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特許7206264ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法
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  • 特許-ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/06 20060101AFI20230110BHJP
   C07C 219/08 20060101ALI20230110BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
C07C213/06
C07C219/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020518639
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076447
(87)【国際公開番号】W WO2019068578
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】102017217620.2
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルツェル トレスコフ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】トアベン シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭35-000161(JP,B1)
【文献】米国特許第03784566(US,A)
【文献】特公昭04-000485(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であって、(a)アルキル(メタ)アクリレートと、(b)ジメチルアミノアルカノールと、(c)リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む触媒系とを含む混合物を反応させる方法において、前記反応を2つ以上の撹拌槽のカスケードで連続式に行い、温度がカスケードに沿って上昇し、かつ前記触媒系が、アルカリ土類金属化合物を含有しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記反応の間に、さらなる量の(a)アルキル(メタ)アクリレート、(b)ジメチルアミノアルカノールおよび場合により(c)触媒系を反応混合物に添加し、生成するジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートを、反応混合物から部分的に、または完全に除去することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ジメチルアミノアルカノールが、2-ジメチルアミノ-1-エタノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール、5-ジメチルアミノ-1-ペンタノール、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール、7-ジメチルアミノ-1-ヘプタノールおよび8-ジメチルアミノ-1-オクタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレートおよびオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ジメチルアミノアルカノールが、2-ジメチルアミノ-1-エタノールであり、前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記リチウムアルコキシドが、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムn-プロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムn-ブトキシド、リチウムイソブトキシドおよびリチウムtert-ブトキシドからなる群から選択され、前記アルコールが、それとは独立して、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールおよびtert-ブタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記触媒系が、リチウムメトキシドのメタノール溶液またはリチウムtert-ブトキシドのメタノール溶液もしくはtert-ブタノール溶液からなることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物を、100~140℃の範囲の温度に加熱することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、さらに、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよび2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物における(a)アルキル(メタ)アクリレート対(b)ジメチルアミノアルカノールのモル比が、3.5:1~1.1:1であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物中の前記リチウムアルコキシドの割合が、前記ジメチルアミノアルカノールに対して0.4~5mol%であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノアルカノールからジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。同様に本発明は、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造における、リチウムメトキシドのアルコール溶液を含む触媒系の使用に関する。
