IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローディア オペレーションズの特許一覧

特許7206218沈降シリカ及びそれを製造するためのプロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】沈降シリカ及びそれを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20230110BHJP
   B01J 21/08 20060101ALI20230110BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230110BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C01B33/193
B01J21/08 Z
B01J37/04 102
B01J35/10 301J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019560182
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061302
(87)【国際公開番号】W WO2018202752
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】17305510.4
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アラン ナジマン, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ストックルーザー, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ガルベイ, パスカリン
(72)【発明者】
【氏名】ファヨール, カロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヌヴー, シルヴェーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ギュイ, ローラン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533735(JP,A)
【文献】特表2005-500238(JP,A)
【文献】特表2013-523569(JP,A)
【文献】特開2000-072434(JP,A)
【文献】特表平10-504012(JP,A)
【文献】特開2002-201380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/193
B01J 21/08
B01J 37/04
B01J 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降シリカを調製するための方法であって、前記方法が、
(i)2.00から5.00までのpHを有する出発溶液を提供する工程、
(ii)反応媒体のpHが、2.00から5.00までの範囲に保持されるようにして、前記出発溶液に対してケイ酸塩及び酸を同時に添加する工程、
(iii)前記酸及び前記ケイ酸塩の添加を停止し、そして前記反応媒体に塩基を添加して、前記反応媒体のpHを7.00から10.00までの範囲の値に上げる工程、
(iv)前記反応媒体のpHが、7.00から10.00までの範囲に保持されるようにして、前記反応媒体に、少なくとも1種のアルミニウムの化合物、ケイ酸塩、及び酸を同時に添加する工程、
(v)前記ケイ酸塩及び前記少なくとも1種のアルミニウムの化合物の添加を停止するが、その一方で前記反応媒体への前記酸の添加は続けて、前記反応媒体のpHを6.00未満にして、沈降シリカの懸濁液を得る工程、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(iii)において、前記酸の添加を停止するが、その一方で、前記反応媒体への前記ケイ酸塩の添加は継続して、前記反応媒体のpHを、7.00から10.00までの範囲の値に上げる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)と工程(ii)との間に、前記反応媒体のpHを2.00から9.50までの範囲に保持するようにして、ケイ酸塩及び酸を前記出発溶液に添加する工程(ii’)をさらに含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム化合物が、アルカリ金属のアルミン酸塩である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、欧州特許出願第17305510.4号(2017年5月5日出願)の優先権を主張するものであり、その出願の全内容を、すべての目的において、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0002】
本発明は、沈降シリカ及びそれを製造するためのプロセスに関する。本発明はさらに、ポリマー組成物における補強性充填剤として、又は触媒若しくは触媒担体としての沈降シリカの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物における補強性充填剤としての沈降シリカの使用は公知である。具体的には、エラストマー性組成物における補強性充填剤として沈降シリカを使用することは公知である。そのような使用に関しては、高い性能が要求される、すなわち、その充填剤は、エラストマー性組成物の中に容易且つ効率的に組み入れられ、分散されなければならず、そして典型的にはカップリング剤との組合せで、エラストマーと化学結合して、そのエラストマー性組成物に、高く均質な補強作用を与えなければならない。一般的には、沈降シリカは、エラストマー性組成物の機械的性質、さらには取扱性及び摩耗性能を改良する目的で使用される。
【0004】
したがって、上述の要求性能すべての間で最適なバランスが得られるようにする、ポリマー組成物における補強性充填剤として使用するための新規な沈降シリカが、常に必要とされている。
【0005】
具体的には、一方では、耐摩耗性及び/又はポリマーの補強性、そして他方では、より低いエネルギー散逸性能(これにより、熱の蓄積の低下がもたらされる)のような、相矛盾する性能の間のバランスを得ることが可能な、沈降シリカが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の目的は、ポリマー組成物の中に効率的に組み入れることが可能であり、そして改良された特性性能のバランスを示す、新規な沈降シリカを提供することである。本発明の第二の目的は、その沈降シリカを製造するためのプロセスである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、その沈降シリカを補強性充填剤として含む、エラストマー性組成物を提供することである。
【0008】
驚くべきことには、以下における説明並びに特許請求項及び実施例において詳しく定義される本発明の沈降シリカによって、それらの目的が達成されるということが見出された。
【0009】
エラストマー性組成物における良好な機械的性質、及び/又はより低いエネルギー散逸性(したがって熱の蓄積性)が、以下の特徴を有する沈降シリカを使用することによって得ることが可能であるということが見出された:
- CTAB表面積のSCTABが、40m/gから300m/gまでの範囲であり;
- BET表面積のSBETとCTAB表面積のSCTABとの差が、少なくとも35m/gであり;
- 遠心沈降法により測定した粒径分布の巾Ldが、少なくとも1.5であり;
- アルミニウムの量WAlが、0.5重量%から7.0重量%までの範囲であり;そして
- 遠心沈降法により測定した中央粒径d50であって、CTAB表面積のSCTAB及びアルミニウムの量WAlの所定の値に対して、式(I):
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
により定義されるパラメーターAが、
(II):
A≧253 (II)
(式中、
|d50|は、遠心沈降法により測定した中央粒径d50の数値(単位nm)を表し;|SCTAB|は、CTAB表面積のSCTABの数値(単位m/g)を表し;そして、|WAl|は、アルミニウムのパーセント量WAlの数値を表す。)の関係を満たす。
【0010】
アルミニウムを含む沈降シリカについてはすでに、たとえば、国際公開第96/30304A1号パンフレット、国際公開第03/106339A1号パンフレット、欧州特許出願公開第1193220A1号明細書、及び国際公開第2011/117400A1号パンフレットに記載がある。しかしながら、それらの文献のいずれにおいても、CTAB表面積、ブロードな粒径分布Ld、及び/又は中央粒径d50(シリカの凝集物(aggregates)のサイズを意味する)の所定の値に対して、本発明の沈降シリカのように、パラメーターAが関係(II)を満足するような沈降シリカは開示されていない。
【0011】
国際公開第96/30304A1号パンフレットには、CTAB比表面積が140~200m/g、BET比表面積が140~200m/g、超音波解砕後にレーザー回折法によって測定した平均直径が3μm未満、そしてアルミニウム含量が少なくとも0.35重量%であることを特徴とする沈降シリカが開示されている。国際公開第2011/117400A1号パンフレットには、アルミニウム含有沈降シリカを調製するためのプロセスが開示されている。そのプロセスで得られる沈降シリカは、少なくとも0.5重量%のアルミニウム含量と、超音波解砕後にレーザー回折法によって測定して5μm未満の平均直径とを有している。これら二つの従来技術文献のいずれにおいても、ディスク遠心分離機での遠心沈降法によって測定したシリカの凝集物の粒径又は、粒径分布の巾についての開示はない。
【0012】
欧州特許出願公開第1193220A1号明細書には、300m/gよりも大きなBET比表面積を有する、アルミニウム含有沈降シリカが開示されている。アルミニウムの量(Alの量として測定)は、0.05重量%から0.5重量%までであり、そのシリカ粒子の粒径は、15μm未満、好ましくは5~12μmの間である。シリカの粒径の測定法についての記載がない。
【0013】
国際公開第03/106339A1号パンフレットには、調節可能なBET/CTAB比を有するアルミニウム含有沈降シリカが開示されている。ディスク遠心分離機における遠心沈降法の手段によって測定されたシリカの凝集物の中央粒径の値或いは、粒径分布の巾についての開示はまったくない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の沈降シリカは、以下の特徴を有している:
- CTAB表面積のSCTABが、40m/gから300m/gまでの範囲であり;
- BET表面積のSBETとCTAB表面積のSCTABとの差が、少なくとも35m/gであり;
- 遠心沈降法により測定した粒径分布の巾Ldが、少なくとも1.5であり;
- アルミニウムの量WAlが、0.5重量%から7.0重量%までの範囲であり;そして
- 遠心沈降法により測定した中央粒径d50であって、CTAB表面積のSCTAB及びアルミニウムの量WAlの所定の値に対して、式(I):
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
により定義されるパラメーターAが、
(II):
A≧253 (II)
(式中、
|d50|は、遠心沈降法により測定した中央粒径d50の数値(単位nm)を表し;|SCTAB|は、CTAB表面積のSCTABの数値(単位m/g)を表し;そして、|WAl|は、アルミニウムのパーセント量WAlの数値を表す。)の関係を満たす。
【0015】
本明細書においては、「シリカ」と「沈降シリカ」は、同義語として使用される。
【0016】
本明細書においては、「a~bの間」の表現で定義される数値範囲は、末端の数値a及びbを排除した数値範囲を示している。「aからbまで」の表現で定義される数値範囲は、末端の数値a及びbを含んだ数値範囲を示している。
【0017】
「aは少なくともbである」の表現で定義される数値範囲は、aが、bと等しいか又はそれ以上の範囲であることを示している。
【0018】
疑念を晴らすために付言すれば、式(I)における記号「×」は、かけ算記号を表していて、「a×b」という表現は、aにbをかけ算したことを表している。
【0019】
CTAB表面積のSCTABは、所定のpHでシリカ表面の上に吸着されるN-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミドの量を測定することにより求めた外部比表面積の尺度である。CTAB表面積のSCTABは、少なくとも40m/g、典型的には少なくとも60m/gである。CTAB表面積のSCTABが、70m/gより大であってもよい。CTAB表面積のSCTABがさらに、110m/gより大、120m/gより大、可能であればさらに130m/gより大であってもよい。
【0020】
CTAB表面積が、300m/g、典型的には280m/gを越えることはない。CTAB表面積のSCTABが、280m/gより小、さらには270m/gより小であるのがよい。
