(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】蓋留め具
(51)【国際特許分類】
B65D 55/02 20060101AFI20230110BHJP
E05B 65/52 20060101ALI20230110BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B65D55/02
E05B65/52 R
F16B21/04 K
F16B21/04 H
(21)【出願番号】P 2022103730
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207090053(CN,U)
【文献】米国特許第9540156(US,B1)
【文献】特開2013-14917(JP,A)
【文献】特開2006-15528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0156410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 55/02
E05B 65/52
F16B 21/04
B65D 55/14
B65D 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部を有する容器本体と、第2の開口部を有する蓋と、を備えた容器に用いられるプラスチック製の蓋留め具であって、
円筒状又は円柱状の軸部と、平面視円形状をなし、前記軸部の先端に設けられるとともに前記軸部の基端側に向かって漸次外径が大きくなるように形成された拡径部と、を有し、前記第1の開口部及び前記第2の開口部に連通される係止軸と、この係止軸が垂直に立設された座板と、を備えた留め具本体と、
前記係止軸が挿通される平面視円形状の軸挿通孔を有し、前記留め具本体との間に配置された前記容器本体の一部と前記蓋を両側から前記留め具本体とともに挟むようにして前記蓋を前記容器本体に固定する蓋保持板と、を備え、
前記蓋保持板は、前記係止軸が前記軸挿通孔に挿通された際に前記拡径部が前記軸挿通孔の周縁部に係止することで前記留め具本体によって回転自在に保持され、
前記第1の開口部及び前記第2の開口部に連通された前記係止軸が前記軸挿通孔に挿通されるとともに、前記蓋保持板と前記留め具本体の間に前記容器本体の一部及び前記蓋が配置された状態で、前記蓋保持板を前記係止軸の周りに回転させることにより、前記第2の開口部の縁部に前記蓋保持板が係合した状態とこの係合状態が解消された状態が切り換わることを特徴とする蓋留め具。
【請求項2】
前記係止軸は、
前記座板に直交し、かつ、前記軸部の中心軸を通る仮想平面によって前記軸部及び前記拡径部が分割された一対の分割体からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋留め具。
【請求項3】
前記留め具本体の前記係止軸は、外周面に軸方向と平行に凸条が設けられ、
前記蓋保持板の前記軸挿通孔は、内周面に前記凸条と係合可能な凹部が形成されており、
前記凸条及び前記凹部は、前記蓋の前記第2の開口部の前記縁部に前記蓋保持板が係合した場合に符合する箇所に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓋留め具。
【請求項4】
前記留め具本体は、
前記座板の前記係止軸が立設されている側の面に対し、前記第1の開口部及び前記第2の開口部に前記係止軸が連通された状態で、突設部が前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対して連通可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の蓋留め具。
【請求項5】
前記突設部は、前記仮想平面を中心として対称に一対設置され、
前記分割体は、一対の前記突設部の上面にそれぞれ設置されており、
側面視山形をなす係合突起が前記蓋保持板の前記留め具本体に対向する面に対し、
前記蓋の前記第2の開口部の前記縁部に前記蓋保持板が係合した場合に、一対の前記突設部の間にその頂部が配置されるように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の蓋留め具。
【請求項6】
前記係合突起の前記頂部が一対の前記突設部の間に配置された場合に、前記頂部を挟んでその両側に対向配置された状態となるように、係止部が一対の前記突設部の前記上面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の蓋留め具。
【請求項7】
前記留め具本体は、前記座板の前記係止軸が立設されている側の面に、前記係止軸とともに前記容器本体の前記第1の開口部に挿通される係合爪が立設されており、
前記係合爪の先端には、前記第1の開口部に前記係止軸が挿通された状態で前記第1の開口部の縁部に対して係合可能に係合部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓋留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の容器において本体に蓋を固定する際に用いられる蓋留め具に係り、特に、容器に対する着脱作業が容易な蓋留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の搬送や輸送に用いられるプラスチック段ボール製の容器では、容器の本体に設けられた開口部を覆うように蓋が取り付けられている。この蓋はいろいろな部材を用いて本体に固定されるが、少なくとも、その構造は容器に対する物品の出し入れ作業の邪魔にならないようなものでなければならない。
