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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】蓋体及び容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/03 20060101AFI20230110BHJP
   B65D 21/036 20060101ALI20230110BHJP
   B65D 41/34 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B65D43/03
B65D21/036
B65D41/34 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018187104
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020055595
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】竹田 徹
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0138156(US,A1)
【文献】特開2008-207828(JP,A)
【文献】特開2013-241206(JP,A)
【文献】特開2016-033037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0187407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体の一部の開封バンド部を切除すると容器本体から取り外し可能となる蓋体において、
前記開封バンド部が切除される前の切除前状態か、前記開封バンド部が切除された後の切除後状態か、に拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、上下の蓋体同士が嵌合し、
前記切除前状態の蓋体同士を段積みする場合よりも、前記切除後状態の蓋体同士を段積みする場合の方が、段積みされた蓋体群の高さが小さくなる蓋体
【請求項2】
前記切除前状態の蓋体同士を段積みすると、上側の蓋体の前記開封バンド部の下端部が下側の蓋体に対して嵌合し、
前記開封バンド部の下端部よりも上方に位置し、前記切除後状態の蓋体同士を段積みするときに下側の蓋体に対して嵌合する切除後用嵌合部を備える請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
蓋体の一部の開封バンド部を切除すると容器本体から取り外し可能となる蓋体において、
前記開封バンド部が切除される前の切除前状態か、前記開封バンド部が切除された後の切除後状態か、に拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、上下の蓋体同士が嵌合し、
前記容器本体の上端部を内外方向で挟む外側嵌合壁と内側嵌合壁とを有し、前記容器本体と嵌合する嵌合壁と、
蓋体の上面に設けられ、前記切除前状態か前記切除後状態かに拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、前記嵌合壁と嵌合する段積嵌合部と、を備え、
前記外側嵌合壁を上下に2分割した下側部分が前記開封バンド部をなし、
上に前記切除前状態の蓋体を重ねたときには前記開封バンド部が蓋体の前記上面に当接し、前記切除後状態の蓋体を重ねたときには前記内側嵌合壁が蓋体の前記上面に当接する蓋体。
【請求項4】
前記段積嵌合部は、上方に突出し、上に前記切除前状態の蓋体を重ねたときには前記開封バンド部に内側から嵌合し、前記切除後状態の蓋体を重ねたときには前記内側嵌合壁に外側から嵌合する請求項3に記載の蓋体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、
前記内側嵌合壁は閉環状に形成され、前記蓋体が前記容器本体に嵌合すると、前記内側嵌合壁の外面と前記容器本体の内面とが当接する容器。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、
前記蓋体の前記上面には前記嵌合壁より内側に、前記容器本体の下端部が嵌合する嵌合凹部が形成され、
前記嵌合凹部の開口縁部と底部との間の段差壁と前記内側嵌合壁との間に隙間がある容器。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、
前記容器本体の上端部に側方へ突出した突起部が設けられる一方、前記蓋体における前記外側嵌合壁には、前記切除前状態か前記切除後状態かに拘わらず前記突起部を受容する受容凹部が形成され、