【0021】
エラストマー補強用途においては、CTAB表面積のSCTABの有利な範囲は以下の通りである:70m/gから300m/gまで、80m/gから300m/gまで、好ましくは110m/gから300m/gまで、120m/gから300m/gまで、140m/gから300m/gまで、さらには145m/gから300m/gまで、好ましくは150m/gから300m/gまで、より好ましくは160m/gから300m/gまで、さらには160m/gから280m/gまで、130m/gから280m/gまで。
【0022】
BET表面積のSBETとCTAB表面積のSCTABとの差(SBET-SCTAB)は、一般的には、沈降シリカのミクロ多孔度を代表する数値として受け取られていて、窒素分子は吸着するが、もっと大きな分子たとえばN-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミドは吸着できない、シリカの細孔の尺度を与える。
【0023】
本発明の沈降シリカは、差(SBET-SCTAB)が少なくとも35m/gであることを特徴としている。その差(SBET-SCTAB)は、好ましくは、少なくとも40m/g、少なくとも45m/g、少なくとも50m/g、少なくとも55m/g、さらには少なくとも60m/gである。差(SBET-SCTAB)の値には限度はない。差(SBET-SCTAB)が、一般的には、150m/g未満、典型的には100m/g未満であるのがよい。差(SBET-SCTAB)は一般的には、300m/gを越えることはない。
【0024】
本発明の沈降シリカは、有利には50m/gから300m/gまでの範囲、典型的には55m/gから150m/gまでの範囲にある差(SBET-SCTAB)を特徴としている。
【0025】
本発明のシリカのBET表面積のSBETには、特に制限はないが、CTAB表面積のSCTABよりも、少なくとも35m/gは高い。BET表面積のSBETは、一般的には少なくとも80m/g、少なくとも100m/g、少なくとも140m/g、少なくとも160m/g、さらには少なくとも170m/g、少なくとも180m/g、そしてさらには少なくとも200m/gである。BET表面積のSBETは、400m/gもの高さ、さらには450m/gもの高さを有することも可能である。
【0026】
本発明のシリカは、以下のようなCTAB表面積のSCTABとBET表面積のSBETとを有しているのがよい:70m/gから300m/gまでのSCTABと110m/gから450m/gまでのSBET;110m/gから300m/gまでのSCTABと160m/gから450m/gまでのSBET;110m/gから300m/gまでのSCTABと180m/gから450m/gまでのSBET;120m/gから300m/gまでのSCTABと200m/gから450m/gまでのSBET
【0027】
本発明のシリカには、アルミニウムを含む。アルミニウムは、0.5重量%から7.0重量%まで、典型的には0.5重量%から5.0重量%までの範囲のWAl量で存在させる。本明細書を通じて、アルミニウムの量、WAlは、シリカの重量に対する、アルミニウム金属としての意味合いであるアルミニウムの重量パーセントとして定義される。
【0028】
Alは、好ましくは0.8重量%以上、さらには1.0重量%以上である。WAlは、有利には、0.8重量%から3.5重量%まで、さらには1.0重量%から3.0重量%までである。
【0029】
本発明のシリカには、アルミニウムに加えて、他の元素(非限定的に例を挙げれば、たとえばMg、Ca又はZn)を含んでいてもよいということは理解されたい。
【0030】
本発明の沈降シリカはさらに、ブロードな粒径分布も特徴としている。「粒子(particle)」という用語は、本明細書においては、一次シリカ粒子の凝集物を指すのに使用されている。「粒子」という用語は、機械的な作用で破壊することが可能な一次シリカ粒子の、最も小さな凝集物を指すのに使用される。別の言い方をすれば、「粒子」という用語は、個々の一次粒子集まったものを指している。
【0031】
ディスク遠心分離機における遠心沈降法(後ほど、詳しく説明する)の手段により求められるパラメーターのLdは、粒径分布の巾を特徴づけるために使用される。Ldは、次式:
Ld=(d84-d16)/d50
(式中、dnは、それ以下では、測定した全質量のn%が見出される、粒子の直径である。)で定義される。Ldは、無次元数である。粒径分布の巾Ldは、累積粒径曲線に基づいて計算される。一例として、d50は、粒子の全質量の50%がそれより下(及び上)で見出される粒子直径を表している。したがって、d50は、所定の分布の中央粒径を表し、ここで、この文脈においては、「径(size)」という用語では、「直径(diameter)」が意図されている。
【0032】
同じ表面積を有する沈降シリカと比較して、本発明のシリカは、よりブロードな粒径分布を有していて、そのために、より低いエネルギー散逸性能(したがって、より低い熱の蓄積)及び良好なレベルの補強性を有するエラストマー性組成物を得ることが可能となるということが見出された。
【0033】
粒径分布の巾Ldは、少なくとも1.5、典型的には少なくとも1.6である。粒径分布の巾Ldは、4.0以下、典型的には3.5以下である。
【0034】
本発明のシリカの粒径分布の巾Ldは、有利には1.5から3.5までの範囲、さらには1.5から3.2までの範囲である。本発明のシリカの粒径分布の巾Ldは、1.5から3.0まで、好ましくは1.5から2.5までの範囲とすることができる。
【0035】
本発明のシリカの重要な特色は、所定のSCTAB値で、大きな中央粒径(粒子直径)d50を有していることである。粒径と表面積は、互いに逆相関関係があることは公知であり、粒径が小さくなれば、表面積が増大する。
【0036】
具体的には、本発明のシリカの中央粒径は、所定のアルミニウム含量及びCTAB表面積のSCTABでは、アルミニウムを含む従来技術の沈降シリカで測定した値よりは、顕著に高いということが見出された。
【0037】
本発明のシリカの中央粒径d50、アルミニウムの量WAl、及びCTAB表面積のSCTABでは、式(I):
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
によって定義されるパラメーターAが
(II):
A≧253 (II)
の関係を満たすということが見出された。
【0038】
式(I)において、|d50|は、遠心沈降法により測定した中央粒径d50の数値(単位、nm)を表している。|d50|は、無次元数である。一例として、遠心沈降法により測定したd50の値が100nmであるのなら、|d50|は100である。
【0039】
式(I)において、|SCTAB|は、CTAB表面積のSCTABの数値(単位、m/g)を表している。|SCTAB|は、無次元数である。一例として、SCTABの測定値が200m/gであるのなら、|SCTAB|は200である。
【0040】
式(I)において、|WAl|は、アルミニウムの量、WAlの数値(パーセント)を表している。|WAl|は、無次元数である。一例として、シリカの重量に対して、重量によるアルミニウムの量が、1.3%であるのなら、|WAl|は1.3である。
【0041】
パラメーターAは無次元数であって、本発明のシリカでは、253以上である。パラメーターAは、典型的には、300を越えることはない。関係(II)におけるパラメーターAの好適な値は、A≧253、A≧255、A≧258、A≧259、A≧260である。パラメーターAの好適な範囲は、253≦A≦298、255≦A≦297、255≦A≦288、258≦A≦285、又はさらには259≦A≦285であってよい。
【0042】
40m/gから300m/gまでの範囲のCTAB表面積のSCTABにおいて、本発明のシリカは、一般的には30nmより大きい中央粒径d50を特徴としている。
【0043】
Alが、0.8重量%から3.0重量%までの範囲にあり、そしてCTAB表面積のSCTABが70m/gから280m/gまでの範囲にある場合、中央粒径d50の典型的な値は、一般的には、65nm以上、70nm以上、さらには80nm以上である。
【0044】
本発明のシリカのd50の値は、典型的には320nmを越えず、より典型的には300nmを越えない。
【0045】
一つの有利な実施形態においては、本発明の沈降シリカは、以下:
- CTAB表面積のSCTABが、40m/gから300m/gまでの範囲であり;
- 差(SBET-SCTAB)が少なくとも35m/gであり;
- アルミニウムの量(WAl)が、0.5重量%から5.0重量%までの範囲であり;そして
- 粒径分布の巾Ldが、少なくとも1.5であり;そして
- 中央粒径d50が、以下の関係を満たす。
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×WAl (I)
及び
A≧255 (II)
のことを特徴としている。
【0046】
また別な有利な実施形態においては、本発明の沈降シリカは、以下:
- CTAB表面積のSCTABが、70m/gから300m/gまでの範囲であり;
- 差(SBET-SCTAB)が少なくとも50m/gであり;
- アルミニウムの量(WAl)が、0.5重量%から5.0重量%までの範囲であり;そして
- 粒径分布の巾Ldが、1.5~3.5の間であり;そして
- 中央粒径d50が、以下の関係を満たす。
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
及び
A≧255 (II)
のことを特徴としている。
【0047】
さらなる有利な実施形態においては、本発明の沈降シリカは、以下:
- SCTAB表面積が、110m/gから300m/gまでの範囲であり;
- 差(SBET-SCTAB)が少なくとも50m/gであり;
- アルミニウムの量(WAl)が、0.8重量%から5.0重量%までの範囲であり;そして
- 粒径分布の巾Ldが、1.5~3.5の間であり;そして
- 中央粒径d50が、以下の関係を満たす。
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
及び
259≦A≦300 (II)
のことを特徴としている。
【0048】
なおさらなる有利な実施形態においては、本発明の沈降シリカは、以下:
- CTAB表面積のSCTABが、110m/gから300m/gまでの範囲であり;
- 差(SBET-SCTAB)が少なくとも50m/gであり;
- アルミニウムの量(WAl)が、0.8重量%から3.0重量%までの範囲であり;そして
- 粒径分布の巾Ldが、1.5~2.5の間であり;そして
- 中央粒径d50が、以下の関係を満たす。
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
及び
259≦A≦300 (II)
のことを特徴としている。
【0049】
また別の実施形態においては、本発明の沈降シリカは、以下:
- CTAB表面積のSCTABが、110m/gから300m/gまでの範囲であり;
- BET表面積のSBETが、180m/gから450m/gまでの範囲であり;
- 差(SBET-SCTAB)が少なくとも50m/gであり;
- アルミニウムの量(WAl)が、0.8重量%から3.0重量%までの範囲であり;そして
- 粒径分布の巾Ldが、1.5~3.5の間であり;そして
- 中央粒径d50が、以下の関係を満たす。
A=|d50|+0.782×|SCTAB|-8.524×|WAl| (I)
及び
A≧253 (II)
のことを特徴としている。
【0050】
沈降シリカでは、孔径(pore size)と表面積との間には、互いに逆相関関係があることは公知であり、孔径が増大すれば、表面積が減少する。水銀ポロシメーター法により測定した細孔容積分布の、いわゆる「モード(Mode)」は、細孔の平均サイズの尺度として採用することができる。「モード」は、凝集物のサイズの領域において、容積に関して最も多く存在する孔径であって、頻度曲線を与える。「モード」は、100nm未満の半径を有する細孔において、細孔半径(nm)の関数としての累積細孔容積曲線(mL/g)の微分係数の最大値の横座標として定義される。「モード」は、主たる細孔直径個体群の横座標であり、典型的にはnmの単位で表される。アルミニウムを含む公知の沈降シリカと比較すると、本発明のシリカは、一般的には、より大きい「モード」、すなわち、細孔の平均サイズがより大きいことを特徴としている。
【0051】
本発明の第二の目的は、第一の目的の沈降シリカを調製するためのプロセスであった、前記プロセスには、以下の工程を含む:
(i)2.00から5.00までのpHを有する出発溶液を備える工程、
(ii)反応媒体のpHが、2.00から5.00までの範囲に保持されるようにして、前記出発溶液に対してケイ酸塩及び酸を同時に添加する工程、
(iii)酸及びケイ酸塩の添加を停止し、そしてその反応媒体に塩基を添加して、前記反応媒体のpHを7.00から10.00までの値に上げる工程、
(iv)その反応媒体のpHが、7.00から10.00までの範囲に保持されるようにして、その反応媒体に、少なくとも1種のアルミニウムの化合物、ケイ酸塩、及び酸を同時に添加する工程、
