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特許7206269結晶材料の表面における非晶質パッシベーション層を除去するための洗浄化学組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】結晶材料の表面における非晶質パッシベーション層を除去するための洗浄化学組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01L21/308 G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 645C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020522793
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FR2018051607
(87)【国際公開番号】W WO2019002789
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】1756215
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520000858
【氏名又は名称】テクニック・フランス
【氏名又は名称原語表記】TECHNIC FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ピッツェッティ
(72)【発明者】
【氏名】マリーヌ・オドワン
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ダヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ピアロ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヴェルナン
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107494(JP,A)
【文献】特表2009-515055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(1A、1B、4)から、該基材(1A、1B、4)のエッチングから生じるエッチング残渣を含むパッシベーション層(2)を、アルミニウム及び銅に対して選択的に除去するのに適した洗浄化学組成物であって、
該パッシベーション層(2)が、1以上の酸化数を有する酸化形態における金属及び/又は半導体材料を含み、
該基材は、1つの層、または少なくとも2つの異なる材料で構成される層のスタックで形成され、
該エッチングされる基材の層またはエッチングされる基材の層のスタックの構成材料がアルミニウムおよび/または銅を含み、
該化学組成物が、
-酢酸を含む弱酸であって、該弱酸の含有量が化学組成物の重量に対して20重量%~95重量%である弱酸、
-メタンスルホン酸を含む非酸化性強酸であって、該非酸化性強酸の含有量が、化学組成物の重量に対して、5重量%~50重量%である非酸化性強酸、
-含有量が化学組成物の重量に対して0.2重量%~2重量%であるフッ化水素酸、
-含有量が化学組成物の重量に対して2重量%~20重量%である水、
を含むことを特徴とする、化学組成物。
【請求項2】
前記弱酸の含有量が前記化学組成物の重量に対して50重量%~80重量%であり、前記非酸化性強酸の含有量が前記化学組成物の重量に対して15重量%~50重量%である、請求項1に記載の化学組成物。
【請求項3】
前記強酸がさらに塩酸を含む請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
基材(1A、1B、4)から、該基材(1A、1B、4)のエッチングから生じるエッチング残渣を含むパッシベーション層(2)を、アルミニウム及び銅に対して選択的に除去するための洗浄方法であって、
該パッシベーション層(2)が、1以上の酸化数を有する酸化形態における金属及び/又は半導体材料を含み、
該基材は、1つの層、または少なくとも2つの異なる材料で構成される層のスタックで形成され、
該エッチングされる基材の層またはエッチングされる基材の層のスタックの構成材料がアルミニウムおよび/または銅を含み、
次のステップ:
-先行する請求項のうちの1つによる洗浄化学組成物を提供するステップ、
-該化学組成物を前記基材(1A、1B、4)から前記パッシベーション層(2)を除去するのに十分な時間、前記パッシベーション層(2)に接触させるステップ、
を含むことを特徴とする、洗浄方法。
【請求項5】
前記化学組成物は60重量%~80重量%の濃度を有するメタンスルホン酸から製造される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄化学組成物は30重量%~40重量%の濃度を有する塩酸から製造される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記接触ステップに先立って、基材(1A、1B、4)の層または層のスタックをプラズマエッチングするためのステップを含む、請求項4~6のうちの1項に記載の方法であって、前記パッシベーション層(2)は、プラズマイオンと前記基材(1A、1B、4)の層または層のスタックのうちの少なくとも1つ層との相互作用により生じるものである、方法
【請求項8】
