(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】アルカリ金属電池のためのグラフェン-金属ハイブリッドフォームをベースとした電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20230110BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20230110BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230110BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20230110BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2018563672
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 US2017035690
(87)【国際公開番号】W WO2017213988
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-03-18
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031084(WO,A1)
【文献】特開2016-012572(JP,A)
【文献】国際公開第2015/026157(WO,A1)
【文献】特開2015-146328(JP,A)
【文献】特開2013-054958(JP,A)
【文献】特開2014-199746(JP,A)
【文献】特開2016-012458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、前記アノードおよび前記カソードとイオン的に接触する電解質、ならびに前記アノードおよび前記カソードを電子的に分離する任意の多孔性セパレーターを含むアルカリ金属電池において、前記アノードは、複数の細孔、細孔壁、および前記細孔に存在するまたは前記細孔壁に堆積されたリチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属から構成されるグラフェン-金属ハイブリッドフォームを含み、前記リチウム吸着金属は、リチウム金属電池において、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、Na、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、またはそれらの合金からなる群から選択され、
前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームの総重量の0.1%~50%の量であり、または、前記ナトリウム吸着金属は、ナトリウム金属電池において、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、Li、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、またはそれらの合金からなる群から選択され、
前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームの総重量の0.1%~90%の量であり、前記細孔壁は、単層または数層のグラフェンシートを含み、前記数層のグラフェンシートは、X線回折で測定される0.3354nm~0.40nmの面間間隔d
002を有する2~10層の積層グラフェン面を有し、前記単層または数層のグラフェンシートは、実質的にゼロ%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料、または、0.001重量%~25重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含み、前記非純粋なグラフェンは、グラフェン酸化
物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記カソードは、複数の細孔および細孔壁から構成されるグラフェンフォームを含み、前記
カソードの細孔壁は、単層または数層のグラフェンシートを含み、前記数層のグラフェンシートは、X線回折で測定される0.3354nm~0.40nmの面間間隔d
002を有する2~10層の積層グラフェン面を有し、前記単層または数層のグラフェンシートは、実質的にゼロ%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料、または、0.001重量%~25重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含み、前記非純粋なグラフェンは、グラフェン酸化
物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属電池。
【請求項2】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記アノードと接触するさらなる別個の離散アノード集電体と、前記カソードと接触する別個の離散カソード集電体と、をさらに含むことを特徴とするアルカリ金属電池。
【請求項3】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、0.005~1.7g/cm
3の密度、50~3,200m
2/gの比表面積、単位比重当たり少なくとも200W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,000S/cm以上の電気導電率を有することを特徴とする、アルカリ金属電池。
【請求項4】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、純粋なグラフェンを含み、前記金属を用いずに測定した場合、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、0.1~1.7g/cm
3の密度、2nm~50nmの平均細孔サイズ、および300m
2/g~3,200m
2/gの比表面積を有することを特徴とするアルカリ金属電池。
【請求項5】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、非純粋なグラフェン材料を含み、前記
グラフェン-金属ハイブリッドフォーム
又は前記グラフェンフォームは、0.01重量%~20重量%の範囲の非炭素元素の含有量を含み、前記非炭素元素は、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素またはホウ素から選択される元素を含むことを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項6】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、1重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、0.35nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2500S/cm以上の電気導電率を有することを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項7】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、0.01重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、0.34nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を含むことを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項8】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、0.01重量%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を含むことを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項9】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を含む
前記アノードの細孔壁を有することを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項10】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記
アノード又はカソードの細孔壁は、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン
面を含むことを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項11】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記
アノードの細孔壁は、相互接続されたグラフェン面の3D網目構造を含むことを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項12】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、0.8g/cm
3より高い物理密度および800m
2/gより大きい比表面積を有することを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項13】
請求項1に記載のアルカリ金属電池において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記金属を用いずに測定した場合、1.0g/cm
3より高い物理密度および500m
2/gより大きい比表面積を有することを特徴するアルカリ金属電池。
【請求項14】
請求項1に記載のアルカリ金属電池を製造するための方法において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記電池が製造される前にリチウムまたはナトリウムで予め充填される、または前記アノードがリチウム供給源またはナトリウム供給源をさらに含むことを特徴する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記リチウム供給源
は、リチウム合金中に80重量%以上のリチウム元素を有するリチウム金属またはリチウム合金の箔、粒子、またはフィラメントから選択される、または、前記ナトリウム供給源
は、ナトリウム合金中に80重量%以上のナトリウム元素を有するナトリウム金属またはナトリウム合金の箔、粒子またはフィラメントから選択されることを特徴する方法。
【請求項16】
カソード、請求項1に記載のアノード、前記アノードおよび前記カソードを電子的に分離する任意の多孔性セパレーター、および/または前記アノードおよび前記カソードとイオン的に接触する電解質を有するアルカリ金属電池を製造するための方法において、前記グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、前記リチウム吸着金属に対す
るリチウムの重量比または前記ナトリウム吸着金属に対す
るナトリウムの重量比は、1/100から100/1である程度で、電池製造の前にリチウムまたはナトリウムで予め充填されていることを特徴する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月7日に出願された米国特許出願第15/175,775号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に、アルカリ金属電池(例えば、リチウム金属電池またはナトリウム金属電池)の分野に関し、より詳細には、グラフェン/金属ハイブリッドフォームをベースとした電極を有するリチウムまたはナトリウム金属二次電池、ならびにこの電極および電池を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
アルカリ金属二次電池に関する批評的総括
充電式リチウムイオン(Li-ion)およびリチウム金属電池(例えば、リチウム硫黄、リチウム金属空気、およびリチウム金属酸化物電池)は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、ならびにラップトップコンピュータおよび携帯電話などのポータブル電子機器における有望な電源としてみなされている。金属元素としてのリチウムは、任意の他の金属と比較して最も高い容量(3,861mAh/g)を有する。したがって、一般的に、リチウム金属電池は、リチウムイオン電池よりもはるかに高いエネルギー密度を有する。同様に、ナトリウム金属電池は、対応するナトリウムイオン電池より高いエネルギーを有する。
【0004】
歴史的に、充電式リチウム金属電池は、リチウム金属アノードと対になった、カソード活物質として、TiS2、MoS2、MnO2、CoO2、およびV2O5などの非リチウム化化合物を用いて製造された。電池が放電される場合、リチウム金属アノードから電解質を通ってカソードにリチウムイオンが移動し、カソードがリチウム化された。残念ながら、充放電を繰り返すと、リチウム金属は、アノードにデンドライトを形成し、これは最終的に成長してセパレーターを貫通し、内部短絡および爆発を引き起こした。この課題と関連した一連の事故の結果、こうした種類の二次電池の製造は、1990年代初期に止められた。
【0005】
これらの安全問題を解決するため、電解質またはアノードが改質されたいくつかの別の方法が提案された。第1の方法は、アノードとしてリチウム金属を黒鉛(リチウム挿入材料)と置き換えることを伴う。こうした電池の操作は、それぞれ、アノードおよびカソードで2つのリチウム挿入化合物の間にリチウムイオンを往復させることを伴い、それゆえ、「リチウムイオン電池」という名称である。おそらく、金属状態ではなくイオン状態のリチウムの存在のために、リチウムイオン電池は、本質的にリチウム金属電池より安全である。第2の方法では、液体電解質を乾燥したポリマー電解質で置き換えることを伴い、リチウム固体ポリマー電解質(Li-SPE)電池をもたらす。しかしながら、Li-SPEは、典型的には、80℃までの動作温度が必要なため、非常に限られた用途で見られている。第3の方法は、デンドライトの貫通におそらく耐性である固体電解質の使用を伴うが、固体電解質は、通常、室温で過度に低いリチウムイオン導電率を示す。この固体電解質方法の代替としては、デンドライトの貫通を止めるために、アノード活物質層とセパレーター層の間に硬質な固体保護層を使用することであるが、また、この典型的にはセラミック材料をベースとした層は、低いイオン導電率を有し、リチウム金属電池で作製し実施することは、困難であり費用が高い。さらに、このような硬質な脆い層を実施することは、現在のリチウム電池の製造プロセスおよび設備と適合しない。
【0006】
リチウムイオン(Li-ion)電池は、電気駆動車両用の有望なエネルギー貯蔵装置であるが、現況技術のリチウムイオン電池は、未だに費用と性能の目標を達成していない。典型的には、リチウムイオンセルは、炭素負極(アノード)に対して高電位でLi+を脱挿入する正極(カソード)としてリチウム遷移金属酸化物またはリン酸を使用する。黒鉛アノードの比容量は、372mAh/g未満であり、リチウム遷移金属酸化物またはリン酸をベースとしたカソード活物質の比容量は、典型的には140~200mAh/gの範囲にある。結果として、市販のリチウムイオンセルの比エネルギーは、典型的には120~220Wh/kg、最も典型的には150~180Wh/kgの範囲にある。これらの比エネルギー値は、電池駆動の電気自動車が広く受け入れられるために必要とされるものよりも2~3倍低い。
【0007】
ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(HEV)、および全電池電気自動車(EV)の急速な発展に伴い、充電式電池に、著しく、より高い比エネルギー、より高いエネルギー密度、より高い比率容量、長いサイクル寿命、および安全性をもたらすアノードおよびカソード材料が急務に求められている。様々な進歩したエネルギー貯蔵装置の中で、リチウム空気(またはリチウム酸素)、ナトリウム空気(またはナトリウム酸素)、リチウム硫黄、およびナトリウム硫黄電池を含むアルカリ金属電池が、その高い比エネルギーにより特に魅力的である。
【0008】
リチウム酸素電池は、おそらく今日構成可能な最も高いエネルギー密度の電気化学セルである。リチウム酸素セルは、酸素質量が考慮される場合、5.2kWh/kgの理論エネルギー密度を有する。良好に構成されたリチウム酸素電池は、リチウムイオン電池のエネルギー密度の15~20倍大きい、3,000Wh/kgのエネルギー密度を達成することができる。しかしながら、現在のリチウム酸素電池は、依然として、エネルギー効率が悪く、サイクル効率が悪く、デンドライトの形成および貫通の問題がある。
【0009】
最も有望なエネルギー貯蔵装置の1つは、リチウムの理論容量が3,861mAh/gであり、硫黄の理論容量が1,675mAh/gであることから、リチウム硫黄(Li-S)セルである。その最も単純な形態では、リチウム硫黄セルは、正極としての元素硫黄と、負極としてのリチウムとからなる。リチウム硫黄セルは、Li+/Li0に対して2.2Vに近い反応S8
+16Li⇔8Li2Sで表される還元対で動作する。この電気化学ポテンシャルは、従来の正極(例えば、LiMnO4)によって示されるものの約2/3である。しかしながら、この欠点は、リチウムおよび硫黄の両方の非常に高い理論容量によって相殺される。したがって、従来のインターカレーションに基づくリチウムイオン電池と比較して、リチウム硫黄セルは、著しくより高いエネルギー密度(容量および電圧の積)をもたらす機会を有する。Li2Sに対する完全な反応を仮定すると、エネルギー密度の値は、リチウムおよび硫黄の合計した重量または体積に基づいて、2,500Wh/kgおよび2,800Wh/lにそれぞれ近づくことができる。総セル重量または体積に基づく場合、エネルギー密度は、それぞれ約1,000Wh/kgおよび1,100Wh/lに達することができる。しかしながら、硫黄カソード技術の業界リーダーによって報告された現在のリチウム硫黄セルは、250~350Wh/kgの最大セル比エネルギーを有しており(全セル重量に基づく)、これは可能なものよりはるかに低い。要するに、その大きな可能性にもかかわらず、デンドライトに誘発された内部短絡、低い活物質利用効率、高い内部抵抗、自己放電、およびサイクルにおける急速な容量の退行などのいくつかの障害によって、リチウム硫黄電池の実際の実現性が妨げられている。これらの技術的バリアは、元素の硫黄の電気導電率が不十分であること、(アノード側に移動して、アノードで不活性化されたLi2Sを生成する)有機電解質中のリチウムポリスルフィドの高い溶解性、およびリチウムデンドライトの形成および貫通によるものである。リチウム金属二次(充電式)電池の最も深刻な問題は、デンドライトの形成および貫通であることが依然として残っている。ナトリウム金属電池は、同様のデンドライトの問題を有する。
【0010】
単離されたグラフェンシートまたはナノグラフェンプレートリット(NGP)の製造に関する総括
したがって、高い活物質の質量負荷(高い面密度)、高い見掛密度(高いタップ密度)を有する活物質、電子およびイオン輸送速度を著しく低下させない(例えば長い電子輸送距離を有さない)大きな電極厚さ、高い体積静電容量、および高い体積エネルギー密度を有するスーパーキャパシタが明らかに且つ切実に必要とされている。グラフェンをベースとした電極については、グラフェンシートの再積層、大きな比率の結合剤樹脂の必要性、および厚いグラフェン電極層を製造する難しさなどの問題もまた克服しなければならない。
【0011】
単層グラフェンシートは、二次元六方格子を占める炭素原子から構成される。多層グラフェンは、複数のグラフェン面から構成されるプレートリットである。個々の単層グラフェンシートおよび多層グラフェンプレートリットは、本明細書では集合的にナノグラフェンプレートリット(NGP)またはグラフェン材料と称される。NGPは、純粋なグラフェン(実質的に炭素原子99%)、わずかに酸化されたグラフェン(酸素5重量%未満)、グラフェン酸化物(酸素5重量%以上)、わずかにフッ素化されたグラフェン(フッ素5重量%未満)、グラフェンフッ化物(フッ素5重量%以上)、他のハロゲン化グラフェン、および化学官能化グラフェンを含む。
【0012】
我々の研究グループは、2002年の早期にグラフェン材料および関連する製造プロセスの開発を先駆けて進めてきた:(1)2002年10月21日に提出された出願、B.Z.Jang and W.C.Huang,「Nano-scaled Graphene Plates」、米国特許第7,071,258号明細書(2006年7月4日)、(2)B.Z.Jang,et al.「Process for Producing Nano-scaled Graphene Plates」、米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年6月3日)、および(3)B.Z.Jang,A.Zhamu,and J.Guo,「Process for Producing Nano-scaled Platelets and Nanocomposites」、米国特許出願第11/509,424号明細書(2006年8月25日)。
