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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】蒸気加熱庫
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A47J27/16 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022016857
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520263992
【氏名又は名称】株式会社エルテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 保雄
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070532(US,A1)
【文献】特開昭54-150266(JP,A)
【文献】実開平07-018102(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0009013(KR,A)
【文献】中国実用新案第211091733(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101720(US,A1)
【文献】特公平07-108196(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00、27/04
A47J 27/14-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物をミスト状の蒸気によって加熱する蒸気加熱庫であって、
庫内空間を内側に形成する庫本体と、
前記庫内空間において前記加熱対象物を配置する配置空間、および該配置空間に蒸気を導入する蒸気流通経路を形成するラックと、
前記庫本体における庫上下方向から見て前記ラックに重なる位置において該ラックの上方または下方に配置されて前記庫内空間に開口し、前記蒸気流通経路に導入される蒸気を噴出する蒸気噴出口と、
前記蒸気噴出口から噴出された蒸気を接触させることで蒸気をミスト化する蒸気接触面と、
を備え、
前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の下方に設けられた下側蒸気接触面を備え、
前記庫内空間において前記蒸気噴出口の下方に配置され、かつ上方に開口する箱状をなすとともに、前記下側蒸気接触面が内側に形成された下側箱体が設けられている蒸気加熱庫。
【請求項2】
前記下側箱体における箱内面のうちの底面が、前記庫上下方向に直交する庫横方向の一方に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、
前記下側箱体には、前記傾斜面の下端の位置で開口して、前記庫本体の外部に連通して凝縮水を排出する排出口が形成されている請求項1に記載の蒸気加熱庫。
【請求項3】
前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に設けられた上側蒸気接触面をさらに備え、
前記下側蒸気接触面および前記上側蒸気接触面のセットは、前記ラックに対して上方または下方に配置されて、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口を挟み込むように設けられ、
前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に配置され、かつ下方に開口する箱状をなすとともに、前記上側蒸気接触面が内側に形成された上側箱体が設けられ、
前記庫上下方向から見て、前記上側箱体の全体が前記下側箱体に重なる位置に、前記上側箱体が配置されている請求項1または2に記載の蒸気加熱庫。
【請求項4】
前記上側箱体は、該上側箱体自身に付着した水滴を下方に案内する案内面を有し、
前記下側箱体は、前記案内面から滴下される水滴を受け止める受け面を有する請求項3に記載の蒸気加熱庫。
【請求項5】
前記上側案内面は、前記上側箱体の箱内面における側面であり、
前記受け面は、前記下側箱体の箱内面における側面である請求項4に記載の蒸気加熱庫。
【請求項6】
加熱対象物をミスト状の蒸気によって加熱する蒸気加熱庫であって、
庫内空間を内側に形成する庫本体と、
前記庫内空間において前記加熱対象物を配置する配置空間、および該配置空間に蒸気を導入する蒸気流通経路を形成するラックと、
前記庫本体における庫上下方向から見て前記ラックに重なる位置において該ラックの上方または下方に配置されて前記庫内空間に開口し、前記蒸気流通経路に導入される蒸気を噴出する蒸気噴出口と、
前記蒸気噴出口から噴出された蒸気を接触させることで蒸気をミスト化する蒸気接触面と、
を備え、
前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の下方に設けられた下側蒸気接触面、および、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に設けられた上側蒸気接触面を備え、
