(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】塩化物ヒープ浸出における酸バランス
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
C22B15/00 105
C22B15/00 107
(21)【出願番号】P 2020534376
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2018060418
(87)【国際公開番号】W WO2019123362
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】515048825
【氏名又は名称】ビーエイチピー チリ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オルメオ バリオス ダマソ
(72)【発明者】
【氏名】チロワ クレメント チブワナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス マテウス シュトラウス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー バーノン ローク
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03246420(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0144209(US,A1)
【文献】特表2016-535167(JP,A)
【文献】特開2003-328050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C02F 1/58-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化ステップで銅溶解を最大化し、それによって全銅回収を増大させるために、外気温度で行われ、凝集段階での銅溶解が酸によって制限されないようにするために、塩化物濃度が100g/Lから180g/Lの間である高塩化物ヒープ浸出プロセスでの酸バランスを制御する方法であって、下記:
a)酸およびプロセス溶液を鉱石と合わせ、その後にスタッキングしてヒープを形成する前記凝集段階、
b)前記ヒープの前記鉱石中の銅の一部を浸出させる、曝気された、しかし潅注されていない硬化フェーズであり、前記硬化フェーズでの銅溶解が、少なくとも30%であり、ならびに
c)その間に残りの銅鉱物が浸出しかつ溶媒抽出ステップおよびその後の電解採取ステップによって銅が浸出貴溶液から回収される、潅注された浸出フェーズを含み、
前記ヒープが複数のヒープセクションを含み、前記ヒープセクションでは、前記潅注された浸出フェーズでの過剰な酸が、前記ヒープセクションへの前記鉱石投入に対して向流で前記ヒープセクションに浸出液を循環させ、前記ヒープセクションから前記鉱石を除去することによって低減され、それによって、潅注されるヒープセクションの数に比例して脈石鉱物溶解により酸消費を増大させ、前記溶媒抽出ステップで前記浸出貴溶液からの効果的な銅回収が可能になるように、前記溶媒抽出ステップに移る前記浸出貴溶液中の酸濃度が、10g/L未満である、方法。
【請求項2】
前記硬化フェーズでのおよび前記潅注された浸出フェーズでの全銅溶解が、40%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記浸出貴溶液中の酸濃度が、7g/Lよりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記浸出貴溶液中の酸濃度が、2g/Lよりも低い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒抽出ステップ中に発生したラフィネートが、1g/L未満の銅含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記銅含量が、0.5g/L未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記潅注された浸出フェーズの終了後、前記ヒープが洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセスに添加される酸の量が
、脈石鉱物により消費される酸、および前記銅鉱物を浸出させるのに必要な酸から計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスに添加される酸
の添加が、前記鉱石中の酸可溶性脈石鉱物および前記銅鉱物の含量によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
銅浸出に必要とされる酸が、前記凝集段階中に前記鉱石に添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒープを潅注するのに使用されるラフィネート溶液への酸添加が、前記潅注された浸出フェーズでの鉱物浸出によって増大した酸要求量を満たすように行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化フェーズの後に前記ヒープの初期潅注から収集された第1の浸出貴溶液が、後続の硬化フェーズ中に前記第1の浸出貴溶液中の酸含量を利用するために、前記凝集段階中に前記鉱石に添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
凝集ステップ中に前記鉱石に添加された酸が、前記硬化フェーズでの前記銅鉱物および脈石鉱物溶解に関する要求量によって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
溶液pH、酸濃度、温度、および鉱石粒度の少なくとも1つの関数として、特定のタイプの鉱石に関して前記脈石鉱物により消費される酸を決定するための試験を実施する、先行ステップを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅鉱石の塩化物浸出に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌を含む酸性硫酸塩溶液を使用する、低級硫化銅鉱石のヒープ浸出は、世界的に適用されている確立された商用プロセスである。
【0003】
近年、細菌を使用せずに高電位で、黄銅鉱を含めた硫化銅鉱石の浸出を可能にする、塩化物浸出の方法が開発されてきた。WO2014/030048およびWO2015/059551は、高い塩化物濃度(100から230g/Lの塩化物)の使用が黄銅鉱の不動態化を克服し、SHE(標準電極系)に対して700mVよりも高い溶液酸化電位での操作が可能になり、その結果、黄銅鉱浸出の速度が増大して、より高い銅の回収率が得られることを教示する。
【0004】
実際、商用規模での塩化物溶液中の銅鉱石のヒープ浸出は、無視しているとプロセスの経済的実現可能性を制限することになる拘束によって、制限される。ヒープ浸出操作は、それぞれのサーキットで銅の濃度を最適化する種々の構成を利用する。これは溶媒抽出構成、および操作に関する資本コストを最小化するために、ならびに銅の損失を低減するために行われる。ヒープ浸出サーキットは、単一のポンドを備えるシステムと、多数のポンドを備えるシステムであってILS(中間浸出溶液)ポンドとして公知のものを含むものでは、異なる。これらは、中間ステップとしてプロセスに含まれることにより、PLS(浸出貴溶液)の銅品位を増大させる。
【0005】
硫化銅鉱物の高塩分浸出では、銅の予備可溶化と脈石酸の消費の低減が、予備浸出段階(WO2016/094956に開示される)または休止ステップ(WO2015/059551に開示される)のいずれかを通してなされ、鉱石および溶液は、ヒープの連続潅注の前に、反応性鉱石鉱物の溶解を促進させる期間にわたり接触したままになる。その後それぞれの場合に、サーキット酸バランスと、より従来の酸性硫酸塩系に比べてPLSで許容される低い酸濃度の維持とを求める、潅注された浸出フェーズがある。より低い酸濃度は、プロセスサーキットからの最小限の溶液パージで安定な操作プロセスを確実にするために、必要である。
【0006】
定義
本明細書で使用される下記の表現は、文脈が他に明示しない限り、記述される意味を有する。
【0007】
鉱石およびグレード:鉱石は、岩石から経済的に抽出することができる金属を含めた重要な元素を持つ、十分な鉱物を含有する岩石のタイプである(参考文献1)。鉱石は、採掘された材料を指し、岩石からの鉱石鉱物の選択的分離および回収によって生成された濃縮物でも鉱石の脈石成分でもない。材料は、採掘された、即ち粗鉱(ROM)鉱石として処理されてもよく、または破砕後に、破砕鉱石として処理されてもよい。鉱石の破砕は、鉱石鉱物の露出表面積を増大させ、それによって、ヒープ浸出のプロセスによる、含有される金属の抽出速度が改善する。
【0008】
従来の鉱石の凝集:ヒープ浸出のプロセスでは、破砕鉱石の凝集に続いて、ヒープ構成後に硬化段階を行うことは、一般的な手法である。破砕鉱石粒子を、凝集ドラム内でプロセス溶液および酸と混合して、固定した水分含量にする。凝集ステップは、表面張力の作用によって創出された液体架橋の形成によって、より粗い粒子に接着する微細な粒子をもたらす。ヒープの構成後の硬化ステップは、鉱石凝集中に添加された酸を鉱石鉱物と反応させ、後続のヒープの潅注中に鉱石鉱物からの金属の溶解を促進させる。従来の凝集プロセスは、均一な粒子の凝集体の形成をもたらし、微細な粒子がヒープ全体を通してより粗い粒子に接着して均一で浸透性のある鉱床を創出し、それによってヒープ潅注流および鉱石鉱物からの金属の溶解を促進させる。均一で安定な粒子凝集体を形成することが難しい、鉱石の処理では、結合剤を凝集ステップ中に添加して、粒子を互いに結合させてもよい。鉱石の酸浸出に関する典型的な結合剤は、ポリアクラミドなどの有機ポリマーをベースにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に関係する技術的要因
