(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20230110BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20230110BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230110BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230110BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M10/0587
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/429
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/44
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021158742
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】202011474081.0
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520124888
【氏名又は名称】東莞新能安科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Dongguan Poweramp Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xinghui Road, Songshan Lake Park, Dongguan City, Guangdong Province, 523000, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霍 涛涛
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0065053(KR,A)
【文献】特表2014-524112(JP,A)
【文献】特開2015-069957(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051639(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極シート、第2電極シート、第1セパレータ及び第2セパレータを備える電気化学装置であって、
前記第1セパレータは第1多孔質基材を含み、
前記第2セパレータは第2多孔質基材を含み、
前記第1電極シート、前記第1セパレータ、前記第2電極シート及び前記第2セパレータは、順に積層設置されて電極アセンブリを形成しており、
前記第1多孔質基材の少なくとも一方の表面にはポリマー接着層が設けられており、
前記第2多孔質基材の
両面のいずれにもポリマー接着層が設けられて
おらず、
前記電極アセンブリは巻回構造であり、かつ前記電極アセンブリの最外周は、前記第2多孔質基材である、
ことを特徴とする電気化学装置。
【請求項2】
前記第1多孔質基材の両面のいずれにも、ポリマー接着層が設けられている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記第1多孔質基材の一方のみの表面に、ポリマー接着層が設けられて
いる、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記第1多孔質基材と前記ポリマー接着層との間に、無機材料層がさらに設けられている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記第2多孔質基材の表面には、前記無機材料層が設けられていない、請求項
4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記第1電極シートは正極シートであり、前記第2電極シートは負極シートであるか、又は前記第1電極シートは負極シートであり、前記第2電極シートは正極シートである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記ポリマー接着層は、面密度が0.5mg/1540.25mm
2~10mg/1540.25mm
2である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記第1多孔質基材及び前記第2多孔質基材は、それぞれ独立して、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリフェニレンサルファイド、及びポリ(2-ビニルナフタレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなるポリマーフィルム、多層ポリマーフィルム、または不織布である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記ポリマー接着層は、ポリマーを含み、
前記ポリマーは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチル化アミロペクチン、シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記無機材料層は、無機粒子を含み、
前記無機粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸チタンリチウム、チタン酸ランタンリチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項
4または