パッシベーション層(2)と接触している期間前記化学組成物が20℃~40℃の温度にある、請求項4~7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
前記パッシベーション層(2)が、次の化学元素:タンタル、ハフニウム、ジルコニウムのうちの1つ以上を含む、請求項4~8のうち1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基材(1A、1B、4)のエッチングされた層またはエッチングされた層のスタックの構成材料が、次の材料:金属、金属酸化物、半導体材料、半導体材料の酸化物のうちの1つ以上から選択される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄化学組成物に曝され得る他の材料からなる層に関して、酸化形態にある金属または半導体材料の選択的除去を可能にするために、それらから成る非晶質表面層を溶解する洗浄化学組成物に関する。当該組成物は、マイクロエレクトロニクスで非常に頻繁に使用されるプラズマエッチング法の実施により生じる非晶質パッシベーション層を除去するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
ドライパスエッチング法の実施は、規定の材料の層、例えば、金属の層を、該層をエッチングするためにイオンプラズマに曝すこと、すなわち、該層のある所定の領域で材料の局所的な除去を可能にするために、こうした領域を攻撃することを含む。3つの主要なドライエッチングの型、すなわちイオンビームエッチング(頭字語IBE)、反応性イオンエッチング(頭字語RIE)、および気相化学攻撃によるエッチングが存在する。3つはすべてイオンプラズマの形成から生じる。該方法の間、プラズマ状態にある気体は、エッチングされる材料を固体状態から気体状態に変換してそれを除去すること、すなわち、エッチングされる材料の層から除くことを可能にする。
【0003】
プラズマエッチングは特に、集積回路の製造が基本的なデバイスを作成し、それらをともに接続するためにさまざまな層での連続的な堆積およびエッチングステップを要するマイクロ電子デバイスの製造状況下で使用されるが、これに限らない。このような電子デバイスは、特に、金属の層と半導体材料の層の間に配置された酸化物層から形成される金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ、または2つの導電体層の間に配置された絶縁体から形成される金属絶縁体金属(MIM)キャパシタである。技術的な理由から、導電性材料の2つの層の間に配置された絶縁体の誘電率の値はできるだけ高くなければいけない。結晶形態の五酸化タンタル(Ta)、二酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)などの材料は、キャパシタの形成に用いられ、高k材料として知られている。
【0004】
プラズマエッチングを行うと、主としてエッチングされた層の側壁、または側面に堆積するエッチング残渣が形成される。こうしたエッチング残渣は、酸化形態の金属または半導体材料から成る非晶質表面層の形態を取り、それらはプラズマイオンとエッチングされる1つの層または複数の層との相互作用により生じる。
【0005】
エッチング残渣は、例えば、エッチング「ウェル」の内部側面、またはパターンの外部側面上に堆積する場合があり、後者はエッチングされたゾーンのいずれかの側にある非エッチングゾーンに対応する。従ってこうしたエッチング残渣はプラズマエッチングに対する障壁を提供するパッシベーション層を形成する。
【0006】
パッシベーション層は、低揮発性のエッチング生成物の再堆積によって、またはエッチング残渣を形成可能な重合ガスのプラズマへの導入によって形成される。パッシベーション層の形成のためのいくつかの物理化学的メカニズムは区別でき、その中には以下の反復メカニズムがある。
【0007】
第1のメカニズムによれば、プラズマイオンはエッチングされる層と反応し、パターンの側面のエッチングされる表面に反応層を形成する。第2のメカニズムによれば、プラズマイオンとエッチングされる層との反応からの揮発性エッチング生成物は、パターンの側面に堆積し、その後、例えば酸化により、パッシベーション層を形成するために化学環境と反応する。第3のメカニズムによれば、当該残渣はプラズマによって直接生成され、反応層が関与することなく、パターンの側面に直接堆積する。
【0008】
さらに、プラズマエッチングには比較的異方性であるという利点を有しており、エッチングの大部分はプラズマイオンの流れに沿って、すなわち、エッチングされる基材の層に実質的に垂直な方向に向けられている。
【0009】
エッチング異方性はイオンの方向性のある流れから生じるが、それでもなお、化学的性質の等方性エッチングメカニズムにより無視できない横方向のエッチング速度が存在する。
【0010】
横方向のエッチング速度は、基材の側面の水平方向のエッチングと側面での保護パッシベーション層の形成という2つの成分の結果である。結果として、パッシベーション層の形成を制御することにより、プラズマイオン流の方向のエッチングを最大化し、プラズマイオン流の方向に、実質的に垂直な横方向のエッチングを最小化することができる。実際には、プラズマエッチング法は、深さが低く制御されたパッシベーション層を基材の側面に形成するように最適化される。
【0011】
