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  • 特許-印刷ヘッド調整装置 図1
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  • 特許-印刷ヘッド調整装置 図3b
  • 特許-印刷ヘッド調整装置 図3c
  • 特許-印刷ヘッド調整装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】印刷ヘッド調整装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019029111
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2019142224
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】18158032.5
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュラー
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-183903(JP,A)
【文献】特開2009-262540(JP,A)
【文献】特開2010-030221(JP,A)
【文献】特開2012-161961(JP,A)
【文献】特開2017-030166(JP,A)
【文献】特開2017-030167(JP,A)
【文献】特開2017-209814(JP,A)
【文献】特開2005-096203(JP,A)
【文献】特開2006-130830(JP,A)
【文献】特開2001-071535(JP,A)
【文献】特開2017-104984(JP,A)
【文献】特開2014-014972(JP,A)
【文献】特開平10-035021(JP,A)
【文献】特開平07-032592(JP,A)
【文献】特開平05-309877(JP,A)
【文献】米国特許第05374993(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷バー(2)の、第1の方向に一列に並んだ複数の印刷ヘッド(3)を調整する装置において、
複数のモータ(13)は、前記第1の方向に一列に配置されていて、かつ一緒に摺動可能に支持されており、
各々の前記モータ(13)は、第1の歯車(15)を支持しており、
各々の前記第1の歯車(15)は、前記第1の方向に一列に配置された、少なくとも2つの第2の歯車(11)それぞれと噛み合い可能であり、
前記少なくとも2つの前記第2の歯車(11)は、それぞれ1つのねじ部材(5,6)に配置されており、該ねじ部材(5,6)は、互いに平行に向けられており、
前記ねじ部材(5,6)は、それぞれ対応する前記印刷ヘッド(3)に螺合している
ことを特徴とする、印刷バー(2)の印刷ヘッド(3)を調整する装置。
【請求項2】
前記複数のモータ(13)は、1本のレール(12)に装着されており
記レール(12)は、前記第1の方向に摺動可能に支持されている
ことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記レール(12)を摺動させるための駆動装置(14)が設けられていることを特徴とする、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ねじ部材(5,6)は、楔形押圧部を形成する、それぞれ1つのテーパ部(7)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
少なくとも2つの前記第2の歯車(11)の回動角度位置を固定する多重係止部が設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ねじ部材(5,6)は、押圧部材(10)と協働して前記多重係止部を形成する凹部(9)を有することを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記多重係止部の前記凹部(9)の数は、少なくとも2つの前記第2の歯車(11)の歯数と一致することを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項8】
前記複数のモータ(13)により支持される各々の前記第1の歯車(15)は、少なくとも2つの前記第2の歯車(11)のそれぞれよりも大きい軸方向の噛み合い長さを有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記印刷ヘッド(3)は、インクジェット印刷ヘッドであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷バーの印刷ヘッドを調整する装置に関する。
【0002】
印刷バーは、頁幅の印刷に、たとえばインクジェット印刷に用いられる。通常、印刷バーは、相互に調整しなければならない一連の複数の印刷ヘッドを有する。
【0003】
