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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ネットワーク制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/08 20230101AFI20230111BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20230111BHJP
   H04W 36/22 20090101ALI20230111BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20230111BHJP
【FI】
H04W28/08
H04W24/08
H04W36/22
H04W48/16 135
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019029517
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020136961
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、「IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の研究開発(技術課題ア「有無線ネットワーク仮想化の自動制御技術」)」研究開発委託契約に基づく開発項目「IoT指向ネットワークオーケストレーション技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】光延 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】片桐 徹
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/110103(WO,A1)
【文献】特開2007-067745(JP,A)
【文献】特開2007-074097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信事業者が各々運用する基地局装置との接続が切り替え可能な端末装置であって、前記通信事業者と契約している該端末装置を制御するネットワーク制御装置において、
前記端末装置が接続する前記基地局装置に対する回線品質情報を前記端末装置から収集する回線品質収集部と、
前記複数の基地局装置の各々の回線品質情報と前記複数の基地局装置の各々に接続する端末数との関係を表す対応テーブルを記憶するメモリと、
前記端末装置が接続する前記基地局装置と、該基地局装置から前記端末装置が接続可能な他の前記基地局装置との全組み合わせに対して、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報とを、前記端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記対応テーブルから取得する回線品質予測部と、
最も前記回線品質情報が高い組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する接続先切替指示部と
を備えることを特徴とするネットワーク制御装置。
【請求項2】
更に、端末数推定部を備え、
前記端末数推定部は、前記ネットワーク制御装置により制御可能な第1及び第2の端末装置が前記基地局装置と前記他の基地局装置にそれぞれ接続された場合において、
前記基地局装置に接続する前記第1の端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第1の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第1の合計端末数を、前記基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第1の対応テーブルから取得し、
前記他の基地局装置に接続する前記第2の端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記他の基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第2の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第2の合計端末数を、前記他の基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第2の対応テーブルから取得し、
前記回線品質予測部は、前記第1の合計端末数に基づいて、前記基地局装置に対する前記回線品質情報を前記第1の対応テーブルから取得し、前記第2の合計端末数に基づいて、前記他の基地局装置に対する前記回線品質情報を前記第2の対応テーブルから取得する
ことを特徴とする請求項1記載のネットワーク制御装置。
【請求項3】
