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特許7206249物体の測定から測定データにおける不確定性を判定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】物体の測定から測定データにおける不確定性を判定する方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230110BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020500170
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018061939
(87)【国際公開番号】W WO2019007568
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】102017114811.6
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516211617
【氏名又は名称】ボリュームグラフィックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOLUME GRAPHICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ラインハート
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ポリウォダ
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0010975(US,A1)
【文献】特開2017-032548(JP,A)
【文献】国際公開第2008/087104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の測定から測定データにおける不確定性を判定するためのコンピュータ実装方法であって、前記物体のデジタル表現が前記測定によって生成され、前記物体表現が画像情報の多数のアイテムを有し、画像情報のアイテムが前記物体の定義された位置における前記物体についての測定変数の値を示し、統計ノイズが前記画像情報上に重畳され、前記方法が、
前記物体表現を判定するステップと、
前記物体表現に関する前記画像情報から距離フィールドを判定するステップであって、前記距離フィールドが多数の距離値を有し、前記距離フィールド中の特定のポイントについての距離値が、前記ポイントと前記物体の最も近い材料境界面との間の最短距離を示すステップと、
前記画像情報における前記統計ノイズの強度を判定するステップと、
前記統計ノイズの前記強度に基づいて前記距離フィールドの前記距離値の不確定性を判定するステップと、
前記距離フィールドの前記距離値の該不確定性から少なくとも1つの材料境界面上の少なくとも1つのポイントの位置の不確定性を判定するステップと
を有する、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
距離値の不確定性の前記判定が、
前記統計ノイズの前記強度から前記物体の定義されたポイントに関する前記画像情報における誤差を判定するステップと、
前記物体表現に関する前記画像情報から前記距離値を判定するための計算ルールを判定するステップと、
前記計算ルールの結果に対する前記誤差の効果から前記距離値の前記不確定性を判定するステップと、
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
距離値の前記不確定性が、距離値が基づく前記画像情報における前記統計ノイズの前記強度の指数と、前記距離値の領域における前記画像情報の勾配とから判定される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記画像情報を前記物体の空間領域に再分割するステップを含み、前記統計ノイズの前記強度が、前記画像情報の前記異なる空間領域についてそれぞれ別個に判定される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
領域についての前記統計ノイズの前記強度が、前記領域の測定ポイントのサブセットに関する前記画像情報から判定される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記領域のうちの1つについての前記画像情報における前記統計ノイズの前記強度の前記判定が、
前記領域に関する前記画像情報の平均値を判定するステップと、
前記平均値から前記領域に関する前記画像情報の平均偏差を判定するステップと、
前記平均偏差を前記画像情報における前記統計ノイズの強度として定義するステップと
を有する請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記統計ノイズの前記強度が前記統計ノイズの標準偏差である請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記物体表現中のポイントについての前記統計ノイズの前記強度が、前記ポイントの周りの定義された環境内で前記画像情報から判定される請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記距離フィールドの前記距離値から前記物体の少なくとも1つの寸法を判定するステップと、前記距離値の前記不確定性に基づいて前記寸法の不確定性を判定するステップとを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記距離フィールドの前記距離値からの前記物体の寸法の前記判定が、前記物体のターゲット・ジオメトリを判定し、適合方法を使用することによって前記ターゲット・ジオメトリを前記距離フィールドに適合させるステップと、適合させられた前記ターゲット・ジオメトリに基づいて前記物体の前記寸法を判定するステップと、を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記判定されたターゲット・ジオメトリに適合させるために最小二乗法および/もしくは最小ゾーン適合が使用され、ならびに/または前記判定されたターゲット・ジオメトリが、内接するもしくは外接する形状として前記距離フィールド中に適合させられる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物体の前記ターゲット・ジオメトリが、ユーザ入力によって指定され、および/またはCADファイルから判定され、および/または前記距離フィールドから判定される請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記距離フィールドの前記判定が、
