IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松本機械製作所の特許一覧

<>
  • 特許-遠心分離装置 図1
  • 特許-遠心分離装置 図2
  • 特許-遠心分離装置 図3
  • 特許-遠心分離装置 図4
  • 特許-遠心分離装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】遠心分離装置
(51)【国際特許分類】
   B04B 3/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B04B3/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019088429
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020182909
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391041350
【氏名又は名称】株式会社松本機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】阪口 健作
(72)【発明者】
【氏名】新田 純也
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-249146(JP,A)
【文献】実開昭49-023871(JP,U)
【文献】特開平06-226144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられて軸線を横方向に向けた状態で配置された円筒状のバスケットと、前記バスケットの開口部の近傍に設定された閉位置と該閉位置よりも前記バスケットの開口部の前方側に設定された退避位置との間を前記バスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられて、前記閉位置にあるときに外周寄りの部分に設けられたフランジ部を前記バスケットの開口部側の端面に突き合わせた状態で前記バスケットの開口部を閉じ、前記閉位置から前記退避位置に向けて変位する過程で前記フランジ部を前記バスケットの開口部側の端面から離反させて前記バスケットの開口部を開く蓋板と、前記バスケットの周壁部に設けられた透孔を通して前記バスケット内から排出される液分を受け入れる液分回収室と、前記液分回収室に隣接させた状態で前記バスケットの開口部の前方側に設けられて前記バスケットの開口部から排出されるケーキを受け入れるケーキ回収室とを備えて、前記蓋板により前記バスケットの開口部を閉じた状態で前記バスケットを回転させて該バスケット内に供給された原液の固液分離処理を行う遠心分離装置であって、
前記液分回収室と前記ケーキ回収室との間を仕切る隔壁部が、前記バスケットの開口部側の端部を外側から取り囲んだ状態で設けられ、
前記バスケットの開口部側の端面と該開口部を閉じている前記蓋板のフランジ部との突き合わせ部を外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部が、前記突き合わせ部側に開口した状態で前記隔壁部側に設けられて、前記固液分離処理時に前記バスケットの開口部側の端面と前記蓋板のフランジ部との突き合わせ部から漏液が生じたときに漏れた液を前記漏液捕捉用溝部内に受け入れて捕捉することにより、漏れた液が前記ケーキ回収室側に侵入するのを防ぐように構成されていること、
を特徴とする遠心分離装置。
【請求項2】
軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられて軸線を横方向に向けた状態で配置された円筒状のバスケットと、前記バスケット内の前記底壁部に近接した位置に設定された後退位置と前記バスケットの開口部の外方に設定された最終前進位置との間を前記バスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられたケーキ押出板と、外周寄りの部分にフランジ部を有して前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記フランジ部を前記バスケットの開口部側の端面に突き合わせて前記バスケットの開口部を閉じた状態にする閉位置に配置され、前記ケーキ押出板の前記最終前進位置側への変位に連動して前記閉位置から該閉位置より前記バスケットの開口方向の前方に設定された退避位置まで変位するように設けられて、前記退避位置に向けて変位する過程で前記フランジ部を前記バスケットの開口部から離反させて前記バスケットの開口部を開く蓋板と、前記バスケットの周壁部に設けられた透孔を通して排出される液分を受け入れる液分回収室と、前記液分回収室に隣接させた状態で前記バスケットの開口部の前方に設けられて前記バスケットの開口部から排出されるケーキを受け入れるケーキ回収室とを備えて、前記バスケットの開口部を前記蓋板により閉じた状態で前記バスケットを回転させて前記バスケット内に供給された原液の固液分離処理を行う遠心分離装置であって、
前記液分回収室と前記ケーキ回収室との間を仕切る隔壁部が、前記バスケットの開口部側の端部を外側から取り囲んだ状態で設けられ、
前記バスケットの開口部側の端面と該開口部を閉じている前記蓋板のフランジ部との突き合わせ部を外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部が、前記突き合わせ部側に開口した状態で前記隔壁部側に設けられて、前記固液分離処理時に前記バスケットの開口部側の端面と前記蓋板のフランジ部との突き合わせ部から漏液が生じたときに漏れた液を前記漏液捕捉用溝部内に受け入れて捕捉することにより、漏れた液が前記ケーキ回収室側に侵入するのを防ぐように構成され、
前記漏液捕捉用溝部内に捕捉されて該漏液捕捉用溝部の下部に達した漏液を前記液分回収室内又は前記液分回収室とは別に設けられた漏液回収部に流出させるための排液流出口が前記隔壁部の下部に設けられていること、
を特徴とする遠心分離装置。
【請求項3】
前記蓋板が前記閉位置にあるとき及び前記蓋板が前記退避位置に向けて変位する過程で前記バスケットとともに回転しながら前記漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して該漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態に保つ漏液捕捉用溝部閉鎖手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心分離装置。
【請求項4】
前記蓋板は、外周部が前記バスケットの開口部の内周に一定の嵌合代を持って嵌合するように構成された本体部分と、前記本体部分の外周部から径方向の外側に突出したフランジ部とを有して、前記ケーキ押出板が後退位置にあるときに前記蓋板の本体部分の外周部が前記バスケットの開口部の内周部に嵌合するとともに前記フランジ部を前記バスケットの開口部側の端面に突き合わせた状態で前記バスケットの開口部を閉じ、前記ケーキ押出板が最終前進位置に向けて変位していく過程で先ず前記フランジ部が前記バスケットの開口部側の端面から離反した後、前記蓋板の本体部分の外周部が前記バスケットの開口部の内周から外れて前記バスケットの開口部を開くように構成され、
前記漏液捕捉用溝部の開口部の内側で第1の位置と該第1の位置よりも前記バスケットの開口部の前方側に寄った位置に設定された第2の位置との間を前記バスケットの軸線方向に沿って往復変位し得る環状のシャッター部材と、前記シャッター部材を前記第2の位置側に付勢するバネとが前記バスケットの開口部側の端部に設けられ、
前記シャッター部材は、前記蓋板の外径に等しい外径を有するように形成されて、前記シャッター部材の外周面と前記蓋板の外周面とが同一の円筒面上に配置され、
前記シャッター部材が前記第1の位置にあるときに前記閉位置にある蓋板のフランジ部と前記シャッター部材とが軸線方向に並んだ状態で配置されるように前記シャッター部材の前記第1の位置が設定されていて、前記蓋板が前記閉位置から退避位置に向けて変位する過程で、前記シャッター部材が前記バネの付勢力により前記蓋板に追従して前記第2の位置まで変位するように構成され、
前記蓋板が前記閉位置から退避位置に向けて変位していく過程で前記シャッター部材が前記蓋板に追従して変位している間は、前記蓋板のフランジ部の外周面と前記シャッター部材の外周面との双方が前記漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して前記漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態を保ち、前記シャッター部材が前記第2の位置に達して停止した後は前記シャッター部材の外周面が単独で前記漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して前記漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態に保つように構成されていること、
を特徴とする請求項2に記載の遠心分離装置。
【請求項5】
前記蓋板が前記閉位置から退避位置に向けて変位していく過程で前記シャッター部材が前記第2の位置に達して停止した後に前記蓋板の本体部分の外周部が前記バスケットの開口部の内周から外れるように前記蓋板が構成されている請求項4に記載の遠心分離装置。
【請求項6】
前記蓋板のフランジ部の外周及び前記シャッター部材の外周には、それぞれの周方向に伸びる複数の溝部が前記バスケットの軸線方向に並べた状態で形成されている請求項4又は5に記載の遠心分離装置。
【請求項7】
可撓性を有する材料からなっていて前記バスケットの開口部に一端が固定されるとともに、他端が前記ケーキ押出板の外周部に固定されて前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記バスケットの周壁部の内周を覆った状態で配置され、前記ケーキ押出板が前記後退位置から前記最終前進位置に向けて変位する過程で反転させられる可撓スリーブが設けられている請求項4、5又は6に記載の遠心分離装置。
【請求項8】
前記バスケットの周壁部の前記可撓スリーブにより覆われる部分に、液分を通過させるための多数の透孔が形成され、
前記可撓スリーブは、液分をろ過する機能を有するフィルタ材料からなっていることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離装置。
【請求項9】
前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記ケーキ押出板と前記バスケットの底壁部との間に隙間が形成されるように前記ケーキ押出板の後退位置が設定されていて、前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記バスケット内の空間が前記隙間を形成する空間と前記固液分離処理を行う固液分離処理空間とに仕切られるように構成され、
