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特許7206420量子ノイズプロセスの分析方法、システム、記憶媒体、及び電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】量子ノイズプロセスの分析方法、システム、記憶媒体、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/33 20200101AFI20230110BHJP
   G06F 111/14 20200101ALN20230110BHJP
   G06F 119/10 20200101ALN20230110BHJP
【FI】
G06F30/33
G06F111:14
G06F119:10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021562866
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2021101419
(87)【国際公開番号】W WO2022041974
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010882560.X
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 玉琴
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 昌▲諭▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲勝▼誉
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0150761(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110210073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06F 111/14
G06F 119/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器により実行される、量子ノイズプロセスの分析方法であって、前記方法は、
1グループの量子初期状態を作成するステップと、
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得するステップであって、前記第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる、ステップと、
前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得するステップであって、前記第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる、ステップと、
前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、
第1誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、を含む、量子ノイズプロセスの分析方法。
【請求項2】
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得する前記ステップは、
複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、各進化時点の複数の第1量子出力状態を獲得するステップを含み、
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得する前記ステップは、
前記複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、各進化時点の複数の第2量子出力状態を獲得するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定する前記ステップは、
前記複数の進化時点のうちの各進化時点に対して、
前記進化時点に対応する、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び、対応する、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記進化時点に対応する量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定する、処理を実行するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係に基づいて、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定するステップをさらに含み、前記遷移テンソルマッピングは量子システムのメモリカーネルに基づく量子ノイズプロセスの動力学的進化を表すことに用いられ、前記メモリカーネルは前記量子システムの現在時点の状態と前の時点の状態との連係を表すことに用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルは、一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを含み、前記方法は、
前記一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、前記遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及び前記プリセットされた第1対応関係に基づいて、前記一定時間後の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを予測するステップ、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記量子ノイズプロセスの遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及びプリセットされた第2対応関係に基づいて、前記量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトルを決定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトル、及びプリセットされた第3対応関係に基づいて、前記量子ノイズプロセスの関連関数を決定するステップと、
前記量子ノイズプロセスの関連関数に基づいて前記量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを決定するステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築するステップであって、前記非マルコフノイズモデルは前記量子ノイズプロセスのデコヒーレンス率に基づくモデルである、ステップと、
前記量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定するステップと、をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1グループの量子初期状態を作成する前記ステップは、
複数の候補パウリ行列を決定し、各前記候補パウリ行列に基づいて1グループの候補量子初期状態を作成するステップと、
作成した各グループの前記候補量子初期状態に対応する非マルコフノイズ強度を決定するするステップと、
複数グループの前記候補量子初期状態にそれぞれ対応する非マルコフノイズ強度から最も大きな非マルコフノイズ強度を決定し、且つ前記最も大きな非マルコフノイズ強度に対応する候補パウリ行列に基づいて1グループの量子初期状態を作成するステップと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築する前記ステップは、
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルと前記量子ノイズプロセスのデコヒーレンス率との間の対応関係に基づいて、前記量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定する前記ステップの前に、前記方法は、
前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピングに対してパウリ回転近似を行って、量子ノイズチャネル中のパウリノイズチャネルを保留するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定する前記ステップは、
前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップを含み、
前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定する前記ステップは、
前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
前記量子ノイズプロセスが非マルコフ量子ノイズプロセスではなく、且つ前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの数がプリセットされた量子ビットのヒルベルト空間次元を超えるときに、量子システム中に量子ビット漏れが出現すると決定するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、
量子ビットが異なるレベルのヒルベルト部分空間の間で相互に漏れる漏れ量に基づいて、前記量子システムに出現する量子ビット漏れの量子ビット漏れ量を決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
量子ノイズプロセスの分析システムであって、作成ユニットと、テストユニットと、誤差固有スペクトルユニットと、分析ユニットと、を含み、
前記作成ユニットは、1グループの量子初期状態を作成するように構成され、
前記テストユニットは、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得するように構成され、前記第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なり、
前記誤差固有スペクトルユニットは、前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成され、
前記テストユニットはさらに、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得するように構成され、前記第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なり、
前記誤差固有スペクトルユニットはさらに、前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成され、
前記分析ユニットは、第1誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される、量子ノイズプロセスの分析システム。
【請求項16】
コンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサがロードし、且つ請求項1~14のいずれか1項に記載の量子ノイズプロセスの分析方法を実施するように構成される、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
プロセッサ、及びメモリを含む、電子機器であって、