前記回線品質予測部は、前記第1の合計端末数を「-1」にしたときの前記回線品質情報を前記第1の対応テーブルから取得し、前記第2の合計端末数を「+1」にしたときの前記回線品質情報を前記第2の対応テーブルから取得することを特徴とする請求項2記載のネットワーク制御装置。
【請求項4】
複数の通信事業者が各々運用する基地局装置との接続が切り替え可能な端末装置であって、前記通信事業者と契約している該端末装置を制御するネットワーク制御装置における制御方法であって、
前記複数の基地局装置の各々の回線品質情報と前記複数の基地局装置の各々に接続する端末数との関係を表す対応テーブルをメモリに記憶し、
前記端末装置が接続する前記基地局装置に対する回線品質情報を前記端末装置から収集し、
前記端末装置が接続する前記基地局装置と、該基地局装置から前記端末装置が接続可能な他の前記基地局装置との全組み合わせに対して、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報とを、前記端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記対応テーブルから取得し、
最も前記回線品質情報が高い組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)による通信システムがある。MVNOは、例えば、無線通信回線設備を自ら開設及び運用することなく、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)が保有する無線通信回線設備を利用して、ユーザに種々のサービスを提供する事業者のことである。MVNOと契約したユーザ(又は端末)は、MNOと契約したユーザと比較して、例えば、提供を受けるサービスの種類数が少ないなどの理由から、安い料金で利用できる、などの利点がある。MVNOとMNOをまとめて、例えば、通信事業者、キャリア、或いはオペレータなどと、称する場合がある。
【0003】
一方、昨今では、eSIM(embedded Subscriber Identify Module)も注目されつつある。eSIMは、例えば、端末装置に予め埋め込まれた、書き換え可能なSIMのことである。eSIMにより、ユーザは、SIMカードを入れ換えることなく、仮想移動体通信事業者Aから仮想移動体通信事業者Bに切り替えて、仮想移動体通信事業者Bが運用するサービスの提供を受けることが可能となる。或いは、ユーザは、1つのSIMカードで、複数の通信事業者の中から1つを選択したりすることも可能となる。
【0004】
このような通信システムに関する技術として、例えば、以下がある。すなわち、無線リンク品質がQ1以上で且つフラグF1がONに設定された無線システムのうち、優先度が高い順に選択して接続する無線端末がある。
【0005】
この技術によれば、利用者によって設定される無線システムの優先度や自動接続の可否条件などの接続ポリシー情報と、各々の無線システムとの無線リンク品質に応じて、無線システム間のハンドオーバを安定して実現することができる、とされる。
【0006】
また、アプリケーションセッションに関して端末装置が経験したQoE(Quality of Experience:体感品質)に関する情報を得るためにQoE測定を実行し、QoE測定値に基づいて、1又は複数のアクションを実行するネットワークノードがある。このようなアクションの例として、Wi-Fiオフロードがある。
【0007】
さらに、第1端末と第2端末の通信品質情報の比較結果に基づいて、以下のように第1端末の接続と第2端末の接続を切り替える管理装置がある。すなわち、第1ネットワークの基地局に接続中かつ第1オペレータと契約中の第1端末の接続を第2ネットワークの切替先候補基地局に切替える。さらに、第2ネットワークの基地局に接続中かつ第2オペレータと契約中の第2端末の接続を第1ネットワークの切替先候補基地局に切替える。
【0008】
この技術によれば、複数のオペレータ間の整合性を維持しつつ、当該複数のオペレータが自社の無線リソースを効率的に使用させ、切り替え対象の端末及び同一エリアに存在する他の端末に高い性能を維持させることができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-304399号公報
【文献】特表2018-506199号公報
【文献】特開2017-38216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した技術は、ある端末の通信品質や体感品質に基づいて無線システムやオペレータを切り替えたり、Wi-fiオフロードを行ったりしている。そのため、例えば、ある地域で複数のオペレータがサービスを提供している場合、あるオペレータから他のオペレータへ接続を切り替えても、切替先のオペレータにおいては、接続端末数が増加するため、スループットが低下する場合がある。一方、切替元のオペレータにおいては、接続端末数が減少するため、スループットが増加する場合がある。
【0011】
しかし、ある地域においては、局所的には、接続端末数が増加してスループットが低下したり、接続端末数が減少してスループットが増加したりするものの、全体としては、スループットが低下する場合がある。
【0012】
