IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディベロップメント センター フォー バイオテクノロジーの特許一覧

特許7206188III型受容体チロシンキナーゼ阻害剤としてのキノキサリン化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】III型受容体チロシンキナーゼ阻害剤としてのキノキサリン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/44 20060101AFI20230110BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20230110BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C07D241/44
A61K31/498
A61K31/5377
A61P19/02
A61P19/08
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 111
C07D401/04
C07D401/12
C07D401/14 CSP
C07D403/04
C07D403/12
C07D405/04
C07D405/12
C07D409/12
C07D413/12
C07D413/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019519329
(86)(22)【出願日】2017-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017055809
(87)【国際公開番号】W WO2018071348
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/406,328
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269718
【氏名又は名称】ディベロップメント センター フォー バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】DEVELOPMENT CENTER FOR BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ペン シャオ-ツェン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ チュウ-ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハン-カイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー チェン-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シャン-イー
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157540(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/077632(WO,A2)
【文献】特表2013-503824(JP,A)
【文献】特表2010-510321(JP,A)
【文献】特表2013-528580(JP,A)
【文献】特表2013-543883(JP,A)
【文献】特表2014-534212(JP,A)
【文献】特表2009-534410(JP,A)
【文献】国際公開第2013/112950(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩
(式中、
XはCR、NR、OおよびSからなる群から選択され;
Zは-NR-および-O-からなる群から選択され;
UはNまたはCRであり;
Gはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、複素環、およびアルキンからなる群から選択され、
は水素、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルケニル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cシクロアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、アリール、3~6員ヘテロシクリルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアミノ、シクロアルコキシ、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは場合によりハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、C~Cアルキル、ヒドロキシルC~Cアルキル、アルコキシC~Cアルキル、アシルオキシC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cシクロアルキル、3~6員ヘテロシクリル、アリールおよび5~6員ヘテロアリールで置換されており;
は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルケニルカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアルキルアミノおよびC~Cジアルキルアミノからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
は水素、重水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアルキルアミノおよびC~Cジアルキルアミノからなる群から選択される)。
【請求項2】
Gが
【化2】
(式中、
は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~CアルキルアミノC~Cアルキル、C~CジアルキルアミノC~Cアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~C-アルコキシC~Cアルキル、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、カルボニルC~Cアルコキシ、カルボニルC~CアルキルアミノおよびカルボニルC~Cジアルキルアミノからなる群から選択され;
10は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
各nは個別にかつ独立に0、1、2または3である)
から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Gが
【化3】
(式中、
11は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~CシクロアルキルC~Cアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、C~CアルコキシC~Cアルキル、カルボン酸、カルボニルC~Cアルコキシ、カルボニルC ~CアルキルアミノおよびカルボニルC~C-ジアルキルアミノからなる群から選択され;
12は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
各nは個別にかつ独立に0、1、2または3である)
から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Gが
【化4】
(式中、
13は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され;
各nは個別にかつ独立に0、1、2または3である)
から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Gが
【化5】
(式中、
14は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され;
QはNR15、OおよびSから選択され、R15は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
各nは個別にかつ独立に0、1、2または3である)
から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Gが
【化6】
(式中、
16は水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、3~6員ヘテロシクリル、5~6員ヘテロアリール、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択される)
である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
XがNHである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Zが-O-である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
3-メトキシ-6-((6-(((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)アミノ)ピリジン-3-イル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
-(3-メトキシキノキサリン-6-イル)-N-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,5-ジアミン;
3-メトキシ-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-((6-((4-(トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)ピリジン-3-イル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-N-(3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)キノキサリン-6-アミン;
