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  • 特許-柿葉エキスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】柿葉エキスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/44 20060101AFI20230110BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230110BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230110BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230110BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
A61K36/44
A61P3/10
A23L33/105
A61K8/9789
A61K127:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018124629
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002091
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草刈 剛
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳代
(72)【発明者】
【氏名】曽野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】木村 宜仁
(72)【発明者】
【氏名】森 千尋
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198684(JP,A)
【文献】特開2015-174829(JP,A)
【文献】特開平08-081337(JP,A)
【文献】鹿大農学術報告,1983年,第33号,pp. 21-28
【文献】沖縄県工業技術センター研究報告書,2010年,第13号,pp. 21-24
【文献】学苑・生活科学紀要,2012年,No. 866,pp. 42-46
【文献】柿葉ポリフェノールの食後血糖上昇抑制作用,日本食品科学工学会第64回大会講演集,2017年,p. 86,2Ep7
【文献】柿葉ポリフェノールの血糖値上昇抑制作用,J. Appl. Glycosci.,2008年,p. 38,Bp-4
【文献】柿の葉茶濃縮物の血糖上昇抑制効果について,一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集,2014年,66回大会,2P-35
【文献】Diospyros属植物のフェノール成分(1),(社)日本食品衛生学会第86回学術講演会講演要旨集,2003年,p. 96,P-10
【文献】Diospyros属植物のフェノール成分(2),(社)日本食品衛生学会第88回学術講演会講演要旨集,2004年,p. 102,P-23
【文献】日本食品科学工学会誌,2008年,Vol. 55, No. 7,pp. 345-349 (29-33)
【文献】日本家政学会誌,2011年,Vol. 62, No. 7,pp. 437-444
【文献】鹿大農学術報告,1981年,第31号,pp. 1-9
【文献】日本栄養・食糧学会誌,1991年,Vol. 44, No. 3,pp. 213-219
【文献】Science and Technology of Food Industry,2010年,Vol. 31, No. 07,pp. 88-92,DOI: 10.13386/j.issn1002-0306.2010.07.019
【文献】薬学生のための天然物化学,株式会社南江堂,2004年,pp. 139-144,IV 植物成分研究法、1 植物の調査,予備実験,抽出分離,生物活性試験
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿葉の水による抽出液を、DIAION(登録商標) HP-20に吸着させ、50~80(vol/vol)%のエタノールを含有する水-エタノール混合液により溶出させることにより得られるポリフェノール類を、組成物全量に対して20質量%以上含有し、かつ水分含有量が組成物全量に対して10質量%以下であることを特徴とする柿葉抽出物。
【請求項2】
フルクトース、グルコース、及びスクロースの総含有量が、組成物全量に対して1.5質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の柿葉抽出物。
【請求項3】
