(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】弾性ヤーン用のフィラメント状コア、弾性複合ヤーン、織物布地、ならびに前記弾性ヤーンを製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/32 20060101AFI20230110BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20230110BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20230110BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20230110BHJP
D03D 15/567 20210101ALI20230110BHJP
【FI】
D02G3/32
D02G3/04
D02G3/36
D03D15/56
D03D15/567
(21)【出願番号】P 2017545543
(86)(22)【出願日】2016-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2016053893
(87)【国際公開番号】W WO2016135211
(87)【国際公開日】2016-09-01
【審査請求日】2019-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2015-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517296260
【氏名又は名称】ジャリク、デニム、テクスティル、サン.ベ、ティク.ア.セ.
【氏名又は名称原語表記】CALIK DENIM TEKSTIL SAN. VE TIC. A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ハミット、イェニジ
(72)【発明者】
【氏名】アフメット、セルハット、カラデュマン
(72)【発明者】
【氏名】デニズ、エズキュル
(72)【発明者】
【氏名】ヤシン、ジリク
(72)【発明者】
【氏名】メルテム、デミルタス
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】内田 博之
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/113207(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第904597(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48 , D02J1/00-13/00 , D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物製品の製造に使用される弾性複合ヤーン(1)のためのフィラメント状コア(3)であって、
少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を含んでおり、
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)の各々は、そのパッケージ長さの少なくとも2倍に引き伸ばすことが可能であり、且つ、そのパッケージ長さの2倍の引き伸ばしから解放された後に少なくとも90%から100%までの弾性リカバリを有し、
フィラメント状コア(3)は、当該フィラメント状コア(3)の反発力を増強するための力シフト機構を備えており、
前記力シフト機構は、当該フィラメント状コア(3)の2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のドラフト比の差に依存する所定のシフト点を定めており、
前記力シフト機構は、当該フィラメント状コア(3)の伸びの開始時に、該伸ばされたフィラメント状コア(3)によってもたらされる弾性リカバリ力が、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のうちの少なくとも1つの活発な弾性パフォーマンスフィラメント(11または13)によって実現され、残りの弾性パフォーマンスフィラメント(13または11)は、前記活発な弾性パフォーマンスフィラメント(11または13)よりも不活発な状態のままであるように予め設定され、
前記シフト点は、前記不活発な弾性パフォーマンスフィラメント(13または11)がリカバリ力をもたらす上で活発になり始める当該フィラメント状コア(3)の所定の伸びのレートに位置するように、パッケージ長さの0%よりも大きく100%よりも小さい当該フィラメント状コア(3)の伸びに設定され、
フィラメント状コア(3)は、非線形、非放物線、および/または屈折のある経過を有する非線形な応力-歪み挙動をもたらすように構成されており、
前記応力-歪み挙動は、当該フィラメント状コア(3)の連続した伸びに対す
る応力勾配の傾きが
シフト点で不連続とな
り、
前記シフト点よりも下の伸び領域が、小さな応力勾配を有する快適ゾーンを確立し、前記シフト点よりも上の伸び領域が、大きな応力勾配をもたらす、フィラメント状コア(3)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は、互いに係合し、当該フィラメント状コア(3)の長手方向に沿って、中断のある接触領域または接触面(10)、あるいは連続的な接触領域または接触面(10)をもたらしており、
接続領域が、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を撚り合わせ、さらには/あるいは入り交じらせることによって実現されており、
前記弾性複合ヤーン(1)の伸び時に、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)によってもたらされるそれぞれのリカバリ力(F)は、互いに異なる、請求項1に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は
、撚り合わせられ
ており、かつ/または、
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、さらなる非弾性コントロールフィラメントへと接続されており、
相互接続は、前記少なくとも2つの弾性フィラメントのうちの第1の弾性フィラメント(11)が
、前記非弾性コントロールフィラメントと撚り合わせられ
、撚り合わせら
れた前記非弾性コントロールフィラメントと前記
第1の弾性パフォーマンスフィラメント(11)との対が、撚り合わ
せによって第2の弾性パフォーマンスフィラメント(13)へと接続されることで実現され
る、請求項1または2に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項4】
パッケージ長さの1.2、1.5、2.0、2.5、および/または3.0倍の伸び、またはパッケージ長さの1.0~2.0倍
の伸び領域において、当該フィラメント状コア(3)の前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は、異なるリカバリ力(F)をもたらし、かつ/または
当該フィラメント状コア(3)の前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は、前記弾性複合ヤーンの弾性伸び
の少なくとも50%、少なくとも80%、または全体において、共通の弾性伸びについて異なる弾性率(ヤング率)を有するように構造付けられ、さらには/あるいは構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項5】
当該フィラメント状コア(3)の第1の弾性パフォーマンスフィラメント(11)が、少なくとも1.0または少なくとも2.0である第1のドラフト比を有し、
当該フィラメント状コア(3)の第2の弾性パフォーマンスフィラメント(13)が、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0、1.5または2.0よりも大きい第2のドラフト比を有し、
前記第1および第2のドラフト比の間の差は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.8、または1.0よりも大きく、かつ/または1.5または2.0よりも小さい、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項6】
第3の弾性パフォーマンスフィラメントが、前記第1または第2のドラフト比の一方と同じであり、あるいは少なくとも0.1、0.5、0.8、または1.0だけ前記第1または第2のドラフト比と異なる第3のドラフト比を備え、
前記第3のドラフト比と前記それぞれの他のドラフト比との間のそれぞれの差は、0.1、0.3、または0.5よりも大きく、かつ/または0.8、1.0、または2.0よりも小さい、ことを特徴とする請求項
5に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項7】
前記第1のドラフト比は、1.0と2.0との間、または1.0と1.5との間であり、前記第2のドラフト比は、1.5と4.0または2.0と3.5との間であり、かつ/または
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)ならびに第3の弾性パフォーマンスフィラメントは、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、または2.0よりも小さいそれぞれのドラフト比を有する、ことを特徴とする請求項
5または6に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項8】
当該フィラメント状コア(3)の形成に使用される少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を取り付けられていない状態でそれぞれのパッケージ長さの少なくとも1.2、1.5、2.0、および/または3.0倍に弾性的に引き伸ばしたときに、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のそれぞれのリカバリ力(F)が互いに異なり、第1の弾性パフォーマンスフィラメント(11)のリカバリ力が第2の弾性パフォーマンスフィラメントの第2のリカバリ力よりも少なくとも3%、10%、または20%大きい、という点で、異なる構造とされている、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項9】
当該フィラメント状コア(3)の形成に使用される少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)は、異なる厚さを備え、
該厚さの差は、2または5デニールよりも大きく、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)の太さは、20、40、70、105、140デニールから選択される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項10】
当該フィラメント状コア(3)は、少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)をさらに備え、
該少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)は、恒久的な変形を生じることなく最大長さを超えて引き伸ばすことが不可能であり、
前記最大長さは、該少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)のパッケージ長さの1.5倍よりも小さい、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)。
【請求項11】
弾性複合ヤーン(1)であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)と、前記フィラメント状コア(3)を囲むステープルまたは繊維で構成された繊維シース(5)と、を備え、
前記繊維は、綿繊維、ウール繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、および/またはナイロン繊維である、弾性複合ヤーン(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の弾性複合ヤーン(1)で製作された布地。
【請求項13】
織物製品の製造に使用される弾性複合ヤーン(1)のためのフィラメント状コア(3)を製造するための方法であって、
パッケージ長さの少なくとも2倍に引き伸ばすことが可能であり、パッケージ長さの2倍への引き伸ばしから解放された後に少なくとも90%から100%までの弾性リカバリを有する少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を別々にもたらすステップと、
当該フィラメント状コア(3)の反発力を増強するための力シフト機構を提供するステップと、を含み、
前記力シフト機構は、当該フィラメント状コア(3)の2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のドラフト比の差に依存する所定のシフト点を定めており、
前記力シフト機構は、当該フィラメント状コア(3)の伸びの開始時に、該伸ばされたフィラメント状コア(3)によってもたらされる弾性リカバリ力が、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のうちの少なくとも1つの活発な弾性パフォーマンスフィラメント(11または13)によって実現され、残りの弾性パフォーマンスフィラメント(13または11)は、前記活発な弾性パフォーマンスフィラメント(11または13)よりも非活発な状態のままであるように予め設定され、
前記シフト点は、前記非活発な弾性パフォーマンスフィラメント(13または11)がリカバリ力をもたらす上で活発になり始める当該フィラメント状コア(3)の所定の伸びのレートに位置するように、パッケージ長さの0%よりも大きく100%よりも小さい当該フィラメント状コア(3)の伸びに設定され、
フィラメント状コア(3)は、非線形、非放物線、および/または屈折のある経過を有する非線形な応力-歪み挙動をもたらすように構成されており、
前記応力-歪み挙動は、当該フィラメント状コア(3)の連続した伸びに対す
る応力勾配の傾きが
シフト点で不連続とな
り、