前記固液分離処理により前記バスケット内の固液分離処理空間内に形成された上澄み液を前記ケーキ押出板と前記バスケットの底壁部との間に形成された隙間内に排出するための流路を内部に有する排液流路形成部材が前記ケーキ押出板を貫通した状態で前記ケーキ押出板に取り付けられ、
前記透孔は、前記ケーキ押出板と前記バスケットの底壁部との間の隙間内に臨む部分に設けられ、
前記ケーキ押出板を前記後退位置に位置させて前記蓋板により前記バスケットの開口部を閉じた状態で前記バスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすることにより前記バスケット内に存在する上澄み液を前記排液流路形成部材の内部の流路を通して前記ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に排出し得るように構成された請求項4ないし7の何れか一つに記載の遠心分離装置。
【請求項10】
前記排液流路形成部材は、前記バスケットの回転中心軸線から偏心した位置で前記ケーキ押出板を前記バスケットの軸線方向に沿って貫通した押出板貫通部と、前記バスケット内の前記固液分離処理空間内に配置された前記押出板貫通部の一端に後端部が接続されるとともに、先端部が前記バスケットの周壁部に向けられた液分導入部とを備え、
前記排液流路形成部材の前記液分導入部は、前記バスケットの回転に伴って生じる遠心力により前記バスケットの外径側に変位させられる可動部と、前記可動部を前記バスケットの内径側に付勢する付勢手段とを備え、
前記バスケット内の気圧が前記設定圧力以下のときに前記バスケット内の液が前記排液流路形成部材内の流路を通して前記ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に流出するのを阻止し、前記バスケット内の気圧が前記設定圧力を超えているときに前記バスケット内の液が前記排液流路形成部材内の流路を通して前記ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に流出するのを許容するチェックバルブが前記排液流路形成部材に取り付けられている請求項9に記載の遠心分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液を液分とケーキ分(固形分)とに分離する固液分離処理を行う遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固液分離処理を行う遠心分離装置は、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられた円筒状のバスケットと、このバスケットを回転させる回転駆動機構とを備えて、回転しているバスケット内に原液を供給することにより、原液を液分とケーキ分(固形分)とに分離する固液分離処理を行うように構成される。
【0003】
薬品の製造等に用いる遠心分離装置では、固液分離処理により分離された液分及びケーキ分が接触して汚染し合うことがないようにすることが必要とされることが多い。固液分離処理により分離された液分とケーキとが汚損し合うのを防ぐことを重視する場合には、バスケットを、その中心軸線を横方向に向けた状態で配置するとともに、バスケットの周壁部に設けられた透孔を通してバスケット内から排出される液分を受け入れて回収する液分回収室と、バスケットの開口部から排出されるケーキを受け入れて回収するケーキ回収室とを横方向に隣接させた状態で設けて、これらの回収室の間を隔壁により仕切ることにより、分離された液分とケーキとが接触するのを防ぐようにしている。この種の遠心分離機は例えば、特許文献1や特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-249146号公報
【文献】特開2002-177821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された遠心分離装置においては、横方向に延びる集液用の樋をケーキ回収室内の下部に配置して、バスケットの開口端の外周部と仕切り壁との間の隙間から漏出した液分を集液用樋により受け止めることにより、漏出した液分がケーキ回収室内に流入するのを防ぐことを意図している。
【0006】
通常バスケットの開口部と蓋板との間にはシール部材が設けられており、このシール部材が正常である間は、固液分離処理時にバスケットの開口部側の端面とバスケットの開口部を閉じる蓋板との突き合わせ部から液が漏出することはない。しかしながら、シール部材が劣化した場合には、固液分離処理時に当該突き合わせ部から液が漏出するようになる。漏出した液は、バスケットの回転に伴って生じる遠心力により周囲に飛散するため、特許文献1に示されているように、ケーキ回収室内の下部に、水平方向に延びる集液樋を設けただけでは、バスケットの開口部側の端面とバスケットの開口部を閉じる蓋板との突き合わせ部から漏れた液が、ケーキ回収室内に侵入するのを防ぐことができない。
【0007】
特許文献2に示された遠心分離装置においては、ケーキ回収室と液分回収室との間を仕切る隔壁部とバスケットとの間の隙間にエアを供給することによりエアカーテンを形成して、このエアカーテンにより、ケーキ回収室内のケーキが液分回収室内に侵入したり、液分回収室内の液分がケーキ回収室内に侵入したりするのを防ぐようにしでいる。
【0008】
しかしながら、固液分離処理時にバスケットの開口部側の端面とバスケットの開口部を閉じる蓋板との突き合わせ部から漏出してバスケットの回転に伴って生じる遠心力により周囲に飛散した液分は、エアカーテンを貫通してしまうことがあるため、特許文献2に示された構成によったとしても、蓋板とバスケットの開口部側の端面との突き合わせ部から漏出した液がケーキ回収室側に侵入するのを十分に防ぐことはできない。
【0009】
本発明の目的は、固液分離処理時にバスケットの開口部側の端面とバスケットの開口部を閉じる蓋板との突き合わせ部から液が漏れた場合に、漏れた液がケーキ回収室内に侵入してケーキ回収室内を汚損するのを、従来技術による場合よりも更に効果的に防ぐことができるようにした遠心分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書においては、前記の目的を達成するために、少なくとも、以下に示す第1ないし第10の発明が開示される。
<第1の発明>
第1の発明は、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられて軸線を横方向に向けた状態で配置された円筒状のバスケットと、このバスケットの開口部の近傍に設定された閉位置と該閉位置よりもバスケットの開口部の前方側に設定された退避位置との間をバスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられて、閉位置にあるときに外周寄りの部分に設けられたフランジ部をバスケットの開口部側の端面に突き合わせた状態でバスケットの開口部を閉じ、閉位置から退避位置に向けて変位する過程でフランジ部をバスケットの開口部側の端面から離反させてバスケットの開口部を開く蓋板と、バスケットの周壁部に設けられた透孔を通してバスケット内から排出される液分を受け入れる液分回収室と、この液分回収室に隣接させた状態でバスケットの開口部の前方側に設けられてバスケットの開口部から排出されるケーキを受け入れるケーキ回収室とを備えて、前記蓋板によりバスケットの開口部を閉じた状態でバスケットを回転させて該バスケット内に供給された原液の固液分離処理を行う遠心分離装置を対象とする。
【0011】
本発明においては、液分回収室とケーキ回収室との間を仕切る隔壁部が、バスケットの開口部側の端部を外側から取り囲んだ状態で設けられ、バスケットの開口部側の端面と該開口部を閉じている蓋板のフランジ部との突き合わせ部を外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部が、突き合わせ部側に開口した状態で隔壁部側に設けられて、固液分離処理時にバスケットの開口部側の端面と蓋板のフランジ部との突き合わせ部から漏液が生じたときに、漏れた液を漏液捕捉用溝部内に受け入れて捕捉することにより、漏れた液がケーキ回収室側に侵入するのを防ぐように構成される。
【0012】
上記のように構成すると、バスケットの開口部側の端面と蓋板との突き合わせ部から漏液が生じたときに、漏れた液が漏液捕捉用溝部内に捕捉されるため、漏れた液がケーキ回収室内に侵入してケーキ回収室内を汚損するのを防ぐことができる。
【0013】
<第2の発明>
第2の発明は、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられて軸線を横方向に向けた状態で配置された円筒状のバスケットと、このバスケット内の底壁部に近接した位置に設定された後退位置と該バスケットの開口部の外方に設定された最終前進位置との間を該バスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられたケーキ押出板と、外周寄りの部分にフランジ部を有してケーキ押出板が後退位置にあるときに該フランジ部をバスケットの開口部側の端面に突き合わせてバスケットの開口部を閉じた状態にする閉位置に配置され、前記ケーキ押出板の最終前進位置側への変位に連動して閉位置から該閉位置よりバスケットの開口方向の前方に設定された退避位置まで変位するように設けられて、上記退避位置に向けて変位する過程でフランジ部をバスケットの開口部から離反させてバスケットの開口部を開く蓋板と、バスケットの周壁部に設けられた透孔を通して排出される液分を受け入れる液分回収室と、この液分回収室に隣接させた状態でバスケットの開口部の前方に設けられて前記バスケットの開口部から排出されるケーキを受け入れるケーキ回収室とを備えて、バスケットの開口部を蓋板により閉じた状態でバスケットを回転させてバスケット内に供給された原液の固液分離処理を行う遠心分離装置を対象とする。
【0014】
本発明においては、バスケットの開口部側の端面と該開口部を閉じている蓋板のフランジ部との突き合わせ部を外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部が、該突き合わせ部側に開口した状態で前記隔壁部側に設けられて、固液分離処理時に前記バスケットの開口部側の端面と前記蓋板のフランジ部との突き合わせ部から漏液が生じたときに漏れた液を前記漏液捕捉用溝部内に受け入れて捕捉することにより、漏れた液がケーキ回収室側に侵入するのを防ぐように構成される。また漏液捕捉用溝部内に捕捉されて該漏液捕捉用溝部の下部に達した漏液を液分回収室内又は前記液分回収室とは別に設けられた漏液回収部に流出させるための排液流出口が前記隔壁部の下部に設けられる。
【0015】
<第3の発明>
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に適用されるもので、本発明においては、前記蓋板が閉位置にあるとき及び前記蓋板が退避位置に向けて変位する過程で前記バスケットとともに回転しながら漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して該漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態に保つ漏液捕捉用溝部閉鎖手段が設けられる。
