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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230110BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20230110BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230110BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230110BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230110BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230110BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
B32B15/095
B32B27/40
C08K3/013
C08K3/36
C08L63/00 A
C08L75/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022541965
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007068
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021027524
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】青柳 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012590(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088381(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/140007(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/218507(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047957(WO,A1)
【文献】特開2020-119964(JP,A)
【文献】特開2020-204027(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230700(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/105028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 15/095
B32B 27/40
C08K 3/013
C08K 3/36
C08L 63/00
C08L 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、シールド層とが積層された電磁波シールドフィルムであって、
前記保護層は、酸価が2000~4000g/eq、かつ、Tgが0℃以上であるウレタン系樹脂と、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーとを含み、
前記保護層の全体重量に対する前記非導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%であることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記保護層が、さらにエポキシ系樹脂を含む請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記ウレタン系樹脂と、前記エポキシ系樹脂との重量比が、ウレタン系樹脂/エポキシ系樹脂=4~49である請求項2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記ウレタン系樹脂のTgが、0~60℃である請求項1~3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、100,000~2,000,000である請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記非導電性フィラーは、シリカ及び有機リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記シールド層は、導電性接着剤層である請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
前記シールド層は、金属層であり、
前記シールド層の前記保護層が積層されていない側の面には、さらに接着剤層が積層されている請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器であるスマートフォン、タブレット端末等には、内部から発生する電磁波や外部から侵入する電磁波を遮蔽するために、電磁波シールドフィルムを貼り付けた、シールド付きフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられている。電磁波シールドフィルムに用いるシールド層は、蒸着、スパッタ、めっき等で形成された薄膜の金属層や、導電性フィラーを高充填配合した導電性ペースト等により形成されている。今後5G等が本格的に広がるようになれば、大容量のデータを通信するために、高周波、高速伝送化が進み、電子機器のノイズ対策はさらに必要となる。
【0003】
一般的に、電磁波シールドフィルムは、電磁波を遮蔽する本体となるシールド層と、当該シールド層を外部からの衝撃や、薬品、溶剤、水等から保護するための保護層(絶縁層)とからなる。
