(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】触媒及び合成ガスの直接転化による低級アレーン液体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/85 20060101AFI20230110BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20230110BHJP
B01J 29/78 20060101ALI20230110BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20230110BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20230110BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B01J29/85 M
B01J29/70 M
B01J29/78 M
B01J29/74 M
B01J29/76 M
C10G2/00
(21)【出願番号】P 2021532838
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 CN2019124235
(87)【国際公開番号】W WO2020125488
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】201811575053.0
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】焦 峰
(72)【発明者】
【氏名】李 娜
(72)【発明者】
【氏名】潘 秀蓮
(72)【発明者】
【氏名】包 信和
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/120576(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108970638(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107971026(CN,A)
【文献】国際公開第2017/210954(WO,A1)
【文献】特表2004-519419(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106947511(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスからの直接転化によるC
5
-C
11
留分を含む液体燃料を製造する反応に用いられる触媒であって、
前記合成ガスはH
2
/CO混合ガスであり、
成分Iと成分IIを含み、前記成分Iと前記成分IIは機械的混合により複合され、前記成分Iの活性成分が金属酸化物であり、前記成分IIが一次元(1D)10員環チャンネル分子ふるいであり、
前記金属酸化物はMnO
x、MnCr
yO
(x+1.5y)、MnAl
yO
(x+1.5y)、MnZr
yO
(x+2y)、MnIn
yO
(x+1.5y)、ZnO、ZnCr
yO
(1+1.5y)、ZnAl
yO
(1+1.5y)、ZnGa
yO
(1+1.5y)、ZnIn
yO
(2+1.5y)、CeO
2、CoAl
yO
(1+1.5y)、FeAl
yO
(1+1.5y)、Ga
2O
3、Bi
2O
3、In
2O
3、In
yAl
zMnO
(x+1.5y+1.5z)、In
yGa
zMnO
(x+1.5y+1.5z)からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記xの数値範囲は1~3.5であり、前記yの数値範囲は0.1~10であり、前記zの数値範囲は0.1~10であり、
前記MnO
x、ZnO、CeO
2、Ga
2O
3、Bi
2O
3、In
2O
3の比表面積は1~100m
2/gであり、
前記MnCr
yO
(x+1.5y)、MnAl
yO
(x+1.5y)、MnZr
yO
(x+2y)、MnIn
yO
(x+1.5y)、ZnCr
yO
(1+1.5y)、ZnAl
yO
(1+1.5y)、ZnGa
yO
(1+1.5y)、ZnIn
yO
(2+1.5y)、CoAl
yO
(1+1.5y)、FeAl
yO
(1+1.5y)、In
yAl
zMnO
(x+1.5y+1.5z)、In
yGa
zMnO
(x+1.5y+1.5z)の比表面積は5~150m
2/gであ
り、
前記一次元10員環チャンネル分子ふるいはTON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造を有する分子ふるいであり、前記AELトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.05~0.5mol/kgであり、前記TON、MTT及びMREトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.005~0.6mol/kgであることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記分子ふるいの骨格元素の組成はSi-O、Si-Al-O、Si-Al-P-O、Al-P-O、Ga-P-O、Ga-Si-Al-O、Zn-Al-P-O、Mg-Al-P-O、Co-Al-P-Oからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記一次元10員環チャンネル分子ふるいはSAPO-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記成分Iにおける前記活性成分と前記成分IIとの重量比は0.1~20、好ましくは0.3~5であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記成分Iには分散剤をさらに添加し、前記金属酸化物は前記分散剤に分散され、前記分散剤はAl
2O
3、SiO
2、Cr
2O
3、ZrO
2、TiO
2、Ga
2O
3、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記AELトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量