【0016】
上記のように漏液捕捉用溝部閉鎖手段を設けておくと、固液分離処理が終了した後、バスケット内に形成されたケーキ分をケーキ回収室内に排出する際に、バスケットから排出されたケーキが漏液捕捉用溝部内に侵入するのを防ぐことができるため、ケーキ分が液分回収室側又は漏液回収部に侵入するのを防ぐことができる。
【0017】
<第4の発明>
第4の発明は、第2の発明に適用される。本発明においては、外周部がバスケットの開口部の内周に一定の嵌合代を持って嵌合するように構成された本体部分と、該本体部分の外周部から径方向の外側に突出したフランジ部とを有するように前記蓋板が構成されていて、前記ケーキ押出板が後退位置にあるときに蓋板の本体部分の外周部がバスケットの開口部の内周に嵌合するとともにフランジ部をバスケットの開口部側の端面に突き合わせた状態でバスケットの開口部を閉じ、ケーキ押出板が最終前進位置に向けて変位していく過程で先ずフランジ部がバスケットの開口部側の端面から離反した後、蓋板の本体部分の外周部がバスケットの開口部の内周から外れて前記バスケットの開口部を開くように構成される。
【0018】
また本発明においては、漏液捕捉用溝部の開口部の内側で第1の位置と該第1の位置よりもバスケットの開口部の前方側に寄った位置に設定された第2の位置との間をバスケットの軸線方向に沿って往復変位し得る環状のシャッター部材と、このシャッター部材を前記第2の位置側に付勢するバネとがバスケットの開口部側の端部に設けられる。シャッター部材は、蓋板の外径に等しい外径を有するように形成されて、シャッター部材の外周面と蓋板の外周面とが同一の円筒面上に配置される。またシャッター部材が前記第1の位置にあるときに閉位置にある蓋板のフランジ部とシャッター部材とが軸線方向に並んだ状態で配置されるようにシャッター部材の前記第1の位置が設定されていて、蓋板が前記閉位置から退避位置に向けて変位する過程で、シャッター部材が前記バネの付勢力により蓋板に追従して前記第2の位置まで変位するように構成され、蓋板が前記閉位置から退避位置に向けて変位していく過程で前記シャッター部材が蓋板に追従して変位している間は、該蓋板のフランジ部の外周面とシャッター部材の外周面との双方が漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態を保ち、シャッター部材が前記第2の位置に達して停止した後は該シャッター部材の外周面が単独で前記漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して該漏液捕捉用溝部の開口部を閉鎖した状態に保つように構成される。
【0019】
<第5の発明>
第5の発明は、第4の発明に適用されるもので、本発明においては、前記蓋板が閉位置から退避位置に向けて変位していく過程で前記シャッター部材が前記第2の位置に達して停止した後に前記蓋板の本体部分の外周部がバスケットの開口部の内周から外れるように前記蓋板が構成される。
【0020】
<第6の発明>
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明に適用されるもので、本発明においては、前記蓋板のフランジ部の外周及びシャッター部材の外周に、それぞれの周方向に伸びる複数の溝部が前記バスケットの軸線方向に並べた状態で形成される。
【0021】
このように、蓋板のフランジ部の外周及びシャッター部材の外周に溝部を設けておくと、バスケットの回転により生じる遠心力により飛ばされて漏液捕捉用溝部の上部内面に付着した漏液が蓋板のフランジ部の外周及びシャッター部材の外周に落下したときに、落下した液を溝部内に捉えて、落下した液が液分回収室側及びケーキ回収室側に移動するのを防ぐことができるため、漏液が液分回収室側及びケーキ回収室側に侵入するのをより確実に防ぐことができる。
【0022】
<第7の発明>
第7の発明は、第4の発明、第5の発明又は第6の発明に適用されるもので、本発明においては、可撓性を有する材料からなっていてバスケットの開口部に一端が固定されるとともに、他端がケーキ押出板の外周部に固定されてケーキ押出板が前記後退位置にあるときにバスケットの周壁部の内周を覆った状態で配置され、ケーキ押出板が前記後退位置から最終前進位置に向けて変位する過程で反転させられる可撓スリーブが設けられる。
【0023】
上記のように可撓スリーブを設けておくと、固液分離処理によりバスケット内に形成されたケーキを回収する際に、反転した可撓スリーブに付着したケーキをバスケットの回転に伴って生じる遠心力によりケーキ回収室内にふるい落とすことができるため、ケーキの回収を容易に行わせることができる。
【0024】
<第8の発明>
第8の発明は、第7の発明に適用されるもので、本発明においては、バスケットの周壁部の可撓スリーブにより覆われる部分に液分を通過させるための多数の透孔が形成される。この場合、可撓スリーブは、液分をろ過する機能を有するフィルタ材料により形成する。
【0025】
このように構成した場合には、回転するバスケット内に供給した原液に含まれる液分を、可撓スリーブとバスケットの周壁部の透孔とを通して液分回収室内に排出させて、原液をろ過することにより、原液を液分とケーキ分とに分離する固液分離処理を行わせることができる。
【0026】
<第9の発明>
第9の発明は、第4の発明ないし第7の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、ケーキ押出板が後退位置にあるときにケーキ押出板とバスケットの底壁部との間に隙間が形成されるようにケーキ押出板の後退位置が設定されていて、ケーキ押出板が後退位置にあるときにバスケット内の空間が前記隙間を形成する空間と固液分離処理空間とに仕切られるように構成される。またバスケット内の固液分離処理空間内に存在する上澄み液をケーキ押出板とバスケットの底壁部との間に形成された隙間内に排出するための流路を内部に有する排液流路形成部材がケーキ押出板を貫通した状態でケーキ押出板に取り付けられる。また液分を排出するための透孔が、バスケットの周壁部のケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に臨む部分に設けられ、ケーキ押出板を後退位置に位置させて蓋板によりバスケットの開口部を閉じた状態でバスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすることにより、固液分離処理空間内に存在する上澄み液を排液流路形成部材の内部の流路を通してケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間に排出するように構成される。この場合、バスケットの周壁部の固液分離処理空間に臨む部分には、透孔を設けてもよく、設けなくてもよい。
【0027】
バスケットの周壁部の固液分離処理空間に臨む部分に透孔を設けない場合には、バスケット内に供給された原液がバスケットの回転に伴って生じる遠心沈降作用により液分とケーキ分とに分離される。即ち、バスケット内の固液分離処理空間に原液を供給すると、原液に含まれる液分及びケーキ分のうち、比重が大きいケーキ分がバスケットの周壁部側に沈降してバスケットの周壁部の内側にケーキ層を形成していき、このケーキ層の内側に上澄み液層が形成される。従ってケーキ分を十分に沈降させた後バスケット内から上澄み液を排出することにより、原液を液分とケーキ分とに分離することができる。上記の構成によった場合には、バスケット内の固液分離処理空間内に存在する上澄み液をケーキ押出板に取り付けた排液流路形成部材を通して外部に排出することができる。
【0028】
またバスケットの周壁部の固液分離処理空間に臨む部分にも透孔を設けた場合には、ろ過方式と遠心沈降方式との双方の方式により固液分離処理を行わせることができ、ケーキ分の粒子が緻密で、ケーキ層がある程度厚くなった場合にケーキ層とバスケットの周壁部の透孔とを通して液分を排出することができなくなるような場合でも、固液分離処理を効率よく行わせることができる。
【0029】
<第10の発明>
第10の発明は第9の発明に適用されるもので、本発明においては、上記排液流路形成部材が、バスケットの回転中心軸線から偏心した位置でケーキ押出板をバスケットの軸線方向に沿って貫通した押出板貫通部と、バスケット内の固液分離処理空間内に配置された押出板貫通部の一端に後端部が接続されるとともに、先端部がバスケットの周壁部に向けられた液分導入部とを備えている。排液流路形成部材の液分導入部は、バスケットの回転に伴って生じる遠心力によりバスケットの外径側に変位させられる可動部と、該可動部をバスケットの内径側に付勢する付勢手段とを備えている。また、バスケット内の気圧が設定圧力以下のときにバスケット内の液が排液流路形成部材内の流路を通してバスケット内の第1の空間に流出するのを阻止し、バスケット内の気圧が設定圧力を超えているときにバスケット内の液が排液流路形成部材内の流路を通してバスケット内の第1の空間に流出するのを許容するチェックバルブが排液流路形成部材に取り付けられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、バスケットの開口部側の端面と該開口部を閉じている蓋板のフランジ部との突き合わせ部を外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部を、当該突き合わせ部側に開口させた状態で、液分回収室とケーキ回収室との間を仕切る隔壁部側に設けたので、バスケットの開口部側の端面と蓋板のフランジ面との突き合わせ部から漏液が生じたときに、漏れた液がケーキ回収室内に侵入してケーキ回収室内を汚損するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態において、ケーキ押出板が後退位置に配置されている状態を示した縦断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態において、ケーキ押出板が最終前進位置まで変位した状態での要部の構成を示す縦断面図である。
図3図3(A)及び(B)はそれぞれ図1のA部及びB部の拡大断面図である。
図4図4(A)及び(B)はそれぞれ本実施形態において、バスケットの開口部を閉じる蓋板がバスケットの開口部を開くために、バスケットの開口部側の端面から離れ始めたときの、図1のA部及びB部の拡大断面図である。
図5図5は本発明の他の実施形態の要部の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1を参照すると、本実施形態において、ケーキ押出板が後退位置にある状態での装置の全体的な構成が示されており、図2を参照すると、ケーキ押出板が最終前進位置にある状態での装置の要部の構成が示されている。図1及び図2において、1は周壁部101と、該周壁部の軸線方向の一端を閉じる底壁部102と、周壁部101の軸線方向の他端に形成された開口部103とを有する円筒状のバスケットである。バスケット1は、その周壁部の中心軸線を水平方向に向けた状態で配置されていて、後述する回転駆動機構により、周壁部101の中心軸線を中心にして回転するように駆動される。