【0002】
触媒LiNHを使用した2-ジメチルアミノエチルメタクリレートの製造は、従来技術から公知である。触媒LiNHは、全ての有機溶媒に実質的に不溶性の粉末であり、ケーキング傾向があり、重合を誘発する。したがって、ダウンタイムが短縮され、計量供給がより容易であり、そして妨害がより少ない単純化されたレジームに向けて、反応マトリックスへの高い溶解性、および最終的には活性を示す液体触媒が必要とされていた。
【0003】
独国特許出願公開第1965308号明細書には、ジメチルアミノエタノールとアルキルアクリレートまたはメタクリレート、例えばメチルメタクリレートとの間のエステル交換を、反応物の所定の比率で、触媒としてナトリウムメトキシドまたはカリウムメトキシドを使用し、かつメチルメタクリレートおよび最終生成物の重合を遅延させるための阻害剤を使用して行うことが記載されている。触媒が経時的に段階的に添加されることで、収率、特に空時収率が向上する。反応時間中に触媒を連続的に供給すること、そしてナトリウムメトキシドおよび/またはカリウムメトキシドが二次反応物および望ましくないポリマー生成物を生じる傾向があることから、この技術も同様に、商業ベースで完全に満足できるものではない。
【0004】
独国特許出願公開第3423441号明細書は、多価アルコールを除く異なるアルコールを用いたC1~C4アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのエステル交換により、アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールとからエステルを製造する方法を開示しており、エステル交換反応は、ハロゲン化カルシウムまたは酸化カルシウムおよび有機リチウム化合物からなる触媒系の存在下で行われる。記載されている方法の欠点は、ハロゲン化物の存在により、総じて、付加化合物を介して有機結合ハロゲンが形成されることである。ハロゲン化物が存在する場合、総じて、反応残留物を燃焼させることができない。なぜならば、塩化物の存在下では燃焼中にダイオキシン、例えば特に有毒な2,3,7,8-テトラクロロジベンゾジオキシン(CAS1746-01-6)が形成されるリスクがあるためである。
【0005】
したがって、最小限の副反応物および副生成物で短い反応時間を可能にするジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法が引き続き必要とされている。
【0006】
ここで、驚くべきことに、リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む触媒系を使用すれば、従来技術の前述の欠点を克服することができることが見出された。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、(a)アルキル(メタ)アクリレートと、(b)ジメチルアミノアルカノールと、(c)リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む触媒系とを含む混合物を反応させることを特徴とする、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【0008】
本発明の方法によれば、比較的高い温度、したがってより短い反応時間が実現可能である。
【0009】
以下の反応スキームに、例として、メチルメタクリレートおよび2-ジメチルアミノ-1-エタノールからのジメチルアミノエチルメタクリレートの製造を表す。
【化1】
【0010】
ただし、本発明の方法は、2-ジメチルアミノ-1-エタノールの使用に制限されない。本発明により使用することができる他のジメチルアミノアルカノールの例は、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール、5-ジメチルアミノ-1-ペンタノール、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール、7-ジメチルアミノ-1-ヘプタノールおよび8-ジメチルアミノ-1-オクタノールである。本発明によれば、2-ジメチルアミノ-1-エタノールの使用が好ましい。
【0011】
同様に、本発明の方法は、メチルメタクリレートの使用に制限されない。本発明により使用することができるさらなるメタクリレートの例は、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレートおよびオクチルメタクリレートである。本発明により使用することができるアクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレートおよびオクチルアクリレートである。本発明によれば、メチルメタクリレートの使用が好ましい。
【0012】
上記で示されたスキーム、および使用することができるアミノアルキルアルコールの範囲には同様に、当業者に明らかなように、対応するアクリレート化合物の製造が包含され、この場合、メチルメタクリレートが、好ましい出発化合物である。
【0013】
本発明により使用される触媒系は、リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む。本発明による使用のためのリチウムアルコキシドの例は、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムn-プロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムn-ブトキシド、リチウムイソブトキシドおよびリチウムtert-ブトキシドである。本発明による使用のためのアルコールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールおよびtert-ブタノールである。リチウムアルコキシドおよびアルコールは、原則として、それぞれ独立して選択することができる。