は0.05~0.4mol/kg
、好ましくは0.05~0.3mol/kgであり、前記TON、MTT及びMREトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量
は0.005~0.4mol/kg
、好ましくは0.005~0.2mol/kgであり、
その中、中強酸に対応するNH
3-TPDの脱着ピークのピーク位置に対応する温度範囲が200~500℃であり、アセトンをプローブ分子とする、その
13C-NMRの化学シフトは210~220ppmの範囲にあることを特徴とする請求項
1又は2に記載の触媒。
【請求項6】
前記分子ふるいの骨格のO元素にはHが結合していても、結合していなくてもよく、且つ前記Hの全部又は一部は、イオン交換によりNa、Mg、K、Mn、Ag、Mo、Cr、Fe、Co、Ca、Pt、Pd、Ti、Zn、Ga、Ba、Geのうちの1種又は2種以上で置換されていてもよく、置換後、金属と酸素との総モル比は0.0002~0.02であることを特徴とする請求項2に記載の触媒。
【請求項7】
前記成分Iにおける前記分散剤の含有量は0.05~90wt%であり、残りは前記金属酸化物であることを特徴とする請求項4に記載の触媒。
【請求項8】
合成ガスを反応原料として、固定床又は移動床で転化反応を行うものであり、用いられる触媒は請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒であることを特徴とする合成ガスからの直接転化による液体燃料の製造方法。
【請求項9】
前記合成ガスの圧力は0.5~10MPa、好ましくは1~8MPaであり、反応温度は300~600℃、好ましくは320~450℃であり、対気速度が300~12000h
-1、好ましくは1000~9000h
-1、より好ましくは3000~9000h
-1であり、前記合成ガスはH
2/CO混合ガスであり、H
2/COの比は0.2~3.5、好ましくは0.3~2.5であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
合成ガスを反応原料として、ワンステップ法の直接転化により液体燃料を製造し、液体燃料の選択性は50~80%であり、C
5-C
11中のアレーンの選択性は40%未満であり、副生成物であるメタンの選択性は15%未満であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成ガスからのアレーン液体燃料の製造分野に関し、具体的には、触媒及び合成ガスの直接転化による液体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済の発展と生活水準の向上に伴い、液体燃料や化学品の需要も年々急増している。現在、ガソリンの生産は主に重質ナフサの接触改質によって行われている。全世界のガソリン資源の日々増加する消耗と原油価格の高止まりに伴い、特に石油資源の乏しい中国にとっては、毎年約60%以上の石油消費量を輸入に依存しているため、代替可能なプロセスの探求及び、石炭やバイオマスなどの非オイル系炭素資源を利用して液体燃料を製造する方法の開発は、重要な社会的意義と戦略的意義がある。
【0003】
中国の石炭資源は豊富であり、石炭を原料としてガス化により合成ガス(すなわちCOとH2の混合ガス)を得、合成ガスをメタノールに転化し、メタノールからジメチルエーテルを経てガソリンを製造する技術的プロセスは既に成熟しており、工業化が進んでいる。該技術的プロセスは、石炭や天然ガスなどの炭素資源から液体燃料を製造するために重要な新しいルートを提供している。しかしながら、メタノール合成及びメタノール脱水によるジメチルエーテルの製造を経ることなく、合成ガスから直接転化する直接ルートが実現できれば、工程の簡略化だけでなく、ユニット操作も削減され、コストやエネルギー消費を低減することができる。従来のフィッシャー・トロプシュ法によって合成ガスから液体燃料への直接転化を実現できるが、その反応機構の制限により、COとH2の分子の触媒表面での解離吸着が発生し、表面でC原子とO原子が生成し、C原子とO原子が触媒表面に吸着している水素と反応して、メチレン(CH2)中間体が形成され、同時に水分子を放出する。メチレン中間体は移転挿入反応によって触媒表面で自由重合を行い、異なる炭素原子数(1~30個、ひいては炭素原子が100個以上にまで達する場合もある)を含む炭化水素生成物を生成する。全体反応における炭化水素生成物の炭素原子数は広く分布し、目標生成物の選択性は低く、例えばガソリンの選択性は50%以下である。酸化物と分子ふるいからなる二元機能の触媒を用いることで、CO活性化とC-Cカップリングを2つの活性中心上で別々に行うことができ、これにより、従来のフィッシャー・トロプシュ法における生成物選択性の制限が破られ、高いガソリン選択性が得られる可能性がある。しかし、ガソリン留分の合成に適している分子ふるい、例えばよく使われるZSM-5分子ふるいは、アレーンを生成しやすく、製造されたガソリンにおけるアレーンの含有量が高すぎて、環境保護に不利である。そのため、ガソリンの選択性が高く、ガソリンにおけるアレーンの選択性が低い高活性な合成ガスからのガソリン留分(C5-C11)液体燃料の製造に適する触媒の開発を切実に求めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点に鑑み、本発明は、触媒及び合成ガスからの直接転化による液体燃料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。
【0006】
本発明は、二元機能の複合触媒を提供し、前記触媒は成分Iと成分IIを含み、前記成分Iと成分IIは機械的混合により複合され、成分Iの活性成分が金属酸化物であり、成分IIがTON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造を有する一次元10員環チャンネル分子ふるいまたは金属修飾TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造の分子ふるいのうちの1種又は2種以上であり、前記金属酸化物はMnOx、MnCryO(x+1.5y)、MnAlyO(x+1.5y)、MnZryO(x+2y)、MnInyO(x+1.5y)、ZnO、ZnCryO(1+1.5y)、ZnAlyO(1+1.5y)、ZnGayO(1+1.5y)、ZnInyO(2+1.5y)、CeO2、CoAlyO(1+1.5y)、FeAlyO(1+1.5y)、Ga2O3、Bi2O3、In2O3、InyAlzMnO(x+1.5y+1.5z)、InyGazMnO(x+1.5y+1.5z)からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記xの数値範囲は1~3.5であり、yの数値範囲は0.1~10であり、zの数値範囲は0.1~10である。