独国特許出願公開第102016209945号明細書(DE 10 2016 209 945 A1)では、印刷バーおよび印刷ヘッドに対して異なる専門用語が用いられている。そこでは、印刷バーが印刷ヘッドと称されており、印刷ヘッドがモジュールと称されている。各々のモジュールは、モジュール同士を相対的に調整する調整装置を有し、キャリッジが設けられており、キャリッジは、これらのモジュールに向けて相前後して移動可能であり、かつ調整装置を作動させるための作動装置を有する。キャリッジを1つのモジュールから別のモジュールへ移動させるために、第1のモータが、キャリッジを駆動する駆動スピンドルを回動させる。各々のモジュールは、調整車が装着された調整スピンドルを有する。調整されるべきモジュールとの対向位置にキャリッジを移動させることにより、駆動車は、調整車と噛み合わされる。噛み合うと、駆動車は、調整車を駆動することが可能であり、これによりモジュールが調整される。その欠点は、すべてのモジュールの調整に必要である準備時間が長いことである。すべてのモジュールが相前後して単一の共通のキャリッジにより調整されるので、調整は総じて極めて長く掛かる。
【0004】
本発明の課題は、短い準備時間を実現可能にする調整装置を提供することである。
【0005】
この課題は、印刷バーの印刷ヘッドを調整する装置において、複数のモータが、一列に配置されていて、かつ一緒に摺動可能に支持されており、各々のモータは、歯車を支持しており、各々の歯車は、相前後して少なくとも2つの歯車それぞれと噛み合い可能であることを特徴とする、印刷バーの印刷ヘッドを調整する装置により解決される。
【0006】
本発明に係る装置の利点によれば、この装置により、複数の印刷ヘッドの、時間的に並行して行われる調整が可能である。これにより準備時間が削減される。
【0007】
様々な改良形態が実現可能である:
複数のモータが、1本のレールに装着されており、少なくとも2つの歯車は、歯車の1つの列を成して配置されており、レールは、歯車の列に対して相対的に平行に摺動可能に支持されている。
【0008】
レールを摺動させるための駆動装置を設けることが可能である。
【0009】
少なくとも2つの歯車を、それぞれ1つのねじ部材に配置することが可能であり、ねじ部材は、互いに平行に向けられている。
【0010】
ねじ部材は、楔形押圧部を形成するそれぞれ1つのテーパ部を有することが可能である。
【0011】
少なくとも2つの歯車の回動角度位置を固定するための多重係止部を設けることが可能である。
【0012】
この場合、ねじ部材は、凹部を有し、凹部は、押圧部材と協働して多重係止部を形成する。
【0013】
好適には、多重係止部の凹部の数は、少なくとも2つの歯車の歯数と一致させることが可能である。
【0014】
別の形態によれば、モータにより支持される各々の歯車は、少なくとも2つの歯車のそれぞれよりも大きい軸方向の噛み合い長さを有する。
【0015】
好適には、印刷ヘッドは、インクジェット印刷ヘッドである。
【0016】
改良形態は、以下の実施の形態の説明および付属の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】印刷機の全体を示す。
図2】調整装置を有する印刷機の印刷バーを側面図で示す。
図3a】調整装置の歯車の1つの相対位置を平面図で示す。
図3b】調整装置の歯車の1つの相対位置を平面図で示す。
図3c】調整装置の歯車の1つの相対位置を平面図で示す。
図4】調整装置の変化形態を示す。
【0018】
図1図4において、相互に対応する構成部材には、同一の符号を付してある。
【0019】
図1は、同一の構造の複数の印刷バー2を有する印刷機1を示している。各々の印刷バー2は、頁幅のインクジェットで、それぞれ別の色の印刷を行う。
【0020】
図2は、印刷バー2のうちの1つを例示している。印刷バー2は、1列に並んだ複数の印刷ヘッド3を有する。各々の印刷ヘッド3は、インキを吐出するノズルを有するノズルプレート4を具備する。各々の印刷ヘッド3には、第1のねじ部材5および第2のねじ部材6が対応付けられており、これにより印刷ヘッド3が、これに隣り合う印刷ヘッド3に対して相対的に調整される。各々のねじ部材5,6は、印刷ヘッド3のそれぞれ別の1つの自由度を調整する;たとえば第1のねじ部材5は、軸線z(印刷バー高さ軸線)まわりの回動を調整し、第2のねじ部材6は、軸線x(印刷バー縦軸線)に沿った並進移動を調整する。直交座標系の軸線y(印刷バー横軸線)は、被印刷物搬送方向と平行である。
【0021】
ねじ部材5,6は、同一の構造を有し、したがって第1のねじ部材5の詳細だけを説明する。ねじ部材5は、テーパ部7を有し、テーパ部7に印刷ヘッド3がキー8を介して当て付けられている。テーパ部7とキー8とが協働して楔形押圧部伝動装置を形成する。ねじ部材5がより深く螺入されると、テーパ部7が印刷ヘッド3を要求される方向に押す。ねじ部材5は、その周にわたって均等に分配された複数の凹部9の円環を有し、凹部9に、ばね弾性的な押圧部材10が係合する。凹部9は、多重係止部を形成する。押圧部材10がねじ部材5のあらゆる螺入深さで凹部9に係合することが可能であるように、凹部9は、ねじ部材5の回動軸線と平行に延在する溝として構成されている。
【0022】
