IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許7206139補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー
<>
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図1
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図2
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図3
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図4
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図5
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図6
  • 特許-補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】補償継手およびこのような補償継手を備えた印刷バー
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019052745
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2019166833
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】18163049.2
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハート ヴォルフ
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011015642(DE,A1)
【文献】特開2015-107656(JP,A)
【文献】特開平10-035021(JP,A)
【文献】特開2010-030221(JP,A)
【文献】特開2012-161961(JP,A)
【文献】特開2017-030166(JP,A)
【文献】特開2017-030167(JP,A)
【文献】特開2017-209814(JP,A)
【文献】特開2005-096203(JP,A)
【文献】特開2006-130830(JP,A)
【文献】特開2001-071535(JP,A)
【文献】特開2017-104984(JP,A)
【文献】特開2014-014972(JP,A)
【文献】特開2008-183903(JP,A)
【文献】特開2009-262540(JP,A)
【文献】特開平07-032592(JP,A)
【文献】特開平05-309877(JP,A)
【文献】米国特許第05374993(US,A)
【文献】米国特許第05000721(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
F16D 13/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット用の印刷バー(13)であって、一連の印刷ヘッド(9)と、前記印刷ヘッド(9)同士を互いに位置調整する位置調整装置(10)とを有し、前記位置調整装置(10)は、少なくとも1つのねじ(11)と、前記ねじ(11)を回転させる少なくとも1つの軸(12)とをそれぞれ有する、印刷バー(13)において、
前記ねじ(11)と前記軸(12)とは、補償継手(3)を介して互いに結合されており、
前記補償継手(3)は、弾性変形のもと互いに内外で差し合わせ可能である第1の継手半体(1)と第2の継手半体(2)とを有し、
前記第1の継手半体(1)は、前記軸(12)に配置され、前記第2の継手半体(2)は、前記ねじ(11)に配置され、
前記第1の継手半体(1)は複数のばね爪(4)を有し、前記第2の継手半体(2)は歯列(5)を有し、前記ばね爪(4)は、前記歯列(5)と異なるピッチを有することを特徴とする、印刷バー(13)。
【請求項2】
前記ねじ(11)に第2の継手半体(2)が配置されており、前記軸(12)に第1の継手半体(1)が配置されていることを特徴とする、請求項記載の印刷バー。
【請求項3】
前記軸(12)はモータ(M)のモータ軸であることを特徴とする、請求項または記載の印刷バー。
【請求項4】
前記第1の継手半体(1)はホイールとして形成されており、前記ばね爪(4)は半径方向でばね弾性的に動くことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷バー。
【請求項5】
前記第2の継手半体(2)は星形体として形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の印刷バー。
【請求項6】
前記歯列(5)は、軸線方向での補償用の規定された長さ(L)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の印刷バー。
【請求項7】
前記ばね爪(4)はトルクを伝達し、前記継手半体(1,2)の回転軸線(A1,A2)同士の間の軸線角に関する整合偏差を補償しかつ/または半径方向での軸線食い違いを補償することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の印刷バー。
【請求項8】
前記歯列(5)の歯(7)の個数が、前記ばね爪(4)の個数よりも多いことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の印刷バー。
【請求項9】
前記継手半体(1,2)同士の内外での差し合わせ時に、前記複数のばね爪(4)のうち、一部は前記歯列(5)の溝(8)内に係合しており、残りの部分は係合していないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の印刷バー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形のもと互いに内外で差し合わせ可能である第1の継手半体と第2の継手半体とを有する補償継手に関する。