前記下側蒸気接触面および前記上側蒸気接触面のセットは、前記ラックに対して上方または下方に配置されて、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口を挟み込むように設けられており、
前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に配置され、かつ下方に開口する箱状をなすとともに、前記上側蒸気接触面が内側に形成された上側箱体が設けられている蒸気加熱庫。
【請求項7】
前記蒸気噴出口は下方に開口している請求項1から6のいずれか一項に記載の蒸気加熱庫。
【請求項8】
三個以上の複数の前記蒸気噴出口が、前記庫上下方向に直交する庫横方向に広がる面上に互いに間隔をあけて分布するように配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載の蒸気加熱庫。
【請求項9】
前記庫内空間において前記ラックの上方または下方に配置され、前記庫内空間に蒸気を供給する蒸気供給部材が設けられ、
前記蒸気供給部材は、前記庫横方向における互いに交差する複数の方向に延びる管状をなすとともに、複数の前記蒸気噴出口を形成している請求項8に記載の蒸気加熱庫。
【請求項10】
前記ラックは、前記庫上下方向に直交する庫横方向に該庫本体の内面との間に前記蒸気噴出口からの蒸気が導入される隙間を空けて配置され、
前記ラックの側面には、前記隙間と前記配置空間とを連通する連通開口が形成され、
前記隙間および前記連通開口が前記蒸気流通経路を構成している請求項1から9のいずれか一項に記載の蒸気加熱庫。
【請求項11】
前記庫内空間における上部と下部とを連通し、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口に近接する側に向かって蒸気を流通させる上下連通路をさらに備える請求項1から10のいずれか一項に記載の蒸気加熱庫。
【請求項12】
前記庫内空間における上部と下部とを連通し、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口に近接する側に向かって蒸気を流通させる上下連通路をさらに備え、
前記上下連通路は、前記隙間に配置されて前記庫上下方向に延びる管状部材の内側に形成されている請求項10に記載の蒸気加熱庫。
【請求項13】
前記管状部材には、前記庫上下方向において前記蒸気噴出口に近い側に蒸気流出口が形成され、
前記蒸気流出口は、前記蒸気噴出口の開口方向に対して交差する方向に開口している請求項12に記載の蒸気加熱庫。
【請求項14】
前記配置空間に設けられて前記加熱対象物が載置される載置面を有するトレーをさらに備え、前記載置面は、前記庫上下方向に直交する庫横方向に分割され、それぞれに前記加熱対象物を載置可能な複数の載置領域を有し、
前記上下連通路は、複数の前記載置領域同士の間に形成されている請求項11に記載の蒸気加熱庫。
【請求項15】
前記蒸気噴出口に蒸気を供給するとともに、前記庫本体とともに移動可能に前記庫本体と一体に設けられたボイラをさらに備える請求項1から14のいずれか一項に記載の蒸気加熱庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気によって加熱対象物を加熱する蒸気加熱庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミスト状の水蒸気を含む湿り空気を加熱対象物である食材に接触させて、加熱調理を行う蒸気加熱庫が知られている。この種の蒸気加熱庫では、100度未満の低温の蒸気によって食材を加熱することで、例えば野菜が本来持つ栄養素や味や食感等を維持しながら、加熱調理を行うことが可能となる。
【0003】
このような蒸気加熱庫は例えば特許文献1に記載されている。特許文献1の加熱庫では、庫内空間に食材を載置した台車を配置し、庫内空間に設けられた蒸気噴出口から水蒸気を噴出して、庫内空間を蒸気で満たすことで食材が加熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-163622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に記載された従来の蒸気加熱庫では、台車の側方に蒸気噴出口が形成された蒸気管を配置しているため、庫内空間が幅方向に大きくなってしまい庫内空間に満たされた蒸気の温度分布が不均一になって、食材の加熱度合いにばらつきが発生し、加熱効率が低下してしまう可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、効率よく加熱対象物を加熱することのできる蒸気加熱庫を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る蒸気加熱庫は、加熱対象物をミスト状の蒸気によって加熱する蒸気加熱庫であって、庫内空間を内側に形成する庫本体と、前記庫内空間において前記加熱対象物を配置する配置空間、および該配置空間に蒸気を導入する蒸気流通経路を形成するラックと、前記庫本体における庫上下方向から見て前記ラックに重なる位置において該ラックの上方または下方に配置されて前記庫内空間に開口し、前記蒸気流通経路に導入される蒸気を噴出する蒸気噴出口と、前記蒸気噴出口から噴出された蒸気を接触させることで蒸気をミスト化する蒸気接触面と、を備える。
