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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019119203
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004503
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】作田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】草間 謙三
(72)【発明者】
【氏名】松本 厚
(72)【発明者】
【氏名】森 裕也
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-047692(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062363(WO,A1)
【文献】特開2000-129730(JP,A)
【文献】特開2017-089139(JP,A)
【文献】特開2017-053092(JP,A)
【文献】特開2007-230417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延伸する旋回軸心回りに旋回可能な機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に取り付けられた対地作業具と、
前記機体の旋回操作を検知する第1検知装置と、
前記対地作業具の所定部分の高さを検知する第2検知装置と、
旋回操作が行われたことを周囲の作業者に報知するための旋回警告音を発生可能な警報装置と、
前記警報装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1検知装置により旋回操作が検知され且つ前記第2検知装置により検知された高さが地表面以下の所定高さより高いときに前記旋回警告音を発生させる一方、前記第1検知装置により旋回操作が検知された場合であっても前記第2検知装置により検知された高さが前記所定高さ以下である場合は前記旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能を有している作業機。
【請求項2】
上下方向に延伸する旋回軸心回りに旋回可能な機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に取り付けられた対地作業具と、
前記機体の旋回操作を検知する第1検知装置と、
前記対地作業具の所定部分の高さを検知する第2検知装置と、
旋回警告音を発生可能な警報装置と、
前記警報装置を制御する制御装置と、
前記機体に搭載された原動機と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1検知装置により旋回操作が検知され且つ前記第2検知装置により検知された高さが地表面以下の所定高さより高いときに旋回警告音を発生させる一方、前記第1検知装置により旋回操作が検知された場合であっても前記第2検知装置により検知された高さが前記所定高さ以下である場合は旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能を有し、
さらに前記制御装置は、
オペレータの指示に応じて旋回警告音を発生可能なオン状態と旋回警告音を発生不能なオフ状態とに前記警報装置を切り換え可能であり、且つ、
前記原動機の起動時に前記警報装置をオン状態に切り換える作業機。
【請求項3】
前記揺動体は、前記機体に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に取り付けられたアームとを有し、
前記対地作業具は、前記アームの先端に枢軸を介して揺動可能に取り付けられ、
前記第2検知装置は、前記対地作業具の前記所定部分の高さとして前記枢軸の高さを検知する請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2検知装置は、前記対地作業具の前記所定部分の高さとして前記対地作業具の先端の高さを検知する請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項5】
前記対地作業具の形状を登録する登録装置を備え、
前記揺動体は、前記機体に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に取り付けられたアームとを有し、
前記対地作業具は、前記アームの先端に枢軸を介して揺動可能に取り付けられ、