前記メモリはコンピュータプログラムを記憶することに用いられ、前記プロセッサは前記メモリに記憶されているコンピュータプログラムを実行するときに、請求項1~14のいずれか1項に記載の量子ノイズプロセスの分析方法を実施することに用いられる、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は量子情報処理の技術分野に関し、特に量子ノイズプロセスの分析方法、システム、記憶媒体、及び電子機器に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は出願番号が第202010882560.X号であり、出願日が2020年8月28日である中国特許出願に基づき提案され、且つ該中国特許出願の優先権を主張し、該中国特許出願の全内容はここで参考として本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
現在の量子情報処理技術は物理、及び情報科学分野の研究ホットスポットであり、軍事、国防、金融等の情報セキュリティ分野で大きな応用価値、及び将来性を有し、軍事、国防等の分野の国家レベル機密通信に用いられるだけでなく、さらに政府、電気通信、商工、財政等の分野、及び部門に用いることができる。そのうちの一種の方法、即ち量子プロセストモグラフィは、主にノイズチャネルによって入力された1グループの標準量子状態に対して、一連の測定プロセスによって量子ノイズプロセスの数学的記述を再構成し、量子プロセストモグラフィのプロセスでは量子ノイズプロセスの動力学的マッピングの関連情報を抽出することができる。
【0004】
ここで、量子ノイズプロセスは、量子システム又は量子デバイスが環境と相互に作用し、又は制御自体が完璧ではないため、引き起こした量子情報の汚染プロセスであり、ここで1つの超演算子でチャネルを示すことができ、より高い次元に拡張すると、行列で示すことができる。しかし、従来の量子プロセストモグラフィは主にマルコフノイズチャネル(Markovian noise channel)の量子ノイズプロセスに適用できるが、非マルコフノイズチャネルに対して効果的な検出手段、及び定量分析方法が足りない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例の一態様は量子ノイズプロセスの分析方法を提供し、
1グループの量子初期状態を作成するステップと、
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得するステップであって、前記第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる、ステップと、
前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、
作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得するステップであって、前記第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる、ステップと、
前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、
第1誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定するステップと、を含む。
【0006】
本願の実施例の他の態様は量子ノイズプロセスの分析システムを提供し、作成ユニットと、テストユニットと、誤差固有スペクトルユニットと、分析ユニットと、を含み、
前記作成ユニットは、1グループの量子初期状態を作成するように構成され、
前記テストユニットは、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得するように構成され、前記第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なり、
前記誤差固有スペクトルユニットは、前記複数の第1量子出力状態と前記量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成され、
前記テストユニットはさらに、作成した前記量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得するように構成され、前記第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各前記ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる前記第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なり、
前記誤差固有スペクトルユニットはさらに、前記複数の第2量子出力状態と前記量子初期状態との間の、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成され、
前記分析ユニットは、第1誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む前記動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される。
【0007】
本願の実施例の他の態様はコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサによりロードされ且つ本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法を実行することに適する。
【0008】
本願の実施例の他の態様は電子機器をさらに提供し、プロセッサとメモリとを含み、
前記メモリはコンピュータプログラムを記憶することに用いられ、前記プロセッサは、前記メモリに記憶されているコンピュータプログラムを実行するときに、本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法を実現することに用いられる。
【0009】
本願の実施例の技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例の記述に使用される必要がある図面を簡単に紹介する。明らかなように、以下の記述における図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働を必要としない前提下で、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法の模式図である。
図1b】本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法の実現構造の模式図である。
図2】本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法のフローチャートである。
図3a】本願の実施例における複数の第1回線の模式図である。
図3b】本願の実施例における複数の第2回線の模式図である。
図4】本願の応用実施例で提供される量子ノイズプロセスの分析方法のフローチャートである。
図5a】本願の応用実施例における一種の将来進化に対する予測結果が時間につれて変化する模式図である。
図5b】本願の応用実施例における他の一種の将来進化に対する予測結果が時間につれて変化する模式図である。
図6a】本願の応用実施例における一種の量子ノイズプロセスの関連関数パラメータ値が時間につれて変化する模式図である。
図6b】本願の応用実施例における他の一種の量子ノイズプロセスの関連関数パラメータ値が時間につれて変化する模式図である。
図7a】本願の応用実施例における一種の量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルが時間につれて変化する模式図である。
図7b】本願の応用実施例における他の一種の量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルが時間につれて変化する模式図である。
図8a】本願の応用実施例における一種の量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度が時間につれて変化する模式図である。
図8b】本願の応用実施例における他の一種の量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度が時間につれて変化する模式図である。
図9】本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析システムの構造模式図である。
図10】本願の実施例が提供する電子機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施例における図面と併せて、本願の実施例の技術的手段に対して明確、完全な記述を行う。明らかなように、記述される実施例は本願の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提下で取得するすべての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0012】
本願の明細書、特許請求の範囲、及び上記図面における「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」等(存在すれば)の用語は類似する対象を区別することに用いられ、特定の順序又は前後順番を記述することに用いられる必要がない。理解すべき点として、このように使用されるデータは適切な場合下で相互に交換でき、これによりここで記述される本願の実施例は、例えばここで図示又は記述されるそれらのもの以外の順序で実施できる。また、「含む」と「有する」という用語、及びそれらのいずれかの変形は、非排他的な含みをカバーすることを意味し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は明確にリストされたそれらのステップ又はユニットに限定される必要がなく、明確にリストされていない又はこれらのプロセス、方法、製品又は機器に対して固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。以下の記述では、係る「複数」という用語とは少なくとも2つを指す。
【0013】
本願の実施例は量子ノイズプロセスの分析方法を提供し、量子システム中のノイズに対して分析を行うことに用いることができ、例えば非マルコフ量子ノイズプロセスに対して分析を行い、図1aに示すように、量子ノイズプロセスの分析システムは以下のステップに応じてノイズ分析を実現することができる。
【0014】
1グループの量子初期状態100を作成し、作成した量子初期状態100をそれぞれ複数の第1回線200に入力し、複数の第1量子出力状態110を獲得し、第1回線200は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる第1回線200中のノイズ進化ゲートの数は異なる。複数の第1量子出力状態110と量子初期状態100との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル120を決定する。作成した量子初期状態100をそれぞれ複数の第2回線210に入力し、複数の第2量子出力状態130を獲得し、第2回線210は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる第2回線210中のノイズ進化ゲートの数は異なる。複数の第2量子出力状態130と、量子初期状態100との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル140を決定する。第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル120、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル140に基づいて、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル150を決定し、それにより、量子ノイズプロセスに対して分析を行う。