そこで、一開示は、回線品質を向上させるようにしたネットワーク制御装置、及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一開示は、複数の通信事業者が各々運用する基地局装置との接続が切り替え可能な端末装置であって、前記通信事業者と契約している該端末装置を制御するネットワーク制御装置において、前記端末装置が接続する前記基地局装置に対する回線品質情報を前記端末装置から収集する回線品質収集部と、前記複数の基地局装置の各々の回線品質情報と前記複数の基地局装置の各々に接続する端末数との関係を表す対応テーブルを記憶するメモリと、前記端末装置が接続する前記基地局装置と、該基地局装置から前記端末装置が接続可能な他の前記基地局装置との全組み合わせに対して、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報とを、前記端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記対応テーブルから取得する回線品質予測部と、最も前記回線品質情報が高い組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する接続先切替指示部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
一開示によれば、回線品質を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は通信システムの構成例を表す図である。
図2図2は通信システムの構成例を表す図である。
図3図3は端末装置の構成例を表す図である。
図4図4はオーケストレータの構成例を表す図である。
図5図5は対応テーブルの例を表す図である。
図6図6(A)と図6(B)はキャリア毎のスループットの例を表す図である。
図7図7(A)と図7(B)はキャリア毎のスループットの例を表す図である。
図8図8(A)と図8(B)はキャリア毎のスループットの例を表す図である。
図9図9は動作例を表すフローチャートである。
図10図10は平均スループット計算処理の動作例を表すフローチャートである。
図11図11は各基地局に接続された端末数を推定する例を表す図である。
図12図12は接続元基地局から端末が1台減少した場合のスループットの推定例を表す図である。
図13図13は接続先基地局で端末が1台増加した場合のスループットの推定例を表す図である。
図14図14は他の動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
[第1の実施の形態]
<情報処理システムの構成例>
図1は通信システム10の構成例を表す図である。
【0018】
通信システム10は、端末装置(以下では、「端末」と称する場合がある。)100-11~100-13,100-21~100-23,100-31~100-33、基地局装置(以下では、「基地局」と称する場合がある。)200-1~200-4、GW(Gateway)300-1~300-3を備える。また、通信システム10は、vGW(Virtual Gateway)400-1~400-3,500-1~500-3、及びオーケストレータ(又はネットワーク制御装置。以下では、「オーケストレータ」と称する場合がある。)600-1,600-3を備える。
【0019】
端末100-11~100-13は、例えば、企業#1に属する端末である。具体的には、端末100-11~100-13は、企業#1が契約したMVNO(例えばMVNO#1)から、サービスの提供を受けることが可能な端末である。このMVNOは、例えば、モバイルキャリア(以下、「キャリア」と称する場合がある。)Aが運用する無線回線設備と、キャリアBが運用する無線回線設備、及びキャリアCが運用する無線回線設備の一部を利用して、端末100-11~100-13にサービスを提供することが可能な事業者である。従って、端末100-11~100-13は、キャリアAが運用する基地局200-1、キャリアBが運用する基地局200-2,200-3、キャリアCが運用する基地局200-4と接続することが可能である。そのため、端末100-11~100-13は、例えば、内部にeSIMを備えており、SIMカードの内容を書き換えて、接続先の基地局200-1~200-4を切り替えることが可能となっている。
【0020】
端末100-21~100-23は、例えば、企業#2に属する端末である。具体的には、端末100-21~100-23は、企業#2が契約したMVNO(例えばMVNO#2)から、サービスの提供を受けることが可能な端末である。このMVNOも、各キャリアA~Cの無線回線設備の一部を利用して、端末100-21~100-23にサービスを提供することが可能である。このため、端末100-21~100-23も、内部にeSIMを備え、SIMカードの内容を書き換えることで、基地局200-1~200-4の接続先を、基地局200-1から基地局200-2へなど、切り替えることが可能である。
【0021】
