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特許7206049カーボンナノチューブをベースにした熱界面材料ならびにそれを作製および使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブをベースにした熱界面材料ならびにそれを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230110BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20230110BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01R31/28 Z ZNM
H01L23/36 D
G01R31/26 H
H05K7/20 F
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018039714
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2018163147
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/467,649
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515008542
【氏名又は名称】カーバイス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バラトゥンド コーラ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド プリンジ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ グリーン
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-239623(JP,A)
【文献】特開2007-57444(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091139(WO,A1)
【文献】特表2011-501873(JP,A)
【文献】特開2016-211921(JP,A)
【文献】特開2012-198240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0046017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 31/26
G01R 1/06
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスと、接着表面を有する熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板との接触を行うための方法であって、該方法が、
該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板を被試験デバイスに取着するステップと;
少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で該被試験デバイスを係合するステップと;
該被試験デバイスを少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するステップと;
少なくとも1から5回のサイクルの該被試験デバイスの出力上昇の間該被試験デバイスの係合を解除し、そして再度係合させるステップと
を含み、
ここで、該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、該被試験デバイスに取着されたままであり、該被試験デバイスと共にパッケージングされることができ、そして
ここで、該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、1、2、3、4、5、6、7、または8W/mKよりも大きい平面を通る熱伝導度を有する、方法。
【請求項2】
前記係合するステップ、係合を解除し、そして再度係合させるステップが、少なくとも1回から5回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被試験デバイスが、約-55℃から140℃の間の温度で試験される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、0.05から1.5cmK/Wの間の熱抵抗を加える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、前記被試験デバイス上の局所ホットスポットから熱を拡げるために、100から1,700W/mKの間にある面内熱伝導度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、100psi未満の印加圧力で、その当初の厚さの少なくとも5%に圧縮されることができる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の厚さが、約10から10,000マイクロメートルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、1cm当たり0.001から10オームの間を加える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の厚さが、約100ミクロン未満である、請求項1~6いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の厚さが、約100ミクロン未満であり、そしてここで、前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、1cm 当たり0.001から10オームの間を加える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイの多層積層体であり、層の数が1から20の間である、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、前記接着表面上の熱可塑性接着剤の共形コーティングの使用を通して、ヒートシンクまたはヒートスプレッダに永続的にまたは半永続的に取着され、前記熱可塑性接着剤の共形コーティングの存在は、前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の熱抵抗を、その上に熱可塑性接着剤の存在がない熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板に比べて増加させない、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接着表面が、貼って剥がせる接着剤および/または熱により活性化される接着剤を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、コーティングされたカーボンナノチューブアレイサーマルインターフェースマテリアル(TIM)である、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
被試験デバイスと、接着表面を有する熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板との接触を行うための方法であって、該方法が、
該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板を、熱または電気ユニットヘッドに直接取着するステップであって、該熱または電気ユニットヘッドの領域を完全に覆うか、または該被試験デバイスのサイズを一致させるステップと;
該熱または電気ユニットヘッドと、該被試験デバイスに取着された熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板とを、少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で係合させるステップと;
該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板と該被試験デバイスとを、少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するステップと
を含み、
ここで、該取着された熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板を持つ該熱または電気ユニットヘッドが、少なくとも1,500サイクルの該被試験デバイスの出力上昇の間、該被試験デバイスとの係合を解除し、そして再度係合することができ、
ここで、該熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、1、2、3、4、5、6、7、または8W/mKよりも大きい平面を通る熱伝導度を有する、方法。
【請求項17】
前記係合するステップ、係合を解除し、そして再度係合するステップが、前記取着された熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板を除去することも、前記被試験デバイスから砕片または痕跡を取り除く必要もなく、10,000から100,000回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の前記接着表面が、前記熱または電気ユニットヘッドと前記被試験デバイスとの間の機械的粘着を防止するように処理または改変される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、前記被試験デバイス上の局所ホットスポットから熱を拡げるために、100から1,700W/mKの間にある面内熱伝導度を有する、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、100psi未満の印加圧力で、その当初の厚さの少なくとも5%に圧縮することができる、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の厚さが、約10から10,000マイクロメートルである、請求項120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイの多層積層体であり、層の数が1から20の間である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、前記接着表面上の熱可塑性接着剤の共形コーティングの使用を通して、ヒートシンクまたはヒートスプレッダのいずれかに永続的にまたは半永続的に取着され、前記熱可塑性接着剤の共形コーティングの存在は、前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の熱抵抗を、その上に熱可塑性接着剤の存在がない熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板に比べて増加させない、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記接着表面が、貼って剥がせる接着剤および/または熱により活性化される接着剤を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記接着表面が、熱可塑性接着剤の共形コーティングを含み、それが、前記被試験デバイスまたは前記熱もしくは電気ユニットヘッドとの界面において、前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板の熱または電気抵抗を増加させない、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板が、コーティングされたカーボンナノチューブアレイサーマルインターフェースマテリアル(TIM)である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記熱可塑性接着剤が、5ミクロン以下の厚さを有する、請求項1、2および2のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブアレイまたはシート、特に、単層とすることができ、または多層化もしくは重層化された構造が形成されるよう積層することができる、アレイまたはシート、ならびにそれを作製および使用する方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
現代エレクトロニクスに対する性能およびパッケージングの需要が、ますます強力になり続けるにつれ、新しいサーマルソリューションの識別が、設計プロセスの極めて重要な部分になってきた。ほぼ全ての熱管理用途では、数多くの熱移動界面があり、パッケージから熱を効率的に除去するのを確実にするのに、密接な接触が必要である。この分野では、広く様々なサーマルインターフェースマテリアル(TIM)が、特定の用途に対して開発されてきた(R. Prasher、「Thermal interface materials: historical perspective, status, and future directions」、Proceedings of the IEEE、94巻、1571~1586頁、2006年)。
【0003】
カーボンナノチューブ(CNT)アレイは、表面間の熱輸送を高めるための、魅力的な解決策である。CNTは、金属基板上で成長することができ、液体サーマルインターフェースマテリアル(TIM)およびグリースが受ける可能性のあるポンプアウトまたは空洞化(voiding)に関連した懸念が排除される。
【0004】
個々のナノチューブの高い面内導電率(3,000W/m-K程度に高い)は、比較的低いCNT密度(典型的なCNT充填率は1%程度)であっても、CNTベースのTIMの交差面熱伝導が熱グリースの場合の伝導に競合する可能性があることを意味する。さらに、CNTの好ましい変形機構により、隣接面の凹凸に効率的に順応することが可能になり、その結果、面同士のそのような界面で高い接触面積が得られる。
【0005】
しかしCNTベースのTIMにおける重要な難題は、金属基板上に非常に長いCNTを成長させる難しさから生じる。シリコンまたはその他の不活性基板上に成長させたCNTとは異なって、CNTの成長に必要とされる触媒は、金属基板上に成長させるとき表面下拡散し、その結果、チューブ成長が早期に停止する。さらに、その高さが増すにつれて欠陥がCNT内に蓄積される傾向があり、その結果、導電率が、通常ならきれいなチューブで実現可能な3,000W/m-K限度よりも著しく低いCNTアレイが得られる。
このように、金属基板上に長いCNTを成長させる際の上述の困難を克服すること、および良好な熱輸送特性を有する材料を作製する方法が、求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】R. Prasher、「Thermal interface materials: historical perspective, status, and future directions」、Proceedings of the IEEE、94巻、1571~1586頁、2006年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明の目的は、CNTアレイまたはシートおよびそれから形成された構造と、そのような、良好な熱輸送特性を有する構造を作製する方法とを提供することである。
【0008】
本発明の目的は、1つまたは複数の表面との界面で高レベルのコンプライアンスを提供することができる、CNTアレイまたはシートおよびそれから形成された構造を提供することでもある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、焼付け用途に必要な耐久性が改善された、TIM複合体を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、被試験デバイスのサイズを変化させる良好なコンプライアンスおよび圧縮特性を持つ、TIM複合体を提供することでもある。
【0011】
単層、または垂直に並んだカーボンナノチューブ(CNT)アレイを積層することによって形成された多層化もしくは重層化構造と、それを作製し使用する方法とについて、本明細書に記述する。
【0012】
記載される一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイを積層させて、多層化または重層化構造を形成する。多数のCNTアレイは、対向するアレイからのナノ構造要素が積層体の階層に形成されかつ互いに少なくとも部分的に噛み合う(interdigitated)ように、積層することができる。伝統的な材料の積層とは異なって、垂直に並んだナノ構造の積層アレイは、厚さの増加による熱抵抗の線形(悪化)増加を受けない。したがって、得られた多層化構造は、接触したときの2つまたはそれよりも多くのアレイのナノ構造要素(即ち、CNT)の噛み合いの結果、エネルギー輸送に対する厚さおよび境界の悪影響を軽減することができる。対照的に、典型的な材料の場合、熱移動に対する抵抗は材料の厚さに正比例し、このとき多層化構造の界面には追加の界面抵抗がある。
