(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A47K10/16 B
(21)【出願番号】P 2019021500
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205179(JP,A)
【文献】特開2019-10366(JP,A)
【文献】特開2017-131545(JP,A)
【文献】特開2009-240722(JP,A)
【文献】特開2017-169681(JP,A)
【文献】特開2018-198860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21H 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルエンボスが施され、2プライに重ねられたトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
前記トイレットペーパーの幅方向に設けられたミシン目、及び
前記トイレットペーパーの長手方向に設けられたプライエンボスを有し、
巻長が45m以上93m以下であり、
巻径が100mm以上143mm以下であり、
1プライの坪量が11g/m
2以上19g/m
2以下であり、
2プライのトイレットペーパーにおいて、前記ミシン目を含む領域の、DMDTが2.5N/75mm以上8.3N/75mm以下であり、DCDTが1.9N/75mm以上5.9N/75mm以下であり、
ロールの外側の1プライのトイレットペーパーにおいて、前記ミシン目を含む領域の、DMDTが1.3N/75mm以上4.2N/75mm以下であり、DCDTが1.0N/75mm以上3.0N/75mm以下であり、
前記プライエンボスの高さが0.10mm以上0.80mm以下であり、
前記プライエンボスの幅が1mm以上20mm以下であるトイレットロール。
【請求項2】
前記2プライに重ねられたトイレットペーパーにおいて、TSAによるHF値が、75以上83以下である請求項1記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記トイレットペーパーの紙厚が、0.6mm/10枚以上1.3mm/10枚以下である請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記トイレットロールの巻密度が、0.9m/cm
2以上1.9m/cm
2以下である請求項1から3いずれか1項記載のトイレットロール。
【請求項5】
前記記トイレットロールのロール密度が、0.17g/cm
3以上0.25g/cm
3以下である請求項1から4いずれか1項記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2プライのトイレットペーパーをロール状に巻取ったトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のトイレットペーパーを巻き取ったトイレットロール(以下、長尺トイレットロールと記載する)は、保管場所、ロールの取り換え回数を減らすことができることから、各種開発されている。長尺トイレットロールは、コンパクトにするため、巻密度を高く、紙厚を低くする必要があり、そのため、比容積が低くなるシングルエンボス方式が広く用いられている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
シングルエンボス方式(以下、シングルエンボスと記載する)の場合、ダブルエンボス方式(以下、ダブルエンボスと記載する)に比べて、薄く感じる、又は、表裏差が大きくなることから使用感又は触感がそれほど良くない。
一方で、ダブルエンボスにすると、厚く感じ、また表裏差が小さくなり、触感は良くなる。ダブルエンボスの場合、例えば、特許文献3に記載のように、表と裏のエンボスパターンを変えて、エンボスの美粧性、比容積等を調整することも提案されている。
また、特許文献4には、2~3枚重ねてロール状に巻き取っても1プライと同じ長さに巻き取ることが可能となるように、1枚あたりの坪量を小さくしたトイレットペーパーが開示されている。さらに、特許文献5には、ダブルのトイレットペーパーロールにおいて、トイレットペーパーの厚みを低下させることなく巻き長さを長くするため、伸び率の異なるシートをコンタクトエンボスにより一体化したトイレットペーパーロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-188342号公報
【文献】特開2016-198409号公報
【文献】特開2017-196272号公報
【文献】特開2006-087703号公報
【文献】特開2013-208297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シングルエンボスでは、積層した2プライが一緒にエンボスされるためペーパー同士の剥がれはそれほど問題ない。しかしながら、ダブルエンボスの場合は、プライ剥がれを防止するためプライエンボスが施されることが多い。ところが、プライエンボス部以外の部分は2プライが一緒に積層されている訳ではないため、表と裏のエンボスのパターンの違いにより、それぞれのプライの強度が異なる。そのため、高坪量の長尺トイレットロールで、トイレットロールの質量が高く巻径も大きいロールの場合、ペーパーホルダーから引き出す際に、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れて、特にトイレットロールの外側のプライのミシン目部分で破れる、又は、強度の弱い幅方向に破れるという問題がある。
【0006】
また、2プライのDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)がダブルエンボスとシングルエンボスで同じであったとしても、ダブルエンボスは2プライのうちの1プライだけ破れる場合がある。さらに、プライエンボスを設けると、ロール状のトイレットロールではプライエンボスの部分が盛り上がるため、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れる際、プライエンボスの部分がより擦れて、破れやすいという問題がある。
さらに、特許文献4及び5に記載の発明では、長尺にすることは可能であるが、使用感及び触感が悪くなるという問題がある。
