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特許7205836高耐熱性ポリカーボネートエステル及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】高耐熱性ポリカーボネートエステル及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/64 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
C08G63/64
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020506346
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018010427
(87)【国際公開番号】W WO2019066292
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0125987
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0100605
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オウ, クワン セイ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117872(WO,A1)
【文献】特表2016-525610(JP,A)
【文献】特開2017-075255(JP,A)
【文献】特開2015-025111(JP,A)
【文献】特開2017-008328(JP,A)
【文献】特開2014-040517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式1で表される繰り返し単位1、
下記の式2で表される繰り返し単位2、及び
下記の式3で表される繰り返し単位3
を含み、
ジフェニルエステル化合物に由来する構造単位を更に含み、
前記ジフェニルエステル化合物が、第一級、第二級若しくは第三級ジカルボキシレート又はジカルボン酸とフェノール又はフェノール置換基との反応物であり、
前記繰り返し単位1~3のモル分率がそれぞれx、y及びzである場合、xが0を超え1未満の実数であり、yが0を超え0.7までの実数であり、zが0を超え0.6までの実数であり、前記ジフェニルエステル化合物のモル比がpである場合、前記繰り返し単位1~3のモル比が1-pであり、0≦p<1である、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル。
【化1】
【請求項2】
前記繰り返し単位1が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネートとの反応により得られ、前記繰り返し単位2が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの反応により得られ、前記繰り返し単位3が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレートとの反応により得られる、請求項1に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項3】
前記繰り返し単位1~3から構成されており、x+y+zが1である、請求項1に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項4】
160~240℃のガラス転移温度を有し、
260℃で2.16kgの荷重下で測定した場合、5~150g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項5】
(1)下記の式4で表される化合物を、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体に変換した後、フェノール若しくはフェノール置換基との求核反応をすること、又は下記の式4で表される化合物にフェノール若しくはフェノール置換基とのエステル交換反応若しくはエステル化反応を施すことにより、下記の式5で表される化合物を調製するステップ、並びに
(2)下記の式5~7で表される化合物とジフェニルエステル化合物と1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとに溶融重縮合反応を施して、下記の式1~3で表される繰り返し単位1~3及び前記ジフェニルエステル化合物に由来する構造単位を含有する化合物を調製するステップ
を含み、
前記ジフェニルエステル化合物が、第一級、第二級若しくは第三級ジカルボキシレート又はジカルボン酸をフェノール又はフェノール置換基と反応させることにより調製され、
前記繰り返し単位1~3のモル分率が、それぞれx、y及びzである場合、xが0を超え1未満の実数であり、yが0を超え0.7までの実数であり、zが0を超え0.6までの実数であり、前記ジフェニルエステル化合物のモル比がpである場合、前記式5~7で表される化合物のモル比が1-pであり、0≦p<1である、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【化2】

[式中、Rはメチル又は水素であり、
及びRはそれぞれ、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であって、前記アリール基が、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有してもよい。]
【請求項6】
前記高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルが前記繰り返し単位1~3から構成されており、x+y+zが1である、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項7】
末端にハロゲン官能基を有する前記中間反応体が、下記の式8で表される化合物である、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【化3】

[式中、Rがそれぞれ独立にF、Cl又はBrである。]
【請求項8】
前記ステップ(1)の求核反応における、前記式8で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比が1:1~5である、請求項7に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項9】
末端にハロゲン官能基を有する前記中間反応体が、前記式4で表される化合物をハロゲン化化合物と反応させることにより調製され、
前記ハロゲン化化合物が、ホスゲン、トリホスゲン、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、五臭化リン及びフッ化シアヌルからなる群から選択される、少なくとも1種である、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項10】
前記ステップ(2)における、前記中間反応体への変換が、大気圧下で-30~150℃の温度で5分間~48時間実施される、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項11】
前記式7で表される化合物がジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートである、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項12】