柿葉の水による抽出液を、DIAION(登録商標) HP-20に吸着させ、50~80(vol/vol)%のエタノールを含有する水-エタノール混合液により溶出させる工程を含む、柿葉抽出物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の柿葉抽出物を用いた食品、医薬品、又は化粧品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の柿葉抽出物を含む糖代謝改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柿葉抽出物およびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
高カロリー食の普及や日常の運動量の低下などの生活習慣要因により、中高年層だけでなく若年層においても糖尿病を発症する若しくはインスリン抵抗性を示す人が増えている。また、脂肪細胞の老化がインスリン抵抗性を引き起こすことも知られており、運動量も低下する老齢者においても糖尿病発症のリスクが高い。このように、日常生活の変化や老齢化社会への移行に伴い、糖尿病患者が年々爆発的に増加する傾向にあり、糖尿病予備軍である血糖代謝の異常を有する人も糖尿病患者の数倍以上存在すると考えられている。この状況において、糖尿病は根本的な治癒ができない疾病であることから、糖尿病患者においては、病態を悪化させない、また、インスリン抵抗性を示す人に対しては、糖尿病を発症させない取組みを実行することが重要である。
【0003】
これらの課題に対して、食事療法、運動療法および薬物療法を単独又は組合せた方法が採用されている。しかし、摂取カロリーを制限する食事療法や一定時間以上実行することが必要な運動療法は、継続的に実行できない場合が多く、特に老齢者では、基礎代謝量が大幅に低下しているだけでなく、運動能力の大幅な低下に伴う運動量の減少も深刻であり、前記の方法だけで対処することが難しい場合が増加している。そこで、血管(血液)から骨格筋へ糖を取り込む機序に着目し、単独若しくは従来の療法と組み合わせることにより、従来の方法より効果が得られ易い解決手段を見出す検討がなされている(特許文献1、2)。柿葉のエキスにおいても同様の検討がなされ、血管(血液)から骨格筋へ糖を取り込む作用を有する成分が見出されている(特許文献3)。しかし、その後の検討において、柿の葉には前記の作用を有する未知の成分が存在することがわかりつつあり、既知の有効成分に焦点を合わせた精製方法では柿葉が本来有する有効性を十分に反映させたエキスが得られないという課題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-37323号公報
【文献】特開2011-37732号公報
【文献】特開2014-198684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柿の葉に含有される血管(血液)から骨格筋へ糖を取り込む作用を有する成分を濃縮したエキス、及びエキスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、柿葉の水または水-エタノール混合液の抽出物中に存在する、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に吸着するポリフェノール類を、組成物全量に対して20質量%以上含有し、かつ水分含有量が組成物全量に対して10質量%以下であることを特徴とする柿葉抽出物が、骨格筋における糖代謝機能を改善または向上させる効果を有することを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.柿葉の水または水-エタノール混合液の抽出物中に存在する、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に吸着するポリフェノール類を、組成物全量に対して20質量%以上含有し、かつ水分含有量が組成物全量に対して10質量%以下であることを特徴とする柿葉抽出物。
項2.フルクトース、グルコース、及びスクロースの総含有量が、組成物全量に対して1.5質量%以下であることを特徴とする、項1に記載の柿葉抽出物。
項3.柿葉の水または水-エタノール混合液による抽出液を、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体系の樹脂を含有する吸着剤に吸着させ、50(vol/vol)%以上のエタノールを含有する水-エタノール混合液により溶出させる工程を含む、柿葉抽出物の製造方法。
項4.項1又は2に記載の柿葉抽出物を用いた食品、医薬品、又は化粧品。