5に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の電気化学装置を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の技術分野に関し、具体的には、電気化学装置及び該電気化学装置を備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(電気化学装置)は、エネルギー密度が大きく、サイクル寿命が長く、公称電圧が高く、自己放電率が低く、小型、軽量などの多くの利点を有し、家電製品、電気自動車、電動二輪車及びエネルギー貯蔵などの分野に広く応用される。近年、電気自動車及び携帯電子機器の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池の耐用寿命に対する要求がますます高くなる。しかしながら、従来のリチウムイオン電池は、サイクル数の増加につれて、リチウムイオン電池の内部における電極アセンブリが徐々に変形し、外装体の封止信頼性が低下し、リチウムイオン電池の耐用寿命の向上に影響する。このため、コストが低く、かつリチウムイオン電池が使用中に変形することを回避できるだけでなく、外装体の封止信頼性が高いことを実現可能な技術案が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来のリチウムイオン電池に存在する、変形抑制と外装体の封止信頼性とを両立できないという問題を解決するために、第1電極シート、第2電極シート、第1セパレータ及び第2セパレータを含む電気化学装置であって、前記第1セパレータは第1多孔質基材を含み、前記第2セパレータは第2多孔質基材を含み、前記第1電極シート、前記第1セパレータ、前記第2電極シート及び前記第2セパレータにより電極アセンブリを形成し、前記第1多孔質基材の少なくとも一方の表面にポリマー接着層が設けられ、前記第2多孔質基材の少なくとも一方の表面にポリマー接着層が設けられない、電気化学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施例において、前記第1多孔質基材の両面のいずれにも、ポリマー接着層が設けられる。いくつかの実施例において、前記第2多孔質基材の両面のいずれにも、ポリマー接着層が設けられない。いくつかの実施例において、前記第2多孔質基材の一方のみの表面に、ポリマー接着層が設けられない。いくつかの実施例において、前記第1多孔質基材の一方のみの表面に、ポリマー接着層が設けられ、前記第2多孔質基材の一方のみの表面には、ポリマー接着層が設けられない。
【0005】
いくつかの実施例において、前記第1多孔質基材と前記ポリマー接着層との間には、無機材料層がさらに設けられ、前記第2多孔質基材の表面には、前記無機材料層が設けられない。
【0006】
いくつかの実施例において、前記第1電極シートは正極シートであり、前記第2電極シートは負極シートであるか、又は前記第1電極シートは負極シートであり、前記第2電極シートは正極シートである。前記ポリマー接着層は、面密度が0.5mg/1540.25mm2~10mg/1540.25mm2である。
【0007】
いくつかの実施例において、前記第1多孔質基材と前記第2多孔質基材は、それぞれ独立して、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリフェニレンサルファイド、及びポリ(2-ビニルナフタレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなるポリマーフィルム、多層ポリマーフィルム、または不織布である。
【0008】
いくつかの実施例において、前記ポリマー接着層はポリマーを含み、前記ポリマーは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチル化アミロペクチン、シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実施例において、前記無機材料層は無機粒子を含み、前記無機粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸チタンリチウム、チタン酸ランタンリチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0010】
いくつかの実施例において、前記電極アセンブリは巻回構造であり、かつ前記電極アセンブリの最外周は、前記第2多孔質基材である。さらに、本発明にかかる電気化学装置を備える電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、以下の有益な効果を達成することができる。
【0012】
本発明に係る多層構造を有する電極アセンブリを用いて製造した電気化学装置は、第1セパレータと第2セパレータにおける異なるポリマー接着層の設置方式により、正極シートと負極シートが離隔され、電極アセンブリの形態維持及び角部における応力の解放に寄与でき、電気化学装置の変形を抑制するとともに、外装体の封止信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの1種の巻回構造を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの1種の積層方式を示す概略図である。
【
図3】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの巻回方式を示す概略図である。
【
図4】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの1種の積層方式を示す概略図である。
【
図5】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの1種の積層方式を示す概略図である。
【
図6】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの1種の積層方式を示す概略図である。