前記物体表現に関する前記画像情報から材料境界面の位置を判定するステップと、
前記距離フィールドのデータ・ポイントについての各場合における前記データ・ポイントに最も近い材料境界面を判定するステップと、
前記データ・ポイントと前記それぞれの最も近い材料境界面との間のそれぞれの距離を判定するステップと、
前記それぞれのデータ・ポイントに前記それぞれ判定された距離を距離値として割り当てるステップと、
を含む請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記物体表現が前記物体のラスタ化表現であって、該ラスタ化表現が、ラスタ中に配列された前記物体の測定の多数の測定ポイントを有し、測定ポイントが画像情報の少なくとも1つのアイテムを有する請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定がコンピュータ・トモグラフィ測定であり、前記画像情報が、前記測定ポイントのロケーションにおける前記物体の局所X線吸収を記述する請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ上で実行され得、コンピュータ上で実行されたときに、該コンピュータに請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータ・プログラムが記録された記録媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の物体の測定から測定データにおける不確定性を判定するためのコンピュータ実装方法と、請求項16に記載のコンピュータ・プログラム製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
物体、たとえば工作物を測定し、その後、撮像するための多くの方法が従来技術において知られている。その一方で、特に産業環境では、これらの測定方法は、工作物試験のための選択リソースとして確立されるようになった。物体の表面のみを撮像する方法と物体の内部構造を完全に表すことを可能にする方法の両方が、この場合に見出される。工作物を試験するために、工作物の表面または表面ジオメトリが、通常、表面または表面ジオメトリの寸法に関して検査され、基準値と比較される。したがって、たとえばランダムな方法で、工作物のための製作プロセスが、工作物のための所望の仕様に準拠することが可能であるかどうかを試験することが可能である。
【0003】
工作物の寸法に加えて、工作物を試験するための重要な基準は、測定の測定データから導出される寸法の不確定性である。この場合、使用される撮像方法に応じて、多数の誤差源が物体の画像の寸法における不確定性を生じることがある。系統的撮像誤差は、たとえば、材料測度を使用することによって判定され得るが、特に、十分な程度まで統計的撮像誤差を考慮に入れることもでき、それらの誤差を定量化することができる方法は、従来技術においてほとんど知られてない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このことを背景にして、本発明は、従来技術の上述の欠点を克服する、物体の測定から測定データにおける不確定性を判定するための改善された方法を提供するという客観的な技術的目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主要な特徴は請求項1および請求項16において述べられる。請求項2から15は構成に関する。
【0006】
第1の態様では、本発明は、物体の測定から測定データにおける不確定性を判定するためのコンピュータ実装方法に関し、物体のデジタル表現が測定によって生成される。物体表現は、物体に関する画像情報の多数のアイテムを有し、画像情報のアイテムは、物体の定義された位置における物体についての測定変数の値を示す。統計ノイズが画像情報上に重畳され、本方法は以下のステップを有する。
【0007】
第1の方法ステップでは、まず第1に測定データが判定される。次いで、物体表現に関する画像情報から距離フィールドが判定され、距離フィールドは多数の距離値を有する。この場合、距離値は、距離フィールド中の特定のポイントについて、ポイントと物体の最も近い材料境界面との間の最短距離を示す。次いで、測定データの測定ポイントに関する画像情報における統計ノイズの強度が判定され、距離フィールドの距離値の不確定性が統計ノイズの強度に基づいて判定される。次いで、少なくとも1つの材料境界面上の少なくとも1つのポイントの位置の不確定性が距離フィールドの距離値の不確定性から判定される。
【0008】
少なくとも1つの材料境界面上のポイントの位置の不確定性を判定するために、まず第1に、材料境界面のポイントの位置が、たとえば、距離フィールドの距離値のサブセットから判定され得る。次いで、材料境界面のポイントの位置を判定するときに考慮に入れられたすべての距離値の平均不確定性が、ポイントの判定された位置の不確定性として仮定される。単純平均値を形成することに加えて、材料境界面のポイントの位置を判定するときに考慮に入れられた距離値の不確定性の重み付けも行われ得る。この場合、たとえば、比較的低い距離値の不確定性によりも、比較的高い距離値の不確定性に、より低い重みが割り当てられ得る。
【0009】
本発明は、撮像方法による物体の撮像の不確定性のかなりの部分は、記録された測定データが受ける統計ノイズによって引き起こされるという知識に基づく。この場合、統計ノイズは多数の要因の結果として生じ得る。たとえば、ノイズは、測定データを判定するために使用される測定方法においてすでに固有であり得る。たとえば、測定データを判定するために使用される電子検出器は、定義されたノイズ挙動を有し得る。さらに、測定データ、または測定データが基づく生データの処理の結果として、さらなるノイズももたらされ得る。この場合、統計ノイズは、ノイズの多い測定データに対するノイズの効果が、統計的な、すなわち実質的にランダムな分布、たとえば正規分布に従うノイズを意味するものとして理解される。ノイズが基づく統計分布のタイプは、ここでは物体の画像上で局所的に異なることがあり、その場合、上述の正規分布を含む対称分布に加えて、ノイズは非対称分布にも基づき得る。
【0010】
