(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】高生産性メタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/625 20220101AFI20230110BHJP
【FI】
C12P7/625
(21)【出願番号】P 2020514148
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 US2018033423
(87)【国際公開番号】W WO2018213724
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519413597
【氏名又は名称】マンゴ マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヒッキー、ロバート、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】モース、マーガレット、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ピエジャ、アリソン、ジェイ
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0052681(US,A1)
【文献】特表2012-525145(JP,A)
【文献】特開昭61-025492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法であって、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを含む基質ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、前記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、前記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が制限されていることにより、前記メタン資化細菌の集団の増殖を阻害する栄養素制限条件を作り出し、前記メタン資化細菌によるポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の前記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの基質ガ
スを工程(a)及び工程(b)の各々の前記反応ゾーンに送る速度が、基質拡散条件であり;
ii.工程(a)及び工程(b)のうちの少なくとも一方において、前記水性培地の一部が、前記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、ストリッピングガスと接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.前記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる、
前記方法。
【請求項2】
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方においてメタン含有ガスを前記反応ゾーンに送る速度が、未反応ガス中におけるメタンのモル濃度が実質的に安定となるように調整される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
メタン含有
ガスが、硫化水素を含有し、
前記水性培地が、前記硫化水素の少なくとも一部を吸収して、硫化水素の濃度が低減した未反応ガス流を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンが、前記反応ゾーンの高さ全体にわたる実質的に均一な液体組成及び実質的に不均一なガス組成を特徴とするディープタンクバブルカラム反応ゾーンであり、前記基
質ガスの少なくとも一部が、前記反応ゾーンの下側部分に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)における
前記水性培地の一部の引き抜き速度が、前記反応ゾーンにおける代謝活動によって産生された二酸化炭素の少なくとも約40%に相当する量の二酸化炭素を除去するのに充分である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)における
前記水性培地の一部の引き抜き速度が、前記反応ゾーンにおける代謝活動によって産生された二酸化炭素の50~75%を除去するのに充分である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
メタン含有ガスを前記反応ゾーンに送る速度がメタン拡散条件下ではなくなった場合に、少なくとも1つの酸素含有CI化合物が、工程(a)の前記反応ゾーンに添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる前記貧二酸化炭素水性培地の一部が、冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)及び工程(b)が、1つの反応容器中で順に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)及び工程(b)が、それぞれ別々の反応容器中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の前記反応ゾーン中の前記水性培地の一部が、工程(b)の前記反応ゾーンに送られる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の各反応ゾーンに対して工程(b)の反応ゾーンが少なくとも2つ提供され、工程(a)の前記水性培地の一部が、所定の時点で工程(b)の前記反応ゾーンのうち少なくとも1つに送られて、セミバッチプロセスが実施される、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
所定の時点で工程(b)の前記反応ゾーンのうちの
少なくとも1つに送られる前記一部が、工程(a)の前記反応ゾーン中の前記水性培地の25~95体積%であり、追加の水性培地が、工程(a)の前記反応ゾーンに提供されて、メタン資化細菌の前記集団を増殖させる、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記メタン含有ガスが、バイオガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記メタン含有ガスが、嫌気性消化ガスを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記メタン含有ガスが、埋立地ガス及び別の発酵プロセスから直接又は間接的に得られたテールガスのうちの少なくとも1つを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記貧二酸化炭素水性培地をさらに冷却し、か
つ冷却流体を加熱するために、前記貧二酸化炭素水性培地に、
前記冷却流体による間接熱交換が施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記間接熱交換により加熱された冷却流体が、ヒートポンプに送られて、過熱流体を提供する、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記過熱流体が、前記ストリッピングガスを加熱するために用いられる、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記過熱流体が、メタン資化細菌からのポリヒドロキシアルカノエートの回収に用いられる、請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
水性培地が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方における前記反応ゾーンの下側部分から引き抜かれ、水性培地中の二酸化炭素の一部分を除去するためにフラッシング条件に掛けられ、続いてストリッピングガスと接触させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法であって、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを含む基質ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、前記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、前記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地には、前記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が実質的に存在せず、これによりポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の前記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの基質ガ
スを工程(a)及び工程(b)の各々の前記反応ゾーンに送る速度が、基質拡散条件であり;
ii.工程(a)及び工程(b)の少なくとも一方において、前記水性培地の一部が、前記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、半透過性膜と接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.前記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願及び先行文書の参照>