3-メトキシ-6-((6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-3-イル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(ジメチルアミノ)-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-((3-メトキシ-4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-((6-((4-メトキシベンジル)オキシ)ピリジン-3-イル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-(メチルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルアミノ)フェニルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(イソプロピルアミノ)-6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(2-フルオロ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(ジメチルアミノ)-6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェノキシ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-エトキシベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-メトキシ-6-(3-メトキシ-4-(4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルオキシ)フェニルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-フルオロ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
N-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニル)-3-モルホリノキノキサリン-6-アミン;
-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニル)-N-メチルキノキサリン-2,7-ジアミン;
3-メトキシ-6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェノキシ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェノキシ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-クロロベンジルオキシ)-3-メトキシフェノキシ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-イソプロピルベンジルアミノ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-エトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェノキシ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-エチルベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-フルオロベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-エトキシベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(シクロプロピルメトキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(5-メトキシ-6-(4-メトキシベンジルオキシ)ピリジン-3-イルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(4-メトキシベンジルアミノ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-フルオロベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(シクロペンチルメトキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-((2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(ピリジン-4-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-エトキシ-4-(ピリジン-4-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(4-クロロベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(ピラジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(6-(4-メトキシベンジルオキシ)ピリジン-3-イルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(2-フルオロ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-フルオロ-4-(4-メトキシベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(4-(3,4-ジメトキシベンジルオキシ)-3-メトキシフェニルアミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-(3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニルアミノ)-3-(ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)(メチル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((5-メチルイソオキサゾール-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-3-(ピロリジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-クロロ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((4-シアノベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
1-(8-シアノ-7-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-2-イル)ピペリジン-4-イルアセテート;
6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(1H-イミダゾール-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
(1-(8-シアノ-7-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-2-イル)ピペリジン-4-イル)メチルアセテート;
3-(4-アセチルピペラジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
2-(4-(8-シアノ-7-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-2-イル)ピペラジン-1-イル)エチルアセテート;
3-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-3-((2-モルホリノエチル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(ピロリジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-イソプロピルピペラジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルメトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(アゼチジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-6-((4-((3-フルオロ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(アゼチジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(アゼチジン-1-イル)-6-((4-((3-シアノベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-6-((4-((3-フルオロベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-3-(ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-フルオロベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-フルオロ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((2-フルオロ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-プロピルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3,4-ジフルオロベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-エチルピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-モルホリノ-ピペリジン-1-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-イソプロピルピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-(ジメチルアミノ)ピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
N-(3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)-3-(プロパ-1-エン-2-イル)キノキサリン-6-アミン;