この場合、統計ノイズは、通常、統計ノイズが物体表現に関する画像情報に影響を及ぼす、定義された強度によって特徴付けられる。統計ノイズの強度が既知である場合、距離フィールドに関する距離情報のアイテムの不確定性がどのくらい大きいかを推定することが可能であり、距離情報はノイズの多い画像情報から導出される。距離フィールドの距離値の不確定性が既知である場合、この場合も、それらの不確定性から、距離フィールドから導出される材料境界面の位置、特に、表現された物体の材料境界面上の個々のポイントの位置の不確定性を直接導出することが可能である。したがって、測定された物体表現に関する画像情報から物体の材料境界面を判定するとき、本発明による方法は、物体の材料境界面の位置、または物体表現から導出されるそのような材料境界面上のポイントの位置について、誤差を推定することを可能にする。したがって、本発明による方法による誤差を用いて、撮像された物体の幾何学的特性を評価することが可能である。
【0011】
この場合、距離フィールドは、実質的に2つの方法で材料境界面の位置をコーディングすることができる。第1の手法では、距離フィールドの距離値は、距離フィールド中の対応するポイントと最も近い材料境界面との間の距離の絶対値のみを表す。しかしながら、この場合、距離フィールド中のポイントにおける純粋な距離情報の結果として、ポイントが配列された材料境界面の側は、まだ明らかでない。しかしながら、この情報は、距離値がさらに符号を与えられることによって、距離フィールド中にさらにコーディングされ得る。この場合、材料境界面の第1の側上のデータ・ポイントの距離値には正の符号が割り当てられ、一方、材料境界面の第2の側上のデータ・ポイントには、負の符号を有する距離値が割り当てられる。その場合、データ・ポイントの距離値の符号は、たとえば、データ・ポイントがジオメトリまたは本体の内側あるいは外側にあるかどうかを導き出すために使用され得る。この追加の情報は、撮像された物体の寸法を判定するために使用され得る。
【0012】
この場合、符号付き距離値をもつそのような距離フィールドは「符号付き距離フィールド」(SDF)として知られている。一実施形態によれば、この場合、距離値の絶対値は不変のままであるが、距離フィールド全体の勾配は各ポイントにおいて1に等しくなるような様態で距離値を適応させることによって、符号なし距離フィールドは符号付き距離フィールドに変換され得る。
【0013】
測定から画像情報が取得される測定は、この場合、物体または物体の特性の撮像の所望の形態を意味するものとして理解されたい。たとえば、測定は磁気共鳴トモグラフィ検査の範囲内で行われ得る。このプロセスにおいて取得された画像情報は、測定変数、たとえばスピン緩和時間などから導出され得る、物体の特性、たとえば材料組成、表面の位置または同様のパラメータを定量化する。測定データを判定するために、測定の性能と記憶媒体の読取りの両方が、この場合与えられ得る。たとえば、すでに行われた測定と、画像の不確定性に対してその後評価されることが意図されるアーカイブされたデータとを用いることが可能である。
【0014】
画像情報における統計ノイズの上記で説明した強度は、画像情報が統計ノイズによってどのくらい大きく影響を受けるかを記述する測度である。測定データまたは画像情報上に重畳されたノイズの効果は、実質的に、測定変数についての判定された数値が、ノイズなしで実際に判定された数値から特定の量だけ異なるということである。この場合、数値は、ノイズのために非常に小さくなることも非常に大きくなることもあり得る。以下でまたさらに詳細に説明する、ノイズの強度を判定するための異なる手法がある。この場合、統計ノイズの強度は、同様に画像情報のアイテムのように、画像情報が、ノイズのために実際に予想された値からどのくらい大きく異なるかを記述する数値として表され得る。
【0015】
統計ノイズの強度から距離値の不確定性を判定するために、一実施形態に従って、以下のプロシージャが使用され得る。すなわち、まず第1に、物体の定義されたポイントに関する画像情報における誤差が統計ノイズの強度から判定される。次いで、物体表現に関する画像情報から距離値を判定するために使用される計算ルールが判定される。次いで、計算ルールの結果に対する誤差の効果から距離値の不確定性が判定される。画像情報のアイテムにおける誤差を判定するために、統計ノイズの判定された強度の数値が、たとえば、画像情報のアイテムの数値についての誤差間隔として仮定され得る。
【0016】
代替的に、統計ノイズの判定された強度の数値はまた、変換され得、その結果、画像情報における誤差が、このようにして取得された値によって定量化され得る。このことは、たとえば、当初は実際の画像情報と異なるが、実際の画像情報に変換され得る情報のアイテムから統計ノイズの強度が導出される場合、必要であり得る。この場合、画像情報のアイテムの数値についての誤差間隔は、必ずしも数値の周りに対称に配列される必要はない。代わりに、誤差間隔はまた、特に、統計ノイズが非対称統計分布に基づく場合、画像情報のアイテムの数値の周りに非対称に分布され得る。たとえば、147から156まで延びる誤差間隔を、統計ノイズの推定から150の数値を有する画像情報のアイテムに割り当てることが可能である。対称誤差間隔と非対称誤差間隔の両方が、距離値の不確定性または材料境界面上のポイントの位置の不確定性を述べるために同様にまた判定され得る。
【0017】
この場合、距離値を判定するための計算ルールは様々な形態をとり得る。しかしながら、計算ルールは、どんな場合でも、物体表現に関する画像情報を入力値として含み、この情報は数式に基づいて距離値に変換される。計算の結果に対する入力値における誤差の効果は、そのような式の知識から、たとえば、ガウス誤差伝搬によって判定され得る。
【0018】
たとえば、一実施形態によれば、距離値の不確定性は、距離値が基づく画像情報における統計ノイズの強度の指数と、距離値に割り当てられる距離フィールド中のポイントの領域中の画像情報の勾配とから判定され得る。
【0019】
測定データに関する画像情報における統計ノイズの強度が本発明による方法の一部として判定されることは、すでに上記で述べた。この場合、ノイズの強度は、たとえば、測定画像全体または物体表現全体について全体的に判定され得る。このことは、たとえば、測定データ上に重畳された統計ノイズが、撮像された領域全体にわたって同じ程度まで反映されるときに有用である。
【0020】
しかしながら、たいていの場合、画像情報における統計ノイズの効果は物体表現の異なる領域中で異なる。これは、画像の異なる領域についての撮像装置の異なる特性と、画像情報自体のノイズの効果の関係とによるものであり、この関係はしばしば観測され得る。この理由で、別の実施形態では、本方法が、物体の空間領域への測定ポイントの再分割を含むようにし、統計ノイズの強度は、測定データの異なる空間領域についてそれぞれ別個に判定される。この場合、領域は、好ましくは、画像情報に対する統計ノイズの効果が、領域内で最大の可能な程度まで一定であるような様態で選択される。この場合、統計ノイズの強度についての単一の値が完全な領域に割り当てられ得る。
【0021】