本出願は、2017年5月19日に出願された米国特許仮出願第62/603,181号の優先権を主張するものである。
【0002】
<技術分野>
本発明は、メタン資化細菌(methanotrophs)によるメタンの発酵のための高生産性方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<背景技術>
メタン資化細菌によるメタンの発酵は良く知られている。例えば動物の餌として若しくは動物の餌の成分として用いるための、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を生産するために又はPHA含有量が調整されたタンパク質を生産するために、メタン含有ガスで微生物を増殖させることについての提案が成されている。メタンは、化石源及び生物源から容易に入手可能である。多くの場合、メタン源からの炭素の価格は、糖などの他の源からの炭素と比べてより安価である。メタン資化細菌によるその発酵を介してメタンを有用な生成物に変換可能であることは、経済的な利点の可能性を提供する。加えて、メタン含有ガス源は、バイオガス及び埋立地ガスなどの再生可能ガス源であり得ることから、早期再生可能ガス源から生成物が得られるという利点もある。
【0004】
ポリヒドロキシアルカノエートは、容易に生分解可能であり、本質的に無毒性である。したがって、PHAは、環境残留性プラスチックに対する代替物として提案されてきた。いくつかの研究から、PHAの存在が、魚の餌における有益な特性を有し得ることが示唆されている。加えて、PHAは、例えば、配合され、押出し又はプレスされた餌ペレットの有用な成分でもあり得る。
【0005】
ポリヒドロキシアルカノエート含有生成物は、糖含有原料(sugar feedstocks)(糖自体、並びに酵素活性を通して糖を得ることが可能なデンプン及びセルロース系材料を含む)を用いた代謝プロセスを通して作製されてきた。糖含有原料は、典型的には、メタン含有ガスよりも著しく高価であるため、原料(feedstock)としてのメタンに関心が向けられてきた。しかし、水性媒体中でのメタンの溶解度が低いこと、及びメタンの生物変換中にメタン資化細菌によって高熱が生成されることから、メタン含有ガスからのPHA含有生成物の生産には課題が存在する。したがって、メタンからPHAを生産する従来の生物プロセスでは、水性ブロス中のメタン資化細菌密度を低く維持しており、その低い密度の結果、バイオリアクターの単位容積あたりのPHA生産性が低くなる。したがって、市販のPHAは、従来の石油系ポリマーよりも著しく高価であり、そのため、商業的に広く受け入れられては来なかった。
【0006】
一般的に、メタン含有ガスからPHA含有生成物を作製するための生物プロセスは、メタン資化細菌の集団を増殖させる工程(「平衡細胞増殖(balanced cell growth)」)、及び、その後、上記メタン資化細菌を、上記微生物の集団の増殖を支援しないが、上記メタン資化細菌によるPHAの産生を助長する環境条件に曝す工程(「非平衡細胞増殖(unbalanced cell growth)」)を含む。PHAが求められている生成物である場合には、続いて、上記微生物からPHAを収穫する。メタン資化細菌の集団の増殖及びそれらによるPHAの産生のために、メタン含有ガス及び酸素含有ガスの両方が、メタン資化細菌を含有する水性ブロスに供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、メタン含有ガスから、バイオリアクターの単位容積あたりのより高い生産性でPHA含有生成物を生産することが求められている。有利には、好ましい方法は、経済的に魅力的な方法でより高い生産性を実現することになる。
【0008】
本発明によって、メタン含有ガスから高い生産性でPHA含有生成物を作製するための生物プロセスが提供される。本発明によれば、メタンの生物変換の強い発熱性に伴う過度な冷却コストなしで、バイオリアクターの単位容積あたり、高いメタン資化細菌密度を実現することが可能である。本発明の方法は、気相から水性ブロス又は培地へのメタンの望ましい高い物質移動速度を促進する。このような高い物質移動速度は、高いメタン資化細菌密度を支援する。しかし、高い物質移動速度及び高いメタン資化細菌密度は、より大きい熱の発生及びより多い二酸化炭素の産生をもたらす結果となる。本発明の方法は、高いメタン物質移動速度を実現する能力を、生物プロセスに適する温度に水性培地を維持するための熱除去と一体化させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法では、メタン資化細菌によって産生された二酸化炭素を含有する水性培地の一部を、反応ゾーンから引き抜き、ストリッピングガスと接触させることにより、引き抜かれた水性培地から溶解二酸化炭素を除去する(その結果、「貧二酸化炭素(carbon dioxide-lean)培地又はブロス」が得られる)。この貧二酸化炭素培地の少なくとも一部(好ましくは本質的に全て)を、上記反応ゾーンに送り、そこで、反応ゾーンの水性培地の一部となる。水性培地から二酸化炭素を除去することにより、メタン及び酸素の各々の反応ゾーン中の水性培地への物質移動速度が増加される結果となる。
【0010】
加えて、ストリッピングガスとの接触中に、引き抜かれた水性培地からの二酸化炭素及び水の蒸発が、水性培地を冷却する結果にもなる。メタン資化細菌の集団が増加するに従って、二酸化炭素の産生も増加する。したがって、二酸化炭素の気化に起因する蒸発冷却を通して除去される熱は、メタン資化細菌の集団の増殖を多少追いかけるような形となる。水の気化に起因する熱除去の程度は、当然、ストリッピングガスの相対湿度に関連する。メタンの二酸化炭素への代謝的酸化においては水も形成されるので、上記方法中において水性培地の量を一定に維持するという観点から、水を気化させることが有益であり得る。
【0011】
本明細書の目的のために、「制限基質」という用語は、メタン又は酸素のうち、上記方法における任意の特定時点での平衡細胞増殖及び/又は非平衡細胞増殖のための適切な物質移動をより制限するパラメータである方を意味する。操作中に、ある時間にわたって一方の基質が制限的(limiting)であり、次に別の基質が制限的であることもあり得ることは理解されるであろう。ほとんどの操作において、メタンの物質移動速度は、高メタン資化細菌密度における平衡細胞増殖及び非平衡細胞増殖を制限する。しかし、本発明は、酸素の物質移動が制限パラメータである操作モードも考慮する。例えば、以降でより詳細に考察されるように、メタノール、ギ酸、又はその水溶性塩のうちの1又は複数が、水性培地に添加されてもよく、この場合、酸素の物質移動が制限基質となり得る。
【0012】
本発明の広い態様は、メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物(例えば、PHA又はPHA含有量が調整されたタンパク質)に生物変換するための高生産性方法に関する。上記方法は、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地は、上記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、上記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
上記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、上記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地は、上記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が制限されている(例えば、実質的に存在しない)ことにより、上記メタン資化細菌の集団の増殖を阻害する栄養素制限条件を作り出し、上記メタン資化細菌によるポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
上記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の上記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの制限基質ガスを工程(a)及び工程(b)の各々の上記反応ゾーンに送る速度が、(A)基質拡散条件であり、並びに、所望に応じてかつ好ましくは、(B)未反応ガス中におけるメタンのモル濃度が実質的に安定となるように調整され;
ii.工程(a)及び工程(b)のうちの少なくとも一方において、上記水性培地の一部が、上記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、ストリッピングガスと接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.上記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の上記反応ゾーンに再循環される。
サブ工程(ii)は、少なくとも、メタン資化細菌の集団が、1リットルあたり少なくとも約8グラム(好ましくは少なくとも約10グラム)(乾燥細胞質量で測定)である時間の間に、多くの場合は、少なくとも、メタン資化細菌の集団が、1リットルあたり約8~80グラム(好ましくは約10~60グラム)の範囲内(乾燥細胞質量で測定)である時間の間に行われることが好ましい。
【0013】