6-((3-メトキシ-4-((6-(メトキシメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-3-(プロパ-1-エン-2-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-イソプロピル-6-((3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-(フルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-エトキシピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-((ジメチルアミノ)メチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((1-プロピル-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-イソプロポキシ-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-シクロプロピルピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-(フラン-3-イルメトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-(フラン-2-イルメトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((5-メチルチオフェン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((5-(メトキシメチル)ピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-(チオフェン-3-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-(チオフェン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((2-メチルピリミジン-5-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)(メチル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((6-シクロプロピルピリジン-3-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((1-(2-フルオロエチル)-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノ-キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(ジメチルアミノ)-6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボキサミド;
3-(3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(ジメチルアミノ)-6-((3-メトキシ-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
3-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)-6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-(ジメチルアミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((3-シアノ-4-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-メトキシキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((4-((1-(シクロプロピルメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)メトキシ)-3-メトキシフェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-モルホリノ-6-((6-((4-(トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)ピリジン-3-イル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((5-メトキシ-6-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
6-((5-メトキシ-6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル;
3-((2S,6R)-2,6-ジメチルモルホリノ)-6-((3-メトキシ-4-((6-メチルピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)キノキサリン-5-カルボニトリル;または
6-((3-メトキシ-4-((6-メチル-1-(λ-オキシダネイル)-1λ-ピリジン-3-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-3-モルホリノキノキサリン-5-カルボニトリル
である
請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む
医薬組成物。
【請求項11】
CSF-1R、FLT3、c-KITおよび/またはPDGFRキナーゼによって媒介される、あるいはCSF-1R、FLT3、c-KITまたはPDGFRの変異型キナーゼによって媒介される疾患または障害の治療に使用するための
請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記疾患または障害が多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、多形神経膠芽腫、骨の巨細胞腫、非小細胞肺がん、腱鞘の巨細胞腫、他の組織への腫瘍の転移、骨髄線維症、色素性絨毛結節性滑膜炎および消化管間質腫瘍からなる群から選択される、
請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化学化合物および治療に使用する方法、特にある種の置換キノキサリン化合物、ならびにIII型受容体チロシンキナーゼの阻害、制御および/または調節におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は、プロテインキナーゼのサブファミリーである。PDGFRα、PDGFRβ、FLT3、c-KITおよびCSF-1Rを含むIII型RTKは、種々の増殖性疾患、炎症性疾患および自己免疫疾患に関与している。III型RTKの小分子阻害剤は、これらの疾患の治療に対する合理的なアプローチを提供する。
【0003】
CSF-1R(M-CSFR)はマクロファージコロニー刺激因子(M-CSFまたはCSF-1)に対する受容体である。CSF-1のその受容体への結合は、PI3K/AktおよびMAPK経路を含むシグナル伝達経路を活性化し、単球/マクロファージ系列の細胞の増殖、生存、運動性および分化をもたらす。CSF-1Rおよび/またはそのリガンドの発現または活性化の上昇は種々のがんで見られ、高レベルのM-CSFはある種のがんにおける予後不良と関連している。M-CSFは、腫瘍血管新生および転移への腫瘍進行に寄与する腫瘍関連マクロファージ(TAM)の動員に関与するいくつかのサイトカインのうちの1つである。CSF-1Rの活性化はまた、破骨細胞前駆体の増殖および分化をもたらし、それによって骨吸収の過程を媒介する。そのため、CSF-1Rの阻害は、がん、特にがんの浸潤、血管新生、転移、免疫寛容および骨転移の治療を提供する。破骨細胞生物学におけるその役割のために、CSF-1Rはまた、骨粗鬆症、炎症性関節炎および他の炎症性骨侵食のための重要な治療標的でもある。
【0004】
血小板増殖因子受容体(PDGFR)キナーゼの受容体チロシンキナーゼは、神経膠腫、肉腫、慢性骨髄単球性白血病(CML)、および胃腸などの種々の増殖性障害に関与しており、抗腫瘍療法の潜在的な標的になっている。
【0005】
FLT3は造血幹細胞の増殖および分化において重要な役割を果たしている。十数種のFLT3阻害剤が開発されており、そのうちのいくつかはAMLに対して有望な臨床効果を示している。FLT3受容体は樹状細胞前駆体においても発現され、FLT3の阻害はDC媒介性の炎症および自己免疫応答を下方制御する。
【0006】
c-KIT(またはSCFR)はPDGFRファミリーの別のメンバーであり、c-KIT突然変異は消化管間質腫瘍(GIST)、肥満細胞/骨髄性白血病、セミノーマ/未分化胚細胞腫および黒色腫に関連している。Gleevecは2002年にc-KIT媒介GISTのFDA承認を取得した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々のチロシンキナーゼ阻害剤が有用な治療薬であることが示されているが、依然としてIII型キナーゼ阻害剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このようなキナーゼによって媒介される疾患または障害、例えばがん、自己免疫疾患および骨吸収性疾患を治療するための、CSF-1R、c-KITおよび/またはPDGFRキナーゼなどのキナーゼを阻害する新規な阻害剤に関する。
【0009】
本発明の実施形態は、一定のキノキサリン化合物がIII型RTK(例えば、PDGFRα、PDGFRβ、FLT3、c-KITおよびCSF-1R)の活性を阻害することができるという予想外の発見に基づく。本化合物は、野生型および/または変異型のCSF-1R、FLT3、c-KITおよび/またはPDGFRキナーゼを含む、CSF-1R、FLT3、c-KITおよび/またはPDGFRキナーゼの活性を調節するための医学的処置、医薬組成物および方法において有用である。これらの特性により、これらのキノキサリン化合物をタンパク質チロシンキナーゼ関連疾患および/または状態の治療に使用することが可能になる。
【0010】
本発明の実施形態によると、化合物は一般式I:
【化1】
その立体異性体、またはそのプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩
(式中、X、U、Z、G、R、RおよびRは本明細書に定義される通りである)
を有し得る。
【0011】
本発明の一態様は、式Iの化合物と、担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、哺乳動物において、PDGFR、CSF-1R、FLT-3および/またはc-KITなどのIII型受容体チロシンキナーゼを阻害する方法に関する。本発明の実施形態による方法は、治療上有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする前記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0013】
本発明の別の態様は、哺乳動物の線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、疼痛および熱傷から選択される疾患または障害を治療する方法に関する。本発明の実施形態による方法は、治療上有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする前記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0014】
本発明の別の態様は、哺乳動物の線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、疼痛および熱傷から選択される疾患または障害を治療するための医薬品の製造における式Iの化合物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、哺乳動物の線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、疼痛および熱傷から選択される疾患または障害の治療に使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の化合物、その立体異性体、互変異性体、溶媒和物、プロドラッグまたは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0017】
