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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】構造監視システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230110BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230110BHJP
   F03D 13/20 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
F03D13/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020208814
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2021099328
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】108146814
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513185951
【氏名又は名称】財團法人船舶▲曁▼▲海▼洋▲産▼▲業▼研發中心
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鍾 承憲
(72)【発明者】
【氏名】呉 華桐
(72)【発明者】
【氏名】黄 心豪
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084579(JP,A)
【文献】特開2019-053024(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0123733(KR,A)
【文献】特開2018-141663(JP,A)
【文献】特開2008-232708(JP,A)
【文献】特開2017-090145(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170723(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0103933(US,A1)
【文献】特開2007-272558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 -13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風車である構造物と、前記構造物に取り付けられ、発熱体である複数のマーキングユニットと、
外力を受けて振動を生じた場合随時に前記複数のマーキングユニットを遠隔監視し、赤外線サーマルイメージャーである監視装置と、
前記監視装置に接続されたデータ受信モジュールと、前記データ受信モジュールに接続されたデータ処理モジュールと、を含み、前記監視装置に接続されたデータ処理装置と、
を含む構造監視システム。
【請求項2】
前記データ処理装置は、前記データ受信モジュール又は前記データ処理モジュールに接続されたデータストレージモジュールをさらに含む請求項1に記載の構造監視システム。
【請求項3】
前記発熱体は、電熱プレートである請求項1に記載の構造監視システム。
【請求項4】
前記監視装置は、各前記マーキングユニットに生じる前記構造物の構造変位を監視する請求項1に記載の構造監視システム。
【請求項5】
前記データ処理モジュールは、各前記マーキングユニットに生じる前記構造物の構造変位に基づいて各マーキングユニットの変位信号を取得する請求項に記載の構造監視システム。
【請求項6】
前記データ処理モジュールは、前記変位信号に基づいて前記構造物のモーダルパラメータを計算する請求項に記載の構造監視システム。
【請求項7】
前記モーダルパラメータは、自然周波数、モード形状及び減衰を含む請求項に記載の構造監視システム。
【請求項8】
(A)発熱体である複数のマーキングユニットを洋上風車である構造物に取り付けるステップ、
(B)外力を受けて振動を生じた場合随時に、赤外線サーマルイメージャーである監視装置で各前記マーキングユニットに生じる前記構造物の構造変位を監視して、各前記マーキングユニットの変位画像を取得するステップ、
(C)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各前記マーキングユニットの変位信号を取得するステップ、
(D)各前記マーキングユニットの前記変位信号に基づき前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップと、を含む構造監視方法。
【請求項9】
ステップ(A)において、前記発熱体は、電熱プレートである請求項に記載の構造監視方法。
【請求項10】
前記変位画像、前記変位信号又は前記モーダルパラメータを保存するステップ(E)をさらに含む請求項に記載の構造監視方法。
【請求項11】
(I)発熱体である複数のマーキングユニットを洋上風車である構造物に取り付けるステップ、
(J)外力を受けて振動を生じた場合随時に、赤外線サーマルイメージャーである監視装置で所定時間間隔で前記マーキングユニットの一部に生じる前記構造物の構造変位を監視して、マーキングユニットの一部の変位画像を取得するステップ、
(K)各前記マーキングユニットの前記変位画像を取得するまでステップ (J)を繰り返すステップ、