前記シフト点よりも下の伸び領域が、小さな応力勾配を有する快適ゾーンを確立し、前記シフト点よりも上の伸び領域が、大きな応力勾配をもたらす、方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)に2つの異なるドラフト比が適用され、該ドラフト比は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、または1.0だけ互いに異なり、該ドラフト比は、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、または2.0よりも小さい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィラメント状コア(3)を形成するために前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を入り交じらせ、さらには/または結合させるステップをさらに含み、かつ/または
前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)および/または前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)の周囲、あるいは前記フィラメント状コア(3)の周囲に、繊維シース(5)を設けるステップをさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
繊維シース(5)を製作するための綿繊維などの繊維の少なくとも2つの別々のロービング(55,57)が供給され、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)および前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)がフィラメント状コア(3)を形成すべく合流する前に、各々の弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)および/または前記非弾性コントロールフィラメント(15)の周囲に繊維サブシース(77,79)が紡糸され、
繊維サブシース(77,79)を受け取っていない前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)が、前記サブシース(77,79)で覆われた前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント(15)と合流させられる、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載のフィラメント状コア(3)、および/または請求項11に記載の弾性複合ヤーン(1)を製造するための設備(51)であって、
少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を別々にもたらすための少なくとも2つの別々の供給部と、前記弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)のための少なくとも1つのドラフト比発生装置とを備えており、
前記ドラフト比発生装置は、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)が、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.8、または1.0だけ互いに異なるそれぞれのドラフト比にて前記弾性複合ヤーン(1)に導入されるように調節され、あるいは調節可能である設備(51)。
【請求項18】
前記ドラフト比発生装置は、各々の弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)について、該弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を受け取るための円柱形の外面を有する回転可能に支持されたバー(62a、62b;62c、62d)と該バー(62a、62b;62c、62d)に転がり接触したウェイトロール(83)との対を備え、
前記2つのバーは、少なくとも1つまたは2つのサーボエンジン(68、68a、68b、68c、68d)などの駆動部によって駆動され、かつ/または各々のバーが、1つのサーボエンジンなどの1つの駆動部に組み合わせられ、
前記バー(62a、62b;62c、62d)と前記駆動部との間の力の伝達の接続は、ベルト(74、74a、74b、74c、74d)によって実現される、請求項17に記載の設備(51)。
【請求項19】
前記ドラフト比発生装置(61)は、少なくとも2つの個別に支持されたディスクホイールを備える回転可能に支持されたドラム構造(72)を備え、
1つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)が、1つのディスクホイール(65a、65b、65c)に組み合わせられ、
各々のディスクホイール(65a、65b、65c)は、該ディスクホイール(65a、65b、65c)の回転速度を調節するために駆動部またはフレームに組み合わせられている、請求項18に記載の設備(51)。
【請求項20】
繊維シース(5)を製作するための綿繊維などの繊維の少なくとも2つの別々のロービング(21a、21b)を別々に供給するための少なくとも2つの別々のロービング供給部をさらに備え、
各々の別々の繊維ロービングについて、弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)が前記2つの繊維ロービングの中心に想定され、
前記それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を含んでいる前記2つの繊維ロービングが、前記2つの別々のロービングおよび前記それぞれの弾性パフォーマンスフィラメントが組み合わせられた後に一体に紡糸される、請求項18または19に記載の設備(51)。
【請求項21】
紡糸ステーション(73)をさらに備え、かつ/または
フィラメント合流ステーション(75)が、フィラメント供給方向に関して前記ドラフト比発生装置(61)の下流に配置され、
前記紡糸ステーション(73)は、前記ドラフト比発生装置(61)の下流かつ前記フィラメント合流ステーション(75)の上流に配置され、前記フィラメント合流ステーション(75)には最終ヤーンパッケージ(81)が続いており、
前記紡糸ステーション(73)は、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)を繊維サブシース(77,79)で覆うために該少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント(11,13)にのみ組み合わせられている、請求項18から20のいずれか一項に記載の設備(51)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性複合ヤーンあるいは伸縮ヤーンまたはスレッドのためのフィラメント状コアに関する。さらに、本発明は、織り、編み、かぎ針編み、結び目付け、またはプレスなどの織物製造手順によって本発明によるヤーンに基づいて製造された布地または織物に関する。とくに、本発明は、デニムまたはジーンズ布地に関する。さらに、本発明は、弾性複合ヤーンを製造するための装置または機械ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、ヤーンは、ウール、フレックス、綿、または他の材料の繊維を紡糸してヤーンまたはスレッドと呼ばれる長いストランドを得ることによって典型的に製造される。とくに、本発明によるヤーンは、織物または布地、とりわけジーン布地、デニム、またはダンガリーを製造するために使用される。弾性的に伸縮することができるヤーンを提供するために、ヤーンに1つ以上の弾性パフォーマンスフィラメントで構成されるフィラメント状コアを組み込むことが知られている。ヤーンは、ボビンに用意された長い連続長のストランドである。通常は、ヤーンの外側、すなわちシースまたはコートが、とくには綿の繊維を互いに組み合わせることによって実現される。
【0003】
本発明によるフィラメント状コアは、弾性複合ヤーンの製造プロセス中に製造されても、あるいは予め製造された中間製品としてヤーンの製造に供されてもよい。織物の製造における使用に適した本発明によるヤーンは、少なくとも2本の弾性パフォーマンスフィラメントで構成される前記フィラメント状コアと、フィラメント状コアを取り囲む繊維からなる随意による繊維シースとを備えなければならない。「フィラメント」は、とくには、きわめて長く、あるいは不定の長さであるサブストランドユニットを意味する。この(モノ)フィラメントは、ワンピースストランドまたは成形ストランドとして現れるが、本特許明細書の意味におけるフィラメントであっても、前記形態のモノフィラメントを形成すべく配置される複数のサブ繊維(マイクロファイバ)によって形成することが可能である。本発明によるヤーンを製造するために、そのようなフィラメントを、とくには不定の長さの複数のサブ繊維で作られていても、一様に処理されるべき単一のサブ製品として製造プロセスに組み込むことができる。
【0004】
国際公開第2008/130563号パンフレットが、少なくとも1つのそのような弾性パフォーマンスフィラメントと1つの非弾性コントロールフィラメントとを有するフィラメント状コアで構成された弾性複合ヤーンを開示している。前記フィラメント状コアは、スパンステイブル繊維からなる繊維シースによって取り囲まれている。国際公開第2008/130563号パンフレットの
図2および
図3の実施形態によれば、フィラメント状コアは、1つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび1つの非弾性コントロールフィラメントの両方を含む。
【0005】
さらに、国際公開第2012/062480号パンフレットから、フィラメントコアと、綿繊維で作られてフィラメントコアを取り囲んでいる繊維シースとを含む複合伸縮ヤーンが知られている。フィラメント状コアは、1つの弾性パフォーマンスフィラメントと1つの非弾性コントロールフィラメントとによって実現されている。前記非弾性コントローラフィラメントは、欧州特許第1846602号明細書に開示されているようなPTT/PET二成分弾性マルチエステルなどであってよい。
【0006】
本発明の発明者は、デニム布地などの織物材料を製造するために使用される上述の従来からの弾性ヤーンは、リカバリとしての不充分な弾性挙動に悩まされていることに気が付いた。弾性リカバリは、ヤーンが最初に引張応力を加えることによって変形させられ、その後にこの応力が取り除かれた後に、元の長さを再び得ることができる点で、弾性ヤーンにとって重要な特性である。弾性ヤーンのリカバリ特性が充分でなく、あるいは低すぎる場合、望ましくない伸び作用が生じる可能性がある。伸び作用は、弾性ヤーンが、弾性ヤーンを応力が加えられる前の元の状態に戻すための充分な弾性リカバリをもたらさないため、望ましくない。布地製品、とりわけ弾性ヤーンに基づいて織られた布地で作られたズボンを微視的に考慮すると、ズボンの膝および後ろの領域などの応力の大きい織物布地において、伸び作用が、織物製品を消費者にとって無用にしかねない不適切なスラギーフィットを引き起こす。しかしながら、そのような布地がより強い弾性リカバリを有するように設計される場合、そのような布地は、とくには膝および後ろの部分と同じ応力ピークを被ることがない腕または脚のスリーブなどの領域において、消費者にとってより不快なフィットをもたらしかねない。この望ましくない窮屈なフィットは、「コルセット」現象として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2008/130563号パンフレット
【文献】国際公開第2012/062480号パンフレット
【文献】欧州特許第1846602号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、とりわけ織物材料または布地の製造に使用される弾性ヤーンなど、とくには上述の欠点を克服する弾性複合ヤーンのためのコアであって、伸び作用がとくには大きな応力が加わる場合において低減されるが、とくには織物製品において、好ましくは着用の快適さが、同じ織物製品のうちのより小さい応力に曝される領域においてきわめて一定に保たれるコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴によって解決される。
【0010】
本発明によれば、弾性複合ヤーン、とくには好ましくはとりわけ横糸および/または経糸として織物の製造における使用に適するべき弾性織物ヤーンのためのフィラメント状コアが、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを備え、これら少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの各々は、そのパッケージ長さの少なくとも約2倍に引き伸ばすことが可能であり、そのパッケージ長さの2倍の引き伸ばしから解放された後に少なくとも90%から100%までの弾性リカバリを有する。弾性ヤーンに関してフィラメント状コアによってもたらされるリカバリ力を大きくするために、本発明の発明者は、弾性複合ヤーンに使用される単一の弾性パフォーマンスフィラメントの質量/密度を単純に増加させることが、実際にリカバリ力を増加させるが、とくには弾性複合ヤーンのフィラメント状コアを製作するための製造プロセスの効率により、弾性パフォーマンスフィラメントに関する寸法の増大は限定されることに気が付いた。例えば、100デニールを超える質量密度を有する弾性パフォーマンスフィラメントは、容易かつ効率的に処理することができないが、50デニールまたは60デニール未満の質量/密度をそれぞれ有する2つの別々の弾性パフォーマンスフィラメントであれば、これら2つの細かい弾性パフォーマンスフィラメントを処理することは、はるかに効果的かつ簡単であることが判明した。驚くべきことに、2つ以上の弾性パフォーマンスフィラメントを使用すると、リカバリ力が各々の単一の特定の弾性パフォーマンスフィラメントに関して2倍の質量/密度を提供することによって単純に増加するだけでなく、むしろ粘着および滑りなどの2つの弾性パフォーマンスフィラメントの間の相互作用ゆえに、フィラメント状コアの弾性挙動が大きく改善されることが明らかになった。この相互作用は、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの配置の仕方によって調整および変更可能である。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント間の接触面を増加させるために、それぞれの弾性フィラメントを互いにねじることが、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの緩い配置または実質的に平行な配置と比べて有利である。さらに、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント、とくには4つ,5つ,6つ,または7つ以上の弾性パフォーマンスフィラメントを、入り交じらせることができ、あるいは結合させることができ、あるいは他の接続のやり方であってよい。