領域についての統計ノイズの強度を判定するために、一実施形態は、次いで、この強度が領域の測定ポイントのサブセットに関する画像情報から判定されるようにすることができる。このことは、情報のかなりの損失のおそれなしに、ノイズ情報を判定するための計算複雑さを低減することを可能にする。領域の対応する選定による領域内のノイズの効果の均一性のために、ノイズの強度に関する情報におけるいかなる関連利得も、さらなるポイントまたはポイントに関する測定データのさらなる追加によってノイズの強度を判定するための特定の数の入力値の後にはそれ以上予想され得ない。しかしながら、分散からノイズの強度が推定される際の正確さは、プロセス中に考慮に入れられるますます多くの値を用いて改善される。したがって、分散が結果として生成された計算負荷と比較して推定される際の所望の正確さは効果的に推定され得、処理された測定値の数は、それに応じて適応させられ得る。
【0022】
領域のうちの1つについての画像情報における統計ノイズの強度は、一実施形態によれば、以下のように判定され得る。
【0023】
まず第1に、領域に関する画像情報の平均値が判定される。次いで、この平均値からの領域に関する画像情報の平均偏差が判定され、平均偏差は画像情報における統計ノイズの強度として定義される。この手法は、特に、統計ノイズの効果の均一分布と画像情報の均一分布とをもつ領域において使用され得る。画像情報の均一分布は、たとえば、特定の画像セクション上の対応する画像情報によって、撮像された物体の単一の定義された材料のみが表される場合に存在する。
【0024】
統計ノイズの強度に関するこのようにして判定された情報はまた、たとえば、画像情報の不均一分布をもつ領域に外挿され得る。この目的で、たとえば、画像情報の均一性および/または統計ノイズの効果のために、統計ノイズの強度の上述の判定が可能である、異なる領域が定義されるようになされ得る。次いで、そのような均一領域間に延びる領域が、補間方法によって統計ノイズの効果に関して評価され得る。
【0025】
代替手法では、一実施形態によれば、統計ノイズの強度は統計ノイズの標準偏差であり得る。ノイズの強度の測度としての統計ノイズの標準偏差の使用は、ここでは、統計ノイズの場合のように、標準偏差が、統計変動を受ける変数の不確定性の一般に容易に判定可能な測度を示すという利点を有する。
【0026】
グレースケール値の不均一分布をもつ領域では、たとえば、材料境界面の領域では、統計ノイズの強度は、たとえば、まず第1に、対応する領域におけるグレースケール値の数列についての理論モデルを作成することによって判定され得る。この目的で、グレースケール値の理論モデルは、たとえば、適合(fit)方法によって実際のグレースケール値に適合させられ得る。その場合、適合させられたモデルによって与えられる、グレースケール値の数列からの個々のグレースケール値の偏差は、統計ノイズによって引き起こされるものとして解釈され得、統計ノイズの強度を判定するための基礎として使用され得る。
【0027】
この場合、一実施形態では、物体表現中のポイントについての統計ノイズの標準偏差が、ポイントの周りの定義された環境内の画像情報から判定される。たとえば、物体の2次元表現では、特定の半径の円が物体表現中のポイントの周りに描かれ得、この円内のすべての画像情報が標準偏差を判定するために使用される。したがって、標準偏差を判定するための計算複雑さは低減され得るが、同時に、標準偏差の判定は、統計ノイズの効果がその中で最大の可能な程度まで一定である領域に限定され得る。この場合、定義された環境のサイズは、サイズの程度に関して、統計ノイズの強度に関する情報の信頼できるアイテムがそこから導出され得る十分な統計があるような様態で寸法判定され得る。環境のサイズを選択するとき、ノイズの強度を判定するための得られた計算複雑さが同時に考慮に入れられ得、その結果、統計の範囲が、得られた計算複雑さに対して考量され得る。
【0028】
物体の材料境界面の位置またはそのような材料境界面上の個々のポイントに関する不確定性の上記で説明した判定に加えて、一実施形態では、距離値の不確定性に関する情報が、表現された物体のさらなる特性についての誤差を推定するために使用される。この目的で、本方法はまた、距離フィールドの距離値からの物体の少なくとも1つの寸法の判定と、距離値の不確定性に基づく寸法の不確定性の判定とを含むようになされる。この場合、寸法は、たとえば、掘削された穴の直径または縁部の長さを意味するものとして理解され得る。表現された物体の寸法は、ここでは、たとえば、距離フィールドの距離値によってコーディングされた材料境界面の位置から直接判定され得る。
【0029】
この場合、寸法と寸法の不確定性が、両方とも、距離値と対応する不確定性自体とから、および材料境界面の判定された位置と材料境界面上のポイントの位置の判定された不確定性とから、直接判定され得る。
【0030】
距離フィールドによってコーディングされた材料境界面からの直接の、表現された物体の寸法の上記で説明した判定に加えて、別の実施形態によれば、寸法を判定するときに、物体の実際に予想された幾何学的形状も考慮に入れられ得る。この目的で、一実施形態では、距離フィールドの距離値からの物体の寸法の判定は、物体のターゲット・ジオメトリを判定し、適合方法を使用することによって距離フィールドにターゲット・ジオメトリを適合させるステップを含むようになされる。その場合、物体の寸法は、本実施形態によれば、このようにして適合させられたターゲット・ジオメトリに基づいて判定される。
【0031】
このことは、表現された物体の想定されるターゲット・ジオメトリと真の実際のジオメトリとを直接比較することを可能にし、ターゲット・ジオメトリの対応する寸法は、寸法の対応する不確定性を考慮に入れて実際のジオメトリから判定された物体の対応する寸法と直接比較され得る。たとえば、検査される物体の場合に事前定義された製造許容差が遵守されたかどうか、または検査される物体が、不確定性を考慮に入れて判定された寸法のためのさらなるアセンブリ・ステップのために使用され得るかどうかを検査することが可能である。
【0032】
この場合、物体の判定されたターゲット・ジオメトリを距離フィールドに適合させるために使用される適合方法は、ジオメトリが物体の表現からのデジタル・データとの最良の可能な合同式を有するような様態で、固有のジオメトリをデジタル・データに適合させるために好適な任意の数学的方法を意味するものとして理解され得る。この場合、距離値の不確定性は、適合方法を使用するときの誤差伝搬を判定するときに考慮に入れられ得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、たとえば、判定されたターゲット・ジオメトリに適合させるために、従来技術においてガウス適合としても知られる最小2乗法を使用することが可能である。この場合、ターゲット・ジオメトリは、デジタル表現からの材料境界面からのターゲット・ジオメトリの2乗平均距離ができる限り短くなるような様態で、測定データによって表された材料境界面に適合させられる。この方法は、一般に、計算複雑さをほとんど伴わずに実行され得、デジタル表現における測定ポイントによって表された材料境界面に対するターゲット・ジオメトリの位置に関する境界条件がないときに特に好適である。