【0015】
このように、第1回線200、及び第2回線210に含まれる投影テストゲートの数が異なるため、量子初期状態100に対して進化プロセスで分析を行う時にもたらす誤差も異なり、即ち、第1誤差と第2誤差は異なる。その後、第1誤差の動力学的マッピング固有スペクトル120、及び第2誤差の動力学的マッピング固有スペクトル140に基づいて誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトル150を獲得することができる。それにより、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトル150に基づいて量子ノイズプロセスの分析を行うことはより正確になり、さらに量子システム中のノイズに対して監視制御をより正確に行うことができる。それにより、量子システムに対する調整制御は正確なねらいを有する。
【0016】
以下、本願の実施例が提供する電子機器の例示的応用を説明し、本願の実施例が提供する電子機器は各種のタイプの端末機器として実施されてもよく、サーバとして実施されてもよい。図1bに示すように、端末機器400はネットワーク300を介してサーバ200に接続され、ここで、ネットワーク300はワイドエリアネットワーク又はローカルエリアネットワークであってもよく、又は両者の組み合わせであってもよい。
【0017】
いくつかの実施例では、電子機器が端末機器であることを例とすると、本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法は端末機器により実現されてもよい。例えば、端末機器400は自体の計算能力に基づき図1aに示された各ステップを実現することができる。
【0018】
いくつかの実施例では、電子機器がサーバであることを例とすると、本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法はサーバにより実現されてもよい。例えば、サーバ200は自体の計算能力に基づき図1aに示された各ステップを実現することができる。
【0019】
いくつかの実施例では、本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法は端末機器、及びサーバにより協調して実現されてもよい。例えば、端末機器400はサーバ200に分析命令を送信できる。それによりサーバ200は受信した分析命令に基づいて、図1aに示された各ステップを実現する。サーバ200はさらに分析結果を端末機器400に送信して、分析命令に対する応答とすることができる。このようにして、端末機器400はサーバ200の計算能力の助けを借りて量子ノイズプロセスの分析を実現することができる。
【0020】
いくつかの実施例では、端末機器400又はサーバ200はコンピュータプログラムを実行することによって、本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法を実現することができ、例えば、コンピュータプログラムは、オペレーティングシステムにおけるネイティブプログラム又はソフトウェアモジュールであってもよく、ネイティブ(Native)アプリケーションプログラム、即ちオペレーティングシステムにインストールしてこそ実行できるプログラムであってもよい。要するに、上記コンピュータプログラムは、任意の形態のアプリケーションプログラム、モジュール又はプラグインであってもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、サーバ200は、独立した物理サーバであってもよく、複数の物理サーバから構成されるサーバクラスタ又は分散型システムであってもよく、さらに、クラウドサービス、クラウドデータベース、クラウドコンピューティング、クラウド関数、クラウド記憶、ネットワークサービス、クラウド通信、ミドルウェアサービス、ドメイン名サービス、安全サービス、コンテンツ配信ネットワーク(Content Delivery Network、CDN)、ビッグデータ、及び人工知能プラットフォーム等の基本的なクラウドコンピューティングサービスを提供するクラウドサーバであってもよい。端末機器400は、スマートフォン、ノートパソコン、デスクトップコンピュータ又は量子分析に専用する特定の端末機器等であってもよいが、それらに限定されない。端末機器、及びサーバは有線又は無線の通信方式で直接又は間接的接続を行ってもよく、本願の実施例で制限しない。
【0022】
本願の実施例は量子ノイズプロセスの分析方法を提供し、量子ノイズプロセスの分析システムが実行する方法であってもよく、フローチャートは図2に示すように、以下のステップを含む。
【0023】
ステップ101:1グループの量子初期状態を作成する。
【0024】
理解できるように、量子情報処理は量子システムにおける情報に対して処理を行い、ここで、量子システムは全宇宙の一部であり、その運動法則は量子力学に従うが、量子システムのすべての情報はいずれも1つの量子状態により表すことができ、本実施例では、量子システムにおける量子ノイズプロセスに対して分析を行うために、まず1グループの初期状態の量子状態(即ち量子初期状態)を作成し、例えば、1つのパウリ行列(即ちパウリ基)を選択して量子初期状態を作成してもよい。
【0025】
ステップ102:作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得し、第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる。
【0026】
例えば、複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、各進化時点の複数の第1量子出力状態を獲得してもよく、このように複数グループの第1量子出力状態を取得することができ、各グループの第1量子出力状態は1つの進化時点に対応し、量子初期状態がそれぞれ複数の第1回線を通過した後に獲得した量子出力状態を含む。
【0027】
ここで、隣接する進化時点間の時間間隔はいずれも同じであってもよく、即ち複数の進化時点はti=δt、2δt、…、Nδtであってもよく、ノイズ進化ゲートとは時間につれて進化するノイズチャネルを指し、各進化時点のノイズ進化ゲートは動力学的進化マッピングで示すことができ、投影テストゲートは主にノイズチャネルに対してある1つの方向の投影テストを行うことに用いられ、各進化時点の投影テストゲートは投影測定マッピングで示すことができる。
【0028】
マルコフ量子ノイズプロセスで、量子初期状態が任意の進化時点に第1回線によって出力する第1量子出力状態は、1つ前の進化時点に第1回線によって出力した第1量子出力状態のみに関連し、非マルコフ量子ノイズプロセスで、量子初期状態が任意の進化時点に第1回線によって出力する第1量子出力状態は、前の複数の進化時点に第1回線によって出力した第1量子出力状態に関連する。本実施例におけるノイズ進化ゲートは非マルコフ量子ノイズチャネルであってもよい。
【0029】
ステップ103:複数の第1量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定する。該関数対応関係は、第1量子出力状態と量子初期状態を作成する時に用いられる情報との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの間に基づく関数対応関係であってもよい。
【0030】
各第1量子出力状態と量子初期状態の作成に使用される情報との間がいずれも量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係を有し、同時に上記ステップ101、及び102によって既知の量子初期状態、及び複数の第1量子出力状態を獲得できるため、さらに第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを解くことができる。ここで、上記ステップ102では、第1量子出力状態を獲得するプロセスで、量子初期状態が少なくとも1グループのノイズ進化ゲート、及び投影テストゲート(即ち少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する1つの投影テストゲート)を通過するため、ここで少なくとも1つの投影テストゲートのテスト誤差が出現するため、本ステップによって決定した動力学的マッピング固有スペクトルは該テスト誤差、即ち第1誤差を含む。
【0031】
もし上記ステップ102で複数グループの第1量子出力状態を獲得し、それぞれ複数の進化時点に対応するなら、本ステップ103によって、複数の進化時点にそれぞれ対応する、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを獲得することができる。
【0032】
ここで、動力学的マッピング(Trace-Preserving Completely Positive map、TPCP)とは、主にトレース保存、及び完全正の動力学的マッピングを指し、ここで、トレース保存とは、動力学的進化プロセスで量子状態密度演算子のトレースが変化しないことを指し、完全正とは、もし密度演算子が非負であるなら、動力学的マッピングが密度演算子に作用する任意の部分は非負を維持することを指す。
【0033】
ステップ104:作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得し、第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる。
【0034】
例えば、複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、各進化時点の複数の第2量子出力状態を獲得してもよく、このように複数グループの第2量子出力状態を取得することができ、各グループの第2量子出力状態は1つの進化時点に対応し、量子初期状態がそれぞれ複数の第2回線を通過した後に獲得した量子出力状態を含む。
【0035】
非マルコフ量子ノイズプロセスで、量子初期状態が任意の進化時点に第2回線によって出力する第2量子出力状態は、前の複数の進化時点に第2回線によって出力する第2量子出力状態に関連する。
【0036】
ステップ105:複数の第2量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定する。該関数対応関係は、第2量子出力状態と量子初期状態を作成する時に用いられる情報との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの間に基づく関数対応関係であってもよい。
【0037】