接続点における少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの滑りを回避するために、固定の接続点/領域を設けることができる。これらの接続点を、とくには熱成形によって実現することができる。この種の接続方法により、例えば軸上の第1の部分におけるフィラメント状コアまたはヤーンのドラフト比が、フィラメント状コアまたはヤーンの後続部分のドラフト比よりも大きいなど、1つの同じ弾性ヤーンに沿って、あるいは1つのフィラメント状コアにおいて、異なる弾性性能を提供することが可能である。接続点は、フィラメント状コアまたは弾性ヤーンの軸上の特定の部分における弾性性能を維持することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、少なくとも2つの撚り合わせおよび/または弾性パフォーマンスフィラメントゆえに、好ましくは連続的なとくには螺旋状の摩擦接触が前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの間にもたらされるように、かつ/または綿繊維などの布地繊維などの追加の摩擦増加要素が前記フィラメントの間に少なくとも部分的に保持され、とくにはクランプされるように、撚り合わせられ、さらには/あるいは入り交じらされており、かつ/または前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、ナイロンフィラメントなどのさらなる非弾性フィラメントへと接続され、とくには、相互接続は、前記少なくとも2つの弾性フィラメントのうちの第1の弾性フィラメントが、好ましくは第1の製造工程に従って前記非弾性フィラメントと撚り合わせられ、さらには/あるいは入り交じらされ、撚り合わせられ、さらには/あるいは入り交じらされた前記非弾性フィラメントと前記弾性パフォーマンスフィラメントとの対が、撚り合わせおよび/または入り交じらせによって第2の弾性パフォーマンスフィラメントへと接続されることで実現され、とくには例えば綿繊維などの布地繊維などの追加の摩擦増加要素が、前記それぞれのフィラメントの間に保持および/またはクランプされる。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による少なくとも1つのさらなる非弾性フィラメントのこの特定の相互接続は、単一の弾性パフォーマンスフィラメント、例えばLycra(登録商標)フィラメントの滑りの問題を解決する。弾性伸びの大きい衣類が毎日の身体運動の際に着用されると、衣類の一部が他の部分よりも大きく伸びる。とくには、衣類の臀部において、これらの部分は、座ったり立ったりするせいで、より大きく伸ばされる。布地が強い引っ張りの運動ゆえにあまりタイトではなく、密集していないとき、好ましくは横糸の内部に位置する弾性パフォーマンスフィラメントが伸び、反発する。とくには継ぎ目の領域において弾性パフォーマンスフィラメントを保持する充分な摩擦が存在しない場合、弾性パフォーマンスフィラメントは、ヤーンの内側および前記継ぎ目の縫い目から滑る可能性がある。弾性パフォーマンスフィラメントは、もはや前記縫い目に接続されておらず、これは、ヤーンの所望の反発効果を損なう原因となり、衣類のこれらの伸びの大きい領域において布地が緩んで見える。しかしながら、互いに撚り合わせられた少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの好ましい相互接続によって、2つの弾性パフォーマンスフィラメント間の摩擦が非常に増大し、とくには縫い目の領域における好ましくない滑りが回避されることが見出された。
【0012】
2つの弾性パフォーマンスフィラメントを撚り合わせ、さらには/あるいは予め入り交じらせることによって、ヤーン内の1つの弾性パフォーマンスフィラメントの滑りが回避される。互いに撚り合わせられ、綿繊維などの布地繊維と一緒に製造されるこのような2組の弾性パフォーマンスフィラメント、とくには2組のエラスタンまたは2つの別個のLycraを使用することは、互いの周囲の弾性パフォーマンスフィラメントの別々のねじりゆえに、より多くの綿繊維を保持するという効果を有する。さらに、非弾性および弾性パフォーマンスフィラメントの組が使用される場合、弾性パフォーマンスフィラメントの滑りは、とくには縫合の領域において弱くなる。好ましくは、撚り合わせおよび入り交じらせは、繊維材料、とくには綿繊維などの布地繊維を同時に導入し、とくには撚り合わせることによって実現され、したがって少なくとも2つの弾性フィラメントならびに/あるいは非弾性および1つの弾性フィラメントならびに/あるいは2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび非弾性フィラメントの間に、摩擦増加要素として機能する繊維要素が導入され、クランプされる。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による少なくとも1つの非弾性フィラメントの好ましくは連続的なとりわけ螺旋状の摩擦接触により、弾性パフォーマンスフィラメントのうちの1つが機械的に破壊され、あるいは破られた場合に、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントのうちの他の1つが、弾性複合ヤーンおよびそれによって作られた布地の弾性性能の維持を生じさせるという安全機構がもたらされる。残りの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による非弾性フィラメントが、不良のフィラメントを補う。この安全性の態様は、布地の製造ならびに衣類の洗浄および衣類の乾燥を改善する。
【0013】
上述の提供ステップによれば、2つの弾性パフォーマンスフィラメントと非弾性フィラメントとを有することにより、既に入り交じったフィラメントの予備被覆を回避することができ、これによりコストが低減される。2つの非弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による非弾性フィラメントの紡糸は、所望のフィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンを達成するための製造コストの低減に役立つ。
【0014】
本発明による前記フィラメント状コアは、とくにはその寸法(例えば、断面)材料に関して好ましい実施形態によれば同一に製造または構造化されてよい少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを含み、あるいはそれらのみで構成される。しかしながら、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、それらの製造プロセスゆえに、それらの製造の性質に応じた極端な長さまたは不定の長さを有する繊維ストランドであってよい。フィラメント状コアを形成するために、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、別々に製造され、別々にもたらされてよい。フィラメント状コアは、弾性パフォーマンスフィラメントの製造プロセスとは別に製作することができ、あるいは弾性パフォーマンスフィラメントの製造プロセスと同時に製作することができる。フィラメント状コアを、弾性複合ヤーンの製造プロセスと同時に製作することができ、あるいは前段階において製作して中間製品を生み出し、そのような中間製品を第2の製造段階において弾性複合ヤーンの製造プロセスへと導入することができる。2つの弾性パフォーマンスフィラメントの各々を、マンドレルまたはスピンドル上に設けることができるが、作成されたフィラメント状コアも、自身のマンドレルまたはスピンドル上に設けることができる。
【0015】
弾性パフォーマンスフィラメントの典型的な例は、エラスタン、スパンデックス、および同様の弾性特性を有するフィラメントなどのポリウレタン繊維である。一般に、本発明による弾性パフォーマンスフィラメントは、とくには、パッケージ長さの少なくとも300%または400%(例えば、破断点伸びとして)に伸ばすことができる。パッケージ長さは、基本的に引っ張りの張力が加わっていないときの弾性パフォーマンスフィラメントの初期の長さまたは元の長さとして理解されるべきである。本発明に従って使用される弾性パフォーマンスフィラメントの例として、これらに限られるわけではないが、Dowxla、Dorlastan(Bayer、独国)、Lycra(Invista、米国)、Clerrspan(Globe Mfg.Co.、米国)、Glospan(Globe Mfg.Co.、米国)、Spandaven(Gomelast C.A.、ベネズエラ)、Rocia(Asahi Chemical Ind.、日本)、Fujibo Spandex(Fuji Spinning、日本)、Kanebo LooBell 15(Kanebo Ltd.、日本)、Spantel(Kuraray、日本)、Mobilon(Nisshinbo Industries)、Opelon(Toray-DuPont Co.Ltd.)、Espa(Toyoba Co.)、Acelan(Teakwang Industries)、Texlon(Tongkook Synthetic)、Toplon(Hyosung)、Yantai(Yantei Spandex)、Linel、Linetex(Fillatice SpA)が挙げられる。一般に、これらの弾性パフォーマンスフィラメントは、ヤーンの基礎として充分な弾性特性を提供する。ポリオレフィン製の弾性パフォーマンスフィラメントも使用できることに留意されたい。その上、好ましい弾性パフォーマンスフィラメントを、その(自身の)製造プロセスに従い、単一またはモノ弾性パフォーマンスフィラメントを形成するように互いに融合させられる複数の弾性モノフィラメントで形成してもよい。本発明による単一の弾性パフォーマンスフィラメントは、その製造工程の後に、中間製品として使用され、すなわちそれ自身の製造工程が完結されるが、とくにはマンドレル上などにもたらされた各々の単一の弾性パフォーマンスフィラメントを、とくにはフィラメント状コアを実現するためにすぐに利用することができる。弾性パフォーマンスフィラメントとして、例えばInvista製のLycra(登録商標)など、スパンデックスまたはエラスタンを使用することができる。Lycra(登録商標)フィラメントが使用される場合、20~100デニール、とくには40~140または200デニールが適している。本発明による弾性複合ヤーンは、短い長さを有するステープルまたは繊維、とくには紡糸繊維で構成される繊維シースを備えることができる。デニム布地の場合、綿繊維が使用される。シースに適した繊維は、綿、ウール、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、などの繊維である。好ましくは、綿のステープルファイバが、弾性ヤーンに自然な外観および自然な感覚を提供するために使用される。フィラメント状コアを取り囲むシースは、好都合には、フィラメント状コアを完全に覆う。フィラメント状コアの周囲を繊維で実現するために、任意の適切な製造プロセスを使用することができる。好ましいプロセスは、紡糸、とくにはリング紡糸である。繊維の紡糸は、ステープルファイバのストランドのドラフトおよび撚りを組み合わせることによってフィラメント状コアを有する弾性複合ヤーンを形成する製造プロセスである。フィラメント状コアを繊維のシースと組み合わせるためにコア紡糸を使用することもできることに留意されたい。
【0016】
弾性複合ヤーンを、弾性および非弾性の上記および下記の定義による少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による少なくとも1つの非弾性パフォーマンスフィラメントのみで構成される「裸の」(繊維シースを持たない)フィラメント状コアによって実現することができる。しかしながら、各々の弾性パフォーマンスフィラメントは、2つの別個の繊維ロービングによって生成することができる自身の繊維シースを備えることもできる。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントを、フィラメント状コアを形成するために互いに接続することができる。接続は、前記フィラメントを互いにどのように接続できるかを示すために参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2012/062480号パンフレットに記載されているような複数の接続点によって実現することができる。例えば、接続を、フィラメントの一方を他方のフィラメントまたは残りのフィラメントの周囲に入り交じらせ、あるいは撚り合わせることによって実現することができる。前記フィラメント間の接続を、隣接するフィラメント間に連続的な接触面を提供するためにフィラメント状コアに沿って連続的に実現することもできる。より弾性的なフィラメントが使用されると、フィラメント状コアの弾性コンパートメントを、接触面における付着および滑り摩擦効果を用いて調整することができる。
【0017】
本発明による前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの各々は、その初期長さ、すなわちパッケージ長さの少なくとも約2倍に伸ばすことができなければならない。少なくとも2つの弾性フィラメントにその初期長さの少なくとも約2倍への引き伸ばしによって応力を加えた後に、少なくとも90%~100%までの弾性リカバリが生じる。弾性リカバリは、上述のとおりの前記フィラメントの弾性性能のパラメータである。弾性リカバリ(単位は、パーセント)は、引っ張りの応力の解放後の弾性パフォーマンスフィラメントの長さのこの引っ張りの応力が加えられる前の弾性パフォーマンスフィラメントの長さ(パッケージ長さ)に対する比を表す。高いパーセンテージ、すなわち90%と100%との間の弾性リカバリは、応力が加えられた後に実質的に初期の長さへと戻る弾性能力を提供すると考えられるべきである。これに関して、非弾性(コントロール)フィラメントは、後述されるように、低いパーセンテージの弾性リカバリによって定義され、すなわち非弾性コントロールフィラメントは、その初期の長さの少なくとも2倍の引き伸ばしが実現された場合に、初期の長さに実質的に戻ることができないと考えられる。フィラメントの前記パーセント弾性リカバリを、その全内容が参照により本明細書に明示的に組み込まれる規格ASTMD3107に従って試験し、測定することができる。前記試験方法ASTMD3107は、ヤーンから作られた布地の試験方法である。当然ながら、ヤーン自体の弾性リカバリを布地の試験結果から逸脱させることが可能である。しかしながら、ヤーンの試験方法および試験装置を、フィラメントおよび/またはヤーンの個々の測定に使用することができる。例えば、USTER TENSOR RAPID-3という装置(Uster、スイス)が、ヤーンまたはフィラメントの弾性、破断力、などを測定することができる。前記試験装置の一例は、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2012/062480号パンフレットに記載されている。