【0008】
上記の蒸気加熱庫は、前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の下方に設けられた下側蒸気接触面を備えてもよい。
【0009】
上記の蒸気加熱庫では、前記蒸気噴出口は下方に開口していてもよい。
【0010】
上記の蒸気加熱庫では、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の下方に配置され、かつ上方に開口する箱状をなすとともに、前記下側蒸気接触面が内側に形成された下側箱体が設けられていてもよい。
【0011】
上記の蒸気加熱庫では、前記下側箱体における箱内面のうちの底面が、前記庫上下方向に直交する庫横方向の一方に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、前記下側箱体には、前記傾斜面の下端の位置で開口して、前記庫本体の外部に連通して凝縮水を排出する排出口が形成されていてもよい。
【0012】
上記の蒸気加熱庫は、前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に設けられた上側蒸気接触面をさらに備え、前記下側蒸気接触面および前記上側蒸気接触面のセットは、前記ラックに対して上方または下方に配置されて、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口を挟み込むように設けられていてもよい。
【0013】
上記の蒸気加熱庫では、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に配置され、かつ下方に開口する箱状をなすとともに、前記上側蒸気接触面が内側に形成された上側箱体が設けられていてもよい。
【0014】
上記の蒸気加熱庫は、前記蒸気接触面として、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に設けられた上側蒸気接触面をさらに備え、前記下側蒸気接触面および前記上側蒸気接触面のセットは、前記ラックに対して上方または下方に配置されて、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口を挟み込むように設けられ、前記庫内空間において前記蒸気噴出口の上方に配置され、かつ下方に開口する箱状をなすとともに、前記上側蒸気接触面が内側に形成された上側箱体が設けられ、前記庫上下方向から見て、前記上側箱体の全体が前記下側箱体に重なる位置に、前記上側箱体が配置されていてもよい。
【0015】
上記の蒸気加熱庫では、前記上側箱体は、該上側箱体自身に付着した水滴を下方に案内する案内面を有し、前記下側箱体は、前記案内面から滴下される水滴を受け止める受け面を有してもよい。
【0016】
上記の蒸気加熱庫では、前記上側案内面は、前記上側箱体の箱内面における側面であり、前記受け面は、前記下側箱体の箱内面における側面であってもよい。
【0017】
上記の蒸気加熱庫では、三個以上の複数の前記蒸気噴出口が、前記庫上下方向に直交する庫横方向に広がる面上に互いに間隔をあけて分布するように配置されていてもよい。
【0018】
上記の蒸気加熱庫では、前記庫内空間において前記ラックの上方または下方に配置され、前記庫内空間に蒸気を供給する蒸気供給部材が設けられ、前記蒸気供給部材は、前記庫横方向における互いに交差する複数の方向に延びる管状をなすとともに、複数の前記蒸気噴出口を形成していてもよい。
【0019】
上記の蒸気加熱庫では、前記ラックは、前記庫上下方向に直交する庫横方向に該庫本体の内面との間に前記蒸気噴出口からの蒸気が導入される隙間を空けて配置され、前記ラックの側面には、前記隙間と前記配置空間とを連通する連通開口が形成され、前記隙間および前記連通開口が前記蒸気流通経路を構成していてもよい。
【0020】
上記の蒸気加熱庫は、前記庫内空間における上部と下部とを連通し、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口に近接する側に向かって蒸気を流通させる上下連通路をさらに備えてもよい。
【0021】
上記の蒸気加熱庫は、前記庫内空間における上部と下部とを連通し、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口に近接する側に向かって蒸気を流通させる上下連通路をさらに備え、前記上下連通路は、前記隙間に配置されて前記庫上下方向に延びる管状部材の内側に形成されていてもよい。
【0022】
上記の蒸気加熱庫では、前記管状部材には、前記庫上下方向において前記蒸気噴出口に近い側に蒸気流出口が形成され、前記蒸気流出口は、前記蒸気噴出口の開口方向に対して交差する方向に開口していてもよい。