銅の塩化物ヒープ浸出における鉱石凝集の目的:以下に記述する銅のヒープ浸出の方法は、破砕鉱石粒子と、硫酸、塩化物、銅、および鉄の活性浸出試薬とを混合するのに、凝集プロセスを使用してもよい。鉱石粒子の周りに表面溶液被膜を創出するための、試薬と鉱石との混合は、本明細書に記述される銅のヒープ浸出の方法における凝集ステップの主な利点である。鉱石凝集体の形成、ならびに酸と鉱石鉱物との反応は、従来の鉱石凝集で適用されるように、2番目に重要なことである。以下に記述される銅のヒープ浸出の方法における鉱石凝集のプロセスは、試薬を、全ての鉱石粒子の周りの溶液被膜内に均等に分配させる。溶液被膜は、鉱石粒子の周りに広い反応性表面積を創出する。凝集した鉱石と共にヒープを構成した後、および曝気下での初期休止期間中、空気から鉱石粒子表面への酸素の物質移動は、鉱石粒子を取り囲む表面被膜を通して大幅に増大し、鉱石鉱物からの金属溶解は、溶解した酸素のCu(I)との反応による酸化剤Fe(III)およびCu(II)の急速な発生に起因して大幅に高まる。鉱物酸化に利用可能な増大した表面積と、酸の供給は、熱の発生を促進させ、鉱石凝集中の鉱石温度を上昇させる。
【0010】
鉱石湿潤サイクル:鉱石凝集ステップが終了した後、塩化物浸出は、5つの段階、即ち:(a)硬化、(b)湿潤、(c)潅注、(d)休止または排水、ならびにe)洗浄および最終排水段階を含んでいてもよい。鉱石湿潤段階は、ヒープを通した潅注溶液のチャネリングを防止するために実施される。硬化後、鉱石を、ラフィネート溶液で断続的に、または10から50日の期間にわたり、典型的には20日間潅注する。この期間中、潅注時間は、表Aに提示されるように、一連の硬化または休止段階を組み込みながら、30分から9時間まで定常的に増加する。表Aは、12時間の潅注サイクルで、ヒープが1日目に、午前中に30分間潅注され、次いで鉱石を23.5時間硬化させることを示す。2日目から5日目まで、ヒープを午前中に30分間潅注し、12時間の硬化後に同じ期間にわたり再び繰り返す。このプロセスを、24サイクルが実行されて潅注12時間および硬化12時間になる20日目まで、潅注/硬化サイクル時間を該当する量だけ増大させて繰り返す。
【0011】
【0012】
操作への湿潤段階の組込みは、潅注が始まるとラフィネート溶液の優先的な流れが最小化されるので、重要である。それは、潅注前に酸を鉱石に補充するのに使用することもでき、これは調製中に微細な物質を発生させずかつ凝集中に十分な水分を吸収しない圧密状態の鉱石に、特に重要である。酸は、プロセスに極めて重要であり、脈石鉱物および銅鉱物の溶解による消費を満たすよう、要求されるのに十分な量で供給されるべきである。
【0013】
5段階の完全ヒープ浸出サイクルは、限定するものではないが例として、下記の期間を含んでいてもよい:
初期鉱石硬化または休止ステップ-45日;
鉱石湿潤-20日;
ヒープ潅注-360日;
排水ステップ-2~20日;
リンス/洗浄-20日;
排水-30日;
合計ヒープ浸出サイクル-495日。
【0014】
ヒープは、ヒープ浸出サイクル中、初期鉱石硬化ステップからヒープ潅注ステップの終了まで、曝気される。曝気は、リンスステップおよびヒープの最終排水中、サーキット溶液の高い酸化電位を促進させるために、継続させてもよい。曝気量は、限定するものではないが典型的には、高い塩化物酸性溶液中での硫化銅鉱石の浸出に関して、6mヒープでは0.05から2.0Nm3/h.m2ヒープ面積の範囲にあり、好ましくは、0.1から0.4Nm3/h.m2の範囲、および約0.45Nm3/h.m2である。曝気量は、浸出される鉱物の酸素要求量と、ヒープ中に投入された鉱石の高さまたは質量によって決定される。
【0015】
酸制御
高塩分浸出サーキットでは、プロセスを酸凝集から開始し、その後、硬化および休止フェーズが続く。これらの期間において、酸は、脈石酸反応によって、ならびにrxn 1として示される一般的反応による輝銅鉱、銅藍、および黄銅鉱などの硫化銅鉱物からの銅の可溶化によって、消費される。
【0016】
【0017】
【0018】
硬化期間において、温度は高くなり、反応物濃度は高く、したがって両方の要因が動態を促進させるので、これは浸出に好ましい時間である。これは鉱石を浸出させるのに必要とする全時間を短縮させ、資本および運転コストを節約する。rxn 1を可能な限り速く進めるために、必要な反応物であるので十分な酸を供給しなければならない(rxn 1による)。この硬化/休止フェーズにおいて、酸は、酸可溶性脈石鉱物との反応によっても消費される。これらの反応速度は、高温によっても促進される。銅浸出を促進させるために、これらの競合する脈石反応を満足させるよう十分な酸が必要とされる。
【0019】
硬化/休止期間の終わりに、典型的には(限定するものではないが)、プロセスで溶解される可能性のある銅の50%までが可溶化されており、容易に可溶な脈石鉱物のほとんどが浸出されている。後続の潅注された浸出フェーズでは、この銅が、浸出した銅のさらなる50%と一緒に、電解採取(EW)と組み合わせた溶媒抽出(SX)によって溶液から回収される。このプロセスは、EWでめっきされた銅の1molごとに、酸1molを発生させる。この酸は、溶媒抽出を介してヒープ浸出に戻る。
【0020】
【0021】
したがって、可溶化された銅の全てが回収される潅注された浸出段階中に、正味の正の酸が生成されてもよい。表1は、鉱物の種々のタイプに関して、50%の追加の銅の浸出に関する酸要求量、および合わせた可溶性の銅に関するSX/EW段階での酸の発生の、相違を示す。
【0022】
【0023】
結果は、全ての残留銅が黄銅鉱である場合、この状況では、酸バランスが通常なら中性であり、全てのその他の硫化銅に関しては、酸プラスである。
【0024】
黄銅鉱に関するバランスが中性であることは、実際でも真実ではない。浸出した銅の1molごとに、第1鉄1molが黄銅鉱から同様に浸出されるからである。例えば、低いヘッドグレードは、約0.4%の銅に等しい。この潅注段階で、銅の約30%が可溶であることが想定されると考えられる場合、そのような低グレードであっても、1.2kgCu/トン鉱石に等しい。これは1.1kgFe(II)/トン鉱石を発生させると考えられる。そのような可溶性の鉄に関するこのプロセスからのただ1つの出口は、浸出パイルから除去されかつリピオスダンプに送られたときの浸出鉱石(リピオス)中の残留水分を通したものである。
【0025】
典型的な水分含量は、約10%(v/m)である。このことは、平衡時に、出て行く量に等しくなるように発生した量に関して、溶液中の鉄が11g/Lでなければならないことを意味する。WO2015/059551のプロセスは、浸出の終わりに洗浄段階を思い描く。この洗浄は、典型的には、溶解した塩の70%を保持する。これは、プロセスに必要とされる塩化ナトリウムの量を低減させるための最適化されたものであるが、プロセスから離れる量に等しくなるよう発生した量に関して、鉄の平衡濃度は36g/Lである必要があることも意味する。試験中、溶解度の拘束は、このプロセスで可溶な全ての鉄が、約5g/Lで平衡になることを示している(
図1参照)。洗浄後、放出濃度は1.5g/L(または0.15kg/t鉱石)と考えられる。これは発生した鉄の1.1kg/t鉱石で、鉄の86%が沈殿すると予測されることを意味する。鉄は、下記の3つの沈殿反応によってサーキット内で沈殿する:
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
第1鉄は第2鉄に変換され、反応3、4、および5に従い反応して沈殿物を形成する。反応3および4は、鉄明ばん石の形成である。これらの反応は、正味の酸の発生であり、銅が溶媒抽出(SX)と電解採取(EW)との組合せによって回収されたときの、ヒープ浸出の潅注フェーズでの、黄銅鉱の溶解からの全ての正味の酸の発生を説明する。
【0030】
反応5は、メタ曹鉄鉱の形成である。これに関する正味の反応は、酸を生成しない。これら3つの反応の間の分け方は、予測するのが難しい。それは、平衡および速度の両方に依存する。カリウム鉄明ばん石の場合、分け方は、カリウムが、プロセスで溶解するその他の鉱物(例えば、絹雲母)から溶液中にどの程度浸出するかに依存する。
【0031】
異なる鉱石で、木積(2m×2m四方のカラム)内の大きい鉱石試料が高塩化物ヒープ浸出プロセスに供されたときに形成される鉄明ばん石の量を、表2に示す。
【0032】
【0033】
試験は「開サーキット」で実施し、即ち、溶液を試験カラムに1回通し、リサイクルしない。これは一般に、より少ない沈殿物形成をもたらすが、それは供給液中の鉄濃度が最大でも飽和濃度(約5g/L)にあるからであり、カラムを通過するごとに添加されるごく少量の追加の全溶解塩(TDS)があり、したがって0.9%の鉄明ばん石は、溶液から沈殿され得る鉄の最少量を表す。
【0034】