【0018】
上述したように、少なくとも2つの弾性フィラメントを、同一に実現することができ、すなわち同一の構造、材料、および寸法(断面)によって実現することができる。しかしながら、同一の弾性パフォーマンスフィラメントであっても、それらが異なる弾性性能をもたらすように、熱処理などの処理が可能である。
【0019】
フィラメントコアを伸ばすとき、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントによって加えられかつ生成される前記それぞれのリカバリ力は、互いに異なる。フィラメント状コアに与えられた所与の張力または伸びによって、一方の弾性パフォーマンスフィラメントは、他方の弾性パフォーマンスフィラメントの反発力よりも小さい(または、大きい)リカバリ力または反発力をもたらす。したがって、本発明によれば、弾性複合ヤーンのフィラメント状コア、したがって弾性複合ヤーンで作られた布地のリカバリ挙動を、ヤーン/織物の使用中に予想される応力に対して個別に調整することができる。2つの弾性パフォーマンスフィラメントによる反発力またはリカバリ力の発生に関する異なる挙動は、多様に実現することが可能であるが、種々の実現が例として後述される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えばそのパッケージ長さの1.2、1.5、2.0、および/または2.5倍の伸びなど、フィラメント状コアの所与の伸びにおいて、フィラメント状コアに組み込まれた前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、とりわけそのパッケージ長さの例えば1.0~2.0倍の所与の伸び領域に関し、とくには上述の所与の伸びの各々において、異なるリカバリ力をもたらす。好ましくは、弾性複合ヤーンの弾性伸びの全体にわたって、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、異なるリカバリ力をもたらす。
【0021】
本発明のさらなる発展によれば、フィラメント状コアの前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、とくには弾性複合ヤーンの弾性伸びの基本的に50%、80%(弾性挙動)、または全体において、等しい弾性伸びにおいて異なる弾性をもたらすように、弾性複合ヤーン、とくにはフィラメント状コアを形成するためにもたらされるときに構造付けられ、さらには/あるいは調整される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記フィラメント状コアの第1の弾性パフォーマンスフィラメントおよび前記フィラメント状コアの第2の弾性パフォーマンスフィラメントは、前記フィラメント状コアを構造化するためにとくには別個に供給される。本発明によるフィラメント状コアにおいて、第3の、またはさらなる別の弾性パフォーマンスフィラメントを予見できることは、明らかである。
【0023】
本発明のさらなる発展によれば、フィラメント状コアを、非線形な応力-歪み挙動を提供するように構成することができる。通常は、1つの単一の弾性パフォーマンスフィラメントを考えると、この単一のフィラメントの応力-歪み挙動は、とくには伸びの開始時に基本的に線形であり、その後に歪みの増加の勾配が連続的に立ち上がる基本的に放物線状の経過がその後に続く。非線形な応力-歪み挙動は、とくには予め定められたブレーク点/範囲において歪み挙動の不連続な成長または進行をもたらす点で、上述の線形な応力-歪み挙動から相違する。前記ブレーク点において、応力勾配は、フィラメント状コアに加えられる連続的な伸びまたは歪みに対して不連続になる。この不連続を、それぞれの応力-歪み線図において、ブレーク点/範囲において連続的な伸び/歪みに対する応力勾配の傾きが急激に変化/増加することによって特定することができる。とくには最初の伸びとブレーク点との間など、ブレーク点未満の伸びの領域が、リカバリ力およびリカバリ力の勾配が小さい快適ゾーンを確立する。前記ブレーク点を上回るさらなる伸びにおいては、パワーゾーンが活発であり、大きなリカバリ力および大きなリカバリ力の勾配をもたらす。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、フィラメント状コアは、追加のリカバリ力を増強するための力シフト機構を備える。前記追加のリカバリ力をもたらす動作は、好ましくは所定のシフト点に定められる。前記シフト点は、フィラメント状コアの伸びのレートに依存し、とくには、前記力シフト機構は、フィラメント状コアの伸びの開始時に、伸ばされたフィラメント状コアによってもたらされる弾性リカバリ力が、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントのうちのこの伸び段階における少なくとも1つの第1の活発なパフォーマンスフィラメントによってもたらされるように予め設定される。他方の第2の弾性パフォーマンスフィラメントは、受動的状態にとどまり、したがって、この他方の受動的な弾性パフォーマンスフィラメントは、本質的にフィラメント状コアにリカバリ力をもたらさない。
【0025】
とくに、前記シフト点は、フィラメント状コアの所定の伸びのレート、好ましくは所定の伸びの長さに従って設定される。前記シフト点において、受動的な弾性パフォーマンスフィラメントは活発になり、リカバリ力をもたらす。フィラメント状のコアの観点からは、追加のリカバリ力が、既に活発な第1の弾性パフォーマンスフィラメントのリカバリ力に加えてもたらされる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記力のシフト点は、パッケージ長さの0%または5%よりも大きく、パッケージ長さの100%よりも小さいフィラメント状コアの伸び、とくには10%と20%、50%、または60%との間のフィラメント状コアの伸びに設定される。
【0027】
フィラメント状コアの伸びの開始を、特定の長さ(例えば、50cm)のフィラメント状コアを使用し、両端に引張応力を加えることによって定義することができ、フィラメント状コアが応力を加えられた2つの端部の間で直線状の水平な形状を占めるや否や、フィラメント状コアの伸びが始まったとみなすことができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1の弾性パフォーマンスフィラメントは、1.0よりも大きく、とくには2.0よりも大きい第1のドラフト比を有する。前記フィラメント状コアの前記第2の弾性パフォーマンスフィラメントは、1.0よりも大きく、とくには2.0よりも大きい第2のドラフト比を有する。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの異なるドラフト比の調整が、前記力シフト機構をフィラメント状コアにもたらすことができる。
【0029】
ドラフト比は、ストックから取り出された弾性パフォーマンスフィラメントの長さ、とくにはパッケージ長さと、とくにはドラフト比発生装置としての紡糸装置または別の応力発生装置によってフィラメントコアへともたらされる弾性パフォーマンスフィラメントの長さとの間の比である。したがって、1.0よりも大きいドラフト比は、ストックの弾性パフォーマンスフィラメントに対する重量におけるバルクの減少の尺度である。
【0030】
本発明の第1の態様によれば、第1および第2のドラフト比は、少なくとも0.1または0.3、好ましくは少なくとも0.5、0.8、または1.0、あるいは1.5だけ互いに異なる。好ましくは、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、同一に製造または構造化される。
【0031】
2つの弾性パフォーマンスフィラメントの間の前記ドラフト比の差を調整し、ドラフト比を、弾性ヤーン、あるいは前記フィラメント状コアを有し、とくにはドラフト比において相違する前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを有する弾性複合ヤーンによって製造され、とくには織られる織物布地に加わる予想応力に適合させることができる。高いストレス条件が予想される場合、ドラフト比の差はより大きく、ストレス条件が多かれ少なかれ低い場合、ドラフト比の差はより小さくなり得る。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1および第2のドラフト比の間のドラフト比の差は、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0、1.5、または2.0よりも大きく、かつ/または1.5または2.0よりも小さく、とくには0.2と2.0との間あるいは0.4と1.5との間である。
【0033】
本発明のさらなる実施形態に関して、第3の随意によるさらなる弾性パフォーマンスフィラメントが、第1および第2のドラフト比の一方と同じであり、あるいは少なくとも0.1、好ましくは0.2、0.3、0.5、0.8、または1.0だけ第1および第2のドラフト比と異なる第3の随意によるさらなるドラフト比を備え、第3のさらなるドラフト比とそれぞれの他のドラフト比との間のそれぞれの差は、0.1、0.2、0.3、0.5、または1.0よりも大きく、かつ/または2.0よりも小さく、とりわけ0.1と1.0との間または0.3と0.8との間である。
【0034】
好ましくは、第1のドラフト比は、1.0と2.0との間、好ましくは1.0と1.5との間であり、第2のドラフト比は、少なくとも1.5、好ましくは1.5と4.0との間または2.0と3.5との間である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび好ましくは第3の随意によるさらなる弾性パフォーマンスフィラメントは、とくには5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0未満であるそれぞれのドラフト比を有する。
【0036】
とくには、例えば40~70デニールを有するLycra(登録商標)またはDorlastan(登録商標)など、前記弾性パフォーマンスフィラメントについてスパンデックスまたはエラスタンが使用される場合、2.5~4.0のドラフト比が考えられる。110~140デニールのLycra(登録商標)が使用される場合、より大きな3.0~4.5というドラフト比が考えられるべきである。弾性パフォーマンスフィラメントのドラフト比を、4.5よりもさらに大きくすることができる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記フィラメント状コアを形成するために使用される少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、(繊維シースに対して)取り付けられていない状態の少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントをそれらのパッケージ長さの少なくとも約1.2、1.5、2.0、および/または3.0倍に弾性的に引き伸ばしたときに少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントのそれぞれのリカバリ力が互いに異なるように、異なって構造付けまたは製造される。第1の弾性パフォーマンスフィラメントによってもたらされる第1のリカバリ力は、第2の弾性パフォーマンスフィラメントによってもたらされる第2のリカバリ力よりも少なくとも5%、少なくとも10%、または少なくとも20%大きい。
【0038】
好ましくは、前記フィラメント状コアの形成に使用される少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、異なる厚さを備え、この厚さの差は、2.5、5.0、または10.0デニールよりも大きく、とくには少なくとも2つの弾性パフォーマンス要素の厚さは、20、40、70、105、140デニールから選択される。少なくとも2つの弾性フィラメントの異なる弾性性能は、弾性パフォーマンスフィラメントの異なる厚さの選択および/または異なるドラフト比の適用によって実現できることは明らかである。当然ながら、同じサイズの弾性パフォーマンスフィラメントを使用し、2つの異なるドラフト比を適用して、弾性的に応力が加えられたときに異なる反応を示すようにすることが好ましい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、フィラメント状コアは、少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントをさらに備え、この少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントは、恒久的な変形を生じることなく最大長さを超えて引き伸ばすことが不可能であり、この最大長さは、少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントのパッケージ長さの1.5倍よりも小さい。非弾性コントロールフィラメントの典型的な材料またはこのようなフィラメントのそれぞれの例は、T400、PBT、ポリエステル、ナイロン、などである。
【0040】
本発明の第1の態様によれば、弾性複合ヤーンは、前記フィラメント状コアを含み、あるいは前記フィラメント状コアのみで構成される。弾性複合ヤーンは、前記フィラメント状コアを取り囲むシースを備えることができる。弾性複合ヤーンは、織物の製造における使用に適している。とくには、弾性複合ヤーンは、例えばとくには横糸が2本以上の経糸の下を通過する、経糸が表となる綿のあや織り織物であるジーンまたはデニム布地の製造に使用される。本発明による弾性複合ヤーンは、横糸および/または経糸に使用することができる。好ましくは、デニム布地の全体において、本発明による同じ弾性複合ヤーンが使用される。
【0041】
さらに、本発明は、本発明による弾性複合ヤーンに基づいて製造される布地、とくにはデニム布地に関する。本発明のさらなる態様は、上述のとおりの弾性複合ヤーンを用いることによって製造されたデニム布地またはジーン布地などの布地に関する。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、とくには上述のようにフィラメント状コアまたは弾性複合ヤーンを製作するための製造方法に関する。本発明の弾性複合ヤーンの上記の説明の製造プロセスに関連する態様の全てが、本発明による製造方法の一部でなければならないことに留意されたい。
【0043】
フィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンを製造するための方法は、パッケージ長さの少なくとも約2倍に引き伸ばすことが可能であり、パッケージ長さの2倍への引き伸ばしから解放された後に少なくとも90%から100%までの弾性リカバリを有する少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを別々にもたらすステップを含む。さらに、この方法は、恒久的な変形を生じることなく最大長さを超えて引き伸ばすことが不可能であり、前記最大長さはパッケージ長さの1.5倍よりも小さい少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントを、随意により供給または導入するステップを含む。さらに、この方法は、好ましくは、前記フィラメント状コアの周囲、とくには前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントの周囲に、繊維シースを配置し、とくには紡糸するステップを含む。とくには、例えば紡糸などの配置するステップの前に、前記フィラメント状コアまたは前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、最終的な弾性複合ヤーンが伸ばされるときに前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントが異なる弾性リカバリ力をもたらすように構造付けされ、あるいは構成される。
【0044】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、構成または構造付けのステップは、前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントに、とくには前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの弾性伸びの基本的に30%、50%、80%、または全体において、とくには共通の弾性伸びについて異なる弾性率(ヤング率)をもたらすことを含む。
【0045】
本発明による方法のさらなる発展によれば、構成または構造付けのステップは、第1の弾性パフォーマンスフィラメントの第1のドラフト比および第2の弾性パフォーマンスフィラメントの第2のドラフト比を生成することを含み、第1および第2のドラフト比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、0.3、0.5、0.8、または1.0だけ互いに異なり、とくには前記少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントは、同一構造である。
【0046】
2つの弾性パフォーマンスフィラメントの異なる弾性挙動は、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメントについて異なるドラフト比をもたらすステップならびに異なる弾性率をもたらすステップおよび/または異なる厚さをもたらすステップの組み合わせによっても実現できることは明らかである。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、この方法は、とくには前記繊維シースを製作するために、綿繊維などの繊維の1つまたは少なくとも2つの別々のロービングをもたらすことをさらに含むことができる。これらの2つの別々のロービングのうちの1つを、各々の弾性パフォーマンスフィラメントの周囲に繊維サブシースを紡糸するために使用することができ、その後に少なくとも2つの埋め込まれた弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による前記少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントを合流させて、とくにはフィラメント状コアを形成すると同時に、このフィラメント状コアを囲む全体的な繊維シースまたはコートを形成することができる。好ましくは、随意により追加される少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントは、繊維サブシースの紡糸によって予め被覆されるのではなく、むしろ合流が、繊維サブシースによって囲まれた2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび「裸」の少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントによって実現される。それぞれの繊維シースによって覆われたフィラメントによって、弾性パフォーマンスフィラメントの滑りを防止するためにフィラメントが綿繊維などの布地繊維による摩擦増加要素を有している弾性複合ヤーンを実現することができる。
【0048】
本発明による弾性複合ヤーンを製造するための別の方法によれば、フィラメント状コア自体を、最初に実現しても、あるいは繊維シースを形成するための繊維を紡糸する際に同時に実現してもよい。
【0049】
しかしながら、好ましい実施形態において、繊維シースは、少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントの周囲に繊維を紡糸することによって実現される。少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントが、弾性複合ヤーンを完成させるために、繊維シースによって既に囲まれた非弾性コントロールフィラメントへと加えられる。弾性パフォーマンスフィラメントが、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントに異なる弾性挙動をもたらすために、異なるドラフト比および/または異なる厚さおよび/または異なる弾性材料にて非弾性フィラメント/繊維シースの構成に一体化されることは明らかである。
【0050】
本発明のさらなる独立した態様によれば、本発明による上述の弾性複合ヤーンに従って実現することができる弾性複合ヤーンを製造するための設備が提供される。本発明による設備を、本発明による弾性複合ヤーンの製造方法を実現するように定めることができ、その逆も然りであることに留意されたい。
【0051】
本発明による設備は、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを別々に供給するための少なくとも2つの別々の供給部と、繊維シースを製作するための綿繊維などの繊維の少なくとも2つの別々のロービングを別々の供給するための随意による1つまたは少なくとも2つの別々のロービング供給部とを備える。各々のロービングを、フィラメントごとの繊維サブシースを作成するために使用することができる。さらに、この設備は、随意により、1つの非弾性コントロールフィラメントを別途供給するための少なくとも1つのさらなる供給部を備えることができる。好ましくは、各々の個別のロービングについて、弾性パフォーマンスフィラメントがとくには2つの繊維ロービングの中央に予見され、とくには、螺旋状のフィラメント構造を生み出すために、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメントを含んでいる2つの繊維ロービングが、とくには2つの別々のロービングおよびそれぞれの弾性パフォーマンスフィラメントが組み合わせられた後で一体に紡糸される。
【0052】
さらに、本発明による設備は、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの各々について1つのドラフト比発生装置を備え、少なくとも2つのドラフト比発生装置は、最終製品としての弾性複合ヤーンに少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントをとくには互いの差が少なくとも0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、または1.0である異なるドラフト比にて導入するように調節され、あるいは調節可能である。
【0053】
好ましい実施形態によれば、紡糸ステーション、とくにはリング紡糸ステーション、および/またはフィラメント合流ステーションが、フィラメント供給方向に関してドラフト比発生装置の下流に配置される。前記紡糸ステーションは、ドラフト比発生装置の下流かつフィラメント合流ステーションの上流に配置されてよく、フィラメント合流ステーションには最終ヤーンパッケージが続いてよい。とくには、紡糸ステーションは、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントにのみ組み合わせられ、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを繊維サブシースで覆う。随意による非弾性コントロールフィラメントは、弾性複合ヤーンへと合流するまで、繊維を受け取ることなく、むしろ裸のままで紡糸ステーションを通過する。
【0054】
あるいは、非弾性コントロールフィラメントが予見される場合には、紡糸ステーションを合流ステーションの上流に配置して、繊維からなる少なくとも1つのロービングの繊維を非弾性コントロールフィラメントの周囲に紡糸することができる。この紡糸作用の下流に、合流ステーションが実現され、その場所において、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントが繊維シースへと一体化され、両方のフィラメントが既に異なるドラフト比を有している。
【0055】
合流ステーションの中または合流ステーションの下流において、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントおよび随意による少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメントは、例えば入り交じらされ、あるいはねじられることによって、互いに接続される。
【0056】
本発明のさらなる態様、特性、および特徴が、以下の典型的な実施形態の説明を添付の図面と併せて検討することによって明らかになり、実質的に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1a】本発明の第1の基本的な実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略の断面図である。
【
図1b】
図1aによる弾性複合ヤーンの概略の側面図である。
【
図2a】本発明の第2の実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態による弾性複合ヤーンを製作するための製造処理工程の概略の側面図である。
【
図3a】本発明の第3の実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略の断面図である。
【
図3b】
図3aの本発明の第3の実施形態による弾性複合ヤーンを製作するための製造処理工程の概略の側面図である。
【
図4a】本発明の第4の実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略の斜視断面図である。
【
図4b】
図4aによる弾性複合ヤーンの概略の断面図である。
【
図5】
図4aおよび
図4bの実施形態による弾性複合ヤーンの製作の製造処理工程の概略の側面図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略の斜視断面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態による弾性複合ヤーンを製作するための製造処理工程の概略の側面図である。
【
図8】本発明の第6の実施形態によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーンの概略の斜視断面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態による弾性複合ヤーンの概略の断面図である。
【
図10】本発明の第6の実施形態による弾性複合ヤーンを製作するための製造処理工程の概略の側面図である。
【
図11】本発明の第7の実施形態によるフィラメント状コアを製作するための製造装置の第1の実施形態の概略の側面図である。
【
図12】本発明の第1または第2の実施形態による弾性複合ヤーンを製造するための装置の第2の実施形態の概略の正面図である。
【
図13】本発明の第3または第4の実施形態による弾性複合ヤーンを製造するための第3の実施形態の装置の概略の正面図である。
【
図14】本発明の第5または第6の実施形態による弾性複合ヤーンを製造するための装置の第4の実施形態の概略の正面図である。
【
図15】本発明の第5または第6の実施形態による弾性複合ヤーンを製造するための
図14の実施形態に類似した装置の概略の正面図である。
【
図16】本発明の第8の実施形態による弾性ヤーンを製造するための第5の実施形態による装置の斜視の概略の正面図である。
【
図17】本発明の第9の実施形態によるエラストマ複合ヤーンを製造するための本発明の第6の実施形態による装置の斜視の概略の正面図である。
【
図18】本発明の第10の実施形態による弾性複合ヤーンを製造するための本発明の第7の実施形態による装置の斜視正面図である。
【
図19】フィラメント状コアの少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントにおいて異なるドラフト比を生じさせるための上述の装置の機械部品の概略の詳細側面図である。
【
図20】異なるドラフト比を生じさせるための別の実施形態における機械部品の詳細側面図である。
【
図21】フィラメント状コアをもたらし、最終的には弾性複合ヤーンをもたらすためのフィラメント/ロービングを一体化する合流ステーションの上方の最終案内ドラムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1aおよび1bに、本発明の第1の基本的な実施形態によるフィラメント状コア3を含む本発明の弾性複合ヤーン1が示されている。前記弾性複合ヤーン1は、第2の主コンポーネントで構成され、すなわち前記フィラメント状コア3に加えて、フィラメント状コア3を完全に囲む繊維状綿シース5で構成され、フィラメント状コア3は、シース5の綿ステープルファイバによって完全に覆われて埋もれている。
【0059】
この第1の実施形態によるヤーン1のフィラメント状コア3は、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13だけで構成される。各々の弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、例えばマルチストランドで作られたエラスタンフィラメントであり、すなわち別個の事前製造プロセスにて製作される独自の弾性パフォーマンスフィラメント11,13を製作するために、複数のマイクロストランドが一体化される。好ましい弾性パフォーマンスフィラメントは、Invista社のLycra(登録商標)および/またはBayer AGのDorlastan(登録商標)によって使用されることができる。そのような弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、エラスタンとして、それらの元のパッケージ長の4~6倍の長さに伸ばすことができる。
