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特許7206316低温プラズマを用いたタトゥー除去システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】低温プラズマを用いたタトゥー除去システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/00 20060101AFI20230110BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A61B18/00
A61M27/00
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021071986
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2018511363の分割
【原出願日】2016-05-16
(65)【公開番号】P2021121320
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/162,180
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517398988
【氏名又は名称】クリア イントラダーマル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ダブリュー ウィンケルマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン イー シュミーク
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0027446(US,A1)
【文献】特表2014-505553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378892(US,A1)
【文献】特開2014-212839(JP,A)
【文献】特開2012-84396(JP,A)
【文献】特表2008-539007(JP,A)
【文献】特表2012-509689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タトゥー除去システムの動作を制御する方法であって、
前記タトゥー除去システムは、低温プラズマ生成コンポーネント、処置コンポーネント、および少なくとも1つの制御ユニットを備え、 前記方法は、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、前記低温プラズマ生成コンポーネントに送達される電力を、制御するステップと、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、治療コンポーネントによって被処置者の真皮に適用するための低温プラズマを、低温プラズマ生成コンポーネントによって生成することができるように、前記低温プラズマ生成コンポーネントに送達されるガス流量を、制御するステップと、
被処理者の真皮の中でタトゥーインク粒子を脱落または分解するために前記処置コンポーネントにより適用される前記低温プラズマの温度を、低温プラズマに曝露された被処理者の真皮の温度が上昇しないような、または通常の体温よりも約1℃から約5℃だけ上昇するような温度となるように前記少なくとも1つの制御ユニットを介して調節するステップとを、含む、方法。
【請求項2】
前記低温プラズマ生成コンポーネントは、ガスの混合物からプラズマを生成し、
前記少なくとも1つの制御ユニットによって、前記混合物中の各ガスの割合を制御し、前記低温プラズマが室温または室温に近い温度になるようにするステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タトゥー除去システムは、前記処置コンポーネントに接続されており、かつ、少なくとも1つの真空ポンプを有する抽出コンポーネントを更に備え、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、脱落または分解されたタトゥーインク粒子の除去のための前記真空ポンプを制御するステップを更に含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タトゥー除去システムは、前記処置コンポーネントに接続されており、かつ、少なくとも1つの流体貯蔵ユニットを有する流体送達コンポーネントを更に備え、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、前記流体貯蔵ユニットから前記処置コンポーネントへの流動化流体の流量を制御するステップを更に含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記流体送達コンポーネントは、複数の流体貯蔵ユニットおよび混合ユニットを備え、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、混合された流動化流体を前記処置コンポーネントに送達するために、少なくとも2つの流体貯蔵ユニットからの流体の混合を制御するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、コンピュータ化された流量メーターを備え、
前記少なくとも1つの制御ユニットが、前記低温プラズマの流量、流動化流体の流量、および吸引速度を制御するステップを更に含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
被処置者の皮膚からタトゥーを除去するシステムであって、
前記システムは、低温プラズマ生成コンポーネントおよび処置コンポーネントを備え、
前記低温プラズマ生成コンポーネントは、前記処置コンポーネントに低温プラズマを提供し、前記処置コンポーネントは、前記被処置者のタトゥーが入った真皮に、タトゥーインク粒子が脱落または分解されるのに有効量の前記低温プラズマを送達するように構成されており、
前記処置コンポーネントは、前記被処置者のタトゥーが入った真皮に前記低温プラズマを送達するために前記被処置者のタトゥーが入った皮膚を穿孔するための1本以上のニードルまたはプローブ状構造を含む、システム。
【請求項8】
前記システムは、前記処置コンポーネントに流動化流体を提供する流体送達コンポーネントを更に備え、
前記処置コンポーネントは、前記低温プラズマの適用前、適用中、又は適用後に、前記流動化流体を前記被処置者のタトゥーが入った真皮に送達するための前記1本以上のニードルまたはプローブ状構造を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記低温プラズマの適用前、適用中、又は適用後に、前記被処置者のタトゥーが入った真皮を吸引して、脱落または分解されたタトゥーインク粒子を前記真皮から除去するための前記処置コンポーネントに吸引力を提供する、抽出コンポーネントを更に備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記流動化流体は、滅菌水、生理食塩水、および緩衝水溶液の群から選択された少なくとも1つの流体を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記流動化流体は、1種以上の界面活性剤を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記低温プラズマ生成コンポーネントは、前記処置コンポーネント内に組み込まれている、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記低温プラズマ生成コンポーネント、流動化流体を前記処置コンポーネントに提供する流体送達コンポーネント、および吸引力を前記処置コンポーネントに提供する抽出コンポーネントは、1つのハウジングに組み込まれており、
前記低温プラズマ生成コンポーネント、前記流体送達コンポーネント、および前記抽出コンポーネントは、前記処置コンポーネントに連結および接続されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記低温プラズマ生成コンポーネント、前記流体送達コンポーネント、および前記抽出コンポーネントは、前記処置コンポーネント内に組み込まれている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記処置コンポーネントは、前記被処置者のタトゥーが入った皮膚を穿孔するように構成された1本以上のニードルまたはプローブ状構造を含むカートリッジユニットを備える、請求項7から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記カートリッジユニットは取り外し可能である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムは、前記タトゥーの除去処置の間に、前記1本以上のニードルまたはプローブ状構造を発振または脈動させる機械的要素を更に備える、請求項7から請求項16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記1本以上のニードルまたはプローブ状構造は、それぞれ、複数のシースニードルにより形成されている、請求項7から請求項17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記処置コンポーネントはペン型またはワンド型である、請求項7から請求項18のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年5月15日に出願された米国仮特許出願第62/162,180
