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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、及び外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230110BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230110BHJP
   B65G 47/30 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01N21/84 C
G01N21/956 B
B65G47/30 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017214763
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2019086397
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小 寺 克 義
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010955(JP,A)
【文献】特開2017-010954(JP,A)
【文献】特開2015-000756(JP,A)
【文献】特開2004-168516(JP,A)
【文献】特開2017-198462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84- G01N 21/958
G01B 11/00- G01B 11/30
G01B 21/00- G01B 21/32
B07C 5/00- B07C 5/38
B65B 57/00- B65B 57/20
B65G 43/00- B65G 43/10
B65G 47/22- B65G 47/32
H01G 13/00
H01L 21/64- H01L 21/66
H05K 13/00- H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が積層された電子部品を搬送する搬送装置であって、
水平面に対して傾斜する平面を基準面として、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面を有し、前記電子部品の回転を抑制すると共に、前記電子部品を前記鉛直下方向に搬送する常磁性体の第1搬送路と、
前記第1搬送路から垂直方向の段差を介して鉛直下方に配置され、前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面と、前記2つの平坦面の間に面一で連なる局面を有し、前記電子部品を鉛直下方向に搬送する常磁性体の第2搬送路と、
前記第2搬送路から垂直方向の段差を介して下方に配置され、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面を有し、前記電子部品の回転を抑制すると共に、前記第2搬送路を搬送された前記電子部品を鉛直下方向に搬送する常磁性体の第3搬送路と、
前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路から所定の距離隔てて配置されると共に、前記段差の領域を含む前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路がそれぞれ形成される前記2つの平坦面の内の一方の面の垂線に対して0乃至30度の角度範囲の方向を有する磁界を生成する磁界生成部と、
を備え、
前記第1搬送路の2つの平坦面の交線と、前記第3搬送路の2つの平坦面の交線とは、直線状に形成される、搬送装置。
【請求項2】
前記磁界生成部は、前記第2搬送路から所定距離を隔てて配置された電磁石又は永久磁石を有する、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
複数の電極が積層された電子部品を搬送する搬送方法であって、
前記電子部品の回転を抑制すると共に、水平面に対して傾斜する平面を基準面として、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面で構成される搬送面を有する常磁性体の第1搬送路により前記鉛直下方向に搬送する第1搬送工程と、
前記第1搬送路から垂直方向の段差を介して下方に配置され、前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面と、前記2つの平坦面の間に面一で連なる局面を有する常磁性体の第2搬送路により、前記第1搬送路を搬送された前記電子部品を前記鉛直下方向に搬送する第2搬送工程と、