【0004】
フレキシブルプリント配線板に配置される電磁波シールドフィルムには柔軟性が求められており、その構成要素である保護層にも柔軟性が求められている。
【0005】
このようなフレキシブルプリント配線板に配置される電磁波シールドフィルムとして、特許文献1には、凹凸を有する導電性のシールド層と、前記凹凸を被覆する接着剤層とを備え、前記凹凸の最大山高さの値は、前記接着剤層の厚さよりも大きい、電磁波シールドフィルムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、シールド層と、上記シールド層に積層された絶縁層とを備える電磁波シールドフィルムであって、上記絶縁層は、シリカ微粒子を含み、上記絶縁層中の前記シリカ微粒子の含有量は、10~50wt%であることを特徴とする電磁波シールドフィルムが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、このような電磁波シールドフィルムに用いられる保護層用の樹脂組成物として、非晶性ポリエステル樹脂と、硬化剤と、白色顔料とを含み、上記非晶性ポリエステル樹脂は、数平均分子量Mnが20,000未満であり、ガラス転移点Tgが、40℃以上であり、上記硬化剤は、ブロックイソシアネート、ヘキサンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体及びシクロヘキサンジイソシアネートのイソシアヌレートアダクト体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/088381号
【文献】特開2019-046871号公報
【文献】国際公開第2019/188983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、柔軟性が高い保護層はガラス転移点と架橋密度が低い。保護層のガラス転移点が低いと、電磁波シールドフィルムをロール保管する際にブロッキングが発生しやすくなるという問題がある。また、保護層を構成する樹脂の架橋密度が低いと、電磁波シールドフィルムを、プリント配線板におけるグランド回路を露出するために設けられた開口部等の段差箇所(以下、単に「プリント配線板における段差箇所」とも記載する)に熱プレスにより配置する際に、保護層に部分的に薄い箇所が生じやすくなり、保護層の物理的強度が低下したり、湿気が保護層を透過しやすくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐熱性、耐湿性が低下しやすくなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、ロール保管時にブロッキングが生じにくく、耐湿性及び耐屈曲性に優れる電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁波シールドフィルムは、保護層と、シールド層とが積層された電磁波シールドフィルムであって、上記保護層は、酸価が2000~4000g/eq、かつ、Tgが0℃以上であるウレタン系樹脂と、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーとを含み、上記保護層の全体重量に対する上記非導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層に含まれるウレタン系樹脂は、酸価が2000~4000g/eqである。
酸価が上記範囲であると、架橋密度が適度な範囲になるので、電磁波シールドフィルムをプリント配線板における段差箇所に熱プレスにより配置する際に、保護層に部分的に薄い箇所が生じにくくなる。そのため、保護層の物理的強度が低下したり、湿気が保護層を透過しにくくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性及び耐湿性が良好になる。
酸価が2000g/eq未満であると、架橋密度が高くなり保護層が硬くなる。その結果、保護層の靭性が低下し、耐屈曲性が低下しやすくなる。
酸価が4000g/eqを超えると、架橋密度が低くなり、電磁波シールドフィルムをプリント配線板における段差箇所に熱プレスにより配置する際に、保護層に部分的に薄い箇所が生じやすくなる。その結果、耐湿性が極端に低下しやすくなる。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層に含まれるウレタン系樹脂は、Tgが0℃以上である。
そのため、本発明の電磁波シールドフィルムをロール保管した際に、ブロッキングが生じにくくなる。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層が、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーを含み、保護層の全体重量に対する非導電性フィラーの重量割合が、10~40重量%である。
保護層が上記重量割合の平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーを含むと、電磁波シールドフィルムをプリント配線板における段差箇所に熱プレスにより配置する際に、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動して保護層の一部が薄くなることを防ぐことができる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性が良好になる。
非導電性フィラーの重量割合が10重量%未満であると、非導電性フィラーを含む場合の効果が得られにくくなり、耐湿性が低下しやすくなる。
非導電性フィラーの重量割合が40重量%を超えると、保護層が硬くなり柔軟性が低下しやすくなる。その結果、耐屈曲性が低下しやすくなる。