(L)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各前記マーキングユニットの変位信号を取得するステップ、
(M)各前記マーキングユニットの前記変位信号を再編成して、前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップと、を含む構造監視方法。
【請求項12】
ステップ(I)において、前記発熱体は、電熱プレートである請求項11に記載の構造監視方法。
【請求項13】
前記変位画像、前記変位信号又は前記モーダルパラメータを保存するステップ(N)をさらに含む請求項11に記載の構造監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造監視システム及び方法、特に、非破壊で監視する構造監視システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造ヘルスモニタリング(Structural Health Monitoring、SHM)は、構造に損傷があるかどうかを非破壊で検出又は監視して構造運用への影響を低減する。構造ヘルスモニタリングシステムは、通常センサー、データ収集、分析システム、監視センター及び各種ソフト・ハードウェアを通じて、構造物全体の健全性を継続的に監視し、構造の損傷を早期に評価し識別して壊滅的な損傷を予防する以外に、損傷の発生原因を究明して、次世代の構造設計を改善することもできる。
【0003】
現在構造ヘルスモニタリングは、加速度計、ひずみ計などの従来のセンサーを汎用とするが、従来のセンサーに、高価で、長期間の設置、センサーの疲労及び煩雑な配線を含む様々な問題があることで、施工者の不便等を招いてきた。一般的に長さ50mの風車を例にすると、数百個以上のひずみ計を貼り付けて監視する必要がある場合があった。
【0004】
上記の問題点を克服するため、一部の専門家は、画像計測法で構造ヘルスモニタリングすることを提案していた。近年、画像計測法は、様々な実験力学に幅広く使用されており、センサー貼り付けの従来計測と比較して、画像計測が非接触式の計測技術を提供し、計測対象物を干渉しないという状態で全域的な計測を実施できる。しかしながら、画像計測は、フィールドテストで照明の変化、ターゲットのオクルージョン、影と背景の干渉などの多くの困難に遭遇した場合も画像計測の結果に影響を及ぼしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みて、視界不良の環境又は障害物によって遮られている環境において従来の画像装置が計測できないという問題を効果的に解決することができる構造監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による前記構造監視システムは、構造物に取付けられた複数のマーキングユニットと、前記複数のマーキングユニットを遠隔監視するための監視装置と、前記監視装置に接続されたデータ処理装置と、を含む。前記データ処理装置は、前記監視装置に接続されたデータ受信モジュールと、前記データ受信モジュールに接続されたデータ処理モジュールと、を含む。
【0007】
さらに言えば、本発明の別の態様は、次のステップ(A)~(D)を含む構造監視方法をさらに提案する。すなわち、(A)複数のマーキングユニットを構造物に取付けるステップ、(B)各マーキングユニットに生じる構造変位を監視して、各マーキングユニットの変位画像を取得するステップ、(C)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各マーキングユニットの変位信号を取得するステップ、(D)各マーキングユニットの前記変位信号に基づき前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップ。
【0008】
また本発明のさらに別の態様は、次のステップ(I)~(M)を含む別の構造監視方法を提案する。すなわち(I)複数のマーキングユニットを構造物に取り付けるステップ、(J)所定時間間隔でマーキングユニットの一部に生じる構造変位を監視して、マーキングユニットの一部の変位画像を取得するステップ、(K)各マーキングユニットの前記変位画像を取得するまでステップ(J)を繰り返すステップ、(L)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各マーキングユニットの変位信号を取得するステップ、(M)各マーキングユニットの前記変位信号を再編成して、前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップ。
【0009】
上記本発明の上記概要は、本発明の幾つかの態様及び技術的特徴に対し基本的な説明を行うことを目的とする。発明の概要は、本発明の詳細な説明ではないため、その目的は特別に本発明のキーとなる或いは重要要素を挙げることなく、本発明の範囲を画定するために用いられることはなく、単に本発明のいくつかの概念を簡潔に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい実施例に係る構造監視システムの模式図である。
図2】本発明の好ましい実施例に係る洋上風車構造及びマーキングユニットの模式図である。
図3】本発明の好ましい実施例に係る構造監視方法のフローチャートである。
図4】本発明の別の好ましい実施例に係る構造監視方法のフローチャートである。
図5】自然環境において加速度センサーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。