従来、容器の本体に蓋を固定する部材としては、例えば、着脱自在に連結される2つの部品からなり、それぞれの部品が両面テープや金属リベットを用いて容器の本体と蓋にそれぞれ固定される構造のプラスチック製のバックルが知られている。しかしながら、このような部材を用いる場合、金属リベットを打つための専用の設備が必要となる。また、容器を廃棄する際には、金属リベットや両面テープを容器から分離しなければならないが、金属リベットを容器から取り外すにはドリルなどの工具が必要であり、容器に貼り付けられた両面テープを綺麗に剥がすことも難しい。すなわち、容器の本体に蓋を固定する際にバックルを用いると、容器に対する着脱作業を短時間で効率良く行うことができないという課題があった。
【0003】
容器に用いられるものではないが、2つの部材を固定する技術については、例えば、特許文献1に「ひねり綴り具」という名称で、厚紙によって形成されたファイリング用具のように、比較的厚みのある紙葉を結合する際に用いられる文房具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、断面形状が長軸と短軸を有する綴り軸が座板の片面側に突設された雄部材と、綴り軸の挿入孔が設けられた複数の雌部材と、綴り軸に対する延長状と交差状の位相の変更が回転可能となるように綴り軸の先端に取り付けられる係止部材からなり、雄部材と雌部材の対面状態及び雌部材相互の対面状態で、結合突起が相手の結合孔に嵌り合うような配置となるように、雄部材の座板において綴り軸が突設された面と、雌部材の座板における片面側に結合突起及び結合孔が設けられたことを特徴としている。
このような構造によれば、雌部材を紙葉に対する雄部材の固定にそのまま利用することができる。また、綴り具を構成する部品が合成樹脂製であり、3種類の金型によって製造できるため、金型の製作にかかる経費が削減される。これにより、安価なひねり綴り具の提供が可能となる。
【0004】
特許文献2には「錠前及びランドセル」という名称で、錠本体に係止板を嵌合させ、操作部を回動させることによって施錠と開錠の状態が切り換わる構造の錠前と、それが用いられるランドセルに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された錠前は、錠本体の内部で操作部に接続されて操作部と一体に回転可能なロータと、操作部が開錠位置のときにロータに係止して回転を規制するとともに、施錠するときにロータの係止を解除するロータ係止部と、一方の極性がロータの径方向の外側に向くようにロータに設置されたロータ磁石と、ロータ磁石の一方の極性と同じとなる極性がロータの方向に向くように、錠本体の内部でロータの径方向の外側に設置された第1本体磁石と、この第1本体磁石の一方の極性と反対となる極性がロータの方向に向くように、錠本体の内部であって、かつ、ロータの径方向の外側で第1本体磁石と異なる位置に設置された第2本体磁石と、を備えており、ロータの係止が解除されたときに第2本体磁石がロータ磁石を吸着してロータを回転させることを特徴とする。
特許文献2に開示された錠前においては、ロータの回転にバネが用いられていないため、自動で施錠動作が行われるという機能を簡易な構成によって実現することができる。
【0005】
特許文献3には「捻り掛止具」という名称で、ランドセルやバッグなどの蓋を本体に止める際に用いられる掛止具に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、筒状の軸受部が基板から突出するように設けられた本体と、端部に摘み部を有する軸部が軸受部によって回動自在に軸支された摘手体と、軸受部の外面に嵌挿し係止できる固定板とから形成され、基板の上面に突設された軸受部の中間部分に係合部が設けられるとともに、固定板の中央に軸受部を挿入可能な孔部が設けられ、この孔部の周縁に係合部に係止できる係止部が形成され、軸受部を利用して本体と固定板によって生地を強固に挟持できる構造となっている。
【0006】
特許文献4には「係止具」という名称で、洗面化粧台のキャビネットに鏡を固定するために用いられる部材に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示された発明は、一対の差込片の先端側に外向きの爪部材及び内向きの爪部材が設けられて、取付対象部材の開口部に貫通される差込具と、取付対象部材の背面側に面接合し、内向きの爪部材が摺動する略半周状の異径湾曲端面を備えるとともに、この異径湾曲端面の終端側で内向きの爪部材と係合する凹部を備えた固定具からなり、外向きの爪部材は取付対象部材の背面側でこれに係合し、内向きの爪部材は固定具の凹部であって、かつ、固定具の背面側に係合することを特徴とする。
特許文献4に開示された発明において、取付対象部材の正面側から差込具の差込片を開口に差し込むと、差込片の先端側に設けた外向きの爪部材が一旦開口よりも狭くなることで差込片が開口を通過し、開口の通過後は爪部材が元の状態へ復帰して広がることで爪部材が開口の背面側へ係止することにより、差込片がロックされた状態になる。したがって、特許文献4に開示された発明は、壁面等の背面側で固定可能であって、しかも、一度固定した後は取り外すことができない係止具として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-15528号公報
【文献】特許第6330114号公報
【文献】特開2001-132299号公報
【文献】特開2005-133739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたひねり綴り具において、雄部材に対して係止部材を回転させると、挿通孔に係止部材の係止軸が挿通された状態で雄部材と係止部材の間に配置されている2種類の紙葉を結合させることができる。しかしながら、雄部材の筒壁の先端内周に設けられている段部に対して係止軸の先端に設けられている拡径部が係合した後は、雄部材から係止部材を取り外すことが困難である。すなわち、特許文献1に開示されたひねり綴り具には、一旦、雄部材に係止部材を取付けてしまうと、両者を容易に分離することができないという課題があった。なお、拡径部を係止軸の先端から除去すれば、係止部材を雄部材から取り外すことができるが、その場合、取り外された係止部材の再利用が不可能となる。
