(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ポーチを含む一体織り又は一体編みテキスタイル及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20230110BHJP
D03D 3/02 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A61F2/07
D03D3/02
(21)【出願番号】P 2021033228
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2019538156の分割
【原出願日】2018-01-16
【審査請求日】2021-03-03
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515256855
【氏名又は名称】アテックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヒュル ポール
(72)【発明者】
【氏名】カイザー コリーン
(72)【発明者】
【氏名】ノリス ステファニー ブーズ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-502078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0215318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0131001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
D03D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さと、を有する一体織り又は一体編みテキスタイルであって、
糸の組から織られた又は編まれた少なくとも1つの長手方向テキスタイル部分と、
前記糸の組の少なくとも一部から長手方向管状グラフト部分と一体的に織られた又は編まれた少なくとも1つのポーチと、
を含み、
一体的に織られる場合、前記糸の組は、少なくとも1組の縦糸と少なくとも1組の横糸とを含み、
一体的に編まれる場合、前記糸の組は、少なくとも1組のウェール糸を含み、
前記少なくとも1つのポーチは、前記テキスタイルの前記第1の端部付近に配置された、外壁、内側管状壁及び開放内側空間を有する第1のポーチであり、
前記第1のポーチは、前記テキスタイルの長手方向軸と平行に配置されたスリット開口部を有する、
ことを特徴とするテキスタイル。
【請求項2】
外壁と、内壁と、開放内側管状空間とを有する第2のポーチを含み、前記第2のポーチは、前記テキスタイルの長手方向軸と平行に配置されたスリット開口部を有する、
請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項3】
前記第1のポーチの前記スリット開口部及び前記第2のポーチの前記スリット開口部は、各ポーチの外側管状壁に織られて又は編まれて、各ポーチを横切って延びる、
請求項2に記載のテキスタイル。
【請求項4】
前記テキスタイルは、長手方向管状グラフトである、
請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項5】
前記ポーチ内に配置された要素、好ましくは金属ワイヤをさらに含む、
請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項6】
前記第1のポーチの少なくとも一部分又は前記第2のポーチの少なくとも一部分は、前記長手方向テキスタイル部分の周りに周方向に配置される、
請求項
2に記載のテキスタイル。
【請求項7】
対角ポーチ及び/又は長手方向ポーチをさらに含む、
請求項6に記載のテキスタイル。
【請求項8】
前記糸は、再吸収性又は非吸収性であり、天然材料、合成材料、金属及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択される、
請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項9】
前記少なくとも1つのテキスタイル部分及び前記少なくとも1つのポーチは、同じ縦糸の組から織られる、又は、
前記少なくとも1つのテキスタイル部分は、第1の縦糸の組から織られ、前記少なくとも1つのポーチは、前記第1の縦糸の組の一部と少なくとも1つのさらなる縦糸の組とから織られる、
請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのテキスタイル部分は、第1の縦糸の組から織られ、前記少なくとも1つのポーチは、前記第1の縦糸の組の一部と少なくとも1つのさらなる縦糸の組とから織られ、前記第1の
縦糸の組の材料は、前記少なくとも1つのさらなる
縦糸の組の材料と異なり、又は、
前記少なくとも1つのテキスタイル部分は、第1の横糸の組から織られ、前記第1のポーチは、前記第1の横糸の組の少なくとも一部と第2の横糸の組とから織られ、前記第2のポーチは、前記第1の横糸の組の少なくとも一部と、前記第2の横糸の組又は第3の横糸の組とから織られる、
請求項
2に記載のテキスタイル。
【請求項11】
第1の端部と、第2の端部と、3つの長手方向管状グラフト部分及び2つのポーチを含む、前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さ、とを有する一体織りグラフトの作製方法であって、
a.糸の組を用いて第1の長手方向管状グラフト部分を織るステップと、
b.前記糸の組の少なくとも一部から、外側管状壁と、内側管状壁と、開放内側管状空間とを含む第1のポーチを、前記第1の長手方向管状グラフト部分と一体的に織るステップと、
c.前記糸の組から、前記第1の長手方向管状グラフト部分及び前記第1のポーチと一体的に第2の長手方向管状グラフト部分を織るステップと、
d.前記糸の組の少なくとも第2の部分から、外側管状壁と、内側管状壁と、開放内側管状空間とを含む第2のポーチを、前記第1の長手方向管状グラフト部分、前記第1のポーチ及び前記第2の長手方向管状グラフト部分と一体的に織るステップと、
e.前記糸の組から、前記第1の長手方向管状グラフト部分、前記第1のポーチ、前記第2の長手方向管状グラフト部分及び前記第2のポーチと一体的に第3の長手方向管状グラフト部分を織るステップと、
を含み、
前記糸の組は、少なくとも1組の縦糸及び少なくとも1組の横糸を含み、
前記第1の長手方向管状グラフト部分、前記第1のポーチ、前記第2の長手方向管状グラフト部分、前記第2のポーチ及び前記第3の長手方向管状グラフト部分は、同じ糸の組の少なくとも一部を共有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1のポーチの前記外側管状壁内に第1のスリット開口部を形成するステップと、
前記第2のポーチの前記外側管状壁内に第2のスリット開口部を形成するステップと、
をさらに含み、
前記第1のスリット開口部は、前記第1のポーチの前記外
側管状壁に織られて前記第1のポーチを横切って延び、
前記第2のスリット開口部は、前記第2のポーチの前記外
側管状壁に織られて前記第2のポーチを横切って延びる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のポーチの前記外側管状壁内に第1のスリット開口部を切断又は縫製するステップと、
前記第2のポーチの前記外側管状壁内に第2のスリット開口部を切断又は縫製するステップと、
をさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のポーチの少なくとも一部分又は前記第2のポーチの少なくとも一部分は、前記長手方向管状グラフトの周りに周方向に配置される、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
対角ポーチ及び/又は長手方向ポーチを織るステップさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、任意にポーチ、フラップ及び/又はタブ内の空間へのアクセスを可能にする1又は複数のスリット開口部を有する一体織り又は一体編みポーチを含む医療用テキスタイルに関する。ポーチ、フラップ及び/又はタブはあらゆる形状又は寸法とすることができ、ポーチ内にはスリット開口部を通じて要素を通すことができる。
【背景技術】
【0002】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2017年1月13日に出願された米国仮特許出願第62/45,908号の利益を主張するものであり、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0003】
当業では、人体又は生体内に留置するための医療装置が知られている。医療装置は、ステント、グラフト、フィルタ、コイル、閉塞バスケット及び弁などの管腔内装置を含むことができる。通常、ステントは、腔内壁を支持するために使用される細長い装置である。例えば狭窄の場合には、狭窄部位の体腔を通る閉塞していない導管をステントによって提供する。このようなステントは、その内部及び/又は外部の周囲に配置された生地又は被覆物の人工グラフト層を有することもできる。当業では、一般にグラフト層を有するステントを、腔内プロテーゼ、管腔内又は血管内グラフト(EVG)、ステントグラフト又はエンドグラフトと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6,994,724号明細書
【文献】米国特許第8,911,856号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Raz S.(1987)Warp Knitting Production.Charlottesville,VA:Melliand Textilberichte.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のグラフトは、織り工程、編み工程又はその他の工程によって構成することができ、任意に2又は3以上の異なるタイプの材料、典型的にはワイヤの形態を取ることができるニチノールなどの非金属ポリマーグラフト材料及び放射線不透過性材料を組み込むことができる。
図1に示すように、このようなグラフト20には、グラフト20に織り込むことによって、又は縫合糸24を用いて生地に縫い込むことによって、放射線不透過性ワイヤ22を組み込んでおくことができる。グラフトをそれ自体に巻き返してカフを形成し、縫って閉じて、グラフトの内側と外側との間にポケットを形成することもできる。これらの工程では、グラフトにワイヤを縫い込むためのさらなる時間が必要になることにより、或いはワイヤ全体を通すことが必要になることにより、製作時間が増えることによって生産性が低下する。
【0007】
従って、当業では、既知のグラフトの不利点を伴わない一体織り又は一体編みポーチ、フラップ及び/又はタブを有する医療用テキスタイルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示するテキスタイルは、第1の端部と、第2の端部と、少なくとも1つのテキスタイル部分及び少なくとも1つのポーチ部分を含む第1及び第2の端部間の長さとを有する。このテキスタイルは、平坦、管状、先細、分岐、又はこれらのあらゆる組み合わせとして糸の組(短繊維、連続フィラメント、マルチフィラメント、モノフィラメント、ワイヤ、或いは製編又は製織が可能なあらゆる材料)から織ること又は編むことができる。本発明の装置の態様では、少なくとも1つのポーチがテキスタイルと同じ連続フィラメントの組又は同じ縦糸の組の一部からテキスタイルと一体に織られ又は編まれる。ポーチは、テキスタイルの1又は複数の側面及びポーチの1又は複数の側面においてテキスタイルに一体的に接合することができる。ポーチは、直線部分、湾曲部分、交差部分又は螺旋部分、或いはこれらのあらゆる組み合わせなどのあらゆる形状又は寸法を形成することができる。さらに、ポーチは連続的とすることができ、テキスタイル上の円周方向、水平方向又は長手方向テキスタイルセグメントの全体又は選択部分を含むことができる。1又は2以上のポーチは、任意にポーチの内部にアクセスするためのスリット開口部を含むことができる。スリット開口部は、グラフト部分の長手方向軸、円周軸又は対角軸と実質的に平行又は垂直に配置することができる。スリット開口部は、ポーチの内側又は外側管状壁に配置することができ、望ましくは任意に180度だけ互いにオフセットすることができるが、互いにオフセットしなくてもよく、或いは45度又は90度などのあらゆる有用な度数だけオフセットすることもできる。
【0009】
ある実施形態では、ポーチが、開放スリット部分及び閉鎖部分を含むことができる。ポーチには、スリット開口部又は閉鎖部分の細孔を用いてニチノールワイヤなどの要素を通すことができる。
【0010】
通常、織りグラフトは、縦方向に配向された第1の糸の組と、横方向に配向された第2の糸の組とを含み、これらの組は、織り合わされて人工テキスタイルを形成する。テキスタイル織りの技術分野では、「縦」糸(end yarns)が互いに平行に軸方向に配向され(「warp ends」又は「warp end yarns」とも呼ばれる)、製織工程中に上昇及び下降して「横」糸(pick yarns)(「weft yarns」とも呼ばれる)のための空間を提供し、パターンが織られるにつれて上下に交差する。この時、縦糸に対して垂直に横方向に配向された横糸は、例えばシャトル、レピア、飛翔物、空気ジェット又は水ジェットなどの異なるタイプの機構によって、提供された空間内で縦糸の幅を横切って横方向に運ばれ、これによって人工テキスタイルを編む。
