(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】筋膜を治療するマシン及び方法
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A61H23/02 330
(21)【出願番号】P 2016573454
(86)(22)【出願日】2015-03-06
(86)【国際出願番号】 SE2015000012
(87)【国際公開番号】W WO2015133956
(87)【国際公開日】2015-09-11
【審査請求日】2018-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2014-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516268448
【氏名又は名称】アトラスバランス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ボーリン,ハンス
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】内藤 真徳
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519400(JP,A)
【文献】特表2010-534110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間及び動物における筋膜の欠損の治療に適合されている手持ち式マシン(10、28)であって、
前記手持ち式マシン(10、28)は、モータ(24)と、前記モータ(24)によって駆動される伝動装置であるカム(26)と、プランジャ(30)と、制御部である制御ユニット(20)と、を有し、
前記制御部は、前記プランジャ(30)に所定の低い周波数で往復して突き出す往復運動を所定の動作時間行わせるように動作されるモータ(24)を駆動し、前記所定の低い周波数は、1Hz~60Hzの範囲内であり、
前記所定の動作時間は、0.5秒~5秒の間であり、
前記制御部は、前記手持ち式マシン(10、28)を、デュアル周波数パターン波モード(14)、固定周波数パターン波モード(16)及び確率周波数パターン波モード(18)で構成される少なくとも3つのモードで動作させ、
前記デュアル周波数パターン波モード(14)は、前記往復運動のための予め設定された高い周波数で
前記所定の動作時間行わせ、予め設定された低い周波数で
前記所定の動作時間行わせるように前記制御部が前記モータ(24)を駆動し、前記予め設定された高い周波数と前記予め設定された低い周波数は両方とも1Hz~60Hzの範囲内であり、かつ、互いに異なる周波数であり、
前記固定周波数パターン波モード(16)は、前記往復運動のための周波数パターンを生成するように前記制御部が前記モータ(24)を駆動し、前記周波数パターンは、1Hz~60Hzの範囲内の
少なくとも3つの周波数を含み、
前記確率周波数パターン波モード(18)は、前記往復運動のための
周波数パターンを生成するように前記制御部が前記モータ(24)を駆動し、前記
周波数パターン
を、1Hz~60Hzの範囲内で
予め決められた周波数でランダムに変更し、予め決められた前記所定の動作時間をランダムに変更する、手持ち式マシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式マシン、並びに、人間及び動物における筋膜の欠損の治療に適合されている方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな科学的な研究は、筋膜/筋肉結合組織、並びに、人間及び哺乳類等の動物の双方における身体の負担に対するその影響に焦点を当てている。筋膜は例えば、足から頭まで筋肉を囲んでいる。
【0003】
人間及び動物から皮膚が取り除かれる場合、筋膜の第1の層は浅筋膜であり、次の層はスカルパ筋膜であり、次いで深在筋膜である。これらの層は、互いに付着する/くっつく可能性があり、頭痛、背痛、膝の痛み、首の痛み、及び、繰り返しの動き、殴打、間違った体位によって酷使された身体のほぼ全ての場所における痛み、他の損傷等といった、身体への痛みを伴う問題を引き起こす欠損を生じる。また、痛み及び筋膜の欠損は、筋膜が穿刺され、したがって、筋膜層が互いに付着するか又は捩れて痛みを引き起こす可能性がある手術からそれらの問題を有する可能性がある。
【0004】
損傷から誘発される痛みは、筋膜に沿って、損傷が実際に生じた場所から離れて他の身体部分に広がる可能性がある。筋膜損傷の現在の治療は、ほぼ全体的に、皮膚のマッサージ、並びに/又は、筋肉及び/若しくは靭帯、又は、捩れた/異所性の腱を柔らかくするために損傷を受けたスポットに打ちつける/強打するプランジャを有するマシンによる衝撃波治療によって、損傷が生じた実際のスポットを治癒するような方向性である。
【0005】
衝撃波マシンは、特許文献1によって開示されており、これは、損傷を受けた身体のスポットの言及したマッサージ治療に使用される。
【0006】
Fauna Communicationsによって行われた2006年の研究では、研究者らは、猫が喉を鳴らす周波数(25Hz~140Hz)が、骨成長及び骨折の治癒、痛みの軽減、腫れの低減、創傷の治癒、筋肉の成長及び修復、腱の修復並びに関節の可動性に治療効果がある同じ周波数を搬送することを発見した。
【0007】
