(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】軌道構築機械の突固めユニットを操作する方法ならびに道床締固め用の突固め装置および軌道構築機械
(51)【国際特許分類】
E01B 27/16 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
E01B27/16
(21)【出願番号】P 2020534408
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081932
(87)【国際公開番号】W WO2019120829
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フィリップ
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129215(WO,A1)
【文献】特開平09-177009(JP,A)
【文献】特開2010-169506(JP,A)
【文献】特開2013-028317(JP,A)
【文献】特開昭51-149605(JP,A)
【文献】特表2020-521897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道構築機械の突固めユニットを操作する方法であって、
道床(21)上に、突固めユニット(8)を備えた軌道構築機械(1)を準備するステップと、
前記突固めユニット(8)を、前記道床(21)に対して変位させるステップと、
前記突固めユニット(8)に作用する、変位に必要とされる駆動力(F
A)を求めるステップと、
前記突固めユニット(8)に作用する加速度(a
z)を求めるステップと、
前記駆動力(F
A)および前記加速度(a
z)に基づき、前記突固めユニット(8)と前記道床(21)との間に作用するバラスト力(F
S)を求めるステップと、
前記バラスト力(F
S)を評価するステップと、
を含
み、
前記突固めユニット(8)に作用する荷重が前記バラスト力(F
S
)に基づき求められるように、前記評価を行い、前記荷重に基づき、前記突固めユニット(8)の摩耗状態を求める、軌道構築機械の突固めユニットを操作する方法。
【請求項2】
前記突固めユニット(8)の位置(z)の時間的な変化を検出することにより、前記加速度(a
z)を求める、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バラスト力(F
S)を求めるために、前記加速度(a
z)に基づき前記突固めユニット(8)に作用する慣性力(F
T)を求める、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記突固めユニット(8)の変位を、流体作動式の駆動装置(9)により行い、前記駆動力(F
A)を求めるために、前記駆動装置(9)に作用する少なくとも1つの流体圧(p
K,p
KR)を検出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記バラスト力(F
S)の時間的な推移に基づき前記荷重を求める、請求項
1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記バラスト力(F
S)のバラスト力振幅(S
Fs)に基づき前記荷重を求める、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記荷重を求めるために、前記バラスト力振幅(S
Fs)の累積頻度(N
Fs)に基づき合成負荷を求める、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
前記荷重を求めるために、前記バラスト力(F
S)と、前記突固めユニット(8)の位置(z)の変化とからバラスト仕事量(W
S)を求める、請求項5から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記突固めユニット(8)を制御するための少なくとも1つのプロセスパラメータ(f
s,v
z,a
z,p
K,p
KR)を、前記荷重に応じて調整する、請求項5から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記荷重の閾値を超過または下回った場合には、前記少なくとも1つのプロセスパラメータ(f
s,v
z,a
z,p
K,p
KR)を変更する、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記荷重が所定の荷重限界値を超過しないように、前記少なくとも1つのプロセスパラメータ(f
s,v
z,a
z,p
K,p
KR)を調整する、請求項
9または
10記載の方法。
【請求項12】