前記ステップ(1)のエステル交換反応又はエステル化反応が20~300℃で実施される、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項13】
前記ステップ(1)のエステル交換反応又はエステル化反応における、前記式4で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比が1:2~40である、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【請求項14】
前記ステップ(2)における溶融重縮合反応が、
(2-1)50~700torrの減圧下で130~250℃の温度で0.1~10時間の、第1の反応ステップ、及び
(2-2)0.1~20torrの減圧下で200~350℃の温度で0.1~10時間の、第2の反応ステップを含む、請求項5に記載の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル及びそれを調製するための方法に関する。より詳細には、このポリカーボネートエステルは、耐熱性、透明性及び加工性に優れている。
【背景技術】
【0002】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネート又は1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの溶融重縮合により調製されたバイオベースポリカーボネートエステルは、バイオマスに由来するバイオベースモノマー、すなわち1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含有するバイオプラスチックである。バイオベースポリカーボネートエステルは、PMMA(ポリ(メタクリル酸メチル))の高透明性及びビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートの高耐熱性を有する。
【0003】
そのようなバイオベースポリカーボネートエステルの構造上の特徴は、それが環境ホルモンの原因であるBPAを含まない点にある。また、脂肪族環の分子構造を有する1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートモノマーを共重合させることにより、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの分子構造に起因する低延性を改善することも可能である。更に、カーボネート結合の一部をエステル結合で置き換えることにより、カーボネート結合の欠点を埋め合わせることも可能である。
【0004】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは2種のヒドロキシル基の相対的配置に応じて異なった化学的特性を有する、下記の3種の立体異性体:下記の式aで表されるイソマンニド(融点:81~85℃)、下記の式bで表されるイソソルビド(融点:61~62℃)、及び下記の式cで表されるイソイジド(融点:64℃)を有する。
【0005】
【化1】
【0006】
特に、代表的な透明なエンジニアプラスチックであるポリカーボネートを調製するためのモノマーとして、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを使用する場合、このように調製されたポリカーボネートは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの量は少ないが、その分子の構造上の特徴、すなわち剛直な縮合複素環の立体構造が原因で、バイオプラスチックの利点とともに、高耐熱性及び透明性、並びに優れた表面硬度、UV安定性、難燃性及び耐薬品性を有している。これらの利点により、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはバイオプラスチックを開発するための代表的な原材料としてその適用分野を拡大している。
【0007】
また、1,4-ジメチル-シクロヘキサンジカルボキシレート(DMCD)、又はDMCDの加水分解生成物である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)は、その分子中心にシクロヘキサン環構造を有する。したがって、それがポリマー鎖に組み込まれる場合、分子構造の柔軟性及び硬度の独自の組合せのため、ポリマーのUV安定性及び耐候性だけでなく、光沢保持性、耐黄変性、加水分解安定性、耐腐食性及び耐薬品性等のポリマーの特性も改善することが可能である。更に、DMCD又はCHDAは下記の式dで表されるシス及びトランス型の異性体混合物から構成されている。市販のDMCDのシス/トランス比は約80/20%である。ポリマー鎖にDMCD又はCHDAとしてそのような脂肪族環構造が存在する場合、脂肪族環の分子のフリップ運動に起因するポリマーの二次的な機械的緩和が起こり、それによってポリマーの機械的特性が改善する。特に、このことにはポリマーの衝撃強さが増強される利点がある。
【0008】
【化2】
【0009】
また、近年、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上で、自動車、電子機器、産業用照明及び医療用途等の多様な分野で利用できる高耐熱性材料が開発されており、その需要が高まっている。一方、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネート又は1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの溶融重縮合により調製されたバイオベースポリカーボネートエステルは、Tgが170℃以下であり、高耐熱性材料として使用するためにはその耐熱性の増強が必要である。
【0010】
BPAポリカーボネートの耐熱性を増強させるために、嵩高く剛直な構造をもつ多様なモノマーを使用した共重合ポリカーボネートが開発されている。しかし、嵩高く剛直な構造を有するモノマーは、合成することが困難で複雑であるため、高価である。更に、耐熱性を十分に増強するために大量のBPAを置換することが必要であり、これによりBPAポリカーボネートの優れた機械的特徴並びに透明性及び流動性を損なうという問題が発生する。
【発明の開示】
【技術的問題】
【0011】
したがって、本発明の一目的は、耐熱性及び経済的な効率の増強に対処し、バイオベースポリカーボネートエステルの高透明性を維持し、同時に高流動性をも実現することができる安価な原材料から調製された高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル並びにそれを調製するための方法を提供することである。
【問題への解決策】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、
下記の式1で表される繰り返し単位1、
下記の式2で表される繰り返し単位2、及び
下記の式3で表される繰り返し単位3を含む、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを提供する。
【0013】
【化3】
【0014】
更に、本発明は、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法であって、
(1)下記の式4で表される化合物を、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体に変換した後、フェノール若しくはフェノール置換基との求核反応をすること、又は下記の式4で表される化合物にフェノール若しくはフェノール置換基とのエステル交換反応若しくはエステル化反応を施すことにより、下記の式5で表される化合物を調製するステップ、並びに