いずれの場合も、制御されているかどうかに関わりなく、パッシベーション層はエッチングされる層に対するプラズマのまさにその作用から生じ、エッチング後に除去する必要がある。
【0012】
これを行うために、エッチング残渣が化学的に攻撃されて基材から除去されるように化学組成物がこの残渣と接触して適用される、ウェットパス化学洗浄の使用が知られている。このタイプの洗浄は、特に比較的簡単に実施できるため、非常に広く使用されている。実際には、それは基材からパッシベーション層を除去するのに十分な時間、確実に化学組成物が基材と接触することを確実なものとすることを含み、この洗浄時間は、除去される層の性質と厚さ、および化学組成物に依存する。それは、例えば、基材を化学組成物の浴に浸漬すること、または基材が適切な支持体上で回転しながら、基材上に化学組成物を動的に分配することを含み得る。その結果、多くの基材を並行して処理することができる。このことは、かなりの時間の節約と工業生産コストの大幅な削減を意味する。
【0013】
化学組成物は、除去されるパッシベーション層の構成材料、および保護される層の材料に応じて選択され、この保護される層の材料は当該組成物によって攻撃されてはならない。低揮発性エッチング生成物の再堆積によってパッシベーション層が得られる場合(特に上記の第1および第2のメカニズムの場合)、化学組成物の選択は、従ってエッチングされた層の構成材料にも依存する。
【0014】
従って、洗浄中に接触し得る他の材料に対して選択的でありながら、エッチング残渣を効果的に攻撃する化学組成物を使用する必要がある。
【0015】
プラズマエッチング後の基材の化学洗浄にフッ化水素酸を使用することが知られている。より一般的には、フッ化水素酸は、金属酸化物および半導体のウェットエッチングに広く使用されており、金属酸化物および非晶質半導体を非常に効果的に溶解する。非晶質構造は、結晶格子に従って秩序化された結晶構造とは対照的に、無秩序な原子構造に対応することを述べておく必要がある。結晶格子は構造に剛性を与え、非晶質構造よりも化学的攻撃、特にフッ化水素酸に対してさらにより耐性にする。
【0016】
フッ化水素酸と酢酸を含む組成物は、フッ化水素酸のみの組成物よりずっと効果的に非晶質金属酸化物を攻撃することも観察されている。この主題に関して、文献米国特許公開第2016/0163533号明細書は、フッ化水素酸、酢酸などの有機酸、および水をベースとする組成物により、シリコンを攻撃することなく、シリコン基材上のタンタル酸化物の層を効果的に攻撃できると述べている。
【0017】
上述の化学組成物は、非晶質金属酸化物の攻撃に効果的であるが、その一方、ある金属または例えばシリコンなどの半導体材料に対して選択性を示す。
【0018】
しかしながら、これらの組成物はいずれもアルミニウムを保護しないため、当該化学組成物と接触するアルミニウムの層は攻撃され、非晶質金属酸化物層と共に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許公開第2016/0163533号明細書
【発明の概要】
【0020】
従って、本発明の目的は、パッシベーション層をアルミニウムおよび銅に対して選択的に除去できる洗浄化学組成物を提案することにより、従来技術の欠点を克服することである。言い換えると、この提案された化学組成物は、パッシベーション層を攻撃する一方で、アルミニウムと銅を保護する。
【0021】
本発明の目的は、特にその構成層の1つ以上をプラズマエッチングした後、層または層のスタックで形成された基材を洗浄するための化学組成物を提案することであり、この組成物によってプラズマイオンとエッチングされる基材の1つの層または複数の層との相互作用により形成されるパッシベーション層のエッチングが可能になり、アルミニウムおよび銅に対して選択的に除去される。
【0022】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は基材から、基材のエッチングにより生じるエッチング残渣を含むパッシベーション層を除去するのに適した洗浄化学組成物を提案し、主として
-酢酸を含む弱酸であって、該弱酸の含有量が化学組成物の重量に対して20重量%~95重量%、好ましくは50重量%~80重量%である弱酸、
-メタンスルホン酸を含む非酸化性強酸であって、該非酸化性強酸の含有量が化学組成物の重量に対して5重量%~50重量%、好ましくは15重量%~50重量である非酸化性強酸、
-含有量が化学組成物の重量に対して0.2重量%~2重量%であるフッ化水素酸、
-含有量が化学組成物の重量に対して2重量%~20重量%である水、
を含むことを特徴とする。
【0023】
一実施形態によれば、前記化学組成物は単独でまたは本質的に前記弱酸、前記強酸、フッ化水素酸および水から構成される。
【0024】
一実施形態によれば、前記強酸がさらに塩酸を含む。
【0025】
本発明の別の目的は、アルミニウムおよび銅に対して選択的なパッシベーション層の除去を可能にする基材の洗浄方法を提案することであり、上述の化学組成物が使用される。
【0026】
この目的のために、第2の態様によれば、本発明は基材から、基材のエッチングにより生じるエッチング残渣を含むパッシベーション層を除去するための洗浄方法を提案し、主として以下のステップを含むことを特徴とする。
-前記組成物に従う洗浄化学組成物を提供するステップ
-前記基材から前記パッシベーション層を除去するのに十分な時間、前記洗浄化学組成物を前記パッシベーション層に接触させるステップ。
【0027】