さらに、ねじ部材5は、歯車11を有する。歯車11の歯数は、凹部9の数に一致する。これにより多重係止部は、ねじ部材5が、歩進的に回動するときに歯車11の歯の噛合い位置に対応する角度位置でしか止まらないことを保証する。歯車11は、ねじ部材5の胴部に装着することが可能である、またはねじ部材5にねじ頭部として一体的に成形することが可能である。代替的に、凹部9の円環が省かれる場合、歯車11と押圧部材10とが協働することにより多重係止部を形成することが可能であり、この場合、押圧部材10は、歯車11の歯溝に係合する。これは、省スペースである。
【0023】
横桁またはレール12に、複数のモータ13が、ねじ部材5,6の列と平行に延在する1つの列を成して取り付けられている。レール12は、ねじ部材5,6の列と平行の方向に、つまり軸線xと平行に、好ましくは駆動装置14、たとえば空圧シリンダにより摺動可能に支持されている。代替的に、駆動装置14が省かれる場合、レール12または一連のモータ13は、軸線xと平行に手動により摺動可能であってよい。各々のモータ13は、それぞれ別の印刷ヘッド3の2つのねじ部材5,6を駆動するために用いられる。つまり印刷ヘッド3ごとの好適には単一のモータ13により、印刷ヘッド3は、2つの自由度に関して調整される。
【0024】
モータ13の軸に歯車15および係止円盤16が装着されており、係止円盤16の凹部にばね弾性的な押圧部材17が係合する。係止円盤16と押圧部材17とが協働して多重係止部を形成する。歯車15の歯数は、係止円盤16の凹部の数に相当する。代替的に、係止円盤16が省かれる場合、多重係止部は、歯車15と押圧部材17とが協働することにより形成することが可能であり、この場合、押圧部材17は、歯車15の歯溝に係合する。これは、省スペースである。多重係止部は、正確な噛合いのためにモータ13の回動位置が検出されて制御されるときには完全に省くことが可能である。
【0025】
歯車15の噛み合い長さが延長されているので、ねじ部材5の螺入時に、駆動されるべき歯車11の軸方向の動きにかかわらず、歯車11は、歯車15に係合しなくなることがない。要するに好ましくは、歯車15は、スプライン軸として構成されている。代替的に、歯車15の噛み合い長さが通常の場合、歯車11をスプライン軸として構成してよい。歯車15の回動軸線は、ねじ部材5,6の歯車11の回動軸線と平行に向けられている。歯車11,15は、真っ直ぐな噛み合い部を有する平歯車である。
【0026】
図3a~図3cには、ねじ部材5,6の歯車11に対して相対的な歯車15の様々な位置が示されており、これらの位置は、レール12の摺動により調整される。印刷バー2および調整装置のすべての歯車11,15の回動軸線または中心点は、共通の1本の直線上に位置する。モータ歯車15の直径がねじの歯車11の直径よりも小さい(図3a~図3cのように)または大きいまたはこれらが同じ大きさである(図2のように)かどうかは重要ではない。
【0027】
図3aは、歯車15の中央の中立位置を示している。中立位置では、歯車15と、これに隣り合う両方の歯車11との間にそれぞれ十分な空気または隙間が設けられており、これにより印刷バー2に印刷ヘッド3を挿着するとき、印刷ヘッド3を、歯車11に関する衝突のおそれなく取り扱うことが可能である。中立位置では、歯車15は、歯車11と噛み合わず、ねじ部材5,6および歯車15の多重係止部により、歯車15が、両方のねじ部材5,6の歯車11に関して噛合い準備された隙間-歯-回動角度位置にある。
【0028】
図3bは、歯車15がねじ部材6の歯車11と噛み合う位置に右方へ摺動された状態を示しており、図3cは、これとは逆の、歯車15が別のねじ部材5の歯車11と噛み合う位置に左方へ摺動された状態を示しており、この場合、これらの両方の位置においてモータ13はそれぞれねじ部材5または6を駆動する。歯車15とともにモータ13が摺動されることにより、歯車15は、半径方向に相前後して両方の歯車11と噛み合わされる。
【0029】
モータ13は、並列動作で作動し、これによりすべての印刷ヘッド3はまず1つの自由度に関して調整され、その後で別の1つの自由度に関して調整される。この場合、モータ13は、たとえば1つの印刷ヘッド3を軸線xに関して別の1つの印刷ヘッド3とは異なる程度だけ調整しなければならない場合、個別に制御することが可能である。
【0030】
図4は、1つまたは複数の印刷ヘッド3の3つ以上の歯車11が、1つの歯車15を有する共通の1つのモータにより相前後して駆動される変化形態を示している。この変化形態では、歯車15は、レールにより、歯車11の共通の1本の接線と平行に延在する線Lに沿って位置調整される。歯車15が線Lに沿って一の歯車11から他の歯車11へ向けて移動するとき、歯車15は回動する。これらの歯車11の回動軸線の間の間隔aが歯車11の歯の間隔の数倍に相当するとき、歯車15は、仮想のラック上を転動するかのように動く。間隔aが前述の数倍ではない場合、歯車15は、その全体の並進移動中に回転するのではなく、歯車11の噛み合い部の領域においてのみ回転し、これに従って歯車15のモータが制御される。
【符号の説明】
【0031】
1 印刷機
2 印刷バー
3 印刷ヘッド
4 ノズルプレート
5 第1のねじ部材
6 第2のねじ部材
7 テーパ部
8 キー
9 凹部
10 押圧部材
11 歯車
12 レール
13 モータ
14 駆動装置
15 歯車
17 押圧部材
a 間隔
L 線
x 軸線
y 軸線
z 軸線
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4