(2)下記の式5~7で表される化合物と1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとに溶融重縮合反応を施して、下記の式1~3で表される繰り返し単位1~3を含有する化合物を調製するステップを含む方法を提供する。
【0015】
【化4】
【0016】
上記の式中、Rはメチル又は水素であり、R及びRはそれぞれ、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であって、アリール基が1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有してもよい。
【発明の有利な効果】
【0017】
本発明の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、ガラス転移温度が160℃以上であるので、優れた耐熱性を有し、透明性及び加工性に優れ、ビスフェノールを含まないので環境に優しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル
本発明は、下記の式1で表される繰り返し単位1、下記の式2で表される繰り返し単位2、及び下記の式3で表される繰り返し単位3を含む、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを提供する。
【0020】
【化5】
【0021】
繰り返し単位1は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネートとの反応から得てもよく、繰り返し単位2は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの反応から得てもよく、繰り返し単位3は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレートとの反応から得てもよい。
【0022】
繰り返し単位2における1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートのシス/トランス比は、1/99~99/1%、20/80~80/20%、又は30/70~70/30%でもよい。
【0023】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド又はイソイジドでもよい。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドでもよい。
【0024】
詳細には、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、繰り返し単位1~3から構成されている。繰り返し単位1~3のモル分率が、それぞれx、y及びzである場合、xは0を超え1未満の実数であり、yは0を超え0.7までの実数であり、zは0を超え0.6までの実数であり、x+y+zは1でもよい。より詳細には、xは0を超え0.9まで、又は0を超え0.8までの実数であり、yは0を超え0.6まで、又は0を超え0.5までの実数であり、zは0を超え0.5まで、又は0を超え0.4までの実数であり、x+y+zは1でもよい。
【0025】
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、160~240℃のガラス転移温度(Tg)、及び260℃で2.16kgの荷重下で測定した場合、5~150g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有してもよい。詳細には、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、170~220℃又は180~200℃のTg、及び260℃で2.16kgの荷重下で測定した場合、10~100g/10分又は15~50g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有してもよい。
【0026】
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、0.3~2.3dL/gの固有粘度(IV)を有してもよい。
【0027】
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法
更に、本発明は、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法であって、
(1)下記の式4で表される化合物を、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体に変換した後、フェノール若しくはフェノール置換基との求核反応をすること、又は下記の式4で表される化合物にフェノール若しくはフェノール置換基とのエステル交換反応若しくはエステル化反応を施して、下記の式5で表される化合物を調製するステップ、並びに
(2)下記の式5~7で表される化合物と1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとに溶融重縮合反応を施して、下記の式1~3で表される繰り返し単位1~3を含有する化合物を調製するステップを含む方法を提供する。
【0028】
【化6】
【0029】
上記の式中、Rはメチル又は水素であり、R及びRはそれぞれ、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であって、アリール基が1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有してもよい。ここで、エステル置換基は1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルエステル、又は6~18個の炭素原子を有するアリールエステルでもよい。
【0030】
ステップ(1)
本ステップでは、上記の式4で表される化合物を、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体に変換した後、フェノール若しくはフェノール置換基との求核反応をすること、又は上記の式4で表される化合物にフェノール若しくはフェノール置換基とのエステル交換反応若しくはエステル化反応を施すことにより、上記の式5で表される化合物を調製する。
【0031】
フェノール置換基は、下記の式9で表される化合物でもよい。
【0032】
【化7】
【0033】
上記の式9中、Rは1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、又はエステル置換基である。ここで、エステル置換基は1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルエステル、又は6~18個の炭素原子を有するアリールエステルでもよい。
【0034】
中間反応体
末端にハロゲン官能基を有する中間反応体は、下記の式8で表される化合物でもよい。
【0035】
【化8】
【0036】
上記の式8中、Rはそれぞれ独立にF、Cl又はBrである。
【0037】
詳細には、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体は、RがClである塩化テレフタロイル(TPC)でもよい。
【0038】
更に、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体は、上記の式4で表される化合物(ジカルボキシレート又はジカルボン酸)をハロゲン化化合物と反応させることにより調製してもよい。
【0039】
