を有さない直方体状である。
【0056】
コイル32は、ボビン33に巻き回されるコイル線からなる構造体である。ボビン33は、径方向に延びる四角形状の筒体であり、ティース31bが挿入される貫通孔33Aを有する。ボビン33は、樹脂等の絶縁材料からなる。本実施形態のステータ30では、ティース31bがアンブレラ部を有していないため、ボビン33は、ステータコア31のティース31bに径方向外側から着脱可能である。この構成によれば、ボビン33をティース31bから取り外した状態で、ボビン33にコイル線を巻き回せるため、ボビン33に高密度にコイル線を巻き回せる。本実施形態のステータ30のようにスロット数が多い場合に製造が容易になる。
【0057】
ボビン33は、図9および図10に示すように、径方向に延びる筒状の筒部33aと、筒部33aのコアバック31a側の上端部から径方向内側に突出する突出片33bと、筒部33aの径方向外側の端部から径方向と直交する方向に広がるフランジ部33dと、筒部33aの径方向内側の端部から径方向と直交する方向に広がるフランジ部33eと、を有する。
【0058】
突出片33bは、図9に示すように、薄板状であり、径方向内側の先端部の上面に、突出片33bから上側へ突出する爪部33cを有する。爪部33cは、上面130と、突出片33bの上面から上側へ延び、径方向外側を向く面131とを有する。突出片33bは、ボビン33がティース31bに取り付けられた状態において、コアバック31aの上面230上に位置する。突出片33bの爪部33cが設けられる先端部は、コアバック31aの上面230から径方向内側へ突出する。すなわち、突出片33bの上面132は、径方向において、コアバック31aと同等の長さを有する。
【0059】
ステータ30は、図8および図10に示すように、コアバック31a上の突出片33bを上側から覆う円環状の固定部材35を有する。固定部材35は、下面の外周側に沿って配置され下側に突出する円環状突出部35aを有する段付きリングである。固定部材35は、円環状突出部35aが突出片33bの上面132上に位置して、コアバック31a上に配置される。
【0060】
固定部材35は、円環状突出部35aの下面部135において突出片33bの上面132と接触する。また固定部材35は、円環状突出部35aよりも内側に位置する下面137において、爪部33cの上面130と接触する。円環状突出部35aの径方向内側を向く周面部136は、爪部33cの径方向外側を向く面131と径方向に対向する。
【0061】
固定部材35とボビン33の突出片33bとが上記の配置とされることで、ボビン33が径方向外側への移動が阻止される。具体的には、固定部材35の円環状突出部35aに爪部33cが引っ掛かるため、ボビン33の径方向外側への移動が阻止される。すなわち、本実施形態のステータ30では、ボビン33の突出片33bが、固定部材35によりコアバック31aに固定される。これにより、ティース31bに着脱可能なボビン33の移動が抑制される。この構成によれば、ステータ30の外周にボビン33を抜け止めするための筒状部材を設ける必要が無く、製造が容易になる。
【0062】
また、本実施形態では、突出片33bに設けられる爪部33cを利用してボビン33の径方向の移動を抑制するので、ボビン33が複雑な構造とならず、容易に製造可能である。また環状の固定部材35により、すべてのボビン33を一括して固定するので、部品点数を少なくでき、またステータ30の組み立て作業も効率化できる。
【0063】
図8および図11に示すように、センサーSは、一例として、ボビン33の一つに設けられている。センサーSは、ボビン33に巻回されたコイル32に固定されている。センサーSは、接着剤によりコイル32に接着されている。
【0064】
センサーSは、コイル32に関する情報を検出する。センサーSは、例えば、コイル32の温度、コイル32の振動、コイル32が発する音等の少なくとも一つを検出する。センサーSは、配線部140の末端に接続されている。配線部140は、コアバック31aおよびステータ支持筒部43の上面側を、径方向外側と径方向内側とを跨ぐように配線されている。配線部140は、コアバック31aの径方向外側の末端にセンサーSが設けられている。
【0065】
配線部140は、ステータ支持筒部43より径方向内側の末端において、電力供給部、信号入力部(いずれも図示せず)に接続されている。固定部材35の円環状突出部35aは、配線部140を上面側から覆う。円環状突出部35aは、コアバック31aとの間で配線部140を固定する。固定部材35がコアバック31aとの間で配線部140を固定することにより、ステータ30の外側と内側とを跨ぐように配線された配線部140がロータ13と干渉する等の問題が生じることを抑制できる。
【0066】