【0033】
バスケット1内からのケーキの排出を容易にするため、バスケット1の周壁部101には、バスケットの底壁部102側から開口部103側に向かうに従って徐々に内径が大きくなっていく向きのテーパが付けられており、バスケット1の内径は、バスケットの底壁部102側から開口部103側に向かうに従って徐々に大きくなっている。
【0034】
図1及び図2において、2はバスケット1とともに回転しながらバスケット1の軸線方向に変位させられる円板状のケーキ押出板である。本実施形態では、ケーキ押出板2の両主面のうちの一方及び他方をそれぞれ該ケーキ押出板の一面2a及び他面2b(図2参照)とする。
【0035】
ケーキ押出板2は、その一面2a及び他面2bをそれぞれバスケット1の底壁部102側及び該底壁部102と反対側に向けた状態で、かつ回転の中心軸線をバスケット1の回転中心軸線に一致させた状態でバスケット1とともに回転するように設けられていて、その一面2aがバスケット1内でバスケット1の底壁部102に近接した状態になる位置に設定された後退位置(図1に示す位置)と、バスケット1の開口部103の前方に設定された最終前進位置(図2に示す位置)との間をバスケット1の軸線方向に沿って直線変位し得るように設けられている。ケーキ押出板2の外径は、後退位置にあるケーキ押出板2の外周に対向するバスケットの周壁部101の内径よりも僅かに小さく設定されている。ケーキ押出板2は、後述するリニア駆動機構により、後退位置と最終前進位置との間を直線往復変位するように駆動される。
【0036】
バスケット1内の空間のうち、ケーキ押出板2が後退位置にあるときに,ケーキ押出板2よりも開口部103側に位置する部分に形成される空間により固液分離処理空間S(図1参照)が構成され、この処理空間S内で固液分離処理が行われる。
【0037】
バスケット1の開口部103を開閉するため、円形の輪郭形状を有する蓋板3が設けられている。図1及び図2に示されているように、蓋板3は、バスケットの周方向に等角度間隔で並ぶように配置された少なくとも3本の連結棒4を介してケーキ押出板2に連結されていて、ケーキ押出板2と連動して、図1に示す閉位置と図2に示す退避位置との間を変位させられる。蓋板3は、閉位置にあるときにその中央寄りの部分がバスケットの開口部の内周に嵌合するとともに、その外周寄りの部分に設けられたフランジ部がバスケット1の開口部側の端面に突き合わされた状態になって、バスケット1の開口部を閉じた状態になり、退避位置に向けて変位していく過程でバスケットの開口部を開いて、最終的には図2に示すようにバスケットの開口部の前方に設定された退避位置に配置された状態になる。
【0038】
固液分離処理を外部から遮蔽された空間内で行わせるため、バスケット1を収容するスペースと、バスケット1から排出されるケーキを受け入れるスペースとを内部に有するケーシング20が設けられている。図示のケーシング20は、バスケット1を取り囲むように設けられて、軸線方向の一端が後記するフレーム15に支持された円筒状のバスケット収容部2OAと、バスケット収容部20Aの軸線方向の他端に一端が接続された前カバー20Bとからなっている。バスケット収容部20Aの内側にバスケットから排出される液分を受け入れて回収する液分回収室R1が形成され、前カバー20Bの内側に、バスケットから排出されるケーキを受け入れて回収するケーキ回収室R2が形成されている。バスケット収容部20Aの下部には、液分回収室R1内に排出された液分を外部に排出するために用いる排液管22が取り付けられている。前カバー20Bの下部には、ケーキ排出用シュート21が取り付けられ、バスケット1の開口部から排出されたケーキが、ケーキ排出用シュート21を通して下方に排出されるようになっている。
【0039】
図3及び図4に示されているように、バスケットの周壁部101の開口部103側の端部にフランジ104が一体的に設けられ、フランジ104の内周部と外周部との間の中間部付近に、バスケット1と中心軸線を共有した状態でバスケット1の開口方向に突出した円筒部105が設けられている。
【0040】
バスケット1の周壁部101の内周には、金属フィルタ7が配置されている。金属フィルタ7は、金網や多孔板などからなっていて、バスケット1の周壁部101の内周に添わせた状態で配置されたフィルタ本体701と、フィルタ本体701の軸線方向の一端に内周部が固定された環状のフィルタ取付板702とからなっている。フィルタ取付板702は、バスケットのフランジ104から突出した円筒部105の内周に嵌合されて、フランジ104の外端面に当接されている。フィルタ取付板702は、ボルト703によりフランジ104に締結され、これにより金属フィルタ7の軸線方向の一端が、バスケット1の開口部側の端部に固定されている。フィルタ本体701の軸線方向の他端は、バスケットの底壁部102の外周寄りの部分に形成された環状の溝内に嵌入される等の適宜の手段によりバスケット1に対して固定されている。フィルタ取付板702とバスケットのフランジ部104との間には、これらの間を液密にシールするパッキン704が挿入されている。
【0041】
本実施形態では、バスケット1の周壁部101の内側に配置されたフィルタ本体701の内側に、可撓性を有する材料からなる筒状の可撓スリーブ8が配置される。本実施形態では、可撓スリーブ8にろ過機能を持たせるため、可撓スリーブ8が、液分を透過させる布などのフィルタ材料により形成されていて、可撓スリーブ8と金属フィルタ7のフィルタ本体701との双方を通して原液のろ過が行われる。可撓スリーブ8の一端は、バスケット1の開口部に適宜の手段により固定される。図示の例では、可撓スリーブ8の一端がフィルタ取付板702を覆うように配置され、可撓スリーブ8の先端8aが、フィルタ取付板702の内周部と円筒部105との間に形成された環状の隙間内に挿入されている。
【0042】
また円筒部105の内周に環状のスリーブ押え板106が嵌合され、このスリーブ押え板106が、バスケットのフランジ104に固定されたフィルタ取付板702に図示しないボルトによって締結されている。これにより、可撓スリーブ8の一端がスリーブ押え板106とフィルタ取付板702との間に挟み込まれた状態でバスケット1に対して固定されている。可撓スリーブ8の他端は、ケーキ押出板2の外周部に適宜の手段により固定されている。可撓スリーブ8は、図1に示すように、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにバスケットの周壁部101の内周を覆った状態で配置され、ケーキ押出板2が最終前進位置に向けて変位していく過程で反転させられる。可撓スリーブ8は、最終的には完全に反転された状態にされて、図2に示すように、バスケット1の開口端と最終前進位置にあるケーキ押出板2との間に張り渡された状態にされる。
【0043】
図3(A)及び図4(A)に示されているように、スリーブ押え板106の蓋板3側の端部には、円筒部105の外径側に突出した拡大径部106aが形成されていて、この拡大径部106aの円筒部105よりも外径側に突出した部分が後記するシャッター部材の蓋板側への変位量を制限するストッパとして用いられる。
【0044】
円筒部105の外周には、テフロン(登録商標)などの摺動抵抗が小さい材料により形成された環状のシャッター部材110がスライド自在に嵌合されている。シャッター部材110は、蓋板3の外径に等しい外径を有するように形成されて、その外周面が、バスケットの開口部103を閉じる蓋板3の外周面が配置された円筒面と同一の円筒面上に配置されている。シャッター部材110の外周には、該シャッター部材の全周に亘って、該シャッター部材の周方向に連続的に延びる複数の溝部g,g,…が、バスケットの軸線方向に並べた状態で形成されている。シャッター部材110とフランジ104との間に相対的な回転運動を生じさせないようにするため(シャッター部材にバスケットの軸線方向に沿った直線運動のみを許容するため)、フランジ104にバスケットの軸線方向に伸びる複数の回り止め用のピン(図示せず。)が固定されて、これらのピンがシャッター部材110を貫通させた孔に遊嵌されている。
【0045】
シャッター部材110の内周部には、バスケットの開口方向の前方側に向かうに従って内径が大きくなるように傾斜が付けられて、最大径部(最大の内径を有する端部)がバスケットの開口方向の前方側に開口させられたテーパ部110aと、バスケットの軸線方向に沿って均一な内径を持ってテーパ部110aの最小径部(最小の内径を有する端部)に隣接する位置に形成された環状の基部110bとが設けられていて、基部110bが円筒部105の外周にスライド自在に嵌合されている。基部110bは、テーパ部110aの最小径部よりも径方向の内側に突出した状態で設けられていて、図4に示されているように、この基部110bが、スリーブ押え板106の拡大径部106aの円筒部105よりも外径側に突出した部分に接することにより、シャッター部材110の蓋板3側への(バスケットの開口方向への)変位量が制限されるようになっている。
【0046】
このようにシャッター部材110の内周部にテーパ部110aを設けておくと、該テーパ部によりシャッター部材110のケーキ回収室R2側の面に傾斜面が形成されるため、バスケットの開口部からケーキ回収室R2内に排出されたケーキの結晶の一部がシャッター部材110に接したときに、該結晶をテーパ部110aの傾斜面に沿ってケーキ排出シュート21側に滑落させることができる。従って、シャッター部材110に結晶が堆積するのを防ぐことができ、バスケットから排出されたケーキの一部がシャッター部材110の内周部に堆積して、ケーキ排出シュート21側に落下するのが妨げられる事態が生じるのを防ぐことができる。
【0047】
図3に示すように、シャッター部材110は、その蓋板3と反対側の端部がバスケットのフランジ104に当接した状態になる第1の位置(フランジ104寄りの位置)と、図4に示すように、基部110bがスリーブ押え板106の拡大径部106aの円筒部105よりも外径側に突出した部分に接した状態になる第2の位置(第1の位置よりもバスケットの開口部の前方側に寄った位置)との間を変位させられる。本実施形態では、スリーブ押え板106の拡大径部106aの円筒部105よりも外径側に突出した部分により、シャッター部材104が蓋板側に設定距離だけ変位したところで該シャッター部材の一部に接して該シャッター部材の蓋板側への変位を停止させるストッパ部が構成されている。
【0048】
バスケットのフランジ104の蓋板3と反対側の端面に環状の端板107が当接されて、該端板107が図示しないボルトによりフランジ104に締結されている。フランジ104と端板107とを貫通した状態でバネ保持部材109が設けられ、このバネ保持部材109の端板107側から外部に突出した部分に形成されたネジ部にナット108が螺合されることにより、バネ保持部材109がフランジ104に固定されている。バネ保持部材109の蓋板3側の端部にコイルバネ111の一端が保持され、コイルバネ111の他端は、シャッター部材110に設けられたバネ受け穴内に挿入されている。バネ保持部材109及びコイルバネ111は、フランジ104の周方向に等角度間隔をあけて少なくとも3つ設けられ、これらのコイルバネによりシャッター部材110が蓋板3側に付勢されている。