他の態様によれば、前記提案された洗浄方法は、単独で、または技術的に可能なこれらの組み合わせに従って、以下の異なる特性を示す。
-使用する前記洗浄化学組成物が、60重量%~80重量%の濃度を有するメタンスルホン酸から製造される。
-使用する前記洗浄化学組成物が、30重量%~40重量%の濃度を有する塩酸から製造される。
-前記接触期間ステップに先立って、基材の層または層のスタックをプラズマエッチングするステップであって、前記パッシベーション層が、プラズマイオンと基材の層または層のスタックのうちの少なくとも1つとの相互作用によって生じる基材の層又は層のスタックをエッチングするためのステップ。
-前記パッシベーション層との接触期間中、前記化学組成物は20℃~40℃、好ましくは20℃~30℃の温度である。
-前記パッシベーション層は以下の化学元素の1つまたは複数を含む。
タンタル、ハフニウム、ジルコニウム
-前記エッチングされる基材の層または前記エッチングされる基材の層のスタックの構成材料は以下の材料のうちの1つまたは複数から選択される。
金属、金属酸化物、半導体材料、半導体材料の酸化物
-前記エッチングされる基材の層または前記エッチングされる基材の層のスタックの構成材料は、アルミニウムおよび/または銅を含む。
【0028】
前記提案される化学組成物および洗浄方法は、特にマイクロ電子部品製造状況下におけるパッシベーション層の除去に適用されるが、これに限らない。
【0029】
用語「パッシベーション層」は本明細書では、自然にまたは人工的に形成された、酸化形態の金属および/または半導体材料(酸化数が1以上)からなり、金属および/または半導体材料のカチオンに関連するいくつかの化学元素、例えばフッ素、塩素、リン、硫黄、酸素、窒素または炭素を含むことができる、非晶質層を意味する(例えば、プラズマエッチング後に得られる残渣の場合)。
【0030】
基材は、1つの層または少なくとも2つの異なる材料で構成される層のスタックで形成される。基材層の構成材料は金属および半導体材料であり、このような材料はその酸化形態(1以上の酸化数)で存在し得る。これらは、高誘電率、いわゆる「高k」材料などの絶縁材料、例えば結晶形態の五酸化タンタル(Ta)、二酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)であってよい。基材の1つまたは複数の構成層がプラズマエッチングされ(以降「基材のエッチングされた層」と称する)、その後エッチングされた基材は、エッチングされた層の側面を覆うパッシベーション層を除去するために、本発明の組成物で洗浄される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の他の利点および特徴は、添付の図面を参照して、限定としてではなく例示として与えられた以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
図1図1は、酢酸、メタンスルホン酸、フッ化アンモニウムおよび水を含む本発明の一実施形態による化学組成物中に存在する水含有量の関数として、アルミニウムおよびシリコンの熱酸化物の相対除去速度を示すグラフである。
図2図2は、酢酸、メタンスルホン酸、フッ化アンモニウムおよび水を含む本発明の一実施形態による化学組成物中に存在するフッ化物含有量の関数として、アルミニウムおよびシリコンの熱酸化物の相対除去速度を示すグラフである。
図3図3は、酢酸、メタンスルホン酸、フッ化アンモニウムおよび水を含む、メタンスルホン酸に対する2つの異なるフッ化アンモニウム含有量についての、本発明の一実施形態による化学組成物中に存在するメタンスルホン酸含有量の関数として、アルミニウムおよびシリコンの熱酸化物の相対除去速度を示すグラフである。
図4図4は、酢酸、メタンスルホン酸、フッ化アンモニウムおよび水を含む、メタンスルホン酸に対する2つの異なるフッ化アンモニウム含有量についての、本発明の一実施形態による化学組成物中に存在するメタンスルホン酸含有量の関数として、アルミニウムおよびシリコンの熱酸化物の相対除去速度を示すグラフである。
図5図5は、プラズマエッチング後のアルミニウム「パッド」の図で、いくつかの材料の層と、側面にタンタルが豊富なエッチング残渣を含む。
図6A図6Aは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図5のアルミニウムパッドの走査型電子顕微鏡写真である。
図6B図6Bは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図5のアルミニウムパッドの走査型電子顕微鏡写真である。
図6C図6Cは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図5のアルミニウムパッドの走査型電子顕微鏡写真である。
図7図7はプラズマエッチング後のTaをベースとするMIMキャパシタの図で、いくつかの材料の層と側面のエッチング残渣を含む。
図8A図8Aは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図7のMIMキャパシタの透過及び走査型電子顕微鏡写真である。
図8B図8Bは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図7のMIMキャパシタの透過及び走査型電子顕微鏡写真である。
図8C図8Cは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図7のMIMキャパシタの透過及び走査型電子顕微鏡写真である。