【0007】
前記MnOx、ZnO、CeO2、Ga2O3、Bi2O3、In2O3の比表面積は1~100m2/gであり、
前記MnCryO(x+1.5y)、MnAlyO(x+1.5y)、MnZryO(x+2y)、MnInyO(x+1.5y)、ZnCryO(1+1.5y)、ZnAlyO(1+1.5y)、ZnGayO(1+1.5y)、ZnInyO(2+1.5y)、CoAlyO(1+1.5y)、FeAlyO(1+1.5y)、InyAlzMnO(x+1.5y+1.5z)、InyGazMnO(x+1.5y+1.5z)の比表面積は5~150m2/gである。
【0008】
前記一次元10員環チャンネル分子ふるいはTON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー分子ふるいであり、TON又はAEL又はMTT又はMRE分子ふるいは一次元10員環チャンネルを備える。
【0009】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造を有する分子ふるいは一次元10員環チャンネル構造を含み、その骨格元素の組成はSi-O、Si-Al-O、Si-Al-P-O、Al-P-O、Ga-P-O、Ga-Si-Al-O、Zn-Al-P-O、Mg-Al-P-O、Co-Al-P-Oからなる群より選ばれる1種又は2種以上であってもよく、そのタイプの分子ふるいは、SAPO-11又はZSM-22又はZSM-23又はZSM-48からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0010】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記AELの分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.05~0.5mol/kg、好ましくは0.05~0.4mol/kg、より好ましくは0.05~0.3mol/kgであり、前記TONの分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.005~0.6mol/kg、好ましくは0.005~0.4mol/kg、より好ましくは0.005~0.2mol/kgである。
【0011】
前記成分IIにおける分子ふるいは、自己で合成したものであってもよいし、市販されたものであってもよいが、本発明に限定される範囲を満たさなければならない。
【0012】
前記酸の強度は、NH3-TPDピークで定義され、弱酸、中強酸、強酸の3種類の酸性を含む。
【0013】
このNH3-TPDは、NH3の脱着ピークの位置に従うが、前記脱着ピークの位置とは、基準測定条件、即ちサンプル質量wとキャリアガスの単位時間当りの流量fとの比(w/f)=100g・h/L、10℃/minの昇温速度の測定条件下で、TCDでNH3脱着の熱伝導信号を記録し、脱着曲線を描き、曲線のピーク位置に基づき、前記無機固体を3種類の酸性度に分ける。弱酸とはNH3脱着温度が275℃未満である酸性点であり、中強酸とはNH3脱着温度が275~500℃の酸性点であり、強酸とはNH3脱着温度は500℃より高い酸性点である。前記分子ふるいは、実験室で合成したものであってもよいし、購入されたものであってもよいが、本発明の要求を満たさなければならない。
【0014】
アセトンをプローブ分子とする、その13C-NMRの化学シフトは、210~220ppmの範囲にある。
【0015】
上記の形態に基づいて、好ましくは、成分Iにおける活性成分と成分IIとの重量比は0.1~20であり、0.3~5が好ましい。
【0016】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記成分Iには分散剤をさらに添加し、金属酸化物は分散剤に分散され、前記分散剤は、Al2O3、SiO2、Cr2O3、ZrO2、TiO2、Ga2O3、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上である。
【0017】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記成分Iにおける分散剤の含有量は、0.05~90wt%であり、残りは金属酸化物である。
【0018】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記成分IIにおける分子ふるいの骨格のO元素には、Hが結合していてもよいし結合していなくてもよく、且つ前記Hの全部又は一部は、イオン交換によりNa、Mg、K、Mn、Ag、Mo、Cr、Fe、Co、Ca、Pt、Pd、Ti、Zn、Ga、Ba、Geのうちの1種又は2種以上で置換されていてもよく、置換後、金属と酸素との総モル比は0.0002~0.02である。
【0019】
本発明は、更に、合成ガスを反応原料として、固定床又は移動床で転化反応を行い、用いられる触媒が上記二元機能の複合触媒である合成ガスからの直接転化による液体燃料の製造方法を提供する。
【0020】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記合成ガスの圧力は0.5~10MPa、好ましくは1~8MPaであり、反応温度は300~600℃、好ましくは350~450℃であり、対気速度は300~12000h-1、好ましくは1000~9000h-1、より好ましくは3000~9000h-1であり、前記合成ガスはH2/CO混合ガスであり、H2/COの比は0.2~3.5、好ましくは0.3~2.5である。
【0021】