上記のように、ダブルエンボスが施された長尺トイレットロールにおいて、コンパクトでありながら、良好な触感及び破れにくさを満足することは困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ダブルエンボスが施された長尺トイレットロールであって、コンパクトでありながら、良好な触感を有し破れにくいトイレットロールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結果、特定の範囲の特性を有する2プライのトイレットペーパーが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のトイレットロールは、ダブルエンボスが施され、2プライに重ねられたトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、前記トイレットペーパーの幅方向に設けられたミシン目、及び前記トイレットペーパーの長手方向に設けられたプライエンボスを有し、巻長が45m以上93m以下であり、巻径が100mm以上143mm以下であり、1プライの坪量が11g/m2以上19g/m2以下であり、2プライのトイレットペーパーにおいて、前記ミシン目を含む領域のDMDTが2.5N/75mm以上8.3N/75mm以下であり、DCDTが1.9N/75mm以上5.9N/75mm以下であり、ロールの外側の1プライのトイレットペーパーにおいて、前記ミシン目を含む領域のDMDTが1.3N/75mm以上4.2N/75mm以下であり、DCDTが1.0N/75mm以上3.0N/75mm以下であり、前記プライエンボスの高さが0.10mm以上0.80mm以下であり、前記プライエンボスの幅が1mm以上20mm以下である。
【0008】
前記2プライに重ねられたトイレットペーパーにおいて、TSAによるHF値は、75以上83以下であることが好ましい。
【0009】
前記トイレットペーパーの紙厚は、0.6mm/10枚以上1.3mm/10枚以下であることが好ましい。
【0010】
前記トイレットロールの巻密度は、0.9m/cm2以上1.9m/cm2以下であることが好ましい。
【0011】
前記トイレットロールのロール密度は、0.17g/cm3以上0.25g/cm3以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダブルエンボスが施された長尺トイレットロールであって、コンパクトでありながら、良好な触感を有し破れにくいトイレットロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のトイレットロールの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明のトイレットロールの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】一実施形態におけるプライエンボスの平面拡大図である。
【
図4】別の実施形態のトイレットロールを示す斜視図である。
【
図5】別の実施形態におけるプライエンボスの平面拡大図である。
【
図6】プライエンボスの測定箇所を示す斜視図である。
【
図7】プライエンボスの測定箇所を示す斜視図である。
【
図10】マイクロスコープによるプライエンボスの断面プロファイルを示す画像である。
【
図11】マイクロスコープによるプライエンボスの断面プロファイルを示す画像である。
【
図12】実施例のプライエンボスの詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
【0015】
[トイレットロール]
図1は、本実施形態のトイレットロール10の外観を示す斜視図である。
本実施形態のトイレットロール10は、
図1に示すように、2プライ(表側のプライ11a、裏側のプライ11b)に重ねられたトイレットペーパー11をロール状に巻き取ったものである。そして、本実施形態のトイレットロール10は、トイレットペーパー11の幅方向Xに設けられた切り取り用のミシン目12を有するものである。
【0016】
(巻長)
本発明のトイレットロール10の巻長は、45m以上93m以下である。巻長が45m以上であることにより、トイレットロール10の交換頻度を少なくすることができる。また、巻長が93m以下であることにより、高坪量でダブルエンボスが施されたトイレットペーパーを用いたトイレットロールであっても巻径が大き過ぎず、トイレットロールがペーパーホルダー内で回転しやすい。
巻長は、53m以上83m以下であることが好ましく、60m以上73m以下であることがより好ましい。
【0017】
(巻直径)
トイレットロール10の巻直径DR(
図1参照)は、100mm以上143mm以下である。巻直径がこの範囲であることにより、交換頻度を少なくすることができ、かつペーパーホルダーで回転しやすくなる。
巻直径DRは、110mm以上134mm以下であることが好ましく、114mm以上124mm以下であることがより好ましい。
【0018】
(巻密度)
本発明のトイレットロール10の巻密度は、0.9m/cm2以上1.9m/cm2以下であることが好ましい。巻密度が0.9m/cm2以上であることにより、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺のトイレットペーパーであってもコンパクトなトイレットロールを得ることができる。また、1.9m/cm2以下であることにより、長尺にするために坪量を低くする必要がなく、良好な使用感を得ることができる。
【0019】
ここで、巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(コア外径部分の断面積)}で表される。コア(紙管)外径DIは、ロールの中心孔の直径である。
例えば、巻長61m、2プライ、巻直径DR118mm、コアの外径39mmの場合、巻密度=(61m×2)÷{3.14×(118mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}=1.25m/cm2となる。トイレットロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径とする。
巻密度は、1.0m/cm2以上1.6m/cm2以下であることがより好ましく、1.2m/cm2以上1.4m/cm2以下であることが更に好ましい。
【0020】
(坪量)
トイレットペーパー11の1プライの坪量は、11g/m2以上19g/m2以下である。1プライの坪量が11g/m2以上であることにより、ダブルエンボスの長尺の条件で良好な使用感を得ることができる。また、19g/m2以下であることにより、ダブルエンボスの長尺であっても巻径を小さくすることができるので、ペーパーホルダー内で回転しやすい。
トイレットペーパー11の1プライの坪量は、13g/m2以上18g/m2以下であることがより好ましく、15g/m2以上17g/m2以下であることが更に好ましい。
【0021】
(紙厚)
トイレットペーパー11の紙厚は0.6mm/10枚以上1.3mm/10枚以下であることが好ましい。トイレットペーパー11の紙厚が0.6mm/10枚以上であることにより、プライエンボスを設ける際に、プライエンボスがしっかり入り、本願のようなダブルエンボス、高坪量の長尺トイレットペーパーにおいて、触感を良好にすることができる。トイレットペーパー11の紙厚が1.3mm/10枚以下であることにより、ペーパーホルダーへの装着がしやすくなる。
トイレットペーパー11の紙厚は、0.7mm/10枚以上1.2mm/10枚以下であることがより好ましく、0.8mm/10枚以上1.1mm/10枚以下であることが更に好ましい。トイレットペーパー11の紙厚を上記範囲に調整する方法としては、坪量、パルプ原料の叩解およびエンボス条件等を調整する方法を挙げることができる。
【0022】
(ダブルエンボス)
トイレットペーパー11の表側のプライ11aにおいて、エンボスの個数は21個/cm2以上90個/cm2以下であることが好ましく、36個/cm2以上75個/cm2以下であることがより好ましく、51個/cm2以上65個/cm2以下であることが更に好ましい。
