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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】圃場作業車
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20230110BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230110BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20230110BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20230110BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W30/10
B60W50/10
B60W50/14
A01B69/00 303M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018238893
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100235
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-12-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】三崎 真志
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116613(JP,A)
【文献】特開2018-113943(JP,A)
【文献】特開2018-45709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場作業車であって、
車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、
Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、
自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、
離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、
前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置と前記離脱位置との間の線分から所定距離内に位置する範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記始点位置と前記離脱位置の間の線分の任意の位置である圃場作業車。
【請求項2】
圃場作業車であって、
車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、
Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、
自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、
離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、
前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路の前記離脱位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記離脱位置である圃場作業車。
【請求項3】
圃場作業車であって、
車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、
Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、
自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、
離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、
前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路の走行終端で有する前記目標走行経路の前記Uターン走行経路を挟んだ次の前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置である圃場作業車。
【請求項4】
圃場作業車であって、
車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、
Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、
自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、
離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、
前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記判定部が、以下の4つの判定ルールの内の少なくとも2つの判定ルールを備え、当該判定ルールから選択された判定ルールが実行され、
判定ルールaでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置と前記離脱位置との間の線分から所定距離内に位置する範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記始点位置と前記離脱位置の間の線分の任意の位置であり、
判定ルールbでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置であり、
判定ルールcでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路の前記離脱位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記離脱位置であり、
判定ルールdでは、前記離脱位置を経路の走行終端で有する前記目標走行経路の前記Uターン走行経路を挟んだ次の前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置である圃場作業車。
【請求項5】
前記移行が可能であると判定された後に、自動走行を開始のための人為操作具が操作されることより、前記自動走行制御部は自動走行を開始する請求項1からのいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項6】
前記移行が可能であると判定された場合、前記判定部は自動走行の許可を運転者に報知する報知指令を報知ユニットに与える請求項1からのいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項7】
前記車体の方位と前記再開走行経路の方位との偏差が許可偏差範囲であることが、前記判定部の前記自動走行への移行条件として付加されている請求項1からのいずれか一項に記載の圃場作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標走行経路に沿った自動走行が可能な圃場作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
目標走行経路に沿って圃場を自動走行する圃場作業車では、作業の途中で、燃料切れなどの車両理由や作業容量の制限(収穫物の収容制限、圃場投与材の補充)などの経路離脱理由が生じると、作業が一旦中断され、圃場作業車は目標走行経路を離脱する。そして、経路離脱理由を解消すべく特定場所に移動した後、再び、離脱した位置に戻って、自動走行による作業が再開される。
【0003】
特許文献1による作業車では、作業走行の中断が発生すると、中断された作業走行に関する情報である中断情報が記録される。中断された作業走行を再開する際には、記録されている中断情報である作業走行の中断位置が作業再開位置として、圃場に設定されている走行経路とともにモニタに表示される。再開情報に含まれている作業再開位置は、前回の作業走行での作業中断地点、あるいは作業中断地点を通る走行経路の直線経路部分の端部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-116613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、作業走行を中断して走行経路から離脱した後に作業走行を再開する場合には、モニタで表示されている作業再開位置まで作業車が手動で走行し、その作業再開位置から自動走行が開始される。しかしながら、作業車が作業再開位置付近に移動させても、そこで、作業車の制御系が、自動走行の目標となる走行経路を検知できない場合には、自動走行は開始されない。また、目標となる走行経路を検知されて、自動走行が開始されても、走行経路と作業車との位置関係によっては、自動走行の開始時に想定外の大きな操舵が行われ、作業車が圃場を荒らしてしまう可能性がある。
【0006】
このような実情から、本発明の目的は、自動走行での圃場作業が中断され、目標走行経路から離脱しても、所望の作業再開位置からスムーズに自動走行が開始される圃場作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による圃場作業車は、車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置と前記離脱位置との間の線分から所定距離内に位置する範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記始点位置と前記離脱位置の間の線分の任意の位置である
本発明による圃場作業車は、車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路の前記離脱位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記離脱位置である。
本発明による圃場作業車は、車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記離脱位置を経路の走行終端で有する前記目標走行経路の前記Uターン走行経路を挟んだ次の前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置である。