【0013】
また、我々の研究グループは、NGPおよびNGPナノコンポジットを製造するための様々なプロセスに関する最初の総括記事を発表した[Bor Z.Jang and A Zhamu,「Processing of Nano Graphene Platelets(NGPs)and NGP Nanocomposites:A Review」、J.Materials Sci.43(2008)5092-5101]。4つの主な先行技術の方法に従いNGPを製造した。これらの利点と欠点は、以下のように短く要約される:
【0014】
方法1:グラフェン酸化物(GO)の化学的形成および還元
第1の方法(
図1(A))は、黒鉛インターカレーション化合物(GIC)、または実際には、黒鉛酸化物(GO)を得るために、天然黒鉛粉末をインターカラントおよび酸化剤(例えば、それぞれ濃硫酸および硝酸)で処理することを伴う。[William S.Hummers,Jr.,et al.,Preparation of Graphitic Oxide,Journal of the American Chemical Society,1958,p.1339.]。インターカレーションまたは酸化の前に、黒鉛は、約0.335nm(L
d=1/2d
002=0.335nm)のグラフェン間の面間隔を有する。インターカレーションおよび酸化処理により、グラフェン間の間隔は、典型的には0.6nmより大きい値に増加する。これは、この化学経路中に黒鉛材料が受ける最初の膨張段階である。次いで、得られたGICまたはGOは、熱衝撃暴露法または溶液ベースの超音波支援グラフェン層剥離法を使用して、さらなる膨張(多くの場合に剥離と称される)を受ける。
【0015】
熱衝撃曝露法では、GICまたはGOを短時間(典型的には15~60秒)高温(典型的には800~1,050℃)に曝して、剥離またはさらに膨張した黒鉛の形成のためにGICまたはGOを剥離させまたは膨張させ、これは、典型的には、依然として互いに相互接続される黒鉛フレークから構成される「黒鉛ワーム(graphite worm)」の形態にある。この熱衝撃法は、いくつかの分離した黒鉛フレークまたはグラフェンシートを製造することができるが、通常、大部分の黒鉛フレークは相互接続されたままである。典型的には、剥離された黒鉛または黒鉛ワームは、次いで、空気粉砕、機械的剪断、または水中での超音波処理を用いたフレーク分離処理に供される。したがって、方法1は、基本的に3つの異なる手順を伴う:最初の膨張(酸化またはインターカレーション)、さらなる膨張(または「剥離」)、および分離。
【0016】
溶液ベースの分離方法では、膨張または剥離されたGO粉末は、水またはアルコール水溶液に分散され、超音波に供される。これらのプロセスでは、黒鉛のインターカレーションおよび酸化後(すなわち、最初の膨張後)および典型的には得られたGICまたはGOの熱衝撃暴露後に(2回目の膨張後)超音波が使用されることに留意することが重要である。あるいは、水中に分散されたGO粉末は、平面間の空間に存在するイオン間の反発力がグラフェン間のファンデルワールス力に打ち勝ち、グラフェン層の分離を生じるような方法で、イオン交換または長時間の精製手順に供される。
【0017】
この従来の化学製造プロセスに関連するいくつかの重大な問題が存在する。
(1)このプロセスでは、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムまたは塩素酸ナトリウムなどのいくつかの望ましくない化学物質を大量に使用する必要がある。
(2)化学処理プロセスは、長いインターカレーションおよび酸化時間、典型的には5時間~5日間を必要とする。
(3)強酸は、この長いインターカレーションまたは酸化プロセスの間、「黒鉛をむしばむ」(黒鉛を二酸化炭素に変換し、二酸化炭素はプロセス中に失われる)ことによって大量の黒鉛を消費する。強酸および酸化剤に浸された黒鉛材料の20~50重量%を失うことは珍しいことではない。
(4)熱剥離は、高温(典型的には800~1,200℃)を必要とし、したがって、非常にエネルギー集約的なプロセスである。
(5)熱および溶液によって誘発される剥離の方法はともに、非常に時間のかかる洗浄および精製工程を必要とする。例えば、典型的には、2.5kgの水を使用して1gのGICを洗浄して回収し適切に処理する必要がある非常に大量の廃水を生成する。
(6)熱および溶液によって誘発される剥離の方法の両方において、得られる生成物は、酸素含有量を減少させるためにさらなる化学的還元処理を受けなければならないGOプレートリットである。典型的には、還元後でさえ、GOプレートリットの電気導電率は、純粋なグラフェンのものよりもずっと低いままである。さらに、還元手順は、多くの場合に、ヒドラジンなどの毒性化学物質の利用を伴う。
(7)さらに、排水後にフレーク上に保持されるインターカレーション溶液の量は、100重量部の黒鉛フレーク当たり20~150重量部の溶液(pph)、より典型的には約50~120pphの範囲であり得る。高温剥離の間、フレークによって保持された残留したインターカレート種は分解して、望ましくない様々な種の硫黄および窒素化合物(例えばNOxおよびSOx)を生成する。流出物は、環境に悪影響を及ぼさないようにするために高価な浄化手順を必要とする。
本発明は、上に概説した制限または問題を克服するために行われた。
【0018】
方法2:純粋なナノグラフェンプレートリットの直接形成
2002年に、我々の研究チームは、ポリマーまたはピッチ前駆体から得られた、部分的に炭化または黒鉛化したポリマー炭素から単層および多層のグラフェンシートを単離することに成功した[B.Z.Jang and W.C.Huang,「Nano-scaled Graphene Plates,」、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,473号明細書、現在、米国特許第7,071,258号明細書(2006年7月4日)]。Mack,et al[「Chemical manufacture of nanostructured materials」、米国特許第6,872,330号明細書(2005年3月29日)]は、黒鉛をカリウム溶融物にインターカレートし、得られたカリウムでインターカレートされた黒鉛をアルコールと接触させ、激しく剥離した黒鉛含有NGPを生成することを伴うプロセスを開発した。このプロセスは、カリウムおよびナトリウムなどの純粋なアルカリ金属は、水分に非常に敏感であり、爆発の危険性があるため、真空または非常に乾燥したグローブボックスの環境で注意深く行なう必要がある。このプロセスは、NGPの大量生産には適していない。本発明は、上に概説した制限を克服するために行われた。
【0019】
方法3:無機結晶表面におけるナノグラフェンシートのエピタキシャル成長と化学気相堆積
基板における超薄グラフェンシートの小規模製造は、熱分解系エピタキシャル成長およびレーザー脱離-イオン化技術によって得ることができる。[Walt A.DeHeer,Claire Berger,Phillip N.First,「Patterned thin film graphite devices and method for making same」、米国特許第7,327,000B2号明細書(2003年6月12日)]。1つのみのまたはいくつかの原子層を有する黒鉛のエピタキシャル膜は、その独特な特性およびデバイス基板としての大きな可能性のために技術的および科学的に重要である。しかしながら、これらのプロセスは、複合材料およびエネルギー貯蔵用途のための単離されたグラフェンシートの大量生産には適していない。本発明は、上に概説した制限を克服するために行われた。
【0020】
薄膜形態(典型的には2nm未満の厚さ)でグラフェンを製造するための別のプロセスは、触媒化学気相堆積プロセスである。この触媒CVDは、NiまたはCu表面上の炭化水素ガス(例えば、C2H4)の接触分解を伴い、単層または数層のグラフェンを形成する。NiまたはCuを触媒とすることにより、800~1000℃の温度で炭化水素ガス分子を分解して得られる炭素原子を、Cu箔表面に直接堆積させる、またはNi-C固体溶液状態からNi箔の表面に析出させて、単一層または数層のグラフェン(5層未満)のシートを形成する。NiまたはCu触媒化CVDプロセスは、その下にあるNiまたはCu層がもはや触媒作用を与えることができない5つを超えるグラフェン面(典型的には2nm未満)の堆積に適切でない。CVDグラフェン膜は、非常に高価である。
【0021】
方法4:ボトムアップ法(小分子からのグラフェンの合成)
Yang,et al.[「Two-dimensional Graphene Nano-ribbons,」、J.Am.Chem.Soc.130(2008)4216-17]では、1,4-ジヨード-2,3,5,6-テトラフェニル-ベンゼンと4-ブロモフェニルボロン酸との鈴木-宮浦カップリングで始まる方法を用いて12nmまでの長さのナノグラフェンシートを合成した。得られたヘキサフェニルベンゼン誘導体をさらに誘導体化し、小さなグラフェンシートに環融合した。これは、これまで非常に小さなグラフェンシートを製造してきた時間がかかるプロセスである。本発明は、上に概説した制限を克服するために行われた。
【0022】
したがって、望ましくない化学物質量の低減(またはこれらの化学物質の一括除去)、プロセス時間の短縮、エネルギー消費量の低減、グラフェン酸化度の低減、望ましくない化学種の排水(例えば、硫酸)へのまたは空気(例えば、SO2およびNO2)への溶出の低減または廃絶を必要とするグラフェン製造プロセスを緊急に必要としている。このプロセスは、より純粋な(より酸化および損傷されにくい)、より電気導電性の、より大きな/より広いグラフェンシートを製造することができなければならない。さらに、これらのグラフェンシートを容易にフォーム構造にすることができなければならない。
【0023】
我々の最近の研究は、上に概説したナノグラフェンプレートリットの確立された製造方法に従わない点で新規である、単離されたナノグラフェンプレートリットの無薬品製造プロセスをあみだした。さらに、このプロセスは、費用対効果が高く、環境への影響が著しく低減された新規なグラフェン材料を提供する点で、有用性が増強されている。さらに、本明細書に開示されているように、我々は、グラフェンの無薬品製造とグラフェン-炭素ハイブリッド形態の形成を1つの単一操作に組み合わせた。
【0024】
本出願の請求の範囲を定義する目的のために、NGPまたはグラフェン材料には、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン(例えばBまたはNによってドープされた)の単一層および複数層(典型的に10層より少ない)の離散シート/プレートリットが含まれる。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは典型的に、0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOなど)は0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェン以外、全てのグラフェン材料は、0.001重量%~50重量%の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等々)を有する。これらの材料はここでは、非純粋なグラフェン材料と称される。本発明のグラフェン-炭素フォームは純粋なまたは非純粋なグラフェンを含有することができ、発明された方法はこの柔軟性を可能にする。
【0025】
グラフェンフォームの製造の検討
一般的に言えば、フォームまたは発泡材料は、細孔(またはセル)および細孔壁(固体材料)から構成される。細孔は相互接続されて連続気泡フォームを形成することができる。グラフェンフォームはグラフェン材料を含有する細孔および細孔壁から構成される。グラフェンフォームを製造する3つの主な方法がある:
【0026】
第1の方法は、酸化グラフェン(GO)水性懸濁液を高圧オートクレーブ内で封止する工程と、GO懸濁液を高圧(数十または数百気圧)下で典型的に180~300℃の範囲の温度において長時間にわたって(典型的に12~36時間)加熱する工程とを典型的に必要とする酸化グラフェンヒドロゲルの熱水還元である。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Y.Xu,et al.,“Self-Assembled Graphene Hydrogel via a One-Step Hydrothermal Process” ACS Nano 2010,4,4324~4330。この問題に伴なういくつかの主要な問題がある:(a)高圧要件によって、それは工業規模の製造のために実用的でない方法になる。1つには、この方法は、連続的に実施することができない。(b)不可能ではないにしても、得られた多孔性構造体の細孔径および多孔度のレベルの制御を行なうことは困難である。(c)得られた還元酸化グラフェン(RGO)材料の形状および大きさを変化させるという観点から柔軟性はない(例えばそれをフィルム形状に製造することはできない)。(d)この方法は、水中に懸濁された超低濃度のGOの使用を必要とする(例えば2mg/mL=2g/L=2kg/kL)。非炭素元素の除去によって(50%まで)、2kg未満のグラフェン材料(RGO)/1000リットルの懸濁液を製造することができるだけである。さらに、高温および高圧の条件に耐えなければならない1000リットル反応器を運転することは実質的に不可能である。明らかに、これは、多孔性グラフェン構造体の大量生産のためのスケーラブルな方法ではない。
【0027】
第2の方法はテンプレート支援触媒CVD法に基づいており、それは、犠牲テンプレート(例えばNiフォーム)上のグラフェンのCVD堆積を必要とする。グラフェン材料は、Niフォーム構造体の形状および寸法に合致する。それ故、エッチング剤を使用してNiフォームをエッチングにより除去し、本質的に連続気泡フォームであるグラフェン骨格のモノリスを後に残す。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Zongping Chen,et al.、“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapour deposition,” Nature Materials,10(June 2011)424-428。このような方法に伴なういくつかの問題がある:(a)触媒CVDは本質的に、非常に緩慢な、高度にエネルギー集約的な、且つ費用がかかる方法である。(b)エッチング剤は典型的に非常に望ましくない化学物質であり、得られたNi含有エッチング溶液は汚染源である。溶解されたNi金属をエッチング剤溶液から回収または再循環させることは非常に難しく且つ費用がかかる。(c)Niフォームがエッチングにより除去されているときにセル壁に損傷を与えずにグラフェンフォームの形状および寸法を維持することは難題である。得られたグラフェンフォームは典型的に非常に脆く壊れやすい。(d)犠牲金属フォーム内の特定の箇所はCVD前駆体ガスに接触可能でない場合があるので、金属フォームの内部へのCVD前駆体ガス(例えば炭化水素)の輸送は難しいことがあり、不均一な構造体をもたらすことがある。
【0028】
また、グラフェンフォームを製造する第3の方法は、自己集合法を使用して酸化グラフェンシートでコートされる犠牲材料(例えばコロイドポリスチレン粒子、PS)を利用する。例えば、Choiらは、化学的に改質したグラフェン(CMG)紙を2つの工程において作製した:CMGとPS(2.0μmのPS球)との混合水性コロイド懸濁液の真空濾過によって自立PS/CMGフィルムを製造し、その後に、PSビードを除去して3Dマクロ細孔を生成する。[B. G. Choi,et al.、“3D Macroporous Graphene Frameworks for Supercapacitors with High Energy and Power Densities,”ACS Nano,6(2012)4020-4028.]Choiらは、濾過によって整列自立PS/CMG紙を製造し、それは負に帯電したCMGコロイド懸濁液および正に帯電したPS懸濁液を別々に調製することから開始した。CMGコロイド懸濁液とPS懸濁液との混合物を制御されたpH(=2)下で溶液中に分散させ、そこで2つの化合物は同じ表面電荷を有した(CMGについては+13±2.4mVおよびPSについては+68±5.6mVのゼータ電位値)。pHが6に上昇するとき、それらの間の静電相互作用および疎水性特性のためにCMG(ゼータ電位=-29±3.7mV)およびPS球(ゼータ電位=+51±2.5mV)が集められ、これらはその後、濾過プロセスによってPS/CMG複合紙に統合された。また、この方法はいくつかの欠点を有する:(a)この方法は、酸化グラフェンおよびPS粒子の両方の非常に時間のかかる化学処理を必要とする。(b)トルエンによるPSの除去はまた、弱化したマクロ多孔性構造体をもたらす。(c)トルエンは高度に調節された化学物質であり、非常に注意して処理されなければならない。(d)細孔径は典型的に過度に大きく(例えば数μm)、多くの有用な用途のために大きすぎる。
【0029】
上記の考察は明らかに、グラフェンフォームを製造するためのあらゆる先行技術の方法またはプロセスは大きな欠陥を有することを示す。したがって、高導電性、機械的に強靭なグラフェン系フォームを製造するための費用効果が高いプロセスを提供することが本発明の目的である。生成したグラフェン金属フォームがリチウム金属またはナトリウム金属電池のアノード層として使用される場合、リチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属が、これらの細孔内に直ちにかつ容易に収容され、リチウムイオンまたはナトリウムイオンの迅速な侵入および均一な堆積を促進し容易にするような方法で、このプロセスは、多孔性レベルおよび細孔サイズの柔軟な設計および制御を可能にする。
【0030】
本発明の別の目的は、従来の黒鉛または炭素フォームのものと同等またはそれを超える熱伝導率、電気導電率、弾性率、および/または強度を示すグラフェン-金属ハイブリッドフォームを製造するプロセスを提供することである。このようなハイブリッドフォームは、優れたアルカリ金属吸着金属を含む場合、導電性であり、リチウム金属二次電池のアノードにおけるリチウムの支持基材として用いられ、リチウムまたはナトリウムデンドライトの形成を抑制する。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、(a)本質的に全炭素のみを含み、好ましくはメソスケールの細孔サイズ範囲(2~50nm)を有する純粋なグラフェンをベースとしたハイブリッドフォーム、および(b)少なくとも0.001重量%(典型的には0.01重量%~25重量%、最も典型的には0.1重量%~20重量%)のリチウム金属電池用途に使用することができる非炭素元素を含む非純粋なグラフェンフォーム(グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、窒素化グラフェン等)を提供することである。
【0032】
本発明の具体的な目的は、リチウムまたはナトリウムのデンドライトの問題を示さずに、長期間安定した充放電サイクル寿命を示すリチウム金属およびナトリウム金属二次電池のためのグラフェン-金属ハイブリッドフォームをベースとした電極を提供することである。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、アルカリ金属電池(リチウムまたはナトリウム金属電池)のためのグラフェン-金属ハイブリッドフォームをベースとした電極、このような電極を製造するプロセスを提供する。また、本発明は、このような独特の電極をアノードとして含むリチウムまたはナトリウム金属電池を提供する。
【0034】
好ましい実施形態において、リチウムまたはナトリウム金属電池は、アノード、カソード、アノードとカソードを電気的に分離する多孔性セパレーター、および/またはアノードとカソードのイオン接触状態の電解質を有し、この場合に、アノードは、複数の細孔、細孔壁、および細孔に存在するリチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属(例えば、細孔に詰め込まれたナノ粒子または細孔壁表面に堆積されたコーティングとして)から構成されるグラフェン-金属ハイブリッドフォームを含む。リチウム吸着金属(リチウム金属電池における)は、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、Na、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、またはそれらの合金から選択され、総ハイブリッドフォーム重量または体積の0.1%~50%の量である。ナトリウム吸着金属(ナトリウム金属電池における)は、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、Li、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、またはそれらの合金から選択され、総ハイブリッドフォーム重量または体積の0.1%~90%の量である。細孔壁は、単層または数層のグラフェンシートを含み、この場合に、数層のグラフェンシートは、X線回折で測定される0.3354nm~0.40nmの面間間隔d002を有する2~10層の積層グラフェン面を有する。単層または数層のグラフェンシートは、実質的にゼロ%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料、または、0.001重量%~25重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含んでもよく、非純粋なグラフェン材料は、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0035】