【0023】
本発明の他の態様に係る蒸気加熱庫は、加熱対象物をミスト状の蒸気によって加熱する蒸気加熱庫であって、庫内空間を内側に形成する庫本体と、前記庫内空間において前記加熱対象物を配置する配置空間、および該配置空間に蒸気を導入する蒸気流通経路を形成するラックと、前記庫内空間に開口し、前記蒸気流通経路に導入される蒸気を噴出する蒸気噴出口と、前記蒸気噴出口から噴出された蒸気を接触させることで蒸気をミスト化する蒸気接触面と、前記庫内空間において前記ラックの上方と下方とを連通し、前記庫上下方向に前記蒸気噴出口に近接する側に向かって蒸気を流通させる上下連通路と、を備えていてもよい。
【0024】
上記の蒸気加熱庫は、前記配置空間に設けられて前記加熱対象物が載置される載置面を有するトレーをさらに備え、前記載置面は、前記庫上下方向に直交する庫横方向に分割され、それぞれに前記加熱対象物を載置可能な複数の載置領域を有し、前記上下連通路は、複数の前記載置領域同士の間に形成されていてもよい。
【0025】
上記の蒸気加熱庫は、前記蒸気噴出口に蒸気を供給するとともに、前記庫本体とともに移動可能に前記庫本体と一体に設けられたボイラをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
上記の蒸気加熱庫によれば、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る蒸気加熱装置の全体斜視図であって、扉を閉めた状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る蒸気加熱装置の全体斜視図であって、扉を開けた状態を示す図である。
図3】上記の蒸気加熱装置の正面図である。
図4】上記の蒸気加熱装置を斜め下方から見た斜視図であって、便宜的に下側箱体を透過して示す図である。
図5】上記の蒸気加熱装置を斜め上方から見た斜視図であって、便宜的に上側箱体を透過して示す図である。
図6】上記の蒸気加熱装置における下側箱体および蒸気供給部材を拡大して示す斜視図である。
図7】上記の蒸気加熱装置における第一変形例のトレーを示す斜視図である。
図8】上記の蒸気加熱装置における第二変形例の側面図である。
図9】上記の蒸気加熱装置における第三変形例の正面図である。
図10】上記の蒸気加熱装置における第四変形例の上側箱体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の蒸気加熱庫100は、加熱対象物をミスト状の蒸気(水蒸気)によって加熱する装置である。加熱対象物は特に限定されるものではないが、例えば生野菜などの食材等である。
【0029】
(全体構成)
図1に示すように、蒸気加熱庫100は庫内空間Sを内側に形成する庫本体1を備えている。さらに図2に示すように、蒸気加熱庫100は庫内空間Sに配置されたラック2、蒸気供給部材3、上下連通路4、上側箱体5、および下側箱体6と、蒸気供給部材3に接続されたボイラ7とを備えている。
【0030】
(庫本体)
庫本体1は、奥行方向の手前側に正面開口1aが形成された箱状をなしているとともに、庫内空間Sへアクセスを可能とするように正面開口1aを開閉させる扉10が設けられている。扉10の種類は特に限定されないが、本実施形態では例えば開き戸が採用されている。扉10には正面開口1aを閉塞した際に、庫内空間Sを外部から視認するためのガラスや樹脂等の光透過性を有する材料からなる窓11が設けられている。また庫本体1の下部にはキャスター12が設けられていることで庫本体1全体が移動可能となっている。
【0031】
以下、庫本体1の上下方向を庫上下方向D1とする。また庫上下方向D1に直交する庫本体1の横方向(庫横方向)のうち、庫本体1の正面開口1aが開口する方向を庫奥行方向D2とし、庫奥行方向D2に直交する横幅方向を庫幅方向D3とする。
【0032】
また図3に示すように庫内空間Sには複数の温度センサ13が設けられている。温度センサ13は庫上下方向D1に間隔をあけて、庫内空間Sにおける上部、中央部、下部の位置に配置されている。
【0033】
(ラック)
ラック2は庫内空間Sに配置されている。本実施形態ではラック2は庫本体1に据え付けられている。具体的にはラック2は、直方体状をなす枠体20と、枠体20において庫上下方向D1に間隔をあけて設けられた複数の支持体21と、支持体21に載置されるトレー22とを有している。
【0034】
図2に戻って、枠体20はラック2の庫奥行方向D2および庫幅方向D3における四カ所の端部において一つずつ配置された四本の縦柱25と、庫奥行方向D2に延び、庫奥行方向D2に並ぶ縦柱25同士を、縦柱25における庫上下方向D1の両端部において接続する横柱26とを有している。
【0035】
また図3に示すように枠体20は、庫奥行方向D2および庫幅方向D3に庫本体1の内面(側面)と隙間Kを空けて配置されている。また枠体20の上端は、庫上下方向D1に庫本体1の内面(天面)とも隙間を空けて配置されていることで、ラックの上方にも空間が形成されている。
【0036】