本発明の別の広い態様では、メタノール及びギ酸若しくはその水溶性塩(「酸素含有CI化合物」)のうちの1つ又は両方が、メタン資化細菌の増殖又はPHA相の産生のうちのいずれか又は両方の最中に、水性ブロスに添加される。酸素含有CI化合物は、メタン資化細菌に追加の炭素基質を提供し、したがって、所定の条件下で気相から水性培地へのメタンの物質移動速度によって支援することが可能な速度を超える速度で、メタン資化細菌の集団の増殖及びPHAの産生を維持するように働く。さらに、酸素含有CI化合物の代謝変換は、炭素原子あたりの発熱がメタンの場合よりも少ない。したがって、本態様は、メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法に関し、上記方法は、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地は、上記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、上記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
上記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、上記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地には、上記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が存在せず、これによりポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
上記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の上記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、メタノール及びギ酸又はその水溶性塩のうちの少なくとも1つの酸素含有CI化合物が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方における上記水性培地に供給される。酸素含有CI化合物は、少なくともメタン拡散制限条件下で供給されることが好ましい。
【0014】
本発明のさらに広い態様は、メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法に関し、上記方法は、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地は、上記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、上記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
上記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、上記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、上記培地には、上記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が存在せず、これによりポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の上記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの制限基質ガスを工程(a)及び工程(b)の各々の上記反応ゾーンに送る速度が、(A)基質拡散条件であり、並びに、所望に応じてかつ好ましくは、(B)未反応ガス中におけるメタンのモル濃度が実質的に安定となるように調整され;
ii.工程(a)及び工程(b)のうちの少なくとも一方において、上記水性培地の一部が、上記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、半透過性膜と接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.上記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の上記反応ゾーンに再循環される。
【0015】
工程(a)及び工程(b)のうちの少なくとも一方において水性培地から二酸化炭素を除去するために用いられる半透過性膜は、二酸化炭素に対して透過性である脱気又は浸透気化膜であることが好ましく、上記膜は水に対しても透過性であることがより好ましい。上記膜は有機膜であっても又は無機膜であってもよく、液相と蒸気相透過物との間のバリアとして働く。二酸化炭素及び水の透過に対する駆動力は、一般的に、分圧差を特徴とする。分圧差は、膜両側の絶対圧差によって(例えば、透過物側が真空下であること、及び/又は膜の透過物側のスイープガスによって)少なくとも部分的に維持することが可能である。スイープガスは、ストリッピングに用いられるガスと同じ種類であってよい。透過物(二酸化炭素及び通常は水)の蒸発は、膜の透過物側で発生し、気化の潜熱によって冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の方法に有用である装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本詳細な記述において参照されるすべての特許、公開特許出願、及び論文は、その全内容が参照により本明細書に援用される。
【0018】
本明細書で用いられる場合、特に断りのない限り、又はその使用の文脈からそれ以外が明らかでない限り、以下の用語は、以下に示される意味を有する。
【0019】
「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語の使用は、記載される要素の1又は複数を含むことを意図している。例示的な要素のリストは、記載される要素のうちの1又は複数の組み合わせを含むことを意図している。「~よい(may)」という用語は、本明細書で用いられる場合、要素の使用が、任意であり、操作性に関していかなる暗示も提供することを意図するものではないことを意味している。
【0020】
バイオガスとは、再生可能炭素源から生成され、好ましくは少なくとも約20モル%の二酸化炭素を含有するガスを意味する。嫌気的誘導ガスとは、酸素の非存在下で有機物の嫌気性消化又は発酵によって生成されるバイオガスを意味し、主にメタン及び二酸化炭素を含有する。嫌気性消化ガスの典型的な組成は、約25~50体積%の二酸化炭素、及び約40~70体積%のメタンであり、少量の水素、硫化水素、アンモニア及び窒素も含む。
【0021】
断続的に、又は断続的な、とは、時々を意味し、規則的な時間間隔であっても、又は不規則な時間間隔であってもよい。
【0022】
埋立地ガスの典型的な組成は、約25~60体積%の二酸化炭素、及び約35~70体積%のメタンであり、少量の一酸化炭素、水素、硫化水素、酸素、及び窒素を含む。
【0023】
制限栄養素条件又は栄養素が制限された条件とは、メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が不足して、反応ゾーンにおいてメタン資化細菌の集団の増殖を阻害し、かつ、増殖のための必要性に応じた適切な量の少なくとも1つの栄養素を受ける反応ゾーンと比較してメタン資化細菌中のポリヒドロキシアルカノエート化合物のレベルを増加させる程度まで、微生物の集団の増殖に必要な1若しくは複数の栄養素又は微量栄養素が存在しないことを意味する。制限栄養条件に関して、実質的に存在しない、とは、増殖に必要な1又は複数の栄養素が、残留量若しくは極微量以外では、又はブロスに導入された別の成分中の不純物として以外では存在しないことを意味する。
【0024】
メタン資化細菌は、炭素源及びエネルギー源としてのメタンを代謝する原核生物であり、野生型であっても、又は遺伝子操作されていてもよい。メタン資化細菌という用語は、遺伝子改変がなければメタン資化細菌ではない可能性のある遺伝子改変された微生物を含むことを意図している。
【0025】
微小気泡(マイクロバブル)は、直径が500ミクロン以下の気泡である。
【0026】
天然ガスとは、堆積岩から得られる通常は75%以上のメタン及び少量の炭素数2~4のアルカンを含有するか気体炭化水素の可燃性混合物、又は多くの場合メタンが窒素と共に存在する炭層からの気体炭化水素の可燃性混合物を意味する。天然ガスは他の成分(例えば、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気、及び窒素などであるが、これらに限定されない)も含有し得る。
【0027】
栄養素及び微量栄養素は、微生物によって同化される食べ物又はいずれかの栄養物質であり、増殖、修復、及び正常な代謝に必要とされる。微量栄養素は、例えば炭素源、窒素源及びリン源と比較すると、ビタミン及びミネラルなどの少量必要とされる栄養素である。
【0028】
ポリヒドロキシアルカノエートは、次式の繰り返し単位を特徴としてよく:
-[OC(R)H-(CH2)m-C(O)]n-
式中、Rは、水素又は炭素数1~6の低級アルキル(好ましくは炭素数1~4の低級アルキル)であり;m及びnは整数であり、mは1又は2であり;並びに分子量(重量平均)は、約10000~約500万ダルトン以上である。ポリヒドロキシアルカノエートの例としては、限定されないが、ポリヒドロキシブチレート及びポリヒドロキシバレレートが挙げられる。
【0029】
ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生成物とは、生存若しくは非生存メタン資化細菌、又は、メタン資化細菌による代謝によって産生されたポリヒドロキシアルカノエートを内部及び/又は外部に含有するメタン資化細菌細胞の残渣を意味する。
【0030】
微生物の集団とは、所定の体積中の微生物の数を意味し、実質的な純粋培養及び混合培養を含む。
【0031】
タンパク質は、アミノ酸残基の長鎖を1又は複数含有する高分子であり、限定されないが、ペプチド、オリゴペプチド、及びポリペプチドが挙げられ、炭素、窒素、酸素、及び炭素原子に加えて硫黄を含有する場合もある。
【0032】