0.9%の鉄明ばん石は、沈殿した鉄3.3kg/t鉱石にほぼ等しい。これは、黄銅鉱のみから発生した鉄の量よりも約3×高い。この鉄の一部は、鉄含有脈石鉱物の浸出から得られる。鉄明ばん石の沈殿の場合、酸化し沈殿した第1鉄のmolごとに、酸(H2SO4)1/2molが発生し、したがって鉄明ばん石のこの量は、酸を3kg/t鉱石生成する。正味の効果は、黄銅鉱から発生した追加の鉄が、鉄明ばん石にある程度まで移る可能性があることであり、したがって黄銅鉱に関して表1に示される酸バランスは、ゼロではなく、鉄明ばん石として浸出した鉄の沈殿の結果発生した酸に起因して、実際にはプラスである可能性がある。
【0035】
初期硬化フェーズでの十分に高い銅の溶解により、後続の硫化物鉱物からの銅のさらなる溶解と、電解採取(EW)と組み合わせた溶媒抽出を通した回収は、酸を発生させ易いことが確立されている。過剰な酸は、下記から生じる:
1.銅鉱物が輝銅鉱および銅藍である場合、硬化および潅注フェーズ中に浸出した銅に関する全EW酸作製と比較した、潅注フェーズにおける追加の銅鉱物の浸出用の酸要求量の間の不均衡;
2.銅鉱物が斑銅鉱である場合、一部の鉄沈殿(鉄明ばん石)と同様に硬化および潅注フェーズ中に浸出した銅に関する全EW酸作製と比較した、潅注フェーズにおける追加の銅鉱物の浸出用の酸要求量の間の不均衡;ならびに
3.銅鉱物が黄銅鉱である場合、鉄明ばん石の沈殿。
【0036】
図1と併せて参照される鉱石への適用は、2つの理由で僅かに異なる。高い脈石酸消費は、硬化/休止ステップによって実現される利益を打ち消し、鉱石はウランを含有する。ウランは、高塩化物と共に溶液に可溶であるが(例えば、150g/L)、高塩化物と、塩化鉄錯体の高濃度とにより、溶液を回収するのが非常に難しい。この結果、潅注された予備浸出段階が必要になる。これを終了するには少なくとも200日を要し、かなりの量の銅も浸出し、それと共に、容易に可溶である脈石鉱物も枯渇する。潅注された浸出の第2の部分は、高い塩化物濃度にあり、鉱石の一部で大部分を占める銅鉱物である2次的硫化銅(銅藍、斑銅鉱)の溶解に主に起因して、高い銅溶解をもたらす。鉄明ばん石の形成と、2次的硫化銅鉱物の浸出および電解採取(EW)から生成された酸(表1に従う)は、高い酸生成をもたらす。これは予備浸出からの酸可溶性脈石鉱物の低減と一緒になって、高塩化物浸出プロセスで予測されるように、PLSで高い酸品位をもたらす。これは以下に論じるように、可溶性銅の回収の難しさを生む。
【0037】
銅溶媒抽出は、酸濃度に左右され易い。これはそのような抽出が、銅と酸(H+)との間の平衡状態で作用するからである。銅は、有機物に接触する水性相が、低い酸と共に高い銅品位を有する条件下で、有機物に負荷される。銅は、高い酸を有する水性相と接触することにより、有機物からストリッピングする。この感受性は、高い塩化物濃度でのプロトンイオン(H+)の実質的に増大した活性により、非常に高い塩化物濃度(100から150g/L)の下で、より顕著になる。
【0038】
低塩化物環境では、約7g/lのCuの通過1回当たり、1回の抽出を目標とすることが最適である。この結果、有機物の水性流に対する比は約1:1になる。有機物中の抽出剤の量は、有機物粘度が適度になるようにかつ良好な相の解離を実現することができるような量である。このことが、良好な操作性、低い有機物損失(opex)、および最小限の資本支出をもたらす。その状況において、典型的なPLS酸性度は2~4g/lであり、酸移動からの酸のラフィネート濃度は12~15g/Lである。
【0039】
高塩化物ヒープ浸出操作(典型的には、100g/Lから180g/L)では、ラフィネートへの酸移動および増大するプロトン活性により、銅移動7g/lを実現することが非常に難しい。pHは、プロトン活性の直接的な尺度である。20g/lの塩化物および12g/lの遊離酸で、測定されたpHは約1であり、一方、同等の酸であるが150g/lの塩化物では、測定されたpHが約0.2である。
【0040】
高塩化物浸出プロセスにおける銅移動の目標は、PLS中の非常に低い酸と合わせて5g/lまたはそれ未満である必要がある。5g/lの銅デルタで、これはSXサーキットのサイズが、7g/Lに関して同じ銅移動負荷に対して40%大きくなければならないと考えられることを意味する。これは増大する資本および運転コストに転換される。この問題は、高塩化物条件下で酸性度がPLS中で増大した場合、急速に悪化する。
【0041】
本発明の目的は、含銅鉱石の塩化物浸出のための方法であって、溶媒抽出(SX)による溶液からの効率的な銅回収を実現するために、ならびに銅の損失および運転コストを増大させる事象であるサーキットからの溶液パージ、を、最小化するまたはなくすために、サーキット内の酸濃度が制御される、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
前述から、溶媒抽出による溶液からの効率的な銅回収を実現するために、ヒープ浸出プロセスサーキットでの酸濃度を制御することが重要であることが明らかである。高塩化物ヒープ浸出プロセスでは(100から180g/L)、溶媒抽出による溶液からの効率的な銅回収が、PLSで低い酸濃度を維持することに依存する。溶媒抽出プロセスに移るPLS中の酸濃度が10g/L未満、好ましくは7g/L未満、より好ましくは5g/L未満であるべきことが、実験によって、実証されてきた。
【0043】
鉱石凝集ステップへの酸添加を制限しないことが有利であり、したがって銅鉱物溶解は酸によって限定されず、したがって鉱石硬化中に実現される銅の溶解は最大になる。
【0044】
残留する酸可溶性脈石鉱物によって消費される酸の濃度を最大化し、それによってPLS中の酸濃度を制御するために、複数のヒープまたはヒープのセクションで浸出が実施されるヒープ浸出プロセスサーキット構成が、採用されてもよい。
【0045】
2つまたはそれよりも多くの浸出段階が使用される場合、好ましくは、浸出液は向流循環して、ヒープに鉱石を投入し、ヒープから鉱石を除去する。
【0046】
前述の手法は、残された赤鉄鉱および絹雲母など、常に遅く浸出する脈石鉱物があるという事実に依拠する。そのような鉱物の溶解速度は、一般に酸品位に比例する。これらの鉱物は、大きく多量であり、その溶解の程度は低く、したがって鉱物は、浸出サイクル中に目に見えるほど減少しない。
【0047】
広い意味で、前述の目的は、ヒープ中の酸可溶性脈石鉱物の性質、および銅鉱物溶解に必要とされる酸の量を考慮し、それに応答して凝集ステップ中の酸の添加を調節することによって、達成することができる。これは硬化ステップでの銅の回収を最大化する。
【0048】
凝集中に必要とされる酸の量は、各脈石鉱物と、含銅鉱物を溶解するのに必要とされる酸の反応速度を考慮して計算されてもよく、即ち添加される酸の量は、硬化フェーズでの要求を満たすように最適に制御される。
【0049】
硬化ステップで浸出した銅は、サーキットPLSに移り、SXステップでのPLSからのこの銅の抽出によって戻された酸は、浸出サイクル中にヒープ潅注で使用されたラフィネートに戻される。このプロセスは、ラフィネート中に過剰な酸をもたらし、プラスの酸バランスをもたらし得る。過剰な酸は、ヒープ浸出プロセスサーキット構成の採用によって、ヒープ浸出サイクルで脈石鉱物溶解により除去されてもよく、浸出は、複数のヒープでまたはヒープのセクションで、浸出液を循環させてヒープへの鉱石の投入およびヒープからの鉱石の除去がなされる向流方法を使用して実施される。
【0050】
したがってラフィネートに添加される酸の量は、凝集中に添加される酸の量に依存する。同様に、凝集中に添加される酸の量は、浸出サイクル中の脈石の存在下で銅溶解に関する要件を満たすよう、ラフィネートに添加される酸に依存する。
【0051】
凝集中および後続の休止または硬化期間での銅の溶解は、鉱石凝集中に添加される酸の量を限定することによって制限されてもよく、それによって、潅注フェーズ中でのより大きな程度の酸が消費されること、および銅除去後の浸出サイクル中の過剰な酸生成と、SX抽出ステップでのラフィネートへの酸の戻りとが回避されることが確実になる。
【0052】
鉱石硬化後の木積の初期潅注から収集された第1のPLSは、高い酸含量(>10g/L)および高い銅含量(>20g/L)を有していてもよい。そのような場合、第1のPLSは、硬化フェーズ前の、後続のヒープの鉱石凝集で使用されてもよい。これらの値は、例示的でありかつ非限定的である。
【0053】
前述のプロセスの代替例として、浸出鉱石(リピオス)で除去される酸の量を増加させるために、浸出サイクルの終わりの洗浄の量を低減させることが可能である。しかしこれは、銅および塩化ナトリウムの可溶性損失が増大するので、それほど好ましくない。このことは、増大する収益損失およびより高い運転コストを示唆する。
【0054】
本発明の2つの実施形態について、それぞれ、添付図面の
図2から7および
図8から12を参照しながら、本明細書にさらに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図3】ヒープ浸出プロセスにおける標準サーキットを示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態により操作される多段階ヒープ浸出プロセスを、概略的に示す図である。
【
図5】PLS、ILS、およびラフィネートのパラメーターに関し、時間に対する遊離酸プロファイルの曲線を反映する図である。
【
図6】向流循環による、本発明によるプロセス流を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態により操作されるプロセスに関する、概略的な流れ図である。
【
図9】
図8のプロセスを、より詳細に示す図である。
【
図10】3L/h.m
2の潅注量での、PLS潅注比の関数として、酸、銅、および鉄濃度を示すPLS濃度プロファイルを、グラフで反映する図である。