複数の支持体21は、上部の横柱26と下部の横柱26との間に配置され、庫奥行方向D2に並ぶ縦柱25同士の間にわたって庫上下方向D1に互いに間隔をあけて配置されている。各々の支持体21は縦柱25から庫幅方向D3の内側に向かって突出する支持板21aを有している。支持板21aは、庫幅方向D3に並ぶ各々の縦柱25において庫上下方向D1に同じ高さ位置に対をなして配置されていることで、詳しく後述するように、これら対をなす支持板21aの上にトレー22を載置できるようになっている。よって庫上下方向D1に隣接する支持板21a同士の間隔は、トレー22の厚さ寸法(庫上下方向D1の寸法)よりも大きくなっている。ここで庫上下方向D1に隣接する支持体21同士の間には隙間が形成され、この隙間がラック2の内外を庫幅方向D3に連通する連通開口K1となっている。
【0037】
トレー22は、例えば底面が網状になった箱状をなしている。トレー22の底面には加熱対象物を載置することが可能となっている、トレー22は支持体21における支持板21a上に載置される。よって、枠体20の内側において庫上下方向D1に並ぶ支持板21a同士の間の空間は、加熱対象物を配置する配置空間S1となっている。そして配置空間S1と、ラック2と庫本体1との間の隙間Kとが連通開口K1によって庫幅方向D3に連通されている。
ここで一つのみのトレー22を枠体20に設置することも可能であるし、複数のトレー22を庫上下方向D1に並べて配置することもできる。さらにはトレー22の下方において支持板21a上に凝縮水を受ける水受け専用のトレー220を設置することもできる。
【0038】
そして、詳しくは後述する蒸気噴出口3aから噴出された蒸気STは、庫本体1とラック2との隙間Kおよび連通開口K1を通じて配置空間S1へ導かれる。したがって隙間Kと連通開口K1とが蒸気流通経路を構成していることになる。
【0039】
(蒸気供給部材)
蒸気供給部材3は、庫内空間Sにおいてラック2の下方に配置されている。蒸気供給部材3は、詳しく後述するボイラ7に接続されている。図4に示すように蒸気供給部材3は、庫奥行方向D2および庫幅方向D3に延びる管状をなしている。より具体的に本実施形態の蒸気供給部材3は、庫奥行方向D2に延びる管と庫幅方向D3に延びる管とが直交するクロス管となっている。
【0040】
蒸気供給部材3には下方に開口する複数の蒸気噴出口3aが形成されている。蒸気噴出口3aは庫奥行方向D2に延びる管において庫奥行方向D2に互いに間隔をあけて複数配置され、庫幅方向D3に延びる管において庫幅方向D3に互いに間隔をあけて複数配置されている。よって本実施形態では三個以上の蒸気噴出口3aが、庫奥行方向D2および庫幅方向D3に広がる面上に互いに間隔をあけて分布している。これら複数の蒸気噴出口3aは、庫上下方向D1に上方から見てラック2に重なる位置に設けられている。
【0041】
(下側箱体)
図5に示すように下側箱体6は、庫内空間Sにおいて蒸気噴出口3a(図4参照)の下方に配置され、かつ上方に開口する箱状をなしている。すなわち下側箱体6は、庫上下方向D1に蒸気供給部材3と庫本体1との間に挟まれるように配置されている。庫上下方向D1の下方から見てすべての蒸気噴出口3aは下側箱体6に重なる位置に配置されている。またすべての蒸気噴出口3aは下側箱体6の内側に位置している。
【0042】
図6に示すように下側箱体6は箱内面として、二辺が庫奥行方向D2に延び、残りの二辺が庫幅方向D3に延びる四角形状の底面6a、および底面6aから上方に立ち上がる四つの側面6bが設けられている。底面6aは、庫奥行方向D2の中央の領域において当該中央の領域に向かって下方に傾斜する傾斜面6xを一対有している。これら一対の傾斜面6xの下端同士は下側箱体6における庫奥行方向D2のちょうど真ん中の位置で接続されていることで、下側箱体6のうちで庫奥行方向D2の真ん中の部分が最も下方に位置する。そして下側箱体6には、この傾斜面6xの下端に開口するとともに、庫本体1の外部に連通して凝縮水を排出する排出口6yが形成されている。排出口6yにはドレンホースDRが接続されている(図3参照)。なお傾斜面6xは庫幅方向D3に向かって傾斜していてもよく、傾斜方向は特に限定されない。
【0043】
また下側箱体6には、傾斜面6xの一部を上方から覆うように底面6a上に、蒸気噴出口3aに対向して、蒸気噴出口3aから噴出された蒸気STを直接的に接触させることで蒸気STをミスト化する(微小水滴を含む蒸気とする)下側蒸気接触面6zが設けられている。下側蒸気接触面6zは、蒸気供給部材3に沿って、庫奥行方向D2と庫幅方向D3とに延びるクロス形状をなしている。ここで下側蒸気接触面6zは接触面形成部材60によって形成されている。接触面形成部材60は庫奥行方向D2と庫幅方向D3との両端において、蒸気供給部材3を貫通させて支持している。
【0044】
さらに下側箱体6の四つの側面6bの各々は、底面6aから上方に向かって庫奥行方向D2または庫幅方向D3の外側に漸次傾斜している。よって下側箱体6は外形寸法が下方に向かって漸次小さくなるような形状をなしている。これら側面6bは、後述する上側箱体5から滴下する凝縮水の水滴を受け止める受け面として機能する。
【0045】
(上側箱体)