【0060】
当然ながら、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13により、少なくともフィラメント状コア3の弾性パフォーマンスが単一の弾性パフォーマンスフィラメント11に対して2倍になるが、本発明の主題によれば、少なくとも2つの別個の弾性パフォーマンスフィラメント11,13が、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の間の接触接続面10を確立させるように配置されるため、フィラメント状コア3のパフォーマンスが予想もできない様相で改善される。前記接触面10を、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13をねじることによって生成することができる。入り交じらせなどの他の相互接続手段も、考慮され得る。弾性パフォーマンスフィラメント11,13の高い弾性ゆえに、接触面10において、スティックスリップ効果としての種々の摩擦の状況が生じ、一方ではそれぞれのフィラメント11,13の弾性パフォーマンスの保護を助け、他方ではそれぞれのフィラメント11,13およびフィラメント状コア3全体のリカバリ性を向上させる。
【0061】
少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を組み合わせられたフィラメント11,13の質量/デニールの総合計と同じ質量/デニールを有する単一のより大きい弾性パフォーマンスフィラメントの代わりに有するフィラメント状コア3を製作するための製造プロセスについて、フィラメント状コア3、ひいては弾性複合ヤーン1の品質を低下させることなく、プロセス速度を向上させることができることが、明らかになった。
【0062】
弾性パフォーマンスフィラメント11,13の各々は、20デニール~140デニールまたは200デニール、好ましくは90デニールまたは100デニール未満の太さを有することができる。しかしながら、フィラメント状コア3は、全体で、30デニールを超え、100デニールまたは120デニールを超え、あるいは150デニールまたは200デニールさえ超える質量/密度を確立することができる。
【0063】
さらに、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13に異なる弾性を付与するために、弾性パフォーマンスフィラメント11,13について異なる弾性材料、異なるドラフト比、および/または異なる太さ、などが考えられることは明らかである。接触面10は、フィラメント状コアの弾性パフォーマンスがその全貯蔵長さにわたって本質的に安定であるように、弾性パフォーマンスフィラメント11,13における異なるドラフト比の維持を支持する。
【0064】
図1aおよび
図1bのこの好ましい実施形態において、フィラメント状コア3は、同じ弾性率を有する同じ弾性材料によって形成された2つの同一構造のパフォーマンスフィラメント11,13で構成される。
【0065】
フィラメント状コア3、すなわち弾性複合ヤーン1の弾性コンパートメントを調整するために、弾性挙動が異なる少なくとも2つの異なる弾性パフォーマンスフィラメント11,13を組み合わせることが好ましい。したがって、フィラメント状コア3は、フィラメント状コア、すなわち弾性複合ヤーン1の伸びに依存する非線形な弾性挙動を提供する。とくには、織物布地を製作するためにフィラメント状コア3を使用する場合、例えば伸びが0%~20%または50%である初期歪み領域においてリカバリ力が小さい快適ゾーンを提供することが有利である。しかしながら、より強い伸びにおいては、はるかに高いリカバリ力が加わる(単一の弾性パフォーマンスフィラメントの線形弾性挙動にしたがって高くなる)はずであり、このより強い伸びの領域は、パワーゾーンと呼ばれる。フィラメント状コア3、ひいては弾性複合ヤーン1全体について普通の弾性挙動をもたらすために、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比を考慮することができる。
【0066】
弾性パフォーマンスフィラメント11のドラフト比を、弾性パフォーマンスフィラメント13のドラフト比よりも低くすることができる。例えば、弾性パフォーマンスフィラメント11が、2.3~2.8のドラフト比を含む一方で、弾性パフォーマンスフィラメント13が、約3.8~4.3であるより大きなドラフト比を有する弾性パフォーマンスフィラメント11に組み合わせられる。
【0067】
このドラフト比の差によって、フィラメント状コア3に加わる引張応力が増大するとき、最初に、より大きいドラフト比を有する第1の弾性パフォーマンスフィラメント13のみが(あるいは、より大きいドラフト比を有する第1の弾性パフォーマンスフィラメント13が主として)「最初にオンになり、もしくは活性化され」、より強い反発力を加える一方で、より低いドラフト比を有する第2の弾性パフォーマンスフィラメント11は、依然として「オフ」または実質的に不動作であり、あるいは反発力の提供においてあまり有効でない。しかしながら、強力な引張応力がヤーン1に加えられると、活性化された弾性パフォーマンスフィラメント13のほかに、パフォーマンスフィラメント11も「オン」になり、反発力を付加し、したがってフィラメント状コア3のリカバリ力をエラティックに増加させる上で有効となる。
【0068】
第1および第2の弾性パフォーマンスフィラメント11,13の2つの異なるドラフト比は、さらなるリカバリ力の増強、すなわちフィラメント状コア3、したがって弾性複合ヤーン1の伸びが伸びシフト点を過ぎるや否やのリカバリ力の増強のための力シフト機能または力シフト機構を提供する。前記伸びシフト点は、弾性パフォーマンスフィラメント11,13に適用される比の差によって予め設定される。前記力シフト機構は、フィラメント状コア3または弾性複合ヤーン1の伸び率に依存し、したがってドラフト比の差に依存する所定のシフト点を定める。さらなる増加したリカバリ力の増強効果を提供するために、ドラフト比の差としての他の種類の力シフト機構が考慮され得ることが、明らかであろう。
【0069】
図19に見られるように、両方の弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、螺旋状または渦巻き状に曲げられ、あるいはねじられており、大きな摩擦接続面10をもたらしている。フィラメント状コア3は、実質的に繊維シース5の中心に配置されている。ヤーン1に基づいて製造された布地は、優れたリカバリ特性を有する一方で、上述の「コルセット」効果は回避される。
【0070】
しかしながら、
図1aの断面図では、ヤーン1の円形の外形を見て取ることができるが、とくには繊維シースが柔らかい配置またはフィラメント状コア3の周囲に紡糸された繊維の蓄積であるため、ヤーン1が任意の種類の外周の断面形状を有することができることは明らかである。
【0071】
図2aおよび
図2bに、弾性複合ヤーン1の第2の実施形態が示されている。図面の説明をより読み易くするために、
図1aおよび
図1bの実施形態と比較して
図2aおよび
図2bの弾性複合ヤーン1の同様または同一の構成要素には、同じ参照符号が使用される。
【0072】
図2aおよび
図2bの実施形態は、
図1aおよび
図1bによる弾性ヤーン1から繊維シース5においてのみ相違する。
図2aおよび
図2bによる繊維シース5における繊維の配列または繊維の蓄積は、ヤーン1の延伸方向に均一に配向された繊維によって実現される。これとは対照的に、
図1aおよび
図1bによる繊維シース5は、異なって配向されてよい。さらに、
図2aおよび
図2bによる繊維シースにおける繊維の断面は、本質的に円形であるが、
図1aおよび
図1bにおける繊維シースによる繊維の断面は、腎臓形の形状を有する。
【0073】
図2bによる製造処理工程は、3つのストランドを示しており、2つの細いストランドが、弾性パフォーマンスフィラメント11,13を表している。より広いストランドは、繊維シース5を形成するための綿繊維で作られたロービング21を表している。
図2bに見られるように、特定の位置、すなわち合流位置または合流ステーションにおいて、先頭の別々にもたらされた2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13が、ねじりよって綿ロービング21と一体化されてヤーン1をもたらし、ねじりの運動は、湾曲したフラッシュTによって表されている。
図1および
図2によるこのヤーン1を製造するための機械における対応する配置が、さらに詳しく後述される
図12に示されている。
【0074】
本発明による弾性複合ヤーン1は、繊維シース5を備えずに実現されてもよく、むしろ例えば前記2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13のみを含む本発明のフィラメント状コア3によって形成されてもよいことは明らかである。
【0075】
しかしながら、好ましい実施形態においては、本発明によるフィラメント状コア3のみで構成される弾性複合ヤーン1を安定化するために、非弾性コントロールフィラメント15を、弾性パフォーマンスフィラメント11,13に組み合わせることができる。弾性パフォーマンスフィラメント11,13を1つの非弾性コントロールフィラメント15に組み合わせ、とくには入り交じらせ、あるいはねじり合わせる少なくとも2つの方法が存在する。それは、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を一緒にする前に実現されるか、あるいは少なくとも3つのフィラメント(2つの弾性フィラメントおよび1つの非弾性フィラメント)を、ただ1つの合流位置または合流ステーション75において一体に組み合わせることができる。
【0076】
弾性複合ヤーンの第7の実施形態(この弾性複合ヤーンは、本明細書において詳しくは描かれていないが、それぞれの機械が、この弾性ヤーン1を製作するための製造工程とともに、
図11,
図16,
図17に示されている)に対応する繊維シースを持たない弾性複合ヤーン1の好ましい実施形態において、複合ヤーン1は、フィラメント状コア3のみで構成される。フィラメント状コア3は、2つの弾性パフォーマンスフィラメント5,11,13と、1つまたは2つの非弾性コントロールフィラメント15とを備える。非弾性コントロールフィラメント15および2つの弾性パフォーマンスフィラメント11または13は、フィラメント状コア3を生成するために、先行する製造プロセスにおいて一緒にされ、とくには入り交じらされ、さらには/あるいは撚り合わせられる。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、フィラメント状コア3は、1つの弾性パフォーマンスフィラメント11または13と、ただ1つの非弾性コントロールフィラメント15とからなるペア2つだけで構成される。フィラメント状コア30が形成されると、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、既に異なるドラフト比を有する。前記異なるドラフト比は、合流時または合流前のいずれかにおいて生成することができる。
【0078】
弾性複合ヤーン1(
図17)を、4つのフィラメント(11,13,15a,15b)、すなわち弾性パフォーマンスフィラメント11,13および前記2つの非弾性コントロールフィラメント15を使用して製造することができる。それらは、
図17に示されている単一の合流ステーション75において互いに合流させられる。この製造装置において、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、既に異なるドラフト比とされて合流ステーション75へともたらされる。
【0079】
弾性複合ヤーン1が、一般に、弾性パフォーマンスフィラメント11,13と、1つ以上の非弾性コントロールフィラメント15とからなるペアを1つ以上含むことができることが、明らかである。しかしながら、1つ、2つ、または3つ以上の弾性パフォーマンスフィラメント11,13を、より少数、同数、またはより多数の非弾性コントロールフィラメント15に組み合わせることも、本特許明細書の特定の実施形態として理解されるべきである。
【0080】
再び繊維シース5を有する弾性複合ヤーン1に戻ると、本発明によるフィラメント状コアを含む弾性複合ヤーン1の第3の実施形態を示している
図3aおよび
図3bを今や参照すべきである。図面の説明を読み易くするために、複合ヤーン1の類似または同等のコンポーネントについては、同じ参照符号が用いられることに注意すべきである。
【0081】
図3aおよび
図3bによる弾性複合ヤーン1は、フィラメント状コア3が、
図3bに示されるように、周囲に2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13が螺旋状または渦巻き状に巻き付けられ、あるいは紡糸される1つの非弾性コントロールフィラメント15でさらに構成される点で、
図1および
図2による上述の弾性複合ヤーンから相違する。2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の螺旋状の配置は、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13が繊維材料21によって被覆された後で実現され、すなわち合流位置75および弾性パフォーマンスフィラメント11,13の周囲の繊維の紡糸作用は、製造プロセスの搬送方向Mに関して互いにずらされている。弾性パフォーマンスフィラメント11,13の周囲の繊維の紡糸作用およびドラフト比発生装置は、合流ステーション75の上方に配置される。
【0082】
フィラメント状コア3は、1つの非弾性コントロールフィラメント15と、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13とからもっぱら構成される。1つの非弾性コントロールフィラメント15は、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13によって中央に位置させられ、保護される。繊維シースが、フィラメント状コア3の軟質保護カバーを呈する。
【0083】
非弾性コントロールフィラメント15は、
図3a、
図3b、
図11、
図13、
図14、
図15、
図16、
図17に示すように、長いモノフィラメントを形成するための短い複数のストランドによって実現することができる。非弾性コントロールフィラメント15は、当業者にとって公知の任意の非弾性フィラメントであってよい。フィラメントは、恒久的な変形を伴うことなく最大長さを超えて伸ばすことができない場合に非弾性とみなされ、前記最大長さは、元のパッケージ長さの1.5倍未満である。適切な非弾性コントロールフィラメント15は、ポリアミド、とくにはナイロン6、ナイロン66、PBTなど、任意の繊維状ポリマーから形成されたフィラメントを含む。さらに、ポリエステルおよびポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)など、ならびにそれらの混合物およびコポリマーも、使用することができる。非弾性コントロールフィラメント15について、ポリエステル、ナイロン、または弾性の上述の定義を有する任意の他の合成品を使用することができる。例えば、二成分弾性ポリエステルであるT400(登録商標)など、弾性マルチエステルまたはエラストメレルを使用することができる。T400(登録商標)はInvista社によって製造され、そのために2つの異なるポリエステルを一緒に押し出すことができる。