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記保護層が、さらにエポキシ系樹脂を含むことが好ましい。
保護層がエポキシ系樹脂を含むと、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に熱プレスにより配置する際に、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動することを抑制することができる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記ウレタン系樹脂と、上記エポキシ系樹脂との重量比が、ウレタン系樹脂/エポキシ系樹脂=4~49であることが好ましい。
上記重量比が4未満であると、エポキシ系樹脂が多くなりすぎ、保護層が硬くなりやすくなる。その結果、保護層の柔軟性が低下し、耐屈曲性が低下する。
上記重量比が49を超えると、エポキシ系樹脂が少なくなり、保護層が柔らかくなり、エポキシ系樹脂を含む効果を得られにくくなる。
【0017】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記ウレタン系樹脂のTgが、0~60℃であることが好ましい。
ウレタン系樹脂のTgが、0~60℃であると、本発明の電磁波シールドフィルムをプリント配線板に熱プレスする際に保護層が適度な流動性を有するため、保護層の一部が薄くなって電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性が低下することを防ぐことができる。
【0018】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、100,000~2,000,000であることが好ましく、170,000~500,000であることがより好ましい。
ウレタン系樹脂の重量平均分子量は上記範囲であると、ウレタン系樹脂が適度な硬さ及び流動性になるので、電磁波シールドフィルムの耐熱性、耐湿性及び耐屈曲性を向上させることができる。
【0019】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記非導電性フィラーは、シリカ及び有機リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの材料からなる非導電性フィラーは、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性を好適に向上させることができる。
【0020】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、導電性接着剤層であってもよい。
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、金属層であり、上記シールド層の上記保護層が積層されていない側の面には、さらに接着剤層が積層されていてもよい。
本発明の電磁波シールドフィルムは、いずれの態様であっても好適に電磁波を遮蔽することができる。また、電磁波シールドフィルムのロール保管時にブロッキングが生じにくく、電磁波シールドフィルムの耐熱性、耐湿性及び耐屈曲性が充分に高くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層が、酸価が2000~4000g/eq、かつ、Tgが0℃以上であるウレタン系樹脂と、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーとを含み、保護層の全体重量に対する非導電性フィラーの重量割合が、10~40重量%である。
そのため、ウレタン系樹脂の架橋密度が適度な範囲となり、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性及び耐湿性が良好になる。また、ウレタン系樹脂のTgが0℃以上であるので、電磁波シールドフィルムをロール保管した際に、ブロッキングが生じにくくなる。また、保護層に所定の非導電性フィラーが含まれることにより、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に熱プレスにより配置する際に、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動して保護層の一部が薄くなることを防ぐことができる。そのため、保護層の部分的に薄い箇所が生じにくくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2A図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、プリント配線板準備工程を模式的に示す断面図である。
図2B図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、電磁波シールドフィルム配置工程を模式的に示す断面図である。
図2C図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、熱プレス工程を模式的に示す断面図である。
図2D図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いて製造されたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の電磁波シールドフィルムの別の一例を模式的に示す断面図である。
図4A図4Aは、抵抗値試験の方法を示す模式図である。
図4B図4Bは、抵抗値試験の方法を示す模式図である。
図5図5は、耐屈曲性試験を模式的に示す図である。
図6図6は、ブロッキング試験を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0024】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す電磁波シールドフィルム10は、保護層20と、金属層30と、導電性接着剤層40とが順に積層された電磁波シールドフィルムである。