本発明による圃場作業車は、車体の圃場上の位置を自車位置として算出する自車位置算出部と、Uターン走行経路を挟んで直線状に延びた始点位置から終端位置まで直線状に延びているように設定された目標走行経路に沿って前記車体が自動走行するように前記車体を操舵する自動走行制御部と、自動走行での圃場作業中に発生した前記目標走行経路からの前記車体の離脱に関する離脱情報として、離脱時の前記自車位置である離脱位置、または離脱時の前記目標走行経路である離脱走行経路、あるいはその両方を記録する離脱記録部と、離脱後に前記自動走行での圃場作業を再開する際に用いる前記目標走行経路としての再開走行経路を、前記離脱情報に基づいて決定し、前記再開走行経路または前記離脱位置への復帰を管理する作業復帰管理部とを備え、前記作業復帰管理部は、前記車体が前記再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から前記自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部を有し、
前記判定部が、以下の4つの判定ルールの内の少なくとも2つの判定ルールを備え、当該判定ルールから選択された判定ルールが実行され、
判定ルールaでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置と前記離脱位置との間の線分から所定距離内に位置する範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記始点位置と前記離脱位置の間の線分の任意の位置であり、
判定ルールbでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置であり、
判定ルールcでは、前記離脱位置を経路途中で有する前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路の前記離脱位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記離脱位置であり、
判定ルールdでは、前記離脱位置を経路の走行終端で有する前記目標走行経路の前記Uターン走行経路を挟んだ次の前記目標走行経路が前記再開走行経路であり、前記車体の基準点が、前記再開走行経路における前記始点位置の周囲に設定された範囲に入った場合、前記自動走行への移行が可能となり、かつ、前記自動走行での作業を再開する作業再開位置は、前記再開走行経路における前記始点位置である。
【0008】
この構成では、燃料補給や運転者の休息のために圃場作業車が目標走行経路から離脱すると、離脱位置または離脱走行経路、あるいはその両方が離脱情報として記録される。圃場作業が再開される際には、離脱情報に基づいて、自動走行の再開時に用いられる最初の目標走行経路(再開走行経路)が決定される。決定された目標走行経路に圃場作業車が手動走行で接近すると、圃場作業車が手動走行から自動走行にスムーズに移行可能であるかどうか判定部によって判定される。例えば、判定部は、自動走行制御系が再開走行経路を捕捉しているかどうか、圃場を荒らすような大きな操舵が行われることなしに再開走行経路に沿った自動走行が可能であるとどうかを判定する。したがって、判定部が自動走行が可能と判定した場合には、手動走行から自動走行へのスムーズな移行が実現する。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記移行が可能であると判定された後に、自動走行を開始するための人為操作具が操作されることより、前記自動走行制御部は自動走行を開始する。この実施形態では、判定部による自動走行への移行可能判定と人為操作具に対する操作とを移行条件として、手動走行から自動走行への移行が実行される。このため、手動走行から自動走行への移行が人為的な操作によって指令されても、この移行がスムーズに行われることが判定部によって保証されているので、圃場を荒らすような自動走行は回避される。さらに、運転者等の人の意思により自動走行が開始されるので、突然の自動走行に運転者が驚かされるという問題も回避される。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記移行が可能であると判定された場合、前記判定部は自動走行の許可を運転者に報知する報知指令を報知ユニットに与える。この実施形態では、判定部が手動走行から自動走行への移行が可能であると判定すると、自動走行が許可されたことが運転者に報知される。これにより、自動走行への移行が自動的に行われたとしても、運転者が余裕をもって自動走行への移行を受け入れることができる。また、自動走行への移行が人為操作によって最終的に決定される場合では、自動走行への移行が可能であることが制御的に保証されているので、運転者は所望の時点で自動走行への移行をスムーズに開始することができる。
【0011】
手動走行から自動走行への移行がスムーズに行われる条件の1つは、車体が、これから行われる自動走行ための目標走行経路である再開走行経路に接近していることである。車体が再開走行経路に接近して、制御系が再開走行経路を正確に捕捉できると、再開走行経路と車体との間の位置ずれが算出される。位置ずれが算出されると、この位置ずれを縮小するような操舵信号が生成され、車体は再開走行経路に沿って自動走行することができる。車体と再開走行経路とが離れすぎていると、制御系が再開走行経路を捕捉できないので、制御系が再開走行経路を捕捉できる範囲は、実験的あるいは理論的に算出される。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記車体が、前記再開走行経路の周囲に設定された範囲に入った場合、前記判定部は自動走行への移行が可能であると判定する。