前記第2検知装置は、前記対地作業具の枢軸位置を検知する検知具を有するとともに、当該検知具により検知された前記枢軸位置と、前記枢軸回りにおける前記アームに対する前記対地作業具の回転角度と、前記登録装置に登録された形状に基づいて前記対地作業具の先端の高さを検知する請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記機体に設けられた走行装置と、
前記走行装置の走行操作を検知する第3検知装置と、
を備え、
前記警報装置は、旋回警告音と走行警告音とを発生可能であり、
前記制御装置は、前記第3検知装置により走行操作が検知されたときに前記走行警告音を発生させるように、前記警報装置を制御する請求項1~5のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項7】
上下方向に延伸する旋回軸心回りに旋回可能な機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に取り付けられた対地作業具と、
前記機体の旋回操作を検知する第1検知装置と、
前記対地作業具の所定部分の高さを検知する第2検知装置と、
旋回警告音を発生可能な警報装置と、
前記警報装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1検知装置により旋回操作が検知され且つ前記第2検知装置により検知された高さが地表面以下の所定高さより高いときに旋回警告音を発生させる一方、前記第1検知装置により旋回操作が検知された場合であっても前記第2検知装置により検知された高さが前記所定高さ以下である場合は旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能と、
前記第1検知装置により旋回操作が検知された場合に、前記第2検知装置の検知結果にかかわらず旋回警告音を発生させる第2旋回警告機能と、を有し、
前記第1旋回警告機能を実行する第1状態と前記第2旋回警告機能を実行する第2状態とをオペレータの指示に応じて切り換える作業機。
【請求項8】
前記機体に搭載された原動機を備え、
前記制御装置は、前記原動機の起動時に前記第2状態に切り換える請求項7に記載の作
業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された旋回作業機が知られている。
特許文献1に開示された旋回作業機は、旋回操作を行うためのレバーの揺動に連動して作動する警報ブザーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭56-768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バックホー等の旋回作業機においては、旋回台(機体)の旋回操作を行いながら溝掘り等の掘削作業を行う場合がある。特許文献1に開示の旋回作業機により、このような旋回操作を伴う掘削作業を行った場合、掘削作業中に警報ブザーが鳴り続けることとなり、作業者にとって煩わしい。
本発明は、このような従来技術に鑑みて、旋回時の安全性を確保することができるとともに、旋回操作時であっても警報が不要である作業中には警報が行われることを防ぐことができる作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業機は、上下方向に延伸する旋回軸心回りに旋回可能な機体と、前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、前記揺動体の先端に取り付けられた対地作業具と、前記機体の旋回操作を検知する第1検知装置と、前記対地作業具の所定部分の高さを検知する第2検知装置と、旋回操作が行われたことを周囲の作業者に報知するための旋回警告音を発生可能な警報装置と、前記警報装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第1検知装置により旋回操作が検知され且つ前記第2検知装置により検知された高さが地表面以下の所定高さより高いときに前記旋回警告音を発生させる一方、前記第1検知装置により旋回操作が検知された場合であっても前記第2検知装置により検知された高さが前記所定高さ以下である場合は前記旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能を有している。
【発明の効果】
【0006】
上記作業機によれば、旋回操作が検知され且つ対地作業具の高さが地表面以下の所定高さより高いときに旋回警告音を発生させるため、旋回時の安全性を確保することができる。また、対地作業具の高さが所定高さ以下の状態で旋回操作を行いながら行う作業中には警報が行われないので、不要な警報が行われることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る作業機が備える警報システムの一例を示す図である。