号(発明の名称:「低温プラズマを用いたタトゥー除去システムおよび方法」)の利益を
主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、タトゥー除去の分野に関し、低温プラズマベースのシステムおよび
方法を用いた、タトゥー除去システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの人にとって、タトゥーは、アーティスティックな自己表現の主立った一形態であ
る。タトゥーを入れる他の理由としては、パーマネントメイクを得ることや、傷やシミを
カバーすること等も挙げられる。
【0004】
恒久的なタトゥーは、針または同様の道具を用いて皮膚を穿孔し、キャリア中に懸濁さ
れた顔料/染料の小粒子を含むインクを、被処置者の真皮中に機械的に提供することによ
り形成される。恒久的なタトゥーの形成には、顔料、染料、および/または、溶解性およ
び/または生分解性の発色団が必要である。インク粒子を機械的に挿入した後、治癒プロ
セスの間に、インク粒子の大部分である70~80%のインク粒子は、食作用性皮膚細胞
(線維芽細胞およびマクロファージ等)によって貧食されるか、真皮の細胞外マトリック
ス中に保持され、残りのインク粒子のうち、10~15%のインク粒子がコラーゲン繊維
上で平坦化され、5~10%のインク粒子が毛細血管の漿膜側に付着することが見出され
ている。時間の経過とともに、タトゥーのインクは真皮の奥深くに移行および沈下するた
め、タトゥーはぼんやりと鈍い印象となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
恒久的なタトゥーが幅広く受容され人気を集めているにも関わらず、タトゥー除去に対
する需要も多い。しかしながら、タトゥー除去には、最も一般的には、高出力レーザーの
使用を伴う複雑な工程を要する。現在の最先端技術によるタトゥーの除去作業では、イン
クの劣化を誘発することによってタトゥーを除去する、様々なレーザーが駆使されている
。レーザー条件を、インク粒子のサイズ、組成、色、および真皮中における深さに応じて
、該インク粒子に適合させる必要がある。レーザーがタトゥーに照射されると、インク粒
子の顔料、染料、および/または、発色団がレーザー光を吸収し、レーザーパルスがイン
ク粒子の顔料、染料、および/または、発色団成分を解離させて、小さなフラグメントに
分解する。フラグメント化されたインク成分は、本質的に無色であり、身体に吸収されて
真皮から除去されるのに十分なほど小さくなる。それにも関わらず、レーザーベースのタ
トゥーの除去には、いくつかの欠点がある。例えば、レーザーは皮膚を加熱するため、火
傷を引き起こす可能性があるとともに、治癒後に残り得る瘢痕や皮膚の変色の原因となる
望ましくない組織損傷を引き起こす可能性もある。このように、現在の、レーザーベース
のタトゥーの除去方法は、タトゥーインクの完全除去という観点からはやや効果が小さく
、高コストである複数の処置を要し、痛みを伴い、処置後の皮膚を瘢痕化および脱色素化
させたり、変形させたりし得る。
【0006】
そのため、非レーザーベースのアプローチによるタトゥーの除去システムおよび方法を
提供することは有益であろう。また、潜在的に有害の/毒性のある化学物質の身体への吸
収を減少させるために、顔料、染料、および、他の発色団等の分解されたインク成分を身
体から除去/抽出することを可能にする方法を提供することも有益であろう。
【0007】
従って、本発明は、真皮内にトラップされたインク粒子を低温プラズマに曝すことによ
って身体からタトゥーを除去するための、タトゥー除去システムおよび方法を提供するこ
とを目的とする。
【0008】
また、本発明は、毒性を有する可能性のあるプラズマ処置されたタトゥーインク粒子の
残渣、および、被処置者の皮膚細胞から得られた他の分解成分を抽出することを可能にす
る、タトゥー除去システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、1つ以上の処置において実施可能であり、従来のタトゥー除去方法よ
りも被処置者にとって事実上痛みの少ない、タトゥー除去方法を提供することを目的とす
る。
【0010】
さらに、本発明は、従来の最先端の除去方法(すなわち、レーザーベースの除去システ
ム)の限界に対処し、タトゥー除去の処置後に、皮膚に瘢痕が残ったり、肌色が脱色され
たり、タトゥーが影状に残ったりする等の問題を軽減できる、タトゥー除去方法を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
被処置者からタトゥーを除去するための、低温プラズマを用いたタトゥー除去方法およ
びシステムを完成させた。一実施形態において、タトゥーインクの除去方法は、低温プラ
ズマの適用をベースとしており、該低温プラズマの適用により、被処置者の真皮内にトラ
ップされたタトゥーインク粒子を脱落させて分解し、流動化されたインク粒子および/ま
たはその分解副生成物の、被処置者の真皮および周辺組織からの除去を容易にし、かつタ
トゥーを検出不能、不可視、および/または、識別不能にすることができる。
【0012】
好適な実施形態では、低温プラズマが、被処置者のタトゥーの入った皮膚を穿孔する、
1本以上のニードルまたはプローブ状構造によって該被処置者に送達される。低温プラズ
マは、限定されないが、タトゥーインク粒子それ自体、マクロファージ、線維芽細胞、細
胞膜、コラーゲン繊維、および、毛細血管等の真皮内に存在する成分、ならびに、タトゥ
ーインク粒子をトラップしている真皮の他の細胞および非細胞成分と相互作用し、組織成
分を効果的に破壊して、トラップされたタトゥーインク粒子を脱落させることができる。
低温プラズマは、有機および/または無機の、顔料、染料、および/または、発色団から
構成されてインク粒子に色を与え得る、ある種のインク粒子の分解を誘発し得る。好適な
実施形態では、低温プラズマが、プラズマに曝された真皮または他の周辺組織に、いかな
る損傷、または、重大な熱的損傷もしくは他の類の修復不可能な損傷を誘引することなく
、トラップされたインク粒子を脱落させて分解する。
【0013】
好適な実施形態では、低温プラズマが、1回または複数回のタトゥー除去処置の間に、
タトゥーインク粒子の全てまたは一部を効果的に脱落させて分解する。いくつかの実施形
態では、複数回の処置を適用することができるが、処置の回数は、タトゥーのサイズおよ
びタトゥーの複雑さ等の要因、並びに、個人の健康状態および/または個人の皮膚状態に
応じて決められる。いくつかの実施形態では、脱落したインク粒子およびその分解副生成
物が、皮膚の自然保護メカニズムによって取り戻される(この場合、シャドーイング効果
がもたらされる)前、または、リンパ管を介してそれらが輸送されてリンパ節に沈着する
前に、該被処置者の真皮および周囲組織からそれらを除去するよう流動化させることがで
きる。
【0014】
いくつかの実施形態では、流動化ステップが、脱落して分解されたインク粒子およびそ
の副生成物の除去を促進する、医薬的に許容される流動化流体の送達を含む。プラズマ処
置された真皮に送達された流動流体は、続く抽出ステップで、吸引等の手段により抽出さ
れる。真皮および周辺組織から脱落して分解されたインク粒子を含む流動流体を抽出する
ことにより、皮膚からタトゥーが除去される。
【0015】
好適な実施形態では、脱落して分解されたタトゥーインク粒子およびその副生成物の全
ておよび一部が、抽出ステップの間に、被処置者のタトゥーが入った真皮から抽出される
。タトゥーインク粒子を脱落させ、分解し、除去することにより、本明細書に記載される
方法に従って処置された皮膚のタトゥーは、肉眼では検出不能、不可視、および/または
、識別不能になる。他の実施形態では、低温プラズマによってタトゥーインク粒子の全て
または一部を分解することができ、分解副生成物が無色成分に変換されて、タトゥーは、
肉眼では検出不能、不可視、および/または、識別不能になる。このような実施形態にお
いて、低温プラズマを用いたタトゥーインク粒子の処置は、インク粒子を無色の原子、分
子、および/または、例えば二酸化炭素のようなガス成分、または、水にすることができ
る。いくつかの実施形態では、タトゥーが肉眼では検出不能、不可視、および/または、
識別不能である場合、無色成分を皮膚から除去または抽出する必要がない場合がある。他
の実施形態では、無色成分になった脱落して分解されたインク粒子および分解副生成物は
、真皮の間質液または身体の他の部分による自然作用によって吸収され得る。
【0016】
脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を被処置者の皮膚から抽出すること
は、インク粒子、コンポーネント、および、その分解副生成物が被処置者の身体に吸収さ
れると、該被処置体に潜在的に有害な影響を及ぼす可能性のある毒性を有する場合がある