道床締固め用の突固め装置であって、
ユニットキャリア(7)と、
前記ユニットキャリア(7)に支持された突固めユニット(8)と、
駆動力(F
A)を提供しかつ前記突固めユニット(8)を前記ユニットキャリア(7)に対して変位させる駆動装置(9)と、
前記駆動力(F
A)に対応する第1の測定値(p
K,p
KR,F
A)を検出する駆動力センサ系と、
前記突固めユニット(8)の加速度(a
z)に対応する第2の測定値(z,v
z,a
z)を検出する加速度センサ系と、
前記第1の測定値(p
K,p
KR,F
A)および前記第2の測定値(z,v
z,a
z)に基づき前記突固めユニット(8)に作用するバラスト力(F
S)を求める評価ユニット(19)と、
を有し、
前記評価ユニット(19)は、前記突固めユニット(8)に作用する荷重が前記バラスト力(F
S
)に基づき求められるように、評価を行い、前記荷重に基づき、前記突固めユニット(8)の摩耗状態を求める、道床締固め用の突固め装置。
【請求項13】
軌道構築機械であって、
機械フレーム(2)と、
前記機械フレーム(2)に支承され、レールを通行可能な車輪(6)が配置された少なくとも2つの車軸(3)と、
少なくとも1つの前記車軸(3)の前記車輪(6)を回転駆動する機械駆動装置(4)と、
前記機械フレーム(2)に取り付けられた、請求項1
2記載の少なくとも1つの突固め装置(5)と、
を有する、軌道構築機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道構築機械の突固めユニットを操作する方法、さらに道床締固め用の突固め装置ならびに軌道構築機械に関する。
【0002】
背景技術
レールを通行する軌道構築機械が、道床の保守に用いられる。このような軌道構築機械は、道床締固め用に、変位可能な突固めユニットを備えた突固め装置を有している。突固めユニットは運転中繰り返し、突固めユニットが道床との係合外にある戻し位置と、突固めユニットが道床に係合している係合位置との間で移動する。この場合、突固めユニットには高い静的な荷重と動的な荷重とが作用する。突固めユニットの、高い荷重が加わる部分の機能性を維持するために、時間とコストがかかる管理保守作業が定期的に実施される。
【0003】
発明の概要
本発明の根底を成す課題は、突固めユニットの性能および経済性を向上させる、軌道構築機械の突固めユニットを操作する方法を提供することにある。
【0004】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する方法によって解決される。本発明により、突固めユニットと道床との間で、特に突固めユニットの変位方向に沿って作用するバラスト力が、突固めユニットに対する主な荷重であり、この荷重は、駆動力および加速度に基づき正確に求めることができることが判った。バラスト力を求めて評価することにより、突固めユニットを効率的かつ経済的に操作することができる。例えば、大きな荷重が加わる部分を特定し、荷重に適するように設計すると共に保守することができる。道床の処理は、さらに処理速度とエネルギ消費量との間の高い比率を保証しかつ摩耗に関して重要なバラスト力を考慮して行うこともでき、これにより、想定される、保守作業による停止時間が減少する。つまり、バラスト力を求めて評価することにより、軌道構築機械の性能および経済性を向上させることができる。
【0005】
突固めユニットの、道床に対する変位は、少なくとも、特にもっぱら、鉛直方向に行われる。突固めユニットの変位は、好適には戻し位置と係合位置との間で行われる。戻し位置では、突固めユニットは持ち上げられており、道床との係合外にある。特に戻し位置における突固めユニットは、鉛直方向において完全に軌道まくらぎおよび/または軌道の上側に位置決めされるように配置されていてよい。好適には、突固めユニットは、少なくとも2つ、特に少なくとも4つの突固めピッケルを有している。係合位置では、突固めユニット、特に少なくとも2つの突固めピッケルは、道床中に進入している。戻し位置と係合位置との間に配置された送り位置において、突固めユニットは道床に接触する。道床締固めは、送り位置から係合位置まで変位する間に行うことができる。
【0006】
バラスト力を求めるために、突固めユニットに作用する、変位に必要とされる駆動力が求められる。駆動力とは、突固めユニットを戻し位置と係合位置との間で、特に鉛直方向に変位させるために必要とされる力を意味する。駆動力は、例えば力センサによって検出することができる。駆動力は、突固めユニットおよび/またはユニットキャリアおよび/または突固めユニットとユニットキャリアとの間に作用する駆動装置において検出することができる。
【0007】
突固めユニットに作用する加速度を求めるために、加速度センサを使用することができる。加速度は、突固めユニットおよび/または駆動装置において検出することができる。