好ましい一実施形態において、グラフェン-金属ハイブリッドフォームは、電池が作製される前にリチウムまたはナトリウムで予め充填されている、またはアノードは、リチウム供給源またはナトリウム供給源をさらに含む。リチウム供給源は、好ましくは、リチウム合金中に80重量%以上のリチウム元素を有するリチウム金属またはリチウム合金の箔、粒子、またはフィラメントから選択される。ナトリウム供給源は、好ましくは、ナトリウム合金中に80重量%以上のナトリウム元素を有するナトリウム金属またはナトリウム合金の箔、粒子またはフィラメントから選択される。
【0036】
前述のリチウムまたはナトリウム金属電池では、セルはそれぞれ、グラフェン構造体自体が、電池が充電されたときリチウムを担持するアノード集電体であるアノード層を含む。したがって、アノード電極は、さらなるの別個の集電体(一般的に使用されるCu箔など)を含まない一層構造である。いくつかの別の実施形態において、リチウム金属電池は、アノードと接触する別個の離散アノード集電体をさらに含む。典型的には、カソード活物質層(MoS2、TiO2、V2O5、LiV3O8、S、Se等などのカソード活物質を含む)と接触する別個の離散カソード集電体(例えばAl箔)が存在し、Al箔によって担持されている(コートされている)。
【0037】
数層のグラフェンシートは、X線回折によって測定される0.3354nm~0.40nmの面間間隔d002を有する2~10層の積層グラフェン面を有し、単層または数層のグラフェンシートは、本質的にゼロ%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料、または、調整可能な0.001重量%~25重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含み、前述の非純粋なグラフェンは、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0038】
この電池において、グラフェン金属フォームは、リチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属の不存在下で測定した場合、典型的には、0.005~1.7g/cm3(好ましくは0.1~1.7g/cm3)の密度、50~2,500m2/g(より典型的には300~1,500m2/g)の比表面積、単位比重当たり少なくとも200W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,000S/cm以上の電気導電率を有する。好ましくは、ハイブリッドフォームにおける平均細孔サイズは、2nm~50nmであり、比表面積は500m2/g~1,500m2/gである。
【0039】
いくつかの実施形態において、細孔壁は、非純粋なグラフェン材料を含み、ハイブリッドフォームは、0.01重量%~20重量%の範囲の非炭素元素含有量を含み、非炭素元素は、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素またはホウ素から選択される元素を含む。
【0040】
非常に独特のいくつかの実施形態において、リチウムまたはナトリウム金属電池は、200nm~10cmの厚さまたは直径を有する連続長のフィラメント、ワイヤまたはシート形態である。
【0041】
電池アノードでは、細孔壁は、典型的には、相互接続されたグラフェン面の3D網目構造を含む。いくつかの実施形態において、フォーム(金属を有さないまたは金属充填前)は、0.8g/cm3より高い物理密度および800m2/gより大きい比表面積を有する。特定の実施形態において、グラフェン-炭素ハイブリッドフォームは、1.0g/cm3より高い物理密度および500m2/gより大きい比表面積を有する。特定の実施形態において、集積化3Dグラフェン-炭素ハイブリッドフォームを化学的または物理的に活性化して、比表面積をさらに増加させる。
【0042】
また、グラフェンフォーム、およびその中に含まれるリチウムまたはナトリウム吸着金属を含むリチウム金属電池電極が提供される。また、本発明は、このようなグラフェン-金属フォームを電極活物質の相互接続網目構造として含む電極を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、
【0043】
本発明のグラフェン-炭素ハイブリッドフォームの形状または寸法に制限はないことに留意されたい。好ましい実施形態において、集積化グラフェン-炭素ハイブリッドフォームは、100nm以上10cm以下の厚さ、および少なくとも1メートル、好ましくは少なくとも2メートル、さらに好ましくは少なくとも10メートル、最も好ましくは少なくとも100メートルの長さを有する連続長ロールシート形態(連続フォームシートのロール)に作製される。このシートロールは、ロールツーロールプロセスによって製造される。シートロール形態に作製される先行技術のグラフェンをベースとしたフォームは存在していない。純粋系または非純粋系のどちらも、グラフェンフォームの連続長を製造するためにロールツーロールプロセスを利用することはこれまで可能であると考えられず提案されもしなかった。
【0044】
電池電極用途では、グラフェンフォームは、好ましくは、1重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.35nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0045】
さらに好ましい実施形態において、グラフェンフォームは、0.01重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記細孔壁は、0.34nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態において、グラフェン-炭素ハイブリッドフォームは、0.01重量%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記細孔壁は、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、0.7以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0047】
さらに別の好ましい実施形態において、グラフェンフォームは、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面を含有する細孔壁、0.4以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を有する。
【0048】
好ましい実施形態において、細孔壁は、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面および1.0未満のモザイクスプレッド値を有する。好ましい実施形態において、グラフェンフォームは、80%以上の黒鉛化度(好ましくは90%以上)および/または0.4未満のモザイクスプレッド値を示す。好ましい実施形態において、細孔壁が、相互接続グラフェン面の3次元網目構造を含有する。
【0049】
好ましい実施形態において、固体グラフェン-炭素ハイブリッドフォームは、2nm~50nmの細孔径を有するメソスケールの細孔を含有する。また、固体グラフェンフォームは、ミクロンスケールの細孔(1~500μm)を含有するように製造され得る。
【0050】
リチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属を収容するのに使用できるグラフェンフォームの製造方法に制限はない。これは、触媒CVD(Ni箔の酸エッチングが続く)、GOヒドロゲルの水熱還元、および自己組織化法(PSの溶解が続く)を用いてグラフェン酸化物シートでコートされる犠牲材料(例えば、コロイド状ポリスチレン粒子、PS)の使用であり得る。グラフェンフォームが作製されると、次いで所望のリチウム吸着またはナトリウム吸着金属がグラフェンフォームの細孔(好ましくはグラフェン細孔壁にコートされる)に導入される。
【0051】
有利には、本発明の固体グラフェンフォームは、
(a)グラフェン材料が液体媒体中に分散されたグラフェン分散体を調製する工程であって、グラフェン材料が、純粋なグラフェン、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、分散体が任意の発泡剤を含む工程と、
(b)グラフェン分散体を支持基材(例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、金属箔、ガラスシート、紙シート等)の表面に対して分配および堆積してグラフェン材料の湿潤層を形成する工程であって、分配および堆積手順が、グラフェン分散体を配向誘起応力に供することを含む工程と、
(c)グラフェン材料の湿潤層から液体媒体を部分的にまたは完全に除去して、5重量%以上の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I、S等)の含有量を有するグラフェン材料の乾燥された層を形成する工程と、
(d)0.01~1.7g/cm3の密度(より典型的には0.1~1.5g/cm3、さらにより典型的には0.1~1.0g/cm3、最も典型的には0.2~0.75g/cm3)、または50~3,000m2/gの比表面積(より典型的には200~2,000m2/g、最も典型的には500~1,500m2/g)を有する固体グラフェンフォームを製造するために非炭素元素から揮発性ガス分子を誘導するまたは前述の発泡剤を活性化するために十分な所望の加熱速度において100℃~3,200℃の第1の熱処理温度でグラフェン材料の乾燥された層を熱処理する工程と、
(e)固体グラフェンフォームを放熱装置の熱拡散要素の形状に形成する工程と、
を含むプロセスによって製造されることができる。
【0052】
グラフェン材料が5重量%以上の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等)の含有量(好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、さらにより好ましくは30%または40%以上、最も好ましくは50%まで)を有する場合、この任意の発泡剤は必要とされない。その後の高温処理は、これらの非炭素元素の大部分をグラフェン材料から除去し、細孔またはセルを固体グラフェン材料構造体において生じさせる揮発性ガス種を生成するのに役立つ。言い換えれば、非常に驚くべきことに、これらの非炭素元素は発泡剤の役割を果たす。したがって、外部から加えられる発泡剤は任意である(必要とされない)。しかしながら、発泡剤の使用は、所望の用途において多孔度のレベルおよび細孔サイズを調節または調整する際の付加的な適応性を提供することができる。非炭素元素含有量が5%未満、例えば本質的に全炭素である純粋なグラフェンなどである場合、典型的には発泡剤が必要とされる。
【0053】
発泡剤は、物理的発泡剤、化学的発泡剤、それらの混合物、溶解および浸出剤、または機械的に導入された発泡剤であり得る。
【0054】
プロセスは、グラフェンフォームを得るために十分な時間の間、固体グラフェンフォームを第1の熱処理温度よりも高い第2の熱処理温度において熱処理する工程をさらに含むことができ、この場合に、細孔壁は、0.3354nm~0.40nmの面間間隔d002を有する積層グラフェン面および5重量%未満(典型的には0.001%~2%)の非炭素元素の含有量を含む。得られた非炭素元素含有量が0.1%~2.0%であるとき、面間間隔d002は、典型的には0.337nm~0.40nmである。
【0055】
分散体中の元のグラフェン材料が、5重量%よりも高い非炭素元素含有量を含む場合、(熱処理後の)固体グラフェンフォーム中のグラフェン材料は、熱処理の工程(d)の間に生じる構造欠陥を含む。液体媒体は単に水および/またはアルコールであり得るが、それは環境に優しい。
【0056】
好ましい実施形態において、プロセスは、工程(b)および(c)が、支持基材をフィーダーローラーから堆積領域に供給する工程と、グラフェン分散体を支持基材の表面に対して連続的にまたは不連続に堆積させてグラフェン材料の湿潤層をその上に形成する工程と、グラフェン材料の湿潤層を乾燥させてグラフェン材料の乾燥された層を形成する工程と、支持基材上に堆積されたグラフェン材料の乾燥された層をコレクターローラー上に集める工程とを含む、ロールツーロールプロセスである。このようなロールツーロールまたはリールツーリールプロセスは、自動化され得る真に工業規模の、大規模製造プロセスである。
【0057】
一実施形態において、第1の熱処理温度は100℃~1,500℃である。別の実施形態において、第2の熱処理温度には、少なくとも、(A)300~1,500℃、(B)1,500~2,100℃、および/または(C)2,100~3,200℃から選択される温度が含まれる。特定の実施形態において、第2の熱処理温度には、少なくとも1時間の間300~1,500℃の範囲の温度、次いで少なくとも1時間の間1,500~3,200℃の範囲の温度が含まれる。
【0058】
第1および/または第2の熱処理を乾燥されたグラフェン層に行なうことのいくつかの驚くべき結果があり、異なる熱処理温度範囲によって異なる目的を達成することができ、例えば(a)グラフェン材料から非炭素元素を除去して(例えばフッ素化グラフェンを熱還元してグラフェンまたは還元グラフェンフッ化物、RGFを得る)揮発性ガスを生成し、細孔またはセルをグラフェン材料にて生じさせる、(b)化学的または物理的発泡剤を活性化して細孔またはセルを生じさせる、(c)グラフェンシートを化学的同化または連結して、フォーム壁(フォームの固体部分)にてグラフェンシートの横方向寸法を著しく増加させる、(d)黒鉛粒子におけるグラフェン面のフッ素化、酸化、または窒化の間に生じた欠陥部の回復、および(e)黒鉛ドメインまたは黒鉛結晶の再組織化および完全性などである。これらの異なる目的または機能は、異なる温度範囲内で異なる程度に達成される。典型的には、非炭素元素は、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素、またはホウ素から選択される元素を含む。非常に驚くべきことに、低温発泡条件下でも、熱処理は、多くの場合に縁部から縁部までの方法で(一部は面から面までの方法で)グラフェンシート間の化学連結、同化、または化学結合を引き起こす。
【0059】
一実施形態において、固体グラフェンフォームのシートは200~2,000m2/gの比表面積を有する。一実施形態において、固体グラフェンフォームのシートは、0.1~1.5g/cm3の密度を有する。実施形態において、第1の熱処理温度においてグラフェン材料の層を熱処理する工程(d)は、圧縮応力下で行われる。別の実施形態において、プロセスは、グラフェンフォームのシートの厚さ、細孔サイズ、または多孔度のレベルを低減する圧縮工程を含む。いくつかの用途において、グラフェンフォームは200μm以下の厚さを有する。
【0060】
実施形態において、グラフェン分散体は、液体媒体中に分散された少なくとも3重量%のグラフェン酸化物を有し、液晶相を形成する。別の実施形態において、グラフェン分散体は、グラフェン分散体を得るために十分な長さの時間にわたり反応温度において反応器の酸化性液体において粉末または繊維形態の黒鉛材料を浸漬することによって調製されたグラフェン酸化物分散体を含み、この場合に、黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択され、グラフェン酸化物は5重量%以上の酸素含有量を有する。
【0061】
実施形態において、第1の熱処理温度は80℃~300℃の範囲の温度を含み、結果として、グラフェンフォームは、5%未満の酸素含有量または非炭素元素含有量を有し、細孔壁は、0.40nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも150W/mK(より典型的には少なくとも200W/mk)の熱伝導率、および/または単位比重当たり2,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0062】
好ましい実施形態において、第1のおよび/または第2の熱処理温度は300℃~1,500℃の範囲の温度を含み、結果として、グラフェンフォームは、1%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.35nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0063】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が1,500℃~2,100℃の範囲の温度を含む場合、グラフェンフォームは、0.01%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.34nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0064】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が2,100℃を超える温度を含む場合、グラフェンフォームは、0.001%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.336nm未満のグラフェン間の間隔、0.7以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0065】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が2,500℃以上の温度を含む場合、グラフェンフォームは、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、0.4以下のモザイクスプレッド値、および単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を含む細孔壁を有する。
【0066】
一実施形態において、細孔壁は、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面および1.0未満のモザイクスプレッド値を有する。別の実施形態において、グラフェンフォームの固体壁部分は、80%以上の黒鉛化度および/または0.4未満のモザイクスプレッド値を示す。さらに別の実施形態において、グラフェンフォームの固体壁部分は、90%以上の黒鉛化度および/または0.4以下のモザイクスプレッド値を示す。
【0067】
典型的には、細孔壁は、電気導電経路である相互接続されたグラフェン面の3D網目構造を含む。セル壁は、20nm以上、より典型的にはおよび好ましくは40nm以上、さらにより典型的にはおよび好ましくは100nm以上、さらにより典型的にはおよび好ましくは500nm以上、多くの場合に1μm超、場合には10μm超の横方向寸法(La、長さまたは幅)を有する黒鉛ドメインまたは黒鉛結晶を含む。黒鉛ドメインは、典型的には1nm~200nm、より典型的には1nm~100nm、さらにより典型的には1nm~40nm、最も典型的には1nm~30nmの厚さを有する。
【0068】
好ましくは、固体グラフェンフォームは、2nm~50nm(好ましくは2nm~25nm)の細孔サイズを有するメソスケールの細孔を含む。Ni触媒CVDを使用して、2~50nmの細孔サイズ範囲を有するグラフェンフォームを製造することは可能でなかったことに留意されたい。これは、このような細孔サイズ範囲を有するNiフォームテンプレートを調製することは可能でなく、炭化水素ガス(前駆体分子)がこれらのサイズのNiフォーム細孔に容易に入ることはできないという考えによる。また、これらのNiフォーム細孔は、相互接続されなければならない。さらに、犠牲プラスチックコロイド粒子方法は、ミクロン~ミリメートルのサイズの範囲であるマクロ細孔をもたらした。
【0069】
好ましい実施形態において、本発明は、複数の細孔および細孔壁から構成される固体グラフェンフォームを製造するためのロールツーロールのプロセスを提供する。このプロセスは、(a)グラフェン材料が液体媒体中に分散されたグラフェン分散体を調製する工程であって、分散体は場合により発泡剤を含む工程と、(b)グラフェン分散体を支持基材の表面に対して連続的にまたは不連続に分配および堆積して、グラフェン材料の湿潤層を形成する工程であって、支持基材が、フィーダーローラーから供給されコレクターローラー上で集められた連続した薄いフィルムである工程と、(c)グラフェン材料の湿潤層から液体媒体を部分的にまたは完全に除去してグラフェンの乾燥された層を形成する工程と、(d)0.01~1.7g/cm3の密度または50~3,000m2/gの比表面積を有する前述の固体グラフェンフォームを製造するための発泡剤を活性化するために十分な所望の加熱速度においてグラフェン材料の乾燥された層を100℃~3,000℃の第1の熱処理温度で熱処理する工程と、を含む。
【0070】