端末100-31~100-33は、例えば、企業#3に属する端末である。具体的には、端末100-31~100-33は、企業#3が契約したMVNO(例えばMVNO#3)から、サービスの提供を受けることが可能な端末である。このMVNOも、各モバイルキャリアA~Cの無線回線設備の一部を利用してサービスの提供が可能な事業者である。従って、端末100-31~100-33も、内部にeSIMを備え、SIMカードの内容を書き換えることで、接続基地局を、基地局200-1から基地局200-3へなど、切り替えることが可能である。
【0022】
なお、端末100-11~100-13,100-21~100-23,100-31~100-33は、例えば、フィーチャーフォン、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム装置など、無線通信が可能な無線通信装置である。
【0023】
また、端末100-11~100-13,100-21~100-23,100-31~100-33を、端末100、と称する場合がある。
【0024】
基地局200-1~200-4は、サービス提供が可能な範囲に在圏する端末100に対して、通話サービスやWeb閲覧サービスなど、種々のサービスを提供することが可能な無線通信装置である。
【0025】
GW300-1~300-3は、例えば、各キャリアA~Cが運用するモバイルネットワークと、外部ネットワークとを中継する通信装置である。
【0026】
なお、図1の例では、基地局200-1とGW300-1は、キャリアAにより運用され、基地局200-2,200-3とGW300-2は、キャリアBにより運用され、基地局200-4とGW300-3は、キャリアCにより運用される。各キャリアA~Cは、例えば、それぞれ異なるMNOである。
【0027】
vGW400-1~400-3は、例えば、vGW500-1~500-3から送信されたパケットデータなどを、GW300-1~300-3のいずれかへ送信する。また、vGW400-1~400-3は、例えば、GW300-1~300-3から送信されたパケットデータなどを、vGW500-1~500-3のいずれかへ送信する。このような送信制御は、例えば、オーケストレータ600-1,600-3により行われる。例えば、vGW400-1は、オーケストレータ600-1により、このような送信制御が行われ、vGW400-3は、オーケストレータ600-3により、このような送信制御が行われる。
【0028】
vGW500-1~500-3は、例えば、企業内ネットワークと、外部ネットワークとを中継する通信装置である。また、vGW500-4は、例えば、クラウドネットワークと外部ネットワークとを中継する通信装置である。例えば、vGW500-1はオーケストレータ600-1により送信制御が行われ、vGW500-3はオーケストレータ600-3により送信制御が行われる。
【0029】
オーケストレータ600-1,600-3は、例えば、各企業内ネットワークと各企業内ネットワークとの間で交換されるパケットデータなどの送信を制御するネットワーク制御装置である。このため、オーケストレータ600-1,600-3は、例えば、遅延や回線速度な度に基づいて、一定の要件(又は最適な要件)を満たすキャリアを選択し、選択したキャリアを利用して、端末100にサービスを提供することが可能である。
【0030】
なお、図1に示すオーケストレータ600-1は、企業#1に対する送信制御を行い、オーケストレータ600-3は、企業#3に対する送信制御を行う。そのため、オーケストレータ600-1は、vGW400-1,500-1を制御することで、企業#1に対するパケットデータなどの送信制御を行い、オーケストレータ600-3は、vGW400-3,500-3を制御することで、企業#3に対する送信制御を行う。
【0031】
本第1の実施の形態では、オーケストレータ600-1,600-3は、例えば、各企業#1,#3に属する端末100-11~100-13,100-31~100-33の接続制御を行うことが可能である。詳細は動作例で説明する。
【0032】
図2は、図1に示す通信システム10を簡略化した構成例である。
【0033】
図2図1と同様に、キャリアAからキャリアCの各基地局200-11~200-13は、同一区域内に配置される。同一区域とは、例えば、ある駅の駅前の同一地域や、ある町や市の同一地域などである。
【0034】
図2の例では、端末100-11~100-16は、ある企業に属する端末の例を表し、それ以外の端末100-21~100-25は、他の企業に属する端末の例を表している。例えば、以下では、端末100-11~100-16を自社端末、端末100-21~100-25を他社端末、とそれぞれ称する場合がある。
【0035】
図2に示すように、自社端末100-11~100-16は、オーケストレータ600により送信制御などが管理され、オーケストレータ600により接続制御が行われる。
【0036】
なお、他社端末100-21~100-25は、例えば、1つの企業に属する端末であってもよいし、複数の企業に属する端末であってもよい。複数の企業の場合、例えば、端末100-21~100-23は他社A、端末100-24,100-25は他社Bにそれぞれ属する端末であってもよい。
【0037】