図6】自然環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。
図7】夜間の暗闇環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。
図8】雲霧・水蒸気環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。
図9】障害物のある環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の技術的特徴及び実用効果を理解し、明細書の内容に基づいて実施することができるように、以下、好ましい実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
維持保全・運用工事において、保全コストを削減すると共に構造オペレーションへの影響を減らすことで、構造に著しい損傷又は故障が生じるのを防ぐため、信頼できる構造ヘルスモニタリングシステム(以下、「非破壊性モニタリングシステム」ともいう。)及び方法を発展させることは重要な課題である。これにより、本発明は、構造物の応答を記録するため、赤外線サーマルイメージャーが監視機器、構造物に取り付けられた発熱体を構造マーキングポイントとする構造監視システム及び方法を提案する。本システムは、赤外線熱画像技術でマーキングポイントを監視するため、視界不良の環境又は障害物によって遮られている環境で使用でき、従来の技術が直面している問題点を効果的に解決できる。
【0013】
まず、図1を参照すると、本発明の好ましい実施例の構造監視システムの模式図である。図1に示すように、本発明の構造監視システム1は、構造物100に取り付けられた複数のマーキングユニット10と、前記複数のマーキングユニット10を遠隔監視するための監視装置20と、前記監視装置20に接続されたデータ処理装置30と、を含む。前記データ処理装置30は、前記監視装置20に接続され、前記監視装置20が監視した情報を受信するためのデータ受信モジュール32と、前記データ受信モジュールに接続され、それらのデータをさらに計算や分析するためのデータ処理モジュール34と、を含む。
【0014】
また、前記データ処理装置30は、前記データ受信モジュール32及び/又は前記データ処理モジュール34に接続されたデータストレージモジュール36をさらに含み、前記データストレージモジュール36が前記データ受信モジュール32で受信したストレージモジュール、及び/又は前記データ処理モジュール34によって計算・分析された情報を保存できることで、その後構造物100への維持保全・運用を容易にする。
【0015】
本実施例において、構造物100は、橋脚、風車、灯台又は建物等であり得るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本実施例において、用いられる監視装置20は、赤外線サーマルイメージャー(Infrared thermal imager)であり、構造物100に取り付けられた前記複数のマーキングユニット10が前記赤外線サーマルイメージャーによって検出されることができる電熱プレートなどの発熱体であり、赤外線サーマルイメージャーを介して検出されることができる発熱体が、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0017】
具体的に、本発明の構造監視システム1の運用方法は、複数のマーキングユニット10(ここでは、電熱プレート)を構造物100に分散して取り付け、前記構造物100から離れたところに監視装置20(ここでは赤外線サーマルイメージャー)を架設して、随時これらマーキングユニット10を遠隔検出する。構造物100が外力を受けて振動(例えば地震)を生じた場合、又は決定論的関数では記述できないが特定の規則的なランダム振動(突風の作用や応答又は洋上風車あるいは海上ボーリング用プラットフォームが受けた波浪の作用)が生じた場合、各マーキングユニット10にわずかな構造変位を生じさせる。この時、前記監視装置20は、各マーキングユニット10の変位(熱)画像を撮影・記録すると共にデータ処理装置30に伝送する。
【0018】
データ処理装置30のデータ受信モジュール32は、これら変位画像を受信した後、データ処理モジュール34が画像処理技術で前記変位画像を各マーキングユニット10の変位信号に変換し、次いで変位信号を通じて構造物100の自然周波数、モード形状及び減衰等のパラメータを含む構造物100のモーダルパラメータを計算する。本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
データストレージモジュール36は、前記少なくとも1つの変位画像、前記変位信号又は前記モーダルパラメータの履歴データを保存でき、ユーザーがデータ処理装置30によって計算された構造物のモーダルパラメータと履歴データ内のモーダルパラメータに明確な偏差があるかどうかを比較できる。偏差がある場合、それは前記構造物100に故障があるか、内部が損傷している可能性があることを示し、構造物100に修復不可能な損傷が起きないように、すぐに保全しなければならない。具体的に、本実施例において履歴パラメータとは、モーダルパラメータのデータを時間軸によって作成し、各リアルタイムモーダルパラメータを時間軸に結び付けて、前記履歴パラメータを形成してユーザーにモニタリングさせるものを意味する。
【0020】
以下は、洋上風車である構造物100のマーキングユニットの取り付け位置をさらに説明する。
【0021】