(v)ケイ酸塩及び少なくとも1種のアルミニウムの化合物の添加を停止するが、その一方で反応媒体への酸の添加は続けて、その反応媒体のpHを6.00未満に達しさせ、沈降シリカの懸濁液を得る工程。
【0052】
「塩基(base)」という用語は、本明細書においては、本発明のプロセスの過程で添加することが可能な1種又は2種以上の塩基を指すのに使用され、それには、ケイ酸塩(以下において定義される)からなる群が含まれる。このプロセスでは、いかなる塩基も使用することができる。ケイ酸塩に加えて、適切な塩基の非限定的な著名な例としては、たとえば、アルカリ金属水酸化物、及びアンモニアが挙げられる。
【0053】
「ケイ酸塩」という用語は、本明細書においては、本発明のプロセスの過程において添加することが可能な、1種又は2種以上のケイ酸塩を指すのに使用される。ケイ酸塩は、典型的には、アルカリ金属のケイ酸塩からなる群より選択される。ケイ酸塩は、有利には、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムからなる群より選択される。それらのケイ酸塩は、たとえば、メタケイ酸塩又は二ケイ酸塩のような公知のいかなる形態であってもよい。
【0054】
ケイ酸ナトリウムが使用される場合においては、後者は、一般的には2.0から4.0まで、特には2.4から3.9まで、たとえば3.1から3.8までの、SiO/NaOの重量比を有している。
【0055】
それらのケイ酸塩は、(SiO基準で表して)3.9重量%から25.0重量%まで、5.6重量%から23.0重量%まで、特には5.6重量%から20.7重量%までの濃度を有しているのがよい。
【0056】
「酸」という用語は、本明細書においては、本発明のプロセスの過程において添加することが可能な、1種又は2種以上の酸を指すのに使用される。このプロセスでは、いかなる酸も使用することができる。使用されるのは、一般的には、鉱酸たとえば、硫酸、硝酸、リン酸若しくは塩酸、又は有機酸たとえば、カルボン酸、たとえば、酢酸、ギ酸若しくは炭酸である。
【0057】
それらの酸は、反応媒体の中に、希釈した形又は濃縮した形で計量仕込みすることができる。プロセスの異なった工程で、同一の酸を異なった濃度で使用してもよい。好ましくは、その酸が硫酸である。
【0058】
そのプロセスの好ましい実施形態においては、硫酸とケイ酸ナトリウムとを、そのプロセスの全部の工程で使用する。同一のケイ酸ナトリウム、すなわちSiOで表して同一の濃度を有するケイ酸ナトリウムを、そのプロセスの全部の工程で使用するのが好ましい。
【0059】
プロセスの工程(i)においては、2.00から5.00までのpHを有する出発溶液を、反応容器の中に備える。その出発溶液は水溶液であるが、「水性」という用語は、その溶媒が水であることを示している。
【0060】
その出発溶液は、好ましくは2.50から5.00まで、特には3.00から4.50まで、たとえば、3.50から4.50までのpHを有している。
【0061】
その出発溶液は、上述のpH値が得られるように、酸を水に添加することにより得ることができる。
【0062】
別な方法として、その出発溶液には、ケイ酸塩を含んでいてもよい。そのような場合においては、水とケイ酸塩との混合物に酸を添加して、2.00から5.00までのpHが得られるようにして、得ることができる。
【0063】
その出発溶液は、7.00未満のpHにある、あらかじめ形成させておいたシリカ粒子を含む溶液に、酸を添加して、2.00から5.00まで、好ましくは2.50から5.00まで、特には3.00から4.50まで、たとえば3.50から4.50までのpH値とすることに調製してもよい。
【0064】
工程(i)の出発溶液には、電解質を含んでいてもよいし、或いは含んでいなくてもよい。工程(i)の出発溶液が電解質を含んでいるのが好ましい。
【0065】
「電解質」という用語は、本明細書においては、その一般的に受容されている意味合いで使用される、すなわち、溶液の中で、分解又は解離して、イオン又は荷電した粒子を形成する各種のイオン性又は分子性物質を指している。「電解質」という用語は、本明細書においては、1種又は2種以上の電解質が存在していてもよいことを示している。電解質としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。出発溶液において使用するための電解質が、そのプロセスにおいて使用される、出発ケイ酸塩の金属と酸との塩であるのが有利である。注目すべき例は、たとえば、ケイ酸ナトリウムと塩酸との反応の場合においての塩化ナトリウム、又は、好ましくは、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応の場合においての硫酸ナトリウムである。その電解質には、アルミニウムは含まれない。
【0066】
工程(i)において硫酸ナトリウムが電解質として使用される場合、その出発溶液中でのその濃度は、好ましくは8g/Lから40g/Lまで、特には10g/Lから35g/Lまで、たとえば13g/Lから30g/Lまでである。
【0067】
プロセスの工程(ii)には、出発溶液への、酸とケイ酸塩との同時添加が含まれる。工程(ii)の際の、酸及びケイ酸塩の添加速度を調節して、その反応媒体のpHが、2.00から5.00までの範囲に保持されるようにする。反応媒体のpHは、好ましくは2.50から5.00まで、特には3.00から5.00まで、たとえば3.20から4.80までの範囲に保持する。
【0068】
工程(ii)における同時添加は、その反応媒体のpH値が常に、工程(i)の終了時に到達するpHと(±0.20pH単位に入る程度に)等しくなるように実施するのが有利である。
【0069】
工程(ii)が、上述のような酸とケイ酸塩との同時添加でなっているのが好ましい。
【0070】
本発明のプロセスの一つの実施形態においては、工程(i)と工程(ii)との間で、反応媒体のpHが、2.00から9.50までの範囲に保持されるように、出発溶液にケイ酸塩と酸を添加する中間工程(ii’)を実施してもよい。ケイ酸塩及び酸の同時添加は、工程(ii’)の全体、又はその一部だけで実施してもよい。工程(ii’)は、工程(ii)が開始される前、典型的には1~10分、好ましくは2~8分かけて実施される。
【0071】
次いで、工程(iii)においては、酸及びケイ酸塩の添加を停止し、その反応媒体に塩基を添加する。反応媒体のpHが7.00から10.00まで、好ましくは7.50から9.50までの値に達したら、塩基の添加を停止する。
【0072】
そのプロセスの第一の実施形態においては、その塩基がケイ酸塩である。したがって、工程(iii)においては、酸の添加は停止するが、それに対して、反応媒体へのケイ酸塩の添加は継続して、7.00から10.00まで、好ましくは7.50から9.50までのpHに達するようにする。
【0073】
プロセスの第二の実施形態においては、その塩基がケイ酸塩とは異なって、それが、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムからなる群より選択される。プロセスにおいてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、好ましい塩基は水酸化ナトリウムとなり得る。
【0074】
したがって、工程(iii)における、プロセスのこの第二の実施形態においては、酸及びケイ酸塩の添加を停止し、ケイ酸塩とは異なる塩基をその反応媒体に、7.00から10.00まで、好ましくは7.50から9.50までのpHに達するまで、添加する。
【0075】
工程(iii)の終了時、すなわち、塩基の添加を停止した後で、反応媒体の熟成工程を実施するのが有利であり得る。この工程は、工程(iii)の最後に得られたpHで実施するのが好ましい。その熟成工程は、その反応媒体を撹拌しながら実施するのがよい。熟成工程は、反応媒体を撹拌しながら、好ましくは2~45分間、特には5分~25分間までの時間をかけて実施する。その熟成工程には、酸又はケイ酸塩の添加を一切含めないのが好ましい。
【0076】
工程(iii)及び任意選択の熟成工程の後で、その反応媒体のpHが、7.00から10.00まで、好ましくは7.50から9.50までの範囲に保持されるようにして、少なくとも1種のアルミニウムの化合物、酸、及びケイ酸塩の同時添加を実施する。
【0077】
少なくとも1種のアルミニウムの化合物、酸、及びケイ酸塩の同時添加(工程(iv))は、典型的には、その反応媒体のpH値が、先行する工程、工程(iii)の最後に到達したpHと同じ(±0.20pH単位内)に保持されるようにして実施される。
【0078】
本発明のプロセスには、さらなる工程が含まれていてもよいということに注意されたい。たとえば、工程(iii)と工程(iv)との間、具体的には工程(iii)の後の任意の熟成工程と工程(iv)との間に、その反応媒体に酸を添加することができる。この酸を添加した後での反応媒体のpHが、7.00から9.50まで、好ましくは7.50から9.50までの範囲に留まるようにするべきである。
【0079】
工程(v)においては、ケイ酸塩及び少なくとも1種のアルミニウムの化合物の添加を停止するが、その一方で、その反応媒体への酸の添加は継続して、反応媒体中のpH値が、6.00未満、好ましくは3.00から5.50まで、特には3.00から5.00までで得られるようにする。その反応容器の中に、沈降シリカの懸濁液が得られる。
【0080】
工程(v)の終了時、したがって、反応媒体への酸の添加を停止した後で、熟成工程を実施するのが有利となり得る。この熟成工程は、工程(v)の終了時に得られたのと同じpHで、そして、プロセスの工程(iii)と(iv)との間で任意に実施することが可能な、先に述べた熟成工程の場合と同じ時間条件で、実施するのがよい。
【0081】
工程(iv)の際に、すなわち反応媒体に、7.00から10.00までの範囲のpHで酸及びケイ酸塩を同時添加する際に、その反応媒体に少なくとも1種のアルミニウムの化合物を計量仕込みする。その少なくとも1種のアルミニウム化合物は、工程(iv)の全期間にわたって、すなわち酸及びケイ酸塩の添加と同時に、反応媒体に計量添加するのがよい。別な方法として、工程(iv)のほんの一部の間、たとえば、酸及びケイ酸塩の第一の同時添加を実施した直後だけに、計量添加をしてもよい。その少なくとも1種のアルミニウムの化合物は、典型的には、反応媒体の中に溶液、典型的には水溶液の形態で添加される。工程(iv)の間に、全部の少なくとも1種のアルミニウムの化合物を添加する。
【0082】
「少なくとも1種のアルミニウムの化合物」という表現は、本発明のプロセスの過程において添加することが可能な1種又は2種以上のアルミニウム化合物を指すために用いられる。
【0083】
いかなるアルミニウムの化合物であっても、それが水に可溶性であるならば、本発明のプロセスにおいて使用することができる。好適な化合物の注目すべき例としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、若しくは硝酸アルミニウム、又はアルカリ金属のアルミン酸塩が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その化合物は、一般的には、アルカリ金属のアルミン酸塩、具体的にはアルミン酸カリウム、又は好ましくは、アルミン酸ナトリウムからなる群より選択される。その少なくとも1種のアルミニウムの化合物は、一般的には、反応媒体の中に溶液、典型的には水溶液の形態で添加される。
【0084】
その中でケイ酸塩と酸との全反応が実施される反応容器には通常、十分な撹拌装置及び加熱装置が備えられている。
【0085】
ケイ酸塩と酸との全反応(工程(i)~(v))は、一般的には40℃から97℃まで、特には60℃から95℃まで、好ましくは80℃から95℃まで、より好ましくは85℃から95℃までの温度で実施される。
【0086】
本発明の一つの変法においては、そのケイ酸塩と酸との全反応が、通常40℃から97℃まで、特には80℃から95℃まで、さらには85℃から95℃までの一定の温度で実施される。
【0087】
本発明のまた別の変法においては、反応の最後での温度を、反応の出発時の温度よりも高くする:したがって、(たとえば工程(i)~(iii)の際の)反応の出発時の温度を、好ましくは、40℃から85℃までの範囲に保持し、次いで、温度を、80℃から95℃まで、さらには85℃から95℃までの範囲にまで上昇させて、温度をその値で、反応の終了まで(たとえば工程(iv)~(v)の間)保持する。
【0088】
特に、2.00から5.00までのpHでの酸及びケイ酸塩の第一の同時添加、並びに7.00から10.00までのpHでのアルミニウムの化合物、酸、及びケイ酸塩の同時添加を存在させる特定の工程の連続が、特許請求された特性、特に大きな粒径分布の巾及び高い中央粒径d50を有する沈降シリカを得るための重要な条件を構成するということが見出された。このプロセスの各種のパラメーター、たとえば、温度、反応媒体のpH、工程(i)に存在させる電解質の量、アルミニウムの化合物の量を変化させて、所望の値の、CTABの比表面積SCTAB、BETの比表面積SBET、及びアルミニウムの量WAlを有する沈降シリカを得ることができる。