【0013】
CNTアレイが垂直に並んだナノ構造材料を積層することによって形成された多層化または重層化構造の場合、アレイのCNTは、互いの中に、または互いの内部に少なくとも部分的に噛み合い、CNTの密度を効率的に増大する。典型的には、金属基板上で成長したCNTの密度は、全体積の僅かに約1%である。例えば、CNTアレイの2つの隣接する層を積層させた場合、CNTまたはそれで形成された構造などの熱伝導要素の密度は、効率的に2倍になる。したがって単位長さ当たりの熱移動に対する抵抗は、本質的に低減する。
【0014】
伝統的なバルク材料上に、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイを積層することによって形成された多層化または重層化構造の利点は、アレイの界面で生ずる。例えば、熱移動に対する抵抗は、多層積層体の厚さの増大に起因してだけではなく、階層間の界面抵抗に起因しても増大する。したがって、任意の2つの隣接する階層の間において、2つ階層の間の境界は、階層間の不十分な接触に起因するとともに境界でのエネルギー担体(例えば、電子または光子)の散乱に起因して、バルク材料よりも熱移動が不十分な場所である。噛み合う場合、CNTなどのナノ構造の高いアスペクト比は、階層間に非常に高い接触面積をもたらし、階層間界面抵抗に対する不十分な接触面積の関与を最小限にする。カピッツァ(散乱)抵抗を完全には排除することができないが、抵抗は、アレイまたはシートに、境界を横断する熱/エネルギー輸送を容易にするポリマー、ワックス、またはその他の2次材料を付与させ、浸潤させ、または裏込めすることによって低減させることができる。この輸送の円滑化は、CNTと2次材料との間の共有または弱い原子相互作用の形成、空気に対する音響フォノン輸送の不整合の低減、またはその他のタイプのメカニズムを通しであり得る。
【0015】
一部の実施形態では、アレイを形成するナノ構造要素は、垂直に並んだカーボンナノチューブ(CNT)である。一部の実施形態では、CNTアレイは、アルミニウム、銅、もしくは鋼で形成された、またはアルミニウム、銅、もしくは鋼、またはそれらの合金を含む金属基板上に成長させる。別の実施形態では、CNTアレイは、黒鉛などの、可撓性の電気および熱が伝導性の基板上に形成される。さらに別の実施形態では、CNTアレイは、可撓性セラミックなどの電気絶縁性基板上に成長させる。一実施形態では、CNTアレイのための不活性支持体は、アルミ箔などの1片の金属箔である。ある場合には、金属箔のただ1つの表面(即ち、面)が、表面または基板/支持体に固着された垂直に並んだCNTのアレイを含む。他の場合には、金属箔などの基板/支持体の両方の表面(即ち、面)が、表面に固着されて並べられたCNTのコーティング付きアレイを含む。別の例として、CNTシートを1つまたは両方の面にコーティングすることができ、不活性支持体を必要としない。
【0016】
ある特定の実施形態では、単一基板は、本明細書に記載されるように1つまたは複数の表面上に1つまたは複数のCNTアレイを含む。他の実施形態では、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイが互いの上に積層され、CNTまたはその一部などの個々のアレイのナノ構造要素は、完全にまたは実質的に互いに噛み合っており;本明細書で使用される「実質的に」は、個々のアレイのナノ構造要素(即ち、CNT)同士での少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の噛み合いを指す。一部の実施形態では、噛み合いの程度が、約0.1%から99%の範囲であり、または少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%である。ある特定の他の実施形態では、2つのCNTアレイが個々のアレイのナノ構造要素(即ち、CNT)の先端のみで噛み合っていてもよい。個々のアレイのナノ構造要素が隣接して積層されるときに噛み合っている、2つまたはそれよりも多くの個々のCNTアレイを積層することにより、多層化または重層化構造を形成することが可能である。
【0017】
ある特定の実施形態では、アレイのCNTなどの1つまたは複数の個々のナノ構造要素は、隣接するCNTアレイが積層プロセス中に接触するようになるときに、別の要素を通り抜けて(navigate)もよい。
【0018】
一部の実施形態では、アレイのCNTなどの個々のナノ構造要素が噛み合い、管束、塊、列などであるがこれらに限定されない超構造(superstructure)などのより大きい構造に形成されてもよい。そのような超構造は、毛細管クランピングなどのメカニズムを通して、または積層プロセスの前、最中、もしくは後にポリマーコーティングがCNTアレイに付与されたときに、形成されてもよい。
【0019】
ある特定の実施形態では、CNTアレイの積層によって形成された隣接する階層は、単純なドライ接点を介して、内部に存在するナノ構造同士の絡み合い、摩擦、または弱い引力を使用して形成され、その結果、得られる噛み合い構造が一緒に保たれるようになる。
【0020】
ある特定の他の実施形態では、基板上のCNTアレイは、単独でまたはそれから得られる多層化積層体の一部として、噛み合いアレイを一緒に保持するために、積層構造内で固化するポリマー、ワックス、液体金属、またはその他の適切な材料で、任意選択で浸潤または裏込めされてもよい。
【0021】
一部の実施形態では、ポリマー、ワックス、液体金属、またはその他の適切な材料は、改善された接触面積、散乱の低減、またはその他の関連あるメカニズムから、形成された多数の層または階層間の輸送抵抗を低減させることができる。さらに他の実施形態では、アレイの積層によって形成された階層を、接着剤または相変化材料の使用によって結合してもよい。
【0022】
CNTアレイ、およびCNTアレイなどの積層によって形成された多層化または重層化構造は、高い熱伝導および機械的耐久性の両方を示す。本明細書に記載されるCNTアレイの積層によって形成される多層化または重層化構造を、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)として使用することができる。したがってそのような材料は、反復サイクルを必要とする適用例に非常に適している。例えば、チップなどの電気部品の「焼付け」試験中に、サーマルインターフェースマテリアルとして用いることができる。一部の実施形態では、不活性支持体/基板が、従来の金属ヒートシンクまたはスプレッダの表面である。次いでこの機能化されたヒートシンクまたはスプレッダを、集積回路パッケージなどの熱源に隣接させまたは接着してもよい。そのようなTIM材料は、熱源からヒートシンクまたはスプレッダへの熱の移動が改善されるよう、集積回路パッケージとフィン付き熱交換器との間などの、熱源とヒートシンクまたはヒートスプレッダとの間に配置または固定させることもできる。
【0023】
本明細書に記載されるCNTアレイおよびそのようなCNTアレイを積層することによって形成された多層化もしくは重層化構造は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、メモリモジュール、グラフィックチップ、レーダおよび無線周波数(RF)デバイス、ディスクドライブ、発光ダイオード(LED)ディスプレイを含むディスプレイ、照明システム、自動車制御ユニット、パワーエレクトロニクス、太陽電池、バッテリ、携帯電話などの通信設備、熱電発生器、およびMRIを含む撮像設備において、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)として使用することができる。
【0024】
ある特定の実施形態では、単層CNTアレイ、またはCNTアレイの積層によって形成された多層化もしくは重層化構造は、そのようなTIMを衛星または宇宙船/システムで使用することができる航空宇宙の適用例など、低接触圧および/または低周囲圧の適用例においてTIMとして有用である。ある特定の実施形態では、CNTアレイの積層によって形成された多層化または重層化構造は、周囲よりも低い温度、凍結よりも低い温度、または極低温(宇宙で経験するような)で有用である。
【0025】
本明細書に記載されるCNTアレイと、そのようなCNTを積層することによって形成された多層化または重層化構造は、熱移動以外の適用例で使用することができる。例には、マイクロエレクトロニクス、スルーウエハ垂直相互接続アセンブリ、ならびにバッテリおよびキャパシタ用の電極が含まれるが、これらに限定するものではない。現在、銅およびアルミ箔を、リチウムイオンバッテリ内のアノードおよびカソードの裏当て材料として使用している。CNTアレイ、およびそのようなCNTアレイを積層することによって形成される多層化または重層化構造は、電磁遮蔽に使用することもできると考えられる。
【0026】
CNTアレイ、およびそれから形成された多層化または重層化構造は:
(1)基板を、熱または電気ユニットヘッドに直接取着して、ヘッドの領域を完全に覆うか、または被試験デバイスのサイズを一致させるステップと;
(2)取着された基板を持つ熱または電気ユニットヘッドと、被試験デバイスとを、少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で係合させるステップと;
(3)係合を、少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するか、または係合を少なくとも1から5回のサイクルで繰り返すステップであって、各係合中に、被試験デバイスの出力を上昇させ、熱または電気ユニットヘッドを加熱して、少なくとも50℃の温度に到達するまでデバイスの出力上昇をシミュレートするステップと;
(4)少なくとも1,500サイクルの出力上昇の間、熱または電気ヘッドおよび基板と被試験デバイスとの係合を解除し、そして再度係合させるステップと;
(5)サイクル後に、熱抵抗および/または相対熱抵抗を決定するよう被試験デバイスを試験するステップ
を含む方法におけるような、熱管理法で使用されるTIMとして有用である。
【0027】
焼付けまたはその他の適用例にTIMとして使用される、CNTアレイおよびそれから形成された多層化または重層化構造は、適切なキットに入れて提供してもよい。
【0028】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被試験デバイスと、接着表面を有する熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板との接触を行うための方法であって、
前記基板を、熱または電気ユニットヘッドに直接取着するステップであって、前記ヘッドの領域を完全に覆うか、または前記被試験デバイスのサイズを一致させるステップと、
取着された基板を持つ前記熱または電気ユニットヘッドと、前記被試験デバイスとを、少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で係合させるステップと、
前記係合を、少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するか、または前記係合を少なくとも1から5回のサイクルで繰り返すステップであって、各係合中に、前記被試験デバイスの出力を上昇させ、かつ前記熱または電気ユニットヘッドを加熱して、少なくとも50℃の温度に到達するまでデバイスの出力上昇をシミュレートする、ステップと、
少なくとも1,500サイクルの出力上昇の間、前記熱または電気ヘッドおよび基板と前記被試験デバイスとの係合を解除し、そして再度係合させるステップと、
サイクル後に、熱抵抗および/または相対熱抵抗を決定するよう前記被試験デバイスを試験するステップ
を含む方法。
(項目2)
前記基板を除去することなく、または前記被試験デバイスから砕片または痕跡を取り除く必要なく、10,000から100,000回の係合サイクルが行われる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被試験デバイスが、約-55℃から140℃の間の温度で試験される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
前記基板の表面が、前記ユニットヘッドと前記被試験デバイスとの間の機械的粘着を防止するように処理または改変される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記基板が、同時に同じ基板上の1から10個のダイと接触するために使用され、前記1から10個のダイが、異なる高さ、形状、および/またはサイズにできる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記基板が、前記被試験デバイスに取着され、前記熱または電気ユニットヘッドには取着されない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記基板が、前記被試験デバイスに取着され、前記熱または電気ユニットヘッドには取着されず、前記基板が、さらなる試験または販売用のパッケージングのためのその次の形態に前記デバイスと共にパッケージングされるように、試験ステップの終了後も前記被試験デバイスに取着されたままである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記基板が、前記試験ステップの後で決定される、0.05から1.5cmK/Wの間の熱抵抗を加える、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記基板が、前記被試験デバイス上の局所ホットスポットから熱を拡げるために、100から1,700W/mKの間にある面内熱伝導度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記基板が、低い熱質量と、1、2、3、4、5、6、7、または8W/mKよりも大きい平面を通る熱伝導度とを有し、
前記被試験デバイスを試験するために必要な時間は最小限に抑えられ、即ち、5分未満、3分未満、1分未満、30秒未満である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記基板が、前記試験ステップに対し1cm当たり0.001から10オームの間で加える、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記基板が、自動試験装置(ATE)ピックアンドプレースハンドラ、焼付け炉、またはその他のそのような試験装置に対して台座または前記熱もしくは電気ユニットヘッドを設置する前に、前記台座にまたは熱もしくは電気ユニットヘッドに付与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記基板が、電気接続の特徴付けのために電気接続ピンのアレイを短絡するのに使用される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記基板が、5ミクロン未満の圧縮永久歪みを有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記基板が、100psi未満の印加圧力で、その当初の厚さの少なくとも5%に圧縮することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記基板が、引裂きまたは剪断破壊なしで、その当初の厚さの50%程度に圧縮することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記基板が、同じボード上にある異なるサイズ、形状、または高さを持つ1つまたは複数のダイまたはチップとの表面接触を維持しながら、前記基板の異なる領域で異なる量に圧縮することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記接着剤が、前記基板の表面層に埋め込まれた熱可塑性または感圧性接着剤であって、強力な機械的結合を維持しながら、前記基板と接触表面との間で5ミクロンよりも大きい接着剤の厚さを加えない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記熱ユニットが、自動試験装置(ATE)ピックアンドプレースハンドラの一部であって、前記基板が、異なるデバイス形状または幾何形状のために台座またはデバイスキットの必要性に取って代わる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記熱ユニットが、焼付け炉の一部であり、前記基板は、異なるデバイス形状または幾何形状のために台座またはデバイスキットの必要性に取って代わる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記基板が、前記台座の1つまたは両方の面上で金属台座と組み合わせて使用される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記機械的にコンプライアントな基板が、合わせ面を研磨するいかなる必要性も、工場ミル仕上げよりも大きい程度まで最小限にする、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記機械的にコンプライアントな基板が、各試験係合サイクルで挿入される液体または性能を高める液体と組み合わせて使用される液体の必要性に取って代わる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記基板の厚さが約10から10,000マイクロメートルの間である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記基板が、約100ミクロン未満の厚さであり、前記被試験デバイスとのヘッド接触中に印加された剪断力から引き裂かれないか、または劣化しない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記基板が、前記デバイスまたはヘッドの中心から縁部への曲率が約5~200ミクロンの間であるときに、前記被試験デバイスと前記熱または電気ユニットヘッドとの間の隙間を満たすように変形することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記基板が、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた垂直に並んだカーボンナノチューブアレイの多層積層体であり、
