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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】重量物運搬車
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/16 20060101AFI20230110BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20230110BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20230110BHJP
   B60P 3/00 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
G01C21/16
G01C21/28
G08G1/0969
B60P3/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075843
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173567
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(73)【特許権者】
【識別番号】711003749
【氏名又は名称】株式会社Wave Technology
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】金田 脩佑
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】難波 真二
(72)【発明者】
【氏名】小原 敏之
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀栄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 相向
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-035562(JP,A)
【文献】特表2008-523360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0347624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台及び前記荷台を支持する複数のタイヤを備え、前記荷台に重量物が積載された状態で前記複数のタイヤで走行する重量物運搬車であって、
前記複数のタイヤのうち少なくとも1つの特定タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する少なくとも1つの回転角検出器と、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記特定タイヤの外周における前記第1物理量の1単位に対応する単位回転角当たりの弧長を乗算して移動量を算出する移動量算出器と、
前記移動量算出器で算出された移動量を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記荷台に積載された重量物の積載重量に対応する第2物理量を検出する荷重検知器と、
前記荷重検知器で検出される前記第2物理量と前記特定タイヤの外周における所定回転角当たりの弧長との間の相関関係を記憶する記憶器と、
衛星測位システムにより位置情報を受信する衛星測位受信機と、を備え、
前記移動量算出器は、
前記記憶器の前記相関関係を参照し、前記荷重検知器で検出される前記第2物理量から、前記特定タイヤの外周における前記単位回転角当たりの現在の弧長を算出し、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記単位回転角当たりの現在の弧長を乗算して前記移動量を算出する
前記自車位置推定器は、前記移動量算出器で算出された前記移動量と、前記衛星測位受信機で受信された情報とに基づいて、前記自車位置を推定し、
前記自車位置推定器は、
前記衛星測位受信機の受信状態が所定の不良状態であるときに、前記移動量算出器で算出された前記移動量を用いて前記自車位置を推定し、
前記衛星測位受信機の受信状態が所定の良好状態であるときに、前記衛星測位受信機で検出された情報を用いて前記自車位置を推定しながら、前記衛星測位受信機のサンプリング間隔の空白区間では前記移動量算出器で算出された前記移動量を用いて前記自車位置を推定する、重量物運搬車。
【請求項2】
荷台及び前記荷台を支持する複数のタイヤを備え、前記荷台に重量物が積載された状態で前記複数のタイヤで走行する重量物運搬車であって、