【0084】
少なくとも2つのパフォーマンスフィラメント11,13および少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント15を、複数の接続点において接続することができる。接続は、入り交じらせまたはねじりによって実現することができる。接続に関し、あるいはフィラメント(11,13,15)全般の接続に関して、WO2012/062480A2の内容が、本特許明細書の開示に含まれるものとみなされる。
【0085】
本発明によれば、フィラメント状コア3は、弾性複合ヤーン1に加わると予想される応力および歪みに応じて、非線形の異なる弾性挙動を含む。
【0086】
このような調整されたリカバリ挙動は、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13に異なるドラフト比を適用することによって生成することができる。第1の弾性パフォーマンスフィラメント11は、第2の弾性パフォーマンスフィラメント13の第2のドラフト比よりも小さい第1のドラフト比を含む。したがって、弾性複合ヤーン1に小さな伸びが加わる応力の状況において、第1の場所では、第2の弾性パフォーマンスフィラメント13が(より)活発であり、第1の(活動すらしないかもしれない)弾性パフォーマンスフィラメント11よりも高いリカバリ力を提供する。これは、弾性パフォーマンスフィラメント13におけるより高いドラフト比ゆえである。しかしながら、得られる弾性複合ヤーンのリカバリ力はより低く、なぜならば、第1の弾性パフォーマンスフィラメント11が、同一の弾性リカバリ力をもたらす2つの弾性パフォーマンスフィラメントを有する一般的な弾性複合ヤーンと比較して、より小さいリカバリ力を提供するからである。
【0087】
しかしながら、弾性複合ヤーン1に大きな伸び応力が加わる場合、第1のパフォーマンスフィラメント11は、第2のパフォーマンスフィラメント13を助けるリカバリ力を追加で提供する。したがって、本発明によるフィラメント状コア3のリカバリ力は、フィラメント状コア3に強い伸びが加えられても、依然としてもたらされる。しかしながら、非弾性コントロールフィラメント15は、弾性ヤーン1の過度の引き伸ばしが回避されるという安全機能を提供する。非弾性コントロールフィラメント15が、その弾性限界を超えて引き伸ばされても、異なるドラフト比ゆえの広い範囲内の強いリカバリ力が、その場合でも最良のリカバリ力を提供する。
【0088】
本発明による弾性複合ヤーン1に基づいて製造される布地、とりわけデニムは、上述した「コルセット」の問題に悩まされることがない。さらに、強い伸び応力においてでも、リカバリ力(とくには、より低いドラフト比を有する弾性パフォーマンスフィラメントによって引き起こされる)を依然としてもたらすことができるので、伸び作用が大幅に軽減される。
【0089】
上記は、本発明によるフィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンとの比較におけるフィラメント状コアおよび/または一般的な弾性複合ヤーンの挙動の概略図である。この線図は、フィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンの伸びに応じた応力またはリカバリ力の挙動を示している。
【0090】
破線が、70デニールの質量を有するフィラメント状コアである単一の弾性パフォーマンスフィラメント、およびより大きな質量、すなわち140デニールを有するフィラメント状コアである単一の弾性パフォーマンスフィラメントの弾性挙動を表している。
【0091】
見て取ることができるとおり、単一の70デニールのフィラメントの場合、伸びeがかなり大きくなったとしても、力Fは小さい。対照的に、単一の弾性パフォーマンスフィラメントの材料を2倍(140デニール)にすると、小さな伸びにおいても、フィラメント状コアまたはヤーンによって強いリカバリ力Fまたは応力が加えられる。1つの弾性パフォーマンスフィラメント(それぞれ異なるサイズ)だけを有する公知の両方のフィラメント状コアは、「コルセット」現象または「スラギー」な見た目のいずれかの欠点に悩まされる。
【0092】
とりわけ少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントの異なるドラフト比によって実現される力シフト機構を有するフィラメント状コアを提供する本発明により、本発明によるフィラメント状コア3または弾性複合ヤーン1は、2つの調整された挙動ゾーン、すなわち快適ゾーンおよびパワーゾーンを提供する。ドラフト比の相違の選定が、力の増加の小さな勾配と力の増加の大きな勾配との間のシフト点(ブレーク点)を定める。フィラメント状コアまたは弾性複合ヤーンの挙動は、実線で描かれている。
【0093】
快適ゾーンにおいては、例えば脚の領域に、低いリカバリ力が加わることになり、弾性複合ヤーンまたはフィラメント状コアによって製造された織物材料のユーザは、いわゆる「コルセット」効果に悩まされることがない。しかしながら、大きな力が加わる膝領域などの領域では、強い伸長の領域を元の形状に戻すために強いリカバリ力が加えられる。したがって、織物材料が「スラギー」にならない。
【0094】
以下の表に、弾性複合ヤーン1の伸びに応じて異なる弾性挙動を提供するために、弾性パフォーマンスフィラメントの種々の物理的なパラメータを選択するフィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンの種々の例が示される。
【表1】
【0095】
実施例1,3,5,7,9,11,13,16,17,19,20,23,25,27,および29は、いずれも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および非弾性コントロールフィラメント15を含むフィラメント状コアおよび/または弾性複合ヤーンに関する。
【0096】
実施例2,4,6,8,10,12,14,15,18,21,22,24,26,および28は、非弾性コントロールフィラメント15を有さず、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13のみを有するフィラメント状コアまたは弾性複合ヤーンに関する。
【0097】
図4a、
図4b、および
図5によるさらなる実施形態に関して、図面の説明をより分かり易くするために、上述のように、本発明による弾性複合ヤーン1の類似または同一の要素については、同じ参照符号が使用される。
【0098】
図4aおよび
図4bの実施形態は、フィラメント状コア3に関して
図3aの実施形態と同一である。しかしながら、異なる繊維シース5が使用される。
図1による繊維シース5とは対照的に、
図3および
図4による繊維シース5は、不規則に成形されている。しかしながら、弾性複合ヤーン1の弾性挙動は、上述の例に従って説明した弾性挙動と同様である。
【0099】
両方の実施形態によれば、とくには
図3bおよび
図4bに照らし、弾性複合ヤーン1の繊維シース内の少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および非弾性コントロールエレメント15の一体化のための製造処理工程に関して、紡糸ステーションは、綿繊維などの繊維が最初に別個のロービング21を使用することによってそれぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の周囲に別々に紡糸されるという点で、合流ステーション75の上流に位置する。非弾性コントロールフィラメント15は、「裸」のままであり、すなわち今のところは繊維を有さない。合流ステーション75において、既に繊維サブシース5によって囲まれている弾性パフォーマンスフィラメント11,13および非弾性コントロールフィラメント15の両方が、複合ヤーン1を実現するねじり動作Tによって一体に合流させられる。
【0100】
図6および
図7によれば、本発明の複合ヤーン1の第5の実施形態が示されているが、図面の説明をより読み易くするために、ヤーンの同様または同一の構成要素については、同じ参照符号が使用される。
【0101】
図6および
図7による弾性複合ヤーン1は、最初に(フィラメント11,13ではなく)非弾性コントロールフィラメント15がロービング21によって囲まれる点で、製造工程において
図3aおよび
図3bの上述の実施形態から相違する。これに関して、ロービング21は1つだけ使用される。
【0102】
紡糸作用Tの上流に、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13がシース5となるロービング21へと一体化される合流ステーション75が配置されている。少なくとも2つの(裸の)弾性パフォーマンスフィラメント11,13を合流させるとき、とくには少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメントを非弾性コントロールフィラメント21に接続してフィラメント状コア3を形成するために、ねじり動作Tが実行される。
【0103】
図8,
図9,および
図10による弾性複合ヤーン1の第6の実施形態は、とくには、ロービング21、したがって主シース5を製作するための異なる繊維材料の特定の使用において、
図6および
図7のヤーン1とは異なる。製造は、
図6および
図7による第3の実施形態に記載されたものと同様である。
図11~
図18に、フィラメント状コア3および/または弾性複合ヤーン1を製造するための種々の設備が示され、全体に参照符号51が組み合わせられている。以下で、本発明によるフィラメント状コア3および/または弾性複合ヤーン1を製造するための設備51の構成要素/ステーション、作用の点について説明する。
【0104】
図11に、本発明によるフィラメント状コア3を製作するための製造プロセスが、概略的に示されている。前記設備51は、弾性パフォーマンスフィラメント11,13を供給するために隣接する駆動ドラムと協働するボビン91,93上に設けられた第1および第2のパフォーマンスフィラメント11,13の2つの供給源を含む。
【0105】
搬送方向Mにおける下流に、それぞれのドラフト装置95,97が配置され、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13が既知のジェット装置101において一体化される前に、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の最終的な異なるドラフト比を独立して生成する。
【0106】
弾性パフォーマンスフィラメント11,13の供給源に並列に、非弾性コントロールフィラメント15の供給源が、参照番号103に組み合わせられている。PES、PBT、T400、などの非弾性コントロールフィラメント15は、ジェット装置101における2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13との合流のために、搬送装置105によって搬送される。さらなるドラフトシリンダ107を、ジェット装置の下流に配置することができる。
【0107】
ジェット装置において、3つのフィラメント11,13,15は、フィラメント状コア3の要求される性能に従ってねじられ、さらには/あるいは入り交じらされる。トラバース111の後で、実現された2つの異なるドラフト比を備える2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13と非弾性コントロールフィラメント15とを有するフィラメント状コアが、ボビン115にストックされる。
【0108】
以下では、とくには弾性複合ヤーン1を製作し、あるいは繊維シース5のためのロービングが含まれない場合にはフィラメント状コア3だけを製作するための図示の設備51に、とくに注目する。
【0109】
ロービング/フィラメント11,13,15,15a,15b,21,21a,21bの供給方向Mを考慮し、設備51は、最終的には綿の安定繊維の1つまたは2つ以上のロービング21,21a,21bのため、および少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13のため、ならびに最終的には1つ以上の非弾性コントロールフィラメント15,15a、15bのためのクリル取り付けされた供給部53を備える。
図12~
図18に示される設備51は、本発明によるフィラメント状コア3および/または弾性複合ヤーン1を製造するように構成されている。
【0110】
フィラメント11,13,15,15a,15bおよびロービング21,21a,21bは、クリル取り付けされた供給部53のそれぞれのボビンから、合流ステーション/位置75に向かって供給方向Mに引き下げられる。フィラメント11,13,15,15a,15bおよびロービング21,21a,21bを引き下げるために、ヤーン1および/またはコア3を形成するために回転して特定の量の繊維およびフィラメントを必要とする最終ヤーンパッケージまたはボビン81の全体的な回転動作によって、引っ張り力が生成および決定される。ヤーンパッケージ81の回転動作により、全てのストランド、すなわちフィラメントおよびロービングが、クリル取り付けされた供給部51から引き出される。
【0111】
クリル取り付けされた供給部51の下流に、円柱形のバーの形態のプリテンション装置63が、フィラメント11,13,15,15a,15bおよびロービング21,21a,21bの向きを変えるために配置されている。
【0112】
ロービング21,21a,21bが予見される場合、プリテンション装置63から、ロービング21,21a,21bは、
図12~
図15の設備51に関してのみ予見される調整装置66へと案内される。
【0113】
設備51のプロセスで弾性複合ヤーン1/フィラメント状コア3を形成するとき、弾性パフォーマンスフィラメント11,13について異なるドラフト比を確立し、すなわち弾性パフォーマンスフィラメント11,13における異なる引張張力(コア(3)またはヤーン(1)の単位長さ当たりのフィラメントの弾性材料の異なる量)を確立するために、ドラフト比の生成が、
図11~
図20による設備51の各々について提供される。
【0114】