層の数が1から20の間である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記基板が、可撓性ガラスまたはセラミックまたは誘電性の箔もしくはシート、あるいは電気絶縁をもたらす誘電体層でコーティングされた金属箔である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記基板が、前記基板に固着された触媒を使用して形成された垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記基板が、精密に切断されて前記被試験デバイスの寸法にされるか、または前記熱もしくは電気ユニットヘッドの寸法にされ、1個または複数のセンサ、1個または複数の取付けアライメントピン、1個または複数の減圧チャッキング、またはこれらの組合せに対して前記基板内を貫通させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記基板が、台座または前記熱もしくは電気ユニットヘッドに付与されたとき、いかなる残渣もまたは実質的にいかなる残渣も残さずに、前記台座、熱または電気ユニットヘッドから除去することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記基板が、熱可塑性接着剤の共形コーティングの使用を通して、熱源またはヒートシンクのいずれかに永続的にまたは半永続的に取着され、前記熱可塑性接着剤の付加は、前記基板の熱抵抗を、接着剤のない基板に比べて増加させない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記接着剤が、残渣を全く残さないか、または最小限の残渣を残す、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記基板が、耐久性ある低圧縮永久歪みのポリマーを浸潤させたカーボンナノチューブアレイであって、前記ポリマーコーティングが、CNTの先端と同一平面にあるか、または1000nm以下の過剰なポリマーを前記CNTの先端の上方に有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記ポリマーが、前記被試験デバイスに残渣を流さず、濡らさず、蒸発させず、またはその他の手法で移さないか、あるいは実質的に流さず、濡らさず、蒸発させず、またはその他の手法で移さない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記ポリマーが、高い電気抵抗率で高い誘電強度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記CNTの先端が、結合されることが意図される表面と電気接続を行うように利用可能なままである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記接着剤が、前記被試験デバイスまたは熱/電気接続ヘッドとの基板界面に熱または電気抵抗を加えない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記接着剤が、貼って剥がせる接着剤および/または熱により活性化される接着剤である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記デバイスが、前記基板を除去することなく、または前記被試験デバイスから砕片または痕跡を取り除く必要なく試験される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記基板が、コーティングされたCNTアレイサーマルインターフェースマテリアル(TIM)である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(開示の要約)
【0029】
単層CNT複合体、および垂直に並んだカーボンナノチューブ(CNT)アレイを積層することによってそれから形成された多層化または重層化構造と、それを作製および使用する方法とが、本明細書に記載される。そのような多層化または重層化構造は、焼付け試験などの様々な適用例に関するサーマルインターフェースマテリアル(TIM)として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、減圧チャンバ内のサーマルインターフェースマテリアル試験装置の、非限定的な概略図である。
【0031】
図2図2は、カーボンナノチューブ(CNT)アレイの積層によって形成された多層化/重層化構造の、非限定的な概略図である。
【0032】
図3図3は、2回の試験サイクルでの、アルミニウム(Al)基板上の3種のTIMの乾燥積層体についての熱移動係数を示すグラフである。
【0033】
図4図4は、2回の試験サイクルでの、アルミニウム(Al)基板上の3種のTIMの、ワックス結合された積層体に関する熱移動係数を示すグラフである。
【0034】
図5図5Aおよび5Bは、CNTの毛細管クランピングを示す、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像を示す図である。図5Aは、手作業で付与されたパラフィンワックスコートを示し、図5Bは、粉末コーティングされた合成ワックスを示す。
【0035】
図6A図6A、6B、および6Cは、非限定的な焼付けシステムの詳細図を示す。図6Aは、上部バーが下部バーと係合し、下部バーはカートリッジヒータを使用して加熱され、上部バーは冷水で能動的に冷却され、熱電対がバーに沿って配置された温度をモニタするシステムを示す。図6Bおよび6Cは、下部および上部焼付けシステムバーの詳細側面図を示す。
図6B図6A、6B、および6Cは、非限定的な焼付けシステムの詳細図を示す。図6Aは、上部バーが下部バーと係合し、下部バーはカートリッジヒータを使用して加熱され、上部バーは冷水で能動的に冷却され、熱電対がバーに沿って配置された温度をモニタするシステムを示す。図6Bおよび6Cは、下部および上部焼付けシステムバーの詳細側面図を示す。
図6C図6A、6B、および6Cは、非限定的な焼付けシステムの詳細図を示す。図6Aは、上部バーが下部バーと係合し、下部バーはカートリッジヒータを使用して加熱され、上部バーは冷水で能動的に冷却され、熱電対がバーに沿って配置された温度をモニタするシステムを示す。図6Bおよび6Cは、下部および上部焼付けシステムバーの詳細側面図を示す。
【0036】
図7図7は、CNT-TIM複合体と市販のTIM生成物との、50psiでの比較を示すグラフである。
【0037】
図8図8は、CNT-TIM複合体と市販のTIM生成物との、100psiでの比較を示すグラフである。
【0038】
図9図9は、焼付けシステムにおける多数回のサイクルでの、CNT-TIM複合体対市販のTIM生成物の相対抵抗を示すグラフである。
【0039】
図10図10は、CNT-TIM複合体の、30psi、60psi、および100psiでの熱抵抗対印加圧力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
I. 定義
本明細書で使用される「サーマルインターフェースマテリアル」(TIM)は、熱源から熱を効率的に伝導するように、熱源とヒートシンクまたはスプレッダとの間に高い熱伝導および機械的コンプライアンスを提供する、材料または材料の組合せを指す。
【0041】
本明細書で使用される「コンプライアント(compliant)」または「コンプライアンス(compliance)」は、隣接面の凹凸に対する効率的な順応が、表面と材料との間の界面で十分なまたは高い接触面積をもたらすように、1つまたは複数の表面に接触したときに順応する材料の能力を指す。
【0042】
本明細書で使用される「噛み合い(interdigitation)」または「噛み合う(interdigitating)」は、2つの異なるアレイまたはシートが接触または積層されたときに、アレイまたはシートの1つまたは複数の個々のナノ構造要素が別のアレイまたはシートの隣接するナノ構造要素内に浸潤または浸透する、能力および/または程度を指す。
【0043】
本明細書で使用される「カーボンナノチューブアレイ」または「CNTアレイ」または「CNTフォレスト」は、材料の表面に垂直に並んだ複数のカーボンナノチューブを指す。カーボンナノチューブは、それらが表面で支持または取着される表面と実質的に垂直であるときに、「垂直に並んだ」と言える。ナノチューブは、それらが表面法線に対して平均して30、25、20、15、10、または5度以内で配向したときに、実質的に垂直であると言える。
【0044】
本明細書で使用される「カーボンナノチューブシート」または「CNTシート」は、自立型シートが創出されるように平面内に並べられた複数のカーボンナノチューブを指す。カーボンナノチューブは、それらが形成されるシートの表面に実質的に平行であるとき、「平面内に並べられた」と言える。ナノチューブは、それらがシート表面法線から平均して40、50、60、70、80、または85度よりも大きく配向したときに、実質的に平行と言える。
【0045】
本明細書で使用される「コーティング材料」は、一般に、ファンデルワールス結合、π-πスタッキング、機械的ラッピング、および/または共有結合によってCNTに、ならびにファンデルワールス結合、π-πスタッキング、および/または共有結合によって金属、金属酸化物、または半導体材料表面に結合することができる、ポリマーおよび/または分子を指す。
【0046】
本出願で開示される数値範囲には、温度の範囲、圧力の範囲、分子量の範囲、整数の範囲、伝導および抵抗値の範囲、時間の範囲、および厚さの範囲が含まれるがこれらに限定するものではない。開示される任意のタイプの範囲は、そのような範囲が妥当に包含することができると考えられるそれぞれ可能な数値を個々に開示し、同様に、そこに包含される部分範囲および部分範囲の組合せを開示する。例えば圧力範囲の開示は、本明細書の開示と矛盾することなくそのような範囲が包含することができると考えられる、全ての可能性ある圧力値を個々に開示するものとする。
II.コーティングされたカーボンナノチューブアレイまたはシート
A.カーボンナノチューブアレイ
【0047】
本明細書に記載されるカーボンナノチューブアレイは、金属性(例えば、AlまたはAu)箔、金属合金(即ち、鋼)などの不活性基板/支持体の表面に支持されまたは取着された、複数のカーボンナノチューブを含む。一部の実施形態では、基板/支持体は、黒鉛またはその他の炭素ベースの材料など、可撓性の電気および熱伝導性の基板とすることができる。さらに他の実施形態では、基板/支持体は、可撓性セラミックなどの電気絶縁基板とすることができる。CNTアレイは、以下に記述される方法を使用して形成することができる。CNTは、基板/支持体上に垂直に並べられる。CNTは、それらが支持されまたは取着される表面と実質的に垂直であるときに、「垂直に並べられる」と言える。ナノチューブは、表面法線から平均して30、25、20、15、10、または5度以内で配向したときに、実質的に垂直であると言える。
【0048】
一般にナノチューブは、ナノチューブが自立しかつ多層基板の表面に実質的に垂直である配向を採るように、十分な密度で存在する。好ましくはナノチューブは、熱移動損失が最小限であり、それによって総合的な熱拡散率が最大限になるように、互いに最適な距離で間隔を空けて配置されかつ均一な高さのものである。
【0049】
CNTアレイは、アレイの上部(即ち、多層基板上に垂直に並んだときにカーボンナノチューブの遠位端により形成された表面)からアレイの底部(即ち、多層基板の表面)まで連続するナノチューブを含む。アレイは、約4から約10の間の壁を有するナノチューブを一般に指す、多壁カーボンナノチューブ(MWNT)から形成されてもよい。アレイは、約1~3の壁を含むナノチューブを一般に指す、数壁ナノチューブ(FWNT)から形成されてもよい。FWNTは、単壁カーボンナノチューブ(SWNT)、2壁カーボンナノチューブ(DWNT)、および3壁カーボンナノチューブ(TWNT)を含む。ある特定の実施形態では、ナノチューブがMWNTである。一部の実施形態では、アレイ内のMWNTの直径が10から40nmに及び、より好ましくは15から30nm、最も好ましくは約20nmである。アレイ内のCNTの長さは、1から5,000マイクロメートル、好ましくは5から5000マイクロメートル、好ましくは5から2500マイクロメートル、より好ましくは5から2000マイクロメートル、より好ましくは5から1000マイクロメートルに及ぶことができる。一部の実施形態では、アレイ内のCNTの長さは、1~500マイクロメートル、さらにより好ましくは1~100マイクロメートルに及ぶことができる。
【0050】
CNTは、多層基板に対する強力な接着を示す。ある特定の実施形態では、CNTアレイまたはシートは、エタノールなどの溶媒に浸漬され、かつ少なくとも5分間にわたり超音波処理された後、実質的に無傷のままである。特定の実施形態では、CNTの少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%が、エタノール中での超音波処理後に表面に残存する。
B.カーボンナノチューブシート
【0051】
本明細書ではカーボンナノチューブシートについても記述する。シートは、自立型材料が形成されるように、強力なファンデルワールス力の相互作用および機械的絡み合いを通して互いに支持する複数のカーボンナノチューブを含む。CNTシートは、以下に記載される方法を使用して形成することができる。CNTは、自立型シートを形成し、このシートの表面に対して面内に並べられる。CNTは、それらが形成するシートの表面に実質的に平行であるときに、「面内に並べられる」と言える。ナノチューブは、シート表面法線から平均して40、50、60、70、80、または85度よりも大きく配向したときに、実質的に平行であると言える。
【0052】
一般にナノチューブは、ナノチューブが自立しかつシートの表面に対して実質的に平行な配向を採るように、十分な密度で存在する。好ましくはナノチューブは、熱移動損失が最小限に抑えられそれによって総合的な熱拡散率が最大限になるように、互いに最適な距離で間隔を空けて配置されかつ均一な長さのものである。
【0053】
CNTシートは、約4から約10の間の壁を有するナノチューブを一般に指す、多壁カーボンナノチューブ(MWNT)から形成されてもよい。シートは、約1~3の壁を含むナノチューブを一般に指す、数壁ナノチューブ(FWNT)から形成されてもよい。FWNTは、単壁カーボンナノチューブ(SWNT)、2壁カーボンナノチューブ(DWNT)、および3壁カーボンナノチューブ(TWNT)を含む。ある特定の実施形態では、ナノチューブがMWNTである。一部の実施形態では、アレイ内のMWNTの直径が10から40nmに及び、より好ましくは15から30nm、最も好ましくは約20nmである。シート内のCNTの長さは、1から5,000マイクロメートル、好ましくは100から5000マイクロメートル、好ましくは500から5000マイクロメートル、より好ましくは1000から5000マイクロメートルに及ぶことができる。一部の実施形態では、シート内のCNTの長さは、1~500マイクロメートル、さらにより好ましくは1~100マイクロメートルに及ぶことができる。
C.コーティング(単数または複数)/コーティング材料
【0054】
CNTアレイまたはシートは、CNTに接着または結合されるコーティングまたはコーティング材料(これらの用語は同義に使用することができる)を含むことができる。コーティング/コーティング材料は、以下に記載されるように付与することができる。一部の実施形態では、コーティングは、1種または複数のオリゴマー材料、ポリマー材料、ワックス(ポリエチレンワックスなど)、またはこれらの組合せを含む。ポリマー材料の硬さ、熱安定性、および剪断強さは、焼付けの適用例の間に、改善された耐久性および性能を提供するように選択することができる。一部の実施形態では、コーティングまたはコーティング材料は、耐久性を最大限にし、かつ界面接触面積を改善する、ポリマーベースのカプセル封入材である。