図4に戻って上側箱体5は、庫内空間Sにおいて蒸気噴出口3aの上方に配置され、かつ下方に開口する箱状をなしている。上側箱体5は、庫上下方向D1に蒸気供給部材3とラック2との間に挟まれるように配置されている。庫上下方向D1から見てすべての蒸気噴出口3aは上側箱体5に重なる位置に配置されている。またすべての蒸気噴出口3aは上側箱体5の内側に位置している。
【0046】
上側箱体5の箱内面として、二辺が庫奥行方向D2に延び、残りの二辺が庫幅方向D3に延びる天井面5a、および天井面5aから下方に立ち上がる四つの側面5bが設けられている。天井面5aは、蒸気噴出口3aから噴出された後に下側蒸気接触面6zに接触して反射された蒸気STを再接触させる上側蒸気接触面となっている。よって本実施形態では、下側蒸気接触面6zおよび上側蒸気接触面(天井面5a)のセットは、ラック2に対して下方に配置されて、上下から蒸気噴出口3aを挟み込むように設けられている。
【0047】
天井面5aは、庫奥行方向D2の内側に向かって上方に傾斜する傾斜面5xを一対有している。これら一対の傾斜面5xの上端同士は上側箱体5における庫奥行方向D2のちょうど真ん中の位置で接続されていることで、上側箱体5のうちで庫奥行方向D2の真ん中の部分が最も上方に位置する。
【0048】
さらに四つの側面5bの各々には蒸気STの凝縮水が付着可能であるとともに、凝縮水の水滴を下方に案内する案内面として機能する。案内面によって下方に案内された水滴は、下側箱体6の受け面となる側面6bに受け渡される。
【0049】
また上側箱体5は、庫上下方向D1から見て全体が下側箱体6に重なる位置に設けられている。換言すると、下側箱体6の側面6bの上端よりも上側箱体5の側面5bの下端が、庫奥行方向D2および庫幅方向D3の内側に位置している。
【0050】
(上下連通路)
図3に戻って上下連通路4は、庫内空間Sにおける上部と下部とを連通し、庫内空間Sにおける上側から蒸気噴出口3aに近接する側となる下側に向かって蒸気STを流通させる。本実施形態において上下連通路4は、ラック2と庫本体1との間の上記隙間Kに配置された管状部材40の内側に形成されている。管状部材40はラック2に対して庫幅方向D3の両外側において、庫奥行方向D2の手前側および奥側に寄った位置で一つずつ設けられている。
【0051】
各々の管状部材40は、庫上下方向D1に延びている。各々の管状部材40には蒸気噴出口3aに近接する側となる下側の部分に蒸気流出口40aが形成され、蒸気噴出口3aから遠い側となる庫内空間Sの上側の部分に蒸気流入口40bが形成されている。蒸気流出口40aは蒸気噴出口3aの開口方向となる庫上下方向D1に対して交差する庫幅方向D3の内側に向けて開口している。よって蒸気流出口40aはラック側に開口している。一方で蒸気流入口40bは上方に開口している。蒸気流出口40aの少なくとも一部は、ラック2の下端よりも上方に位置しているとよい。また蒸気流入口40bはラックの上端と同じ高さ位置、またはラック2の上端よりも上方に位置しているとよい。
【0052】
(ボイラ)
ボイラ7は、蒸気供給部材3に蒸気STを供給するとともに、庫本体1とともに移動可能となるように、庫本体1における一方の外側面(庫幅方向D3の外側を向く面)に一体に設けられた可搬式のボイラである。ボイラ7は不図示の電源からの電力によって動作するとともに、不図示の給水口から水が給水されて蒸気STを発生させた後、蒸気STを蒸気供給部材3に供給する。
【0053】
(作用効果)
蒸気噴出口3aから庫内空間Sに噴出された蒸気STは、下側箱体6の下側蒸気接触面6zに接触、反射されて上方に向かう。この際、蒸気STの一部が凝縮して細かい水滴となって蒸気STがミスト化される。下側蒸気接触面6zで反射された蒸気STは上側箱体5の天井面5a(上側蒸気接触面)に接触してミスト化が促進された後、下方に向かう。その後、上側箱体5と下側箱体6との間から蒸気STが庫本体1とラック2との隙間Kに流入し、隙間K内を上方に流通しつつ、ラックの連通開口K1を通じてラック2内の配置空間S1に流入し、加熱対象物に接触することで、加熱対象物を加熱する。
【0054】
加熱対象物を加熱しながら蒸気STは上方に向かう。そして庫内空間Sにおける上部の蒸気STの一部は蒸気流入口40bから上下連通路4に流入して下方に向かい、庫内空間Sの下部において蒸気流出口40aからラック2に向けて流出し、蒸気噴出口3aから噴出される高温の蒸気STと混合されて加熱対象物に供給される。
【0055】
以上説明した本実施形態の蒸気加熱庫100によれば、庫内空間Sにおいてラック2の下方に、庫上下方向D1から見てラック2と重なる位置に蒸気噴出口3aが配置されている。したがってラック2の側方(庫奥行方向D2、庫幅方向D3の側方)に蒸気噴出口3aを配置する場合に比べて、庫内空間Sの庫奥行方向D2、庫幅方向D3の寸法を小さく抑えることができる。この結果、庫内空間Sにおいてラック2の側方の無駄なスペースを削減でき、庫内空間Sにおいて蒸気STの温度分布を低減することができ、加熱対象物の加熱度合いのばらつきを抑えることができる。よって加熱対象物の配置位置に依存することなく、均一に、効率よく加熱対象物の加熱が可能となる。さらには、庫内空間Sの庫奥行方向D2、庫幅方向D3の寸法を小さく抑えることができるため、蒸気加熱庫100全体の省スペース化にもつながる。