配向誘起応力は剪断応力であってもよい。例として、剪断応力は、手動流延プロセスの間にプラスチックまたはガラス表面にわたりグラフェン分散の広がりを誘導する「ドクターブレード」などの簡素な状況において生じ得る。別の例として、「ナイフ・オン・ロール」構成がプラスチックフィルムなどの移動固体基材にわたりグラフェン分散体を分配する自動化ロールツーロールコーティングプロセスにおいて有効な配向誘起応力が生じる。この移動フィルムとコーティングナイフの間の相対運動は、剪断応力方向に沿うグラフェンシートの配向をもたらすように作用する。
【0071】
剪断応力によってグラフェンシートを特定の方向(例えばX方向または長さ方向)に沿って整列して、好ましい配向を生じさせることができ、フォーム壁に沿ってグラフェンシート間の接触を容易にすることができるという驚くべき観察により、この配向誘起応力は、本発明のグラフェンフォームの製造における極めて重要な工程である。さらに驚くべきことに、これらの好ましい配向および改良されたグラフェン間の接触は、乾燥されたグラフェン層のその後の熱処理中にグラフェンシート間の化学的同化または連結を容易にする。このような好ましい配向および改良された接触は、得られたグラフェンフォームの非常に高い熱伝導率、電気導電率、弾性率、および機械的強度の最終的な達成に不可欠である。一般的には、これらの大きな特性は、このような剪断応力によって誘起された配向の制御なしに達成することができない。
【0072】
また、リチウム金属電極の連続シートを製造するプロセスが提供される。このプロセスは、アノード層、セパレーター/電解質層、およびカソード層を積層する工程を含み、この場合に、アノード層は、本発明のプロセスによって製造される集積化3Dグラフェン-炭素ハイブリッドフォームの連続シートまたはフィルムを含む。ハイブリッドフォームの連続シートまたはフィルムは、積層されてリチウム金属電池シートを形成する前に、液体またはゲル電解質で予め充填される。このようなシート状の電池は、巻かれ、捻られ、または上下に折り畳まれ、多くの独特の形状を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1A】
図1(A)は、純粋なグラフェンフォーム40aまたはグラフェン酸化物フォーム40bを製造するためのプロセスと共に、剥離黒鉛製品(可撓性黒鉛箔および膨張黒鉛フレーク)を製造する様々な先行技術のプロセスを説明するフローチャートである。
【
図1B】
図1(B)は、単塊状黒鉛またはNGPフレーク/プレートリットの従来の紙、マット、フィルム、および膜を製造するためのプロセスを説明する略図である。全てのプロセスは、黒鉛材料(例えば天然黒鉛粒子)のインターカレーションおよび/または酸化処理から開始する。
【
図2】
図2は、先行技術のリチウム金属電池セルの略図である。
【
図3A】
図3(A)は、細孔とグラフェン細孔壁を有するグラフェンフォームの略図である。
【
図3B】
図3(B)は、フォームの細孔に存在する(例えば、細孔壁にコートされる)リチウムまたはナトリウム吸着金属を含むグラフェン-金属ハイブリッドフォームである。
【
図4A】
図4(A)は、本発明のプロセスによって製造されたGO懸濁液由来のフォーム、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォーム、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォームの熱伝導率の値対比重である。
【
図4B】
図4(B)は、GO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードによってテンプレート化されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの熱伝導率の値である。
【
図4C】
図4(C)は、本発明のプロセスによって製造されたGO懸濁液由来のフォームおよび熱水還元GOグラフェンフォームの電気導電率のデータである。
【
図5A】
図5(A)は、GO懸濁液由来のフォーム、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォーム、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォームの(1.02g/cm
3までの比重の値に対する)熱伝導率の値である。
【
図5B】
図5(B)は、GO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードによってテンプレート化されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの(1.02g/cm
3までの比重の値に対する)熱伝導率の値である。
【
図6】
図6は、比重の関数としてGOおよびGF(グラフェンフッ化物)から得られるグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値である。
【
図7】
図7は、最終(最高)熱処理温度の関数としてGOおよび純粋なグラフェンから得られたグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値である。
【
図8A】
図8(A)は、X線回折によって測定されるグラフェンフォーム壁におけるグラフェン面間間隔である。
【
図8B】
図8(B)は、GO懸濁液由来のグラフェンフォームにおける酸素含有量である。
【
図9A】
図9(A)は、2組のリチウム金属セル:(a)リチウム箔と物理的に接触している窒素ドープトグラフェン-金属(Zn)ハイブリッドフォームをアノード活物質として含む第1のセル、(b)リチウム吸着金属(Zn)を含まない第2のセルのラゴーンプロット(質量出力密度対エネルギー密度)である。
【
図9B】
図9(B)は、2組のリチウム金属セル:(a)リチウム箔と物理的に接触している窒素ドープトグラフェン-金属(Zn)ハイブリッドフォームをアノード活物質として含む第1のセル、(b)リチウム吸着金属(Zn)を含まない第2のセルのサイクル挙動である。
【
図10】
図10は、2つのナトリウム金属セル:純粋なグラフェン-金属(Mg)フォームと、アノード活物質としてNa箔およびカソード活物質としてNaFePO
4のシートを含む1つのセル、ならびに純粋なグラフェンフォーム(但し、ナトリウム吸着金属を含まない)と、アノード活物質としてNa箔のシートを含むもう1つのセルの電池セル容量減衰曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図2に図解的に説明されるように、典型的には、先行技術のリチウム金属セルは、アノード集電体202(例えば、厚さ8~12μmの銅箔)、アノード活物質層204(リチウム金属またはリチウムが豊富な金属合金箔)、多孔性セパレーター230、カソード活物質層208(V
2O
5、MoS
2粒子234などのカソード活物質と、図示しないが、樹脂結合剤で全て接着される導電性添加剤を含む)、カソード集電体206(例えば、Al箔)、アノード活物質層204(以下、単に「アノード層」とも称される)とカソード活物質層208(または、単に「カソード層」)との両方にイオン的に接触して配置される電解質から構成される。セル全体は、薄いプラスチック-アルミニウム箔積層体をベースとした封体などの保護ハウジングに入れられる。先行技術のナトリウム金属セルは、同様に構成されているが、アノード活物質層は、ナトリウム金属、またはナトリウムが豊富な金属の箔、またはナトリウムの粒子である。
【0075】
先行技術のリチウムまたはナトリウム金属電池は、典型的には、以下の工程を含むプロセスによって製造される:(a)第1の工程は、カソード活物質(例えば、活性炭)の粒子、導電性フィラー(例えばアセチレンブラック)、樹脂結合剤(例えばPVDF)の粒子を溶剤(例えばNMP)中で混合し分散させてカソードスラリーを形成する工程である。(b)第2の工程は、Al箔の表面にカソードスラリーをコートし、スラリーを乾燥させてAl箔にコートされた乾燥したカソード電極を形成する工程である。(c)第3の工程は、Cu箔(アノード集電体として)、LiまたはNa箔のシート(あるいはリチウム合金またはナトリウム合金箔)、多孔性セパレーター層、およびカソード電極コートされたAl箔シートをともに積層して、5層のアセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断してスリットし積層して矩形構造体(形状の例として)を形成するまたは巻き上げて円筒形セル構造体を形成する工程である。(d)次いで、矩形または円筒形の積層構造体を、アルミニウム-プラスチック積層封体または鋼ケーシングに入れる。ならびに(e)次いで、液体電解質を積層した構造体内に注入してリチウム電池セルを形成する。
【0076】
リチウム金属およびナトリウム金属の高い比容量のため、安全性の問題に対する解決策を策定可能であるという条件で、リチウム金属またはナトリウム金属をアノード活物質として利用するアルカリ金属充電式電池によって、最も高い電池エネルギー密度を達成することができる。これらのセルは、(a)カソードにリチウム挿入またはナトリウム挿入化合物を有する従来のリチウムまたはナトリウム金属電池、(b)金属酸化物の代わりにカソードとして酸素(および黒鉛または硬質炭素の代わりにアノードとしてリチウムまたはナトリウム金属)を使用するリチウム空気またはナトリウム酸素セル、(c)リチウム硫黄またはナトリウム硫黄セル、(d)リチウム-セレンセル、またはナトリウム-セレンセル、ならびに(e)グラフェンを主要なカソード活物質として用いたリチウム-グラフェンまたはナトリウム-グラフェンセルを含む。
【0077】
リチウム酸素電池は、おそらく今日構成可能な最も高いエネルギー密度の電気化学セルである。リチウム酸素セルは、酸素質量が考慮される場合、5,200Wh/kgの理論エネルギー密度を有する。良好に構成されたリチウム酸素電池は、3,000Wh/kgのエネルギー密度を達成することができ、これはリチウムイオン電池のものの15~20倍大きい。しかしながら、現行のリチウム酸素電池は、依然としてエネルギー効率が悪く、サイクル効率が悪く、デンドライト形成の問題がある。リチウム硫黄セルでは、カソード材料としての元素の硫黄(S)は、1,672mAh/gの高い理論リチウム貯蔵容量を示す。リチウム金属アノードの場合、リチウム硫黄電池は、約1,600Wh/kgの理論エネルギー密度を有する。その大きな可能性にもかかわらず、リチウム硫黄電池の実際的な実現は、活物質の低い利用率、高い内部抵抗、自己放電、およびサイクルにおける急速な容量低下などのいくつかの障害によって妨げられている。これらの技術的障壁は、元素の硫黄の電気導電率が低いこと、有機電解質中のリチウムポリスルフィドの高い溶解性、不活性化されたLi2Sの形成、およびアノードにおけるリチウムデンドライトの形成に起因する。世界中で大きな努力がなされているにもかかわらず、デンドライトの形成は、リチウム金属アノードを有する全種類の高エネルギー密度電池の広範な実施に対する唯一の最も重要な科学的および技術的障壁として留まっている。
【0078】
我々は、高いエネルギー密度および/または高い出力密度を示す、デンドライト耐性の高い、グラフェン-金属フォームが可能なリチウム金属セルまたはナトリウム金属セルの構成を発見した。セルはそれぞれ、アノード活物質としてグラフェン-金属フォームを含み、この場合に、
図3(B)のリチウムまたはナトリウム吸着金属64aまたは64bは、この集積化フォーム構造体の細孔壁に堆積される、またはその内部に収容される。このグラフェンフォームは、リチウムまたはナトリウム吸着金属を収容するために、細孔(例えば
図3(A)の68aおよび68b)を有する、グラフェンシートから構成される。
【0079】
このグラフェン-金属フォームは、セルが製造される前または後に、リチウム化(リチウムで充填、例えば細孔に浸透して金属で合金を製造するLi+イオン)またはナトリウム化(ナトリウムで充填)することができる。例えば、セルが製造されるとき、リチウムまたはナトリウム金属(または金属合金)の箔または粒子を、アノードで(例えば集積化フォーム層と多孔性セパレーターの間)実施して、このフォームにリチウムまたはナトリウムを供給することができる。最初の電池放電サイクルの間、リチウム(またはナトリウム)がイオン化され、リチウム(またはナトリウム)イオン(Li+またはNa+)が電解質に供給される。これらのLi+またはNa+イオンは、カソード側に移動し、カソード活物質(例えば、バナジウム酸化物、MoS2、S等)によって捕捉されて貯蔵される。
【0080】
電池のその後の再充電サイクルの間、Li+イオンまたはNa+イオンが、カソード活物質によって放出され、アノードに移動して戻る。これらのLi+イオンまたはNa+イオンは、細孔壁を通り自然に拡散し、細孔の内部またはフォームの内部細孔壁に収容されたリチウムまたはナトリウム吸着金属に到達する。このようにして、フォームはリチウム化またはナトリウム化されると言われる。あるいは、セル構造内にアノード層として組み込まれる前に、グラフェンフォームを電気化学的にリチウム化またはナトリウム化(本明細書では「前リチウム化」または「前ナトリウム化」と称される)することができる。これは、集積化グラフェン-金属フォーム層を液体電解質の存在下でリチウムまたはナトリウム箔に接触させることにより、あるいは、液体電解質を含む電気化学反応器チャンバ内に、作用電極として集積化グラフェン-金属フォーム層を、および対電極としてリチウム/ナトリウム箔またはロッドを実施することによって達成することができる。作用電極と対電極の間に電流を導入することにより、フォームにリチウムまたはナトリウムを導入することができ、この場合に、Li+イオンまたはNa+イオンがフォームの細孔に拡散して、その中に予め収容されたリチウムまたはナトリウム吸着金属を有するリチウムまたはナトリウム合金を形成する。
【0081】
グラフェンは、ハニカム状の格子に配列されたsp2炭素原子の単原子の厚い層である。グラフェンは、黒鉛、活性炭、黒鉛繊維、カーボンブラック、およびメソフェーズ炭素ビードから容易に調製することができる。単層グラフェンおよびそのわずかに酸化された形態(GO)は、2670m2/gもの高い比表面積(SSA)を有することができる。実効電極電流密度を劇的に減少させるのはこの高い表面積であり、その結果、リチウムデンドライト形成の可能性を大幅に低減または排除する。しかしながら、我々は、予期しないことに、戻ってきたリチウムイオンまたはナトリウムイオン(電池充電中にカソードからアノードに戻ってくるイオン)が、グラフェンシートに均一に堆積し、リチウムまたはナトリウム吸着金属の不存在下で単独で、多孔性グラフェン構造(例えば、グラフェンフォーム)においてこれらのグラフェンシートに良好に接着することは困難であることを認めた。リチウムまたはナトリウムは、グラフェン表面に良好に接着しない、またはこれから脱着する傾向が強く、これにより可逆的なリチウム/ナトリウム貯蔵にもはや関与しない単離されたリチウムまたは単離されたナトリウムのクラスターになる。我々は、驚くべきことに、グラフェン表面に存在する、またはグラフェンフォームの細孔に存在する場合、こうしたリチウムまたはナトリウム吸着金属は、電池充電工程中にリチウム/ナトリウムを受容し収容する安全で信頼性のある部位を提供することをさらに認めた。また、得られたリチウム合金またはナトリウム合金は、その後の電池放電工程中にカソード側に移動するリチウムまたはナトリウムイオンを電解質に可逆的に放出することができる。
【0082】
リチウム吸着金属またはナトリウム吸着金属を収容するのに使用できるグラフェンフォームを製造するための方法またはプロセスに制限はない。例えば、3つの通常の方法がある:(a)触媒CVDプロセス(Ni箔の酸エッチングが続く)、(b)GOヒドロゲルの水熱還元、および(c)自己組織化法を用いてグラフェン酸化物シートでコートされる犠牲材料(例えば、コロイド状ポリスチレン粒子、PS)の使用(PSの溶解が続く)。グラフェンフォームが作製されると、次いで所望のリチウム吸着またはナトリウム吸着金属がグラフェンフォームの細孔に導入される(好ましくはグラフェン細孔壁にコートされる)。
【0083】
本発明は、複数の細孔および細孔壁から構成される好ましい固体グラフェンフォームおよびこのようなフォームを製造するための好ましいプロセスを提供する。グラフェン材料のシートを(1)典型的には100~1,500℃の温度で(縁部から縁部までおよび/または面から面まで)ともに化学連結/同化しておよび/または(2)高温(典型的には>2,100℃およびより典型的には>2,500℃)で細孔壁に沿ってより大きな黒鉛結晶またはドメインに再組織化する(本明細書において再黒鉛化と称される)少し前、間、または後にグラフェンフォーム中の細孔が形成される。このプロセスは、
(a)グラフェン材料が液体媒体に分散されたグラフェン分散体を調製する工程であって、グラフェン材料は、純粋なグラフェン、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、分散体は任意の発泡剤を含み、発泡剤対グラフェン材料の重量比が0/1.0~1.0/1.0である(グラフェン材料が純粋なグラフェンである場合、この発泡剤は通常は必要とされ、典型的には発泡剤対純粋なグラフェンの重量比は0.01/1.0~1.0/1.0である)工程、
(b)グラフェン分散体を支持基材(例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、金属箔、ガラスシート、紙シート等)の表面に対して分配および堆積してグラフェン材料の第1の湿潤層を形成する工程であって、分配および堆積手順(例えばコーティングまたは流延)は、グラフェン分散体を配向誘起応力に供することを含む工程と、
(c)グラフェン材料の第1の湿潤層から液体媒体を部分的にまたは完全に除去して、5重量%以上の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等)の含有量を有するグラフェン材料の第1の乾燥された層を形成する工程(この非炭素含有量は、熱誘導分解によって除去されるとき、フォーミング剤または発泡剤として作用する揮発性ガスを生じる)と、
(d)グラフェンフォームは、典型的には0.01~1.7g/cm3の密度(より典型的には0.1~1.5g/cm3、さらにより典型的には0.1~1.0g/cm3、最も典型的には0.2~0.75g/cm3)、または50~3,000m2/gの比表面積(より典型的には200~2,000m2/g、最も典型的には500~1,500m2/g)を有する、固体グラフェンフォームを製造するために非炭素元素から揮発性ガス分子を誘導するまたは前述の発泡剤を活性化するために十分な所望の加熱速度において100℃~3,000℃の第1の熱処理温度でグラフェン材料の第1の層を熱処理する工程と、
(e)固体グラフェンフォームをリチウムまたはナトリウム金属電極の形状に形成する工程であって、このような形状は、プレート、箔、シート、連続フィルム、繊維、ロッド、パイプ、中空構造等であることができる工程と、
を含む。
【0084】
発泡剤またはフォーミング剤は、ポリマー(プラスチックおよびゴム)、ガラス、および金属など、硬化または相転移を受ける様々な材料において発泡プロセスによってセルまたは発泡構造体を生じ得る物質である。それらは典型的には、発泡される材料が液体状態であるときに適用される。発泡剤は、固体状態である間に発泡材料を作るために使用できることはこれまで知られていなかった。それ以上に重要なことは、グラフェン材料のシートの集合体を発泡剤によってグラフェンフォームに変換することができることは教示も示唆もされていない。マトリックスにおけるセル構造体は典型的には、元のポリマーの厚さおよび相対的な剛性を増加させながら、密度を低減し、耐熱性および防音を高める目的で作られる。
【0085】
発泡またはセル材料を製造するためにマトリックス中に細孔またはセル(気泡)を作る発泡剤または関連する発泡機構は、以下の群に分類され得る:
(a)物理的発泡剤:例えば炭化水素(例えばペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、および液体CO2。気泡/フォーム製造プロセスは吸熱性であり、すなわちそれは、液体発泡剤を気化させるための、(例えば溶融プロセスまたは架橋による化学発熱からの)熱を必要とする。
(b)化学的発泡剤:例えばイソシアネート、アゾ-、ヒドラジンおよびその他の窒素系材料(熱可塑性およびエラストマーフォーム用)、重炭酸ナトリウム(熱可塑性フォームにおいて使用される、例えば重曹)。ここでガス生成物およびその他の副生成物が化学反応によって形成され、プロセスによってまたは反応ポリマーの発熱によって促進される。発泡反応は、発泡ガスとして作用する低分子量化合物を形成する工程を伴うことから、付加的な発熱も出る。粉末水素化チタンが金属フォームの製造においてフォーミング剤として使用され、それが分解して高温でチタンおよび水素ガスを形成する。水素化ジルコニウム(II)が同じ目的のために使用される。形成されると低分子量化合物は決して元の発泡剤に戻らず、すなわち反応は不可逆的である。
(c)混合物理的/化学的発泡剤:例えば、非常に低い密度を有する可撓性ポリウレタン(PU)フォームを製造するために使用される。化学的および物理的発泡の両方を直列に使用して、放出/吸収される熱エネルギーに対して互いに相殺する;したがって、温度上昇を最小にする。例えば、マットレスのための非常に低密度の可撓性PUフォームの製造においてイソシアネートと水(反応してCO2を形成する)を液体CO2(沸騰して気体形態を生じる)と組み合わせて使用される。