【0023】
トイレットペーパー11の裏側のプライ11bにおいて、エンボスの個数は21個/cm2以上90個/cm2以下であることが好ましい。36個/cm2以上75個/cm2以下であることがより好ましく、51個/cm2以上65個/cm2以下であることが更に好ましい。
本発明のような、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺の条件では、表側のプライ11a及び裏側のプライ11bのいずれにおいても、エンボスの個数が21個/cm2以上であることにより、エンボスが潰れにくく、美粧性に優れる。また、エンボスの個数が90個/cm2以下であることにより、高坪量であってもエンボスの触感が感じられ、使用感に優れる。
【0024】
表側のプライ11aのエンボスの個数と裏側のプライ11bのエンボスの個数の差は、0個/cm2以上30個/cm2以下あることが好ましく、0個/cm2以上20個/cm2以下あることがより好ましく、0個/cm2以上10個/cm2以下あることが更に好ましい。表側のプライ11aのエンボスの個数と裏側11bのエンボスの個数の差を上記範囲とすることにより、表裏の触感の差が小さく、全体的に良好な触感と使用感が得られる。
【0025】
(ダブルエンボスの高さ)
ダブルエンボスの高さは、0.01mm以上0.15mm以下であることが好ましく、0.02mm以上0.11mm以下であることがより好ましく、0.03mm以上0.08mm以下であることが更に好ましい。
なお、エンボスの個数と高さの測定は、エンボス長辺が0.1mm以上5.0mm以下のエンボスについて行う。エンボス長辺は、次のように測定する。トイレットロール10の外側のトイレットペーパー11aについて、後述するプライエンボスの測定箇所(A,B、C、D、E、F、G、H、
図6及び
図7参照)のうち、同じX方向の位置における2領域の間、AとBとの間、CとDとの間、EとFとの間、GとHとの間であってプライエンボスを含まない部分(4か所)について試験片(5cm×5cm)を採取し、そのうちの1cm×1cmの範囲で、ロール表面側からエンボスが多い部分を目視で確認し、光学顕微鏡で観察する。エンボス1個の開口の最大径をエンボス長辺とする。このエンボス長辺が0.1mm以上5.0mm以下のエンボスの個数を測定し、上記4か所の平均値を求める
また、1cm×1cmの範囲で、エンボス長辺が0.1mm以上5.0mm以下の任意のエンボス10個について高さを測定する。そして、上記4か所(合計40か所)の平均値を求める。1cm×1cmの領域で100個以上のエンボスがある場合は、5mm×5mmの領域を測定し、1cm×1cmに換算する。
また、エンボスの高さは、特開2018-047133号公報にエンボスパターンの深さの測定方法と同様に行う。
【0026】
(ミシン目)
本発明のトイレットロール10には、
図1に示すように、トイレットペーパー11の切り取り用のミシン目12が、トイレットペーパー11の幅方向Xに、所定の間隔で設けられている。ミシン目を設ける場合、ミシン目の切れ込み線の長さは0.3mm以上3.5mm以下であることが好ましく、ミシン目のつなぎ部の長さは0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。ミシン目の切れ込み線の長さは0.8mm以上3.0mm以下であることがより好ましく、ミシン目のつなぎ部の長さは0.5mm以上1.8mm以下であることがより好ましい。ミシン目の切れ込み線の長さは1.3mm以上2.5mm以下であることが更に好ましく、ミシン目のつなぎ部の長さが0.7mm以上1.3mm以下であることが更に好ましい。
ミシン目のピッチ(MD方向に)おけるミシン目とミシン目の間隔は70mm以上280mm以下が好ましく、85mm以上200mm以下がより好ましく、100mm以上130mm以下が更に好ましい。
【0027】
また、後述するミシン目を含むDMDT、ミシン目を含まないDMDTについて、ミシン目を含むDMDT/ミシン目を含まないDMDT×100は、25%以上60%以下が好ましく、33%以上55%以下がより好ましく、40%以上50%以下が更に好ましい。ミシン目の切れ込み線の長さ、つなぎ部分の長さ、及びミシン目を含むDMDT/ミシン目を含まないDMDT×100を上記の範囲内のものとすることにより、ミシン目の強度が適正になり、トイレットロールがペーパーホルダー内で回転する際に、擦れて破れるのを抑制できる。なお、切れ込み線の長さとつなぎ部の長さは、少なくともトイレットロールの幅のうち、75mmにおいて測定し、加重平均とする。測定には、一般的な光学顕微鏡等の顕微鏡を用いることができる。
【0028】
(プライエンボス)
本実施形態のトイレットロール10では、
図2に示すように、トイレットペーパー11の長手方向Yにプライエンボス13及び14が施されてなるものである。
具体的には、
図3に示すように、長手方向Yに平行な2本のエンボス13a及び13bによるプライエンボス13、並びに、長手方向Yに平行な2本のエンボス14a及び14bによるプライエンボス14を有する。なお、エンボス13a、13b、14a、及び14bは、ロール外側に凸状である。
また、別の実施形態のトイレットロール20は、
図4に示すように、トイレットペーパー21の長手方向Yにプライエンボス23及び24が施されてなるものである。具体的には、
図5に示すように、プライエンボスとして、長手方向Yに対して斜め方向に配された複数のエンボス23a、及びエンボス23aと対称的に設けられた複数のエンボス23bが長手方向Yに沿って設けられてなるプライエンボス23と、斜め方向に配された複数のエンボス24a、及びエンボス24aと対称的に設けられた複数のエンボス24bが長手方向Yに沿って設けられてなるプライエンボス24とを有するものである。なお、エンボス23a、23b、24a、及び24bは、ロール外側に凸状である。
本発明における「プライエンボス」とは、1プライを別々にエンボス処理した後、1プライの凸面側と1プライの凸面側をそれぞれ内側にして2プライにして施すエンボスを意味する。
【0029】
なお、エンボス23a及びエンボス23aは対称的に設ける必要はなく、互いにずれて配置されていてもよい。
また、本発明におけるプライエンボスは、
図2から
図5では幅方向Xの両端近傍に2本形成されているが、1本又は3本以上でもよく、プライエンボスを施す場所は、プライエンボスの幅の中心Mが、端から2%以上35%以下の範囲に位置するような場所であることが好ましく、5%以上20%以下の範囲に位置するような場所であることがより好ましく、7%以上15%以下の範囲に位置するような場所であることが更に好ましい。
プライエンボスのそれぞれのエンボス(13a、13b、14a、14b)の形状は、上記2つの実施形態のものに限られず、矩形状、円形、楕円形等であってもよい。
【0030】
(プライエンボスの高さ)
本発明において、プライエンボスの高さは0.10mm以上0.80mm以下である。本願のようなダブルエンボス、高坪量、長尺の条件で、プライエンボスの高さが0.10mm未満の場合にプライが剥がれやすくなり、プライエンボスの高さが0.80mmを超えるとペーパーホルダーに擦れて破れやすくなる。プライエンボスの高さは0.20mm以上0.65mm以下であることが好ましく、0.30mm以上0.50mm以下であることがより好ましい。