電磁波シールドフィルム10において、金属層30は電磁波を遮蔽するシールド層として機能する。
各構成について以下に説明する。
【0025】
(保護層)
電磁波シールドフィルム10において、保護層20は、ウレタン系樹脂及び非導電性フィラーを含む。
【0026】
保護層20に含まれるウレタン系樹脂は、酸価が2000~4000g/eqである。酸価は、2100~3900g/eqであることが好ましく、2500~3500g/eqであることがより好ましい。
酸価が上記範囲であると、架橋密度が適度な範囲になるので、電磁波シールドフィルムをプリント配線板における段差箇所に熱プレスにより配置する際に、保護層に部分的に薄い箇所が生じにくくなる。そのため、保護層の物理的強度が低下したり、湿気が保護層を透過しにくくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性及び耐湿性が良好になる。
酸価が2000g/eq未満であると、架橋密度が高くなり、保護層が硬くなる。その結果、保護層の靭性が低下し、耐屈曲性が低下しやすくなる。
酸価が4000g/eqを超えると、架橋密度が低くなり、電磁波シールドフィルムをプリント配線板における段差箇所に熱プレスにより配置する際に、保護層に部分的に薄い箇所が生じやすくなる。その結果、耐湿性が極端に低下しやすくなる。
【0027】
保護層20に含まれるウレタン系樹脂は、Tgが0℃以上である。Tgは、0~60℃であることが好ましく、30~60℃であることがより好ましい。
ウレタン系樹脂のTgが0℃以上であると、電磁波シールドフィルム10をロール保管した際に、ブロッキングが生じにくくなる。
また、ウレタン系樹脂のTgが0~60℃であると、本発明の電磁波シールドフィルムをプリント配線板に熱プレスする際に保護層が適度な流動性となる。
また、本発明の電磁波シールドフィルムを作製する場合、転写フィルムに保護層を形成する場合がある。この際、保護層と転写フィルムの密着性が向上する。
なお、ウレタン系樹脂のTgは、JIS K7121における示差走査熱量測定(DSC)に準拠して測定した値を意味する。
【0028】
ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、100,000~2,000,000であることが好ましく、170,000~500,000であることがより好ましい。
ウレタン系樹脂の重量平均分子量は上記範囲であると、ウレタン系樹脂が適度な硬さ及び流動性になるので、保護層の耐熱性、耐湿性及び耐屈曲性を向上させることができる。
なお、ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
測定器:Alliance GPC System(Waters製)
カラム:Shodex GPC KF-806L(昭和電工)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.05wt%/THF
注入量:10μL
標準試料:東ソー:標準PS 500、Shodex標準PS SM-105(セット)
【0029】
保護層20に含まれる非導電性フィラーは、平均粒径が10μm以下であり、また、保護層20の全体重量に対する非導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%である。また、非導電性フィラーの重量割合は、10~35重量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。
保護層20が上記重量割合の非導電性フィラーを含むと、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に熱プレスにより配置する際に、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動して保護層の一部が薄くなることを防ぐことができる。そのため、保護層の部分的に薄い箇所が生じにくくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性が良好になる。特に非導電性フィラーの重量割合が10~25質量%であると、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性がより良好になる。
非導電性フィラーの重量割合が10重量%未満であると、非導電性フィラーを含む場合の効果が得られにくくなり、耐湿性が低下しやすくなる。
非導電性フィラーの重量割合が40重量%を超えると、保護層が硬くなり柔軟性が低下しやすくなる。その結果、耐屈曲性が低下しやすくなる。
【0030】
また、非導電性フィラーは、平均粒径が100nm~10μmであることが好ましい。
非導電性フィラーの平均粒径が100nm以上であると、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動して保護層の一部が薄くなることを好適に防ぐことができる。
非導電性フィラーの平均粒径が10μm以下であると、保護層全体の厚さを薄くすることができる。
【0031】
非導電性フィラーは、シリカ及び有機リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中ではシリカであることが好ましい。
これらの材料からなる非導電性フィラーは、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性を好適に向上させることができる。
【0032】
非導電性フィラーがシリカである場合、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、湿式法により合成された湿式シリカ、乾式法により合成された乾式シリカ、多孔性シリカ、無孔性シリカ、疎水性シリカ、各種表面処理を施した親水性シリカであってもよい。