【0009】
また、特許文献2に開示された錠前では、ランドセル等の鞄の蓋部材に一端が固定された掛止板の嵌合孔に、鞄本体に固定された錠本体の表面中央部に突設された本体突起部を嵌合させた後、本体突起部の軸孔に回転軸が挿通されている操作部を錠本体に対して回転させることにより、掛止板を介して鞄本体に蓋部材を固定することができる。しかしながら、操作部の回転軸が錠本体の軸孔から抜出できる構造となっていないことから、特許文献2に開示された錠前には、操作部が錠本体から分離できないという課題があった。
【0010】
さらに、特許文献3に開示された捻り掛止具では、バッグなどの2種類の生地に設けられた取付孔に本体の係合部を内挿した状態で摘手体を本体に対して回転させることにより、本体と摘手体の間に配置されている2種類の生地を互いに連結させることができる。しかしながら、本体の軸受部の透孔に軸部が挿入されると、軸部の先端に設けられた膨大頭部が大径部に係合することにより、本体から摘手体を分離できない状態になるが、透孔に挿入された軸部の先端を本体の基板の裏面側(バッグに取り付けられた際に生地に接触しない側)から操作して膨大頭部と大径部の係合状態を解消することは容易でない。すなわち、特許文献3に開示された捻り掛止具には、摘手体を本体から容易に分離できないという課題があった。
【0011】
特許文献4に開示された係止具は、キャビネットに鏡を固定する部材として用いることはできるものの、両者を一度固定してしまうと、係止具を分解して、キャビネットや鏡から取り外すことは困難である。したがって、特許文献4に開示された係止具は、各種の容器に於いて本体に蓋を開閉自在な状態に固定するための部材として用いることができないという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、容器に対する着脱作業を短時間で効率良く行うことが可能であり、しかも、容器を廃棄する際には分解して再利用することができる蓋留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明は、第1の開口部を有する容器本体と、第2の開口部を有する蓋と、を備えた容器に用いられるプラスチック製の蓋留め具であって、円筒状又は円柱状の軸部と、平面視円形状をなし、軸部の先端に設けられるとともに軸部の基端側に向かって漸次外径が大きくなるように形成された拡径部と、を有し、第1の開口部及び第2の開口部に連通される係止軸と、この係止軸が垂直に立設された座板と、を備えた留め具本体と、係止軸が挿通される平面視円形状の軸挿通孔を有し、留め具本体との間に配置された容器本体の一部と蓋を両側から留め具本体とともに挟むようにして蓋を容器本体に固定する蓋保持板と、を備え、蓋保持板は、係止軸が軸挿通孔に挿通された際に拡径部が軸挿通孔の周縁部に係止することで留め具本体によって回転自在に保持され、第1の開口部及び第2の開口部に連通された係止軸が軸挿通孔に挿通されるとともに、蓋保持板と留め具本体の間に容器本体の一部及び蓋が配置された状態で、蓋保持板を係止軸の周りに回転させることにより、第2の開口部の縁部に蓋保持板が係合した状態とこの係合状態が解消された状態が切り換わることを特徴とする。
なお、第1の発明における「平面視円形状の軸挿通孔」には、「平面視略円形状の軸挿通孔」も含まれるものとする。
【0014】
第1の発明では、容器本体と蓋が留め具本体と蓋保持板によって挟持されるような状態で容器に取り付けられる構造であるため、容器への取り付けや容器からの取り外しが容易である。また、第1の発明においては、容器への装着時に金属リベットや両面テープを用いないため、容器本体と蓋から留め具本体と蓋保持板を取り外すことにより、容器から完全に分離されるという作用を有する。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、係止軸は、座板に直交し、かつ、軸部の中心軸を通る仮想平面によって軸部及び拡径部が分割された一対の分割体からなることを特徴とする。
第2の発明において、蓋保持板の軸挿通孔に留め具本体の係止軸を挿通させようとすると、一対の分割体が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形することにより、係止軸が軸挿通孔内を通過可能な状態となる。そして、拡径部が軸挿通孔を通過すると、一対の分割体の弾性変形が回復することにより、拡径部が軸挿通孔の周縁部に係止する。その結果、蓋保持板は留め具本体によって回転自在に保持される。
【0016】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、留め具本体の係止軸は、外周面に軸方向と平行に凸条が設けられ、蓋保持板の軸挿通孔は、内周面に凸条と係合可能な凹部が形成されており、凸条及び凹部は、蓋の第2の開口部の縁部に蓋保持板が係合した場合に符合する箇所に設けられていることを特徴とする。
第3の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、係止軸の凸条が軸挿通孔の凹部に係合することにより、蓋保持板の留め具本体に対する回転動作が規制されるという作用を有する。これにより、蓋の第2の開口部の縁部に蓋保持板が係合した状態が維持される。
【0017】
第4の発明は、第2の発明において、留め具本体は、座板の係止軸が立設されている側の面に対し、第1の開口部及び第2の開口部に係止軸が連通された状態で、突設部が第1の開口部及び第2の開口部に対して連通可能に設けられていることを特徴とする。
第4の発明においては、第2の発明の作用に加え、突設部が第1の開口部及び第2の開口部に連通されている場合に、突設部が第1の開口部及び第2の開口部に係止することで、座板が当接する容器本体の壁面に沿った方向への留め具本体の移動が阻止されるという作用を有する。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、突設部は、仮想平面を中心として対称に一対設置され、分割体は、一対の突設部の上面に対して一つずつそれぞれ設置されており、側面視山形をなす係合突起が蓋保持板の留め具本体に対向する面に対し、蓋の第2の開口部の縁部に蓋保持板が係合した場合に、一対の突設部の間にその頂部が配置されるように設けられていることを特徴とする。