【0014】
本発明によれば、触媒系は、リチウムメトキシドのメタノール溶液またはリチウムtert-ブトキシドのメタノールもしくはtert-ブタノール溶液からなることが特に好ましい。
【0015】
本発明によれば、触媒系は、アルカリ土類金属化合物、とりわけカルシウム化合物を含有しないことも好ましい。
【0016】
総じて、リチウムアルコキシドのアルコール溶液は、アルコールに対して5~15質量%のリチウムアルコキシド、例えば6~14質量%、7~13質量%、8~12質量%、9~11質量%または10質量%のリチウムアルコキシドを含有する。本明細書で報告された質量%の範囲は、上記指定されたリチウムアルコキシドと上記指定されたアルコールのいずれかとの任意の組み合わせに有効である。
【0017】
反応混合物中のリチウムアルコキシドの割合は、ジメチルアミノアルカノールに対して有利には0.4~5.0mol%、例えば1.0~4.5mol%、1.5~4.0mol%、2.0~3.5mol%、2.5~3.0mol%である。本明細書で報告されたmol%の範囲は、上記指定されたリチウムアルコキシドと上記指定されたジメチルアミノアルカノールのいずれかとの任意の組み合わせに有効である。
【0018】
活性触媒の記載された化学量論的触媒量は、最終的に消費されるアミノアルキルアルコールの量に対するものである。リチウムアルコキシド溶液を反応開始時に添加するため、反応開始時に総量が存在することが可能である。また、触媒の量の少なくとも一部を初期装入中に含め、次いで、反応の間に連続的に添加することも可能である。
【0019】
エステル交換のために化学量論的に必要とされる量を超える、過剰のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの使用が有利である。一般的に言えば、化学量論的に計算される量の1.1~3.5倍過剰の量が利用される。バッチを、実験室規模を超えて増加させる場合、過剰のアルキル(メタ)アクリレートを減少させることが推奨される傾向があるであろう。したがって、反応混合物における(a)アルキル(メタ)アクリレート対(b)ジメチルアミノアルカノールのモル比は、3.5:1~1.1:1の範囲、例えば3.4:1~1.2:1、3.3:1~1.3:1、3.2:1~1.4:1、3.1:1~1.5:1、3.0:1~1.6:1、2.9:1~1.7:1、2.8:1~1.8:1、2.7:1~1.9:1、2.6:1~2.0:1、2.5:1~2.1:1、2.4:1~2.2:1または2.3:1の範囲にある。
【0020】
総じて、溶媒の使用も不要である。ただし、場合により、不活性(非ラジカル形成性)溶媒を使用することも可能である。例えば、炭化水素、例えばシクロヘキサン、n-ヘキサンまたはヘプタンおよびトルエンが挙げられる。
【0021】
形成されるアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリレートの重合副生成物を抑制するために、安定剤(ラジカル捕捉剤)を含むことが推奨される。安定剤としての役割を果たすものは、先行技術から公知のいずれのラジカル捕捉剤であってもよく、その例は、ヒドロキノン化合物、チオ化合物またはアミンである。適切な安定剤の包括的な説明は、例えばH. Rauch-Puntigam, Th. Voelker: 「Acryl- und Methacrylverbindungen」, Springer-Verlag, 1967に見出される。重合の抑制およびジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの収率および純度の上昇に関して理想的な結果を得るために好ましい阻害剤は、フェノチアジン単独またはN,N-ジエチルヒドロキシルアミンと組み合わせたものである。この組み合わせは特に有用であり、なぜならば、フェノチアジンは固体であるため、槽内での有効な阻害剤の代表物であり、一方でジエチルヒドロキシルアミンは液体であるため、塔内での有効な阻害剤の代表物であるためである。他の阻害剤は、ヒドロキノン、ニトロベンゼン、ジ-tert-ブチルカテコール、ヒドロキノン、p-アニリノフェノールおよびジ(2-エチルヘキシル)オクチルフェニルホスファイトのメチルエーテルである。製造されるジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートがその後の単独重合または他の重合性モノマーとの共重合に供される用途では、該阻害剤が、重合の活性を低下させてはならない。このように使用されるジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートに好ましい貯蔵阻害剤は、ヒドロキノンのメチルエーテルである。
【0022】
好ましくは、本発明によれば、反応混合物は、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよび2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールからなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含む。
【0023】
該反応を、室温より高い温度、好ましくは、100~140℃の範囲、例えば105~135℃、110~130℃、115~125℃の範囲または120℃で有用に行う。本発明の方法の好ましい一実施形態では、反応混合物を、少なくとも100℃の温度に加熱する。
【0024】