【0008】
バラスト力は、駆動力と加速度とに基づき求められる。バラスト力とは、道床と突固めユニット、特に少なくとも2つの突固めピッケルとの間に作用し、戻し位置と係合位置との間の変位に沿って、特に鉛直方向に向けられた力を意味する。突固めユニットの駆動力と加速度の両方を考慮することにより、厳しい使用条件にもかかわらず、バラスト力を確実かつ正確に求めることができる。
【0009】
請求項2記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。特に鉛直方向における突固めユニットの位置を、特に確実かつ頑丈に検出することができる。突固めユニットの変位には位置センサを使用することができ、これにより、追加的なセンサの組込みが省かれる。つまり、加速度の検出は特に経済的である。位置は、駆動装置において検出することができる。位置は、突固めユニットをユニットキャリアに対して支承している軸受装置においても検出することができる。位置は、位置センサ、特にポテンショメータまたはホールセンサまたはワイヤ長さセンサの形態の距離センサまたは回転センサによって検出することができる。時間的な位置変化を検出するために、位置の時間的な推移が、評価ユニットにより時間に応じて区分されるか、または断続的な時間ステップにわたる位置変化が求められてよい。時間的な位置変化、つまり速度から、時間的な速度変化として加速度が求められる。好適には、ユニットキャリアに対する位置ひいては加速度が検出される。重力加速度を考慮して、突固めユニットの絶対加速度を求めることができる。
【0010】
請求項3記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。質量に応じた慣性力を考慮して、バラスト力を特に正確に求めることができる。突固めユニットの質量は、軌道構築機械への組込み前にまたは軌道構築機械に取り付けられた状態で量られてよい。代替的に、突固めユニットの質量は、戻し位置において駆動力を検出することにより求められてもよい。加速されていない状態では、駆動力に基づき重力ひいては突固めユニットの質量を求めることができる。
【0011】
請求項4記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。流体作動式の駆動装置は、運転時に頑丈であり、道床の処理に必要な出力の提供を保証する。駆動装置に作用する少なくとも1つの流体圧の検出による駆動力の算出は、特に頑丈に行うことができる。圧力調整に必要な複数の圧力センサを使用して冗長化を回避することにより、突固めユニットを特に経済的に製造することができる。駆動装置は、好適には少なくとも1つの液圧シリンダおよび/または少なくとも1つの空圧シリンダを有している。各シリンダ内を通るピストンは、ピストンロッドに結合されており、ピストンロッドに面したピストン環状面と、ピストン環状面とは反対の側のピストン面とを有している。好適には、ピストン面に作用するピストン圧および/またはピストン環状面に作用するピストン環状圧を検出することにより、流体圧の検出が行われる。
【0012】
請求項5記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。軌道構築機械の運転時に、突固めユニット、特に少なくとも2つの突固めピッケルは、駆動装置および軸受装置に、機械的に大きな荷重を加える。突固めユニットに対する主な荷重はバラスト力である。バラスト力に基づく荷重を評価することにより、軌道構築機械を頑丈に設計し、効率的かつ経済的に運転することができる。
【0013】
請求項6記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。突固めユニットが戻し位置と係合位置との間で変位する際に、突固めユニットに作用するバラスト力は大幅に変化する。バラスト力の時間的な推移に基づき荷重を求めることにより、バラスト力の変化を考慮することができる。好適には、突固めユニットに対する荷重を、少なくとも1回の突固めサイクルにわたって求める。1回の突固めサイクルには、戻し位置から係合位置への突固めユニットの変位および係合位置から戻し位置に戻る突固めユニットの変位が含まれる。突固めユニットに対する荷重は、突固めユニットの運転時間全体にわたって求められてもよい。好適には、突固めユニット、特に少なくとも2つの突固めピッケルに対する荷重が、少なくとも1回の突固めサイクルの継続時間にわたり、特に複数回の突固めサイクルにわたり、特に運転時間全体にわたり、求められる。静的な荷重の他に、バラスト力の時間的な推移も、突固めユニットに対する動的な荷重の推量を保証する。動的な荷重が判ると、保守サイクルを最適化すると共に、保守にかかる手間を減らすことができる。
【0014】