第5の発明においては、一対の分割体が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形する際に、一対の突設部が一対の分割体と同じ方向へ折れ曲がるように弾性変形するという作用を有する。そして、係合突起の頂部が一対の突設部の間に配置されることにより、一対の分割体及び一対の突設部の上記弾性変形が規制されるという作用を有する。したがって、第5の発明では、係合突起の頂部が一対の突設部の間に配置される場合、一対の分割体が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形することにより係止軸が軸挿通孔内を通過可能な状態となって、意図せずに蓋保持板が留め具本体から外れてしまうという事態が起こらない。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、係合突起の頂部が一対の突設部の間に配置された場合に、頂部を挟んでその両側に対向配置された状態となるように、係止部が一対の突設部の上面にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
第6の発明においては、一対の突設部の間に頂部が配置された状態が解消されないように、一対の係止部が係合突起の移動を規制するという作用を有する。そのため、第6の発明では、意図せずに蓋保持板が留め具本体に対して回転してしまうおそれがない。
【0020】
第7の発明は、第1の発明又は第2の発明において、留め具本体が、座板の係止軸が立設されている側の面に、係止軸とともに容器本体の第1の開口部に挿通される係合爪が立設されており、係合爪の先端には、第1の開口部に係止軸が挿通された状態で第1の開口部の縁部に対して係合可能に係合部が設けられていることを特徴とする。
第7の発明において、係止軸を容器本体の第1の開口部に挿通させようとすると、係合爪は折れ曲がるように弾性変形することにより、第1の開口部内を通過可能な状態となる。そして、係合部が第1の開口部を通過すると、係合爪の弾性変形が回復することにより、係合部が第1の開口部の縁部に係合する。このように、係合爪の係合部が第1の開口部に係合した場合、留め具本体は容器本体から取り外せない状態になる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、容器に対する着脱作業を短時間で効率良く行うことができる。また、容器から完全に分離することが可能であり、しかも、軸挿通孔の周縁部に対する係止軸の拡径部の係止状態を解消すれば、留め具本体と蓋保持板を容易に分解することができる。したがって、第1の発明によれば、容器を廃棄する際に、容器本体や蓋から取り外した後、分解して再利用することが可能である。
【0022】
第2の発明によれば、係止軸が一対の分割体からなり、弾性変形が容易な構造であることから、係止軸を軸挿通孔の周縁部に係止させるようにして蓋保持板を留め具本体に取り付ける作業及び係止軸の軸挿通孔に対する上記係止状態を解消して蓋保持板を留め具本体から取り外す作業を第1の発明の場合よりもさらに効率良く行うことができる。
【0023】
第3の発明では、係止軸の凸条と蓋保持板の軸挿通孔の凹部が係合すると、蓋の第2の開口部の縁部に蓋保持板が係合した状態が維持されるため、留め具本体に対して蓋保持板が不用意に回転した結果、蓋と蓋保持板の上記係合状態が解消されて蓋が容器本体から外れてしまうという事態が起こり難い。したがって、第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、容器本体に蓋を確実に固定することができるという効果を奏する。
【0024】
第4の発明によれば、留め具本体を容器本体に取り付ける際に、容器本体の壁面に沿って留め具本体が移動し、その位置がずれてしまう可能性が低いため、第2の発明の効果に加え、容器に対して短時間で効率良く取り付けることができるという効果を奏する。
【0025】
第5の発明によれば、蓋保持板が留め具本体から外れることで容器本体に対する蓋の固定状態が解除されて、意図せずに蓋が開いてしまうおそれがないため、第4の発明の効果に加え、容器を安全に使用できるという効果を奏する。
【0026】
第6の発明によれば、留め具本体に対する蓋保持板の意図しない回転によって容器本体に対する蓋の固定状態が解除されて、蓋が開いてしまうおそれがないため、容器を安全に使用できるという第5の発明の効果がより一層発揮される。
【0027】
第7の発明によれば、留め具本体の係止軸を容器本体の第1の開口部に挿通させると、係合爪の係合部が第1の開口具の縁部に係合することで、留め具本体が容器本体から意図せずに外れてしまうおそれがなくなるため、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、容器に対する取り付け作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)は本発明の実施の形態に係る蓋留め具の外観の一例を示した正面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)に示した留め具本体と蓋保持板の斜視図である。
【
図2】(a)乃至(c)はそれぞれ
図1(b)に示した留め具本体の正面図、側面図及び底面図である。
【
図3】(a)及び(b)はそれぞれ
図1(c)に示した蓋保持板の平面図及び底面図であり、(c)は同図(b)におけるB-B線矢視断面図であり、(d)は
図1(c)に示した蓋保持板を下方から見た状態を表した図である。
【
図4】(a)は
図2(a)におけるA-A線矢視断面図であり、(b)は