前記第2搬送路から垂直方向の段差を介して下方に配置され、前記電子部品の回転を抑制すると共に、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面を有する常磁性体の第3搬送路により、前記第2搬送路を搬送された前記電子部品を前記鉛直下方向に搬送する第3搬送工程と、
を有する搬送工程と、
前記段差の領域を含む前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路がそれぞれ形成される2つの平坦面の一方の面の垂線に対して0乃至30度の角度範囲の方向を有する磁界を生成する磁界生成工程と、
を備え、
前記第1搬送路の2つの平坦面の交線と、前記第3搬送路の2つの平坦面の交線とは、直線状に形成される、搬送方法。
【請求項4】
複数の電極が積層された電子部品の外観を検査する外観検査装置であって、
水平面に対して傾斜する平面を基準面として、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面を有し、前記電子部品の回転を抑制すると共に、前記電子部品を所定の方向に搬送する常磁性体の第1搬送路と、
前記第1搬送路から垂直方向の段差を介して鉛直下方に配置され、前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面と、前記2つの平坦面の間に面一で連なる局面を有し、前記電子部品を前記鉛直下方向に搬送する常磁性体の第2搬送路と、
前記第2搬送路から垂直方向の段差を介して鉛直下方に配置され、前記基準面の鉛直下方向に沿って交線を有し、且つ前記基準面に対してその断面が傾斜を有する2つの平坦面を有し、前記電子部品の回転を抑制すると共に、前記電子部品を前記所定の方向に搬送する常磁性体の第3搬送路とを、有する搬送路と
前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路から所定の距離隔てて配置されると共に、前記段差の領域を含む前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路がそれぞれ形成される2つの平坦面の一方の面の垂線に対して0乃至30度の角度範囲の方向を有する磁界を生成する磁界生成部と、
前記第2搬送路を介して前記電子部品が移載され、搬送円弧上に載置した前記電子部品を搬送する回転自在の搬送テーブルと、
前記搬送テーブル上の前記電子部品を撮像する撮像部と、
を備え、
前記第1搬送路の2つの平坦面の交線と、前記第3搬送路の2つの平坦面の交線とは、直線状に形成される、外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、搬送装置、搬送方法、及び外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
6面体形状の抵抗やコンデンサ等のチップ形電子部品(以下「ワーク」)の外観を検査する外観検査装置が知られている。この外観検査装置では、ガラス等の透明体からなる搬送テーブル上にワークを載置し、搬送テーブルを回転させてワークを搬送しながら複数のカメラで各面を撮像して外観検査を行う。このワークは、リニアフィーダを介して搬送テーブル上に載置され、搬送テーブルに静電吸着されている(特許文献1参照)。
【0003】
図12は、積層コンデンサにおける角柱型の素地チップが遠心力により回転する様子を示す図である。この図12に示すように、角柱型の素地チップの上下面に相当するプレス面は中央部分が膨らんでいる事が多く、搬送テーブルにこの面が載置されると、転がりやすくなり、静電吸着を行ってもテーブル上の遠心力と搬送による風圧により容易に回転してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-44579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、搬送テーブル上におけるワークの載置位置や向きが不規則になり、各カメラにより撮像される画像の大きさや位置、向きが変動してしまい、ワークの良否の判定精度が低下してしまう恐れがある。
【0006】
特に、積層コンデンサの素地チップは角柱品なので、リニアフィーダは、縦幅方向と横幅方向とが異なるワークをランダムに搬送テーブル上に配置するので、各カメラは、位置や向きが不揃いのワークを撮像することになり、ワークの良否の判定精度が低下してしまう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、複数の電極が積層された電子部品の向きを揃えることが可能な搬送装置、搬送方法、及び外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による搬送装置は、複数の電極が積層された電子部品を搬送する搬送装置であって、
前記電子部品を搬送する第1搬送路と、
前記第1搬送路から段差を介して下方に配置され、前記第1搬送路を搬送された前記電子部品を搬送する第2搬送路と、
前記第2搬送路に磁界を生成する磁界生成部と、
を備える。