ハロゲン化化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、五臭化リン及びフッ化シアヌルからなる群から選択される、少なくとも1種でもよい。詳細には、ハロゲン化化合物は、反応副生成物を容易に除去することができる、ホスゲン、塩化チオニル及び塩化オキサリルからなる群から選択される、少なくとも1種の塩素化剤であってもよい。更に、ハロゲン化化合物は商業上の観点から見てホスゲンであることが好ましい場合がある。
【0040】
添加するハロゲン化化合物の量は、最初に利用された上記の式4の化合物のモル量の1~10倍、1.5~7.5倍又は2~5倍でもよい。
【0041】
反応条件及び中間反応体への変換にかかる時間は、上記の式4の化合物及びハロゲン化化合物の種類に応じて変動してもよい。詳細には、中間反応体への変換は大気圧下で-30~150℃の温度で5分間~48時間実施してもよい。より詳細には、中間反応体への変換は大気圧下で20~100℃又は40~80℃の温度で10分間~24時間実施してもよい。
【0042】
中間反応体への変換では、上記の式4の化合物を溶解又は分散するために有機溶剤を使用してもよい。このとき、使用してもよい有機溶剤は、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等でもよい。
【0043】
中間反応体の変換率及び反応収率を増加させるために、上記の式4の化合物及び中間反応体への変換で使用されるハロゲン化化合物の種類に応じて触媒を使用してもよい。この目的を満たすのであれば、触媒の種類に特に制限はない。使用してもよい有機触媒には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素及びテトラブチル尿素が含まれる。無機触媒には、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化鉄(FeCl)、塩化ビスマス(BiCl)、塩化ガリウム(GaCl)、五塩化アンチモン(SbCl)、三フッ化ホウ素(BF)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(Bi(OTf))、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四臭化チタン(TiBR)及び四臭化ジルコニウム(ZrBR)を含んでもよい。中でも、ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素、又はジメチルイミダゾリジノンは有機触媒として使用してもよく、塩化アルミニウム又は四塩化チタンは無機触媒として使用してもよい。更に、ジメチルホルムアミドは商業的に好ましい有機触媒として使用してもよく、塩化アルミニウムは商業的に好ましい無機触媒として使用してもよい。
【0044】
中間反応体への変換で使用される触媒の量に特に制限はないが、上記の式4の化合物及びハロゲン化化合物の種類に応じて変動する。詳細には、中間反応体への変換で使用される触媒の量は、最初に利用された上記の式4の化合物の総モル量に対して、0を超え10モル%まで、0を超え5モル%まで、0を超え3モル%までの範囲でもよい。中間反応体への変換で使用される触媒の量が上記の範囲内である場合、反応速度が低下し、暴走反応及び発熱反応が誘発されるという問題を防止することが可能である。
【0045】
上記のステップ(1)で、上記の式4でRが水素である場合はテレフタル酸(TPA)、又は上記の式4でRがメチルである場合はジメチルテレフタル酸(DMT)が、末端にハロゲン官能基を有する中間反応体としてTPCに変換され、続いてフェノール又はフェノール置換基と反応して、上記の式5で表されるテレフタル酸ジフェニル(DPT)が調製される(下記の反応スキーム1参照、ただしMeはメチル、Phはフェニル基である)。
【0046】
【化9】
【0047】
上記の求核反応における、上記の式8で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比は、1:1~5でもよい。詳細には、上記の求核反応における、上記の式8で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比は、1:2~3でもよい。上記の求核反応における、上記の式8で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比が上記の範囲内である場合、過剰な量のフェノール又はフェノール置換基を使用することにより引き起こされるおそれがある、上記の式5で表される化合物(DPT)の最終的な収率が減少するという問題を防止することが可能である。
【0048】
エステル交換反応又はエステル化反応
更に、上記のステップ(1)で、上記の式4でRが水素である場合はTPA、又は上記の式4でRがメチルである場合はDMTが、フェノール又はフェノール置換基とのエステル交換反応又はエステル化反応にかけられて、上記の式5で表される化合物が調製される(上記の反応スキーム1参照)。
【0049】
エステル交換反応又はエステル化反応は20~300℃で実施してもよい。詳細には、エステル交換反応又はエステル化反応は大気圧下で50~250℃若しくは100~200℃で、又は0.1~10kgf/cm若しくは1~5kgf/cmの圧力下で50~300℃で実施してもよい。
【0050】
エステル交換反応又はエステル化反応は5分間~48時間又は10分間~24時間実施してもよい。
【0051】
エステル交換反応又はエステル化反応における、上記の式4で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比は、1:2~40でもよい。詳細には、エステル交換反応又はエステル化反応における、上記の式4で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比は、1:3~30又は1:4~20でもよい。上記の式4で表される化合物対フェノール又はフェノール置換基のモル比が上記の範囲内である場合、少量のフェノール又はフェノール置換基を使用することにより引き起こされるおそれがある、上記の式5で表される化合物の最終的な収率が減少するという問題を防止することが可能である。
【0052】
ステップ(2)
このステップで、下記の式5~7で表される化合物と1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとは溶融重縮合反応にかけられて、下記の式1~3で表される繰り返し単位1~3を含有する化合物が調製される。
【0053】
【化10】
【0054】
上記の式中、R及びRはそれぞれ、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であって、アリール基が1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有してもよい。ここで、エステル置換基は1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルエステル、又は6~18個の炭素原子を有するアリールエステルでもよい。
【0055】
上記の式6で表される化合物のシス/トランス比は、1/99~99/1%、10/90~90/10%、又は20/80~80/20%でもよい。更に、繰り返し単位2における1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートのシス/トランス比は1/99~99/1%、20/80~80/20%、又は30/70~70/30%でもよい。
【0056】
上記の式7で表される化合物はジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、又はビス(メチルサリチル)カーボネートでもよい。
【0057】