上記の形態に基づいて、好ましくは、前記二元機能の複合触媒は合成ガスのワンステップ法の直接転化による液体燃料の製造に用いられ、液体燃料の選択性は50~80%、好ましくは65-80%であり、C5-C11中のアレーンの選択性は40%未満、好ましくは30%未満であり、副生成物であるメタンの選択性は15%未満、好ましくは10%未満である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0023】
1.本技術は、従来のフィッシャー・トロプシュ法で液体燃料を製造する技術と異なり、ワンステップで合成ガスを液体燃料へ直接、効率的に転化することを実現することができるとともに、液体燃料におけるアレーンの選択性を大幅に低下させる。
【0024】
2.生成物における液体燃料の選択性は50~80%と高く、生成物は深冷分離を行うことなく、分離できるため、分離を行うためのエネルギー消費量とコストが大幅に削減される。
【0025】
3.触媒における成分Iの活性成分である金属酸化物は高い比表面積を有するので、金属酸化物の表面はより多くの活性サイトを備え、触媒反応の進行により有利である。
【0026】
4.触媒における成分IIの作用は、成分Iとカップリングすることで、成分Iによって生成される活性気相中間体をさらに転化して液体燃料を得、カスケード反応の平衡に対する成分IIの駆動作用により、成分Iによる合成ガスの活性化及び転化が促進されて、転化率が向上し、一方、本発明に用いられる成分IIにおける分子ふるいの特別な一次元10員環チャンネル構造は、独特な選択性の選択効果を有するので、より多くの液体燃料を高い選択性で得ることができるとともに、液体燃料におけるアレーンの含有量を大幅に低下させる。
【0027】
5.本発明に記載の成分I又は成分IIをそれぞれ個別に用いると、本発明の機能を全く実現できず、例えば、成分Iのみを用いる場合、生成物におけるメタンの選択性が非常に高い上、転化率も非常に低くなり、成分IIのみを用いる場合、合成ガスがほとんど活性化及び転化できず、成分Iと成分IIが協同で触媒作用を発揮するからこそ、合成ガスの転化を高効率で実現するとともに、優れた選択性を得ることができる。これは、成分Iが合成ガスを活性化させて特定の活性気相中間体を生成し、中間体が気相を経て成分IIのチャンネル内に拡散されるからである。本発明において選択されたTON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造の分子ふるいは特別な一次元10員環チャンネル構造と酸性を備えるので、成分Iによって生成された活性気相中間体をさらに効果的に液体燃料に活性化及び転化させるとともに、低いアレーン選択性(<40%)を保持する。該分子ふるいは、一次元の8員環や12員環と、二次元や三次元の10員環の分子ふるいとは異なっており、一次元8員環の生成物は主に短炭素鎖の炭化水素(C2-C4)であり、一次元12員環分子ふるいによってより得られる生成物において、長炭素鎖の生成物が比較的に高いが、生成物におけるアレーンの含有量は一次元10員環より高く、二次元10員環と三次元10員環分子ふるいは多くの高炭素生成物を生成することができるが、長鎖におけるアレーンの選択性が高いので、環境保護に不利である。即ち、成分IIの特別なチャンネル構造によって、生成物が特別な選択性を備えるようになる。
【0028】
6.本発明の複合触媒の製造方法は、過程が簡単で、条件が温和であり、製品の収率及び選択性が高く、C5-C11液体燃料の選択性は50~80%に達することができ、C5-C11中のアレーン選択性が40%未満であり、副生成物であるメタンの選択性が低い(<15%)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例により、本発明をさらに詳述するが、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例に制限されない。また、実施例にはこの目的を実現するための一部の条件が示されるが、目的を達成するためにこれらの条件が満たさなければならないことを意味するのではない。
【0030】
サンプルの比表面積は、窒素又はアルゴンの物理吸着方法で測定することができる。
【0031】
本発明に係る金属酸化物は、市販の高比表面積の金属酸化物を購入してもよいし、以下の方法で取得してもよい。
【0032】
一、触媒成分Iの製造
(一)、沈降法による高比表面積を有するZnO材料の合成
(1)1部あたり0.446g(1.5mmol)のZn(NO3)2・6H2Oを3部秤取し、3つの容器に加え、さらに0.795g(7.5mmol)、1.272g(12mmol)、1.908g(18mmol)のNaCO3をそれぞれ秤取して上記3つの容器に順に加え、次いで30mlの脱イオン水をそれぞれ量り取って3つの容器に加え、70℃で0.5h以上攪拌して溶液を均一に混合し、室温まで自然冷却する。反応液を遠心分離して遠心分離後の沈澱物を収集し、脱イオン水で2回洗浄してZnO金属酸化物の前駆体を得る。
【0033】
(2)焙焼:上記で得られた生成物を空気中で乾燥させた後、雰囲気において焙焼処理を行うことで、高比表面積のZnO材料を得る。雰囲気は不活性ガス、還元性ガス又は酸化性ガスであり、不活性ガスはN2、He及びArのうちの1種又は2種以上であり、還元性ガスはH2、COのうちの1種又は2種であり、還元性ガスには不活性ガスが含まれてもよく、酸化性ガスはO2、O3、NO2のうちの1種又は2種以上であり、酸化性ガスには不活性ガスが含まれてもよい。焙焼温度は300~700℃であり、時間は0.5h~12hである。
【0034】
焙焼の目的は、沈澱後の金属酸化物の前駆体を、高温下で高比表面積の酸化物ナノ粒子に分解するとともに、分解して生成した酸化物表面の吸着物を焙焼の高温処理により完全に除去することである。
【0035】
具体的なサンプル及びその製造条件は下記の表1に示し、比較例としての表中のZnO4は市販の低比表面積のZnO単結晶である。
【0036】
【0037】
(二)共沈降法による高比表面積を有するMnO材料の合成
製造過程は上記ZnO2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Mnの前駆体を用いることであり、Mnの前駆体は硝酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガンのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸マンガンを用い、対応する生成物はMnOxと定義し、x=1であり、比表面積は43m2/gである。