該反応を2つ以上の撹拌槽のカスケード(「撹拌槽カスケード」)で行う場合、温度状態は、例えばカスケードにおける各槽において同じ温度が設定されるようなものであってよい。これに代えて、温度状態は、カスケードに沿って温度が上昇するように、すなわち温度勾配が設定されるようにすることもできる。本発明の方法の好ましい一実施形態では、該反応を、2~5個の撹拌槽からなるカスケード、より好ましくは、3個の撹拌槽からなるカスケードで行う。ここで、カスケードにおける最初の槽に、100℃の温度が設定され、カスケードにおける最後の槽に、140℃の温度が設定される。
【0025】
総反応時間は、総じて5~20時間、多くの場合6~12時間である。アルコール分解自体の持続時間の指針として、多くの場合、反応の終了までの残りの時間について3±1時間+約2~3時間が想定可能である。ただし、本明細書において、バッチのサイズも要因となる。メチル(メタ)アクリレートからエステル交換において形成されるメタノールは、例えば65~75℃で、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの共沸混合物において有用に取り出すことができる。
【0026】
該反応を、例えば下記のように行うことができる。2-ジメチルアミノ-1-エタノールを、過剰のメチルメタクリレートおよび安定剤と共に、適切な反応容器に装入する。触媒としてのリチウムメトキシドを該反応の間に添加してもよいし、これが開始時から存在してもよい。反応混合物を、撹拌しながら反応温度にする。例えばメチルメタクリレートを使用する場合、沸騰するまで加熱する。生成するメタノールを、70℃のオーバーヘッド蒸留温度で、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物で有利に取り出す。約98℃までのオーバーヘッド温度で、残りのメタノールを未転化メチルメタクリレートと共に取り出す。最後に、残りのメチルメタクリレートを、減圧下、150℃の最大底部温度で有利に留去する。作業を、従来の方法で行う。例えば漂白土または活性炭を粗製エステルに添加して短時間撹拌した後、プレコートフィルタまたは加圧フィルタを使用してろ過を行うことが適切であることが判明した。
【0027】
本発明の方法における所望のエステル交換生成物の収率は、通常、80質量%超、多くの場合、90質量%超のオーダーである。ビニル二重結合への付加化合物の割合が極めて低く、他の副生成物の割合も極めて低いことが強調される。
【0028】
本発明の方法は、バッチ式または連続式のいずれでも行うことができる。「バッチ式」とは、反応槽または反応器中での反応レジームを指す。この手法は、多くの場合、「バッチ式」プロセスとも呼ばれる。反応物、最も単純な場合にはメチルメタクリレートおよびアミノアルキルアルコールは、この場合には、反応の開始時の初期装入において、少なくとも分別的に含まれ、次いで、反応を、本発明の触媒の少なくとも一部の存在下で開始する。本方法のさらなる実施形態では、発生するアルコール(メタノール)およびジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの共沸混合物のある体積または量が反応器から出るため、触媒溶液ならびにアルキルメタクリレートおよび/またはアミノアルキルアルコールの一部も、反応の過程でさらに計量供給することができる。結果として、「セミバッチ」と呼ばれるこの手法では、所定の槽または反応器容積に対して空時収率が向上する。
【0029】
対照的に、「連続式」とは、管状反応器または反応槽のカスケードにおける反応レジームを指す。この場合、一方では反応物を連続的に供給し、他方では生成物を連続的に取り出す。したがって、記載された各反応ユニットにおいて、部分的な転化が存在する。
【0030】
したがって、本発明の主題はまた、反応の間に、さらなる量の(a)アルキル(メタ)アクリレート、(b)ジメチルアミノアルカノールおよび場合により(c)触媒系を反応混合物に添加し、生成するジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートを、反応混合物から部分的にまたは完全に除去することを特徴とする、本明細書に記載された方法である。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、エステル交換反応における、リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む触媒系の使用に関する。
【0032】
本発明の使用の好ましい一実施形態では、触媒系は、アルカリ土類金属化合物を含有しない。本発明の使用の特に好ましい一実施形態では、触媒系は、リチウムメトキシドのメタノール溶液またはリチウムtert-ブトキシドのメタノール溶液もしくはtert-ブタノール溶液からなる。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造における、リチウムアルコキシドのアルコール溶液を含む触媒系の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】種々の触媒を使用するバッチ式反応状態についてのジメチルアミノエチルメタクリレートの製造における底部温度を示す。
図2】種々の触媒を使用し、触媒量を変化させた連続式反応状態についてのジメチルアミノエチルメタクリレートの製造における転化率および選択率を示す。
【0035】
下記実施例は、本発明を解釈するのに役立つ。
【0036】
実施例
1.バッチ式反応
反応装置:
実験室用ジャッキ、外部調整付き加熱撹拌機、油浴(150℃)、0.5リットルおよび2リットルの四ツ口丸底フラスコ、底部温度計、バブルカウンター付き吸気口、サーベル型撹拌機、鏡面加工を施した真空断熱塔(長さ45cm、8×8mmのラシヒリング充填)、還流分配器、オーバーヘッド温度計、強力凝縮器、生成物凝縮器、Anschuetz‐Thiele受け器、蒸留物受け器を使用した。
【0037】
蒸留装置(後処理)
1リットルの三ツ口丸底フラスコ、沸騰キャピラリー、底部温度計、長さ20cmの塔(8×8mmのラシヒリング充填)、蒸留ブリッジ、Anschuetz-Thiele受け器、蒸留物受け器、油浴(130℃)、0mbar減圧を使用した。