ため有益である。
【0017】
一実施形態において、低温プラズマを用いたタトゥー除去システムは、(1)低温プラ
ズマ生成コンポーネント、(2)任意の流体送達コンポーネント、および、(3)流体抽
出コンポーネントから形成される。このシステムの低温プラズマ生成コンポーネントは、
低温プラズマを被処置者のタトゥーが入った真皮に送達するための、処置コンポーネント
に連結および接続している。このシステムの流体送達コンポーネントは、タトゥーが入っ
た真皮および周辺組織に流動化流体を順番に送達するのに用いられる処置コンポーネント
に、該流動化流体を送達する。流動化流体は、薬学的に許容される製剤から生成され、脱
落して分解されたタトゥーインク粒子およびその分解副生成物、並びに、低温プラズマに
曝されている間および曝された後に生成または形成される、組織分解副生成物の除去を促
進にする。
【0018】
このシステムの流体抽出コンポーネントは、処置コンポーネントに連結および接続し、
流動化流体を抽出するための吸引を提供し、および/または、真皮もしくは周辺組織にあ
る天然の体液中に存在し得る脱落して分解されたタトゥーインク粒子を除去/抽出するた
めの吸引を提供する。
【0019】
このシステムのいくつかの実施形態では、低温プラズマ生成コンポーネント、流体送達
コンポーネント、および、流体抽出コンポーネントは、統合された自立型の処置コンポー
ネントに組み込むことができる。いくつかの実施形態において、流体送達コンポーネント
は、統合された処置コンポーネントから除外されていてもよい。
【0020】
好適な実施形態では、タトゥーが入った真皮および周辺組織に対する、処置コンポーネ
ントを介した低温プラズマステップ、流動化流体ステップ、および/または、抽出(すな
わち、吸引)ステップの適用は、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者によって制
御されて、高精度の処置が施される。好適な実施形態では、タトゥーインク粒子のすべて
または一部が、脱落し、分解され、かつ被処置者のタトゥーが入った真皮から抽出されて
、タトゥーが肉眼では検出不可、不可視、および/または、識別不能になる。
【0021】
本出願人の教示およびその他の特徴は、本明細書に記載される。
【0022】
当業者は、以下に記載される図面が、説明の目的でのみ使用されることを理解されよう
。図面は、出願人の教示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】細胞内にトラップされたタトゥーインク粒子を低温プラズマを用いて脱落させるステップと、脱落して分解されたインク粒子を流動化するステップと、タトゥーを被処置者の真皮および周辺組織から除去するべくインク粒子を抽出するステップと、を含むタトゥー除去方法の非限定的な一例を示す図である。
図2】低温プラズマベースのタトゥー除去システムの非限定的な一例を示す図である。
図3】使い捨てカートリッジ式の、1本以上のニードルまたはプローブ状構造の処置端を含むペン型またはワンド型の、処置コンポーネントの非限定的な一例を示す図である。
図4図4Aは、内側リング、中間リング、および、外側リングを形成する、3つの同心の入子型/埋め込み型のニードルまたはプローブ状構造から形成された、マルチシースニードルまたはプローブ状構造を示す正面図であり、図4Bは、同側面図である。ニードルまたはプローブ状構造の外側部分が、任意の開口部を含んでいる。
図5図5Aは、内側リングおよび外側リングを形成する、2つの同心の入子型/埋め込み型のニードルまたはプローブ状構造から形成された、マルチシースニードルまたはプローブ状構造を示す正面図であり、図5Bは、同側面図である。ニードルまたはプローブ状構造の外側部分が、任意の開口部を含んでいる。
図6図6Aは、シングルシースニードルの正面図であり、図6Bは同側面図である。ニードルまたはプローブ状構造の外側部分が、任意の開口部を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
被処置者の真皮からタトゥーを恒久的に除去するための、低温プラズマを用いたタトゥ
ー除去方法およびシステムを開発した。
【0025】
I.定義
本明細書において、「低温プラズマ」とは、急激に変化する極性を有する強電場にガス
を曝して、電子と、正もしくは負に帯電した高エネルギーイオンと、オゾン、ヒドロキシ
ルラジカル、亜酸化窒素および他の励起原子もしくは分子等の化学的に活性な種と、を含
み得るプラズマの生成により生成される、非熱プラズマまたは大気プラズマをいう。特に
、低温または非熱プラズマは、標準大気圧またはそれに近い大気圧のもと生成され、室温
に近い温度を有するため組織を損傷させることなく適用される。低温プラズマを組織に接
触させても、組織の温度は全くまたは僅かにしか上昇せず、典型的には、数度またはそれ
未満しか上昇しない。
【0026】
本明細書において、「接続された」および「連結された」とは、システムのあるエレメ
ントまたはコンポーネント(すなわち、出力)が、他のエレメント(すなわち、入力)に
、例えばチューブ等の入手可能な任意の好適な手段によって、直接連結(すなわち、接続
)されていることをいう。
【0027】
本明細書において、「色」とは、可視スペクトルにおける物質の電磁吸収および/また
は放出によって決定される検出可能な特性として広く定義される。
【0028】
本明細書において、「無色」とは、通常の照明条件下、例えば、自然光または標準的な
人工照明の下で、肉眼では周囲(皮膚または他の組織)の通常の色とは別の色が本質的に
観察されない場合をいう。
【0029】
本明細書において、「脱落した」とは、タトゥーのインク粒子が、一般的に真皮内に見
出される、細胞、細胞膜および/または細胞組織等の局所皮膚細胞および組織構造から解
放されることをいう。
【0030】
本明細書において「分解された」とは、タトゥーインク粒子の有機成分および/または
無機成分が、エネルギー性の低温プラズマとの相互作用により、酸化、還元、断片化、電
子分解、イオン分解、または、これらに限定されない他の分解プロセスを介して破壊され
た状態をいう。分解は、一般的に、着色有機顔料、染料または発色団の破壊、および/ま
たは、着色無機インク粒子の粒子径の破壊をいい、当該破壊によりそれらは無色になる。
分解は、炭素のような元素の結晶もしくは無定形の塊が破壊されること、または、有機化
合物もしくは無機化合物における化学結合が破壊されることによって生じ得る。
【0031】
本明細書において、「顔料、染料、または、発色団」とは、タトゥーインクに着色して
色を与える有機物質および/または無機物質をいう。色は、水銀(赤)、鉛(黄、緑、白
)、カドミウム(赤、オレンジ、黄)、クロム(緑)、コバルト(青)、アルミニウム(
緑、紫)、チタン(白)、銅(青、緑)、鉄(茶、赤、黒)、バリウム(白)等の重金属
を含む物質、フェロシアン化物およびフェリシアン化物(黄、赤、緑、青)等の金属酸化
物を含む物質、アゾ含有化学物質(オレンジ、茶、黄、緑、紫)、ナフサ由来化学物質(
赤)等の有機化学物質/化合物のような物質、黒インクにはカーボン(すなわち、煤また
は灰)等の物質、並びに、アンチモン、ヒ素、ベリリウム、カルシウム、リチウム、セレ
ンおよび硫黄を含み得る他の色化合物、から得ることができる。タトゥーインクの顔料、
染料または発色団は、典型的には、キャリア媒体中に分散または懸濁されて、該キャリア
媒体と一緒に真皮に送達される。最も典型的なキャリア成分は、エチルアルコールおよび
水であるが、変性アルコール、メタノール、ラグビンアルコール、プロピレングリコール
、および/または、グリセリンとすることもできる。
【0032】
本明細書において、「不可視」とは、通常の照明条件下、例えば、自然光または標準的
な人工照明の下で、タトゥーのインクが、肉眼では周囲(皮膚または他の組織)の通常の
色とは別の色として本質的に(例えば、組織内に)観察されない状態にあることをいう。
【0033】
本明細書において、「識別不能および検出不能」は、互換的に使用され、通常の照明条
件下において肉眼では見えなくなった物質(すなわち、タトゥーインク)、および、その
他の照明条件下においても肉眼またはデバイスでは見えなくなった物質(すなわち、タト
ゥーインク)をいう。
【0034】
本明細書において、「タトゥー」は、タトゥーインク粒子が埋め込まれているかトラッ
プされている皮膚、典型的には、真皮の一部をいう。
【0035】
II.タトゥー除去方法
本明細書に記載されるタトゥー除去方法は、低温プラズマを適用して被処置者の真皮中
にトラップされたタトゥーインク粒子を脱落させて分解すること、および、流動化したイ
ンク粒子および/または被処置者の真皮から得られる分解生成物を抽出すること、をベー
スとしている。この方法は、
(i)被処置者のタトゥーが入った真皮に低温プラズマを適用することにより、タトゥー
インク粒子を脱落させて分解するステップと、
(ii)前記脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を流動させるステップと

(iii)前記脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を前記被処置者の真皮
から抽出するステップと、を有し、前記タトゥーを検出不能、不可視、および/または、