項5.項1又は2に記載の柿葉抽出物を含む糖代謝改善用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本願発明により、骨格筋における糖代謝機能を改善または向上させる効果を有する柿の葉エキスを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】樹脂吸着未処理の柿葉抽出物、又は樹脂吸着処理後の柿葉抽出物の骨格筋管細胞を用いた糖取込促進活性の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の柿葉抽出物は、柿葉の水または水-エタノール混合液の抽出物中に存在する、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に吸着するポリフェノール類を一定量以上含有し、かつ水分含有量が一定量以下であることを特徴とする柿葉抽出物を含む。
【0012】
本発明に用いる柿葉は、柿(Diospyros kaki L.)から得られる葉であればその品種は特に限定されることなく、種々の品種の柿から得られるものを用いることができる。例えば、いわゆる甘果品種であれば、富有、次郎、甘百日、御所、花御所、晩御所、天神御所、藤原御所、徳田御所、三ヶ谷御所、禅寺丸、藤八、水島、正月、などが挙げられ、いわゆる渋果品種であれば、横野、平核無、富士、西条、堂上蜂屋、会津身不知、衣紋、祇園坊、四ツ溝、大四ツ溝、愛宕、葉隠、川端、田倉、作州身不知、西村、筆、刀根早生、甲州百目などが挙げられるがこれらに限定されない。柿葉の採取時期は、初夏から秋が好ましく、6月から9月がより好ましい。採取した柿葉は、そのまま抽出するために用いてもよいが、乾燥させてから抽出したほうが好ましい。乾燥方法としては、例えば風通しの良い場所に放置することによる自然乾燥、天日乾燥、乾燥させた気体や加温した気体に晒すことによる乾燥、高温や高圧の水蒸気に晒すことによる乾燥、マイクロウェーブ照射による乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などを用いることができるが、このうち乾燥させた気体や加温した気体に晒すことによる乾燥が衛生上の理由から好ましい。乾燥させる際に前処理を行っても良い。例えば、採取した後水洗し、適当な大きさ(例えば3mm~5mm幅程度の短冊形)に切断したものを乾燥に供しても良い。
【0013】
柿葉の抽出方法としては、特に制限されず、浸漬抽出などの公知の方法により行うことができる。抽出効率を高めるため、浸漬抽出以外に、ソックスレー抽出法や還流式抽出法などを使用することもできる。
【0014】
柿葉の抽出に使用する溶媒としては、水または水とエタノールの混合液を用いることができる。水とエタノールの混合液を使用する場合、水とエタノールの混合率は、質量換算で同量か若しくは水の含有率が高いほうが好ましい。中でも水を使用することが最も好ましい。
【0015】
柿葉の抽出に使用する溶媒の量(浴比)としては、柿葉1に対して抽出溶媒を質量換算で10~50程度とできる。中でも、抽出効率及び抽出後の濃縮を考慮すると10~30が好ましく、15~25が最も好ましい。
【0016】
抽出温度は、特に限定されるものではないが、室温から溶媒の沸点程度とすればよい。抽出溶媒が水-エタノールの混合液の場合、抽出温度は30℃~沸点が好ましく、60~80℃がより好ましい。抽出溶媒が水の場合、抽出温度は60~95℃が好ましく、85~95℃がより好ましく、90~95℃がもっとも好ましい。40℃より低い温度条件で抽出する場合において、防腐目的で5~15質量%程度のエタノールや多価アルコールを配合することができる。室温以下における抽出条件において、この程度のアルコール類の含有は抽出に支障を与えない。
【0017】
抽出時間としては、抽出時の温度や攪拌等の抽出時の条件に基づき適宜決定することができる。例えば、通常20分~24時間の範囲で設定することが好ましく、25分~4時間の範囲で設定することがさらに好ましく、30分~2時間の範囲で設定することが最も好ましい。
【0018】
抽出終了後、金属メッシュ、ろ布、ろ紙などのフィルターを用いたろ過や、遠心分離や圧搾処理など機械力を使用した固液分離を適宜組み合わせて、固液を分離し、抽出物を得ることができる。また、抽出終了後、濃縮してもよい。
【0019】
抽出処理後の残渣を、新たな抽出溶媒により洗浄し、残渣中に残存する抽出液を回収してもよい。また、抽出処理後の残渣を用いて、新たな抽出溶媒により、再度抽出処理を行うことができる。また、別々に抽出して得られた液を合一することもできる。
【0020】
抽出処理にて得られた抽出液は、吸着剤を用いた精製・濃縮処理を行う。吸着剤はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体系の吸着樹脂を用いる。特に、分子量1000ダルトン以上のペプチドやポリフェノール類を効率よく吸着する種類の吸着樹脂が好ましい。吸着樹脂の比表面積は、500~700m/gが好ましい。吸着樹脂の最頻度半径は、100~400Åが好ましく、250~350Åがさらに好ましい。吸着樹脂の例としては、Amberlite XADシリーズ(オルガノ(株)社製)、Amberchrom CGシリーズ、Dowex Optiporeシリーズ(Dow Chemical Company製)、DIAION(登録商標) HPシリーズおよびSPシリーズ、MCI GEL CHPシリーズ、(三菱化学(株)製)、Serdolitシリーズ(SERVA Electrophoresis GmbH製)などが挙げられる。