【0011】
人工テキスタイルからグラフトを構成する際には、縦方向及び横方向の糸を、例えば平織り、あや織り、サテン織り、ベロア織り、二重ベロア織り、バスケット織り又は様々なカスタマイズされた構成などのあらゆる織り構成で織り合わせることができる。織り人工素材は、内部を貫く少なくとも1つの管腔を定める幹壁(trunk wall)を有する縫い目のない管状構成に直接製造され、グラフ本体(graph body)から延びる2又は3以上の枝部(limb)に分岐することができる(例えば、二分岐又は三分岐することができる)。このような縫い目のない構成は、例えばシャトル織機を使用することなどの当業で周知の製織方法を用いて製造することができる。管状構成の縦糸は、管又は分岐の長手方向軸に沿って配向され、横糸は、管又は分岐の周囲に半径方向に配向される。
【0012】
また、同じ糸の組(短繊維、連続フィラメント、マルチフィラメント、モノフィラメント、ワイヤ、或いは製織又は製編が可能なあらゆる材料)の少なくとも一部を共有する少なくとも1つのテキスタイル部分と少なくとも1つのポーチ部分とを含む医療用テキスタイルの作製方法も開示する。テキスタイルは、平坦、管状、先細、分岐、又はこれらのあらゆる組み合わせとして織ること又は編むことができる。この方法は、第1のテキスタイル部分を織る又は編むステップと、上記糸の組の少なくとも一部から第1のテキスタイル部分と一体に第1のポーチを織る又は編むステップと、上記糸の組から第1のテキスタイル部分及び第1のポーチと一体に第2のテキスタイル部分を織る又は編むステップと、糸の組の少なくとも第2の部分から第1のテキスタイル部分、第1のポーチ及び第2のテキスタイル部分と一体に第2のポーチを織る又は編むステップと、上記糸の組から第1のテキスタイル部分、第1のポーチ、第2のテキスタイル部分及び第2のポーチと一体に第3のテキスタイル部分を織る又は編むステップとを含むことができ、これらの各セグメントは、同じ糸の組の少なくとも一部を共有する。織りテキスタイルでは、糸が、少なくとも1組の縦糸と少なくとも1組の横糸とを含むことができる。ある実施形態では、テキスタイル部分及びポーチを同じ縦糸の組から織ることができる。この方法では、1又は2以上のシャトル又は横糸、好ましくは3つのシャトル又は横糸を使用することができる。別の実施形態では、テキスタイル部分及びポーチを1つよりも多くの糸案内棒、好ましくは二重針棒から編むことができる。ポーチは、テキスタイルと同じ密度又は異なる密度を有することができる。この方法は、ポーチの外側又は内側管状壁にスリット開口部を一体的に形成し、すなわち織り込む又は編み込むステップと、任意にスリット開口部を介してポーチに放射線不透過性マーカ又はニチノールステントなどの要素を通すステップとをさらに含むことができる。ある実施形態では、ポーチ又はスリット開口部を形成するために切断、縫製又は縫い合わせを行うことなく一体織り又は一体編みテキスタイルを作製することができる。
【0013】
以下の例示的な実施形態についての詳細な説明を添付図面に関連して読むことにより、本発明のこれらの及びその他の特徴及び利点が明らかになるであろう。図面の複数の図全体を通じ、対応する参照要素番号又は文字は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】管状グラフトの頂部及び底部の外周沿いをワイヤスパイン(wire spine)に沿って縫うことによってニチノールワイヤを適所に保持する従来の管状グラフトを示す図である。
【
図2】3次元1×1管状グラフトを形成するために使用される平織り反復パターン101の2次元表現である。
【
図3】少なくとも1つのスリット開口部を有する3次元周方向ポーチを織るために展開される織りパターン102の2次元表現であって、織物の横糸及び縦糸情報を含む図である。
【
図4】第1の端部及び第2の端部を有し、長手方向管状グラフト部分と、スリット開口部を有する周方向ポーチとを含む、複数のセグメントで構成された一体織りグラフトを示す図である。
【
図5】長手方向管状グラフト部分と、後部及び前部にスリット開口部を有する周方向ポーチとを含む一体織りグラフトの2次元図面である。
【
図6】
図5の軸5i-5iを通じて切り取った
図5の周方向ポーチの4つの織材料の層を示す断面図であって、(外側部とも呼ばれる)外側管状壁と、内側管状壁と、開放内側管状空間とを示す図である。
【
図7A】グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、3つの長手方向管状グラフト部分と、グラフトの頂部付近の周方向ポーチと、底部付近の周方向ポーチとを有し、両ポーチが織縁部に開口部を含む一体織りグラフトを示す図である。
【
図7B】グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、3つの長手方向管状グラフト部分と、グラフトの頂部付近の周方向ポーチと、底部付近の周方向ポーチとを有し、両ポーチが織縁部に開口部を含み、各ポーチのスリット開口部を通じてニチノールワイヤのリングを通すことができ、グラフトの側面を下降する露出したニチノールワイヤのスパインが見える一体織りグラフトを示す図である。
【
図7C】グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの図であって、グラフト長全体を通じて織縁部に1つの開口部を有する周方向ポーチを有する一体織りグラフトを示す図である。
【
図7D】グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、管状グラフト部分が
図2の織りパターン101に従って織られ、織縁部に1つの開口部を有する周方向ポーチが
図3の織りパターン102に従って織られた一体織り管状グラフトの図である。
【
図8A】各織縁部に1つずつ存在する2つのスリット開口部を有する一体織り周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、グラフトの外部全体の周囲に2つの周方向ポーチを含み、管状グラフト部分が
図2のような織りパターン101に従って織られ、ポーチが
図3のような織りパターン102に従って織られた一体織り管状グラフトの図である。
【
図8B】各織縁部に1つずつ存在する2つのスリット開口部を有する一体織り周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、グラフトの周囲で連続していない短縮された周方向ポーチを含み、管状グラフト部分が
図2のような織りパターン101に従って織られ、ポーチが
図3のような織りパターン102に従って織られた一体織り管状グラフトの図である。
【
図9A】スリット開口部を含まない連続する周方向ポーチの織りパターン103を示す図である。
【
図9B】内部にスリット開口部が織られていない連続する周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面であって、管状グラフト部分が
図2のような織りパターン101に従って織られ、周方向ポーチが
図9Aのような織りパターン103に従って織られた一体織り管状グラフトの図である。
【
図10A】グラフト長全体を通じて複数の円周方向ポーチと長手方向ポーチと対角ポーチとを含む一体織り管状グラフトの織りパターンであって、各ポーチが内部に織られた1つのスリット開口部を有して他のポーチに接続されていない修正された1×1管状グラフトの織りパターン104である。
【
図10B】グラフト長全体を通じて複数の円周方向ポーチと長手方向ポーチと対角ポーチとを含む一体織り管状グラフトの図面であって、内部に織られた2つのスリット開口部と、グラフト長に沿って周方向ポーチに接続された対角ポーチとを有する2つの周方向ポーチを含み、各ポーチが内部に織られた1つのスリット開口部を有して他のポーチに接続されておらず、管状グラフト部分が
図2のような織りパターン101及び
図10Aのような織りパターン104に従って織られ、周方向及び対角ポーチが
図11A及び11Bのような織りパターン105及び106に従って織られた一体織り管状グラフトの2次元図面である。
【
図10C】グラフト長全体を通じて複数の円周方向ポーチと長手方向ポーチと対角ポーチとを含む一体織り管状グラフトの図面であって、グラフト部分の織縁部に沿って周方向ポーチと長手方向スパインポーチとを含み、スパイン及び周方向ポーチが織縁部上にスリット開口部を含んでポーチが接続されておらず、各ポーチが内部に織られた1つのスリット開口部を有して他のポーチに接続されていない一体織り管状グラフトの3次元図である。
【
図10D】グラフト長全体を通じて複数の円周方向ポーチと長手方向ポーチと対角ポーチとを含む一体織り管状グラフトの図面であって、2つの周方向ポーチと、グラフトの各織縁部に沿った2つの長手方向ポーチとを有し、各ポーチが内部に織られた1つのスリット開口部を有して他のポーチに接続されておらず、管状グラフト部分が
図2のような織りパターン101及び
図10Aのような織りパターン104に従って織られ、周方向及び対角ポーチが
図11A及び11Bのような織りパターン105及び106に従って織られた一体織り管状グラフトの2次元図である。
【
図11A】長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの長手方向ポーチの左側の織りパターン105を示す図である。
【
図11B】長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの長手方向ポーチの右側の織りパターン106を示す図である。
【
図11C】長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの図面であって、長手方向スパインポーチに接続された織縁部上に開口部を有する周方向ポーチを含み、管状グラフト部分がそれぞれ
図2及び
図10Aのような織りパターン101及び104に従って織られ、周方向ポーチが
図3のような織りパターン102に従って織られ、長手方向スパインポーチが織りパターン106に従って織られた一体織り管状グラフトの2次元図面である。
【
図12A】スリット開口部を有する長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの、スリット開口部を有する長手方向スパインポーチの左側の織りパターン107を示す図である。
【
図12B】スリット開口部を有する長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの、スリット開口部を有する長手方向スパインポーチの右側の織りパターン108を示す図である。
【
図12C】スリット開口部を有する長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトであって、スリット開口部を有する2つの周方向ポーチと、スリット開口部を有する2つの長手方向スパインポーチとを含み、長手方向ポーチが織縁部に対してグラフトの両側に織られ、すなわち織縁部に巻き付かず、各長手方向ポーチが一体織り長手方向管状グラフト部分の織縁部上にスリット開口部を有する1つの周方向ポーチに接続され、管状グラフト部分がそれぞれ
図2及び
図10Aのような織りパターン101及び104に従って織られ、周方向ポーチが
図3のような織りパターン102に従って織られ、長手方向スパインポーチが織りパターン107及び108に従って織られた一体織り管状グラフトの2次元図面である。
【
図12D】スリット開口部を有する長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトであって、グラフトの頂部及び底部の周方向ポーチに接続された長手方向スパインポーチを含み、各長手方向スパインポーチが織縁部に対してグラフトの反対側に織られ、各長手方向ポーチが一体織り長手方向管状グラフト部分の織縁部上にスリット開口部を有する1つの周方向ポーチに接続され、管状グラフト部分がそれぞれ
図2及び
図10Aのような織りパターン101及び104に従って織られ、周方向ポーチが
図3のような織りパターン102に従って織られ、長手方向スパインポーチが織りパターン107及び108に従って織られた一体織り管状グラフトの2次元図面である。
【
図13A】本開示の1又は2以上のポーチを含む一体織りテキスタイルの非限定的な例示的図面である。
【
図13B】本開示の1又は2以上のポーチを含む一体織りテキスタイルの非限定的な例示的図面である。
【
図13C】本開示の1又は2以上のポーチを含む一体織りテキスタイルの非限定的な例示的図面である。
【
図13D】本開示の1又は2以上のポーチを含む一体織りテキスタイルの非限定的な例示的図面である。
【
図14A】一体編みポーチを含む部分的に及び完全に糸通しされた編みテキスタイルの、従来のループ構造又はラッピング動作を用いて完全及び部分的に糸通しされたニット表記パターンを表す図である。
【
図14B】一体編みポーチを含む部分的に及び完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、ポーチを含む一体編みテキスタイルの2次元断面図である。
【
図14C】一体編みポーチを含む部分的に及び完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、編みテキスタイル及びポーチの3次元斜め断面図である。
【
図14D】一体編みポーチを含む部分的に及び完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元正面図である。
【