【0055】
他の実施形態では、コーティングは、1種または複数の非ポリマー材料を含む。一部の実施形態では、コーティングは、オリゴマー、ワックス(ポリエチレンワックスなど)、および/またはポリマー材料および非ポリマー材料の混合物を含むことができる。ポリマー材料の硬さ、熱安定性、および剪断強さは、焼付けの適用例の間に、改善された耐久性および性能を提供するように選択することができる。
【0056】
ある特定の実施形態では、コーティング材料(単数または複数)は、積層されたアレイまたはシートのカーボンナノチューブを例えば化学的に結合することができる、結合剤(単数または複数)として働く。限定するものではないが、結合剤(単数または複数)として働くことができるようなコーティング材料(単数または複数)は、接着剤(即ち、アクリレート接着剤)および相変化材料(即ち、1種または複数のワックス)から選択することができる。
【0057】
一部の実施形態では、アレイのCNTに接着または結合するコーティングは、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートが積層される前に付与され、一方、他の実施形態では、アレイのCNTに接着または結合するコーティングは、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートが積層された後に付与される。さらに他の実施形態では、コーティングは、積層CNTアレイまたはシートで形成された多層化または重層化構造に浸潤または裏込まれ、構造を形成するアレイのCNTに接着または結合される。本明細書で使用される「浸潤」または「浸潤された」は、多層化または重層化構造が形成されるように積層されたアレイまたはシートのカーボンナノチューブの少なくともいくらかを通して浸透した、コーティング材料(単数または複数)を指す。一部の実施形態では、浸潤の程度が0.1~99.9%の範囲にある。一部の実施形態では、浸潤したコーティング材料は、カーボンナノチューブ間の間隙空間を少なくとも部分的に満たし、一方、一部の他の実施形態では、浸潤したコーティングはカーボンナノチューブの表面の少なくとも一部をコーティングし、またはこれらの両方である。一部の実施形態では、浸潤したコーティング材料は、CNTアレイまたはシートの積層によって形成された構造の階層または層内に存在するカーボンナノチューブ間の間隙空間の全てまたは実質的に全て(即ち、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%)を満たす。
【0058】
様々な材料は、積層前、積層中、または積層後に、CNTアレイまたはシート上にコーティングすることができる。特定の実施形態では、コーティングは、本明細書に定義される複数の層または階層を有する構造のアレイまたはシートのCNTの熱抵抗の低下を引き起こすことができる。
【0059】
記載されるコーティングまたはコーティング材料は、基板上に形成されたアレイのCNTおよび/またはその多層化積層体の、先端および/または側壁をコーティングするように、共形的にかつ均一に付与することができる。本明細書で使用される「共形的に」は、基板に取着された垂直に並んだCNTまたはその多層化積層体の、先端および/または側壁にピンホールがないか、またはピンホールが実質的にない(即ち、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%未満のピンホールを有する)均一なコーティングを指す。共形コーティングは、約30nm、25nm、20nm、15nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、または1nm未満であってもよい。共形コーティングは、約1nmから30nmの間の厚さを有していてもよい。ある特定の実施形態では、共形コーティングは、熱管理のため、および焼付けの適用例のために、CNTアレイをヒートシンクなどの基板に接着させる接着剤(以下のより詳細な考察参照)である。
【0060】
コーティングは、例えば溶媒、熱、または供給源に加えるのが容易ないくつかのその他のものを使用して、界面が組み立てられるときにリフロー可能であることも望ましい。コーティングとして使用されるポリマーは、少なくとも130℃までは熱的に安定でなければならない。一部の実施形態では、コーティングは、界面の「再加工」を可能にするために、熱または溶媒への溶解などによって容易に除去可能である。本明細書で使用される「再加工」は、溶媒または熱を加えることによる界面の破壊(即ち、コーティングの除去)を指す。
1.ポリマーコーティング材料
【0061】
一部の実施形態では、コーティングは、1種または複数のポリマー材料であり、またはこれらの材料を含む。ポリマーコーティングは、芳香族、複素環式芳香族、もしくは非芳香族ポリマーなどの共役ポリマー、または非共役ポリマーを含むことができる。
【0062】
適切な種類の共役ポリマーには、ポリチオフェン(アルキル置換ポリチオフェンを含む)、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p-フェニルスルフィド)、およびポリ(p-フェニレンビニレン)を含むがこれらに限定されない、多環式芳香族および多複素環式芳香族が含まれる。適切な非芳香族共役ポリマーには、ポリアセチレンおよびポリジアセチレンが含まれるがこれらに限定するものではない。上記列挙されたポリマーの種類には置換ポリマーが含まれ、ポリマー主鎖は、アルキル基などの1個または複数の官能基で置換されている。一部の実施形態では、ポリマーはポリスチレン(PS)である。他の実施形態では、ポリマーはポリ(3-ヘキシチオフェン)(P3HT)である。他の実施形態では、ポリマーは、ポリ(3,4-3エチレン(thylene)ジオキシチオフェン)(PEDOT)またはポリ(3,4-3エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)である。
【0063】
他の実施形態では、ポリマーは非共役ポリマーである。適切な非共役には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、シリコーン、アクリル、およびこれらの組合せ(ブレンド)が含まれるがこれらに限定するものではない。
【0064】
他の実施形態では、ポリマーはパラフィンワックスである。他の実施形態では、ポリマーは、Fischer-Tropschワックスまたはポリエチレンワックスなどの合成ワックスである。他の実施形態では、ポリマーは、80、90、100、110、または120℃よりも高い、好ましくは130℃よりも高い融解温度を有するワックスである。
【0065】
ワックス(ポリエチレンワックスなど)を含むポリマー材料は、1,000ダルトンから1,000,000ダルトン、1,000ダルトンから500,000ダルトン、1,000ダルトンから250,000ダルトン、1,000ダルトンから100,000ダルトン、1,000ダルトンから75,000ダルトン、1,000ダルトンから50,000ダルトン、1,000ダルトンから25,000ダルトン、または1,000ダルトンから10,000ダルトンなどであるがこれらに限定されない任意の適切な重量平均分子量を有していてもよい。一部の実施形態では、重量平均分子量の任意の組合せを有する、異なるポリマー材料の組合せを使用して、基板上のアレイのCNTまたはそれから形成された積層体の先端および/または側壁がコーティングされるように浸潤かつ/または共形的に付与してもよい。好ましい実施形態では、高いおよび低い重量平均分子量のポリマーの組合せを使用して、最適な硬さ、熱安定性、および剪断強さを提供することにより、本明細書に記載されるCNTアレイから形成されるTIMの焼付け中に、改善された耐久性および性能を提供してもよい。
【0066】
さらに他の実施形態では、ポリマーは、改善された表面接着が得られるように、ワックス、粘着付与剤、およびポリマーベースを組み合わせた高温のグルーまたはホットメルト接着剤である。他の実施形態では、ポリマーは感圧性接着剤である。
D.他のコーティング材料
1.金属ナノ粒子
【0067】
CNTアレイまたはシートは、1種または複数の金属ナノ粒子でさらにコーティングすることができる。1種または複数の金属ナノ粒子は、CNTの遠位端および/または側壁に吸着されてCNTの遠位端および/または側壁を表面に結合し、CNTアレイもしくはシートと表面との間の熱抵抗を低減させ、またはこれらの組合せであってもよい。金属ナノ粒子は、当技術分野で公知の様々な方法を使用して、CNTアレイまたはシートに付与することができる。
【0068】
適切な金属ナノ粒子の例には、パラジウム、金、銀、チタン、鉄、ニッケル、銅、およびこれらの組合せが含まれる。
2.流動性または相変化材料
【0069】
ある特定の実施形態では、積層前、積層中、または積層後に、流動性または相変化材料をCNTアレイまたはシートに付与する。流動性または相変化材料をCNTアレイまたはシートに添加して、CNT間の空気を置き換え、CNTの遠位端および/または側壁と表面との間の接触を改善し、その結果、アレイまたはシートの熱抵抗、およびアレイまたはシートと表面との接触を低減させ、あるいはこれらの組合せがなされてもよい。流動性または相変化材料は、当技術分野で公知の様々な方法を使用して、CNTアレイに付与することができる。
【0070】
適切な流動性または相変化材料の例には、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、概して炭化水素ベースのワックス、およびこれらのブレンドが含まれる。ワックスでもポリマーでもない適切な流動性または相変化材料の他の例には、液体金属、油、有機-無機および無機-無機共晶物、およびこれらのブレンドが含まれる。一部の実施形態では、コーティング材料、例えば非ポリマーコーティング材料、および流動性または相変化材料は、同じ1種または複数の材料である。
III.多層化または重層化構造
【0071】
上述の基板の1つまたは両方の表面上にアレイを有する単層CNTアレイまたはシートは、多層化または重層化構造を提供するための以下に記載される方法に従い積層することができる。3層化/階層化構造の非限定的な例を、図2(右側)の概略図に示す。層または階層は、2つのCNTアレイまたはシートのカーボンナノチューブを接触/積層することによって形成され、これらは少なくとも部分的に噛み合っており、かつ任意選択で、本明細書に記載される適切なコーティング材料でコーティングされていてもよい。
【0072】
一部の実施形態では、多層化または重層化構造は、コーティング、金属ナノ粒子のコーティング、および/または流動性もしくは相変化材料のコーティングを、アレイのCNTなどのナノ構造要素上にさらに含むことができる。
【0073】
少なくとも2つのCNTアレイまたはシートを積層して、多層化または重層化構造を形成することができる。例えば図2は、3つのCNTアレイの積層を示す(右側)。より多くのCNTアレイを使用することにより、多層化または重層化構造の厚さを必要に応じて増大させることができる。一部の実施形態では、最大で5、10、15、20、25、30、またはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートを、上述の方法に従い積層することができる。積層により形成された、結果的に得られた多層化または重層化構造の厚さは、1~10,000ミクロンまたはそれよりも厚い範囲にすることができる。一部の実施形態では、積層により形成された、結果的に得られた多層化または重層化構造の厚さは、1~3,000マイクロメートル、さらにより好ましくは70~3,000マイクロメートルにすることができる。一部の実施形態では、層の数および/または厚さは、積層プロセスで使用されるアレイ上に形成されたCNTフォレストの厚さをベースにする。
【0074】
非限定的な実施形態では、支持体/基板上に形成された少なくとも2つの垂直に並んだアレイまたはシートを、アレイのCNTなどのナノ構造要素が接触により少なくとも部分的に噛み合うように、積層/接触させる。一実施形態では、アレイのナノ構造要素の完全な噛み合いは、積層されたときに互いの中に生じる。他の実施形態では、アレイは、CNTなどのナノ構造要素の先端でのみ噛み合ってもよい。さらに他の実施形態では、個々のナノ構造は、噛み合いプロセス中に隣接するアレイのナノ構造内を通り抜けることができ、CNTなどの個々のアレイのナノ構造要素またはそのいくらかの部分は、互いの内部で完全にまたは実質的に噛み合い;本明細書で使用される「実質的に」は、個々のアレイのナノ構造要素の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の噛み合いを指す。一部の実施形態では、噛み合いの程度は、約0.1%から99%の範囲、または少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%である。
【0075】
一部の実施形態では、少なくとも部分的に噛み合う積層アレイのナノ構造は、管束、塊、または列などであるがこれらに限定されない、より大きい超構造に形成されてもよい。これらの超構造は、毛細管クランピングなどのメカニズムを通してまたは積層プロセスの前、最中、もしくは後のポリマーコーティングの付与を用いて、形成されてもよい。
【0076】
一部の実施形態では、ポリマーコーティングおよび/または接着剤、あるいは上述のその他のコーティングを、後に積層されるCNTアレイ(単数または複数)に付与する。そのような実施形態では、コーティングおよび/または接着剤、あるいは上述のその他のコーティングの厚さは、約1~1000nm、より好ましくは1~500nm、および最も好ましくは1~100nmである。
【0077】
上記に加え、多層化または重層化構造内に存在するCNTの好ましい変形機構により、CNTは隣接面の凹凸に効率的に順応でき、その結果、界面での高い接触面積が得られる。
A.熱抵抗の低減
【0078】
CNTアレイまたはシートと、本明細書に記載されるそのようなCNTアレイを積層することによって形成された多層化または重層化構造は、低い熱抵抗を示す。熱抵抗は、光音響(PA)法などの当技術分野で公知の様々な技法を使用して測定することができる。
【0079】
一実施形態では、CNTアレイまたはシートと、そのようなCNTアレイまたはシートを積層することにより形成された多層化または重層化構造との熱抵抗は、例えば光音響法を使用して測定したときに、単一階層構造に比べて少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、またはそれよりも多く低減される。他の実施形態では、CNTアレイまたはシートと、そのようなCNTアレイまたはシートを積層することにより形成された多層化または重層化構造は、約10.0、9.0、8.0、7.0、6.0、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5mmK/W未満の熱抵抗を示す。一部の実施形態では、熱抵抗は約2、好ましくは約1mmK/Wである。一部の実施形態では、CNTアレイまたはシートを積層することによって形成される多層化または重層化構造の熱抵抗値は、積層体を形成するのに使用される単一層アレイの値(単数または複数)に比べ、同じか、または実質的に変化せず;本明細書で使用される「実質的に」は、10%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の変化を指す。
【0080】
一部の実施形態では、CNTアレイまたはシートと、そのようなCNTアレイまたはシートを積層することにより形成された多層化または重層化構造は、約1~1500W/mK、または5~500W/mKの範囲のコンダクタンス値を示す。
【0081】
積層の前、最中、または後にCNTアレイまたはシートにコーティングを付与して、そのようなCNTアレイまたはシートを積層することにより形成された多層化または重層化構造を形成することは、接触面積を増大させ、かつCNTフォレスト熱界面の熱抵抗を低減させるための有効な手段であることが示された。個々のCNT接触の周りにナノスケールのコーティングを含むことによって付加された結合プロセスは、例えば、接触面積が増大するように毛細管作用を通して界面近くに追加のCNTを引っ張ることを含む。
IV.CNTアレイおよびそれから形成される多層化または重層化構造を調製するための方法
A.カーボンナノチューブ(CNT)アレイ
【0082】
カーボンナノチューブアレイは、当技術分野で周知の技法を使用して調製することができる。一実施形態では、アレイは、参照により本明細書に組み込まれる米国公開第2014-0015158(A1)号に記載されている。この方法では、稠密な、垂直に並んだCNTアレイの成長を促進させ、かつCNTと金属表面との間の優れた接着をもたらすのに、多層基板を使用する。
【0083】
多層基板は、金属表面などの不活性支持体上に堆積された3層またはそれよりも多くの層を含む。一般に多層基板は、不活性支持体の表面に堆積された接着層、界面層、および触媒層を含む。一般に支持体は、少なくとも部分的には、アルミニウム、白金、金、ニッケル、鉄、スズ、鉛、銀、チタン、インジウム、銅、またはこれらの組合せなどの金属から形成される。ある特定の場合には、支持体は、アルミニウムまたは銅箔などの金属箔である。支持体は、熱交換の適用例で使用される従来のヒートシンクまたはヒートスプレッダなどのデバイスの表面であってもよい。