請求項7記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。処理しようとする道床に応じて、異なる各突固めサイクル中および各突固めサイクル間のバラスト力は変化する。突固めユニットに対する荷重に関しては、バラスト力振幅、すなわち変化するバラスト力の振幅が重要であるということが判った。バラスト力振幅を求めるためには、第1の測定点と第2の測定点との間でのバラスト力の時間的な推移が検出されてよく、この場合、第1の測定点および第2の測定点におけるバラスト力は同じ大きさであり、このバラスト力に初めて再到達することにより、第2の測定点が求められている。バラスト力振幅は、第1の測定点と第2の測定点との間の、最大バラスト力値と最小バラスト力値との間の差として求められる。
【0015】
請求項8記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。合成負荷を求めるために、バラスト力振幅の累積頻度を求める。好適には、生じるバラスト力振幅の帯域幅を、まず複数のバラスト力振幅区分に分ける。合成負荷を求めることには、各バラスト力振幅区分に属す、発生するバラスト力振幅の頻度が含まれていてよい。つまり、突固めユニットに作用する、変化する荷重の大きさおよび頻度は、合成負荷に基づき解明される。よって、合成負荷は、突固めユニットに作用する動的な荷重の評価に、特に適している。
【0016】
請求項9記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。道床中に少なくとも2つの突固めピッケルが進入すると、突固めユニットと道床との間でバラスト仕事量が伝達される。バラスト仕事量は、突固めユニットに対する荷重に関連している。バラスト仕事量を用いて、突固めユニットに対する荷重を特に効率的に求めることができる。バラスト仕事量を求めるために、所定の時間ステップの後に、バラスト力と位置とがそれぞれ求められてよい。次いで、この時間ステップにわたる位置変化に、バラスト力、特にこの時間ステップにわたる平均的なバラスト力を乗じることができる。代替的に、バラスト力が位置にわたって積分されてもよい。
【0017】
請求項10記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。摩耗状態を求めるために、突固めユニットに作用する荷重と、最大許容荷重とを比較することができる。摩耗状態に基づき、故障が生じる前、特に突固めユニットの個々の構成部材が故障する前に、突固めユニットがあとどの位の期間運転可能なのかという診断を下すことができる。摩耗状態に基づき、保守作業、特に突固めユニットの交換の必要性を推量することもできる。摩耗状態が判ると、軌道構築機械、特に突固めユニットを、実際の耐用年数が尽きた状態でより長く運転することができ、これにより停止時間が減少すると共に、保守費用も低下する。
【0018】
請求項11記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。荷重に基づき突固めユニットを制御するための少なくとも1つのプロセスパラメータを調整することで、突固めユニットに対する荷重に影響を及ぼすことが保証される。プロセスパラメータとして例えば、少なくとも1つの突固めピッケルに伝達される振動成分および/または変位成分の周波数および/または振幅、戻し位置と係合位置との間での突固めユニットの作動速度、突固めユニットの加速度および駆動装置に作用する流体圧が考慮される。これにより有利には、少なくとも1つのプロセスパラメータが、処理されるべき道床および各道床の状態に基づき生じる荷重に応じて調整可能であるということが達成される。つまり、道床に応じて、突固めユニットに作用する荷重を考慮しつつ、エネルギ消費量および処理速度を最適化することができる。
【0019】
請求項12記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。荷重の閾値を超過した場合には少なくとも1つのプロセスパラメータを変更することにより、突固めユニットの過剰負荷と、極度に低い道床処理速度の両方に抗して制御することができる。好適には、上側の閾値を超過した場合には少なくとも1つのプロセスパラメータを減少させ、突固めユニットに対する荷重を低下させる。下側の閾値を下回った場合には少なくとも1つのプロセスパラメータを変更して、荷重を増大させることができる。有利には、上側の閾値と下側の閾値との間の差に基づき、少なくとも1つのプロセスパラメータが絶えず変化されることはなくなる。
【0020】