図2】(a)は対地作業具の高さが地表面より高いときを示す側面図、(b)は対地作業具の高さが地表面以下であるときを示す側面図である。
図3】第1実施形態に係る警報システムの処理動作を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る警報システムの処理動作を示すフローチャートである。
図5】作業機の側面図である。
図6】作業機の平面図である。
図7】作業装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(作業機の全体構成)
図5図7は、本発明に係る作業機1の一実施形態を示す概略図であり、旋回作業機であるバックホーが例示されている。
作業機1は、機体(旋回台)2、キャビン3、走行装置4、作業装置5を備えている。以下、本実施形態において、作業機1の運転席7に着座した運転者(オペレータ)の前側
図5の左側)を前方、運転者の後側(図5の右側)を後方、運転者の左側(図5の手前側)を左方、運転者の右側(図5の奥側)を右方として説明する。
【0009】
機体2は、走行装置4のフレーム上に、ベアリングを介して上下方向に延伸する旋回軸心(縦軸)回りに左右に旋回自在に支持されている。機体2は、旋回基板11とウエイト12とを有している。旋回基板11は、旋回ベアリングに連結されており、油圧モータの駆動により縦軸回りに旋回する。ウエイト12は、機体2の後部に設けられている。機体2の後部には、原動機20、油圧ポンプP等が搭載されている。原動機20は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、あるいは電動モータ等である。原動機20は、内燃機関と電動モータとの両方を有するハイブリッド型であってもよい。
【0010】
機体2の右部には、機体2の旋回、走行装置4の駆動、作業装置5の駆動等を行うための油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御するコントロールバルブCV等が搭載されている。機体2の左前部には、キャビン3が搭載されている。キャビン3の内部には運転席7が設けられている。運転席7の近傍には、機体2を旋回操作する旋回レバー、走行装置7を操作する走行レバー、作業装置5を操作する操作レバー(いずれも図示略)が設けられている。
【0011】
走行装置4は、クローラ式の走行装置であって、機体2の右側と左側の下方にそれぞれ設けられている。走行装置4の前部にはドーザ装置13が設けられている。
機体2の前部には支持ブラケット14が設けられている。支持ブラケット14には、スイングブラケット15が枢支されている。スイングブラケット15は、旋回基板11に取り付けられたスイングシリンダ19の駆動により、縦軸回りに揺動可能となっている。
【0012】
作業装置5は、揺動体と対地作業具10とを有している。本実施形態では、揺動体は、ブーム8とアーム9とを有している。揺動体であるアーム9の先端に対地作業具10が取り付けられている。本実施形態では、アーム9の先端に対地作業具10としてバケットが取り付けられている。但し、バケットに代えて或いは加えて他の対地作業具をアーム9の先端に取り付けてもよい。他の対地作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アースオーガ等が例示できる。
【0013】
さらに作業装置5は、ブーム8、アーム9等の駆動機構(油圧アクチュエータ)として、ブームシリンダ16とアームシリンダ17と作業具シリンダ18とを有している。ブームシリンダ16、アームシリンダ17、作業具シリンダ18及びスイングシリンダ19は、油圧シリンダにより構成されている。
ブーム8の基端部は、スイングブラケット15に対して第1横軸21回りに揺動可能に枢支されている。スイングブラケット15とブーム8との間にはブームシリンダ16が設けられている。ブーム8は、ブームシリンダ16の伸縮により、第1横軸21回りに上下に揺動する。アーム9の基端部は、ブーム8の先端に対して第2横軸22回りに揺動可能に枢支されている。ブーム8とアーム9との間にはアームシリンダ17が設けられている。アーム9は、アームシリンダ17の伸縮により、第2横軸22回りに上下に揺動する。
【0014】
対地作業具10は、アーム9の先端に第3横軸(枢軸)23を介して揺動可能に取り付けられている。具体的には、図7に示すように、対地作業具10のブラケット30には、第1リンク31の一端側が第4横軸24に回りに揺動可能に枢支されている。アーム9の先端付近であって第3横軸23より基端側にはボス27が設けられている。ボス27には、第2リンク32の一端側が第5横軸25回りに揺動可能に枢支されている。第1リンク31の他端側と第2リンク32の他端側とは、第6横軸26回りに揺動可能に相互に枢着されている。