識別不能にする。
【0036】
この方法の非限定的な一実施形態では、図1に示すように、低温プラズマ10が、被処
置者のタトゥーが入った真皮12に送達され、インク粒子14をその場に保持している真
皮12の、細胞、細胞膜、および/または、他の組織構造16にトラップされた該インク
粒子14の脱落を誘引する。低温プラズマ10は、公知の任意の好適な手段によって送達
することができる。好適な実施形態では、低温プラズマ10は、被処置者のタトゥーが入
った皮膚を穿孔可能な1本以上のニードルまたはプローブ状構造20を介して真皮12に
送達される。当業者であれば、タトゥーが入った真皮にプラズマを送達するべく、当該1
本以上のニードルまたはプローブ状構造の穿孔深さを決定することができよう。
【0037】
低温プラズマが被処置者のタトゥーが入った真皮に送達されると、該低温プラズマが、
マクロファージ、線維芽細胞、他の細胞、コラーゲン繊維、タトゥーインク粒子をトラッ
プしている毛細血管、および、これらに限定されない真皮内に存在し得る成分と十分な量
で相互作用して、タトゥーインク粒子を保持している局所皮膚細胞および組織構造を効果
的に破壊し、トラップされたタトゥーインク粒子を真皮および周囲組織から脱落させて分
解すると信じられている。また、低温プラズマは、有機および/または無機顔料、染料、
および/または、発色団から構成されるインク粒子の分解を誘発し、インク粒子に色を与
えることもできる。このような分解は、高エネルギーのプラズマ成分と、インク粒子の有
機および/または無機成分との相互作用によるものであり、酸化、還元、断片化、電子分
解、イオン分解、または、他の分解方法等のプロセスを経てインク粒子が分解される。
【0038】
好適な実施形態では、低温プラズマが、被処置者の真皮または周辺組織に重大な熱的損
傷または他の種類の修復不可能な損傷を引き起こすことなく、トラップされたインク粒子
を脱落させて分解する。
【0039】
この方法のいくつかの実施形態において、タトゥーインク粒子を脱落させて分解するた
めに必要な、低温プラズマへの真皮の暴露時間は、1マイクロ秒と短いが、それより長時
間である方が好適であり、約1マイクロ秒から約1時間の範囲内が好適である。いくつか
の実施形態において、低温プラズマは、該低温プラズマに曝された箇所のインク粒子を6
0分以下、より好ましくは、10分以下で脱落させて分解することができる。いくつかの
実施形態において、低温プラズマは、1回のタトゥー除去処置内で、タトゥーインク粒子
のすべておよび一部を効果的に脱落および分解することができる。他の実施形態において
、本明細書に記載された方法に従う低温プラズマを用いた処置は、複数回適用することが
できる。処置の回数は、タトゥーの領域/サイズおよび複雑さ(例えば、タトゥーの色数
および/またはレイヤー数、並びに、タトゥーを入れてからの年数およびタトゥーインク
の真皮下部への経時的な沈下状態)等の要因、並びに、個人の健康状態および/または肌
の状態によって決まる。非限定的な実施形態において、皮膚上における面積が5平方イン
チ以下であるタトゥーであれば、わずか1回の処置で対処することができる。より大きな
表面積/サイズ、および/または、複雑さを有するタトゥーに対しては反復処置が適用さ
れるが、該反復処置は、前後の処置間に、最大1週間、最大2週間、最大3週間、最大1
ヵ月、最大2ヵ月、または、最大3ヵ月等の介在期間をおいて適用される。必要に応じて
、前後の処置間に、より長期間の介在期間を設けることもできる。本発明の好適な実施形
態では、真皮または他の周囲組織の温度は、低温プラズマの暴露によっては上昇しない。
ある他の実施形態において、低温プラズマに暴露された際の真皮または他の周辺組織の温
度は、全く上昇しないか、または、大きくは上昇せず、通常の体温からおよそ1℃~5℃
だけ上昇するが、この温度では、重大な熱的損傷または痛みを誘発する温度に達しない。
タトゥーを除去するための真皮への低温プラズマの適用は、被処置者のもとの皮膚を漂白
および/または脱色する虞や、もとの皮膚に色素沈着を引き起こす虞がない。
【0040】
図1を参照すると、流動化ステップでは、脱落したインク粒子14およびその分解副生
成物を流動化させ、脱落したインク粒子14およびその分解副生成物が皮膚の自然保護メ
カニズムによって取り戻される(この場合、再タトゥー効果が引き起こされる)前に、被
処置者の真皮および周囲組織12からそれらを除去する。いくつかの実施形態において、
流動化ステップは、医薬的に許容される流動化流体24の送達を含み、好適には、当該送
達は、低温プラズマの送達22に使用されるものと共通の1本以上のニードルまたはプロ
ーブ状構造を介して行われる。流動化流体24は、脱落して分解されたインク粒子14お
よびその副生成物を真皮12から除去するのを促進する。低温プラズマ処置された真皮に
送達された流動化流体は、抽出ステップにて抽出されるが、当該抽出ステップは、吸引等
の任意の好適な手段により行うことができる。本明細書でいう吸引は、上述の1本以上の
ニードルまたはプローブ状構造の端に形成された少なくとも部分真空をいい、脱落して分
解されたインク粒子26を含む流動化流体を、真皮および周辺組織から引き出して抽出す
る。いくつかの実施形態において、吸引は、連続吸引として行われ、または代替的に、非
連続な脈動吸引として行われる。いくつかの実施形態では、低温プラズマ処置の間または
その処置後に流動化流体を投与せず、抽出ステップにて、脱落したインク粒子およびその
分解副生成物を含む天然の体液を真皮および/または周辺組織から抽出する(すなわち、
吸引する)ことにより、該脱落したインク粒子およびその分解副生成物を除去する。
【0041】
好適な実施形態では、抽出ステップにて、脱落して分解されたタトゥーインク粒子の全
てまたは一部をタトゥーから抽出する。脱落して分解されたタトゥーインク粒子を除去す
ることにより、本明細書に記載される方法に従って処置された皮膚上のタトゥーは、検出
不能、不可視、および/または、識別不能になる。定義のとおり、有効量の低温プラズマ
を適用することによって、処置領域における元のタトゥーの色が、検出不能、不可視、お
よび/または、識別不能になる。いくつかの実施形態において、低温プラズマを用いたタ
トゥーインク粒子の処置は、インク粒子を、それらの無色の原子、分子、および/または
、ガス成分(例えば、二酸化炭素または水等)にすることができ、タトゥーが肉眼では検
出不能、不可視、および/または識別不能である場合、無色成分を皮膚から除去または抽
出する必要がない場合もある。そのような実施形態では、無色成分になって真皮中に残留
した、脱落して分解されたインク粒子およびその分解副生成物の一部は、身体の間質液を
介して吸収され得る。そのような実施形態における除去方法は、低温プラズマを被処置者
の真皮に適用することにより、タトゥーインク粒子を脱落させて分解するステップを含み
、有効量の低温プラズマを被処置者の真皮に適用して、タトゥーを検出不能、不可視、お
よび/または、識別不能にする。脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を流
動化するステップ、および、当該脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を被
処置者の真皮から上述のように抽出するステップの適用は任意であり、適用の要否は、こ
のタトゥー除去方法を被処置者のタトゥーが入った皮膚に適用する、熟練の技術者または
オペレータの裁量で決定される。低温プラズマ処置のみではタトゥーが検出不能、不可視
、および/または、識別不能にならなかった場合、その程度に応じて、オペレータ/技術
者は、タトゥーを検出不能、不可視、および/または識別不能にするべく、図1に示すス
テップ(ii)および(iii)を適応することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を被処置
者の皮膚から抽出することが望ましい。該インク粒子およびその副生成物が毒性を有する
場合があるからである。タトゥーインクおよびその分解副生成物がその場に残るか、被処
置者の身体に吸収されることになるレーザーベースのタトゥー除去技術と対象的に、本明
細書に記載の方法では、身体にとって異物であるタトゥーインクおよび分解副生成物を抽
出するため、被処置者によるそれらの吸収が阻止され、健康への潜在的に有害な影響が無
くなる。
【0043】
この方法のいくつかの実施形態において、図1に示す、脱落ステップ、流動化ステップ
、および、抽出ステップは、例えば、(i)―>(ii)―>(iii)のように、図示
される順番で実行する。ステップが順次適用される実施形態では、脱落ステップ(i)、
流動化ステップ(ii)、および、抽出ステップ(iii)を含む全サイクルを、少なく
とも1回提供するようにステップを実行する。全サイクルは、被処置者の真皮および周辺
組織からタトゥーインク粒子を脱落させて分解することによりタトゥーを効果的に除去す
るのに必要とされる任意の回数繰り返すことができる。適用可能な好適なサイクル回数は
、典型的には、1~100回、または100回超である。他のある実施形態では、すべて
のステップを同時に適用する。非限定的な一例では、脱落ステップ(タトゥーが入った真
皮への低温プラズマの適用)、真皮への流動化流体の導入を含み得る流動化ステップ、お