図2を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る洋上風車構造及びマーキングユニットの模式図である。図2に示すように、本実施例で説明する洋上風車100は、水上構造及び水中構造を含む。具体的に、本実施例で定義する洋上風車100は、基礎杭モジュール106、ケーシング構造105、ステージ104、タワー103及びナセル102の全体として見られる。
【0022】
本実施例のナセル102は、タワー103と連結し、かつナセル102が複数のブレード101とさらに連結する。タワー103は、ステージ104と連結し、ステージ104がケーシング構造105と連結し、かつステージ104が水平面Sの上に設けられる。ケーシング構造105は、基礎杭モジュール106と連結し、かつケーシング構造105が海中に設けられ、基礎杭モジュール106が海底に設けられる。本実施例において、ケーシング構造105は、少なくとも3本の支柱1051及び複数の筋かい1052をさらに含む。本実施例では、4本の支柱1051を用い、かつ4本の支柱1051の相互間に複数の筋かい1052がX字形で交差するように配置される。
【0023】
本実施例において、複数のマーキングユニット10は、最適な監視効果を奏するため、洋上風車100の異なる位置の構造に取り付けられる。ここで、上記マーキングユニットの取り付けは、第1マーキングユニット11、第2マーキングユニット12、第3マーキングユニット13及び第4マーキングユニット14を含む。
【0024】
さらに言えれば、第1マーキングユニット11は、ナセル102に近いタワー103の内壁、具体的にタワー103の頂端とナセル102との接合部の高さより5m以内の位置に設けられる。第2マーキングユニット12は、ナセル102とステージ104との間のタワー103の内壁、具体的にタワー103の段間部の任意の位置に設けられる。第3マーキングユニット13は、ステージ104とタワー103との接合部の内壁±5m以内の位置に設けられる。
【0025】
本実施例において、第1マーキングユニット11、第2マーキングユニット12及び第3マーキングユニット13は、軸線X上に設けられ、かつ軸線X外の前記洋上風車に第4マーキングユニット14がさらに設けられる。このようにして、第1マーキングユニット11、第2マーキングユニット12及び第3マーキングユニット13は、第4マーキングユニット14と3次元空間を形成し、洋上風車100構造のねじれ運動振幅の測定を容易にする。また、他のマーキングユニットは、洋上風車100構造の必要性に応じてマーキングポイントを追加することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
図3参照すると、本発明の好ましい実施例に係る構造監視方法のフローチャートである。図3に示すように、本実施例の構造監視方法は、次のステップ(A)~(D)を含む。すなわち、(A)複数のマーキングユニット10を構造物に取り付けるステップ、(B)各マーキングユニット10に生じる構造変位を監視して、各マーキングユニット10の変位画像を取得するステップ、(C)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各マーキングユニット10の変位信号を取得するステップ、(D)各マーキングユニット10の前記変位信号に基づき前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップ。
【0027】
ステップ(A)において、取り付けられた前記複数のマーキングユニット10が赤外線サーマルイメージャーによって検出されることができる電熱プレートなどの発熱体であり、その他の可能な実施例において、赤外線サーマルイメージャーを介して検出されることができる発熱体が、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。前記構造物100は、橋脚、風車又は建物等であり得る。具体的に、本実施例は、構造物100として洋上風車を使用し、マーキングユニット10の取り付け位置が図2を参照できる。実際にモニタリングしたい構造物100、及びそのマーキングユニットの取り付け数量と位置は、必要に応じて自ら入れ替えることができる。
【0028】
ステップ(B)において、赤外線サーマルイメージャーなどの監視装置20で構造物100に取り付けられたマーキングユニット10を監視し、マーキングユニット10は赤外線サーマルイメージャーによって検出されることができる発熱体であるため、各マーキングユニット10の熱画像を取得できる。また、構造物100が外力を受けて振動(例えば地震)を生じた場合、又は決定論的関数では記述できないが特定の規則的なランダム振動(突風の作用や応答又は洋上風車あるいは海上ボーリング用プラットフォームが受けた波浪の作用)が生じた場合、各マーキングユニット10にわずかな構造変位を生じさせる。監視装置20は、各マーキングユニット10の変位画像(変位熱画像)を撮影・記録すると共にデータ処理装置30に伝送する。
【0029】
ステップ(C)において、データ処理装置30のデータ受信モジュール32は、各マーキングユニット10の変位画像を受信した後、データ受信モジュール32に接続されたデータ処理モジュール34が画像処理技術で各マーキングユニット10の変位信号を取得する。最後に、ステップ(D)において、データ処理モジュール34は、更に各マーキングユニット10の変位信号に基づき構造物100のモーダルパラメータを計算する。ここで、モーダルパラメータは、構造物の自然周波数、モード形状及び減衰等のパラメータを含み、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