【0089】
直ぐ前に記した工程の最後に、沈降シリカの懸濁液が得られ、次いでそれを分離する(液/固分離)。そのプロセスには、典型的には、その懸濁液を濾過し、沈降シリカを乾燥させる、さらなる工程(vi)が含まれる。
【0090】
本発明における調製プロセスで実施される分離には、通常、濾過及び、(必要があれば)それに続く洗浄が含まれる。濾過は、各種好適な方法、たとえばベルトフィルター、ロータリーフィルター、たとえば真空フィルター、又は好ましくはフィルタープレスの手段によって実施される。
【0091】
次いでそのフィルターケーキを、液状化操作にかける。「液状化」という用語は、本明細書においては、固形物すなわちフィルターケーキを流体状の物質に転換させるプロセスを示すことを意味している。その液状化工程の後では、フィルターケーキが、流動性のある流体状の形態となり、沈降シリカが懸濁状態となっている。
【0092】
その液状化工程には、機械的処理が含まれていてもよく、それにより、懸濁液中のシリカの粒度の低下が起きる。前記機械的処理は、フィルターケーキを、高剪断ミキサー、コロイダルタイプのミル又はボールミルに通すことによって実施することができる。別な方法として、その液状化工程を、フィルターケーキに、たとえば酸又はアルミニウム化合物、たとえばアルミン酸ナトリウムを添加することによる化学的作用を与えることにより実施してもよい。さらに別な方法として、その液状化工程に、機械的処理と化学的作用との両方を含ませてもよい。
【0093】
液状化操作の際にフィルターケーキにアルミニウム化合物を加える場合には、その量は、一般的には、フィルターケーキの中に存在するアルミニウム化合物対シリカの量(SiOとして表す)の比率が、0.10%から0.75%まで、好ましくは0.10重量%から0.50重量%まで、より好ましくは0.20重量%から0.45重量%までとなるようにする。
【0094】
アルミニウム化合物添加のステージとは無関係に、反応媒体に計量仕込みされた前記化合物の累積量が、沈降シリカ中のアルミニウムの量が、0.5重量%から7.0重量%までの範囲となるようにする。アルミニウム化合物の添加速度を、当業者に公知の手段によって調節して、沈降シリカの中でのアルミニウムが所望の含量となるようにすることができる。
【0095】
液状化工程の後で得られる沈降シリカの懸濁液を、好ましくは次いで乾燥させる。
【0096】
この乾燥は、当業者公知の手段により実施すればよい。その乾燥をアトマイゼーションによって実施するのが好ましい。この目的のためには、各種のタイプの好適なアトマイザー、特に、タービン、ノズル、液圧式、又は二液スプレードライヤーを使用することができる。一般的には、フィルタープレスを用いて濾過を実施した場合には、ノズルスプレードライヤーを使用し、そして真空フィルターを用いて濾過を実施した場合には、タービンスプレードライヤーを使用する。
【0097】
ノズルスプレードライヤーを用いて乾燥操作を実施した場合には、それによって得られる沈降シリカは、通常、実質的に球状のビーズの形態にある。この乾燥操作の後で、場合によっては、その回収した生成物にミリング又は微粒化の工程を実施することが可能であり、それによって得られた沈降シリカは、一般的には、粉体の形態である。
【0098】
タービンスプレードライヤーを用いて乾燥操作を実施した場合には、それによって得られる沈降シリカは、粉体の形態にある可能性がある。
【0099】
最後に、先に説明したような、乾燥させ、摩砕若しくは微粒化した生成物は、場合によっては、凝集工程にかけてもよいが、その工程は、たとえば直接圧縮、湿式造粒(すなわち、たとえば水、シリカ懸濁液などのバインダーを使用)、押出加工、又は好ましくは、乾式圧縮化からなっている。
【0100】
この凝集工程を介してそのようにして得られた沈降シリカは、一般的には、粒状物の形態にある。
【0101】
本発明の沈降シリカは、たとえば以下のような、数多くの用途で使用することができる:活性物質のための吸収剤(特に、液状物質、特には、食品、たとえばビタミン(ビタミンE又は塩化コリン)のための支持体)、粘度調整剤、粘着防止剤、若しくは凝結防止剤、又は練り歯磨き、コンクリート若しくは紙用の添加剤。
【0102】
本発明のシリカは、触媒として、又は触媒担体として使用することができる。したがって、本発明の目的は、本発明の沈降シリカを含むか、さらにはそれからなる触媒又は触媒担体である。
【0103】
本発明のシリカは、断熱材料の製造、又はレソルシノール・ホルムアルデヒド/シリカ複合材料の調製において、都合よく使用することもできる。
【0104】
本発明の沈降シリカは、ポリマー組成物中の充填剤として、特に有利な用途を見出している。
【0105】
したがって、本発明のさらなる目的は、先に定義されたような本発明のシリカ、及び少なくとも1種のポリマーを含む組成物である。「少なくとも1種の」という文言は、組成物中のポリマーを指した場合、本明細書においては、その組成物の中にそれぞれのタイプの1種又は2種以上のポリマーが存在しうるといことを示すのに使用される。
【0106】
「コポリマー」という表現は、本明細書においては、異なった性質の少なくとも2種のモノマー単位から誘導される繰り返し単位を含むポリマーを指すのに使用される。
【0107】
その少なくとも1種のポリマーは、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーの中から選択することができる。注目すべき、熱硬化性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:熱硬化性樹脂たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、及びシアネート樹脂。
【0108】
注目すべき、好適な熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:スチレンベースのポリマーたとえば、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ABS;アクリル系ポリマーたとえば、ポリメチルメタクリレート;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリエステルたとえば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート;ポリフェニレンエーテル;ポリスルホン;ポリアリールエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;熱可塑性ポリウレタン;ポリオレフィンたとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー;α-オレフィンと各種のモノマーとのコポリマーたとえば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー;脂肪族ポリエステルたとえば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、並びに脂肪族グリコール/脂肪族ジカルボン酸コポリマー。
【0109】
本発明のシリカは、有利には、エラストマー性組成物の中における補強性充填剤として採用することができる。したがって、本発明の好ましい目的は、本発明のシリカと、好ましくは-150℃~+300℃の間、たとえば-150℃~+20℃の間の少なくとも一つのガラス転移温度を示す1種又は複数種のエラストマーとを含む組成物である。
【0110】
注目すべき、好適なエラストマーの非限定的な例は、ジエンエラストマーである。たとえば、少なくとも1個の不飽和を含む脂肪族若しくは芳香族のモノマー、たとえば、具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレン、若しくは酢酸ビニル、ポリアクリル酸ブチル、又はそれらの混合物から誘導されるエラストマーを使用することができる。官能化エラストマー、すなわちポリマー鎖に沿って、及び/又はその末端の一つ又は複数に位置する化学基によって(たとえばシリカの表面と反応することが可能な官能基によって)官能化されたエラストマー、及びハロゲン化ポリマーもまた挙げられる。ポリアミド、エチレンのホモポリマー及びコポリマー、プロピレンのホモポリマー及びコポリマーも挙げることができる。
【0111】
ジエンエラストマーの中でも、たとえば、以下のものを挙げることができる:ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、又はそれらの混合物、並びに、具体的には、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR、特に、ESBR(エマルション法)又はSSBR(溶液法))、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、並びにさらには、(たとえば、ペンダントした極性基又は、鎖末端に、シリカと相互作用を持つことが可能な極性基を示す)関連する官能化ポリマー。
【0112】
さらに、天然ゴム(NR)及びエポキシ化天然ゴム(ENR)も挙げられる。
【0113】
それらのポリマー組成物は、硫黄を用いて加硫するか、又は、特に、ペルオキシド又はその他の架橋系(たとえばジアミン又はフェノール樹脂)を用いて架橋することができる。
【0114】
一般的には、それらのポリマー組成物にはさらに、少なくとも1種の(シリカ/ポリマー)カップリング剤及び/又は少なくとも1種の被覆剤(covering agent)を含み、それらにはさらに、なかんずく、抗酸化剤も含むことができる。
【0115】
好適なカップリング剤の非限定的な例としては、たとえば、「対称(symmetrical)」又は「非対称(unsymmetrical)」のシランポリスルフィドが挙げられ、より具体的には以下のものが挙げられる:ビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)、たとえば、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド又はビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド、たとえば、トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド。さらに、モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドも挙げることができる。さらに、マスキングされるか又は遊離のチオール官能基を含むシランも挙げることができる。
【0116】
カップリング剤は、前もってポリマーにグラフトさせておくこともできる。それは、遊離の状態(すなわち、前もってグラフトされていない状態)か、又はシリカの表面にグラフトされている状態で採用することもできる。任意成分の被覆剤の場合も同様である。
【0117】
カップリング剤は、場合によっては、適切な「カップリング活性化剤」(すなわち、そのカップリング剤と混合したときに、後者の有効性を向上させるような化合物)と組み合わせることもできる。
【0118】
ポリマー組成物中における、本発明のシリカの重量比率は、かなり広い範囲で変化させることが可能である。それは、ポリマーの量の、通常で10%から200%まで、特には20%から150%まで、特には20%から80%まで(たとえば30%から70%まで)、又は80%から120%まで(たとえば90%から110%まで)を占める。
【0119】
本発明におけるシリカは、有利には、そのポリマー組成物の補強性無機充填剤の全部、さらには補強性充填剤の全部を構成することができる。
【0120】
本発明のシリカは、場合によっては、たとえば以下のような、少なくとも1種の他の補強性充填剤と組み合わせることも可能である:高分散性シリカ、たとえば、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1115MP、又はZeosil(登録商標)1085GR(Solvayから市販)、又は、その他の補強性無機充填剤たとえば、ナノクレー、アルミナ。別な方法として、本発明のシリカを、有機の補強性充填剤、たとえば、カーボンブラックナノチューブ、グラフェンなどと組み合わせてよい。
【0121】
さらに本発明におけるシリカは、好ましくは、補強性充填剤の全量の、少なくとも50重量%、さらには少なくとも80重量%を構成する。
【0122】
本発明のシリカは、エラストマー性組成物中での顕著な分散性を特徴としている。エラストマーマトリックスの中での充填剤の分散性を評価する公知の方法は、S.Otto et al.,Kautschuk Gummi Kunststoffe,58 Jahargang,NR 7-8/2005に記載されている。その方法(後にもっと詳しく説明する)は、光学分析に依存していて、エラストマーマトリックス中の充填剤の分散をZ値で表して定義するが、この値は、マトリックスの中で分散されていない充填剤の量に比例し、完全な混合を100、貧弱な混合を0で示している。
【0123】
本発明のシリカは、エラストマーマトリックスの中に分散させた場合、典型的には、従来技術のシリカを含む対照の混合物よりは、高いZ値を特徴としている。