【0012】
圃場作業車が目標走行経路に沿った自動走行を中断して、当該目標走行経路の途中で離脱した場合であっても、その離脱位置から自動走行を再開するのではなく、当該目標走行経路の走行始端から再開することも可能である。その場合、再開位置から離脱位置までは作業が停止されるか、あるいは作業が重複して行われる。これは、目標走行経路の走行始端から車体が進入する方が、目標走行経路の中間の離脱位置から車体が進入するよりは、自動走行への移行がスムーズとなる可能性が高いためである。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記車体が、前記再開走行経路の走行始端の周囲に設定された範囲内に入った場合、前記判定部は自動走行への移行が可能であると判定する。
【0013】
もちろん、離脱が目標走行経路の途中で発生しても、当該目標走行経路(再開走行経路)の側方からその離脱位置へ進入することも可能である。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記車体が、前記離脱位置の周囲に設定された範囲内に入った場合、前記判定部は自動走行への移行が可能であると判定する。
【0014】
再開走行経路への進入は、車体の方位(車体前後方向の向き)が再開走行経路の方位(再開走行経路の延び方向)に近いほど、スムーズとなるので、車体の方位も手動走行から自動走行への移行条件に付加されることが好ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記車体の方位と前記再開走行経路の方位との偏差が許可偏差範囲であることが、前記判定部の自動走行への移行条件として付加されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トラクタの側面図である。
図2】自動開始操作具とティーチング操作具とを示す斜視図である。
図3】トラクタによる耕耘作業における走行経路を説明するための模式図である。
図4】トラクタの離脱走行と復帰走行の様子を説明するための模式図である。
図5】トラクタの制御系の機能ブロック図である。
図6】離脱後に自動走行を再開する際の判定ルールを説明するための模式図である。
図7】離脱後に自動走行を再開する際の判定ルールを説明するための模式図である。
図8】離脱後に自動走行を再開する際の判定ルールを説明するための模式図である。
図9】離脱後に自動走行を再開する際の判定ルールを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいて、目標走行経路に沿って自動走行する圃場作業車の実施形態の1つを説明する。図1は、そのような圃場作業車の一例であるトラクタの側面図である。図1に示されているように、このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に運転室20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構を介して作業装置30としてのロータリ式の耕耘装置が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動走行時の自動操舵のために操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は運転室20に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。運転室20を形成するキャビン21の上部に、自車位置を検出するための測位ユニット8が備えられている。
ステアリングホイール22の近くにパネルユニット23が設けられている。
【0017】
パネルユニット23には人為操作具群24と、タッチパネルを有するモニタ25とが配置されている。図2には、パネルユニット23に配置された人為操作具群24が示されている。人為操作具群24のうちで、特に本発明に関係するものは、自動開始操作具24aとティーチング操作具24bである。この実施形態では、自動開始操作具24aは操作レバーとして構成され、ティーチング操作具24bはボタンスイッチとして構成されている。
【0018】
図3には、トラクタによる耕耘作業の一例が模式的に示されている。この耕耘作業では、直線状の作業経路に沿って走行しながら耕耘作業を行う走行と、次の直線状の作業経路に移行するための旋回走行とが交互に繰り返される。その際、最初の直線状の作業経路は、手動走行によるティーチング経路TLであり、次からの直線状の経路は、順次、ティーチング経路TLに沿って並列するように設定される。これらの経路は、自動走行のための目標走行経路であり、図3では、符号LM(1)~LM(6)で示されている。
【0019】
次に、この耕耘作業の基本的な走行プロセスを説明する。耕耘作業を開始するにあたって、運転者は、手動で車体1を圃場内の畦際のティーチング開始点に位置させ、ティーチング操作具24bを操作する。運転者が手動で、ティーチング開始点から畦際の直線状に車体1を走行させ、反対側の畦際近くのティーチング終了点まで移動させてからティーチング操作具24bを再度操作する。これにより、ティーチング開始点における車体1の位置座標とティーチング終了点における車体1の位置座標とから、ティーチング開始点とティーチング終了点とを結ぶティーチング経路TLが算出される。