よび、脱落して分解されたインク粒子およびその分解副生成物を含んだ流動化流体の除去
を含む(流動化流体を使用しない場合もある)抽出ステップにより、脱落して分解された
インク粒子およびその分解副生成物を直接除去する。いくつかの他の実施形態では、脱落
ステップおよび流動化ステップを同時に行い、続いて抽出ステップを行い、被処置者の真
皮からタトゥーインクを除去してタトゥーを検出不能、不可視、および/または、識別不
能にするために必要となる、少なくとも1回以上実行されるサイクルを形成する。
【0044】
上述の方法における好適な実施形態では、処置中に、皮膚表面に存在する感染性生物が
真皮に導入されるのを防止するために、タトゥーが入った皮膚表面を抗生物質溶液で前処
理するステップをさらに含むことができる。他の好適な実施形態では、前処理するステッ
プは、処置中の潜在的な不快感を予防または緩和するために、皮膚表面へ局所麻酔薬を投
与することを含むこともできる。
【0045】
1.低温プラズマ
本明細書に記載される低温プラズマを生成するための方法は、当業者によく理解されて
いる。大気低温プラズマの例示的な生成方法には、アーク放電、コロナ放電、誘電体バリ
ア放電(DBD)、容量放電、および、圧電直接放電が挙げられるが、これらに限定され
ない。典型的には、そのようなプラズマは、ガスまたは空気、酸素、窒素、ヘリウム、ア
ルゴン、ネオン、キセノン、および、クリプトンを含むが、これらに限定されないガス混
合物から生成される。好適な実施形態において、低温プラズマは、アルゴンと酸素の混合
物、または、ヘリウムと酸素の混合物から生成される。低温プラズマの生成に使用される
、電力、ガス流量、および、混合物中のガス比率等の条件は、低温プラズマの所望の特性
を室温または室温に近い温度で得るために、必要に応じて最適化することができる。好適
な実施形態において、プラズマを生成するために用いられる電力は、約80W~約150
Wである。いくつかの好適な実施形態において、ガス流量は、約0.00001~約15
L min-1である。混合物中に存在する1種以上のガスの比率は、低温プラズマを得
るのに必要とされる任意の好適な比率とすることができる。プラズマがガスの混合物から
生成される好適な実施形態では、該混合物は、アルゴンまたはヘリウムと酸素との混合か
らなり、混合物中における酸素の比率は、好適には、約0.1%~約5%である。
【0046】
本明細書に記載の方法に従って生成された低温プラズマ流は、1本以上のニードルまた
はプローブ状構造を介して、連続的な低温プラズマジェット流として真皮中に送達および
排出されるか、または、不連続なパルス型の低温プラズマジェット流として送達され得る
。本明細書に記載される具体例は非限定的であり、低温プラズマを生成して真皮に送達す
るべく、他の好適な条件およびパラメータを選択および使用できることは明らかである。
【0047】
2.薬学的に許容される流動化流体
好適な実施形態では、流動化流体の非限定的な例として、滅菌水、生理食塩水、または
、緩衝水溶液が挙げられる。当業者であれば、被処置者の真皮に投与される流動化流体/
水溶液における、生理食塩水ならびに緩衝水溶液中の好適な内容物およびpHを容易に決
定することができる。代表的な例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル
液、および、滅菌生理食塩水(0.15M NaCl)が挙げられる。
【0048】
ある実施形態において、流動化流体は、脱落したインク粒子および/またはその分解副
生成物の流動性および除去効率を改善する、界面活性剤をさらに含むことができる。好適
な界面活性剤には、米国食品医薬品局(FDA)が、GRAS(一般的に安全とみなされ
る)として、注射用の賦形剤として承認しているものが含まれる。他の好適な実施形態で
は、流動化流体は、好適な局所麻酔剤、抗感染剤、防腐剤、抗炎症剤、および、それらの
組合せを含むこともできる。
【0049】
流動化流体に含まれ得る界面活性剤としては、ヒトに対しての使用が薬学的に許容され
ている、アニオン性、カチオン性、両性、および、非イオン性の界面活性剤が挙げられる
。アニオン性の界面活性剤には、ジ‐(2エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムが
含まれ、非イオン性界面活性剤には、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル
酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン
酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ア
ラキン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、
リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸のような脂肪酸、およびそれらのエステルが含ま
れ、両性の界面活性剤には、アルブミン、ゼラチン、および、糖タンパク質等の、単純、
共役かつ誘導タンパク質に分類される物質と、リン脂質分類に含まれる物質が含まれる。
カチオン性基のアミン塩および第四級アンモニウム塩もまた、有用な界面活性剤を含む。
合成ポリマーもまた界面活性剤として用いることができ、ポリエチレングリコールおよび
ポリプロピレングリコール等の組成物を含むことができる。疎水性界面活性剤は、疎水性
インク粒子およびその分解副生成物の除去性を向上させるために用いることができる。親
水性界面活性剤は、親水性インク粒子および成分、並びに、その分解副生成物の除去性を
向上させるために用いることができる。両親媒性界面活性剤は、両親媒性インク粒子およ
び成分、並びに、その分解副生成物の除去性を向上させるために用いることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、流動化流体が、局所麻酔薬等の麻酔薬を含んでいてもよく、
麻酔薬には、これらに限定されないが、プビバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、プロ
カイン、クロロプロカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン
、リドカイン、および、キシロカイン等の‐カイン麻酔薬、並びに、その混合物であって
、単独または他の鎮痛剤と組み合せて使用することができる麻酔薬が含まれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、流動化流体が防腐剤を含んでいてもよい。例示的な防腐剤は
、感染生物の増殖を阻止し、および/または、感染生物を死滅させる、任意の抗感染性化
合物から構成することができる。防腐剤は、非処置体の真皮および周辺組織に有害な反応
を起こさないように、好適には、低刺激性かつ低アレルギー性である。
【0052】
本明細書において、「抗感染剤」とは、微生物、真菌およびウイルスの増殖を阻害する
化学物質または化学物質の群を含むことができ、主に、感染症の治療に使用される一般的
な抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤をいう。いくつかの実施形態では、流動化流体が
抗生物質を含んでいてもよい。これらは、タトゥーを除去する場所の真皮および周辺組織
における感染を防ぐのに役立ち得る。例示的な抗生物質には、これらに限定されないが、
クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、クリンダマイシン、エリスロマイシン
、グラミシジン、ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ムピロシン、ネオマイシン、ポリ
ミキシンB、バシトラシン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ペニシリン、銀スルファ
ジアジン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、または、それらの組合せが含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、流動化流体が抗炎症剤を含んでいてもよい。抗炎症剤は、組
織が治癒および回復する間に、有益な効果をもたらし得る。抗炎症剤には、限定されない
が、デキサメタゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、および、ヒドロコルチゾン等のステ
ロイド系炎症剤、並びに、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)が含まれる。非ステ
ロイド系抗炎症剤は、典型的には、身体がプロスタグランジンを合成する能力を阻害する
。プロスタグランジンは、ホルモン様の化学物質のファミリーであり、そのうちのいくつ
かは、細胞傷害に応答して生成される。ヒトへの投与が承認されている特定の非ステロイ
ド系抗炎症剤には、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、スリンダック、オキサプ