【0009】
前記第2搬送路の搬送面は、前記電子部品を所定方向に搬送させる2つの平坦面と、前記2つの平坦面の間に面一で連なる曲面とを有してもよい。
【0010】
前記第2搬送路の下方に配置され、前記電子部品の回転を抑制する2つの平坦面を有し、前記第2搬送路を搬送された前記電子部品を搬送する第3搬送路を更に備えてもよく、
前記第1搬送路の搬送面は、前記電子部品の回転を抑制する2つの平坦面を有してもよい。
【0011】
前記第1搬送路、前記第2搬送路及び前記第3搬送路は、弱磁性体でもよく、
前記磁界生成部は、前記第1搬送路、前記第2搬送路、及び前記第3搬送路に前記磁界を生成しており、前記磁界生成部が生成する前記磁界の向きは、前記第1搬送路、前記第2搬送路、及び前記第3搬送路を形成する前記2つの平坦面の面方向に対して60乃至90度傾斜した方向でもよい。
【0012】
前記磁界生成部は、電磁石又は永久磁石を有してもよい。
【0013】
本発明の一態様による搬送方法は、複数の電極が積層された電子部品を搬送する搬送方法であって、
前記電子部品を第1搬送路により搬送する第1搬送工程と、
前記第1搬送路から段差を介して下方に配置された第2搬送路により、前記第1搬送路を搬送された前記電子部品を搬送する第2搬送工程と、
前記第2搬送路に磁界を生成する磁界生成工程と、
を備える。
【0014】
本発明の一態様による外観検査装置は、複数の電極が積層された電子部品の外観を検査する外観検査装置であって、
前記電子部品を搬送する第1搬送路と、
前記第1搬送路から段差を介して下方に配置され、前記第1搬送路を搬送された前記電子部品を搬送する磁性体である第2搬送路と、
前記第2搬送路に磁界を生成する磁界生成部と、
前記第2搬送路を介して前記電子部品が移載され、搬送円弧上に載置した前記電子部品を搬送する回転自在の搬送テーブルと、
前記搬送テーブル上の前記電子部品を撮像する撮像部と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ワークを対象としたワークの外観検査装置の平面図。
図2図1の領域Sを示す拡大平面図。
図3図1の領域Sを矢印Yの方向から見た透視図。
図4】積層コンデンサにおける角柱型の素地チップの断面図。
図5】搬送装置の詳細な構成を示す斜視図。
図6】ワークの回転の原理を示す説明図。
図7】第1搬送路の断面図。
図8】第1搬送路、第2搬送路、及び第3搬送路の搬送面における底部の断面を模式的に示す図。
図9】第2搬送路の境界面付近の断面図。
図10】(A)~(D)は第2搬送路において発生する回転モーメントの例を示す図。
図11】第3搬送路の断面図。
図12】積層コンデンサの角柱型の素地チップが遠心力により回転する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る外観検査装置30について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0017】
まず、図1乃至図3に基づき、一実施形態による外観検査装置30の全体構成を説明する。図1は、ワークWを対象としたワークの外観検査装置の平面図であり、図2は、図1の破線領域Sの拡大平面図であり、図3は、図1の領域Sを矢印Yの方向から見た透視図である。
【0018】
この図1乃至図3に示すように、外観検査装置30は、ワークWの外観を検査する装置であり、搬送装置(リニアフィーダ)1と、搬送テーブル2と、リニア先端部4と、帯電部6と、ガイド7と、側面カメラ部8と、内面カメラ部9と、上面カメラ部10と、下面カメラ部11と、前面カメラ部12と、後面カメラ部13と、排出部14とを、備えて構成されている。また、側面カメラ部8と、内面カメラ部9と、上面カメラ部10と、下面カメラ部11と、前面カメラ部12と、後面カメラ部13とにより撮像部20が構成されている。さらにまた、リニア先端部4と、ガイド7とにより整列部21が構成されている。
【0019】
搬送装置1は、複数の電極が積層されたワークWの積層方向の向きを磁力により揃え、矢印Nの方向に搬送する。この搬送装置1の搬送面は、図3に示すように、搬送テーブル2に向かって斜め下方に傾斜している。搬送面は、駆動源により振動しており、上流側に位置するパーツフィーダから搬送面に投入されたワークWは、搬送面の振動により斜め下方の搬送テーブル2に向かって搬送される。搬送装置1の詳細な構成は後述する。
【0020】
搬送テーブル2は、例えば水平に設置された透明なガラスであり、回転軸3を中心として矢印Xの方向に回転する。搬送テーブル2には、搬送装置1により搬送されたワークWが移載される。ワークWは、図1の一点鎖線で示す回転軸3を中心とするワーク搬送円弧5に沿って搬送される。
【0021】
リニア先端部4は、搬送装置1の搬出口に接続されている。リニア先端部4の搬送面の傾斜は、搬送装置1の搬送面の傾斜と同等である。これにより、ワークWは搬送装置1からリニア先端部4の移載点4xを経て搬送テーブル2に移載される。