【0124】
本発明の沈降シリカを含む組成物は、各種の物品を製造するのに使用することができる。少なくとも1種の上述のポリマー組成物を含む最終製品の例としては、たとえば以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:履物のソール、床材、ガス遮断材、難燃材料、並びにさらには工業用部材、たとえば、空中ケーブル用ローラー、家電製品用シール材、液用若しくはガス用パイプのためのシール材、ブレーキ系シール材、(フレキシブル)パイプ、シース材(特にケーブル用シース材)、ケーブル材、エンジンの架台、電池セパレーター、コンベヤベルト、又は伝動ベルト。
【0125】
参考として引用し、本明細書に組み入れた各種の特許、特許出願及び公刊物の開示が、本出願の記述と、用語が不明確になるほどの食い違いがあるようならば、本明細書の記述が優先するものとする。
【0126】
分析方法
本発明の沈降シリカの物理化学的性質は、以下に記載する方法を使用して求めた。
【0127】
CTAB表面積の測定
CTAB表面積(SCTAB)の値は、標準NF ISO 5794-1、付属書Gから誘導した社内的方法(internal method)に従って測定した。その方法は、シリカの「外側(external)」表面上への、CTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド)の吸着に基づいたものである。
【0128】
その方法においては、マグネチックスターラーで、シリカの上にCTABを吸着させた。次いで、シリカと残存CTAB溶液を分離した。過剰の、吸着されなかったCTABを、チトロプロセッサー(titroprocessor)を使用し、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩(以後、「AOT」)を用いた逆滴定により求めたが、その終点は、その溶液の最大濁り度(オプトロード(optrode)により測定)により決定した。
【0129】
装置
光度計の662Metrohmに接続したMetrohm Optrode(波長:520nm);Metrohm Titrator:Titrino DMS 716;Metrohm滴定ソフトウェア:Tiamo。
【0130】
ガラスビーカー(2000mL);メスフラスコ(2000mL);密封ガラスビン(1000mL及び2000mL);使い捨てビーカー(100mL);ミクロピペット(500~5000μL);25mmのディスクエンドを有するマグネチックスターラーバー(参照、VWR 442-9431)(吸着用);マグネチックスターラーバー(棒状)(滴定用);ポリカーボネート遠心管(少なくとも20mL)、遠心分離機(10000rpmの速度が可能なもの);ガラスバイアル(30mL);熱天秤。
【0131】
溶液の調製
5.5g/L濃度のCTAB溶液の調製(pH約9.6に緩衝):約1000mLの蒸留水を含む2000mLのビーカーの中に、25℃で、以下のものを加えた:54.25gのホウ酸溶液([c]=4%);2.60gのKCl、25.8mL(±0.1mL)の水酸化ナトリウム。そのようにして得られた溶液を、15分間撹拌してから、11.00g±0.01gのCTAB粉体(純度99.9%、Merckから購入)を添加した。撹拌してから、その溶液を25℃に保った2000mLのメスフラスコに移し、蒸留水を用いてその容積を2000mLとした。その溶液を、2000mLのガラスビンに移した。CTABの結晶化(20℃で起きる)を避けるために、その溶液は、22℃以上の温度で維持した。
【0132】
AOT溶液の調製:2000mLビーカーの中で、約1200mLの蒸留水をマグネチックスターラーで撹拌しながら加熱して、35℃とした。3.7038gのAOT(純度98%、Aldrichから購入)を添加した。その溶液を2000mLのメスフラスコに移し、放冷して再び25℃にまで冷却させた。蒸留水を用いてその容積を2000mLとし、その溶液を、1000mLのガラスビン2本に移し、それらを、暗所に25℃で保存した。
【0133】
分析の間、すべての装置及び溶液は25℃に保った。
【0134】
それぞれの実験の開始時及び終了時の手順
実験の開始時:溶液は撹拌してから使用した。計量器は使用前にパージした。少なくとも40mLのAOTを、機器の中を通して機器の清浄さを確保し、また、すべての気泡を除去した。実験の終了時:AOT溶液を除去する目的で、計量器をパージする。オプトロードを清浄化する。蒸留水の中にオプトロードを浸漬させる。
【0135】
ブランクファクターの測定
AOT溶液及びCTAB溶液の濃度の経時的な変動を、比R1=V1/m1で表される「ブランクファクター」を毎日測定することにより補正する。
【0136】
100mLの使い捨てビーカーの中に、4.9000g±0.0100gの、5.5g/LのCTAB溶液(m1)を正確に量り込んだ。風袋を設定して、23.0000g±1.0000gの蒸留水(MWATER)を正確に添加した。その溶液を、計量器上でマグネチックスターラー(500rpm)を使用して撹拌状態とし、滴定を開始した。滴定の間は終始、撹拌速度を厳密に一定に保ち、過剰な気泡が発生しないようにしなければならない。
【0137】
V1は、CTAB溶液m1を滴定するのに要したAOT溶液の終点容積である。
【0138】
R1の測定は、少なくとも二重に実施する。R1=V1/m1の標準偏差が、0.010を越えるようなら、標準偏差が0.010以下になるまで滴定を繰り返す。日ごとの比R1は、2回又は3回の測定の平均として計算する。注:オプトロードは、毎回の測定の後で、蒸留水を用いて洗浄し、吸取り紙を用いて乾燥させなければならない。
【0139】
シリカ上へのCTABの吸着
吸着工程の前に、それぞれのシリカのサンプルの湿分含量(%HO)を、熱天秤(温度:160℃)を用い、以下のようにして測定した:アルミニウムカップの風袋を秤量する;約2gのシリカを秤量し、その粉体をカップの上に均等に分散させ、天秤を閉じる;湿分パーセントを記録する。
【0140】
100mLの使い捨てビーカーの中に、0.0100gのシリカ(m0)を正確に量り込んだ。50.0000mL+1.0000mLのCTABのストック溶液(V0)を添加した。その全質量を記録した。その懸濁液を、ディスクエンドを有するマグネチックスターラーバーを使用した450rpmの撹拌プレートの上で40分±1分間撹拌した。40分後に、撹拌プレートからサンプルを取り出した。
【0141】
25~50mLの懸濁液を、遠心分離機のチューブ(容積は、遠心分離機チューブのサイズに合わせた)の中に移し、25℃、10000rpmの速度で35分かけてそれらを遠心分離させた。遠心分離の後、チューブを遠心分離機から、シリカを揺らさないようにしてチューブを穏やかに取り出した。10~20mLのCTAB溶液をガラスバイアルに移し、次いでそれに栓をして、25℃で保った。
【0142】
CTAB溶液の滴定
100mLの使い捨てビーカーの中に、未知の濃度(m2)のCTAB溶液の4.0000g±0.0100gを正確に量り込んだ。
【0143】
風袋をセットし、19.4000g±1.0000gの蒸留水(Mwater)を添加した。その溶液を、計量器上にて500rpmで撹拌し、AOT溶液を用いた滴定を開始した。
【0144】
V2は、m2の量のCTAB溶液を滴定するのに要した、AOTの終点容積である。
【0145】
CTAB表面積のSCTABは、次式:
(式中、
CTAB=シリカの表面積(湿分含量補正を含む)[m/g];
R1=V1/m1;
m1=ブランクとして滴定したCTABストック溶液の質量(kg);
V1=ブランクとしてのCTABストック溶液のm1を滴定するのに要した、AOTの終点容積(L);
R2=V2/m2;
m2=吸着及び遠心分離の後で滴定したCTAB溶液の質量(kg);
V2=吸着及び遠心分離の後で、m2のCTABストック溶液を滴定するのに要したAOTの終点容積(L);
[CTAB]i=CTABストック溶液の濃度(g/L);
V0=シリカを吸着するために使用されたCTABストック溶液の容積(L);
ES=吸着のために使用されたシリカ固形分含量(g)、次式に従って湿分含量補正した:
ES=m0×(100-%HO)/100
ここで、m0=シリカの初期質量(g)である)により計算される。
【0146】
BET表面積の測定
BET表面積のSBETは、ブルナウアー-エメット-テラー法(詳細:標準NF ISO 5794-1、付属書E(2010年6月))に従って判断したが、以下のような調整を加えた:サンプルは、160℃±10℃で予備乾燥させ、P/Pの測定のために使用する分圧は、0.05~0.2の間とした。
【0147】
ディスク遠心分離機(CPS)中での遠心沈降法による粒径分布及び粒径の測定
d50、d16、d84、及びLdの値は、CPS Instruments社により市販されている、遠心光沈降計(photosedimentometer)タイプの「CPS DC 24000UHR」を使用する、ディスク遠心分離機における遠心沈降法によって求めた。この装置には、装置と共に供給された操作用ソフトウェアが備わっている(操作用ソフトウェア、バーション11g)。
【0148】
使用した装置:測定のために必要とされる、以下の物質及び製品が使用された:超音波系:1500Wの発振器タイプのSonics Vibracell VC1500/VCX1500、19mmプローブ付き(コンバーター:CV154+ブースター(部品番号:BHNVC21)+19mmプローブ(部品番号:630-0208))。
【0149】
精度0.1mgの化学天秤(たとえば、Mettler AE260);シリンジ:1.0mL及び2.0mL(20gaの針付き);50mLの縦長(high shape)ガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm);マグネチックスターラー(2cmのスターラーバー付き);超音波操作の際の氷浴用容器。
【0150】
化学物質:脱イオン水;エタノール(96%);スクロース(99%);ドデカン(以上すべて、Merck製);PVC標準(CPS Instrument Inc.製);使用した参照標準の最大ピークは、200~600nmの間(たとえば、237nm)とするべきである。
【0151】
ディスク遠心分離物の調製
測定に際しては、以下のパラメーターを採用した。標準パラメーターの較正には、供給業者から提供されたPVC参照資料の情報を使用した。
【0152】
【0153】
システム構成
測定波長は405nmに設定した。下記のランタイムオプション(runtime option)パラメーターを採用した。
【0154】
【0155】
ソフトウェアのその他のオプションはすべて、装置の製造業者の初期設定のままである。
【0156】
ディスク遠心分離物の調製
遠心ディスクは、24000rpmで30分間回転させる。スクロース(CAS NO.57-50-1)の密度勾配は、以下のようにして求められる。
【0157】
50mLのビーカーの中で、重量で24%のスクロースの水溶液を調製する。50mLのビーカーの中で、重量で8%のスクロースの水溶液を調製する。これらの二つの溶液を別個に均質化させた後、それぞれの溶液から、2mLのシリンジを使用してサンプルを採取し、それを、以下の順序で、回転ディスクの中に注入する。
サンプル1:1.8mLの24重量%溶液
サンプル2:1.6mLの24重量%溶液+0.2mLの8重量%溶液
サンプル3:1.4mLの24重量%溶液+0.4mLの8重量%溶液
サンプル4:1.2mLの24重量%溶液+0.6mLの8重量%溶液
サンプル5:1.0mLの24重量%溶液+0.8mLの8重量%溶液
サンプル6:0.8mLの24重量%溶液+1.0mLの8重量%溶液
サンプル7:0.6mLの24重量%溶液+1.2mLの8重量%溶液
サンプル8:0.4mLの24重量%溶液+1.4mLの8重量%溶液
サンプル9:0.2mLの24重量%溶液+1.6mLの8重量%溶液
サンプル10:1.8mLの8重量%溶液
【0158】
ディスクにそれぞれを注入する前に、約0.2mLの空気を吹込み、その後で液体をこぼさないよう注意しながら、数秒間手で軽く撹拌することにより、シリンジ中の2種の溶液を均質化させる。
【0159】
これらの注入物(その全容量は18mLである)は、測定されるサンプルを注入する際に現れる可能性がある、ある種の不安定さを排除するのに有用な密度勾配を作り出すことを目的としている。密度勾配を蒸発から保護するために、その回転ディスクの中に、2mLのシリンジを使用して、1mLのドデカンを加える。次いでそのディスクを、24000rpmで60分間回転させてから、任意の第一の測定を行う。
【0160】
サンプル調製
50mLの縦長のガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm)の中に3.2gのシリカを量り込み、40mLの脱イオン水を添加して、シリカの8重量%懸濁液を得た。その懸濁液をマグネチックスターラー(最低20秒間)で撹拌してから、そのビーカーを、氷水で満たした結晶皿の中に置いた。マグネチックスターラーを取り出し、その結晶皿を、ビーカーの底面から1cmのところに置いた超音波プローブ下に置いた。その超音波プローブは、その最大振幅の56%に設定し、8分間作用させた。超音波処理が終了したら、そのビーカーをもう一度マグネチックスターラーの上に置き、2cmのマグネチックスターラーバーを用いて、最低でも500rpmで撹拌してから、サンプリングした。