単細胞タンパク質は、食用に適する単細胞微生物である。
【0033】
液相中における実質的な均一性とは、液相の組成が、バイオリアクター全体にわたって実質的に同じであることを意味する。通常、均一液相中では、成分の濃度は、その平均濃度の約5%以内であり、すなわち、成分の平均濃度が55.3モル%である場合、実質的な均一性とは、上記成分が、例えば、約52.5~58.0モル%の間で変動し得ることを意味することになる。
【0034】
気相中における実質的な不均一性とは、ガス基質によって提供される少なくとも1つの成分の質量(ガス気泡及び溶解したガスの両方)が、バイオリアクター中へのガスの投入点とブロスからのガスの排出点との間で、少なくとも50質量%変化することを意味する。
【0035】
基質拡散条件とは、平衡細胞増殖条件(工程(a))の場合は、メタン及び酸素の両方の物質移動の速度が、それら自体のみではメタン資化細菌集団の増殖速度に実質的に有害な影響を与えないことを意味し、非平衡細胞増殖(工程(b))の場合は、メタン及び酸素の両方の物質移動の速度が、それら自体のみではメタン資化細菌集団に実質的に有害な影響を与えないことを意味する。「実質的に」という用語は、(1)平衡細胞増殖条件の場合、有害な影響がメタン資化細菌の集団が増殖し続けることを意味し、(2)非平衡細胞増殖条件の場合、有害な影響が、メタン及び酸素の両方の物質移動がメタン資化細菌の集団を少なくとも維持するのに充分であること、すなわち、メタン資化細菌の集団が20質量%を超えて、好ましくは10質量%を超えて減少しないことを意味する。いくつかの場合では、平衡細胞増殖条件時、メタン資化細菌の集団は、所定の細胞密度に対して予測された対数増殖速度の20質量%未満、好ましくは10質量%未満で増殖し続ける。
【0036】
基質拡散制限条件とは、メタン資化細菌を含有するブロスへのメタン及び酸素のうち少なくとも一方の拡散速度が、基質拡散条件での速度以外であることを意味する。基質拡散条件及び基質拡散制限条件は、物質移動に対する駆動力に加えて、ブロス中での気泡サイズ及び気泡の継続時間などの物理的制約による影響を受けることを理解されたい。
【0037】
細胞の質量への言及はすべて、細胞の乾燥質量に基づいて算出される。乾燥質量は、ブロスから微生物をろ過した後、脱イオン水で洗浄し、オーブン中で約103~105℃の温度で乾燥し、デシケータ中で冷却することによって特定される。デシケータ中での乾燥及び冷却は、所定のサンプルに対して、サンプルの質量が変化しなくなるまで繰り返されるべきである。
【0038】
有機酸への言及は、本明細書において、対応する塩及びエステルを含むと見なされるものとする。
【0039】
ポリヒドロキシアルカノエートは、メタン資化細菌によってエネルギーの貯蔵のために産生される。本技術分野において公知であるように、メタン資化細菌がストレス下に置かれると、PHA産生の速度は増加する。ストレスは、制限栄養素条件を用いることによって誘導され得るが、それでも、メタン資化細菌を維持するためにはある程度の酸素及びメタン又は酸素含有CI化合物が提供される必要がある。本発明の方法は、PHAを産生可能な広範囲のメタン資化細菌に広く適用可能である。定義で示されるように、メタン資化細菌は、従来はメタン資化細菌として特徴付けられないものの、メタンを消費することのできる遺伝子改変された微生物を含む。
【0040】
メタン資化細菌は、広く様々な入手源から得ることができる。メタン資化細菌は、酸素及びメタンの両方が存在する環境中、多くの場合は好気ゾーンと嫌気ゾーンとの間の界面で見出される。それらは、淡水、汽水及び塩水環境、砂漠、埋立地、炭鉱表面、及び海洋を含む、水田、沼地及び湿地、池及び湖の表面堆積物、活性化スラッジ、並びに牧草地及び落葉樹林の土壌に一般的に見られる。好ましい入手源としては、炭素、栄養素、又は酸素の制限などのストレスを周期的に受けている環境が挙げられる。混合細菌培養物を用いると、特別の培養物を維持する必要がなくなることによって、純粋培養物を用いる方法と比較して方法はより安価となる。本発明の記述の文脈において、「混合培養物」という用語は、様々な別個の培養物又は種を、上記種が明確に分かっているかどうかに関わらず、含有する細菌群集を含むものとして定義される。「混合培養物」という用語は、増菌群集(entichment communities)も含む。これらは、PHA産生に正の影響を与える生物の増殖には好ましく、PHA産生に負の影響を与える生物の増殖には好ましくない選択的な圧力を受けた生物の群集である。選択技術を用いて、混合培養物中のメタン資化細菌の集団を増菌し、求められているPHAを提供する集団とすることができる。
【0041】
メタン資化細菌の例としては、限定されないが、メチロサイナス(Methylosinus)、メチロシスティス(Methylocystis)、メチロセラ(Methylocella)、メチロカプサ(Methylocapsa)、メチロフェルラ(Methyloferula)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロミクロビウム(Methylomicrobium)、メチロスファエラ(Methylosphaera)、メチロカルドゥム(Methylocaldum)、メチロサルシナ(Methylosarcina)、メチロテルムス(Methylothermus)、メチロハロビウス(Methylohalobius)、メチロガエア(Methylogaea)、メチロソマ(Methylosoma)、メチロマリヌム(Methylomarinum)、メチロブルム(Methylovulum)、メチロアシジフィルム(Methyloacidiphilum)、クレオンスリクス(Creonthrix)、及びクロノスリクス(Clonothrix)が挙げられる。異なるメタン資化細菌は、PHAを蓄積する速度が異なり、異なるメタン資化細菌は、ポリマー又は分子量分布が異なるPHAを産生する可能性がある。したがって、メタン資化細菌の選択は、典型的には、求められている特定のPHAを標的として行われる。例えば、その全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第8,030,021号を参照されたい。
【0042】
メタン資化細菌は、タンパク質を含有し、一般的には、特に変性後に、食用に適しており、したがって、単細胞タンパク質源として適している。メタン資化細菌に含まれているタンパク質としては、限定されないが、以下が挙げられる。
【表1】
上記タンパク質は、多くの場合、乾燥細胞の約30~80質量%を構成し、残りは、脂肪(多くの場合、約2~15質量%、例えば3~12質量%)、PHA(多くの場合、動物の餌用では約5~50質量%、PHAが求められている最終生成物である場合は約10~50質量%)、及び他の成分(約5~20質量%)である。いくつかの場合では、細胞はタンパク質を発現し得るが、実用目的では、上記タンパク質は細胞中及び/又は細胞の表面に含有されている。したがって、メタン資化細菌の集団の増殖は、ある程度、タンパク質の産生速度に比例する。
【0043】
本発明の方法はまた、広く様々なメタン含有ガスに適用可能でもあり、限定されないが、天然ガス、石炭及びバイオガス(嫌気性消化ガス及び埋立地ガスが挙げられるがこれらに限定されない)からのメタンガス、他のプロセスからのテールガス(例えば別の発酵プロセスから直接又は間接的に得られたテールガス)、並びにこれらの混合物が挙げられる。典型的には、反応ゾーンに供給されるメタン含有ガス中のメタン濃度は、少なくとも約10モル%であり、多くの場合、約15~99モル%から本質的に100モル%までの範囲内である。メタン含有ガスは、他の成分(例えば、高級アルカン、窒素、二酸化炭素、硫化水素、シロキサン、及び水蒸気などがあるがこれらに限定されない)も含有していてよい。メタン資化細菌に対して毒性であり得る、又はメタン資化細菌の働きを損ない得るメタン含有ガス中のいずれの成分も、メタン資化細菌にとって許容可能であるレベルの濃度まで除去又は減少されることが好ましい。
【0044】
メタン含有ガス及び酸素含有ガスが、メタン資化細菌を含有する水性培地(ブロス)に供給される。メタン含有ガス及び酸素含有ガスは、マイクロバブルの形態でバイオリアクターに導入されることが好ましい。マイクロバブルの直径は、多くの場合、0.01~0.5mmの範囲内であり、0.02~0.3mmの範囲内であることが好ましい。メタン含有ガス及び酸素含有ガスは、駆動流体を用いて、ブロスに別々に注入されることが好ましい。駆動液体の流速を変化させることにより、マイクロバブルのサイズを調整することが可能であり、したがって、ブロスへのメタン及び酸素の移動速度を調整することが可能である。所望の場合は、バブルサイズを低下させる補助として界面活性剤を用いてもよい。
【0045】
メタン含有ガス及び酸素含有ガスの各々がブロスに供給される速度は、広く異なっていてもよいが、典型的には、適切な量の溶解されたメタン及び酸素がメタン資化細菌に利用可能であることを確保することに依存する。メタン資化細菌の集団の増殖中において、反応ゾーンの単位容積あたりのメタン及び酸素の必要量は、メタン資化細菌の密度の増加に比例して変わる。したがって、これらのガスの供給速度は、メタン資化細菌の密度、並びに所望される集団増殖速度及び/又はPHA蓄積に基づいて調整されることが好ましい。単細胞タンパク質の生産における主要なコストは、本発明の前は、動物の餌を提供するためのメタン資化細菌の分離、脱水、及び乾燥にあった。同様に、精製されたPHAが求められている最終生成物である場合、ブロス中のメタン資化細菌の密度を高めると、メタン資化細菌からのPHAの回収が促進される。容易に理解することができるように、本発明の方法により、水性ブロスにメタン及び酸素を移動する能力の向上、及びバイオリアクターから熱を除去する能力に起因して、ブロス中のメタン資化細菌密度の増加を実現することが可能となる。