図3(a)に示した蓋保持板を同図(a)に重ねて表した図である。
【
図5】(a)及び(b)はそれぞれ
図1(a)及び
図4(b)において蓋保持板を留め具本体に対して座板と平行な平面内で90度回転させた状態を表した図である。
【
図6】(a)は
図2(a)において突設部の一部と係止部を拡大して示した図であり、(b)乃至(d)は
図3(d)におけるC-C線矢視断面図である。
【
図7】(a)及び(b)はそれぞれ搬送容器を構成する本体及び蓋の一部を示した斜視図であり、(c)は
図2(a)に示した留め具本体が同図(a)に示した搬送容器の本体に取り付けられた状態を表した図である。
【
図8】(a)及び(b)は
図1(a)に示した蓋留め具が
図7(a)及び
図7(b)に示した搬送容器の本体と蓋に取り付けられた状態を表した側面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の蓋留め具の構造とそれに基づく作用及び効果について
図1乃至
図8を用いて具体的に説明する。
なお、以下の説明では搬送容器の本体に蓋を固定する場合を例に挙げているが、本発明の蓋留め具は、搬送容器以外の容器の本体に蓋を固定する場合や、容器以外の所望の対象物に板材を固定する場合にも適用することができる。そして、そのような場合においても、以下に説明する本発明の蓋留め具の作用及び効果は同様に発揮される。
【実施例】
【0030】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る蓋留め具の外観の一例を示した正面図であり、
図1(b)及び
図1(c)はそれぞれ
図1(a)に示した留め具本体と蓋保持板の斜視図である。また、
図2(a)乃至
図2(c)はそれぞれ
図1(b)に示した留め具本体の正面図、側面図及び底面図である。
図1(a)乃至
図1(c)並びに
図2(a)乃至
図2(c)に示すように、本発明の蓋留め具1は、各種の容器において本体に蓋を固定する際に用いられるプラスチック製品であり、内面4a側同士を互いに向い合わせた状態で面対称に配置された一対の分割体5、5からなる係止軸4が垂直に座板2aに立設された構造の留め具本体2と、平面視長方形状をなし、係止軸4が挿通される平面視略円形状の軸挿通孔8を有する蓋保持板3を備えている。なお、一対の分割体5、5は、円筒状の軸部と、平面視円形状をなして軸部の先端に設けられるとともに軸部の基端側に向かって漸次外径が大きくなるように形成された拡径部が、座板2aに直交し、かつ、軸部の中心軸を通る仮想平面(図示せず)によってそれぞれ分割された半割軸部5a及び半割拡径部5bによってそれぞれ構成されている。そして、半割軸部5aの外周面には、凸条5cが軸方向と平行に設けられている。
【0031】
留め具本体2は、座板2aに垂直で互いに平行をなす一対の側面板6a、6aと、それらの上端側を接続し、座板2aに平行な上面板6bと、座板2aに垂直で上面板6bと一対の側面板6a、6aを接続する背面板6cによってそれぞれ構成された一対の突設部6、6を備えている。なお、座板2aの片面に設置された一対の突設部6、6は、それぞれ平面視略矩形状をなしており、背面板6cが接続されていない側の側面板6aの端面2b同士を互いに向い合わせるような状態で対向配置されている。そして、係止軸4を構成する一対の分割体5、5は、内面4aが側面板6aの端面2bと同一平面を形成するように一対の突設部6、6の上面板6b、6bの幅方向の中央部にそれぞれ垂直に立設されている。すなわち、一対の突設部6、6は、前述の仮想平面を中心として対称に配置されている。
【0032】
また、突設部6の上面板6bには、平面視長方形状をなす係止部11が分割体5の半割軸部5aを間に挟むようにしてその両側にそれぞれ対をなすとともに、上面板6bの背面板6cが接続されていない側の端部に沿うように設けられている(
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)を参照)。また、突設部6の背面板6cには、上端から下端に向かって所定の長さを有する一対のスリット6d、6d(
図1(b)及び
図2(b)を参照)が側面板6aと平行に、かつ、所定の間隔をあけて設けられている。そして、一対のスリット6d、6dに挟まれて平面視矩形状をなす平板部6eには、上端側から突設部6の外側下方に向かって折り返すように係合部6fが延設されている。すなわち、一対の突設部6、6には、平板部6eと係合部6fからなる係合爪7が背面板6cに対してそれぞれ設けられている。さらに、突設部6の上面板6bには、係合爪7が係合部6fと逆側へ折り曲げられた場合に平板部6eの上端を内部へ配置可能に、所定の長さを有する切り欠き6g(
図1(b)及び
図2(c)を参照)が背面板6c側から側面板6aと平行に、かつ、一対のスリット6d、6dに繋がるように設けられている。
【0033】
なお、留め具本体2の座板2aには、一対の切り欠き2c、2c及び矩形状の開口部2d(
図2(c)を参照)が設けられているが、これらは留め具本体2を射出成形によって成形する場合に、金型の構造が複雑にならないようにする目的で設けられるものであるため、留め具本体2を射出成形以外の方法で成形する場合には省略しても良い。また、係止軸4は、一対の分割体5、5によって構成される代わりに、円柱状の軸部に対し、その中心軸を通る平面によって、軸方向に所望の深さを有する分割溝が形成されるとともに、一対の半割拡径部5b、5bが上記軸部に対して当該分割溝を挟んで対称に設けられた構造であっても良い。このような構造であっても、係止軸4を軸挿通孔8に挿通させる際に、上記軸部は、係止軸4が一対の分割体5、5によって構成されている場合と同様に弾性変形する。さらに、係止軸4を、軸部と拡径部が分割された構造ではなく、拡径部の外径が軸挿通孔8の最小内径(後述の小径部9bの内径)よりも僅かに大きく、拡径部の弾性変形によって係止軸4を軸挿通孔8に対して挿通可能な構造とすることもできる。
【0034】