【0002】
独国特許第3843825号明細書(DE 38 43 825 C1)には、リンク機構およびジョイント軸用の前後左右に可動のジョイントが記載されている。このジョイントは、弾性変形可能なプラスチック製の同形に形成された2つの部材から成っている。同形に形成された両継手要素は、90°角度をずらした状態でばね弾性変形のもと互いに内外で差し合わせ可能である。このジョイントは、特にリンク機構またはこれに類する機構が、傾倒運動の補償のために、前後左右に可動のジョイントを必要とする場合には、このようなリンク機構に急速継手としても使用可能である。ジョイントは、特に印刷機に使用可能である。
【0003】
このことに関して、90°角度をずらすことによって、両継手要素の互いに内外での差し合わせが、ほんの僅かな角度位置でしか互いに相対的に可能とならないことは不利である。
【0004】
したがって、先行技術の継手は、極めて多くの異なる角度位置において互いに相対的に接続可能でなければならない構成部材を含む位置調整装置を有する印刷バーを備えたデジタル印刷機への使用には適していない。これらの構成部材は、例えば、ねじと、このねじを回転させるための軸であってよい。
【0005】
本発明の課題は、複数の角度位置において互いに相対的に接続可能である継手半体を有する補償継手を提供することである。さらに、課題は、このような補償継手を備えた印刷バーを提供することである。
【0006】
この課題は,請求項1の特徴を有する補償継手および請求項8の特徴を有する印刷バーによって解決される。
【0007】
弾性変形のもと互いに内外で差し合わせ可能である第1の継手半体と第2の継手半体とを有する本発明に係る補償継手は、第1の継手半体が複数のばね爪を有しており、第2の継手半体が歯列を有しており、ばね爪が、歯列と異なるピッチを有していることを特徴としている。
【0008】
本発明の付加的な利点は、補償継手における遊びが最小限に抑えられていることである。
【0009】
本発明に係る補償継手の種々異なる改良が可能である:
第1の継手半体がホイールとして形成されていてよく、ばね爪が半径方向でばね弾性的に動いてよい。
第2の継手半体は星形体として形成されていてよい。
歯列は、軸線方向での補償用の規定された長さを有していてよい。
ばね爪はトルクを伝達し、継手半体の回転軸線同士の間の軸線角に関する整合誤差または整合偏差を補償しかつ/または半径方向での軸線食い違いを補償するようになっていてよい。
歯列の歯の個数は、ばね爪の個数よりも多くてよい。
継手半体同士の内外での差し合わせ時に、複数のばね爪のうちの一部は歯列の溝内に係合していてよく、残りの部分は歯列の溝内に係合していなくてよい。
【0010】
インクジェット用の本発明に係る印刷バーであって、一連の印刷ヘッドと、これらの印刷ヘッド同士を互いに位置調整するための位置調整装置とを有しており、この位置調整装置は、少なくとも1つのねじと、このねじを回転させるための少なくとも1つの軸とをそれぞれ有する本発明に係る印刷バーは、ねじと軸とが本発明に係る補償継手または本発明の改良形態に相当する補償継手を介して互いに結合されていることを特徴としている。つまり、本発明に係る印刷バーの補償継手は、弾性変形のもと互いに内外で差し合わせ可能である第1の継手半体と第2の継手半体とを有しており、第1の継手半体は複数のばね爪を有しており、第2の継手半体は歯列を有しており、ばね爪は、歯列と異なるピッチを有している。
【0011】
本発明に係る印刷バーの種々異なる改良が可能である:
第2の継手半体はねじに配置されていてよく、第1の継手半体は軸に配置されていてよい。
軸はモータのモータ軸であってよい。
【0012】
本発明の改良形態は、以下の複数の実施例の説明および対応する図面からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】印刷バーを備えたデジタル印刷機の全体図である。
図2】補償継手を備えた印刷バーの位置調整装置の詳細図である。
図3図2に示した補償継手の第1の継手半体の側面図である。
図4図3に示した第1の継手半体の平面図である。
図5図2に示した補償継手の第1の継手半体の種々異なる変化形態と第2の継手半体との平面図である。
図6図2に示した補償継手の第1の継手半体の種々異なる変化形態と第2の継手半体との平面図である。
図7図2に示した補償継手の第1の継手半体の種々異なる変化形態と第2の継手半体との平面図である。
【0014】
図1図7では、互いに対応する構成部材および要素に同一の符号が付してある。
【0015】
図1には、シートをフィーダから複数の胴によって複数のステーションを介してデリバリへと搬送するデジタル印刷機が示してある。1つのステーションは、インクジェットによりページ幅にわたって多色印刷を行うために、複数の同形構造の印刷バー13を有している。各印刷バー13は、異なるカラーを印刷する。
【0016】
各印刷バー13は、シートの幅にわたって延在する一連の印刷ヘッド9を支持している(図2参照)。これらの印刷ヘッド9は、インクを吐出するノズル(図示せず)を備えている。各印刷ヘッド9には、ストッパ15とばね16とを備えた位置調整装置10が割り当てられている。この位置調整装置10は、印刷ヘッド9同士を互いに相対的に移動させるために用いられる。このことは、図示の例では、印刷バー13に沿って線形に行われる。しかしながら、別の調整方向、例えばシート搬送方向も可能であるし、別の調整運動形態、例えば旋回運動も可能である。
【0017】
図2には、複数の印刷ヘッド9のうちの1つと、複数の位置調整装置10のうちの1つとが示してある。ストッパ15は、フレーム17に取り付けられた電動式のモータMに補償継手3を介して連結されている。このモータMは、好ましくはステッピングモータである。印刷ヘッド9は、ストッパ15に接触するホルダ18によって支持される。しかしながら、印刷ヘッド9自体がストッパ15に直接接触することも可能である。このストッパ15は、円錐部として形成されていて、ねじ11の一部を成している。このねじ11は、調整軸または円錐軸と呼ぶこともできる。