(d)機械的に注入される薬剤:機械的に製造されるフォームは、気泡を液体重合性マトリックス(例えば液体ラテックスの形態の未加硫エラストマー)中に導入する方法を伴う。方法は、空気または他のガスまたは低沸点揮発性液体を低粘度ラチス中で泡立てる工程、または押出機バレルまたはダイ内への、または射出成形バレルまたはノズル内へのガスの注入、およびスクリューの剪断/混合作用によってガスを均一に分散させて溶融体中に非常に微細な気泡またはガスの溶液を形成する工程を含む。溶融体が成形または押し出されて加工品が大気圧にあるとき、ガスが溶液から出て凝固の直前にポリマー溶融体を膨張させる。
(e)可溶性および浸出性剤:可溶性充填剤、例えば、液体ウレタン系に混合される固体塩化ナトリウム結晶であり、次いでそれを固体ポリマー加工品に造形し、塩化ナトリウムは、固体成形品をしばらくの間水中に浸漬することによって後で洗浄除去され、小さな相互接続した孔を比較的高密度のポリマー製品中に残す。
(f)前述の5つの機構を全て使用して固体状態である間にグラフェン材料中に細孔を作ることができることを我々は見出した。グラフェン材料中に細孔を生成する別の機構は、それらの非炭素元素を高温環境において除去することによって揮発性ガスを発生および気化することによる。これは、これまで決して教示も示唆もされていない独特の自己発泡プロセスである。
【0086】
好ましい実施形態において、分散体中のグラフェン材料は、純粋なグラフェン、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。前述のグラフェン材料のいずれか一つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択されることができる。
【0087】
例えば、背景技術のセクションで述べられたように、グラフェン酸化物(GO)は、ある期間(出発原料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)、所望の温度で反応器にて酸化性液体媒体(例えば硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば天然黒鉛粉末)を浸漬することによって得られることができる。次いで、得られた黒鉛酸化物粒子を熱剥離または超音波による剥離に供してGOシートを製造することができる。
【0088】
純粋なグラフェンは、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相製造としても知られる)または超臨界流体剥離によって製造されることができる。これらのプロセスは当技術分野で公知である。界面活性剤の補助によって複数の純粋なグラフェンシートを水または他の液体媒体に分散させて懸濁液を形成することができる。次いで、化学的発泡剤を分散体に分散させることができる(
図1(A)の38)。次いで、この懸濁液を固体基材(例えばガラスシートまたはAl箔)の表面に対して流延またはコートする。所望の温度に加熱されるとき、化学的発泡剤が活性化または分解されて揮発性ガス(例えばN
2またはCO
2)を発生させ、それらが作用して固体グラフェンシートの他の状態の塊に気泡または細孔を形成し、純粋なグラフェンフォーム40aを形成する。
【0089】
フッ素化グラフェンまたはグラフェンフッ化物が、本明細書において、ハロゲン化グラフェン材料の群の例として使用される。フッ素化グラフェンを製造するために用いた2つの異なる方法がある:(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この方法は、機械的剥離によってまたはXeF2などのフッ素化剤を使用するCVD成長、またはF系プラズマによって調製されたグラフェンを処理することを必要とする。(2)複数層の黒鉛フッ化物の剥離:黒鉛フッ化物の機械的剥離および液相剥離の両方とも容易に達成することができる[F.Karlicky,et al.「Halogenated Graphenes:Rapidly Growing Family of Graphene Derivatives」ACS Nano,2013,7(8),pp6434-6464]。
【0090】
高温でのF2と黒鉛との相互作用は、共有結合性黒鉛フッ化物(CF)nまたは(C2F)nをもたらすが、低温では黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CxF(2≦x≦24)が形成する。(CF)nにおいて炭素原子は、sp3-混成であり、したがってフルオロカーボン層は波形であり、トランス結合シクロヘキサンいす形からなる。(C2F)nにおいてC原子の半分だけがフッ素化され、隣接した炭素シートの全ての対がC-C共有結合によってともに連結される。得られたF/C比は、一般に、フッ素化温度、フッ化ガス中のフッ素の分圧の他、黒鉛化度、粒径、および比表面積などの黒鉛前駆体の物理的特徴に依存していることをフッ素化反応に関する組織的な研究は示した。フッ素(F2)の他に、他のフッ素化剤を使用することができるが、入手できる文献の大部分は、場合によってはフッ化物の存在下での、F2ガスによるフッ素化を伴う。
【0091】
層状前駆体材料を単独層または数層の状態に剥離するために、隣接した層間の引力を克服するとともに層をさらに安定化することが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、または特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、またはドナー-アクセプター芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって達成されることができる。液相剥離のプロセスには、液体媒体における黒鉛フッ化物の超音波処理が含まれる。
【0092】
グラフェンの窒化は、グラフェン酸化物などのグラフェン材料を高温(200~400℃)のアンモニアに暴露することによって行なうことができる。また、窒素化グラフェンをより低温で熱水法によって、例えばGOおよびアンモニアをオートクレーブ内に封止することによって形成し、次いで温度を150~250℃に上昇させることができる。窒素ドープトグラフェンを合成する他の方法には、グラフェンの窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件でのグラフェン酸化物の加安分解、および異なる温度でのグラフェン酸化物および尿素の熱水処理が含まれる。
【0093】
本発明のグラフェンフォーム中の細孔壁(セル壁)は、化学的に結合および同化したグラフェン面を含む。これらの平面芳香族分子またはグラフェン面(六方晶構造炭素原子)は物理的および化学的に十分に相互接続される。これらの面の横方向寸法(長さまたは幅)は非常に大きく(20nm~>10μm)、出発黒鉛粒子の最大微結晶寸法(または最大構成グラフェン面寸法)よりも典型的には数倍またはさらに数桁大きい。グラフェンシートまたは面は本質的に相互接続されて、低い抵抗を有する電気導電経路を形成する。これは、これまで発見されたり、開発されたり、またはおそらく存在することが示唆されていない独自で新規なクラスの材料である。
【0094】
本発明のプロセスがどのように機能してグラフェンフォームを製造するのかを説明するために、本明細書においてグラフェン酸化物(GO)およびグラフェンフッ化物(GF)を2つの例として利用した。これらは、特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきでない。それぞれの場合において、第1の工程は、任意の発泡剤を含むグラフェン分散体(例えばGO+水またはGF+有機溶剤、DMF)の調製を伴う。グラフェン材料が、非炭素元素を含まない純粋なグラフェンである場合、発泡剤が必要とされる。
【0095】
工程(b)において、GFまたはGO懸濁液(
図1(A)の21)を、好ましくは剪断応力の影響下で固体基材表面(例えばPETフィルムまたはガラス)上に湿潤GFまたはGO層35に形成する。このような剪断手順の一例は、コーティング機を使用するGFまたはGO懸濁液の薄いフィルムの流延またはコーティングである。この手順は、固体基材上にコートされるワニス、ペイント、コーティング、またはインクの層に類似している。フィルムが造形されるときまたはローラー/ブレード/ワイパーと支持基材との間に相対運動があるときに、ローラー、「ドクターブレード」、またはワイパーは剪断応力を生じる。極めて予想外で重要なことに、このような剪断作用によって、平面GFまたはGOシートを、例えば、剪断方向に沿って十分に整列させることができる。さらに驚くべきことに、GFまたはGO懸濁液中の液体成分をその後に除去して少なくとも部分的に乾燥される高整列化GFまたはGOシートの十分に充填された層を形成する場合、このような分子整列状態または好ましい配向は破損されない。乾燥されたGFまたはGO質量37aは、平面内の方向と平面に垂直な方向との間の高い複屈折係数を有する。
【0096】
実施形態において、次いで、このGFまたはGO層を、発泡剤を活性化する熱処理および/または非炭素元素(例えばF、O等)をグラフェンシートから除去して副生成物として揮発性ガスを生成する熱的誘起反応に供する。これらの揮発性ガスは、固体グラフェン材料中に細孔または気泡を生成し、固体グラフェンシートを壁構造体中に押し込み、グラフェン酸化物フォーム40bを形成する。発泡剤が加えられない場合、グラフェン材料中の非炭素元素は、好ましくはグラフェン材料の少なくとも10重量%(好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%)を占める。第1の(初期)熱処理温度は、典型的には80℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは300℃超、さらにより好ましくは500℃超であり、1,500℃もの高い温度であり得る。発泡剤は、典型的には80℃~300℃の温度で活性化されるが、より高くなり得る。フォーミング手順(細孔、セル、または気泡の形成)は、典型的には80~1,500℃の温度範囲内で完了される。非常に驚くべきことに、縁部から縁部までおよび面から面までの方法でのグラフェン面(GOまたはGF面)間の化学的連結または同化は、比較的低い熱処理温度(例えば150~300℃もの低い)で起こり得る。
【0097】
発泡グラフェン材料は、第1の熱処理温度よりも著しく高い少なくとも第2の温度を伴うさらなる熱処理に供されることができる。
【0098】
適切にプログラムされた熱処理手順は、単に単一熱処理温度(例えば第1の熱処理温度のみ)、少なくとも2つの熱処理温度(一定時間の間第1の温度、次いで第2の温度に上げ、さらに別の一定時間の間この第2の温度に維持する)、または初期処理温度(第1の温度)と、第1の温度よりも高い、最終HTT(第2の温度)を伴う熱処理温度(HTT)の任意の他の組合せを伴うことができる。乾燥されたグラフェン層が受ける最も高いまたは最終HTTは、4つの異なるHTTレジームに分けられることができる。
【0099】
レジーム1(80℃~300℃):この温度範囲において(熱還元レジームと、また、存在する場合、発泡剤のための活性化レジーム)、GOまたはGF層は、最初に熱誘導還元反応を受け、酸素含有量またはフッ素含有量の、典型的には(GO中のOの)20~50%または(GF中のFの)10~25%から約5~6%への低減をもたらす。この処理は、フォーム壁内のグラフェン間の間隔の、約0.6~1.2nm(乾燥されたとき)から約0.4nmへの低減、および単位比重当たり200W/mKまでの熱伝導率の増加および/または単位比重当たり2,000S/cmまでの電気導電率の増加をもたらす。(グラフェンフォーム材料の多孔度のレベル、したがって、比重を変動させることができ、同じグラフェン材料の場合、熱伝導率および電気導電率の両方の値が比重と共に変動することから、これらの特性値を比重によって分けて公正な比較を助けなければならない)。このような低温範囲を使用しても、グラフェンシート間の若干の化学連結が起こる。GO間またはGF間面間隔は比較的大きいままである(0.4nm以上)。多くのO含有またはF含有官能基は残る。
【0100】
レジーム2(300℃~1,500℃):この化学連結のレジームにおいて、隣接したGOまたはGFシート間に広範な化合、重合、および架橋が起こる。化学連結の後に酸素またはフッ素含有量は、典型的には<1.0%(例えば0.7%)に低減され、グラフェン間の間隔を約0.345nmに低減するという結果をもたらす。黒鉛化を開始するために2,500℃もの高い温度を典型的に必要とする従来の黒鉛化可能な材料(炭化ポリイミドフィルムなど)と著しい対照をなして、若干の初期再黒鉛化がこのような低温においてすでに始まっていることをこれは意味する。これは、本発明のグラフェンフォームおよびその製造プロセスの別の異なる特徴である。これらの化学連結反応は、単位比重当たり250W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり2,500~4,000S/cmまで電気導電率の増加をもたらす。
【0101】
レジーム3(1,500~2,500℃):この秩序化および再黒鉛化のレジームにおいて、広範な黒鉛化またはグラフェン面の同化が起こり、フォーム壁内の著しく改良された程度の構造秩序化をもたらす。結果として、酸素またはフッ素含有量は、典型的には0.01%に低減され、グラフェン間の間隔は約0.337nmに低減される(実際のHTTおよび時間に応じて1%~約80%の黒鉛化度を達成する)。また、改良された秩序化度は、単位比重当たり>350W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり>3,500S/cmまで電気導電率の増加によって反映される。
【0102】
レジーム4(2,500℃よりも高い):この再結晶化および完全性レジームにおいて、粒界およびその他の欠陥の広範な移動および除去が行われ、GOまたはGFの製造のための出発黒鉛粒子の元の粒径よりも数桁大きい場合がある、非常に大きい結晶粒を有するほぼ完全な単結晶または多結晶グラフェン結晶をフォーム壁内に形成するという結果をもたらす。酸素またはフッ素含有量は本質的に失われ、典型的には0%~0.001%である。グラフェン間の間隔は約0.3354nmまで低減され(80%~ほぼ100%の黒鉛化度)、それは完全な黒鉛単結晶の黒鉛化度に相当する。このように得られた発泡構造体は、単位比重当たり>400W/mKの熱伝導率、および単位比重当たり>4,000S/cmの電気導電率を示す。
【0103】
本発明のグラフェンフォーム構造体は、少なくとも第1のレジーム(温度が500℃を決して超えない場合この温度範囲において1~4時間を典型的に必要とする)にわたる、より一般的には最初の2つのレジーム(1~2時間が好ましい)、さらにより一般的には最初の3つのレジーム(レジーム3において好ましくは0.5~2.0時間)にわたる、そして全ての4つのレジーム(0.2~1時間のレジーム4を含めて、最も高い導電率を達成するために実施されることができる)にわたり得る温度プログラムを使用して、乾燥されたGOまたはGF層を熱処理することにより得ることができる。
【0104】
グラフェン材料が、グラフェン酸化物、還元グラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せからなる非純粋なグラフェン材料の群から選択され、最高熱処理温度(例えば第1および第2の熱処理温度の両方)が2,500℃未満である場合、得られた固体グラフェンフォームは、典型的には0.01重量%~2.0重量%の範囲の非炭素元素の含有量を含む(非純粋なグラフェンフォーム)。
【0105】
X線回折パターンは、CuKcv放射線を備えたX線回折計を使用して得られた。回折ピークのシフトおよび広幅化は、ケイ素粉末標準を使用して較正された。黒鉛化度、gは、メーリング(Mering)の式d002=0.3354g+0.344(1-g)(式中、d002は、nm単位の黒鉛またはグラフェン結晶の中間層間隔である)を使用して、X線パターンから計算された。この式は、d002が約0.3440nm以下であるときにだけ有効である。0.3440nmよりも高いd002を有するグラフェンフォーム壁は、スペーサーとして作用してグラフェン間の間隔を増加させる酸素含有またはフッ素含有官能基(例えば、グラフェン分子平面の表面またはエッジ上の-F、-OH、>O、および-COOHなど)の存在を反映する。
【0106】
グラフェンおよび従来の黒鉛結晶のフォーム壁内の積層および接着グラフェン面の秩序化度を特性決定するために使用できる別の構造指数は、(002)または(004)反射のロッキング曲線(X線回折強度)の半値全幅によって表わされる、「モザイクスプレッド」である。この秩序化度は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェン壁の大部分は、0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する(2,500℃以上の熱処理温度(HTT)を使用して製造される場合)。しかしながら、HTTが1,500~2,500℃の間である場合いくつかの値は0.4~0.7の範囲であり、HTTが300~1,500℃の間である場合0.7~1.0の範囲である。
【0107】
妥当な化学連結機構は、2つの整列GO分子が、縁部から縁部までともに化学連結してフォーム壁を形成することができるものである。さらにまた、GO、GF、および化学官能化グラフェンシートについて化学連結は、縁部から縁部までだけでなく、面から面まで生じ得る。分子が化学的に同化され、連結され、単一実体に集積されるようにこれらの連結および同化反応が進む。グラフェンシート(GOまたはGFシート)がそれら自体の元の本質を完全に失い、それらはもう離散シート/プレートリット/フレークではない。得られた生成物は、単独グラフェンシートの単純な集合体ではなく、本質的に無数の分子量を有する相互接続された巨大分子の本質的に網目構造である単一実体である。また、これは、グラフェン多結晶(若干の結晶粒を有するが、識別できる、明瞭な粒界を典型的には有さない)として説明されることができる。全ての構成グラフェン面は横方向寸法(長さおよび幅)において非常に大きく、HTTが十分に高い場合(例えば>1,500℃またはもっと高い)、これらのグラフェン面は互いに本質的にともに結合される。
【0108】
SEM、TEM、制限視野回折、X線回折、AFM、ラマン分光学、およびFTIRの組合せを使用する綿密な研究は、グラフェンフォーム壁はいくつかの非常に大きいグラフェン面(典型的に>>20nm、より典型的には>>100nm、しばしば>>1μm、そして、多くの場合、>>10μm、またはさらに>>100μmの長さ/幅を有する)から構成されることを示す。最終熱処理温度が2,500℃よりも低い場合、これらの巨大グラフェン面は、しばしばファンデルワールス力(従来の黒鉛微結晶におけるように)だけでなく、共有結合によっても厚さ方向(c軸結晶方向)に沿って積層および接合される。これらの場合、理論によって限定されることを望まないが、ラマンおよびFTIR分光法研究は、黒鉛中における従来のsp2だけでなくsp2(支配的)およびsp3(弱いが存在している)電子配置の共存を示すと思われる。
(1)このグラフェンフォーム壁は、樹脂結合剤、リンカー、または接着剤を使用して離散フレーク/プレートリットをともに接着または結合することによって製造されない。代わりに、外部から加えられるリンカーまたは結合剤分子またはポリマーを全く使用せずにGO分散体からのGOシート(分子)またはGF分散体からのGFシートを、互いの共有結合の接合または形成によって同化して集積化グラフェン実体を形成する。
(2)このグラフェンフォーム壁は、典型的には不完全な粒界を有する大きな結晶粒から構成される多結晶である。この実体は、GOまたはGF懸濁液から得られ、それはさらには、本来複数の黒鉛微結晶を有する天然黒鉛または人工黒鉛粒子から得られる。化学的に酸化またはフッ素化される前に、これらの出発黒鉛微結晶は、初期長さ(a軸結晶方向のLa)、初期幅(b軸方向のLb)、および厚さ(c軸方向のLc)を有する。酸化またはフッ素化したとき、これらの初期離散黒鉛粒子は、かなりの濃度の縁部担持または表面担持官能基(例えば-F、-OH、-COOH等)を有する高級芳香族グラフェン酸化物またはグラフェンフッ化物分子に化学的に変換される。懸濁液中のこれらの芳香族GOまたはGF分子は、黒鉛粒子またはフレークの一部であるそれらの元の本性を失っている。液体成分を懸濁液から除去するときに、得られたGOまたはGF分子は、本質的に非晶質の構造体を形成する。熱処理時に、これらのGOまたはGF分子は、フォーム壁を構成する単体またはモノリシックグラフェン実体に化学的に同化および連結される。このフォーム壁は、高度に秩序化されている。
フォーム壁における得られた単体グラフェン実体は、典型的には元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。このグラフェンフォーム壁実体の長さ/幅は、元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい。多結晶グラフェン壁構造体における単独結晶粒でも、元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。
(3)これらの独特の化学組成(酸素またはフッ素含有量を含む)、モルホロジー、結晶構造(グラフェン間の間隔を含む)、および構造特徴(例えば高い配向度、わずかな欠陥、不完全な粒界、化学結合およびグラフェンシート間の間隙がないこと、ならびにグラフェン面の割り込みがほとんどないこと)のために、GO由来またはGF由来のグラフェンフォームは、著しい熱伝導率、電気導電率、機械的強度、および剛性(弾性率)の独特の組合せを有する。
【0109】
前述の特徴は、以下のように詳細にさらに記述および説明される:
図1(B)に示されるように、黒鉛粒子(例えば100)は、典型的には複数の黒鉛微結晶または結晶粒から構成される。黒鉛微結晶は、炭素原子の六方晶網目構造の層面から構成される。六方晶整列炭素原子のこれらの層面は実質的に平らであり、特定の微結晶において互いに実質的に平行で等距離であるように配向または秩序化される。グラフェン層または基礎面と一般的に称される、六方晶構造炭素原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力によってそれらの厚さ方向(c軸結晶方向)において弱くともに結合され、微結晶においてこれらのグラフェン層の群は整列される。黒鉛微結晶構造体は、通常、2つの軸または方向:c軸方向およびa軸(またはb軸)方向の観点から特徴づけられる。c軸は基礎面に垂直な方向である。a軸またはb軸は、(c軸方向に垂直な)基礎面に平行な方向である。
【0110】
高度に秩序化された黒鉛粒子は、a軸結晶方向に沿うL
aの長さ、b軸結晶方向に沿うL
bの幅、およびc軸結晶方向に沿う厚さL
cを有する、かなりのサイズの微結晶からなり得る。微結晶の構成グラフェン面は互いに対して高度に整列または配向され、したがって、これらの異方性構造は、高度に方向性である多くの特性を生じる。例えば、微結晶の熱伝導率および電気導電率は面方向(a軸またはb軸方向)に沿って非常に大きいが、垂直な方向(c軸)において比較的低い。
図1(B)の上左部分に示されるように、黒鉛粒子中の異なる微結晶は、典型的には異なる方向に配向され、したがって、多微結晶黒鉛粒子の特定の特性は、全ての構成微結晶の方向性の平均値である。
【0111】
平行なグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力のために、グラフェン層間の間隔がかなり広がってc軸方向の顕著な膨張をもたらし、したがって、炭素層の層状性質が実質的に保持される膨張黒鉛構造体を形成するように天然黒鉛を処理することができる。可撓性黒鉛を製造するためのプロセスは当技術分野で公知である。一般的には、天然黒鉛のフレーク(例えば
図1(B)の100)を酸溶液中にインターカレートして黒鉛インターカレーション化合物(GIC、102)を製造する。GICを洗浄し、乾燥させ、次いで短時間の間高温に暴露することによって剥離する。これは、フレークを黒鉛のc軸方向においてそれらの元の寸法の80~300倍まで膨張または剥離させる。剥離黒鉛フレークは外観が細長く、したがって、一般的にワーム104と称される。非常に膨張した黒鉛フレークのこれらのワームを、結合剤を使用せずに、ほとんどの用途において、約0.04~2.0g/cm
3の典型的な密度を有する膨張黒鉛、例えばウェブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マット等(典型的には「可撓性黒鉛」106と称される)の凝集または集積化シートに形成することができる。
【0112】
図1(A)の上左部分は、可撓性黒鉛箔を製造するために使用される先行技術のプロセスを説明するフローチャートを示す。このプロセスは、典型的には黒鉛粒子20(例えば、天然黒鉛または合成黒鉛)をインターカラント(典型的には強酸または酸混合物)でインターカレートして黒鉛インターカレーション化合物22(GIC)を得ることから開始する。水中で洗浄して過剰な酸を除去した後、GICが「膨張性黒鉛」になる。次いで、GICまたは膨張性黒鉛を短時間の間(典型的には15秒~2分)高温環境(例えば、800~1,050℃の範囲の温度に予め設定された管状炉内で)に暴露する。この熱処理は黒鉛をそのc軸方向において30~数百倍膨張させてワーム状虫食い形構造体24(黒鉛ワーム)を得、それは、大きな細孔がこれらの相互接続されたフレークの間に挟まれた、剥離されたが分離されていない黒鉛フレークを含む。
【0113】
先行技術の一プロセスにおいて、カレンダー加工またはロールプレス加工技術を使用することによって剥離黒鉛(または黒鉛ワームの塊)を再圧縮して可撓性黒鉛箔(
図1(A)の26または
図1(B)の106)を得、それらは典型的には厚さ100~300μmである。別の先行技術のプロセスにおいて、剥離黒鉛ワーム24を樹脂で含浸し、次いで圧縮および硬化して可撓性黒鉛複合物を形成することができ、それは通常、同様に低い強度を有する。さらに、樹脂含浸したとき、黒鉛ワームの電気導電率および熱伝導率は二桁低下され得る。
【0114】
代わりに、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル、または超音波デバイスを使用して剥離黒鉛を高強度機械剪断/分離処理に供して、分離されたナノグラフェンプレートリット33(NGP)を製造することができ、全てのグラフェンプレートリットは100nmよりも薄く、主に10nmよりも薄く、多くの場合、単一層グラフェンである(
図1(B)において112としても示される)。NGPは、グラフェンシートまたは複数のグラフェンシートから構成され、それぞれのシートは炭素原子の二次元の六方晶構造体である。フィルム製造または紙製造プロセスを使用して複数のNGP(単一層および/または数層グラフェンまたはグラフェン酸化物の離散シート/プレートリットを含む、
図1(A)の33)の塊をグラフェンフィルム/紙(
図1(A)の34または
図1(B)の114)に製造することができる。
【0115】
さらに代わりに、低強度剪断によって、黒鉛ワームは、厚さ>100nmを有するいわゆる膨張黒鉛フレーク(
図1(B)の108に分離される傾向がある。紙製造またはマット製造プロセスを使用してこれらのフレークを黒鉛紙またはマット106に形成することができる。この膨張黒鉛紙またはマット106は、欠陥、割り込み、およびこれらの離散フレーク間の誤配向を有する離散フレークのごく単純な集合体または積層体である
【0116】
グラフェンフォームが製造されると、リチウムまたはナトリウム吸着金属を細孔に導入することができる。リチウムまたはナトリウム吸着金属材料は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Pd、Ag、Cd、Au、Pt、W、Al、Sn、In、Pb、Bi、それらの合金、またはそれらの混合物から選択される金属を含むことができる。任意の遷移金属を使用することができるが、好ましくは、金属は、Cu、Al、Ti、Sn、Ag、Au、Fe、またはそれらの合金から選択される。
【0117】
多孔性黒鉛フィルムを金属または金属合金で含浸する工程は、電気化学堆積またはめっき、パルスパワー堆積、溶液含浸、電気泳動堆積、無電解めっきまたは堆積、金属溶融含浸、金属前駆体含浸、化学堆積、物理気相堆積、物理気相浸透、化学気相堆積、化学気相浸透、スパッタリング、またはそれらの組合せを含むことができる。これらの個々の操作そのものは、当技術分野で周知である。例えば、電気化学堆積において、電気化学チャンバ(例えば、電解質を含む簡易な浴)で、多孔性黒鉛フィルムを一方の端子(例えば負極)に接続し、所望の金属(例えばCu、Zn、またはNi)片を反対側の端子(例えば正極)に接続することによって、直流電流を課すことができる。
【0118】
電解質は、電池の重要な成分である。広い範囲の電解質を、本発明を実施するために使用することができる。他のタイプを使用することができるが、最も好ましいのは、非水性ポリマーゲル、および固体電解質である。ポリマー、ポリマーゲル、および固体電解質が、液体電解質より好ましい。
【0119】
本明細書で用いられる非水性電解質は、電解質塩を非水性溶媒に溶解させて製造することができる。リチウム二次電池のための溶媒として用いられている任意の公知の非水性溶媒を用いることができる。エチレンカーボネート(EC)、および前述のエチレンカーボネートより融点が低く、ドナー数が18以下の非水性溶媒の少なくとも1種を含む混合溶媒から主としてなる非水性溶媒(以下、第2の溶媒と称される)を好適に用いることができる。この非水性溶媒は、(a)電解質の還元分解または酸化分解を抑制する効果があり、(b)電気導電率が高いという点で有利である。エチレンカーボネート(EC)からのみ構成される非水性電解質は、炭素質フィラメント材料に対して比較的安定であるという点で有利である。しかしながら、ECの融点は、39~40℃と比較的高く、その粘度は、比較的高いため、その電気導電率が低く、EC単独では室温以下で動作させる二次電池電解質としては使用に不適当である。ECとの混合物において使用される第2の溶媒は、溶媒混合物の粘度をEC単独の粘度よりも低くするよう機能し、これにより混合溶媒のイオン導電性を促進する。さらに、ドナー数18以下(エチレンカーボネートのドナー数は16.4)の第2の溶媒を用いると、前述のエチレンカーボネートを容易かつ選択的にリチウムイオンで溶媒和することができるので、黒鉛化でよく発達した炭素質材料との第2の溶媒の還元反応は、抑制されていると考えられる。さらに、第2の溶媒のドナー数を18以下に制御することにより、リチウム電極への酸化分解電位を4V以上に容易に高めることができ、その結果、高電圧のリチウム二次電池を製造することが可能である。
【0120】
好ましい第2の溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、蟻酸プロピル(PF)、蟻酸メチル(MF)、トルエン、キシレンおよび酢酸メチル(MA)である。これらの第2の溶媒は、単独で、または2つ以上の組合せで用いてもよい。より望ましくは、この第2の溶媒は、16.5以下のドナー数を有するものから選択されるべきである。この第2の溶媒の粘度は、25℃で28cps以下で好ましくはあるべきである。
【0121】
非水性電解液に組み込まれる電解塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)およびビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]などのリチウム塩から選択されることができる。中でも、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2が好ましい。非水性溶媒中の前述の電解質塩の含有量は、好ましくは0.5~3.5モル/lである。
【0122】
ナトリウム金属電池の場合、有機電解質は、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸カリウム(KClO4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF6)、六フッ化リン酸カリウム(KPF6)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、ヘキサフルオロアルセニドナトリウム、ヘキサフルオロアルセニドカリウム、トリフルオロ-メタンスルホン酸ナトリウム(NaCF3SO3)、トリフルオロ-メタスルホン酸カリウム(KCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CF3SO2)2)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CF3SO2)2)、イオン性液体塩、またはそれらの組合せから好ましくは選択されるアルカリ金属塩を含むことができる。
【0123】
イオン性液体は、イオンだけから構成される。イオン性液体は、所望の温度を超えるときに溶融状態または液体状態である低融解温度塩である。例えば、塩は、その融点が100℃未満である場合イオン性液体であると考えられる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温のイオン性液体(RTIL)と称される。IL塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せのために、弱い相互作用を特徴としている。これによって、可撓性(アニオン)および非対称(カチオン)のために結晶化する傾向は低い。
【0124】
典型的なおよび公知のイオン性液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって形成される。この組合せは、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率および低い分解傾向ならびに約300~400℃までの低い蒸気圧を有する流体をもたらす。これは、一般的に低い揮発性および不燃性、したがって、電池のためにずっと安全な電解質を意味する。
【0125】
イオン性液体は、非常に多種多様なそれらの成分の調製の容易さのために本質的に無制限の数の構造的異形になる有機イオンから根本的に構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、与えられた用途のための所望の性質を有するイオン性液体を設計することができる。これらには、とりわけ、カチオンとしてイミダゾリウム、ピロリジニウムおよび第四アンモニウム塩ならびにアニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、およびヘキサフルオロホスフェートが含まれる。それらの組成物に基づいて、イオン性液体は、各々のタイプが特定の用途に適している、非プロトン、プロトンおよび双性イオンタイプが基本的に含まれる異なったクラスになる。
【0126】
室温のイオン性液体(RTIL)の一般的なカチオンには、限定されないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、およびトリアルキルスルホニウムが含まれる。RTILの一般的なアニオンには、限定されないが、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-等々が含まれる。比較して言えば、イミダゾリウム系またはスルホニウム系カチオンとハロゲン化物錯アニオン、例えばAlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、またはF(HF)2.3
-などとの組合せは、良い作業導電率を有するRTILをもたらす。
【0127】
RTILは、高い固有イオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(ほとんどゼロ)蒸気圧、不燃性、室温を超えるおよび室温未満の広範囲の温度で液体のままである能力、高い極性、高い粘度、および広い電気化学窓などの典型的な性質を有することができる。高い粘度以外これらの性質は、電池中の電解質の構成成分(塩および/または溶剤)としてRTILを使用する場合、望ましい特質である。
【0128】
カソード活物質は、リチウム含有ニッケル酸化物、コバルト酸化物、ニッケル-コバルト酸化物、バナジウム酸化物、およびリチウム鉄リン酸などの多種多様な酸化物から選択することができる。これらの酸化物は、典型的には、金属元素またはいくつかの金属元素であるドーパントを含むことができる。また、カソード活物質は、二硫化チタン、二硫化モリブデン、および金属硫化物などのカルコゲン化合物から選択されることができる。より好ましくは、リチウムコバルト酸化物(例えばLixCoO2、式中、0.8≦x≦l)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn2O4およびLiMnO2)、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン-鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等である。また、硫黄またはポリスルフィドリチウムは、リチウム硫黄セルで使用することができる。
【0129】
充電式リチウム金属電池は、カソード活物質として、TiS2、MoS2、MnO2、CoO2、V3O8、およびV2O5などの非リチウム化化合物を使用することができる。リチウムバナジウム酸化物は、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドープトバージョン、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されることができ、0.1<x<5である。一般的には、無機材料系カソード材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ジカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択されることができる。好ましくは、所望の金属酸化物または無機材料は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、またはナノプレートレット形態における、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、またはニッケルの酸化物、ジカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、スルフィド、セレン化物、またはテルル化物から選択される。これらの材料は、グラフェン材料のシートとの簡易な混合物の形態であることができるが、好ましくはグラフェンシートの表面に物理的または化学的に結合されるナノ粒子またはナノコーティングの形態である。
【0130】
好ましくは、ナトリウム金属電池のカソード活物質は、NaFePO4、KFePO4、Na(1-x)KxPO4、Na0.7FePO4、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO4)2F3、Na2FePO4F、NaFeF3、NaVPO4F、KVPO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、NaV6O15、NaxVO2、Na0.33V2O5、NaxCoO2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Nax(Fe1/2Mn1/2)O2、NaxMnO2、NaxK(1-x)MnO2、Na0.44MnO2、Na0.44MnO2/C、Na4Mn9O18、NaFe2Mn(PO4)3、Na2Ti3O7、Ni1/3Mn1/3Co1/3O2、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaxMnO2、NaCrO2、KCrO2、Na3Ti2(PO4)3、NiCo2O4、Ni3S2/FeS2、Sb2O4、Na4Fe(CN)6/C、NaV1-xCrxPO4F、SezSy(y/z=0.01~100)、Se、アルオード鉱、またはそれらの組合せ(式中、xは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物またはカリウムインターカレーション化合物を含む。
【0131】
有機材料またはポリマー材料系カソード材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマーが結合したPYT、キノ(トリアゼン)、レドックス活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3、5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセントロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、NaxC6O6(x=1~3)、Na2(C6H2O4)、Na2C8H4O4(Naテレフタレート)、Na2C6H4O4(リチウムトランス-トランス-ムコン酸)、またはこれらの組合せから選択されることができる。
【0132】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトライル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、チオエーテル側鎖をペンダントとして有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、またはポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0133】
リチウム金属電池またはナトリウム金属電池におけるカソード活物質として使用できる有機材料としては、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、錫フタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロライド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学誘導体、またはそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0134】
以下の実施例は、本発明を実施する最良の形態に関するいくつかの特定の詳細を説明するために使用され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0135】
実施例1:様々な発泡剤および細孔形成(気泡製造)プロセス
プラスチック加工の分野において、化学的発泡剤を粉末またはペレットの形態でプラスチックペレット中に混合し、高めの温度で溶解させる。発泡剤の溶解のために特定される特定の温度を超えると、ガス反応生成物(通常窒素またはCO2)が生成され、それは発泡剤として作用する。しかしながら、化学的発泡剤を液体でなく、固体である、グラフェン材料に溶解させることはできない。これは、化学的発泡剤を利用して細孔またはセルをグラフェン材料中に生成する課題をもたらす。
【0136】