ドラフト比を生成するために、それぞれのフィラメント11,13が、全体的なコアまたはヤーン速度でボビンから引き出され、ドラフト比が、引っ張り力に抗して作用する抵抗力を増減させることによって調整される。抵抗力が大きいほど、フィラメントのそれぞれのドラフト比が大きくなり、その逆も然りである。したがって、本発明によれば、第1および第2の弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13に与えられる異なる引っ張り抵抗によって生じる異なる引張応力を有する弾性複合ヤーン1を形成するようにもたらされる。フィラメント状コア3/弾性複合ヤーン1内の個々の弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比を、全体的なコアまたはヤーン速度と、個々の弾性パフォーマンスフィラメント11,13のそれぞれのボビンからの個々の繰り出し速度との間の速度差によって定めることができる。全体的なコアまたはヤーン速度は、合流ステーション75に隣接する被駆動バー99によって決定される。コア3またはヤーン1は、前記(最終)被駆動バー99によって最終ヤーンパッケージまたはボビン81上へと駆動される。それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13のそれぞれのボビンからの繰り出しの速度が、最終被駆動バー99によって生み出されるコアまたはヤーン速度と同一である場合、弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比は1であり、すなわち弾性パフォーマンスフィラメントに予めの引張は導入されない。これに限られない一例によれば、フィラメント状コア3またはヤーンは、10m/分という全体的なコアまたはヤーン速度を有する。最終バー99は、これに応じて駆動される。それぞれの支持バー62cおよび62dは、それぞれの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の繰り出し速度を調整するために、制御可能に駆動または拘束される。繰り出しの速度が10m/分を下回ると、ドラフト比が1よりも大きくなる。この場合には、弾性パフォーマンスフィラメント11は5m/分という速度で繰り出され、10m/分という全体的なヤーンまたはコア速度と比較して材料の半分がフィラメント状コア3または弾性複合ヤーン1へともたらされる。この結果、ドラフト比は2.0になる。弾性パフォーマンスフィラメント11に、これに応じた予めの張力が導入される。第2の弾性パフォーマンスフィラメント13が2.5m/分という速度で繰り出されると、弾性パフォーマンスフィラメント13は、さらに強く引き伸ばされ、4.0というドラフト比を受け取る。2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13の間のドラフト比の差は、2.0である。
【0115】
合流ステーション75の上流に、合流ステーション75での合流動作が安全かつ適切に行われるように、センタリングおよび案内装置61が予見される。前記案内およびセンタリング装置61を、とくには
図12~
図15の実施形態において見て取ることができ、各々の設備51に統合することができる。案内およびセンタリング装置61を、
図21においてより明確に識別することができる。好ましい実施形態による案内およびセンタリング装置は、少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および随意による少なくとも1つの非弾性コントロールフィラメント15,15a,15bの全てを受け取る回転ドラム構造72によって形成される。前記案内ドラム構造72は、静止した回転軸R(
図20)に対して独立して回転および空転可能に支持された3つのディスクホイール65a、65b、65cを備える。ホイール65a、65b、65cの各々は、断面がV字形である周溝71a、71b、71cを有する。溝71a、71b、71cは、互いに軸方向に等間隔に位置している。中央の溝71bは、非弾性コントロールフィラメント15を受け取る。フィラメント11,13,15,15a,15bの各々は、各々の溝の尖った線の底に受け入れられる。各々のディスク65a~65cの周速度は、案内およびセンタリング装置がフィラメント11,13(15)のドラフト比に及ぼす影響が皆無であり、あるいは少なくとも最小限であるように、それぞれのフィラメント11,13(15)の繰り出しの速度に合わせられる。
【0116】
図16を参照すると、代案の設備51は、自身のドラフト比発生装置61を備えなくてもよく、むしろサブフィラメント状コア30を形成するように非弾性コントロールフィラメント15に既に組み合わせられた予めの応力が既に導入された弾性パフォーマンスフィラメント11,13が、設備51へと導入される。すなわち、1つの弾性パフォーマンスフィラメント11と1つの非弾性コントロールフィラメント15とで構成されるサブフィラメント状コア30が、予めの製造によって特定の第1のドラフト比にて実現済みである。第1のドラフト比の弾性パフォーマンスフィラメント11を有するこの第1の製造済みのサブフィラメント状コア30が、ボビン69によってそれぞれ供給される。ドラフト比の異なる弾性パフォーマンスフィラメント11,13を有する2つのサブフィラメント状コア30の組み合わせであるフィラメント状コア3は、繊維シース5を備えない。2つのサブフィラメント状コア30は、フィラメント状コア3を確立するために合流ステーション75において合流させられる。それぞれのサブフィラメント状コア30内の2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13は、2つの異なるドラフト比を有するので、得られるフィラメント状コア3は、2つの異なるドラフト比を有する2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を含む。
【0117】
図17および
図18を参照すると、フィラメント状コア3または弾性複合ヤーン1を製造するための設備51は、2つの異なる種類にて示されている。
図17による設備51は、
図18による設備51によって製造されるフィラメント状コア3と同一の構造を有するフィラメント状コア3を製造する。フィラメント状コア3は、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および2つの非弾性コントロールフィラメント15a、15bのみで構成される。
【0118】
しかしながら、
図17および
図18による設備には、
図19および
図20に詳細に示されている自身のドラフト比発生装置60が統合されている。
【0119】
各々のドラフト比発生装置61は、フレーム構造64によって支持された2対のバー62a、62bおよび62c、62dを備える。バー62a~62dは、弾性パフォーマンスフィラメントおよび非弾性コントロールフィラメントのそれぞれのボビンが受け入れる。バー62a、62bおよび62c、62dの各対は、サーボエンジン68、68a、68b、68c、68dによって駆動される。
【0120】
図19の実施形態によれば、ドラフト比発生装置61は、バー62,62bまたは62c、62dの各対ごとにサーボエンジンを1つだけ備え、それぞれのサーボエンジン68は、2つのバー62a、62bをベルト74によって異なる周速度で駆動する。異なる周速度は、被駆動円柱形バー62a、62bの異なる半径によって生み出される。バーの半径に応じて、弾性フィラメント11,13のボビンの送り出し速度が、所望のドラフト比の差を発生させるように調整される。
【0121】
図20による実施形態において、各々のバー62a~62dは、自身のサーボエンジン68a~68dおよび自身のベルト74a~74dに組み合わせられている。
【0122】
バー62a、62bおよび62c、62dの対に、ドラフト比がバー62a、62bおよび62c、62dのそれぞれの対の周速度に応じて生成および調整されるように弾性パフォーマンスフィラメント11,13をローディングするためのウェイトロール83(
図16,17)が配置されている。
【0123】
異なるドラフト比を生成するために、上述したように、バー62bおよび62cのそれぞれの速度は異なる。
【0124】
それぞれのドラフト比が、フィラメント11,13(15,15a,15b)において異なって生成され、とくには弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比の間で異なり、フィラメント11,13,15,15a,15bは、ドラフト比発生システム61を下流へと出て、リング紡糸ステーション73に進入する(
図12)。リングスプリングステーション73において、最終的なロービング21a、21bのそれぞれが、弾性パフォーマンスフィラメント11,13の周りにそれぞれ紡糸され、弾性パフォーマンスフィラメント11,13に加えられる両方の紡糸作用の紡糸方向Tは同じである。
【0125】
とくに、リング紡糸ステーション73の下流に、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13(
図13;繊維サブシース21a、21bで囲まれている)と、繊維材料を受け取っており、あるいは受け取っていない最終的にはクリーンまたは裸の非弾性コントロールフィラメント15と、最終的にはロービング21,21a,21bとが、連続的な紡糸作用T
*によって一体に合流させられる合流ステーション75が配置されている。この合流ステーション75の後に、最終的な弾性複合ヤーン1は、ヤーン1が巻き付けられるボビンとして実現されるヤーンパッケージ(ボビン)81に受け取られる。
【0126】
図21に見られるように、ディスクホイール65a、65b、65cの各々を、回転軸Rを中心にして回転する少なくとも1つまたは2つの駆動軸67によって互いに独立に駆動することができる。弾性パフォーマンスフィラメント11,13を受け取る2つのディスクホイール65a、65bが同時に、かつ同じ速度で駆動される(あるいは、遅延させられる)場合、弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比は等しくなる。本発明の一態様によれば、弾性パフォーマンスフィラメント11,13のドラフト比は、弾性パフォーマンスフィラメント11,13の所望の異なる弾性挙動を提供するために、異なっていなければならない。
【0127】
弾性複合ヤーン1を製造するための設備51(
図14)においては、非弾性コントロールフィラメント15と、異なるドラフト比を有する両方の弾性パフォーマンスフィラメント11,13とが、合流ステーション75において合流する。ねじり回転Tにより、弾性複合ヤーン1が実現され、ヤーンパッケージ81へともたらされる。非弾性コントロールフィラメント15は、
図19,
図20,または
図21のドラフト比発生装置61に関する上述の説明に従ってドラフト比発生装置61によってやはり生成されたドラフト比を備えることができる。
【0128】
図15による設備51は、PESである非弾性コントロール要素のためのボビンの配置についてのみ、
図14の設備と異なる。
【0129】
図17の設備51を参照すると、ドラフト比発生装置61の下流で、2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および2つの非弾性コントロールフィラメント15a、15bの方向が、案内フック85によって、合流ステーション75を形成する合流リング87へと導かれるように変更される。この位置において、4つのフィラメント11,13,15a、15bが合流し、繊維シース5を有さない弾性複合ヤーンを形成する。
【0130】
2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および2つの非弾性コントロールフィラメント15a、15bを含むフィラメントコア3のみが存在するこの弾性複合ヤーン1は、やはり全体的な引っ張り力をもたらすために回転するヤーンパッケージ81によって受け取られる。
図17の製造プロセスによるこの弾性複合ヤーン1は、異なるドラフト比を有する2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を有する。
【0131】
図18によれば、2つの別々のロービング21a、21bによって形成された繊維シース5によって覆われた2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を有する弾性複合ヤーン1が実現される。ドラフト比発生装置61の下流において、2つの異なるドラフト比を有する2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13および2つのロービング21a、21bが、案内フック85によって合流ステーション75を形成する合流リング87へと導かれる。弾性複合ヤーン1は、製造プロセスの終わりにおいてヤーンパッケージ81によって受け取られる。
【0132】
一般に、前記弾性複合ヤーン1は、とくには2つの異なる弾性挙動を提供する少なくとも2つの弾性パフォーマンスフィラメント11,13を備える。例えば2.5以上などの大きなドラフト比を備える第1の弾性パフォーマンスフィラメントが、ヤーン1、ひいてはヤーン1で作られた布地の低い応力伸びの場合に強いリカバリ力を速やかに加える点で、弾性複合ヤーンのリカバリを果たす。一方で、例えば1.5などのより小さいドラフト比を有する第2の弾性パフォーマンスフィラメントは、おおむね不活発である(依然として低いリカバリであり、したがって全体としてのリカバリ力が強くなりすぎることが回避される)。ネガティブな現象「コルセット」も回避される。しかしながら、例えばズボンの膝および後ろの領域など、伸びの引っ張りがきわめて大きい場合に、弾性複合ヤーンは自身の長さの2~5倍に引き伸ばされ、第2の弾性パフォーマンスフィラメントが活動を開始し、本発明による弾性複合ヤーン1が使用される場合に「たるんだ」領域が回避されるように強力なリカバリ力を提供する。
【0133】
以上の説明、図面、および特許請求の範囲に開示の特徴は、個別または任意の組み合わせにて、本発明を本発明の種々の実施形態にて実現するために重要であり得る。
【符号の説明】
【0134】
1 弾性複合ヤーン
3 フィラメント状コア
5 繊維状綿シース
10 接触面
11,13 弾性パフォーマンスフィラメント
15,15a,15b 非弾性コントロールフィラメント
21,21a,21b 繊維材料/ロービング
30 サブフィラメント状コア
43 供給部
51 弾性複合ヤーン1を製造するための設備
53 クリル取り付けされた供給部
60 ドラフト比発生装置
61 案内およびセンタリング装置
62a,62b, バーの対
62c,62d バーの対
63 張力導入装置
64 フレーム構造/プレスロール
65a,65b,65c ディスクホイール
66 事前調整装置
67 駆動軸
68,68a,68b,68c,68d サーボエンジン
69 ボビン
70 紡糸システム
71a,71b,71c 周溝
72 案内ドラム構造
73 リング紡糸ステーション
74,74a,74b,74c,74d ベルト
75 合流ステーション
81 ヤーンパッケージ
83 ウェイトロール
91,93,115 ボビン
95,97 ドラフト装置
99 最終被駆動ボビン
101 ジェット装置
103 非弾性フィラメントの供給部
105 搬送装置
107 ドラフトシリンダ
e 伸び
F リカバリ力
M 搬送/供給方向
R 静止した回転軸
T,T* 紡糸/ねじり方向