【0046】
メタン供給速度を調節することによって、ブロスから送られる未反応ガス中のメタンの喪失を最小限に抑えることができる。上記方法の少なくとも一部の期間におけるメタン含有ガスの反応ゾーンへの供給速度は、未反応ガスにおけるメタンのモル濃度が実質的に安定(メタンのモル濃度は、平均メタンモル濃度の20%を超えて、より好ましくは10%を超えて変動しないことが好ましい)となるような速度である。未反応ガスを排気する(例えば、火炎又は熱酸化装置における燃焼)場合、未反応ガス中のメタン濃度を下げることで経済的操業が改善されるが、熱酸化を維持するためには天然ガスが必要となり得る。多くの場合、メタン含有ガスを発生させる設備(例えば、嫌気性消化装置)は、PHA生産操業に利用可能であり得る火炎又は他の熱酸化ユニット操業を有する。未反応ガスが排気される場合、メタン含有ガス中のメタンのうちの少なくとも約70、好ましくは少なくとも約80、及び場合によっては約85~99から本質的にすべてまでが、反応ゾーンで代謝されることが好ましい。メタン含有ガスを反応ゾーンに送る速度は、10モル%未満のメタンを含有する未反応ガスが引き抜かれるように調整されることが好ましい。
【0047】
一方、未反応ガスがエネルギーとして用いられることになる場合、メタンのモル濃度は、所望される熱含量を実現するのに充分に高くあるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、未反応ガスは、25体積%以上のメタンを含有していてもよい。未反応ガスは、代謝活動から産生された二酸化炭素も含有するが、これは除去が必要であっても又は必要でなくてもよい。いずれの場合でも、メタン含有ガスの反応ゾーンへの供給速度は、未反応ガス中におけるメタンのモル濃度が実質的に安定となるように調整される。未反応ガスは、反応ゾーンから熱を除去する働きをし、水性培地中に溶解している可能性のある所望されないガスをストリッピング除去する働きをし得ることは理解されるべきである。所望により、メタン含有ガスの供給速度は、所望される熱除去又は所望されない溶解ガスのストリッピングに基づいて調整することが可能である。
【0048】
さらに、水性培地は、未反応ガス流が、発電又は別の生物若しくは化学プロセスのための原料などの他の目的に用いられることになる場合は特に、メタン含有ガスから、そこに含有される他のガス成分を除去するために用いることができる。有害成分の除去は、未反応ガス流を、そのような更なる使用に直接適するものとし得るか、又は事前処理の量を低減し得る。除去された成分は、次に、水性培地から回収することができる。水性培地によって除去可能な成分としては、限定されないが、硫化水素及びジメチルシロキサンが挙げられ、これらはいずれも、燃焼及び多くの触媒化学プロセスのための原料において有害であり得る。例えば、メタン含有フィードは硫化水素を含有しているが、水性培地は、硫化水素の少なくとも一部を吸収して、硫化水素の濃度が提言された未反応ガス流を提供する。
【0049】
気相からブロスへのメタン及び酸素の物質移動速度は、各ガスに対する分圧駆動力に依存するであろう。メタン及び酸素の各々は水溶性が限られており、ブロス中の二酸化炭素の質量を低下させることは、メタン及び酸素のブロスへの物質移動に対する駆動力を高める点で有益である。本発明によれば、上記方法の継続時間のうちの少なくとも一区分にわたって、ブロスの一部が、反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、ストリッピングガスと接触させられることにより溶解二酸化炭素が除去され、反応ゾーンへ再循環させるための貧二酸化炭素水性培地又はブロスが提供される。いくつかの場合では、この連続引き抜き及びストリッピングは、上記方法の全継続時間にわたって行われ、他の場合では、それは、ブロス中のメタン資化細菌の密度が、1リットルあたり少なくとも約2グラム(例えば、少なくとも約5グラム、多くの場合は少なくとも約10グラム)である場合に行われる。メタン資化細菌は、引き抜かれたブロスと一緒に運ばれてよいか、又はストリッピング単位操作へ送られる前にブロスから除去されてよい。
【0050】
ブロスの引き抜き速度は、多くの場合、反応ゾーンでの代謝活動によって産生された二酸化炭素の少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、いくつかの場合では約50~75%に相当する量の二酸化炭素を除去するのに充分な速度である。メタン含有フィードがバイオガスである場合などのいくつかの場合では、メタン含有フィードが二酸化炭素を含有し得ることは理解されるべきである。
【0051】
ストリッピング中に除去される二酸化炭素の部分の算出は、代謝活動によって産生される二酸化炭素、並びに反応ゾーンに基質及び他の栄養素と共に供給される二酸化炭素を考慮して、質量収支(mass balance)に基づいて行われる。算出のために、代謝活動によって産生される二酸化炭素の質量は、メタン及び酸素含有CI化合物の両方が二酸化炭素の産生をもたらし得るという仮定に基づいている。メタン及び酸素含有CI化合物の一部は、細胞形成、PHA産生、及び代謝によって産生される他の成分に使用され得る。
【0052】
本発明の好ましい態様では、引き抜かれたブロス中のメタンは、ストリッピング前に充分な更なる代謝活動を受けることによって、ストリッピングから得られる二酸化炭素含有ガスは、20体積ppm未満、好ましくは10体積ppm未満のメタンを含む。本発明のこの好ましい態様では、酸素の供給は、引き抜かれたブロスが代謝活動を支援するのに充分な溶解酸素を有するように充分であるべきである。
【0053】
本発明の方法において、適切ないかなるストリッピングガスが用いられてもよい。空気は、ストリッピングを行うために容易に入手可能なガスである。ストリッピングを受けているブロス中に含有されている場合のストリッピングに用いられるストリッピングガスは、メタン資化細菌に有害な影響を与えない適切ないかなる温度であってもよく、例えば、約10℃~50℃であり、例えば20℃~45℃である。多くの場合において、水の気化による冷却を利用するために、ストリッピングガスの相対湿度を50%未満、より好ましくは約25%未満に維持することが好ましい。
【0054】
ストリッピングは、引き抜かれたブロス中の二酸化炭素の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも約65%、多くの場合は少なくとも約75%がストリッピングされる条件下で行われることが好ましい。より高い又はより低い温度が用いられてもよいが、ストリッピングは、典型的には、引き抜かれたブロスの温度で行われる。ストリッピング中、二酸化炭素の気化及び水の気化を主因として、ブロスの温度は低下する。多くの場合、上記方法の少なくとも一部の期間において、特に冷却の必要性がピークである時間帯において、ストリッピングから得られる貧二酸化炭素ブロスは、反応ゾーン中のブロスの全体温度よりも少なくとも約0.25℃、場合によっては少なくとも約0.75℃低い。
【0055】
1つのモードでは、引き抜かれたブロスのすべて又は一部は、溶解二酸化炭素濃度がより高い反応ゾーン下側部分に由来する。所望により、除去地点での水性培地のヘッドによって少なくとも部分的に定められる圧力である引き抜かれたブロスは、ストリッピングに掛けられる前に二酸化炭素の一部を除去するために、より低い圧力(例えば、周囲圧力)を含むフラッシング条件に掛けることも可能である。
【0056】
上記で述べたように、所望により、ブロス中のメタン資化細菌の集団が、ガスからブロスへのメタンの物質移動が集団の増殖若しくはPHAの産生を維持するのに適切ではなくなる密度に到達するまで、又は他の冷却ユニット操作が反応ゾーンの温度上昇を防止するのに充分ではなくなるまでは、ストリッピングを用いる必要はない。別の選択肢として、ストリッピングのためのブロス引き抜き速度は、集団の増殖と共に変動してもよい。メタン資化細菌の集団が所望の最大密度に近づくにつれて、二酸化炭素ストリッピングのためにブロスが引き抜かれる速度は、多くの場合、1時間あたり、反応ゾーン中のブロスの体積の約0.5~10倍、例えば1~5倍の範囲内である。
【0057】
ブロスは、メタン資化細菌のための栄養素を含有する。上記方法は、まず、メタン資化細菌の集団を、原料及び栄養素のすべてが細胞の高分子成分を作り出すのに必要とされる比で存在する、平衡細胞増殖相と称されることもある状態で増加させることによって進められる。言い換えると、どのフィードストック又は栄養素も、タンパク質、複雑な炭水化物ポリマー、脂肪、又は核酸の合成を制限しない。次に、メタン資化細菌は、制限栄養素条件、すなわち、酸素又は増殖のための高分子の1又は複数を作り出すのに必要な少なくとも1つの栄養素(メタン又は酸素含有CI化合物以外)が必要な比率で存在しない非平衡細胞増殖相に供される。これらの条件下では、ポリマーの蓄積が加速される。これらのポリマーとしては、1若しくは複数のPHAなどの細胞内貯蔵産物、又は細胞外ポリサッカリドなどの分泌産物が挙げられる。通常は、制限栄養素条件は、平衡細胞増殖を支援する窒素化合物の供給を不充分な量とすることによって実現される。非平衡細胞増殖を実現するために制限又は調整され得る他の栄養素としては、限定されないが、カルシウム、リン、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、ホウ素、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、硫黄、モリブデン、マンガン、及びカリウムが挙げられる。
【0058】
ブロスは、平衡細胞増殖相中では、微生物の集団が素早く増殖するのに適する条件下に維持され、非平衡細胞増殖相中では、PHAの産生に適する条件下に維持される。これらの条件には、メタン資化細菌に適する温度が含まれ、通常は中温であり、例えば、約25℃~45℃であり、最も多くの場合は約28℃~42℃である。