【0084】
接着層は、支持体に対する界面層の接着を改善する材料で形成される。ある特定の実施形態では、接着層が鉄の薄膜である。一般に接着層は、CNTを形成するのに使用される高温で連続被膜が保持されるように、十分厚くなければならない。接着層は一般に、高温でのCNT合成中、酸化物および炭化物の形成に対する耐性も提供する。
【0085】
界面層は、適切な金属酸化物が形成されるように、ナノチューブ合成の条件下またはナノチューブ合成後の空気への曝露中に酸化された金属から、好ましくは形成される。適切な材料の例には、アルミニウムが含まれる。あるいは界面層は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素などの金属酸化物から形成されてもよい。一般に界面層は、そこを横断して触媒層および接着層を拡散させるように十分薄い。触媒層および接着層が同じ組成を有する一部の実施形態では、界面層への触媒の移行が低減され、ナノチューブ成長中の触媒の寿命が改善される。
【0086】
触媒層は、典型的には、化学気相堆積を介してカーボンナノチューブの形成を触媒することができる遷移金属から形成された薄膜である。触媒層を形成するのに使用することができる適切な材料の例には、鉄、ニッケル、コバルト、ロジウム、パラジウム、およびこれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、触媒層は鉄で形成される。触媒層は、ナノチューブ形成中に使用されるアニーリング条件下で触媒ナノ粒子または凝集体を形成するのに、適切な厚さのものである。
【0087】
他の実施形態では、多層基板が、CNTアレイを成長させるための触媒表面として働く。これらの場合、化学気相堆積を使用するCNT成長のプロセスは、多層基板の形態を変化させる。特に、加熱により、界面層は金属酸化物に変換され、接着層上に堆積された金属酸化物ナノ粒子または凝集体の層または部分層を形成する。触媒層は同様に、金属酸化物ナノ粒子または凝集体上に堆積された一連の触媒ナノ粒子または凝集体を形成する。CNT成長中、CNTは、触媒ナノ粒子または凝集体から形成される。得られるCNTアレイは、接着層、金属酸化物ナノ粒子または凝集体、および/または触媒ナノ粒子または凝集体を介して不活性支持体に固着されたCNTを含む。
【0088】
特定の実施形態では、多層基板は、金属表面上に堆積された厚さ約30nmの鉄接着層、厚さ約10nmのアルミニウムまたはアルミナ界面層、および厚さ約3nmの鉄触媒層から形成される。この実施形態では、鉄接着層は、金属表面およびAl(成長後のアルミナナノ粒子または凝集体)またはAl界面層の両方に接着する。鉄触媒層は、鉄ナノ粒子または凝集体を形成し、そこからCNTが成長する。これらの鉄ナノ粒子または凝集体は、下のアルミナにも結合する。
【0089】
その結果、十分に結合された界面が、酸化物界面材料の両面上に存在する。金属/金属酸化物界面の中で、鉄-アルミナ界面は、結合および化学相互作用の観点から最強のものの1つであることが公知である。さらに、金属(例えば、鉄接着層および金属表面)は、強力な電子カップリングにより互いに十分に結合する傾向がある。その結果、CNTは、金属表面に強力に固着される。
【0090】
さらに、ナノチューブ成長中の触媒層からの鉄の表面下拡散は、同じ金属が酸化物支持体の両面にありそれが通常なら拡散を推進させると考えられる濃度勾配のバランスをとっているので、低減される。したがって、触媒は成長中に枯渇せず、アレイ内のナノチューブの成長速度、密度、および収率が改善される。
【0091】
一部の実施形態では、CNTアレイは、上述の多層基板上に垂直に並んでいる複数のCNTによって形成される。このことは、例えばCNTのアレイを、多層基板上に成長したCNTの遠位端に移すことによって、実現することができる。一部の実施形態では、高いCNTアレイが、多層基板上の非常に短いCNTの遠位端に移される。この技法は、結合のために表面積を増大させることによって、結合強度を改善する。
【0092】
CNTアレイまたはシート用の不活性支持体は、アルミ箔などの1片の金属箔であることができる。これらの場合、CNTは、接着層、金属酸化物ナノ粒子または凝集体、および触媒ナノ粒子または凝集体を介して、金属箔の表面に固着される。ある場合には、金属箔の1つの表面(即ち、面)のみが、表面に固着された、並んだCNTのアレイまたはシートを含む。他の場合には、金属箔の両方の表面(即ち、面)が、表面に固着された、並んだCNTのアレイまたはシートを含む。他の実施形態では、CNTアレイまたはシート用の不活性支持体は、従来の金属ヒートシンクまたはヒートスプレッダの表面である。これらの場合、CNTは、接着層、金属酸化物ナノ粒子または凝集体、および触媒ナノ粒子または凝集体を介して、ヒートシンクまたはヒートスプレッダの表面に固着される。次いでこの機能化されたヒートシンクまたはヒートスプレッダは、集積回路パッケージなどの熱源に隣接または接着されてもよい。
B.カーボンナノチューブシート
【0093】
カーボンナノチューブシートは、当技術分野で周知の技法を使用して調製することができる。一実施形態では、シートは、米国特許第7,993,620(B2)号に記載されるように調製される。この実施形態では、CNT塊は、金属箔基板上の成長チャンバ内でin-situでシートに収集される。次いでシートは、溶媒を除去することによって稠密化することができる。別の実施形態では、CNTシートは、溶媒中に分散されたCNT塊の減圧濾過によって、作製される。
C.コーティングされたナノチューブアレイおよびシート
1. ポリマーコーティング
【0094】
コーティングされるポリマーは、1種または複数の溶媒に溶解することができ、噴霧または浸漬コーティングすることができ、または上述のように、基板上またはシート上に成長させた垂直CNTフォレストまたはアレイ上に、化学的もしくは電気化学的に堆積することができる。コーティング材料は、上述のように、基板上に成長させた垂直CNTフォレストもしくはアレイ上にまたはCNTシート上に、噴霧または粉末コーティングすることもできる。コーティングは、ファンデルワールス結合、π-πスタッキング、機械的ラッピング、および/または共有結合を通してCNTに結合し、ファンデルワールス力、π-πスタッキング、および/または共有結合を通して金属、金属酸化物、または半導体材料表面に結合する、ポリマーまたは分子を含む。
【0095】
噴霧または浸漬コーティングでは、コーティング溶液は、適切な溶媒中、適切な長さの時間にわたってコーティング材料を超音波処理または撹拌することによって、調製することができる。溶媒は、典型的には有機溶媒または溶媒であり、例えば室温または高の蒸発によって容易に除去される溶媒であるべきである。適切な溶媒には、クロロホルムが含まれるがこれらに限定するものではない。ポリマーは、ミクロン規模の粒度を持つ粉末、例えば直径が約100、50、40、20、10マイクロメートル未満である粒子を使用して、乾燥形態で噴霧コーティングすることもできる。この実施形態では、粉末粒子を噴霧堆積した後に、より連続的なコーティングに拡げるために、ポリマー粉末に溶媒を浸み込ませまたは加熱して液体溶融体にすることが必要と考えられる。
【0096】
コーティングの厚さは、一般に、1から1000nmの間、好ましくは1から500nmの間、より好ましくは1から100nmの間、最も好ましくは1から50nmの間である。一部の実施形態では、コーティングの厚さは、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10nm未満である。コーティングは、アレイのCNTの先端および/またはCNTの垂直壁に、共形的に付与されてもよい。
【0097】
噴霧コーティングプロセスは、溶媒の乾燥に関連した毛細管力に起因して、CNTの先端のコーティングの堆積を制限しクランピングを制限する。CNTアレイ上で見られるコーティングの量は、噴霧回数と共に増加する。商用規模でのコーティングにさらに適切な技法も含め、CNTアレイ上にコーティング材料を噴霧コーティングするのに代替技法を使用することができる。
【0098】
コーティングプロセスを実証する別の実施形態では、CNTシートをコーティング溶液または溶融コーティングに浸漬して、シートの厚さ全体にわたってCNTをコーティングし、交差面方向でシートの熱伝導度が、20、30、50、または70%よりも大きく増大する。次いでこれらのコーティングされたシートを、溶媒または熱を加えることによりチップとヒートシンクまたはヒートスプレッダとの間に配置して、ポリマーをリフローし、チップとヒートシンクまたはスプレッダとの間にCNTシートを結合し、その結果、チップとヒートシンクまたはヒートスプレッダとの間の熱抵抗を低減させる。
【0099】
他の実施形態では、コーティング材料は、化学堆積(例えば、化学気相堆積(CVD))、エアロゾル噴霧堆積、および電気化学堆積など、当技術分野で公知の堆積技法を使用して、CNTアレイまたはシート上に堆積することができる。粉末コーティングは、典型的には適切な平均粒度(即ち、約10,000ミクロン未満から1ミクロン、1ミクロンから1nm、またはそこに開示された任意の範囲)の微細化されたポリマー材料であるポリマー材料の、(共形)コーティングを付与するのに使用されてもよい。限定するものではないが、微細化された粉末は、微細化されたポリマー材料(即ち、粒子)を最大で約30kV、25kV、20kV、15kV、10kV、または5kVまで帯電させ、荷電粒子を、基板上に垂直に並んだCNTまたはそれから形成された積層体に付与することによって、推進力を提供する粉末コーティング銃を使用して付与されてもよく、ここで基板(単数または複数)およびCNTは接地された状態にある。1つまたは複数の粉末コーティングを付与した後、コーティングを、任意の従来の手段により加熱して、ポリマーコーティング(単数または複数)を溶融、硬化(set)、および/または矯正(cure)してもよい。粉末コーティングは、必要に応じて1回または複数回繰り返してもよい。
【0100】
一部の実施形態では、ポリマーコーティングは、電気化学堆積によって付与することができる。電気化学堆積では、ポリマーのモノマーを電解質に溶解し、CNTアレイまたはシートを、対電極に対向する作用電極として使用する。電位を、第3の参照電極に対して、作用電極および対電極の間に印加する。モノマーを、印加電位の結果として、CNTアレイの先端、または電解質に面するシートの側壁上で、電気酸化する。電位を印加する合計時間を制御することによって、堆積されたポリマー層の厚さが制御される。
【0101】
一部の実施形態では、コーティング材料は、1種または複数のオリゴマーおよび/またはポリマー材料であり、あるいはこれらを含む。特定の実施形態では、ポリマーは、芳香族および非芳香族共役ポリマーを含む共役ポリマーであることができる。適切な種類の共役ポリマーは、多環式芳香族および多複素環式芳香族であって、ポリチオフェン(アルキル置換ポリチオフェンを含む)、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p-フェニルスルフィド)、およびポリ(p-フェニレンビニレン)を含むがこれらに限定されないものを含む。適切な非芳香族ポリマーには、ポリアセチレンおよびポリジアセチレンが含まれるがこれらに限定するものではない。上記列挙されたポリマーの種類は置換ポリマーを含み、そのポリマー主鎖はアルキル基などの1個または複数の官能基で置換される。一部の実施形態では、ポリマーはポリスチレン(PS)である。他の実施形態では、ポリマーはポリ(3-ヘキシチオフェン)(P3HT)である。
【0102】
他の実施形態では、ポリマーは非共役ポリマーである。適切な非共役には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびこれらの組合せ(ブレンド)が含まれるが、これらに限定するものではない。他の実施形態では、ポリマーはパラフィンワックスである。他の実施形態では、ポリマーは、Fischer-Tropschワックスまたはポリエチレンワックスなどの合成ワックスである。他の実施形態では、ポリマーは、80、90、100、110、および120℃よりも高い、好ましくは130℃よりも高い融解温度を有するワックスである。他の実施形態では、ポリマーは、ワックスと組み合わせた高温のグルーまたはホットメルト接着剤、粘着付与剤、および改善された表面接着をもたらすポリマーベースである。他の実施形態では、ポリマーは感圧性接着剤である。
2.金属性ナノ粒子
【0103】
CNTアレイまたはシートは、1種または複数の金属ナノ粒子でコーティングすることができる。1種または複数の金属ナノ粒子は、CNTの遠位端および/または側壁に吸着されて、CNTの遠位端を表面に結合させ、CNTアレイまたはシートと表面との間の熱抵抗を低減させ、またはこれらの組合せであってもよい。金属ナノ粒子は、当技術分野で公知の様々な方法を使用して、CNTアレイまたはシートに付与することができる。例えば、ヘキサデカンチオール酸パラジウムなどの金属チオレートの溶液を、CNTの遠位端および/または側壁上に噴霧またはスピンコーティングすることができ、有機物をベークオフしてパラジウムナノ粒子を残すことができる。別の例では、電子ビームまたはスパッタ堆積を使用して、金属ナノ粒子をコーティングすることができ、またはナノ粒子の「被膜様」アセンブリをCNTの遠位端および/または側壁上に接続することができる。金属性粒子は、コーティングと同時にまたはコーティングの前もしくは後にコーティングすることができる。
【0104】
適切な金属ナノ粒子の例には、パラジウム、金、銀、チタン、鉄、ニッケル、銅、およびこれらの組合せが含まれる。
3.流動性または相変化材料
【0105】
ある特定の実施形態では、流動性または相変化材料をCNTアレイまたはシートに付与することができる。流動性または相変化材料をCNTアレイまたはシートに付加して、CNT間の空気を置き換え、かつCNTの遠位端と表面との間の接触を改善してもよく、その結果、アレイまたはシートの熱抵抗が低減し、アレイまたはシートと表面との間の接触が低減し、またはこれらの組合せになる。流動性または相変化材料は、当技術分野で公知の様々な方法を使用してCNTアレイまたはシートに付与することができる。例えば、その液体状態にある流動性または相変化材料は、アレイまたはシートを液体と部分的または完全な接触に配置することによって、CNTアレイまたはシートに浸み込ませることができる。
【0106】
適切な流動性または相変化材料の例には、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、概して炭化水素ベースのワックス、およびこれらのブレンドが含まれる。ワックスでもポリマーでもない適切な流動性または相変化材料の他の例には、液体金属、油、有機-無機および無機-無機共晶物、およびこれらのブレンドが含まれる。一部の実施形態では、コーティング材料(単数または複数)および流動性または相変化材料が同じである。
【0107】
上述のコーティング、金属性粒子、および/または流動もしくは相変化材料を、CNTアレイまたはシートに直接付与して、基板の1つまたは複数の表面上にCNTを有するコーティングされたアレイを形成することができる。コーティングされたCNTアレイまたはシートに引き続き積層を行って、多層化または重層化構造を形成することができる。ある特定の他の実施形態では、上述のコーティング、金属性粒子、および/または流動もしくは相変化材料を、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートの積層中に付与する。さらに他の実施形態では、上述のコーティング、金属性粒子、および/または流動もしくは相変化材料は、2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートを積層した後に付与する。非限定的な実施形態では、多層化また重層化構造(単数または複数)は、最初に2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートを積層し、次いで形成された構造の少なくとも部分的に噛み合った階層に、1つまたは複数のコーティング、金属性粒子、および/または流動もしくは相変化材料、あるいはこれらの組合せを浸潤させることによって、形成される。そのようなコーティング/材料の、多層化または重層化構造(単数または複数)の少なくとも部分的に噛み合った階層への、積層の前、最中、または後での導入を使用して、CNTアレイまたはシートの積層から得られる多層化または重層化構造の熱輸送または熱抵抗特性を改変かつ/または高めることができる。
D.多層化または重層化構造
【0108】
本明細書に記載される実施形態では、単一基板は、基板の表面上に形成された1つまたは複数のCNTアレイを有することができ、このCNTアレイは上述のようにコーティングされていてもよい。
他の実施形態では、多層化または重層化構造は:
(1)少なくとも2つまたはそれよりも多くのCNTアレイまたはシートを提供するステップと;
(2)少なくともCNTアレイまたはシートを積層するステップと