【
図11】一定pHでの脈石酸消費を決定するための、試験反応器を示す図である。
【
図12】時間に対する、pHの関数として、深成鉱石タイプに関する脈石酸消費を、グラフで示す図である。
【
図13】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図14】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図15】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図16】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図17】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図18】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図19】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図20】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図21】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図22】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図23】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図24】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図25】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図26】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【
図27】試験作業で使用されるサーキットおよびそのような試験作業から生じるデータに関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の第1の実施形態について、以下、
図2から7を参照しながら記述し、一方、本発明の第2の実施形態については、以下、
図8から12を参照しながら記述する。
【0057】
実施形態1-多段階ヒープ浸出操作
図2は、典型的な反応器10を示す。反応物Cに関する物質バランスは、反応器上で実施することができる。簡略化のため、(12)へのおよび(14)からの体積流量は、等しいと仮定する。さらに、実際のヒープは驚くほど十分混合されるので、簡略化のために、反応器10内の反応物濃度は反応器(即ち、十分混合された反応器)からの放出における場合と同じであると仮定する。
【0058】
反応物Cでの物質バランスは、下記の通りである:
投入=生産+反応で消失
F.Ci=F.Co+rV
【0059】
式中、Fは流量であり;Ciは入口濃度であり;Coは出口濃度であり;Vは反応器の容積であり;rは、酸使用の速度であり、この場合は既に定義された通り、酸濃度Coに比例する。
【0060】
したがって、r=kCoであり、式中、kは、目的の鉱物に関する速度定数である。
【0061】
数式は、下記の通り書き直すことができる:
F.Ci=F.Co+k.Co.V
【0062】
V/Fは、時間の単位を有し、平均保持時間またはτとして公知である。
【0063】
数式は、下記の通り書き直すことができる:
【0064】
【0065】
因子kは定数であり、τは、単位面積当たりの固定潅注量での固定ヒープ床に関する定数である。これは、酸の入口濃度の変換百分率(Co/Ci)が、入口濃度とは無関係に固定されることを意味する。
【0066】
図3は、標準ヒープ浸出サーキット18のフローシートであり、PLSの約50%が、CuSXの最適化を避けている。
図3では、単一ヒープ20が使用される。対照的に、
図4に示されるプロセス24では、2つのヒープ20Aおよび20Bがそれぞれある。
【0067】
両方のプロセス(
図3および
図4)では、同じ量の銅が、CuSX段階(30)に移送され-この銅の移送は、酸品位を7g/L上昇させる。
【0068】
図3のフローシートにおいて、PLS32中の酸は、y g/Lに設定される。次いでラフィネート34は、酸をy+7g/L含有する。バイパス36およびラフィネート34を再度組み合わせて(38)、(2y+7)/2の平均酸濃度を与える。これは、変換率が50%と想定されるヒープ20に送られる。この変換は、数式Aにより示されるように、酸濃度とは無関係に生じる可能性がある。
【0069】
定常状態で、プロセス18はバランスをとらなければならず、したがって:
y(PLS中)=50%.(2y+7)/2
であり、したがってy=3.5g/Lの酸である。
【0070】
PLSは、
図3の例で、半分に分割される。これは
図4の例との比較を容易にするためである。PLSが分割されない場合、同じPLS酸濃度を依然としてもたらすと考えられる。しかし、ラフィネート中の酸の増大は、3.5g/lと考えられる。
【0071】
図4のフローシートでは、PLS(32)中の酸もy g/Lに設定する。PLSは既に、
図3の例の場合の1/2である。PLS(32)は、CuSX(30)に移り、酸7g/Lが液に移送される。次いで得られた液(ラフィネート)34は、酸をy+7g/L含有する。これは、変換率が50%と想定されるヒープ20Bに送られる。次いで、さらに50%の変換が生じるヒープ20Aに送られる。
【0072】
定常状態で、プロセス(24)はバランスをとらなければならず、したがって:
y(PLS中)=50%.50%.(y+7)、および
したがってy=2.3g/Lの酸であり、
プロセスが3段階に延びた場合には、
y(PLS中)=50%.50%.50%(y+10.5)、および
y=1.5g/Lの酸である。
【0073】
このように、2つまたはそれよりも多くのILS42段階のプロセスを操作することにより、銅溶媒抽出段階に移るPLS46中の酸の量は、プロセスに悪影響を及ぼすことなく著しく低減させることができる。プロセスの有効性の例は、
図5に示されるようなパイロットプラントの高塩分セクション(100から150g/Lの塩化物)に関する遊離酸性度の変化によって、見ることができる。
【0074】
本発明のプロセスの多段階の実現例は、
図6および
図7にそれぞれ示されるように、プロセス流が、鉱石に対して向流になるようにまたはそれに対して並流になるように、構成することができる。
【0075】
向流操作には、ヒープ20Cの最終段階がラフィネート(34)で潅注されるという、並流操作に勝る利点がある。ラフィネートは、最低銅品位を有し、したがってこのことが、リピオスに対する可溶性銅損失を最小化する。
【0076】
実施形態2:凝集中に添加された酸の制御および最適化
過剰な酸の制御
図3から7に示されるサーキットのいずれかで(例として)、PLS(32)またはラフィネート(34)は、元の凝集器に循環させて、可溶性の銅、鉄、および酸を提供することができる。酸は、硬化/休止フェーズでのpHを低減させるために、および硫化銅浸出(rxn 1)の酸化剤を発生させるために、鉱石凝集に必要とされる。鉄および銅は、酸化剤として必要である。酸化剤の有効性は、濃度と共に増大する。
【0077】
プロセスに関する、典型的な単純化された概略的流れ図を、
図8に示す。これは、凝集のための溶液がPLSから得られる2段階プロセスを示す。
【0078】
【0079】
休止期間および鉱石硬化後の鉱床の潅注により、第1の排水溶液または初期PLSは、並外れて高い濃度の銅、鉄、および酸を含有することが見出された。プロセスのさらなる最適化は、この初期PLSまたは「第1のフラッシュ」を鉱石凝集ステップで最初に利用して、酸化剤(可溶性の銅および鉄)のレベルを後続の硬化/休止段階で増大させ、次に、酸戦略に沿って、過剰な酸がある場合には、後続の鉱石の凝集に添加される新鮮な酸の量を、その酸によって割り引くことができることである。このことは、浸出フェーズでの過剰な酸を軽減させるのを助ける。
【0080】
これは、
図10に提示される結果によって示され、これはパイロットプラントでの2m×2m×8m木積試験に関するものであり、0.79%の銅のグレードで、黄銅鉱としての70%の銅で、および破砕サイズが19mm通過の約80%で、深成鉱石を処理するのに使用した。
【0081】
図10に提示された結果は、木積(G10/2)の鉱床を離れた初期排水溶液または第1のPLSが、並外れて高い酸(80g/L)(A)、銅(55g/L)(B)、および鉄(35g/L)(C)の濃度を含有したことを示す。このPLS溶液は、鉱物浸出を促進させるよう高い酸、銅、および鉄濃度を利用する恩恵を受けて、ラフィネートの代わりに鉱石の新しいバッチの凝集で効率的に使用することができ、その鉱石のバッチに関して新鮮な酸の添加を低減させることが可能になる。使用されるPLSの体積は、鉱石凝集に必要とされる水分含量に基づく。この例における典型的な値は、約0.07m
3/tであり、3L/h.m
2の潅注量で鉱床から排水されたPLSの最初の10日間に相当する。溶液中の鉄を、鉱石凝集中および後続の硬化プロセス中に、曝気条件下で第2鉄に酸化するが、これは銅鉱物浸出に寄与するものである。高い銅濃度は、硬化期間中に、第1鉄イオン酸化を促進させ、溶液酸化電位を上昇させ、銅鉱物浸出速度を増大させる。溶液中の過剰な第二鉄は、このプロセス中に、反応3、4、および5によりそれぞれ示されるように、鉄明ばん石としてまたはメタ曹鉄鉱として沈殿することになることも予測される。これは溶液中の鉄の濃度を低下させ、鉄のレベルを、典型的にはラフィネート中で予測される平衡濃度、典型的には150g/Lの塩化物を含む溶液中で約5g/Lであるがこれに限定されない濃度で維持すると考えられる。
