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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/85 20180101AFI20230110BHJP
   F24F 1/0083 20190101ALI20230110BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230110BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20230110BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20230110BHJP
【FI】
F24F11/85
F24F1/0083
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037142
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139711
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正明
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-227483(JP,A)
【文献】特開平07-233968(JP,A)
【文献】特開2010-203731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00、11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り入れて室内に供給するダクトと、
前記ダクトの上流側に配置される予冷熱交換器と、
前記予冷熱交換器の下流側に配置され、所定の絶対湿度まで空気流を冷却する冷却熱交換器と、
前記冷却熱交換器の下流側に配置される再熱熱交換器と、
を具え、
前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器を、熱媒体を循環ポンプにより循環させる循環パイプにより接続してなる、
空調システムであって、
前記室内には、湿度センサーを具え、
前記循環ポンプは、前記湿度センサーの湿度検出値に基づいてインバーター制御される、
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記再熱熱交換器の下流側に第3温度センサーを具え、
前記循環ポンプは、前記第3温度センサーの温度検出値に基づいてインバーター制御される、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器は、前記循環ポンプと並列に配備された温熱源に切り替えて接続可能である、
請求項1又は請求項に記載の空調システム。
【請求項4】
前記予冷熱交換器の上流側に外気温を測定する第1温度センサーを具え、
前記第1温度センサーの温度検出値に基づいて、前記循環ポンプ又は前記温熱源は、前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器に切り替えて接続する、
請求項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気の温度、湿度を調節して室内に送給する空調システムに関するものであり、より具体的には、外気の熱エネルギーを吸熱し、除湿後の空気の再熱に利用することができる空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品の製造工場、動物実験施設、植物栽培工場などでは、室内の温度、湿度の調整が求められる。この種の空調システムでは、目標となる湿度の空気を室内に導入するために、たとえば夏季など、外気の温度、湿度が高い場合には、外気を対応する絶対湿度まで冷却し、再加熱を行なうことで、所望の温度、湿度の空気を室内に供給するようにしている。
【0003】
冷却と再加熱の際に必要になるエネルギーを有効利用するために、たとえば特許文献1では、外気を絶対湿度まで冷却する前に、一旦予冷を行なうようにしている。このとき、予冷に用いられる熱交換用のコイルと、再加熱の熱交換用のコイルを熱媒体が流通する循環パイプで連繋し、循環パイプ内の熱媒体を循環ポンプで循環させることにより、予冷時に外気の熱エネルギーを吸収し、得られた熱エネルギーを再加熱に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-233968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、循環ポンプの出力は一定であるから、熱エネルギーの吸収、再加熱利用は成り行きの制御となり無駄が多く、エネルギー消費の抑制を図ることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、インバーター制御によりエネルギー効率を高めることのできる空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調システムは、
外気を取り入れて室内に供給するダクトと、
前記ダクトの上流側に配置される予冷熱交換器と、
前記予冷熱交換器の下流側に配置され、所定の絶対湿度まで空気流を冷却する冷却熱交換器と、
前記冷却熱交換器の下流側に配置される再熱熱交換器と、
を具え、
前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器を、熱媒体を循環ポンプにより循環させる循環パイプにより接続してなる、
空調システムであって、
前記循環ポンプはインバーター制御される。
【0008】
前記再熱熱交換器の下流側に第3温度センサーを具え、
前記循環ポンプは、前記第3温度センサーの温度検出値に基づいてインバーター制御することができる。
【0009】
前記室内には、湿度センサーを具え、