【0059】
平衡細胞増殖条件は、ブロス中に所望のメタン資化細菌密度を実現するのに充分な時間にわたって維持される。ほとんどの場合では、メタン資化細菌は、1リットルあたり少なくとも約8グラム、好ましくは少なくとも約10グラムの密度(乾燥細胞基準で算出)をブロス中に実現する。高い密度が所望されるが、実用上の制限が存在する。例えば、ブロス中の微生物の集団は、平衡細胞増殖条件中、集団の更なる増殖を実現するためにはブロスに提供され得るメタン及び酸素が不充分であるレベルまで増加することができる(基質拡散制限条件)。また、代謝プロセスは発熱性であり、したがって、反応ゾーンから熱を除去する能力も制限となり得る。したがって、平衡細胞増殖相の終了時のメタン資化細菌密度は、通常、ブロス中、1リットルあたり少なくとも約8グラム、例えば少なくとも約10グラムであり、ロス中、1リットルあたり60又は80グラム以上の高さであり得る。
【0060】
本発明の方法の利点は、気相からブロスへのメタン及び酸素の高い物質移動を実現可能であり、したがって、ブロス中の高いメタン資化細菌密度で基質拡散条件を維持可能であることに起因して、平衡細胞増殖条件の終了時に高いメタン資化細菌密度を得るためにオペレータに与えられる柔軟性である。したがって、好ましい実施形態では、少なくとも、基質拡散制限条件を維持することができずに、ほぼ到達されるまで、平衡細胞増殖条件が維持される。したがって、ブロス中のメタン資化細菌密度は、1リットルあたり、場合によっては、約20~80グラム以上の範囲内であり、多くの場合、20~60グラムの範囲内である(乾燥細胞基準で算出)。
【0061】
本発明の1つの態様では、酸素含有CI化合物が、メタンフィードを補うためにブロスに導入される。酸素含有CI化合物は、再生可能資源から誘導されることが好ましい。酸素含有CI化合物は、ブロスの水性培地に可溶性であり、したがって、気相と水性培地との間の物質移動の制限が、酸素含有CI化合物をブロスに導入することが可能な速度に影響を与えることはない。酸素含有CI化合物を用いる場合、メタン拡散制限条件下において、微生物の集団の更なる増殖が得ることが可能である。酸素含有CI化合物は、平衡細胞増殖相及び非平衡細胞増殖相のいずれか又は両方の最中のいずれの時点で添加されてもよい。酸素含有CI化合物は、連続的に又は断続的に添加することが可能であり、上記方法が、メタン拡散条件とメタン拡散制限条件との間の移行期に近づいた時点でのみ、添加が開始されてもよい。酸素含有CI化合物は、典型的には、メタン資化細菌によって素早く代謝消費されることから、発酵槽全体にわたる良好な分散を実現することが好ましく、さらには、酸素含有CI化合物を、発酵法の全体又は一部の期間において、断続的に又は連続的に添加することも好ましい。酸素含有CI化合物は、非平衡細胞増殖相中に用いられることが好ましい。
【0062】
ブロスに供給される酸素含有CI化合物の量は、細胞増殖及びメタンのPHAへの変換の望ましい向上をなお得ることが可能である限り、広く変更されてよい。一般的に、酸素含有CI化合物は、発酵から得られる所望の細胞質量の1キログラムあたり、約10~200グラム、例えば30~150グラム、場合によっては約50~110グラムである量で供給される。ブロス中の酸素含有CI化合物の濃度は、メタン資化細菌に有害な影響を与える濃度よりも低く維持されるべきである。結果として、所望の量の酸素含有CI化合物を供給するが、メタン資化細菌に有害な影響を与える濃度よりも低い濃度を維持することに相当する速度で、酸素含有CI化合物をブロスに連続的に又は断続的に添加することが好ましい。
【0063】
例えば、本発明を限定するものではないが、メタン資化細菌の集団の増殖及びPHAの産生に対する酸素含有CI化合物の効果を示すために、比較実験が行われる。実験のために、2つの発酵槽が用いられ、酸素含有CI化合物(メタノール)含有量以外は発酵中の条件を同じに維持することを意図して、並列で操作される。発酵槽は、撹拌器付きの実験室スケール(4リットル)であり、ブロスからの二酸化炭素のストリッピングを含む本発明の態様は用いない。むしろ、この実験は、発酵におけるメタノールの効果を示すことを意図している。発酵は、約30℃及び約pH7で(増殖相の期間においては水酸化アンモニウム、PHA産生相の期間においては水酸化カリウムというように、塩基を添加することによって維持)、約50時間にわたって行われる。メタン資化細菌は、M.パルブスOBBP(M. parvus OBBP)を含有する混合物である。栄養素を含有する従来の水性培地が用いられる(Peija, et al., Poly-3-hydroxybutyrate metabolism in the Type II methanotroph Methylocystis parvus OBBP. Appl. Environ. Microbiol. 77 (17), 6012-6019に記載の硝酸塩培地Wl)。非平衡細胞増殖相で引き抜かれる栄養素は、窒素である。
【0064】
実施例は、以下の通りである。メタノールが存在する場合、メタンフィードの非存在下では、PHA(ポリ-3-ヒドロキシブチレート)は実質的に産生されない。メタノールを添加すると、ブロス中にメタノールが存在しないコントロールと比較して、メタン資化細菌集団の増殖の速度が増加する。メタノールでの実験では、所定の細胞集団及びPHA濃度を得るために消費される酸素は少なくなる。メタノール濃度を高めると、PHAの濃度及び細胞集団が増加する。すべての実験において、メタノールは完全に消費される。表Iを参照されたい。
【表2】
【0065】
平衡細胞増殖相の継続時間は、ブロス中の接種物の濃度、平衡細胞増殖相の終了時のメタン資化細菌の所望の密度、及びメタン資化細菌の繁殖の速度に依存するであろう。典型的には、非平衡細胞増殖相は、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約5時間、場合によっては少なくとも約8時間、例えば約5~48時間、いくつかの場合では約5~24時間である。
【0066】
非平衡細胞増殖相の終了時、PHAを回収するために、メタン資化細菌を収穫することができる。メタン資化細菌からPHAを回収するための適切ないかなるプロセスを用いることができる。単細胞タンパク質が所望の最終生成物である場合、非平衡細胞増殖相の終了時に、メタン資化細菌が収穫される。典型的には、細胞を含有する固形分が分離され、脱水される。固形分の乾燥は、通常、単細胞タンパク質生成物のタンパク質含有量を安定化するために行われる。
【0067】
本発明の方法は、連続的であっても、セミバッチであっても、又はバッチであってもよい。連続法の場合、流れ順に少なくとも2つのバイオリアクターが用いられることが好ましく、第一のバイオリアクターは、メタン資化細菌の集団の増殖のために用いられ、流れ順の第二のバイオリアクターは、非平衡細胞増殖でPHAを生産するために用いられる。バッチプロセスでは、1又は複数のバイオリアクターを用いて、各々が、平衡細胞増殖条件と非平衡細胞増殖条件との間でサイクルされてよいか、又は別の選択肢として、1又は複数のバイオリアクターが、平衡細胞増殖専用とされてよく、メタン資化細菌を含有するブロスが、非平衡細胞増殖専用とされる別のバイオリアクターに送られてもよい。後者は、一般的に、「母」及び「娘」バイオリアクターシステムと称される。好ましいセミバッチプロセスでは、1又は複数の母バイオリアクターが、メタン資化細菌の集団を連続的に増殖させる。ブロスの一部が、母バイオリアクターから断続的に引き抜かれ、複数の娘バイオリアクターのうちの1つに送られる。母リアクターから引き抜かれるブロスの上記一部は、非平衡細胞増殖を開始するために求められる密度をメタン資化細菌の集団が素早く実現するために、充分なブロス部分を母リアクター中に残しておくことが好ましい。例えば、引き抜かれる部分は、母バイオリアクター中に約25体積%のブロスを残してよく、これは、非平衡細胞増殖のために集団を約2回、2倍増するのに求められている密度を実現する結果となる。多くの場合、母バイオリアクター中に残されるブロスの体積は、少なくとも約10体積%、例えば約20~50体積%である。半連続法における母バイオリアクター1つあたりの娘バイオリアクターの数は、典型的には、2~約10個である。したがって、娘バイオリアクターは、PHA含有生成物の回収のための比較的連続的な細胞供給を提供することもできる。
【0068】
各バイオリアクターは、適切ないかなる構成のものであってもよく、限定されないが、ディープタンクバイオリアクター(例えば、ディープタンクバブルカラムバイオリアクター);ジェットループバイオリアクター;撹拌器付きタンクバイオリアクター;トリクルベッドバイオリアクター;バイオフィルムバイオリアクター;移動層バイオリアクター;膜バイオリアクター、及びバイプバイオリアクター(限定されないがスタティックミキサーバイオリアクターを含む)が挙げられる。所望により、平衡細胞増殖及び非平衡細胞増殖のために、2つ以上のバイオリアクターを用いてもよく、これらのバイオリアクターは、類似の設計のものでも、又は異なる設計のものでもよい。例えば、撹拌器付きタンクバイオリアクター、及びそれに続くディープタンクバイオリアクターであってよい。メタン含有ガス中のメタンの高変換率が求められる場合、ディープタンクバイオリアクターが好ましい。ディープタンクバイオリアクターは、少なくとも約5メートル、好ましくは少なくとも約10メートルの深さを特徴とし、バイオリアクター中に含有されるブロスの深さ全体にわたって実質的に不均一なガス組成、及びバイオリアクター全体にわたって実質的に均一なブロスの組成を提供するように操作され得る。ディープタンクバブルカラムバイオリアクターは、メタン含有ガス及び酸素含有ガスが下部に小気泡として導入されて混合を促進するディープタンクバイオリアクターである。メタン含有ガスフィード及び酸素含有ガスフィードの各々は、0.01~0.5mm、好ましくは0.02~0.3mmの範囲内の直径を有するマイクロバブルの形態で導入されることが好ましい。駆動流体を用いたエジェクタ又はインジェクタを使用することが、マイクロバブルの形成には好ましい。多くの場合において、メタン資化細菌は、エジェクタ又はインジェクタを通される際にほとんど損傷を受けることがなく、したがって、これらの場合では、貧二酸化炭素ブロスをバイオリアクターに再導入する前にメタン資化細菌を除去する必要がない。