【0022】
こうしてワークWは搬送装置1およびリニア先端部4による搬送方向と搬送テーブル2による搬送方向が、ともにワークWの長手方向となるように、搬送テーブル2上に載置される。そして搬送テーブル2の上面に接触するワークWの一面は、図示されない保持手段の作用により搬送テーブル2の上面に吸着される。これにより、ワークWはその姿勢が固定された状態で、搬送テーブル2の回転によって搬送される。
【0023】
ガイド7は、リニア先端部4の下流側に設けられ、ワークWをワーク搬送円弧5上に整列させる。ガイド7は、ワーク搬送円弧5に接する直線状のガイド面7aを有し、ガイド面7aに沿ってワークWを進行させることにより、ワークWをワーク搬送円弧5上に整列させる。より詳細には、ガイド面7aは、図2に示すように、移載点4xと回転軸3とを結ぶ直線を破線Kとしたとき、ガイド面7aと破線Kのなす角αが鋭角となるように、かつガイド面7aが合流点7xにおいてワーク搬送円弧5の接線となるように設置されている。すなわち、合流点7xと搬送テーブル2の回転軸3とを結ぶ直線を破線Lで表したときに、破線Lとガイド面7aとのなす角βが90°となる。
【0024】
これにより、ワークWは図2における区間Pにおいて搬送テーブル2の上面に吸着された状態でW2→W3→W4のように搬送テーブル2の回転による搬送速度まで加速され、区間Qにおいてワークの間隔は例えばW4とW5の間のように広くなる。そしてワークW5は、区間Pと同様にガイド面7aに押し付けられながら搬送され、次第にワーク搬送円弧5に近づいていく。そして、ガイド面7aがワーク搬送円弧5に接する合流点7xに到達したワークW6の搬送方向は、区間Rにおいてワーク搬送円弧5の方向に一致し、ワークW6は、ガイド面7aから離れる方向にワーク搬送円弧5に沿って搬送される。
【0025】
図1に示す側面カメラ部8は、ワークWの一方の側面を撮像し、側面カメラ部9は、ワークWの他方の側面を撮像する。上面カメラ部10は、ワークWの上面を撮像し、下面カメラ11部は、ワークWの下面を撮像する、前面カメラ部12は、ワークWの前面を撮像し、後面カメラ部13は、ワークWの後面を撮像する。このように、側面カメラ部8、内面カメラ部9、上面カメラ部10、下面カメラ部11、前面カメラ部12、及び後面カメラ部13により、ワークWの6面が撮像される。
【0026】
排出部14は、撮像部20に対して搬送テーブル2の回転方向の下流側に設けられている。排出部14は、ワークWの外観検査の結果に対応させて、ワークWを収納箱に排出する。
【0027】
図3に示す磁界生成部40は、搬送装置1に設けられている。なお、磁界生成部40の詳細は後述する。また、図1、及び図2においては、磁界生成部40の記載は省略されている。
【0028】
図4は、積層コンデンサにおける角柱型の素地チップの断面図である。この図4に示すように、本実施形態に係るワークWは、例えば積層コンデンサの角柱型の素地チップである。積層コンデンサにおける角柱型の素地チップは、薄膜状の電極200と、誘電体202とが交互に積層されている。電極200は、例えばニッケルなどの強磁性体である。これら電極200と誘電体202とは、各薄膜の法線方向に沿って交互に積層されている。図4では、積層方向をZとし、各薄膜の面方向をXY平面としている。
【0029】
積層コンデンサでは、例えば100~1000枚の電極200が誘電体202を介して積層されている。このような積層コンデンサの製造工程では、例えば電極200のシートと誘電体202のシートとを交互に積層し、圧力を加えて誘電体ブロックが一体成形される。そして、一体成形された誘電体のブロックが所定の大きさの素地チップに切断される。
【0030】
このような素地チップの製造工程の過程で、カット面204、カット面206、積層プレス面208、積層プレス面210が形成される。すなわち、カット面204と206は、誘電体ブロック(パッド)をチップ状に切断する際の切断面である。カット面204及びカット面206のそれぞれは、平坦面である。
【0031】
積層プレス面208は、圧力を加えて誘電体ブロックを一体成形する際のプレス面である。積層プレス面208及び積層プレス面210のそれぞれは、外側よりも中央部分が膨らんでいる。なお、完成品の積層コンデンサの大きさは、例えば0402サイズと呼ばれる積層コンデンサでは、角柱状の縦0.4ミリメートル、横0.2ミリメートル、厚さ0.2ミリメートルである。また、例えば3225サイズと呼ばれる積層コンデンサでは、角柱状の縦3.2ミリメートル、横2.5ミリメートル、厚さ2.5ミリメートルである。なお、本実施形態では、素地チップではなく、素地チップをパッケージングした完成品の積層コンデンサを検査対象にしてもよい。
【0032】
図5は、搬送装置1の詳細な構成を示す斜視図である。この図5に示すように、搬送装置1は、磁界生成部40と、第1搬送路100と、第2搬送路102と、第3搬送路104とを備えて構成されている。
【0033】