また、図2の例では、基地局200-11はキャリアA、基地局200-12はキャリアB、基地局200-13はキャリアCがそれぞれ運用する基地局である。自社にサービスを提供するMVNOは、異なるMNOがそれぞれ運用する各基地局200-11~200-13の一部の無線回線設備を利用して、端末100-11~100-16に対して、サービスを提供することが可能である。この場合、図1でも説明したように、端末100-11~100-16は、キャリアAの基地局200-1からキャリアBの基地局200-2へなど、接続先の基地局を切り替えて、切替先の基地局からサービスの提供を受けることが可能となっている。
【0038】
以降では、図2に示す通信システム10を例にして説明する。なお、自社端末100-11~100-16を、端末100と称する場合がある。また、基地局200-11~200-13(又は基地局200-1~200-4)を、基地局200と称する場合がある。
【0039】
<端末装置の構成例>
図3は、端末100の構成例を表す図である。
【0040】
端末100は、例えば、自社と契約したMVNOによりサービスの提供を受けることが可能な端末装置である。
【0041】
端末100は、制御部110と通信部120、メモリ130、及びeSIM140を備える。
【0042】
制御部110は、回線品質収集機能部(以下、「回線品質収集部」と称する場合がある。)111と、接続情報収集機能部(以下、「接続情報収集部」と称する場合がある。)112、及び接続先書換機能部(以下、「接続先書換部」と称する場合がある。)113を備える。
【0043】
回線品質収集部111は、接続先の基地局200との間の無線回線の回線品質を収集する。例えば、回線品質収集部111は、接続先の基地局200から送信された信号の受信強度や受信電力などを測定してもよい。また、例えば、回線品質収集部111は、接続先の基地局200から送信されたデータの単位時間あたりのビット数を測定してもよい。単位時間あたりに送受信可能なデータのビット数を、例えば、スループットと称する場合がある。従って、回線品質としては、例えば、受信強度や受信電力、スループットなどがある。
【0044】
回線品質収集部111は、収集した回線品質を、自端末の識別情報とともに、通信部120などを介して、オーケストレータ600へ送信する。
【0045】
接続情報収集部112は、端末100が接続する基地局200の情報を収集する。例えば、端末100が基地局200と接続する際、基地局200から送信された信号に含まれる基地局200の識別情報を収集することで、接続情報を収集する。接続情報は、例えば、端末100が現在接続している基地局200の識別情報である。
【0046】
接続情報収集部112は、収集した接続情報を、自端末の識別情報とともに、通信部120などを介して、オーケストレータ600へ送信する。
【0047】
接続先書換部113は、例えば、通信部120などを介して、オーケストレータ600から接続切替指示を受信すると、受信した接続切替指示に従って、eSIM140に対して、接続先の基地局200の情報を書き換えることを指示する。
【0048】
通信部120は、接続基地局200などを介して、オーケストレータ600との間で通信を行う。例えば、通信部120は、制御部110から出力された回線品質情報や接続情報を、無線信号に変換し、変換後の無線信号を接続基地局200へ送信する。また、例えば、通信部120は、接続基地局200から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号から接続先切替指示などのデータや情報などを抽出し、抽出したデータや情報などを制御部110へ出力する。この際、通信部120は、eSIM140に記憶された接続先の基地局200の情報に従って、基地局200と通信することが可能である。
【0049】
メモリ130は、例えば、各種データや情報などを記憶することが可能なメモリである。
【0050】
eSIM140は、例えば、SIMカードを内蔵し、接続先書換部113からの書き換え指示により、SIMカードに記憶された基地局に関する情報を、接続の切替先の基地局に関する情報に書き換える。この書き換えにより、端末100は、例えば、基地局200-1から基地局200-2へ接続の切り替えが可能となる。
【0051】
図3に示すように、端末100は、CPU(Central Processing Unit)150とDSP(Digital Signal Processor)160を更に備える。
【0052】
CPU150は、例えば、メモリ130に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、制御部110の機能を実現することが可能である。CPU150は、例えば、制御部110(又は、回線品質収集部111、接続情報収集部112、接続先書換部113)に対応する。
【0053】
また、DSP160は、例えば、CPU150からの指示により、通信部120の機能を実現することが可能である。DSP160は、例えば、通信部120に対応する。
【0054】
なお、CPU150は、CPUに代えて、DSPやFPGA(Field Programmable Gate Array)などのプロセッサやコントローラであってもよい。また、DSP160も、DSPに代えて、CPUやFPGAなどのプロセッサやコントローラであってもよい。
