(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20230110BHJP
F16F 9/24 20060101ALI20230110BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20230110BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20230110BHJP
E05F 3/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F16F9/32 L
F16F9/24
F16F9/34
E05F5/02 E
E05F3/04
(21)【出願番号】P 2020521478
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2018066770
(87)【国際公開番号】W WO2019002130
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】102017114475.7
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520000227
【氏名又は名称】ドルック- ウント シュプリッツグスヴェルク ヘティッヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, コンラート
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02113347(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第02546443(EP,A1)
【文献】特表2009-528490(JP,A)
【文献】実開昭56-088866(JP,U)
【文献】特開2010-265990(JP,A)
【文献】特開平02-102939(JP,A)
【文献】特開2003-193740(JP,A)
【文献】特表2014-510214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
E05F 3/04- 3/12
E05F 5/02- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具または家庭用器具の取付け具用のダンパ(1)であって、
ピストンロッド(3)に接続されたピストンが線形に変位可能に案内されるハウジング(2)を有し、ピストンはハウジング(2)の内部空間(20)を2つのチャンバに分割し、2つのチャンバを互いに接続する少なくとも1つの流路(9)がピストン上またはピストン内に形成され、ピストンが第1の方向に移動するときに、高減衰力を生成するために減衰位置で少なくとも1つの流路(9)の断面積を小さく保つスロットル要素(6)が提供され、ピストンが第1の方向と反対の第2の方向に移動すると、スロットル要素は少なくとも1つの流路(9)の断面積を増加させて、スロットル要素(6)の移動による減衰力が減少するダンパ(1)において、
少なくとも1つのばね要素(72)によって、スロットル要素(6)は減衰位置に予め張力をかけられ、ピストンはばね(8)によってピストンロッド(3)が延びた位置に予め張力をかけられ、
スロットル要素(6)は、ピストンリングとして構成され、該スロットル要素(6)は、ホルダ(30)とばね要素(72)の間にクランプする方法で固定され、
ピストンロッド(3)に固定された固定要素(7)は一体に形成されたばね要素(72)を有し、該ばね要素(72)によって、ピストンロッド(3)に接続されたホルダ(30)は前記スロットル要素(6)を介して予め張力をかけら
れ、
固定要素(7)が設けられて、該固定要素はピン(70)を用いてスリーブ形状のピストンロッド(3)に固定され、クランプ力によって前記スロットル要素(6)はピストンロッド(3)に接続されたホルダ(30)に張力をかける、ダンパ(1)。
【請求項2】
スロットル要素(6)と少なくとも1つのばね要素(72)は、異なる材料から作られる、請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
家具または家庭用器具の取付け具用のダンパ(1)であって、