蓋保持板3の軸挿通孔8は、上面3a側に設けられて平面視円形状をなす大径部9aと、係止軸4の凸条5cと係合可能な凹部10が内周面に設けられている平面視略円形状の小径部9bからなる段付き構造をなしている。そして、小径部9bは大径部9aと中心軸が一致するように下面3b側に設けられている。
なお、大径部9aの内径は、一対の分割体5、5における半割拡径部5b、5bの外周面間の距離の最大値よりも大きい。また、小径部9bの内径は、一対の分割体5、5における半割軸部5a、5aの外周面間の距離の最大値よりも大きく、半割拡径部5b、5bの外周面間の距離の最大値よりも小さい。そのため、留め具本体2の係止軸4を軸挿通孔8に挿通しようとすると、小径部9bの内周縁が一対の分割体5、5の半割拡径部5b、5bにそれぞれ当接する。この状態から、留め具本体2に蓋保持板3をさらに近づけると、一対の分割体5、5が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形するため、一対の分割体5、5は軸挿通孔8を通過可能な状態となる。そして、半割拡径部5b、5bが軸挿通孔8を通過すると、一対の分割体5、5の弾性変形が回復し、半割拡径部5b、5bが軸挿通孔8の周縁部8a(
図1(c)を参照)に係止する。その結果、蓋保持板3は留め具本体2によって回転自在に保持される。
このように、蓋留め具1では、係止軸4が一対の分割体5、5からなり、弾性変形が容易な構造であることから、係止軸4を軸挿通孔8の周縁部8a(
図1(c)を参照)に係止させるようにして蓋保持板3を留め具本体2に取り付ける作業及び係止軸4の軸挿通孔8に対する上記係止状態を解消して蓋保持板3を留め具本体2から取り外す作業を効率良く行うことができる。
【0035】
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ
図1(c)に示した蓋保持板の平面図及び底面図であり、
図3(c)は
図3(b)におけるB-B線矢視断面図である。また、
図3(d)は
図1(c)に示した蓋保持板を下方から見た状態を表した図である。さらに、
図4(a)は
図2(a)におけるA-A線矢視断面図であり、
図4(b)は
図3(a)に示した蓋保持板を
図4(a)に重ねた状態を表している。さらに、
図5(a)及び
図5(b)はそれぞれ
図1(a)及び
図4(b)において蓋保持板を留め具本体に対して座板と平行な平面内で90度回転させた状態を表している。
【0036】
図3(a)乃至
図3(d)に示すように、蓋保持板3の下面3bには、軸挿通孔8を中心としてその両側に平面視矩形状をなす肉盗み3c、3cが対称に形成されており、軸挿通孔8の小径部9bの内周面には、4つの凹部10が円周方向へ均等に形成されている。より具体的に説明すると、4つの凹部10のうち、対向する一対の凹部10、10は、両者の最も凹んだ箇所同士を結んだ直線が蓋保持板3を平面視した場合の矩形の長辺と平行になるような箇所に形成されており、残りの一対の凹部10、10は、両者の最も凹んだ箇所同士を結んだ直線が蓋保持板3を平面視した場合の矩形の短辺と平行になるような箇所に形成されている。
なお、肉盗み3cは、留め具本体2を射出成形によって成形する場合に、肉厚を均一化することにより、収縮に伴う変形を小さくする目的で設けられるものであるため、留め具本体2を射出成形以外の方法で成形する場合には省略しても良い。
また、蓋保持板3の下面3bには、軸挿通孔8を中心としてその両側に側面視山形をなす係合突起3dが対称に形成されている。なお、一対の係合突起3d、3dは、両者を結んだ直線が蓋保持板3を平面視した場合の矩形の長辺と平行になるような箇所に形成されている。さらに、上面3aに垂直な一対の側面3e、3eと下面3bの間には、一対の傾斜面3f、3fが設けられている。
【0037】
図4(a)に示すように、係止軸4の一対の凸条5c、5cは、両者の最も凸となる箇所同士を結んだ直線が側面板6aと平行になるような箇所に形成されている。また、後述するように、蓋保持板3を平面視した場合の矩形は、一対の突設部6、6を平面視した場合の矩形よりも小さく、その形状は略等しいため、係止軸4を軸挿通孔8に挿通させた状態で係止軸4を中心として蓋保持板3を回転させると、
図4(b)に示すように、蓋保持板3と一対の突設部6、6を平面視した場合に両者がほぼ重なるとともに、一対の凸条5c、5cが2つの凹部10、10に対して同時に係合した状態にすることができる。
また、
図1(a)又は
図4(b)に示した状態において係止軸4を中心として蓋保持板3を90度回転させると、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、蓋保持板3と一対の突設部6、6を平面視した場合に蓋保持板3の両端が一対の突設部6、6の側面板6a、6aから外方にはみ出た状態になるとともに、一対の凸条5c、5cが前述とは別の2つの凹部10、10に対して同時に係合した状態になる。
このように、係止軸4の凸条5cが軸挿通孔8の凹部10に係合すると、蓋保持板3の留め具本体2に対する回転動作が規制される。
【0038】
図6(a)は
図2(a)において突設部の一部と係止部を拡大した状態を表しており、
図6(b)乃至
図6(d)は
図3(d)におけるC-C線矢視断面図である。なお、
図6(b)乃至
図6(d)では突設部の側面板の一部と係止部を破線で示している。
図6(a)に示すように、係止部11は平坦な上面11aと、この上面11aから延設されて突設部6の上面板6bに繋がる傾斜面11bを有している。そして、
図6(b)に示すように、側面視山形をなす係合突起3dは、平坦な頂部12aの両側に傾斜面12bがそれぞれ形成された構造となっている。
【0039】
蓋留め具1を上方から見たときに蓋保持板3と一対の突設部6、6がほぼ重なっている場合(
図4(b)を参照)、蓋保持板3の係合突起3dは突設部6の上面板6bの上方に位置している。この状態から、係止軸4を中心として蓋保持板3を所定の方向に回転させると、
図6(b)に示すように蓋保持板3の傾斜面3fが突設部6の上面板6bに設けられている係止部11の傾斜面11bに当接する。