リンクwww.youtube.com/watch?v=vlFDwDdGnhQは、筋膜の重要性、及び、筋膜の機能の現在の所見について示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第201/3261516号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特に、人間及び動物における筋膜の欠損によって誘発される痛みを治療するための手持ち式マシンを提供するという1つの目的を有する。これによって、マシンは、損傷を受けた筋膜スポットに結合される筋筋膜の筋/経路全体、すなわち、損傷を受けたスポットのみではない深波治療に使用される。この目的を達成することを可能にするために、筋膜は、筋膜においてマシン波の治療が適用される場所に応じて、様々な周波数を用いて治療されなければならない。適用される周波数は、例えば1Hz~60Hzの範囲等のヘルツスケールのより低い範囲であるべきであり、これは、深波治療が、局所的な標的治療マッサージ及び/又は衝撃波治療に到達可能な上側層だけではなく、筋肉を囲む筋膜に到達することを可能にする。衝撃波治療は、不適切に使用される場合、良好どころか更なるダメージを引き起こす可能性がある。また、本発明は、使用される周波数による動作の異なる時間期間を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、人間及び動物における筋膜の欠損の治療に適合されている手持ち式マシンを記載し、マシンは、モータ駆動装置、及び、所定の低い周波数において往復して突き出すプランジャに対して動作する伝動装置によって波カムを生成するように駆動されるモータを有し、
デュアルモード、固定パターンモード及び確率パターンモードである少なくとも3つのモードで動作するプランジャの周波数制御回路であって、これらのモードは、コンピュータプログラムの少なくとも1つによって誘発され、マシンのユーザによってプログラミングされる、プランジャの周波数制御回路を備え、
デュアルモードは、低い周波数及び予め設定された時間期間から予め設定されたより高い及びより低い周波数を生成し、
予め設定された固定パターン波モードは、2つ及び3つの周波数並びに時間の少なくとも1つから必要なパターンを形成するように生成され、
確率パターン波は、プランジャが確率モードにおいてランダム周波数の連続的なシーケンス及び時間で動作するのであれば、2つの予め設定された周波数及び時間のうちの少なくとも1つで動作するパターンを形成するように生成される。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、より低い周波数領域は、1Hz~60Hzであり、時間期間は、予め設定された時間期間の場合、0.5秒~5秒である。
【0012】
別の実施形態は、予め設定された高い及び低い周波数が、同じ値に設定される場合に、安定した周波数を生成することを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、人間及び動物における筋膜の欠損の治療に適合されている手持ち式マシンの方法を記載し、マシンは、モータ駆動装置、及び、所定の低い周波数において往復して突き出すプランジャに対して動作する伝動装置によって波カムを生成するように駆動されるモータを有し、当該方法は、
デュアルモード、固定パターンモード及び確率モードである少なくとも3つのモードで動作する周波数制御回路によってプランジャを制御することであって、これらのモードは、コンピュータプログラムの少なくとも1つによって誘発され、マシンのユーザによってプログラミングされる、制御すること、
デュアルモードによって、低い周波数及び予め設定された時間期間から予め設定されたより高い及びより低い周波数を生成すること、
2つ及び3つの周波数並びに時間の少なくとも1つから必要なパターンを形成するように、予め設定された固定パターン波モードを生成すること、
プランジャが確率モードにおいてランダム周波数の連続的なシーケンス及び時間で動作するのであれば、2つの予め設定された周波数及び時間のうちの少なくとも1つで動作するパターンを形成するように、確率パターン波を生成すること、並びに
周波数及び時間期間を、欠損した筋膜スポットに結合する筋膜の経路全体を治療するように適合すること
を含む。
【0014】
本発明の添付の従属する方法の請求項は、添付の従属するマシンの請求項を踏襲する。
【0015】
これ以降、本発明の実施形態及び所与の例のより良い理解のために、本明細書を通して添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による、1つの実施形態におけるマシンのブロック図を概略的に示す図である。
【
図2】本発明による、1つの実施形態における、
図1のマシンを1つの可能な実際の見た目で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、人間及び哺乳類等の動物における筋膜の欠損によって誘発される痛みを治療するための手持ち式マシンに関する。これによって、マシンは、損傷を受けた筋膜スポットに結合される筋膜の筋全体、すなわち、損傷を受けたスポットのみではない深波治療に使用される。この目的を達成するために、筋膜は、筋膜においてマシン波の治療が適用される場所に応じて、様々な周波数を用いて治療されなければならない。適用される周波数は、例えば1Hz~60Hzの範囲等のヘルツスケールのより低い範囲であるべきであり、これは、波治療が、局所的な標的治療マッサージ及び/又は衝撃波治療に到達可能な上側層だけではなく、筋肉を囲む筋膜に到達することを可能にする。衝撃波治療は、不適切に使用される場合、良好どころか更なるダメージを引き起こす可能性がある。また、本発明は、使用される周波数の動作の異なる時間期間を提供する。したがって、治療は、例えば、スーパーフィシャルバックライン、スーパーフィシャルフロントライン、ファンクショナルライン、スーパーフィシャルフロントアームラインにおける筋膜及び筋筋膜の変化に関する。