【0082】
脈石酸消費(GAC)の決定およびヒープ浸出への酸添加の制御
塩化物浸出に必要とされる酸を、鉱石凝集中に新鮮な濃縮酸として、またはラフィネート溶液に補給酸として添加する。したがって鉱石凝集ステップでの操作において、酸は、鉱石への濃縮酸の添加によってまたは単にラフィネート溶液中の酸として提供される。ラフィネートの添加は、凝集鉱石に指定された最終水分含量を実現するように制御される。
【0083】
鉱石凝集なしの鉱石浸出の場合、酸は、ヒープを潅注するのに使用されるラフィネート流中に提供される。
【0084】
必要とされる酸は、脈石鉱物によって消費される酸および銅鉱物を浸出させるのに必要な酸から計算される。鉱物浸出中の酸消費量は、溶液中の酸濃度および温度に依存する。
【0085】
試験方法は、脈石鉱物浸出によって消費される酸を決定するために開発されおり、したがって特定の鉱石タイプに関して、脈石酸消費(GAC)を、溶液pH、または酸濃度、および温度の関数として決定することができる。これらのGAC試験の結果を使用して、高速、中速、および低速で浸出する脈石鉱物の浸出に関する酸要求量を計算するのに使用される、モデルパラメーターを決定してきた。したがって特定の鉱石タイプでは、溶液中で過剰な酸濃度を生み出すことなく酸要求量を満たすために、GACを決定することができ、鉱石凝集へのおよび制御されたラフィネートへの酸添加を決定することができる。銅溶解に必要とされる酸の量は、銅グレードから、試験によって決定された予測される銅溶解から、および鉱石鉱物学的性質と、例えば反応1によって示される浸出反応によって定義される反応化学量論とを考慮することによって、計算することができる。次いでこのデータは、鉱石凝集中に必要とされる酸添加、ならびにSXによる効率的な銅抽出を可能にするために、鉱物浸出を持続させ、銅溶解を最大化し、かつPLS中の酸の最適濃度を維持するためにラフィネート中で必要とされる酸濃度を決定するのに使用される。
【0086】
凝集中の最適な酸添加の決定
含銅鉱石は、広範な鉱物を含有する。黄鉄鉱および黄銅鉱などの硫化物鉱物は、GAC試験の低Eh条件下で浸出しない。硫酸によって浸出させた脈石鉱物は、典型的には、金属酸化物および炭酸塩と、様々なカリウム-第1鉄-マグネシウム-アルミニウムシリケートを含む。脈石鉱物との酸反応は、鉱物の化学量論的溶解をもたらすと想定され、例えば:
方解石:CaCO3+2H+→Ca2++CO2+H2O
緑泥石:Mg3Fe2Al2Si3O10(OH)8+16H+→3Mg2++2Fe2++2Al3++3SiO2+12H2O
K-長石:KAlSi3O8+4H+→K++Al3++3SiO2+2H2O
カオリナイト:Al2Si2O5(OH)4+6H+→2Al3++2SiO2+5H2O
である。
【0087】
鉱石中の酸と脈石鉱物との間の化学反応は、イオンを溶液中に放出する。溶液が比較的希薄でありかつ硫酸塩鉱物の沈殿を無視できる場合、脈石との反応によって消費される酸の量は、イオンとして放出された全電荷の合計から計算することができ、数学的に下記の通り表され:
Δ[H+]=Δ[K+]+2Δ[Fe2+]+2Δ[Mg2+]+3Δ[Al3+]+・・・-Δ[Cl-] (1)
式中、Δ[H+]は、消費されたH+(プロトン)の量(mol/L)であり、Δ[K+]、Δ[Fe2+]、Δ[Al3+]などは、反応中のイオン濃度の変化である。総和は、反応中に放出された全てのカチオンに関するものである。塩化物濃度の変化、Δ[Cl-]を計算に含めて、鉱石中のNaClの溶解を補正するが、ここではNa+カチオン(およびCl-アニオン)が溶液中に放出され、しかし酸を消費せず、おそらくはpHプローブからKClが漏洩し、それがK+カチオン(およびCl-アニオン)を溶液中に放出し、酸を消費しない。
【0088】
酸消費は、49Δ[H+](単位g-H2SO4/L)、または49Δ[H+]V/M(単位kg-H2SO4/t-鉱石)であり、Vは、反応器内の溶液の体積であり、Mは鉱石の重量(kg)である。脈石-酸反応の過程における様々な時点で溶液組成が公知である場合、酸消費は、反応時間の関数として計算することができる。
【0089】
反応中の溶液の酸濃度は、全電荷バランスから計算することができ、数学的に下記の通り表され:
[H+]=2[SO4
2-]+[Cl-]-[K+]-2[Fe2+]-2[Mg2+]-3[Al3+]-・・・ (2)
式中、[H+]は、溶液中のプロトン濃度またはH(H+およびHSO4
-として)の全濃度(mol/L)である。硫酸塩濃度[SO4
2-]は、溶液中の硫黄濃度[S]から公知である。
【0090】
溶液中の酸の濃度は、y49[H+](単位g-H2SO4/L)である。酸濃度は、反応中の時間の関数として計算することができる。
【0091】
反応器内の溶液のpHは、反応器への濃縮酸の添加によって、脈石-酸反応中は一定に維持される。pHを維持するのに添加される酸を、時間の関数として記録し、kg-H2SO4/t-鉱石と表す。
【0092】
一定pHを維持するのに添加される酸は、脈石との反応によって消費される酸に等しくない。事実、一定pHを維持するのに添加される酸は、一般に脈石との反応によって消費される酸よりも多く、低pHでますますそのようになるが、これについて以下に説明することができる。酸H2SO4は溶液中で解離して、酸性化学種H+およびHSO4
-を生成するが、H+のみが(その活性を通して)溶液pHに影響を及ぼす。HSO4
-はpHに影響を及ぼさないので、pHを維持するために添加しなければならない酸の量は、消費される酸の量よりも多い。地球化学的モデルEQ3/6は、pH1およびpH2でのH2SO4の溶液中のHSO4
-の割合が、それぞれ約40%および20%であることを予測する。脈石-酸反応中の溶液へのカチオンの放出は、HSO4
-百分率を増大させることが予測される。これらの結果は、pH1で、一定pHを維持するのに添加される酸の量を、脈石とのその反応によって消費される酸の量の2倍にすることができることを示唆する。
【0093】
示されるように、一定pHを維持するのに添加される酸は、脈石-酸反応の過程で直接測定される。添加される酸は、溶液組成データから計算することもでき、そのようにすることによって、そのデータの一貫性のチェックが行われる。所与の反応期間中に添加される酸は、数式(1)から計算される、その期間に消費される酸と、その期間の終わりと始まりの間で溶液中の酸の濃度の差との、合計として計算され、
Δ[H+]pH=2Δ[SO4
2-] (3)
と表すことができる。
【0094】
一定pHを維持するのに添加される酸は、49Δ[H+]pHV/M(単位kg-H2SO4/t-鉱石)である。
【0095】
数式(3)から、反応器に添加される酸の量を、溶液中の硫酸塩濃度の変化から計算することができる。この単純な関係は、酸と脈石との間の反応が溶液中の硫酸塩濃度を変化させないという事実の結果である。
【0096】
モデル化の目的で、脈石鉱物による酸消費に関する特定の反応速度は:
【0097】
【数7】
によって与えられ、
式中、R
Gaは、高速、中速、および低速反応を表す3項目の合計として表される特定の反応速度(kg-酸/t-鉱石.s)であり、それぞれ、脈石変換α
Ga1、α
Ga2、およびα
Ga3、ならびに最終酸消費g
Ga1、g
Ga2、およびg
Ga3(kg-酸/t-鉱石)である。3つのタイプの酸消費のそれぞれに関し、反応が進むにつれて、脈石変換はゼロから1まで様々であり、酸消費はゼロからgまで様々である。酸消費の3つのタイプは、様々な脈石種の代表例と見なすことができ:例えば高速(方解石)、中速(緑泥石および黒雲母)、および低速(カオリナイト、K-長石、および絹雲母)である。
【0098】
脈石による酸消費は、数式(4)により与えられた反応速度を、反応の経過時間に対して積分することによって得られ:
GAC=gGa1αGa1+gGa2αGa2+gGa3αGa3 (5)
式中、GACは、kg-酸/t-鉱石を単位とする酸消費である。
【0099】
酸消費の3つのタイプのそれぞれに関し、反応中の脈石変換速度は、下記の通りアレニウス型:
【0100】
【数8】
で表され、
式中、k
Gaは速度定数((L/mol)
nH/s)であり、E
Gaは活性エネルギー(cal/mol)であり、d
pは鉱石粒度(mm)であり、d
0は特徴的鉱石粒度(10mmとされる)であり、[H
+]はプロトン濃度(mol/L)であり、Tは温度(K)であり、Rは一般気体定数(1.986cal/mol.K)であり、n
p、n
H、およびn
αは、それぞれ粒度、酸濃度、および脈石変換に関する指数である。数式(5)に示されるように、脈石による酸消費速度は、プロトン活性またはpHではなくてプロトン濃度に関して表される。
【0101】
脈石-酸反応中に溶液に放出されたカチオンの濃度は:
[C]=(gGa1αGa1YC1+gGa2αGa2YC2+gGa3αGa3YC3)/98(M/V) (7)
として表され、
式中、[C]はカチオン濃度(mol/L)であり、YC1、YC2、およびYC3は、酸消費剤の3つの種類のそれぞれに関するカチオン放出因子であり、消費される酸の1モル当たりで放出されるカチオンのモル数(mol-C/mol-酸)として表される。例えば、方解石が唯一の高速反応脈石種である場合、カチオンCa2+の放出因子はYca1=1である。同様に、緑泥石が唯一の中速反応脈石種である場合、カチオンMg2+、Fe2+、およびAl3+の放出因子は、それぞれYMg2=0.375、YFe2=0.25、およびYAl2=0.25である。