請求項13記載の方法は、軌道構築機械の性能および経済性の向上を保証する。荷重の限界値を超過しないように少なくとも1つのプロセスパラメータを調整することにより、突固めユニット、特に少なくとも2つの突固めピッケルの故障を確実に防ぐことができる。荷重の限界値は、突固めユニット、特に突固めユニットの個々の構成部材の、特に実験により求められる静的な強度値および/または動的な強度値であってよい。少なくとも1つのプロセスパラメータは、荷重に基づき連続的に変更可能であるか、または変更は断続的なステップで行われてよい。例えば、少なくとも2つの突固めピッケルの振動周波数を、30Hz~50Hzの間で連続的に変更することができる。代替的に、振動周波数は、第1モードでは35Hzであり、第2モードでは45Hzである。突固めユニットは、第1モードおよび第2モードで操作することができ、この場合は荷重に基づき、第1モードと第2モードとの間で切替えられてよい。突固めユニットは、3つ以上の操作モードで操作可能であってもよい。各操作モードは、他の操作モードと少なくとも1つのプロセスパラメータにおいて異なっている。
【0021】
バラスト力および/または荷重に基づき、異なる形式の突固めユニットを互いに比較し、評価することができる。バラスト力および/または荷重は、突固めユニット、特に運動機構および/または軸受および/または使用される材料および/または構造的な構成の最適化にも使用することができる。
【0022】
本発明の根底を成す課題はさらに、性能および経済性が向上した、道床締固め用の突固め装置を提供することにある。
【0023】
この課題は、請求項14記載の特徴を有する突固め装置によって解決される。本発明による突固め装置の利点は、本発明による方法の利点に一致する。突固め装置は、特に請求項1から13までの少なくとも1項記載の特徴によって改良することができる。好適には、突固めユニットは、ユニットキャリアに、鉛直方向に移動可能に支持されている。駆動装置は、液圧シリンダを有していてよい。道床に係合するために、突固めユニットは、好適には少なくとも2つ、特に少なくとも4つの突固めピッケルを有している。駆動力センサ系は、少なくとも1つの圧力センサおよび/または少なくとも1つの力センサを有していてよい。加速度センサ系は、少なくとも1つの速度センサおよび/または少なくとも1つの位置センサおよび/または少なくとも1つの加速度センサを有していてよい。位置センサは、非接触式センサとして形成されていてよい。位置センサは、突固めユニットとユニットキャリアとの間で、特に駆動装置に配置されていてよい。好適には、少なくとも1つの位置センサは、ポテンショメータおよび/またはホールセンサおよび/またはワイヤ長さセンサとして形成されている。
【0024】
本発明の根底を成す課題はさらに、性能および経済性が向上した、突固め装置を備えた軌道構築機械を提供することにある。
【0025】
この課題は、請求項15記載の特徴を有する軌道構築機械によって解決される。本発明による軌道構築機械の利点は、本発明による突固め装置の利点と一致する。軌道構築機械は、特に請求項1から14までの少なくとも1項記載の特徴によって改良することができる。
【0026】
本発明の別の特徴、利点および詳細は、以下の実施例の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】道床締固め用の突固め装置を備えた、レールを通行する軌道構築機械の概略図である。
【
図2】
図1に示した突固め装置の概略的な正面図であって、突固め装置は、4つの突固めピッケルを備えた突固めユニットを有しており、突固めピッケルは道床に係合している。
【
図3】
図1に示した突固め装置の概略的な側面図であって、突固めユニットに、駆動力、慣性力およびバラスト力が作用している。
【
図4】1回の突固めサイクルの時間にわたる、駆動力、慣性力およびバラスト力の推移を示す図である。
【
図5】6回の突固めサイクルの時間にわたる、バラスト力の推移を示す図である。
【
図6】所定の荷重繰返し回数にわたり検出された、バラスト力の荷重振幅の推移を示す図である。
【
図7】時間にわたる、突固めユニットの位置、バラスト力およびバラスト作業の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
軌道構築機械1は、機械フレーム2と、機械フレーム2に支承された少なくとも2つの車軸3と、機械駆動装置4と、道床締固め用の突固め装置5とを有している。車軸3は、水平なx方向に沿って相互間隔をあけて軌道構築機械1に配置されている。x方向は、鉛直なz方向および水平なy方向と共に、機械固定座標系を形成している。車軸3には、レールを通行可能な車輪6が回転可能に支承されている。機械駆動装置4は、車軸3のうちの少なくとも1つの車輪6を回転駆動するように形成されている。
【0029】