【0055】
<オーケストレータの構成例>
図4は、オーケストレータ600の構成例を表す図である。
【0056】
オーケストレータ600は、通信部610、制御部620、及びメモリ630を備える。
【0057】
通信部610は、基地局200などを介して、端末100との間で通信を行う。例えば、通信部610は、端末100から送信された回線品質情報や接続情報などを受信し、受信したこれらの情報を制御部620へ出力する。また、通信部610は、制御部620から出力された接続先切替指示などを端末100へ送信する。
【0058】
制御部620は、自社回線品質収集機能部(以下では、「回線品質収集部」と称する場合がある。)621と、同一エリア端末数推定機能部(以下では、「端末数推定部」と称する場合がある。)622を備える。また、制御部620は、接続先変更後の回線品質予測機能部(以下では、「回線品質予測部」と称する場合がある。)623、及び接続先切替指示機能部(以下では、「接続先切替指示部」と称する場合がある。)624を備える。
【0059】
回線品質収集部621は、自社の端末100から送信された回線品質情報を収集する。例えば、回線品質収集部621は、通信部610などを介して、自社の端末100-11~100-16から送信された回線品質情報を収集する。
【0060】
端末数推定部622は、例えば、メモリ630に記憶された平均スループット対応テーブル(以下、「対応テーブル」と称する場合がある。)631を利用して、回線品質収集部621で収集した回線品質情報から、各基地局200と接続する端末数を推定する。この端末数は、基地局200に接続する自社の端末数と、その基地局200に接続する他社の端末数とを加算した端末数である。推定方法は、動作例で説明する。
【0061】
回線品質予測部623は、端末100が接続する基地局200と、その基地局200から端末100が接続可能な他の基地局との全組み合わせを確認する。
【0062】
例えば、図2の場合、回線品質予測部623は、キャリアAの基地局200-11からキャリアBの基地局200-12の組み合わせと、キャリアAの基地局200-11からキャリアCの基地局200-13の組み合わせを確認する。また、回線品質予測部623は、キャリアBの基地局200-12からキャリアAの基地局200-11の組み合わせと、キャリアBの基地局200-12からキャリアCの基地局200-13の組み合わせを確認する。さらに、回線品質予測部623は、キャリアCの基地局200-13からキャリアAの基地局200-11の組み合わせと、キャリアCの基地局200-13からキャリアBの基地局200-12の組み合わせを確認する。
【0063】
そして、回線品質予測部623は、全組み合わせに対して、例えば、以下の処理を行う。
【0064】
すなわち、回線品質予測部623は、端末100がキャリアAの基地局200-11からキャリアBの基地局200-12へ接続を切り替えたときの基地局200-11に対する回線品質と、基地局200-12に対する回線品質とを、対応テーブル631から推定する。また、回線品質予測部623は、端末100がキャリアAの基地局200-11からキャリアCの基地局200-13へ接続を切り替えたときの基地局200-11に回線品質と、基地局200-13に対する回線品質とを、対応テーブル631から推定する。
【0065】
回線品質予測部623は、他の組み合わせについても、切替元の基地局に対する回線品質と、切替先の基地局に対する回線品質とを、対応テーブル631を利用して推定する。
【0066】
これにより、回線品質予測部623は、端末100の接続先が接続元の基地局200から接続先の基地局200へ切り替わったと仮定した場合の、接続元の基地局200に対する回線品質と、接続先の基地局200に対する回線品質とを推定することが可能となる。推定方法については動作例で説明する。
【0067】
接続先切替指示部624は、回線品質予測部623で取得された全組み合わせに対する回線品質から、回線品質が最大となる組み合わせを1つ選択する。そして、接続先切替指示部624は、選択した組み合わせに含まれる切替先となる基地局200への接続を切り替えることを指示する接続切替指示を、通信部610などを介して、端末100へ送信する。詳細は動作例で説明する。
【0068】
メモリ630は、対応テーブル631を記憶する。対応テーブル631は、例えば、基地局200毎に複数ある。この場合、例えば、対応テーブル631-1は、基地局200-1に対応する対応テーブルであり、対応テーブル631-2は、基地局200-2に対応する対応テーブルとなる。
【0069】
図5は、対応テーブル631の例を表す図である。図5に示す対応テーブル631は、例えば、ある基地局200に対する対応テーブルである。図5において、横軸は基地局200に接続された端末数、縦軸はスループットをそれぞれ表す。図5では、回線品質として、スループットを例にしている。
【0070】
図5に示すように、対応テーブル631において、基地局200に接続する端末数が「1」台のとき、スループットが最も大きく、基地局200に接続する端末数が多くなればなるほど、スループットが低下する。