図14E】一体編みポーチを含む部分的に及び完全に糸通しして製編されたテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元上面図である。
【
図15A】一体編みポーチを含む部分的に糸通しされた編みテキスタイルの部分的に糸通しされたニット表記パターンを表す図である。
【
図15B】一体編みポーチを含む部分的に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体型ポーチを含む編みテキスタイルの2次元断面図である。
【
図15C】一体編みポーチを含む部分的に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、編みテキスタイル及びポーチの3次元斜め断面図である。
【
図15D】一体編みポーチを含む部分的に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元正面図である。
【
図15E】一体編みポーチを含む部分的に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元上面図である。
【
図16A】一体編みポーチを含む完全に糸通しされた編みテキスタイルの完全に糸通しされたニット表記パターンを表す図である。
【
図16B】一体編みポーチを含む完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体的にポーチを含む編みテキスタイルの2次元断面図である。
【
図16C】一体編みポーチを含む完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、編みテキスタイル及びポーチの3次元斜め断面図である。
【
図16D】一体編みポーチを含む完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元正面図である。
【
図16E】一体編みポーチを含む完全に糸通しされた編みテキスタイルの図面であって、一体編みポーチを含む編みテキスタイルの2次元上面図である。
【
図17A】中心にスリット開口部を有するポーチを含む一体織り又は一体編みフラットテキスタイルの図面である。
【
図17B】中心にスリット開口部を有するポーチを含む一体織り又は一体編みフラットテキスタイルの図面であって、
図17Aの周方向ポーチの軸17B-17Bを通じて切り取った、1つの織り又は編み材料層を示す断面図である。
【
図17C】中心にスリット開口部を有するポーチを含む一体織り又は一体編みフラットテキスタイルの図面であって、
図17Aの周方向ポーチの軸17C-17Cを通じて切り取った、スリット開口部を有するポーチの2つの織り又は編み材料層と、ポーチの周囲のフラットテキスタイルの1つの織り又は編み材料層とを示す断面図である。
【
図18A】フラットテキスタイル上のタブ、フラップ又は延長テキスタイル部分の2次元図面であって、1つの側面がフラットテキスタイルに接続されたタブ又はフラップを含むフラットテキスタイルを示す図である。
【
図18B】フラットテキスタイル上のタブ、フラップ又は延長テキスタイル部分の2次元図面であって、2つの側面がテキスタイルに接続されたタブ又はフラップを含むフラットテキスタイルを示す図である。
【
図19】周方向ポーチを織る際に使用される4組の縦糸の断面構成を示す図である。
【
図20】周方向ポーチを織る際に使用される4組の縦糸の断面構成を示す図である。
【
図21】周方向ポーチを織る際に使用される4組の縦糸の断面構成を示す図である。
【
図22】周方向ポーチを織る際に使用される4組の縦糸の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、グラフト又はメッシュなどの医療用テキスタイルにおける縫い目の切断、縫製及び形成の必要性を排除して医療用テキスタイル内にポーチ、タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分を一体化することによって当業で周知の問題を解決するものである。ポーチは、放射線不透過性マーカ、装置、薬剤、フィルム、又は他のいずれかの互換物(compatible object)などの要素を含むことができる。本発明は、任意に管状の埋め込み式グラフトとすることができる医療用テキスタイル上に1又は2以上の外部ポーチ、タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分を一体的に織る方法、編む方法、又はこれらを組み合わせた方法、及びこの方法から形成される装置を提供する。ポーチ、タブ、フラップ又はテキスタイルセグメントは、下にあるテキスタイルも形成する1又は2以上の糸の組を用いて織ること又は編むことができ、これによってポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分を埋め込み式テキスタイルと一体に形成することができる。各ポーチは、やはりテキスタイルに一体的に織り込み又は編み込むことも、或いは切断などの他の方法によって形成することもできるスリット開口部を含むことができる。スリット開口部は、放射線不透過性マーカ、装置、薬剤、フィルム又は他のいずれかの互換物などの要素をポーチに出し入れするために利用することができる。
【0016】
テキスタイルが管状グラフトである時にはポーチも管状であり、下にある管状グラフトを少なくとも部分的に、実質的に又は完全に囲むことができる。例えば、ポーチは、下にある管状グラフトの周囲のドーナツ形とすることができる。ある実施形態によれば、ポーチの1つのスリット開口部を通じて放射線不透過性マーカ(例えば、ワイヤ)などの要素を配置し又は通すことができる。要素をグラフトに縫い込む必要があるステップを排除することにより、製作時間及び関連するコストが削減される。また、ポーチとグラフトとの縫い目のない一体形成により、ポリマーグラフト材料の穿刺も縫い目も存在しない。「縫い目」は、2つの材料片が互いに接合された線である。対照的に、本開示のグラフトを作製するには、長手方向管状グラフト部分とグラフトの周囲のポーチとを織り混ぜ又は編み合わせによって接合し、これによってこれらの間で糸の組の少なくとも一部を共有し、換言すればセグメントを別個に作製せず、その後に縫い目で接合する。本発明によって提供される縫い目なし構造の利点にもかかわらず、縫い目を含むテキスタイル構成を本発明と統合して併用することもできる。例えば、米国特許第6,994,724号では、縦糸を下げて様々な形状及びグラフト構成を形成し、その構成の一部として縫い目も含むテキスタイル構造が使用されており、この文献はその全体が引用により本発明に組み入れられる。このような縫い目を採用する構造及びその他の構造を本発明と組み合わせて使用して様々な製品を製造することができる。第1の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、これらの間の長さとを有する、一体的に織られた、又は一体的に編まれた、或いはこれらを組み合わせたテキスタイルに関する。このテキスタイルは、縦糸の組及び/又は横糸の組を含む糸の組から織られた又は編まれたベーステキスタイル層と、ベーステキスタイル層上に形成された一体織り又は一体編みポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分とを含むことができ、ポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分は、同じ糸の組の少なくとも一部から織られ又は編まれる。ポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分は、同じ糸の組の少なくとも一部又は糸のサブセットから織ること又は編むことができる。
【0017】
テキスタイルは、グラフト、管、シース、テザー、パッチ、テープ、メッシュ、弁などの埋め込み式医療装置において使用できるあらゆるテキスタイルとすることができる。このテキスタイルは、二分岐、三分岐したテーパ状のパネル及びシートを含むあらゆる既知の形状又は設計、並びにあらゆる高さ及び長さを有することができる。例えば、このテキスタイルは、2次元の平坦な矩形又は管状のグラフトとすることができる。
【0018】
「一体的に織られる(integrally woven)」及び「一体的に編まれる(integrally knitted)」という用語は、テキスタイルの一部又は断片を織り合わせ又は編み合わせてテキスタイル全体を作製することを意味する。換言すれば、テキスタイルの一部又は断片が全体的又は部分的に共通の糸を共有する。
【0019】
ポーチは、織られ又は編まれてベーステキスタイル層に一体的に接続された、テキスタイル層上のさらなる織物層とすることができる。ポーチは、基層に接続する全ての側面が閉じられるように、或いは1つ又は2つの側面を除く全ての側面が接続されるように織ること又は編むことができる。例えば、矩形ポーチの場合には、2つ、3つ又は4つの側面を閉じて織ること又は編むことができる。さらに、円形又は長円形ポーチの場合には、直径全体の周囲を完全に閉じて、又は直径の一部の周囲を完全に閉じて織ることもできる。ポーチは、あらゆるポーチ形状、サイズ又は寸法に従う。
【0020】
タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分は、織られて又は編まれてベーステキスタイル層に一体的に接続されたさらなる織物層とすることができる。タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分は、少なくとも1点がベーステキスタイル層に一体的に取り付けられるように織ること又は編むことができる。例えば、矩形タブの場合には、4つの側面のうちの1つ又は2つ、或いは1又は2以上の側面の一部を織って又は編んで閉じることができる。本明細書の開示では、あらゆる適切な実施形態において、織り又は編みポーチの代わりに織り又は編みタブ又は延長テキスタイル部分又はサックを使用することもできる。
【0021】
1又は2以上のタブ又はポーチは、あらゆる好適な織りパターン又は編みパターンに従って平織りパターン又は繰り返し編みパターンを修正することによってベーステキスタイル層に一体的に織り込むこと又は編み込むことができる。各タブ又はポーチは、テキスタイル上に線形的に、湾曲して、交差して、螺旋状に又は対角的に、或いは他のいずれかの好適な態様又は形状で配置されるように織ること又は編むことができる。各タブ又はポーチは、テキスタイルの全長又は全高、或いはその一部にわたって広がることができる。テキスタイル上に線形的に、湾曲して、交差して、螺旋状に又は対角的に配置できる1又は2以上のタブ又はポーチは、縫い目、縫製又は切断を伴わずにベーステキスタイル層と一体に織られ又は編まれる。
【0022】
テキスタイルは、1つの周方向ポーチ、タブ、サック又は延長テキスタイル部分を含むことができる。別の実施形態では、テキスタイルが、テキスタイルに織り込まれた又は編み込まれた2つ、3つ又は4つのポーチなどの1つよりも多くのポーチを含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば同じテキスタイル上で線形ポーチと対角ポーチなどのポーチ位置の組み合わせを使用することができる。他の実施形態では、同じテキスタイル上でポーチ、タブ及び延長テキスタイル部分の組み合わせを使用することができる。
【0023】
ポーチ、タブ及び延長テキスタイル部分の配置、幅及び長さは、ポーチ、タブ及び延長テキスタイル部分の用途及び使用目的に依存する。ポーチ又はタブのサイズ及び配置の精度は、織り密度又は編み密度及びパターン反復に比例する。織り密度又は編み密度は、ポーチ又はタブの用途及び使用に合わせて調節又は調整することができる。ある実施形態では、タブ又はポーチの密度を、1cm2当たり約3糸~1cm2当たり約250糸とすることができる。本明細書で使用する、テキスタイルの所与の領域における糸の密度は、例えば製織のための横糸(weft yarns又はpicks)及び製編のためのコース糸の数などの一方向における糸の数に、例えば製織のための縦糸及び製編のためのウェール糸の数などの垂直方向の糸の数を足したものを意味する。
【0024】
各ポーチ、タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分は、あらゆる幅及びあらゆる長さになるように織ること又は編むことができる。ポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分の最大幅は、織機又は編機の幅に比例する。テキスタイル上に1つよりも多くのタブ又はポーチが含まれる時には、タブ又はポーチが同じ方向に存在する必要はなく、様々な用途に対応するようにサイズが異なって様々な要素のハウジングとして機能することができる。ある実施形態では、1又は2以上のタブ又はポーチの幅を、約0.5mm~約200mm、好ましくは1mm~約10mm、より好ましくは約2mm~約8mm、より好ましくは約2mm~約6mm、より好ましくは約2mm~約4mm、さらに好ましくは約2.0mmとすることができる。
【0025】
各ポーチ、タブ、フラップ又は延長テキスタイル部分の幅及び長さは、中に通される又は別様に配置される要素に対応するように調整することができる。ある実施形態では、要素が最低限の摩擦及び動きでポーチ内で確実にぴったりと収まることが望ましい。ある実施形態では、摩擦を抑えてテキスタイル上での摩耗を最小化するように要素にコーティングを施すこともできる。
【0026】