【0018】
スーパーフィシャルバックラインを全体として理解することは、ハムストリングのみを考慮することからは得ることができないハムストリングの問題に対する洞察を与える。スパイラルラインは、いずれの単一の筋肉の分析も与えることができない方法で、回転補正を解決する方法を示す。したがって、本発明の深波治療マシンは、筋膜が損傷を受けた場所だけではなく、筋筋膜経路に沿って展開される。例えば、肩は6つの筋筋膜経路を伴う。
【0019】
筋膜及び筋筋膜は、全身に形状を提供するとともに、細胞間通信及び細胞代謝に関与する身体組織である。筋膜は、細胞のマトリックスのようなものである。筋膜は、我々をまとめる生物学的な生地である。人間は、相対的に調和して全てハミングする約70兆個の細胞を有し、筋膜は、細胞を全てそれらの適切な配置でまとめる、線維状で、膠質で湿ったタンパク質の3Dの蜘蛛の巣である。
【0020】
さらに、筋膜はより広い定義を有し、細胞外マトリックス(ECM)のそのネットワークを形成するとともに維持する細胞を含む、身体内の全てのコラーゲンベースの軟組織である。その定義は、従来の解剖学において「筋膜」として従来から指定されている全ての組織プラス全ての他の実際の、腱、靭帯、嚢、並びに、筋内膜、筋周膜、筋外膜内及び周りの全ての筋膜を含む。同様に含まれるのは、臓器の周りの筋膜、自身の腹腔において腹膜及び腸間膜に臓器を保持する体腔の袋、縦隔、心膜、及び、胸腔において臓器を保持する胸膜、並びに、脳、脊髄及び末梢神経を囲む硬膜及び軟膜及び神経周膜である。
【0021】
筋膜がその張力を失う場合、全身が胎位になる。
【0022】
「Anatomy Trains, Myofascial Meridians for Manual & Movement for Therapists」(Thomas W. Meyers)という本を通して、治療における筋膜の重要性が教示されている。
【0023】
本発明のマシンを用いた試験中のウマの筋膜の治療は、非常に成功し、幾つかの場合、20分の治療セッションの間に脚の欠損を有するウマを治癒した。筋膜及びウマのマッサージについて更に知るには、リンクhttp://www.equine-equilibrium.com/myofascialrelease.phpにおいて見出すことができる。
【0024】
図1は、本発明による1つの実施形態におけるマシン10のブロック図を概略的に示している。操作者12が、マシン10のボタン/タッチパッド等を通じて、自身の選択するプログラム、又は、選ばれる治療セッションのための格納されているコンピュータプログラムを選択する。好ましくは、操作者が選択することができる少なくとも3つの動作モード14、16、18がある。それらは、周波数及び時間期間が操作者12によって選択され、マシン10が動作する所定の周波数及び時間期間を有する格納されたパターンのコンピュータプログラムであるデュアルモード14である。第2の固定パターン波モード16が、2つ、3つ又はそれ以上の周波数及び時間から必要なパターンを形成するように生成される。さらに、第3のモードが、予めプログラミングされた確率モード18から周波数及び時間期間をランダムに変更する確率モード18として利用可能である。当然ながら、コンピュータ、マイクロコントローラ等をその必要な周辺機器とともにマシン10に含め、プログラム及び言及した動作モードを実行することが予見される。
【0025】
選択されるモードに応じて、制御ユニット20が、治療中に使用されるときにマシン10によって印加される速度、時間及び力をモニタリングすることによって、選んだ/選択した操作者12の治療を実行する。制御ユニット20によって制御されるモータ駆動装置22が、モータ24の制御を印加し、モータ24は、伝動装置、例えば、
図2に示されているプランジャ30への波を生成するカム26を駆動する。
【0026】
図2では、
図1におけるマシン10、28が、本発明による1つの可能な実際の見た目で示されている。したがって、マシン28は、例えばカム26(カムは示されていない)ほど単純な伝動装置を通じてモータ24によって駆動されるプランジャ30を有する。このカム26は、設定された動作モード14、16、18に従ってプランジャ30に軸方向の往復移動を提供する。さらに、
図2は、選択された動作モード14、16、18に従って波マシン10、28の動作を予め設定するように使用されるボタンのセット32を示している。同様に
図2に示されているのは、電力をマシン10、28に送達する電源コード34である。
【0027】
さらに、マシン10、28は、本発明によって特許請求される使用方法によって使用され、2つのマシン10、28を、筋筋膜経路に追従するように、操作者12のそれぞれの一方の手で保持して同時に使用することができる。
【0028】
結合組織(筋膜、筋筋膜/浅筋膜チェーン)を通じた、本発明のマシン10、28を用いた深波マッサージは、動き等において筋肉の緊張及び他の合併症を除去する。例えば1Hz~60Hzの範囲の低い周波数を、プランジャによって印加し、筋膜全体に到達する深い身体への波を生成するべきである。本発明は、言及した60Hzという最高の低い周波数に限定されず、幾つかの用途には僅かにより高い周波数を使用することができ、例えばネコは、健康を保つために140Hzもの周波数を使用する。
【0029】
添付の請求項のセットは、当該技術分野における当業者に対して、本発明の他の可能な実施形態を決定する。