【0020】
ティーチング経路TLの設定完了後、ティーチング経路TLに隣接する、最初の目標走行経路:LM(1)に移行するために、180度の旋回走行(Uターン走行)が行われる。
【0021】
この旋回走行が終了する前、または終了後に、車体1が次の耕耘作業に適した姿勢であるかどうか、つまり走行ずれが許容範囲であるかどうかがチェックされる。その走行ずれが許容範囲内であれば、自動走行が可能であることが報知される。この報知を受けて、運転者が自動開始操作具24aを操作すると、設定された目標走行経路:LM(1)を目標とする自動走行が開始される。
【0022】
自動走行が開始されると、車体1が目標走行経路LM(1)に沿うように、自動操舵が行われる。目標走行経路:LM(1)は、ティーチング走行後に車体1が最初に作業走行を行う目標走行経路LMである。目標走行経路:LM(1)に沿った自動走行が終了すると、旋回走行経路(Uターン走行経路)を経て、始点位置Ls(2)から次の目標走行経路LM(2)が先の目標走行経路:LM(1)の未作業領域側に隣接して設定される。それぞれ、目標走行経路:LM(3),LM(4),LM(5),LM(6)の順番で、旋回走行を挟んで、目標走行経路:LMの設定と、作業走行とが繰り返される。
【0023】
図4に示すように、自動走行での作業の途中で、経路離脱理由が生じると、運転者は自動走行を停止させ、トタクタは離脱位置(図4ではPbまたはPb2で示されている)から駐車エリアPAまで手動走行する。経路離脱理由が解消すると、駐車エリアPAから作業を再開する再開位置(図4ではPrまたはPr2で示されている)まで手動走行し、この再開位置:Prから自動走行での作業を再開する。
【0024】
なお、図4での一例では、離脱位置:Pbと再開位置:Prとが同じ位置となっているが、離脱位置:Pbと再開位置:Prとが異なる位置であってもよい。例えば、離脱位置:Pbによる離脱が目標走行経路:LM(4)の走行中に生じているので、この目標走行経路:LM(4)の走行始端を再開位置(図4ではPr1で示されている)としてもよい。あるいは、目標走行経路:LM(4)の走行終了後に離脱が生じた例では、離脱位置(図4ではPb2で示されている)は目標走行経路:LM(4)の走行終端となるが、この離脱の再開位置(図4ではPr2で示されている)は、次の目標走行経路:LM(5)の走行始端となる。
【0025】
次に、図5を用いて、トラクタの制御系における機能部を説明する。このトラクタは、測位ユニット8として、衛星測位モジュール8aと、慣性計測モジュール8bとを備えている。衛星測位モジュール8aは、衛星からの電波を受信して車体1の位置を検出する衛星測位用システムを利用して、車体1の位置を求める衛星測位機能を有する。慣性計測モジュール8bは、ジャイロセンサや加速度センサを有し、車体1の旋回角度の角速度を検出可能であり、角速度を積分することで車体方位の角度変位を求めることができる。慣性計測モジュール8bは、車体1の横幅方向中央の低い位置に配置されるのが好ましいが、他の位置、例えば、衛星測位モジュール8aと同じ位置に配置してもよい。
【0026】
制御装置5は、入出力インタフェースとして、入出力処理部50を備えている。入出力処理部50は、動作機器群60や状態検出器群70や人為操作具群24などと接続している。測位ユニット8は、車載LANを介して制御装置5と接続している。報知機器の1つであるモニタ25は液晶パネルで構成され、報知制御を行う報知ユニット72からの報知信号に基づいて、種々の情報を表示する。報知ユニット72も、車載LANを介して制御装置5と接続している。
【0027】
動作機器群60には、操舵モータ14や走行に関する動作機器である走行動作機器61や作業に関する動作機器である作業動作機器62が含まれている。
【0028】
種々のセンサやスイッチなどからなる状態検出器群70には、走行機器状態検出器74と作業機器状態検出器75とが含まれている。走行機器状態検出器74には、図示されていないが、車速センサ、操舵角センサ、エンジン回転数センサ、ブレーキペダル検出センサ、駐車ブレーキ検出センサ、などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業機器状態検出器75には、作業装置30を構成する昇降機構などの各種機構の状態を検出するセンサが含まれている。
【0029】
制御装置5には、自車位置算出部80、走行方位算出部81、走行制御部51、作業制御部52、ティーチング管理部53、経路設定部54、走行偏差算出部55、離脱記録部56、作業復帰管理部57などが備えられている。
【0030】
自車位置算出部80は、測位ユニット8から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、車体1の地図座標(自車位置)を算出する。その際、自車位置算出部80は、衛星測位データから直接算出される位置を、車体1の基準点(例えば車体中心や作業装置30の作業中心の位置)に変換する。走行方位算出部81は、自車位置算出部80によって算出された自車位置を経時的に処理して、車体1の前後方向での向きである走行方位を算出する。この走行方位は、慣性計測モジュール8bからの計測データに基づいて算出することも可能である。
【0031】