磁界生成部40は、搬送面から所定の距離を隔てて配置される電磁石、又は永久磁石を有している。この磁界生成部40は、第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104に磁界を生成している。磁界生成部40が生成する磁界の方向、すなわち磁力線の方向は、第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104のそれぞれが有する2つの平坦面の内の一方の面方向に対して60~90度である。
【0034】
第1搬送路100は、上述のように、上流側に位置するパーツフィーダに投入されたワークWを搬送面に載置し、搬送面を振動させることにより搬送する。この第1搬送路100の搬送面は、電子部品の回転を抑制する2つの平坦面106、108を有する。これら2つの平坦面106、108のそれぞれは基準面の面方向に対して例えば45度の傾斜を有し、ワークWの2面ガイドとしても機能する。ここで、基準面とは、搬送装置1が載置される下地の面である。また、第1搬送路100は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、等の常磁性体であり、磁界生成部40の生成する磁界により搬送面に磁極が形成される。これにより、第1搬送路100の搬送面は、ワークWの搬送速度に影響を与えない程度にワークWを保持する保持機能を有する。ここでの常磁性体は、外部磁場が無いときは磁化を有さず、磁場を印加するとその方向に磁化する磁性体を意味する。
【0035】
第2搬送路102は、第1搬送路100から段差を介して下方に配置され、第1搬送路100を搬送されたワークWを搬送する。すなわち、第1搬送路100と第2搬送路102との境界面110には段差がある。この第2搬送路102の搬送面は、電子部品を所定方向に搬送させる2つの平坦面112、114と、2つの平坦面112、114の間に面一で連なる曲面116とを有する。これら2つの平坦面112、114のそれぞれは基準面の面方向に対して例えば45度の傾斜を有する。曲面116は、例えばR加工されている。また、第2搬送路102は、第1搬送路100と同様に、例えばオーステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、等の常磁性体であり、磁界生成部40の生成する磁界により搬送面に磁極が形成される。これにより、第2搬送路102の搬送面は、ワークWの搬送速度に影響を与えない程度にワークWを保持する保持機能を有するとともに、ワークW内の電極200の向きを所定の方向に揃える磁力を発生する。
【0036】
第3搬送路104は、第2搬送路102から段差を介して下方に配置され、第2搬送路102を搬送されたワークWを搬送する。すなわち、本実施形態に係る第2搬送路102と第2搬送路104との境界面118には段差がある。この第2搬送路102の搬送面は、電子部品の回転を抑制する2つの平坦面120、122を有する。これら2つの平坦面120、122のそれぞれは基準面の面方向に対して例えば45度の傾斜を有し、ワークWの2面ガイドとしても機能する。なお、第2搬送路102の搬送面をなだらかに変形させ、第3搬送路104の搬送面と連続的に接続させてもよい。
【0037】
また、第3搬送路104は、第1搬送路100と同様に、例えばオーステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、等の常磁性体であり、磁界生成部40の生成する磁界により搬送面に磁極が形成される。これにより、第3搬送路104の搬送面は、ワークWの搬送速度に影響を与えない程度にワークWを保持する保持機能を有する。すなわち、第3搬送路104の搬送面は、ワークW内の電極200の向きを所定の方向に保持する磁力を発生する。また、第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104の搬送面は、鏡面に加工され、例えばDLC(Diamond-Like Carbon)処理などの低摩擦処理が施されている。このDLC処理は磁界の発生を阻害しないので、第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104の搬送面の低摩擦処理として適している。なお、第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104の材質は、例えばプラスティツクなどのように磁石に吸着されない非磁性材料でもよい。
【0038】
次にこのような構成からなるワークWの搬送装置1を用いたワークWの回転について図6乃至図11に基づき説明する。
【0039】