【0031】
(プライエンボスの高さの測定方法)
プライエンボスの高さは、マイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。
マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マイクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で、走査方向をトイレットロール10のX方向にして測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスパターンの大きさによって、適宜変更してもよい。
測定箇所について、トイレットロール10で説明する。測定は、ロール表面側のプライ11aで行う。また、トイレットロール10をロール形状のままで測定する。ここで、トイレットロール10は嵩張る形状のため上記マイクロスコープのピントが合いにくくなる場合がある。この場合、サンプルを載せるステージ(台)を取り除いてピントを調節して測定してもよい。
まず、測定に適さない表面のトイレットペーパー11を10周分取り除く。次に、
図6及び
図7に示すように、連続する4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)の、両側のプライエンボス13及び14について、ロール形状のまま凹凸の測定を行う。
なお、凹凸を測定する際、個々のプライエンボスのパターンを含んでいる箇所とする。
【0032】
マイクロスコープにより、
図10に示すように、実際のトイレットペーパー11の試料表面の連続する凹凸を表す(測定)断面曲線を得る。
図10は、トイレットロール10の幅方向Xにおけるプライエンボスの凹凸を表す(測定)断面曲線であるが、ノイズ(トイレットロールの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出において、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、高さプロファイルの断面曲線から輪郭曲線を計算し、
図11に示すように、この輪郭曲線において、極大値(b)から極小値(a1、a2)をそれぞれ引いた値の平均値をエンボスパターンの高さとする。
なお、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、プライエンボスの幅以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをプライエンボスの幅未満とする。例えば、プライエンボスの幅が800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。
【0033】
図3に示すように、プライエンボス13のうち、エンボス13aとエンボス13bとの間(14aと14bとの間)の距離L
10が10mm以下であれば、高さの測定箇所は、エンボス13aからエンボス13bにかけて測定し、これを測定箇所1か所とする。4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、
図6及び
図7に示すように、それぞれ2か所(A~H)測定し、合計8か所の平均値をエンボスパターン13及び14の高さとする。なお、プライエンボスが3か所以上ある場合は、3か所以上×4か所=12か所以上測定する。
【0034】
別の実施形態のトイレットロール20においては、
図5に示すように、エンボス23aとエンボス23bとの間(24aと24bとの間)の距離L
20が10mm以下であれば、測定箇所は、エンボス23aからエンボス23bにかけて測定し、これを測定箇所1か所とする。4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、それぞれ2か所(A~H)測定し、合計8か所測定して平均値を求め、上記同様にプライエンボスの高さとする。
【0035】
一方、エンボス13aと13bとの間、及び14aと14bとの間の距離L10が10mmより大きい場合、エンボス13a、13b、14a、及び14bをそれぞれ測定する。4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、それぞれ4か所(A~H)測定するので、合計16か所測定して平均値を求め、プライエンボスの高さとする。
【0036】
また、
図5に示す別の実施形態においても、同様に、エンボス23aと23bとの間、及び24aと24bとの間の距離L
20が10mmより大きい場合、23a、23b、24a及び24bをそれぞれ測定する。4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、それぞれ4か所(A~H)測定するので、合計16か所測定して平均値を求め、プライエンボスの高さとする。
【0037】
(プライエンボスの幅)
本発明におけるトイレットペーパー11のプライエンボスの幅は、1mm以上20mm以下である。エンボスの幅が1mm未満であると、プライが剥がれやすくて破れやすく、20mm超えると、ペーパーホルダーと擦れて破れやすくなる。
トイレットペーパー11のプライエンボスの幅は、3mm以上16mm以下であることが好ましく、5mm以上12mm以下であることがより好ましい。
【0038】
(プライエンボスの幅の測定方法)
上記プライエンボスの高さの測定方法と同様に、トイレットペーパー11を10周分取り除き、連続する4つの領域(LS1、LS2、LS3、LS4)について、両側のプライエンボス13及び14(
図2参照)について、ロール形状のまま測定を行う。
このとき、
図3に示すように、プライエンボス13aと13bとの間(又は、14aと14bとの間)の距離L
10が、10mm以下であれば、エンボス13aからエンボス13bにかけて測定し、
図11おける、1つの最小値a1と隣の最小値a2との間の距離を求める。これを、14a及び14bについて同様に求め、さらに4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について行い、合計8か所の平均値をプライエンボスの幅とする。
【0039】
別の実施形態のトイレットロール20においては、
図5に示すように、エンボス23aとエンボス23bとの間の距離L
20が10mm以下であれば、エンボス23aからエンボス23bにかけて測定し、
図11における、1つの最小値a1と隣の最小値a2との間の距離を求める。これを、24a及び24bについて同様に求め、さらに4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について行い、合計8か所の平均値をプライエンボス幅とする。
【0040】
一方、プライエンボス13aと13bとの間、及び14aと14bとの間の距離L
10が10mmより大きい場合、エンボス13a、13b、14a、及び14bをそれぞれについて、