前記複数のタイヤのうち少なくとも1つの特定タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する少なくとも1つの回転角検出器と、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記特定タイヤの外周における前記第1物理量の1単位に対応する単位回転角当たりの弧長を乗算して移動量を算出する移動量算出器と、
前記移動量算出器で算出された移動量を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記荷台に積載された重量物の積載重量に対応する第2物理量を検出する荷重検知器と、
前記荷重検知器で検出される前記第2物理量と前記特定タイヤの外周における所定回転角当たりの弧長との間の相関関係を記憶する記憶器と、
前記重量物運搬車の加減速状態を判定する加減速判定器と、備え、
前記移動量算出器は、
前記記憶器の前記相関関係を参照し、前記荷重検知器で検出される前記第2物理量から、前記特定タイヤの外周における前記単位回転角当たりの現在の弧長を算出し、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記単位回転角当たりの現在の弧長を乗算して前記移動量を算出し、
前記少なくとも1つの特定タイヤは、複数の特定タイヤであり、
前記少なくとも1つの回転角検出器は、前記複数の特定タイヤの回転角に対応する第1物理量をそれぞれ検出する複数の回転角検出器であり、
前記移動量算出器は、前記加減速判定器で前記重量物運搬車が所定の加速状態であると判定されたときに、前記複数の回転角検出器でそれぞれ検出された複数の回転角のうち最大値以外の値を用いて前記移動量を算出する、重量物運搬車。
【請求項3】
荷台及び前記荷台を支持する複数のタイヤを備え、前記荷台に重量物が積載された状態で前記複数のタイヤで走行する重量物運搬車であって、
前記複数のタイヤのうち少なくとも1つの特定タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する少なくとも1つの回転角検出器と、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記特定タイヤの外周における前記第1物理量の1単位に対応する単位回転角当たりの弧長を乗算して移動量を算出する移動量算出器と、
前記移動量算出器で算出された移動量を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記荷台に積載された重量物の積載重量に対応する第2物理量を検出する荷重検知器と、
前記荷重検知器で検出される前記第2物理量と前記特定タイヤの外周における所定回転角当たりの弧長との間の相関関係を記憶する記憶器と、
前記重量物運搬車の加減速状態を判定する加減速判定器と、を備え、
前記移動量算出器は、
前記記憶器の前記相関関係を参照し、前記荷重検知器で検出される前記第2物理量から、前記特定タイヤの外周における前記単位回転角当たりの現在の弧長を算出し、
前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記単位回転角当たりの現在の弧長を乗算して前記移動量を算出し、
前記少なくとも1つの特定タイヤは、複数の特定タイヤであり、
前記少なくとも1つの回転角検出器は、前記複数の特定タイヤの回転角をそれぞれ検出する複数の回転角検出器であり、
前記移動量算出器は、前記加減速判定器で前記重量物運搬車が所定の減速状態であると判定されたときに、前記複数の回転角検出器でそれぞれ検出された複数の回転角のうち最小値以外の値を用いて前記移動量を算出する、重量物運搬車。
【請求項4】
前記衛星測位受信機で受信された自車位置の所定時間における変化量と、前記所定時間における前記移動量算出器で算出された前記移動量との対比に基づいて、前記移動量算出器による算出過程を補正する補正器を更に備える、請求項1に記載の重量物運搬車。
【請求項5】
前記衛星測位受信機は、RTK-GNSS又は準天頂衛星システムの受信機である、請求項請求項1に記載の重量物運搬車。
【請求項6】
前記少なくとも1つの特定タイヤは、3つ以上の特定タイヤであり、
前記少なくとも1つの回転角検出器は、前記3つ以上の特定タイヤの回転角をそれぞれ検出する3つ以上の回転角検出器であり、