【
図7】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの一実施形態を示す概略図である。
【
図8】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの一実施形態を示す概略図である。
【
図9】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの一実施形態を示す概略図である。
【
図10】本発明に係る電気化学装置における電極アセンブリの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下に本発明の実施例を参照しながら、本発明の技術案を明確かつ全体的に説明する。当然ながら、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。
【0015】
本発明は、第1電極シート、第2電極シート、第1セパレータ及び第2セパレータを含む電気化学装置であって、第1セパレータは第1多孔質基材を含み、第2セパレータは第2多孔質基材を含み、第1電極シート、第1セパレータ、第2電極シート及び第2セパレータは順に積層設置されて電極アセンブリを形成し、ここで、第1多孔質基材の少なくとも一方の表面にはポリマー接着層が設けられており、第2多孔質基材の少なくとも一方の表面にはポリマー接着層が設けられていない電気化学装置を提供する。
【0016】
本発明において、第1電極シートは正極シートであってもよく、負極シートであってもよい。同様に、第2電極シートは正極シートであってもよく、負極シートであってもよい。ただし、第1電極シートと第2電極シートの電気的極性は、逆である。例えば、第1電極シートが正極シートである場合、第2電極シートが負極シートとなり、第1電極シートが負極シートである場合、第2電極シートが正極シートとなる。電極アセンブリは積み重ね、折り畳み又は巻き取りの構造であってもよく、第1電極シートと第2電極シートとは、介在するポリマー接着層が設けられた第1セパレータにより互いに離隔し、電極アセンブリに巻き取った後、ポリマー接着層が設けられた第1セパレータは、電極アセンブリの角部における応力の解放に寄与する。本発明において、ポリマー接着剤を第1セパレータの表面に設置することにより、ポリマー接着層を形成してもよい。また、第2セパレータも、第1電極シートと第2電極シートとの間に設けられてもよい。第1セパレータと第2セパレータは、互いに連結されてもよく、連結されなくてもよいが、好ましくは、第1セパレータと第2セパレータは互いに連結されない。
【0017】
第1多孔質基材と第2多孔質基材は、本分野で常用される多孔質基材材料から選択されてもよい。
【0018】
前記したように、本発明に係る電気化学装置において、正極シート又は負極シートの間に設けられた第1セパレータの第1多孔質基材の少なくとも一方の表面にポリマー接着層が設けられている。したがって、正極シートと負極シーのうち少なくとも一者の表面は、ポリマー接着層と直接接触する。具体的には、前記第1多孔質基材の両面のいずれにもポリマー接着層が設けられているか、又は第1多孔質基材の一方のみの表面にポリマー接着層が設けられている。
【0019】
本発明に係る電気化学装置の一実施形態において、第2多孔質基材の両面のいずれにも、前記ポリマー接着層が設けられていない。この場合、第2セパレータは第2基材のみからなり、正極シートと負極シートに接着作用を有しない。
【0020】
本発明に係る電気化学装置の一実施形態において、第2多孔質基材の一方のみの表面には、ポリマー接着層が設けられていない。より具体的な実施形態において、第2多孔質基材の、第1セパレータから離れた表面には、ポリマー接着層が設けられていない。この場合、ポリマー接着層が設けられていない表面は、電解液との直接接触を回避でき、ポリマー接着層の電解液への溶解によるゲル化問題を緩和することができる。
【0021】
本発明に係る電気化学装置の一実施形態において、第1多孔質基材の一方のみの表面にポリマー接着層が設けられており、第2多孔質基材の一方のみの表面にポリマー接着層が設けられていない。このような実施例において、ポリマー接着層は、第1多孔質基材と第2多孔質基材のそれぞれのいずれか一方の表面に設けられてもよい。
【0022】
ポリマー接着層は、隣接する機能層同士を接着する役割を果たし、第1多孔質基材又は第2多孔質基材の表面に設けられたポリマー接着層の面密度は、接着強度に大きな影響を与えられる。本発明において、ポリマー接着層の面密度は0.5mg/1540.25mm2~10mg/1540.25mm2である。ポリマー接着層の面密度が小さすぎると、接着効果が良くない。一方、ポリマー接着層の面密度が増大すると接着強度を向上させることができるが、効果的な接着強度を確保できる上で、ポリマー接着層の面密度が大きすぎると材料の無駄やコストの増加を招く。したがって、ポリマー接着層の面密度は、好ましくは、0.5mg/1540.25mm2~10mg/1540.25mm2である。
【0023】
本発明に係る電気化学装置において、第1多孔質基材及び第2多孔質基材は、それぞれ独立して、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリフェニレンサルファイド、及びポリ(2-ビニルナフタレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなるポリマーフィルム、多層ポリマーフィルム、または不織布であってもよい。
【0024】