【0034】
しかしながら、場合によっては、判定されたターゲット・ジオメトリが、いくつかの境界条件をもつ物体のデジタル表現に適合させられることが意図される状況が起こり得る。この点で、実施形態では、判定されたターゲット・ジオメトリが、内接するまたは外接する形状(figure)として距離フィールドに適合させられるようになされる。この場合、内接する形状は、距離フィールドによってコーディングされた物体の材料境界面内に完全に位置する形状を意味するものとして理解されたい。反対に、外接する形状は、距離フィールドによってコーディングされた材料境界面の外側に完全に位置する形状である。たとえば、内接する形状の使用は、掘削された穴の内径が、対応するターゲット・ジオメトリ、すなわち円筒に適合することによって判定されることが意図されるときに、特に有用である。この場合、通常は、掘削された穴がある最小直径を有するかどうかが実際的適用例のためにのみ関連がある。内接する形状としてターゲット・ジオメトリに適合させることは、この場合、適合させられたターゲット・ジオメトリの寸法が掘削された穴の最小直径を表すことを保証する。
【0035】
たとえば、物体から突出するピンがターゲット・ジオメトリによって表されることが意図される反対の場合、ターゲット・ジオメトリ、この場合も円筒が、外接する形状として距離フィールドに適合させられれば有利である。これは、突出するピンの最大直径が、この場合、適合させられたジオメトリによって表されるからである。この場合、撮像された物体の異なる領域において、適合させられるべきターゲット・ジオメトリが、内接するまたは外接する形状として距離フィールドに適合させられることが意図されるかどうかをそれぞれ別個に判定しなければならないことが完全にあり得る。
【0036】
別の実施形態によれば、判定されたターゲット・ジオメトリに適合させるために最小ゾーン適合を使用することも可能である。適合方法が使用される際の個々の選択は、上記で説明したように、それぞれの適用状況に依存する。
【0037】
一実施形態によれば、本発明による方法中に使用される距離フィールドは、この場合、まず第1に、物体表現に関する画像情報から材料境界面の位置を判定することによって判定され得る。次いで、データ・ポイントに最も近い材料境界面、およびデータ・ポイントとそれぞれの最も近い材料境界面との間のそれぞれの距離が、データ・フィールドのデータ・ポイントについてそれぞれ判定される。次いで、それぞれ判定された距離がそれぞれのデータ・ポイントに距離値として割り当てられる。従来技術において一般に知られているエッジ検出方法が、物体表現に関する画像情報から材料境界面の位置を判定するために使用され得る。そのような方法の例はカニー・アルゴリズムまたはISO50アルゴリズムである。
【0038】
一実施形態によれば、物体表現は物体のラスタ化表現であり、ラスタ化表現は、ラスタ中に配列された物体の測定の多数の測定ポイントを有し、測定ポイントは画像情報の少なくとも1つのアイテムを有する。
【0039】
また別の実施形態では、測定はコンピュータ・トモグラフィ測定であるようになされ、測定ポイントに関する画像情報は測定ポイントのロケーションにおける物体の局所X線吸収を記述する。コンピュータ・トモグラフィは、ここでは、物体の内側領域も判定され、撮像され得、その結果、物体の非破壊統合表現が可能になるという利点を有する。
【0040】
特に、物体表現を生成するためにコンピュータ・トモグラフィ測定を使用するとき、画像情報中のノイズが基づく統計分布が、上述の正規分布をも含み得る対称分布と異なることがあり、物体表現にわたって局所的に変動することがある。この状況は、コンピュータ・トモグラフィ測定の場合、まず第1に投影データが測定され、対応する再構成数学によって物体の画像に変換されなければならないことによる。しかしながら、ここで使用される数学は一般に非線形である。このことの直接の結果は、コンピュータ・トモグラフの検出器の実際に実質的に対称なガウス・ノイズ挙動が、物体表現に関する画像情報の対称ノイズ挙動を必ずしも生じないということである。むしろ、画像情報中のノイズが基づく統計分布はまた、物体表現において非対称になるおよび/または局所的に大きく変動することがある。たとえば、検査された物体による強いX線吸収を示す、コンピュータ断層画像の明るい領域は、画像の暗い領域よりも強いノイズを有することがしばしば観測され得る。
【0041】
この理由で、物体表現に関する画像情報からではなく、物体表現が基づく投影データから画像情報中のノイズ挙動または統計ノイズの強度を導出することが有用であり得る。
【0042】
別の態様では、本発明は、コンピュータ上で実行され得、コンピュータ上で実行されたときに、コンピュータに上記で説明したように本方法を実行させる命令を有するコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0043】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲の文言から、および図面に基づく以下の例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】距離フィールドを有する物体表現の概略図である。
図2】ノイズがある物体表現およびノイズがない物体表現の概略図である。
図3】統計ノイズによるグレースケール値の分布の概略図である。
図4】複数の領域を有する物体表現の概略図である。
図5】物体の材料境界面に基づくターゲット・ジオメトリへの適合の概略図である。
図6】内接するまたは外接する形状としてのターゲット・ジオメトリへの適合の概略図である。
図7】最小ゾーン適合に基づくターゲット・ジオメトリへの適合の概略図である。
図8】本発明による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
互いに類似のまたは同等の特徴は、以下で同じ参照符号を使用して示される。
【0046】
図1は物体表現の概略図を示し、距離フィールドが物体表現上に重畳されている。図示の実施形態では、物体は、画像セクションを通って対角方向に延びる、物体の材料境界面100によって実質的に表現されている。たとえば、材料境界面100は、表現された物体の第1の材料が周囲空気に接する接合部であり得る。表現された物体は、たとえば、金属またはプラスチックからなる工作物であり得る。
【0047】