本実施形態において、固定部材35は、コアバック31a、突出片33bおよび配線部140と接着される。具体的に、固定部材35と突出片33bとは、円環状突出部35aの下面部135と、突出片33bの上面132とが接着される。固定部材35とコアバック31aとは、円環状突出部35aの下面部135と、周方向に隣り合う突出片33b同士の間に露出するコアバック31aの上面230とが接着される。配線部140は、円環状突出部35aの下面部135と、周方向に隣り合う突出片33b同士の間に露出するコアバック31aの上面230との間で接着される。
【0067】
固定部材35とコアバック31aと突出片33bとを接着することで、ボビン33がより強固にステータコア31に固定される。固定部材35とコアバック31aと配線部140とを接着することで、配線部140がより強固にステータコア31に固定される。
【0068】
突出片33bは、コアバック31aの上面230と接着されてもよい。この場合において、突出片33bとコアバック31aとは、突出片33bの周方向を向く側面に塗布される接着剤により接着されてもよい。また、突出片33bとコアバック31aとは、突出片33bの下面とコアバック31aの上面230との間に配置される接着剤により接着されてもよい。ボビン33における貫通孔33Aに臨む内周面と、当該内周面と対向するティース31bの表面とを接着剤により接着してもよい。この構成により、ボビン33をさらに強固にステータコア31に固定可能である。
【0069】
ボビン33は、ティース31bの間に露出するコアバック31aの外周面31cと接着されてもよい。本実施形態の場合、ボビン33のフランジ部33eとコアバック31aの外周面31cとが、接着剤により接着されてもよい。この構成によれば、ボビン33が上下方向にわたって接着固定されるため、ボビン33をさらに強固にステータコア31に固定可能である。
【0070】
本実施形態では、突出片33bは、ボビン33の上端部にのみ設けられる構成としたが、突出片33bがボビン33の上端部および下端部に設けられ、固定部材35もステータコア31の上下面に配置される構成としてもよい。この構成によれば、ステータ30の上下でボビン33が固定されるので、ボビン33をさらに強固に固定可能である。
【0071】
このようなモータ11において、コイル32に駆動電流を供給すると、複数のティース31bに磁束が生じる。そして、ティース31bとマグネット23との間の磁束の作用により、ステータ30とロータ13との間に、周方向のトルクが発生する。その結果、ステータ30に対してロータ13が回転軸J周りに回転する。ロータ13に支持される回転翼は、ロータ13とともに回転軸J周りに回転する。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0073】
上記実施形態では、ロータがステータの径方向外側に位置するアウターロータ型のモータを例示したが、この構成に限定されず、ロータがステータの径方向内側に位置するインナーロータ型のモータに対しても適用可能である。
【0074】
インナーロータ型のモータの場合、ステータコア31におけるカシメダボ部150を径方向の外側に設ければよい。インナーロータ型のモータの場合、ヨーク22におけるカシメダボ部160を径方向の内側に設ければよい。このような構成とすることにより、カシメダボ部150、160が磁束に与える悪影響を低減できる。
【0075】
上記実施形態では、配線部140の末端にセンサーSが設けられる構成を例示したが、この構成に限定されない。配線部140の外側末端には、センサーS以外の各種機器を接続することが可能である。
【0076】
上記実施形態では、固定部材35をコアバック31a(ステータ30)に接着剤により固定する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、固定部材35に径方向内側に延びる固定片を設け、固定片をベース部40に固定する構成としてもよい。この構成では、固定片を周方向に等間隔で複数設けることが固定部材35を安定して固定するために好ましい。固定片はボルト等によってベース部40に固定すればよい。
【符号の説明】
【0077】
11…モータ、 13…ロータ、 20…ロータ本体、 22…ヨーク、 22a…ヨーク円筒部(円筒部)、 22b…ヨーク突出部(突出部)、 23…マグネット、 26…ロータ外縁部(ロータ周縁部)、 30…ステータ、 31a…コアバック、 31b…ティース、 32…コイル、 33,133…ボビン、 33a…筒部、 33b…突出片、33c,133c…爪部、 35…固定部材、 40…ベース部、 43…ステータ支持筒部、 130,132,230…上面、 131,232…面、 135…下面部、 136…周面部、 140…配線部、 150、160…カシメダボ部、 153…突部、 163…突部(第2突部)、 222、231…積層鋼板、 222A、231A…電磁鋼板、 241…第1防錆層、 242…第2防錆層、 251…第3防錆層、 252…第4防錆層、 J…中心軸、 S…センサー
図1
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