図9図9はプラズマエッチング後の酸化シリコン基材の図であり、ウェルの側壁はエッチング残渣によって覆われている。
図10A図10Aは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図9の基材の走査電型子顕微鏡写真である。
図10B図10Bは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図9の基材の走査電型子顕微鏡写真である。
図10C図10Cは本発明の一実施形態による化学組成物を用いた洗浄によるエッチング残渣の除去前後の図9の基材の走査電型子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の洗浄化学組成物によって、基材のパッシベーション層をアルミニウムおよび銅に対して選択的に効果的に除去することが可能になる。特にこの洗浄化学組成物によって、基材の1つまたは複数の構成層のプラズマエッチング後に基材を洗浄することが可能になる。
【0033】
本化学組成物は、弱酸から構成される溶媒中にフッ化水素酸を含む。フッ化水素酸によってパッシベーション層の酸化形態の金属および半導体材料を溶解することが可能になる。
【0034】
フッ化水素酸は、本組成物の重量に対して0.2重量%~2重量%の含有量で本組成物中に有利に存在する。0.2重量%未満の含有量では、フッ化水素酸による酸化された金属および半導体材料の溶解が減少し、パッシベーション層の除去を制限する。含有量が2重量%を超えると、基材のエッチングされた層、特にアルミニウムや銅などの金属に対するフッ化水素酸の攻撃性がより顕著になり、制御が困難になり、エッチングされた層ははるかに十分に保護されない。
【0035】
フッ化水素酸は、フッ化水素(HF)および/または例えばアンモニウム塩などの他の既知のフッ素源に由来し得る。
【0036】
弱酸は、好ましくは酢酸、ギ酸およびこれらの混合物から選択され、本組成物の総重量に対して20重量%~95重量%、好ましくは50重量%~80重量%の含有量で本組成物中に存在する。ギ酸と酢酸でフッ化水素酸とその塩、例えばアンモニウム塩を効果的に溶媒和できる。
【0037】
弱酸が酢酸とギ酸の混合物である場合、組成物中のそれらの含有量はそれぞれ、組成物中の弱酸含有量が上述のとおりになるように調整される。
【0038】
フッ化水素酸は、好ましくはメタンスルホン酸、塩酸、およびこれらの混合物から選択される強力な非酸化性酸によって酸性化される。
【0039】
メタンスルホン酸は、その物理的安定性(蒸気圧が非常に低い)と、多数の金属と安定した錯体を形成する能力のために好ましい。
【0040】
強力な非酸化性酸は、組成物の重量に対して5重量%~50重量%、好ましくは15重量%~50重量%の含有量で組成物中に有利に存在する。5重量%未満の含有量では、エッチングされた層、特にアルミニウムや銅などの金属の保護が著しく低下する。50重量%を超える含有量では、組成物はより粘性が高くなり、該組成物による基材のぬれが著しく低下するので、パッシベーション層を攻撃するおよびエッチングされた層を保護する観点から当該組成物の有効性が低下する。
【0041】
非酸化性強酸がメタンスルホン酸と塩酸の混合物である場合、組成物中のそれらの含有量はそれぞれ、組成物中の非酸化性強酸含有量が上述のとおりになるように調整される。
【0042】
メタンスルホン酸の濃度は60~80重量%、塩酸の濃度は30~40重量%である。
【0043】
組成物内の酢酸とメタンスルホン酸、酢酸と塩酸、ギ酸とメタンスルホン酸、およびギ酸と塩酸の混合物はすべて本発明の範囲内であり、すべてエッチングされた層、特にアルミニウムや銅などの金属に対してパッシベーション層の選択的除去を可能にする。
【0044】
あるいは、本化学組成物は、溶媒中のフッ化水素酸の溶液を促進させるために水を含むことができる。水はさらに基材表面の水和を可能にするので、組成物の有効性を改善するパッシベーション層の表面を水和する。
【0045】
組成物中に水が存在する場合、その含有量は組成物の重量に対して20重量%以下であることが好ましい。20重量%を超える含有量は、高すぎるフッ化水素酸含有量と同じ効果をもたらす。つまり、エッチングされた層に対するフッ化水素酸の攻撃性がより顕著になり制御が困難になり、その結果としてエッチングされた層の保護がはるかにずっと保護されていない。
【0046】
組成物の重量に対して2重量%以上の水含有量によってさらに満足できる基材の水和を達成することができる。
【0047】
非酸化性の強酸とフッ化水素酸のみを含み、おそらく水を含む組成物は、基材のぬれが不十分になる。これは、特に弱酸のないメタンスルホン酸とフッ化水素酸を含む組成物の場合である。基材のパッシベーション層の最適な除去を可能にするために、弱酸が存在することで基材の満足できるぬれを達成することができる。
【0048】
弱酸としての酢酸、強酸としてのメタンスルホン酸、フッ化水素酸、および場合によっては水を含む組成物によって基材を効果的にぬらすことができる。さらに、酢酸とメタンスルホン酸を組み合わせて存在させることで、腐食の原因となる[HFイオンを大幅に減少させること、またはさらに反応媒体から除去することが可能になる。
【0049】