ロジン、ジフルニサル、アスピリン、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、イブ
プロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ナブメトン、トルメチ
ンナトリウム、および、ケトロラクトロメタミンが含まれる。抗炎症剤は、身体のメカニ
ズムに作用することによって炎症を軽減する、医薬品の周知の部類である(ステッドマン
医学事典 第26版 ウィリアムズおよびウィルキンズ (1995)、医師用デスクリ
ファレンス 第51版 (1997))。
【0054】
いくつかの実施形態では、流動化流体が、防腐剤、粘度調整添加剤、および、他の潜在
的に有益な材料、例えば、過酸化水素またはヘモグロビン由来の酸素運搬体等の追加の薬
剤をさらに含んでいてもよい。任意量の流動化流体は、抽出ステップにおける、脱落して
分解されたインク粒子およびその副生成物の除去を効率的に促進するべく、プラズマ処理
された真皮に必要に応じて送達することができる。好適な実施形態において、脱落して分
解されたインク粒子およびその分解副生成物の除去に用いる流動化流体の総量は、約10
mL未満であり、より好適には約5mLであり、さらに好適には約2mLであり、最も好
適には約1mL未満である。
【0055】
III.タトゥー除去システム
図2に示される非限定的な一実施形態では、タトゥー除去システムがメインハウジング
100を含み、該メインハウジング100内に、低温プラズマ生成コンポーネント102
と、流体送達コンポーネント104と、流体抽出コンポーネント106と、が統合されて
いる。いくつかの他の実施形態では、流体送達コンポーネントがシステムから除外されて
いてもよい。このシステムは、ペン型またはワンド型のコンポーネントとすることができ
る自立型の処置コンポーネント108に接続および連結されている。タトゥー除去システ
ムのメインハウジングは、必要に応じて、前述のコンポーネント102,104および1
06、並びに、処置コンポーネント108に電力を供給するための追加のコンポーネント
を含み、電気アウトレットまたは1つ以上のバッテリ電源から電力を供給するように構成
することもできる。メインハウジングは、さらに、入力制御(すなわち、ノブ、ボタン、
フットペダル)と、オペレーション前およびオペレーション中に各コンポーネント102
,104,106のパラメータを制御および調整するべく各コンポーネントのパラメータ
を表示する、アナログまたはデジタルディスプレイと、を含むことができる1つ以上の制
御ユニットをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1つの(メイン)制御
ユニットにより全てのコンポーネントを制御することができる一方で、いくつかの他の実
施形態では、各コンポーネントが、システムのメインハウジング中に個別の制御ユニット
を有していてもよい。
【0056】
いくつかの他の実施形態では、低温プラズマ生成コンポーネント102、流体送達コン
ポーネント104、および、流体抽出コンポーネント106が、単一の複合処置コンポー
ネント106に統合されていてもよい。いくつかの実施形態では、流体送達コンポーネン
トが、該複合処置コンポーネントから除外されていてもよい。フットペダル110は、低
温プラズマの適用、生理食塩水洗浄、および、抽出に対する制御手段を提供することがで
きる。
【0057】
図示されるシステムおよび/またはコンポーネントにおいては、種々の改良を加えるこ
とが可能であることが理解されよう。説明の明確性のために、各図面に示されるシステム
および/またはコンポーネントのすべてに符号を付してはおらず、また、当業者によるシ
ステムおよび/またはコンポーネントの理解に図面が必要とされない場合、その実施形態
におけるすべてのコンポーネントの図示を省略している。
【0058】
1.低温プラズマ生成コンポーネント
低温プラズマ生成コンポーネントは、当該技術分野において周知のプラズマ装置の仕様
に従って構築することができる。任意に、プラズマ生成ユニットは、本明細書に記載され
るタトゥー除去システムの一部に適合する市販コンポーネントであってもよい。メインシ
ステムに収容されている低温プラズマ生成コンポーネントは、低温プラズマを生成するた
めに要求される、すべての必要なコンポーネントを含む。コンポーネントは、限定されな
いが、ガス入力部、バルブ、調整器、ポンプ、ガス混合チャンバ/ユニット、電力システ
ムを含む。低温プラズマの生成に使用される、電力、ガス流量、および、混合物中のガス
比率等の条件は、プラズマ生成ユニットに接続および連結された入力制御により必要に応
じて制御することができ、これによって所望の特性を有する低温プラズマを得ることがで
きる。
【0059】
典型的には、プラズマは、限定されないが、空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、
ネオン、キセノン、および、クリプトンを含むガスまたはガスの混合物から生成される。
好適な実施形態では、低温プラズマ生成ユニットは、1種以上のガス供給源からガスを受
け取る。いくつかの実施形態において、1つ以上のガス供給源は、自立型の交換可能なガ
スタンク/シリンダとすることができ、また、当該1種以上のガスは、中枢のガス供給原
に接続している壁面上のガスアウトレット等の供給源から供給されるものであってもよい
。ある実施形態では、1つ以上のガス供給原がタトゥー除去システムのメインハウジング
の外部にあり、任意の好適な手段(すなわち、ガス調整器およびガス配管)によって、該
システムのプラズマ生成コンポーネントが有する1つ以上のガス入力部に連結および接続
することができる。ある他の実施形態において、1つ以上のガス供給源は、望ましい場合
、タトゥー除去システムのハウジング内に含まれていてもよい。好適な実施形態において
、低温プラズマの生成に用いられる電力は、約80W~約150Wである。いくつかの好
適な実施形態におけるガスの流速は、約0.00001~約15Lmin-1である。混
合物中に存在する1種以上のガスの比率は、ガスを混合することにより制御することがで
き、ガスを混合することによって、低温プラズマを得るのに必要となる任意の好適なガス
混合比率を得ることができる。プラズマを生成するガスの混合物が、アルゴンまたはヘリ
ウムと、酸素と、の混合からなる好適な実施形態において、該混合物中における酸素の比
率は、好適には約0.1%~約5%である。
【0060】
プラズマ生成コンポーネントは、任意の好適な手段を用いて連結および接続され、生成
された低温プラズマは、該低温プラズマをタトゥーが入った真皮に送達するための処置コ
ンポーネントに出力/送達される。生成された低温プラズマ流は、当該システムの1つ以
上の入力制御ユニットを介して制御することができる。プラズマ生成コンポーネントによ
る処置コンポーネントへのプラズマの出力は、連続的な低温プラズマジェット流または不
連続なパルス型の低温プラズマジェット流とすることができる。本明細書に記載される具
体例は、本発明を限定するものではなく、低温プラズマを生成して該低温プラズマをタト
ゥーが入った真皮に送達するための、他の好適な条件およびパラメータを選択して利用で
きることが理解されよう。ペン型/ワンド型とすることができる処置コンポーネントを介
した低温プラズマの送達は、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者により、フット
ペダル等の入力制御ユニットを用いて制御することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、上述のプラズマ生成コンポーネントが、処置コンポーネント
内に直接組み込まれていてもよい。ある実施形態では、処置コンポーネント内で生成され
るプラズマは空気プラズマであり、外部のガス供給源を必要としない。ある他の実施形態
では、処置コンポーネントの外部にある1つ以上のガス供給源が、任意の好適な手段(す
なわち、調整器およびガス配管)によって、処置コンポーネントの1つ以上のガス入力部
に連結および接続している。ある他の実施形態では、望ましい場合、1つ以上のガス供給
源が処置コンポーネント内に含まれていてもよい。
【0062】
2.流体送達コンポーネント
このシステムの流体送達コンポーネントは、予め調合された流動化流体を保持できる、
1つ以上の流体貯蔵ユニットを含む。1つ以上の流体貯蔵ユニットは、任意の好適な手段
(例えば、配管)によってタトゥー除去システムの処置コンポーネントに連結および接続
しており、流動化流体を処置コンポーネントに排出できる。流動化流体送達コンポーネン
トは、1つ以上の制御可能な流体ポンプを含み、該流体ポンプによって、制御された流量
の流動化流体が処置コンポーネントに送達される。流体の流量は、流体送達コンポーネン
トに連結および接続された1つ以上の入力制御または入力ユニットにより調整することが
できる。いくつかの実施形態では、流動化流体が、事前調合ではなく、流体送達コンポー
ネントの一部を形成し得る混合ユニットによって、要求に応じて生成することができる。
そのような混合ユニットは、望ましい流動化流体を形成する成分流体および他の物質(こ
れらに限定されないが、滅菌水、生理食塩水、緩衝水溶液、および、好適な局所麻酔、抗
感染剤、防腐剤、抗炎症剤、並びにそれらの組合せ等)を含むことができる、1つ以上の