前記移動量算出器は、前記3つ以上の回転角検出器でそれぞれ検出された3つ以上の回転角のうち最大値及び最小値以外の値を用いて前記移動量を算出する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の重量物運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台及び前記荷台を支持する複数のタイヤを備え、前記荷台に重量物が積載された状態で前記複数のタイヤで走行する重量物運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物運搬車の例として、工場の構内で重量物(例えば、鋼材やコイル等)を積載して運搬するキャリアパレット車が知られている(例えば、特許文献1参照)。キャリアパレット車は、多くの重量物が積まれたパレットを荷台に載せて走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-75642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車等で自動運転技術の研究がなされているが、重量物運搬車についても自動運転を実現できれば、作業効率が向上する。自動運転の実現には、自車位置を高精度に認識できることが必要になる。自車位置を認識する手法としては、タイヤの回転数をタイヤの外径に乗算して得られる移動量から自車位置を特定するものがある。しかし、重量物運搬車では、タイヤに負荷される荷重が空車時と積載時とで大きく異なるため、タイヤの外径の変動が大きくなる。タイヤの外径に変動があると、自車位置の認識精度も低下してしまう。また、タイヤの外径を専用センサで検出する構成にすると、専用センサ及びその配線の追加によって部品コスト及び製造コストが増加するため好ましくない。
【0005】
そこで本発明は、重量物運搬車において、コスト増を抑制しながらも、タイヤの回転数及び外径を用いた自車位置認識の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る重量物運搬車は、荷台及び前記荷台を支持する複数のタイヤを備え、前記荷台に重量物が積載された状態で前記複数のタイヤで走行する重量物運搬車であって、前記複数のタイヤのうち少なくとも1つの特定タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する少なくとも1つの回転角検出器と、前記回転角検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記特定タイヤの外周における前記第1物理量の1単位に対応する単位回転角当たりの弧長を乗算して移動量を算出する移動量算出器と、前記移動量算出器で算出された移動量を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、前記荷台に積載された重量物の積載重量に対応する第2物理量を検出する荷重検知器と、前記荷重検知器で検出される前記第2物理量と前記特定タイヤの外周における所定回転角当たりの弧長との間の相関関係を記憶する記憶器と、を備え、前記移動量算出器は、前記記憶器の前記相関関係を参照し、前記荷重検出器で検出される前記第2物理量から、前記特定タイヤの外周における前記単位回転角当たりの現在の弧長を算出し、前記回転量検出器で検出された前記第1物理量に対し、前記単位回転角当たりの現在の弧長を乗算して前記移動量を算出する。
【0007】
前記構成によれば、積載重量が大きくてタイヤの撓みが大きくなる重量物運搬車において、積載重量が変化することでタイヤ外径が変化しても、そのタイヤ外径の変化を考慮したうえでタイヤの回転角から運搬車の移動量を算出するので、自車位置を高精度に認識できる。しかも、重量物運搬車には通常は荷重検出器が備えられているため、タイヤ外径を計測する専用センサ及びその配線を特別に設ける必要がなく、部品コスト及び製造コストの増加も防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重量物運搬車において、コスト増を抑制しながらも、タイヤの回転数及び外径を用いた自車位置認識の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、重量物運搬車の側面図である。
図2図2は、図1の重量物運搬車の走行動力システムの模式図である。
図3図3は、図1の重量物運搬車の荷台昇降システムの模式図である。
図4図4は、図1の重量物運搬車の自車位置推定システムのブロック図である。
図5図5は、図4の自車位置推定システムの推定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、重量物運搬車1の側面図である。図1に示すように、本実施形態で例示する重量物運搬車1は、いわゆるキャリアパレット車である。重量物運搬車1は、荷台2と、荷台2を支持する複数(例えば、24個)のタイヤ3とを備える。荷台2には、荷物(例えば、鋼材やコイル等)を積載した図示しないキャリアパレット(重量物)が積載される。複数のタイヤ3では、複数対のタイヤ3がそれぞれ一対ごとに車軸4で結合されている。荷台2とタイヤ3(具体的には車軸4)との間には、油圧式の昇降シリンダ5が介設されている。荷台2は、昇降シリンダ5の伸縮によって昇降する。