ピストンロッド(3)に接続されたピストンが線形に変位可能に案内されるハウジング(2)を有し、ピストンはハウジング(2)の内部空間(20)を2つのチャンバに分割し、2つのチャンバを互いに接続する少なくとも1つの流路(9)がピストン上またはピストン内に形成され、ピストンが第1の方向に移動するときに、高減衰力を生成するために減衰位置で少なくとも1つの流路(9)の断面積を小さく保つスロットル要素(6)が提供され、ピストンが第1の方向と反対の第2の方向に移動すると、スロットル要素は少なくとも1つの流路(9)の断面積を増加させて、スロットル要素(6)の移動による減衰力が減少するダンパ(1)において、
少なくとも1つのばね要素(72)によって、スロットル要素(6)は減衰位置に予め張力をかけられ、ピストンはばね(8)によってピストンロッド(3)が延びた位置に予め張力をかけられ、
スロットル要素(6)は、ピストンリングとして構成され、該スロットル要素(6)は、ホルダ(30)とばね要素(72)の間にクランプする方法で固定され、
ピストンロッド(3)に固定された固定要素(7)は一体に形成されたばね要素(72)を有し、該ばね要素(72)によって、ピストンロッド(3)に接続されたホルダ(30)は前記スロットル要素(6)を介して予め張力をかけられ、
ハウジング(2)はポット形状であり、開口部に隣接した領域にてシール(4)を有し、該シールはピストンロッド(3)が通る内側開口部(40)を有し、
シール(4)はハウジング(2)上に変位可能に取り付けられて、ピストンロッド(3)の挿入又は引出しによる容積を補償し、
シール(4)はカバー(5)を介してハウジング(2)に保持され、
カバー(5)は、ハウジング(2)に固定された外側部(50)とシール(4)上に置かれた内側部(51)を有し、外側部(50)は少なくとも1つのばねアーム(52)を介して内側部(51)に接続される、ダンパ。
【請求項4】
変位可能なシール(4)を受け入れる少なくとも1つの段部(21、22)及び/又はカバー(5)がベース(23)の反対側のポット形のハウジング(2)に付与された、請求項
3に記載のダンパ。
【請求項5】
ピストンロッド(3)の最大ストロークは、3mmから5mmの間である、請求項1乃至
4の何れかに記載のダンパ。
【請求項6】
スロットル要素(6)に流路(61)が設けられ、半径方向から見て流路は内側に第1のオリフィス(62)を有し、外側に第2のオリフィス(63)を有する、請求項1乃至
5の何れかに記載のダンパ。
【請求項7】
段部(65)が、少なくとも1つのオリフィス(62、63)に凹部として付与される、請求項
6に記載のダンパ。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れかに記載のダンパ(1)を有するヒン
ジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具または家庭用器具の取付け具用のダンパに関し、ダンパはピストンロッドに接続されたピストンが線形に変位可能に案内されるハウジングを有し、ピストンはハウジングの内部空間を2つのチャンバに分割し、2つのチャンバを互いに接続する少なくとも1つの流路がピストン上またはピストン内に形成され、ピストンが第1の方向に移動するときに、高減衰力を生成するために減衰位置で少なくとも1つの流路の断面積を小さく保つスロットル要素が提供され、ピストンが第1の方向と反対の第2の方向に移動すると、スロットル要素は少なくとも1つの流路の断面積を増加させて、スロットル要素の移動による減衰力が減少する、ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許2006480号は、ダンパハウジングを含む家具用ダンパを開示し、ダンパハウジング内でピストンロッドに接続されたピストンが変位可能に案内される。ピストンには流路が形成されており、流路は断面が変更されて様々な減衰力を生成する。この目的から軸方向に変位可能なピストンリングが配備されて、ピストンが第1の方向に動くときに流路の断面を減じ、反対の第2の方向に動くときに断面を増加させ、ピストンが異なる方向に動くときに異なる大きさの減衰力が生成される。しかし、変位可能なピストンリングのために、ピストンロッドの減衰力の初めに無駄なストロークが生じるとの問題が起きる、何故なら流路を減じるためにピストンリングは最初にピストンに対して移動しなければならないからである。そのような無駄なストロークは効果的で有効な減衰ストロークの長さを減じ、これは短い減衰経路には特に不利である。ピストンが減衰方向に抗して動き、流路の断面を増加させるときに、ピストンリングはピストンから離れるように曲がる弾性プレートに置き換えられる。しかし、そのような曲がり可能なプレートは直ぐに摩耗し回復力が減じるとの不利益を有し、流路はストローク動作の初期にて不十分にしか狭くならない。