【0161】
その超音波プローブは、適切な作動条件下にあらねばならない。次のチェックを実施し、否定的な結果が得られたのなら新しいプローブを使用するべきである:プローブの末端の物理的健全性の目視チェック(精密キャリパーで測定して粗さの深さ(depth of roughness)が2mm未満);市販のシリカのZeosil(登録商標)1165MPのd50測定値が、93nm±3nm。
【0162】
分析
それぞれのサンプルを分析する前に、較正標準を記録した。それぞれの場合において、0.1mLのPVC標準(CPS Instrumentsによって提供され、その特性がソフトウェアの中に前もって取り込まれている)を注入した。このPVC標準の最初の注入と同時に、ソフトウェアにおける測定を開始するということが重要である。100μLの前もって超音波処理したサンプルを注入するより前に、その測定が注入と同時に開始されることを確認することによって、その装置の確証を受けておかなければならない。
【0163】
これらの注入は、クリーンな1mLのシリンジ2本を用いて実施した。
【0164】
その測定の最後(それは、より小さな直径(そのソフトウェアでは、0.02μmとされている)の粒子が全部沈降するのに必要な時間が経過したときに到達する)に、それぞれの直径等級の比率が得られた。そのようにして得られた曲線が、凝集物のサイズ分布と呼ばれる。
【0165】
結果
d50、d16、d84、及びLdの値は、線形目盛で描かれた分布に基づいている。直径の粒径分布関数を積分することによって、「累積(cumulative)」分布を得ることが可能となるが、それはすなわち、最小直径と、対象としている直径との間の粒子の質量を合計したものである。
d50は、それよりも下及び上で母集団の質量による50%が見出される直径である。d50は、メジアン径(median size)とも呼ばれ、すなわち、そのシリカ粒子の直径である。
d84は、それより下では、粒子の全質量の84%が測定される、直径である。
d16は、それより下では、粒子の全質量の16%が測定される、直径である。
Ldは、式:Ld=(d84-d16)/d50によって計算される。
【0166】
アルミニウムの含量の測定
アルミニウムの量は、XRF、波長分散型蛍光X線分光法を使用して測定した(WDXRF Panalytical装置を使用)。サンプルの分析は、ヘリウム下、直径4cmのセル中、薄いProleneフィルム(4μmのChemplex(登録商標))によってカバーされたセル中に含まれるシリカ粉体を使用し、Al/SiOが0.1~3.0%の範囲にわたって実施した。
【0167】
AlとSiの蛍光は、以下のパラメーターを使用して測定した:Al Kα角2θ=144.9468゜(20秒)、バックグランド信号角2θ=-1.2030゜(4秒)、Si Kα角2θ=109.1152゜(10秒)、管出力4kW(32kV、125mA)、PE002結晶及び550μmコリメーター、ガスフラックス検出器。
【0168】
3.0%を越えるAl/SiOを含むサンプルにおけるアルミニウムの含量は、フッ化水素酸の中でサンプルを(たとえば、0.2~0.3gのSiOを、1mLの40%フッ化水素酸で)分解させた後に、ICP OES(誘導結合プラズマ発光分光法)の手段により求めた。その透明な溶液を、予想されるAl濃度に従って、5%硝酸水溶液で希釈した。Alの特定波長(396.152nm)で測定された強度を、同様の分析条件下で、アルミニウム標準(0.10、0.20、1.00、及び2.00mg/Lでの4標準)を用いて得られた、0.05~2.00mg/Lの範囲にある較正曲線と比較した。固形物の中の量は、希釈因子と、測定したシリカの乾燥抽出物(dry extract)とからの計算により得た。
【0169】
水銀ポロシメーター法による細孔容積及び細孔径の測定
細孔容積及び孔径分布は、Micromeritics AutoPore(登録商標)IV 9520ポロシメーターを使用して求め、ウォッシュバーンの式で、接触角θ=140゜、表面張力γ=485dyne/cmを用いて計算した。それぞれのサンプルは、測定前に、オーブン中、大気圧下、200℃で2時間かけて乾燥させた。測定で良好な再現性を得る目的で、タイプ10のペネトロメーター(penetrometer)の中に、シリカを、0.001gの精度の出発重量で入れて、「使用されたステム容積(stem volume used)」、すなわちペネトロメーターを充填するのに消費される水銀(Hg)の容積%が、40%から80%までになるようにした。次いで、そのペネトロメーターを、徐々に真空引きして50μmHgとし、この真空で5分間保持した。
【0170】
そのAutoPore(登録商標)装置は、Software Version IV 1.09を使用して運転した。生データへの補正はまったく実施しなかった。測定範囲は、3.59kPa(0.52psi)から413685kPa(60000psi)までであり、少なくとも100個の測定点を使用した(3.59kPa(0.52psi)から193kPa(28psi)まで(10秒の平衡時間)の19個の測定点、及び1.93kPa(0.28psi)から413685kPa(60000psi)まで(20秒の平衡時間)の81個の測定点)。適切であれば、漸増圧入体積(incremental intrusion volume)が0.5mL/gよりも大であるならば、ソフトウェアにさらなる測定点を導入する。圧入曲線は、装置付属のソフトウェアの「スムーズ・ディファレンシャルズ(smooth differentials)」機能の手段により平滑化した。
【0171】
3.5nmから5μmまでの細孔直径範囲で、Log Differential Intrusion(mL/g)対孔径のデータの解析を行った。
【0172】
Z値の測定方法
架橋させた後で、Z値を、ISO 11345に準拠し、S.Otto et al.,Kautschuk Gummi Kunststoffe,58 Jahrgang,NR 7-8/2005に記載の方法に従って測定した。
【0173】
「分散されなかった領域(area not dispersed)」のパーセントは、30゜の入射光での、サンプルの表面のカメラ観察を使用して計算する。輝点(bright point)は、装填物(charge)及び凝集体に関連し、その一方で暗点(dark point)は、ゴムマトリックスに関連する。その画像を、デジタル加工によって白黒の画像に転換させると、上で引用したS.Ottoの文献に記載されているように、「分散されなかった領域」のパーセントを求めることが可能となる。Zの値が高いほど、そのエラストマーマトリックスの中の装填物の分散が良好であり(Zの値の100であることは、分散が完全であることに相当し、Zの値が0であることは、分散があまりよくない(mediocre))。
【0174】
Z値は、Dynisco社によって、その操作モード及びその操作ソフトウェアのDisperDataが提供されているDisperGrader(登録商標)1000装置によって測定した、装填物が分散されていない面積パーセントに基づき、次式に従って計算される:
Z=100-(分散されていない面積パーセント)/0.35
【実施例
【0175】
実施例1
25Lのステンレス鋼反応器の中に、16.6Lの精製水及び260gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0176】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を115g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速115g/分で、そして7.7重量%の硫酸溶液を流速138g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.63の値に保持されるようにした。この工程の最後では、115g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.63の値に保持されるようにした。
【0177】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、同じ流速で保持した。
【0178】
次いで、182g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0179】
ケイ酸ナトリウムを流速182g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速10.5g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0180】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0181】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS1を得た。
【0182】
沈降シリカS1の性質を、表Iに示す。
【0183】
実施例2
25Lのステンレス鋼反応器の中に、16.7Lの精製水及び260gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0184】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.4;SiO濃度=19.4重量%)を114g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速114g/分で、そして硫酸溶液(7.7重量%)を流速137g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.53の値に保持されるようにした。この工程の最後では、114g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.53の値に保持されるようにした。
【0185】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、同じ流速で保持した。
【0186】
次いで、181g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0187】
ケイ酸ナトリウムを流速181g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速10g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0188】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0189】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS2を得た。
【0190】
沈降シリカS2の性質を、表Iに示す。
【0191】
実施例3
25Lのステンレス鋼反応器の中に、16.7Lの精製水及び210gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0192】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.45;SiO濃度=19.4重量%)を115g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速115g/分で、そして7.7重量%の硫酸溶液を流速140g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.50の値に保持されるようにした。この工程の最後では、115g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.50の値に保持されるようにした。
【0193】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、93g/分の流速で保持した。
【0194】
次いで、181g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0195】
ケイ酸ナトリウムを流速181g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速10g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0196】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0197】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS3を得た。
【0198】
沈降シリカS3の性質を、表Iに示す。
【0199】
実施例4