詳細には、上記の溶融重縮合反応は減圧下で実施されるので、上記の式7で表される化合物としてジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートを使用してもよい。置換ジフェニルカーボネートはジトリルカーボネート又はビス(メチルサリチル)カーボネートでもよい。
【0058】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド又はイソイジドでもよい。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドでもよい。
【0059】
また、このように調製された高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルの耐熱性、透明性及び機械的特性を増強するために、溶融重縮合で使用される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを高純度に維持することが非常に重要である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは粉末、フレーク又は水溶液の形態でもよい。しかし、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは長時間空気に曝露される場合、容易に酸化し変色し、最終的なポリマーの色彩及び分子量が満足なものではなくなるという問題が発生するおそれがある。したがって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの空気への曝露を最小限に抑えることが必要である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがいったん空気に曝露されると、酸素吸収剤等の脱酸剤とともに保管されることが好ましい。更に、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール調製の多段階工程において生成した、内部に含有されている不純物を除去することにより、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを精製することが、その純度を維持するために非常に重要である。詳細には、蒸留による1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの精製において、最初の分離により除去できる微量レベルの酸性液体成分、及び残留物分離により除去できるアルカリ金属成分を除去することが不可欠である。酸性液体成分及びアルカリ金属成分は、それぞれ10ppm以下、5ppm以下又は3ppm以下のレベルに保ち得る。
【0060】
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステル
高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、上記の繰り返し単位1~3から構成されてもよい。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと上記の式7で表される化合物とを反応させて、カーボネート結合(繰り返し単位1、式1)を形成してもよく、1,4:3,6-ジアンヒドロキシヘキシトール(dianhydroxyhexitol)と上記の式6で表される化合物とを反応させて、エステル結合(繰り返し単位2、式2)を形成してもよく、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと上記の式5で表される化合物を反応させて、エステル結合(繰り返し単位3、式3)を形成してもよい。
【0061】
このとき、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのモル分率が1であり、上記の式7で表される化合物のモル分率がxであり、上記の式6で表される化合物(1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、DPCD)のモル分率がyであり、上記の式5で表される化合物(DPT)のモル分率がzである場合、x+y+z=1である(下記の反応スキーム2参照、ただしPhはフェニル基である)。
【0062】
【化11】
【0063】
詳細には、上記の式5及び6で表される化合物の量が0である場合、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとジフェニルカーボネート(式7)との溶融重縮合により調製されたポリカーボネートはTgが163℃である。ここで、上記の式5及び6で表される化合物の量が増加する場合、ポリマー鎖中のエステル結合は増加する。上記の式5で表される化合物の量が1である場合、Tgが215℃であるポリエステルが調製される。上記の式6で表される化合物の量が1である場合、Tgが132℃のポリエステルが調製される。
【0064】
それゆえ、上記の式2及び3で表される繰り返し単位2及び3の含有量並びにポリマー鎖に含有されているカーボネート及びエステル結合の数は、上記の式5及び6で表される化合物の量によって異なる。ポリマー鎖がカーボネート及びエステル結合をともに含有する(繰り返し単位1~3を含む)場合、多様な用途に適した特性を実現することが可能である。特に、本発明で目標とするような耐熱性、透明性及び加工性に優れたポリマーを提供することができる。
【0065】
上記の式5で表される化合物、上記の式6で表される化合物及び上記の式7で表される化合物の総量は、1mol%の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに対してそれぞれ0.7~1.3mol%、0.9~1.1mol%又は0.95~1.05mol%でもよい。
【0066】
一般に、ポリカーボネートはポリエステルと比較して耐熱性及び機械的特性に優れているが、耐薬品性、残留応力及び成形サイクル時間では劣っている。しかし、上記のように、その1つのポリマー鎖中にカーボネート及びエステル結合をともに含有するポリカーボネートエステルは、ポリカーボネート及びポリエステルの利点を有すると同時に、その欠点を埋め合わせることになる。
【0067】
溶融重縮合反応
溶融重縮合反応は、高粘度を有する溶融反応体から急速に副生成物を除去し、重合反応を促進するために、段階的な手段で温度を上昇させ、圧力を低下させることにより実施してもよい。
【0068】
詳細には、上記のステップ(2)の溶融重縮合反応は、
(2-1)50~700torrの減圧下で130~250℃、140~240℃又は150~230℃の温度で、0.1~10時間又は0.5~5時間の第1の反応ステップ、及び
(2-2)0.1~20torrの減圧下で200~350℃、220~280℃又は230~270℃の温度で、0.1~10時間又は0.5~5時間の第2の反応ステップ
を含んでよい。
【0069】
詳細には、溶融重縮合反応は、
(2-1)温度を130~200℃に上昇させ、続いて圧力を200~700torrに低下させること、及び0.1~10℃/分の速度で温度を200~250℃に上昇させ、続いて圧力を50~180torrに低下させることを含む、第1の反応ステップ、並びに
(2-2)圧力を1~20torrに低下させ、続いて0.1~5℃/分の速度で温度を200~350℃に上昇させること、及び圧力を0.1~1torrに低下させることを含む、第2の反応ステップ
を含んでよい。
【0070】
また、フェノールは溶融重縮合反応時に反応副生成物として生成し得る。反応平衡をポリカーボネートエステルの生成の方へシフトさせるために、副生成物として生成するフェノールを反応系から除去することが好ましい。溶融重縮合反応における温度上昇の速度が上記の範囲内である場合、反応副生成物であるフェノールが、反応原材料とともに、蒸発又は昇華するという問題を防止することが可能である。詳細には、ポリカーボネートエステルは、バッチ又は連続工程で調製してもよい。