【0038】
(三)共沈降法による高比表面積を有するCeO2材料の合成
製造過程は上記ZnO2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Ceの前駆体を用いることであり、Ceの前駆体は硝酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸セリウムを用い、対応する生成物はCeO2と定義し、比表面積は92m2/gである。
【0039】
(四)共沈降法による高比表面積を有するGa2O3材料の合成
製造過程は上記ZnO2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Gaの前駆体を用いることであり、Gaの前駆体は硝酸ガリウム、塩化ガリウム、酢酸ガリウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸ガリウムを用い、対応する生成物はGa2O3と定義し、比表面積は55m2/gである。
【0040】
(五)共沈降法による高比表面積を有するBi2O3材料の合成
製造過程は上記ZnO2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Biの前駆体を用いることであり、Biの前駆体は硝酸ビスマス、塩化ビスマス、酢酸ビスマスのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸ビスマスを用い、対応する生成物はBi2O3と定義し、比表面積は87m2/gである。
【0041】
(六)共沈降法による高比表面積を有するIn2O3材料の合成
製造過程は上記ZnO2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Inの前駆体を用いることであり、Inの前駆体は硝酸インジウム、塩化インジウム、酢酸インジウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸インジウムを用い、対応する生成物はIn2O3と定義し、比表面積は52m2/gである。
【0042】
(七)沈降法による高比表面積を有するMnCryO(x+1.5y)、MnAlyO(x+1.5y)、MnZryO(x+2y)、MnInyO(x+1.5y)、ZnCryO(1+1.5y)、ZnAlyO(1+1.5y)、ZnGayO(1+1.5y)、ZnInyO(2+1.5y)、CoAlyO(1+1.5y)、FeAlyO(1+1.5y)、InyAlzMnO(x+1.5y+1.5z)、InyGazMnO(x+1.5y+1.5z)の合成
硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸クロム、硝酸マンガン、硝酸ジルコニウム、硝酸ガリウム、硝酸インジウム、硝酸コバルト及び硝酸鉄を前駆体として用い、室温で炭酸アンモニウムと水中で混合し(ここで、炭酸アンモニウムを沈殿剤とし、仕込み比は、炭酸アンモニウムが過量であるか又は好ましくはアンモニウムイオンと金属イオンとの比が1:1である)、その混合液をエージングした後、取り出して洗浄、ろ過、乾燥し、得られた固体を空気雰囲気下で焙焼し、高比表面積の金属酸化物を得る。具体的なサンプル及びその製造条件は下記の表2に示す。
【0043】
【0044】
(八)、分散剤Cr2O3、Al2O3又はZrO2で分散した金属酸化物
分散剤Cr2O3、Al2O3又はZrO2を担体とし、沈澱堆積法によりCr2O3、Al2O3又はZrO2で分散した金属酸化物を製造する。分散ZnOの製造を例とすると、市販のCr2O3(比表面積が約5m2/gである)、Al2O3(比表面積が約20m2/g)又はZrO2(比表面積が約10m2/g)は担体として事前に水に分散し、次いで硝酸亜鉛を原料として、沈殿剤である水酸化ナトリウムと室温で混合して沈澱させ、Zn2+のモル濃度は0.067Mであり、Zn2+と沈殿剤とのモル比は1:8であり、その後、160℃で24時間エージングし、Cr2O3、Al2O3又はZrO2を担体として分散したZnO(成分Iにおける分散剤の含有量は順に0.1wt%、20wt%、85wt%である)を得る。得られたサンプルは空気中で、500℃で1h焙焼し、生成物は順に分散酸化物1~3として定義され、その比表面積は順に148m2/g、115m2/g、127m2/gである。
【0045】
同様の方法により、SiO2(比表面積が約2m2/g)、Ga2O3(比表面積が約10m2/g)又はTiO2(比表面積が約15m2/g)を担体として分散したMnO酸化物(成分Iにおける分散剤の含有量が順に5wt%、30wt%、60wt%である)を得、生成物は順に分散酸化物4~6として定義され、比表面積は順に97m2/g、64m2/g、56m2/gである。
【0046】
同様の方法により、活性炭(比表面積が約1000m2/g)、グラフェン(比表面積が約500m2/g)又はカーボンナノチューブ(比表面積が約300m2/g)を担体として分散したZnO酸化物(成分Iにおける分散剤の含有量は順に5wt%、30wt%、60wt%である)を得、生成物は順に分散酸化物7~9として定義され、比表面積は順に177m2/g、245m2/g、307m2/gである。
【0047】
二、成分II(TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造の分子ふるい)の製造
前記TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造の分子ふるいは、一次元10員環チャンネルを有する。
【0048】
本発明に記載の中強酸は、固体NMRのHスペクトル、NH3-TPD、赤外線、化学滴定などの手段で測定可能であるが、酸性の測定方法は上記測定方法に限られない。
【0049】
本発明に係る分子ふるいは、製品の酸密度が本発明の要求に合うTON又はAEL又はMTT又はMREポロジー構造を有する分子ふるいでもよいし、自己で合成した分子ふるいでもよい。ここでは、水熱合成法により製造される分子ふるいを例とする。
【0050】
1)AELトポロジー構造を有する分子ふるいの具体的な製造過程