本発明の他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
列挙される実施形態を説明するが、それらが本発明をこれらの実施形態に限定することを意図していないことが理解されるであろう。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替、修正および等価物を網羅することを意図している。
【0019】
「アルキル」という用語は、特に明記しない限り、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐一価飽和炭化水素を指す。この説明における数値範囲は、あたかも個々の数が別々に開示されているかのように、定義された範囲内の任意の数を含むことを意図している。例えば、1~20個の炭素のアルキル基は、C、C、…C20、ならびにC~C20、C~C15、C~C10、C~C、C~C等を含むだろう。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルが挙げられる。
【0020】
「アルケニル」という用語は、2~20個の炭素原子(例えば、C~C10)および1つまたは複数の二重結合を含有する直鎖または分岐一価炭化水素を指す。アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、アリルおよび1,4-ブタジエニルが挙げられる。
【0021】
「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子(例えば、C~C10)および1つまたは複数の三重結合を含有する直鎖または分岐一価炭化水素を指す。アルキニルの例としては、エチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、ならびに1-メチル-2-ブチニルが挙げられる。
【0022】
「アルコキシ」という用語は、アルキル部分が上に定義される通りである-O-アルキルラジカルを指す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシおよびt-ブトキシが挙げられる。
【0023】
「アシルオキシ」という用語は、Rが本明細書に定義されるH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり得る-O-C(O)-R基を指す。
【0024】
「アミノ」という用語はNHを指す。「アルキルアミノ」という用語は、「アルキル」が上に定義される通りであり、RがH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり得る-N(R)-アルキル基を指す。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子(例えば、C~CまたはC~C12)を有する一価飽和炭化水素環系を指す。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびアダマンタニルが挙げられる。
【0026】
「シクロアルケニル」という用語は、3~30個の炭素(例えば、C~CまたはC~C12)および1つまたは複数の二重結合を有する一価非芳香族炭化水素環系を指す。例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニルが挙げられる。
【0027】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1個または複数のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)を有する一価非芳香族5~8員単環式、8~12員二環式または11~14員三環式環系を指す。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニルおよびテトラヒドロフラニルが挙げられる。
【0028】
「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、1個または複数のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)および1つまたは複数の二重結合を有する一価非芳香族5~8員単環式、8~12員二環式または11~14員三環式環系を指す。
【0029】
「アリール」という用語は、一価6-炭素単環式、10-炭素二環式または14-炭素三環式芳香環系を指す。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルが挙げられる。
【0030】
「アリールオキシル」という用語は、「アリール」が上に定義される通りである-O-アリールを指す。
「アリールアミノ」という用語は、「アリール」が上に定義される通りであり、RがH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり得る-N(R)-アリールを指す。「ヘテロアリール」という用語は、1個または複数のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)を有する一価芳香族5~8員単環式、8~12員二環式または11~14員三環式環系を指す。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル、ピロリル、イソキノリニル、プリニル、オキサゾリル、ピラゾリルおよびカルバゾリルが挙げられる。これら全ての用語において、「アリール」部分は上に定義される通りである。
【0031】
上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリールおよびヘテロアリールは、置換または非置換部分であり得る。アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリールおよびヘテロアリール上の可能な置換基には、C~C10アルキル、C~C10アルケニル、C~C10アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20シクロアルケニル、C~C20ヘテロシクロアルキル、C~C20ヘテロシクロアルケニル、C~C10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C~C10アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ(O=)、チオキソ(S=)、チオ、C~C10アルキルチオ、アリールチオ、C~C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、メルカプト、アミド、チオウレイド、チオシアナト、スルホンアミド、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルバミド、カルバミル(-C(O)NH)、カルボキシル(-COOH)およびカルボン酸エステルが含まれる。アルキル、アルケニルまたはアルキニル上の可能な置換基には、C~C10アルキルを除く上記の置換基の全てが含まれる。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールおよびヘテロアリールが互いに縮合していてもよい。
【0032】
CSF-1Rなどのタンパク質チロシンキナーゼによって調節/媒介される(またはこれが関連する)疾患、状態および/または障害の治療または予防に有用な化合物およびその医薬組成物が本明細書で提供される。
【0033】
本発明の実施形態は、式Iの化合物:
【化2】
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩
(式中、
XはCR、NR、OおよびSからなる群から選択され;
Zは-NR-および-O-からなる群から選択され;
UはNまたはCRであり;
Gはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、複素環、アルケンおよびアルキンからなる群から選択され、これらの各々は場合により水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C~Cアルコキシ、C~Cアルクチオール(alkthiol)、C~Cアルキルアミノ、C~CジアルキルアミノおよびC~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
は水素、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~CアルキルアミノC~Cアルキル、C~CジアルキルアミノC~Cアルキル、C~CアルコキシC~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルケニル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cシクロアルキルアミノ、C~C-アルコキシ、C~Cシクロアルコキシ、アリール、3~6員ヘテロシクリルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアミノ、シクロアルコキシ、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは場合によりハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシクロプロピルで置換されており;
は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルケニルカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアルキルアミノおよびC~Cジアルキルアミノからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
は水素、重水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択され;
は水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアルキルアミノおよびC~Cジアルキルアミノからなる群から選択される)
に関する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、式1の化合物は、
【化3】
(式中、
は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~CアルキルアミノC~Cアルキル、C~CジアルキルアミノC~Cアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~C-アルコキシC~Cアルキル、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、カルボニルC~Cアルコキシ、カルボニルC~CアルキルアミノおよびカルボニルC~Cジアルキルアミノからなる群から選択され;