本発明の洗浄方法によれば、上述の化学組成物を、前記基材のパッシベーション層の除去を可能にするのに十分な時間、該パッシベーション層と接触させる。これを行うために、例えば、基材を本化学組成物の浴に所定時間浸漬することができる。本組成物は、パッシベーション層をエッチングされた層に対して選択的に攻撃する。言い換えれば、本組成物によるエッチングされた層に対する攻撃は、パッシベーション層に対する攻撃から見れば無視できる。
【0050】
すでに説明したように、エッチングされた層がアルミニウムまたは銅を含む場合、本組成物による後者に対する攻撃は、パッシベーション層に対する攻撃と比較して無視できるものに過ぎない。
【0051】
同じことがエッチングされた層が含む、場合によっては酸化された結晶性金属および/または結晶性半導体材料に当てはまる。その結晶格子が構造に剛性をもたらし、当該結晶性金属および/または結晶性半導体材料を、非晶質構造を有するこれらと同じ材料と比較して、特にフッ化水素酸および本発明の組成物による化学的攻撃に対してはるかにより耐性にする。
【0052】
本化学組成物をパッシベーション層と接触させる場合、20℃~40℃、好ましくは20℃~30℃の温度で接触させると有利である。従って、本化学組成物とパッシベーション層との反応のダイナミクスは周囲温度と比較して増強され、これにより洗浄方法の実施時間を短縮することができる。
【0053】
エッチングされた層は特に以下の元素のうちの1つを含む:
アルミニウム、銅、チタン、およびタンタル。
【0054】
パッシベーション層は、好ましくは以下の化学元素のうちの1つまたは複数を含む:タンタル、ハフニウム、およびジルコニウム。
【実施例
【0055】
1.フッ化水素酸、メタンスルホン酸および水含有量のアルミニウムおよび熱酸化シリコンのエッチング速度に対する影響
基材の表面に形成された厚さ200オングストロームの熱酸化シリコン(SiO)(非常に高い温度でのアニーリングの結果)の層を含むシリコンからなる基材または「ウエハ」を準備する。基材は、熱SiO層上に物理的気相成長法(頭字語PVD)によって堆積された厚さ550オングストロームのアルミニウム(Al)層で覆われている。
【0056】
実施例I.1、I.2およびI.3のそれぞれについて、2センチメートル×2センチメートルのビレットを切断し、その後様々な組成物に穏やかに攪拌しながら数分間浸漬する。次にビレットを除き、脱イオン水で少なくとも1分間十分にすすぎ、圧縮空気を用いて乾燥する。
【0057】
次に以下の方法を用いてアルミニウムとSiOのエッチング速度を求める。
-アルミニウムのエッチング速度は、Lucas Labs 302 4点測定装置を用いた4点測定により求める。この既知の方法は、第1組のポイント間に電流を流し、第2組のポイント間の電圧を測定することを含む。従って、サンプルを組成物に浸漬する前後のアルミニウム層の電気抵抗を測定し、これから除去されたアルミニウム層の深さを推定することができる。残っているアルミニウムの深さを求め、これからエッチング速度を求めるために、サンプルの浸漬前後に5つの抵抗二乗値の平均を得る。
【0058】
-SiOのエッチング速度は、Ocean Optics反射率計、薄膜NanoCalc反射率測定モデルを用いた反射率測定を用いて求める。この既知の方法は、サンプルを組成物に浸漬する前後のSiO層の厚さを推定し、これから除去されたSiO層の深さを推定するために、SiO層に信号を送り、その後リターン信号を分析することを含む。残っているSiOの深さを求めるために、サンプルの浸漬前後に5つの反射率測定値を得る。
【0059】
エッチング速度は、実験的に選択された基準組成物で得られる基準エッチング速度に対して表されるという点で相対的である。
【0060】
I.1.水分含有量の影響
図1は、初めに74重量%の酢酸、23重量%のメタンスルホン酸(濃度70%)、1.2重量%のフッ化アンモニウムおよび1.8重量%の水を含む組成物に添加された水の量(質量パーセント)の関数として、アルミニウムとSiOの相対エッチング速度(単位なし比)を示している(図1のグラフの横軸のポイント0)。
【0061】
組成物への水の添加によって、アルミニウムの相対エッチング速度の著しい増加を引き起こされることが観察される。最初の組成と比較して、アルミニウムのエッチング速度は水10%で3.5倍に、水20%で7.8倍に、水40%で16.2倍である。
【0062】
SiOの相対エッチング速度も、程度はずっと低いが増加する。当該速度は水10%で1.5倍に、水20%で1.7倍に、および水40%で2.2倍である。
【0063】
従って、アルミニウムおよびSiOの十分な保護を維持するために、組成物中に20重量%以下の水含有量を維持しなければならない。
【0064】
I.2.フッ化水素酸含有量の影響
図2は、メタンスルホン酸および水の含有量はそれぞれ33重量%および9.9重量%に固定され、酢酸含有量はフッ化物含有量とともに変化する、酢酸、メタンスルホン酸および水の組成物中の相対フッ化物濃度(質量パーセントとして)の関数として、アルミニウムおよびSiOの相対エッチング速度(単位なし比)を示している。
【0065】
フッ化物の増加により、SiOの相対エッチング速度が急激に増加し、後者は0.5%~1%のフッ化水素酸で2.5倍であることがわかる。
【0066】
フッ化物の増加により、アルミニウムの相対エッチング速度のわずかな減少を引き起こされ、後者は0.5%~1%のフッ化水素酸で0.9倍である。
【0067】
従って、SiOの十分な保護を維持するために、組成物中に2重量%以下のフッ化水素酸含有量を維持しなければならない。
【0068】
I.3.メタンスルホン酸含有量の影響