【0015】
アーム9と対地作業具10との間には作業具シリンダ18が設けられている。対地作業具10は、作業具シリンダ18の伸縮によりスクイ・ダンプ動作する。
(警報システム)
作業機1は、機体2の旋回時等に周囲に注意を喚起するための警報システム40を備えている。
【0016】
図1に示すように、警報システム40は、第1検知装置41、第2検知装置42、警報装置43、制御装置44、切換装置45、登録装置46、第3検知装置47を備えている

以下、第1検知装置41、第2検知装置42、警報装置43、制御装置44、切換装置45、登録装置46、第3検知装置47について説明する。
(第1検知装置)
第1検知装置41は、機体2の旋回操作を検知する検知装置である。
【0017】
第1検知装置41は、機体2の左旋回操作を検知する左第1検知装置41aと、機体2の右旋回操作を検知する右第1検知装置41bとを含む。
第1検知装置41は、例えば、圧力検知スイッチ(圧力検知式のスイッチ)である。圧力検知スイッチである第1検知装置41は、機体2の旋回を制御するコントロールバルブCVに搭載された検知ポートから圧力を検出し、旋回レバーが操作されたときに、検知ポートから検出した圧力が所定値を超えて接点(スイッチ)が閉じることにより、機体2の旋回操作を検知する。
【0018】
第1検知装置41は、圧力検知スイッチには限定されず、例えば磁石検知スイッチ(磁石検知式のスイッチ)であってもよい。磁石検知スイッチである第1検知装置41は、旋回レバーが操作されたときに、旋回レバーのストローク(傾き)によりセンサが磁石からの磁気を感知して接点(スイッチ)が閉じることにより、機体2の旋回操作を検知する。(第2検知装置)
第2検知装置42は、対地作業具10の所定部分の高さを検知する検知装置である。
【0019】
第2検知装置42は、例えば、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の枢軸23の高さを検知する。以下、この第2検知装置42を「第1実施形態の第2検知装置42」と称し、第1実施形態の第2検知装置42を備えた警報システム40を「第1実施形態の警報システム40」と称する。
第1実施形態の第2検知装置42は、揺動体であるブーム8やアーム9等に取り付けられたポテンショメータと、ポテンショメータの検知値に基づいて対地作業具10の高さを算出する演算装置を有している。
【0020】
第1実施形態の第2検知装置42が有するポテンショメータは、ブーム8の基端部と機体2のスイングブラケット15との間の第1横軸21回りにおける回転角度(スイングブラケット15に対するブーム8の回転角度)を検知するポテンショメータと、ブーム8の先端部とアーム9の基端部との間の第2横軸22回りにおける回転角度(ブーム8に対するアーム9の回転角度)を検知するポテンショメータを含む。
【0021】
第1実施形態の第2検知装置42は、ポテンショメータが検知した回転角度(スイングブラケット15に対するブーム8の回転角度及びブーム8に対するアーム9の回転角度)と、既知の値であるブーム8の長さ(第1横軸21から第2横軸22までの距離)、アーム9の長さ(第2横軸22から第3横軸23までの距離)、第1横軸21と走行装置4の底面との距離(高さ)に基づき、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の枢軸23の高さを算出する。また、第1横軸21から枢軸23までの水平距離を算出することもできる。
【0022】
また、第2検知装置42は、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の先端10aの高さを検知するものであってもよい。以下、この第2検知装置42を「第2実施形態の第2検知装置42」と称し、第2実施形態の第2検知装置42を備えた警報システム40を「第2実施形態の警報システム40」と称する。
対地作業具10の先端10aとは、枢軸23から最も離れた対地作業具10の端部である。例えば、対地作業具がバケットである場合は、バケット爪の先端である。
【0023】
第2実施形態の第2検知装置42は、アーム9の先端部と対地作業具10の基端部との間の第3横軸(枢軸)23回りにおける回転角度(アーム9に対する対地作業具10の回転角度)を検知するポテンショメータと、対地作業具10の枢軸23の位置(以下、「枢軸位置」という)を検知する検知具42aとを有している。
検知具42aは、例えば、スイングブラケット15に対するブーム8の回転角度を検知するポテンショメータと、ブーム8に対するアーム9の回転角度を検知するポテンショメータとを含む。
【0024】