突固め装置5は、ユニットキャリア7と、ユニットキャリア7に対してz方向に支持された突固めユニット8とを有している。突固めユニット8は、4つの突固めピッケル8aと、1つの締固め駆動装置8bとを有している。突固めピッケル8aは、それぞれ突固めピッケルキャリア8cに取り付けられており、突固めピッケルキャリア8cを介してキャリア軸線8dを中心として回動可能に支承されている。締固め駆動装置8bにより、突固めピッケルキャリア8cを、各キャリア軸線8dを中心として回動駆動可能である。
【0030】
突固め装置5は、ユニットキャリア7を介して機械フレーム2に取り付けられている。突固めユニット8は、ユニットキャリア7に対して変位可能である。このために、ユニットキャリア7と突固めユニット8との間には、リニア軸受10が形成されている。リニア軸受10は、ユニットキャリア7に取り付けられた軸受レール11と、突固めユニット8に結合された軸受スリーブ12とを有している。
【0031】
突固め装置はさらに、駆動装置9を有している。駆動装置9は、液圧シリンダ13を有している。液圧シリンダ13は、ユニットキャリア7と突固めユニット8との間で作用する。液圧シリンダ13内には、ピストンロッド15が取り付けられた液圧ピストン14が直線移動可能に支持されている。液圧ピストン14は、ピストンロッド15に面した側のピストン環状面積AKRならびにピストンロッド15とは反対の側のピストン面積AKを有している。この場合、液圧シリンダ13内の液圧液のピストン圧pKが、ピストン面積AKに作用する。ピストン環状面積AKRには、液圧液のピストン環状圧pKRが作用する。ピストン面積AKに作用するピストン圧pKと、ピストン環状面積AKRに作用するピストン環状圧pKRとから、全体としてピストンロッド15を介して突固めユニット8に伝達される駆動力FAが生じる。
【0032】
突固め装置1は、駆動力FAに対応する第1の測定値pK,pKR,FAを検出するための駆動力センサ系を有している。駆動力センサ系には、ピストン圧pKを検出するピストン圧センサ16と、ピストン環状圧pKRを検出するピストン環状圧センサ17とが含まれる。ピストン面積AKに作用するピストン圧pKと、ピストン環状面積AKRに作用するピストン環状圧pKRとから、全体としてピストンロッド15を介して突固めユニット8に作用する駆動力FAを推量することができる。駆動力FAは、次式のように算出される。
FA=pKR・AKR-pK・AK (1)
【0033】
突固め装置1は、突固めユニット8の加速度azに対応する第2の測定値、すなわち位置zおよび/または速度vzを検出するための加速度センサ系を有している。加速度センサ系は、距離センサ18の形態で形成されている。距離センサ18は、ユニットキャリア7と突固めユニット8とに取り付けられている。距離センサ18は、ユニットキャリア7に対するz方向の突固めユニット8の位置zおよび速度vzを検出するように形成されている。
【0034】
突固めユニット8に作用するバラスト力FSを求めるために、突固め装置5は、評価ユニット19を有している。評価ユニット19は、ピストン圧センサ16、ピストン環状圧センサ17ならびに距離センサ18と信号接続されている。さらに、評価ユニット19は、圧力調整器20と信号接続されている。圧力調整器20は、ピストン圧pKおよびピストン環状圧pKRをそれぞれの目標値に調整するように形成されている。ピストン圧pKおよびピストン環状圧pKRの各目標値は、評価ユニット19により設定可能である。
【0035】
次に、軌道構築機械1の操作および突固めユニット8の操作を説明する。
【0036】
道床21を構築しかつ/または保守するために、軌道構築機械1は機械駆動装置4により、軌道22上をx方向に沿って走行する。この場合、突固め装置5の中心軸線23は、道床21上に配置されて軌道22を支持している軌道まくらぎ24の中央上部に位置決めされる。
【0037】
道床締固めの手順を開始するために、突固めユニット8は戻し位置25に位置する。軸受スリーブ12は、リニア軸受10の上端部に位置しており、ピストンロッド15は液圧ピストン14内に十分に進入している。突固めユニット8に取り付けられた突固めピッケル8aは、道床21との係合外にある。ピストン面積AKにはピストン圧pKが加えられ、ピストン環状面積AKRにはピストン環状圧pKRが加えられている。評価ユニット19により、液圧ピストン14から突固めユニット8に作用する駆動力FAが求められる。このために、ピストン圧pKにピストン面積AKが乗じられ、ピストン環状圧pKRにピストン環状面積AKRが乗じられる。よって、駆動力FAは、
FA=pKR・AKR-pK・AK (2)
となる。
【0038】
戻し位置25では、突固めユニット8はユニットキャリア7に対して休止しており、突固めユニット8には重力加速度gだけが作用するに過ぎない。ユニットキャリア7に対する突固めユニット8の加速度azはaz=0であり、バラスト力FSはFS=0である。突固めユニット8におけるz方向に沿った力の均衡は、
ΣFz=FA+FT+FS=FA-m*(az+g)+FS=0 (3)