広範な実験の後、第1の熱処理温度が発泡反応を活性化するのに十分であるときに、ほとんど任意の化学的発泡剤(例えば粉末またはペレット形態の)を使用して、細孔または気泡をグラフェンの乾燥された層中に作ることができることを我々は発見した。化学的発泡剤(粉末またはペレット)が液体媒体中に分散されて懸濁液中の第2の分散相になり(グラフェン材料のシートが第1の分散相である)、それを固体支持基材に対して堆積させて湿潤層を形成することができる。次いで、グラフェン材料のこの湿潤層を乾燥させ、熱処理して化学的発泡剤を活性化させることができる。化学的発泡剤が活性化されて気泡が生成された後、得られた発泡グラフェン構造体は、一般にその後にもっと高い熱処理温度が構造体に適用されるときにでさえも維持される。これは本当に全く予想外である。
【0137】
化学的発泡剤(CFA)は、熱分解したときにガスを放出する有機または無機化合物であり得る。典型的には、中~高密度フォームを得るためにCFAが使用され、低密度フォームを得るために物理的発泡剤と共に多くの場合に使用される。CFAは、吸熱性または発熱性のどちらかに分類されることができ、それはそれらが受ける分解のタイプを意味する。吸熱性タイプは分解したときにエネルギーを吸収し、典型的には二酸化炭素および湿分を放出し、他方、発熱性タイプは、分解したときにエネルギーを放出し、通常は窒素を生成する。発熱性発泡剤によって放出される全ガス発生量およびガス圧力は、多くの場合に吸熱性タイプの全ガス発生量およびガス圧力よりも高い。吸熱性CFAは、一般的には130~230℃(266~446°F)の範囲で分解することが知られており、他方、より一般的な発熱性発泡剤のいくつかは約200℃(392°F)で分解する。しかしながら、大抵の発熱性CFAの分解範囲は、特定の化合物の添加によって低下させることができる。CFAの活性化(分解)温度が我々の熱処理温度の範囲になる。適切な化学的発泡剤の例としては、重炭酸ナトリウム(重曹)、ヒドラジン、ヒドラジド、アゾジカルボンアミド(発熱性化学的発泡剤)、ニトロソ化合物(例えばN,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、ヒドラジン誘導体(例えば4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびヒドラゾジカルボンアミド)、および炭酸水素(例えば炭酸水素ナトリウム)が挙げられる。これらは全てプラスチック工業において商業的に入手可能である。
【0138】
発泡プラスチックの製造において、フォーム押出または射出成形発泡の間に物理的発泡剤をプラスチック溶融液中に計量しながら供給する、またはポリウレタンの発泡中に前駆体材料の1つに供給する。物理的発泡剤を使用して、固体状態である(溶融されない)、グラフェン材料中に細孔を作ることができることはこれまで知られていない。支持基材に対してコートまたは流延される前に物理的発泡剤(例えばCO2またはN2)をグラフェン懸濁液のストリーム中に注入することができることを驚くべきことに我々は観察した。これは、液体媒体(例えば水および/またはアルコール)が除去されるときでも発泡構造体をもたらす。グラフェン材料の乾燥された層は、液体の除去およびその後の熱処理の間に細孔または気泡の制御された量を維持することができる。
【0139】
技術的に実行可能な発泡剤としては、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、イソブタン(C4H10)、シクロペンタン(C5H10)、イソペンタン(C5H12)、CFC-11(CFCI3)、HCFC-22(CHF2CI)、HCFC-142b(CF2CICH3)、およびHCFC-134a(CH2FCF3)が挙げられる。しかしながら、発泡剤を選択するときに、環境の安全性は考慮すべき主要因である。モントリオール議定書および帰結される合意へのその影響は、フォームの製造業者に大きな課題を提起する。以前に適用されたクロロフルオロカーボンの有効な特性および簡単な取扱いにもかかわらず、それらのオゾン破壊係数(ODP)のためにこれらを禁止する世界的な合意があった。部分ハロゲン化クロロフルオロカーボンもまた環境上安全ではなく、このため多くの国々においてすでに禁止されている。別の選択肢はイソブタンおよびペンタンなどの炭化水素、ならびにCO2および窒素などのガスである。
【0140】
それらの規制された物質以外、上に列挙された全ての発泡剤が我々の実験において試験された。物理的発泡剤および化学的発泡剤の両方について、懸濁液中に導入される発泡剤の量は、発泡剤対グラフェン材料の重量比として定義され、それは、典型的には0/1.0~1.0/1.0である。
【0141】
実施例2:GOシートである離散ナノグラフェンプレートリット(NGP)の調製
12μmの平均直径を有する細断した黒鉛繊維および天然黒鉛粒子を出発原料として別々に使用し、それを(化学インターカレートおよび酸化剤として)濃硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物中に浸漬して黒鉛インターカレーション化合物(GIC)を調製した。最初に出発原料を24時間の間80℃で真空炉内で乾燥させた。次いで、(4:1:0.05の重量比の)濃硫酸、発煙硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物を、適切な冷却および撹拌下で、繊維セグメントを含む三つ口フラスコにゆっくりと加えた。5~16時間の反応後に、酸処理した黒鉛繊維または天然黒鉛粒子を濾過し、溶液のpHレベルが6に達するまで脱イオン水で十分に洗浄した。一晩100℃で乾燥した後、得られた黒鉛インターカレーション化合物(GIC)または黒鉛酸化物繊維を水および/またはアルコール中に再分散させてスラリーを形成した。
【0142】
一試料では、黒鉛酸化物繊維5グラムを15:85の比でアルコールおよび蒸留水からなるアルコール溶液2,000mlと混合してスラリー塊を得た。次いで、混合物スラリーを様々な長さの時間の間200Wの出力で超音波照射に供した。20分の音波処理の後、GO繊維を有効に剥離し、約23重量%~31重量%の酸素含有量を有する薄いグラフェン酸化物シートに分離した。得られた懸濁液は、水中に懸濁されているGOシートを含む。流延の直前に化学的発泡剤(ヒドラゾジカルボンアミド)を懸濁液に加えた。
【0143】
次いで、得られた懸濁液をドクターブレードを使用してガラス表面に対して流延して剪断応力を加え、GOシート配向を誘導した。得られたGOコーティングフィルムは、液体の除去後に、約5~500μm(好ましくはおよび典型的には10μm~50μm)に変動し得る厚さを有する。
【0144】
グラフェンフォーム試料を製造するために、次いで、GOコーティングフィルムを1~8時間の間80~350℃の初期熱還元温度と、その後に、0.5~5時間の間1,500~2,850℃の第2の温度の熱処理とを典型的に伴う熱処理に供した。第1の熱処理に供される間にコーティングフィルム試料に圧縮応力を適用することが必須であることがわかったことに留意されたい。細孔が形成されている間にグラフェンシート間の化学的同化および連結が起こり得るためにこの圧縮応力は、グラフェンシート間の十分な接触を維持するのに役立ったと思われる。このような圧縮応力がなければ、熱処理されたフィルムは、典型的には過度に多孔性であり、細孔壁内の構成グラフェンシートは非常に不十分に配向され、互いに化学的同化および連結することができない。結果として、グラフェンフォームの熱伝導率、電気導電率、および機械的強度はひどく損なわれる。
【0145】
実施例2a:グラフェンフォーム細孔への金属の含浸
グラフェンフォームにおけるリチウムまたはナトリウム吸着金属としてより高い融点の金属(例えば、Au、Ag、Ni、Co、Mn、FeおよびTi)を組み込むために、少量であるが制御された量の所望の金属がグラフェンシートの表面に、スパッタリング、物理蒸着、または化学蒸着を用いて堆積された。グラフェン表面全体を金属で覆う必要はない。次いで、これらの軽く金属コートされたグラフェンシートは、液体媒体に分散されて懸濁液を形成し、次いでコートしてフィルムを形成し、次いで熱処理してグラフェンフォームを形成する。
【0146】
Mg、Zn、Na、K、およびSnなどのより低い融点の金属を組み込むために、グラフェンフォームを形成した後に、金属溶融含浸または電気化学浸透(メッキ)を実施した。電気化学的方法は、低い融点の金属のみならず全ての金属に適用可能であることに留意されたい。
【0147】
我々は、多層グラフェンをベースとしたフォームと比較して、単層グラフェン壁ベースのグラフェンフォームは、所望のリチウムまたはナトリウム吸着金属で含浸させることがより容易であることを認めた。さらに、高い比表面積を有する単層グラフェン壁をベースとしたフォームは、デンドライト形成の抑制においてより有効であることが判明している。
【0148】
グラフェン-金属ハイブリッドフォームをベースとしたアノード構造の相対的安定性を決定するために、対称層状リチウムフォーム電極セル、対称層状リチウムフォーム(無金属)電極セル、および露出したリチウム箔対の電圧プロファイルが、1mA/cm2の公称電流密度(考慮されていないフォーム比表面積、単に電極表面積)で200サイクル超にわたり得られた。対称層状リチウムフォーム電極セルは、無視できるヒステリシスで安定した電圧プロファイルを示したが、露出したリチウム箔は、サイクル中のヒステリシスが100サイクル後にほぼ100%急速に増加したことを示した。対称層状リチウムフォーム(無金属)電極セルのヒステリシス成長速度は、対称層状リチウムフォーム電極セルのヒステリシス成長速度よりはるかに大きいが、露出したリチウム箔のヒステリシス成長速度よりも低い。対称層状リチウムフォームの電極セルの場合、ヒステリシスが明らかに増加することなく、充電および放電の両方の状態での平坦な電圧プラトーを全サイクルにわたり維持することができる。これは、露出したリチウム電極と比較して顕著な改善であり、それぞれの剥離/めっきプロセスの初期段階および最終段階の両方で一貫してより高い過電圧で変動する電圧プロファイルを示した。300サイクル後、デンドライト形成の兆候はなく、リチウム堆積は、対称層状リチウムフォーム電極セルにおいて非常に均一である。対称層状リチウムフォーム(無金属)電極セルでは、一部のリチウムは、細孔に完全に入るのではなく、細孔の外表面に不均一に堆積する傾向がある。典型的には、露出したリチウム箔電極の場合、デンドライトは30サイクル未満で成長し始める。
【0149】
実施例3:メソカーボンマイクロビード(MCMB)からの単一層グラフェンシートの調製
メソカーボンマイクロビード(MCMB)は、China Steel Chemical Co.(Kaohsiung,Taiwan)から供給された。この材料は、約2.24g/cm3の密度ならびに約16μmのメジアン粒度を有する。MCMB(10グラム)を48~96時間にわたって酸溶液(4:1:0.05の比の硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウム)でインターカレートした。反応の終了時に、混合物を脱イオン水中に流し込み濾過した。インターカレートされたMCMBを塩酸の5%溶液中で繰り返して洗浄して硫酸イオンの大部分を除去した。次いで、ろ液のpHが4.5以上になるまで試料を脱イオン水で繰り返して洗浄した。次いで、スラリーを10~100分にわたって超音波処理に供してGO懸濁液を生成した。GOシートの大部分は、酸化処理が72時間を超えるときに単一層グラフェンであり、酸化時間が48~72時間であるときに2層または3層グラフェンであったことをTEMおよび原子間力顕微鏡での検討は示している。
【0150】
GOシートは、48~96時間の酸化処理時間の間約35重量%~47重量%の酸素の比率を含む。GOシートは水中に懸濁された。流延の直前に化学的発泡剤として重曹(5~20重量%)を懸濁液に加えた。次いで、懸濁液をドクターブレードを使用してガラス表面に対して流延して剪断応力を加え、GOシート配向を誘導した。いくつかの試料を流延したが、発泡剤を含むものも含まないものもある。液体を除去した後、得られたGOフィルムは、約10から500μmまで変動し得る厚さを有する。
【0151】
次いで、発泡剤を有するまたは有さないGOフィルムのいくつかのシートを、1~5時間の間80~500℃の初期(第1の)熱還元温度を伴う熱処理に供した。この第1の熱処理はグラフェンフォームを生成した。しかしながら、フォーム壁内のグラフェンドメインは、フォームが1,500~2,850℃の第2の温度で熱処理に供される場合さらに改善され得る(再黒鉛化されてより秩序化されるまたはより高い結晶化度およびグラフェン面のより大きな横方向寸法を有し、化学的同化のために元のグラフェンシート寸法よりも長い)。次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~30重量%のMg、Zn、Na、KおよびSn)で含浸させた。
【0152】
実施例4:純粋なグラフェンフォーム(0%の酸素)の調製
GOシートの高い欠陥群が単独グラフェン面の伝導率を低下させるように作用する可能性を認識して、純粋なグラフェンシート(酸化されないおよび酸素を含まない、ハロゲン化されないおよびハロゲンを含まない等)の使用はより高い熱伝導率を有するグラフェンフォームをもたらすことができるかどうかを我々は検討することにした。純粋なグラフェンシートは、直接超音波処理または液相製造プロセスを使用して製造された。
【0153】
典型的な手順において、約20μm以下のサイズに粉砕された5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(DuPontのZonyl(登録商標)FSO、分散助剤0.1重量%を含む)中に分散させて懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450ウルトラソニケーター)を15分~2時間にわたってグラフェンシートの剥離、分離、および粉砕のために使用した。得られたグラフェンシートは、少しも酸化されておらず酸素を含まない比較的欠陥がない純粋なグラフェンである。他の非炭素元素は存在しない。
【0154】
様々な量(グラフェン材料に対して1重量%~30重量%)の化学的発泡剤(N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミンまたは4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)を純粋なグラフェンシートと界面活性剤とを含む懸濁液に加えた。次いで、懸濁液をドクターブレードを使用してガラス表面に対して流延して剪断応力を加え、グラフェンシート配向を誘導した。流延の直前に懸濁液に導入される物理的発泡剤として)CO2を使用して製造された試料を含めて、いくつかの試料を流延した。液体を除去した後、得られたグラフェンフィルムは、約10から100μmまで変動し得る厚さを有する。
【0155】
次いで、グラフェンフィルムを1~5時間の間80~1,500℃の初期(第1の)熱還元温度を伴う熱処理に供した。この第1の熱処理はグラフェンフォームを生成した。次いで、純粋なフォーム試料のいくつかを1,500~2,850℃の第2の温度に供して、フォーム壁内のグラフェンドメインがさらに改善され得る(再黒鉛化されてより秩序化されるまたはより高い結晶化度を有する)かどうか調べた。次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で含浸させた。
【0156】
実施例5:Niフォームテンプレート上のCVDグラフェンフォーム
手順は、公開文献:Chen,Z.et al.,「Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,」Nat.Mater.10,424-428(2011)に開示された手順から転用された。ニッケルフォーム、ニッケルの相互接続された3D骨格を有する多孔性構造体が、グラフェンフォームの成長のためのテンプレートとして選択された。簡単に言えば、周囲圧力下で1,000℃においてCH4を分解することによって炭素をニッケルフォーム中に導入し、次いで、グラフェンフィルムをニッケルフォームの表面上に堆積させた。ニッケルとグラフェンの間の熱膨脹率の差のために、波皺および皺がグラフェンフィルム上に形成された。グラフェンフォームを回収する(分離する)ために、Niフレームをエッチングにより除去しなければならない。高温の塩酸(またはFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチングにより除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面上に堆積させてニッケルエッチングの間にグラフェン網目構造が潰れないようにした。高温のアセトンによってPMMA層を慎重に除去した後、脆いグラフェンフォーム試料が得られた。PMMA支持体層の使用は、グラフェンフォームの自立フィルムを調製するために重要である。PMMA支持体層を使用しない場合、ひどく歪んだ変形したグラフェンフォーム試料のみが得られた。次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で含浸させた。
【0157】
実施例6:ピッチ系炭素フォームからの従来の黒鉛フォーム
ピッチ粉末、粒体、またはペレットをフォームの所望の最終形状を有するアルミニウム鋳型に置く。三菱ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に脱気し、次いで約300℃の温度に加熱した。この時点で、真空を窒素ブランケットに解放し、次いで1,000psiまでの圧力を適用した。次いで、システムの温度を800℃に上げた。これは、2℃/分の速度で行われた。温度を少なくとも15分間保持して浸漬を達成し、次いで炉の電源を切り、約2psi/分の速度で圧力を解放しながら約1.5℃/分の速度で室温に冷却した。最終フォーム温度は630℃および800℃であった。冷却サイクルの間に、圧力を大気条件まで徐々に解放した。次いで、フォームを窒素ブランケット下で1050℃に熱処理し(炭化)、次いで別個の送りでアルゴン中黒鉛るつぼ内で2500℃および2800℃まで加熱処理(黒鉛化)した。次いで、グラフェンフォーム試料の一部を少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で含浸させた。
【0158】
いくつかのフォーム試料を、金属に含浸させることなく、熱伝導率を測定するための試料に機械加工した。バルク熱伝導率は、67W/mK~151W/mKの範囲であった。試料の密度は0.31~0.61g/cm3であった。重量が考慮されるとき、ピッチ由来のフォームの特定の熱伝導率は、約67/0.31=216および151/0.61=247.5W/mK/比重(または/物理的密度)である。
【0159】
0.51g/cm3の平均密度を有する試料の圧縮強さは測定すると3.6M
Paであり、圧縮弾性率は測定すると74MPaであった。それと対照して、同等の物理的密度を有するGOに由来する本発明のグラフェンフォーム試料の圧縮強さおよび圧縮弾性率はそれぞれ5.7MPaおよび103MPaである。
【0160】
図4(A)および
図5(A)に示されるのは、GO懸濁液由来のフォーム、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォーム、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォームの熱伝導率の値対比重である。これらのデータは、明らかに以下の予想外の結果を実証する:
1)本発明のプロセスによって製造されたGO由来のグラフェンフォームは、同じ物理的密度の場合、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォームおよびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンの両方と比較したとき著しく高い熱伝導率を示す。電池の動作中に発生する熱を効果的に放熱するためには、高い熱伝導率が不可欠であり、熱暴走または爆発の可能性を低減する。
2)CVDグラフェンは、決して酸化を受けず、グラフェン酸化物(GO)と比較してもっと高い熱伝導率を示した本質的に純粋なグラフェンであるという考えを考慮して、GO由来のグラフェンフォームのこの高い熱伝導率は、全く驚くべきことである。従来の熱還元または化学還元の方法によって酸素含有官能基が除去された後でもGOは非常に欠陥がある(高い欠陥群、したがって、低い伝導率を有する)ことが知られている。ここにおいて製造されたGO由来のグラフェンフォームを使用して観察されたこれらの非常に高い熱伝導率の値は、我々には非常に驚くべきものである。
3)
図5(A)は、曲線(異なるセグメントにおいてほぼ直線)の傾きに基づいて全ての3つの黒鉛フォーム材料について比導電率(導電率の値、W/mKを物理的密度の値、g/cm
3で割った値)の計算を可能にする比重の値の同等の範囲にわたる熱伝導率の値を示す。これらの比導電率の値は、それぞれのフォームにおいて同じ量の固体黒鉛材料の場合、これらの3つのタイプの黒鉛フォームの熱伝導率の値の公正な比較を可能にする。これらのデータは、フォーム材料の固体部分の固有導電率の指標を提供する。これらのデータは、同じ量の固体材料の場合、本発明のGO由来のフォームは、本質的に最も伝導性であり、高レベルの黒鉛結晶の完全性(より大きな結晶寸法、より少ない粒界およびその他の欠陥、より良い結晶配向等)を反映することを明らかに示している。これもまた予想外である。
4)本発明のGO由来のおよびGF由来のフォームの比導電率の値は、単位比重当たり250~500W/mKの値を示すが、他の2つのフォーム材料の比導電率の値は、典型的には単位比重当たり250W/mKよりも低い。