【0012】
タイヤ3(車軸4)は、昇降シリンダ5を介して荷台2の荷重を支持する。荷台2の前後方向の両端部には、それぞれ運転室6A,6Bが設けられている。即ち、一方向に向けて走行する場合には運転者は運転室6Aに搭乗して運転操作し、他方向に向けて走行する場合には運転者は運転室6Bに搭乗して運転操作する。なお、重量物運搬車1としてキャリアパレット車を例示したが、キャリアパレット車以外の車両(例えば、ダンプトラック車)であってもよい。
【0013】
図2は、図1の重量物運搬車1の走行動力システムの模式図である。図2に示すように、重量物運搬車1では、6列の車軸4が並んでいる。第2列及び第5列の車軸4は、駆動力が伝達される駆動軸である。第2列及び第5列の車軸4(駆動軸)には、それぞれ油圧モータ13が接続されている。他の車軸4は、駆動力が伝達されない非駆動軸(従動軸)である。具体的には、第1列及び第6列の車軸4は、制動力を付与可能なブレーキ軸であり、第3列及び第4列の車軸4は、駆動力も制動力も付与されない遊動軸である。
【0014】
重量物運搬車1は、駆動力を発生する原動機としてエンジン10を備える。エンジン10は、ギヤボックス11を介して一対の油圧ポンプ12を駆動する。油圧ポンプ12は、油圧配管14を介して油圧モータ13に接続されている。即ち、油圧ポンプ12で発生した油圧は、油圧配管14を介して油圧モータ13に伝達され、それにより油圧モータ13が車軸4(駆動軸)を駆動する。油圧モータ13のドレンポートは、ドレン配管15を介して作動油タンク16に接続されている。
【0015】
4つの油圧モータ13には、それぞれ第1~第4回転角センサ17A~Dが内蔵されている。第1~第4回転角センサ17A~Dは、それが内蔵された油圧モータ13の回転数を検出することで、油圧モータ13が駆動する車軸4及びタイヤ3(特定タイヤ)の回転数を検出する。具体的には、第1~第4回転角センサ17A~Dは、油圧モータ13が回転するときに所定の回転角ごとにパルス信号を出力する。即ち、第1~第4回転角センサ17A~Dが出力するパルス信号の数によって、第1~第4回転角センサ17A~Dに対応するタイヤ3(特定タイヤ)が実際に回転した回転角(第1物理量)を知ることができる。
【0016】
なお、タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する回転角検出器として、油圧モータに内蔵された回転角センサを例示したが、タイヤの回転角を把握可能なものであれば他のものであってもよい。例えば、ダンプトラック車の場合、タイヤの回転角に対応する第1物理量を検出する回転角検出器として、車軸、車軸に結合されたドライブシャフト、又は、車軸にドライブシャフトを介して駆動力を出力する出力軸の回転角を検出する回転角センサを用いることができる。
【0017】
図3は、図1の重量物運搬車1の荷台昇降システムの模式図である。図3に示すように、第1~第3列の車幅方向一方側の車軸4に対応する昇降シリンダ5(No.1、No.3及びNo.5)には、第1油圧配管22Aを介して油圧ポンプ21が接続されている。第4~第6列の車幅方向一方側の車軸4に対応する昇降シリンダ5(No.7、No.9及びNo.11)には、第2油圧配管22Bを介して油圧ポンプ21が接続されている。第1~第3列の車幅方向他方側の車軸4に対応する昇降シリンダ5(No.2、No.4及びNo.6)には、第3油圧配管22Cを介して油圧ポンプ21が接続されている。第4~第6列の車幅方向他方側の車軸4に対応する昇降シリンダ5(No.8、No.10及びNo.12)には、第4油圧配管22Dを介して油圧ポンプ21が接続されている。
【0018】
第1油圧配管22Aには、第1切換弁23Aが介設されており、第2油圧配管22Bには、第2切換弁23Bが介設されており、第3油圧配管22Cには、第3切換弁23Cが介設されており、第4油圧配管22Dには、第4切換弁23Dが介設されている。第1~第4切換弁23A~Dは、油圧ポンプ21からの油圧を昇降シリンダ5に供給して昇降シリンダ5を伸長させる位置と、昇降シリンダ5を収縮させるようにドレンする位置と、昇降シリンダ5を停止させる位置との間で動作する。即ち、第1~第4切換弁23A~Dを制御することで、昇降シリンダ5が伸縮して荷台2が昇降する。
【0019】