走行制御部51は、操舵制御信号を操舵モータ14に送り、変速制御信号や制動制御信号を図示されていないトランスミッションなどの走行動作機器61に送る。このトラクタは、自動走行と手動走行とが可能であるので、走行制御部51には、自動走行制御部511と手動走行制御部512と走行モード管理部513とが含まれている。
【0032】
作業制御部52は、車体1の走行に伴って作業装置30の昇降や作業装置30への動力伝達を行う各種の作業動作機器62を制御する。
【0033】
ティーチング管理部53は、上述したティーチング走行に基づいて、ティーチング経路TLのデータ(地図座標など)を算出する。経路設定部54は、図3を用いて説明した手順に基づいて、自動走行の目標となる目標走行経路を設定する。
【0034】
走行偏差算出部55は、自車位置算出部80によって算出された自車位置における車体1の横偏差と、自車位置における車体1の方位偏差とを算出する。横偏差は、経路設定部54で設定される目標走行経路の経路方位に直交する方向での自車位置における車体1の基準点から目標走行経路までの距離である。方位偏差は、走行方位算出部81によって算出された車体1の走行方位と目標走行経路とがなす角度である。
【0035】
自動運転を行うために、自動走行モードが設定され、手動運転を行うためには手動走行モードが設定される。このような走行モードは、走行モード管理部513によって管理される。自動走行モードが設定されている場合、自動走行制御部511は、走行偏差算出部55から受け取った横偏差及び方位偏差に基づいて、横偏差及び方位偏差が縮小するように、操舵制御量を演算する。操舵制御量に基づいて、操舵モータ14が駆動され、前輪11が操舵される。
【0036】
離脱記録部56は、図4に示すように、トラクタが自動走行での圃場作業中に目標走行経路からの離脱が発生して、駐車エリアPAに向かった際に、目標走行経路からの車体1の離脱に関する離脱情報を記録する。この離脱情報には、離脱時の前記自車位置である離脱位置、離脱時に自動操舵制御の目標となっていた目標走行経路である離脱走行経路、離脱走行経路における走行方向などが含まれている。
【0037】
作業復帰管理部57は、トラクタが離脱した後に、自動走行での圃場作業を再開する際に用いる目標走行経路(再開走行経路)を決定する。この再開走行経路は、離脱記録部56から離脱情報を読み出すことで得られる。さらに、作業復帰管理部57は、決定した再開走行経路または離脱位置へ車体1を案内するための復帰情報を管理する。この復帰走行は手動で行われるので、運転者に圃場における再開走行経路または離脱位置がモニタ25に表示されることが好ましい。このことから、復帰情報には、例えば、モニタ25に、再開走行経路と離脱位置とがマーキングされた圃場地図を表示するための画像情報や、離脱した日時などを示す文字情報などが含まれる。
【0038】
作業復帰管理部57は、車体1が再開走行経路に向かう手動復帰走行において、手動走行から自動走行への移行が可能であるかどうかを判定する判定部571を有する。判定部571によって選択的に実行可能な以下に列挙される判定ルールが、自動走行への移行条件として、状況に応じて用いられる。なお、ここでは図4で示された用語及び符号が流用されている。
【0039】
(a)判定ルールa(図6参照)車体1の基準点(図6ではBPで示されている)が、再開走行経路:LM(4)の周囲に設定された第1範囲(図6ではZ1で示されている)に入った場合、判定部571は自動走行への移行が可能であると判定する。なお、図6では、第1範囲:Z1は、再開走行経路:LM(4)の走行始端(図6ではRsで示されている)と離脱位置:Pbとの間の線分から所定距離内に位置する領域となっている。これは、再開走行経路:LM(4)の走行終端(図6ではReで示されている)と離脱位置:Pbとの間の線分に車体1が進入して、自動走行への移行が行われると、その進入位置と離脱位置:Pbとの間で未作業領域が生じるからである。このような未作業領域が残ってもよい場合には、再開走行経路:LM(4)の全長の周囲に自動走行移行を可能にする範囲:Z1を設定してもよい。なお、第1範囲:Z1を決定する所定距離は、走行偏差算出部55が横偏差及び方位偏差を算出して、自動走行制御部511が適正な操舵制御量を演算することができるように設定される。また、この判定ルールaでは、再開位置:Prは、走行始端:RSと離脱位置:Pbとの間の線分の任意の位置でよいことになる。
【0040】
(b)判定ルールb(図7参照)車体1の基準点(図7ではBPで示されている)が、再開走行経路:LM(4)の走行始端(図7ではRsで示されている)の周囲に設定された第2範囲(図7ではZ2で示されている)内に入った場合、判定部571は自動走行への移行が可能であると判定する。ここでは、走行始端:Rsが再開位置:Pr1となっているので、第2範囲:Z2は、走行始端:Rsを中心として、Uターン走行経路側の半円状(扇形状でもよい)で表され、その半径は、走行偏差算出部55が横偏差及び方位偏差を算出して、自動走行制御部511が適正な操舵制御量を演算することができるように設定される。この判定ルールbでは、再開走行経路:LM(4)の走行始端:Rsから離脱位置:Pbとの間の線分は、重複作業が行われるか、あるいは作業を行わずに走行する空走行が行われる。
【0041】