【0161】
図7に要約されるのは、一連のGO由来のグラフェンフォームおよび一連の純粋なグラフェン由来のフォームの熱伝導率のデータであり、両方とも最終(最高)熱処理温度についてプロットされる。これらのデータは、GOフォームの熱伝導率は最終熱処理温度(HTT)に非常に影響されやすいことを示す。HTTが非常に低いときでも、明らかにいくつかのタイプのグラフェンの同化または結晶完全性反応がすでに活性化されている。熱伝導率は最終HTTと共に単調に増加する。対照的に、約2,500℃の最終HTTが達せられるまで、純粋なグラフェンフォームの熱伝導率が比較的一定のままであり、黒鉛結晶の再結晶化の開始および完全性の信号を送る。比較的低いHTTにおいてグラフェンシートの化学連結を可能にする、GO中の-COOHなどの官能基は純粋なグラフェン中に存在しない。1,250℃もの低いHTTの場合、GOシートが同化して、粒界およびその他の欠陥が低減された著しくより大きなグラフェンシートを形成することができる。GOシートは純粋なグラフェンよりも本質的に欠陥があるけれども、本発明のプロセスは、GOシートが純粋なグラフェンフォームよりも優れているグラフェンフォームを形成することを可能にする。これは別の予想外の結果である。
【0162】
次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で電気化学的に含浸させた。
【0163】
実施例7:天然黒鉛からのグラフェン酸化物(GO)懸濁液の調製、およびその後のGOフォームの調製
黒鉛酸化物は、黒鉛フレークを4:1:0.05の比の硫酸、硝酸ナトリウム、および過マンガン酸カリウムからなる酸化剤液体で30℃で酸化することによって調製された。天然黒鉛フレーク(14μmの粒径)が48時間にわたって酸化剤混合物液体中に浸漬および分散されるとき、懸濁液またはスラリーは光学的に不透明で暗く見え、そのまま留まっている。48時間後に、反応塊を水で3回洗浄してpH価を少なくとも3.0に調節した。次いで、最終的な量の水を加えて一連のGO-水懸濁液を調製した。GOシートが>3%および典型的には5%~15%の重量分率を占めるとき、GOシートが液晶相を形成することを我々は観察した。
【0164】
スラリーコーターにてGO懸濁液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に分配およびコートし、液体媒体をコートされたフィルムから除去することによって、乾燥されたグラフェン酸化物の薄いフィルムが得られた。次いで、いくつかのGOフィルム試料を異なる熱処理に供し、それらは、典型的には、1~10時間の間100℃~500℃の第1の温度、および0.5~5時間の間1,500℃~2,850℃の第2の温度の熱還元処理を含む。また、圧縮応力下で、これらの熱処理によって、GOフィルムをグラフェンフォームに変換させた。次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で電気化学的に含浸させた。
【0165】
実施例8:熱水還元グラフェン酸化物からのグラフェンフォーム
比較のために、自己組織化グラフェンヒドロゲル(SGH)試料を一段階熱水法によって調製した。典型的な手順において、SGHは、12時間にわたって180℃のテフロン内張りオートクレーブ内に封止された2mg/mLの均質なグラフェン酸化物(GO)水性分散体を加熱することによって容易に調製することができる。約2.6%(重量による)のグラフェンシートと97.4%の水を含むSGHは、約5×10-3S/cmの電気導電率を有する。乾燥させて1,500℃で熱処理したとき、得られたグラフェンフォームは約1.5×10-1S/cmの電気導電率を示し、それは同じ温度で熱処理することによって製造された本発明のグラフェンフォームの電気導電率の1/2未満である。
【0166】
次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で電気化学的に含浸させた。
【0167】
実施例9:還元グラフェン酸化物フォームのプラスチックビードテンプレート支援形成
マクロ多孔性気泡発生グラフェンフィルム(MGF)のための硬質テンプレート指示された秩序化組立体が調製された。単一分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)ラテックス球が硬質テンプレートとして使用された。実施例5において調製されたGO液晶は、PMMA球懸濁液と混合された。次いで、その後の真空濾過を実施してPMMA球とGOシートとの組立体を調製し、GOシートはPMMAビードの周りに巻き付けられた。複合フィルムをフィルターから剥離し、空気乾燥させ、800℃において「か焼」してPMMAテンプレートを除去し、同時にGOをRGOに熱還元した。灰色の自立PMMA/GOフィルムは「か焼」後に黒くなったが、グラフェンフィルムは多孔性のままだった。
【0168】
次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で電気化学的に含浸させた。
【0169】
図4(B)および
図5(B)は、本発明のGO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードテンプレート支援プロセスによって製造されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの熱伝導率の値を示す。最も驚くべきことに、同じ出発GOシートの場合、本発明のプロセスは、最も高性能のグラフェンフォームを製造する。また、
図4(C)に要約された電気導電率データは、この結論と一致している。同じ量の固体材料の場合、(応力誘起配向を有する)本発明のGO懸濁液の堆積およびその後の熱処理は、本質的に最も伝導性であり、最も高レベルの黒鉛結晶完全性(細孔壁に沿って、より大きな結晶寸法、より少ない粒界およびその他の欠陥、より良い結晶配向等)を反映するグラフェンフォームを生じるという考えをこれらのデータはさらに支持する。
【0170】
黒鉛フォームまたはグラフェンフォームを製造するための全ての先行技術のプロセスは、約0.2~0.6g/cm3の範囲の物理密度を有するマクロ多孔性フォームを与えるように見え、細孔サイズは、意図される用途のほとんどにおいて典型的には大き過ぎる(例えば、20から300μm)ことを指摘することは重要である。対照的に、本発明は、0.01g/cm3もの低くかつ1.7g/cm3もの高くあり得る密度を有するグラフェンフォームを生成するプロセスを提供する。細孔サイズは、非炭素元素の含有量および使用される発泡剤の量/タイプに応じてメソスケール(2~50nm)~マクロスケール(1~500μm)まで変動し得る。様々なタイプのグラフェンフォームを設計する際のこのレベルの適応性および汎用性は、先行技術のプロセスによってはまったく前例がなく無比である。
【0171】
実施例10:グラフェンフッ化物からのグラフェンフォームの調製
GFを製造するためにいくつかのプロセスが使用されたが、本明細書において実施例としてただ1つのプロセスが説明される。典型的な手順において、高度剥離黒鉛(HEG)は、インターカレートされた化合物С2F・xClF3から調製された。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化高度剥離黒鉛(FHEG)を生成した。予備冷却されたテフロン反応器に20~30mLの液体予備冷却ClF3を入れ、反応器を閉じて、液体窒素温度に冷却した。次いで、1g以下のHEGをClF3ガスが入っていく孔を有する容器内に置き、反応器内に配置した。7~10日で、近似式C2Fを有する灰色-ベージュ色の生成物が形成された。
【0172】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶剤(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、イソアミルアルコール)と混合し、30分間にわたって超音波処理(280W)に供し、均質な黄色がかった分散体を形成した。5分の音波処理は比較的均質な分散体を得るために十分であったが、より長い音波処理時間はより良い安定性を確実にした。溶剤を除去したガラス表面に対して流延したとき、分散体はガラス表面上に形成された茶色がかったフィルムになった。GFフィルムが熱処理されたとき、フッ素が、フィルム中に細孔を生成するのに役立つガスとして放出された。いくつかの試料において、物理的発泡剤(N2ガス)が、流延される間に湿潤GFフィルム中に注入された。これらの試料は、ずっと高い細孔体積またはずっと低いフォーム密度を示す。発泡剤を使用しなければ、得られたグラフェンフッ化物フォームは、0.35~1.38g/cm3の物理的密度を示す。発泡剤が使用されるとき(0.5/1~0.05/1の発泡剤/GF重量比)、0.02~0.35g/cm3の密度が得られた。典型的なフッ素含有量は、必要とされる最終熱処理温度に応じて、0.001%(HTT=2,500℃)~4.7%(HTT=350℃)である。
【0173】
図6は、比重の関数としてGOおよびGF(グラフェンフッ化物)それぞれから得られるグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値の比較を示す。GOフォームと比較して、GFフォームは、同等の比重の値においてより高い熱伝導率の値を示すと思われる。両方とも、すばらしい熱伝導能力を与え、全ての公知の発泡材料の中で最良である。
【0174】
実施11:窒素化グラフェンからのグラフェンフォームの調製
実施例2において合成されたグラフェン酸化物(GO)を異なる比率の尿素と共に微粉砕し、ペレット化された混合物をマイクロ波反応器(900W)内で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法において、グラフェン酸化物は、同時に窒素で還元およびドープされる。1:0.5、1:1および1:2のグラフェン:尿素の質量比によって得られた生成物は、それぞれNGO-1、NGO-2およびNGO-3と呼ばれ、これらの試料の窒素含有量は、それぞれ元素分析によって確認される14.7、18.2および17.5wt%であった。これらの窒素化グラフェンシートは、水中に分散可能なままである。次いで、得られた懸濁液を流延し、乾燥させ、初期に第1の熱処理温度として200~350℃で熱処理し、その後1,500℃の第2の温度で処理した。得られた窒素化グラフェンフォームは、0.45~1.28g/cm3の物理的密度を示す。フォームの典型的な窒素含有量は、必要とされる最終熱処理温度に応じて0.01%(HTT=1,500℃)~5.3%(HTT=350℃)である。次いで、グラフェンフォームを少量のリチウムまたはナトリウム吸着金属(0.1重量%~35重量%のMg、Zn、Na、K、LiおよびSn)で電気化学的に含浸させた。
【0175】
実施例12:様々なグラフェンフォームおよび従来の黒鉛フォームの特性評価
いくつかの乾燥されたGO層、および熱処理の異なる段階の熱処理フィルムの内部構造(結晶構造および配向)がX線回折を使用して調べられた。天然黒鉛のX線回折曲線は、典型的には約2θ=26°のピークを示し、約0.3345nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。酸化したとき、得られたGOは、約2θ=12°のX線回折ピークを示し、それは約0.7nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。150℃での或る熱処理によって、乾燥されたGO成形体は、22°を中心とするハンプの形成を示し、化学連結および秩序化プロセスの開始のためにグラフェン間の間隔を減少させるプロセスをそれが開始したことを示す。1時間にわたる2,500℃の熱処理温度によって、d002間隔は、黒鉛単結晶の0.3354nmに近い、約0.336に減少した。
【0176】
1時間にわたる熱処理温度2,750℃で、d002間隔は、黒鉛単結晶のd002間隔に等しい、約0.3354nmに減少する。さらに、高強度を有する第2の回折ピークは、(004)面からのX線回折に相当する2θ=55°に出現する。同じ回折曲線上の(002)強度に対する(004)ピーク強度、またはI(004)/I(002)比は、グラフェン面の結晶完成度および好ましい配向の良い表示である。2,800℃よりも低い温度で熱処理された全ての黒鉛材料について(004)ピークは存在していないかまたは比較的弱いかどちらかであり、I(004)/I(002)比<0.1である。3,000~3,250℃で熱処理された黒鉛材料(例えば、高度配向熱分解黒鉛、HOPG)のI(004)/I(002)比は、0.2~0.5の範囲である。対照的に、1時間にわたって2,750℃の最終HTTで調製されたグラフェンフォームは、0.78のI(004)/I(002)比および0.21のモザイクスプレッド値を示し、良い程度の好ましい配向を有するほぼ完全なグラフェン単結晶を示す。
【0177】
「モザイクスプレッド」値は、X線回折強度曲線の(002)反射の半値全幅から得られる。秩序化度のためのこの指標は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェンフォームのいくつかは、2,500℃以上の最終熱処理温度を使用して製造されるときに0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する。
【0178】
広い温度範囲にわたって様々な温度で熱処理することによって得られた、GO懸濁液由来の試料の両方のグラフェン間の間隔の値が
図8(A)に要約される。GO懸濁液由来の単体グラフェン層の相当する酸素含有量の値が
図8(B)に示される。
【0179】
500℃もの低い熱処理温度は細孔壁に沿うGOシートの平均グラフェン間間隔を0.4nm未満にするのに十分であり、天然黒鉛の平均グラフェン間間隔または黒鉛単結晶の平均グラフェン間間隔にますます近づいていることを指摘することは重要である。この方法の長所は、このGO懸濁液法によって、本来異なる黒鉛粒子またはグラフェンシートからの平面グラフェン酸化物分子を再組織化、再配向、および化学的に同化して、全てのグラフェン面がいまや横方向寸法においてより大きい(元の黒鉛粒子のグラフェン面の長さおよび幅よりも著しく大きい)統合された構造を形成できたということである。可能性のある化学連結機構が
図3に示される。これは、並外れた熱伝導率および電気導電率の値をもたらした。
【0180】
実施例13:グラフェン-金属フォームの調整に関するさらなる例
いくつかの手順を用いて、グラフェンフォームの細孔に金属を含浸させることができる:電気化学堆積またはめっき、パルス出力堆積、電気泳動堆積、無電解めっきまたは堆積、金属溶融含浸(ZnおよびSnなどの、低融点金属にとってより便利)、金属前駆体含浸(金属前駆体の含浸に続いて前駆体の金属への化学的または熱的変換)物理気相堆積、物理気相浸透、化学気相堆積、化学気相浸透、およびスパッタリング。
【0181】
例えば、精製した硫酸亜鉛(ZnSO4)はZnへの前駆体であり、硫酸亜鉛を溶液含浸によって細孔に含浸させ、次いで電気分解によりZnに変換することができる。この手順では、硫酸亜鉛溶液を、鉛アノードとグラフェンフォームカソードを含むタンクで電解質として使用した。電流はアノードとカソードの間を通され、金属亜鉛が還元反応によってカソードに対してメッキされる。
【0182】
純粋な金属Cuは、CTAB水溶液中でヒドラジンで塩化第二銅を還元することによって合成された(グラフェンフォームの細孔の内部で)。蓋をした反応チャンバ内で溶液のpHを10まで調整するためのアンモニア溶液の使用、および還元剤としてヒドラジンの使用は、純粋なCuの合成にとって重要であった。反応溶液は、最終的にワインレッドの色になり、そのUV/可視吸収スペクトルは、574nmに吸収帯を示し、金属Cuの生成を示した。
【0183】
また、Cuの浸透は、[Cu(OOCC2F5)(L)]、L=ビニルトリメチルシランまたはビニルトリエチルシランを前駆物質として400~700℃の温度で使用する化学気相成長法によって達成された。前駆Cu錯体は、標準的なシュレンク法(Schlenk technique)を用いてアルゴン雰囲気下で実施した。
【0184】
より高い融点の金属の例として、前駆体の浸透および化学的変換を用いて金属の含浸を得ることができる。例えば、ニッケロセンの水素化分解は、超臨界二酸化炭素中の低温(70℃未満)での自己触媒プロセスによって起き、比較的均一に分散したNi金属フィルムまたは粒子をグラフェンフォームの細孔において生成することができる。前駆体としてニッケロセン(NiCp2)を用い、還元剤として水素を用いた。高純度の二酸化炭素および高純度の水素を、さらに精製することなく使用した。実験は高圧反応器(オートクレーブ)中で行った。
【0185】
典型的な実験では、70~90mgのNiCp2を高圧反応器に充填した。前駆体の充填後、低圧の新鮮な二酸化炭素を用いて、反応器から空気をパージするために、70℃で10分間システムをパージした。パージ後、高圧の二酸化炭素を高圧シリンジポンプを介して反応器に供給した。超臨界(sc)二酸化炭素溶液の温度は、溶解条件(T=70℃、P=17MPa)で4時間加熱テープにより安定化され、均一な溶液を形成した。NiCp2の溶解中、水素は、60℃で3.5MPaの圧力で、別のきれいな空気のない高圧マニホルド容器に供給された。次いで、高圧シリンジポンプを用いて、34.5MPaの圧力まで新鮮な二酸化炭素を容器にさらに充填した。この水素/sc二酸化炭素溶液は、高圧反応器に注入する前にこの状態で2時間を超えて安定に保持した。水素/sc二酸化炭素の注入時に、容器内の圧力は、34.5から13MPaに低下し、反応器に供給される水素の量を定量することができた。水素注入プロセスを繰り返して、反応器システム中のニッケロセンに対して50~100モル過剰の水素を得た。水素を添加すると、NiCp2を含むsc二酸化炭素溶液は緑色を維持し、反応系を70℃、17MPaで7~8時間静置した。7~8時間後、黒鉛フィルムの細孔内に実質的なNiフィルムの堆積を得た。
【0186】
我々は、溶融状態のZn(融点=419.5℃)およびSn(MP=231.9℃)が、GO層を熱処理することによって調製された多孔性グラフェンフォームの細孔または隙間(グラフェンシート間または分子間)に容易に浸透することを見出した。
【0187】
実施例14:様々なリチウム金属およびナトリウム金属セルの評価
従来のセルにおいて、電極(カソード)は典型的に、85%の電極活物質(例えばMoS2、V2O5無機ナノディスク等々)、5%のSuper-P(アセチレンブラック系導電性添加剤)、および10%のPTFEから構成され、それらは混合されてAl箔上にコートされた。電極の厚さは約50~150μmである。リチウム金属電池およびナトリウム金属電池を製造するために、多種多様なカソード活物質が実施された。
【0188】
各々の試料のために、コインサイズおよびパウチセルの両方をグローブボックス内で組み立てた。充電貯蔵容量はArbin SCTS電気化学試験装置を使用して定電流実験で測定された。サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学インピーダンス分光法(EIS)は電気化学ワークステーション(CHI 660 System、USA)で実施された。
【0189】
それぞれの試料について、いくつかの電流密度(充電/放電率を表わす)を課して電気化学応答を決定し、ラゴーンプロット(出力密度対エネルギー密度)の構成の必要とされるエネルギー密度および出力密度値の計算を可能にした。
【0190】
図9(A)に示すのは、2組のリチウム金属セルのラゴーンプロット(質量密度対エネルギー密度)である:(a)リチウム箔と物理的に接触している窒素ドープトグラフェン-金属(Zn)ハイブリッドフォームをアノード活物質として含む第1のセル、(b)リチウム吸着金属(Zn)を含まない第2のセル。これらのプロットは、これら2つのセルのエネルギー密度および出力密度の範囲が同等であることを示している。しかしながら、30回の充放電サイクル後に採取されたセル試料のSEM試験は、リチウム吸着金属を含む試料が、フォーム構造体の細孔の内部に閉じ込められ、リチウムデンドライトを形成する傾向を有しない、充電中にカソードから戻ってくる全てのリチウムイオンを本質的に有することを示している。対照的に、リチウム吸着金属を含まないセルにおいては、リチウム金属は、グラフェンフォームの外表面にあまり均一でない様式で再めっきされる傾向がある。さらに驚くべきことに、
図9(B)に示すように、窒素ドープトグラフェン-金属(Zn)ハイブリッドフォームを含むセルは、より安定したサイクル挙動を示す。
【0191】
2つのナトリウム金属セルの電池セル容量減衰曲線が
図10に示される。1つのセルは、純粋なグラフェン-金属(Mg)フォームと、アノード活物質としてNa箔のシートと、カソード活物質としてNaFePO
4を含む。比較のためにまた、純粋なグラフェンフォーム(但し、ナトリウム吸着金属は含まない)およびアノード活物質としてNa箔のシートを含むナトリウム金属セルについて調べた。グラフェン-炭素セルに存在するナトリウム吸着金属を有するセルは、著しくより安定したサイクル挙動を示す。
【0192】
結論として、我々は、デンドライトの問題を克服するために、リチウム金属電池またはナトリウム金属電池に使用できる、新しい、新規な、予想外の、そして明らかに異なったクラスの、導電性の高いグラフェン-金属ハイブリッドフォーム材料を良好に開発した。このクラスの新しい材料は、従来のリチウムイオンセルと比較してはるかに高いエネルギー密度を有するリチウム金属およびナトリウム金属電池を使用することを可能にした。