第1油圧配管22Aには、昇降シリンダ5と第1切換弁23Aとの間に第1圧力センサ24Aが接続されている。第2油圧配管22Bには、昇降シリンダ5と第2切換弁23Bとの間に第2圧力センサ24Bが接続されている。第3油圧配管22Cには、昇降シリンダ5と第2切換弁23Cとの間に第3圧力センサ24Cが接続されている。第4油圧配管22Dには、昇降シリンダ5と第2切換弁23Dとの間に第4圧力センサ24Dが接続されている。
【0020】
第1圧力センサ24Aは、No.1、No.3及びNo.5の昇降シリンダ5が荷台2を支持する圧力(第2物理量)を検出し、第2圧力センサ24Bは、No.7、No.9及びNo.11の昇降シリンダ5が荷台2を支持する圧力(第2物理量)を検出し、第3圧力センサ24Cは、No.2、No.4及びNo.6の昇降シリンダ5が荷台2を支持する圧力(第2物理量)を検出し、第4圧力センサ24Dは、No.8、No.10及びNo.12の昇降シリンダ5が荷台2を支持する圧力(第2物理量)を検出する。即ち、第1~第4圧力センサ24A~Dの検出する圧力が、荷台2の積載重量に対応(比例)している。
【0021】
なお、荷台2に積載された重量物の積載重量に対応する第2物理量を検出する荷重検知器として、荷台2を下方から支持する昇降シリンダ5の圧力を検出する圧力センサを例示したが、積載重量を把握可能なものであれば他のもの(例えば、荷台と当該荷台を支持する装置との間に介在させたロードセル等)であってもよい。
【0022】
図4は、図1の重量物運搬車1の自車位置推定システムのブロック図である。図4に示すように、重量物運搬車1は、演算処理装置30を備える。演算処理装置30の入力側には、自動運転装置25、第1~第4圧力センサ24A~D、第1~第4回転角センサ17A~D、ジャイロセンサ27、衛星測位受信機26等が接続されている。演算処理装置30の出力側には、自動運転装置25が接続されている。なお、図4では自動運転装置25を入力側と出力側とにそれぞれ分けて記載したが実質的には同じものである。
【0023】
自動運転装置25は、自車位置、周辺環境、運転計画等に基づいて重量物運搬車1を自動で走行させるように、エンジン10、進行方向(前進又は後進)の切換装置(図示せず)、操舵装置(図示せず)、ブレーキ装置(図示せず)等を制御する。衛星測位受信機26は、衛星測位システムにより位置情報を受信する。衛星測位受信機26には、RTK-GNSS又は準天頂衛星システムの受信機が用いられると好適である。
【0024】
演算処理装置30は、ハードウェア面において、プロセッサ、記憶装置及びI/Oインターフェース等を有する。演算処理装置30は、ソフトウェア面において、加減速判定部31(加減速判定器)、積載重量算出部32、回転角算出部33、移動方向算出部39、位置情報算出部34、受信状態判定部35、移動量算出部36(移動量算出部)、補正部37(補正器)、自車位置推定部38(自車位置推定器)等を有する。各部31~48は、記憶装置に保存されたプログラムに基づいてプロセッサが演算処理することで実現される。
【0025】
加減速判定部31は、自動運転装置25の指令から重量物運搬車1が加速状態であるか減速状態であるかを判定する。なお、加減速判定部31は、重量物運搬車1の加減速状態が分かるものであれば、他の情報に基づいて判定してもよい。
【0026】
積載重量算出部32は、第1~第4圧力センサ24A~Dで検出される圧力の合計と荷台2に積載された重量物の積載重量との間の関係を表す所定の算出式に基づいて、第1~第4圧力センサ24A~Dで検出される圧力から積載重量を算出する。
【0027】
回転角算出部33は、第1~第4回転角センサ17A~Dで検出されるパルス信号に基づいて各時刻でのタイヤ3の回転角を算出する。回転角算出部33は、第1~第4回転角センサ17A~Dの各検出値から算出される各回転角を平均した値をタイヤ3の回転角として算出してもよいが、他の算出方法を用いてもよい。例えば、回転角算出部33は、加減速判定部31で重量物運搬車1が加速状態であると判定されたときに、第1~第4回転角センサ17A~Dで検出された各回転角のうち最大値以外の値をタイヤ3の回転角として算出してもよい。或いは、回転角算出部33は、加減速判定部31で重量物運搬車1が減速状態であると判定されたときに、第1~第4回転角センサ17A~Dで検出された各回転角のうち最小値以外の値をタイヤ3の回転角として算出してもよい。或いは、回転角算出部33は、第1~第4回転角センサ17A~Dで検出された各回転角のうち最大値及び最小値以外の値をタイヤ3の回転角として算出してもよい。
【0028】
移動方向算出部39は、ジャイロセンサ27の検出信号に基づいて重量物運搬車1の各時刻での移動方向を算出する。位置情報算出部34は、衛星測位受信機26が受信した情報に基づいて重量物運搬車1の位置情報を算出する。受信状態判定部35は、衛星測位受信機26が受信した情報に基づいて衛星測位受信機26の受信状態が所定の良好状態であるか所定の不良状態であるかを判定する。