本発明の装置のベーステキスタイル層は、糸の組から織ること又は編むことができ、ポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分は、同じ糸の組の少なくとも一部から織られ又は編まれる。本明細書で使用する糸は、1又は2以上のフィラメントで構成された紡織繊維のストランドである。従って、例示的な実施形態で使用される糸は、製織又は製編が可能な単一フィラメント(モノフィラメント)、複数のフィラメント(マルチフィラメント)、ステープルファイバ、ワイヤ、又は他のいずれかの材料から構成することができる。糸を含むフィラメントは、例えば互いに撚り合わせること又は織り合わせることなどのあらゆる形で互いに関連付けることができる。これらの糸は、凹凸のあるもの又は平坦なものとすることができ、例えば明るいもの、半分暗いもの及び完全に暗いものなどのあらゆる不透明度を有することができる。本発明の人工テキスタイル装置を織るため又は編むために使用される糸は、例えば絹及び綿などの天然材料、並びに、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はその他の生体適合性ポリマーといったポリマーなどの合成材料のような、生物学的に適合したものとすることができる。綿などの生物学的に適合しない糸を使用し、結果として得られるプロテーゼを好適な生体適合性材料で被覆又は別様に処理して、身体による受け入れ及び体内での使用を強化することもできる。糸は、再吸収性、非吸収性、又はこれらの組み合わせとすることができる。糸は、天然材料、合成材料、金属(例えば、金、プラチナ、ニッケル、スズ、ニチノール、コバルト、クロミウム、ステンレス鋼)、又はこれらのいずれかの組み合わせから作製することができる。ある実施形態では、1又は2以上の糸が、ポリエステル、ニチノール又はポリプロピレンである。別の実施形態では、1又は2以上の糸がポリエステルであり、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0027】
テキスタイルは、1又は2以上の材料の糸で構成することができる。糸という用語は、縦糸(warp end yarns)及び横糸(weft(又はpick) yarns)の両方を含む。ある実施形態では、縦糸(warp end yarns (又はwarp ends))及び横糸(weft yarns(又はpicks))が全てPETなどの同じ材料である。別の実施形態では、縦糸が1つの材料であり、横糸が1つよりも多くの材料で構成される。ある実施形態では、縦糸がPETであり、長手方向管状グラフト部分の横糸がPETであり、ポーチの横糸がPET及びニチノールなどの金属である。この実施形態では、ポーチの内側管状壁に使用される横糸がPETであり、ポーチの外側管状壁に使用される横糸がニチノールである。例えば補強目的などの多くの異なる用途のために、横糸を介して異なる材料をポーチに織り込むことができると想定される。従って、横糸には、より強力な糸、或いは生分解性又は吸収性材料を使用することもできる。本開示に従って縦糸及び横糸を変更するあらゆる数の代替例が想定される。
【0028】
この実施形態では、ベーステキスタイル層と1又は2以上のタブ又はポーチとを同じ縦糸の組から織ること又は編むことができる。ある実施形態では、内側管状壁を一体的に織る際に縦糸の半分を使用してポーチを織り、縦糸の残りの半分を外側管状壁において一体的に織ることができる。縦糸は、どれほど多くのポーチがテキスタイルに織り込まれたとしても、いずれかのさらなる長手方向管状グラフト部分などを織るために再び使用される。
【0029】
糸は、約40デニール(44デシテックス)以上の、約40デニール(44デシテックス)未満の、約30デニール(33デシテックス)の、又は全体的に約30デニール(33デシテックス)未満の線密度を有することができる。デニールは、9,000メートルの糸のグラム単位の重量である。織りテキスタイルの厚みは、約7ミル(0.18mm)又はそれ未満、約6ミル(0.15mm)~約3ミル(0.076mm)、約4ミル(0.10mm)又はそれ未満、約4.3ミル(0.11mm)~約5.5ミル(0.14mm)、約4.0ミル(0.10mm)、或いは約3.2ミル(0.08mm)又はそれ未満とすることができる。ミルは長さの単位であり、1ミルは0.001インチ(0.0254mm)に等しい。テキスタイルの厚みは、標準試験(ISO 7198)によって測定することができる。テキスタイルは、1cm2当たり約10糸以上の、1cm2当たり約100糸以上の、1cm2当たり約150糸以上の、1cm2当たり約177糸を上回る、又は1cm2当たり約250糸以上の単位面積当たりスレッド数を有することができる。糸の数は、単位面積における縦糸の数と横糸の数とを加算することによって計算される。
【0030】
ある実施形態では、このテキスタイルを、米国特許第8,911,856号に開示されるような、全体的に約30デニール(33デシテックス)未満であって1フィラメント当たり約10デニール(11デシテックス)未満の糸、1cm2当たり約177糸を上回る単位面積当たりスレッド数、及び約3.26ミル(0.08mm)未満の厚みを含む、極薄、高密度、低デニールの生地とすることができ、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。この生地は、約60g/m2未満の重量を有することができる。別の実施形態では、テキスタイルを、全体的に約30デニール(33デシテックス)未満であって1フィラメント当たり約10デニール(11デシテックス)未満の糸、1cm2当たり約177糸未満の単位面積当たりスレッド数、及び約3.26ミル(0.08mm)未満の厚みを有する低密度平板又は管とすることができる。低密度テキスタイルは、ポーチ、タブ又はフラップ内に、限定するわけではないが例えば医薬品を導入するためのアクセスポイントとしてテキスタイルの細孔を使用できる場合に織ること又は編むことができる。生地の重量は、標準試験(ISO 7198)によって測定することができる。
【0031】
さらに、1つの実施形態では、織りテキスタイルが、120mmHg(16kPa)の圧力における約400cc/分/cm2未満の透水性評価、及び/又は約20重量ポンド(89ニュートン)以上のプローブ破裂強度を有することができる。プローブ破裂強度は、1インチ直径(25.4mm)の生地部分に3/8インチ(9.5mm)のプローブを毎分0.5インチ(12.7mm)の速度で圧入し、プローブが布を突き破る力を測定することによって求めることができる(ISO 7198による、その内容は引用により本明細書に組み入れられる)。織りテキスタイルは、1インチ当たり約25lbs(170kPa)を上回る引張強度を有することができる。
【0032】
各ポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分は、これらの内部に織られた又は編まれたスリット開口部を有することができる。スリット開口部は、事後に切断されるのではなく、タブ又はポーチの織物又は編物内に手動で切断し、又は一体的に形成することができる。さらに、低密度織物又は編物の1又は複数の細孔をポーチへのアクセスポイントとして使用することもできる。タブ又はポーチの外側管状壁に(又は外側部に)スリットを形成すると、下にあるタブ又はポーチの内壁と外壁との間の空間にアクセスできるようになる。スリット開口部は、一体的に織られる又は編まれる場合には、ほつれる恐れがある縁部を排除又は最小化するためにテキスタイル材料を切断する必要なく形成される。
【0033】
従って、1又は2以上のタブ又はポーチ内にスリット開口部を形成することができる。1つの実施形態では、スリット開口部が切断によって形成される。このような切断は、レーザ、ブレード、ウォータージェット又は他のいずれかの好適な方法によって行うことができる。別の実施形態では、スリット開口部がタブ又はポーチに一体的に織り込まれる。ある実施形態では、スリット開口部がテキスタイルの長手方向軸と実質的に平行に配置されるが、テキスタイルの長手方向軸に垂直な配置、又はテキスタイルの長手方向軸に対する別の角度での配置などの他のスリットの配置も検討される。
【0034】
スリット開口部は、タブ又はポーチ上(例えば、内側又は外側管状壁上)のあらゆる位置に配置することができる。別の実施形態では、スリット開口部がポーチの外壁に存在してポーチ全体に延びる。別の実施形態では、例えばポーチ内に配置された要素を適所に保持するために、例えば縫合、接着又はその他の方法などの当業で周知のいずれかの方法によって後でスリット開口部を閉じることができる。
【0035】
ある実施形態では、1又は2以上のスリット開口部に要素が通され、又はその内部に配置される。要素は、治療効果をもたらすために使用されることが当業で知られているあらゆる物体又は装置とすることができる。要素は、ポーチ内に配置するのに適したあらゆる形態の調合薬製品とすることもできる。要素は、任意に放射線不透過性とすることができ、当業での使用が知られているあらゆるマーカ(例えば、ワイヤ、ディスク、フィルム)又はステントとすることができる。他の実施形態では、要素が、密封装置、可膨張式装置、係止装置又は返しを含む取り付けリング、薬剤溶出構造、生分解性物体、又は液体を含む管である。
【0036】
ある実施形態では、要素が、任意に金属(例えば、金、プラチナ、ニッケル、スズ、ニチノール、コバルト、クロミウム、又はこれらのいずれかの組み合わせ)を含むワイヤとすることができる放射線不透過性マーカであるが、好適な放射線不透過性マーカとして使用されることが当業で知られているあらゆる材料を本開示と共に使用することができる。別の実施形態では、放射線不透過性マーカがワイヤであり、好ましくはニチノールワイヤである。
【0037】
第2の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、これらの間の長さとを有する一体織りグラフトに関する。一体織りグラフトは、糸の組から織られた長手方向管状グラフト部分と、同じ糸の組の少なくとも一部から長手方向管状グラフト部分と一体に織られた少なくとも1つのタブ又はポーチとを含む。従って、グラフトは複数のセグメントで構成される。グラフトは、以下に限定するわけではないが、直線的な長手方向グラフト、テーパ状グラフト、張り出しグラフト、段付きグラフト、二分岐又は多分岐グラフト、有窓グラフト、又はテーパ部分及び/又は段付き部分を有する二分岐グラフトなどのこれらの形状及び構成の組み合わせを含むあらゆる既知の形状又は設計とすることができる。同様に、グラフトの複数のセグメントも、単一の製品内で形状及び構成が変化することができる。グラフトは、1つの長手方向管状グラフト部分を含むことも、或いは他の実施形態では、間に織られた1又は2以上の一体織りポーチによって接合できる長手方向管状グラフト部分の複数のセグメントを含むこともできる。各長手方向管状グラフト部分は、内壁及び外壁と、グラフト部分を貫通する管腔とを有する。長手方向部分は、製品全体の一部としてテーパ部分、張り出し部分、段付き部分、フランジ部分又は多重分岐部分を含むグラフト設計の一部とすることができる。
【0038】
「一体織りグラフト(integrally woven graft)」という用語は、グラフトの一部又は断片が織り合わされてグラフト全体を形成することを意味する。このグラフトは、長手方向管状グラフト部分をポケット又はポーチ部分と別に作製し、その後に縫製などの何らかの形でグラフトの端部に実質的に接着又は付着させてワイヤ又はその他の要素を収容する当業で周知のグラフト、或いは折り重ねて端部にポケットを形成する他の既知のグラフトとは大きく異なる。一体織りグラフトは、概ね平らに織られることにより、中心に中空空間を有する拡張状態ではなく2次元的に矩形として見た時に、管状部分の2つの側面に沿って機能的でも恒久的でもない織縁部(woven edge)が形成される。
【0039】
本開示に従って形成される一体織りグラフトは、あらゆる長さ及びあらゆる直径を有するように作製することができる。任意に、一体織りグラフトは、あらゆる大人又は子供の動物における実装のためのあらゆる長さ及びあらゆる直径を有するように作製することができる。例えば、グラフトの長さは、約0.5mm~約600mmとすることができる。ある実施形態では、グラフトの長さを、約15mm~約250mm、約20mm~約140mm、好ましくは約20mm~約60mm、さらに好ましくは約20mm~約40mmとすることができる。外部グラフト壁面から測定した時の直径は、約0.1mm~約150mm、約5mm~約45mm、好ましくは約8mm~約40mm、より好ましくは約8mm~約30mm、さらに好ましくは約8mm~約20mmとすることができる。
【0040】
グラフトの長手方向管状グラフト部分は、織りグラフトの1又は2以上のセグメントを構成する管状体を含む。長手方向管状グラフト部分は、当業で周知のあらゆる手段によって織ることができる。ある実施形態では、長手方向管状グラフト部分が、実質的に
図2に示すような(例えば、一方を上、一方を下にして繰り返す)平織り反復パターンに従って、好ましくは管状織り反復パターン101に従って織られる。他の織りパターンも有用である。
【0041】
織りパターンを示す
図2及び本明細書の他の図では、記号表記を用いて特定の織りパターンを示す。グリッド上の正方形の縦列は縦糸を表し、正方形の横列は横糸を表す。グリッド上のマークが付いた又は埋められた正方形は、その特定の列によって表される縦糸が、その特定の横列によって表される横糸の上に来ることを象徴する。マークが付いていない又は空白のままの正方形は、製織中に縦糸が横糸の下に来ることを意味する。
【0042】
図2には、本発明による平織り管状グラフトのための横糸及び縦糸を表す。横糸1、2、3及び5は、グラフトの下部又は底部を織るために使用され、横糸4、6、7及び8は、グラフトの上部又は頂部を織るために使用される。
【0043】