図11における、1つの最小値a1と隣の最小値a2との間の距離を求める。これを、4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、それぞれ4か所(A~H)測定するので、合計16か所測定して平均値を求め、プライエンボスの幅とする。
【0041】
また、
図5に示す別の実施形態においても、同様に、エンボス23aと23bとの間、及び24aと24bとの間の距離L
20が10mmより大きい場合、23a、23b、24a及び24bをそれぞれ測定する。4か所(LS1、LS2、LS3、LS4)について、それぞれ4か所(A~H)測定するので、合計16か所測定して平均値を求め、プライエンボスの幅とする。
【0042】
プライエンボスとして、エンボス23a及び23bのように対称的に配置したパターンでは、幅以外のその他の好ましい寸法は、以下の通りである(
図12参照)。なお、ここでは23a及び23bを参照して説明するが、24a及び24bについても同様である。
エンボス23a(23b)の長手方向の寸法Leは、1.0mm以上10.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上8.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上6.0mm以下であることが更に好ましい。
23a(23b)の短手方向の寸法Weは、0.1mm以上4.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上3.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
エンボス23a(23b)のMD方向の寸法L
MDは、0.4mm以上7.0mm以下であることが好ましく、0.9mm以上5.5mm以下であることがより好ましく、1.4mm以上4.0mm以下であることが更に好ましい。
エンボス23a(23b)のCD方向の寸法L
CDは、0.4mm以上7.0mm以下であることが好ましく、0.9mm以上5.5mm以下であることがより好ましく、1.4mm以上4.0mm以下であることが更に好ましい。
エンボス23aと23bとの間隔L
20は、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上3.5mm以下であることがより好ましく、0.6mm以上2.0mm以下であることが更に好ましい。
エンボス23a(23b)間の距離S
MDは、0.3mm以上6.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上4.2mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.5mm以下であることが更に好ましい。
エンボス23a(23b)の傾斜角度θは、5度以上85度以下であることが好ましく、20度以上70度以下であることがより好ましく、35度以上55度以下であることが更に好ましい。
上記の値にすることで、高坪量、ダブルエンボス、長尺のトイレットロールにおいて、プライが剥がれにくく、また、トイレットロールがペーパーホルダーに擦れる際、プライエンボスの部分で破れにくくなる。
【0043】
(ロール質量)
ロール質量は、芯(コア)の質量を除く、ロール幅(芯方向のロールの幅)114mmあたりのトイレットロール10の質量である。本発明のトイレットロール10において、芯(コア)の質量を除くロール1個あたりの質量は、150g以上350g以下である。ロール質量が上記の範囲であることにより、本願のようなダブルエンボス、高坪量、長尺において、ロールの取り換え頻度とホルダーへの装着のしやすさが良好になる。また、坪量や巻長が適切に維持され、ロールの交換頻度を低くすることができる。
芯(コア)の質量を除くロール1個あたりの質量は、180g以上308g以下であることが好ましく、210g以上250g以下であることがより好ましい。
【0044】
(ロール密度)
トイレットロール10のロール密度は、0.17g/cm3以上0.25g/cm3以下であることが好ましく、0.19g/cm3以上0.23g/cm3以下であることがより好ましく、0.20g/cm3以上0.22g/cm3以下であることが更に好ましい。トイレットロール10のロール密度が0.17g/cm3以上であることにより、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺のトイレットロールであっても、コンパクトにすることができる。また、0.25g/cm3以下であることにより、プライエンボスが潰れにくく、プライが剥がれて破れるのを防止することができる。
ロール質量は、ロール幅114mmあたりのトイレットロールの質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(114mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅114mmあたりのロール質量(コアを除く)が230g、巻直径118mm、コアの外径が39mmの場合、ロール密度=230g÷[{3.14×(118mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}×(114mm÷10)]=0.207g/cm3となる。なお、トイレットロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径とする。
【0045】
(コア外径)
また、本発明のトイレットロール10の芯の外径である、コア外径は、25mm以上48mm以下であることが好ましく、35mm以上46mm以下であることがより好ましく、37mm以上43mm以下であることが更に好ましい。コア外径が上記の範囲内のものであることにより、トイレットロール10の巻密度を好適に維持しつつ、トイレットロール10を、トイレットペーパーホルダーに収まりやすくすることができ、加えて、製造時のトイレットロール10の取扱性も良好となる。
また、トイレットロール10のコアの質量は3.0g以上6.5g以下であることが好ましく、4.0g以上5.8g以下であることがより好ましく、4.5g以上5.3g以下であることが更に好ましい。コア質量を上記の数値範囲内にすることにより、本発明のような長尺のトイレットペーパーに適した、良好なコアの強度とコアのコストを実現することができる。コアの質量は、ロール質量と同様、ロール幅114mmの質量とする。
【0046】
(比容積)
トイレットペーパー11の比容積は4.3cm3/g以上7.3cm3/g以下であることが好ましい。トイレットペーパー11の比容積が上記範囲内のものであることにより、シートの柔らかさが良好なものとなり、バルク(嵩高さ)が好適に維持され、本願のようなダブルエンボス、高坪量、長尺において、巻直径DRが大きくなり過ぎることがない。上記比容積は、4.8cm3/g以上6.8cm3/g以下であることがより好ましく、5.3cm3/g以上6.3cm3/g以下であることが更に好ましい。
【0047】
(ミシン目を含むDMDT(2プライ))