【0049】
端板107には、固液分離処理時にバスケットの周壁部101に設けられた透孔hを通して排出される液分がケーキ回収室R2側に飛散するのを抑制するために、周壁部101の透孔hを通して排出される液分をケーキ回収室R2と反対側に指向させるホーン状のガイド筒112が取り付けられている。
【0050】
本実施形態では、バスケットのフランジ104と、フランジ104に設けられた円筒部105と、フィルタ取付板702と、スリーブ押え板106と、端板107と、シャッター部材110とからなる構造体により、バスケットの開口部103側の端部が構成されており、スリーブ押え板106の内周部106b(図4A参照)がバスケットの開口部103側の端部の内周部を構成している。またシャッター部材110の外周面がバスケットの開口部側の端部の外周面を構成しており、スリーブ押え板106の外端面(フランジ104と反対側の端面)106c(図4A参照)が、バスケット1の開口部103側の端部の端面を構成している。
【0051】
バスケット1の開口部103を開閉する蓋板3は、外周部がバスケットの開口部103側の端部の内周部106bに一定の嵌合代を持って嵌合するように構成された本体部分301と、この本体部分301の外周部から径方向の外側に突出したフランジ部302とを有して、ケーキ押出板2が後退位置にあるときに、蓋板3の本体部分301の外周部がバスケットの開口部側の端部の内周部に嵌合するとともにフランジ部302をバスケットの開口部側の端面に突き合わせた状態でバスケットの開口部を閉じ、ケーキ押出板2が最終前進位置に向けて変位していく過程で先ずフランジ部302がバスケットの開口部側の端面から離反した後、蓋板の本体部分301の外周部がバスケットの開口部の内周から外れてバスケットの開口部を開くように構成される。
【0052】
本実施形態で用いている蓋板3は、外周部がバスケット1の開口部の内周(図示の例では、スリーブ押え板106の内周106b)に一定の嵌合代を持って嵌合するように構成された本体部分301と、この本体部分のバスケット1と反対側に位置する端部寄りの部分から径方向の外側に突出したフランジ部302とを一体に有している。蓋板3は、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにその本体部分301の外周部301aが、バスケットの開口部側の端部の内周部106bに嵌合するとともに、フランジ部302のバスケット側に向いたフランジ面が、バスケットの開口部側の端面106cに突き合わされた状態でバスケット1の開口部103を閉じる。蓋板3はまた、ケーキ押出板2と連動して図2に示された退避位置に向けて変位する過程で、先ずそのフランジ部302のフランジ面がバスケットの外端面106cから離れた後、本体部分301の外周部301aがバスケットの開口部103の内周部から外れて、バスケットの開口部103を開く。本実施形態では、蓋板のフランジ部302の外径とシャッター部材110の外径とが等しく設定されていて、蓋板のフランジ部302の外周面と、シャッター部材110の外周面とが同一の円筒面上に配置されるように構成されている。蓋板のフランジ部302の外周にも、その全周に亘って、その周方向に連続的に伸びる複数の溝部gがバスケットの軸線方向に並べた状態で形成されている。
【0053】
蓋板3の本体部分301の外周には、パッキンなどのシール手段が取り付けられていて、蓋板3が閉位置にあるときに該シール手段が蓋板3の本体部分301の外周とバスケット1の開口部103側の端部の内周部との間に介在して、バスケットの開口部103と蓋板3との嵌合部の液密を保持するようになっている。蓋板3は、後述するリニア駆動機構によりケーキ押出板2が駆動された際に、該ケーキ押出板2と連動して、図1に示すようにバスケットの開口部を閉じた状態にする閉位置と、図2に示すようにバスケット1の開口方向の前方に設定された退避位置との間を往復直線移動させられる。
【0054】
ケーシング20内の液分回収室R1とケーキ回収室R2との間を仕切るため、ケーシング20の内側に、バスケットの開口部寄りの端部の外周を微小な隙間を介して取り囲むように形成された隔壁部9が設けられている。図示の隔壁部9は、ケーシング20のバスケット収容部20Aの内周に添わせた状態で配置されて該バスケット収容部20Aに液密に接合された環状の隔壁支持板901と、隔壁支持板901の内周に液密に接合された環状の隔壁構成部材902とからなっている。隔壁構成部材902は、隔壁支持板901の内周に添わせた状態で配置された環状壁部902aと、環状壁部902aの軸線方向の一端から径方向の内側に突出した環状の隔壁構成部902bとを一体に有していて、隔壁構成部902bの内周面がバスケットの開口部側の端部の外周面(図示の例ではシャッター部材110の外周面)に微小間隙を介して対向させられている。
【0055】
固液分離処理時には、バスケット1の開口部が蓋板3により閉じられており、蓋板3とバスケットの開口部103との間にはシール手段が設けられているため、通常はバスケットの開口部側の端面106cと蓋板3のフランジ部302との突き合わせ部から液が漏れることはないが、シール手段の劣化などのトラブルが発生していると、バスケット1の開口部側の端部の端面(106c)と蓋板3のフランジ部302との突き合わせ部から液が漏れるおそれがある。本実施形態では、バスケットの開口部側の端面であるスリーブ押え板106の端面106cと蓋板3のフランジ部302のフランジ面との突き合わせ部Mから液が漏れるおそれがある。バスケットの開口部側の端面と蓋板のフランジ部302との突き合わせ部Mから液が漏れ、漏れた液がケーキ回収室R2内に侵入すると、ケーキ回収室R2が汚染されるとになり、ケーキ回収室R2内に回収されるケーキが汚損されるおそれがある。
【0056】
本実施形態では、上記の問題を解決するため、バスケット1の開口部側の端面とバスケット1の開口部を閉じている蓋板3のフランジ部302との突き合わせ部Mを、その全周に亘って、バスケット1と中心軸線を共有した状態で外側から取り囲む環状の漏液捕捉用溝部Gが、突き合わせ部M側に開口した状態で、かつバスケットの回転を妨げることがないようにして、隔壁部9に設けられている。このように漏液捕捉用溝部Gを設けておくと、固液分離処理時にバスケット1の開口部側の端面と蓋板3のフランジ部との突き合わせ部Mから漏液が生じたときに、漏れた液を漏液捕捉用溝部G内に受け入れて捕捉することができるため、漏れた液が液分回収室R1内及びケーキ回収室R2内に侵入するのを防ぐことができる。
【0057】
図示の例では、隔壁構成部902bのケーキ回収室R2側の面(隔壁部9のケーキ回収室側の面)にバスケット1と中心軸線を共有する環状の溝部形成部材903が溶接により取り付けられて、この溝部形成部材903と隔壁構成部902bとの間に、バスケット1の回転を妨げることがない状態で、バスケット1の開口部側の端面と蓋板3のフランジ面との突き合わせ部Mを、その全周に亘って取り囲む漏液捕捉用溝部Gが形成されている。
【0058】
図示の溝部形成部材903は、バスケット1の中心軸線と直交する平面上でバスケットの中心軸線を囲む方向に延びていて、内周部がシャッター部材110の外周面に近接した状態で配置された円環状の端部壁903aと、端部壁903aの外周部から隔壁構成部902bの外周寄りの部分に向って斜めに延びる傾斜壁903bとからなっていて、傾斜壁903bの端部壁903aと反対側の端部(傾斜壁903bの外周部)が、その全周に亘って、隔壁構成部902bに溶接されることにより、隔壁構成部材902に固定されている。溝部形成部材903に傾斜壁部903bを設けておくと、ケーキ回収室R2内に排出されたケーキが隔壁構成部材902の外面に堆積するのを防ぐことができる。
【0059】
また、図3(B)、図4(B)に示されているように、隔壁部9の下部には、漏液捕捉用溝部G内に捕捉されて該漏液捕捉用溝部の下部に達した漏液を液分回収室R1内に流出させるための漏液流出口Wが設けられている。図示の例では、漏液流出口Wが隔壁構成部材902の隔壁構成部902bの下部を貫通した状態で設けられて、漏液捕捉用溝部の下部に達した漏液を漏液流出口Wから液分回収室R1内に流出させるようになっている。漏液流出口Wから流出した漏液を液分回収室R1内に円滑に流すようにするため、隔壁構成部材902の円筒部902aの内周部の下部に下方に傾斜した漏液流路902a1が、漏液流出口Wと整合した状態で形成されている。
【0060】
バスケット1の開口部側の端面とバスケット1の開口部を閉じている蓋板3のフランジ面との突き合わせ部Mから漏出した液を液分回収室R1内に流入させたくない場合には、漏液捕捉用溝部G内に捕捉されて該漏液捕捉用溝部の下部に達した漏液を液分回収室R1及びケーキ回収室R2とは別に設けられた漏液回収部に流出させるように漏液流出口Wを設ける。
【0061】
上記のように漏液捕捉用溝部Gを設ける場合、固液分離処理によりバスケット1内に形成されたケーキをケーキ回収室R2内に排出する際に、ケーキが漏液捕捉用溝部G内に侵入しないようにしておくことが好ましい。そのため、蓋板3が閉位置にあるとき及び蓋板3が閉位置から退避位置に向けて変位する過程でバスケット1とともに回転しながら漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して該開口部を閉鎖した状態に保つ液捕捉用溝部閉鎖手段を設けておくのが好ましい。
【0062】
本実施形態では、この漏液捕捉用溝部閉鎖手段を構成するために、前述のように、漏液捕捉用溝部Gの開口部の内側で、バスケットの開口部の近傍に設定された第1の位置(図3に示された位置)と該第1の位置よりもバスケットの開口部の前方側に寄った位置に設定された第2の位置(図4に示された位置)との間をバスケットの軸線方向に沿って往復変位し得るようにしてバスケット1の開口部側の端部にスライド自在に支持された環状のシャッター部材110と、シャッター部材110を第2の位置側に付勢するバネ111とがバスケットの開口部側の端部に設けられている。シャッター部材110の外周面と蓋板3外周面とが同一の円筒面上に配置されるようにするため、前述のように、シャッター部材110は、蓋板3の外径に等しい外径を有するように形成されている。
【0063】
本実施形態では、シャッター部材110が第1の位置にあるときに、閉位置にある(バスケットの開口部を閉じている)蓋板3のフランジ部302とシャッター部材110とが、軸線方向に並んだ状態で配置されるようにシャッター部材の第1の位置が設定されていて、蓋板3が閉位置から退避位置に向けて変位する過程で、シャッター部材がバネ111の付勢力により蓋板3に追従して第2の位置まで変位したところで、シャッター部材110がストッパ部(スリーブ押え部材106の拡大径部106a)に接して停止させられるように構成されている。蓋板3が閉位置から退避位置に向けて変位していく過程でシャッター部材110が蓋板3に追従して変位している間は、蓋板3のフランジ部302の外周面とシャッター部材110の外周面との双方が漏液捕捉用溝部閉鎖手段を構成して、漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向した状態で漏液捕捉用溝部Gの開口部を閉鎖した状態を保ち、図4に示した様にシャッター部材110が第2の位置に達して停止した後は、シャッター部材110の外周面が単独で漏液捕捉用溝部閉鎖手段を構成して、漏液捕捉用溝部Gの開口部の周縁部に微小ギャップを介して対向した状態で、漏液捕捉用溝部Gの開口部を閉鎖した状態に保つ。