を含み、積層の結果、アレイまたはシートのナノ構造、CNTの少なくとも部分的な噛み合いが得られる方法によって形成された、CNTアレイまたはシートを積層することによって形成される。一部の実施形態では、多層化または重層化構造を作製する方法は、上述の、コーティング、金属性ナノ粒子のコーティング、および/または流動性もしくは相変化材料のコーティングを付与または浸潤させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、コーティング、金属性ナノ粒子のコーティング、および/または流動性もしくは相変化材料のコーティングを付与するステップは、積層の前、あるいは積層中、あるいは積層後に行う。さらに他の実施形態では、方法は、積層ステップ中に圧力を加えることを含む。印加圧力は、約1~30psiの範囲、より好ましくは約1~20psi、最も好ましくは約1~15psiの範囲にあってもよい。一部の実施形態では、圧力は約15psiである。圧力は、接着剤または相変化材料などの結合剤として作用することができるコーティング材料(単数または複数)が使用される場合、隣接する階層が結合されるまで連続的に加えてもよい。圧力は、任意の適切な長さの時間にわたり加えてもよい。一部の実施形態では、結合剤を使用しない場合、1分未満などの短時間で使用されるだけである。
【0109】
少なくとも2つのCNTアレイまたはシートを積層して、多層化または重層化構造を形成することができる。例えば、図2は、3つのCNTアレイの積層を示す(右側)。より多くのCNTアレイを使用することによって、多層化または重層化構造の厚さを必要に応じて増加させることができる。一部の実施形態では、最大で5、10、15、20、25、30個またそれよりも多くのCNTアレイまたはシートを、上述の方法に従い積層することができる。積層によって形成された、結果的に得られる多層化または重層化構造の厚さは、1~10,000ミクロンまたはそれよりも大きい範囲にすることができる。
【0110】
非限定的な実施形態では、支持体/基板上に形成された少なくとも2つの垂直に並んだアレイまたはシートは、アレイのCNTなどのナノ構造要素が接触によって少なくとも部分的に噛み合うように、積層し/接触する。一実施形態では、アレイのナノ構造要素の完全な噛み合いは、積層されたときに互いに内部で引き起こされる。他の実施形態では、アレイは、CNTなどのナノ構造要素の先端でのみ噛み合ってもよい。さらに他の実施形態では、個々のナノ構造は、噛み合いプロセス中に隣接するアレイのナノ構造の内部を通り抜けることができる。
【0111】
一部の実施形態では、少なくとも部分的に噛み合う積層アレイのナノ構造は、管束、塊、または列などであるがこれらに限定されない、より大きい超構造に形成されてもよい。これらの超構造は、毛細管クランピングなどのメカニズムを通して、または積層プロセスの前、最中、または後でのポリマーコーティングの付与によって、形成されてもよい。
【0112】
一部の実施形態では、ポリマーコーティングおよび/または接着剤、または上述のその他のコーティングを、CNTアレイ(単数または複数)に付与し、次いで積層する。そのような実施形態では、コーティングおよび/または接着剤、または上述のその他のコーティングの厚さは、約1~1000nm、より好ましくは1~500nm、最も好ましくは1~100nmである。
V.適用例
【0113】
1つまたは複数のコーティングされたCNTアレイをその上に有する単層基板、あるいは本明細書に記載されるCNTアレイまたはシートを積層することによってそれから形成された多層化または重層化構造は、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)として使用することができる。CNTアレイまたはシートを積層することによって形成された多層化または重層化構造は、特定の適用例で必要に応じて形成および/または堆積することができる。
【0114】
単層CNTアレイ、および本明細書で記載されるそのようなCNTアレイを積層することによって形成される多層化または重層化構造は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、メモリモジュール、グラフィックチップ、レーダおよび無線周波数(RF)デバイス、ディスクドライブ、発光ダイオード(LED)ディスプレイを含むディスプレイ、照明システム、自動車制御ユニット、パワーエレクトロニクス、太陽電池、バッテリ、携帯電話などの通信設備、熱電発生器、およびMRIを含む撮像設備において、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)として使用することができる。
【0115】
ある特定の実施形態では、CNTアレイを積層することによって形成された単層または多層化または重層化構造は、低接触圧および/または低圧の適用例で有用である。低圧は、周囲圧力または1atmよりも低い圧力、例えば約0.01から約1atm未満の範囲内を指してもよい。ある場合には、低圧は、そのようなTIMを衛星または宇宙船/システムで使用することができると考えられる航空宇宙の適用例などにおける、減圧を指してもよい。
【0116】
ある特定の実施形態では、CNTアレイを積層することによって形成された多層化または重層化構造は、周囲温度よりも低い温度、凍結よりも低い温度、または極低温(宇宙で経験するような)で、有用である。
【0117】
CNTアレイ、および本明細書に記載されるようにそのようなCNTアレイを積層することによって形成される多層化または重層化構造は、熱移動以外の適用例で使用することもできる。例には、マイクロエレクトロニクス、スルーウエハ垂直相互接続アセンブリ、ならびにバッテリおよびキャパシタ用の電極が含まれるが、これらに限定するものではない。現在、銅およびアルミ箔を、リチウムイオンバッテリ内のアノードおよびカソードの裏当て材料として使用されている。
【0118】
単層構造または積層することによってそれから形成された多層化もしくは重層化構造は、電磁遮蔽に使用することもできる。
A.焼付けおよび熱の適用例
【0119】
1つの高度に特殊化された、TIMに関して開発中の適用例は、焼付け(burn-in)および試験の適用例を含む。集積回路製造業者は、それらのチップ上での「焼付け」およびストレス試験の組合せを通して初期故障期間中に最終的な故障を誘発しようとする。焼付け試験では、信頼性と動作温度との間の反比例関係を利用して、高温でチップを動作させる(A. Vassighi、O. Semenov、M. Sachdev、およびA. Keshavarzi、「Thermal Management of High Performance Microprocessors」、null、2003年、313頁)。デバイスは、試験中はそれらの性能限界で動作しているので、有効なサーマルインターフェースマテリアル(TIM)が必須である。焼付けの適用例に関するTIMの所望の特長は:低い熱抵抗、高い機械的コンプライアンス、高い頑丈性、およびチップ上に残渣を残さないことである(N. F. DeanおよびA. Gupta、「Characterization of a thermal interface material for burn-in application」、Thermal and Thermomechanical Phenomena in Electronic Systems、2000年、ITHERM 2000、The Seventh Intersociety Conference、2000年)。
【0120】
したがって、TIM材料は、反復サイクルが必要な適用例に十分適している。例えば材料は、チップなどの電気部品の「焼付け」試験中にサーマルインターフェースマテリアルとして用いることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるCNTアレイの不活性支持体/基板は、従来の金属ヒートシンクまたはスプレッダの1つまたは複数の表面であることができる。次いでこの機能化されたヒートシンクまたはスプレッダは、集積回路パッケージなどの熱源に当接していても接着していてもよい。そのようなTIM材料は、熱源とヒートシンクまたはヒートスプレッダとの間、例えば集積回路パッケージとフィン付き熱交換器との間に配置または固定して、熱源からヒートシンクまたはスプレッダへの熱の移動を改善することができる。
【0121】
本明細書に記載される単層および/または多層化もしくは重層化積層体は、焼付け試験などであるがこれに限定されないTIMの適用例に使用することができる。
【0122】
一部の実施形態では、方法は、単層CNT複合体および本明細書に記載されるようにそれから形成された多層化または重層化構造を、圧力、加熱、電気、または組合せを含む試験で使用することを含むことができる。一般に、被試験デバイスと、接着表面を有する熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板との接触が行われる。一部の実施形態では、方法は:
熱または電気ユニットヘッドを、ユニットヘッドに直接取着している基板に、少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で係合させるステップと;
係合を、少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するか、または係合を少なくとも1から5回のサイクルで繰り返すステップであり、各係合中に、被試験デバイスの出力を上昇させ、熱または電気ユニットヘッドを加熱して、少なくとも50℃の温度に到達するまでデバイスの出力上昇をシミュレートするステップと;
少なくとも1,500サイクルの出力上昇の間、熱または電気ヘッドおよび基板と被試験デバイスとの係合を解除し、そして再度係合させるステップと
を含むことができる。
【0123】
方法は、サイクル後の熱抵抗および/または相対熱抵抗を決定するために、被試験デバイスの試験を含むことができ、またはそのような試験をもたらすことができる。
【0124】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される単層CNT複合体およびそれから形成された多層化または重層化構造は、被試験デバイスと、接着表面を有する熱伝導性および/または導電性の機械的にコンプライアントな基板とを接触させるための方法で使用され、その方法は:
(1)基板を熱または電気ユニットヘッドに直接取着するステップであって、ヘッドの領域を完全に覆うか、または被試験デバイスのサイズに一致させるステップと;
(2)取着された基板を持つ熱または電気ユニットヘッドと、被試験デバイスとを、少なくとも10psiの圧力および150℃未満の係合温度で係合させるステップと;
(3)係合を、少なくとも10psiの圧力下で少なくとも5分間保持するか、または係合を少なくとも1から5回のサイクルで繰り返すステップであって、各係合中に、被試験デバイスの出力を上昇させ、熱または電気ユニットヘッドを加熱して、少なくとも50℃の温度に到達するまでデバイスの出力上昇をシミュレートするステップと;
(4)少なくとも1,500サイクルの出力上昇の間、熱または電気ヘッドおよび基板と被試験デバイスとの係合を解除し、そして再度係合させるステップと;
(5)サイクル後に、熱抵抗および/または相対熱抵抗を決定するよう被試験デバイスを試験するステップと
を含む。
【0125】
記載される方法では、係合圧力は少なくとも10psiである。係合圧力は、約10psiから300psiの間、10psiから250psiの間、10psiから200psiの間、10psiから175psiの間の範囲、またはその中に開示される範囲であることができる。
【0126】
記載される方法では、係合サイクル数は、少なくとも1から5、5から1,000、5から5,000、または10,000から100,000係合サイクルであってもよく、これらは好ましくは、基板を除去することなく、または被試験デバイスからいかなる砕片もしくは痕跡(marks)も取り除く必要なく行われる。
【0127】
記載される方法では、係合サイクル(即ち、係合、係合解除、および再係合)は、それぞれ独立して、任意の適切な期間にわたり実施されてもよい。各サイクルは、独立して、少なくとも1秒から300秒、1秒から250秒、10秒から200秒、10秒から180秒、20秒から180秒、30秒から180秒、およびその内に開示される範囲にわたって行ってもよい。
【0128】
記載される方法では、被試験デバイスは、約-55℃から140℃、-50℃から130℃、-40℃から120℃、-30℃から110℃、-20℃から100℃、-10℃から90℃、0℃から80℃、および10℃から70℃の間の温度で、またはその内に開示される温度範囲で試験される。
【0129】
記載される方法では、基板の表面は、ユニットヘッドと被試験デバイスとの間の機械的粘着を防止するために処理または改変することができ、それがデバイス内の応力発生を防止し、デバイスが試験ソケットから引っ張られるのを防止することができる。
【0130】
記載される方法では、基板は、同じ基板上に存在する1から100個のダイ、1から50個のダイ、1から25個のダイ、1から15個のダイ、または1から10個のダイの間で接触することができ、即ちマルチダイまたはマルチチップ試験をすることができ、これらのダイは、異なる高さ、形状、および/またはサイズのものであることができる。
【0131】
記載される方法では、基板は、被試験デバイスに取着することができ、熱または電気ユニットヘッドには取着されない。
【0132】
記載される方法では、基板は、精密に切断して被試験デバイスの寸法にすることができまたは熱もしくは電気ユニットヘッドの寸法にすることができ、1個または複数のセンサ、1個または複数の取付けアライメントピン、1個または複数の減圧チャッキング、またはこれらの組合せを、基板内に貫通させることが可能になる。
【0133】
記載される方法では、基板は、台座上にまたは熱もしくは電気ユニットヘッドに付与されまたは設置されると、いかなる接着剤残渣もまたは実質的にいかなる接着剤残渣も残すことなく(「実質的にいかなる残渣も」は、最初に基板上に存在する全接着剤の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1重量%未満を指す)、台座、熱または電気ユニットヘッドから除去することができる。そのような場合、残渣が残っていない場合には、除去が生じたときには台座、熱または電気ユニットヘッドを擦る必要がない。残渣が実質的に残っていない場合、除去が行われるときには、台座、熱または電気ユニットヘッドの最小限の擦り取りのみが必要(または擦り取りが実質的になされない)であり得る。
【0134】
記載される方法では、基板は、被試験デバイスに取着することができかつ熱または電気ユニットヘッドには取着されず、基板は、さらなる試験または販売用のパッケージングのための次の形態に被試験デバイスと共にパッケージングされるように、試験ステップの終了後も被試験デバイスに取着されたままである。
【0135】
記載される方法では、基板は、試験ステップの後で決定される、約0.01から3.0cmK/W、0.05から2.0cmK/W、0.05から1.5cmK/W、0.05から1.0cmK/W、0.05から0.5cmK/W、0.05から0.1cmK/Wの間、およびここに開示された範囲の熱抵抗を加える。
【0136】
記載される方法では、基板は、被試験デバイス上の局所ホットスポットから熱を拡げるために、約100から2,000W/mK、100から1,900W/mK、100から1,800W/mK、または100から1,700W/mKの間、およびここに開示された範囲にある面内熱伝導度を有する。
【0137】
記載される方法では、基板は、低い熱質量(即ち、熱エネルギーを吸収し保存する能力)と、1、2、3、4、5、6、7、または8W/mKよりも大きい平面を通した熱伝導度とを有し、被試験デバイスを試験するのに必要な時間は最小限であり、即ち10分未満、5分未満、3分未満、1分未満、30秒未満である。
【0138】
記載される方法では、基板は好ましくは、試験ステップに対し、1cm当たり0.001から10オームの間で加えるだけである。
【0139】
記載される方法では、基板は、電気接続の特徴付けのため、電気接続ピンのアレイを短絡させるのに使用することができる。
【0140】
記載される方法では、基板は好ましくは、5ミクロン未満の圧縮永久歪みを有する。
【0141】
記載される方法では、基板は好ましくは、その当初の厚さの少なくとも5%まで、100psi未満の印加圧力で圧縮することができる。
【0142】
記載される方法では、基板は、好ましくは引裂きまたは剪断破壊なしで、その当初の厚さの50%程度に圧縮することができる。
【0143】
記載される方法では、基板は、同じボード上にある異なるサイズ、形状、または高さを有する1つまたは複数のダイまたはチップとの表面接触を維持しながら、基板の異なる領域で異なる量に圧縮することができる。
【0144】
記載される方法では、接着剤は好ましくは、基板の表面層上またはその中に存在し、付与され、または埋め込まれた、好ましくは、強力な機械的結合特性を維持しながら、基板と接触表面との間で5ミクロンよりも大きい接着剤の厚さを付加しない、熱可塑性または感圧接着剤である。接着剤は、任意の適切な商用の接着剤または接着剤の組合せであって、好ましくは低抵抗接着剤(単数または複数)であってもよい。接着剤は、基板上のCNTアレイに対して本明細書に記載される、ポリマーまたはそれらの組合せなどの1種または複数のコーティング材料から形成されてもよい。接着剤は、好ましくは、TIM材料を「貼って剥がせる(peel-and-stick)」TIM材料にし、この材料は、適切な剥離ライナがTIM材料の接着面から剥がされると容易に配置し接着することができる。