【0018】
ねじ11は、ストッパ15のほかに、別の部分、つまり、滑り支持部としての複数の嵌合部19と、雄ねじ山20とを有している。ストッパ15は嵌合部19同士の間に位置している。この嵌合部19は1つまたは複数の構成部材21内に滑り嵌めされている。この構成部材21は、雄ねじ山20が螺入された雌ねじ山22を有している。ねじ11と構成部材21とはともに、ストッパ15を方向xに並進移動させるためのねじ伝動装置を形成している。方向xは、ねじ11の回転軸線に対応している。
【0019】
印刷ヘッド9またはそのホルダ18はストッパ15とともに、方向xへのストッパ15の運動を、方向xに対して垂直である方向yへの印刷ヘッド9の運動に変換する楔伝動装置を形成している。図2に相応して、下方へのストッパ15の移動によって、このストッパ15が印刷ヘッド9をばね16の作用に抗して左方へと押圧する。上方へのストッパ15の移動によって、印刷ヘッド9をばね16により右方へと移動させるためのフリースペースがストッパ15によって開放される。
【0020】
モータMは補償継手3を介してねじ11を回転させ、その際、このねじ11を移動方向に応じて構成部材21内にやや深く螺入させるかまたは構成部材21からやや螺出させる。補償継手3によって、ねじ11は軸12に結合されている。この軸12は、図示の例のように、ねじ11のモータ式の移動が規定されている場合にはモータMのモータ軸である。しかしながら、ねじ11のマニュアル式の移動も可能である。このためには、軸12にモータMの代わりにハンドグリップ、例えば回動つまみが取り付けられている。補償継手3は、第1の継手半体1と第2の継手半体2とを有している。接続された状態では、両継手半体1,2が互いに相対回動不能に結合されている。
【0021】
第1の継手半体1は、軸12に固く嵌められていてもよいし、軸12に一体成形されていてもよい。第2の継手半体2は、ねじ11に固く嵌められていてもよいし、ねじ11に一体成形されていてもよい。第2の継手半体2は、ねじ11の端部における頭部を成していてよい。
【0022】
図3には、第1の継手半体1が一組みのばね爪4を有していることが示してある。これらのばね爪4は、第1の継手半体1の回転軸線A1を中心として均等分配されている。各ばね爪4は、ばねアームと伝動爪とから成っている。この伝動爪の先端は内向きの丸み部23を有している。ばね爪4に設けられた丸み部23によって、両継手半体1,2の回転軸線A1,A2同士の間の角度補償が可能になる。丸み部23は第2の継手半体2に対して転がり、ともに一種のボールジョイントまたはユニバーサルジョイントを形成している。第1の継手半体1は補償継手3のジョイントソケットであり、第2の継手半体2は補償継手3のジョイントヘッドである。
【0023】
第2の継手半体2は、外周面に歯列5、特に直歯歯列を備えた歯車である。軸線方向に向かって見てみると、第2の継手半体2は星形体の形状を有している。補償継手3は急速継手として機能する。使用者によって、第1の継手半体1が第2の継手半体2に工具なしで被せ嵌められ、これによって、ねじ11がモータMに結合される。ばね爪4は半径方向でフレキシブルであり、被せ嵌め時に互いにやや拡開される。歯列5は、ねじ11の最も深い螺入位置または終端位置と、ねじ11の最も高い螺入位置または終端位置との間のねじ11の最大の調整移動距離よりも大きい長さLを有している。したがって、ばね爪4は、ねじ11のあらゆる螺入位置において歯列5に係合し続けている。つまり、一方の継手半体1;2が他方の継手半体2;1に対して相対的に軸線方向で変位する際の補償が提供されている。
【0024】
図4には、第1の継手半体1が、互いに対を成して配置された4つのばね爪4を有していることが示してある。各対の両ばね爪4は直径方向で互いに向かい合って位置している。
【0025】
図5には、図4に比べて二倍の個数のばね爪4を備えた変化形態が示してある。
【0026】
図6には、ばね爪4の個数がさらに増加させられていて、これらのばね爪4が周面に沿って不均一に分配された別の変化形態が示してある。
【0027】
図7には、ばね爪4の個数が歯列5の歯7の個数にほぼ等しい変化形態が示してある。
【0028】
図2図7に示した全ての実施例では、ばね爪4の個数が歯7の個数よりも少ない。したがって、歯列5のピッチとばね爪4のピッチとが互いに異なっている。等しくないピッチによって、第2の継手半体2に対して相対的な第1の継手半体1のあらゆる回動角位置において、歯列5の歯7同士の間の溝8内に完全に係止している1つまたは好ましくは複数のばね爪4が存在しており、溝8内に部分的にしか係止していない1つまたは複数のばね爪4が存在しており、かつ/または溝8内に決して係止しておらず、歯7の先端に接触している1つまたは複数のばね爪4が存在していることが確保されている。これによって、トルクを遊びなしに確実に伝達することが可能となる。ばね爪4の側面角αは、トルク伝達時にばね爪4と歯7との間の側面摩擦に基づきセルフロックが生じるように規定することができ、これによって、遠心力により係合解除が生じないように、ばね爪4を運動させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1の継手半体
2 第2の継手半体
3 補償継手
4 ばね爪
5 歯列
6 -
7 歯
8 溝
9 印刷ヘッド
10 位置調整装置
11 ねじ
12 軸
13 印刷バー
14 -
15 ストッパ
16 ばね
17 フレーム
18 ホルダ
19 嵌合部
20 雄ねじ山
21 構成部材
22 雌ねじ山
23 丸み部
A1 (第1の継手半体1の)回転軸線
A2 (第2の継手半体2の)回転軸線
L 長さ
M モータ
x 方向
y 方向
α 側面角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7