【0069】
引き抜かれたブロスから二酸化炭素をストリッピングするために、適切ないかなる装置を用いることができる。そのような装置の例としては、噴霧塔、バブルカラム、及び充填若しくは構造化(structured)カラム、又は脱気膜が挙げられる。圧力低下が低いことから、充填若しくは構造化カラムが好ましい。
【0070】
引き抜かれたブロスからの二酸化炭素のストリッピングは、発熱性代謝活動からの熱の除去を生じるが、典型的には、平衡細胞増殖相及び非平衡細胞増殖相の期間における過度な発熱を防止するためには、更なる冷却能力が必要とされる。多くの場合、バイオリアクター中の細胞の密度が所望の最大濃度に近づく時点では、二酸化炭素ストリッピング中における引き抜かれたブロスの冷却は、バイオリアクターを等温条件に維持するために必要な熱除去の約10~50%、例えば約15~40%の除去を成す。等温条件を維持するために必要な補助的熱移動ユニット操作は、直接及び間接熱交換の1又は複数であってよい。直接熱交換は、例えば連続法において、バイオリアクターから連続的に除去されるブロスに置き換えるための冷却補充水の連続添加によって提供されてよい。
【0071】
本発明及びその応用の全体的な理解は、図面を参照することによって容易となるであろう。図面は、本発明の広い態様を限定するものではない。図面は、本発明の方法を実践するのに適する、全体として100と称する装置の概略図である。この図面では、ポンプ、コンプレッサ、バルブ、機器、並びにその配置及びその操作が化学工学の当業者に公知である他のデバイスなどの主要ではない装置は省略されている。この図面はまた、補助ユニット操作も省略している。この図面の装置による方法及び操作は、ポリヒドロキシブチレートの生産のために嫌気性消化装置のバイオガス及び空気を用い、二酸化炭素のストリッピングのために空気を用いるという文脈で記載される。上記方法は、他のメタン含有ガス、酸素含有ガス、及びストリッピングガスの使用に、並びに他のPHAポリマー及び単細胞タンパク質生成物の生産に容易に適合可能である。
【0072】
バイオリアクター102は、ディープタンクバルブカラムリアクターであり、ブロス104を含む。この図示した装置では、バイオリアクター102は、平衡細胞増殖及び非平衡細胞増殖の両方に用いられる。ブロス104の上には、未反応ガスをバイオリアクターから除去するためのヘッドスペース106及び排気ライン108が存在する。未反応ガスは、熱を発生されるために用いられ得るか、又は排気へ送られ得る。
【0073】
バイオリアクター102中のブロスの一部は、ライン110を介してストリッパー112へ送られる。ライン110では、引き抜かれたブロス中に溶解しているメタンが、メタン資化細菌によって継続的に代謝されており、それによって、ストリッパー112に送られる引き抜かれたブロスは、溶解メタンを、含有していたとしても少ししか含有していない。示されるように、ストリッパー112は、構造化パッキング(structured packing)114を含有する。ライン110は、構造化パッキングの底部でライン118によって供給される、本考察上では空気であるストリッピングガスと接触させるために、構造化パッキング114の上部にブロスを分散させる。二酸化炭素含有ストリッピングガスは、ライン116を介してストリッパー112から排出される。二酸化炭素欠乏ブロスの一部は、ストリッパー112の底部に集まり、ライン120を介して間接熱交換器122に送られる。ライン124は、間接熱交換器122からブロスを引き抜く。二酸化炭素欠乏ブロスの別の一部は、ライン126を介して引き抜かれる。熱交換器122に送られる二酸化炭素欠乏ブロスの上記一部及びライン126に送られる二酸化炭素欠乏ブロスの上記一部の相対量は、上記一部の所望されるバルク温度に依存する。例えば、平衡細胞増殖の初期段階中では、ストリッパー112で行われる冷却は、二酸化炭素欠乏ブロスのすべてを熱交換器122での補助冷却に掛けることは必要としないであろう。二酸化炭素欠乏ブロスの一部をバイパスに通すことによって、バイオリアクター102に戻されるブロスの合わせたバルク温度が、バイオリアクター102のブロスの温度を一定温度に維持するのに適する結果となる。平衡細胞増殖の後期では、二酸化炭素欠乏ブロスの実質的にすべてが熱交換器122に送られて、バイオリアクター102の等温条件が維持される。別の選択肢として、上記方法の初期部分中では、ライン116からの二酸化炭素含有ストリッピングガスの一部が、ライン118によって供給されるストリッピングガスと混合されて、ブロス中の二酸化炭素の気化の駆動力が低下される。気化する二酸化炭素が減少するために、冷却が弱められる。
【0074】
熱交換器122は、適切ないかなる設計のものであってもよい。本発明は、熱交換器がヒートポンプと組み合わされることも考慮するものであり、この場合、ヒートポンプは、この方法又は別の方法で用いるための高温流体を供給する。いくつかの場合では、ヒートポンプからの加熱された流体は、ストリッピングガス(例えば、空気)との間接熱交換に用いられて、その湿度を低下させ、ストリッピング中により多くの水を蒸発させ、したがって、より多くの蒸発冷却を発生させてよい。別の選択肢として、加熱された流体は、細胞からPHAを回収するために必要な熱エネルギーを低減するために用いられてもよい。
【0075】
以降で述べるように、再循環ブロスは、メタン含有ガス及び酸素含有ガスをバイオリアクター102へ導入するための駆動流体として用いられる。ライン128は、駆動流体としての必要性に応じて、ライン126及び124の各々の循環ブロスの流量のバランスを保つ働きをする。
【0076】
ライン124で再循環されるブロスは、ポンプ130に送られ、続いてライン132を通ってバイオリアクター102に戻される。ライン128のブロスは、ポンプ136に、続いてライン138に送られて、バイオリアクター102に戻される。メタン含有ガス及び酸素含有ガスは、都合の良いいかなる方法でバイオリアクター102に導入されてもよい。インジェクタ(気-液エジェクタ)の使用は、非常に微細な気泡を比較的低いエネルギー消費で発生させることができるという点で、特に魅力的である。インジェクタは、ジェットミキサー/エアレータ又はスロットインジェクタであってよい。スロットインジェクタが好ましく、その1つの形態は、米国特許第4,162,970号に開示されている。これらのインジェクタは、駆動液を用いて操作される。インジェクタ、特にスロットインジェクタは、広範囲にわたる液体及び気体の流量での操作が可能であり、したがって、ガス供給能における大きいターンダウンが可能である。インジェクタは、ジェットインジェクタの場合、断面寸法として少なくとも約1cm、多くの場合約1.5~5cm、例えば2~4cmのノズルを有することを特徴とし、スロットインジェクタの場合は、これよりも小さい断面寸法を特徴とする。インジェクタによって発生される気泡サイズは、いくつかある因子の中でも、インジェクタを通る液体流速、及びインジェクタを通る気相の液相に対する比率、及びブロス自体の特性(その静止時の液体深さを含むがこれに限定されない)によって影響される。いくつかの場合では、あまり密ではない気液分散体を形成するマイクロバブル、及びマイクロバブルを発生させるために用いられるいずれの駆動流体も、バイオリアクター中での液体の混合を促進し得る。インジェクタの断面寸法が大きくなると、マイクロバブルを発生させることができることに加えて、いくつかの有益性が提供される。第一には、インジェクタは、マイクロバブルを発生させるように設計されたスパージャの場合と同様に、駆動液としてブロスが用いられることから、付着汚れを起こしにくい。第二には、所定のサイズのマイクロバブルを得るのに必要とされるエネルギーが、多くの場合、マイクロバブルスパージャを用いて同じサイズのマイクロバブルを形成するのに必要とされるエネルギーよりも低い。第三には、高いターンダウン比を実現することができる。そして第四には、マイクロバブルサイズを、広い範囲にわたって容易に変動させることができる。酸素含有ガスは、ライン134を介してインジェクタに供給され、メタンは、ライン140を介してインジェクタに供給される。
【0077】
栄養素及び補充水は、ライン142を介してバイオリアクター102のブロス104に供給される。
【0078】
限定としてではなく例示として、操作時のバイオリアクター102は、約10mの深さまでブロスで満たされ、メタン資化細菌が接種された6万リットルの発酵槽である。接種前にバイオリアクター102が滅菌されることは必須ではない。約23モル%のメタンを含有するバイオガスが、毎分1850リットルの速度でバイオリアクター102に送られる。メタン資化細菌の集団が増加するに従って、既に最大体積にまでなっていない場合には、追加の水及び/又は栄養素、並びに他の添加剤が、ライン142を介して、連続的に又は断続的に添加されて、メタン資化細菌の集団の増加と比較的比例して、ブロスの体積が増加され得る。メタン含有ガス及び酸素含有ガスの流れは、ブロスへの接種の時点で、又は接種の直前に開始される。ガスがインジェクタを用いて導入される場合、ブロスの一部をバイオリアクター102から引き抜いて、ポンプ130及び136の各々へ直接又は間接的に送って、駆動流体(図示せず)を供給することが通常は好ましい。
【0079】