トイレットペーパー11のJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さをDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)とすると、本発明のトイレットロールにおいて、ミシン目を含む領域のDMDTは、2.5N/75mm以上8.3N/75mm以下である。ミシン目を含む領域のDMDTは、3.1N/75mm以上7.1N/75mm以下であることが好ましく、4.5N/75mm以上6.1N/75mm以下であることがより好ましい。
ミシン目を含む領域のDMDTを上記の範囲に調整することにより、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺でありながら、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れて、特に、ロール外側のプライのミシン目が破れるのを防ぐことができる。また、トイレットペーパーを使用するときに、ミシン目で切りやすくなる。
なお、ミシン目を含む領域DMDTは、
図8に示すように、ミシン目12を含む領域33を測定するものとする。このとき、ミシン目12が領域33のMD方向の中心に一つ含む位置で測定する。領域33のMD方向の寸法L
1は、100mm以上であることが好ましいが、ミシン目のピッチPが小さい場合は、可能な限り長くする。領域33のCM方向の寸法W
1は、75mmである。
【0048】
(ミシン目を含まないDMDT(2プライ))
ミシン目を含まないDMDTは、7.0N/75mm以上18.5N/75mm以下であることが好ましく、8.5N/75mm以上16.0N/75mm以下であることがより好ましく、10.0N/75mm以上14.0N/75mm以下であることがさらに好ましい。
図8に示すように、ミシン目12を含まない領域32を測定するとき、領域32のMD方向の寸法L
1は、100mm以上であることが好ましい。ミシン目のピッチPが小さい場合は、領域32のMD方向の寸法L
1は100mm以下にしてもよいが、ミシン目を含まないように可能な限り長くする。
引張試験機のつかみ具のピッチは80mmで測定するが、ミシン目を含まないようにすると試験片が小さくなる場合は、つかみ具のピッチは適宜小さくしてもよい。つかみ具のピッチが20mm未満になる場合は、つかみ具を20mmとして、ミシン目を含んでよいこととする。
領域32のCD方向の寸法W
1は75mmとする。領域32ついては、プライエンボスを含まないように採取する。75mmの間にプライエンボス含む場合は、領域32のCD方向の寸法W
1は25mmまで小さくして75mmの値に換算することとする。領域32のCD方向の寸法W
1が25mm未満になる場合は、プライエンボスを含んでもよいこととし、25mmで測定し、75mmの値に換算する。
【0049】
(DCDT(2プライ))
乾燥時の横方向の引張強さをDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)とすると、DCDTは1.9N/75mm以上5.9N/75mm以下である。DCDTは、2.8N/75mm以上5.1N/75mm以下であることが好ましく、3.1N/75mm以上4.3N/75mm以下であることがより好ましい。
DCDTを上記の範囲に調整することにより、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺でありながら、ロール質量が重くならず、トイレットペーパーを引出す際に、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れて、ロールの幅方向(CD方向)が破れるのを防止することができる。また、触感も良好になる。
DCDTの測定領域は、
図9に示すように、測定領域34のMD方向の寸法L
2は、75mmである。ミシン目ピッチPが75mm以下の場合は、MD方向の寸法L
2を25mmにして測定し、75mmの値に換算することとする。
測定領域34のCD方向の寸法W
2は、100mm以上が好ましいが、プライエンボスを含まないように、可能な限り長くする。プライエンボスを含んでしまう場合は、つかみ具のピッチを小さくして測定するが、20mm未満にならない範囲で可能な限り大きくする。
【0050】
(外側の1プライのミシン目を含むDMDT)
ロールの外側の1プライのトイレットペーパーにおいて、ミシン目を含む領域のDMDTが1.3N/75mm以上4.2N/75mm以下である。ミシン目を含む領域のDMDTは、1.6N/75mm以上3.6N/75mm以下であることが好ましく、2.3N/75mm以上3.1N/75mm以下であることがより好ましい。
ロールの外側の1プライのトイレットペーパーにおいて、ミシン目を含む領域のDMDTを上記の範囲に調整することにより、ダブルエンボス、高坪量、及び長尺でありながら、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れて、特に、ロール外側のプライのミシン目が破れるのを防ぐことができる。
測定領域については、上記2プライの場合の測定方法と同様である。
【0051】
(外側の1プライのDCDT)
ロールの外側の1プライのトイレットペーパーにおいて、DCDTは1.0N/75mm以上3.0N/75mm以下である。DCDTを上記の範囲に調整することにより、トイレットロールとペーパーホルダーが擦れて、トイレットペーパーを引出す際に、ロールの幅方向(CD方向)が破れるのを防止することができる。DCDTは、1.4N/75mm以上2.6N/75mm以下であることが好ましく、1.6N/75mm以上2.2N/75mm以下であることがより好ましい。
測定領域については、上記2プライの場合の測定方法と同様である。
なお、上記DMDT及びDCDTの測定は、全て引張速度300mm/minの条件で行う。
【0052】
なお、ロール外側の1プライの強度は、ロール内側の1プライの強度より高くすることで、トイレットロールがペーパーホルダーに擦れても、破れにくくなる。ロール外側の1プライの強度をロール内側の1プライの強度より高くする方法としては、ロール外側の1プライのエンボスをロール内側の1プライのエンボスより弱くする(エンボス高さを低くする)ことが挙げられる。また、ロール外側の1プライの原紙をロール内側の1プライの原紙より強度を高くすることが挙げられる。
【0053】
(吸水度)
トイレットペーパー11の旧JIS S 3104に基づく吸水度は、7.0秒以下であることが好ましく、5.0秒以下であることがより好ましく、3.0秒以下であることが更に好ましい。吸水度は、短時間であることが好ましく、本願のようにダブルエンボス、高坪量、長尺の条件において、上記時間の範囲内であることにより、吸水性が良好に維持されると共に吸水時でも破れにくくなる。なお、水を滴下する際は、2プライのままトイレットペーパー11の表面側に滴下する。
【0054】
(HF(ハンドフィール)値)
本発明のTSA(ティッシュソフトネス測定装置)によるHF値は、72以上83以下であることが好ましい。HF値が72未満であると、強度が高く触感が劣る。HF値が83を超えると、坪量と強度が低くなるため、柔らかすぎて使用感が劣る場合がある。
HF値は、75以上81以下であることがより好ましく、77以上79以下であることが更に好ましい。