ある実施形態では、このパターン反復が、通常パターンの4本の縦糸に対して8本の縦糸にわたる。反復パターンで織られる縦糸の量を変化させることにより、各内側及び外側管状壁が考慮されて織られる。グラフトの頂部及び底部に管状平織りを形成するには、通常の管状平織りパターンのように合計4本の横糸(頂部に2本及び底部に2本)が必要である。本開示の実施形態ではポーチ内で4つの層を織るので、反復全体を実行するために、内側管状壁の頂部/底部の4本の横糸、及び外側管状壁の頂部/底部の4本の横糸という8本の横糸を使用する。
【0044】
別の実施形態では、長手方向管状グラフト部分を1組の横糸から織り、1又は2以上のポーチを同じ横糸の組の少なくとも一部と少なくとも1つのさらなる横糸の組とから織ることができる。グラフトが2つのポーチと複数の長手方向管状グラフト部分とを含む時には、長手方向管状グラフト部分を第1の横糸の組から一体的に織ることができ、第1のポーチを第1の横糸の組の少なくとも一部と第2の横糸の組とから一体的に織ることができ、第2のポーチを第1の横糸の組の少なくとも一部と第2の横糸の組又は第3の横糸の組とから一体的に織ることができる。
【0045】
あらゆる横糸及び縦糸は、本開示に従って、例えば実質的に
図2及び
図3に示す織りパターンに従って使用することができる。シャトル織機で製織する際の1又は2以上のシャトル、又は当業での使用が知られている他のいずれかの織機で製織を行う際の他の横糸挿入装置内で使用される横糸を変更して、(糸が異なる色である場合には)着色パターンを形成することもできる。グラフトにさらなる形状安定性をもたらすために、ポーチを織るために使用されるシャトル又はその他の横糸挿入装置の糸巻き(quill)にさらに強い糸又はワイヤを使用することもできる。
【0046】
1又は2以上のポーチは、あらゆる好適な織りパターンに従って平織り反復パターンを修正することによって長手方向管状グラフト部分に織り込むことができる。ポーチ又はタブは、グラフトの輪郭に従うように織ることができ、グラフトの周囲に円周方向に、線形的に、螺旋状に、又は対角的に、或いは他のいずれかの好適な態様又は形状で配置することができる。ポーチを円周方向に配置すると、この(ポケット又はサックとも呼ばれる)周方向ポーチがグラフトの円周全体又はその一部の周囲に広がる。ポーチは、円周全体の周囲に広がることによって円管を形成する。グラフトの周囲に円周方向に、線形的に、螺旋状に、対角的に又は別様に配置できる1又は2以上のポーチは、任意にその両側が縫い目、縫製又は切断を伴わずに長手方向管状グラフト部分と一体に織られる。
【0047】
ある実施形態では、ポーチがグラフトの周囲に円周方向に又は対角的に位置し、実質的に
図3に示すような織りパターン102に従って織られる。
図3には、水平方向及び垂直方向に反復される8×8パターン(8本の縦糸及び8本の横糸)を示す。水平方向に加えられる反復が多ければ多いほど(すなわち、直径が大きくなるほど)グラフトは広くなり、ポーチはグラフトの円周の周囲でさらに広がるようになる。垂直方向に加えられる反復が多ければ多いほど、ポーチはグラフトの長手(長さ)方向に沿ってさらに延びるようになる。このパターンでは、各列が個々の縦糸の織りパターンを表し、各行が個々の横糸の織りパターンを表す。このパターンは底部から頂部に読まれる(底部の行は最初に織られる横糸である)。横糸3~6は内側管状壁である。横糸1、2及び7、8は外側管状壁である。ポーチの各管状壁を織るために2本の横糸が使用される。このポーチの場合、各縦糸の列は単層、すなわち管状壁にしか織ることができない。正方形が黒色の場合又は着色されている場合には、縦糸が上にある。正方形が白色の場合には、縦糸が下にある。例えば、
図3で縦糸1のパターンを見てみると、
・横糸1及び2は底部外側管状壁を織るために使用されて正方形は黒色であり、従って縦糸が上にあって織られておらず、
・横糸3は底部内側管状壁を織るために使用されて正方形は白色であり、従って縦糸が下にあって織られており、
・横糸4は頂部内側管状壁を織るために使用されて正方形は白色であり、従って縦糸が下にあって織られており、
・横糸5は底部内側管状壁を織るために使用されて正方形は白色であり、従って縦糸が下にあって織られており、
・横糸6は頂部内側管状壁を織るために使用されて正方形は黒色であり、従って縦糸が上にあって織られており、
・横糸7及び8は頂部外側管状壁を織るために使用されて正方形は白色であり、従って縦糸が下にあって織られていない。
【0048】
この実施形態では、長手方向管状グラフト部分と1又は2以上のポーチとが同じ縦糸の組から織られる。具体的に言えば、この実施形態では、内側管状壁を一体的に織る際に縦糸の半分を使用することによってポーチが織られ、縦糸の残りの半分が外側管状壁において一体的に織られる。内側管状壁を織る際に使用される縦糸は、機能的内部開放領域を維持するようにポーチが織られることを保証するために、外側管状壁を織る際に使用される縦糸から離しておくべきである。その後、どれほど多くのポーチがグラフトに織り込まれた場合でも、再び全ての縦糸を使用してあらゆる追加の長手方向管状グラフト部分などを織る。
【0049】
ある実施形態では、グラフトが1つの周方向ポーチを含むことができる。別の実施形態では、グラフトが、グラフトに織り込まれた2つ、3つ又は4つの周方向ポーチなどの1つよりも多くのポーチを含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば同じグラフト上に周方向ポーチと対角ポーチなどのポーチ位置の組み合わせを使用することもできる。さらに、ポーチは、テキスタイル又は長手方向管状グラフトの外壁又は内壁に位置付け又は配置することもできる。
【0050】
図4に示すグラフトは、2つの端部122及び124を有する長手方向管状グラフト部分126と、周方向ポーチ128と、図示のように相関してグラフトの長手方向軸と実質的に平行に位置するスリット開口部130とを含む。2つの端部122及び124は、対向する開放端とすることができる。
【0051】
スリット開口部130は、ポーチ上(例えば、内側又は外側管状壁又はテキスタイル壁上)のあらゆる位置に配置することができる。
図4では、スリット開口部がポーチの外側管状壁に存在し、ポーチを横切って延びる。長手方向管状グラフト部分の長手方向軸に垂直な位置などの他のスリット開口部130の位置、又は長手方向管状グラフト部分の長手方向軸に対する別の角度の位置も検討される。
【0052】
1つの実施形態では、
図5は、
図7Aのグラフトなどの一体織りグラフト160であって、長手方向管状グラフト部分162、164、166と、周方向ポーチ168、170と、グラフト160の背面又は後面のスリット開口部172と、グラフト160の前面又は側面のスリット開口部174とを含むグラフト160の側面斜視図である。グラフト内に2つのポーチが存在する時には、第1のポーチのスリット開口部を第2のポーチのスリット開口部と一直線にすることも、又は第2のポーチのスリット開口部からオフセットさせることもできる。この実施形態では、第1のポーチのスリット開口部を、第2のポーチのスリット開口部から、45度、90度、又は望ましくは180度などのいずれかの有用な度数だけオフセットさせることができる。180度オフセットさせた時には、スリットがグラフトの両側に存在するようになる。グラフト160は、対向する端部176、178をさらに含む。具体的に言えば、長手方向管状グラフト部分162、164、168と周方向ポーチ168、170とは同じ縦糸の組から織られる。長手方向管状グラフト部分162、164、166は、実質的に
図2に示すようなパターン101を用いて織られ、周方向ポーチ168、170は、実質的に
図3に示すようなパターン102を用いて織られる。
【0053】
長手方向管状グラフト部分162、164、166は、第1の横糸の組から織られ、各周方向ポーチ168、170は、第1の横糸の組の一部と、少なくとも1つのさらなる横糸の組とから織られる。長手方向グラフト部分162及び166は、長手方向の長さが約2mmであり、周方向ポーチ168、170は、長手方向の長さが約2.5mmであり、長手方向管状グラフト部分164は、長手方向の長さが約16mmである。周方向ポーチ168の後面(例えば、3:00位置)において織られたスリット開口部172は長さが約2.5mmであり、周方向ポーチ170の前面(例えば、9:00位置)において織られたスリット開口部174も長さが約2.5mmである。
【0054】
さらなる実施形態では、長手方向管状グラフト部分を、グラフトの第1の端部からグラフトの反対端に延びる連続内側管状壁として理解することができる。この場合、ポーチは、内側管状壁の周囲の外側管状壁として離散領域で織られる。各ポーチは、内側管状壁と、外側部(又は外側管状壁)と、開放内側管状空間とを有する。
図6は、外側部188(又は外側管状壁)と、内側管状壁192と、開放内側管状空間190とを有する
図5の周方向ポーチ170の断面図である。
図5及び
図6に示す実施形態では、周方向ポーチ170の長手方向管状グラフト部分162、164、166と内側管状壁192とがグラフト160の長さ全体を通じて連続しており、開放内側管状空間190が内側管状壁192の外部に存在する。
【0055】
図6は、
図5の軸5i-5iに沿って切り取ったグラフト160の断面図である。
図6に示すように、周方向ポーチ170に沿ったグラフト160の断面図には4つの織材料層が存在し、長手方向管状グラフト部分の断面図には2つの織材料層、すなわち外壁及び内壁(図示せず)が存在する。
図6の実施形態では、これらの4つの層を、底部外側管状壁180、底部内側管状壁182、頂部内側管状壁184及び頂部外側管状壁186として示す。
【0056】
ある実施形態では、
図6のポーチを織るために、底部外側管状壁180又は頂部外側管状壁186を最初に織らなければならない。底部外側管状壁180を最初に織った場合には、頂部内側管状壁184を織る前に底部内側管状壁182が織られる。頂部内側管状壁184を織ると、ポーチ170の頂部外側管状壁186を織ることができる。正しい順序に従う限り、この正反対も可能である。
【0057】
グラフトが2又は3以上のポーチを含む時には、グラフトの周囲にゼロ又はあらゆる数のポーチを円周方向に配置することができ、それぞれを「周方向ポーチ」と呼ぶことができる。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、グラフト144が2つの周方向ポーチ148及び150を含み、一方のポーチがグラフトの第1の端部付近に(すなわち、第1の端部の近位に)存在し、第2のポーチがグラフトの反対端付近に(すなわち、反対端の近位に)、又はグラフトの第1の端部から離れて(すなわち、第1の端部の遠位に)存在する。端部付近とは、周方向ポーチがグラフトの中間点よりもグラフトの端部近くに配置されることを意味する。ある実施形態では、グラフトの長さが約25mmである時に、各ポーチがグラフトの各端部から約2mm~約4mmに、好ましくは約2mmに位置することができ、各ポーチの幅は約2mm~約4mmであり、好ましくは約2mm~約3mmであり、さらに好ましくは約2.5mmである。周方向ポーチは、あらゆる幅になるように織ることができる。グラフト上に1つよりも多くのポーチが含まれている場合、これらのポーチは同じ寸法である必要はなく、様々な用途に対応して様々な要素のハウジングとして機能するようにサイズ及び位置が異なることができる。
【0058】
ある実施形態では、グラフトが1又は2以上のポーチを含む場合、各ポーチの1又は複数のスリット開口部を通じて(放射線不透過性の又はそうでない)1又は2以上のワイヤを配置し、例えば通すことができ、或いは(放射線不透過性の又はそうでない)2つのワイヤを使用して、第1のポーチのスリット開口部を通じて一方のワイヤを通し、第2のポーチのスリット開口部を通じて第2のワイヤを通すことができる。いくつかの実施形態では、
図7A及び
図7Bに、3つの長手方向管状グラフト部分146と、グラフトの頂部付近の周方向ポーチ148と、底部付近の周方向ポーチ150とを有する一体織りグラフト140を示しており、両ポーチ148、150は開口部154を含む。
図5Bでは、各ポーチ148、150のスリット開口部154を通じてニチノールワイヤ152のリング158を通すことができ、グラフト140の側面を下降するニチノールワイヤ152の露出したスパイン156が見える。
【0059】
グラフト140に織り込まれた各周方向ポーチ148、150の各スリット開口部154を通じて、1つのこのようなニチノールワイヤ152を通すことができる。しかしながら、本発明は
図7Bに示すニチノールワイヤの形状に限定されるものではなく、あらゆる好適な形状を使用することができる。さらに、ワイヤ152はニチノールワイヤに限定されるものではなく、あらゆる好適なワイヤ材料を使用することができる。
【0060】
図7C~
図7Dは、グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチを含む一体織り管状グラフトの2次元図面である。これらのポーチは、グラフトの長さを通じて円周方向に均等に位置し、或いはグラフトのあらゆる長さに位置するように織ることができる。
図7A~
図7Dの各周方向ポーチは、織縁部上に1つの開口部を有する。
図7Cに示すように、一体織りグラフト200は複数の周方向ポーチ202を含む。図示の各ポーチ202は、ポーチ開口部206を介して内部に配置された周方向ワイヤ204を有する。
図7Dに示すように、織りグラフト220は、対向する開放端222、224と、周方向ポーチ226、230と、長手方向管状グラフト部分243とを含む。
図7Dの織りグラフト220の周方向ポーチ226は、織縁部236上に1つの開口部228を有し、