【0003】
従って、本発明の目的は、アイドルストロークを低減し、長い耐用年数を有する家具または家庭用器具の取付け具用のダンパを作成することである。
この目的は、請求項1の特徴を有するダンパによって解決される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従ったダンパにおいて、高い減衰力又は低い減衰力を生じる少なくとも1つの流路の断面は、スロットル要素によって変えられ、該スロットル要素は少なくとも1つのばね要素によって減衰位置に移動可能で予め張力をかけられる。これによりスロットル要素が減衰位置に戻されるため、無駄なストロークは減じられ、ダンパの戻り動作後、少なくとも1つの流路の断面積が小さくなり、2つのチャンバ間で圧力が等しくなる。ハウジングに対するピストンロッドの移動が開始された場合、最小限のストロークのみで2つのチャンバに異なる圧力が発生し、少なくとも1つの流路を通る流れと高い減衰力が発生する。
【0005】
スロットル要素と少なくとも1つのばね要素は、異なる材料から形成されるのが好ましい。少なくとも1つのばね要素は、曲がり可能であり例えば弾性プラスチックから作られるのが好ましく、金属材料も、それに対応して薄い壁厚で使用できる。スロットル要素は、堅固に形成されるのが好ましく、流路に面する少なくとも1つの接触面の表面硬度が高く、そのため、摩耗が最小限に保たれる。スロットル要素は、可撓性のばね要素よりも硬い材料で作られるのが好ましい。
【0006】
更なる実施形態において、スロットル要素は、ホルダとばね要素の間にクランプする方法で固定される。従って、スロットル要素もばね要素によって減衰位置に固定され、ばね要素のばね力を克服した後にのみ、スロットル要素をホルダから持ち上げることができる。ピストンの戻り動作中、スロットル要素をホルダから持ち上げることができるためには、2つのチャンバ間に一定の圧力差が必要である。
スロットル要素はピストンリングとして構成されるのが好ましい。ディスク又はリング部分のような他のスロットル要素を用いることも可能であり、ピストンリングは容易に案内されて、ハウジング内に正確に位置決めされる。ピストンリングの外側は、ポット形のハウジングの内側で案内される。
【0007】
更なる実施形態において、ピストンロッドに固定された固定要素が設けられ、固定要素は一体的に構成されたばね要素を有し、該ばね要素によって、ピストンリングまたはスロットル要素は、ピストンロッドに接続されたホルダに予め張力をかけられる。これにより、少ない要素のみでスロットル要素又はピストンリングが実行出来、即ち少ない要素はピストンロッドと一体に形成することもできるピストンロッドに接続されたホルダと、ばね要素が一体に形成された固定要素とである。これは、ピストンとピストンロッドのユニットが3つの部品のみで製造できることを意味する。固定要素は、例えば、特にクランプ力によってスリーブ形状のピストンロッドに固定されるピンを有してもよい。
【0008】
ピストンは、ピストンロッドが延びた位置にばねによって予め張力がかけられているのが好ましい。このダンパは、ピストンロッドがハウジングに押し込まれたときに高い減衰力を提供する圧力ダンパとして構成され、ピストンロッドをハウジングから押し出すばねにより戻りが発生する。
【0009】
ハウジングはポット形状に構成され、開口部に隣接した領域にてシールを有し、該シールはピストンロッドが通る内側開口部を有する。シールはハウジングに変位可能に取り付けられて、ピストンロッドを挿入または引き抜くことによる容積を補償するのが好ましい。付随的に、シールはカバーによってハウジング内に保持され、カバーには、ハウジングに固定された外側部と、シールに固定された内側部があり、外側部は少なくとも1つのばねアームによって内側部に接続され、シールがカバーによって保持され、付随的にハウジングの内部空間に向かって予め張力をかける。
【0010】