前記内側嵌合壁の外面のうち前記受容凹部と対向する部分には、前記容器本体の上端部を前記外周壁本体側へ押し込む押込部が突出している容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓋体及びその蓋体と容器本体とからなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蓋体として、蓋体の一部の開封バンド部を切除すると容器本体から取り外し可能となるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-110058号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した蓋体は、蓋体同士を安定して段積みできないという問題があった。これに対し、安定して段積み可能な蓋体及びその蓋体と容器本体とからなる容器の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、蓋体の一部の開封バンド部を切除すると容器本体から取り外し可能となる蓋体において、前記開封バンド部が切除される前の切除前状態か、前記開封バンド部が切除された後の切除後状態か、に拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、上下の蓋体同士が嵌合し、前記切除前状態の蓋体同士を段積みする場合よりも、前記切除後状態の蓋体同士を段積みする場合の方が、段積みされた蓋体群の高さが小さくなる蓋体である。
【0006】
請求項2の発明は、前記切除前状態の蓋体同士を段積みすると、上側の蓋体の前記開封バンド部の下端部が下側の蓋体に対して嵌合し、前記開封バンド部の下端部よりも上方に位置し、前記切除後状態の蓋体同士を段積みするときに下側の蓋体に対して嵌合する切除後用嵌合部を備える請求項1に記載の蓋体である。
【0007】
請求項3の発明は、蓋体の一部の開封バンド部を切除すると容器本体から取り外し可能となる蓋体において、前記開封バンド部が切除される前の切除前状態か、前記開封バンド部が切除された後の切除後状態か、に拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、上下の蓋体同士が嵌合し、前記容器本体の上端部を内外方向で挟む外側嵌合壁と内側嵌合壁とを有し、前記容器本体と嵌合する嵌合壁と、蓋体の上面に設けられ、前記切除前状態か前記切除後状態かに拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに、前記嵌合壁と嵌合する段積嵌合部と、を備え、前記外側嵌合壁を上下に2分割した下側部分が前記開封バンド部をなし、上に前記切除前状態の蓋体を重ねたときには前記開封バンド部が蓋体の前記上面に当接し、前記切除後状態の蓋体を重ねたときには前記内側嵌合壁が蓋体の前記上面に当接する蓋体である。
【0008】
請求項4の発明は、前記段積嵌合部は、上方に突出し、上に前記切除前状態の蓋体を重ねたときには前記開封バンド部に内側から嵌合し、前記切除後状態の蓋体を重ねたときには前記内側嵌合壁に外側から嵌合する請求項3に記載の蓋体である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、前記内側嵌合壁は閉環状に形成され、前記蓋体が前記容器本体に嵌合すると、前記内側嵌合壁の外面と前記容器本体の内面とが当接する容器である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、前記蓋体の前記上面には前記嵌合壁より内側に、前記容器本体の下端部が嵌合する嵌合凹部が形成され、前記嵌合凹部の開口縁部と底部との間の段差壁と前記内側嵌合壁との間に隙間がある容器である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項3又は4に記載の蓋体と容器本体とからなる容器であり、前記容器本体の上端部に側方へ突出した突起部が設けられる一方、前記蓋体における前記外側嵌合壁には、前記切除前状態か前記切除後状態かに拘わらず前記突起部を受容する受容凹部が形成され、前記内側嵌合壁の外面のうち前記受容凹部と対向する部分には、前記容器本体の上端部を前記外周壁本体側へ押し込む押込部が突出している容器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の蓋体によれば、開封バンド部が切除される前の切除前状態か切除された後の切除後状態かに拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに上下の蓋体同士が嵌合するので、蓋体同士の段積みを安定させることができる。
【0014】
請求項3の蓋体によれば、開封バンド部が切除される前の切除前状態か切除された後の切除後状態かに拘わらず、蓋体同士を段積みしたときに上下の蓋体同士が嵌合するので、蓋体同士の段積みを安定させることができる。また、切除後状態の蓋体同士を積み重ねたときの高さが、切除前状態の蓋体同士を積み重ねたときの高さよりも小さくなるので、蓋体同士を積み重ねたときの嵩を減らすことができる。