図3および4は、酢酸、フッ化水素酸、および水の組成物におけるメタンスルホン酸の相対濃度(質量パーセントとして)の関数として、アルミニウムとSiOの相対エッチング速度(単位なし比)を示しておりここで、
図3では、フッ化水素酸と水の含有量はそれぞれ0.89重量%および10重量%に固定されており、酢酸含有量はメタンスルホン酸含有量とともに変化し、
図4では、フッ化水素酸と水の含有量はそれぞれ0.65重量%および8.7重量%に固定されており、酢酸含有量はメタンスルホン酸含有量とともに変化する。
【0069】
図3では、メタンスルホン酸が0.7%まで増加すると、アルミニウムの相対エッチング速度が急激に低下し、後者は比率が2.2から0.7に変化し、その後1.4%まで0.6の比率でわずかに低下する。SiOの相対エッチング速度に関しては、0.7%メタンスルホン酸から実質的に一定のままである。
【0070】
図4では、メタンスルホン酸の増加により、アルミニウムの相対エッチング速度の急激な低下を引き起こし、後者は0%~1%のメタンスルホン酸で比率が1.9~1に変化することがわかる。相対エッチング速度SiOはわずかに低下し、0%~1%のメタンスルホン酸で比率が1.1~1に変化する。
【0071】
従って、メタンスルホン酸の添加は、アルミニウムの保護を大幅に改善するために使用できる。
【0072】
II.1.プラズマエッチング後のアルミニウム接続パッドの洗浄
アルミニウム接続パッドがプラズマエッチングされた材料の層のスタックを含むシリコン基材を準備し、そのパッドの1つ1Aを図5に概略的に示す。実際には、このようなパッドは基材の他の多くの配線レベルの上にある最後の接続レベルに対応する。パッド1Aの寸法は、その基部で長さ約2マイクロメートル×幅2マイクロメートルである。それは連続的に物理的気相成長法(頭字語PVD)によって堆積された、1マイクロメートルの厚みを有する、タンタルおよび硝酸タンタル(Ta/TaN)の層、チタン(Ti)の層、およびのアルミニウム(Al)の層から成る。
【0073】
パッドの様々な構成層は、パッドの側面に残渣2を生成するエッチングガスを用いたプラズマエッチングによって同時にエッチングされる。これらのエッチング残渣2は、エッチングされた層の異なる元素から形成され、エッチングの影響を低減するパッシベーション層を形成する。エッチング残渣の化学組成は以下のとおりである。TaTiAl、ここでw、x、y、zは、さまざまな化学元素の化学量論指数である。
【0074】
ダイヤモンドの先端を使用して、2センチメートル×2センチメートルのビレット(それぞれ複数のパッドから成る)をプラズマエッチング後に得られた構造から切断する。
【0075】
アルミニウムパッドビレットを、2つのフッ化物当量濃度を有する混合物に浸漬する:
-酢酸中に1重量%のフッ化水素酸を含む混合物、
-74重量%の酢酸、23重量%のメタンスルホン酸(濃度70%)、1.2重量%のフッ化アンモニウム、および1.8重量%の水を含む、本発明の一実施形態による組成物に対応する混合物。
【0076】
静かに撹拌しながら周囲温度で3分間浸漬し乾燥後、洗浄の有効性を評価するためにビレットを走査型電子顕微鏡で観察する。
【0077】
得られた画像を図6Bおよび6Cに示す。図6Aは参考であり洗浄前のビレットを示している。
【0078】
図6Aでは、パッシベーション層2は、パッシベーション層が含む表面の凹凸のために目に見え、パッドの側面を覆っていることがわかる。TiおよびTa/TaN層でパッドの下部を覆うパッシベーション層の部分は、TiおよびTiが豊富で、Al層でパッドの上部を覆うパッシベーション層の部分は、Alがより豊富である。
【0079】
図6Bでは、パッシベーション層2がまだ存在していることがわかる。このことは、混合物が十分には効果的ではないことを示している。さらに、パッドの上部にあるアルミニウムの穴3は、アルミニウムの局所的な腐食を示し(この現象は「ピッティング」として知られている)、このことは混合物がアルミニウムに対して攻撃的すぎることを示している。
【0080】
図6Cでは、パッシベーション層2はもはや存在せず、後者は洗浄中に本組成物によって完全に除去されたことを観察できる。従って、酢酸とフッ化水素酸の混合物にメタンスルホン酸を加えると、アルミニウムの保護はもちろん洗浄の有効性も大幅に向上する。
【0081】
TiおよびTa/TaNの層に対する攻撃は、その結晶構造のためわずかである。
【0082】
アルミニウムと熱SiOのエッチング速度は、実施例(I)に詳細が述べられたプロトコルに従って4点測定と反射率測定によって求めており、アルミニウムでは毎分17オングストローム、熱SiOでは毎分12オングストロームに等しい。この非常にわずかな欠損は、パッドの形態が視覚的に変化しないままでいるという事実によって示される。
【0083】
II.2 プラズマエッチング後のTa をベースとするMIMキャパシタの洗浄
MIMキャパシタがプラズマエッチングされた材料の層のスタックを含む基材を準備し、参照符号1Bとともに図7に概略的に示す。MIMキャパシタ1Bはパッドの形態を取り、その寸法はその基部で約5マイクロメートル幅×3マイクロメートル長である。この基部は基材上に物理的気相蒸着によって蒸着された600オングストロームの厚さのアルミニウム(Al)の層を含み、その上には硝酸チタン(TiN)の層、TiN層上に配置された五酸化タンタル(Ta)(高誘電率絶縁体)の層およびTa層上に配置された窒化ケイ素(SiN)の層がある。
【0084】