【0064】
本実施形態では、蓋板3が閉位置から退避位置に向けて変位していく過程でシャッター部材110が蓋板3に追従して変位している間、蓋板3のフランジ部302の外周面とシャッター部材110の外周面との双方が漏液捕捉用溝部の開口部の周縁部に微小ギャップを介して対向して漏液捕捉用溝部Gを閉鎖した状態を保ち、ストッパ部がシャッター部材の変位を停止させた後は、シャッター部材110の外周面が単独で漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向して、漏液捕捉用溝部Gを閉鎖した状態に保つように、バスケット1の軸線方向に測ったシャッター部材110の外周面の長さと、前記ストッパ部の位置とが設定されている。
【0065】
本実施形態の遠心分離装置においては、固液分離処理を行う際にバスケット1内に原液や洗浄液を供給する必要がある。これらを可能にするため、蓋板3の中央部にフィードパイプ導入部3aが形成され、バスケット1と中心軸線を共有するように設けられたフィードパイプ6が、蓋板3のフィードパイプ導入部3aを通してバスケット1内に導入される。フィードパイプ6は、その先端がバスケット1の開口端寄りの部分の内側に達する長さを有していて、図1に示すように蓋板3が閉位置にあってバスケット1の開口部を閉じているときに、フィードパイプ6の先端が蓋板3を貫通してバスケット1内に開口した状態になるように、フィードパイプ6の先端位置が設定されている。図示の例では、フィードパイプ6が前カバー20Bを貫通してケーシング20内に導入され、このフィードパイプ6が、蓋板3のフィードパイプ導入部3aを通してバスケット1内に導入されている。フィードパイプ6は、前カバー20Bの外部で図示しない原液供給源や洗浄液供給源に接続されて、原液供給源又は洗浄液供給源から与えられる原液や洗浄液をバスケット1内に供給する。フィードパイプ6とフィードパイプ導入部3aとの間にはフィードパイプ6の貫通部の液密を保持するためのシール部材(図示せず。)が設けられる。
【0066】
フィードパイプ6は、バスケット1と共に回転するように設けられていてもよく、回転しないように設けられていても良い。フィードパイプ6をバスケット1と共に回転させる場合には、フィードパイプ6をケーシング20の前カバー20Bにロータリジョイントを介して支持しておく。フィードパイプ6を回転させない場合には、フィードパイプ6をケーシング20の前カバー20Bに固定するとともに、バスケット1とフィードパイプ6との間に相対的な回転が生じるのを許容するようにフィードパイプ導入部3aを構成しておく。
【0067】
バスケット1の周壁部101の各部のうち、後退位置にあるケーキ押出板2とバスケットの開口部103との間に形成されるバスケット内の空間(固液分離処理空間S)に臨む部分には、固液分離処理により分離された液分を通過させる透孔h(図3図4参照)が多数設けられている。
【0068】
本実施形態の遠心分離装置を用いて固液分離処理を行う際には、図1に示すように、ケーキ押出板2を後退位置に位置させ、蓋板3を閉位置に位置させて、バスケットの開口部を閉じておく。この状態で、後述する駆動装置に設けられた回転駆動機構によりバスケット1を給液時に適した回転速度で回転させ、フィードパイプ6を通してバスケット1内に原液を供給する。バスケット1内に所定量の原液を供給した後、バスケット1の回転速度を固液分離処理時の回転速度まで上昇させる。バスケット内に供給された原液は、バスケットの回転に伴って生じる遠心力により液分とケーキ分とに分離され、バスケットの周壁部の内側に配置されたフィルタの上にケーキ分が層をなして堆積していく。液分はバスケットの周壁部の内側に形成されたケーキ層と、バスケットの周壁部の内側に配置されたフィルタと、バスケットの周壁部に設けられた透孔とを通して液分回収室R1内に排出される。
【0069】
蓋板3とバスケットの開口部103との間のシールが劣化していると、固液分離処理を行っている間に蓋板3のフランジ部とバスケットの開口部側の端面との突き合わせ部Mから液が漏れるおそれがあるが、本実施形態では、蓋板3のフランジ部とバスケットの開口部側の端面との突き合わせ部Mが環状の漏液捕捉用溝部Gにより囲まれているため、万一液が漏れたとしても、漏れた液は遠心力により飛ばされてすべて漏液捕捉用溝部G内に捕捉される。遠心力により飛ばされて溝部G内に捕捉された液のうち、溝部G内の上部に飛ばされた液の一部は、蓋板3の外周面及びシャッター部材110の外周面に落下することがあるが、落下した液は遠心力により再び溝部G内に飛ばされるため、蓋板3のフランジ面とバスケットの開口部側の端面との突き合わせ部から漏れた液がケーキ回収室R2内に進入して該ケーキ回収室R2内を汚染するのを、従来のこの種の遠心分離装置よりも確実に防ぐことができる。
【0070】
バスケット内に供給した原液の量が規定量に達し、バスケット内に形成されたケーキ層の厚みが規定値に達したところで固液分離処理を終了する。固液分離処理が終了した後、必要に応じて、フィードパイプ6を通して、高速回転しているバスケット1内に洗浄液を供給して、バスケット1内及びバスケット内に形成されているケーキ層を洗浄する。
【0071】
バスケット1内の洗浄が終了した後、バスケット内からケーキを排出するケーキ排出工程を行う。ケーキ排出工程では、バスケットをケーキ排出時に適した回転速度で回転させた状態で、後述する駆動装置に設けられたリニア駆動機構によりケーキ押出板2を図2に示す最終前進位置に向けて直線変位させる。ケーキ押出板2を最終前進位置に向けて変位させる過程で、蓋板3を退避位置に向けて変位させ、蓋板3をバスケット1の開口部103から離脱させていく。蓋板3が退避位置に向けて変位を開始すると、蓋板3のフランジ部の外周面が漏液捕捉用溝部Gの開口部から外れていくが、バネ111により蓋板側に付勢されているシャッター部材110が蓋板3に追従して変位していくため、漏液捕捉用溝部Gの開口部が開かれることはない。シャッター部材110がスリーブ押え板106の拡大径部106aの外周部(ストッパ)に当接する直前までの間は、蓋板3のフランジ部302の外周部とシャッター部材110の外周部との双方が漏液捕捉用溝部閉鎖手段として機能して、漏液捕捉用溝部Gの開口部を閉鎖した状態(溝部Gの開口部を液分回収室及びケーキ回収室から隠した状態)に保持し、シャッター部材110がスリーブ押え板106の拡大径部106aの外周部(ストッパ)に当接した後は、シャッター部材110の外周面が単独で漏液捕捉用溝部閉鎖手段として機能して、漏液捕捉用溝部Gの開口部を閉鎖した状態に保持する。
【0072】
漏液捕捉用溝部G内にケーキが侵入するのを確実に防ぐためには、蓋板3が閉位置から退避位置に向けて変位していく過程でシャッタ部材110の外周面が単独で漏液捕捉用溝部の開口部の周縁に微小ギャップを介して対向する状態になった後に蓋板3の本体部分301の外周部がバスケットの開口部の内周部から外れるように蓋板3が構成されていることが好ましい。
【0073】
上記のように、本実施形態の構成によれば、蓋板3が退避位置に向けて変位する過程で漏液捕捉用溝部Gの開口部を、ケーキ回収室R2に対して閉鎖した状態に保つことができるため、ケーキ回収室R2内に排出されたケーキが漏液捕捉用溝部G内に侵入するのを防ぐことができ、漏液捕捉用溝部G内に侵入したケーキが液分回収室R1内に侵入するのを防ぐことができる。
【0074】
漏液捕捉用溝部Gの上部では、固液分離処理時に漏液捕捉用溝部G内に捕捉された液の一部が落下して蓋板3のフランジ部302の外周部及びシャッター部材110の外周部に付着することがあるが、蓋板3のフランジ部302の外周部及びシャッター部材110の外周部に落下した液分は、蓋板3のフランジ部の外周及びシャッタ-部材110の外周に形成された溝部g,g,…内に捉えられて液分回収室R1側及びケーキ回収室R2側への移動が阻止されると共に、遠心力により再び漏液捕捉用溝部G内に飛ばされるため、蓋板3のフランジ部302の外周部及びシャッター部材110の外周部に落下した液が液分回収室R1側及びケーキ回収室R2側に侵入することはない。
【0075】
バスケット1内に形成されたケーキ層を外部に排出(回収)する際には、ケーキ押出板2を前進位置に向けて変位させて、固液分離処理空間A2内に形成されているケーキ層Cをケーキ押出板2により押してバスケット1の開口部103から押し出し、バスケットの開口部の前方のケーキ回収室R2内に落下させる。またケーキ押出板2をバスケット1の開口部を通して前進位置まで変位させる過程で、可撓スリーブ7を反転させて、可撓スリーブ7に付着しているケーキをケーキ回収室内に落下させる。可撓スリーブ7は、ケーキ押出板2が前進位置に達したところで図2に示したように完全に反転された状態になる。可撓スリーブ7は、バスケットと共に回転しているため、図2に示したように可撓スリーブ7を完全に反転させた状態で一定時間バスケットを回転させることにより、可撓スリーブ7に付着していたケーキ分を遠心力により可撓スリーブ7から脱落させてほぼ完全に回収することができる。
【0076】
バスケット内からケーキを回収している間、漏液捕捉用溝部Gの開口部はシャッター部材110により塞がれているため、バスケット内から回収されたケーキが漏液捕捉用溝部G内に侵入することはない。
【0077】
上記のようにしてバスケット1内に生成されたケーキを回収した後、ケーキ押出板2を後退位置に向けて変位させる。ケーキ押出板2を後退位置に向けて変位させると、可撓スリーブ7は、ケーキ押出板2の変位に伴って非反転状態に戻されていき、ケーキ押出板2が後退位置に達したところでバスケットの周壁部の内周を覆った状態に戻される。
【0078】
バスケット1と、ケーキ押出板2及び蓋板3とを駆動するため、駆動装置10(図1参照)が設けられている。駆動装置10は、回転自在に設けられて一端がバスケット1の底壁部102に結合された主軸11を回転駆動して、バスケット1を回転させる回転駆動機構と、主軸11の内側にスラスト自在に設けられて先端がケーキ押出板2に連結されたスラスト軸12を駆動してケーキ押出板2及び蓋板3をバスケット1の軸線方向に直線往復駆動するリニア駆動機構とを備えている。
【0079】
図1において、13は、設置面Fに配置されたベースBと、水平な板面を有し、ベースBの上に固定された板状のベースフレーム14と、ベースフレーム14と板面が直交するように配置されてベースフレーム14に下端が溶接等により固定された主フレーム15とを備えたハウジングで、このハウジング内に駆動装置10が収容されている。
【0080】