【0015】
請求項4の蓋体では、段積嵌合部が蓋体の上面から上方に突出しており、上に切除前状態の蓋体を重ねられたときには開封バンド部に内側から嵌合し、切除後状態の蓋体を重ねられたときには内側嵌合壁に外側から嵌合する。
【0016】
請求項5の蓋体によれば、蓋体が容器本体に嵌合すると、閉環状の内側嵌合壁の外面と容器本体の内面とが当接するので、容器の密閉性を高めることができる。
【0017】
請求項6の蓋体によれば、容器同士を重ねたときに蓋体の上面に上側の容器の下端部が嵌合するので、容器同士の段積みを安定させることができる。また、嵌合凹部の段差壁と内側嵌合壁との間に隙間があるので、上側の容器が側方から押される等して嵌合凹部の段差壁に負荷がかかっても、その隙間がクッションの役割を果たし、蓋体と容器本体との嵌合が外れることが抑制される。
【0018】
請求項7の蓋体によれば、切除前状態か切除後状態かに拘わらず、蓋体が容器本体に嵌合すると容器本体の突起部が蓋体の受容凹部に受容されて、蓋体が容器本体に係止されるので、開封バンドを切除して開封した後でも、蓋体を容器本体に係止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示に係る容器の斜視図
図2】容器の断面図
図3】容器の一部拡大断面図
図4】切除前状態の蓋体の側断面図
図5】容器同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図6】切除後状態の蓋体の側断面図
図7】切除前状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図8】切除後状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図9】切除前状態の蓋体同士を積み重ねた状態の斜視図
図10】切除後状態の蓋体同士を積み重ねた状態の斜視図
図11】切除前状態の蓋体と切除後状態の蓋体とをばらばらに積み重ねた状態の断面図
図12】(A)変形例に係る切除前状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図,(B)変形例に係る切除後状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図13】(A)変形例に係る切除前状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図,(B)変形例に係る切除後状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図14】(A)変形例に係る切除前状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図,(B)変形例に係る切除後状態の蓋体同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図15】変形例に係る蓋体の平面図
図16】変形例に係る容器同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
図17】変形例に係る容器同士を積み重ねた状態の一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、容器本体11と、容器本体11の上面開口11K(図2参照)を密閉する蓋体20と、からなる容器10が示されている。容器本体11及び蓋体20は、何れも例えば樹脂の射出品である。
【0021】
容器本体11は、所謂バケツ形状をなし、円板状の底壁12(図2参照)と、下方へ向かうにつれて僅かに狭まる円筒状の側壁13と、を有している。図2に示すように、底壁12は、側壁13の下端より僅かに上方に配され、側壁13の下端部が底壁12よりも下方へ突出した突出部13Aとなっている。また、底壁12の中央部は、上方へ隆起した隆起部12Aとなっていて、その下面には環状の突条12Bが下方へ突出している。なお、突条12Bの下端は、底壁12の本体部分12Cの上面と略同じ高さに位置している。
【0022】
図2に示すように、容器本体11の上端寄り位置には、側壁13の外面から側方へ突出し、全周に亘って延びた三角突条14が設けられている。図3に示すように、三角突条14は、水平に延びた下面14Aと、下面14Aの先端から側壁13へ斜め上方へ延びた傾斜面14Bと、を有している。また、図2に示すように、側壁13の外面には三角突条14よりも下方に第1フランジ16と第2フランジ17とが上下に並んで形成されている。三角突条14と第1フランジ16との間の距離は、三角突条14と側壁13の上端との間の距離よりも少し長くなっている。第2フランジ17は、容器本体11の上端から容器本体11の高さの1/3程離れた位置に配されている。