メタン資化細菌の集団が、液相へのメタン及び酸素の物質移動を促進するためにブロスから二酸化炭素を除去することが所望されるポイントまで増加すると、毎分約4500リットルのブロスが、ライン110を介してストリッパー112に送られる。約135000リットル(標準温度及び圧力)の空気が、ライン118を介してストリッパー112に送られ、ブロス中に溶解した二酸化炭素の約99%が除去される。上記で述べたように、バイオリアクターの温度に応じて、二酸化炭素欠乏ブロスは、ライン120、126の一方又は両方を介して取り出されて、バイオリアクター102に再循環される。ブロスからの二酸化炭素のストリッピングを行わない方法と比較すると、冷却必要性のピーク時において、蒸発冷却の必要性が約47%低減し、ブロスへのメタン物質移動のための駆動力が、約35%増加する。
【0080】
バイオリアクター102のブロス中のメタン資化細菌の密度が所望のレベルに到達すると、ライン142を介してバイオリアクター102に供給される栄養素の組成を変化させることによって、バイオリアクター102の操作が非平衡細胞増殖に切り替えられる。非平衡細胞増殖相の終了時に、メタン資化細菌が収穫され、PHBが回収される。
<1>
メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法であって、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを含む基質ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、前記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、前記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が制限されていることにより、前記メタン資化細菌の集団の増殖を阻害する栄養素制限条件を作り出し、前記メタン資化細菌によるポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の前記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの基質ガス含有ガスを工程(a)及び工程(b)の各々の前記反応ゾーンに送る速度が、基質拡散条件であり;
ii.工程(a)及び工程(b)のうちの少なくとも一方において、前記水性培地の一部が、前記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、ストリッピングガスと接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.前記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる、
前記方法。
<2>
前記基質制限ガスが、メタン含有ガスを含む、<1>に記載の方法。
<3>
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方においてメタン含有ガスを前記反応ゾーンに送る速度が、未反応ガス中におけるメタンのモル濃度が実質的に安定となるように調整される、<2>に記載の方法。
<4>
メタン含有フィードが、硫化水素を含有し、
前記水性培地が、前記硫化水素の少なくとも一部を吸収して、硫化水素の濃度が低減した未反応ガス流を提供する、<1>に記載の方法。
<5>
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンが、前記反応ゾーンの高さ全体にわたる実質的に均一な液体組成及び実質的に不均一なガス組成を特徴とするディープタンクバブルカラム反応ゾーンであり、前記基質含有ガスの少なくとも一部が、前記反応ゾーンの下側部分に導入される、<1>に記載の方法。
<6>
工程(ii)におけるブロスの引き抜き速度が、前記反応ゾーンにおける代謝活動によって産生された二酸化炭素の少なくとも約40%に相当する量の二酸化炭素を除去するのに充分である、<1>に記載の方法。
<7>
工程(ii)におけるブロスの引き抜き速度が、前記反応ゾーンにおける代謝活動によって産生された二酸化炭素の50~75%を除去するのに充分である、<6>に記載の方法。
<8>
メタン含有ガスを前記反応ゾーンに送る速度がメタン拡散条件下ではなくなった場合に、少なくとも1つの酸素含有CI化合物が、工程(a)の前記反応ゾーンに添加される、<2>に記載の方法。
<9>
工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる前記貧二酸化炭素水性培地の一部が、冷却される、<1>に記載の方法。
<10>
工程(a)及び工程(b)が、1つの反応容器中で順に行われる、<1>に記載の方法。
<11>
工程(a)及び工程(b)が、それぞれ別々の反応容器中で行われる、<1>に記載の方法。
<12>
工程(a)の前記反応ゾーン中の前記水性培地の一部が、工程(b)の前記反応ゾーンに送られる、<11>に記載の方法。
<13>
工程(a)の各反応ゾーンに対して工程(b)の反応ゾーンが少なくとも2つ提供され、工程(a)の前記水性培地の一部が、所定の時点で工程(b)の前記反応ゾーンのうち少なくとも1つに送られて、セミバッチプロセスが実施される、<11>に記載の方法。
<14>
所定の時点で工程(b)の前記反応ゾーンのうちの1つに送られる前記一部が、工程(a)の前記反応ゾーン中の前記水性培地の25~95体積%であり、追加の水性培地が、工程(a)の前記反応ゾーンに提供されて、メタン資化細菌の前記集団を増殖させる、<13>に記載の方法。
<15>
前記メタン含有ガスが、バイオガスを含む、<1>に記載の方法。
<16>
前記メタン含有ガスが、嫌気性消化ガスを含む、<15>に記載の方法。
<17>
前記メタン含有ガスが、埋立地ガス及び別の発酵プロセスから直接又は間接的に得られたテールガスのうちの少なくとも1つを含む、<15>に記載の方法。
<18>
前記貧二酸化炭素水性培地をさらに冷却し、かつ冷却流体を加熱するために、前記貧二酸化炭素水性培地に、前記冷却流体による間接熱交換が施される、<1>に記載の方法。
<19>
前記間接熱交換により加熱された冷却流体が、ヒートポンプに送られて、過熱流体を提供する、<18>に記載の方法。
<20>
前記過熱流体が、前記ストリッピングガスを加熱するために用いられる、<19>に記載の方法。
<21>
前記過熱流体が、メタン資化細菌からのポリヒドロキシアルカノエートの回収に用いられる、<19>に記載の方法。
<22>
水性培地が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方における前記反応ゾーンの下側部分から引き抜かれ、水性培地中の二酸化炭素の一部分を除去するためにフラッシング条件に掛けられ、続いてストリッピングガスと接触させられる、<1>に記載の方法。
<23>
メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法であって、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、前記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、前記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地には、前記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が実質的に存在せず、これによりポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の前記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、メタノール及びギ酸若しくはその水溶性塩のうちの少なくとも1つの酸素含有CI化合物が、工程(a)及び工程(b)の少なくとも一方における前記水性培地に供給される、
前記方法。
<24>
メタンをポリヒドロキシアルカノエート含有生成物に生物変換するための高生産性方法であって、
(a)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを含む基質ガスを反応ゾーンに送って、メタン資化細菌の集団を有する水性培地と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地は、前記メタン資化細菌の集団の増殖のための栄養素を含有することにより、メタン資化細菌富化水性培地となり、前記メタン資化細菌の集団の増殖により、二酸化炭素、水、及び熱が共産生される、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;
(b)メタン含有ガス及び酸素含有ガスを反応ゾーンに送って、前記メタン資化細菌富化水性培地の少なくとも一部と発酵条件下で接触させること、
ここで、前記培地には、前記メタン資化細菌の集団の増殖に必要な少なくとも1つの栄養素が実質的に存在せず、これによりポリヒドロキシアルカノエートの産生と、二酸化炭素、水、及び熱の共産生とを引き起こす、並びに
前記反応ゾーンから未反応ガスを引き抜くこと;並びに
(c)工程(b)の前記水性培地からポリヒドロキシアルカノエート含有メタン資化細菌を分離すること、
を含み、
ここで、工程(a)及び工程(b)の各々の期間の少なくとも一部について:
i.少なくとも1つの基質ガス含有ガスを工程(a)及び工程(b)の各々の前記反応ゾーンに送る速度が、基質拡散条件であり;
ii.工程(a)及び工程(b)の少なくとも一方において、前記水性培地の一部が、前記反応ゾーンから連続的に引き抜かれ、半透過性膜と接触させられることにより二酸化炭素が除去されて、貧二酸化炭素水性培地が提供され;並びに
iii.前記貧二酸化炭素水性培地の少なくとも一部が、工程(a)及び工程(b)のうち少なくとも一方の前記反応ゾーンに送られる、
前記方法。