主フレーム15は、ベースフレーム14の前端から垂直上方に起立した前側壁部15Aと、ベースフレーム14の幅方向(図1の紙面と直交する方向)の両端から垂直上方に起立した一対の側壁部15B,15Bとにより、横断面がコの字形を呈するように構成されている。フレーム15に駆動装置10の主要部を覆うカバー16が固定されており、主フレーム15とカバー16とにより、駆動装置10の主要部を収容するハウジング13が構成されている。主フレーム15の側壁部15B,15Bには、駆動装置10の保守点検等を行う際に用いる開口部や、該開口部を開閉する扉等が適宜設けられる。
【0081】
主フレーム15の前側壁部15Aの前方にはケーシング20のバスケット収容部2OAがその軸線を水平方向に向けた状態で配置され、該バスケット収容部2OAの一端に設けられたフランジ20aが主フレーム15の前側壁部15Aに固定されている。
【0082】
バスケット1とケーキ押出板2と蓋板3とを駆動する駆動装置10は、バスケット1をその中心軸線を回転中心として回転させる回転駆動機構と、ケーキ押出板2及び蓋板3をバスケット1とともに回転させながら、バスケット1の軸線方向に駆動するリニア駆動機構とを備えている。
【0083】
回転駆動機構は、バスケット1の底壁部102に結合された中空の主軸11と、主軸11を回転駆動する機構とにより構成される。またリニア駆動機構は、主軸11の中空部内にスラスト自在に設けられたスラスト軸12と、このスラスト軸を直線変位させる機構とにより構成される。
【0084】
図示の例では、ベースフレーム14に支柱31,32を介して軸受装置33が支持され、この軸受装置33の軸線方向の一端が主フレーム15の前側壁部15Aに結合されている。軸受け装置33には軸受け34及び35が設けられており、これらの軸受けにより、中空の主軸11がその中心軸線を横方向(水平方向)に向けた状態で、かつその中心軸線をバスケット1の中心軸線に一致させた状態で回転自在に支持されている。
【0085】
主軸11の軸線方向の一端は主フレーム15の前側壁部15Aに設けられた孔を通して、前側壁部15Aの前方に配置されたバスケット1の底壁部102に結合され、主軸11の軸線方向の他端は軸受け装置33の軸線方向の他端から外部に導出されている。主軸11の軸線方向の一端及び他端をそれぞれ主軸11の前端及び後端とする。
【0086】
ベースフレーム14には主軸駆動用モータ40が支持され、軸受け装置33の他端から導出された主軸11の後端部に取り付けられた歯付きプーリ41と、主軸駆動用モータ40の回転軸に取り付けられた歯付きプーリ42とにタイミングベルト43が巻き掛けされている。主軸11と、モータ40と、歯付きプーリ41及び42と、タイミングベルト43とにより、バスケット1をその中心軸線を回転中心として回転駆動する回転駆動機構が構成されている。
【0087】
スラスト軸12は、バスケット1と中心軸線を共有した状態で、かつ主軸11内を軸線方向に貫通した状態で設けられて、その先端がケーキ押出板2に結合されている。スラスト軸12と主軸11との間に許容される相対変位を両軸の軸線方向に沿った変位のみに限定するために、主軸11の一部に該主軸の軸線方向に伸びるスロット11a形成され、スラスト軸12に固定されたキー45がスロット11aにスライド自在に嵌合されている。主軸11の前端側及び後端側にそれぞれ配置されたスラスト軸12の一端及び他端をそれぞれスラスト軸12の前端及び後端とする。スラスト軸12の前端は、主軸11の前端から前方に(バスケット側に)突出して、バスケット1の底壁部102に形成された孔を通してバスケット1内に導入されている。
【0088】
スラスト軸12の軸心部には、バスケットと反対側に開口し、バスケット側の端部が閉鎖された第1の孔12aと、バスケット1側に開口し、バスケット1と反対側の端部が閉鎖された第2の孔12bとが形成され、スラスト軸12の後端部寄りの部分の内周に固定されたナット50に螺合されたねじ棒51が第1の孔12aに挿入されている。第2の孔12bは、スラスト軸12がバスケット1側に前進していく過程で図2に示すようにフィードパイプ6を受け入れるために設けられている。
【0089】
ネジ棒51は、その後端部側にネジが設けられていない軸部51aを有し、この軸部51aは、ベースフレーム14に支柱52を介して支持されたフレーム53に固定された筒状部材54を貫通して外部に導出されている。ネジ棒51の軸部51aにはスプラインを形成する歯部が形成され、歯付きプーリ55の内周に形成された歯部がネジ棒51の軸部51aに形成された歯部に噛み合わされることにより、ネジ棒51と歯付きプーリ55とがスプライン結合されている。
【0090】
フレーム53にはスラスト軸駆動用モータ56が固定され、このモー56の出力軸に歯付きプーリ57が取り付けられている。歯付きプーリ57と、ネジ棒51にスプライン結合された歯付きプーリ55とにタイミングベルト58が巻き掛けされ、モータ56の回転がベルト58を介してネジ棒51に伝達されるようになっている。
【0091】
歯付きプーリ55を貫通してバスケット1と反対側に導出されたネジ棒51の端部にボルト59によりフランジ板60が固定され、フランジ板60と歯付きプーリ55との間に、ネジ棒51の軸線方向に並べた状態でネジ棒51に嵌合された多数の皿バネ61が配置されている。皿バネ61はネジ棒51の軸線方向に圧縮された状態で設けられていて、皿バネ61によりネジ棒51とスラスト軸12とがバスケット1の開口方向と反対方向に(図1において右方向に)付勢されている。皿バネ61は、蓋板3が閉位置に配置された際に、スラスト軸12とケーキ押出板2連結棒4とを介して蓋板3をバスケット1側に付勢して、蓋板3を閉位置に確実に保持する作用をする。
【0092】
図示の例では、ナット50と、ネジ棒51と、モータ56と、プーリ57及び55と、ベルト58とにより、スラスト軸12を主軸11に対して前進及び後退させるように駆動するスラスト軸駆動機構が構成され、この駆動機構とスラスト軸12とにより、ケーキ押出板2及び蓋板3をバスケット1とともに回転させながら、バスケット1の軸線方向に駆動するリニア駆動機構が構成されている。
【0093】
図示の駆動装置10において、モータ40及び56のうち、モータ40のみを駆動したとすると、モータ40の回転により、主軸11が回転させられ、主軸11にキー45を介して結合されたスラスト軸12が主軸11とともに回転させられる。スラスト軸12が回転することにより、該スラスト軸とともにナット50も回転し、該ナット50に螺合されているネジ棒51も回転させられる。ネジ棒51の回転は、プーリ55とベルト58とを通してプーリ57に伝達されるため、モータ56の回転軸が回転させられる。この状態では、モータ56がモータ40の負荷となっており、モータ56の回転軸がモータ40により回転させられる。このように、モータ56がモータ40により回転させられる状態では、ネジ棒51がナット50及びスラスト軸12と一緒に回転し、ネジ棒51とナッ50との間には相対的な回転が生じないため、スラスト軸12は主軸11に対してスラスト運動を行わない。
【0094】
これに対し、モータ40を停止させた状態で、モータ56を駆動すると、ネジ棒51がナット50に対して相対的に回転するため、モータ56の回転方向に応じてナット50が前進または後退し、ナット50に対して固定されているスラスト軸12がナット50の前進及び後退に伴って前進または後退する。
【0095】
モータ40及び56が同時に駆動されたときには、主軸11の回転速度とネジ棒51の回転速度との差に応じて、ネジ棒51がナット50に対して相対的に回転し、ネジ棒51のナット50に対する回転方向に応じて、スラスト軸12が前進または後退する。このときスラスト軸12の変位速度は、ネジ棒51の回転速度と主軸11の回転速度との差に比例する。従って、ネジ棒51の回転速度を主軸11の回転速度よりも高くしたり、低くしたりすることにより、スラスト軸12を前進又は後退させることができる。
【0096】
上記の実施形態では、遠心力によりケーキ分から分離された液分をバスケット1の内周に配置されたフィルタ7及び8とバスケットの周壁部に設けられた透孔hとを通して外部に排出するろ過方式により固液分離処理を行わせているが、本発明は、バスケットの周壁部101の固液分離処理空間に臨む部分から液分が排出されないようにしておいて、遠心沈降方式により固液分離処理を行う遠心分離装置にも適用することができる。
【0097】
遠心沈降式により固液分離処理を行う場合には、高速回転しているバスケット1内の固液分離処理が行われる空間に原液を供給して、バスケットの回転に伴って生じる遠心力により、比重が大きいケーキ分をバスケットの周壁部に近い部分に沈降させてケーキ層を形成し、ケーキ層の内側に上澄み液層を形成する。ケーキ分が完全に沈降した後、ケーキ層の内側に存在する上澄み液をバスケットの外部に排出し、その後ケーキ層を形成しているケーキをバスケットから排出して回収する。
【0098】
遠心沈降方式により固液分離処理を行う場合には、図5に示したように、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間に隙間dが形成されるようにケーキ押出板2の後退位置を設定しておいて、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにバスケット内の空間が、隙間dにより形成される空間と、固液分離処理空間Sとに仕切られるようにしておく。また固液分離処理空間S内に形成された上澄み液をケーキ押出板とバスケットの底壁部との間に形成された隙間d内に排出するために、排液流路形成部材120をケーキ押出板2に取り付けておき、隙間d内に排出された上澄み液をバスケットの外部に排出するために、バスケットの周壁部101の隙間dに臨む部分に複数の透孔hを設けておく。図5においてCはケーキ層を示し、Lは上澄み液層を示している。図5に符号7′で示された部材は、可撓スリーブ8とバスケットの周壁部との間に介在させた筒状の部材で、この部材は液を透過させるものでもよく、透過させないものでも良い。なおこの筒状部材7′は省略しても良い。
【0099】
排液流路形成部材120は、固液分離処理によりバスケット内の空間S内に形成された上澄み液を隙間d内に排出するための流路を内部に有していて、その一部がケーキ押出板2を貫通した状態でケーキ押出板に取り付けられる。排液流路形成部材120内の流路を通して上澄み液を排出する際には、ケーキ押出板2を後退位置に位置させて蓋板3によりバスケットの開口部を閉じ、排液流路形成部材120の固液分離処理空間S側の端部を上澄み液中に位置させた状態で、フィードパイプ6を通してバスケット内に圧縮ガスを供給することにより、バスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力として、上澄み液を排液流路形成部材120内の流路を通して隙間d側に押し出す。
【0100】
図5に示された排液流路形成部材120は、一部がケーキ押出板2を貫通した状態でケーキ押出板2に固定されて、固液分離処理空間S側から隙間d側に液を流す流路をその内部に形成する。図示の排液流路形成部材120は、バスケット1の回転中心軸線から偏心した位置でケーキ押出板2をバスケット1の軸線方向に沿って貫通した部分を有して、バスケット内の固液分離処理空間Sから隙間d側に液を流す流路を内部に有する押出板貫通部120Aと、バスケット内の固液分離処理空間S側に配置された押出板貫通部120Aの一端に後端部が接続されるとともに、先端部がバスケットの周壁部101に向けられた状態で設けられた液分導入部120Bとを備えている。液分導入部120Bの内部には、先端がバスケットの周壁部101側に開口し、後端が押出板貫通部120A内の流路に連通した流路が形成されている。