【0023】
図3に示すように、容器本体11の上端には、上端縁から僅かに外方へ突出した突起部15が形成されている。突起部15は、容器本体11の上端全周に亘って設けられ、その上面は容器本体11の上端面と面一になっている。また、突起部15は、縦横ともに、側壁13の板厚の1/4~1/5程の長さになっている。
【0024】
図1に示すように、蓋体20は、容器本体11と同様、平面形状が円形になっていて、その外縁部に容器本体11と嵌合するための嵌合壁21を有している。図4に示すように、嵌合壁21は、外側嵌合壁22と内側嵌合壁23とからなる二重壁構造をなし、これら外側嵌合壁22と内側嵌合壁23との間に容器本体11における側壁13の上端部が嵌まり、蓋体20が容器本体11に嵌合する(図2参照)。また、図4に示すように、内側嵌合壁23の下端は、外側嵌合壁22の下端よりも上方に位置している。
【0025】
図3に示すように、嵌合壁21のうち外側嵌合壁22の内面の上端部には、容器本体11の突起部15を受容する受容凹部22Aが形成されている。一方、内側嵌合壁23の外面には、受容凹部22Aと対向する部分に、容器本体11の上端部を外側嵌合壁22側へ押し込む押込部23Aが突出している。これにより、容器本体11の突起部15が蓋体20の受容凹部22Aに凹凸係合する。
【0026】
図4に示すように、蓋体20のうち嵌合壁21を除く蓋本体20Hでは、嵌合壁21より僅かに内側位置から外側が水平な外板部24をなす一方、その内側が外板部24から陥没した内板部25になっている。外板部24と内板部25との間の段差壁26は、内側嵌合壁23との間に隙間を有して配されている。また、段差壁26は、上方に向かうに従って拡開するように僅かに傾斜していて、上側部分の勾配が下側部分の勾配よりも緩やかになっている。これら段差壁26と内板部25とにより蓋本体20Hに嵌合凹部20Kが形成され、図5に示すように、複数の容器10を段積みした際には、上側の容器10の下端部が下側の容器10の嵌合凹部20Kに嵌合する。このとき、例えば上側の容器10が側方から押される等して段差壁26に負荷がかかっても、段差壁26と内側嵌合壁23との間の隙間がクッションの役割を果たし、蓋体20と容器本体11との嵌合が外れることが抑制される。なお、内板部25は、中央部が外縁部よりも板厚1枚分高くなっていて、その段差面は傾斜している。
【0027】
図3に示すように、外側嵌合壁22の内面における上下方向の中間には、内側嵌合壁23の下端よりも上方に、容器本体11の三角突条14を受容可能なV溝27が形成され、V溝27の底部が薄肉部28になっている。V溝27の内面のうち上側面27Aは、容器本体11の三角突条14の傾斜面14Bと平行に延び、下側面27Bは、上側面27Aの下端から僅かに傾斜して延びている。図1に示すように、V溝27(図3参照)の一部は内外方向に貫通した切り込み27Kになっていて、その切り込み27Kの一端から外側嵌合壁22の下端に亘って、縦割り用薄肉部29が備えられている。また、外側嵌合壁22のうち切り込み27Kの下方部分の下端部からはつまみ片30が張り出している。つまみ片30は、外側嵌合壁22から外側方へ突出したのち下方へ垂下し、さらに垂直に外方へ折れ曲がった形状をしている。
【0028】
そして、つまみ片30を持ち、下方へ引き下げることで縦割り用薄肉部29が破断し、そのまま側方へ引っ張ることで薄肉部28が破断して、外側嵌合壁22のうち薄肉部28より下側の開封バンド部22Xが上側の外側嵌合壁本体22Yに対して引き裂かれて切除される(図6参照)。なお、蓋体20のうち縦割り用薄肉部29を挟んでつまみ片30と反対側の上端部には側方へ張り出した把持片31が設けられ、この把持片31と段差壁26とに指をかけることで、上記引き裂き作業が容易になる。また、図3に示すように、開封バンド部22Xの板厚は外側嵌合壁本体22Yの板厚よりも小さくなっていて、開封バンド部22Xと容器本体11の側壁13との間に僅かに隙間が生じている。以降、適宜、開封バンド部22Xが切除される前の蓋体20の状態を切除前状態といい、開封バンド部22Xが切除された後の蓋体20の状態を切除後状態という。
【0029】