【0102】
酸と脈石鉱物との間の反応によって遊離した元素の最終重量は、鉱石中の元素の重量未満とされ:
(gGa1YC1+gGa2YC2+gGa3YC3)WC/98<GC (8)
式中、WCは元素の原子量であり、GCは、鉱石中の元素のグレード(kg-C/t-鉱石)である。
【0103】
カチオン放出因子は、電荷バランスの考慮事項に拘束される:
YK+2YFe(II)+2YMg+3YFe(III)+3YAl+・・・=2 (9)
【0104】
数式(4)から(7)におけるモデルパラメーター、即ちkGa、EGa、gGa、Y、np、nH、およびnαは、モデル計算酸消費および溶液組成を、GAC試験からの測定データに当て嵌めることによって決定される。
【0105】
実験によるGAC決定は、
図11に示されるような配置構成100を使用して実施される。配置構成は、4.5Lにオーバーフロー出口104を備えた5.5L反応槽102を含み、この槽には鉱石試料106が2750g入っている(試料のサイズは、サイズ画分が大きくなるにつれて増大する)。反応槽102は、管材を介して3Lのサイド反応器110に接続される。リキシビアント(5300mL)の大部分が、この接続されたシステムに導入され、ポンプ116を介してサイド反応器110から反応槽102に、固定速度で循環され、重力を介して元のサイド反応器110に流入する。
【0106】
リキシビアント5300mLがシステムに入ると、リキシビアントは、反応器102、110の下の加熱器118によって熱を持つようになる。pH(120)および最終体積(122)は、鉄含有酸溶液124を200mL添加して最終体積5500mLにすることにより、必要な出発値に調節される。
【0107】
還元雰囲気は、反応器102および110から空気を排除することによって、ならびに窒素の流れ126を反応器102、110に導入することによって、反応表面上で維持される。反応器を密閉して、反応器102、110からの窒素の容積移動を可能にする。溶液試料を、規定の時間間隔でサイド反応器110から採取し、コンピューター130を使用して元素の選択に関して分析する。pHおよび溶液レドックス電位の値を、コンピューター130で経時的に記録する。
【0108】
図12は、
図11に示される試験配置構成100から得られた結果を、グラフで示す。経時的な酸消費を、pH値であるpH1(C)、pH1.5(B)、およびpH2(A)に関して示す。酸消費は、溶液のpH、即ち溶液中の酸濃度による影響を強く受けることが明らかである。
【0109】
酸消費量に対する、温度の影響および鉱石試料の種々の破砕サイズの影響を決定するために、反応器100を使用することも可能である。
【0110】
方法GAC試験反応器を使用して得られた典型的な結果を、
図12に示す。結果は、酸消費が、どのように溶液pHまたは溶液中の酸濃度の影響を強く受けるかを示す。示されるように、温度の影響および種々の破砕サイズでの鉱石試料の試験は、粒度および温度の関数として酸消費量を決定するために行ってもよい。
【0111】
図13から23を参照する以下の記述は、これまで記述したような本発明の態様に関して行われた試験に関する。
【実施例1】
【0112】
本発明の方法の統合型パイロットプラント技術評価の記述
9つの木積と溶媒抽出プラントを組み込む統合型パイロットプラントが、パイロット規模で本発明のプロセスの商業的適用例を複製するために確立されてきた。このプロセスは、動的「レーストラック」スタイルヒープ浸出操作を使用して、様々な低グレード黄銅鉱鉱石を処理するように設計される。「レーストラック」スタイルヒープは、多数のセクターを含む。新しいセクターはスタッキングされ、最も古く最も浸出したセクターはパッドから除去される。パッドは再使用される。
【0113】
各木積は、鉱石を約40T含有し、4m2の断面積を有し、操作高さは7.5mであり、全高は10mである。木積は、9セクターで商業的操作をシミュレートするように操作される。商用ヒープのように、プロセスは動的であり、完了した木積から浸出残渣が周期的に除去され、残渣の代わりに新鮮な鉱石を空の木積内に入れる。
【0114】
3つの個別の操作フェーズを行った。試験をした鉱石試料に含有される主要な硫化銅鉱物と脈石鉱物との組成の範囲、および操作の簡単な説明を、表1にまとめる。
【0115】
【0116】
鉱石試料を、3段階破砕サーキットで破砕する。破砕鉱石は、木積に投入される前に凝集する。塩化ナトリウム(塩)、酸、およびラフィネート(またはその他の銅、鉄および酸を含有するプロセス液)を、凝集プロセスで鉱石に添加する。次いで凝集した鉱石を空の木積内に置き;ある期間にわたり硬化し、その後、潅注を開始する。潅注サイクルの終わりに、各木積から排水し、水で潅注して洗浄し、再び排水し、最後に完全に空にする。次いで空の木積を、新鮮な凝集鉱石を受け入れるように調製する。
【0117】
フェーズIおよびフェーズIIでは、操作の開始および初期データの収集、ならびにフェーズIIの閉サーキット操作に合わせた追加の木積の構成を行った。
【0118】
フェーズIIIの操作では、低グレード鉱石が、0.3%程度に低いCuの銅グレードに、および黄銅鉱に関連した含有銅の最大75%に含まれた(CSR黄銅鉱75%)。操作は、投入解除および試料加工前に、45日の硬化期間、20日の湿潤期間、360日の潅注、20日の洗浄、および30日の排水(合計475日)からなるものであった。
【0119】
フェーズIIIの操作スケジュールは、45日ごとに木積の投入および投入解除が可能になるように設計し、それによって商用の動的パッド操作および工業的な液体の取扱いをシミュレートした。この閉鎖は、定常状態の不純物濃度を得、かつ可能性ある操作上の問題を明らかにするための必要事項であった。操作は、閉サーキットで維持し、洗浄水を再導入して、残渣水分および蒸発に起因して消失した新しいラフィネートを発生させた。水添加量は、0.11m3/T鉱石で維持した。新鮮な補給水を使用して、投入された有機物を洗浄することにより塩化物を除去し、かつ前述の本発明の方法により残渣鉱石を洗浄した。
【0120】
パイロットプラントは、商用ヒープ浸出操作を模倣する、生産量および投入量が慎重に制御される閉システムとして運転する。即ち、投入量および生産量は、蒸発によって消失した水、浸出残渣(またはリッポス(rippos))中の水分としての損失、およびプロセス溶液パージで消失した水の置換(より低い不純物が必要な場合)のバランスを厳密にとるために、添加される新鮮な水が制限されるように制御される。パイロットプラントのプロセスフローシートを、
図13に示す。パイロットプラントの主な構成要素および操作を、以下の通りまとめる:
・ラフィネートタンク1:溶媒抽出(SX)7から戻ったラフィネートの貯蔵。1m
3のラフィネート供給タンク2A-Iを各木積、3A-Iに分離するように、供給材を提供する。補給酸を、プロセスの操作上の酸要求量を満たすよう、必要に応じてラフィネートタンクに添加してもよい。
・浸出貴溶液(PLS)4&5:各木積(3A-I)からのPLS溶液を、1m
3のPLSタンク4A-Iに収集する。PLSをタンク4A-IからPLS保持タンク5に移す。
・高Cu PLS6:鉱石硬化後に木積の初期潅注から収集された第1のPLSは、高い銅含量を有する。この初期PLSを、保持タンク6に収集する。補給酸をタンク6内の高銅PLSに添加してもよい。SXからのパージ水を、タンク6内の高銅PLSに添加してもよい。
・鉱石凝集8:鉱石を、凝集ドラム内で凝集させる。タンク1からのラフィネートを鉱石に添加する。酸および固体塩を添加して、目標の酸添加および合計の塩添加を必要に応じて満たすようにする。高銅PLS6を鉱石凝集で使用して、鉱石凝集に銅および酸(高Cu PLSに含有される)を直接戻すようにしてもよい。酸を含む凝集鉱石中の高銅含量は、初期休止ステップでの鉱石硬化中の銅解離を改善し得る。凝集鉱石を、必要に応じて投入木積(3A-I)に移す。
・鉱石を木積3A-Iで浸出させる:凝集鉱石を、木積内でスタッキングする。それを硬化させる(初期休止期間)。次いで潅注を開始する。潅注をゆっくり開始して、鉱石を確実に湿潤させる。潅注は、低銅ラフィネートを溶媒抽出プロセスから木積の上部にポンプ送出することによって実施する。液を、ドリッパー網状構造を通した適用によって木積表面上に分配させる。溶液は、各木積内で鉱石を経て浸透する。同時に、各木積のベースに空気を導入する。銅は、プロセス液中の酸と空気中の酸素との組合せによって、可溶化する。潅注液は、木積のベースに移る。それは、このとき上昇した銅含量を有し、PLS(浸出貴溶液)と呼ぶ。これを収集し、溶媒抽出プロセスに移す。
・鉱石浸出後、ラフィネートによる鉱石の潅注を停止させる。鉱床は排水を可能にし、次いで鉱石を洗浄水で洗浄して、取り込まれた塩化物(塩)および溶解した銅を回収する。次いで洗浄した浸出鉱石残渣を、木積から廃棄物へと除去する。
・溶媒抽出(SX)7:銅を、溶媒抽出によってPLSから回収する。銅を、2つの抽出段階E1およびE2で有機物上に投入する。次いで投入された有機物を、2段階洗浄L1およびL2で、水で洗浄する。洗浄は、取り込まれた水性溶液を除去するのに必要であり、したがって、投入された有機物のストリッピング後の先進電解質の塩化物含量は、<50ppmになる。次いで洗浄段階後、投入された有機物をS1からストリッピングして、銅を回収することにより、先進電解質7bになる。投入された有機物ストリッピングのための使用済み電解質は、保持タンク7cから提供される。必要な場合には、補給酸を、保持タンク7c内の使用済み電解質に添加して、投入された有機物の完全なストリッピングに必要な量まで酸濃度を増大させる。先進電解質を、銅回収のためのサーキットから取り出し、使用済み電解質をサーキットに戻す。投入された有機物の洗浄効率は、先の記述で言及されるように、洗浄段階の数を3まで増加させることによって改善され得る。増大した洗浄効率は、投入された有機物を洗浄するのに必要とされる洗浄水の体積を低減させ、鉱石残渣に取り込まれた溶液の変位により、浸出鉱石残渣を洗浄するための水を増加させ、塩化物および銅の回収の増加をもたらす。