各第2量子出力状態と量子初期状態との間がいずれも量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係を有し、同時に上記ステップ101、及び104によって既知の量子初期状態、及び複数の第2量子出力状態を獲得できるため、さらに第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを解くことができる。ここで、上記ステップ104では、第2量子出力状態を獲得するプロセスで、量子初期状態が少なくとも1グループのノイズ進化ゲート、及び二重投影テストゲート(即ち少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する1つの二重投影テストゲート)を通過し、ここで少なくとも2回の投影テストゲートのテスト誤差が出現するため、本ステップによって決定した動力学的マッピング固有スペクトルは該テスト誤差、即ち第2誤差を含む。
【0038】
もし上記ステップ104で複数グループの第2量子出力状態を獲得し、それぞれ複数の進化時点に対応するなら、本ステップ105によって複数の進化時点にそれぞれ対応する、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを獲得することができる。
【0039】
ステップ106:第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定する。
【0040】
例えば、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに対して一定の計算を行い、このように、最終的に獲得した量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルはいずれかの誤差を含まなくなる。それにより該動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて量子ノイズプロセスの分析を行うことができる。もし上記ステップ103で複数の進化時点にそれぞれ対応する第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを獲得すると同時に、上記ステップ105で複数の進化時点にそれぞれ対応する第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを獲得するなら、本ステップ106で、各進化時点に対して、進化時点に対応する第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルと、該進化時点に対応する第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルとを計算し、それにより該進化時点に対応する量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを獲得する。
【0041】
説明する必要がある点として、上記ステップ102~ステップ103とステップ104~ステップ105との間は絶対的な順序関係がなく、同時に実行されてもよく、順に実行されてもよく、図2に示されるのはそのうちの一種の応用実例に過ぎない。
【0042】
実現するときに、例えば、図3aに示すように、作成した量子初期状態Pをそれぞれ3つの第1回線に入力し、第1回線1は1つのノイズ進化ゲートU、及び、対応する1つの投影テストゲートMを含み、第1回線1は第1量子出力状態1を出力し、第1回線2は2つのノイズ進化ゲートU、及び各ノイズ進化ゲートUに対応する1つの投影テストゲートMを含み、第1回線2は第1量子出力状態2を出力し、第1回線3は3つのノイズ進化ゲートU、及び各ノイズ進化ゲートUに対応する1つの投影テストゲートMを含み、第1回線3は第1量子出力状態3を出力する。
【0043】
例えば、図3bに示すように、作成した量子初期状態Pをそれぞれ3つの第2回線に入力し、第2回線1は1つのノイズ進化ゲートU、及び、対応する1つの二重投影テストゲートMM(即ち2つの投影テストゲートM)を含み、第2回線1は第2量子出力状態1を出力し、第2回線2は2つのノイズ進化ゲートU、及び各ノイズ進化ゲートUに対応する1つの二重投影テストゲートMMを含み、第2回線2は第2量子出力状態2を出力し、第2回線3は3つのノイズ進化ゲートU、及び各ノイズ進化ゲートUに対応する1つの二重投影テストゲートMMを含み、第2回線3は第2量子出力状態3を出力する。
【0044】
ここで、実際の分析プロセスで、ノイズ進化ゲートUは、非マルコフ量子ノイズチャネル又はマルコフ量子ノイズチャネルとして設定されてもよく、且つパウリノイズチャネル又は非パウリノイズチャネルであってもよく、且つ実際の分析によって、異なるタイプのノイズチャネル下で、量子ノイズプロセスに対する分析効果を決定する。且つ各進化時点ti、例えばδt、2δt、…、及びnδtに、作成した量子初期状態をそれぞれ各第1回線、及び第2回線中に入力する必要があり、図3a、及び3b中に示される回線中のノイズ進化ゲートU、及び投影テストゲートMはいずれか1つの進化時点のノイズ進化ゲートU、及び投影テストゲートMであってもよい。
【0045】
ここで、各第1量子出力状態はいずれも1つの信号関数gti(k)によって示されてもよく、ここで、tiは進化時点を示し、kは異なる回線が出力する第1量子出力状態を区別することに用いられ、マルコフ量子ノイズプロセスで、任意の進化時点にある回線上で獲得される量子出力状態は、1つ前の進化時点に該回線上で獲得される量子出力状態のみに関連し、一方、非マルコフ量子ノイズプロセスで、任意の進化時点にある回線上で獲得される量子出力状態は、前の複数の進化時点に該回線上で獲得される量子出力状態に関連する。本実施例では、非マルコフ量子ノイズプロセスに対して例示的な説明を行い、ある進化時点において、上記図3aに示される3つの第1回線で獲得される第1量子出力状態がそれぞれgti(1)、gti(2)、及びgti(3)であると仮定すると、以下の式(1-1)によって示されてもよく、Nを用いて超演算子を示し、Nmeasは投影テストゲートのテスト誤差を示すが、Nprepは量子初期状態の作成誤差を示し、Λはノイズ進化ゲートの動力学的マッピングを示し、Mは投影テストゲートの投影テストマッピングであり、Pは1つのパウリ行列であり、量子初期状態を作成するときに、主に1つのパウリ行列Pを選択して作成する。
【0046】
【数1】
【0047】
単一ビットの量子状態を例とすると、以下の式(1-1-1)であり、ここで、Rvvはパウリ遷移行列であり、パウリ行列に基づいて計算して獲得でき、以下の式(1-2)によって示されてもよい。
【0048】
【数2】
【0049】
ここで、パウリ行列は以下(1-2-1)であり、以下の式(1-2-2)はパウリ行列Pの固有状態であり、M[ρ]はP方向の投影測定マッピングであり、以下の式(1-2-3)を利用して上記図3aに示される最初の2つの第1回線にそれぞれ対応するパウリ遷移行列を獲得することができ、以下の式(1-3)及び(1-4)によって示されてもよい。
【0050】
【数3】
【0051】
【数4】
【0052】
従って、以下の式(1-4-1)を獲得でき、またgti(k)に対応する動力学的マッピングが以下の式(1-4-2)を満たし、従って、以下の式(1-4-3)を獲得でき、さらに第1量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係を獲得でき、例えば、第1量子出力状態と量子初期状態を作成する時に用いられる情報(即ちA)との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの間に基づく関数対応関係であってもよく、以下の式(1-5)によって示されてもよい。
【0053】
【数5】
【0054】
ここで、RmeasはNmeasのパウリ遷移行列のサブ行列であり、RprepはNprepのパウリ遷移行列のサブ行列であり、RmeasR=VDV-1を対角化でき、量子初期状態の作成誤差Aprep=V-1prepVであり、上記ステップ102によって、複数の第1量子出力状態gti(k)を知っており、さらにAが上記ステップ101の作成プロセスの実行中に使用されるパウリ行列に基づいて獲得できるため、また上式1-5と併せて、さらに行列ペンシル法解析によって第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルEig(a)={mλ,mλ,mλ…}を獲得し、ここで、mは第1誤差を示し、主に投影テストゲートの測定誤差である。
【0055】
同様な方法に応じて獲得できるように、上記図3bに示されるものに対する場合、量子初期状態が第2回線を通過した後に獲得した第2量子出力状態は、以下の式(1-6)によって示されてもよいが、第2量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係は、例えば、第2量子出力状態と量子初期状態を作成する時に用いられる情報(即ちA)との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの間に基づく関数対応関係であってもよく、以下の式(1-7)によって示されてもよい。
【0056】
【数6】
【0057】
【数7】
【0058】
measmeasR=VDV-1を対角化でき、量子初期状態の作成誤差Aprep=V-1prepVであり、上記104によって、複数の第2量子出力状態gti(k)を知っており、さらにAが上記ステップ101の作成プロセスの実行中に使用されるパウリ行列に基づいて獲得できるため、また上式1-7と併せて、さらに行列ペンシル法解析によって第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、以下の式(1-7-1)を獲得し、ここで、以下の式(1-7-2)は第2誤差を示し、主に2回の投影テストゲート(即ち二重投影テストゲート)の測定誤差を示すことに用いられる。
【0059】
このように、上記獲得した第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルと併せて、誤差(量子初期状態の作成誤差、及び測定誤差を含む)を除去する動力学的マッピング固有スペクトル、即ちいずれかの係数のない動力学的マッピング固有スペクトルを獲得でき、具体的に以下の式(1-8)によって示されてもよい。
【0060】
【数8】
【0061】
上記方法はある1つの進化時点に獲得された動力学的マッピング固有スペクトルに対するものに過ぎず、このように類推すると、非マルコフ量子ノイズプロセスで、任意の進化時点tiの誤差を除去する量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、以下の式(1-8-1)を獲得できる。
【0062】
【数9】
【0063】
説明する必要がある点として、上記非マルコフ量子ノイズプロセスで、異なる進化時点に各回線から出力される量子出力状態を構築することができ、例えば、複数セットの信号関数を構築し、各セットの信号関数はそれぞれ1つの進化時点に対応し、{gti(1),gti(2),…,gti(K)}を含み、gti(k)に対応する動力学的マッピングに以下の式(1-8-2)を満たすことができ、さらに行列ペンシル法によってそれぞれこの複数セットの信号関数を解析して複数セットの動力学的マッピング特徴スペクトル、以下の式(1-8-3)を獲得し、同時に誤差を回避する。
【0064】
【数10】
【0065】
具体的なプロセスは以下の(表1)に示される。
【0066】
【表1】
【0067】