ポリマー接着層は粘着性を有し、正極シート又は負極シートを、それと隣接するセパレータと接着することができ、電極アセンブリの形態維持(定型)に寄与する。また、ポリマー接着層自体の弾性により、巻回電極アセンブリの巻回後の角部における応力の解放を促進し、電極アセンブリの変形を抑制し、電極アセンブリの安定性及び安全性を向上することができる。ポリマー接着層は、ポリマーからなる接着剤を含み、前記ポリマーは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチル化アミロペクチン、シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0025】
ポリマー接着層の機械的強度及び熱安定性を向上させるために、第1多孔質基材とポリマー接着層との間に無機材料層を設けてもよい。前記無機材料層は、無機粒子を含み、該無機粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸チタンリチウム、チタン酸ランタンリチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0026】
本発明に係る電気化学装置の一実施形態において、第2多孔質基材の表面には、無機材料層が設けられていない。いくつかの場合、第2セパレータの厚さを薄くし、電気化学装置のエネルギー密度を向上するために、第2多孔質基材の表面に無機材料層が設けられなくてもよい。
【0027】
本発明に係る電気化学装置において、正極シートは、正極集電体と、正極集電体に設けられた正極活物質層とを含み、前記正極活物質層は、正極活物質、バインダーと導電剤を含む。正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な化合物を含む。正極活物質は、リチウムと、コバルト、マンガン又はニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含む複合酸化物を含んでもよい。正極活物質の具体的な種類は、具体的に限定されず、需要に応じて選択すればよい。正極活物質としては、コバルト酸リチウムLiCoO2(LCO)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(811,712,622,523,111)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、マンガン酸リチウムからなる群から少なくとも1つを任意に選択してもよい。これらの正極活物質は、単独で使用してもよく、任意の2種以上を併用してもよい。また、上記正極活物質は、ドーピングされていてもよい。
【0028】
正極活物質は、表面に塗膜を有してもよく、又は塗膜中の化合物成分と一致する別の化合物と混合してもよい。この塗膜は、塗布元素を有する酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、オキシ炭酸塩およびヒドロキシ炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの塗布元素化合物を含んでもよい。塗膜に用いる化合物は、非晶質であっても結晶質であってもよい。塗布元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、AまたはZrのうちの1種または複数種を含んでもよい。正極活物質の性能に悪影響を与えない限り、任意の方法で塗膜を施してもよい。例えば、該方法は、当業者にとって周知の任意の塗布方法、例えば、スプレー法、浸漬法等を含んでもよい。
【0029】
バインダーは、正極活物質粒子同士の結合を強化し、正極活物質と集電体との結合をさらに強化することができる。バインダーの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、エチレンオキシド基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロン等が挙げられる。
【0030】
正極活物質層は、導電剤を含むことによって、正極シートに導電性を付与する。該導電剤は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電性材料を含んでもよい。導電剤の非限定的な例としては、カーボン系材料(例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)、金属系材料(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉、金属繊維など)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
正極集電体は、アルミニウム箔、銅箔又はニッケル箔であってもよいが、これに限定されない。
【0032】
負極シートは、負極集電体と、該集電体に設けられた負極活物質層とを含み、負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質の具体的な種類は、具体的に制限されず、需要に応じて選択すればよい。具体的には、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略称する)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO2、スピネル構造のリチウム化TiO2-Li4Ti5O12、Li-Al合金のうちの1種又は複数種であってもよい。炭素材料の非限定的な例としては、結晶性炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物などが挙げられる。結晶性炭素は、不規則形状や、シート状、小フレーク状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛であってもよい。非晶質炭素は、メソフェーズピッチ炭化物、か焼コークス等であってもよい。
【0033】