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したHF値は、装置のアルゴリズムをTPIIに設定し、直径が約113mmの円形に加工したサンプルを用いて測定する。これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した測定方法については、上記の特許文献を参照することができる。
【0055】
(トイレットペーパー)
トイレットペーパー11は木材パルプ100質量%からなるものであってもよく、古紙パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを含んでもよい。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。また、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0056】
また、ミルクカートン等の液体飲料用カートン由来の古紙パルプの含有率が0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上10質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0057】
ミルクカートン等の液体飲料用カートン由来の古紙パルプは、針葉樹パルプが主体であり、トイレットペーパー11の強度を向上させやすいというメリットがある一方で、品質的にバラツキが大きく、含有割合が高過ぎると製品の品質に影響することがある。ミルクカートン等の液体飲料用カートン由来の古紙パルプの含有量を上記の範囲内のものとすることにより、品質のバラツキを抑えつつ、トイレットペーパー11の強度を効果的に向上させることができる。
【0058】
なお、上記のLBKPとしては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属の材種から形成されるパルプが好ましい。
【0059】
本発明においては、上記のNBKP、LBKP、ミルクカートン由来の古紙のパルプ100質量部に対して、新聞や雑誌古紙等由来の脱墨パルプを25質量部以下の範囲内で配合することができる。なお、脱墨パルプを25質量部配合したときの、トイレットペーパー11(シート)中の脱墨パルプの含有率は、25質量部/(100質量部+25質量部)×100=20質量%となる。脱墨パルプの含有率は0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。この配合にすることにより、ダブルエンボス、高坪量、長尺の条件で触感が良好になる。
【0060】
なお、トイレットペーパー11に適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理を行うことにより強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるカナダ標準ろ水度で、叩解前後におけるろ水度の差を0ml以上150ml以下、より好ましくは10ml以上100ml以下、更に好ましくは20ml以上70ml以下に低減させる叩解処理を挙げることができる。この条件で叩解することにより、ダブルエンボス、高坪量、長尺の条件で触感が良好になる。
【0061】
トイレットペーパー11は、紙料にバージン系原料を使用する場合は、一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤等を用いることができる。湿潤紙力増強剤は使用しないことが好ましい。トイレットペーパー11の紙料に古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
【0062】
[トイレットペーパーの製造方法]
トイレットペーパー11は、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができる。このうち、(2)については既に説明したので省略する。
【0063】
(抄紙及びクレーピング)
まず、公知の抄紙機のワイヤーパート上で上記紙料からウェブを抄紙し、プレスパートのフェルトへ移動させる。ワイヤーパートの方式としては、丸網式、長網(フォードリニアー)式、サクションブレスト式、短網式、ツインワイヤー式、クレセントフォーマー式等が挙げられる。
【0064】
そして、ウェブに対し、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロール又はプレスロール等で機械的に圧縮をしたり、あるいは熱風による通気乾燥等の脱水方法を採用したりして脱水を続ける。また、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロールは、プレスパートからヤンキードライヤーにウェブを移動させる手段としても使用される。
【0065】
ヤンキードライヤーに移動されたウェブは、ヤンキードライヤー及びヤンキードライヤーフードで乾燥された後、クレーピングドクターによりクレーピング処理され、リールパートで巻取られる。
【0066】
クレーピング(クレープと言われる波状の皺をつけること)は、紙を縦方向(抄紙機上のシート走行方向)に機械的に圧縮することである。そして、トイレットペーパー11のウェブの製造の際、クレーピングドクターによりヤンキードライヤー上のウェブが剥がされ、リールパートで巻取られるが、ヤンキードライヤーとリールパートの速度差(リールパートの速度≦ヤンキードライヤーの速度)によりクレーピングドクターにてクレープ(皺)が形成される。
【0067】
トイレットペーパー11に必要な品質、すなわち嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)等は上記速度差で左右される。上記速度差等の条件にもよるが、クレーピング後のリール上のウェブの坪量は概略12g/m2以上20g/m2以下となり、クレーピング前のヤンキードライヤー上のウェブの坪量より重くなる。上記坪量は、好ましくは14g/m2以上19g/m2以下、より好ましくは16g/m2以上18g/m2以下である。上記範囲を超えると、本願のようなダブルエンボス、高坪量、長尺の条件で強度が高くなって紙がゴワゴワする場合があり、上記範囲未満であると、強度が弱くて破れやすくなったり、手触りや嵩高さが劣ったりする場合がある。
【0068】
ここで、ヤンキードライヤーとリールのスピード差に基づくクレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×{(ヤンキードライヤー速度(m/分)-リール速度(m/分)}÷リール速度(m/分)
【0069】
品質や操業性の良し悪しはこのクレーピングの条件で大方決まり、クレーピング条件を最適とする操業条件が当業者にとって重要な事項となる。本発明においてトイレットペーパー11を製造する際のクレープ率は10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上40%以下であることがより好ましく、20%以上35%以下であることが更に好ましい。
【0070】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0071】