このことから分かるように、本実施例の方法では、量子ノイズプロセスの分析システムは非マルコフ量子ノイズプロセスに対して分析を行うときに、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線、及び複数の第2回線に入力し、複数の第1量子出力状態、及び複数の第2量子出力状態を獲得し、さらに第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、第1回線、及び第2回線に含まれる投影テストゲートの数が異なると、量子初期状態に対して進化プロセスで分析を行う時にもたらす誤差も異なる(即ち第1誤差と第2誤差が異なる)。従って、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得することができる。それにより、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて量子ノイズプロセスの分析を行うことはより正確になり、さらに量子システム中のノイズに対して監視制御をより正確に行うことができる。それにより、量子システムに対する調整制御は正確なねらいを有する。
【0068】
いくつかの実施例では、量子ノイズプロセスの分析システムが上記決定した誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて量子ノイズプロセスを分析することは、以下のいくつかの方式の分析を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0069】
(1)量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定する。
【0070】
例えば、量子ノイズプロセスの分析システムは、上記獲得された量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係に基づいて、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定する。ここで、遷移テンソルマッピングは量子システムのメモリカーネルに基づく量子ノイズプロセスの動力学的進化を表すことに用いられ、主に上記動力学的マッピングから抽出される1グループのマッピングであり、該グループのマッピングは量子システムのメモリカーネルを符号化し、量子システムの動力学的進化を予測することに用いられる。
【0071】
例えば、量子システムの非マルコフ量子ノイズ下での動力学的進化プロセスに対して、前の量子システム状態に対する現在の量子システム状態の非時間的局所性の記憶効果を導入することによって、以下の式(2-1)の中島-ズワンジグ(Nakajima-Zwanzig)方程式を使用して示してもよい。
【0072】
【数11】
【0073】
ここで、以下の式(2-1-1)はメモリカーネルであり、量子システムの現在の時点状態と前の時点状態との連係を表すことに用いられ、以下の式(2-1-2)を満たし、ノイズチャネルがパウリチャネル(パウリノイズチャネル)であることに対して、以下の式(2-1-3)を獲得でき、ここで、以下の式(2-1-4)であり、上記実施例で決定された量子ノイズの動力学的マッピング固有スペクトルλα(t)と併せて、以下の式(2-1-5)を獲得でき、ここで以下の式(2-1-6)はメモリカーネルの固有スペクトルである。
【0074】
【数12】
【0075】
また進化時間間隔t=nδtであり、取得した量子ノイズの動力学的マッピングΛ≡Λ(t)であるため、量子システムの現在状態tは遷移テンソルマッピングTによって前の状態シーケンス(t<t)と連係してもよく、時間並進不変な量子システム、以下の式(2-1-7)であれば、上記式2-1のNakajima-Zwanzig方程式を以下の式(2-2)中の離散時間点の形態に更新してもよい。
【0076】
【数13】
【0077】
上記式2-1と2-2とを連立すると、遷移テンソルマッピング以下の式(2-2-1)を獲得できる。パウリチャネルが以下の式(2-2-2)を満たすため、以下の式(2-2-3)を獲得でき、ここで、ユニタリ演算子Uαはパウリ行列であり、以下の式(2-2-4)は遷移テンソルマッピングの固有スペクトルであり、且つ遷移テンソルマッピングの固有スペクトルとメモリカーネルの固有スペクトルとの間は第2対応関係、即ち以下の式(2-2-5)を満たす。また量子ノイズプロセスの動力学的マッピングも以下の式(2-2-6)を満たすため、動力学的マッピング、以下の式(2-2-7)を対角化し、以下の式(2-3)中の動力学的マッピング固有スペクトルと遷移テンソルマッピングの固有スペクトルとの間の第1対応関係を獲得し、該第1対応関係は量子ノイズプロセスの分析システム中に事前にプリセットされてもよい。
【0078】
【数14】
【0079】
ここで、動力学的マッピングスペクトルλα(t)を以下の式(2-3-1)と略し、該第1対応関係は上記獲得した以下の式(2-3-2)と連合することによって与えられてもよく、さらに、上記式2-3を展示すると、以下の予測動力学的進化の式(2-4)を獲得できる。
【0080】
【数15】
【0081】
つまり、現在の量子システムの状態は、通常、限られる(例えばY個)前の状態の影響のみを受け、即ち以下の式(2-4-1)であり、従って、0~t進化時点の動力学的マッピング固有スペクトルを取得するだけで、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルによって後の進化時点の動力学的マッピング固有スペクトルを予測することができる。
【0082】
【数16】
【0083】
いくつかの実施例では、量子ノイズプロセスの分析システムが上記ステップで獲得した量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルは、一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを含む。もしそうであるなら、さらに、一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係に基づいて、一定時間後の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを予測することができる。
【0084】
(2)量子ノイズプロセスの関連関数を決定する。
【0085】
例えば、量子ノイズプロセスの分析システムは量子ノイズプロセスの遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及びプリセットされた第2対応関係に基づいて、量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトルを決定し、該メモリカーネルは量子システムの現在時点の状態と前の時点の状態との連係を表すことに用いられ、さらに量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトル、及びプリセットされた第3対応関係に基づいて、量子ノイズプロセスの関連関数を決定し、さらに該関連関数に基づいて量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを決定し、例えば、関連関数に対してフーリエ変換を行って量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを獲得できる。
【0086】
ガウス定常状態ノイズに対して、量子ノイズプロセスの関連関数はノイズの性質を決め、ここで関連関数は量子ノイズプロセスを表すことに用いられる。従って、実験から該関連関数、及び周波数スペクトルを抽出することは非常に重要であり、いくつかの実施例では、
量子システムと環境との相互作用ハミルトニアン、以下の式(2-4-2)を考慮し、ここで、以下の式(2-4-3)はビットiに対応するパウリ演算子であり、以下の式(2-4-4)はノイズ環境演算子であり、ガウスノイズを考慮し、以下の式(2-4-5)及び以下の式(2-4-6)の2つの項により記述される。
【0087】
【数17】
【0088】
一方、開放システム理論では、動力学的進化のメモリカーネルの正確な表現式は以下の式(3-1)によって表現されてもよい。
【0089】
【数18】
【0090】
一般的な量子ハードウェア中に、量子ノイズが既にプロセス上で初歩的に制御され、従って、量子デバイスと環境との結合強度は相対的に弱く、この場合、二次摂動でメモリカーネルを近似処理してもよく、単一量子ビットを例とすると、以下の式(3-2)によって近似されてもよい。
【0091】
【数19】
【0092】
ここでリュービル演算子Lsbρ(t)=-i[Hsb(t),ρ(t)]であると、量子ノイズの関連関数は以下の式(3-2-1)として示されてもよく、従って、パウリノイズチャネルに対して、その関連関数が以下の式(3-3)によって示されてもよいと証明できる。
【0093】
【数20】
【0094】
上記の遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定するプロセスから、以下の式(3-3-1)を獲得でき、従って、以下の式(3-3-2)を獲得でき、また以下の式(3-3-3)であるため、以下の式(3-4)に示されるメモリカーネルの固有スペクトルと量子ノイズプロセスの関連関数との間の第3対応関係を獲得でき、該第3対応関係は量子ノイズプロセスの分析システムに事前にプリセットされてもよい。
【0095】
【数21】
【0096】
上記の遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定するプロセスで、以下の式(3-4-1)、即ち量子ノイズプロセスの遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、以下の式(3-4-2)とメモリカーネルの固有スペクトル、以下の式(3-4-3)との間の第2対応関係を獲得でき、該第2対応関係が量子ノイズプロセスの分析システムに事前にプリセットされてもよい。従って、動力学的マッピング固有スペクトルを取得するだけで、上記第1対応関係に基づいて遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを獲得でき、さらに第2対応関係と併せてメモリカーネルの固有スペクトルを獲得でき、且つ第3対応関係と併せて量子ノイズの関連関数を導出でき、且つ該関連関数をフーリエ変換して量子ノイズの周波数スペクトルを獲得し、以下の式(3-5)によって示されてもよい。
【0097】
【数21】
【0098】
(3)量子ノイズプロセスの非マルコフ特性を分析する。
【0099】
例えば、量子ノイズプロセスの分析システムは量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築し、該非マルコフノイズモデルは量子ノイズプロセスのデコヒーレンス率に基づくモデルであり、例えば、動力学的マッピング固有スペクトルと量子ノイズプロセスのデコヒーレンス率との間の対応関係に基づいて、非マルコフノイズモデルを構築する。その後、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定する。
【0100】
実現するときに、単一ビットの量子初期状態を例とすると、もし量子ノイズがパウリチャネルであるなら、量子システムの動力学的マッピングは以下の式(3-5-1)であり、ここで、以下の式(3-5-2)であり、ユニタリ演算子Uα=σαはパウリ行列であり、Λ[Uα]=λα(t)Uαであると証明でき、ここで、動力学的マッピング固有スペクトルはλα(t)=2(f(t)+fα(t))-1である。
【0101】
【数22】
【0102】
また量子システムと環境ノイズとの相互作用の以下の運動方程式(3-5-3)に基づいて、動力学的マッピングが以下の式(3-5-4)を満たすと導出でき、ここで、以下の式(3-5-5)、(3-5-6)であり、γα(t)はデコヒーレンス率であり、もしあるいくつかの進化時点にγα(t)<0であるなら、環境ノイズは非マルコフ特性のものである。
【0103】
【数23】
【0104】