負極活物質層は、バインダーを含んでもよい。バインダーは、負極活物質粒子同士の結合、および負極活物質と集電体との結合を強める。バインダーの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンオキシド基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロン等が挙げられる。
【0034】
負極活物質層は、導電剤を含む。該導電剤は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電性材料を含むことができる。導電性材料の非限定的な例としては、カーボン系材料(例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなど)、金属系材料(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉、金属繊維など)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
負極集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、導電性金属で被覆されたポリマー基材及びそれらの組み合わせから選択してもよい。
【0036】
本発明において、電気化学装置は、二次電池であってもよい。本発明の電気化学装置は、可逆的に吸蔵・放出可能なイオンの種類により、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池であってもよく、本発明はリチウムイオン電池を例として詳細に説明する。本発明の電気化学装置は、電解質の形態により、液体電池、ゲル電池であってもよく、固体電池であってもよい。
【0037】
リチウムイオン電池において、封止材はアルミラミネートフィルムであってもよい。包装過程中に、外装体で包む。包装用アルミラミネートフィルムは硬度が低いことから、電極アセンブリに対して拘束作用をほぼ有せず、また、リチウムイオン電池の充放電過程中に発生した電極シートの膨張による応力がその角部で解放できないことから、リチウムイオン電池が変形しやすく、幅及び厚さ寸法が制御不能となる。したがって、巻回構造のパウチ型リチウムイオン電池であれば、接着機能を有する塗膜付きセパレータによって電極シートの接着及び定型を実現し、同時に有機物塗膜の可圧縮性によって角部における応力の解放を実現し、これによりリチウムイオン電池の変形を抑制する場合が多い。しかしながら、このような接着機能を有する有機化合物塗膜は、ポリマー接着層であることが多く、有機物塗膜は高温化成過程中に電解液中のある溶媒や添加剤と相互に作用してゲルを形成しやすい。形成したゲルは、アルミラミネート袋の辺縁における封止領域に粘着することがある。包装フィルムの封止は、主に、アルミラミネートフィルムの内層を構成するポリプロピレン(PP)が高温及び大きな圧力下で溶融接着することにより行う。この場合、封止領域におけるゲルは、両側のアルミラミネートフィルムのポリプロピレン層の間に介在し、ポリプロピレン溶融接着の効果に影響し、封止強度が不十分になり、少なくとも、アルミラミネート袋の辺縁の封止有効期間に影響可能であり、ひいては、封止が完全に失効し漏液が生じるという深刻な問題が起こることもある。
【0038】
採用される2つ多孔質基材は、いずれも両面にポリマー接着層を塗布するか、又はいずれもポリマー接着層を全く設けない場合には、リチウムイオン電池の電極アセンブリの変形抑制と外装体の封止信頼性とを両立することができない。リチウムイオン電池の変形は、界面劣化及びサイクル性能の急遽低下を招き、さらにリチウム析出等のセキュリティリスクを招く。封止強度が不十分であると、リチウムイオン電池の封止有効期間を大幅に短縮し、漏液の恐れもある。
【0039】
本発明は、ポリマー接着剤が設けられた第1セパレータにより正極シートと負極シートが離隔し、ポリマー接着層の可撓性によって電極アセンブリの定型及び角部における応力の解放を促進し、これによりパウチ型リチウムイオン電池外装体の封止信頼性を向上し、リチウムイオン電池の耐用寿命を延長することができる。
【0040】
本発明において、第2多孔質基材の少なくとも一方の表面には、ポリマー接着層が設けられていない。換言すれば、第2セパレータは、両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない一層のセパレータであってもよく、第2セパレータの内側表面(電極アセンブリの中心に面する表面)のみにポリマー接着層が設けられていてもよい。本発明に係る電気化学装置において、巻回電極アセンブリの最外側は、両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない多孔質基材で巻き終わる。電極アセンブリの表面には電解液と接触するポリマー接着剤が存在しないため、ポリマー接着層が電解液へ溶解することによりリチウムイオン電池化成過程中にゲル形成を招きやすいという問題を緩和することができる。ゲルが形成すると、他の物品と粘着しやすく、巻回電極アセンブリの後続の外装工程においてアルミラミネートフィルムの内側を構成するポリプロピレンの封止操作に影響し、リチウムイオン電池外装体の封止信頼性が低下することがある。
【0041】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明に係る電気化学装置を詳細に説明する。
【0042】
本発明に係る電気化学装置構造の利点を検証するために、リチウムイオン電池の電極アセンブリの変形及びゲル形成状況を測定した。
【実施例1】
【0043】
<正極シートの製造>