【0038】
手順:
全ての実験において、反応物、安定剤および触媒を初期装入物中に含ませ、次いで、油浴(150℃)を使用して加熱した。
【0039】
比較例1および2は、予想外の発熱反応のために完了させることができなかった。
【0040】
本発明の実施例3および比較例4を、定期的にサンプリングし、理論転化率を求めた。反応後、過剰のメチルメタクリレートを取り出し、底部に残っている粗製エステルを蒸留装置に導入した。純粋な2-ジメチルアミノエチルメタクリレートを、塔頂から留去した。
【0041】
比較例1(カリウムメトキシド)
初期質量
89.61g=1molのジメチルアミノエタノール(純度99.48%)
300.36g=3molのメチルメタクリレート(モル比1:3)
0.1541g=理論収量に対して980ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル
0.2358g=理論収量に対して1500ppmの2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール
5.7gのカリウムメトキシド、MeOH中で32%=アルコールに対して2.6mol%。
比較例2(ナトリウムメトキシド)
初期質量
89.61g=1molのジメチルアミノエタノール(純度99.48%)
300.36g=3molのメチルメタクリレート(モル比1:3)
0.1541g=理論収量に対して980ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル
0.2358g=理論収量に対して1500ppmの2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール
4.7gのナトリウムメトキシド、MeOH中で30%=アルコールに対して2.6mol%。
本発明の実施例3(リチウムメトキシド)
初期質量
358.42g=4molのジメチルアミノエタノール(純度99.48%)
1201.4g=12molのメチルメタクリレート(モル比1:3)
0.6163g=理論収量に対して980ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル
0.9433g=理論収量に対して1500ppmの2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール
39.49gのリチウムメトキシド、MeOH中で10%=アルコールに対して2.6mol%
2-(ジメチルアミノエチル)メタクリレートの理論収率:628.8g
【0042】
2-ジメチルアミノエチルメタクリレートの理論収率:550.5g、これは理論値の87.5%に相当する。
【0043】
比較例4(リチウムアミド)
初期質量
358.42g=4molのジメチルアミノエタノール(純度99.48%)
1201.4g=12molのメチルメタクリレート(モル比1:3)
0.6163g=理論収量に対して980ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル
0.9433g=理論収量に対して1500ppmの2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール
2.41gのリチウムアミド=アルコールに対して2.6mol%
2-ジメチルアミノエチルメタクリレートの単離収率:628.8g
【0044】
2-ジメチルアミノエチルメタクリレートの理論収率:554.6g、これは理論値の88.2%に相当する。
【0045】
評価:
比較例1および2では、発熱反応(図1参照のこと)がオリゴマーの形成に有利であった。
【0046】
本発明の実施例3および比較例4では、エステル交換は、その過程において実質的に同一であった。ここでの主な違いは、固体触媒(比較例4)に対する液体触媒(本発明の実施例3)の有利な使用にある。
【0047】
2.連続式反応
実験設定:
槽カスケードとして連結されている、加熱および冷却用の外部ハーフシェルを備えた4つの100リットルのステンレス鋼撹拌槽、SMS(Buss-SMS-Canzler GmbH、ドイツ)製の0.75mの薄膜式エバポレーター、ステンレス鋼パールリング(20×20mm)を備えたステンレス鋼塔(公称幅200×6m)、3mのステンレス鋼循環エバポレーター、2つの3mのステンレス鋼凝縮器、1mのステンレス鋼最終凝縮器、精製蒸留の最初の画分からのジメチルアミノアルカノール、アルキル(メタ)アクリレートおよびN,N-ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート混合物のための3つの1.7mのフィード容器、ジメチルアミノアルカノールおよびアルキル(メタ)アクリレートのための1つの「Lewa H2」計量ポンプ、初期アルキル(メタ)アクリレート/ジメチルアミノアルカノール画分のための1つの「Lewa HL2」計量ポンプ、「Lewa HK2」計量ポンプにより計量を安定化させている、固体または液体触媒のための粉末計量装置またはポンプ、温度およびレベル制御回路、2つの1.2mのステンレス鋼沈殿容器、6mのステンレス鋼製の粗製エステル混合槽、種々の蒸気圧減圧器、温度表示装置を使用した。
【0048】
手順:
アルキル(メタ)アクリレートとジメチルアミノアルカノールとの反応をそれぞれ、110℃、120℃および130℃の底部温度で、3つのカスケード連結撹拌槽内で行う。第3段階からの反応生成物を、薄膜式エバポレーターに通す。蒸気は、段階1~3の蒸気と共に、共通ラインを介して塔の底部3分の1の箇所に入る。ジメチルアミノアルカノール出発物質および最初の画分も同様にこの塔に導入し、反対方向に流れる蒸気により脱水する。精留により、約70%のアルコール、約29.5%のアルキル(メタ)アクリレートおよび約0.5%の水を含む塔頂生成物が得られる。この蒸発物は、ジメチルアミノアルカノールおよびジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートを含まない。塔底部から、脱水されたジメチルアミノアルカノールおよび循環アルキル(メタ)アクリレートが、第1の反応段階に流入する。ポンプにより、触媒溶液を第1段階に輸送する。純粋なアルキル(メタ)アクリレートは、転化率および塔底部における粗製エステル中のアルキル(メタ)アクリレート含量の要求に応じて、レベル調節システムを介してさらなる部分で計量される。安定化は、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよび/または2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールおよび/または4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノキシル(TEMPOL)をアルキル(メタ)アクリレートに溶解させ、この安定剤溶液を塔頂に施与することにより達成される。この手段により、安定剤を、再循環流を介して全てのプロセス段階およびプロセス領域に分配させる。全ての段階において、空気を散布し、大気圧下で動作させる。ストリッピングされた粗製エステルを約40℃に冷却し、沈降容器に通して混合槽に入れ、再安定化させ、貯蔵設備にポンプ輸送する。いずれの場合にも1つの沈降容器が運転しており、約10日後に、堆積した任意の固体(例えばリチウムメタクリレート)を遠心分離により分離する。このプラントにより、0.5kmol/hのジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートに相当する、50L/hのジメチルアミノアルカノールのスループットが可能となる。
【0049】
始動のために、全ての段階を粗製エステルで満たし、反応温度に加熱した後、ジメチルアミノアルカノール、アルキル(メタ)アクリレート、初期画分および触媒のフィードを適用する。循環エバポレーターを介して、塔を加熱して、約150L/hの塔頂生成物を生成させる。蒸発物を、70%のアルコールおよび30%のアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物が一定のままであるような量でのみ取り出す。屈折率(n20)もしくは密度を測定するか、またはイン・サイチュ(in situ)NIRプローブを使用することによりモニタリングする。70/30の比率では、85/15の共沸混合物に対して、約0.5%のオーバーヘッドの濃度で水を除去し、必要とされる、プロセス段階からの水の不存在を確実にすることが可能である。塔底部から、約500L/hの、80%のアルキル(メタ)アクリレート、16%のジメチルアミノアルカノールおよび4%のジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの混合物を第1段階に入れる。ここでは、アルキル(メタ)アクリレート画分は、特に脱水のための循環生成物として機能する。塔底部および塔頂における異なる体積流量の主な理由は、アルキル(メタ)アクリレートとアルコールとの間の熱量データの差である。このプラントは、ジメチルアミノアルカノールのための出口(粗製エステルを介する以外)を提供しないため、塔底部中の生成物のGC分析により、mol%への転化後に、転化率および選択率の良好な概観が可能となる。これは、粗製エステルおよび個々の反応段階の両方に当てはまる。各実験を、触媒および触媒濃度それぞれを変化させて、数日間にわたって行った。触媒濃度の下限を決定する要因の1つは、計量装置の性能範囲である。反応チャンバを空にし、検査した後、触媒を交換する。
【0050】
評価:
結果を表1および表2にまとめる。
【0051】
LiNH、LiOMe(固体)およびLiOMe(メタノール中の10質量%溶液として)により、アミノエタノールの転化率に関して、類似し、かつLiOHと同等の結果が示される。
【0052】
LiOHとは対照的に、リチウムメタクリレートの結晶化により、第1段階および特に第2段階および第3段階において、堆積物の生成により熱伝達が減少し、温度が低下し、毎週の洗浄および切断が必要である。このような堆積物は、LiOMeまたはLiNHの使用時には、比較期間内において、反応槽内で観察されない。それにもかかわらず、エステルは、溶解形態および沈殿形態でリチウムメタクリレートを含有する。未溶解画分は約0.1%(LiOHの場合の1%に対して)であり、容易にろ過することができる。
【0053】
ジメチルアミノエチルメタクリレートについての選択率に関して、LiOHと比較して、明確な利点は明らかである。高沸点物の形成の結果として、LiOHは、全ての反応段階にわたって94%の選択率を示す。また、LiOMeおよびLiNHも、(メタノールとジメチルアミノエチルメタクリレートとの添加および/またはジメチルアミノエチルメタクリレートへのジメチルアミノエチル基の付加の結果として)まさに最初の段階で公知の高沸点物を同じ量で形成するが、それにもかかわらず、これらの化合物は、後続の段階で再び開裂するため、ジメチルアミノエチルメタクリレートに対する選択率が約97%に向上する。
【0054】
1mol%未満の触媒濃度では、95%までの転化率の低下が観察される。この濃度範囲では、固体形態にある触媒の均一な計量を行うことが困難になる。これは、特に易流動性の低いLiOMeについていえることであり、個々の測定値の比較的広い分布の原因である。
【0055】
前述の問題は、メタノール中の10% LiOMeの溶液を使用することによって解消される。触媒溶液中のさらなるメタノールを、反応全体に悪影響を及ぼすことなく、第1段階から共沸混合物として除去することができる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
図1
図2