上記のジェネレータLはL[Uα]=μα(t)Uαを満たし、ここで以下の式(3-5-7)であり、それにより以下の式(3-5-8)を獲得でき、さらに動力学的マッピング固有スペクトルとデコヒーレンス率が満たす対応関係は、以下の式(3-5-9)であると獲得し、該対応関係は量子ノイズプロセスの分析システムに事前にプリセットされてもよく、さらに、動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて以下の式(4-1)に示される量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築することができる。
【0105】
【数24】
【0106】
上記式4-1中の非マルコフノイズモデルと以下の式(4-2)に示される(Rivas-Huelga-Plenio、RHP)測定計算式とを併せて、量子システムのRHP測定結果NNMを獲得でき、該結果は量子ノイズプロセスの非マルコフ特徴の強度を描いている。さらに、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルと動力学的マッピング固有スペクトルとの間の第2対応関係と併せて、限られる時間長さだけで、量子システム中の将来の動力学的マッピング固有スペクトルを予測でき、それにより将来の量子システムのNNMを計算する。
【0107】
【数25】
【0108】
上記のRHP測定とは、同一量子システムによって進化する2つの最適な初期状態の区別可能性を測定し、プロセスでの非単調性を探し、それにより量子システムの非マルコフ強さ特性を表すことを指す。
【0109】
上記量子ノイズプロセスの分析によって、量子ノイズプロセスの関連関数を知ることができ、それにより対応するノイズ周波数スペクトルを提供する。このように、量子システム中の量子ハードウェアを調整制御するときに、調整制御全体はよりねらいを有し且つ効果的になるようにし、例えば、動力学的減結合の根拠を提供し、量子ハードウェアのノイズ周波数スペクトルに対して相応なパルスタイプ、及び波形反転時間点を設定し、それによりデコヒーレンス等を抑制する。ここで、動力学的減結合はデコヒーレンスを抑制する一種の効果的な手段であり、それは主に特定の時間点に(所定の周波数で)絶えず反転するパルスを印加することによって、量子ビットと環境との相互結合を効果的に抑制し、それによりデコヒーレンスを抑制する。
【0110】
さらに、説明する必要がある点として、上記の量子ノイズプロセスに対する分析プロセスで、遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、メモリカーネル、及び量子ノイズプロセスの周波数スペクトル等を決定するときに、主に上記のノイズ進化ゲートがパウリノイズチャネルである状況に適用する。一方、上記のノイズ進化ゲートが非パウリノイズチャネルである時に対して、パウリ回転近似の方法を導入する必要があり、それをパウリノイズチャネルとなるように近似して上記の分析プロセスに適用する。例えば、量子ノイズプロセスの分析システムは上記ステップ103を実行する前に、まず、量子ノイズプロセスの動力学的マッピングに対してパウリ回転近似を行って、量子ノイズチャネル中のパウリノイズチャネルを保留する。このように、上記ステップ103を実行するときに、複数の第1量子出力状態と量子初期状態との間の、保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定することができ、量子ノイズプロセスの分析システムは上記ステップ105を実行するときに、複数の第2量子出力状態と量子初期状態との間の、保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定することができる。
【0111】
ここで、実現プロセスで、パウリ回転近似を行うときに、
単一量子ビットを例とすると、任意の量子ノイズチャネルの動力学的マッピングΛに対して以下の式(5-1)のパウリ回転近似を行ってもよい。
【0112】
【数26】
【0113】
ここでパウリ演算子Pμ∈{I,σ,σ,σ}であり、パウリ回転近似後にパウリノイズチャネルの部分のみが残され、量子初期状態がパウリ回転近似に基づいて獲得されたパウリノイズチャネルを通過した後、獲得できる量子出力状態は以下の式(5-2)によって示されてもよい。
【0114】
【数27】
【0115】
もし任意の量子ノイズプロセスの動力学的マッピングが以下の式(5-2-1)であるなら、パウリ遷移行列Rが以下の式(5-2-2)を満たすと証明でき、パウリ回転近似後に以下の式(5-2-3)のパウリノイズチャネルのみが残されるため、パウリノイズチャネルに相応なパウリ遷移行列が対角行列、以下の式(5-2-4)であり、さらに保留されたパウリノイズチャネルに基づく動力学的マッピング固有スペクトルを獲得する。
【0116】
【数28】
【0117】
さらに、説明する必要がある点として、パウリ回転近似を導入して非パウリの量子ノイズプロセスを処理する時に情報の損失をもたらすため、量子システムの情報をできるだけ回復するために、本実施例では、量子ノイズプロセスの分析システムが上記ステップ101を実行するプロセスで、1つの最適なパウリ行列を選択して量子初期状態を作成することができる。このように、量子システムの情報をできるだけ回復することができ、且つ決定した非マルコフノイズ強度をより正確にする。例えば、最適なパウリ行列を選択するときに、複数の候補パウリ行列に対して、上記の量子ノイズプロセスの分析を循環的に実行し、それにより複数の候補パウリ行列から1つの最適な候補パウリ行列を選択する。例示的なプロセスは以下のとおりである。
【0118】
量子ノイズプロセスの分析システムは上記ステップ101を実行するときに、複数の候補パウリ行列を決定し、複数の候補パウリ行列によってそれぞれ複数グループの候補量子初期状態を作成し、ここで、各候補パウリ行列は1グループの候補量子初期状態に対応する。さらに複数グループの候補量子初期状態に対して上記ステップ102~106と類似する処理を実行した後、誤差を削除した複数の動力学的マッピング固有スペクトルを獲得し、さらに量子ノイズプロセスの分析のときに、複数グループの候補量子初期状態に基づいて、複数の非マルコフノイズ強度を決定し、ここで、各グループの候補量子初期状態は1つの非マルコフノイズ強度に対応する。その後、量子ノイズプロセスの分析システムは複数の非マルコフノイズ強度のうちの最も大きな非マルコフノイズ強度に対応する候補パウリ行列を選択し、且つ選択した候補パウリ行列に基づいて量子ノイズプロセスを分析し、即ち、1グループの量子初期状態を作成する。
【0119】
実現するときに、単一量子ビットの量子システムに対して、任意の2次元ユニタリ行列が以下の式(6-1)によって示されてもよいと定義する。
【0120】
【数29】
【0121】
ここで以下の式(6-1-1)は以下の式(6-1-2)で表される軸に沿って角度θだけ回転するパウリ遷移行列であり、この場合、新しい候補パウリ行列(以下、新しいパウリ基と略称)(6-1-3)を選択し、新しいパウリ基下でパウリ回転近似を行った後にパウリノイズチャネルの部分のみを残し、この場合、量子初期状態がパウリ回転近似に基づいて獲得されたパウリノイズチャネルを通過した後、獲得できる量子出力状態は以下の式(6-2)によって示されてもよい。
【0122】
【数30】
【0123】
さらに決定する誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルは以下の式(6-2-1)であり、さらに、新しいパウリ基下でパウリ回転を行った後、量子ノイズプロセスの動力学的マッピングが以下の式(6-2-2)であると証明する。ここで、以下の式(6-2-3)であり、ユニタリ演算子、以下の式(6-2-4)はパウリ行列である。新しい動力学的マッピング、及びメモリカーネルが新しいパウリ基下で以下の式(6-3)及び(6-4)に応じて対角化できると証明でき、さらに以下の式(6-5)中の動力学的マッピング固有スペクトルと遷移テンソルマッピングの固有スペクトルとの間の第1対応関係を獲得する。
【0124】
【数31】
【0125】
さらに以下の式(6-6)に示される非マルコフノイズモデルを構築する。
【0126】
【数32】
【0127】
さらに複数の新しい候補パウリ基から1つの最適なパウリ基を選択して、以下の式(6-7)の関係を満たすようにする。
【0128】
【数33】
【0129】
最適なパウリ基を選択した後、最適なパウリ基に応じて量子ノイズプロセスをさらに分析する。
【0130】
さらに、いくつかの実施例では、マルコフ量子ノイズプロセスに対する分析方法は非マルコフ量子ノイズプロセスをよく分析できず、具体的には、マルコフ量子ノイズプロセスの分析方法を採用して分析するプロセスで、動力学的マッピング固有スペクトルを取得する時に元の量子ビットのヒルベルト空間次元を超える有効値があることから体現し、ここで、ヒルベルト空間次元は一定のものであり、例えばaであり、取得された動力学的マッピング固有スペクトルの数がaを超えるときに、動力学的マッピング固有スペクトルは元の量子ビットのヒルベルト空間次元を超える有効値を有する。
【0131】
従って、量子システムの分析を経て非マルコフ量子ノイズプロセスではなく、且つ分析を経て決定した動力学的マッピング固有スペクトルの数が元に作成した量子ビットのヒルベルト空間次元を超えるときに、量子システム中に量子ビット漏れが出現すると決定する。さらに、以下の式(7)によって量子ビット漏れの程度を決定してもよい。
【0132】
【数34】
【0133】
ここで、Lは量子ビット漏れ量を示し、Hは量子初期状態を作成する上記の量子ビットのヒルベルト部分空間を示し、Hは量子ビットがより高いレベルのヒルベルト部分空間に漏れることを示し、∈はTPCPプロセスを代表する。以下の式(7-1)はTPCPプロセスで、量子ビットが量子ビットのヒルベルト部分空間からより高いレベルのヒルベルト部分空間に漏れる漏れ量を示し、以下の式(7-2)はTPCPプロセスで、量子ビットがより高いレベルのヒルベルト部分空間から量子ビットのヒルベルト部分空間に漏れる漏れ量を示す。
【0134】
【数35】
【0135】
従って、量子ビット漏れ量は、量子ビットが異なるレベルのヒルベルト部分空間の間で相互に漏れる漏れ量の関数計算値であり、ここで、異なるレベルのヒルベルト部分空間の次元は同じではない。
【0136】
以下、1つの応用実例によって本願の量子ノイズプロセスの分析方法を説明し、図4に示すように、本実施例での量子ノイズプロセスの分析システムは以下のステップに応じて、非マルコフ量子ノイズプロセスを分析してもよい。
【0137】
ステップ201:1グループの量子初期状態を作成し、且つ各進化時点に複数の第1回線、及び複数の第2回線に入力し、各進化時点の複数の第1量子出力状態、及び複数の第2量子出力状態を獲得し、さらに複数の第1量子出力状態に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、複数の第2量子出力状態に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、さらに各進化時点の誤差を削除した量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定する。
【0138】
ここで、複数の第1回線は図3aに示されてもよく、各第1回線中に少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートが含まれ、複数の第2回線は図3bに示されてもよく、各第2回線中に少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートが含まれる。
【0139】