少なくとも1つの段部、好ましくは各々が異なる直径を有する円筒部分を形成する2つの段部が、ポット形のハウジング上のベースの両側に配備されて、シール及び/又はカバーを正確に位置決めする。直径はハウジングの開口部に向かって大きくなるため、シールとカバーを簡単に取り付けることができる。
ダンパは特にコンパクトな方法で構成されるのが好ましく、ピストンロッドの最大ストロークは、6mm未満であり、特に3mmから5mmの間であるのが好ましい。ダンパの全長は、ピストンロッドを伸ばした状態で20mm未満、特に18mm未満である。
【0011】
スロットル要素はピストンリングとして構成されるのが好ましく、半径方向内側の第1のオリフィスと半径方向外側の第2のオリフィスを備える流路を有する。2つのオリフィスは、互いに所定の角度距離、例えば90°と270°の間で配置され得て、流路は半径方向だけでなく、円周に大凡に平行に延びている。少なくとも1つのオリフィスに、段部、特に凹部として形成される環状の段部を形成することができる。これにより、ホルダがオリフィス領域を覆うときに、流れ条件が影響を受けることが防止される。従って、オリフィス領域は、凹部又は段部に配置されているため、オリフィス領域内の流路の重なりは、減衰特性に殆ど又は全く影響を与えない。従って、スロットル要素に対するピストンに接続された保持要素の偏心配置は、減衰特性を変更しない。
【0012】
本発明に従って、家具または家庭用器具の取付け具にも、そのようなダンパが配備され、例えば閉じ及び/又は開き動作を減衰するのにダンパが用いられるヒンジがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は添付の図面を参照して実施形態例を用いて以下に詳細に説明される。
【
図4A】ピストンロッドを挿入したときのダンパの図である。
【
図4B】ピストンロッドを挿入したときのダンパの図である。
【
図5A】ピストンロッドが挿入された状態のダンパの図である。
【
図5B】ピストンロッドが挿入された状態のダンパの図である。
【
図6A】ピストンロッドが延びたときのダンパの図である。
【
図6B】ピストンロッドが延びたときのダンパの図である。
【
図7A】ピストンロッドが延びた状態のダンパの図である。
【
図7B】ピストンロッドが延びた状態のダンパの図である。
【
図8A】本発明に従ったダンパを備えたヒンジの図である。
【
図8B】本発明に従ったダンパを備えたヒンジの図である。
【
図9A】修正された流路を備えたピストンリングの図である。
【
図9B】修正された流路を備えたピストンリングの図である。
【
図10A】ハウジングの内側における
図9のスロットル要素の概略図である。
【
図10B】ハウジングの内側における
図9のスロットル要素の概略図である。
【
図11A】異なる位置のホルダを備えた
図10のスロットル要素の図である。
【
図11B】異なる位置のホルダを備えた
図10のスロットル要素の図である。
【
図11C】異なる位置のホルダを備えた
図10のスロットル要素の図である。
【
図13】保持要素を一緒に備えた
図12のスロットル要素の図である。
【
図14】
図12のスロットル要素の図であり、組込み状況を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ダンパ1は線形ダンパに構成され、ポット形のハウジング2を備え、ハウジング上でピストンロッド3が線形に変位可能である。ピストンロッド3は内部空間にてピストンに接続され、カバー5を介してハウジング2の開口部を通り、カバー5はハウジング2に固定された外側部50と内側部51を有する。内側部51はハウジング2内にシール4を保持し、シール4はピストンロッド3の長手方向に変位可能であり、内側部51はばねアーム52を介して外側部に対して移動可能である。
【0015】
図2にてダンパ1は分解図で示される。ピストンロッド3はシール4の内側開口部40を通り、シール4は外側シーリングリップ41又はシーリングビード及び内側シーリングリップ42又はシーリングビードを有する。
ピストンロッド3は、ディスク形のホルダ30と一体に形成され又はホルダ30に接続され、ホルダ30上にピストンリングの形のスロットル要素6が保持される。スロットル要素6は固定要素7の一部とピストンロッド3の間に配置される。
【0016】
固定要素7は、スリーブ形のピストンロッド3内に挿入され粘着又は他の締結手段によって特にクランプ力でピストンロッドに固定されるピン70を備える。固定要素はピン70に接続されるベース71を備え、ベース71上にばね要素72が突出し、ばね要素はスロットル要素6の弾性的な取付けに役立つ。