【0033】
疎水性シリカは、例えば、乾式法で合成された非晶質シリカ又は湿式法で合成された非晶質シリカの表面に存在するシラノール基に、疎水性を付与するための表面処理を施すことで製造することができる。
このような表面処理としては、例えば、非晶質シリカの表面を、パラフィンワックス、カルナウバワックス、アミドワックス、ポリエチレンワックスなどのワックス類で被覆する処理が挙げられる。得られる疎水性シリカは、非晶質シリカ表面のシラノール基がワックス層により覆われるため、疎水性を示す。また、非晶質シリカにテトラメチルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、エポキシ基含有シラン、ジメチルジクロロシランなどの有機ケイ素化合物やアミノ基含有有機化合物などを添加し、加水分解等で変性する処理も挙げられる。このようにして得られる疎水性シリカは、非晶質シリカ表面のシラノール基が、有機ケイ素化合物などと化学反応したものであり、その表面にアルキル基などの疎水性基を有している。
【0034】
このような疎水性シリカとしては、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R976、AEROSIL R104、AEROSIL R106、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL R812S、AEROSIL R816、AEROSIL R7200、AEROSIL R8200、AEROSIL R9200(以上、日本アエロジル(株)製)、サイロホービック200、サイロホービック704、サイロホービック505、サイロホービック603(以上、富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
親水性シリカは、例えば、乾式法で合成された非晶質シリカ又は湿式法で合成された非晶質シリカの表面に存在するシラノール基に、化学修飾を行わないことで製造することができる。
このような親水性シリカとしては、AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL OX50、AEROSIL EG50、AEROSIL TT600(以上、日本アエロジル(株)製)、サイリシア250、サイリシア350、サイリシア450、サイリシア550、サイリシア740(以上、富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
非導電性フィラーが有機リン酸塩である場合、ポリリン酸塩及びホスフィン酸金属塩等が挙げられる。ホスフィン酸金属塩としては、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩等を用いることができ、中でもアルミニウム塩が好ましい。ポリリン酸塩としては、メラミン塩、メチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩、ピリジン塩、トリアジン塩、及びアンモニウム塩等を用いることができ、中でもメラミン塩が好ましい。
【0037】
保護層20の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましい。
保護層の厚さが1μm未満であると、保護層が薄すぎるので破損しやすくなる。
保護層の厚さが100μmを超えると、電磁波シールドフィルム全体が厚くなり、扱いにくくなる。また、保護層の柔軟性が低下する。
【0038】
保護層20は、さらにエポキシ系樹脂を有することが好ましい。
保護層20がエポキシ系樹脂を含むと、電磁波シールドフィルム10をプリント配線板に熱プレスにより配置する際に、保護層に含まれるウレタン系樹脂が流動することを抑制することができる。
【0039】
エポキシ系樹脂の酸価は、100~500g/eqであることが好ましく、150~450g/eqであることがより好ましい。
【0040】
電磁波シールドフィルム10では、保護層20におけるウレタン系樹脂と、エポキシ系樹脂との重量比は、ウレタン系樹脂/エポキシ系樹脂=4~49であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。
上記重量比が4未満であると、エポキシ系樹脂が多くなりすぎ、保護層が硬くなりやすくなる。その結果、保護層の柔軟性が低下し、耐屈曲性が低下する。
上記重量比が49を超えると、エポキシ系樹脂が少なくなり、保護層が柔らかくなり、エポキシ系樹脂を含む効果を得られにくくなる。
【0041】
保護層20には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0042】
(金属層)
電磁波シールドフィルム10の金属層30は、電磁波をシールドできれば、特に限定されず、銅層、銀層及びアルミニウム層からなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
これらの金属層は、導電性が高く、好適に電磁波をシールドすることができる。
【0043】
金属層30の厚さは特に限定されないが、0.01~10μmであることが好ましい。
金属層の厚さが0.01μm未満では、充分なシールド効果が得られにくい。
金属層の厚さが10μmを超えると電磁波シールドフィルムが屈曲しにくくなる。
【0044】
電磁波シールドフィルム10では、金属層30は、貫通孔を有していてもよい。
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に熱プレスされることになる。この際、導電性接着剤層40と、金属層30との間に揮発成分が生じることがある。