前記循環ポンプは、前記湿度センサーの湿度検出値に基づいてインバーター制御することができる。
【0010】
前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器は、前記循環ポンプと並列に配備された温熱源に切り替えて接続可能である。
【0011】
前記予冷熱交換器の上流側に外気温を測定する第1温度センサーを具え、
前記第1温度センサーの温度検出値に基づいて、前記循環ポンプ又は前記温熱源は、前記予冷熱交換器と前記再熱熱交換器に切り替えて接続することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空調システムによれば、予冷熱交換器と再熱熱交換器を熱的に接続する循環パイプは、熱媒体を送給する循環ポンプをインバーター制御している。これにより、熱損失が少ない効果的な条件で予冷熱交換器と再熱熱交換器の熱交換を行なうことができ、再熱時の温度調整等を行なうことができるから、エネルギー効率を可及的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る空調システムの概略フローシートである。
図2図2は、空気線図である。
図3図3は、室内温度と循環ポンプの周波数との関係を示すグラフである。
図4図4は、本発明の第2実施形形態に係る空調システムの概略フローシートである。
図5図5は、冷熱源の弁開度と露点温度との関係を示すグラフである。
図6図6は、ダクト下流の温度と循環ポンプの周波数との関係を示すグラフである。
図7図7は、ダクト下流の温度と二方弁の弁開度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の空調システム10について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
本発明の空調システム10は、図1に示すように、空調管理される空間60(適宜「室内」とも称する)に対し、外気を供給するシステムである。空調管理される空間60は、たとえば医薬品や食品の製造工場、動物実験施設、植物栽培工場などを挙げることができる。
【0016】
第1実施形態の空調システム10では、夏季などの温度、湿度が空間60よりも高い場合に、外気を一旦予冷した後、絶対湿度まで冷却することで湿度調整を行ない、湿度調整された空気を再加熱して室内60に供給する。
【0017】
具体的構成として、空調システム10は、外気に連通する空気取入口12を上流側に具え、下流側の空気吹出口13が室内60に連通したダクト11に、上流側から順に予冷熱交換器20、冷却熱交換器30及び再熱熱交換器40を配置して構成される。ダクト11には図示しないファンやフィルターを具え、ファンの作動によりフィルター濾過された外気がダクト11内に導入される。
【0018】
たとえば、予冷熱交換器20は予冷コイル21、冷却熱交換器30は外気処理エアコン31、再熱熱交換器40は再熱コイル41からそれぞれ構成することができる。
【0019】
予冷コイル21と再熱コイル41は、循環パイプ50により連結された閉回路を形成している。循環パイプ50には、閉回路内には水や不凍液などの熱媒体が収容され、循環ポンプ51により閉回路内で熱媒体を循環させるようにしている。循環ポンプ51は、後述する湿度インジケーターHICからの信号に基づきインバーター制御される。
【0020】
また、空調管理される室内60にはエアコン61を具え、室内60の温度を所定の温度に調整する。
【0021】
上記空調システム10において、予冷コイル21の上流側には外気温を測定する第1温度センサーT1、室内60には湿度センサーH、外気処理エアコン31の下流側に第2温度センサーT2を配置している。第1温度センサーT1の値は、循環ポンプ51の発停制御に用いられ、また、湿度センサーHの値に基づいて、湿度インジケーターHICは、循環ポンプ51の出力をインバーター制御するようにしている。第2温度センサーT2の値は、外気処理エアコン31の出力調整に用いられる。
【0022】
然して、第1実施形態の空調システム10は、第1温度センサーT1により測定された温度が、所定の温度よりも高い状況において、循環ポンプ51と外気処理エアコン31を作動させつつ、外気をダクト11内に導入することで湿度調整された空気流を室内60に供給し、エアコン61の作動により室内60の温度を一定に保持する。なお、第1温度センサーT1の値が所定の温度よりも低い場合には、循環ポンプ51による再熱は行なうことができないから循環ポンプ51は停止させる。
【0023】
図2は空気線図であり、図2中の点A乃至点Dは、図1の空調システム10における点A乃至点Dの各位置における空気流の状態を示している。図1及び図2に示すように、外気(点A:絶対湿度H1、温度t1)は、まず、予冷コイル21を通過することにより予冷され、点Aよりも低い温度の空気流(点B)になる。このとき、外気から奪われた熱エネルギーが予冷コイル21から熱媒体の移動により、再熱コイル41に蓄積される。なお、図2では、点Bは相対湿度100%の飽和線上にあるが、予冷コイル21の冷却能力により、左右にずれても構わない。
【0024】
予冷コイル21を通過した空気流(点B:絶対湿度H1)は、外気処理エアコン31に入り、さらに冷却を受けて、相対湿度100%となる飽和線に沿って点B(温度t2、絶対湿度H1)から、目標となる室温に対する相対湿度に相当する絶対湿度H2、温度t3(点C)に調整される。これにより、外気処理エアコン31から放出される空気流は、絶対湿度がH2に調整された空気流となる。
【0025】
続いて、外気処理エアコン31から放出された空気流は、再熱コイル41に送られて再加熱される。具体的には、予冷コイル21にて外気から奪った熱エネルギーにより再熱コイル41は空気流を昇温させて(点D:温度t4、絶対湿度H2)、室内60に送給する。
【0026】
室内60では、所定の設定温度となるようにエアコン61を作動させることで、絶対湿度H2の空気流が温度調整されて、所望の設定温度、湿度に維持される。熱損失がない場合には、予冷の熱エネルギーと再熱の熱エネルギーは同じであり、予冷温度分(t1-t2)だけ再熱により温度上昇(t4-t3)する。