図示の実施形態では、距離フィールドは、正則等方性ラスタ中の物体表現上に重畳されたデータ・ポイント102によって実質的に表現されている。距離フィールドのそのようなラスタ化表現に加えて、距離フィールドはまた、連続スカラー場として存在し得る。しかしながら、表現可能性の理由で、図1中の距離フィールドはラスタ化フィールドとして表現されている。図1に示された直交ラスタに加えて、距離フィールドを表現するためのラスタは、連続ラスタを形成するために好適な所望のジオメトリを有することができる。また、図1において選択された2次元表現は、より簡単な表現可能性の理由でのみ選択されたことを指摘しておく。説明した状況は物体の3次元表現にも同様に適用され得る。たとえば、図1は、その中でラスタが一様な立方体によって構築される3次元に容易に適用され得る方形セルを備える2次元ラスタを示す。
【0048】
距離フィールド中の個々のデータ・ポイント102には、データ・ポイント102と材料境界面100との間の最小距離がどのくらい大きいかを記述する距離値が割り当てられる。データ・ポイント102と材料境界面100との間の最小距離は、一般に、材料境界面100に対して直角に延びる。図1は、例として、材料境界面100の直近の環境中にあるデータ・ポイント102のサブセットについての距離を示す。
【0049】
図1に示されているように、材料境界面100の表現は、たとえば、物体のコンピュータ・トモグラフィ検査に起因する物体のラスタ化表現から導出され得る。この場合、物体は異なる方向からX線を用いて暴露され、物体を通るX線の強度は、物体の背後に配置された検出器によって記録される。物体の3次元表現は、異なる方向からこのようにして生成されたX線画像の合計から再構成され得る。この場合、一定の体積のピクセル(ボクセル)からなる3次元ラスタが一般に使用され、ボクセルの位置における物体の判定されたX線密度を表すグレースケール値が、個々のボクセルにそれぞれ割り当てられる。固体内では、X線密度を特徴付ける物体表現のグレースケール値は一定の値を有することが理論上予想され得る。材料遷移がなく、材料境界面がない固体材料領域を示す、対応する画像セクションが図2a)に示されている。
【0050】
図2a)は物体104の表現のセクションの概略図を示し、セクションは合計36個の測定ポイント106を有する下位領域を備える。この場合、個々の測定ポイント106は正方形グリッド中に配列される。グレースケール値の形態の表現された物体に関する情報のアイテムは、測定ポイント106においてそれぞれコーディングされる。上記で説明したように、図2a)は、たとえば、コンピュータ・トモグラフによる物体の撮像であり得る。図示の例では、ピクセルまたは測定ポイント106のグレースケール値は8ビット値としてコーディングされている。したがって、グレースケール値は0と255との間の数値をとることができる。図示の例では、すべての測定ポイント106が一貫してグレースケール値150を有する。
【0051】
図2a)に示されているような表現は、たとえば、撮像システム、すなわち、コンピュータ・トモグラフによって撮像誤差が生成されないと仮定して、たとえば、物体の均質な物質密度を有する領域が撮像される場合に存在する。
【0052】
しかしながら、表現された物体の本質的に均一な領域が物体表現104中でも実際に均一に表現されることは、実際には決してない。むしろ、図2a)に理想化された様態で示されている物体の表現は、実際には、表現上に重畳された異なる撮像誤差、たとえば統計ノイズを有する。得られた状況は図2b)に示されている。
【0053】
この場合、図2b)は図2a)とまったく同じ画像セクションを示すが、図2b)中の物体表現104では、測定ポイント106に関する画像情報は、統計ノイズのために、実際に予想された値150の周りに統計上分布される様態で散乱させられている。図2b)に示された散乱は、理想的にはこの程度まで起こるべきでない、極めて大いに目立つ散乱である。しかしながら、コンピュータ・トモグラフを用いた測定においてそのような散乱が起こることは完全にあり得る。この場合、測定ポイント106に関する画像情報は、実際の測定値の10%を超える相対偏差に対応する、150の画像情報の実効値から上方向または下方向において、表現された測定変数の20単位を超えるだけ時々異なる。
【0054】
図2b)に例として示されているグレースケール値の分布は、図3に概略的に示されている。この場合、特定のグレースケール値の頻度が、対応するグレースケール値に対してプロットされる。図2a)中の理想化された表現からの図2b)中の画像情報の偏差を引き起こすノイズは統計プロセスであるので、グレースケール値は、一般に、グレースケール値の予想値の周りにガウス様態で分布される。この場合、たとえば、図2a)による実際の画像情報に対応する、図示されたガウス分布108の中心における予想値として、150の値がとられるべきである。
【0055】
一実施形態によれば、図2b)に例として示されている、統計ノイズの強度に関する記述は、図2b)中の画像情報を記述するガウス曲線108のパラメータを使用してなされ得る。たとえば、ガウス曲線108の標準偏差が、統計ノイズの強度を推定するために使用され得る。例として、たとえば、図3中のガウス曲線について、標準偏差は8の数値として判定されたと仮定され得る。この情報から、たとえば、図2b)中の測定ポイント106のグレースケール値は150±8の範囲内にあると推定することが可能である。
【0056】
ここまでで、グレースケール値と標準偏差とについての選択された数値は、例示的な理由でのみ選択されたものであることに留意されたい。実際に行われている測定中、測定と測定結果の処理とから生じるノイズは、例として説明した場合よりも完全に強くなることも弱くなることもあり得る。8ビットを使用するコーディングに対するグレースケール値の階調、すなわち、0と255との間の数値は、同様にまた例示的な理由でのみ選択されたものである。より微細な解像度のために16ビットまたは32ビットまたはこれを超えるビットを使用するコーディングが行われることも完全に可能であり、その結果、0と65,535またはこれを超える数との間の数値が画像情報の階調のために利用可能になる。
【0057】
図2b)中の物体表現104のグレースケール値が、表現された測定変数の±24単位の誤差を被るという知識は、この誤差が、材料境界面100の位置の判定において、および究極的には距離フィールドの距離値において、どのように反映されるかを判定するために使用され得る。この目的で、たとえば、計算ルールを判定することが可能であり、その計算ルールに基づいて、誤差伝搬を判定することによって物体表現に関する画像情報から距離値の不確定性が判定され得る。たとえば、距離値における誤差は、統計ノイズの判定された強度の指数と、考慮された画像情報の領域中の画像情報の勾配とから推定され得る。
【0058】