金属層30に貫通孔が形成されていない場合、この揮発成分が熱により膨張し、金属層30と導電性接着剤層40を剥離することがある。しかし、金属層30に貫通孔が形成されていると、揮発成分が貫通孔を通過することができるので、金属層30と導電性接着剤層40とが剥離することを防ぐことができる。
【0045】
(導電性接着剤層)
導電性接着剤層40は、接着性樹脂組成物と金属粒子とを含む。
なお、導電性接着剤層40は、さらに、難燃剤、難燃助剤、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0046】
導電性接着剤層40に含まれる接着性樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
これらの中では、ポリエステル系樹脂組成物であることが好ましい。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0047】
導電性接着剤層40に含まれる金属粒子としては、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、銅に銀めっきを施した銀コート銅等が挙げられる。
これらの金属粒子は導電性に優れるので、導電性接着剤層40に好適に導電性を付与することができる。
これらの金属粒子は、導電性接着剤層40に一種単独で含まれていてもよく、複数種類が含まれていてもよい。
【0048】
金属粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒径が0.5~20μmであることが好ましい。
【0049】
導電性接着剤層40に含まれる金属粒子の重量割合は、2~60wt%であることが好ましく、10~40wt%であることがより好ましい。
金属粒子の重量割合が2wt%未満であると、電磁波シールドフィルムのシールド性が低下しやすくなる。
金属粒子の重量割合が60wt%を超えると、導電性接着剤層が脆くなり、電磁波シールドフィルムが破損しやすくなる。
また、金属粒子の重量割合が40wt%以下であると、導電性接着剤層が、異方導電性を得ることができる。
【0050】
電磁波シールドフィルム10では、導電性接着剤層40は、等方導電性を有していてもよく、異方導電性を有していてもよい。
導電性接着剤層40が異方導電性を有すると、電磁波シールドフィルム10が配置されたプリント配線板において、高周波信号の送電特性が良好になる。
【0051】
導電性接着剤層40の厚さは、特に限定されず、必要に応じ適宜設定することができるが、0.5~30.0μmであることが望ましい。
導電性接着剤層の厚さが0.5μm未満であると、良好な導電性が得られにくくなる。
導電性接着剤層の厚さが30.0μmを超えると、電磁波シールドフィルム全体の厚さが厚くなり扱いにくくなる。
【0052】
電磁波シールドフィルム10では、保護層20と金属層30との間にアンカーコート層が形成されていてもよい。
アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0053】
上記電磁波シールドフィルム10は、導電性接着剤層40を備えているが、本発明の電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層に代えて非導電性の接着剤層を備えていてもよい。
【0054】
次に、電磁波シールドフィルム10をプリント配線板に配置するシールドプリント配線板の製造方法について説明する。
【0055】
(プリント配線板準備工程)
図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、プリント配線板準備工程を模式的に示す断面図である。
本工程では、ベースフィルム51と、ベースフィルム51の上に配置されたグランド回路52aを含むプリント回路52と、プリント回路52を覆うカバーレイ53とからなるプリント配線板50を準備する。なお、カバーレイ53には、グランド回路52aを露出する開口部53aが形成されている。
【0056】
(電磁波シールドフィルム配置工程)
図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、電磁波シールドフィルム配置工程を模式的に示す断面図である。
本工程では、電磁波シールドフィルム10の導電性接着剤層40は、プリント配線板50のカバーレイ53に接触するように、電磁波シールドフィルム10をプリント配線板50に配置する。
【0057】
(熱プレス工程)
図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法における、熱プレス工程を模式的に示す断面図である。
次に、電磁波シールドフィルム10が配置されたプリント配線板50を矢印の方向に熱プレスすることにより電磁波シールドフィルム10をプリント配線板50に熱プレスする。
【0058】
保護層20は、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーを含み、保護層20の全体重量に対する非導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%であるため、熱プレスする際、保護層20に含まれるウレタン系樹脂が流動して保護層の一部が薄くなることを防ぐことができる。そのため、保護層20の部分的に薄い箇所が生じにくくなる。その結果、電磁波シールドフィルムの耐湿性及び耐屈曲性が良好になる。
【0059】
また、熱プレスにより、導電性接着剤層40が開口部53aを埋め、導電性接着剤層40とグランド回路52aとが接触することになる。
そのため、金属層30とグランド回路52aとが電気的に接続され、電磁波シールド性が向上する。
【0060】
熱プレスの条件としては、特に限定されないが、例えば、150~200℃、2~5MPa、1~60minの条件が挙げられる。
【0061】