【0071】
特に、高透明性のポリマーを生成するためには、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを使用する溶融重縮合反応に比較的低い反応温度が適している。更に、このように調製されたポリマーの機械的特性を保証するために、溶融重縮合反応が高度な重合へと実施されることが好ましい。この目的のために、溶融重縮合反応に高粘度重合反応器を使用することが有効である。溶融重縮合反応において目標とされる粘度は、10,000~1,000,000ポアズ、20,000~500,000ポアズ、又は50,000~200,000ポアズでもよい。
【0072】
追加のジオール化合物
上記のステップ(2)中の反応体(すなわち、上記の式5~7で表される化合物及び1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の追加のジオール化合物を含んでよく、追加のジオール化合物に特に制限はない。追加のジオール化合物はポリマーの目標特性に応じて第一級、第二級又は第三級ジオール化合物でもよい。
【0073】
利用される追加のジオール化合物のモル比がqである場合、利用される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのモル比は1-qとなるべきである。特に、追加のジオール化合物が石油化学系ジオール化合物である場合、その化合物は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来する最終的なポリマー中のバイオベース炭素含有量(ASTM-D6866)が少なくとも1mol%であるように使用してもよい。このとき、qは0≦q<0.99を満たしてもよい。すなわち、100mol%の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに対して99mol%未満の量の追加のジオール化合物を使用してもよい。
【0074】
ここで、このように調製された高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルの耐熱性、透明性、UV安定性及び耐候性を増強するために、追加のジオール化合物は、分子の中心部に1つの脂肪族環又は縮合複素環を有するジオール化合物でもよい。また、ヒドロキシル基が対称構造である場合、比例的に環のサイズ及び耐熱性が増加する。一方、光学的特徴はヒドロキシル基の環のサイズ及び位置に依存しないが、各原材料の特徴ごとに異なる。環のサイズが大きいほど、ジオール化合物を商業的に製造し、利用することがより困難になる。詳細には、追加のジオール化合物は、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール及び5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール)、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、バイオベース材料から誘導できる2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニトールからなる群から選択される、少なくとも1種でもよい。詳細には、追加のジオール化合物は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール又はテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールでもよい。
【0075】
追加のジフェニルエステル化合物
また、ステップ(2)中の反応体(すなわち、上記の式5~7で表される化合物及び1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール)は、ポリマーの目標特性に応じて、ポリマー鎖中のエステル結合用のモノマーである、上記の式5及び6で表される化合物以外の追加のジフェニルエステル化合物を含んでよい。利用されている追加のジフェニルエステル化合物のモル比がpである場合、利用されている上記の式5~7で表される化合物のモル比は1-pとなるべきである。このとき、pは0≦p<1を満たしてもよい。
【0076】
追加のジフェニルエステル化合物は、1種類、又は2種類以上の混合物でもよい。
【0077】
追加のジフェニルエステルは、第一級、第二級若しくは第三級ジカルボキシレート又はジカルボン酸(以下、追加のジカルボキシレート又はジカルボン酸と言う)をフェノール又はフェノール置換基と反応させることにより調製してもよい。このように調製された高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルの耐熱性、透明性、UV安定性及び耐候性を増強するために、分子の中心部に1つの脂肪族環若しくは縮合複素環を有する追加のジカルボキシレート又はジカルボン酸を、フェノール又はフェノール置換基と反応させることにより、追加のジフェニルエステルを調製してもよい。
【0078】
追加のジカルボキシレート化合物は、1,2-ジメチル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジメチル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチルデカヒドロ-2,4-ナフタレンジカルボキシレート、ジメチルデカヒドロ-2,5-ナフタレンジカルボキシレート、ジメチルデカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ジメチルデカヒドロ-2,7-ナフタレンジカルボキシレート及びジメチルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレートからなる群から選択される、少なくとも1種でもよい。
【0079】
追加のジカルボン酸化合物は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロ-2,4-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,7-ナフタレンジカルボン酸及びテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種でもよい。
【0080】
詳細には、追加のジフェニルエステルは、ジメチルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、ジメチルデカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、又はバイオベース材料から誘導できるデカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸から調製してもよい。
【0081】
溶融重縮合反応用の触媒
上記の溶融重縮合反応において、この反応の反応性を増強するために触媒を使用することができる。触媒は任意の時間に反応ステップに添加してもよいが、反応前に添加することが好ましい。
【0082】