ステップ202:誤差を削除した量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係、例えば上記式2-3に示される第1対応関係に基づいて、量子ノイズプロセスの遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定することができる。同時に、現在の進化時点の遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトル、及び該第1対応関係に基づいて、将来の進化時点の遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを予測することもできる。
【0140】
実際の応用プロセスで、量子システム中の量子ノイズプロセスは非マルコフ純粋デフェージングノイズモデルB(t)、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルを採用し、即ち動力学的マッピング固有スペクトルを獲得するプロセスで使用されるノイズ進化ゲートのモデルである。非マルコフ純粋デフェージングモデル、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルがいずれもパウリノイズチャネルに対応するため、上記ステップ201、及び202での非マルコフ量子ノイズプロセスの分析方法を直接使用してもよい。誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得し、さらに現在状態の遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを用いて、将来の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及び遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを予測することができる。
【0141】
例えば、図5a、及び5bに示すように、それぞれは、非マルコフ純粋デコヒーレンスモデル(図5aに対応)、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデル(図5bに対応)下で、遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及び動力学的マッピングに基づいて将来の進化を予測した結果である。ここで、縦座標は予測された動力学的マッピング固有スペクトルであり、横座標は進化時点であり、破線矢印が指示する曲線は理論的な予測結果であり、他の実線矢印が指示する曲線はそれぞれ、異なる個数(それぞれ1、4、及び8つ)の有効遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを導入する時にそれぞれ獲得した予測結果である。このことから分かるように、8つの有効遷移テンソルマッピングの固有スペクトルのとき、比較的正確な予測効果を獲得し、量子ノイズプロセスが1つの非マルコフノイズモデルであることを側面からも説明している。
【0142】
ステップ203:量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及びプリセットされた第2対応関係に基づいて、メモリカーネルの固有スペクトルを決定し、ここで、第2対応関係は、以下の式(8)であってもよく、その後、さらにメモリカーネルの固有スペクトル、及びプリセットされた第3対応関係(上記式3-4に示される)に基づいて量子ノイズプロセスの関連関数を決定し、さらに量子ノイズプロセスの関連関数に対してフーリエ変換を行って量子ノイズの周波数スペクトルを獲得する。
【0143】
【数36】
【0144】
実際の応用プロセスで、量子システム中の量子ノイズプロセスは非マルコフ純粋デフェージングノイズモデル、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルを採用し、非マルコフ純粋デフェージングモデル、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルがいずれもパウリノイズチャネルに対応するため、上記ステップ201、及び202での非マルコフ量子ノイズプロセスの分析方法を直接使用してもよく、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得し、さらにステップ203の方法に基づいて量子ノイズプロセスの関連関数を決定する。
【0145】
例えば、図6a、及び6bに示すように、それぞれ、非マルコフ純粋デコヒーレンスモデル(図6aに対応)、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデル(図6bに対応)下で、決定した量子ノイズプロセスの関連関数である。ここで、横座標は進化時点であり、縦座標は関連関数中のパラメータ値であり、実線矢印が指示する曲線は理論的な予測結果であり、示されている点は決定した関連関数である。このことから分かるように、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルによって、量子ノイズプロセスの関連関数のキャプチャを効果的に実現することができる。
【0146】
ステップ204:量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築し、その後、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定する。
【0147】
実際の応用プロセスで、量子システム中の量子ノイズプロセスは非マルコフ純粋デフェージングノイズモデル、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルを採用し、非マルコフ純粋デフェージングモデル、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデルがいずれもパウリノイズチャネルに対応するため、上記ステップ201、及び202での非マルコフ量子ノイズプロセスの分析方法を直接使用してもよく、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得し、さらにステップ204の方法に基づいて量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定する。
【0148】
例えば、図7a、及び7bに示すように、それぞれ、非マルコフ純粋デコヒーレンスモデル(図7aに対応)、及び非マルコフB(t)方向ノイズモデル(図7bに対応)下で、決定した非マルコフ量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルであり、ここで、横座標は進化時点であり、縦座標は非マルコフノイズモデルであり、時間方向に沿う曲線の起伏に負の勾配が存在することから、デコヒーレンス率γα(t)がある時点に負であると表明し、即ち非マルコフ特性のノイズチャネルであり、さらにRHP値NNMを累積計算して、非マルコフノイズ強度を定量的に与えてもよい。
【0149】
説明する必要がある点として、上記実施例での方法は、量子ノイズプロセスがパウリチャネルに属する時に対して、量子ノイズプロセスに対する分析であり、他の実施例では、量子ノイズプロセスが非パウリチャネルに属すれば、量子ノイズプロセスの分析方法を行うことは上記ステップ201~204の分析方法と類似し、異なることは以下のとおりである。
【0150】
上記ステップ201を実行するプロセスで、まず、量子ノイズプロセスの動力学的マッピングに対してパウリ回転近似を行って、量子ノイズチャネル中のパウリノイズチャネルを保留し、第1量子出力状態(又は第2量子出力状態)と量子初期状態との間は、保留されたパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係である。ここで、1つの最適なパウリ基を選択することにより、量子システムの情報損失を減少させてもよく、例えば、
複数の候補パウリ基を選択して、それぞれ複数グループの候補量子初期状態を作成し、且つパウリ回転近似によって獲得されたパウリノイズチャネルを採用し、各グループの候補量子初期状態が進化する、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、且つステップ202~205と類似する方法に応じて各グループの候補量子初期状態に対応する非マルコフノイズ強度を最終的に獲得し、非マルコフノイズ強度に応じて複数の候補パウリ基から最適なパウリ基を選択して、量子ノイズプロセスの分析を行う。
【0151】
実際の応用プロセスで、量子システム中の量子ノイズプロセスは非マルコフB(t)+B(t)方向ノイズモデルを採用し、x+y方向にノイズ関連が存在し、非マルコフB(t)+B(t)方向ノイズモデルがパウリノイズチャネルではないため、最適なパウリ基を選択し、且つパウリ回転近似される非マルコフ量子ノイズプロセスの分析方法を使用し、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得し、さらに量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定する。
【0152】
例えば、図8a、及び8bに示すように、それぞれ、標準パウリ基(図8aに対応)、及び最適なパウリ基(図8bに対応)を採用して非マルコフ・非パウリノイズチャネルに対して量子ノイズプロセスの分析を行った後、決定した非マルコフ量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度、即ちRHP表し値であり、ここで、横座標は進化時点であり、縦座標はRHP表し値であり、「+」はパウリ回転近似を使用しない時に決定したRHP表し値であり、図8a、及び8b中の曲線はそれぞれ標準パウリ基、及び最適なパウリ基下でパウリ回転近似を使用する時に決定したRHP表し値である。このことから分かるように、非パウリノイズチャネル下で、最適なパウリ基下でパウリ回転近似を使用する時に決定したRHP表し値を採用すると、量子システム中の元の特徴を効果的に回復することができる。
【0153】
本願の実施例は量子ノイズプロセスの分析システムをさらに提供し、その構造模式図は図9に示される。例えば、作成ユニット10と、テストユニット11と、誤差固有スペクトルユニット12と、分析ユニット13とを含んでもよい。上記作成ユニット10は、1グループの量子初期状態を作成するように構成され、上記テストユニット11は、作成ユニット10が作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、複数の第1量子出力状態を獲得するように構成され、第1回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する投影テストゲートを含み、且つ異なる第1回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる。上記誤差固有スペクトルユニット12は、テストユニット11が獲得した複数の第1量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される。上記テストユニット11はさらに、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、複数の第2量子出力状態を獲得するように構成され、第2回線は少なくとも1つのノイズ進化ゲート、及び各ノイズ進化ゲートに対応する二重投影テストゲートを含み、且つ異なる第2回線中のノイズ進化ゲートの数は異なる。上記誤差固有スペクトルユニット12はさらに、複数の第2量子出力状態と量子初期状態との間の、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される。上記分析ユニット13は、誤差固有スペクトルユニット12が決定した第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される。