【0145】
記載される方法では、熱ユニットは、自動試験装置(ATE)ピックアンドプレースハンドラの一部であってもよく、基板は、異なるデバイス形状または幾何形状のために台座またはデバイスキットの必要性に取って代わることができる。
【0146】
記載される方法では、基板は、自動試験装置(ATE)ピックアンドプレースハンドラ、焼付け炉、または同じもしくは類似の目的で使用され得るその他のそのような試験装置に対して台座または熱もしくは電気ユニットヘッドを設置する前に、台座にまたは熱もしくは電気ユニットヘッドに付与することができる。
【0147】
記載される方法では、熱ユニットは、焼付け炉の一部であることができ、基板は、異なるデバイス形状または幾何形状のために台座またはデバイスキットの必要性の取って代わることができる。
【0148】
記載される方法では、基板は、台座の1つまたは両方の面上で金属台座と組み合わせて使用することができる。
【0149】
記載される方法では、コンプライアントな基板は、各試験係合サイクル中に挿入されるか、または性能を高める液体と組み合わせて使用される液体の必要性に、取って代わることができる。
【0150】
記載される方法では、機械的にコンプライアントな基板は、合わせ面を研磨する必要性を、工場ミル仕上げ(工業規格により決定される)まで、または工場ミル仕上げよりも大きい程度までに、最小限にすることができる。
【0151】
記載される方法では、基板は、その厚さが約10から10,000マイクロメートルの間である。
【0152】
記載される方法では、基板は、その厚さが約100ミクロン未満であり、被試験デバイスとのヘッド接触中に、加えられた剪断力から引き裂かれず、または劣化しない。
【0153】
記載される方法では、基板は、デバイスまたはヘッドの中心から縁部への曲率が好ましくは約5~200ミクロンの間、またはその中に開示された範囲にある場合、被試験デバイスと熱または電気ユニットヘッドとの間の隙間を満たすように変形することができる。
【0154】
記載される方法では、基板は、金属または黒鉛の箔またはシートの1つまたは両方の面上に成長させた、垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである。
【0155】
記載される方法では、基板は、アルミニウムまたは黒鉛の箔またはシートなどの金属の1つまたは両方の面上に成長させた、垂直に並んだカーボンナノチューブアレイの多層積層体であって、層の数が1から20、1から15、1から10、1から5、1から3、または1から2層の間であることができる。
【0156】
記載される方法では、基板は、可撓性ガラスもしくはセラミックまたは誘電性の箔もしくはシート、あるいは電気絶縁をもたらす誘電体層でコーティングされた金属箔であってもよい。
【0157】
記載される方法では、基板は、基板に固着された触媒を使用して形成された、垂直に並んだカーボンナノチューブアレイである。そのような垂直に並んだカーボンナノチューブアレイを形成する方法は、参照により関連ある部分が本明細書に組み込まれる米国出願第13/546,827号および第14/414,227号に詳述されている。
【0158】
記載される方法では、基板は、熱可塑性接着剤の共形コーティングの使用を通して、熱源またはヒートシンクのいずれかに永続的にまたは半永続的に取着することができ、この熱可塑性接着剤の付加は、接着剤のない基板に比べて基板の熱抵抗を増加させない。任意の適切な商用の熱可塑性接着剤、または接着剤の組合せを使用してもよい。接着剤は、基板上のCNTアレイに関して本明細書に記載されるポリマーまたはその組合せなど、1種または複数のコーティング材料から形成されてもよい。接着剤は、好ましくは、TIM材料を「貼って剥がせる」TIM材料にし、この材料は、適切な剥離ライナがTIM材料の接着面から剥がされると容易に配置し接着し得る。
【0159】
記載される方法では、TIM材料上で使用される記載される接着剤は、除去後に残渣を残さずまたは残渣を最小限にしか残さない。最小限の残渣は、TIMが除去された後の任意の残留材料が5%、4%、3%、2%、または1重量%未満であることを指す。残された任意の残渣は、イソプロピルアルコールまたは水などであるがこれらに限定されない低毒性溶媒で取り除いてもよい。
【0160】
記載される方法では、基板は、1種または複数のポリマーで浸潤またはコーティングされた上述の金属基板またはその多層積層体上にあるカーボンナノチューブアレイであり、そのポリマーコーティングはCNTの先端および/またはCNTの壁と同一平面にあり、そして/または共形的なものであり;あるいは約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nm、または1000nm以下の過剰なポリマーをCNT先端の上方に有する。好ましくはポリマー(単数または複数)は、耐久性のある低圧縮永久歪みポリマーである。好ましくはポリマーは、被試験デバイスに対し、残渣を流さず、濡らさず、蒸発させず、またはその他の手法で移さないか、あるいは実質的に流さず、濡らさず、蒸発させず、またはその他の手法で移さない。本明細書で使用される「実質的に」は、被試験デバイスに対して、残渣を10%、5%、4%、3%、2%、または1%未満で流し、濡らし、蒸発させ、またはその他の手法で移すことを指す。好ましくはポリマー(単数または複数)は、高い電気抵抗率で高い誘電強度を有する。
【0161】
記載される方法では、TIMSのアレイのCNTの先端は、デバイスまたはその下位部分もしくは構成要素などと合わせることが意図される表面と電気接続を行うよう、利用可能なままである。
【0162】
記載される方法では、記載される接着剤は、被試験デバイスまたは熱/電気接続ヘッドとインターフェースする基板に、熱または電気抵抗を付加しない。
【0163】
記載される方法では、接着剤が、好ましくは貼って剥がせる(peel and stick)接着剤および/または熱により活性化する接着剤である。適切な接着剤は、当技術分野で公知である。
【0164】
記載される方法では、デバイスは、基板を除去せずに、または被試験デバイスから砕片または痕跡を取り除く必要なく、試験することができる。
【0165】
記載される方法では、基板は、好ましくはコーティングされたCNTアレイサーマルインターフェースマテリアル(TIM)である。ある特定の実施形態では、コーティングされたCNTアレイTIMは、コーティングされたCNTフォレストをその上に有する基板の1つまたは両方の表面を有する、単層TIMである。一部の実施形態では、コーティングは、好ましくはポリエチレンワックスであるポリマーコーティングであり、ワックスコーティングは、アレイのCNTの先端および/またはCNTの壁に存在する均一で共形的なコーティングである。コーティングは、好ましくは上述の粉末コーティング堆積法により付与される。
【0166】
ある特定の他の実施形態では、コーティングされたCNTアレイをベースにするTIMは、コーティングされたCNTフォレストをその上に有する基板の1つまたは両方の表面を有する、多数の単層TIMから形成される。多層化積層体が本明細書で記載される。一部の実施形態では、コーティングは、好ましくはポリエチレンワックスであるポリマーコーティングであり、このワックスコーティングは、アレイのCNTの先端および/またはCNTの壁に存在する均一で共形的なコーティングである。コーティングは、好ましくは、上述の粉末コーティング堆積法により付与される。
【0167】
本明細書に記載される単層および/または多層化もしくは重層化積層体CNTアレイは、熱制御器などであるがこれらに限定されない電子デバイスの温度制御のためのシステム、デバイス、および/または装置に組み込むこともできる。そのようなシステム、デバイス、および/または装置は、例えば参照により関連ある部分が組み込まれる米国特許第6,489,793号、第6,636,062号、および第8,896,335号に記載されている。
B.サーマルインターフェースマテリアルキット
【0168】
本明細書に記載される、コーティングされたCNTアレイをベースにするTIM材料(CNT-TIM複合体とも示される)は、軍隊、工業製造、および自動車製造を含むがこれらに限定されない様々な適用例で使用することができる。
【0169】
非限定的な例として、CNT-TIM複合体は、本明細書に記載される方法により調製され、キットとして提供される。
【0170】
キットは、記載されるCNT-TIM複合体の1種または複数を含んでいてもよい。好ましくは、CNT-TIM複合体は、接着剤を貼って剥がせるTIM材料である。キットはさらに、容器に入れた適切な量のアルコール(イソプロピルアルコール(IPA)など)、糸くずの出ない布、保護手袋、およびピンセットを含んでいてもよい。
【0171】
キットは、CNT-TIM複合体が付与される基板の調製について詳述する取扱説明書と、詳細な適用指示書も含む。例えば、表面の調製は、保護手袋の着用と、IPAおよび糸くずの出ない布を使用した表面(ヒートシンクなど)の清浄化とを含んでいてもよい。一実施形態では、適用指示書は下記のステップを含む:
- 保護手袋を着用するステップであって、ピンセットを使用して、貼って剥がせるCNT-TIM複合体材料から剥離ライナを除去し、付与前に接着剤に触れないことを確実にするステップ。接着剤は長いオープンタイムを有するが、剥離ライナを除去した後は、任意の粒子またはその他の環境汚染を回避するために素早く付与するべきである;および
- 剥離した、貼って剥がせるCNT-TIM複合体を、ヒートシンクヘッドなどの基板に取着するステップであって、好ましくは基板の一端から開始して基板の反対側の端部に向かって作業するステップであって、CNT-TIM複合体が表面に対して平らになるよう確実にするステップ。圧力は、付与されたCNT-TIM複合体に対して垂直に加えられるべきであり、圧力は、付与されたCNT-TIM複合体を横断して指を滑らせることなどによって加えられるべきではない。
【0172】
付与されるCNT-TIM複合体はさらに、下記のステップを詳述する取扱説明書により処理(seasoned)してもよい:
- 少なくとも10、20、または30psiの圧力を、好ましくは50℃よりも低い係合温度で印加するステップ。処理(seasoning)中に加えられる圧力は、200psi、150psi、100psi、または75psi程度に高くてもよい。より高い圧力を使用する結果、CNT-TIM複合体の改善された熱抵抗特性を得ることができる(図10参照)。
- 付与されたCNT-TIM複合体の面上で、ヒートシンクなどの基板を、約90°から120℃、好ましくは少なくとも約110℃の温度に加熱するステップ。
- 複合体を、適切な温度の加圧下で、約1から30分、1から20分、1から10分、5から10分、より好ましくは少なくとも約8分間保持するステップ。
- ヒートシンクなどの基板を、75℃、60℃、50℃、40℃、または30℃よりも低い温度に冷却させるステップ;および
- ヒートシンクなどの基板を、印加圧力から係合を解除するステップ。
【0173】
上記処理ステップは必要に応じて繰り返してもよい。
【0174】
キットは、CNT-TIM複合体の設置または処理の前、最中、または後に、感圧性接着剤に触れることならびに仕上げしわ(crease marks)および/または泡の導入を回避することに関して警告することも含む。
【0175】
キットは、CNT-TIM複合体を除去するための取扱説明書を含むこともできる。例えば、CNT-TIM複合体が処理された場合、除去は:
- ピンセットおよび保護手袋を使用するステップ、
- CNT-TIM複合体を隅から把持して剥がすステップ、および
- いかなる残渣も、IPAおよび糸くずの出ない布を使用して、ヒートシンクなどの基板、表面から取り除くステップ
を含む。
【0176】
CNT-TIM複合体が処理されなかったた場合、除去は:
- CNT-TIM複合体を剥がすステップ;
- いかなる残渣も、IPAおよび糸くずの出ない布を使用して、ヒートシンクなどの基板、表面から取り除くステップ
を含む。
【0177】
ある特定の他の実施形態では、上述のサーマルインターフェースマテリアルキットは、自動試験装置(ATE)ハンドラ、焼付け炉、または試験用の新しい製品を受容するのに使用されるその他のそのような試験システムを調製することが意図される、より大きいデバイスの切換えキットの一部として提供されてもよい。デバイス切換えキットに含まれる典型的な物品は、新しい製品、新しいソケット、および他のそのような付属品の寸法に一致するように設計された台座を含んでいてもよいが、これらに限定するものではない。
【0178】
別の実施形態では、上述のサーマルインターフェースマテリアルキットは、設置指示書および関連ある材料と一緒に、上述のデバイス切換えキットの追加の付属品として供給することができる。
【0179】
さらに別の実施形態では、記載されるサーマルインターフェースマテリアルは、キット内に存在する構成要素の1つまたは複数の表面に付与されてもよい(例えば、台座の表面、またはデバイス切換えキット内の1つもしくは複数の構成要素もしくは部品のその他の合わせ面(単数または複数))。そのような実施形態では、設置指示書および材料が任意選択で含まれていてもよく、それはサーマルインターフェースマテリアルが、エンドユーザに配達される前などにキット内に存在する構成要素(単数または複数)の1つまたは複数の表面に事前に付与されるからである。
【実施例
【0180】
(実施例1)
多層化/重層化CNTベースのサーマルインターフェースマテリアル(TIM)
方法:
熱測定システム設計:
全ての試験片に関する熱移動特性を、ASTM D5470「熱伝導性電気絶縁材料の熱貫流特性に関する標準試験法(Standard Test Method for Thermal Transmission Properties of Thermally Conductive Electrical Insulation Materials)」に記載される方法に基づいて設計され構築された試験装置を使用して評価した。試験片を変形させるだけでなく、減圧チャンバも組み込んで伝導性および対流性熱損失を最小限にする。装置の設計の概略図を図1に示す。減圧チャンバは、アクリルドアを備えたステンレス鋼で構築され、10-5torrの範囲で減圧を維持することが可能である。減圧チャンバを、1000lbの負荷フレームの反応プレート上に据え、全てのフィードスルーをチャンバの最上部近傍に据えた。熱電対を、1対のOmega 4対フィードスルー(8つの熱電対が可能)を介して供給した。冷却管は、oリング封止材を備えたバルクヘッド継手を所有する。ヒータ用の電力は、熱電対フィードバックループを持つWatlow SD制御器を介して制御した。加熱ブロックを、FR4ガラス繊維絶縁体シェルにより取り囲み、冷却ブロックを、加熱ブロックと中心を合わせた状態が維持されるよう機械加工されたリセス部セクションを持つガラス線維絶縁性プレートの頂部に据えた。1インチ×1インチおよび4インチ×4インチの加熱ブロックおよび冷却ブロックの両方を、このプログラム用に計画された試験に適応するように製作した。
熱移動係数の評価:
【0181】
熱移動の評価を、試験装置の高温および低温メーターブロック間の20℃の差で実行した。20℃に可能な限り近い温度差が、正確な結果を得ることができるようにシステム内で熱移動を推進するのに必要であることがわかった。試験データを、試験のデータ出力ファイルから直接インポートし、これをLabViewを介して獲得した。メーターバー(5005シリーズアルミニウム)の熱伝導度(λ)を、NISTから得たアルミニウムに関するアルゴリズムを使用して、特定の温度に関して計算した(E. Marquardt、J. Le、およびR. Radebaugh、「Cryogenic Material Properties Database Cryogenic Material Properties Database」、2000年)。
【0182】
次いで個々のメーターバーのそれぞれを通る熱流を、方程式1:
Q=(λ*A/d)(δT) (1)
(式中、Qはバーを通る熱流であり、Aは断面積であり、dは熱電対間の距離であり、δTは一方の熱電対から他方の熱電対への温度差を単位ケルビンで表したものである)
から計算した。次いで高温および低温メーターブロックに関する値を平均して、QTOTALを得た。次いで熱インピーダンス(単位 mK/W)を、方程式2:
θ=(A/QAVG)*δT (2)
(式中、δT=T-Tは、評価した材料とメーターブロックの界面での特定の温度間の差であり、Aは材料の断面積であり、Qはメーターブロック内を通る平均熱流である)
を通して評価した。
【0183】
次いで熱伝導度を、方程式3:
λ=QAVG*δd/A*δT (3)
(式中、δdは試験片の厚さの変化であり、Aは試験片の断面積であり、δTは試験片を横断する温度差を単位ケルビンで表したものである)
を使用して計算した。
【0184】
試験片の熱移動係数を方程式4:
c=QAVG/A*δT (4)
を介して計算した。
試料製作:
【0185】