ポリカーボネート溶融重縮合反応で通常使用される任意のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属触媒を触媒として使用してもよい。触媒は塩基性アンモニウム若しくはアミン、塩基性亜リン酸又は塩基性ホウ素化合物と組み合わせて使用してもよい。代替として、触媒を単独で使用してもよい。アルカリ金属触媒の例としては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)、酢酸リチウム(LiOAc)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、酢酸カリウム(KOAc)、酢酸セシウム(CsOAc)等を挙げ得る。更に、アルカリ土類金属触媒の例としては、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酢酸カルシウム(Ca(OAc))、酢酸バリウム(Ba(OAc))、酢酸マグネシウム(Mg(OAc))、酢酸ストロンチウム(Sr(OAc))等を挙げ得る。更に、触媒としてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド又はフェノラートを使用してもよい。その例には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)等を挙げ得る。更に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチルスズ((CSnO)、三酸化アンチモン(Sb)を触媒として使用してもよい。
【0083】
溶融重縮合反応において、触媒は、1モルの全ジオール化合物に対して触媒の金属当量が、0を超え5mmolまで、0を超え3mmolまで、又は0を超え1mmolまでとなるような量で使用してもよい。触媒の量が上記の範囲内である場合、重合の程度が目標とする重合の程度未満に下降し、副反応が生じ、それによって透明性のような目標とする物理的特性が損なわれるという問題を防止することが可能である。
【0084】
更に、本発明の高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルを調製するための方法では、必要により多様な添加剤を反応体に添加してもよい。たとえば、添加剤は、立体障害性フェノール、ヒドロキノン、亜リン酸及びその置換化合物等の酸化防止剤又は熱安定剤、レソルシノール、サリチレート等のUV吸収剤、ホスファイト、ハイドロホスファイト等の着色保護剤、並びにモンタン酸、ステアリルアルコール等の滑沢剤を含んでもよい。更に、着色剤として染料及び顔料を使用してもよく、導電剤、着色剤又は核形成剤としてカーボンブラックを使用してもよく、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤等を使用してもよい。上述の添加剤は、最終的なポリマーの特性、特に透明性に悪影響を及ぼさない量で使用してもよい。
【発明の形態】
【0085】
以下、本発明を下記の例によってより詳細に説明する。しかし、これらの例は例示のためにのみ提供されており、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例
【0086】
調製例1:TPAからのDPTの調製
4枚羽根撹拌機、ホスゲン及び窒素ガスの入口、ガスの出口並びに温度計を備えた1Lの丸底フラスコに、100g(0.60mol)のTPA(SK Chemicals)及び200gのトルエンを入れた。混合物を室温で撹拌した。1.28molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を実施した。その後、フラスコに2時間窒素ガスを供給して、副生成物として発生した残存ホスゲン及び塩酸ガスを除去し、それによって透明で均質な反応溶液を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)により反応溶液を分析した結果、TPCの比は49重量%であり、反応収率は87%であることが分かった。
【0087】
次いで、減圧下で反応溶液から、最初に供給されたトルエンの50重量%を留去した。その後、121g(1.28mol)のフェノールを121gのトルエンに溶解させたフェノール溶液を、滴下漏斗により2時間反応溶液に添加した。混合物を1時間撹拌した。反応が完了した時点で、トルエンを減圧下で反応溶液から留去した。このように得られた粗DPTを再結晶により精製した。次いで、精製されたDPTを90℃で真空下で24時間乾燥させて、162gのDPTを得た。ここで、GC分析によると反応収率は85%であり、DPTの純度は99.8%であった。
【0088】
調製例2:TPAからのDPTの調製
有機触媒として1.27g(0.017mol)のジメチルホルムアミドを利用したことを除いては調製例1の手順を繰り返して、DPTを調製した。合成の結果、GC分析によると反応収率は84%であり、DPTの純度は99.7%であった。
【0089】
調製例3:DMTからのDPTの調製
4枚羽根撹拌機、ホスゲン及び窒素ガスの入口、ガスの出口並びに温度計を備えた1Lの丸底フラスコに、100g(0.51mol)のDMT(SK Chemicals)、2.0g(0.015mol)の塩化アルミニウム、及び200gのトルエンを入れた。混合物を室温で撹拌した。1.10molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を実施した。その後、フラスコに2時間窒素ガスを供給して、副生成物として発生した残存ホスゲン及び塩酸ガスを除去し、それによって透明で均質な反応溶液を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)により反応溶液を分析した結果、TPCの比は48重量%であり反応収率は89%であることが分かった。
【0090】
次いで、減圧下で反応溶液から、最初に供給されたトルエンの50重量%を留去した。その後、100g(1.06mol)のフェノールを100gのトルエンに溶解させたフェノール溶液を、滴下漏斗により2時間反応溶液に添加した。混合物を1時間撹拌した。反応が完了した時点で、トルエンを減圧下で反応溶液から留去した。このように得られた粗DPTを再結晶により精製した。次いで、精製されたDPTを90℃で真空下で24時間乾燥させて、85gのDPTを得た。ここで、GC分析によるとDPTの反応収率は87%であり、DPTの純度は99.7%であった。
【0091】
調製例4:TPAからのDPTの調製
4枚羽根撹拌機、冷却コンデンサ及び温度計を備えた1Lのオートクレーブに100g(0.6mol)のTPA、565g(6mol)のフェノール、及び触媒として1.83g(0.01mol)の酢酸亜鉛(Zn(OAc))を入れた。次いで、混合物を100℃に加熱し撹拌し、続いて1kgf/cmまで加圧し、温度を上昇させて200℃で10時間反応を実施した。このとき、反応副生成物として発生した水をオートクレーブから排出した。反応が完了した時点で、減圧下で過剰に添加されたフェノールを留去し、それによって最後に未反応材料を含有する固形生成物を得た。
【0092】
次いで、未反応材料を含有する136gの固形生成物、282gのフェノール、400gのトルエン、及び0.92gの酢酸亜鉛を上記のようなオートクレーブに入れ、次いで室温で撹拌した。その後、混合物を100℃に加熱し、室温で10時間反応にかけた。このとき、反応副生成物として発生した水をオートクレーブから排出した。反応が完了した時点で、反応体を50℃に冷却し、フィルターを使用して固液分離により分離した。次いで、エバポレータを使用して、分離されたトルエン溶液からトルエンを除去し、このように得られた粗DPTを再結晶により精製した。その後、精製されたDPTを90℃で真空下で24時間乾燥させて80gのDPTを得た。ここで、反応収率は42%であった。
【0093】
調製例5:DMTからのDPTの調製
4枚羽根撹拌機、冷却コンデンサ及び温度計を備えた1Lのオートクレーブに100g(0.51mol)のDMT(SK Chemicals)、480g(5.10mol)のフェノール、及び1.72g(0.01mol)のp-トルエンスルホン酸を入れた。次いで、混合物を100℃に加熱し、撹拌し、続いて1kgf/cmまで加圧し、温度を上昇させて200℃で10時間反応を実施した。このとき、反応副生成物として発生したメタノールをオートクレーブから排出した。反応が完了した時点で、過剰に添加されたフェノールを減圧下で留去し、それによって最後に未反応材料を含有する固形物を得た。