正極活物質であるコバルト酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比94:3:3で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として添加して固形分含有量が75%のスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚さが12μmのアルミニウム箔の一方の表面に均一に塗布し、90℃の条件下で乾燥させ、冷間プレス後に正極活物質層の厚さが100μmの正極シートを得た。そして、該正極シートの他方の表面に以上の操作を再度に行い、両面に正極活物質層が塗布された正極シートを得た。正極シートを切断して形を整え、タブを溶接した後に、後続の実験に使用した。
【0044】
<第1セパレータの製造>
製造されたプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体、N-ドデシルジメチルアミン、ポリジメチルシロキサンを質量比90:3:7で混合し、得られた混合物をアセトンに溶解し、固形分含有量が40%の接着剤スラリーを得た。該接着剤スラリーを第1多孔質基材(厚さ9μm、材質がポリエチレン、孔隙率36%)の両面に均一に塗布し、ポリマー接着層を形成し、単層のポリマー接着層の厚さを2μmにした。
【0045】
<負極シートの製造>
負極活物質である人造黒鉛、アセチレンブラック、スチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを質量比96:1:1.5:1.5で混合し、脱イオン水を溶媒として添加して固形分含有量が70%のスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚さが8μmの銅箔の一方の表面に均一に塗布し、110℃の条件下で乾燥させ、冷間プレス後に負極活物質層の厚さが150μmの、片面に負極活物質層が塗布された負極シートを得た。そして、該負極シートの他方の表面に以上の塗布操作を再度に行い、両面に負極活物質層が塗布された負極シートを得た。負極シートを切断して形を整え、タブを溶接した後に、後続の実験に使用した。
【0046】
<第2セパレータの製造>
第2多孔質基材は、厚さが9μm、材質がポリエチレン、孔隙率が36%であった。
【0047】
<電解液の製造>
含水量が10ppm未満の環境下に、非水有機溶媒である炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)、炭酸ビニレン(VC)を質量比20:30:20:28:2で混合し、得られた非水有機溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を添加、溶解し、均一に混合してLiPF6と非水有機溶媒とを質量比8:92で含む電解液を得た。
【0048】
<電極アセンブリの製造>
図1を参照すると、巻回式リチウムイオン電池における電極アセンブリの横断面が示されている。巻回式リチウムイオン電池における電極アセンブリの横断面は、順に積層された第1電極シート1、第1セパレータ3、第2電極シート2、第2セパレータ4、第1電極シート1に設けられた複数の第1タブ5、及び第2電極シート2に設けられた複数の第2タブ6を有する。また、電極アセンブリの各機能層が巻き終わる時に、第2セパレータ4が最外側に位置する。
【0049】
図2は、
図1に示される巻回式リチウムイオン電池における電極アセンブリの各層の積層構造を示す概略図である。
図2において、第1電極シート1は正極シートであり、第2電極シート2は負極シートであり、第1セパレータ3は第1多孔質基材30を含み、第1多孔質基材30の両面に面密度が0.5mg/1540.25mm
2のポリマー接着層31とポリマー接着層32が塗布されている。第2セパレータ4は第2多孔質基材40からなり、第2多孔質基材40の両面のいずれにもポリマー接着層が塗布されていない。
【0050】
図3には、電極アセンブリの一種の巻回電極アセンブリの製造プロセスが示されている。巻取設備中には、第1セパレータ3(ポリマー接着層が設けられたセパレータ)及び第2セパレータ4(ポリマー接着層が設けられていないセパレータ)はそれぞれ両側から入り、第2セパレータ4は外側に位置して入る。巻芯8が回転する時に、第1電極シート1、第2電極シート2、第1セパレータ3及び第2セパレータ4は、ローラー7に沿って走行し、これによって第1電極シート1(正極シート)、第1セパレータ3、第2電極シート2(負極シート)、第2セパレータ4の交互巻回を実現する。
図1に示されるように、巻き終わる時に、第2セパレータ4は最外側に位置する。
【0051】
<リチウムイオン電池の製造>
巻き取った電極アセンブリを外装用アルミラミネートフィルムからなる外装体に置き、注液口を設置した。注液口から電解液を注入し、封止、さらに化成、容量グレード分け等の工程を経てリチウムイオン電池を製造した。
【実施例2】
【0052】
本実施例に係る電気化学装置における電極アッセンブリは、
図4に示されている。本実施例2に係る電気化学装置は、第1多孔質基材30の一方のみの表面にポリマー接着層31が設けられた点で実施例1と相違した。また、
図4に示されるように、第2多孔質基材40の、第2電極シート2に近い一方の表面にポリマー接着層41が塗布された。
【実施例3】
【0053】
図5に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、第1多孔質基材30の一方のみの表面にポリマー接着層31が設けられ、第1多孔質基材30とポリマー接着層32との間に無機材料層34がさらに設けられた点で、実施例1と相違した。
【実施例4】
【0054】
図6に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、第2多孔質基材40の、第2電極シート2に近い一方の表面にポリマー接着層41が塗布された点で、実施例1と相違した。
【実施例5】
【0055】
図7に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、巻回された電極アセンブリの片側に位置する各層の第1電極シートと各層の第2電極シートのみにタブが設けられており、片側マルチタブ構造を形成し、第1セパレータ3と第2セパレータ4が連結されていない点で、実施例1と相違した。