フェーズI、フェーズII、およびフェーズIIIに関する操作パラメーターを、表2にまとめる。
【0121】
【表6】
投入量および生産量を示す、パイロットヒープに関する単純化された物質バランス図を、
図14に示す。鉱石、酸、および水のバランスに関する典型的な値を、表3に示す。
【0122】
【0123】
浸出領域パイロットプラントフローシートの構成を、
図15に示す。これは、パイロットプラントの運転で使用される鉱石が主として黄銅鉱でありかつ低銅ヘッドグレードを有するので、許容されるフローシートである。フローシートの重要な態様は、低酸ラフィネートが溶媒抽出を経て発生することである。この低酸ラフィネートは、全てのセクター(この場合、木積)上に分配される。低酸品位は、脈石浸出の速度を最小化する。
【0124】
鉱石が、より高いグレードを有した場合、特に含有される銅が、主として、銅藍、輝銅鉱、または斑銅鉱などの2次銅鉱物であった場合、浸出において増大した脈石酸消費を好むフローシートが、これまで記述してきたように用いられてきた可能性がある。そのようなフローシートを、
図16に示す。
【0125】
図16の選択肢は、示されるように操作することができ、または示される第1の4つの木積に対向する第2の4つの木積からの液での溶媒抽出操作で行うことができる。段階の数は、2から3に拡大することができ、または必要と考えられる程度に多くてもよい。
【実施例2】
【0126】
酸バランス
先の記述は、プロセス全体にわたって酸のバランスをとる必要があることを指定する。酸は、硬化フェーズ中に銅溶解を生じさせるため、凝集において試薬として必要である。酸は、銅溶解のための浸出フェーズ中の試薬としても必要とされる。酸は、溶解した銅を銅金属へと電解採取することによって、発生させる。この酸を、溶媒抽出を介して元のプロセスに戻し、これは全て、浸出フェーズ中のプロセスに移される。
【0127】
プロセスの浸出フェーズでは、EWによって発生した酸の量は、脈石および硫化銅鉱物との反応によって依然として消費されると共に浸出鉱石の洗浄後に水分中に残される、酸の量で相殺する必要がある。
【0128】
理想的な操作では、浸出によって必要とされたおよびEWによって発生した酸の量は一致し、操作の浸出フェーズは、酸が中性である。この場合、酸の消費および供給は、酸バランスが実現されるようにバランスがとれている。一部の酸を浸出フェーズに添加する必要がある場合も許容される。回避する必要があるのは、浸出フェーズにおいて、脈石および硫化銅鉱物浸出により消費されるよりも、EWによって戻される酸のほうがより多く存在する状況である。その理由は、これが、最終洗浄段階を持つ閉サーキット操作であり、したがって過剰な酸が蓄積されることになるからである。プロセス液中の高濃度の酸は溶媒抽出プロセスに有害になる可能性があるが、それはこのプロセスが、有機物への銅投入を支援するため供給材中に低酸品位を有することに依拠するからである(プロトン/銅平衡)。
【0129】
実施例1において、表3は、フェーズIIの操作に関する木積周りのバランスを示す。第1に、浸出鉱石の洗浄後に水分中の浸出プロセスから離れる酸の量が、非常に少ないことがわかり(0.05kg/t鉱石)、したがって、これは、さらなる考察では考慮されない。第2に、平均して浸出フェーズは、酸マイナスであったことがわかる。少量の酸を添加して、浸出中のpHを制御した(1.15kg/t鉱石)。これは理想的であり、この鉱石の組合せがプロセスに供給されかつこの手法で処理された場合には、酸の全体像に何の問題もないと考えられる。
【0130】
表4は、木積ごとの酸の消費および銅の溶解を示す。
【0131】
【0132】
表4のデータは、木積ごとに硬化フェーズおよび浸出フェーズの両方で、浸出した銅ならびに使用した酸を示す。EWによって発生しかつ元のプロセスに移送されると考えられる酸の量も示す。
【0133】
データは、木積G10/2を例外として、一般にほぼ全ての木積が、浸出中で酸マイナスであったことを示す。商用の操作が、この特定の鉱石を処理することである場合、長い期間にわたるこの手法で、サーキット内に酸が構築されると考えられる。操作は、サーキットを酸中性状態にするように凝集フェーズに供給される酸を低減させること、または使用されるフローシート(
図15)とは対照的に
図16に示されるようなフローシートを用いることの、いずれかが必要と考えられるが、それは脈石酸の消費増大を支援しかつプロセスを元の酸の中性または酸の欠乏に戻す可能性があるからである。後者は、硬化ステップの銅浸出性能を維持する可能性があるので好ましいと考えられる。
【0134】
G10/2鉱石とその他の鉱石との間には、2つの主要な相違がある。第1は、ヘッドグレードである。この鉱石は、平均よりも高い銅含量を有し、妥当な溶解と組み合わせると、EWが平均よりも高い酸を生成することを意味する。第2に、脈石および銅鉱物により浸出フェーズで消費される酸の量は、僅かに6.6kg/tであった。これは、この期間で発生した銅3.7kg/tを浸出させるのに必要とされる可能性が高い酸の量よりも、少ない。このことは、脈石鉱物が、酸に対して低反応性を有し、おそらくは鉄明ばん石などの化合物を発生させる酸の沈殿があったことを示唆する。
【0135】
この実施例は、プロセスが酸を発生させないことを確実にするのに、制御が必要となり得ること、および脈石鉱物浸出挙動の理解が酸のニーズを予測する鍵となることを示す。次いでこの理解は、最適値に関して浸出期間に適切なフローシート構成と連結することを必要とする。「最適値」は、典型的には、浸出させることができる最大量の銅であるが、それは銅の値が酸のコストよりも著しく高いからである。
【実施例3】
【0136】
酸バランス-硬化フェーズと銅溶解の最終的な程度との相互作用
余分な酸が、フェーズIIの凝集段階に添加され、その酸が黄銅鉱浸出の比例的増加をもたらした場合、フェーズIIの木積に関する酸バランスがどの時点で酸プラスになったかを推定することができる。
【0137】
【0138】
表5は、硬化フェーズで消費された酸が30%増加することになった場合、正味の結果は、9つの木積のうち8つが、浸出フェーズで酸プラスになったことだと考えられる。これは多段階手法に対するフローシートの変更が必要と考えられる。フローシート構成の変更に加え、硬化フェーズで添加された酸の量のいくらかの低減は、その出現を防止しかつ銅溶解を制限するのに必要になる可能性がある。
【0139】
これらの鉱石は、適度に高い割合の黄銅鉱を有する。黄銅鉱は、輝銅鉱および銅藍などのその他の硫化銅鉱物よりも遅い速度で浸出することが公知である。浸出フェーズの終わりに浸出するのは主に黄銅鉱であると想定することが、妥当である。黄銅鉱の浸出は、溶液中に遊離したCu
2+ごとに4個のプロトン(H
+)を必要とする。しかしEWでは、僅かに2個のプロトン(H
+)が、銅金属(Cu)として沈着するCu
2+ごとに発生する。このことは、浸出フェーズで生じる銅浸出の最終的な程度がこれらの鉱石に関して増大した場合、低脈石酸消費鉱石および
図15に示されるフローシートによる浸出操作で、硬化フェーズで実現されたより高い銅溶解にもかかわらず、プロセスが浸出中に酸マイナスに戻る点が存在し得ることを意味する。
【0140】
表6は、これらの同じ鉱石に関する、いくつかのカラム浸出結果を示す。これらのカラムは、部分的には操作条件により、および部分的にはカラムがより良好な溶液分配を得たことにより、木積よりも良好に機能した。性能の変化に関する理由の詳細は、この考察に関係がない。しかし関係があるのは、これらのカラムが、硬化フェーズでさらに非常に高い銅溶解を得るにもかかわらず、木積G10/2で使用される鉱石も含めて(カラムMK104参照)全てはそれらの浸出フェーズで酸マイナスになった可能性があるのを示すことであり、その理由は、浸出フェーズで実現される追加の浸出と、前述のパラグラフで論じたような、結果として生じる酸要求量とによる。
【0141】
【実施例4】
【0142】
フェーズII木積データの外挿
最大の性能で、これらの鉱石に関して、硬化および浸出フェーズ銅溶解の間にどのような理想的な分け方があるかの指標を得るために、フェーズII木積データを外挿することが可能である。これらの鉱石タイプからの銅溶解に関する最大目標は、約85%とされる。それが生じることになりかつ脈石酸要件が同じままである場合、硬化フェーズで浸出できるが依然としてプロセスによって浸出フェーズでは酸を中性のままにする、全銅の最大百分率を推定することが可能と考えられる。これを
図17に示すが、この図は、鉱石銅ヘッドグレードに対する硬化フェーズ銅溶解の割合に関して強い傾向があることを示す。低ヘッドグレードで、全ての銅は硬化フェーズで浸出することができ、浸出フェーズは、依然として酸が中性のままと考えられる。このことは、EWによって発生した酸の量が、浸出した銅の質量に正比例するので、意味をなす。したがって、低ヘッドグレードでは、EWによって少量の酸しか発生せず、この酸は、浸出フェーズで残留酸可溶性脈石鉱物によって消費される。グレードが増大すると、EWからの酸を相殺するのに不十分な脈石酸要求量があり、したがって、量が増加した黄銅鉱は、浸出フェーズで浸出させる必要がある。