酸化物SiO2:Al2O3:H3PO4:R:H2O=4:10:10:9:300(質量比)に従って原料である30%(質量濃度)のシリカゾル、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸、DPA及び/又はDIPA(R)、脱イオン水を秤取し、室温で混合した後で、テンプレート剤である0.5倍のモル量の助剤HFを添加し、30℃で攪拌しながらエージングし、2h後に水熱釜に移し、200℃で24h結晶化させる。水浴で室温に急速冷却し、上清液のpHが7になるまで遠心分離と洗浄を繰り返し、沈澱物を110℃で17h乾燥した後、600℃、空気中で3h焙焼し、多段孔構造の珪素・リン・アルミニウム無機固体酸を得る。
【0051】
2)TONトポロジー構造を有する分子ふるいの具体的な製造過程
酸化物SiO2:Al2O3:K2O:R:H2O=70:1:7.5:25:500(質量比)に従って原料である30%(質量濃度)のシリカゾル、硫酸アルミニウム、水酸化カリウム、HDA(R)、脱イオン水を秤取し、室温で混合した後で、テンプレート剤である0.5倍のモル量の助剤HFを添加し、30℃で攪拌しながらエージングし、2h後に水熱釜に移し、180℃で48h結晶化させる。水浴で室温に急速冷却し、上清液のpHが7になるまで遠心分離と洗浄を繰り返し、沈澱物を110℃で17h乾燥した後、600℃、空気中で3h焙焼し、多段孔構造の分子ふるいを得る。
【0052】
3)MTTトポロジー構造を有する分子ふるいの具体的な製造過程
0.4gの硫酸アルミニウムを60.75gの水に溶かし、0.26gのNaOHと2.4gのピリジンを加えた上、4.5gのシリカ白を加える。2h攪拌した後、テトラフルオロエチレンライナー水熱釜に移し、160℃で3日結晶化させる。生成物を遠心分離、洗浄、乾燥、焙焼して、1Mの硝酸アンモニウム溶液において70℃で2hイオン交換した後、再び遠心分離、洗浄、乾燥、焙焼して生成物を得る。
【0053】
4)MREトポロジー構造を有する分子ふるいの具体的な製造過程
PMBr2はテンプレート剤とし、0.15gの硝酸アルミニウムを17.93gの水に溶かし、0.64gの50wt%の水酸化ナトリウムを加え、1.24gのテンプレート剤を加える。最後に4.96gのTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を加えて2h攪拌し、45mlの水熱釜に移し、160℃、37rpmの条件下で7日間回転して結晶化させる。生成物を急速に冷却した後、遠心分離、洗浄、乾燥、焙焼する。同様に、1Mの硝酸アンモニウム溶液を用いて70℃で2hイオン交換した後、再び遠心分離、洗浄、乾燥、焙焼して生成物を得る。
【0054】
前記TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造を有する分子ふるいの骨格元素の組成は、Si-O、Si-Al-O、Si-Al-P-O、Al-P-O、Ga-P-O、Ga-Si-Al-O、Zn-Al-P-O、Mg-Al-P-O、Co-Al-P-Oからなる群より選ばれる1種又は2種以上であってもよい。一部の骨格のO元素にHが結合しており、対応する生成物は順に分1-7として定義される。
【0055】
【0056】
2)上記生成物分1-6骨格のO元素に結合しているHの一部をイオン交換によりNa、Mg、K、Mn、Ag、Mo、Cr、Fe、Co、Ca、Pt、Pd、Ti、Zn、Ga、Ba、Geのような金属イオンで置換する。その製造過程は以下の通りである。
【0057】
SiO2:Al2O3:H3PO4:R:H2O=4:16:32:55:150であり、Rはテンプレート剤である。
【0058】
硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウム溶液を混合してから、シリカゾル、リン酸、DPA及び/又はDIPA(R)、脱イオン水を加え、1h攪拌し、均質の初期ゲルを得、それを高圧合成釜に移し、190℃で48h静的結晶化した後、急速に冷却させ、洗浄、乾燥して、AELトポロジー構造を有する分子ふるいのサンプルを得る。
【0059】
SiO2:Al2O3:K2O:R:H2O=70:1:7.5:25:500であり、Rはテンプレート剤である。
【0060】
硫酸アルミニウムと水酸化カリウム溶液を混合してから、シリカゾル、HDA(R)、脱イオン水を加え、1h攪拌し、均質の初期ゲルを得、それを高圧合成釜に移し、190℃で48h静的結晶化した後、急速に冷却させ、洗浄、乾燥して、TONトポロジー構造を有する分子ふるいのサンプルを得る。
【0061】
SiO2:Al2O3:Na2O:R:H2O=9:1:0.5:5:130であり、Rはテンプレート剤である。
【0062】
硫酸アルミニウムを水に溶かしてから、NaOH、ピリジン(R)及びシリカ白を加え、2h攪拌した後、テトラフルオロエチレンライナー水熱釜に移し、160℃で3日静的結晶化する。生成物を遠心分離、洗浄、乾燥、焙焼して、MTTトポロジー構造を有する分子ふるいのサンプル生成物を得る。
【0063】
SiO2:Al2O3:Na2O:R:H2O=25:1:1.5:6:90であり、Rはテンプレート剤である。
【0064】
硝酸アルミニウムと水酸化ナトリウム溶液を混合してから、TEOS、PMBr2(R)、脱イオン水を加え、2h攪拌した後、高圧合成釜に移し、160℃で84h静的結晶化した後、急速に冷却させ、洗浄、乾燥して、MREトポロジー構造を有する分子ふるいのサンプルを得る。
【0065】
上記のサンプルを固液質量比=1:30の比で0.5mol/Lの交換待ちの金属イオン硝酸塩溶液と混合した後、80℃で6h攪拌、洗浄及び乾燥を行い、この過程を2回繰り返して行い、550℃で3h焙焼し、金属イオンで交換されたTON又はAEL又はMTT又はMREを得る。対応する生成物は順に分7-23として定義される。
【0066】
【0067】
3)他の元素組成を有する分子ふるい
【0068】
【0069】
三、触媒の製造
成分Iと成分IIを所定の割合で容器に入れ、これらの材料及び/又は容器の高速運動による押圧力、衝撃力、剪断力、摩擦力などのうちの1種又は2種以上の作用により、分離、破砕、均一混合などの目的を達成し、温度とキャリアガスの雰囲気を調整することで機械的エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーの転換を実現し、さらに異なる成分間の相互作用を調整する。