検知具42aが検知する「枢軸位置」は、対地作業具10の枢軸23の高さ(上下位置)と、当該枢軸23の前後位置(機体2(厳密には第1横軸21)から枢軸23までの水平距離)とを含む位置である。枢軸23の高さ(上下位置)は、上述した方法により算出することができる。枢軸23の前後位置は、スイングブラケット15に対するブーム8の回転角度、及び、ブーム8に対するアーム9の回転角度と、ブーム8の長さ及びアーム9の長さに基づいて算出することができる。
【0025】
第2実施形態の第2検知装置42は、検知具42aにより検知された枢軸位置と、アーム9に対する対地作業具10の枢軸23回りの回転角度と、対地作業具10の形状に基づいて、対地作業具10の先端10aの高さを検知する。対地作業具10の形状は、例えば3次元の形状データとして、後述する登録装置46に登録される。
また、第2実施形態の第2検知装置42の変更例として、第2検知装置42は、対地作業具10の所定部分の高さとして対地作業具10の姿勢を考慮して対地作業具10の最も低い部位の高さを検知する構成としてもよい。この場合、第2検知装置42は、上述した第1実施形態の第2検知装置42が対地作業具10の枢軸23の高さを算出するために使用した値に加えて、検知具42aにより検知された枢軸位置と、アーム9に対する対地作業具10の枢軸23回りの回転角度と、対地作業具10の形状に基づいて、対地作業具10の最も低い部位の高さを検知する。
【0026】
また、上述した第2検知装置42はポテンショメータを用いる構成のものであるが、ポテンショメータを用いる構成に代えて或いは加えて、例えば、ロータリエンコーダを用いる構成、ブーム8やアーム9或いは対地作業具10に取り付けた振動ジャイロ等の角度センサを用いる構成、カメラ等にて撮像した画像を解析することにより作業具10の高さを検知する構成等を採用してもよい。
(第3検知装置)
第3検知装置47は、機体2の走行操作を検知する装置である。第3検知装置47は、走行装置4の駆動操作を検知することによって機体2の走行操作を検知する。
【0027】
第3検知装置47は、左側の走行装置4の駆動操作を検知する左第3検知装置47aと、右側の走行装置4の駆動操作を検知する右第3検知装置47bを含む。
第3検知装置47は、例えば、磁石検知スイッチ(磁石検知式のスイッチ)である。磁石検知スイッチである第3検知装置47は、走行レバーのストローク(傾き)によりセンサが磁石からの磁気を感知して接点(スイッチ)が閉じることより、機体2の走行操作(走行装置4の駆動操作)を検知する。
【0028】
第3検知装置47は、圧力検知スイッチ(圧力検知式のスイッチ)であってもよい。圧力検知スイッチである第3検知装置47は、走行装置4の駆動を制御するコントロールバルブCVに搭載された検知ポートから圧力を検出し、走行レバーが操作されたときに、検知ポートから検出した圧力が所定値を超えて接点(スイッチ)が閉じることにより、機体2の走行操作(走行装置4の駆動操作)を検知する。
(警報装置)
警報装置43は、警告音を発生可能な装置である。
【0029】
警報装置43は、第1警告音と、第1警告音と異なる第2警告音を発生可能であることが好ましい。第1警告音と第2警告音とは、聴覚にて区別可能であればよく、音色(音程)が異なっていてもよいし、音の発生の周期が異なっていてもよいし、音の大きさが異なっていてもよいし、メロディ(旋律)が異なっていてもよい。
第1警告音は、旋回操作が行われたことを報知する旋回警告音である。第2警告音は、走行操作が行われたことを報知する走行警告音である。
【0030】
警報装置43は、旋回警告音を発生可能なオン状態と、旋回警告音を発生不能なオフ状態とに切り換えることができる。警報装置43のオン状態とオフ状態の切り換えは、切換装置45を切り換えることによって行うことができる。
また、警報装置43は、3つ以上の異なる警告音を発生可能であってもよい。
さらに、警報装置43は、上述した警告音を発生させる装置と、光により警告を行う回転灯等の発光装置やディスプレイ等に警告の表示を行う表示装置等とを組み合わせた装置
であってもよい。
(切換装置)
切換装置45は、警報装置43を、当該警報装置43が旋回警告音を発生可能なオン状態と、旋回警告音を発生不能なオフ状態とに切り換える装置である。切換装置45の切り換えは、制御装置44により実行することができる。切換装置45は、例えば、ハーネスとリレーを使ったループ回路等である。また、作業機1に搭載されるECU(Electronic
Control Unit)を切換装置45として使用することもできる。
(登録装置)
登録装置46は、対地作業具10の形状(大きさを含む)を登録する装置である。
【0031】
登録装置46は、RAM、ROM、ハードディスク、USBメモリ、SDカード等の記憶部と、当該記憶部に対地作業機10の形状データを入力する入力インターフェイスとを有している。
対地作業具10の形状は、少なくとも対地作業具10における枢軸23から先端10aまでの距離を含んでいることが好ましい。より好ましくは、対地作業具10の全体形状が3次元の形状データとして登録装置46に登録される。