10は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択される)
から選択されるGを含み得る。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によると、式1の化合物は、
【化4】
(式中、
11は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、カルボニルC~Cアルコキシ、カルボニルC~CアルキルアミノおよびカルボニルC~Cジアルキルアミノからなる群から選択され;
12は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択される)
から選択されるGを含み得る。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、式1の化合物は、
【化5】
(式中、
13は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択される)
から選択されるGを含み得る。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によると、式1の化合物は、
【化6】
(式中、
14は水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキルアミノ、C~Cジアルキルアミノ、C~Cアルコキシ、カルボン酸、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され;
QはNR15、OおよびSから選択され、R15は水素、C~CアルキルおよびC~Cハロアルキルからなる群から選択される)
から選択されるGを含み得る。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によると、式1の化合物は、
【化7】
(式中、
16は水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、3~6員ヘテロシクリル、5~6員ヘテロアリール、C~Cアルコキシカルボニル、C~CアルキルアミノカルボニルおよびC~Cジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択される)
から選択されるGを含み得る。
【0039】
当業者は、上記の式(I)において、異なる置換基の全ての可能な組み合わせまたは順列が本発明の範囲内であることを理解するであろう。これらの化合物は、容易に入手可能な材料/試薬および公知の化学反応を用いて調製することができる。当技術分野における一般的な知識および本開示における教示に基づいて、当業者は過度の実験をすることなくこれらの化合物を調製および使用することができるはずである。
【0040】
以下の反応スキーム、反応スキーム1~反応スキーム15は、式(I)の化合物を調製するために使用することができる例示的手順を提供する。しかしながら、当業者であれば、これらの実施例は説明のためだけのものであり、本発明の範囲から逸脱することなく修正または変形が可能であることを理解するであろう。本発明の実施形態によって合成されたキノキサリン化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、結晶化または任意の他の適切な方法などの任意の公知の技術を用いて精製され得る。
【化8】
【0041】
化合物1(1.0当量)およびアルコール(G-CH-OH、1.0当量)のテトラヒドロフラン(0.2M)中溶液に、水素化ナトリウム(1.1当量)を添加し、0℃で撹拌した。3.0時間後、反応をTLCで追跡し、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0042】
化合物2(1.0当量)のエタノールおよび水中溶液に、鉄粉(3.0当量)および1滴の濃塩酸を添加した。混合物を6.0時間還流し、濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製すると化合物3が得られた。
【化9】
【0043】
2-フルオロ-5-ニトロピリジン4(1.0当量)およびアミン(G-CH-HN-R、1.0当量)のテトラヒドロフラン(0.2M)中溶液に、トリエチルアミン(1.1当量)を添加し、25℃で撹拌した。3.0時間後、反応をTLCで追跡し、食塩水溶液を添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0044】
化合物5(1.0当量)のエタノールおよび水中溶液に、鉄粉(3.0当量)および1滴の濃塩酸を添加した。混合物を6.0時間還流し、濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製すると化合物6が得られた。
【化10】
【0045】
化合物7(1.0当量)および塩化アルキル(G-CH-Cl、1.1当量)のテトラヒドロフラン中溶液に、炭酸カリウム(1.5当量)を添加し、25℃で撹拌した。反応をTLCで追跡し、6.0時間後に1N塩酸でクエンチした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0046】
化合物8(1.0当量)のエタノールおよび水中溶液に、鉄粉(3.0当量)および1滴の濃塩酸を添加した。混合物を6.0時間還流し、濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製すると化合物9が得られた。
【化11】
【0047】
4-ニトロアニリン10(1.0当量)およびアルデヒド(G-CHO、1.0当量)のジクロロメタン(0.2M)中溶液を、N雰囲気下、25℃で撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.5当量)を少しずつ添加し、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液を添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0048】
化合物11(1.0当量)のエタノールおよび水中溶液に、鉄(3.0当量)および1滴の濃塩酸を添加した。混合物を6.0時間還流し、濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、精製すると化合物12が得られた。
【化12】
【0049】
化合物13(1.0当量)のアセトニトリル(0.2M)中溶液に、粉末炭酸カリウム(1.2当量)および塩化アルキル(G-CH-Cl、1.1当量)を滴加した。混合物を窒素下で3時間激しく撹拌する。濾過および濃縮により生成物が固体として得られた。
【0050】
化合物14(1.0当量)のジクロロメタン(2.0M)中溶液に、メタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA、80~85%、1.3当量)を添加した。混合物を25℃で3.0時間撹拌し、TLCにより監視する。溶媒をその体積の半分まで濃縮し、濾過して沈殿したmCPBAを除去した。次いで、濾液を5%重炭酸ナトリウム水溶液、水および食塩水で洗浄した。その後、溶媒を減圧下で除去して油状残渣を得た。これをメタノールに再溶解し、2.5M水酸化ナトリウム水溶液を0℃で溶液に添加した。1.5時間後、反応物を2M塩酸で酸性化し、生成物を酢酸エチルで抽出することによって単離した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、精製すると化合物15が得られた。
【化13】
【0051】
4-アセトキシアニリン16(1.0当量)およびアルデヒド(G-CHO、1.0当量)のジクロロメタン(0.2M)中溶液を、N雰囲気下、25℃で撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.5当量)を添加し、反応混合物を25℃で16時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液を添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0052】
化合物17および水酸化リチウムのメタノールおよび水中溶液を、25℃で2.0時間撹拌した。反応物を2M塩酸水溶液で酸性化し、生成物を酢酸エチルで抽出することによって単離した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、精製すると化合物18が得られた。
【化14】
【0053】
臭素(1.0当量)を、置換キノキサリノン(19)の酢酸(0.1M)中溶液にゆっくり添加した。反応混合物を周囲温度で1.5時間撹拌した。得られた固体を濾過によって回収し、ヘキサンで洗浄すると、7-ブロモ-置換-キノキサリノン20が得られた。
【0054】
化合物20(1.0当量)の塩化ホスホリル(1.0M)中懸濁液を6時間加熱還流した。次いで、得られた透明溶液を室温に冷却し、水でクエンチした。得られた固体を濾過によって回収すると、7-ブロモ-2-クロロ-置換-キノキサリン21が得られ、これをさらに精製することなく次のステップにもっていった。
【化15】
【0055】
グリオキシル酸またはアルキルグリオキサレートおよび3-置換-4-クロロベンゼン-1,2-ジアミン22を有機溶媒中で撹拌した。得られた生成物を精製すると7-クロロ置換キノキサリノン23が得られた。
【0056】
7-クロロ-置換-キノキサリノン23(1.0当量)の塩化ホスホリル(1.0M)中懸濁液を6時間加熱還流した。次いで、得られた透明溶液を室温に冷却し、水でクエンチした。得られた固体を濾過によって回収すると、2,7-ジクロロ-置換-キノキサリン24が得られ、これをさらに精製することなく次のステップにもっていった。
【化16】
【0057】
2-クロロ-置換-キノキサリン25(1.0当量)のアルコール(ROH、0.5M)中溶液に、炭酸カリウム(1.1当量)を室温で添加し、反応物を40℃で2時間加熱した。冷却後、反応混合物を濾過し、真空中で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で濃縮すると化合物26が得られた。
【化17】
【0058】
2-クロロ-置換-キノキサリン27(1.0当量)のアミン(R`RNH、0.5M)中溶液に、トリエチルアミン(1.1当量)を室温で添加し、反応物を60℃で2時間加熱した。冷却後、反応混合物を濾過し、真空中で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で濃縮すると化合物28が得られた。
【化18】
【0059】
7-ブロモ-置換-キノキサリン29(1.0当量)の硫酸中溶液に、硝酸を添加した。反応混合物を室温で8時間撹拌した。混合物を氷水混合物に注ぎ入れ、濾過した。固体を酢酸エチルで洗浄すると、7-ブロモ-8-ニトロ-置換-キノキサリン30が得られた。
【0060】