図6は、ワークWの回転の原理を示す説明図である。図6に示すように、磁界内に載置されたワークWの電極は、磁界の作用により分極する。磁力線の向きが磁界生成部40からワークWに向かう方向であれば、ワークW内の平板状の電極200には、磁界生成部40に近い方にS極が生じ、磁界生成部40に遠い方にN極が生じる。つまり、平板状の電極200の磁界生成部40に近い方の一端には、磁界生成部40に対する引力が働き、平板状の電極200の磁界生成部40に遠い方の他端には、磁界生成部40に対する斥力が働く。これらの磁力により、平板状の電極200に回転モーメントが発生し、電極200の積層方向が磁力線と直交するように作用する。このように、磁界生成部40が生成する磁界内では、磁力線と電極200の積層方向とが直交する状態が安定状態である。なお、磁力線の向きが逆でも同様に、磁力は電極200の積層方向が磁力線と直交するように作用する。
【0040】
図7は、第1搬送路100の断面図である。図7では、ワークW内の電極200の積層方向が磁力線の方向にほぼ並行している例を示している。このような場合、ワークWは、ワークWの積層プレス面210又は積層プレス面208の中央部を支点として駆動源の振動により揺れながら搬送される。例えば、振動により反時計回りの回転モーメントが働いたとしても、ワークWのカット面206が平坦面106に接触しているため、ワークWの回転が防止される。逆に、ワークWに振動により時計回りの回転モーメントが働いたとしても、ワークWの積層プレス面210が平坦面108に接触しているため、やはりワークWの回転が防止される。このため、第1搬送路100内では、ワークWはほぼ回転しない状態で搬送される。
【0041】
一方で、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と直交する場合も、同様の理由で第1搬送路100内でのワークWの回転が防止される。このように、ワークWがどのような向きで第1搬送路100に搬送されても、ワークWはその向きをほぼ維持したままで、第2搬送路100との間の段差まで搬送される。
【0042】
図8は、図5で示した第1搬送路100、第2搬送路102、及び第3搬送路104の断面を模式的に示す図である。ここでは、磁界生成部40が生成する磁力線を一点鎖線により示している。図8は、磁界生成部40の下側、すなわち搬送面に近い側はN極である例を示している。
【0043】
この図8に示すように、第1搬送路100を搬送されたワークWは、境界面110を超える際に、段差により空中に浮いた後に第2搬送路102の搬送面に載置される。これから分かる様に、空中に浮いたワークWは磁力による回転モーメントにより、磁力線と電極200の積層方向とが直交する方向に回転する。このため、図7で示したように、ワークWの電極200の積層方向が磁力線とほぼ平行であるワークWも、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と直交する方向に回転する。一方で、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と直交するワークWは、磁力により電極200の積層方向が磁力線と直交する状態を維持した状態で第2搬送路102の搬送面に載置される。
【0044】
図9は、第2搬送路102の境界面110付近の断面図である。第2搬送路102の搬送面は、上述のように、低摩擦加工された法線方向が互いに異なる2つの平坦面112、114と、2つの平坦面112、114の間に面一で連なる曲面116とを有する。このため、第2搬送路102では、ワークWは、磁界により発生した回転モーメントにより自在に回転する。
【0045】
図10は、第2搬送路102において発生する回転モーメントの例を示す図である。ワークWが空中に浮いている間に、ワークWの向きは、電極200の積層面が磁力線と平行となるように回転される。
【0046】
一方で、電極200の積層面が磁力線と平行でないワークWも存在する。このようなワークWには、電極200の積層面が磁力線と平行となる方向に磁界による回転モーメントが発生する。
【0047】
図10(A)は、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と斜めになり、反時計回りの回転モーメントが発生する例を示す図である。すなわち、図10(A)に示す例では、ワークWのカット面206側に生じる磁極には、磁界生成部40の方向への引力が働き、カット面204側に生じる磁極には、磁界生成部40の方向への斥力が働くため、ワークWには反時計回りの回転モーメントが発生する。
【0048】
図10(B)は、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と斜めになり、時計回りの回転モーメントが発生する例を示す図である。すなわち、図10(B)に示す例では、ワークWのカット面206側に生じる磁極には、磁界生成部40の方向への引力が働き、カット面204側に生じる磁極には、磁界生成部40の方向への斥力が働くため、ワークWには時計回りの回転モーメントが発生する。このように、ワークWの電極200の積層方向が磁力線と斜めの場合、ワーク内の電極200の積層方向と磁力線とが直交するように回転モーメントが発生する。
【0049】