図5の織りグラフト220の周方向ポーチ230は、織縁部238上に1つの開口部232を有する。
図7Dに示すように、管状グラフト部分は、
図2のような織りパターン101に従って織られ、周方向ポーチは、
図3のような織りパターン102に従って織られる。
【0061】
図8A及び
図8Bに示す別の実施形態では、周方向ポーチ226及び246が2つのスリット開口部228、240を有する。ポーチのスリット開口部228は各織縁部236上に存在し、ポーチ開口部240は織縁部238上に存在する。
図8Bは、グラフト244の周囲で連続していない短縮された周方向ポーチ246を含む一体織り管状グラフト244の2次元図面である。織りグラフト244は、対向する開放端250、254と長手方向管状グラフト部分248とを含む。各ポーチ又はサックの適用は、各ポーチの位置及びサイズを決定する。
図8A及び
図8Bに示すように、管状グラフト部分234及び244は、
図2のような織りパターン101に従って織られ、ポーチ226及び246は、
図3のような織りパターン102に従って織られる。
【0062】
図9A~
図9B及び
図10A~
図10Dは、グラフト長全体を通じて複数の周方向ポーチ、長手方向ポーチ及び対角ポーチを含む一体織り管状グラフトの織りパターン及び図面である。
図9Aは、スリット開口部を含まない連続した周方向ポーチの織りパターン103である。
図9Bは、スリット開口部が織り込まれていない周方向ポーチ262を含む一体織り管状グラフト260の2次元図面である。織りグラフト260は、対向する開放端266、268と長手方向管状グラフト部分264とを含む。
図9Bに示すように、管状グラフト部分264は、
図2のような織りパターン101に従って織られ、周方向ポーチ262は、
図9Aのような織りパターン103に従って織られる。
【0063】
図10Aは、修正された1×1管状グラフトの織りパターン104である。通常の1×1平織りパターンはグラフトをタックで閉じ、修正された織りパターンはグラフトをタックで閉じない。
図10Bは、対向する開放端272、274を有する一体織り管状グラフト270の2次元図面である。グラフト270は、それぞれが2つの開口部278、282を織り込まれたものとして示す2つの周方向ポーチ276を含む。ポーチ開口部278は、織りグラフト縁部280に配置することができ、ポーチ開口部282は、織りグラフト縁部284に配置することができる。しかしながら、ポーチ開口部278、282は、織りグラフト270の他の位置に好適に配置することもできる。さらに、ポーチ開口部の数は、2つよりも多くから開口部なしを含む2つ未満まで様々とすることができる。織りグラフト270は、グラフト270の長手方向長さの少なくとも一部に沿って1又は2以上の対角ポーチ286を含むことができる。
図10Bに示すように、対角ポーチ286は、その開放端が周方向ポーチ276の一部と一致するように織ることができる。一方で、対角ポーチ286は、グラフト270のあらゆる部分に沿って配置することができる。グラフト270の長手方向範囲に対する対角ポーチ286の角度は一定又は可変とすることができる。好適な角度は、約30度~約60度又は約45度を含め、約10度から約80度まで様々とすることができる。さらに、周方向ポーチ276は、グラフト270の長手方向範囲と実質的に垂直であるように示しているが、他の配向を好適に使用することもできる。例えば、周方向ポーチ276及び本明細書で説明する他のあらゆる周方向ポーチは、例えばグラフト270の長手方向範囲から約10度又は10度未満の鋭角などの、垂直からわずかに外れたものとすることもできる。
図10Bに示すように、管状グラフト部分288は、
図2のような織りパターン101に従って織ることができ、管状グラフト部分290は、
図10Aのような織りパターン104に従って織ることができる。周方向ポーチ276及び対角ポーチ286は、
図3のような織りパターン102に従って織ることができる。
【0064】
図10Cは、周方向ポーチ306及び長手方向スパインポーチ310を含む一体織り管状グラフト300の斜視図である。管状グラフト300は、対向する開放端302、304を有する。周方向ポーチ306は、開口部308を有することができ、長手方向スパインポーチ310は、開口部312を有することができる。開口部308、312の一方又は両方は、グラフト300の織縁部316に沿って配置することができる。スパインポーチ310及び周方向ポーチ306は、それぞれスリット開口部312、308を織縁部316上に含んで接続されないことが望ましい。グラフト300は、グラフト300の非ポーチ部分314も含む。
【0065】
図10Dは、対向する開放端322、324と、2つの周方向ポーチ326、332と、2つの長手方向ポーチ338、342とを有する一体織り管状グラフト320の2次元図面である。
図10Dに示すように、周方向ポーチ326は、グラフト320の織縁部330に沿ってポーチスリット開口部328を有し、周方向ポーチ332は、グラフト320の織縁部336に沿ってポーチスリット開口部334を有し、長手方向ポーチ338は、織縁部330に沿ってポーチスリット開口部340を有し、長手方向ポーチ342は、織縁部336に沿ってポーチスリット開口部344を有する。各ポーチ326、332、338、342は、織り込まれた1つの開口部328、332、340、344をそれぞれ有し、他のポーチには接続されない。管状非ポーチグラフト部分346は、
図2及び
図10Aのような織りパターン101及び104に従って織ることができる。周方向ポーチ326、332及び長手方向ポーチ338、342は、
図3のような織りパターン102に従って織ることができる。
【0066】
図11A~
図11C及び
図12A~
図12Dは、長手方向スパインポーチの織りパターン及び図面である。
図11Aには、長手方向ポーチ368の左側の織りパターン105を示す。
図11Bには、長手方向ポーチ370の右側の織りパターン106を示す。
図11Cは、対向する開放端352、354を有し、それぞれ織縁部360、366上に開口部358、364を有して長手方向スパインポーチ368、370に接続された周方向ポーチ356、362を含む一体織り管状グラフト350の2次元図面である。
図11Cに示すように、非ポーチ管状グラフト部分372は、
図2のような織りパターン101及び
図10Aのような織りパターン104に従って織られ、周方向ポーチ356、362は、
図3のような織りパターン102に従って織られる。
【0067】
図12A~
図12Dは、スリット開口部を有する長手方向スパインポーチを含む一体織り管状グラフトの織りパターン及び図面である。
図12Aには、スリット開口部402を有する長手方向ポーチ398の左側の織りパターン107を示す。
図12Bには、開口部404を有する長手方向ポーチ400の右側の織りパターン108を示す。
図12Cは、対向する開放端382、384を有し、開口部388、394をそれぞれ有する2つの周方向ポーチ386、392を含む、一体織り管状グラフト380の2次元図面である。グラフト380は、それぞれ開口部402、404を有する2つの長手方向スパインポーチ398、400をさらに含む。長手方向ポーチ398、400は、織縁部に対してグラフトの両側部又は両縁部390、396に織られ、すなわち織縁部に巻き付かない。
【0068】
図12Dは、
図12Dのグラフト420の頂部の近位に位置する周方向ポーチ386に接続された長手方向スパインポーチ398と、
図12Dのグラフト420の底部の近位に位置する周方向ポーチ392に接続された長手方向スパインポーチ400とを含む一体織り管状グラフト420の2次元図面である。各長手方向スパインポーチ398、400は、織縁部390、396に対してグラフト420の両側部又は両縁部390、396に織られる。各長手方向ポーチ398、400は、一体織り長手方向管状グラフト420の織縁部390、396において、それぞれ開口部388、394を有する1つの周方向ポーチ386、392にそれぞれ接続される。
図12C及び
図12Dに示すように、管状グラフト部分は、
図2のような織りパターン101及び
図10Aのような織りパターン104に従って織られ、周方向ポーチは、
図3のような織りパターン102に従って織られ、長手方向スパインポーチは、織りパターン107及び108に従って織られる。
【0069】
図13A~
図13Dは、本開示の1又は2以上のポーチを含む一体織りテキスタイルの非限定的な例示的図面である。
図13Aでは、一体織りグラフト440が、対向する開放端442、444と、非ポーチグラフト部分452と共に配置された細長い又は拡大された周方向ポーチ446とを有する。周方向ポーチ446は、グラフト440の対応する織縁部460、458に、2つの一体的に織られたポーチスリット開口部448、450を有することができる。
【0070】
図13Bに示すように、一体的に織られたポーチ開口部454、456は、織縁部458、460から離れて配置することができる。
図13Cに示すように、一体織りグラフト480は、開放端482付近の第1の部分486における第1の直径と、開放端484付近の第2のグラフト部分488における、第1の直径とは異なる第2の直径と、これらの間に一体的に織られた張り出し部分490とを有することができる。部分486、488、490は、いずれも1又は2以上の開口部494を有する1又は2以上の周方向ポーチ492を含むことができる。
図13Dに示すように、一体織り二分岐グラフト500は、開放端504を有する本体502と、それぞれが開放端510、512を有する2つの対向する脚部506、508とを主に含む。グラフト部分502、506、509は、いずれも1又は2以上のポーチ開口部516を有する1又は2以上の周方向ポーチ514を有することができる。
【0071】
本発明の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、少なくとも1つの長手方向テキスタイル部分及び少なくとも1つのポーチを含む第1及び第2の端部間の長さとを有する一体織りテキスタイルの作製方法であって、(a)糸の組を用いて長手方向テキスタイル部分を織るステップと、(b)上記糸の組の少なくとも一部から、スリット開口部を含む第1のポーチを長手方向テキスタイル部分と一体に織るステップと、(c)任意にステップ(a)及び/又は(b)を1~3回繰り返して、長手方向テキスタイル部分及び第1のポーチと一体に1又は2以上のさらなるセグメントを織るステップと、(d)ポーチのスリット開口部を通じて要素を通すステップと、を含む方法に関する。この実施形態では、要素が放射線不透過性マーカである。別の実施形態では、要素がニチノールワイヤである。
【0072】
別の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、ベーステキスタイル層及び少なくとも1つのフラップ又はポーチを含む第1及び第2の端部間の長さとを有する一体織りグラフトの作製方法であって、糸の組を用いてベーステキスタイル層を織るステップと、上記糸の組の少なくとも一部からベーステキスタイル層と一体にポーチを織るステップとを含む方法である。糸は、少なくとも横糸の組及び少なくとも縦糸の組で構成される。
【0073】
さらなる実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、内壁及び外壁、並びにこれらを貫通する管腔を有する長手方向管状グラフト部分を定める第1及び第2の端部間の長さとを含む一体織りグラフトであり、上記長手方向管状グラフト部分は織糸の組を含み、管腔の外部の少なくとも1つの一体的に形成されたポーチが、上記織糸の組の少なくとも一部を含む。長手方向管状グラフト部分及びポーチは共通の壁を有することができ、任意にこれによってグラフト第1の端部から第2の端部までの連続管を形成する。
【0074】
第3の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、これらの間の長さとを有する一体編みテキスタイルに関する。この一体編みテキスタイルは、糸の組から編まれた長手方向テキスタイル部分と、同じ糸の組の少なくとも一部から長手方向テキスタイル部分と一体に編まれた少なくとも1つのタブ又はポーチとを含む。従って、テキスタイルは複数のセグメントで構成される。テキスタイルは、1つの長手方向テキスタイル部分を含むことも、或いは他の実施形態では、間に編まれた1又は2以上の一体編みポーチによって接合できるテキスタイル部分の複数のセグメントを含むこともできる。1つの実施形態では、テキスタイル又はテープを単層材料又は二層材料の構成で編むことができる。テキスタイルは、厚い又は薄い高密度又は低密度のテキスタイルのために編み合わされた2又は3以上の層によって構成することができる。別の実施形態では、一体型ポーチを含むテキスタイルを編む工程が、織物層のための1つの案内棒、又は織物層のための2つの案内棒、又は織物層のための3つの案内棒、又は織物層のための4つの案内棒、或いは織物層又はポーチを編むための同じ数の案内棒(as many guide bars)を利用する。一体型ポーチを含むテキスタイルの製編工程で使用できる案内棒の最大数は、機械パラメータ又は機械のタイプによって制限される。
【0075】
以下の表Aに、後述する図の製編構造の簡単な、ただし非限定的な要約をまとめる。
【表A】
*任意に開口部ポーチの閉鎖又は中心スリットの形成のためにさらなる案内棒を使用することもできる。
【0076】
図14A~
図14Eに、テキスタイル全体を通じて一体的に編まれたポーチを含む編みテキスタイルの編みパターン及び図面を示す。
図14Aは、一体編み管状ポーチを含む編みテープ又は平坦シートの1つの反復部分601のラッピングの編みパターン及び糸通し図である。編みパターン601は、ループ及び縫い合わせパターン602と、案内棒の糸通し