7-ブロモ-8-ニトロ-置換-キノキサリン30(1.0当量)の酢酸エチル/ジメチルホルムアミド(6:1)中溶液に、塩化スズ(II)(SnCl;10.0当量)を添加した。反応混合物を100℃で16時間撹拌した。冷却後、反応混合物を真空中で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、6-ブロモ-置換-キノキサリン-5-アミン31が得られた。
【化19】
【0061】
水中7-ブロモ-置換-キノキサリン-5-アミン32(1.0当量)、塩化水素(1.5当量)および亜硝酸ナトリウム(1.1当量)に、ヨウ化カリウム(1.2当量)を-10℃で添加した。反応物を室温で16時間撹拌した。粗反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、7-ブロモ-8-ヨード-置換-キノキサリン33が得られた。
【0062】
ジメチルホルムアミド中7-ブロモ-8-ヨード置換キノキサリン33(1.0当量)、シアン化カリウム(2.0当量)、ヨウ化銅(1.1当量)および1,10-フェナントロリン一水和物(0.2当量)を、密封管中110℃で24時間加熱した。反応混合物を濾過し、メタノールで洗浄し、溶媒を真空下で除去した。粗反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。酢酸エチルを減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、7-ブロモ-8-シアノ-置換-キノキサリン34が得られた。
【化20】
【0063】
1,4-ジオキサン(0.3M)中置換キノキサリン35(1.0当量)、炭酸セシウム(3.0当量)、酢酸パラジウム(II)(0.1当量)、化合物36(1.0当量)およびキサントス(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)(0.02当量)を110℃で2時間加熱した。溶液を濾過し、メタノールで洗浄し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、最終化合物37が得られた。
【化21】
【0064】
化合物37(1.0当量)およびハロゲン化アルキル(R-X、1.0当量)のテトラヒドロフラン(0.2M)中溶液に、水素化ナトリウム(1.1当量)を添加し、0℃で撹拌した。3.0時間後、反応をTLCで追跡し、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、最終化合物38が得られた。
【化22】
【0065】
ジメチルホルムアミド(0.3M)中置換キノキサリン39(1.0当量)、炭酸セシウム(3.0当量)、CuI(0.1当量)および化合物40(1.0当量)を110℃で2時間加熱した。溶液を濾過し、メタノールで洗浄し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、最終化合物41が得られた。
【化23】
ハロゲン化物43(1.2当量)のトルエン/エタノール(0.2M)中溶液に、キナキソリン化合物42(1.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.05当量)および炭酸セシウム(1.2当量)を添加し、混合物を100℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、celiteを通して濾過した。濾液を真空中で濃縮した。残渣をクロマトグラフィーによって精製すると、最終化合物44が得られた。
【化24】
【0066】
化合物45(1.0当量)およびハロゲン化アルキン(1.0当量)のテトラヒドロフラン(0.2M)中溶液に、水素化ナトリウム(1.1当量)を添加し、0℃で撹拌した。3.0時間後、反応をTLCで追跡し、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製すると、最終化合物46が得られた。
【0067】
上記の反応スキームは、本発明のキノキサリン化合物をどのように調製することができるかを例示している。当業者であれば、関与する反応およびこれらの反応に使用される試薬が当技術分野で公知であることを理解するであろう。そのため、上記の教示および当技術分野における一般知識に基づいて、本明細書に定義される種々の置換基を有するキノキサリン化合物が、発明的努力なしに当業者によって調製され得る。
【0068】
式Iの化合物は、PDGFR、CSF-1R、FLT3およびc-KITなどのタンパク質チロシンキナーゼの新規で強力な阻害剤を表し、これらのキナーゼの作用から生じる障害の予防および治療に有用であり得る。
【0069】
式Iの化合物は、線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、疼痛および熱傷から選択される疾患または障害の治療において治療価値があり得る。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物は線維性疾患の治療に有用である。線維症の例としては、特発性肺線維症(IPF)、腎性全身性線維症(NSF)、肝硬変、糖尿病誘発性腎症、心線維症(例えば、心筋内線維症)、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、クローン病、ケロイド形成、強皮症および全身性硬化症が挙げられる。線維性疾患のさらなる例としては、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、全身性硬化症における間質性肺疾患(SSc-ILD)、原発性胆汁性肝硬変、間質性線維症および尿細管萎縮(CAD)、増殖性硝子体網膜症、ならびに瘢痕化(肥厚性およびケロイド)が挙げられる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物は、転移性骨疾患、治療誘発性骨量減少、骨粗鬆症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、パジェット病および歯周病を含む骨関連疾患の治療に有用である。骨粗鬆症は、(1)女性の更年期、(2)男性または女性の加齢、(3)ピーク骨質量に達することの失敗をもたらす小児期および青年期における最適以下の骨成長、ならびに/あるいは(4)他の疾患状態、摂食障害、薬物療法および/または医学的治療(例えば、グルココルチコイドによる治療、アロマターゼ阻害療法または抗アンドロゲン療法の結果として)に次ぐ骨量減少に起因し得る。
【0072】
本発明により治療することができる他の溶骨性疾患はより局在化している。具体的な例は、転移性腫瘍誘発性骨溶解である。この状態では、骨がんまたは骨転移が、疼痛、骨衰弱および骨折を引き起こす局所的骨溶解を誘発する。このような限局性骨溶解はまた、骨内に腫瘍のためのより多くの空間を作り出し、骨基質から成長因子を放出することによって腫瘍がより大きく成長することを可能にする。腫瘍誘発性骨溶解を引き起こすことが現在知られているがんには、血液悪性腫瘍(例えば、骨髄腫およびリンパ腫)および固形腫瘍(例えば、乳房、前立腺、肺、腎臓および甲状腺)が含まれ、これらの全てが治療を企図する。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物はがんおよび増殖性障害の治療に有用である。例としては、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、多形神経膠芽腫、骨の巨細胞腫(骨巨細胞腫としても知られている)、腱鞘の巨細胞腫(腱滑膜巨細胞腫またはTGCTとしても知られている)、他の組織への腫瘍の転移、他の慢性骨髄増殖性疾患、例えば骨髄線維症、および色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)が挙げられる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物は、それだけに限らないが、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、成人スティル病、糸球体腎炎、骨粗鬆症、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、血球貪食症候群、多中心性網組織球症、パジェット病、原発性硬化性胆管炎および移植拒絶(肝、腎臓および心臓/肺移植を含む)を含む自己免疫障害および炎症性疾患の治療に有用である。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物は心血管疾患の治療に有用である。心血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、虚血/再灌流、高血圧、再狭窄、肺動脈高血圧および動脈炎症が挙げられる。心血管疾患のさらなる例としては、急性呼吸窮迫症候群(ARDA)、動静脈(AV)瘻開存および静脈閉塞性疾患(HSC/BMT後)が挙げられる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によると、式Iの化合物は疼痛の治療に有用である。一実施形態では、式Iの化合物は、神経損傷の結果としての疼痛の治療に有用である。一実施形態では、式Iの化合物は、神経損傷の非存在下での神経炎症(神経炎)に関連する神経因性疼痛の治療に有用である。このような疼痛症候群には、背痛、顎関節(TMJ)症および関節リウマチが含まれる。
【0077】
本明細書に記載されるキノキサリン化合物は、例えばコア芳香環に結合している置換基中に、非芳香族二重結合および1つまたは複数の不斉中心を含有していてもよい。そのため、これらの化合物はラセミ体およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、ならびにシス-またはトランス-異性体型として生じ得る。全てのこのような異性体型は本発明の範囲内にある。本発明のキノキサリン化合物は、塩、特に薬学的に許容される塩を形成し得る酸性または塩基性官能基(例えば、置換基上)を有し得る。このような塩の形成は製薬業界における日常的な慣行である。本発明のキノキサリン化合物で使用することができる塩の例としては、例えば、塩基性官能基については塩酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩等、酸性官能基については水酸化物、アンモニウム、アルキルアンモニウム等が挙げられる。このようなキノキサリン塩は本発明の範囲内である。同様に、酸性基または塩基性基を、例えばエステルに官能化することができる。このような官能化誘導体はインビボで加水分解されるであろう。そのため、このような誘導体は本発明のキノキサリン化合物のプロドラッグとして機能し得る。プロドラッグの形成は日常的な技能のみを含み、当業者であれば過度の実験なしにこのようなプロドラッグを調製および使用する方法を知っているであろう。
【0078】
(1)有効量の少なくとも1種の本発明のキノキサリン化合物と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物、(2)有効量のこのようなキノキサリン化合物を、このような治療を必要とする対象に投与することによって、プロテインキナーゼ関連疾患(例えば、がん)を治療する方法、および(3)少なくとも1種のプロテインキナーゼを少なくとも1種の本発明のキノキサリン化合物と接触させることによって、少なくとも1種のプロテインキナーゼの活性を低下させる方法も本発明の範囲内にある。