となる。
【0039】
突固め装置5の動作を記録する前に、戻し位置25で評価ユニット19により、突固めユニットの質量mが求められる。戻し位置25における主な周辺条件を考慮すると、質量mは、
m=FA/g (4)
となる。
【0040】
突固めユニット8の質量mは、評価ユニット19のメモリ素子に記憶される。
【0041】
道床21の締固めは、複数回の個別の突固めサイクルに分けられている。突固めユニット8は、突固めサイクル中にz方向に沿って戻し位置25から送り位置26に変位し、さらに係合位置27に変位する。送り位置26で突固めピッケル8aは、道床21に接触するが、道床21中に進入してはいない。突固めピッケル8aは、係合位置27で道床21中に進入する。突固めユニット8が係合位置27から送り位置26を経て戻し位置25に再び戻されると、突固めサイクルは終了する。評価ユニット19により、慣性力F
Tと駆動力F
Aとから、バラスト力F
Sが求められる。慣性力F
Tを求めるためには、まずz方向におけるユニットキャリア7に対する突固めユニット8の速度v
zが、時間tにわたる位置zの変化量として求められる。加速度a
zもやはり、時間tにわたる速度v
zの変化量として求められる。よって、加速度a
zは次式のように算出される。
【数1】
【0042】
突固めサイクルの開始と共に、時間tに関連したバラスト力FS(t)の評価が開始される。バラスト力FS(t)は、駆動力FA(t)および加速度az(t)ならびにわかっている質量mおよび重力加速度gに基づき、次式のように求められる。
FS(t)=FT(t)-FA(t)=m[az(t)+g]-FA(t) (6)
【0043】
突固めユニット8を戻し位置25からz方向とは逆の送り位置26に変位させるために、まず駆動装置9が作動する。このとき、ピストン圧pKは上がり、ピストン環状圧pKRは下がる。ピストンロッド15を介して突固めユニット8に作用する駆動力FAは、z方向とは逆方向に上昇する。駆動力FAに基づき、突固めユニット8に作用する加速度azが生じ、加速度azは、z方向とは逆方向を向き、道床21に向かう突固めユニット8の速度vzを上昇させる。突固めユニット8は、z方向とは逆方向に変位する。駆動力FAとは逆方向に、同じ大きさの慣性力FTが作用する。バラスト力FSは、突固めピッケル8aが道床21に接触する前はゼロである。
【0044】
送り位置26で、突固めピッケル8aは道床21と係合した状態になる。送り位置26と係合位置27との間では、4つの突固めピッケル8aを介して追加的に、部分的なバラスト力FS1,FS2,FS3およびFS4がz方向で突固めユニット8に作用する。部分的なバラスト力FS1,FS2,FS3およびFS4が加算されてバラスト力FSになる。送り位置と係合位置27との間での変位を経て、バラスト力FSはゼロではなくなる。
【0045】
駆動力F
A、慣性力F
Tおよびバラスト力F
Sの推移が、
図4に1回の突固めサイクルの継続時間tにわたって詳細に示されている。戻し位置25と係合位置27との間での突固めユニット8の変位は、送り段階28において行われる。送り段階28に対して時間間隔をあけて、戻し段階29が続いている。
【0046】
戻し段階29では、突固めユニット8が係合位置27から送り位置26を経て戻し位置25に戻るように変位する。このために、駆動装置9が、ピストン圧pKが下がりかつピストン環状圧pKRが上がるように、作動される。これにより、液圧シリンダ13が、z方向に向いた駆動力FAを生じさせる。突固めユニット8は、駆動力FAに基づきz方向に加速される。加速度azはz方向を向いており、結果としてz方向に増大する速度vzと、z方向での突固めユニット8の変位とが生じることになる。係合位置27と送り位置26との間で、突固めユニット8にはバラスト力FSが作用する。送り位置26と戻し位置25との間では、駆動力FAならびに逆方向を向いた同じ大きさの慣性力FTだけが突固めユニット8に作用するに過ぎず、このとき、バラスト力FSはゼロである。
【0047】
突固めサイクル中、突固めピッケル8aは、締固め駆動装置8bが作動することにより、振動する。このために、締固め駆動装置8bは、実質的に水平方向に突固めピッケルキャリア8cを駆動し、これにより突固めピッケルキャリア8cと、突固めピッケルキャリア8cに取り付けられた突固めピッケル8aとを、各キャリア軸線8dを中心として回動させる。各キャリア軸線8dを中心とした突固めピッケル8aの運動には、実質的に2つの運動成分が含まれている。振動成分が、各キャリア軸線8dを中心とした突固めピッケル8aの極小さな回動振幅を生じさせ、このときの振動周波数fsは35Hz~45Hzである。振動成分は、突固めサイクル全体にわたり突固めピッケル8aに作用する。振動成分に対して追加的に、変位成分が突固めピッケル8aに加えられる。変位成分は、振動成分よりも大きな回動振幅と、約0.5Hzの変位周波数とを有している。この場合、突固めピッケル8aは係合位置27で各キャリア軸線8dを中心として回動され、これにより、x方向に相互間隔をあけて配置された突固めピッケル8aは、互いに接近することになる。戻り位置25では、変位成分は、突固めピッケル8aが再び互いに離れるように方向付けられている。変位段階30に従って、突固めピッケル8aに変位成分が加えられる。突固めピッケル8aに加えられる振動成分と変位成分との重畳に基づき、道床21の締固めが行われる。