図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムを用いて製造されたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
以上の工程を経て、図2Dに示すように、電磁波シールドフィルム10を用いたシールドプリント配線板1を製造することができる。
【0062】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムの別の態様を説明する。
図3は、本発明の電磁波シールドフィルムの別の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す電磁波シールドフィルム110は、保護層120と、導電性接着剤層140とが順に積層された電磁波シールドフィルムである。
電磁波シールドフィルム110において、導電性接着剤層140は等方導電性を有し、電磁波を遮蔽するシールド層として機能する。
【0063】
電磁波シールドフィルム110において、保護層120の好ましい態様は、上記電磁波シールドフィルム10の保護層120と同じである。
【0064】
電磁波シールドフィルム110において、導電性接着剤層140の好ましい態様について以下に説明する。
【0065】
導電性接着剤層140は、接着性樹脂組成物と金属粒子とを含む。
なお、導電性接着剤層140は、さらに、難燃剤、難燃助剤、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0066】
導電性接着剤層140に含まれる接着性樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
これらの中では、ポリエステル系樹脂組成物であることが好ましい。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
導電性接着剤層140に含まれる金属粒子としては、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、銅に銀めっきを施した銀コート銅等が挙げられる。
これらの金属粒子は導電性に優れるので、導電性接着剤層140に好適に導電性を付与することができる。
これらの金属粒子は、導電性接着剤層140に一種単独で含まれていてもよく、複数種類が含まれていてもよい。
【0068】
金属粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒径が0.5~20μmであることが好ましい。
【0069】
導電性接着剤層140に含まれる金属粒子の重量割合は、40重量%以上であることが好ましく、40~60重量%であることがより好ましい。
金属粒子の重量割合が40重量%以上であると、導電性接着剤層140が等方導電性を得ることができる。
【実施例
【0070】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
酸価が3300g/eq、Tgが40℃のウレタン樹脂A(製造元:東洋紡社製、重量平均分子量:200,000)と、エポキシ樹脂(酸価:170g/eq)と、非導電性フィラーとしてシリカ粒子(平均粒径:2μm)とを表1に示す割合で混錬し、保護層用組成物を作製した。
なお、表1中の組成の数値は、重量%を意味している。
【0072】
次に、転写フィルムとして、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
次に、転写フィルムの剥離処理面に保護層用組成物を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ5μmの保護層を作製した。
その後、保護層の上に、無電解めっきにより2μmの銅層を形成した。当該銅層は、シールド層となる。
【0073】
次に、接着性樹脂組成物として熱可塑性ポリエステル樹脂を40重量部と、導電性フィラーとして銀コート銅粉(平均粒径:12μm)を60重量部とを混錬して導電性接着剤を作製した。
そして、銅層の上に、作製した導電性接着剤を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ20μmの導電性接着剤層を作製した。
上記工程を経て実施例1に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0074】
(実施例2~3)及び(比較例1~8)
保護層に用いるウレタン系樹脂として表1に示す種類のウレタン樹脂を用い、保護層の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、実施例2~3及び比較例1~8に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0075】
なお、実施例及び比較例におけるウレタン樹脂B~Eの酸価、重量平均分子量、Tgは表1の通りである。
【0076】
【表1】
【0077】
(抵抗値試験)
図4A及び図4Bは、抵抗値試験の方法を示す模式図である。
まず、図4Aに示すように、ベースフィルム51に、金属パッド52bが形成され、金属パッド52bを露出する2つの開口部53aを有するカバーレイ53が配置された試験基板55を準備した。なお開口部53aの直径は1mmとした。
次に、導電性接着剤層40が、カバーレイ53に接触するように、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルム10を試験基板55に配置した。
その後、プレス機を用いて170℃、3MPa、30minの条件で熱プレスすることにより、図4Bに示す試験用シールド基板2を作製した。
次に、図4Bに示すように、2つの金属パッド52bに抵抗測定器Rを接続し、製造直後の試験用シールド基板2の導電性接着剤層40の電気抵抗値(厚さ方向の電気抵抗値)を測定した結果を表1に示す。