【0079】
本明細書で使用する場合、「プロテインキナーゼ関連疾患/障害」または「プロテインキナーゼ関連疾患/障害」または「プロテインキナーゼによって調節される疾患/障害」という用語は、異常なプロテインキナーゼ(PK)活性を特徴とする疾患もしくは状態、または少なくとも1種のプロテインキナーゼ(PK)の活性への変化により治療することができる疾患もしくは状態を指す。異常なPK活性は、上昇したPK発現レベル、または正常な状態では起こらないPK発現の存在から生じ得る。本明細書に記載されるPK関連疾患/障害には、それだけに限らないが、がん、糖尿病、過剰増殖性障害、腎臓の過剰増殖性障害、腎疾患、フォンヒッペル・リンダウ病、再狭窄、線維症、乾癬、骨関節炎、関節リウマチ、炎症性障害、免疫学的障害、例えば自己免疫疾患(例えば、AIDS、ループス等)、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)、および血管増殖性障害、例えば異常な脈管形成が含まれる。
【0080】
「治療する」という用語は、障害のリスク、障害の症状または障害の素因を治癒させる、癒す、緩和する、軽減する、変化させる、矯正する、改善する、向上させる、影響を及ぼすまたは低下させる目的で、プロテインキナーゼ関連疾患/障害を有する、またはその症状もしくは素因を有する対象にキノキサリン化合物を投与することを指す。例えば、がんの治療とは、がんの成長もしくはがん細胞の成長の抑制、がんの成長の後退(すなわち、検出可能ながんのサイズを減少させる)、またはがんの消失をもたらす治療を指す。
【0081】
「有効量」という用語は、対象に意図した治療効果を付与するのに必要とされる活性剤の量を指す。当業者によって認識されるように、有効量は投与経路、賦形剤の使用、および他の薬剤との併用の可能性に応じて変わり得る。有効量の決定は日常的な技能のみを必要とし、当業者であれば過度の実験なしに意図された用途のためのこのような有効量を決定することができるであろう。治療を必要とする対象は哺乳動物であり得る。「哺乳動物」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、またはマウスを指す。
【0082】
本発明の方法を実施するために、上記の医薬組成物を経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔的に、経膣的にまたは埋め込みリザーバーを介して投与することができる。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、本発明のキノキサリン化合物は静脈内投与することができ、適切な担体には、それだけに限らないが、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物を含む溶液が含まれ得る。
【0083】
滅菌注射用組成物、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えばTWEEN 80)および懸濁剤を使用して当技術分野で公知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオール中溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用されている(例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリド)。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンで、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射用製剤の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくは同様の分散剤を含有することができる。薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造に一般的に使用されるTweenもしくはSpansなどの他の一般的に使用される界面活性剤または他の類似の乳化剤または生物学的利用能増強剤も製剤化の目的のために使用することができる。
【0084】
経口投与用の組成物は、それだけに限らないが、カプセル剤、錠剤、乳剤および水性懸濁剤、分散剤および液剤を含む任意の経口的に許容される剤形であり得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体はラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のためには、有用な希釈剤はラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液または乳剤を経口投与する場合、有効成分を乳化剤または懸濁剤と組み合わせて油相に懸濁または溶解することができる。必要に応じて、一定の甘味剤、香味剤または着色剤を添加することができる。鼻用エアゾールまたは吸入用組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製することができる。キノキサリン化合物含有組成物は直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。
【0085】
医薬組成物中の担体は、製剤の有効成分と適合性であり(そして好ましくはこれを安定化することができ)、治療される対象に有害ではないという意味で「許容される」べきである。活性キノキサリン化合物とより可溶性の複合体を形成する1種または複数の可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)を、活性化合物を送達するための医薬担体として利用することができる。他の担体の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0086】
さらに詳述することなく、上記の説明は本発明を十分に可能にしたと考えられる。そのため、以下の実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる意味においても本開示の残りの部分を限定するものではない。
【0087】
実施例
代表的なキノキサリン化合物を表1に列挙する。それらの計算質量および観察ESI-MSデータを表2に提供する。
【表1】
【表2】
【0088】
生物活性
式Iの種々の化合物を種々のプロテインキナーゼを阻害するそれらの能力について試験した。様々なアッセイの簡単な説明を以下に記載する。
【0089】
1.生化学的活性
CSF-1Rキナーゼアッセイ
本明細書に開示される試験化合物によるCSF-1Rキナーゼ活性の阻害を、AlphaScreen(PerkinElmer)によって推定した。標準的なアッセイ条件は、最終体積25μL中のアッセイ緩衝液(10μM ATP、10mM MOP、pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、1mg/ml BSA、0.01%2-メルカプトエタノール、0.001%Brij35)中10ngのビオチン結合ポリ-(Glu 4:Tyr 1)(Cisbio)を含む1.25ngの組換えCSF-1Rキナーゼ(SignalChem)であった。)。反応物を30℃で45分間インキュベートし、5μLの50mM EDTAを添加することによって停止させた。AlphaScreenキットを使用して得られた生成物を分析し、Enspire Alpha(PerkinElmer)でカウントした。対照反応(完全な反応混合物)からの読み取りを0%阻害とし、酵素を用いない反応についての読み取りを100%阻害とした。CSF-1Rキナーゼに対する本発明のキノキサリン化合物のIC50値は、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて決定した。
【0090】
c-KITキナーゼアッセイ
本明細書に開示される試験化合物によるc-KITキナーゼ活性の阻害を、放射測定アッセイによって推定した。標準アッセイ条件は、最終体積25μlで30℃で60分間、試験化合物(4%DMSOの最終濃度に希釈)またはDMSO対照の存在下、キナーゼ反応緩衝液中のアッセイ緩衝液(10mM MOPS pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、0.001%Brij-35、0.01 2-メルカプトエタノール、1mg/ml BSA、10mM MgCl、10mM MnCl、10μM ATP、0.1μCi/[33P]-ATP)中2μgの基質ポリ-(Glu 4:Tyr 1)(Sigma)を含む20ngの組換えc-Kit(SignalChem)であった。5μlの3%リン酸溶液を添加することによって反応を停止させた。次いで、全反応溶液をフィルタープレート(UniFilter-96 GF/B、PerkinElmer)に収穫し、dHOで5分間20回洗浄した。30μlのMicroScint(商標)-20カクテル(PerkinElmer)を乾燥プレートに添加した。プレートを密封し、TopCountシンチレーション検出器(PerkinElmer)を用いて計数した。対照反応(完全な反応混合物)からの読み取りを0%阻害とし、酵素を用いない反応についての読み取りを100%阻害とした。c-KITキナーゼに対する本発明のキノキサリン化合物のIC50値は、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて決定した。
【0091】
FLT3キナーゼアッセイ
本明細書に開示される試験化合物によるFLT3キナーゼ活性の阻害を、放射測定アッセイによって推定した。標準アッセイ条件は、最終体積25μlで30℃で60分間、試験化合物(4%DMSOの最終濃度に希釈)またはDMSO対照の存在下、キナーゼ反応緩衝液中のアッセイ緩衝液(10mM MOPS pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、0.001%Brij-35、0.01 2-メルカプトエタノール、1mg/ml BSA、MgCl、10mM、10μM ATP、0.1μCi/[33P]-ATP)中2μgの基質ポリ-(Glu 4:Tyr 1)(Sigma)を含む5ngの組換えFLT3(Thermo Fisher)であった。5μlの3%リン酸溶液を添加することによって反応を停止させた。次いで、全反応溶液をフィルタープレート(UniFilter-96 GF/B、PerkinElmer)に収穫し、dHOで5分間20回洗浄した。30μlのMicroScint(商標)-20カクテル(PerkinElmer)を乾燥プレートに添加した。プレートを密封し、TopCountシンチレーション検出器(PerkinElmer)を用いて計数した。対照反応(完全な反応混合物)からの読み取りを0%阻害とし、酵素を用いない反応についての読み取りを100%阻害とした。FLT3キナーゼに対する本発明のキノキサリン化合物のIC50値は、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて決定した。