【0070】
機械的混合の過程において、混合温度を20~100℃に設定してもよく、雰囲気中又はそのまま空気中で行ってもよい。雰囲気は以下のいずれかの気体から選ばれる。
a)窒素ガス及び/又は不活性ガス。
b)水素ガスと窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおける水素ガスの体積が5~50%である。
c)COと窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおけるCOの体積が5~20%である。
d)O2と窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおけるO2の体積が5~20%であり、前記不活性ガスがヘリウム、アルゴン、ネオンのうちの1種又は2種以上である。
【0071】
機械的混合は、機械攪拌、ボールミーリング、シェーカー混合、機械的研磨のうちの1種又は2種以上を用いて複合を行うことができ、詳細は以下の通りである。
【0072】
機械攪拌:攪拌槽において、攪拌棒を用いて成分Iと成分IIを混合し、攪拌時間(5min~120min)及び速度(30~300r/min)を制御することにより、成分Iと成分IIとの混合程度及び相対距離を調整することができる。
【0073】
ボールミーリング:研磨剤と触媒を研磨タンク内で高速で回転させることで、触媒に強い衝撃、圧延を与え、成分Iと成分IIを分散、混合する作用を達成する。研磨剤(材質がステンレス、メノウ、石英でもよい。サイズ範囲が5mm~15mm)と触媒との割合(質量比の範囲が20~100:1)を制御することで、触媒の粒径と相対距離を調整することができる。
【0074】
シェーカー混合法:成分Iと成分IIを予備混合し、容器に入れ、シェーカーの往復振動又は円周振動を制御することで、成分Iと成分IIの混合を達成し、振動速度(範囲が1~70r/分)と時間(範囲が5min~120min)を調整することにより、均一混合を実現し、相対距離を調節する。
【0075】
機械的研磨法:成分Iと成分IIを予備混合し、容器に入れ、一定の圧力(範囲が5kg~20kg)下で、研磨ツールと混合した触媒との相対運動を行うことにより(速度範囲が30~300r/min)により、触媒粒子のサイズ、相対距離を調整し、均一混合を実現する。
【0076】
具体的な触媒製造及びその特性パラメータは表6に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
[触媒反応の実例]
固定床反応を例とするが、触媒は移動床反応器にも適用できる。該装置には気体質量流量計、オンライン生成物分析クロマトグラフィー(反応器の排気ガスはクロマトグラフィーの定量バルブに直接接続され、周期的及びリアルタイムのサンプリング及び分析を行う)が配置されている。
【0082】
上記に係る本発明の触媒を2g取って固定床反応器に置き、Arで反応器における空気を置換した後、H2雰囲気において300℃までに昇温し、合成ガス(H2/COのモル比=0.2~3.5)に切り替え、合成ガスの圧力を0.5~10MPaとし、反応温度300~600℃まで昇温し、反応原料ガスの対気速度を300~12000ml/g/hに調整する。生成物をオンラインクロマトグラフィーで測定し分析を行う。
【0083】
温度、圧力、対気速度及び合成ガスにおけるH2/COのモル比を変更することで、反応性能を変更することができる。生成物において、C5-C11からなる液体燃料の選択性は50~80%に達することができる。触媒金属複合物の表面の水素化活性が高くないため、メタンの大量生成が回避され、メタンの選択性が低くなる。触媒の具体的な使用及びその効果データを表7に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
比較例1において、触媒の成分IはZnO3であり、成分IIは申覃会社から市販されているMORであり、一次元の8員環と12員環が共存のチャンネルを有する。
【0087】
比較例2で用いられる触媒における分子ふるいは市販されている商品ZSM-12であり、一次元の12員環直通チャンネルを有する。
【0088】
比較例3で用いられる触媒における分子ふるいは市販されている商品SAPO-34であり、三次元の交差チャンネル、8員環孔口直径を有する。
【0089】
比較例4で用いられる触媒における分子ふるいは市販されている商品ZSM-5であり、三次元10員環トポロジー構造を有する。
【0090】
比較例5で用いられる触媒における分子ふるいは市販されている商品ZSM-35であり、二次元の8員環と10員環が共存のトポロジー構造を有する。
【0091】
比較例6で用いられる触媒における分子ふるいは市販されている商品MCM-22であり、二次元10員環トポロジー構造を有する。
【0092】
比較例7で用いられる触媒中の分子ふるいは市販されている商品ZSM-11であり、三次元10員環トポロジー構造を有する。
【0093】
比較例1~7の反応結果から分かるように、異なるトポロジー構造の分子ふるいの生成物選択性に対する調節作用は明らかである。一次元の8員環と12員環が共存する市販のMORの分子ふるいは、生成物が主に短炭素鎖の炭化水素(C2-C4)であり、長炭素鎖の生成物の選択性は比較的に低い。一次元12員環を有するZSM-12は、生成物におけるガソリンの選択性が比較的高いが、ガソリンにおけるアレーンの含有量が高い(>40%)。二次元の8員環と10員環が共存するZSM-35及び三次元8員環チャンネル構造のSAPO-34はC5以上の炭化水素の生成に不利であり、短炭素鎖の炭化水素の製品の生成に適している。二次元10員環を有するMCM-22分子ふるい、三次元10員環チャンネルを有するZSM-5及びZSM-11分子ふるいはガソリン留分の生成に適しているが、ガソリンにおけるアレーンの選択性が高い(>50%)。一次元10員環チャンネルのTON又はAEL又はMTT又はMREタイプのトポロジー構造を有する分子ふるいだけがアレーンの含有量の低いガソリンの生成に適している。
【0094】
比較例8において、触媒の成分IはZnO4であり、比表面積が低く(<1m2/g)、成分IIは分1であり、COの転化率が低く、反応性が低いため、酸化物の比表面積が小さすぎて反応の進行に不利である。
【0095】