異なる材料品質は一般に異なる領域において撮像されるので、たとえば、コンピュータ・トモグラフを使用して記録される物体表現は、通常、図2中の理想化された表現とは異なる。この点で、たとえば、図4は、例として、その中で画像情報の異なるアイテムがそれぞれ物体表現の3つの領域において撮像される物体表現104を示す。たとえば、左上に示されている実質的に黒い第1の領域110は周囲空気であり得、一方、図示された画像セクション中の右側と下部におけるより明るい領域112および114は、たとえば、金属またはプラスチックであり得る。
【0059】
上記で説明した統計ノイズは、ここでは、異なる画像情報のために異なる領域中で異なる程度まで反映されている。たとえば、ノイズは、黒い領域110中よりも、実質的に白い第2の領域112中で強いことが観測され得る。したがって、ノイズの強度の全体的な判定と、この強度に基づく図示された物体表現104中のすべてのポイントの材料境界面の距離値の不確定性の対応する推定とは、この距離値はグレースケール値から導出されるが、個々の領域110、112および114における条件を満たさないであろう。したがって、一実施形態では、物体表現104は、まず第1に領域に再分割されるようになされ、たとえば、本事例では、左上の領域110と、右側の白い領域112と、下側のグレーの領域114とが選択され得る。上記で説明したように、次いで、画像情報における統計ノイズの強度が、これらの領域110、112および114の各々についてそれぞれ判定され、測定データの不確定性またはそれに応じて導出される距離値が推定されるであろう。
【0060】
また、図4に見られるように、均一な領域110、112および114に加えて、画像情報が第1の値から第2の値に緩やかに変化する領域も、通常、物体表現104中に存在する。統計ノイズの強度は、たとえば、領域、たとえば110および112においてそれに応じて判定された値間の補間を実行することによって、そのような領域において推定され得る。
【0061】
図5は、多数のデータ・ポイント102を有する距離フィールド中の材料境界面100によって表現された物体の概略図を示す。図示された物体は、たとえば、本体中の掘削された穴であり得、その結果、図示された本体の材料、たとえば金属は、材料境界面100によって囲まれた領域の外側に存在するが、空気は、材料境界面100によって囲まれた領域の内側に撮像される。
【0062】
材料境界面100の経路は、図5において極めて不均一な様態で描かれている。しかしながら、掘削された穴における材料境界面のそのような経路は、一般に、円形の掘削された穴を有することが実際に意図される工作物を検査するときには観測され得ない。ターゲット・ジオメトリからの描かれたジオメトリの大いに悪化した偏差の選定は、本事例における状況をより良く示すためにのみ使用されている。この場合、図1に関して説明したように、材料境界面100の経路は、個々のデータ・ポイント102に割り当てられた距離値によってコーディングされる。
【0063】
図5中の画像セクションでは、ターゲット・ジオメトリ108は、表現された物体のジオメトリに適合させられており、このジオメトリは距離フィールドによって表現されている。図2に示された変形態では、ターゲット・ジオメトリ116は、たとえば、最小2乗法によって適合させられ得る。この場合、ターゲット・ジオメトリ116は、ターゲット・ジオメトリ116と材料境界面100との間の2乗平均距離が最小になるような様態で、データ・ポイント102の距離値によってコーディングされた材料境界面100に適合させられる。次いで、たとえば、ターゲット・ジオメトリ116の位置または図5中のターゲット・ジオメトリ116によって表現された掘削された穴の位置に関する情報、および掘削された穴の直径に関する情報が、適合させられたターゲット・ジオメトリ116から導出され得る。
【0064】
図5において選択されたターゲット・ジオメトリ116、すなわち円形ジオメトリは、例としてのみ使用されている。同様の表現は、コーナー、エッジ、直平行6面体または類似のジオメトリなどのターゲット・ジオメトリについても可能であろう。
【0065】
データ・ポイント102の距離値による距離フィールドによって表現された材料境界面100へのターゲット・ジオメトリ116の直接の適合の結果として、ターゲット・ジオメトリ116は、距離フィールドによって表現された材料境界面100が、測定データによって与えられた最大の正確さを用いて判定されたと仮定して、それに応じて正確に適合させられ得る。このことは、たとえば、最小2乗法において速やかに明らかになる。
【0066】
ガウス適合としても知られる最小2乗法では、関数からの測定ポイントの平方距離が最小になるような様態で、測定ポイントのセットに対して関数を配置する試みがなされる。この目的で、測定ポイントのセット、本事例では材料境界面100の位置がまず第1に判定されなければならない。次いで、ポイントと、適合させられるべきターゲット・ジオメトリ116との間のそれぞれの距離が、材料境界面100上のこのようにして判定されたポイントのセットについて判定されなければならない。その場合、ターゲット・ジオメトリ116の位置は、材料境界面100上のポイントとターゲット・ジオメトリ116上の対応するポイントとの間の2乗平均距離が最小にされるような様態で、変動させられ得る。
【0067】
しかしながら、材料境界面100上のポイントを判定する上記で説明した中間ステップは、材料境界面100が距離フィールドによってコーディングされる場合には省かれ得る。これは、この場合、ターゲット・ジオメトリ116の表面上のポイントと材料境界面100上の対応するポイントとの間の距離の後続の判定が、ターゲット・ジオメトリ116の近傍のデータ・ポイント102について、データ・ポイント102のそれぞれの距離値、およびデータ・ポイント102とターゲット・ジオメトリ116との間のそれぞれの距離を判定することによって実施され得るからである。その場合、ターゲット・ジオメトリ116と、データ・ポイント102の近傍の材料境界面100との間の距離は、このようにして判定されたターゲット・ジオメトリ116からのデータ・ポイント102の距離と、読み出された距離値との間のそれぞれの差からそれぞれ判定され得る。次いで、ターゲット・ジオメトリ116は、ターゲット・ジオメトリ116と材料境界面100との間の上記で説明した様態で判定された距離が最小にされるような様態で、ターゲット・ジオメトリ116を位置決めすることによって適合させられ得る。この場合、材料境界面100上のポイントの判定とこれに関連付けられる不正確さとはなくて済む。
【0068】