図6(b)に示した状態から、蓋保持板3をさらに同じ方向へ回転させると、傾斜面3fが傾斜面11bに当接していた係止部11を蓋保持板3の一部が乗り越えた後、
図6(c)に示すように、その係止部11の傾斜面11bに係合突起3dの傾斜面12bが当接する。
図6(c)に示した状態から、蓋保持板3をさらに同じ方向へ回転させて、蓋保持板3の長手方向が留め具本体2の座板2aの長手方向に直交する状態になった場合(
図5(b)を参照)、傾斜面12bが傾斜面11bに当接していた係止部11を係合突起3dの頂部12aが乗り越えた後、
図6(d)に示すように、一対の突設部6、6の間に係合突起3dの頂部12aが配置された状態になる。このとき、係合突起3dの頂部12aの両側に位置する一対の係止部11、11は、蓋保持板3の回転に伴う係合突起3dの移動を規制する。
【0040】
蓋留め具1では、一対の分割体5、5が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形する際に、一対の突設部6、6も同じ方向へ折れ曲がるように弾性変形するが、係合突起3dの頂部12aが一対の突設部6、6の間に配置されると、一対の分割体5、5と一対の突設部6、6は上記弾性変形が規制される。もし、一対の分割体5、5が互いの先端同士を近づける方向へ折れ曲がるように弾性変形して係止軸4が軸挿通孔8を通過すると、蓋保持板3が留め具本体2から外れ、搬送容器の本体に対する蓋の固定状態が解除されてしまうおそれがある。しかし、上述のように、一対の分割体5、5の弾性変形が規制されている場合には、蓋保持板3が留め具本体2から意図せずに外れてしまうことはない。しかも、一対の係止部11、11によって係合突起3dの動きが規制されているため、蓋保持板3が勝手に回転してしまうことはない。このように、蓋留め具1では、蓋保持板3が留め具本体2から外れたり、蓋保持板3が回転したりすることで搬送容器の本体に対する蓋の固定状態が解除されて、意図せずに蓋が開いてしまうことがない。したがって、上記構造の蓋留め具1を用いることによれば、搬送容器を安全に使用することが可能である。
【0041】
図7(a)及び
図7(b)はそれぞれ搬送容器を構成する本体及び蓋の一部を示した斜視図であり、
図7(c)は
図2(a)に示した留め具本体が
図7(a)に示した搬送容器の本体に取り付けられた状態を表している。なお、
図7(c)では搬送容器の本体を破線で示している。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、蓋留め具1が取り付けられる搬送容器の本体13と蓋14には、内部に留め具本体2の一対の突設部6、6を同時に配置可能な第1の開口部13aと第2の開口部14aがそれぞれ設けられている。
そして、平面視長方形状をなす第1の開口部13aは、その長辺の長さL
1(
図7(a)を参照)が留め具本体2の一対の突設部6、6における背面板6c、6cの外面間の距離S
1(
図4(a)を参照)よりも長く、一対の係合爪7、7における係合部6f、6fの外面間の距離S
3(
図7(c)を参照)よりも短い。また、短辺の長さL
2(
図7(a)を参照)は留め具本体2の一対の突設部6、6における側面板6a、6aの外面間の距離S
2(
図4(a)を参照)よりも長い。
また、平面視長方形状をなす第2の開口部14aは、その長辺の長さL
3(
図7(b)を参照)が一対の係合爪7、7における係合部6f、6fの外面間の距離S
3(
図7(c)を参照)よりも長く、短辺の長さL
4(
図7(b)を参照)が留め具本体2の一対の突設部6、6における側面板6a、6aの外面間の距離S
2(
図4(a)を参照)よりも長い。
さらに、一対の突設部6、6の高さS
4(
図7(c)を参照)の値は、本体13の厚さt
1(
図7(a)を参照)と蓋14の厚さt
2(
図7(b)を参照)の合計値よりも大きい。
【0042】
第1の開口部13aの長辺の長さL
1が一対の係合爪7、7における係合部6f、6fの外面間の距離S
3よりも短いため、留め具本体2の係止軸4と一対の突設部6、6を第1の開口部13aに挿通しようとすると、第1の開口部13aの一対の短辺側の端縁が一対の係合爪7、7の係合部6f、6fにそれぞれ当接する。この状態から、本体13に留め具本体2をさらに近づけると、一対の係合爪7、7は先端が切り欠き6g内に配置される方向へ折れ曲がるように弾性変形することにより、第1の開口部13aの内部を通過可能な状態となる。そして、係合部6fが第1の開口部13aを通過すると、一対の係合爪7、7の弾性変形が回復することにより、
図7(c)に示すように係合部6fが第1の開口部13aの縁部13b(
図7(a)を参照)に係合する。その結果、留め具本体2は搬送容器の本体13から取り外せない状態になる。
このように、蓋留め具1は、係止軸4とともに本体13の第1の開口部13aに挿通される係合爪7を備えており、係合爪7の先端には、本体13の第1の開口部13aに係止軸4と一対の突設部6、6が挿通された状態で第1の開口部13aの縁部13b(
図7(a)を参照)に対して係合可能に係合部6fが設けられている。そのため、蓋留め具1では、留め具本体2が搬送容器の本体13から意図せずに外れてしまうおそれがない。したがって、蓋留め具1によれば、搬送容器に対する取り付け作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0043】
平面視長方形状をなす蓋保持板3は、長辺の長さW
1(
図3(a)を参照)が留め具本体2の一対の突設部6、6における背面板6c、6cの外面間の距離S
1(
図4(a)を参照)よりも短く、短辺の長さW
2(
図3(a)を参照)も留め具本体2の一対の突設部6、6における側面板6a、6aの外面間の距離S
2(
図4(a)を参照)よりも短い。そのため、蓋保持板3の長手方向を留め具本体2の座板2aの長手方向と平行な状態にすると、