(制御装置)
制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知され且つ第2検知装置42により検知された対地作業具10の高さが地表面以下の所定高さより高いときに警報装置43を作動して警告音を発生させる一方、第1検知装置41により旋回操作が検知された場合であっても第2検知装置42により検知された高さが所定高さ以下である場合は旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能を有している。
【0032】
制御装置44は、例えば、作業機1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。地表面は、対地作業具10による作業(例えば、バケットによる掘削作業)の対象となる土地の表面である。地表面は、例えば、作業機1の走行装置4が接地する面として検知することができる。
図2(a)は、対地作業具10の高さが地表面GLより高い場合の一例を示している。この場合、第2検知装置42により検知される対地作業具10の高さ(対地作業具10の枢軸23又は先端10aの高さ)は、地表面GLより高い。そのため、制御装置44は、図2(a)に示す状態において第1検知装置41により機体2の旋回操作が検知されたとき、警報装置43を作動して警告音を発生させる。これにより、周囲の作業者に注意喚起がなされ、対地作業具10が周囲の作業者に接触する等の危険を回避することができる。
【0033】
図2(b)は、対地作業具10の高さが地表面GL以下である場合の一例を示している。この場合、第2検知装置42により検知される対地作業具10の高さ(対地作業具10の枢軸23又は先端10aの高さ)は、地表面GL以下である。そのため、制御装置44は、図2(b)に示す状態において第1検知装置41により機体2の旋回操作が検知されたとき、警報装置43を作動させず警告音を発生させない。図2(b)に示す状態は、対地作業具10によって対地作業(溝掘り作業等)が実行されている状態であるため、作業者は警告音の発生による煩わしさを感じることなく、溝掘り等(例えば、旋回操作によりバケットの側面を溝の側壁に押し付けた状態で行う堀り作業等)の対地作業を続行することができる。また、この状態では、対地作業具10が地表面GL以下にあるため、機体2の旋回操作が行われても対地作業具10が周囲の作業者に接触する等の危険を招来することはない。
【0034】
尚、制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知され、且つ、第2検知装置42により検知された対地作業具10の高さが地表面と同じ高さのときにも警報装置43を作動して警告音を発生させる制御を行ってもよい。
また、制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知され且つ第2検知装置42により検知された対地作業具10の高さが地表面より高いときに第1警告音(旋回警告音)を発生させ、第3検知装置47により走行操作が検知されたときに第2警告音(走行警告音)を発生させるように、警報装置43を制御することができる。この場合、周囲の作業者は、警告音の違いによって機体2が旋回操作されたのか機体2が走行操作された
のかを把握することができるため、安全性がより向上する。
【0035】
また、制御装置44は、オペレータの指示(操作)に応じて旋回警告音を発生可能なオン状態と旋回警告音を発生不能なオフ状態とに警報装置43を切り換え可能である。
また、制御装置44は、警報装置43がオフ状態において原動機20の駆動が停止した場合、原動機20を再駆動したときに切換装置45を作動して警報装置43をオン状態に切り換える制御を行うことが好ましい。この場合、作業機1のオペレータが警報装置43をオフ状態として原動機20の駆動を停止した場合でも、原動機20を再駆動して作業を再開するときには警報装置43がオン状態となる。そのため、例えば、作業機1のオペレータが警報装置43をオフ状態として原動機20の駆動を停止した後、交代した別のオペレータが警報装置43がオフ状態となっていることに気付かずに旋回操作を行ってしまい、周囲の作業者に危険が及ぶことを防止できる。
(第1実施形態の警報システムの動作)
図3は、第1実施形態の警報システム40の処理動作を示すフローチャートである。
【0036】
第1実施形態の警報システム40は、第2検知装置42が、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の枢軸23の高さを検知する。
警報装置43が切換装置45によりオン状態に切り換えられると、制御装置44による制御の実行が開始される(S1-1)。