CNTアレイを、鉄触媒を使用してアルミニウム(Al)および銅(Cu)基板の両方に成長させて、それらの性能の差を評価した。CNT成長は、低圧化学気相堆積(LPCVD)プロセスを使用して行った。
【0186】
3つの異なるCNT高さの箔の組合せを試験した:
・ シリーズ#1-各面上に50ミクロンのナノチューブがある50ミクロンAl基板
・ シリーズ#2-各面上に75ミクロンのナノチューブがある50ミクロンAl基板
・ シリーズ#3-各面上に150ミクロンのナノチューブがある50ミクロン銅基板
【0187】
一般にナノチューブの品質は、製作した全ての長さに関して非常に良好であった。しかしチューブの長さが増加するにつれ、欠陥の存在も増加した。さらに、CNTの最終的に実現可能な高さは、基板内への触媒の逆拡散および触媒積層体への基板の拡散によって制限される。より高いコンプライアンスを持つより厚い試料が必要とされる適用例では、高さが増加したTIMが、図2に概略的に示されるように両面フォレスト/アレイを積層することによって実現された。
【0188】
アルミニウム(Al)基板上で単一TIMを利用する2つの異なる積層体構成について評価した。「乾燥」積層体と示される第1の構成を、3つの個々のTIMから組み立て、次いで調製したままの状態で評価した。第2の積層体構成では、非常に薄い吹付け塗りワックス材料を使用して、チューブとチューブとの間の界面で個々のTIMを一緒に結合した。これらの吹付け塗り界面材料は、CNTベースのサーマルインターフェースマテリアルの熱抵抗を劇的に低下させることを示していた。合成ワックスに関する最大使用可能温度は、これらTIMで期待される動作範囲内に十分包含される150℃であり、用いられた非常に薄い層(約100nm)は、脱気のいかなる課題も提示しないと予測される。
【0189】
全ての初期評価は、周囲圧力で、平均温度50℃で、かつ試験装置内の加熱されたおよび冷却されたメーターブロックの間の温度差20℃で実行した。第1および第2の構成のTIM積層体の熱性能が周囲圧力で検証されたら、追加の試験を減圧中で実行した。メジアン温度50℃および温度差20℃を使用して、周囲圧力データとの比較を可能とした。
結果および考察:
乾燥積層体:
【0190】
機器のクロスヘッドで測定された実際の変位は、印加圧力10kPa(1.5psi)で430μmから480μmに及び、69kPa(10psi)の印加圧力で355μmから460μmに及んだ。このことは、CNTの座屈(buckling)および/または界面の噛み合いのいくらかの組合せを示唆した。変位測定は、変位測定のためにTIM積層体との接触がなされる点を正確に見分けることが困難であり得ることから、真の厚さと同じではないことに留意されたい。CNTの座屈および隣接するCNT層の噛み合いも考慮しなければならない。しかし正確な厚さ測定は、従来の測定技法を使用すると不可能である。
【0191】
2つの乾燥TIM積層体に関する熱移動試験の結果を、図3に示す。各試験片を、全体が10~69kPa(1.5から10psi)の圧力サイクル2回を通して試験して、乾燥積層体の再現性を評価した。試験をした乾燥積層体の両方の場合、1回の圧力サイクルを経験した後に熱移動に実質的な改善があった。このことは、隣接するCNT層同士の良好な接触を確実にするために、アセンブリ圧力が必要であることを示唆した。このことは、噛み合いから得られる熱移動の改善を実証する。
ワックスで組み立てられた積層体:
【0192】
これらの実験では、それぞれの全厚が約200μmである、アルミニウム基板上で3つのTIM試験片を積層し、薄いワックス層(約100nm)で結合して、厚さがおおよそ600μm(0.024インチ)のTIMアセンブリを提供した。機器のクロスヘッドで測定された実際の変位は、標的の厚さよりもいくらか少なかった。
【0193】
ワックスで結合された積層体に関する試験結果を、図4に提示する。概して、ワックス積層体は、乾燥積層体よりも性能が一貫しており、十分機能する前に「割り込み(break-in)」圧力サイクルを必要としないようである。性能異常は、試験1における低接触圧の試験片B2で認められ;このことは、装置内の上方メーターブロックと試験片との間の不十分な接触に起因すると考えられた。この特定の試験片の後続の試験は、優れた性能を一貫して示した。
【0194】
本明細書に記載されるTIMを積層すると、特に薄い(約nmの厚さ)層のポリマーを使用して階層間層を結合し、かつ噛み合いのレベルを制御するときに、金属基板上での長いCNTの成長が可能になる。
(実施例2)
ポリマーまたは接着剤を含む多層化/重層化CNTベースのサーマルインターフェースマテリアル(TIM)
【0195】
CNTアレイを、名目上100μmの厚さに成長させ、軟質ポリウレタンポリマーを完全に浸潤させた。個々のパッドのそれぞれの熱抵抗を、修正したASTM D570ステップ付きバー装置を使用して測定した。
【0196】
個々の試料を、様々な方法を使用して積層し、得られる積層体の熱抵抗を、単一階層と同じ手法で測定した。
【0197】
最初に、測定された熱抵抗がそれぞれ1.37および1.5cm-K/Wである2つの個々のアレイ試料を、互いの上部に積層した。アレイに浸潤させるのに使用したポリマーを溶解することが公知の溶媒を、積層体間に配置して、界面を液体状態に置いた。得られた積層体を、溶媒が完全に蒸発するまで圧力下で乾燥させた。次いで積層体を、ステップ付きバーシステムで測定し、得られた抵抗は1.5cm-K/Wであった。この実施例では、積層アレイの厚さは2倍であったが熱抵抗への不利益は受けなかった。
【0198】
第2の実験では、熱抵抗がそれぞれ0.45および0.66cm-K/Wである2つの個々のアレイ試料を、互いの上部に積層した。アクリレート接着剤の薄層を試料の間に置いた。試料の積層体を、溶媒が完全に蒸発するまで圧力下で乾燥させた。次いで得られた積層体を、ステップ付きバーシステムで測定し、得られた抵抗は0.66cm-K/Wであった。この第2の実施例では、積層アレイの厚さはやはり2倍であったが熱抵抗への不利益は受けなかった。
(実施例3)
サーマルインターフェースマテリアル(TIM)の焼付け試験
CNT-TIM複合体の試料製作:
【0199】
垂直に並んだカーボンナノチューブを、低圧化学気相堆積を介して鉄触媒で両面がコーティングされた50μmの1145 H19アルミ箔上で成長させた。アセチレンおよび水素が前駆体ガスとして働き、成長は、Al基板の融解温度よりも下でうまく留まるために630℃で行う。CNTは、2つの名目上の高さ:15μm(3分の成長時間)または50μm(15分の成長時間)まで成長させる。
【0200】
バルクパラフィンワックスの一貫した厚さを、CNTアレイ内に繰り返しウィッキングするのが難しいことに起因し、その一方先端での過剰なポリマーは回避され、粉末コーティング技法は、より信頼性ある状態で、ワックスの均一に薄いコーティングをCNTの先端に送出することができると考えられる。
【0201】
CNTを粉末コーティングするのに使用される合成ポリエチレンワックスを、Eastwood Dual Voltage HotCoat粉末コーティング銃に装填される微細化粉末形態で供給した。5~8psiの乾燥空気を、ワックスを試料に送出する推進力を提供する粉末コーティング銃に送出した。ワックス粒子を、銃から出るときに15kVで帯電させ、調製されたアルミニウム基板試料上に垂直に接地されたCNTフォレストに付与した。ワックス粒子は、CNT試料の表面に十分接着するようであり、過酷な振盪および吹付けに耐える。次いで乾燥コーティングされたCNT試料は、粉末コーティングキャビネットから炉に移動して、ワックスを矯正(溶融)させる。
【0202】
比較のポイントとして、対照試料に手作業でパラフィンワックスをコーティングして、コーティング厚さを比較した。SEMを使用して粉末コーティングされた試料の検査は、粉末コーティングプロセスを使用したときにCNTの著しく少ないクランピングがあることを示した(図5Aおよび5B)。CNTの毛細管クランピングは、CNTに浸み込ませた液体ワックスを乾燥するプロセスによって推進される。この毛細管クランピングを最小限にすることにより、粉末コーティングプロセスでワックスの薄いコーティングを送出することがはるかに可能になって、クランピングおよび低減した熱性能をもたらす過剰な材料なしに、CNT先端接触を高めることを示唆した。
【0203】
他の工業規格材料に対して調製されたCNT-TIM複合体試料の熱性能をベンチマークするため、1cm×1cmの試料を、熱伝導性試料の定常状態1D熱抵抗を測定するように設計された改変ASTM-D5470ステップ付きバー装置で測定した。試験装置は、(D. R. Thompson、S. R. Rao、およびB. A. Cola、「A Stepped-Bar Apparatus for Thermal Resistance Measurements」、Journal of Electronic Packaging、135巻、041002~041002頁、2013年)に詳述されている。CNT-TIM複合体試料の性能を適正に確立しかつ比較するために、広く様々な市販のTIMを、同じ条件下で試験した。
焼付けシステム設計:
【0204】
焼付け(burn-in)システムを使用して、焼付け、および試験の適用例について熱機械的サイクルをシミュレートした。多数回のサイクルにわたる、CNT-TIM複合体試料および商用の試料の熱抵抗をモニタするのに使用した。このシステムを図6Aに示し、そして図6Bおよび6Cに詳述されるように試験装置は下部および上部バーを有する。下部バーを2つのカートリッジヒータで加熱し、加熱マイクロチップとして働かせ;上部バーは、冷水で能動的に冷却し、冷却解決手段として働く。下部および上部バーの中心に沿ってそれぞれ配置された5つおよび3つのJ型熱電対がある。上部バーに接続された低温プレートは、空気圧で推進するピストンに取着される。ピストンは、サイクル時間を設定するプログラマブルリレーにより要求に応じて開閉するソレノイド弁に接続される。白色ブロックは、図6Aに示されるようにばねおよびロッドにより持ち上げられ、上部バーの水平アライメントを改善するのに使用される。低温プレートは、カンチレバー状態でアクチュエータに取着され、それ自身の重量の下、水平よりも僅かに下に吊られる傾向がある。低温プレートは、その下向き方向で白色ブロックにぶつかるので、平行に近い状態で持ち上げられ、下方メーターバーに対してより現実的な走向角(strike angle)が得られる。走向角は少なくなり、下部バーに完全に平行にぶつからないが、代わりに、ちょうど現場敷設の場合であるかのように、僅かなピッチを有する。上部および下部バーの間のこの非ゼロ走向角および後続の滑動運動は、係合し、そして係合を解除されるときにTIM上に剪断応力を引き起こし、現実的な摩耗メカニズムを送出する。
【0205】
プログラマブルリレーにより、各サイクルのおよびサイクル間の時間を設定することができる。実行した実験では、各サイクルを、係合されるバーに関して180秒に、係合を解除されるバーに関して20秒に設定した。産業上、試験適用例に応じて、試験サイクルは試験適用例での数十秒程度から焼付け適用例での数時間にまで及ぶことができる。180秒の係合時間は、産業で使用される時間に一致するので選択され、熱抵抗が定常状態に到達するよう十分な時間も割り当てられる。20秒の係合解除時間は、下部バーを120℃まで加熱することが可能になるので選択され、この温度は通常、産業における被試験デバイス(DUT)に関する最大動作温度である。全ての実験で設定された圧力は70psiであった。カートリッジヒータを電圧調節器に配線し、最高可能電圧に設定し、したがって下部バーは120℃を超えない。水冷却器は15℃に設定する。
【0206】
試験がなされるCNT-TIM複合体試料および商用試料を、KAPTON(登録商標)テープで、上部バーの表面に取着した。それぞれのTIMを切断して上部バーのサイズに一致させ、4片のテープを、TIMの縁部上に垂れた状態で置き、次いでテープを折り畳んで上部バーに接着させた。
【0207】
熱抵抗を計算できるようにするために、両方のバーに沿った温度を、Omegaデータ獲得モジュールに配線された熱電対を使用してモニタする。各熱電対の位置および温度を使用して、下部および上部バーの合わせ面の温度を、1次線形回帰を使用して計算することができた。下部バーを絶縁して、1D伝導を可能にし、次いで下部バーを通る熱流束を、以下の方程式:
【化1】
(式中、k下部バーは下部バーの熱伝導度であり、
【化2】
は下部バーに沿った温度勾配である)
を使用して計算した。次いで電力入力を、以下の方程式:
Q=q”Area下部バー
を使用して計算することができた。
【0208】
熱抵抗は、以下の方程式:
【化3】
を使用して決定した。
【0209】
熱抵抗は、システムが定常状態に達した後に計算し、同時に各サイクルで見分けた(spot)。試験は、TIMが故障の兆候を示したら(即ち、物理的引裂きまたは抵抗が大幅に増加したら)停止した。
結果:
静止試験:
【0210】
CNT-TIM複合体試料の、ワックスがある状態とない状態との両方での比較を、50psiの接触圧に関して図7に示す。CNT-TIM複合体性能を、隙間パッド(silパッドおよびtputty)、黒鉛、および高性能熱グリース、ならびにハイエンド炭素繊維ベースTIMと比較した。TIM型の広範なスペクトルを横断して、CNT-TIM複合体は、熱抵抗の最良の性能を実証した。この適度な圧力で、ハイエンド銀粒子が負荷された熱グリースは同等の性能を送出したが、CNT-TIM複合体は、CTE不整合に起因したポンプアウト、空隙化(voiding)、および層剥離に関連する信頼性の懸念を排除した。さらに、CNT-TIM複合体は、ドロップインクーポン型解決手段を提示し、グリースまたはゲルに勝る付与の容易さの著しい改善を可能にする。データにおける一部の拡がりは、粉末コーティングされたCNT-TIM複合体で明らかであり、試料間の均一性および再現性を確実にするよう改良されてもよい。
【0211】
図8は、100psi接触圧での、類似の比較を示す。より高い接触圧で、抵抗は、結合ライン厚さおよび全接触面積が増加するときに予測されるように、降下する。また、より高い接触圧で、熱グリースが表した僅かな利点はもはや観察されず、一方、CNT-TIM複合体は、より低い圧力で存在した形状因子、設置、および信頼性での利点を維持する。
焼付けおよび試験:
【0212】
60psiで、CNT-TIM複合体の熱抵抗は、0.5cmK/Wであり、インジウムの場合は0.05cmK/Wであり、ゴムでコーティングされたAl箔の場合は0.8cmK/Wであった。
【0213】
図9は、熱的-機械的サイクル中の、試験片の抵抗の変化を示す。ゴムでコーティングされたアルミ箔は、300サイクル後に摩耗により抵抗が2倍になり、インジウムパッドは400サイクル後に破れた。CNT-TIM複合体は、1500サイクル後も依然として耐久性があり、熱抵抗は一貫したままであった。ゴムでコーティングされたアルミ箔からの摩耗は、TIMに加えられた反復力から引き起こされ、ゴムが摩耗し始めると下にある箔が露出した。インジウムは、既に記載されたTIMに加えられた剪断力により、引き裂かれた。図9では、故障の前にインジウムの抵抗が降下することを認めることができ;このことは、TIMの「割り込み(breaking in)」に起因する可能性があり、バーとのより良好な接触が創出される。CNT-TIM複合体には、1500サイクル後に下部バーの跡(imprint)があった。
【0214】
試験された試料が、任意の許容されない汚れを試験ダイに移す可能性があるか否かを評価するために、いくつかの実験を実施した。焼付け試験中、バーが係合解除状態にあるときに、顕微鏡用スライドガラスを下部バーの上部に置いた。次いで上部バーを降ろし、TIMはスライドガラスと接触させる。サイクルが終了した後、スライドガラスを、残渣移動について検査する。CNT-TIM複合体は、残渣移動の兆候を示さず、一方、ゴムでコーティングされたAl箔TIMは示した。インジウムパッドは、既に試験中に下部バーを汚していたので、この試験を受けなかった。CNT-TIM複合体が汚れる可能性があるか否かをさらに調査するため、焼付けシステムとは切り離して別の試験を実施した。CNT-TIM複合体を、100psiの圧力下、120℃で30分間、2つのシリコンダイの間に置いた。シリコンダイは、汚れの目に見える兆候を示さず、SEM下で撮像したときに汚れの兆候がなかった(図示せず)。
【0215】
試験は、慎重な選択および設計のポリマー-カーボンナノチューブ複合体(CNT-TIM複合体)を調整して、耐久性、低い熱抵抗、コンプライアンス、ならびに化学および熱安定性の最適化された混合物を持つ、カスタマイズされたTIMを提供できることを示した。
【0216】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、開示された発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される刊行物およびそれらが引用される論文は、参照によって詳細に組み込まれる。
【0217】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、単に通常の実験を使用して理解しまたは確認し得る。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10