図604とを含む。
図14Aに示す1つの実施形態では、4つの案内棒(織物層当たり2つの案内棒)に完全に及び部分的に糸が通され、部分的に糸通しされた2つの案内棒がポーチの構成に利用され、完全に糸通しされた案内棒がテープの構成に利用される。この実施形態では、この管からテープへの製編工程中に利用される4つの案内棒が、以下の縫製表記の案内棒4(GB4)610、案内棒5(GB5)612、案内棒12(GB12)614、案内棒13(GB13)616である。
案内棒4
1-2/1-1/1-0/1-1//*6
案内棒5
1-0/1-1/1-2/1-1//*6
案内棒12
1-0/1-2//*4+
1-1/1-0/1-1/1-2//*4
案内棒13
1-0/1-2//*4+
1-0/1-2/1-1/1-0//*4
【0077】
図14B及び
図14Cは、それぞれ一体編みポーチを含む編みテキスタイルテープ又はシートの側断面図及び斜め断面図である。
図14Bは、
図14Aの2次元図面である。
図14Bには、それぞれが対向する端部層(end layer)622、624を有して3つの管状ポーチ630、632、634を含む一体編み二層フラットテープ620を示す。管状ポーチ630、632及び634は、二層フラットテープ620の2つの対向する側面622、624間に一体的に編まれ、一体的に編まれた縦糸640、642、644及び646の一部によって分離される。
図14Cは、テープの両面622、624間に編まれた3つの一体型ポーチ630、632及び634を含む編まれた二層テープ620の3次元斜め断面図である。編みパターン601の中央部に示す、3つの管状ポーチ630、632、634を含むテープ620を構成する又は編む編機は完全に糸通しされる。
【0078】
図14Dは、一体編みポーチを含む編みテープの2次元正面図である。編みテープ650は、それぞれが2つの側面652、654、656及び658と2つのスリット開口部660及び666、662及び668、及び664及び672とを有する3つの一体編みポーチ630、632及び634と、2つの非ポーチ部分672、674とを有する。各ポーチを編むには、全ての案内棒を共に配置してポーチ側面652、654、656、658を編み、案内棒の両側を分離させてパターン601で示す管状ポーチ630、632及び634を編む。
【0079】
図14Eは、単層テープ部分682、684及び二層テープ部分686を有する編みテキスタイル680を示す底面図又は上面図である。二層テープ部分(double layer tape portion or section)は、一体編みポーチを含む。テープの二層は、層を区別するために縮尺通りに描いていない。
図14A及び
図14Eに示すように、案内棒は、縫製表記及びパターン601に従って、(ポーチを含んでいない)単層フラットテープ682、684部分を編むために完全に糸通しされ、ポーチ686を有する二層テープを編むために部分的に糸通しされる。
【0080】
別の実施形態では、
図14A~
図14Eと比べて少ない糸を用いて一体型ポーチを含むテープを編むことができる。この実施形態では、織物層当たり1つの案内棒を用いて一体編み管状ポーチを含む編みテープを構成する。
図15A~
図15Eは、テキスタイル全体を通じて一体編みポーチを含む編みテキスタイルの編みパターン及び図面である。
図15Aに示すように、1つの反復部分701のラッピング及び糸通し図、及び単層編みテープの案内棒702の糸通し図は、2つの一体編み管状ポーチを含む。
図15Aに示す1つの実施形態では、テープの構成では1つの案内棒710に完全に糸が通され、2つのポーチの構成では部分的に糸が通された案内棒712が利用される。この実施形態では、この管からテープへの製編工程中に利用される2つの案内棒が、以下の編み表記の案内棒2(GB2)710及び案内棒5(GB5)712である。
案内棒2
1-2-1-1/1-0-1-1//*N+
0-1-0-0/0-0-0-1//*N
案内棒5
1-1-1-0/1-1-1-2//*N+
1-1-1-0/1-0-1-1//*N
*N=ポーチの長さに対する編みテープの長さの比率に応じて使用される反復階数の指示。
【0081】
図15B及び
図15Cは、それぞれ2つの一体編みポーチを含む二層編みテキスタイルテープの側断面図及び斜め断面図である。
図15Bは、管状ポーチ730を含む対向する層722、724を有する二層編みフラットテープ720の2次元図面である。管状ポーチ730は、二層フラットテープ側面722、724と端部742、744との間で一体的に編まれる。
図15Cは、編みテープの二層722、724と一体に編まれた、2つの一体型ポーチ730を含むテープの3次元斜め断面図である。
【0082】
図15Dは、一体編みポーチを含む編みテープの2次元正面図である。編みテープ750は、2つの一体編みポーチ730及び732を含み、各ポーチは、それぞれ2つの側面752、754及び756、758と、それぞれ2つの開放スリット760、766及び762、764とを有する。
図14Eは、テープの2つの層内に一体的に編まれた編みポーチ788及び790を有する編みテキスタイル又はテープ780と、単層テープ部分782、784及び786とを示す底面図又は上面図である。ポーチ788、790は、2つの編み層間に空隙領域又は開放領域を形成するように2つの案内棒を分離し又は距離を空けることによって構成される。
図15Eに示すように、単層フラットテープ部分782、784及び786を構成する案内棒には部分的に糸が通され、ポーチ788、790を構成する案内棒には完全に糸が通されて互いに離れて配置される。ポーチ部分及びテープ部分の領域、寸法及びスケールは、層を区別するために縮尺通りではない。
図15Eに示すように、非ポーチ単層フラットテープ部分782、784及び786、並びにポーチ788、790は、
図15Aに示すような縫製表記701に従って編まれる。
【0083】
さらに、別の実施形態では、一体編み管状ポーチを含む編みテープを構成するために使用される全ての案内棒に完全に糸又は生地が通される。
図16Aに示すように、ラッピング
図801及び案内棒糸通し
図802は、一体編み管状ポーチを含む編みテープに利用される。
図16Aに示すように、二層フラットテープ及び管状ポーチを編む2つの案内棒には完全に糸が通される。この実施形態では、この管からテープへの製編工程中に利用される2つの案内棒が、以下の編み表記の案内棒2(GB2)810及び案内棒5(GB5)812である。
案内棒2
1-2-1-1/1-0-1-1//*N+
0-1-0-0/0-0-0-1//*N
案内棒5
1-1-1-0/1-1-1-2//*N+
1-1-1-0/1-0-1-1//*N
*N=ポーチの長さに対する編みテープの長さの比率に応じて使用される反復階数の指示。
【0084】
図16B及び
図16Cは、それぞれ一体編みポーチ又はタブを含む編みテキスタイルテープの側断面図及び斜め断面図である。
図16Bは、対向する端部層822、824を有してポーチ830とタブ又は延長テキスタイル部分832とを含む一体編み二重フラットテープ820の2次元図面である。ポーチ830及びフラップ又はタブ832は、対向するフラットテープ側面824又は820から一体的に編まれる。ポーチ830は、4つの側面822、824、842及び844(又は側面842及び844を表す一体的に編まれた縦糸の一部)が完全に閉じられてフラットテープと一体に接続される。一方で、タブ又は延長テキスタイル部分832は、タブの3つの側面822、824及び844(又は側面844を表す一体的に編まれた縦糸の一部)が開かれ又はフラットテープに接続されて、1つの面846は開かれ又はフラットテープと一体に接続されていない。
図16Cは、フラットテープ層824から延びる一体型ポーチ又はタブ830、832を含む二層編みテープの3次元斜め断面図である。パネル又はテープ824を構成する又は編む編機の側面には完全に糸が通され、ポーチ830及びタブ832を構成する又は編む機械には完全に糸又は他の繊維が通される。
【0085】
図16Dは、一体編みポーチを含む二層編みテープの2次元正面図である。編みテープ850は、2つの一体編みポーチ830、832を含む。一体編みポーチ830は、2つの閉じた又は取り付けられた側面852及び854を有する。
図16Aのパターン801を反復した場合、ポーチ832も2つの閉じた又は取り付けられた側面を有するようになる。この実施形態では、ポーチが編んで閉じられず、部分的に糸通しされたさらなる案内棒が追加された場合、これらのポーチは4つの側面全てが閉じられて、開いたスリットを有さないようになる。
図16Eは、一体編みポーチ(
図16Eでは、全体を通じたテープの二層構造によってポーチが見えない)を有する編みテキスタイル880を示す上面図又は底面図である。
図16Eに示すように、一体型ポーチ880を含む二層編みテープは、全ての案内棒に完全に糸が通された状態で
図16Aのような編みパターン801に従って編まれる。
【0086】
ある実施形態では、第1の端部と、第2の端部と、少なくとも1つの長手方向テキスタイル部分及び少なくとも1つのポーチ又はタブ又はサックを含む第1及び第2の端部間の長さとを有する一体編みテキスタイルの作製方法が、(a)糸の組を用いて長手方向テキスタイル部分を編むステップと、(b)糸の組の少なくとも一部から、スリット開口部を含む第1のポーチ又はタブ又はサックを長手方向テキスタイル部分と一体に編むステップと、(c)任意にステップ(a)及び/又は(b)を1~3回繰り返して、長手方向テキスタイル部分及び第1のポーチ又はタブ又はサックと一体に1又は2以上のさらなるセグメントを編むステップと、(d)ポーチ又はタブ又はサックのスリット開口部を通じて要素を通すステップとを含む。この実施形態では、要素が放射線不透過性マーカである。別の実施形態では、要素がニチノールワイヤである。
【0087】
当業者であれば、開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書で説明した実施形態に多くの変更及び修正を行うことができると理解するであろう。ベーステキスタイル及び1又は複数のポーチは、従来のループ構造、又は1たす1のラッピング運動、2たす1のラッピングなどのラッピング運動、支柱、或いはトリコット、ロックニット(locknit)、サテン、アトラスなどの当業者に周知のラッピング運動の組み合わせを用いて形成することができるが、隣接する針棒に移されてポーチを閉じ、又は別個の針棒上で編まれたままになってポーチを開いた状態に保つ。長手方向ポーチ又は対角ポーチは、完全に又は部分的に糸が通された案内棒の使用によって形成される。完全に又は部分的に糸が通された案内棒を用いたアトラス編み(atlas stitch)は、接合糸(joining yarn)が通されていない領域に、従ってポーチを形成する領域に対角ポーチを形成することができる。本発明の範囲には全てのこのような変形例が含まれるように意図される。例えば、Raz S.(1987)Warp Knitting Production.Charlottesville,VA:Melliand Textilberichte.には、従来のテキスタイル構成の編み工程、機械方法及び案内棒構成が教示されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。これらの方法及び工程は、参考文献に示されるように使用することも、又は本明細書に開示する特定の実施形態に合わせて修正することもできる。
【0088】
第6の実施形態は、第1の端部と、第2の端部と、ベーステキスタイル層及び少なくとも1つのポーチ、タブ又は延長テキスタイル部分を含む第1及び第2の端部間の長さとを有する一体織り又は一体編みフラットテキスタイルの作製方法であって、糸の組を用いてベーステキスタイル層を織る又は編むステップと、上記糸の組の少なくとも一部からベーステキスタイル層と一体にポーチ又はタブを織る又は編むステップと、その後に1又は2以上の一体的に接続された側面を切り離すステップとを含む。糸は、少なくとも横糸の組と少なくとも縦糸の組とで構成される。
【0089】
図17Aに、ポーチ開口部528を含むポーチ526を有するテキスタイルシート520を示す。テキスタイルシート520は、単一編み又は単一織りテキスタイルとすることができる。
図17Aの軸17B-17Bにおけるテキスタイルシートの断面図である
図17Bに示すように、テキスタイルシート520は、頂部522及び底部524を有する単層テキスタイルシートとすることができる。別の実施形態では、このテキスタイルシートを、織り合わされて単層を形成する複数の層(図示せず)で構成することができる。
図17Aの軸17C-17Cにおけるテキスタイルシートの断面図である
図17Cに示すように、ポーチ526は、間にポーチ空洞534を有する上部530及び下部532を含む。テキスタイルシートは、例えば一体的に織られて又は一体的に編まれて一体形成されたポーチを含む織りシート又は編みシートとすることができる。
【0090】
別の実施形態では、
図18A及び
図18Bに、一体織り又は一体編みタブ、フラブ又は延長テキスタイル部分を含む織りフラットテープ又は編みフラットテープを示す。
図18Aは、2つの織り又は編み平坦部912及び914と1つの一体織り又は一体編みタブ920とを含む織り又は編みフラットテキスタイル910の2次元図面である。
図18Aに示す1つの実施形態では、織り又は編みタブ920の一方の側面940が一体的に接続される。タブ920は、最初に2つの開放端又はスリット922及び924を含むポーチ916を織り又は編み、次にポーチの一方の側面を切り離す(すなわち、切断する)ことによって形成される。1つの実施形態では、ポーチ916を切断線930において切り離すことができる。