第2検知装置42は、第2検知装置42が検知したスイングブラケット15に対するブーム8の回転角度及びブーム8に対するアーム9の回転角度と、ブーム8の長さ、アーム9の長さ、第1横軸21と作業機1の走行装置4の底面との距離(高さ)に基づき、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の枢軸23の高さを算出する(S1-2)。
【0037】
制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知されると、第2検知装置42により検知された対地作業具10の枢軸23の高さが地表面以下の所定高さ(例えば、地表面)より高いか否かを判定する(S1-3)。第1検知装置41により旋回操作が検知されたときの第2検知装置42により検知された対地作業具10の枢軸23の高さが地表面以下の所定高さより高い(例えば、地表面より高い)場合(S1-3、Yes)、制御装置44は、警報装置43を作動して旋回警告音を発生させる(S1-4)。
【0038】
一方、第1検知装置41により旋回操作が検知されたときの第2検知装置42により検知された対地作業具10の枢軸23の高さが地表面以下の所定高さ以下(例えば、地表面以下)である場合(S1-3、No)、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S1-5)。
また、第2検知装置42により検知された対地作業具10の枢軸23の高さが地表面以下の所定高さより高いときであっても、第1検知装置41により旋回操作が検知されていない場合(S1-3、No)、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S1-5)。
【0039】
また、第1検知装置41により旋回操作が検知されず、第2検知装置42により検知された対地作業具10の枢軸23の高さが地表面以下の所定高さ以下である場合(S1-3、No)も、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S1-5)。
上記S1-4、S1-5のいずれかのステップに制御処理が移行した後、制御装置44は、警報装置43がオン状態か否かを判定する(S1-6)。警報装置43がオン状態である場合(S1-6、Yes)、上記S1-2に戻って警報装置43の制御を続行する。一方、切換装置45によって警報装置43がオフ状態に切り換わっていた場合(S1-6、No)、制御装置44は警報装置43の制御を終了する。
【0040】
また、図示していないが、警報装置43がオフ状態において原動機20の駆動が停止した場合であっても、制御装置44は、原動機20を再駆動したときには警報装置43をオン状態に切り換えて警報装置43の制御を再開する。
上述した第1実施形態の警報システム40によれば、第2検知装置42が対地作業具10の所定部分の高さとして対地作業具10の枢軸23の高さを算出するため、対地作業具
10の概略高さを対地作業具10の大きさや形状と関係なく算出することができる。そのため、対地作業具10が地表面より高い位置にあるか否かを複雑な計算を必要とせずに簡単に判定することができる。
(第2実施形態の警報システムの動作)
図4は、第2実施形態の警報システム40の処理動作を示すフローチャートである。
【0041】
第2実施形態の警報システム40は、第2検知装置42が、対地作業具10の所定部分の高さとして、対地作業具10の先端10aの高さを検知する。
警報装置43が切換装置45によりオン状態に切り換えられると、制御装置44による制御の実行が開始される(S2-1)。
第2検知装置42は、第2検知装置42(検知具42aを含む)が検知したスイングブラケット15に対するブーム8の回転角度及びブーム8に対するアーム9の回転角度と、ブーム8の長さ、アーム9の長さ、第1横軸21と作業機1の走行装置4の底面との距離(高さ)に基づき、対地作業具10の高さとしての対地作業具10の枢軸23の位置(枢軸位置)を算出する(S2-2)。また、第2検知装置42は、算出された枢軸位置と、アーム9に対する対地作業具10の枢軸23回りの回転角度と、登録装置46に登録された対地作業具10の形状に基づいて、対地作業具10の先端10aの高さを算出する(S2-3)。
【0042】
制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知されると、第2検知装置42により検知された対地作業具10の先端10aの高さが地表面以下の所定高さ(例えば、地表面)より高いか否かを判定する(S2-4)。第1検知装置41により旋回が検知されたときの第2検知装置42により検知された対地作業具10の先端10aの高さが地表面以下の所定高さより高い(例えば、地表面より高い)場合(S2-4、Yes)、制御装置44は、警報装置43を作動して旋回警告音を発生させる(S2-5)。