【0029】
移動量算出部36は、回転角算出部33で算出された回転角に対し、特定タイヤ3の外周における回転角の1単位(単位回転角)当たりの弧長を乗算して移動量(走行距離)を算出する。移動量算出部36は、相関関係記憶装置41(記憶器)に記憶された相関関係を参照する。相関関係記憶装置41に記憶された相関関係は、特定タイヤ3の外周における単位回転角(回転角の1単位)当たりの弧長と、積載重量算出部32で算出される積載重量と、の間の関係である。
【0030】
重量物運搬車1に用いられるタイヤ3の規定外径は予め決まっているが、積載重量が増加するとタイヤ3に負荷される荷重が増加し、路面を転がるタイヤ3の外径が実質的に減少する。そのため、相関関係記憶装置41に予め保存された相関関係は、積載重量算出部32で算出される積載重量Wが増加すると、特定タイヤ3の外周における単位回転角当たりの弧長Lが減少するように設定されている。なお、相関関係記憶装置41が記憶する相関関係は、積載重量W(i)と弧長L(i)との間の複数の対応関係のテーブルでもよいし、積載重量Wから弧長Lを求める式でもよい。
【0031】
移動量算出部36は、相関関係記憶装置41に記憶された相関関係を参照し、積載重量算出部32で算出された積載重量から、タイヤ3の外周における単位回転角当たりの現在の弧長を算出する。そして、移動量算出部36は、回転角算出部33で算出された回転角に対し、前記単位回転角当たりの現在の弧長を乗算することで、移動量を算出する。
【0032】
自車位置推定部38は、移動方向算出部39で算出された各時刻での移動方向を参照し、移動量算出部36で算出された各時刻での移動量から自車位置を特定(推定)可能に構成されている。また、自車位置推定部38は、地図情報記憶装置42に記憶された地図情報を参照し、位置情報算出部34で算出された位置情報から自車位置を特定(推定)可能に構成されている。本実施形態では、自車位置推定部38は、移動量算出部36で算出される移動量と、位置情報算出部34で算出される位置情報とに基づいて、自車位置を特定(推定)する。
【0033】
具体的には、自車位置推定部38は、受信状態判定部35にて衛星測位受信機26の受信状態が所定の不良状態であると判定されるときは、移動量算出部36で算出される移動量を用いて自車位置を特定する。自車位置推定部38は、受信状態判定部35で衛星測位受信機26の受信状態が所定の良好状態であると判定されるときは、位置情報算出部34で算出された位置情報を用いて自車位置を特定しながら、衛星測位受信機26のサンプリング間隔の空白区間では移動量算出部36で算出された移動量を用いて自車位置を特定(補間)する。
【0034】
補正部37は、受信状態判定部35で受信状態が良好であると判定されるときに位置情報算出部34で算出された自車位置の所定時間Tにおける変化量Dsの、前記所定時間Tにおける移動量算出部36で算出された移動量Dpに対する比を補正係数αとして求める(α=Ds/Dp)。そして、補正部37は、相関関係記憶装置41に記憶された、現在の積載重量Wに対応する弧長Lに補正係数αを乗じて補正する(L=L・α)。このように、補正部37は、補正係数αを用いることで移動量算出部36による算出過程を補正する。
【0035】
なお、補正部37は、相関関係記憶装置41に記憶された相関関係自体を更新する代わりに、移動量算出部36が相関関係記憶装置41から弧長Lを読み出すたびに、読み出された弧長Lに対して補正係数αを乗じるようにしてもよい。
【0036】
図5は、図4の自車位置推定システムの推定処理のフローチャートである。以下、図1~4を適宜参照しながら図5の流れに沿って処理を説明する。演算処理装置30では、積載重量算出部32が、第1~第4圧力センサ24A~Dの検出値から積載重量を算出する(ステップS1)。状態回転角算出部33が、第1~第4回転角センサ17A~Dのうち少なくとも1つの検出値からタイヤ3の回転角を算出する(ステップS2)。
【0037】
移動量算出部36は、相関関係記憶装置41(記憶器)に記憶された相関関係を参照し、積載重量算出部32で算出された積載重量から、タイヤ3の外周における単位回転角当たりの現在の弧長Lを算出する(ステップS3)。移動量算出部36は、移動量Dpを算出する(ステップS4)。
【0038】
受信状態判定部35は、衛星測位受信機26が受信した情報に基づいて衛星測位受信機26の受信状態が所定の良好状態であるか否かを判定する(ステップS5)。受信状態判定部35で衛星測位受信機26の受信状態が良好状態ではないと判定されると(ステップS5:N)、ステップS4において移動量算出部36で算出される移動量を用いて自車位置を推定する(ステップS6)。