更に、第1端部80によってポット形のハウジング2に支持されて、反対側の端部81によって固定要素7及びピストンロッド3に延びた位置に向けて予め張力をかけるばね8が配備される。ばね8は、連続的に異なる巻き径を有するらせん形状であり、そのため、圧縮されたときにハウジング2のベースに対して平らに押し付けることができる。
【0017】
図3A及び
図3Bにて、ダンパ1は、ピストンロッド3が延びた開始位置で示されている。ハウジング2は、ばね8が支持されるベース23を有することが分かる。ダンパ1のピストンが直線的に案内される第1の円筒部24は、ベース23に隣接している。ピストンは、スロットル要素6、ホルダ30、固定要素7を含み、ユニットとして移動可能である。固定要素7には複数のばね要素72が一体に形成されており、これらの要素はスロットル要素6上にて接触面73で支えられ、ホルダ30に対して予め張力をかける。
【0018】
シール4が収容される部分24よりも直径が大きい円筒形部分を有する第1段部21が、ハウジング2に形成されている。シール4は、段部21の円筒部上の外側シーリングリップ41と、ピストンロッド3の外周上の内側シーリングリップ42とに載っている。第1段部21よりもわずかに大きい直径を有する円筒部を有する第2段部22は、第1段部21に隣接するハウジング2上に形成される。
カバー5は第2段部22に固定され、環状外側部50は第1段部21と第2段部22の間の移行部に固定され、ばねアーム52を介して環状内側部51に接続される。従って、シール4は、内側部51の上に保持され、付随的にハウジング2の内部空間に向かって予め張力がかけられる。
【0019】
図3Bはスロットル要素6の領域を詳細に示す。ダンパ1のピストンは、ハウジングの内部空間20を2つのチャンバに分割し、これらのチャンバは、ピストンの流路9の左右に配置されている。流路9は、ホルダ30の溝により形成され、ホルダ30の右側のチャンバとホルダ30の左側のチャンバとを接続している。流路9は、スロットル要素6によって少なくとも部分的に覆われた小さな断面を有する。スロットル要素6は、1つ以上のばね要素72によってホルダ30に向かって予め張力がかけられており、流路9を少なくとも部分的に覆っている。もちろん、ホルダ30に幾つかの流路9を設けること、またはスロットル要素6に流路を形成し、ホルダ30に平坦またはさらなる流路を設けることが可能である。いずれにせよ、少なくとも1つの流路9は、2つのチャンバ間に流れが可能な断面を形成し、流路9の小さな断面は、ハウジング2に対してピストンロッド3を移動させるときに高い減衰力を確実にする。オイル、特にシリコーンオイルなどの液体が、ハウジング2内の減衰流体として提供されるのが好ましく、他の液体または気体も使用できる。
【0020】
動作、例えばヒンジ又は引き出しガイドなどの継手の動作が減衰されると、
図4A及び
図4Bに示すように、ピストンロッド3はポット形のハウジング2に押し込まれる。ピストンロッド3内に押すことにより、スロットル要素6はホルダ30に対して更に押圧され、
図4Aにて減衰流体は、流路9を流れ、ピストンの左側から右側に流れる。スロットル要素6は円筒部24の内周を案内される。ピストンロッド3をハウジング2内に挿入することにより、減衰流体のために一定の容積が変位し、これは、シール4がハウジング2の開口部に向かって僅かに変位するという点で補償される。シール4は内側部51を押圧し、内側部51は、ばねアーム52の力に抗して外側部50に対して移動する。
【0021】
図5A及び
図5Bにて、ピストンロッド3は完全に引き込まれた位置で示されており、ピストンロッド3の端面の表面31は、ハウジング2の開口部を有する平面上に大凡配置されている。シール4は、ハウジング2の開口部まで少し移動し、それにより、内側部51は、ばねアーム52の力に抗して移動した。ばね8は、ハウジング2のベース23上に平坦に横たわり、ばね8の個々の巻線が噛み合う(interlock)。
【0022】
戻り動作の場合、ピストンロッド3は延びた位置に戻され、延び動作は、よりスムーズな方法で、即ちピストンロッド3が引き込まれたときよりも低い減衰力で発生する必要がある。
図6A及び