【0056】
また庫内空間Sの庫奥行方向D2、庫幅方向D3の寸法を小さく抑えることができるため、短時間で庫内空間Sを均熱化でき、加熱対象物を配置する前の余熱作業を削減することもできる。
【0057】
さらには、下側蒸気接触面6zを蒸気噴出口3aの下方に設けたことで、蒸気STが下側蒸気接触面6zに接触した際に生じる凝縮水を下側蒸気接触面6zによって受け止めることができる。さらには、蒸気噴出口3aからは蒸気STが下方に噴出されるため、蒸気STが下側蒸気接触面6zに直噴されることになり、ミスト化を促進することができる。また蒸気噴出口3aの下方に下側蒸気接触面6zが配置されているので、庫内空間Sの下部に下側蒸気接触面6zが配置されていることになる。したがって下側蒸気接触面6zで反射された蒸気STは上方に向かって庫内空間Sの全体に広がるように流通する。よって庫内空間Sにおいて蒸気STを充満させることで、庫内空間Sにおける温度のばらつきを抑えることができる。
【0058】
また本実施形態では下側蒸気接触面6zは、下側箱体6に形成されている。そして下側箱体6は蒸気噴出口3aの下方に配置され、かつ蒸気噴出口3aが下側箱体6の内側に配置されていることで、下側蒸気接触面6zに蒸気STが接触することで生成される凝縮水は底面6a上に流れ込み、下側箱体6内に保持される。このため特に加熱対象物中の成分が凝縮水に含まれるような場合に、庫本体1に凝縮水を一時的に貯留することによって庫本体1の腐食を回避できる。さらには、下側箱体6の底面6aが傾斜面6xを有しており、傾斜面6xによって排出口6yに向かって凝縮水を流通させ、庫内空間Sから外部へ凝縮水を排出することができるため、蒸気加熱庫100の清掃が容易であるとともに衛生的である。
【0059】
また蒸気噴出口3aの上方に、上側蒸気接触面となる上側箱体5の天井面5aを設けたことで、下側蒸気接触面6zに接触してミスト化された蒸気STを、上側箱体5の天井面5aに再接触させることができる。すなわち、蒸気噴出口3aから噴出された蒸気STは2つの蒸気接触面に接触されてミスト化が促進されるので、十分にミスト化された蒸気STを加熱対象物に接触させることができ、加熱の効率化を図ることができる。また上側接触面となる天井面5aがラック2と蒸気噴出口3aを仕切っているため、十分にミスト化されていない蒸気STが直接的にラック2に流れ込んでしまうことを回避することができる。
【0060】
また本実施形態では上側蒸気接触面となる天井面5aは、上側箱体5に形成されている。そして上側箱体5は蒸気噴出口3aの上方に配置され、かつ蒸気噴出口3aが上側箱体5の内側に配置されていることで、蒸気STを上側箱体5の箱内に導き、確実に天井面5aに蒸気STを接触させることができ、蒸気STのミスト化をさらに促進できる。
【0061】
また上側箱体5は下側箱体6の内側に配置されているため、上側箱体5の天井面5aに蒸気STが接触して生成される凝縮水を下側箱体6で受けることができる。よって凝縮水が庫本体1の内面に接触した状態で滞留してしまうことがなくなり、庫本体1の腐食を抑えることができるとともに、庫内空間Sの清掃の容易化が可能となる。
【0062】
また上側箱体5の側面5bが案内面となり、側面5bに付着した凝縮水の水滴を下方に案内し、受け面となる下側箱体6の側面6bに受け渡し、上側箱体5で生成された凝縮水を確実に下側箱体6に保持することが可能となる。
【0063】
また、蒸気噴出口3aが三個以上設けられ、庫奥行方向D2および庫幅方向D3に広がる面上に分布していることで、庫内空間Sの広範囲において蒸気STを噴出でき、庫内空間Sにおける温度のばらつきを抑え、加熱対象物を効率よく加熱することができる。本実施形態ではクロス管となった蒸気供給部材3に蒸気噴出口3aを形成したため、容易に庫奥行方向D2および庫幅方向D3に広がる面上に蒸気噴出口3aを分布させて配置することができる。
【0064】
また庫本体1とラック2との隙間Kと、連通開口K1とが蒸気流通経路を構成しているため、蒸気噴出口3aから噴出された蒸気STをラック2の側方から上方に向かって流通させつつ、庫上下方向D1に並ぶトレー22上の加熱対象物のすべてに対して蒸気STを接触させることができる。これにより効率的な加熱が可能となる。
【0065】
また上下連通路4を設けたことで、庫内空間Sにおける上部に滞留した低温、低圧の蒸気STの少なくとも一部を自然対流によって庫内空間Sにおける下部に戻し、庫内空間Sを循環させることができる。これにより庫内空間Sにおける温度のばらつきを抑えることができる。特に本実施形態では上下連通路4が管状部材40に形成されているため、管状部材40へ流入した蒸気STは下方へ向かうにつれて、新たに蒸気噴出口3aから供給された高温の蒸気STによって加熱され、蒸気流出口40aからラック2に向けて供給される。この結果、上下連通路4によって下部に戻した蒸気STを再利用して加熱対象物を加熱することができる。
【0066】