図2に示すように、蓋体20が容器本体11に嵌合すると、容器本体11の三角突条14が蓋体20のV溝27に係合して蓋体20が容器本体11に嵌合固定(所謂、嵌め殺し)される。このとき、開封バンド部22Xの下端面と第1フランジ16とが僅かな隙間しか残さずに対向している、これにより、開封バンド部22Xの裏側に意図せず何かが引っ掛かり、蓋体20が外れてしまうことが防がれる。そして、上述の如く開封バンド部22Xが引き裂かれると、蓋体20が容器本体11から取り外し可能になる。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の蓋体20には、蓋本体20Hのうち外板部24の上面に、閉環状の環状突条35(特許請求の範囲中の「段積嵌合部」に相当する)が設けられている。環状突条35は、外側嵌合壁22と内側嵌合壁23との間に配されている。そして、図7に示すように、上に切除前状態の蓋体20が重ねられたときには、外側嵌合壁22の開封バンド部22Xが外板部24の上面に当接して、この開封バンド部22Xに環状突条35が内側から隣接して凹凸係合する。一方、図8に示すように、上に切除後状態の蓋体20が重ねられたときには、内側嵌合壁23が外板部24の上面に当接して、内側嵌合壁23に環状突条35が外側から隣接して凹凸係合する。
【0031】
本実施形態の容器10の構成に関する説明は以上である。次に、この容器10の作用効果について説明する。この容器10は、例えば、染料等の液体や食品を収容して運搬、販売するために使用される。そのためには、収容物が収容された容器本体11の上端部を蓋体20の外側嵌合壁22と内側嵌合壁23とで挟むようにして蓋体20を押し込む。すると、外側嵌合壁22が容器本体11の三角突条14に押されて外方へ変形しながら下方へ進み、開封バンド部22Xが三角突条14を通り過ぎたところで外側嵌合壁22が弾性復帰して蓋体20のV溝27が三角突条14に係止し、蓋体20が容器本体11に嵌合固定(所謂、嵌め殺し)される(図2参照)。
【0032】
容器10を開封するときは、つまみ片30を引っ張り、開封バンド部22Xを引き裂き切除することで、V溝27と三角突条14との係止が解除され、蓋体20を外すことができる。
【0033】
ここで、本実施形態の容器10では、開封バンド部22Xが上側の外側嵌合壁本体22Yよりも薄くなっていて、その内径が大きくなっているので、蓋体20を押し込む際の外側嵌合壁22の変形量を小さくすることができ、取り付け作業を容易にすることができる。
【0034】
また、蓋体20が容器本体11に嵌合すると、蓋体20の押込部23A(図3参照)により容器本体11の上端部が蓋体20の外側嵌合壁22に押し付けられ、容器10の密閉性が高まるとともに、容器本体11の突起部15が蓋体20の受容凹部22Aに係合し、蓋体20と容器本体11との係止がより強固になる。さらに、押込部23Aにより、内側嵌合壁23に対して容器本体11の側壁13が傾斜することで、内側嵌合壁23の下端部が容器本体11の側壁13に密着するように当接し、容器10の密閉性がより高められる。しかも、押込部23Aや突起部15、受容凹部22Aが、容器本体11や嵌合壁21の上端部に配されているので、開封バンド部22Xが切除された後、つまり、容器10の開封後でも、蓋体20が容器本体11に弱めに係止され、振動などにより蓋体20が外れることが防止されると共に、容器10の密閉性が保たれる。なお、突起部15が側壁13の板厚に比べてかなり小さくなっているので、係止機能を有しながらも、取り外しを容易にすることができる。
【0035】
ところで、従来のこの種の容器では、蓋体同士が嵌合するようにはなっておらず、蓋体同士を段積みできない、もしくは、段積みしても不安定になっていた。この容器では、取り付け前の蓋体を保管しておく時に蓋体がばらけてしまったり、蓋体を容器本体に取り付ける作業の時に、蓋体をバラバラに置かれている中から取り出す必要があり、手間取ることがあった。
【0036】
これに対して、本実施形態の容器10によれば、切除前状態の蓋体20同士を積み重ねると(図9参照)、上側の蓋体20の開封バンド部22Xに下側の蓋体20の環状突条35が内側から隣接して凹凸係合するので(図7参照)、上側の蓋体20が横ズレすることが防がれる。これにより、蓋体20同士を安定して段積みしておくことができるので、切除前状態の蓋体20の保管が嵩張らずに行える。また、蓋体20を容器本体11に取り付ける作業において、蓋体20を一つずつ手にとることがスムーズになり、作業効率が高められる。なお、切除前状態の蓋体20においては、つまみ片30が下方へ突出しているので、裏返して(嵌合壁21を上方に向けて)積み重ねることが望ましい。また、本実施形態では、つまみ片30と把持片31とが横方向でずれて配されているので、蓋体20を同じ向きで重ねることができる。
【0037】
また、開封バンド部22Xを切除して容器10を開封した後にも、例えば容器10をタッパーとして再利用するためだったり、廃棄のために、切除後状態の蓋体20同士をまとめて保管しておくことが考えられるが、この場合であっても、切除後状態の蓋体20同士を積み重ねると(図10参照)、上側の蓋体20の内側嵌合壁23に下側の蓋体20の環状突条35が外側から隣接して凹凸係合するので(図8参照)、切除後状態の蓋体20同士を安定して段積みしておくことができ、保管が容易になる。しかも、切除前状態の蓋体20では、外側嵌合壁22の開封バンド部22Xが外板部24の上面に当接するのに対し、切除後状態の蓋体20では、内側嵌合壁23が外板部24の上面に当接するので、開封バンド部22Xを切除した後に、蓋体20同士を段積みしたときの嵩を減らすこともできる。なお、切除後状態の蓋体20では、つまみ片30が開封バンド部22Xと共に切除されているので、両面どちらを上にしても積み重ねることができる。