比較例9で使用される触媒は成分IであるZnO1のみを有する触媒であって、TON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造の分子ふるいを含まないサンプルであり、反応転化率が非常に低く、且つ生成物は主にジメチルエーテル及びメタンなどの副生成物であり、液体燃料が殆ど生成されていない。
【0096】
比較例10で使用される触媒は成分IIのみを有する分子ふるいであって、成分Iを含まないサンプルであり、触媒反応はほとんど活性がない。
【0097】
比較例9、10から分かるように、成分I又は成分IIのみである場合、反応効果が非常に悪く、本発明に記載の優れた反応性能を全く持っていない。
【0098】
上記の表からわかるように、分子ふるいの構造、TON&AEL&MTT&MREトポロジー構造及びその酸強度及び酸量、並びに金属酸化物と分子ふるいとの間のマッチングは非常に重要であり、一酸化炭素の転化率、並びに液体燃料の選択性に直接的に影響を与える。
【0099】
(付記)
(付記1)
成分Iと成分IIを含み、前記成分Iと前記成分IIは機械的混合により複合され、前記成分Iの活性成分が金属酸化物であり、前記成分IIが一次元(1D)10員環チャンネル分子ふるいであり、
前記金属酸化物はMnOx、MnCryO(x+1.5y)、MnAlyO(x+1.5y)、MnZryO(x+2y)、MnInyO(x+1.5y)、ZnO、ZnCryO(1+1.5y)、ZnAlyO(1+1.5y)、ZnGayO(1+1.5y)、ZnInyO(2+1.5y)、CeO2、CoAlyO(1+1.5y)、FeAlyO(1+1.5y)、Ga2O3、Bi2O3、In2O3、InyAlzMnO(x+1.5y+1.5z)、InyGazMnO(x+1.5y+1.5z)からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記xの数値範囲は1~3.5であり、前記yの数値範囲は0.1~10であり、前記zの数値範囲は0.1~10であり、
前記MnOx、ZnO、CeO2、Ga2O3、Bi2O3、In2O3の比表面積は1~100m2/gであり、
前記MnCryO(x+1.5y)、MnAlyO(x+1.5y)、MnZryO(x+2y)、MnInyO(x+1.5y)、ZnCryO(1+1.5y)、ZnAlyO(1+1.5y)、ZnGayO(1+1.5y)、ZnInyO(2+1.5y)、CoAlyO(1+1.5y)、FeAlyO(1+1.5y)、InyAlzMnO(x+1.5y+1.5z)、InyGazMnO(x+1.5y+1.5z)の比表面積は5~150m2/gであることを特徴とする触媒。
【0100】
(付記2)
前記一次元10員環チャンネル分子ふるいはTON又はAEL又はMTT又はMREトポロジー構造を有する分子ふるいであり、前記分子ふるいの骨格元素の組成はSi-O、Si-Al-O、Si-Al-P-O、Al-P-O、Ga-P-O、Ga-Si-Al-O、Zn-Al-P-O、Mg-Al-P-O、Co-Al-P-Oからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記一次元10員環チャンネル分子ふるいはSAPO-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0101】
(付記3)
前記成分Iにおける前記活性成分と前記成分IIとの重量比は0.1~20、好ましくは0.3~5であることを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0102】
(付記4)
前記成分Iには分散剤をさらに添加し、前記金属酸化物は前記分散剤に分散され、前記分散剤はAl2O3、SiO2、Cr2O3、ZrO2、TiO2、Ga2O3、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0103】
(付記5)
前記AELトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.05~0.5mol/kg、好ましくは0.05~0.4mol/kg、より好ましくは0.05~0.3mol/kgであり、前記TON、MTT及びMREトポロジー構造の分子ふるいは中強酸特性を有し、中強酸サイトの量は0.005~0.6mol/kg、好ましくは0.005~0.4mol/kg、より好ましくは0.005~0.2mol/kgであり、
その中、中強酸に対応するNH3-TPDの脱着ピークのピーク位置に対応する温度範囲が200~500℃であり、アセトンをプローブ分子とする、その13C-NMRの化学シフトは210~220ppmの範囲にあることを特徴とする付記2に記載の触媒。
【0104】
(付記6)
前記分子ふるいの骨格のO元素にはHが結合していても、結合していなくてもよく、且つ前記Hの全部又は一部は、イオン交換によりNa、Mg、K、Mn、Ag、Mo、Cr、Fe、Co、Ca、Pt、Pd、Ti、Zn、Ga、Ba、Geのうちの1種又は2種以上で置換されていてもよく、置換後、金属と酸素との総モル比は0.0002~0.02であることを特徴とする付記2に記載の触媒。
【0105】
(付記7)
前記成分Iにおける前記分散剤の含有量は0.05~90wt%であり、残りは前記金属酸化物であることを特徴とする付記4に記載の触媒。
【0106】
(付記8)
合成ガスを反応原料として、固定床又は移動床で転化反応を行うものであり、用いられる触媒は付記1~7のいずれか1つに記載の触媒であることを特徴とする合成ガスからの直接転化による液体燃料の製造方法。
【0107】
(付記9)
前記合成ガスの圧力は0.5~10MPa、好ましくは1~8MPaであり、反応温度は300~600℃、好ましくは320~450℃であり、対気速度が300~12000h-1、好ましくは1000~9000h-1、より好ましくは3000~9000h-1であり、前記合成ガスはH2/CO混合ガスであり、H2/COの比は0.2~3.5、好ましくは0.3~2.5であることを特徴とする付記8に記載の方法。
【0108】
(付記10)
合成ガスを反応原料として、ワンステップ法の直接転化により液体燃料を製造し、液体燃料の選択性は50~80%であり、C5-C11中のアレーンの選択性は40%未満であり、副生成物であるメタンの選択性は15%未満であることを特徴とする付記8に記載の方法。