(c)判定ルールc(図8参照)車体1の基準点(図8ではBPで示されている)が、離脱位置:Pbの周囲に設定された第3範囲(図8ではZ3で示されている)内に入った場合、判定部571は自動走行への移行が可能であると判定する。ここでは、離脱位置:Pbが再開位置:Prとなっているので、第3範囲:Z3は、離脱位置:Pbを中心として、再開走行経路:LM(4)での走行方向上流側の半円状(扇形状でもよい)で表され、その半径または外縁までの距離は、走行偏差算出部55が横偏差及び方位偏差を算出して、自動走行制御部511が適正な操舵制御量を演算することができるように設定される。この判定ルールcでは、離脱位置:Pbと再開位置:Prとが一致しているので、実質的には、重複作業や空走行は発生しない。
【0042】
(d)判定ルールd(図9参照)判定ルールbに類似するが、この判定ルール4では、離脱位置:Pb2が目標走行経路:LM(4)の走行終端(図9ではReで示されている)であるので、再開位置:Pr2が再開走行経路:LM(5)の走行始端(図9ではRsで示されている)となる。したがって、車体1の基準点(図9ではBPで示されている)が、離脱位置:Pbの周囲に設定された第4範囲(図9ではZ4で示されている)内に入った場合、判定部571は自動走行への移行が可能であると判定する。走行始端:Rsが再開位置:Pr2となっているので、第4範囲:Z4は、走行始端:Rsを中心として、Uターン走行経路側の半円状(扇形状でもよい)で表され、その半径または外縁までの距離は、走行偏差算出部55が横偏差及び方位偏差を算出して、自動走行制御部511が適正な操舵制御量を演算することができるように設定される。この判定ルールdは、目標走行経路:LM(4)から次の目標走行経路:LM(5)に向かいUターン走行経路の途中で離脱が行われた場合でも、適用される。
【0043】
上述した判定部571で実行される判定ルールは、車体1が所定の範囲に入っているかどうか、つまり車体1が自動走行を再開する位置から所定の距離に入っているかどうかである。しかしながら、走行経路への車体1の進入では、車体1の車体方位も重要である。
このことから、この実施形態では、車体1の車体方位と再開走行経路の方位(経路延び方向)との偏差が許可偏差範囲であるという判定条件が上述した全ての判定ルールに付加される。許可偏差範囲は、車体方位を示す線と再開走行経路の方位を示す線とがなす交差角度が許可角度以内であることを意味する。この許可角度は、自動操舵で圃場を荒らすことなくスムーズに再開走行経路に進入できる角度として設定される。
【0044】
判定部571によって、手動走行から再開走行経路への自動走行が可能であると判定されると、その旨を運転者に報知するための報知指令が、報知ユニット72に与えられる。
報知ユニット72は、報知指令に基づいて、報知信号を生成し、自動走行への移行が可能であることをモニタ25に表示させたり、図示されていないランプやスピーカに報知させたりする。
【0045】
この実施形態では、判定部571によって、手動走行から再開走行経路への自動走行が可能であると判定されたのち、運転者が自動開始操作具24aを操作することにより、自動走行が開始され、前輪11が自動操舵される。もちろん、自動開始操作具24aの操作なしで、自動的に自動走行が開始されるように構成してもよい。
【0046】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、車体1の操向は、操舵輪としての前輪11によって行われ、操舵機器として、操舵モータ14が用いられていた。操舵方式として、操舵輪に代えてクローラ式の走行装置が用いられた場合は、自動走行制御部511によって制御される操舵機器は、左右のクローラの速度を変更する機器である。
【0047】
(2)上述した実施形態では、目標走行経路が直線で示されていたが、目標走行経路が大きな曲率半径をもつ湾曲線であってもよい。
【0048】
(3)上述した実施形態では、最初にティーチング走行を実施し、ティーチング走行で得られたティーチング経路に基づいて目標走行経路が設定された。これに代えて、ティーチング走行は行わずに、圃場の形状等から自動的にすべての目標走行経路を生成して設定するような構成を採用してもよい。
【0049】
(4)図5で示された各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、または複数の機能部に分けてもよい。さらに、制御装置5に構築された機能部のうち少なくとも一部の機能部は、作業車の車載LANと接続されるデータ処理端末に構築されてもよい。
【0050】
(5)上述した実施形態では、本発明の制御装置はトラクタに搭載されていたが、コンバインや田植機などの圃場作業車にも搭載しても、良好な自動走行性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、目標走行経路に沿って圃場を自動走行する圃場作業車の全てに適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 :車体
5 :制御装置
8 :測位ユニット
8a :衛星測位モジュール
8b :慣性計測モジュール
11 :前輪
12 :後輪
13 :操舵機構
14 :操舵モータ
24 :人為操作具群
24a :自動開始操作具
24b :ティーチング操作具
25 :モニタ
51 :走行制御部
511 :自動走行制御部
53 :ティーチング管理部
54 :経路設定部
55 :走行偏差算出部
56 :離脱記録部
57 :作業復帰管理部
571 :判定部
72 :報知ユニット
80 :自車位置算出部
81 :走行方位算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9