図4(b)を用いて既に説明したように、蓋保持板3と一対の突設部6、6が平面視してほぼ重なった状態になる。さらに、蓋14の第2の開口部14aの長辺の長さL
3(
図7(b)を参照)が一対の係合爪7、7における係合部6f、6fの外面間の距離S
3(
図7(c)を参照)よりも長いことから、一対の突設部6、6を蓋14の第2の開口部14aに挿通させる際に、一対の係合爪7、7が第2の開口部14aと干渉して当該作業の支障になるおそれはない。すなわち、蓋保持板3の長手方向が留め具本体2の座板2aの長手方向と平行であれば、本体13の第1の開口部13a及び蓋14の第2の開口部14aに対して蓋保持板3と一対の突設部6、6を挿通させることができる。
このように、一対の突設部6、6が第1の開口部13a及び第2の開口部14aに連通されている場合、一対の突設部6、6が第1の開口部13a及び第2の開口部14aに係止することにより、本体13の壁面に平行な方向への留め具本体2の移動が阻止される。したがって、蓋留め具1では、留め具本体2を搬送容器の本体13に取り付ける際に、座板2aが当接する本体13の壁面に沿って留め具本体2が移動し、その位置がずれてしまう可能性が低い。そのため、蓋留め具1を搬送容器に取り付ける作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0044】
既に述べたように一対の突設部6、6は本体13に蓋14を重ねた高さよりも高いため、蓋14が蓋保持板3の回転の邪魔になることはない。そこで、上述の状態(蓋14の長手方向が留め具本体2の座板2aの長手方向と平行な状態)から、蓋保持板3を90度回転させる。
このとき、蓋保持板3の長辺の長さW
1(
図3(a)を参照)が蓋14の第2の開口部14aの短辺の長さL
4(
図7(b)を参照)よりも長いことから、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、蓋保持板3は平面視して長手方向の両端が一対の突設部6、6の側方に突出した状態となり、本体13と蓋14は留め具本体2と蓋保持板3によって両側から挟まれるようにして、互いに連結される。
すなわち、蓋留め具1は搬送容器の本体13の一部と蓋14を両側から留め具本体2と蓋保持板3によって両側から挟む構造となっている。そして、係止軸4が軸挿通孔8に挿通された際に半割拡径部5bが軸挿通孔8の周縁部8a(
図1(c)及び
図3(a)を参照)に係止することで留め具本体2によって回転自在に保持される構造の蓋保持板3を係止軸4の周りに回転させることによって、蓋14の第2の開口部14aの縁部14b(
図7(b)を参照)に蓋保持板3の長手方向の両端が係合した状態とこの係合状態が解消された状態が切り換わるという作用を有している。
【0045】
上記構造の蓋留め具1では、搬送容器に対する着脱が容易であるため、当該作業を短時間で効率良く行うことができる。そして、搬送容器への装着時に金属リベットや両面テープを用いないため、蓋留め具1は本体13と蓋14から留め具本体2と蓋保持板3を取り外すことにより、搬送容器から完全に分離される。加えて、軸挿通孔8の周縁部8a(
図1(c)及び
図3(a)を参照)に対する係止軸4の半割拡径部5bの係止状態を解消すれば、留め具本体2と蓋保持板3は容易に分解される。したがって、蓋留め具1は、搬送容器を廃棄する際に取り外して再利用することが可能である。
また、蓋留め具1では、
図4(b)及び
図5(b)を用いて既に説明したように、係止軸4の凸条5cが軸挿通孔8の凹部10に係合することにより、蓋保持板3の長手方向が留め具本体2の長手方向に対して平行又は直交する状態が維持される。したがって、蓋留め具1では、留め具本体2に対して蓋保持板3が不用意に回転し、蓋14に蓋保持板3が係合したり、蓋14に対する蓋保持板3の係合状態が解消されて蓋14が搬送容器の本体13から意図せずに外れてしまったりするという事態が起こり難い。したがって、蓋留め具1によれば、搬送容器の本体13に蓋14を確実に固定することができる。
【0046】
なお、本発明の蓋留め具は上記構造に限定されるものではない。例えば、一対の半割軸部5a、5aによって構成される軸部は円筒状の代わりに円柱状をなしていても良い。また、突設部6は側面板6a、6a、上面板6b及び背面板6cによって構成される代わりに、中実のブロック状をなすような構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の蓋留め具は、搬送容器に限らず、各種の容器において本体に蓋を固定する場合や所望の対象物に板材を着脱可能な状態に固定する場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…蓋留め具 2…留め具本体 2a…座板 2b…端面 2c…切り欠き 2d…開口部 3…蓋保持板 3a…上面 3b…下面 3c…肉盗み 3d…係合突起 3e…側面 3f…傾斜面 4…係止軸 4a…内面 5…分割体 5a…半割軸部 5b…半割拡径部 5c…凸条 6…突設部 6a…側面板 6b…上面板 6c…背面板 6d…スリット 6e…平板部 6f…係合部 6g…切り欠き 7…係合爪 8…軸挿通孔 8a…周縁部 9a…大径部 9b…小径部 10…凹部 11…係止部 11a…上面 11b…傾斜面 12a…頂部 12b…傾斜面 13…本体 13a…第1の開口部 13b…縁部 14…蓋 14a…第2の開口部 14b…縁部
【要約】
【課題】容器に対する着脱作業を短時間で効率良く行うことが可能であり、しかも、容器を廃棄する際には分解して再利用することができる蓋留め具を提供する。
【解決手段】本発明の蓋留め具1は、内面4a側同士を互いに向い合わせるようにして対向配置された一対の分割体5、5からなる係止軸4を有する留め具本体2と、平面視略矩形状なし、係止軸4が挿通される略円形状の軸挿通孔8を有する蓋保持板3を備えている。そして、一対の分割体5、5は、外周面に凸条5cが軸方向と平行に設けられた円筒状の半割軸部5aと、この半割軸部5aの先端に設けられた半割拡径部5bによってそれぞれ構成されている。
【選択図】
図1