図6Bに示すように、ピストンロッド3の延び動作は、ばね8を再び弛緩させ、これは、ピストンロッド3と共に固定要素7を延び位置に押す。ギャップ60が形成されるように、流路9及びホルダ30からスロットル要素6をわずかに持ち上げることにより、流路9の断面が拡大される。ピストンロッド3が延びるとき、このギャップ60を通って、減衰流体が右手側から左手側に流れ、流れの断面積が大きくなると、ピストンロッド3の動きは比較的滑らかになる。ギャップ60の形成は、スロットル要素6がばね要素72により弾性的に保持され、及び2つのチャンバ間の一定の圧力差、例えば0.1barにより可能になり、スロットル要素6はばね要素72の力に抗して持ち上がる。ピストンロッド3が変位すると、ばね要素72は、もはやホルダ30を押圧せず、スロットル要素6がホルダ30を追従するように保持し、大凡摩擦力のみが克服される必要がある。
【0023】
図7A及び
図7Bに示すように、ピストンロッド3の延び動作が完了すると、2つのチャンバ間で圧力均等化が行われ、スロットル要素6はばね要素72によってホルダ30に再び押し付けられ、その結果、流路9の断面が再び縮小する。ピストンロッド3が延びるとき、ハウジング2内の減衰流体の容積は再び増加し、シール4はばねアーム52の力により、内側部51によってハウジング2に押し込まれる。これにより、段部21にてシール4はハウジング2内に動く。従って、
図7A及び
図7Bは
図3A及び
図3Bの開始位置に対応する。
【0024】
示される実施形態例において、単一の流路9がホルダ30に埋め込まれている。流路9は、半径方向に、螺旋状に、または他の形状で延在することができ、少なくともスロットル要素6によって断面に亘って閉じられている。幾つかの流路9をホルダ30及び/又はスロットル要素6上に配備することも勿論可能である。スロットル要素6は固定要素7上に保持され、突起74がばね要素72に形成され、スロットル要素6を中心に置く。締結手段を介してスロットル要素6をばねアーム52に固定すること又はスロットル要素6をばねアーム52に直接接着することも可能である。スロットル要素6の材料は硬く、流路9に対向する側が被覆されているのが好ましい。
【0025】
図8A及び
図8Bにて、本発明に従ったダンパはヒンジ101に示される。ヒンジ101は側部102を備え、該側部102は中間片131を介して取付けプレート130に固定される。側部102は、高さ調整ユニット140及び深さ調整ユニット150によって調整可能に保持される。側部102では、ダンパのハウジング2が固定されている。ヒンジ部103は、第1のレバー104及び第2のレバー105が設けられた側部102に回転可能に取り付けられており、第1のレバーと第2のレバーは4つの回転軸106、107、108及び109を介して側部102とヒンジ部103との間の接続を保証する。レバー104には、ピン110を押してピストンロッド3をハウジング2に押し込むか、ピストンロッド3を解放するカムガイド111が装備されており、ピストンロッド3はばね8の力によって延びた位置に戻る。
図8Aはピストンロッド3が引き込まれたヒンジ101の閉じ位置を示し、然るに
図8Bはピストンロッド3が延びた開き位置を示す。
【0026】
本発明に従ったダンパ1は、ヒンジ101に代えて、他の取付け具、例えば7つのリンクのヒンジ、引出しガイド、スライドドア及びコンパクトなダンパが要求される全ての他の取付け具に使用され得る。ダンパ1は、5mm未満、特に3mmから4.5mmのピストンロッド3の最大ストロークを有するのが好ましく、ダンパ1の長手方向の延びは20mm未満、特に18mm未満であることが好ましく、構成が非常にコンパクトになる。
【0027】
図9A及び
図9Bは、ピストンロッド3によって動かされるスロットル要素6を備えた修正されたダンパの一部を示す。スロットル要素6は、ピストンリングとして構成されており、リング又はディスクとして構成されているホルダ30上に流路61を有している。流路61は、ホルダ30に向かって溝状またはチャンネル状に開口している。ホルダ30におけるスロットル要素6の表面の接触により、流路61はホルダ30の方向に閉じられる。流路61は半径方向に延びてスロットル要素6の内側で終わる第1のオリフィス62と、半径方向外側に延びてスロットル要素6の外側で終わる第2のオリフィス63とを有する。オリフィス62、63は、ピストンロッド3の軸に対して、特に90°から270°の間の角度オフセットで配置されており、流路61の大部分は、スロットル要素6の外周に大凡平行に延びている。流路の他の形状も可能であり、例えば蛇行形状、波形形状、またはスロットル要素6の表面に沿った直線部分に凹みがある形状である。