【0043】
一方、第1検知装置41により旋回操作が検知されたときの第2検知装置42により検知された対地作業具10の先端10aの高さが地表面以下の所定高さ以下(例えば、地表面以下)である場合(S2-4、No)、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S2-6)。
また、第2検知装置42により検知された対地作業具10の先端10aの高さが地表面以下の所定高さより高いときであっても、第1検知装置41により旋回操作が検知されていない場合(S2-4、No)も、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S2-6)。
【0044】
また、第1検知装置41により旋回操作が検知されず、第2検知装置42により検知された対地作業具10の先端10aの高さも地表面以下の所定高さ以下である場合(S2-4、No)も、制御装置44は、警報装置43を作動させず、旋回警告音を発生させない(S2-6)。
上記S2-5、S2-6のいずれかのステップに制御処理が移行した後、制御装置44は、警報装置43がオン状態か否かを判定する(S2-7)。警報装置43がオン状態である場合(S2-7、Yes)、上記S2-2に戻って警報装置43の制御を続行する。一方、切換装置45によって警報装置43がオフ状態に切り換わっていた場合(S2-7、No)、制御装置44は警報装置43の制御を終了する。
【0045】
また、図示していないが、警報装置43がオフ状態において原動機20の駆動が停止した場合であっても、制御装置44は、原動機20を再駆動したときには警報装置43をオン状態に切り換えて警報装置43の制御を再開する。
上述した第2実施形態の警報システム40によれば、第2検知装置42が対地作業具10の所定部分の高さとして対地作業具10の先端10aの高さを算出するため、対地作業具10が地表面より高い位置にあるか否かを精度良く判定することができる。
(変更例)
上記実施形態では、第2検知装置42が対地作業具10の高さを算出する演算を行う演算装置を備えている構成について説明したが、第2検知装置42の代わりに制御装置44が対地作業具10の高さを算出する演算を行う演算装置を備えている構成としてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、制御装置44とは別の切換装置45が警報装置43のオン状態とオフ状態を切り換える構成について説明したが、制御装置44が警報装置43のオン状態とオフ状態を切り換える構成としてもよい。言い換えれば、制御装置44が切換装置45を含む構成としてもよい。この場合、例えば、切換装置45を含む制御装置44として作業機1に搭載されたECUを使用することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、制御装置44とは別の登録装置46に対地作業具10の形状を登録(記憶)する構成について説明したが、制御装置44が対地作業具10の形状を登録(記憶)する記憶部を有していてもよい。言い換えれば、制御装置44が登録装置46を含む構成としてもよい。
また、制御装置44は、第1検知装置41により旋回操作が検知された場合に、第2検知装置42の検知結果にかかわらず旋回警告音を発生させる第2旋回警告機能を有していてもよい。この場合、制御装置44が、第1検知装置41により旋回操作が検知され且つ第2検知装置42により検知された高さが地表面以下の所定高さより高いときに、旋回警告音を発生させる一方、第1検知装置41により旋回操作が検知された場合であっても第2検知装置42により検知された高さが所定高さ以下である場合は旋回警告音を発生させない第1旋回警告機能と、第1検知装置41により旋回操作が検知された場合に、第2検知装置42の検知結果にかかわらず旋回警告音を発生させる第2旋回警告機能とをオペレータの指示(操作)に応じて切り換え可能な構成としてもよい。また、その場合、制御装置44が、原動機20の再起動時に、常に第2状態に切り換えるようにしてもよく、第1状態及び第2状態のうち前回の原動機の停止時に選択されていた状態を維持するようにしてもよい。
【0048】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 作業機
2 機体
4 走行装置
8 揺動体(ブーム)
9 揺動体(アーム)
10 対地作業具
10a 対地作業具の先端
20 原動機
23 対地作業具の枢軸
41 第1検知装置
42 第2検知装置
43 警報装置
44 制御装置
45 切換装置
46 登録装置
47 第3検知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7