【0154】
いくつかの実施例では、上記テストユニット11はさらに、複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線に入力し、各進化時点の複数の第1量子出力状態を獲得し、複数の進化時点のうちの各進化時点において、作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第2回線に入力し、各進化時点の複数の第2量子出力状態を獲得するように構成される。
【0155】
いくつかの実施例では、分析ユニット13はさらに、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係に基づいて、遷移テンソルマッピングの固有スペクトルを決定するように構成され、遷移テンソルマッピングは量子システムのメモリカーネルに基づく量子ノイズプロセスの動力学的進化を表すことに用いられ、メモリカーネルは量子システムの現在時点の状態と前の時点の状態との連係を表すことに用いられる。
【0156】
いくつかの実施例では、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルは、一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを含むと、分析ユニット13はさらに、一定時間内の複数の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトル、遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及びプリセットされた第1対応関係に基づいて、一定時間後の進化時点の量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルを予測するように構成される。
【0157】
いくつかの実施例では、分析ユニット13はさらに、量子ノイズプロセスの遷移テンソルマッピングの固有スペクトル、及びプリセットされた第2対応関係に基づいて、量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトルを決定するように構成され、メモリカーネルは量子システムの現在時点の状態と前の時点の状態との連係を表すことに用いられる。
【0158】
いくつかの実施例では、分析ユニット13はさらに、量子ノイズプロセスのメモリカーネルの固有スペクトル、及びプリセットされた第3対応関係に基づいて、量子ノイズプロセスの関連関数を決定し、量子ノイズプロセスの関連関数に基づいて量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを決定するように構成される。
【0159】
いくつかの実施例では、分析ユニット13はさらに、量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルを構築し、非マルコフノイズモデルは量子ノイズプロセスのデコヒーレンス率に基づくモデルであり、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズモデルに基づいて、量子ノイズプロセスの非マルコフノイズ強度を決定するように構成される。
【0160】
いくつかの実施例では、作成ユニット10はさらに、複数の候補パウリ行列を決定し、各候補パウリ行列に基づいて1グループの候補量子初期状態を作成し、作成した各グループの候補量子初期状態に対応する非マルコフノイズ強度を決定し、複数グループの候補量子初期状態にそれぞれ対応する非マルコフノイズ強度から最も大きな非マルコフノイズ強度を決定し、且つ最も大きな非マルコフノイズ強度に対応する候補パウリ行列に基づいて1グループの量子初期状態を作成するように構成される。
【0161】
いくつかの実施例では、量子ノイズプロセスの分析システムは回転ユニット14をさらに含んでもよく、量子ノイズプロセスの動力学的マッピングに対してパウリ回転近似を行って、量子ノイズチャネル中のパウリノイズチャネルを保留するように構成される。
【0162】
いくつかの実施例では、上記テストユニット11はさらに、複数の第1量子出力状態と量子初期状態との間の、回転ユニット14が保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、且つ複数の第2量子出力状態と量子初期状態との間の、保留したパウリノイズチャネルの動力学的マッピング固有スペクトルに基づく関数対応関係に基づいて、第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定するように構成される。
【0163】
いくつかの実施例では、量子ノイズプロセスの分析システムは漏れ決定ユニット15をさらに含んでもよく、量子ノイズプロセスが非マルコフ量子ノイズプロセスではなく、且つ量子ノイズプロセスの動力学的マッピング固有スペクトルの数がプリセットされた量子ビットのヒルベルト空間次元を超えるときに、量子システム中に量子ビット漏れが出現すると決定するように構成される。
【0164】
本実施例のシステムは非マルコフ量子ノイズプロセスに対して分析を行うときに、テストユニット11は作成した量子初期状態をそれぞれ複数の第1回線、及び複数の第2回線に入力し、複数の第1量子出力状態、及び複数の第2量子出力状態を獲得し、さらに誤差固有スペクトルユニット12は第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルを決定し、第1回線、及び第2回線に含まれる投影テストゲートの数が異なると、分析ユニット13が量子初期状態に対して進化プロセスで分析を行う時にもたらす誤差も異なる(即ち第1誤差と第2誤差が異なる)。従って、第1誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトル、及び第2誤差を含む動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルを獲得することができ、それにより、誤差を削除した動力学的マッピング固有スペクトルに基づいて量子ノイズプロセスの分析を行うことはより正確になり、さらに量子システム中のノイズに対して監視制御をより正確に行うことができる。それにより、量子システムに対する調整制御は正確なねらいを有する。
【0165】
本願の実施例は電子機器をさらに提供し、その構造模式図は図10に示され、該電子機器は構成又は性能が異なるため比較的大きな差異が生じることができ、例えば、1つ又は1つ以上の中央プロセッサ(Central Processing Units、CPU)20(例えば、1つ又は1つ以上のプロセッサ)、メモリ21、及びアプリケーションプログラム221又はデータ222を記憶する1つ又は1つ以上の記憶媒体22(例えば1つ又は1つ以上の大容量記憶機器)を含んでもよい。ここで、メモリ21、及び記憶媒体22は短期記憶又は永久記憶であってもよい。記憶媒体22に記憶されるプログラムは1つ又は1つ以上のモジュール/ユニット(図示せず)を含んでもよく、各モジュール/ユニットは電子機器に対する一連の命令操作を含んでもよい。さらに、中央プロセッサ20は、記憶媒体22と通信して、電子機器上で記憶媒体22中の一連の命令操作を実行するように設定されてもよい。
【0166】
例えば、記憶媒体22に記憶されるアプリケーションプログラム221は量子ノイズプロセス分析のアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を含み、且つ該プログラムは上記量子ノイズプロセスの分析システム中の作成ユニット10、テストユニット11、誤差固有スペクトルユニット12、分析ユニット13、回転ユニット14、及び漏れ決定ユニット15を含んでもよく、ここで贅言しない。さらに、中央プロセッサ20は、記憶媒体22と通信して、記憶媒体22に記憶される量子ノイズプロセス分析のアプリケーションプログラムに対応する一連の操作を電子機器上で実行するように設定されてもよい。
【0167】
電子機器は、1つ又は1つ以上の電源23、1つ又は1つ以上の有線又は無線ネットワークインタフェース24、1つ又は1つ以上の入出力インタフェース25、及び/又は、1つ又は1つ以上のオペレーティングシステム223、例えばWindows Server(登録商標)、Mac OS X(登録商標)、Unix(登録商標)、Linux(登録商標)、及びFreeBSD(登録商標)等をさらに含んでもよい。
【0168】
上記方法実施例での量子ノイズプロセスの分析システムにより実行されるステップは該図10に示される電子機器の構造に基づいて実現されてもよい。
【0169】
本願の実施例はコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶され、コンピュータプログラムは、プロセッサによりロードされ且つ上記量子ノイズプロセスの分析システムが実行する量子ノイズプロセスの分析方法を実行することに適する。
【0170】
本願の実施例は電子機器をさらに提供し、プロセッサ、及びメモリを含み、メモリはコンピュータプログラムを記憶することに用いられ、プロセッサはメモリに記憶されているコンピュータプログラムを実行するときに、上記量子ノイズプロセスの分析システムが実行する量子ノイズプロセスの分析方法を実現することに用いられる。
【0171】
当業者が理解できるように、上記実施例の各種方法の全部又は一部のステップはプログラム(コンピュータプログラム)によって関連するハードウェアを命令して完了されてもよく、該プログラムは1つのコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、記憶媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク又は光ディスク等を含んでもよい。
【0172】
以上は本願の実施例が提供する量子ノイズプロセスの分析方法、システム、記憶媒体、及び電子機器に対して詳細な紹介を行っており、本明細書では具体的な例を応用して本願の原理、及び実施形態を説明し、以上の実施例の説明は本願の方法、及びそのコアアイデアを理解するのを助けることに用いられるものに過ぎず、同時に、当業者にとっては、本願のアイデアに従って、具体的な実施形態、及び応用範囲のいずれをも変更してもよく、以上のように、本明細書の内容は本願に対する制限ではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0173】
10 作成ユニット
11 テストユニット
12 誤差固有スペクトルユニット
13 分析ユニット
14 回転ユニット
15 決定ユニット
20 中央プロセッサ
21 メモリ
22 記憶媒体
23 電源
24 無線ネットワークインタフェース
25 入出力インタフェース
100 量子初期状態
110 第1量子出力状態
120 動力学的マッピング固有スペクトル
130 第2量子出力状態
140 動力学的マッピング固有スペクトル
150 動力学的マッピング固有スペクトル
200 第1回線
200 サーバ
210 第2回線
221 アプリケーションプログラム
222 データ
223 オペレーティングシステム
300 ネットワーク
400 端末機器
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10