【実施例6】
【0056】
図8に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、巻回された電極アセンブリの片側に位置する正極シートと負極シートの中央部のみに正極タブと負極タブが設けられ、第1セパレータ3と第2セパレータ4が連結されていない点で、実施例1と相違した。
【実施例7】
【0057】
図9に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、巻回された電極アセンブリにおいて、電極アセンブリが第1電極1(正極シート)の外側で巻き終わり、巻回された電極アセンブリにおける正極シートと負極シートの開始部にそれぞれ一つの正極タブと一つの負極タブ(シングルタブ構造)が設けられた点で、実施例1と相違した。
【実施例8】
【0058】
図10に示されるように、本実施例に係る電気化学装置は、巻回された電極アセンブリに全タブ構造を有し、すなわち、電極シートの辺縁における、活物質層を塗布せずに金属箔を露出する領域を、タブに型抜きせずにそのまま保留した点で、実施例1と相違した。
【比較例1】
【0059】
本実施例に係る電気化学装置は、第1多孔質基材30を第1セパレータ3とし、第2多孔質基材40を第2セパレータ4とした点で、実施例1と相違した。
【比較例2】
【0060】
本実施例に係る電気化学装置は、第1セパレータ3の第1多孔質基材30の両面にポリマー接着層が塗布され、第2セパレータ4の第2多孔質基材40の両面にポリマー接着層が塗布された点で、実施例1と相違した。
【0061】
実施例1~実施例8、比較例1と比較例2の電極アセンブリの冷間プレス後の状態、電極アセンブリの満充電後の状態、及び化成過程中のゲル溶出状況を観察し、結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1から分かるように、本発明に係る巻回構造を採用する電極アセンブリは、優れた冷間プレス後の定型効果を発揮でき、第2セパレータにポリマー接着層が設けられていないため、電池化成過程中にゲルが溶出するという問題が発生しなかった。また、従来のリチウムイオン電池中のセパレータにおいて、ポリマー接着剤のコストは、セパレータ全体のコストの30%程度を占める。本発明により、第1セパレータ(塗膜付きセパレータ)と第2セパレータを混用する方式を採用することによってポリマー接着剤の使用量を減少することができ、またポリマー接着剤の使用量を大幅に減少することによって、リチウムイオン電池のコストを大幅に低下させることができる。
【0064】
また、ポリマー接着層の面密度による電極アセンブリの性能への影響について検討した。
【実施例9】
【0065】
本実施例に係る電気化学装置は、ポリマー接着層の面密度が5mg/1540.25mm2に変更され、第2セパレータの両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない点で、実施例5と相違した。
【実施例10】
【0066】
本実施例に係る電気化学装置は、ポリマー接着層の面密度が10mg/1540.25mm2に変更され、第2セパレータの両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない点で、実施例5と相違した。
【実施例11】
【0067】
本実施例に係る電気化学装置は、ポリマー接着層の面密度が0.3mg/1540.25mm2に変更され、第2セパレータの両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない点で、実施例1と相違した。
【実施例12】
【0068】
本実施例に係る電気化学装置は、ポリマー接着層の面密度が15mg/1540.25mm2に変更され、第2セパレータの両面のいずれにもポリマー接着層が設けられていない点で、実施例1と相違した。
【0069】
ポリマー接着層の面密度が異なる各電極アセンブリを測定し、測定結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
表2から分かるように、ポリマー接着層の面密度が0.5mg/1540.25mm2~10mg/1540.25mm2の範囲内である場合、良好なリチウムイオン電池の定型効果が得られたと共に、リチウムイオン電池に高いエネルギー密度を持たせることができた。ポリマー接着層の面密度が0.5mg/1540.25mm2未満の場合、ポリマー接着剤の量が少なすぎたため、リチウムイオン電池の定型効果が悪くなり、ポリマー接着層の面密度が10mg/1540.25mm2より高くなった場合、良好なリチウムイオン電池の定型効果が得られたが、リチウムイオン電池のエネルギー密度の低下を招いた。
【0072】
本発明により、本発明にかかる電気化学装置を備える電子装置をさらに提供する。該電子装置は、スマートフォン、電気自動車、電動自転車、ノートパソコン、カメラ、電動玩具、無人航空機等であってもよい。
【0073】
上記明細書の開示に基づいて、当業者は上記実施形態に対して適宜変更、修正することもできる。したがって、本発明は以上に開示、説明した具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明に対するいくつかの修正及び変更も本発明の請求項の保護範囲内に含まれることが考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1 第1電極シート
2 第2電極シート
3 第1セパレータ
30 第1多孔質基材
31 ポリマー接着層
32 ポリマー接着層
34 無機材料層
4 第2セパレータ
40 第2多孔質基材
41 ポリマー接着層
5 第1タブ
6 第2タブ
7 ローラー
8 巻芯