【0039】
他方、受信状態判定部35で衛星測位受信機26の受信状態が良好状態であると判定されると(ステップS5:Y)、自車位置推定部38は、現在が衛星測位受信機26のサンプリング時期であるか否かを判定する(ステップS7)。現在が衛星測位受信機26のサンプリング時期であると判定されると(ステップS7:Y)、衛星測位受信機26の受信情報に基づいて位置情報算出部34で算出された位置情報を用いて自車位置を推定する(ステップS8)。
【0040】
他方、現在が衛星測位受信機26のサンプリング時期ではなく空白期間であると判定されると(ステップS7:N)、移動量算出部36で算出された移動量を用いて自車位置を推定(補間)する(ステップS9)。補正部37は、受信状態判定部35で受信状態が良好であると判定されるときに、前記した補正係数αを求める(ステップS10)。なお、ステップS10では、相関関係記憶装置41に記憶された相関関係自体を更新することで、移動量算出部36による算出過程の補正が行われてもよいし、相関関係記憶装置41から読み出された単位回転角当たりの弧長Lに補正係数αを乗じることで、移動量算出部36による算出過程の補正が行われてもよい。
【0041】
以上に説明した構成によれば、積載重量が大きくてタイヤ3の撓みが大きくなる重量物運搬車1において、積載重量が変化することでタイヤ3の外径が変化しても、そのタイヤ3の外径の変化を考慮したうえでタイヤ3の回転角から重量物運搬車1の移動量Dpを算出するので、自車位置を高精度に認識できる。しかも、重量物運搬車1には通常は荷重検出器(第1圧力センサ24A及び第2圧力センサ24B)が備えられているため、タイヤ3の外径を計測する専用センサ及びその配線を特別に設ける必要がなく、部品コスト及び製造コストの増加も防止できる。
【0042】
また、自車位置推定部38は、移動量算出部36で算出された移動量Dpと、衛星測位受信機26の受信情報から位置情報算出部34で算出された位置情報との両方を用いて自車位置を推定するので、自車位置を高精度に認識できる。
【0043】
また、自車位置推定部38は、移動量算出部36で算出された移動量Dpを用いた自車位置の推定と、衛星測位受信機26で検出された位置情報を用いた自車位置の推定とを好適に使い分けるので、自車位置を高精度に認識できる。また、衛星測位受信機26は、RTK-GNSS又は準天頂衛星システムの受信機であるので、自車位置の検出精度を良好にできる。
【0044】
また、移動量算出部36による算出過程が補正係数αで補正されるので、移動量算出部36による移動量Dpの算出精度を高めることができる。よって、衛星測位受信機26で受信された自車位置の時間変化量Dsと移動量算出部36で算出された移動量Dpとの対比に基づいて補正係数αを決定することで、現在のタイヤ空気圧を反映した正確なタイヤ外径に基づいて移動量算出部36を用いた自車位置推定を行うことができる。
【0045】
また、移動量算出部36は、加減速判定部31で重量物運搬車1が所定の加速状態であると判定されたときに、第1~第4回転角センサ17A~Dでそれぞれ検出された複数の回転角のうち最大値以外の値を用いて移動量を算出すれば、車両加速時に特定タイヤ3の1つが地面に対してスリップして回転角が増加しても、その増加した回転角は移動量算出のために参照されず、スリップが発生しても自車位置を高精度に認識できる。
【0046】
また、移動量算出部36は、加減速判定部31で重量物運搬車1が所定の減速状態であると判定されたときに、第1~第4回転角センサ17A~Dでそれぞれ検出された複数の回転角のうち最小値以外の値を用いて移動量を算出すれば、車両減速時に特定タイヤ3の1つが地面に対してロックして回転角が減少しても、その減少した回転角は移動量算出のために参照されず、ロックが発生しても自車位置を高精度に認識できる。
【0047】
また、移動量算出部36は、第1~第4回転角センサ17A~Dでそれぞれ検出される複数の回転角のうち最大値及び最小値以外の値を用いて移動量を算出すれば、エラーの可能性が高い最大値及び最小値を除外して移動量が算出されるので、自車位置を高精度に認識できる。
【符号の説明】
【0048】
1 重量物運搬車
2 荷台
3 タイヤ
17A 第1回転角センサ(回転角検出器)
17B 第2回転角センサ(回転角検出器)
17C 第3回転角センサ(回転角検出器)
17D 第4回転角センサ(回転角検出器)
24A 第1圧力センサ(荷重検知器)
24B 第2圧力センサ(荷重検知器)
26 衛星測位受信機
31 加減速判定部(加減速判定器)
36 移動量算出部(移動量算出器)
37 補正部(補正器)
38 自車位置推定部(自車位置推定器)
41 相関関係記憶装置(記憶器)
図1
図2
図3
図4
図5