【0038】
なお、容器10を開封する際に、人によっては、開封バンド部22Xを切除せずに、開封バンド部22Xの下端部を無理矢理外方へ広げて蓋体20を外すことも考えられる。これに対し、本実施形態によれば、図11に示すように、切除前状態のものと切除後状態のものとが混ざっていても、互いに段積みできるので、蓋体20の保管の作業効率をより向上することができる。
【0039】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、容器10の平面形状が円形であったが、楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。
【0040】
(2)上記実施形態では、つまみ片30が下方へ突出していたが、側方へ突出していてもよい。この場合、切除前状態の蓋体20同士を積み重ねる際に、両面どちらを上にしても積み重ねることができる。
【0041】
(3)図12に示すように、内側嵌合壁23の下端部が外側嵌合壁22のV溝27よりも上方に位置していて、切除前状態と切除後状態との両方で、外側嵌合壁22が下側の蓋体20と嵌合する構成であってもよい。また、内側嵌合壁23を有しない構成であってもよい。
【0042】
(4)上記実施形態では、外側嵌合壁22の開封バンド部22Xと内側嵌合壁23とが共に環状突条35と嵌合していたが、図13に示すように、外側嵌合壁22の開封バンド部22Xと嵌合する環状突条35Xと、内側嵌合壁23と嵌合する環状突条35Yと、を別個に備える構成であってもよい。
【0043】
(5)図14に示すように、内側嵌合壁23の下端が外側嵌合壁22の開封バンド部22Xの下端よりも下方に位置していて、切除前状態と切除後状態との両方で、内側嵌合壁23が下側の蓋体20と嵌合する構成であってもよい。
【0044】
(6)上記実施形態では、蓋体20同士を積み重ねたときに上側の容器10の下端部が嵌合する嵌合凹部20Kが形成されていたが、この嵌合凹部20Kが形成されず、蓋体20の上面が平坦になっていてもよい。
【0045】
(7)上記実施形態では、蓋体20同士を積み重ねたときに、下側の蓋体20と嵌合するのが容器本体11に嵌合する嵌合壁21であったが、嵌合壁21以外の箇所が嵌合してもよい。例えば、蓋体20の下面に、嵌合壁21とは別に、下側の蓋体20と嵌合する突起を備える構成であってもよい。
【0046】
(8)上記実施形態では、蓋体20の上面に、上に積み重ねられた蓋体20と嵌合する環状突条35が設けられていたが、嵌合溝を備える構成であってもよい。
【0047】
(9)上記実施形態では、上に積み重ねられた蓋体20の嵌合壁21と嵌合するのが、閉環状の突条であったが、開環状の突条であってもよいし、複数個所に形成された突起であってもよい。同様に、内側嵌合壁23も、開環状であってもよいし、複数個所に形成された突起であってもよい。
【0048】
(10)上記実施形態では、段差壁26において、上側部分と下側部分とで勾配が異なっていたが、勾配に変化がなくてもよい。また、段差壁26が垂直に延びていてもよい。
【0049】
(11)図15図17に示すように、段差壁26から内側へ向けてリブ20Lが複数本(例えば、6本)突出していて、容器10同士を段積みしたときに嵌合凹部20Kに受容された上側の容器10の下端部が、リブ20Lに当接又は近接する構成であってもよい。図15及び図16に示す例では、リブ20Lが直線状をなし、上側の容器10の側壁13に近接して、上側の容器10の横ずれを規制する。なお、図16は、段積みされた容器10を図15におけるA-A線の位置で切断した断面図である。図17に示す例では、リブ20LがL字状をなし、上側の容器10の横ずれを規制するとともに、上側の容器10を下から支持する構成になっている。また、リブ20Lが段差壁26の下部からしか突出しておらず、リブ20Lが上側の容器10を下から支持し、段差壁26が上側の容器10の側壁13に近接する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 容器
11 容器本体
13 側壁
14 三角突条
15 突起部
20 蓋体
20H 蓋本体
20K 嵌合凹部
21 嵌合壁
22 外側嵌合壁
22A 受容凹部
22X 開封バンド部
22Y 外側嵌合壁本体
23 内側嵌合壁
23A 押込部
27 溝
35 環状突条(段積嵌合部)
図1
図2
図3
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図5
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図17