【0028】
スロットル要素6はリングまたがディスク形のホルダ30を有するピストンロッド3によって動かされる。更に、スロットル要素6に係合するリング32がピストンロッド3と一体に形成される。リング32内に受け部33があり、該受け部33内に固定要素の短いピン70が係合する。
ピストンロッド3からの力によってダンパが軸方向に作用すると、
図9Bに示すように媒体が流路61を通って流れる。ダンパ内の流体は第1のオリフィス62から第2のオリフィス63へ流路を通って流れる。
【0029】
図10A及び
図10Bにて、
図9のスロットル要素6はハウジング2内にて概略で示される。ハウジング2は、スロットル要素6の取付け領域において円筒形であり、スロットル要素6を軸方向に案内する。これにより、ピストンロッド3をハウジングに対して移動するときに必要な減衰力が発生する。
【0030】
図11A乃至
図11Cは、
図10のダンパを示す。
図11Aにて、ホルダ30は中央に配置され、減衰流体が第2のオリフィス63から流出できるように、ホルダ30とハウジング2との間に大凡均一なギャップが設けられている。しかし、負荷がかかった位置では、
図11Bに示すように、ホルダ30が中央に配置されておらず、例えば、ハウジング2の壁に支えられていることができる。この位置では、ピストンロッド3を介して導入された力は偏心しているが、オリフィス63はホルダ30によって覆われていない。しかし、
図11Cに従って、ホルダ30はオリフィス63を覆い、その結果、流路61はオリフィス63の領域で閉じられることが起こる。
【0031】
ホルダ30のスロットル要素6との不整合もまた可能であり、ここでは示されていないが、流路61の内側オリフィス62は部分的に又は完全にリング32によって覆われる。これにより、減衰力は変化する、何故ならオリフィス62、63でのホルダ30又はリング32への更なる流れ抵抗は、ピストン3を動かすのに力を増加させる必要があるからである。
【0032】
ホルダ30の中心からずれた配置の影響を低減すべく、
図12A乃至12Cのスロットル要素6はオリフィス63の領域に段部65を備え、該段部65はスロットル要素6の全周に亘って延びる環状の凹部として構成される。また、全周に亘ってではなく、オリフィス63の1つの領域のみに段部65を設けることも明らかに可能である。従って、オリフィス63は半径方向内側にオフセットされ、流路は凹部又は段部65内のオリフィス63で終わる。
【0033】
オリフィス62でのボトルネックを解消するために、ここでも段差を形成することができ、これは、スロットル要素6の全周にわたって延びる角のある凹部として構成される。また、全周に亘ってではなく、オリフィス62の1つの領域のみに段部65を設けることも明らかに可能である。従って、オリフィス62は半径方向外側にオフセットされ、流路は凹部又は段部内のオリフィス62で終わる。
【0034】
図13に示すように、ホルダ30は、減衰挙動に影響を与えることなく、オリフィス63の領域で流路61を覆うことができる、何故なら内側オリフィス62から流路61を通ってオリフィス63に至る減衰流体の流路は、ホルダ30の位置とは無関係であり、オリフィス63の領域において減衰流体は段部65内に流れ、分散する。
図14に示すように喩え、ホルダ30がオリフィス63を覆っていても、流体は段部65内に流れ、スロットル要素6の周領域で分散される。
【符号の説明】
【0035】
1 ダンパ
2 ハウジング
3 ピストンロッド
4 シール
5 カバー
6 スロットル要素
7 固定要素
8 ばね
9 流路
20 内部空間
21 段部
22 段部
30 ホルダ
31 表面
32 リング
33 受け部
40 開口部
41 シーリングリップ
42 シーリングリップ
50 外側部
51 内側部
52 ばねアーム
60 ギャップ
61 流路
62 オリフィス
63 オリフィス
65 段部
70 ピン
71 ベース
72 ばね要素
73 接触面
74 突起
80 端部
81 端部
101 ヒンジ
102 側部
103 ヒンジ部
104 レバー
105 レバー
106 回転軸
107 回転軸
108 回転軸
109 回転軸
110 ピン
111 カムガイド
130 取付けプレート
131 中間片
140 高さ調整ユニット
150 深さ調整ユニット