パルプ組成の含有率(質量%)が、NBKP25%、LBKP75%、ミルクカートン等の液体飲料用カートン由来の古紙パルプおよび脱墨パルプは含有させず、表1から表5に示すトイレットペーパー及びトイレットロールを製造した。
【0072】
次に、以下の測定を行った。なお、各測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0073】
(坪量)
JIS P8124に基づいて測定し、シート1枚あたりに換算した。
【0074】
(紙厚)
シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、トイレットペーパーを10枚(2プライのトイレットペーパーを5組)重ねて、10プライ分として測定を行った。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。なお、ロール上の測定位置は、トイレットロールを巻きほぐした際の最内巻のトイレットペーパーの端縁からトイレットロールの巻長の90%に相当する位置とした。
【0075】
(比容積)
シート1枚あたりの紙厚を1枚あたりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
【0076】
(ミシン目)
つなぎ部:1.1mm
切れ込み部:1.7mm
ミシン目の間隔:114mm
【0077】
(プライエンボス)
プライエンボスは
図4及び
図5に示すパターンとした。プライエンボスの詳細を
図12に示し、実施例及び比較例で示す。
エンボス23a(23b)の長さLe:3.5mm
エンボス23a(23b)の短手方向の寸法We:0.8mm
エンボス23a(23b)間の間隔S
MD:2.0mm
エンボス23aとエンボス23bの間隔L
20:1.0mm
トイレットペーパーのCD方向の端部からプライエンボスの中心Mまでの距離:トイレットペーパーの幅に対して10%
エンボス23a(23b)の傾斜角度θ:45度
【0078】
(ミシン目を含むDMDT(2プライ))
JIS P 8113に基づいて、上記測定領域33を、破断までの最大荷重をN/75mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0079】
(ミシン目を含まないDMDT(2プライ))
JIS P 8113に基づいて、上記測定領域32を、破断までの最大荷重をN/75mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0080】
(DCDT(2プライ))
2プライに製造されたトイレットペーパーの外側を剥がし、JIS P 8113に基づいて、破断までの最大荷重をN/75mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0081】
(外側の1プライのミシン目を含むDMDT)
2プライに製造されたトイレットペーパーの外側を剥がし、JIS P 8113に基づいて、破断までの最大荷重をN/75mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0082】
(外側の1プライのDCDT)
2プライに製造されたトイレットペーパーの外側を剥がし、JIS P 8113に基づいて、破断までの最大荷重をN/75mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0083】
(HF値)
2プライに製造されたトイレットペーパーのミシン目及びプライエンボスを含まない領域を、ティシューソフトネス測定装置(TSA(Tissue Softness Analyzer)、Emtec Electronic社製)を用いて測定した。なお、サンプルを採取する際に、ミシン目及びプライエンボスを含まざるを得ない場合は、含んだ領域を測定することとする。
【0084】
(巻長)
トイレットロールのミシン目とミシン目の間のシートについて、10シート分の長さを実測した。その後、ロールのシート数を実測し、巻長さは10シート分の長さとシート数から比例計算で求めた。例えば、10シート分の長さが1.140m、シート数が535シートの場合、1.140m×(535/10)=61mとなる。
【0085】
(ロールの巻直径DR、コア外径DI)
ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
【0086】
(ロール質量)
ロール質量は、電子天秤を用いて測定した。まず、コアを含むロール質量を測定し、その後、コアの質量を測定した。コアを含むロール質量から、コアの質量を差し引き、ロール質量とした。ロール質量は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。なお、ロール幅が114mmと異なる場合は、ロール幅を114mmに換算してロール質量を求めた。例えば、ロール幅が105mmの場合、そのロール質量に係数(114/105)を乗じた質量を、ロール幅が114mmあたりのロール質量とした。
【0087】
(プライエンボスの高さ及びプライエンボスの幅)
上記の方法で測定した。
【0088】
なお、坪量、引張強さ、紙厚、比容積、コアの外径、巻長、巻直径、巻密度、ロール密度、及び、プライエンボスの高さ、及びプライエンボスの幅の測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0089】
[評価]
トイレットロールをペーパーホルダーにセットし、官能評価は、モニター20人が、「交換頻度」、「ホルダーへの装着のし易さ、ホルダーでのロールの回転しやすさ」、「トイレットペーパーの触感」、「トイレットペーパーの破れにくさ(ミシン目由来)」、「トイレットペーパーの破れにくさ(幅方向の強度由来)」、「トイレットペーパーの破れにくさ(プライエンボス由来)」、及び「コンパクトさ」の各評価項目について、「よい」又は「悪い」を選択する方式で行った。
「トイレットペーパーの破れにくさ(ミシン目由来)」、「トイレットペーパーの破れにくさ(幅方向の強度由来)」、及び「トイレットペーパーの破れにくさ(プライエンボス由来)」については、ペーパーホルダーからトイレットペーパーを引き出し、この時に破れた場所を、ミシン目部分で破れているのか、幅方向で破れているのか、プライエンボスで破れているのか、プライが剥がれたことで強度が弱くなって破れているのか、目視で確認する。
【0090】
評価基準は以下のとおりである。3以上を合格とした。
5:「よい」が18人以上20人以下のとき
4:「よい」が14人以上17人以下のとき
3:「よい」が10人以上13人以下のとき
2:「よい」が、6人以上9人以下のとき
1:「よい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0091】
得られた結果を表1から表4に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【符号の説明】
【0097】
10、20 トイレットロール
11、11a、11b、21 トイレットペーパー
12 ミシン目
13、14、23、24 プライエンボス
13a、13b、14a、14b エンボス
23a、23b、24a、24b エンボス
MD 流れ方向
CD 横方向
Y 長手方向
X 幅方向
DR 巻直径
DI コア外径