【0021】
抽出液を吸着剤に吸着させた後、例えば、水または水-エタノールの混合液で洗浄することができる。
【0022】
吸着剤に吸着させた成分を溶出する溶媒としては、例えば、水-エタノール混合液を使用することができる。水とエタノールの混合率は、質量換算で同量か若しくはエタノールの含有率が高いほうが好ましい。
【0023】
溶出後は、更に濃縮してもよい。濃縮方法としては、特に制限されず、減圧濃縮などの公知の方法により行うことができる。またあるいは、乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に制限されず、減圧乾燥などの公知の方法により行うことができる。
【0024】
本発明の柿葉抽出物には、ポリフェノール類、糖類、水分などが含まれる。
【0025】
本発明の柿葉抽出物に含まれるポリフェノール類としては、例えば、Kaempferol 3-O-galactoside(Trifolin) 、Kaempferol 3-O-glucoside(Astragalin)などが挙げられる。ポリフェノール類の含有量としては、組成物全量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。ポリフェノール類の含有量は、フォーリン・チオカルト法により求められる値である。
【0026】
本発明の柿葉抽出物に含まれる糖類としては、フルクトース、グルコース、スクロースなどが挙げられる。フルクトース、グルコース、及びスクロースの総含有量としては、組成物全量に対して、1.5質量%以下であることが好ましい。フルクトース、グルコース、及びスクロースの含有量としては、各0.5質量%以下であることがより好ましい。糖類の含有量は、下記条件でのHPLC分析により求められる値である。
【0027】
〔HPLC操作条件〕
検出器:RI
カラム:オクタデシルシリル基結合シリカゲル充填カラム(ODSカラム)(例:CAPCELL PAK NH2 UG80 S5)
移動相:アセトニトリル/水混液(80:20)
流 速:1.0 mL/min
【0028】
水分量としては、組成物全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。水分量は、乾燥減量法により求められる値である。
【0029】
本発明の柿葉抽出物は、特に、糖代謝改善のために好ましく用いることができる。また、本発明の柿葉抽出物は、特に限定されないが、例えば、食品、医薬品、化粧品等の原料として用いることができる。言い換えれば、本発明は、上記本発明の柿葉抽出物を含む糖代謝改善用組成物を包含する。また、本発明は、上記本発明の柿葉抽出物を用いた食品、医薬品、及び化粧品等を包含する。さらに、これらの食品、医薬品、及び化粧品等は、上記本発明の柿葉抽出物を含むことから、糖代謝改善用として好ましく用いることができる。
【0030】
本発明の糖代謝改善用組成物は、上記した柿葉抽出物そのものであってもよいし、当該柿葉抽出物に加え、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、薬学的又は食品衛生学的に許容され得る担体などが挙げられる。
【0031】
また、本発明の糖代謝改善用組成物は、経口組成物として利用することができる。経口組成物としては、医薬品、医薬部外品のほか、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、インスリン抵抗性、動脈硬化、肥満、体脂肪蓄積、脂質代謝異常、生活習慣病、脂肪肝等の予防・改善や糖代謝亢進、抗老化の生理機能をコンセプトとした機能性飲食品、疾病者用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品、運動療法用食品、痩身用食品などの食品とすることができる。
【0032】
本発明の糖代謝改善用組成物の形態としては特に限定されないが、経口組成物として利用する場合には、例えば、ハードカプセル、ソフトカプセル、サプリメント、チュアブル錠、飲料、粉末飲料、顆粒、フィルムなどの形態とすることができる。また、例えば、茶系飲料、スポーツ飲料、美容飲料、果汁飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、水や湯、炭酸水等で希釈する濃縮タイプの飲料等の飲料、水や湯等に溶解又は懸濁させて飲用する粉末や顆粒、タブレット等の乾燥固形物、タブレット菓子、ゼリー類、スナック類、焼き菓子、揚げ菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、グミなどの菓子類、スープ類、めん類、米飯類、シリアル等などの食品形態にすることもできる。このうち通常の生活において利用する場合には、サプリメントタイプ、チュアブル錠、ワンショットドリンクタイプなどの形態が好ましく、運動効果を高める目的で摂取する場合には、スポーツ飲料などの飲料の形態が最も好ましい。さらに、これらの経口組成物は容器に充填された容器詰食品として消費者に提供することができる。容器は密封できるものであれば特に限定されない。