【0101】
図示の押出板貫通部120Aは、ケーキ押出板2をバスケット1の軸線方向に沿って貫通した直管部分121と、隙間d内をバスケットの径方向に伸びるように設けられて後端部が直管部分121の隙間d内に導出された端部に接続された径方向管路部122とを有するL字形の管からなっていて、その径方向管路部122の先端部に、後述するチェックバルブの弁座を構成する拡大径部122aが形成されている。この拡大径部122aの先端の開口部が、押出板貫通部120A内の流路をケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間の隙間d内に開口させる開口部となっている。
【0102】
本実施形態で用いている排液流路形成部材120の液分導入部120Bは、バスケット1の径方向に沿って延びるように設けられた基管部123と、該基管部123にスライド自在に支持されてバスケット1の回転に伴って生じる遠心力によりバスケット1の外径側(図5において上側)に変位させられる可動部124と、可動部124をバスケット1の内径側(図5において下側)に付勢する付勢手段とを備えている。
【0103】
図示の例では、基管部123の軸線方向に並べた状態で基管部123の外周にスライド自在に嵌合されて互いにネジ結合された2つの管状部材125及び126により可動部124が構成されている。2つの管状部材125及び126のうち、バスケットの中心部側に配置された管状部材125およびバスケットの周壁部101側に配置された管状部材126をそれぞれ第1の管状部材および第2の管状部材とする。
【0104】
可動部124の内周面と基管部123の外周面との間には隙間が形成されていて、この隙間内に、基管部123の外周に嵌合された圧縮バネ127が配置され、バスケット1の周壁部101側に向いた圧縮バネ127の一端127aが基管部123の外周に溶接等の適宜の手段により固定されている。またバスケット1の周壁部101と反対側に向いた圧縮バネ127の他端127bは、第2の管状部126と反対側に位置する第1の管状部材125の後端部から内径側に突出したバネ受け部125aにより受け止められ、バネ127により、可動部124がバスケットの周壁部101の内径側に付勢されている。本実施形態では、バネ127により、可動部124をバスケットの内径側(バスケットの中心部に向かう側)に付勢する付勢手段が構成されている。
【0105】
押出板貫通部120Aの径方向管路部122の先端に形成された拡大径部122aには、バスケット1内の気圧が設定圧力以下のときに排液流路形成部材120内の流路を閉鎖してバスケット1内に形成された上澄み液が排液流路形成部材120内の流路を通して隙間d内に流出するのを阻止し、バスケット1内の気圧が前記設定圧力を超えているときに排液流路形成部材120内の流路を開いてバスケット1内の上澄み液が排液流路形成部材120内の流路を通して隙間d内に流出するのを許容するチェックバルブ130が取り付けられている。
【0106】
図示のチェックバルブ130は、排液流路形成部材120の押出板貫通部120Aの径方向管路部122の先端の拡大径部122aの外周に嵌合されて、一端が拡大径部122aに溶接された円筒状のバルブハウジング131と、バルブハウジング131内にスライド自在に嵌合された状態で収納されて径方向管部122の先端に形成された拡大径部122aの先端面(弁座)に当接した弁体132と、バルブハウジング131内に挿入されて一端が弁体132により受け止められたコイルスプリング133と、外周に雄ネジ部を有して、該雄ネジ部がバルブハウジング131の他端寄りの部分の内周に形成された雌ネジ部に螺合された管状のバネ押え部材134とからなっており、バネ押え部材134と弁体132との間に圧縮された状態で配置されたコイルスプリング133により、弁体132が拡大径部1222a側に付勢されている。
【0107】
チェックバルブ130は以下のように動作する。バスケット1内の気圧が設定圧力以下のときには、コイルスプリング133の付勢力により弁体132が拡大径部122aの先端面(弁座)に当接した状態に保持されるため、チェックバルブ130は、排液流路形成部材120内の流路を閉じた状態を保持している。この状態では、バスケット内の上澄み液が排液流路形成部材120内の流路を通してケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間の隙間d内に排出されることはない。
【0108】
バスケット1内の気圧が設定圧力を超え、排液流路形成部材120内の流路内の液体を通して弁体132に所定の力が加わると、弁体132がコイルスプリング133の付勢力に抗して拡大径部122aの先端面から離れる方向に変位するため、チェックバルブ130は、排液流路形成部材120内の流路を開いた状態になり、バスケット内の上澄み液が排液流路形成部材120内の流路を通して隙間d内に排出されるのを許容した状態になる。チェックバルブ130が開くときのバスケット内の圧力は、バネ押え部材134を回転させて、コイルスプリング133の付勢力を調整することにより適宜に調整することができる。
【0109】
図示の排液流路形成部材120において、可動部124は、バネ127によりバスケット1の内径側に付勢され、バスケット1が停止しているときには図4に示された初期位置に配置されている。可動部124の初期位置は、その先端の開口端124tが、バスケットの周壁部101の内側に形成されるケーキ層Cの内周面の固液分離処理終了時における規定位置(図5参照)よりも更に内径側の位置に設定されている。
【0110】
バスケット1の回転速度が設定速度よりも低いときには、バスケット1の回転により可動部124に作用する遠心力よりもバネ127の付勢力の方が強いため、可動部124は初期位置に保持されている。バスケット1の回転速度が設定速度を超え、可動部124を付勢する遠心力がバネ127による付勢力を超えると、可動部124がバスケット1の周壁部側への変位を開始する。従って、固液分離処理が終了した後、バスケット1の回転速度を上昇させていくことにより、可動部124をバスケット内の上澄み液層L内に浸漬した状態でケーキ層Cに向けて変位させることができる。可動部124は、最終的にはバスケット内に形成されているケーキ層Cの内周面に接して停止する。
【0111】
バスケット1内で固液分離処理が行われて固液分離処理空間A2内にケーキ層Cと上澄み液層Lとが形成されたときに、バスケット1を加速して排液流路形成部材120の可動部124を上澄み液層L内に進入させると共に、フィードパイプ6からバスケット1内に高圧ガスを供給して、バスケット1内の気圧を外気圧よりも高い設定圧力以上にする。バスケット1内の気圧を設定圧力以上にすると、チェックバルブ130が開いて排液流路形成部材120内の流路を開くため、バスケット1内に存在する上澄み液をケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間に形成された隙間d内に排出することができ、隙間d内に排出された上澄み液はバスケット1の回転により生じる遠心力によりバスケット1の周壁部側に飛ばされて、透孔hからバスケット外に排出される。排液流路形成部材120の可動部124は最終的にケーキ層Cに接する位置に達するため、バスケット内に存在していた上澄み液の殆どすべてをバスケット外に排出して回収することができる。
【0112】
可動部124の初期位置は、固液分離処理の終了時に可動部124の開口端124tを、バスケット内に形成される上澄み液層Lの内周面よりも内径側に位置させておくように設定してもよく、図5に示したように、固液分離処理の終了時に可動部124の開口端124tを、バスケット内に形成されている上澄み液層Lの内周面よりも外径側に位置させるように(可動部124の開口端124tが上澄み液層中に浸漬された状態になるように)設定してもよい。
【0113】
上記の実施形態では、バスケットの開口部の内周部とケーキ押出板の外周部との間に可撓スリーブ7を設けたが、可撓スリーブ7を設けずに、ケーキ押出板2の働きのみによりケーキをバスケット外に排出するようにしてもよい。可撓スリーブを設けない場合、ケーキ押出板2の前進位置はバスケットの開口部付近に設定することもでき、バスケットの開口部の前方に設定することもできる。
【0114】
本発明においては、バスケット1が、その中心軸線を横方向に向けた状態で配置される。通常バスケット1は、その中心軸線を水平方向に向けた状態で配置されるが、本発明においては、固液分離処理及びバスケット内からのケーキの排出作業等に支障を来さない範囲で、バスケット1の中心軸線を水平方向に対して僅かに傾斜させることを妨げない。本発明は、バスケットを、その中心軸線を厳密に水平方向に向けた状態で配置する場合に限定されるものではなく、バスケットの中心軸線を水平方向に対して僅かに傾斜させた状態でバスケット配置する態様も、本発明におけるバスケットの配置の態様に包含される。
【符号の説明】
【0115】
1 バスケット
101 バスケットの周壁部
102 バスケットの底壁部
103 バスケットの開口部
104 バスケットの開口部側の端部に設けられたフランジ
105 フランジ104に設けられた円筒部
106 スリーブ押え板
106a スリーブ押え板の拡大径部(ストッパ部)
109 バネ保持部材
110 シャッター部材
110a シャッター部材のテーパ部
110b シャッター部材の基部
111 コイルバネ
2 ケーキ押出板
h 透孔
S 固液分離処理空間
3 蓋板
301 蓋板の本体部分
302 蓋板のフランジ部
4 連結棒
6 フィードパイプ
7 金属フィルタ
701 フィルタ本体
702 フィルタ取付板
8 可撓スリーブ
9 隔壁部
902 隔壁構成部材
902a 環状壁部
902b 隔壁構成部
903 溝部形成部材
903a 端部壁
903b 傾斜壁
G 漏液捕捉用溝部
10 バスケット及びケーキ押出板を駆動する駆動装置
11 主軸
11a 主軸に設けられたスロット
12 スラスト軸
13 駆動装置を収容したハウジング
20 ケーシング
20A バスケット収容部
20B 前カバー
21 ケーキ排出用シュート
R1 液分回収室
R2 ケーキ回収室
22 排液管
40 主軸を駆動するモータ
41 プーリ
42 プーリ
43 ベルト
45 スラスト軸に取り付けられたキー
50 ナット
51 ネジ棒
55 プーリ
56 ネジ棒を駆動するモータ
57 プーリ
58 ベルト
120 排液流路形成部材
120A 押出板貫通部
120B 液分導入部
121 直管部
122 径方向管路部
122a 拡大径部
123 基管部
124 可動部
125 可動部を構成する管状部
126 可動部を構成する管状部
127 圧縮バネ
130 チェックバルブ
131 バルブハウジング
132 弁体
133 コイルスプリング
134 バネ押え部材
図1
図2
図3
図4
図5