図18Bは、2つの側面964、966が接続されて2つの側面962、970が開かれたタブ960を含む2次元図面である。切断部は、ポーチの長手方向軸、円周方向軸又は対角軸と実質的に平行又は垂直に位置することができる。また、切断部は直線に限定されるものでもない。
【0091】
ポーチを形成するには、長手方向管状グラフト部分を織るために使用されるパターンから織りパターンを変更しなければならない。ある実施形態では、ポーチの長手方向管状グラフト部分及び内側管状壁を織るためにシャトル1を使用し、第1のポーチの外側部(又は外側管状壁)を作製するためにシャトル2を使用し、第2のポーチの外側部(又は外側管状壁)を作製するためにシャトル3を使用する。ある実施形態では、
図2の平織りパターンに従って長手方向管状グラフト部分を織り、平織りパターンに以下の変更を行って、グラフトの周囲に円周方向に又は対角的に配置されたポーチの織りパターンを形成する。
・8本の縦糸及び8本の横糸をカバーするようにパターン反復を変更する。4本の縦糸及び4本の横糸はシャトル1に対応し、残りの4本の縦糸及び4本の横糸はシャトル2及び3に対応する。ポーチへのアクセスを可能にするスリット開口部を形成するには、シャトル2の反復を、間にシャトル1のパターンを挟む(シャトル1の4本の横糸の反復の両側に2本の横糸を位置付ける)ことによって半分に分割しなければならない。反復織りの順序は以下の通りである。
i.横糸1~2:シャトル2(頂部/頂部)、
ii.横糸3~6 :シャトル1(頂部/底部/頂部/底部)、
iii.横糸7~8 :シャトル2又はシャトル3(底部/底部)。
シャトル1が織っている時には常にシャトル2及び3の縦糸を避けなければならず、逆もまた同様である。縦糸を上げるか、それとも下げるかは、これらが内側管状壁又は外側管状壁のどちらを形成するために使用されているかに依存する。
シャトル1及びシャトル3は、製織装置(例えば、織機)の(右側などの)一方の側から開始する。シャトル2は、製織装置の他方の側(ここでは左側)から開始する。
シャトル3はシャトル2と同様に、ただしポーチの反対側にスリット開口部を織るためにグラフトの2つのポーチの他方を織る際に使用される(すなわち、180度オフセットされる)。
【0092】
ポーチの各管状壁にどの縦糸を織り込むべきかを選択すると、放射線不透過性ワイヤなどの要素を通し又は収容できるようにする開放内側管状空間がポーチに備わることが保証される。織りパターンを8本の縦糸/8本の横糸の反復に変更すると、特定の縦糸及び横糸がポーチの各管状壁に対応できるようになる。ポーチの内側管状壁を織るために4本の縦糸及び横糸が使用され、ポーチの外側管状壁(外側部)を織るために4本の縦糸及び横糸が使用されるようになる。8本の縦糸及び8本の横糸をカバーするように織りパターンを変更しない場合には、縦糸が管状壁に織り込まれて、織り合わされた管状壁を有する密集した布地が形成されるようになる。すなわち、要素を通すことができる開口部が存在しなくなる。
【0093】
各シャトルが織り始める側面を選択すると、外側管状壁にスリット開口部が織り込まれる側面が決まる。シャトル1及びシャトル2は、横糸が閉じ込められないように反対側から開始しなければならない。シャフト3は、スリット開口部がグラフトの両側に存在する(すなわち、180度オフセットされる)ようにシャトル2の反対側から開始しなければならない。
【0094】
ポーチを織る順序は重要である。例えば、シャトル1を用いて内側管状壁を織るまではシャトル2及び3を用いて第1及び第2のポーチの外側管状壁を(完成まで)織ることができず、或いはこれらの内側部分を織るためにグラフトの内側にアクセスすることはできない。
【0095】
さらに、管状壁を織るために縦糸が使用されていない時に縦糸が邪魔にならないように織りパターンを変更しなければ、ポーチ又はグラフト全体が閉じて織られ、ポーチ設計における開口部が排除されてしまう。具体的に言えば、頂部内側管状壁(
図6)の縦糸が織られていて頂部外側管状壁(
図6)の縦糸が織られていない場合には、これらの縦糸を偶発的に管に織り込まれないように持ち上げておく必要がある。織り込まれれば、管は閉じて織られてしまう。
【0096】
図19~
図22は、ポーチの4つの管状壁の各々が織られている時に縦糸がどのように見えるかについての断面図である。これらの図の各々について、
数字1は、ポーチの頂部外側管状壁(
図6)を織るために使用される縦糸を示し、
数字2は、ポーチの頂部内側管状壁(
図6)を織るために使用される縦糸を示し、
数字3は、ポーチの底部内側管状壁(
図6)を織るために使用される縦糸を示し、
数字4は、ポーチの底部外側管状壁(
図6)を織るために使用される縦糸を示す。
【0097】
図19は、底部外側管状壁が織られている時の縦糸の間隔の断面図である。図示のように、底部外側管状壁を織るために使用される縦糸(4)は、邪魔にならないように持ち上げられた他の縦糸(1~3)から分離される。
図20は、底部内側管状壁が織られている時の縦糸の間隔の図である。図示のように、縦糸3の織りに干渉しないように縦糸1及び2は持ち上げられて縦糸4は下げられる。
図21は、頂部外側管状壁が織られている時の縦糸の間隔の図である。図示のように、縦糸2~4は縦糸1の織りに干渉しないように下げられる。
図22は、頂部内側管状壁が織られている時の縦糸の間隔の図である。図示のように、縦糸2の織りに干渉しないように縦糸3及び4は下げられて縦糸1は持ち上げられる。
【0098】
実質的に
図2及び
図3に示す織りパターンを用いて、グラフトの周囲に円周方向に位置するポーチの外側管状壁の1つの側面にスリット開口部を含まないポーチを織ると、ポーチの内部へのアクセスが制限されることが分かっている。従って、これらの織りパターンを用いて長手方向管状グラフト部分及び少なくとも1つのポーチと一体に織られたグラフトは、各ポーチにスリット開口部も含む。グラフトの外側管状壁にスリット開口部が存在しなければポーチへのアクセスができず、横糸がポーチの逆側を閉じる。
【0099】
ポーチの布密度(すなわち、1インチ当たりの横糸)は、長手方向管状グラフト部分の布密度と同じとすることも、又は異なることもできる。ある実施形態では、グラフトの長手方向管状グラフト部分と同様又は同等のポーチの布密度を維持するようにポーチを織ると、1インチ当たりの横糸が2倍になる。
【0100】
ある実施形態では、ポーチの長手方向管状グラフト部分及び内側管状壁の連続する織り合わさった糸の組を介してグラフトの第1の端部からグラフトの第2の端部までの連続管が織られる。この実施形態では、グラフトの連続管全体を通じて縦糸の組と横糸の組とがいずれも同じである。
【0101】
本開示の一体織りグラフトは、任意に本明細書で説明したような織りパターン又は編みパターンを用いて当業で周知のあらゆるグラフトを作製できるのと全く同様に様々なサイズ、密度、形状などで作製することができる。
【0102】
当業者であれば、開示の趣旨から逸脱することなく本明細書で説明した実施形態に多くの変更及び修正を行うことができると理解するであろう。本発明の範囲には全てのこのような変形例が含まれるように意図される。
【0103】
(実施形態1)
第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さと、を有する一体織り又は一体編み管状グラフトであって、
糸の組から織られた又は編まれた少なくとも1つの長手方向管状グラフト部分と、
前記糸の組の少なくとも一部から長手方向管状グラフト部分と一体的に織られた又は編まれた少なくとも1つのポーチと、
を含み、
一体的に織られる場合、前記糸の組は、少なくとも1組の縦糸と少なくとも1組の横糸とを含み、
一体的に編まれる場合、前記糸の組は、少なくとも1組のウェール糸と少なくとも1組のコース糸とを含み、
前記少なくとも1つのポーチは、前記長手方向管状グラフト部分に一体的に接続された側面によって区切られ、且つ、前記管状グラフトの前記第1の端部付近に配置された、外壁、内側管状壁及び開放内側空間を有する第1のポーチであり、
前記第1のポーチは、前記管状グラフトの長手方向軸と実質的に平行に配置されたスリット開口部を有し、
前記スリット開口部は、前記第1のポーチの前記外壁に織られて又は編まれて、前記第1のポーチを横切って延びる、
ことを特徴とする管状グラフト。
(実施形態2)
前記管状グラフトの前記第2の端部付近に、外壁と、内壁と、開放内側管状空間とを有する第2のポーチを含む、
実施形態1に記載の管状グラフト。
(実施形態3)
各ポーチは、前記管状グラフトの長手方向軸と実質的に平行に配置されたスリット開口部を有する、
実施形態2に記載の管状グラフト。
(実施形態4)
前記第1のポーチの前記スリット開口部及び前記第2のポーチの前記スリット開口部は、前記ポーチの前記外側管状壁に織られて前記ポーチを横切って延びる、
実施形態3に記載の管状グラフト。
(実施形態5)
前記第1のポーチの前記スリット開口部は、前記第2のポーチの前記スリット開口部から180度オフセットされる、
実施形態3又は4に記載の管状グラフト。
(実施形態6)
前記ポーチを通じた前記グラフトの断面は、4つの織材料層を含む、
実施形態1に記載の管状グラフト。
(実施形態7)
前記管状グラフトは、前記ポーチと前記長手方向管状グラフト部分との間に縫い目を含まない、
実施形態1から6のいずれかに記載の管状グラフト。
(実施形態8)
前記ポーチ内に要素が配置される、
実施形態1から7のいずれかに記載の管状グラフト。
(実施形態9)
前記要素は金属ワイヤである、
実施形態8に記載の管状グラフト。
(実施形態10)
前記少なくとも1つのポーチは、前記グラフトの周りに周方向に配置される、
実施形態1に記載の管状グラフト。
(実施形態11)
前記長手方向管状グラフト部分は、前記ポーチの内側管状壁と共に連続して連続管を形成し、該連続管は、前記グラフトの前記第1の端部から前記グラフトの前記第2の端部に延びる、
実施形態1記載の管状グラフト。
(実施形態12)
前記糸は、再吸収性又は非吸収性であり、天然材料、合成材料、金属及びこれらのいずれかの組み合わせから成る群から選択される、
実施形態1から11のいずれかに記載の管状グラフト。
(実施形態13)
前記少なくとも1つの管状グラフト部分及び前記少なくとも1つのポーチは、同じ縦糸の組から織られる、
実施形態1から12のいずれかに記載の管状グラフト。
(実施形態14)
前記少なくとも1つの管状グラフト部分は、第1の縦糸の組から織られ、前記少なくとも1つのポーチは、前記第1の縦糸の組の一部と少なくとも1つのさらなる縦糸の組とから織られる、
実施形態1から13のいずれかに記載の管状グラフト。
(実施形態15)
前記少なくとも1つの管状グラフト部分は、第1の横糸の組から織られ、前記少なくとも1つのポーチは、前記第1の横糸の組の少なくとも一部と少なくとも1つのさらなる横糸の組とから織られる、
実施形態14に記載の管状グラフト。
(実施形態16)
前記少なくとも1つの管状グラフト部分は、第1の横糸の組から織られ、前記第1のポーチは、前記第1の横糸の組の少なくとも一部と第2の横糸の組とから織られ、前記第2のポーチは、前記第1の横糸の組の少なくとも一部と、前記第2の横糸の組又は第3の横糸の組とから織られる、
実施形態14に記載の管状グラフト。
(実施形態17)
前記第1の横糸の組の材料は、前記第2及び第3の横糸の組の少なくとも一方の材料と異なる、
実施形態16に記載の管状グラフト。
(実施形態18)
第1の端部と、第2の端部と、少なくとも1つの長手方向管状グラフト部分及び少なくとも1つのポーチを含む、前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さと、を有する一体織り又は一体編み管状グラフトの作製方法であって、
a.糸の組を用いて1つの長手方向管状グラフト部分を織る又は編むステップと、
b.前記糸の組の少なくとも一部から前記長手方向管状グラフト部分と一体的に1つのポーチを織る又は編むステップと、
を含み、
一体的に織られる場合、前記糸の組は、少なくとも1組の縦糸と少なくとも1組の横糸とを含み、
一体的に編まれる場合、前記糸の組は、少なくとも1組のウェール糸と少なくとも1組のコース糸とを含み、
前記少なくとも1つのポーチは、前記長手方向管状グラフト部分に一体的に接続された側面によって区切られ、且つ、前記管状グラフトの前記第1の端部付近に配置された、外壁、内側管状壁及び開放内側空間を有する第1のポーチであり、
前記第1のポーチは、前記管状グラフトの長手方向軸と実質的に平行に配置されたスリット開口部を有し、
前記スリット開口部は、前記第1のポーチの前記外壁に織られて又は編まれて、前記第1のポーチを横切って延びる、
ことを特徴とする方法。
(実施形態19)
前記長手方向管状グラフト部分は、縦糸の組を用いて織られ、前記ポーチは、同じ縦糸の組から織られる、
実施形態18に記載の方法。
(実施形態20)
前記長手方向管状グラフト部分は、縦糸の組を用いて織られ、前記ポーチは、同じ縦糸の組の一部とさらなる縦糸の組とを用いて織られる、
実施形態18に記載の方法。
(実施形態21)
前記長手方向管状グラフト部分は、横糸の組を用いて織られ、前記ポーチは、同じ横糸の組の少なくとも一部とさらなる横糸の組とを用いて織られる、
実施形態18に記載の方法。
(実施形態22)
前記長手方向管状グラフト部分は管状グラフトであり、前記ポーチは前記グラフトの周りに周方向に配置される、
実施形態18から21のいずれかに記載の方法。
(実施形態23)
前記ポーチを織った後に、前記糸の組を用いて第2の長手方向管状グラフト部分を織るステップをさらに含む、
実施形態18から22のいずれかに記載の方法。
【符号の説明】
【0104】
120 グラフト
122 端部
124 端部
126 長手方向管状グラフト部分
128 周方向ポーチ
130 スリット開口部