【0094】
次いで、未反応材料を含有する140gの固形物、240gのフェノール、400gのトルエン、及び0.86gのp-トルエンスルホン酸を上記のようなオートクレーブに入れ、次いで室温で撹拌した。その後、混合物を100℃に加熱し、室温で10時間反応にかけた。このとき、反応副生成物として発生したメタノールをオートクレーブから排出した。反応が完了した時点で、反応体を室温まで冷却し、フィルターを使用して固液分離により分離した。次いで、エバポレータを使用して、分離されたトルエン溶液からトルエンを除去し、このように得られた粗DPTを再結晶により精製した。その後、精製されたDPTを90℃で真空下で24時間乾燥させて106gのDPTを得た。ここで、反応収率は65%であった。
【0095】
実施例1:高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルの調製
重縮合のため18Lのベンチスケール反応器に1,995g(13.7mol)のイソソルビド(ISB、Roquette Freres)、調製例1で調製された436g(1.37mol)のDPT、444g(1.37mol)のDPCD(SK Chemicals)、2,345g(10.96mol)のDPC(Changfeng)、及びアルミン酸ナトリウム(NaAlO)の1%水溶液2gを入れた。混合物を150℃に加熱した。いったん温度が150℃に達すると、圧力を400torrに低下させ、次いで温度を1時間かけて190℃に上昇させた。温度上昇中、重合反応の副生成物としてフェノールが発生した。温度が190℃に達した場合、圧力を100torrに低下させ20分間維持し、次いで温度を20分かけて230℃に上昇させた。いったん温度が230℃に達すると、圧力を10torrに低下させ、次いで温度を10分かけて250℃に上昇させた。圧力を250℃で1torr以下に低下させ、目標とする撹拌トルクに達するまで反応を続けた。目標とする撹拌トルクに達すると、反応を終了させた。重合生成物を圧力下でストランドとして排出し、水浴中で急冷させ、次いでペレットに切り分けた。このように調製されたポリカーボネートエステルはTgが168℃であり、IVは0.54dL/gであった。
【0096】
実施例2~10:高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルの調製
ポリマー用の原材料が下記の表1に記載されているとおりであることを除いては、実施例1と同一の手順を繰り返した。
【0097】
比較例1:CHDMからのバイオベースポリカーボネートエステルの調製
調製例1で調製された1,623g(5.1mol)のDPT、2,549g(11.9mol)のDPC、1,988g(13.6mol)のISB、及び490g(3.4mol)の1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM、SK Chemicals)を使用した一方、DPCDは使用しなかったことを除いては、実施例1と同一の手順を繰り返してポリカーボネートエステルを調製した。このように調製されたポリカーボネートエステルのTgは155℃であり、IVは0.55dL/gであった。
【0098】
比較例2及び3
ポリマー用の原材料が下記の表1に記載されているとおりであることを除いては、比較例1と同一の手順を繰り返してポリカーボネートエステルを調製した。
【0099】
試験例:物理的特性の評価
実施例1~10及び比較例1~3のポリカーボネートエステルをそれぞれその物理的特性について下記の方法により評価した。測定された物理的特性は下記の表1に示されている。
【0100】
ガラス転移温度(Tg)の測定
ASTM D3418に基づいて示差走査熱量計(Q20、TA Instruments)を使用してガラス転移温度を測定した。
【0101】
光透過率(T)の測定
ASTM D1003に基づいて分光光度計(CM-3600A、コニカミノルタ)を使用して厚さ4mmの試料について光透過率を測定した。
【0102】
メルトフローインデックス(MFI)の測定
ASTM D1238に基づいて、メルトインデックス測定装置(G-01、東洋精機)を使用して260℃で2.16kgの荷重の条件下でメルトフローインデックスを測定した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記の表1に示すように、本発明の方法による実施例1~10でジフェニルテレフタル酸(DPT)から調製された、式5で表される高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、DPCと1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート(DPCD)とのみから共重合させた従来のバイオベースポリカーボネートエステルと比較してガラス転移温度が高い。したがって、高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは高耐熱性が必要な用途に適している。
【0105】
更に、DPCDの繰り返し単位の含有量が増加しているので(実施例1、2及び4~6)、脂肪族環モノマーの含有量が増加するにつれてガラス転移温度は低下している。しかし、メルトフローインデックスは増加し、結果として流動性が増加する。
【0106】
更に、DPTの繰り返し単位の含有量が増加するにつれて(実施例2~4及び6~8)、ガラス転移温度が上昇する一方で、メルトフローインデックスは低下したことが確認された。特に、実施例3では、ガラス転移温度が実施例1のガラス転移温度より高い場合でもメルトフローインデックスはほぼ同じである。実施例7では、ガラス転移温度が実施例1及び3のガラス転移温度より高い場合でもメルトフローインデックスはほぼ同じである。更に、実施例10では、ガラス転移温度は実施例中の最高値であったが、DPCDの繰り返し単位の含有量が少ないことに起因してメルトフローインデックスは比較的低かった。
【0107】
更に、実施例1~10の光透過値は全て90%以上であり、これは同レベルの耐熱性を有するBPAベースのポリカーボネート生成物の90%の最大光透過率と等しいかそれ以上である。特に、実施例1~9の光透過値は91%以上とより優れていた。
【0108】
また、比較例1~3で1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)から調製されたバイオベースポリカーボネートエステルのガラス転移温度は低かった。したがって、このバイオベースポリカーボネートエステルは高耐熱性が必要な用途に適さない。実施例と比較してガラス転移温度が比較的低い場合でもメルトフローインデックスは高くなかった。特に、比較例3では、DPTの繰り返し単位の含有量が増加するにつれて、光透過率は低下した。
【0109】
したがって、本発明の方法では、カーボネート結合及びエステル結合の比並びに1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタル酸ジフェニルの繰り返し単位の含有量を調節することにより、カーボネート結合及びエステル結合の利点及び欠点の原因となるバイオベースポリカーボネートエステルの特性をその高耐熱性の目標特性に応じて制御することが可能である。この方法により調製された高耐熱性のバイオベースポリカーボネートエステルは、耐熱性、透明性及び流動性に優れている。したがって、このバイオベースポリカーボネートエステルを高耐熱性が必要な多様な用途で有利に使用することができる。