【0033】
錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤などの場合は、乾燥物換算で経口組成物全量に対して、例えば、上記本発明の柿葉抽出物を0.01 ~95質量%程度、好ましくは5~90質量%程度、最も好ましくは10~80質量%程度配合することができる。上記以外の経口組成物の場合は、例えば、本発明の柿葉抽出物を0.001~50質量%程度、好ましくは0.005~30質量%程度、最も好ましくは0.01~10質量%程度配合することができる。
【実施例
【0034】
製造例1:樹脂吸着未処理の柿葉抽出物の製造
短冊形に切断した柿葉100kgに水2000Lを加え、90~95℃に加温した後に、固液分離し、抽出液(1)を得た。固液分離後の残渣に400Lの水を加え、残渣を洗浄し、固液分離して、抽出液(2)を得た。抽出液(1)と(2)を合わせてろ過し、得られたろ過液を80℃で減圧乾燥し、樹脂吸着未処理の柿葉抽出物を得た。
【0035】
製造例2:樹脂吸着処理した柿葉抽出物の製造
製造例1と同様の手順で得たろ過液を、100Lのスチレン-ジビニルベンゼン共重合体系の樹脂を含有する吸着剤(HP-20)を充填したカラムに通液した。400Lの水で洗った後、350Lの80(vol/vol)%エタノールを用いて、吸着物を脱離させた。脱離液を0.45μmのフィルターでろ過し、45~50℃で減圧濃縮して、濃縮液を得た。濃縮液を80℃で減圧乾燥し、樹脂吸着処理した柿葉抽出物を得た。収率は3~4%程度であった。
【0036】
試験例1:樹脂吸着未処理の柿葉抽出物、及び樹脂吸着処理後の柿葉抽出物の組成分析
試験例1-1:ポリフェノール類含有量の測定方法
柿葉抽出物のポリフェノール類含有量((+)-カテキン換算)をフォーリン・チオカルト法により3回(n=3)測定したところ、46.7質量%、48.4質量%、及び45.7質量%であった。
【0037】
試験例1-2:水分量の測定方法
柿葉抽出物の水分含有量を乾燥減量法(1g、105℃、6時間)により測定したところ、7%質量以下であった。
【0038】
試験例1-3:フルクトース、グルコース、及びスクロースの含有量の測定方法
柿葉抽出物のフルクトース、グルコース、及びスクロース含有量を、HPLCにより3回(n=3)測定した。HPLCの測定条件は次の通りとした。
【0039】
〔HPLC操作条件〕
検出器:RI
カラム:CAPCELL PAK NH2 UG80 S5
移動相:アセトニトリル/水混液(80:20)
流 速:1.0 mL/min
【0040】
結果を次に示す。
一回目:
グルコース0.11g/100g、フルクトース0.05g/100g以下、スクロース0.2g/100g以下
二回目:
グルコース0.13g/100g、フルクトース0.05g/100g以下、スクロース0.2g/100g以下
三回目:
グルコース0.08g/100g、フルクトース0.05g/100g以下、スクロース0.2g/100g以下
【0041】
試験例2:骨格筋管細胞を用いた糖取込促進活性の測定
凍結保管されたC2C12マウス骨格筋芽細胞を融解し、96ウェルのクリアボトムのブラックマイクロタイタープレート(Falcon社製)に、細胞を5000cells/200μl/wellの濃度で播種し、高グルコースDMEM培地(5790)中で培養し、分化した筋管細胞を得た。培地を低グルコースDMEM培地(6047)に交換し、スタベーションを行った後、製造例1又は2において得られた、樹脂吸着未処理の柿葉抽出物、又は樹脂吸着処理後の柿葉抽出物を100μg/ml、又は200μg/ml含む低グルコースDMEM培地に、培地を交換した。ネガティブコントロールには、何も添加していない低グルコースDMEM培地を用いた。60分間インキュベートした後、培地を取り除き、100μMの光標識非加水分解性糖アナログ、6-(N-(7-Nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino)-6-Deoxyglucose(6-NBDG;invitrogen社製)を溶解した低グルコースDMEM培地に培地を交換し、30分間反応させた。反応後に培地を捨て、PBSで2回洗浄した後、よく水を切ったマイクロプレートについて、蛍光プレートリーダーを用い444nm/538nm emissionで測定した。測定結果を図1に示す。
【0042】
図1から明らかなように、樹脂吸着処理後の柿葉抽出物は、樹脂吸着処理していない柿葉抽出物と比較して、骨格筋における糖代謝機能を向上させる効果を有することが分かった。
図1