25Lのステンレス鋼反応器の中に室温で、16.7Lの精製水及び260gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0200】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を115g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速115g/分で、そして7.7重量%の硫酸溶液を流速139g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.97の値に保持されるようにした。この工程の最後では、115g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.97の値に保持されるようにした。
【0201】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、同じ流速で保持した。
【0202】
次いで、182g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0203】
ケイ酸ナトリウムを流速182g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速10g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0204】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0205】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS4を得た。
【0206】
沈降シリカS4の性質を、表Iに示す。
【0207】
実施例5
25Lのステンレス鋼反応器の中に、16.7Lの精製水及び260gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0208】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を114g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速114g/分で、そして7.7重量%の硫酸溶液を流速142g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.74の値に保持されるようにした。この工程の最後では、115g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.74の値に保持されるようにした。
【0209】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、同じ流速で保持した。
【0210】
次いで、182g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96%硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0211】
ケイ酸ナトリウムを流速182g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速10g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0212】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0213】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS5を得た。沈降シリカS5の性質を、表Iに示す。
【0214】
実施例6
25Lのステンレス鋼反応器の中に、16.7Lの精製水及び260gのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に硫酸(濃度:7.7重量%)を導入して、pH値が3.90になるようにした。
【0215】
その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.42;SiO濃度=19.1重量%)を116g/分の流速で、45秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速116g/分で、そして硫酸溶液を流速139g/分で、同時に、14分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.85の値に保持されるようにした。この工程の最後では、115g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、10分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.00の値に保持されるようにした。
【0216】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、120g/分の流速で保持した。
【0217】
次いで、182g/分の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96%硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0218】
ケイ酸ナトリウムを流速182g/分で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:11.6重量%-[NaO]:19.9重量%)を流速4g/分で、並びに96重量%の硫酸溶液を同時に、15分間の時間をかけて導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0219】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.80の値とした。その反応混合物を、5分かけて養生した。スラリーが得られた。
【0220】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS6を得た。
【0221】
沈降シリカS6の性質を、表Iに示す。
【0222】
実施例7
2500Lのステンレス鋼反応器の中に、1129Lの水及び29.7kgのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施し、撹拌して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に96重量%の硫酸溶液を導入して、pH値が3.90になるようにした。その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.46;SiO濃度=19.4重量%)を353L/時間の流速で、61秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速445L/時間、水を流速575L/時間、及び96重量%の硫酸溶液を、同時に15分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。
【0223】
この工程の最後では、445L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、9分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、582L/時間の流速で保持した。
【0224】
次いで、703L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0225】
15分間の時間で、以下のものを同時に導入した:ケイ酸ナトリウムを流速703L/時間で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:13.2重量%、[NaO]:22.9重量%)を流速47.6kg/時間で、そして96重量%の硫酸溶液。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0226】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.50の値とした。次いで水を導入して、温度を85℃に下げ、その反応混合物を5分間かけて養生した。スラリーが得られた。
【0227】
その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS7を得た。
【0228】
沈降シリカS7の性質を、表Iに示す。
【0229】
実施例8
2500Lのステンレス鋼反応器の中に、1124Lの水及び29.7kgのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、撹拌しながらこの温度で実施して、反応媒体の均質性を保持した。その反応器の中に96重量%の硫酸溶液を導入して、pH値が3.90になるようにした。その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの重量比=3.38;SiO濃度=19.1重量%)を367L/時間の流速で、59秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速445L/時間、水を流速575L/時間、及び96重量%の硫酸溶液を、同時に15分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。この工程の最後では、445L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、9分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。
【0230】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、591L/時間の流速とした。
【0231】
次いで、706L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0232】
15分間の時間で、以下のものを同時に導入した:ケイ酸ナトリウムを流速706L/時間で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:12.2重量%、[NaO]:19.4重量%)を流速47.6kg/時間で、そして96重量%の硫酸溶液。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0233】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.50の値とした。次いで水を導入して、温度を85℃に下げ、そしてその反応混合物を5分かけて養生した。スラリーが得られた。その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS8を得た。
【0234】
沈降シリカS8の性質を、表Iに示す。
【0235】
実施例9
2500Lのステンレス鋼反応器の中に、1123Lの水及び29.7kgのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施した。その反応器の中に96重量%の硫酸溶液を導入して、pH値が3.90になるようにした。その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの比=3.43;SiO濃度=19.2重量%)を380L/時間の流速で、59秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速445L/時間、水を流速575L/時間、及び96重量%の硫酸溶液を、同時に15分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.5の値に保持されるようにした。この工程の最後では、445L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、9.5分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが4.5の値に保持されるようにした。
【0236】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、592L/時間の流速とした。
【0237】
次いで、706L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0238】
15分間の時間で、以下のものを同時に導入した:ケイ酸ナトリウムを流速706L/時間で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:12.2重量%、[NaO]:19.4重量%)を流速47.6kg/時間で、そして96重量%の硫酸溶液。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0239】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.7の値とした。次いで水を導入して、温度を85℃に下げ、そしてその反応混合物を5分かけて養生した。スラリーが得られた。その反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS9を得た。沈降シリカS9の性質を、表Iに示す。