最小2乗法に基づくターゲット・ジオメトリ116の上記で説明した適合に加えて、異なる状況では、距離値によってコーディングされた材料境界面100にターゲット・ジオメトリ116を適合させるために他の方法を使用することも有用であり得る。この点で、図6は2つの可能な適合方法、すなわち、図6a)中の外接する形状としてのターゲット・ジオメトリ116への適合と、図6b)中の内接する形状としてのターゲット・ジオメトリ116への適合とを示す。状況を説明するために、図6中のターゲット・ジオメトリ116として、この場合も円形形状が選択された。
【0069】
図6a)では、ターゲット・ジオメトリ116は外接する形状として材料境界面100に適合させられている。明確化の理由で、図5に示された距離フィールドと、距離フィールドのデータ・ポイント102とは図6には示されていない。図6a)に見られるように、外接する形状は、材料境界面100のすべてのポイントが、適合させられたターゲット・ジオメトリ116の内側に配列されるような様態で構成された形状である。たとえば、図6a)に示されたジオメトリが、たとえば、物体から突出するピンであるときに、外接する形状としてターゲット・ジオメトリ116に適合することが有用であり得る。これは、この場合、ピンが対応する掘削された穴に適合するか否かを判定することが可能であるように、ピンの最大直径が関連があるからである。
【0070】
対照的に、図6b)は、ターゲット・ジオメトリ116が内接する形状として材料境界面100に適合させられる、材料境界面100へのターゲット・ジオメトリ116の適合を示す。このことは、ターゲット・ジオメトリ116が材料境界面100の内側に完全に配置されることを意味する。この適合の形態は、たとえば、検査される物体におけるボアまたは穴を分析するために関連があり得る。これは、この場合、掘削された穴が、対応するカウンターパート要素を収容するために好適であるかどうかを判定するために、掘削された穴の最小直径が関連があるからである。図6a)と図6b)との比較では、内接する形状または外接する形状の選定の結果として、適合させられたターゲット・ジオメトリ116から判定される、検査されるジオメトリの直径が、異なる結果につながるだけでなく、適合させられたターゲット・ジオメトリ116の中心点118も異なり得ることに留意されたい。
【0071】
平均2乗偏差によるターゲット・ジオメトリ116への適合または内接するもしくは外接する形状としてのターゲット・ジオメトリ116への適合の上記で説明した変形態に加えて、ターゲット・ジオメトリ116はさらにまた、図7に示されているように、最小ゾーン適合の一部として適合させられ得る。
【0072】
この点で、図7は、図5および図6に示された材料境界面100よりも、円形形状から著しく大きい程度まで異なるジオメトリを有する材料境界面100を示している。このジオメトリは、この場合も、より良い説明のためにのみ選択されたものである。
【0073】
最小ゾーン適合では、ターゲット・ジオメトリ116は、一般に、内接する形状と外接する形状の両方として材料境界面100に適合させられる。対応する内接する形状は参照符号120を使用して示されており、一方、外接する形状は参照符号122を有する。次いで、ターゲット・ジオメトリ116の位置が、各場合において、外接する形状122および内接する形状120から同じ距離124にあるような様態で、ターゲット・ジオメトリ116を正確に位置決めすることによって、内接する形状120と外接する形状122とから判定される。この場合、内接する形状120および外接する形状122は、それらの中心点118が同一であるような様態で位置決めされる。
【0074】
図8は、本発明による方法のフローチャートを示す。この場合、物体表現に関する測定データが、まず第1に、第1の方法ステップ200において判定される。この目的で、たとえば、表現されるべき物体上で測定が実行され得るとともに、既存の物体表現が記憶媒体から読み取られ得る。測定は、たとえば、表現されるべき物体の非破壊検査を可能にするコンピュータ・トモグラフの支援を得て実行され得る。次いで、表現された物体の材料境界面100を記述する多数の距離値を有する距離フィールドが、ステップ200において判定された物体表現に関する測定データまたは画像情報からステップ202において判定される。この場合、距離値は、距離フィールド中の特定のポイントについて、このポイントが物体表現中の表現された物体の最も近い材料境界面から正確にどのくらい遠く離れているのかを記述する。
【0075】
この場合、距離フィールドはラスタ化形態で存在し得、その中で少なくとも1つの距離値が各ラスタ・ポイントにそれぞれ割り当てられるか、またはスカラー距離フィールドの形態で記憶され得、その結果、距離値はスカラー距離フィールドによる物体表現内の所望のポイントに割り当てられる。
【0076】
画像情報から距離フィールドを判定した後、次いで、判定された物体表現に関する画像情報上に重畳された統計ノイズの強度がステップ204において判定される。この場合、そのような統計ノイズは、通常、物体表現を生成するためにまたは測定データを判定するために使用される撮像装置による異なる原因を有し得る。統計ノイズの強度は、たとえば、画像情報の統計を作成することによって判定され得、その場合、画像情報の標準偏差が画像情報の統計からのノイズとして解釈され得る。しかしながら、統計ノイズの強度を推定するために使用され得る他の手法も可能である。
【0077】
統計ノイズの事前に判定された強度に基づいて、方法ステップ206は、次いで、距離フィールドの事前に判定された距離値の不確定性がどのくらい大きいかを判定する。この目的で、たとえば、計算ルールを導出することが可能であり、その計算ルールに基づいて、材料境界面の位置または距離フィールドの関連する距離値が物体表現に関する画像情報から判定され得る。次いで、統計ノイズの強度がそれぞれの画像情報における誤差であると仮定することによって、計算ルールの関連する誤差伝搬を判定することによって距離値の不確定性が導出され得る。たとえば、距離値の不確定性は、統計ノイズの強度の指数と、距離値の領域中の画像情報の勾配とから導出され得る。
【0078】
本発明は、上記で説明した実施形態のうちの1つに限定されず、むしろ、様々な方法で変更され得る。
【0079】
設計詳細、空間的配置および方法ステップを含む、特許請求の範囲、明細書および図面から現れるすべての特徴および利点は、単独と多種多様な組合せの両方で、本発明に必須であり得る。
【符号の説明】
【0080】
参照符号のリスト
100 材料境界面
102 データ・ポイント
104 物体表現
106 像点/測定ポイント
108 ガウス曲線
110 第1の領域
112 第2の領域
114 第3の領域
116 ターゲット・ジオメトリ
118 中心点
120 内接する形状
122 外接する形状
124 距離
図1
図2a)】
図2b)】
図3
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図7
図8