【0027】
上記構成の空調システム10において、循環ポンプ51は、図3に示すグラフのように室内60の湿度に基づいて、周波数調整しつつインバーター制御される。具体的には、室内60の湿度センサーHにより測定される湿度が上昇(ΔSP2)すると、湿度インジケーターHICは、循環ポンプ51の動作周波数を上げて、循環ポンプ51の出力を増大させる。これにより、予冷コイル21において空気流から奪われる熱エネルギーが大きくなり、また、再熱コイル41により空気流に返還される熱エネルギーも大きくなり、室内60に供給される空気流の温度が上昇し、室内60の温度も上昇する。これにより、室内60の相対湿度は低下するが、エアコン61は室内60の温度を一定に調整するよう作動するから、最終的には、室内60の温度、湿度は一定に保たれる。
【0028】
なお、湿度インジケーターHICは、動作最低周波数をたとえば15ヘルツとし、湿度上昇(ΔSP2)が小さいときには、循環ポンプ51を停止させることでエネルギー消費の低減を図ることができる。
【0029】
本実施形態によれば、循環ポンプ51をインバーター制御することにより、予冷コイル21と再熱コイル41における熱エネルギーの移動を制御し、再熱量を調整できるから、エネルギー効率を可及的に高めることができる。
【0030】
<第2実施形態>
第2実施形態では、図4に示すように、予冷コイル21と再熱コイル41を第1実施形態と同様にインバーター制御の循環ポンプ51で接続すると共に、予冷コイル21と再熱コイル41は、循環ポンプ51と並列にボイラーやヒートポンプチラーの如き温熱源56を別熱源として接続している。温熱源56と予冷コイル21の間、温熱源56と再熱コイル41の間にはそれぞれバルブ57,58を配置し、温熱源56からの熱媒体の流通を許可又は阻止できるようにしている。また、循環パイプ50には、二方弁53を配置し、流通する熱媒体の量を調整可能としている。冷却熱交換器30は、水道などの冷熱源33を採用することができ、冷熱源33と冷却コイル32を接続するパイプ35には流量調節のためのバルブ34が設けられている。空調の制御対象となる室内60は、図1と同様であるため図示等を省略する。また、第1実施形態と同じ符号は同じ又は同等の部材を意味し、適宜説明を省略する。
【0031】
第2実施形態の空調システム10は、図4に示すように、外気温度を測定する第1温度センサーT1、再熱コイル41の下流側に露点温度を測定する露点温度センサーDP1と第3温度センサーT3を具える。そして、温度インジケーターTIC1は、第1温度センサーT1の温度を参照してリレーRを介して循環ポンプ51の発停制御と、バルブ57,58の開閉、温熱源56の発停を制御し、また、二方弁53を制御するための信号を温度インジケーターTIC3に送信する。温度インジケーターTIC3は、第3温度センサーT3の温度を参照し、循環ポンプ51による制御の場合、循環ポンプ51をインバーター制御し、温熱源56と二方弁53による制御の場合には、後述するとおり、その弁開度の調整を行なう。また、露点温度センサーDP1は、露点温度インジケーターDICに接続され、露点温度インジケーターDICは、測定された露点温度に基づいて、バルブ57,58の開度を調整する。
【0032】
然して、外気温T1が設定温度SP1(SP1は、循環ポンプ51の容量に応じてT2よりもx℃高く設定することができる)よりも高い場合には、二方弁53を全開にする。また、バルブ57,58を閉じて温熱源56が作用しない状況下で、循環ポンプ51と冷熱源33を動作させる。これにより、第1実施形態と同様に、予冷コイル21にて空気が予冷或いは昇温され、下流側の冷却コイル32は冷熱源33により冷却されて空気流の絶対湿度が調整される。なお、冷熱源33のバルブ34は、図5に示すように、露点温度が高くなるにつれて開度が大きくなるように調整することで、絶対湿度調整を行なうことができる。
【0033】
本実施形態においても、再熱コイル41により室内60に供給される空気の温度T3が目標温度であるSP3となるように循環ポンプ51をインバーター制御する。インバーター制御は、図6に示すように、温度T3が目標温度SP3に近づくと、最低周波数Nヘルツで循環ポンプ51を作動させ、さらに温度T3がたとえばS℃超えると停止させる動作を繰り返すよう制御すればよい。このように、循環ポンプ51をインバーター制御することにより、予冷コイル21と再熱コイル41における熱エネルギーの移動を制御し、再熱量を調整できるから、エネルギー効率を可及的に高めることができる。
【0034】
夏季以外のように、外気温T1が設定温度SP1(温度T2+x℃)よりも低い場合には、循環ポンプ51による再熱は行なうことができないから、循環ポンプ51を停止させ、温熱源56に切り替える。なお、外気温T1は温度T2よりも高ければ、熱交換は可能ではあるが、循環ポンプ51によるエネルギー消費を勘案し、外気温T1が温度T2よりもx℃以上高くなければ循環ポンプ51を停止させている。
【0035】
バルブ557,58を開いて温熱源56を作動させることで、再熱コイル41は強制的に昇温される。再熱量のコントロールは、図7に示すように、第3温度センサーT3の値を参照し、温度が上昇するにつれて二方弁53の弁開度が小さくなるように制御し、第3温度センサーT3の温度が一定になるように制御すればよい。これにより、夏季だけでなく、すべての季節に再熱コイル41による熱交換を行なうことができ、エネルギー効率を高めた空調システム10による湿度調整が可能になる。
【0036】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 空調システム
20 予冷熱交換器
21 予冷コイル
30 冷却熱交換器
31 外気処理エアコン
40 再熱熱交換器
41 再熱コイル
51 循環ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7