また、試験用シールド基板2に、260℃、1minの条件で熱衝撃を5回加え、その後、同様の方法で、試験用シールド基板2の導電性接着剤層40の電気抵抗値(厚さ方向の電気抵抗値)を測定した結果を表1に示す。
また、試験用シールド基板2を、85℃、85%RHの高温高湿環境下に500hr放置し、その後、同様の方法で試験用シールド基板2の導電性接着剤層40の電気抵抗値(厚さ方向の電気抵抗値)を測定した結果を表1に示す。
【0078】
(耐屈曲性試験)
図5は、耐屈曲性試験を模式的に示す図である。
電磁波シールドフィルムの耐屈曲性を以下の方法で評価した。
【0079】
<操作(i)>
まず、ポリイミドフィルム25μmからなるベース部材の上に配線基板を模した回路を形成した3本の銅箔パターン(銅箔厚み12μm、ライン巾8mm)が形成され、その上に絶縁性の接着剤層およびポリイミドフィルムからなるカバーレイ(絶縁フィルム厚み37.5μm)が積層された試験用プリント配線基板60を準備した。
【0080】
<操作(ii)>
次に各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルム10と試験用プリント配線基板60とを、電磁波シールドフィルム10の接着剤層がプリント配線板60のカバーレイと接するように、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件で接着し、積層体61を作製した。
【0081】
<操作(iii)>
次に、厚さ2mmのベーク板71上に、厚さ0.4mmの矩形状のガラスエポキシ板72を2本、平行となるように固定した治具を作製した。そして、積層体61を電磁波シールドフィルム10が外側となるように折り曲げた状態で治具における2本のガラスエポキシ板72の間で保持した。
【0082】
<操作(iv)>
次いで、折り曲げた状態で保持された積層体61の上に、厚さ2mmのベーク板73および1kgの標準分銅74を載置し、10秒間保持した。
【0083】
<操作(v)>
10秒間保持した後、ベーク板73および標準分銅74を取り除き、積層体61を1分間放置した。
【0084】
上記操作(iv)~(v)の動作を10回繰り返し、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルムの保護層を目視で観察し、耐屈曲性を評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
◎:クラックが観察されなかった
○:クラックが観察されたが、クラック箇所から保護層の下の層(銅層)は露出しなかった
×:クラックが観察され、クラック箇所から保護層の下の層(銅層)が露出した
【0085】
(ブロッキング試験)
図6は、ブロッキング試験を模式的に示す図である。
以下の方法で、保護層の耐ブロッキング性を評価した。
【0086】
まず、厚み50μm、縦寸法40mm、横寸法40mmのポリエチレンテレフタレートフィルム80の上面に、各実施例及び各比較例に係る保護層用組成物を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ5μmの保護層を作製することにより、ブロッキング試験用試験体81を作製した。
【0087】
次に、図6に示すように、アルミニウム板91の上に、保護層20が下に位置し、ポリエチレンテレフタレートフィルム80が上に位置するように、ブロッキング試験用試験体81を2枚重ね、その上にアルミニウム板92を配置した。
そして、アルミニウム板91及びアルミニウム板92の上下から2kgの圧力をかけ、常温で3日間その状態を維持した。
その後、ブロッキング試験用試験体81を取り出し、ブロッキングが生じているかを観察し、耐ブロッキング性を評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:ブロッキング試験用試験体81が容易に剥がれ、ブロッキングが生じていなかった。
×:一方のブロッキング試験用試験体81の保護層20と、もう一方のブロッキング試験用試験体81のポリエチレンテレフタレートフィルム80とがくっついており、各ブロッキング試験用試験体81が剥がれにくく、ブロッキングが生じていた。
【0088】
表1に示すように、保護層に含まれるウレタン樹脂の酸価が2000~4000g/eqであると、耐屈曲性が良好になることが判明した。
また、保護層に含まれるウレタン樹脂のTgが0℃以上であると、ブロッキングが生じにくくなることが判明した。
また、保護層に平均粒径が10μm以下の非導電性フィラーが、保護層の全体重量に対し、10~40重量%含まれると、耐湿性及び耐屈曲性が向上することが判明した。
【符号の説明】
【0089】
1 シールドプリント配線板
2 試験用シールド基板
10、110 電磁波シールドフィルム
20、120 保護層
30 金属層
40、140 導電性接着剤層
50 プリント配線板
51 ベースフィルム
52 プリント回路
52a グランド回路
52b 金属パッド
53 カバーレイ
53a 開口部
55 試験基板
60 試験用プリント配線基板
61 積層体
71、73 ベーク板
72 ガラスエポキシ板
74 標準分銅
80 ポリエチレンテレフタレートフィルム
81 ブロッキング試験用試験体
91、92 アルミニウム板

【要約】
ロール保管時にブロッキングが生じにくく、耐湿性及び耐屈曲性に優れる電磁波シールドフィルムを提供する。
本発明の電磁波シールドフィルムは、保護層と、シールド層とが積層された電磁波シールドフィルムであって、上記保護層は、酸価が2000~4000g/eq、かつ、Tgが0℃以上であるウレタン系樹脂と、平均粒径が10μm以下である非導電性フィラーとを含み、上記保護層の全体重量に対する上記非導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%であることを特徴とする。

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5
図6