【0048】
突固めユニット8が再び戻し位置25に位置すると直ちに、突固めサイクルが終了する。道床21を引き続き締め固めるためには、中心軸線23がx方向において次の軌道まくらぎ24の中央上部に配置されるまで、軌道構築機械1がx方向に移動し、この軌道まくらぎ24において突固めサイクルが繰り返される。時間tにわたるバラスト力F
Sの推移が、6回の連続した突固めサイクルについて
図5に示されている。
【0049】
評価ユニット19により、突固め装置5に加えられる荷重が、バラスト力FSの時間的な推移に基づき求められる。荷重は、バラスト力FSのバラスト力振幅SFsに基づき求められる。バラスト力FSは、時間的に可変の振動負荷である。バラスト力振幅SFsは、1回の振動における最大バラスト力FSと最小バラスト力FSとの差として求められる。バラスト力振幅SFsに対して追加的に、各バラスト力振幅SFsの累積頻度NFsも求められる。荷重を求めるために、累積頻度NFsに基づき合成負荷が求められる。
【0050】
図6には、累積頻度N
Fsにわたるバラスト力振幅S
Fsの推移が示されている。累積頻度N
Fsにわたるバラスト力振幅S
Fsの推移を、バラスト力振幅S
Fsの最大許容累積頻度N
Fsと比較することにより、突固めユニット8の摩耗状態が求められる。摩耗状態は、突固めピッケル8a、駆動装置9およびリニア軸受10等の、突固めユニット8の個々の構成部材に関しても、突固めユニット8全体に関しても、求められる。
【0051】
荷重に応じて、突固めユニット8を操作するための少なくとも1つのプロセスパラメータpK,pKR,fsが、評価ユニット19により調整される。このために、評価ユニット19は、振動周波数fsを制御する締固め駆動装置8bと、ピストン圧pKおよびピストン環状圧pKRを制御する圧力調整器20とに信号接続されている。荷重の閾値SWを超過すると、少なくとも1つのプロセスパラメータpK,pKR,fsが変更される。このために、評価ユニット19によりバラスト力FSが閾値SWと比較され、上側の閾値SW1を超過した場合には、少なくとも1つのプロセスパラメータpK,pKR,fsが変更されてバラスト力FSを低下させ、下側の閾値SW2を下回った場合には、少なくとも1つのプロセスパラメータpK,pKR,fsが変更されてバラスト力FSを上昇させる。バラスト力FSは、振動周波数fsの上昇ならびにピストン圧pKとピストン環状圧pKRとの圧力差の減少により低下し、逆の方法では増大する。プロセスパラメータpK,pKR,fsが評価ユニット19により変更されることで、突固め装置5に対する小さな荷重と、道床21の大きな処理速度との間での最適化が行われる。
【0052】
荷重を求めるために合成負荷を求めることに対して代替的に、評価ユニット19によりバラスト仕事量WSが求められてもよい。バラスト仕事量WSは、バラスト力FSと、突固めユニット8の位置zの変化とから求められる。バラスト仕事量WSは、突固めピッケル8aを介して道床21にもたらされる仕事量に相当する。この場合、位置zの変化は、断続的な時間にわたり検出される。次いで、位置zのこの変化にバラスト力FSが乗じられる。バラスト仕事量WSは、バラスト力FSと、位置zの変化との積の和として求められる。
【0053】
図7には、時間tにわたる1回の突固めサイクルの位置z、バラスト力F
Sおよびバラスト仕事量W
Sが示されている。バラスト仕事量W
Sは、位置zにわたるバラスト力F
Sの推移に基づく面積を意味していてもよい。評価ユニット19により、突固めユニット8に作用するバラスト力F
Sを求めることで、突固めユニット8に対する荷重を推量することができる。バラスト力F
Sを、駆動力F
Aおよび追加的に加速度a
zを考慮して求めることにより、バラスト力F
Sを求めるためにもっぱら駆動力F
Aのみを考慮する場合に比べ、大幅に正確になる。つまり、突固めユニット8に対する荷重を確実に求めることができると共に、突固めユニット8の摩耗状態も確実に求めることができる。少なくとも1つのプロセスパラメータp
K,p
KR,f
sを荷重に応じて適合させることにより、軌道構築機械の効率的かつ経済的な運転が可能になる。この場合は特に最適化により、突固めユニット8の高い処理速度、少ないエネルギ消費量および低下された荷重が達成される。