また、本実施例の監視方法は、前記変位画像、前記変位信号又は前記モーダルパラメータを保存するステップ(E)をさらに含み得る。具体的に、データ処理装置30のデータストレージモジュール36で前記変位画像、前記変位信号及び/又は前記モーダルパラメータ等の情報にアクセスし、それを時間軸に構築して履歴データを形成する。ユーザーがデータ処理装置30によって計算された構造物のモーダルパラメータと履歴データ内のモーダルパラメータに明確な偏差があるかどうかを比較できる。偏差がある場合、それは、前記構造物100に故障があるか、内部が損傷している可能性があることを示し、構造物100に修復不可能な損傷が起きないように、すぐに保全しなければならない。
【0031】
しかしながら大型構造物をモニタリングする時、監視装置で大型構造物上の全てのマーキングポイントを一度に検出する場合、監視装置を焦点距離の短いレンズに調整すると、監視装置は比較的大きな範囲のターゲットを検出することができるが、そのターゲット内のマーキングポイントの熱画像サイズが比較的小さく、各マーキングユニットで生じる構造変位を簡単に判断できない。
【0032】
これに着目して、本発明は、別の構造監視方法を提案する。前記方法は、監視装置を焦点距離の長いレンズに調整し、一度にマーキングポイント一部のみを検出(相対的に言えば、検出によって得られたマーキングポイントの熱画像サイズが比較的大きくてクリアなので、マーキングポイントの構造変位を判断するのに役立つ)し、各構造物上のマーキングポイントがすべて検出されるまで監視装置の検出方向を調整する時間間隔を設定し、前記時間間隔及び検出されたデータに基づき再編成して、大型構造物の完全なモーダルパラメータを取得する。
【0033】
図4を参照すると、本発明の別の好ましい実施例に係る構造監視方法のフローチャートである。図4に示すように、本実施例の構造監視方法は、次のステップ(I)~M)を含む。すなわち:(I)複数のマーキングユニット10を構造物に取り付けるステップ、(J)所定時間間隔でマーキングユニット10の一部に生じる構造変位を監視して、マーキングユニット10の一部の変位画像を取得するステップ、(K)各マーキングユニット10の前記変位画像を取得するまでステップ(J)を繰り返すステップ、(L)前記変位画像に基づき、画像処理を介して各マーキングユニット10の変位信号を取得するステップ、(M)各マーキングユニット10の前記変位信号を再編成して、前記構造物のモーダルパラメータを計算するステップ。
【0034】
ステップ(I)において、取り付けられた前記複数のマーキングユニット10は赤外線サーマルイメージャーによって検出されることができる電熱プレートなどの発熱体であり、その他の可能な実施例において、赤外線サーマルイメージャーを介して検出されることができる発熱体が、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。前記構造物100は、橋脚、風車又は建物等である。
【0035】
ステップ(J)~(L)において、赤外線サーマルイメージャーなどの監視装置20により構造物100に取り付けられたマーキングユニット10の一部を所定時間間隔で監視し、マーキングユニット10は赤外線サーマルイメージャーによって検出されることができる発熱体であるため、各マーキングユニット10の一部の熱画像を取得できる。また、構造物100が外力を受けて振動(例えば地震)を生じた場合、又は決定論的関数では記述できないが特定の規則的なランダム振動(突風の作用や応答又は洋上風車あるいは海上ボーリング用プラットフォームが受けた波浪の作用)が生じた場合、マーキングユニット10に構造変位を生じさせる。監視装置20は、各マーキングユニット10の一部の変位画像(変位熱画像)を所定時間間隔で撮影・記録すると共にデータ処理装置30に伝送する。そして、データ処理装置30のデータ受信モジュール32は、前記マーキングユニット10の一部の変位画像を受信した後、データ受信モジュール32に接続されたデータ処理モジュール34が画像処理技術でマーキングユニット10の変位信号を取得する。最後に、監視装置20が各マーキングユニット10を検出し、各マーキングユニット10の変位信号を取得するまで、上記ステップを繰り返す。
【0036】
監視装置の具体的な検出方法は、図2内の洋上風車構造を例としてとることができる。まず第1時間帯において、監視装置20は、第1と第2マーキングユニット11、12の熱画像を同時に検出すると共に第1と第2マーキングユニット11、12の変位画像を取得する。第2時間帯において、監視装置20は、レンズの撮影方向及び範囲を調整して、第2と第3マーキングユニット12、13の熱画像を同時に検出すると共に第2と第3マーキングポイント12、13の変位画像を取得する。第3時間帯において、監視装置20は、レンズの撮影方向及び範囲を再度調整して、第3と第4マーキングユニット13、14の熱画像を同時に検出すると共に第3と第4マーキングユニット13、14の変位画像を取得する。すべてのマーキングユニットが検出された後、データ処理装置30は、画像処理技術で各マーキングユニットの変位画像から各マーキングユニットの変位信号を取得する。上記監視装置20の検出時間間隔、及び毎回検出するマーキングユニットの数も自身で調整でき、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