流体貯蔵ユニットにより形成することができる。処置コンポーネントを介した真皮への流
動化流体の送達は、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者により、フットペダル等
の入力制御ユニットを用いて制御することができる。
【0063】
いくつかの他の実施形態では、流体送達コンポーネントが、上述したように、自立型の
ペン型またはワンド型のコンポーネント内に直接組み込まれていてもよい。そのような実
施形態では、(上述の)事前調合された所定量の流動化流体が保持されている1つ以上の
使い捨ての流体カートリッジを、流体送達コンポーネントに連結および接続して、後述す
るように、処置コンポーネントの1本以上のニードルまたはプローブ状構造に流動化流体
を排出することができる。そのような実施形態では、処置コンポーネントの1本以上のニ
ードルまたはプローブ状構造を介した流動化流体の真皮への送達は、熟練の/訓練された
オペレータまたは技術者により、処置コンポーネント上に存在する入力制御ユニットを用
いて制御することができる。
【0064】
3.流体抽出コンポーネント
このシステムの流体抽出コンポーネントは、真空または部分真空の形成に要する、1つ
以上の真空ポンプおよび/または他のコンポーネントを含む。該真空ポンプおよび/また
は他のコンポーネントは、任意の好適な手段によって処置コンポーネントに接続および連
結し、タトゥーの除去処置の間に真皮に送達された流動化流体を抽出するための吸引と、
脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物を含む流動化流体、並びに、被処置者
の真皮および周辺組織から離間したその組織副生成物を引き出し/抽出するための吸引と
、をもたらす。流体送達コンポーネントおよび流動化流体を用いていないシステムのいく
つかの実施形態では、流体抽出コンポーネントが、真皮または周辺組織の天然の体液中に
存在し得る脱落して分解されたタトゥーインク粒子を直接除去することができる。いくつ
かの実施形態において、抽出コンポーネントによってもたらされる吸引は、連続的吸引と
して適用可能であるが、代替的に、断続的吸引として適用することもできる。真皮および
/または周辺組織に対する吸引は、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者によって
、フットペダル等の入力制御ユニットを用いて実行することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、流体抽出コンポーネントが、上述したように、自立式のペン
型またはワンド型のコンポーネント内に直接組み込まれていてもよい。そのような実施形
態では、真皮および/または周辺組織への吸引の適用は、熟練の/訓練されたオペレータ
によって、処置コンポーネント上に存在する、ペン型またはワンド型の入力制御ユニット
を用いて制御することができる。
【0066】
4.処置コンポーネント
処置コンポーネントは、周知の好適な手段を用いて、上述したコンポーネントに連結お
よび接続可能である。代替的に、処置コンポーネントは、上述したコンポーネントの1つ
以上に組み込まれていてもよい。処置コンポーネントは、好適にはペンまたはワンド20
0の形態であり、図3に示すような本体部から形成されている。処置コンポーネントは、
本明細書では、ペン/ワンドコンポーネントともいう。処置コンポーネントは、必要があ
れば、低温プラズマおよび流動化流体を真皮中に送達し、かつ真皮に吸引を適用するため
の好適な機械的コンポーネントを含む。処置コンポーネントの一方側の端202は、上述
したようなシステムの他のコンポーネントが処置コンポーネントの外部にある場合に、該
他のコンポーネントに接続/連結する1つ以上の入力部および出力部(不図示)を含むこ
とができる。例えば、入力部は、低温プラズマおよび流動化流体を受け取ることができ、
出力部は、タトゥーを除去している間に真皮および周辺組織から抽出された、流動化流体
または他の体液を受け取ることができる。処置コンポーネントの他方側の端は、低温プラ
ズマおよび流動化流体を排出してそれらを真皮に送達できる処置端を含むことができる。
処置端204もまた、真皮および周辺組織を処置している間に脱落して分解されたタトゥ
ーインク粒子を含む、流動化流体または他の天然の体液を受け取ることができる。
【0067】
好適な実施形態において、処置端204は、被処置者のタトゥーが入った皮膚を穿孔す
る1本以上のニードルまたはプローブ状構造208を含む、カートリッジユニット206
から形成されている。処置コンポーネントの処置端は、皮膚を穿孔することができて、好
適には、取り外し可能、使い捨て可能、および/または、交換可能であるユニットカート
リッジの一部を形成することができる、1本以上のニードルまたはプローブ状構造208
を含む。1本以上のニードルまたはプローブ状構造208は、プラスチック、金属、また
は、それらの組合せにより形成することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、
取り外し可能、使い捨て可能、および/または、交換可能であるカートリッジが、1本、
2本、3本、4本、5本、6本、7本、または、8本以上のニードルを含んでいる。ニー
ドルカートリッジ中に備えられた1本以上のニードルまたはプローブ状構造の、皮膚中へ
の穿孔深さは、好適には、被処置者のタトゥーが入った真皮の深さであるが、熟練の/訓
練されたオペレータまたは技術者によって必要に応じて調整しながら、本明細書に記載さ
れるシステムを用いたタトゥー除去方法を適用することができる。タトゥーが入った真皮
を穿孔する1本以上のニードルまたはプローブ状構造208は、タトゥー除去処理の間に
それらを真皮の内外に可変速度にて脈動および/または振動させる、ピストンのような駆
動装置等の機械的プロセスを介して振動または脈動する。ある他の実施形態では、タトゥ
ーが入った真皮を穿孔する、1本以上のニードルまたはプローブ状構造208は固定され
ており、脈動または振動しない。
【0068】
いくつかの実施形態では、1本以上のニードルまたはプローブ状構造が振動または脈動
し、各振動または脈動を伴って、低温プラズマの真皮への送達、流動化流体の送達、また
は、脱落して分解されたインク粒子およびその副生成物並びにそれらの組織副生成物を含
む流動化流体の抽出のうちの1つ以上の機能を提供する。いくつかの実施形態では、それ
ぞれの全体的もしくは部分的な振動または脈動によって特定の機能が一度に連続して適用
されて、記載されるすべての機能が実行されると、脱落ステップ、流動化ステップ、およ
び、抽出ステップを含む完全なサイクルが少なくとも1回提供されることになる。ある他
の実施形態では、1本以上のニードルが所定の振動または脈動を行っている間に、すべて
の機能が同時に適用される。いくつかの他の実施形態では、記載されるいくつかの(必ず
しもすべてではない)機能が、1本以上のニードルが所定の振動または脈動を行っている
間に、被処置者の真皮からタトゥーインクを除去して、該タトゥーを検出不能、不可視、
および/または、認識不能にするべく少なくとも1回実行されるサイクルの一部を形成す
る。
【0069】
図3に示されるように、処置コンポーネントの処置端204に提供され、ペン/ワンド
200の形態である1本以上のニードルまたはプローブ状構造208は、タトゥーを除去
する真皮を穿孔し、該真皮に低温プラズマを送達し、当該真皮および周辺組織に流体を送
達するとともに、真皮および周辺組織から流体を抽出することができる。いくつかの実施
形態では、別のニードル/プローブ状体を処置端に提供することによって、プラズマの送
達、流体の送達、または、流体の抽出等の異なる機能を提供することができる。いくつか
の実施形態では、1本のニードル/プローブ状体が、上述した機能の複数またはすべてを
実行することができる。
【0070】
図4A,4Bに示すように、取り外し可能、使い捨て可能、および/または、交換可能
なユニットカートリッジのニードルまたはプローブ状構造のそれぞれは、入子型の複数の
同心ニードル302,304,306から形成されるマルチシースニードル300で形成
することができる。
【0071】
図4A,4Bの構成に示されるような非限定的な一例では、マルチシースニードルまた
はプローブ状構造300が、内側リング306、中間リング304、および、外側リング
302をなす3つの同心の入子型/埋め込み型のニードルまたはプローブ状構造から形成
されている。いくつかの実施形態では、最外側リング302により低温プラズマが送達さ
れる。選択的に、ニードルまたはプローブ状構造の最外側部は、低温プラズマを真皮に送
達するための好適な開口部308を含む。いくつかの実施形態では、中間リング304に
より真皮に流動化流体が送達される。いくつかの実施形態では、最内側リング302によ
り真皮に吸引がもたらされ、脱落して分解されたタトゥーインク粒子およびその副生成物
を含む流動化流体が真皮から除去される。
【0072】
図5A,5Bに示されるような他の非限定的な一例では、マルチシースニードル400
が、内側リング404および外側リング402をなす2つの同心の入子型/埋め込み型の
ニードルまたはプローブ状構造から形成されている。いくつかの実施形態では、最外側リ