【0092】
PDGFRキナーゼアッセイ
本明細書に開示される試験化合物によるPDGFRβキナーゼ活性の阻害を、放射測定アッセイによって推定した。標準アッセイ条件は、最終体積25μlで30℃で60分間、試験化合物(4%DMSOの最終濃度に希釈)またはDMSO対照の存在下、キナーゼ反応緩衝液中のアッセイ緩衝液(10mM MOPS pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、0.001%Brij-35、0.01 2-メルカプトエタノール、1mg/ml BSA、10mM MgCl、10mM MnCl、10μM ATP、0.1μCi/[33P]-ATP)中2μgの基質ポリ-(Glu 4:Tyr 1)(Sigma)を含む10ngの組換えPDGFRβ(SignalChem)であった。5μlの3%リン酸溶液を添加することによって反応を停止させた。次いで、全反応溶液をフィルタープレート(UniFilter-96 GF/B、PerkinElmer)に収穫し、dHOで5分間20回洗浄した。30μlのMicroScint(商標)-20カクテル(PerkinElmer)を乾燥プレートに添加した。プレートを密封し、TopCountシンチレーション検出器(PerkinElmer)を用いて計数した。対照反応(完全な反応混合物)からの読み取りを0%阻害とし、酵素を用いない反応についての読み取りを100%阻害とした。PDGFRβキナーゼに対する本発明のキノキサリン化合物のIC50値は、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて決定した。
【0093】
CSF-1R、c-KIT、FLT3およびPDGFRβに対する本発明の選択されたキノキサリン化合物のIC50値を表3に要約する。表中、記号「+++」はIC50が100nM未満であることを意味し、記号「++」はIC50が100~300nMであること意味し、記号「+」はIC50が300~1000nMであることを意味する。
【表3】
【0094】
2.抗増殖活性
上記のように、本発明の化合物は、プロテインキナーゼ関連疾患または障害を治療するために使用され得る。プロテインキナーゼ関連疾患は、がん、自己免疫疾患または血管増殖性障害であり得る。がんは、肺がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、肝臓がん、膵がん、膀胱がん、胃がん、腎がん、唾液腺がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん、口腔がん、皮膚がん、脳がん、リンパ腫または白血病であり得る。
【0095】
化合物による細胞増殖の阻害を、CellTiter(商標)-96アッセイを用いて測定した。化合物の細胞傷害性を、CSF-1依存性M-NFS-60マウス骨髄性白血病細胞、FLT3-ITD突然変異を有するFLT3シグナル依存性MV4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞、c-KIT N822K活性化突然変異を有するc-KITシグナル依存性Kasumi-1ヒト急性骨髄性白血病細胞、およびNRAS G12D突然変異を有するTHP-1ヒト急性単球性白血病細胞で評価した。
【0096】
M-NFS-60細胞培養
本明細書に開示される化合物をM-NFS-60細胞増殖アッセイで試験して、CSF-1Rに対するそれらの細胞効力を決定した。マウス骨髄芽球細胞株であるM-NFS-60細胞の増殖および生存率は、リガンドM-CSFのその受容体、CSF-1Rの結合が増殖するのに依存している。CSF-1Rキナーゼ活性の阻害は増殖減少および/または細胞死を引き起こすだろう。M-NFS-60細胞(カタログ番号CRL-1838)は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC、Manassas、VA)から得た。手短に言えば、細胞を、37℃、5%COおよび95%湿度で、10%特性評価ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)、0.05mM 2-メルカプトエタノールおよび20ng/mLのマウス組換えマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を補充したRPMI 1640培地に懸濁して増殖させた。細胞を飽和に達するまで増殖させ、飽和の時点で継代培養またはアッセイ使用のために収穫した。
【0097】
MV4-11細胞培養
本明細書に開示される化合物をMV4-11細胞増殖アッセイで試験して、FLT3キナーゼに対するそれらの細胞効力を決定した。MV4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞は、その増殖をFLT3-ITD依存性にするリガンド非依存性のFLT3-ITD活性化突然変異を有する。FLT3キナーゼ活性の阻害は増殖減少および/または細胞死を引き起こすだろう。MV4-11細胞(カタログ番号CRL-9591)は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC、Manassas、VA)から得た。手短に言えば、細胞を、37℃、5%COおよび95%湿度で、10%特性評価熱不活性ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)を補充したIMDM培地に懸濁して増殖させた。細胞を飽和に達するまで増殖させ、飽和の時点で継代培養またはアッセイ使用のために収穫した。
【0098】
Kasumi-1細胞培養
本明細書に開示される化合物をKasumi細胞増殖アッセイで試験して、c-KITキナーゼに対するそれらの細胞効力を決定した。Kasumiヒト急性骨髄性白血病細胞はリガンド非依存性N822K c-KIT活性化突然変異を有しているので、細胞増殖がc-KITシグナルに依存していた。c-KITキナーゼ活性の阻害は増殖減少および/または細胞死を引き起こすだろう。Kasumi-1細胞(カタログ番号CRL-2724)は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC、Manassas、VA)から得た。手短に言えば、細胞を、37℃、5%COおよび95%湿度で、10%特性評価ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)を補充したRPMI 1640培地に懸濁して増殖させた。細胞を飽和に達するまで増殖させ、飽和の時点で継代培養またはアッセイ使用のために収穫した。
【0099】
THP-1細胞培養
本明細書に開示される化合物をカウンタースクリーニングとしてのTHP-1細胞増殖アッセイで試験して、細胞増殖に対するそれらの選択的抗増殖活性が各クラスIII RTKシグナル伝達に依存していることを実証した。THP-1ヒト急性単球性白血病細胞はNRAS G12D突然変異を有しているので、細胞をクラスIIIのRTKシグナルとは無関係に増殖させる。THP-1細胞(カタログ番号TIB-202)はATCCから得た。手短に言えば、細胞を、37℃、5%COおよび95%湿度で、10%特性評価ウシ胎児血清および0.05mM 2-メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640培地で増殖させた。細胞を飽和に達するまで増殖させ、飽和の時点で継代培養またはアッセイ使用のために収穫した。
【0100】
M-NFS-60、Kasumi-1、MV4-11およびTHP-1細胞を、それぞれ2000、64000、6500および5000個細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、37℃、5%COで一晩インキュベートした。次いで、これらの播種細胞を増加する濃度の試験化合物で処理し、さらに72時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、CellTiter96(登録商標)AQueous One Solution Reagent(Promega)を添加し、4時間インキュベートした。EMax(登録商標)マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて490nmで吸光度を測定することによって細胞生存率を決定した。
【0101】
曲線当てはめのためのGraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて、化合物の濃度に対して増殖阻害の百分率をプロットすることによって、50%阻害濃度(IC50)値を計算した。本発明の選択されたキノキサリン化合物の抗増殖活性を表4に列挙する。表中、記号「+++」はIC50が0.3μM未満であることを表し、「++」はIC50が0.3~1μMであることを表し、「+」はIC50が1~10μMであることを表す。
【表4】
【0102】
3.破骨細胞酒石酸耐性酸性ホスファターゼアッセイ
試験化合物の段階希釈を96ウェル黒色透明底プレートに分配した。化合物を、10%特性評価ウシ胎児血清を補充したDMEM培地の添加によって希釈した。希釈化合物を96ウェル黒色透明底プレートに移した。核因子κ-βリガンドの受容体活性化因子(RANKL)およびM-CSFを含有する増殖培地中に、1ウェルあたり3000個の破骨細胞前駆体(Lonza、Walkersville、MD)を添加した。プレートを37℃、5%COおよび95%湿度で7日間インキュベートして、破骨細胞前駆体の分化を可能にした。インキュベーション期間の最後に、各ウェルからの上清50μLを透明96ウェルプレートに移した。上清試料中の酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性を、酸性ホスファターゼアッセイキット(Sigma、St.Louis、MO)を用いて決定した。プレートリーダーを用いて550nmで吸光度を測定した。対照反応(完全増殖培地混合物中で培養した細胞)からの読み取りを0%阻害とし、RANKLを含まない培地で培養した細胞についての読み取りを100%阻害とした。1μM処理での各化合物についての破骨細胞分化に対する阻害活性を2連で測定した。
【0103】
1μM処理で破骨細胞分化に対して50%超の阻害活性を示した式Iの化合物を以下の表5に列挙する。
【表5】
【0104】
本発明のいくつかの実施形態は、CSF-1R、FLT3、c-KITおよび/またはPDGFRキナーゼによって媒介される、あるいはCSF-1R、FLT3、c-KITまたはPDGFRの変異型キナーゼによって媒介される疾患または障害などのプロテインキナーゼ関連疾患を治療する方法に関する。本発明の一実施形態による方法は、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0105】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本明細書に開示される本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。