【0240】
実施例10
2500Lのステンレス鋼反応器の中に、1124Lの水及び29.7kgのNaSO(固体)を導入した。そのようにして得られた溶液を撹拌し、加熱して92℃になるようにした。全反応を、この温度で実施した。その反応器の中に96重量%の硫酸溶液を導入して、pH値が3.90になるようにした。その反応器の中に、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaOの比=3.39;SiO濃度=19.2重量%)を367L/時間の流速で、59秒間かけて導入した。このプロセス全体で、これと同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を流速445L/時間、水を流速575L/時間、及び96重量%の硫酸溶液を、同時に15分間の間導入した。硫酸の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。この工程の最後では、445L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを同時に、9.5分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが3.90の値に保持されるようにした。
【0241】
次いで、酸の導入は停止するが、その一方でケイ酸ナトリウムの添加は、その反応媒体が8.00のpH値に達するまで、591L/時間の流速とした。
【0242】
次いで、706L/時間の流速のケイ酸ナトリウムと96重量%の硫酸溶液とを、同時に、3分間の間導入した。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0243】
15分間の時間で、以下のものを同時に導入した:ケイ酸ナトリウムを流速706L/時間で、アルミン酸ナトリウム溶液([Al]:12.2重量%、[NaO]:19.4重量%)を流速47.6kg/時間で、そして96重量%の硫酸溶液。96重量%の硫酸溶液の流速を調節して、その反応媒体のpHが8.00の値に保持されるようにした。
【0244】
この同時添加の終了時に、96重量%硫酸を用いて、その反応媒体のpHを、4.60の値とした。次いで水を導入して、温度を85℃に下げ、そしてその反応混合物を5分かけて養生した。スラリーが得られた。それぞれの反応スラリーを濾過し、フィルタープレス上で洗浄した。そのようにして得られたケーキを、機械的に砕解した。得られたスラリーをノズルスプレードライヤーの手段により乾燥させて、沈降シリカS10を得た。沈降シリカS10の性質を、表Iに示す。
【0245】
比較例1
国際公開第03/106339A1号パンフレットの実施例2を、記述に合わせて再現した。沈降シリカCS1の性質を、表Iに示す。
【0246】
比較例2
国際公開第2011/117400A1号パンフレットの実施例2を、記述に合わせて再現したが、ただし、Alの量を2.7重量%から1.4重量%に変更し、そして開始温度を83℃から81℃に下げることによって、CTAB比表面積SCTABを、135m/gから約150m/gの値に調節した。沈降シリカCS2の性質を、表Iに示す。
【0247】
比較例3
国際公開第96/30304A1号パンフレットの実施例3を、実質的に記載の通りに再現した。沈降シリカCS3の性質を、表Iに示す。
【0248】
【0249】
表IIに見られるように、公知の、同程度のCTAB表面積の、Alを含む沈降シリカと比較して、本発明のシリカは、一般的に、より大きな「モード」、すなわち、より大きい細孔の平均サイズを特徴としている。
【0250】
【0251】
実施例11及び比較例4~5
ブラベンダータイプのインターナルミキサー(70mL)の中で、エラストマー性組成物を調製した。それらの組成を下の表IIIに示す(単位、100部のエラストマーあたりの重量部(phr))。
【0252】
【0253】
ゴム組成物を調製するためのプロセス:
ゴム組成物を調製するためのプロセスは、二つの連続した調製相で実施したが、その第一相は、高温での熱化学的処理であり、それに続く第二相は、加硫系を導入するための、110℃未満の温度での機械的処理であった。
【0254】
その第一相は、インターナルミキサータイプの、Brabenderブランドの混合装置(容量70mL)を使用して実施した。その充填係数(filling coefficient)は0.75であった。約150~170℃の落下温度(dropping temperature)を有する混合物が得られるように、初期温度及びローター速度を設定した。
【0255】
第一相の第一パスにおいては、エラストマー及び補強性充填剤(数回に分けて導入)を、カップリング剤及びステアリン酸と混合した。混合時間は、4分~10分の間であった。
【0256】
その混合物を(100℃未満の温度にまで)冷却した後で、第二パスによって、酸化亜鉛並びに保護剤/抗酸化剤(特に、6-PPD)を組み入れることが可能となる。このパスの時間は、2分~5分の間である。その充填係数は0.73であった。
【0257】
その混合物を(100℃未満の温度にまで)冷却した後で、その第二相の間に、加硫系(硫黄及び加硫促進剤たとえば、CBS)を添加する。それは、50℃に予熱しておいた、オープンミルで実施した。この相の時間は、2分~6分の間である。
【0258】
次いで、それぞれの最終混合物を、カレンダー加工して、2~3mmの厚みを有するプラックの形態とした。
【0259】
その「生の(raw)」(未硬化の)混合物のレオロジー的性質を評価することによって、加硫時間及び加硫温度を最適化できるようになる。
【0260】
次いで、最適硬化(T98)で加硫させた混合物の機械的及び動的性質を測定した。
【0261】
レオロジー的性質
生の状態の組成物について、測定を実施した。標準NF ISO 3417に従い、Monsanto ODRレオメーターを使用し、160℃で実施したレオロジー試験に関する結果を表IIIに示す。
【0262】
以下のデータは、時間の関数とした、トルクにおける変動曲線から求めた:
- 最小トルク(Tmin):考慮中の温度での組成物の粘度を反映;
- 最大トルク(Tmax);
- 時間T90:完全加硫の90%に相当する加硫状態を得るのに必要な時間
- 時間T98:完全加硫の98%に相当する加硫状態を得るのに必要な時間(この時間が、最適加硫とみなされる);並びに
- スコーチ時間TS2:考慮中の温度(160℃)で、最小トルクより2ポイント上まで上げるのに必要な時間に相当し、その間に、加硫を開始させることなく、この温度でその生の混合物を加工することが可能な時間を反映している(混合物の硬化はTS2から始まる)。
【0263】
得られた結果を表IVに示す。
【0264】
加硫物の性質
それらの測定は、160℃の温度で、最適加硫された組成物(T98)について実施した。
【0265】
一軸の引張試験は、標準NF ISO 37に従い、Instron 5564試験機で、H2タイプの試験片を用い、500mm/分の速度で実施した。x%モジュラスは、x%の引張歪みのところで測定した応力に相当し、MPaの単位で表される。
【0266】
加硫物についてのショアーA硬度の測定は、標準ASTM D 2240に従って実施した。得られた値は、3秒かけて測定したものである。
【0267】
損失係数(tanδ)及び動的引張弾性率(E’)の値は、加硫させたサンプル(円筒状サンプル、断面積95mm、高さ14mm)について記録した。サンプルには、正弦波変形(sinusoidal deformation)10%、動的誘導(dynamic solicitation)4%で、あらかじめ歪みをかけておいた。測定は、Metravib VA 3000を用い60℃、振動数10Hzで実施する。
【0268】
測定した性質を表IVに示す。
【0269】
【0270】
比較例4の組成物に対して、シリカS3を含む実施例11の組成物は、より高い破断時伸びと、より良好なエラストマー性組成物中への分散能(Z値)を示す。所定のエラストマー性組成物の中への、各種の充填剤の分散性能における違いは、Z値が約10ポイントも違えば、顕著になると考えることができる。比較例5の組成物と比較して、シリカS3を含む実施例11の組成物は、より高い破断時伸びと、より低いエネルギー散逸(tanδ(60℃))とを示し、これは、より低い熱の蓄積に関係する。
【0271】
実施例12及び比較例6
ブラベンダータイプのインターナルミキサー(380mL)の中で、エラストマー性組成物を調製した。それらの組成を表Vに示す(単位、100部のエラストマーあたりの重量部(phr))。
【0272】
【0273】
ゴム組成物を調製するためのプロセス
ゴム組成物を調製するためのプロセスは、二つの連続した調製相で実施したが、その第一相は、高温での熱化学的処理であり、それに続く第二相は、加硫系を導入するための、110℃未満の温度での機械的処理であった。
【0274】
その第一相は、インターナルミキサータイプの、Brabenderブランドの混合装置(容量380mL)を使用して実施した。約160℃の落下温度を有する混合物が得られるように、初期温度及びローター速度を設定した。
【0275】
第一相の間に、エラストマー、補強性充填剤(数回に分けて導入)を、カップリング剤及びその他の添加剤(DPG、ステアリン酸、樹脂、ZnO、6-PPD)と混合した。その時間は、5分~7分の間であった。
【0276】
その混合物を(温度100℃未満に)冷却した後で、第二相の間に加硫系を添加した。それは、50℃に予熱しておいた、オープンミルで実施した。この相の時間は、2分~6分の間である。
【0277】
次いで、それぞれの最終混合物を、カレンダー加工して、2~3mmの厚みを有するプラックの形態とした。
【0278】
加硫物の性質
160℃での加硫の後に測定を実施した。モジュラスは先に説明したようにして測定した。
【0279】
損失係数(tanδ)の値及び動的剪断における弾性率の大きさ(ΔG’)は、加硫させたサンプル(断面積8mm、高さ7mmの平行六面体試験片)について記録した。そのサンプルは、温度40℃、振動数10Hzで、二重交番正弦波剪断歪みにかける。歪み振幅スイーププロセスは、外向-戻りサイクルで実施し、0.1%から50%へと外向させ、次いで50%から0.1%へと戻すように進行させた。表VIに示した数値は、戻りの歪み振幅スキャンから得られたものであり、0.1%歪みと50%歪みの値の間での、損失係数の最大値(tanδmax)及び弾性率(ΔG’)の大きさに関連している(ペイン効果)。
【0280】
【0281】
本発明のシリカを含む実施例12の組成物は、従来技術による沈降シリカを含む組成物に比較して、顕著に低いエネルギー散逸値(ΔG’及びtanδmax)と、良好な機械的性質を示している。
【0282】
実施例13
本発明の沈降シリカは、触媒又は触媒担体として有利に使用することができる。2-メチル-3-ブチン-2-オールから3-メチル-3-ブテン-1-インへの変換に対する、本発明のシリカの触媒性能を、従来技術のシリカのそれと比較したが、それには、Pernot et al.,Applied Catalysis,1991,vol.78,p.213に記載された試験を使用し、以下に記載の手順に従った。
【0283】
100mgの量のシリカを、Pyrex反応器の中に入れた。そのシリカを、流量20mL/分のN気流下、180℃で2時間の前処理にかけた。
【0284】
反応器中の温度は、180℃に設定した。所定量の2-メチル-3-ブチン-2-オールを、2分の時間をかけて、N中1.73kPaの2-メチル-3-ブチン-2-オールの混合物を20mL/分の流量でフィードすることにより、反応器の中に定期的に注入したが、これは、0.85mmol/時間の、2-メチル-3-ブチン-2-オールの時間あたりのモル流量に相当する。
【0285】
それぞれの注入が終わったときに、反応器出口でのガスストリームをガスクロマトグラフィーによって分析して、反応生成物の成分とそれらの量を調べた。
【0286】
この試験の際の、所定の時間(t)での2-メチル-3-ブチン-2-オールの転化度(DC)は、次式に従って計算した:
DC=(Cini-C)/Cini
ここで、Ciniは、反応前の2-メチル-3-ブチン-2-オールの量であり、そしてCは、反応時間tでの2-メチル-3-ブチン-2-オールの量を表している。
【0287】
2-メチル-3-ブチン-2-オールから3-メチル-3-ブテン-1-インへの転化についての選択率(S)は、反応器出口でのガスストリーム中の、3-メチル-3-ブテン-1-インの、前記ガスストリームの中に見出される反応生成物の全量に対する比率と定義され、次式に従って計算した:
=C/Σ
ここで、Cは、反応生成物iの量であり、そしてΣは、反応器出口でのガスストリーム中の、ガスクロマトグラフィーによって同定された反応生成物の合計量を表す。
【0288】
20分間の反応の後で、次のような結果が観察された。
【0289】
【0290】
従来技術のシリカに比較して、本発明のシリカは、出発物質の2-メチル-3-ブチン-2-オールの、より高い転化度と、さらには、目標反応生成物(3-メチル-3-ブテン-1-イン)への、より高い選択率とを示している。