また、管状部材40における蒸気流出口40aは蒸気噴出口3aの開口方向である下方に対して交差する庫幅方向D3に開口している。このため、蒸気噴出口3aから噴出した蒸気STが蒸気流出口40aを通じて上下連通路4を逆流してしまうことを回避できる。
【0067】
またボイラ7は庫本体1とともに移動可能となっているため、蒸気加熱庫100の設置位置の自由度が高まる。
【0068】
ここで本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
例えば庫内空間Sの上部(例えばラック2の上方)に不図示のファンや蒸気噴出口を設けることで、蒸気STを庫内空間で強制対流させてもよい。この場合、複数の温度センサ13の計測値が同等になるように、ファンや蒸気噴出の制御を行ってもよい。
【0070】
また蒸気噴出口3a(蒸気供給部材3)は、ラック2の上方に設けてもよい。
【0071】
また蒸気噴出口3aからはオゾン水の蒸気を発生させることが可能となっていてもよい。例えば不図示のバルブによって、蒸気供給部材3へ水蒸気か、またはオゾン水の蒸気のいずれかを供給できるようにするとよい。オゾン水の蒸気を蒸気噴出口3aから噴出させることで、庫内空間Sの洗浄だけでなく、加熱対象物(野菜等)の殺菌も可能となる。
【0072】
例えば図7に示すように、ラック2に設置されるトレー22Aは加熱対象物が載置される載置面22xを有し、載置面22xは、庫奥行方向D2および/または庫幅方向D3に分割され、それぞれに加熱対象物を載置可能な複数の載置領域ARを有していてもよい。そしてこの場合、上下連通路4はこれら複数の載置領域AR同士の隙間に形成されていてもよい。例えば上述のような管状部材40を載置領域AR同士の隙間に設置することで、上下連通路4を載置領域AR同士の隙間に設けることができる。なお、上下連通路4は必ずしも管状部材40によって形成されなくともよく、上下連通路4を庫本体1に直接形成してもよいし、載置領域AR同士の隙間をそのまま上下連通路4としてもよい。
【0073】
また図8に示すように、施設に設置された据え付け型のボイラ7A、および施設の壁面に直接的に形成された庫内空間SAを採用してもよい。この場合、蒸気供給部材3(蒸気噴出口3a)が施設側の壁面に設置されてボイラ7Aに接続され、ラック2、上下連通路4、上側箱体5、および下側箱体6は一体として庫内空間SAへ押し込んだり、庫内空間SAから引き出したりすることができるようになっている。また例えば、ラック2の下部にキャスター80を設けることによって、容易にラック2を押し込んだり、引き出したりすることが可能となっている。
【0074】
また図9に示すように、隙間Kに配置されるように、フィン状部材90を設けてもよい。フィン状部材90は、例えば各々の連通開口K1の上方においてラック2から隙間K内に突出するように、かつ、ラック2から離れるにしたがって下方に傾斜するように設けられる。これにより隙間Kを上方に流通する蒸気STを、連通開口K1を通じて加熱対象物の配置空間S1に流入させ易くすることができる。なお清掃の容易化のため、フィン状部材90はラック2から取り外し可能になっているとさらによい。
【0075】
また図10に示すように、上側箱体5(上側蒸気接触面)は、蒸気供給部材3の上方において互いに隙間を空けた状態で複数設けられていてもよい。この場合、上側箱体5同士の隙間から蒸気STがラック2に向かって上方に流通することが可能となり、蒸気STを加熱対象物に導くことが可能となる。この際、不図示のトレーには、トレー22Aのように複数の載置領域ARが設けられ、載置領域AR同士の隙間の少なくとも一部が上側箱体5同士の隙間に対して庫上下方向D1から見て重なる位置に配置されるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の蒸気加熱装置によれば、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…庫本体
2…ラック
3…蒸気供給部材
3a…蒸気噴出口
4…上下連通路
5…上側箱体
6…下側箱体
6x…傾斜面
6y…排出口
6z…下側蒸気接触面
7、7A…ボイラ
21…支持体
21a…支持板
22、22A… トレー
22x…載置面
40…管状部材
40a…蒸気流出口
100…蒸気加熱庫
D1…庫上下方向
D2…庫奥行方向
D3…庫幅方向
K…隙間
K1…連通開口
S、SA…庫内空間
S1…配置空間
ST…蒸気
【要約】
【課題】効率よく加熱対象物を加熱することが可能な蒸気加熱庫を提供する。
【解決手段】
庫内空間Sを内側に形成する庫本体1と、庫内空間Sにおいて加熱対象物を配置する配置空間S1、および配置空間S1に蒸気STを導入する蒸気流通経路を形成するラック2と、庫本体1における庫上下方向D1から見てラック2に重なる位置においてラック2の上方または下方に配置されて庫内空間Sに開口し、上記蒸気流通経路に導入される蒸気STを噴出する蒸気噴出口3aと、蒸気噴出口3aから噴出された蒸気STを接触させることで蒸気STをミスト化する蒸気接触面を形成する上側箱体5および下側箱体6と、を備えている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10