最後のステップ(M)において、前記検出方法は、異なる時間帯で同じマーキングユニット10(第1と第2時間帯で第2マーキングユニット12を検出)を検出するため、検出データの校正を容易にする。したがって、データ処理モジュール34は、前記時間間隔に基づき各マーキングユニット10の変位信号を再編成した後、前記完全な構造物100のモーダルパラメータを計算する。ここで、モーダルパラメータは、構造物の自然周波数、モード形状及び減衰等のパラメータを含み、本発明はこれに限定されるものではない。一方、前記ステップも先に各マーキングユニット10の前記変位信号(マーキングユニットの一部の変位信号に重複がある)に基づき各マーキングユニット10のモーダルパラメータを計算した後、前記時間間隔に従ってモーダルパラメータと形状の再編成及び校正を実施することで、完全な構造物100のモーダルパラメータを取得できる。
【0038】
監視装置としての赤外線サーマルイメージャーの計測制度を検証するため、本発明は従来の加速度センサーを試験対照群として使用し、赤外線サーマルイメージャー及びマーキングポイントと加速度センサーで構造物を監視した自然周波数(Natural frequency)とモード形状(Mode shape)を同時に計算する。前記手段は、実稼動モード解析内の周波数領域分解法でモーダルパラメータを計算し、出力パワースペクトル密度(Power spectrum density、PSD)に対して特異値分解(Singular value decomposition、SVD)を実施する。形状について、モード信頼性評価基準に基づいて定量化され、加速度センサーと赤外線サーマルイメージャーの計測結果を比較する。図5は、自然環境において加速度センサーで計測された特異値データグラフ及びモード形状分析図であり、図6は自然環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図であり、赤外線サーマルイメージャーで計測された第1自然周波数が3.77(Hz)である。2つの計測方法の自然周波数を比較すると、その誤差が4%(3.93%)以内であり、両者のMAC値(Modal assurance criterion)が非常に一致する0.9963に達した。
【0039】
さらに、光学センサ(カメラなど)と比較した赤外線サーマルイメージャーの利点を強調するため、本発明は、夜間の暗闇、雲霧・水蒸気環境及び障害物のある環境の条件下で構造物体を計測する。まず、図7を参照すると、夜間の暗闇環境において、赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。暗い夜間の暗闇環境において、赤外線サーマルイメージャーによって計測された第1の自然周波数平均値は、3.69±0.22(Hz)であり、自然環境において計測された自然周波数との誤差が0.53%で、それと自然環境での計測との間のMAC値が0.9976±0.0020であった。
【0040】
図8は、雲霧あるいは水蒸気環境において、赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図である。雲霧あるいは水蒸気環境において、赤外線サーマルイメージャーで計測された第1の自然周波数平均値は、3.59±0.05(Hz)であり、自然環境で計測された自然周波数との誤差が4.6%で、それと自然環境での計測との間のMAC値が0.9924±0.0042であった。
【0041】
最後に、図9を参照すると、障害物のある環境において赤外線サーマルイメージャーで計測された特異値データチャート及びモード形状分析図であり、障害物のある環境において、赤外線サーマルイメージャーで計測された第1自然周波数の平均値は、3.52±0.06(Hz)で、自然環境において計測された自然周波数との誤差が3.2%であり、それと自然環境での計測との間のMAC値が0.9803±0.0033であった。上記データから分かるように、夜間の暗闇、雲霧・水蒸気及び障害物のある環境で計測するため、監視装置として赤外線サーマルイメージャーを使用すると、計算された自然周波数及び形状の結果は、合理的な範囲内にあり、かつ加速度センサーとも非常に高い一致性を有する。
【0042】
上記をまとめると、本発明によって提供されるモニタリングシステム及び方法で構造物を計測した数値は、従来のセンサーと高い一致性があり、その精度レベルが非常に高いことを証明し、かつ構築及び保全のコストが構造物に大量に配置される従来のセンサーよりもはるかに低くなる。一方、計測に赤外線サーマルイメージャーを使用すると、一般的な光学カメラの視界不良又は障害物があることで、計測できない問題を効果的に解決することもでき、構造ヘルスモニタリング分野に重大な突破口を開く。
【0043】
ただし、上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲は、そのような実施形態に限定されるものではなく、すなわち、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容に従って行われる簡単な変更や潤飾を加えるものは、本発明の保護範囲内に網羅される。
【符号の説明】
【0044】
100 洋上風車
10 マーキングユニット
101 ブレード
102 ナセル
103 タワー
104 ステージ
105 ケーシング構造
1051 支柱
1052 筋かい
106 基礎杭モジュール
1 構造監視システム
11 第1マーキングユニット
12 第2マーキングユニット
13 第3マーキングユニット
14 第4マーキングユニット
20 監視装置
30 データ処理装置
32 データ受信モジュール
34 データ処理モジュール
36 データストレージモジュール
X 軸線
B 水平面
S 海底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9