一方で、図10(C)は、ワークWの電極200の積層面と、磁界生成部40の磁力線とが平行である例を示す図であり、回転モーメントは生じない。上述のように、図10(C)で示す状態が最も安定した状態である。つまり、図10(A)及び図10(B)で示すワークWは、図10(C)の状態になると回転を停止する。また、振動部の振動により、ワークWが揺れた場合にも、図10(C)で示す状態に戻すように磁界による回転モーメントが生じる。このように、ワークWの電極200の積層面と、磁界生成部40の磁力線とが平行になると、磁界生成部40が生成する磁界及び第2搬送路102が生成する磁界が電極200の向きを保持するように作用する。
【0050】
図10(D)は、ワークWの電極200の積層面と、磁界生成部40の磁力線とが垂直である例を示す図である。この例では、ワークWのカット面204側の電極200の端部と磁界生成部40との距離が、カット面206側の電極200の端部と磁界生成部40との距離と同等であるので、回転モーメントは生じない。しかしながら、不安定な状態であり、ワークWが揺れた際の回転方向に、このワークWは図10(C)で示す状態になるまで回転する。
【0051】
このように、磁界生成部40が生成する磁界は、第2搬送路102の搬送面上のワークWの電極200の積層面と、磁界生成部40の磁力線とが平行となるように、ワークWを回転させる。これにより、ワークWは、電極200の向きが揃えられた状態で第3搬送路104に移載される。
【0052】
図11は、第3搬送路104の断面図である。第2搬送路102から第3搬送路104に移載されるワークWの向きは、電極200の積層面と、磁界生成部40の磁力線とが平行となるように揃えられている。一方で、何らかの要因により向きが揃っていないワークWは、第2搬送路102から第3搬送路104に移載される際の段差で、上述した図10(A)~図10(D)に説明した原理にて、向きが揃えられる。
【0053】
第3搬送路104では、ワークWの電極200の積層面が磁力線と平行な向きに揃えられているので、カット面204、又はカット面206(図4)が平坦面122と接触している。このため、振動によるワークWの揺れが平坦面122により抑制されている。また、振動によりワークWの揺れが生じた場合にも、ワークWの電極200の積層面が磁力線と平行になるように磁界が作用する。さらにまた、平坦面120がワークWの回転を制限する。このように、第3搬送路104では、磁界生成部40及び第3搬送路104の搬送面が生成する磁界がワークWの向きを維持するように作用すると共に、平坦面120及び平坦面122が2面ガイドとして機能する。これにより、第3搬送路104は、ワークWの向きを維持した状態でワークWをリニア先端部4に移載する。そして、リニア先端部4は、ワークWのカット面204又はカット面206(図4)が搬送テーブル2(図1)に接するようにワークWを移載する。
【0054】
より具体的には、上述のリニア先端部4は、搬送装置1の第3搬送路104に接続されている。このリニア先端部4の搬送面は、法線方向が互いに異なる2つの平坦面を有する。例えばリニア先端部4の一方の平坦面は平坦面120に連続的に接続され、下流に向かうにしたがい垂直になり、リニア先端部4の他方の平坦面は平坦面122に連続的に接続され、下流に向かうにしたがい水平になるように構成されている。これにより、ワークWのカット面204又はカット面206(図4)が搬送テーブル2(図1)に接するように移載される。
【0055】
このように、平面度の高い積層コンデンサのカット面204又はカット面206が搬送テーブル2に接するように移載されるので、搬送テーブル2上でのワークWの姿勢は安定する。また、搬送テーブル2上でのワークWの向きがそろっているので、撮像部20は、ワークWの側面と上下面を同一方向から撮像可能となる。これにより、ワークWの良否の判定精度が向上する。
【0056】
なお、ワークW内の積層された電極の数や電極サイズに応じて、ワークWに作用するモーメントの大きさが異なるため、ワークWの種類ごとに磁界生成部の位置を最適化するのが望ましい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る外観検査装置30によれば、第1搬送路100から段差を介して下方に配置された第2搬送路102を設け、電極200を積層したワークWを搬送する第2搬送路102に磁界を生成することとした。これにより、ワークWが段差により空中に滞在する期間に、ワークWの電極200の積層方向と磁力線とが直交する方向にワークWを回転させることが可能となる。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1:搬送装置、2:搬送テーブル、6:帯電部、20:撮像部、30:外観検査装置、40:磁界生成部、100:第1搬送路、102:第2搬送路、104:第3搬送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12