アルミニウム接続パッドに類似した方法で、MIMキャパシタの様々な構成層が、MIMの側面に残渣2を生成するエッチングガスによるプラズマエッチングによって同時にエッチングされる。これらのエッチング残渣2は、エッチングされた層の異なる元素から形成され、エッチングの影響を低減するパッシベーション層を形成する。エッチング残渣の化学組成は次のとおりである。TaAlTiSi、ここでv、w、x、y、zは様々な化学元素の化学量論指数である。
【0085】
ダイヤモンドの先端を使用して、2センチメートル×2センチメートルのビレット(それぞれ複数のMIMから成る)をプラズマエッチング後に得られた構造から切断する。
【0086】
MIMビレットを、本発明の一実施形態による組成物に浸漬する。その成分およびその含有量は、実施例IIにおいて使用される組成物と同一である。組成物は、74重量%の酢酸、23重量%のメタンスルホン酸(濃度70%)、1.2重量%のフッ化アンモニウム、および1.8重量%の水を含む。
【0087】
静かに撹拌しながら周囲温度で3分間浸漬し乾燥後、洗浄の有効性を評価するために、ビレットを走査型電子顕微鏡で観察する。
【0088】
得られた画像を図8Bに示す。図8Aは参考であり洗浄前のビレットを示している。
【0089】
図8Aでは、透明なフィルムの形で見えるパッシベーション層2が、MIMキャパシタの側面をその全長にわたり覆っていることがわかる。
【0090】
図8Bでは、パッシベーション層2はもはや存在せず、後者は洗浄中に本組成物によって完全に除去されたことが観察できる。さらに、アルミニウムに対する目に見える攻撃の兆候はない。
【0091】
図8Cは、ナノメートルスケールでの集束イオンビーム(FIB)プローブを備えた透過型電子顕微鏡を用いて観察したビレットを示している。アルミニウムもTiNやTaも収縮はなく、SiNの収縮はごくわずかである。
【0092】
従って、本組成物は、アルミニウムに対してパッシベーション層を選択的に攻撃し、除去を引き起こした。TiN、Ta、およびSiNの層に対する攻撃は、その結晶構造により無視できる。
【0093】
Taの層を高誘電率材料の二酸化ハフニウム(HfO)および二酸化ジルコニウム(ZrO)で置き換えると、同じ結果が得られる。すなわち、本MIM構造内の対応するHfOまたはZrOの層は本組成物によって攻撃されない。
【0094】
アルミニウムと熱SiOのエッチング速度を、実施例(I)に与えられたプロトコル詳細に従って4点測定によって求めており、毎分17オングストロームに等しい。この非常にわずかな欠損は、パッドの形態が視覚的に変化しないままでいるという事実によって示される。
【0095】
III.プラズマエッチング後のウェルの洗浄
SiO層の一部を選択的に除去するために、エッチングマスクとして機能する光樹脂5で覆われた厚さ約3マイクロメートルのSiO層を含むシリコン(Si)でできた基材を準備する。構造を図9に概略的に示す。SiOのプラズマエッチングにより、エッチングウェル4の側壁にパッシベーション層2が形成された。
【0096】
エッチングガスの組成はCであり、ここでxおよびyはさまざまな化学元素の化学量論指数である。
【0097】
パッシベーション層を形成するエッチング残渣2の組成はSiAlであり、ここで、w、x、yおよびzは、様々な化学元素の化学量論指数である。
【0098】
ウェルのパッシベーション層を除去するために、上記構造の洗浄を58.8重量%の酢酸、40重量%のメタンスルホン酸(濃度70%)、および1.2重量%のフッ化アンモニウムを含む化学組成物を用いて行う。
【0099】
アルミニウムでできた接続パッド1Aを、上記構造に接続し、洗浄中組成物に曝す。従って、パッドのアルミニウムを攻撃することなく、ウェル4からパッシベーション層2を除去する必要がある。
【0100】
2cm×2cmのビレットを構造から切り取り、組成物に浸漬する。
【0101】
静かに撹拌しながら周囲温度で2分間浸漬し乾燥後、樹脂5を無機化合物の不活性溶液で除去し、洗浄の有効性を評価するためにビレットを走査型電子顕微鏡を用いて観察する。
【0102】
得られた画像を図10Bおよび10Cに示す。図10Aは参考であり洗浄前のビレットを示している。
【0103】
図10Aでは、パッシベーション層2がウェル4の側壁を覆っていることがわかる。このパッシベーション層は、SiOの側壁と上にある樹脂の側壁を覆う。
【0104】
図10Bでは、樹脂5を除去した後、SiOの側面にパッシベーション層2がもはや存在せず、後者は洗浄中に本発明の組成物によって完全に除去されたことが観察できる。さらにSiOに対する目に見える攻撃の兆候はない。
【0105】
図10Cはアルミニウムでできたパッド1Aが中心に配置されている。アルミニウムに対する目に見える攻撃の兆候がないことがわかる。
【0106】
アルミニウム(パッド1A)と熱SiO(ウェル4)のエッチング速度は、実施例(I)に詳細が記載されたプロトコルに従って4点測定と反射率測定によって求めた。アルミニウムでは毎分12オングストローム、熱SiOでは毎分10オングストロームに等しい。よって2分経過すると、アルミニウムの除去の深さは約24オングストローム、すなわち0.0024マイクロメートル、SiOの除去の深さは20オングストローム、または00020マイクロメートルである。この非常にわずかな欠損は、パッドとウェルの形態が視覚的に変化しないままであるという事実によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C