ングにより真皮に低温プラズマおよび抽出流体が連続的に脈動送達される。必要に応じて
、ニードルまたはプローブ状構造の最外側部402は、低温プラズマを真皮に送達するた
めの好適な開口部406を含んでいる。いくつかの実施形態では、内側リング404によ
り真皮に吸引がもたらされ、脱落して分解されたタトゥーインク粒子およびその副生成物
を含む流動化流体が真皮から除去される。
【0073】
図6A,6Bの構造に示されるような他の非限定的な一例では、カートリッジにシング
ルシースニードル500を用いることができる。選択的に、ニードルまたはプローブ状構
造500の外周面は、低温プラズマを真皮に送達するための好適な開口部502を含むこ
とができる。シングルシース構造では、低温プラズマ、流動化流体、および、吸引が、処
置中の真皮に対して連続的に適用される。
【0074】
上述したように、カートリッジに含まれる1本以上のニードルまたはプローブ状構造は
、その各々がマルチシースニードル構造であってもよい。当業者であれば、上述の例は非
限定的であり、上述したような任意のプラズマ、流体、または、抽出機能を達成するため
の、入子型/埋め込み型構造に提供されるいずれかのシースの使用に関しては、種々の変
更が可能であることはすぐに理解できよう。いくつかの実施形態では、低温プラズマの流
量、流動化流体の流量、および、吸引速度は、処置コンポーネントに含まれるコンピュー
タ化された流量メーターによって制御することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、フットペダルおよび/または処置コンポーネント上にあるボ
タン等の入力制御を使用して、低温プラズマと、処置コンポーネントに連結および接続す
るか、ペン/ワンドの形態として提供される処置コンポーネント内に統合される脱落コン
ポーネントと、流動化コンポーネントと、抽出コンポーネントと、のすべてを一度に起動
、停止および制御すること、または、低温プラズマと、脱落コンポーネントと、流動化コ
ンポーネントと、抽出コンポーネントと、を個々に制御することができる。いくつかの他
の実施形態では、フットペダルおよび/または処置コンポーネント上のボタン等の入力制
御は、所要のシーケンス(すなわち、コンポーネント100、次に、コンポーネント10
2、続いて、コンポーネント104)内に、所要のコンポーネントの各機能をトリガする
サイクルを開始するのに使用することができる。サイクル/シーケンスは、任意の好適な
時間間隔を設けて、被処置者の真皮および周辺組織からタトゥーを除去するのに必要なだ
け、任意に、好適なサイクル数にわたって繰り返すことができる
【0076】
熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者であれば、処置端に設けられた1本以上の
ニードル/プローブ状構造を介しての、タトゥーが入った真皮および周辺組織に対するプ
ラズマ、流動化流体、および/または、抽出(すなわち、吸引)の適用を、高精度に制御
することができる。好適な実施形態では、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者で
あれば、フッドペダルまたは処置コンポーネント上に設けられたボタン等の1つ以上の入
力制御ユニットを用いて、システムのコンポーネントの異なる機能を個々に、または、組
み合せて起動または停止することができる。いくつかの実施形態では、熟練の/訓練され
たオペレータまたは技術者であれば、低温プラズマを適用することができ、タトゥーが検
出不能、不可視、および/または、識別不能となった程度に応じて、流動化流体および抽
出を適用しないことを決定することができる。ある他の実施形態では、熟練の/訓練され
たオペレータまたは技術者であれば、タトゥーがさらに検出不能、不可視、および/また
は、識別不能となるように、流動化流体および抽出をさらに適用することを選択できる。
さらに他の実施形態では、熟練の/訓練されたオペレータまたは技術者であれば、体液中
に含まれる、脱落して分解されたタトゥーインク粒子、その分解副生成物、および/また
は、それらの副生成物組織を、流動化流体を適用することなく除去するよう抽出だけをさ
らに選択できる。
【実施例
【0077】
[実施例1]スライドガラス上におけるタトゥーインクの除去
(装置および条件)
スライドガラス表面上のタトゥーインクの除去を評価するために、1インチの線形プラ
ズマ源と、400×400×300mmのXYZロボットを備えたSurfx Tech
nologies社製のAtomflo(登録商標)500大気圧プラズマシステムを使
用した。
【0078】
【表1】
【0079】
(試験)
スライドガラスからタトゥーインク(黒、赤、および、黄)を除去するために、表1に
示されるオフセット距離およびスキャン速度にて、アルゴン/酸素プラズマを使用した。
スライドガラスの所与の領域におけるインク量およびインク濃度は、ヒトの皮膚に入れら
れたタトゥーにおけるインク量およびインク濃度を大幅に超えている。これらのインクの
夫々は、タトゥーに使用される分子のクラスを代表するものである。それらは、夫々、単
純な元素炭素、有機分子、および、無機分子である。従って、これらの分子種は、単独で
、または、組み合せて使用されるタトゥーインクの色成分のすべてを本質的に含んでいる
【0080】
(結果)
黒、赤、または、黄のタトゥーインクがペイントされたスライドガラスに対する低温プ
ラズマの適用は、インクの色を完全に除去するのに効果的であり、目視検査から明らかで
あるように、スライドガラスを透明にできることが分かった(スライドガラスには最小限
の白い残渣があるのみであった)。
【0081】
[実施例2]綿棒からのタトゥーインクの除去
(装置および条件)
綿棒チップ上のタトゥーインクの除去を評価するために、1インチの線形プラズマ源と
、400×400×300mmのXYZロボットを備えたSurfx Technolo
gies社製のAtomflo(登録商標)500大気圧プラズマシステムを使用した。
【0082】
【表2】
【0083】
(試験)
綿棒からタトゥーインク(黒、赤、および、黄)を除去するために、表2に示されるオ
フセット距離にて、アルゴン/酸素プラズマを使用した。綿棒にインクが飽和するまで、
綿棒をインクの溶液/懸濁液中に保持した。綿棒は、処置前に12時間放置した。綿棒の
所要の領域におけるインク量およびインク濃度は、ヒトの皮膚に入れられたタトゥーにお
けるインク量およびインク濃度を大幅に超えている。これらのインクの夫々は、タトゥー
に使用される分子のクラスを代表するものである。それらは、夫々、単純な元素炭素、有
機分子、および、無機分子である。従って、これらの分子種は、単独で、または、組み合
せて使用されるタトゥーインクの色成分のすべてを本質的に含んでいる。
【0084】
(結果)
黒、赤、または、黄のタトゥーインクがペイントされた綿棒に対する低温プラズマの適
用が、インクの色を完全に除去するのに効果的であることが目視検査によって分かった。
【0085】
[実施例3]ブタの皮膚からのタトゥーインクの除去
(装置および条件)
ブタの皮膚の内表面および外表面におけるタトゥーインクの除去を評価するために、1
インチの線形プラズマ源と、400×400×300mmのXYZロボットを備えたSu
rfx Technologies社製のAtomflo(登録商標)500大気圧プラ
ズマシステムを使用した。
【0086】
40℃のアルゴン/酸素低温プラズマを生成し、100Wの電力を使用した。アルゴン
および酸素の流量は、それぞれ15L min-1および0.3L min-1であった
【0087】
(試験)
アルゴン/酸素プラズマを用いて、黒および赤のタトゥーインクで塗装された後に12
時間放置された、ブタの皮膚の真皮および表皮面を処置した。プラズマ処置の時間は5~
10分、オフセット距離は3~4mmであった。皮膚の所与の領域におけるインク量およ
びインク濃度は、ヒトの皮膚に入れられたタトゥーにおけるインク量およびインク濃度に
等しい。これらのインクの夫々は、タトゥーに使用される分子のクラスを代表するもので
ある。それらは、夫々、単純な元素炭素、有機分子、および、無機分子である。従って、
これらの分子種は、単独で、または、組み合せて使用されるタトゥーインクの色成分のす
べてを本質的に含んでいる。
【0088】
(結果)
ブタの真皮および表皮面の目視観察によれば、低温プラズマに曝された処置領域内のタ
トゥーインクに脱色ゾーンが示された。これらの組織学的生成を見てみると、低温プラズ
マに曝されなかった領域のタトゥーインクは保持されたままであり、該低温プラズマに曝
された領域のタトゥーインクは消去されていることが示された。
【0089】
特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本教示が
属する分野の当業者が一般的に理解するものと同様の意味を有する。本明細書に引用され
る刊行物およびそれらが引用されている資料は、特に、参照により本明細書に組み込まれ
る。
【0090】
当業者は、日常的な実験を用いて、本明細書に記載された例示的な教示である特定の実
施形態の多くの均等物を認識すること、または、該均等物を確認することはできないであ
ろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6