【0143】
トレンドラインをデータに当て嵌めたが、鉱石の脈石鉱物組成は試料間で様々であり、したがって酸バランスが収束する点もそうであるのでデータは散らばっている。このことは、脈石鉱物の浸出挙動の知識および理解が、プロセスを最適化するのに極めて重要であることを強調するので、重要である。
【0144】
このプロットは、銅鉱物の大部分が斑銅鉱、輝銅鉱、また銅藍である場合、異なって見える。これらの鉱物に関し、浸出に必要なプロトン(H+)の数は、それぞれ2.4、2、および2である。したがって、銅を浸出させるのに必要なプロトンと、EWで発生したプロトンとの間には、差がほとんどまたは全くない。したがってプロセスは、酸プラスになるのを防止するため、浸出フェーズ中に継続される脈石酸要求量にさらに依拠すると考えられる。あるいは、硬化フェーズ銅浸出は、より低くある必要があると考えられる。
【0145】
このプロットのトレンドラインは、多段階浸出プロセスが用いられる場合、上向きにシフトする可能性がある。
【実施例5】
【0146】
脈石酸消費の推定
図18の結果は、2つの異なる鉱石タイプを処理する、フェーズIIIパイロットプラント運転での木積G5(B)およびG7(A)の操作からの全酸消費を示す。木積に投入された2つの鉱石タイプの鉱物学的性質を、表7に示す。結果は、鉱石タイプD(木積G7フェーズIII)と比較して、鉱石タイプC(木積G5フェーズIII)のより高い黒雲母および緑泥石含量を示す。黒雲母および緑泥石は、GACに対する主な寄与因子であることが見出されており、典型的には、その他のケイ酸塩鉱物に比べて速い速度で浸出する。
【0147】
【0148】
全酸消費は、銅鉱物浸出用の酸と、脈石鉱物浸出(GAC)用の酸とを含む。銅鉱物浸出に関する酸要求量を、浸出した銅の質量と共に
図19に示す。同じ期間にわたって実現された銅抽出を、参照のため
図20に示す。
【0149】
特定の鉱石タイプおよび銅グレードに関する、脈石酸消費(GAC)は、銅抽出に関する酸要求量を全酸消費から差し引くことによって、本発明のプロセスで推定され得る。この結果は、本発明のプロセスの場合に真のGAC要求量に類似した、正味の酸消費(NAC)を与える。木積G5およびG7フェーズIIIに関して計算された脈石酸消費を、
図21に示す。
【0150】
SXパイロットプラント(
図13に示す)のストリッピング段階S1では、高酸含量を持つ使用済み電解質を使用して、銅を、投入された有機物からストリッピングする。銅は、電解採取によって銅回収するために循環する水性先進電解質溶液に移る。
図13に示すように、有機相中の銅を酸によって置き換え、高酸含量を持つ、得られたストリッピング済み有機物を、銅抽出段階E1に再循環して、そこで銅をPLSから抽出する。したがってSXプロセスは、PLSからの銅抽出後に、酸をラフィネート溶液に戻す。ラフィネート中の酸を利用して、より多くの銅鉱物を浸出させ、かつ浸出サイクル中のGAC要求量を満たす。
【0151】
木積G7フェーズIIIへの、鉱石凝集での初期酸添加(鉱石タイプD、非常に低いGACを有する)は、11.3kg/Tであった。木積G5フェーズIIIの場合(鉱石タイプC低GAC)、鉱石凝集における酸添加は10.6kg/Tであった。木積G7フェーズIIIの場合、溶液中の初期酸濃度は、硬化ステップでの鉱石タイプDのより低いGAC量に起因して、木積G5フェーズIIIよりも高かった。木積G7フェーズIIIにおける鉱石の潅注でのより高い初期酸濃度は、酸消費量を増大させた。しかし、ケイ酸脈石鉱物が欠乏するようになると、酸消費量は低下した。木積G5フェーズIIIの場合、木積G5フェーズIIIにおける鉱石タイプCのより高いGACにもかかわらず、初期酸濃度は比較的低く、初期消費量は木積G7フェーズIIIよりも低かった。しかし、酸ラフィネートによる潅注で、GAC量は、木積5フェーズIIIの場合に明らかに高くなり、したがって250日目の浸出の終わりに向かい、木積G7に関するGACは、木積G5フェーズIIIの12.9kg/Tに比べて11.8kg/Tであった。これらの傾向は、
図22に示される両方の木積の対応するPLS酸濃度プロファイルと、
図23の対応するPLS pHプロファイルとに反映される。
【0152】
潅注による溶液中の初期酸濃度は、鉱石凝集での酸添加および鉱石のGAC要求量に依存する。添加が少な過ぎると、銅鉱物浸出に利用可能な初期遊離酸を限定することになる。添加が多過ぎると、浸出段階でのPLSで過剰な酸をもたらし、溶媒抽出による銅抽出に悪影響を及ぼすことになる。
図21および22に提示される酸消費および溶液酸濃度の変動は、本発明のプロセスに許容される操作パラメーターの範囲内である。結果は、鉱石GACおよび酸添加の小さな差が、PLSの酸濃度に影響を及ぼすことを実証し、浸出した鉱石タイプのGACおよび銅鉱物浸出に必要な酸を理解する重要性を示す。
【実施例6】
【0153】
種々の酸濃度でのPLS溶液pHに対する塩化物濃度の影響
酸性度の関数としての、溶液pHに対する塩化物濃度の影響を、
図24に提示される結果に示す。結果は、低塩化物濃度(<5g/Lの塩化物)で、遊離酸濃度が溶液pH1.5で4g/Lであることを示す。高塩化物濃度(150g/L)での対応するpHは、約pH0.8である。溶媒抽出の効率は、PLSのpHに依存する。SXステップで最大銅抽出効率を実現するのに理想的な、PLSのpHは、約pH1.5である。銅抽出効率は、PLS pH1を下回ると損なわれる。したがって、高塩化物PLSでは、遊離酸性度が可能な限り低くあるべきこと、10g/L酸よりも低く、または好ましくは7g/Lよりも低く、より好ましくは2g/Lよりも低く、理想的には1g/Lであるべきことが明らかである。
【実施例7】
【0154】
硬化ステップにおける銅回収率に対する鉱石凝集での酸添加の影響
一連の1mカラム試験は、例えば、硬化ステップでの銅鉱物溶解が高くかつ酸添加により制限される特定の鉱石タイプで、鉱石凝集への酸添加が増加すると、銅の回収に利益を及ぼすことを示す。結果を
図25に示すが、ここでは固定された塩添加10kg/T鉱石が使用され、硫酸添加は10kg/Tから21kg/T鉱石まで様々であった。鉱石凝集後の硬化ステップは、50日の期間にわたった。硬化ステップで浸出した銅を表す初期銅溶解は、酸添加を増加することにより約30%から80%に増加した。全銅回収率は、ラフィネート溶液による20日間の潅注により、70日の全浸出期間で78%から98%に増加した。
【実施例8】
【0155】
種々の鉱石タイプに関する銅溶解曲線の例
本明細書に記述される高塩化物(150g/Lの塩化物)ヒープ浸出の方法による銅溶解を、
図26に提示される結果において、種々の鉱石タイプに関して示す。結果は、本発明の概要に記述される高塩化物(150g/L)浸出の方法を使用する、6mカラム試験に関する。鉱石凝集における鉱石への酸添加、全酸消費、およびNAC(銅を浸出するのに使用される酸を差し引いた全酸消費-この酸は、銅抽出後、SXからラフィネートに戻る)を、表8に示す。結果は、酸添加が制限されないときの硬化ステップで、本発明の方法によって実現され得る、高い銅回収率を示す。結果は、実現された全銅回収率と比較した、硬化ステップでの銅回収率の有意性も示す。結果は、40~75%の範囲の黄銅鉱としての銅供給源比(CSR)を持つ低グレード高黄銅鉱鉱石(0.3%から0.6%Cu)に当て嵌まる。
【0156】
【実施例9】
【0157】
凝集中の水分-硬化性能に対する影響
先の実施例は、硬化フェーズに添加される酸の量の最適化と、フローシートの最適化に対するその関連性について論じる。この酸がどのように添加されるかという方法が、硬化の性能にも影響を与えることを決定されたことに、留意することが重要である。
【0158】
プロセス液は、その水分が提供されるように鉱石凝集にリサイクルされる。鉱床内のこの液体体積は、鉱物浸出用の酸化剤の発生が生じる、反応器溶液体積を表す。単位時間当たりに生成された酸化剤の量は、液のその体積の関数である。この酸化剤は、銅の可溶化をもたらす、硫化銅鉱物の酸化の原因になる。利用可能な液体の量が制限される場合、不十分な酸化剤が生成されることになる可能性があり、それが鉱物浸出の程度を制限することになる。その影響は、鉱物への酸添加の制限に類似しており、したがって、鉱石および脈石鉱物の両方に対する酸要求量を考慮して金属溶解の要件を満たすのに、不十分な酸が利用可能になる。しかし、非常に多過ぎるプロセス液が凝集にリサイクルされる場合、凝集体の強度に、したがって気体および液体流の両方に対するヒープの透過性に、悪影響を及ぼす可能性がある。
図27は、凝集中に理想的な量の水分(A)が供給されたカラムと比較した、凝集中に限られた水分(B)が供給されたカラムに関する浸出性能の差を示す。この傾向から、不十分な水分が銅溶解をどのように制限するかが明らかである。
【0159】
この実施例の重要性とは、硬化フェーズ銅浸出を酸または水分を低減させることによって変えることができることを示すが(この場合のように)、浸出フェーズは浸出銅で効率的ではなく、したがって「キャッチアップ」されないことにある。これが、プロセスの最適化に関して、浸出での過剰な酸を相殺するためのフローシートの修正が、最大銅回収率を確実にするのに最適な解決策である理由である。硬化フェーズの制限は、最後の手段の選択肢に過ぎないと見なされるべきである。
【0160】
参考文献
1. Guilbert,John M.およびCharles F.Park,Jr.(1986)The Geology of Ore Deposits、W.H.Freeman、1ページ、ISBN0-7167-1456-6