【0071】
他の基地局200においても、このような曲線を持つ対応テーブル631を持つことになる。ただし、接続端末数が多くてもスループットの低下率は少なかったり、接続端末数が多くなると極端にスループットが低下したりする、など、基地局ごとに特性があるため、他の基地局200の対応テーブル631は、その特性に応じた曲線を有する対応テーブル631となっている。
【0072】
なお、対応テーブル631は、例えば、各キャリアが保有する情報である。そのため、オーケストレータ600は、例えば、各キャリアから事前に、このような対応テーブル631を取得して、メモリ630に記憶されているものとする。
【0073】
図4に戻り、メモリ630には、例えば、端末100に対する通信記録632が記憶される。
【0074】
図4に示すように、オーケストレータ600は、更に、DSP640とCPU650を備える。
【0075】
CPU650は、例えば、メモリ630に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、制御部620の機能を実現することが可能である。CPU650は、例えば、制御部620(又は、回線品質収集部621、端末数推定部622、回線品質予測部623、及び接続先切替指示部624)に対応する。
【0076】
また、DSP640は、例えば、CPU650からの指示により、通信部610の機能を実現することが可能である。DSP640は、例えば、通信部610に対応する。
【0077】
なお、CPU650は、CPUに代えて、DSPやFPGA(Field Programmable Gate Array)などのプロセッサやコントローラであってもよい。また、DSP640も、DSPに代えて、CPUやFPGAなどのプロセッサやコントローラであってもよい。
【0078】
なお、以下では、回線品質として、スループットを例にして説明する。
【0079】
また、以下では、キャリアに接続することと、キャリアが運用する基地局200に接続することとは、同じ意味で用いる場合がある。
【0080】
さらに、以下では、キャリアを切り替えることと、異なるキャリアが運用する基地局200間で接続を切り替えることとは、同じ意味で用いる場合がある。例えば、キャリアAからキャリアBへ接続を切り替えることと、キャリアAが運用する基地局200-1から、キャリアBが運用する基地局200-2へ接続を切り替えることは、同じ意味で用いる場合がある。
【0081】
<動作例>
<1.第1の動作例>
図6(A)から図7(B)は、第1の動作例を表す図である。
【0082】
第1の動作例では、スループットが最も低いキャリアに接続する端末100を、スループットが最も高いキャリアへ接続を切り替える、というアルゴリズムにより行うものとする。
【0083】
図6(A)の例では、自社端末100-11~100-16があり、端末100-11,100-12はキャリアA、端末100-13,100-14はキャリアB、端末100-15,100-16はキャリアCにそれぞれ接続されている。各キャリアA~Cは、図2と同様に、同一地域内で、サービスを各々提供することが可能である。
【0084】
なお、キャリアAには、他社端末として、端末100-21が「50」台接続されている。また、キャリアBには、他社端末として、端末100-22が「10」台接続されている。さらに、キャリアCには、他社端末として、端末100-23が「19」台接続されている。
【0085】
従って、キャリアAには全部で「52」台の端末が接続され、キャリアBには全部で「12」台の端末が接続され、キャリアCには全部で「21」台の端末が接続されている。
【0086】
この場合、キャリアAに接続された端末の台数が「52」台であることから、「52」台の各端末のスループットは、「89.9Mbps」となる。これは、キャリアAが管理する基地局200では、「1」台接続されているときは「110Mbps」、「10」台接続されているとき各端末100は「100Mbps」、「50」台接続されているとき各端末100は「90Mbps」のスループットとなる。この関係は、キャリアAにおける基地局200の対応テーブル631に対応する。図6(A)の場合、「52」台接続されていることから、例えば、各端末100のスループットは、「89.9Mbps」を得ることが可能となる。キャリアAでは、各端末100のスループットは、「89.9Mbps」となる。
【0087】
ただし、オーケストレータ600は、キャリアAに接続する端末100-11,100-12から送信された接続情報と回線品質情報とから、「89.9Mbps」に近い数値を得ることは可能である。ここでは、このスループットは、例えば、キャリアAが測定した正確なスループットとして説明する。
【0088】
同様にして、キャリアBでは、接続端末数が「12」台であることから、「90Mbps」を得る。また、キャリアCでは、接続端末数が「21」台であることから、「88Mbps」を得る。
【0089】
ここで、自社端末100-11~100-16において、平均スループットの閾値は、「89.3Mbps」であるとする。閾値は、例えば、自社が契約するMVNOからサービスの提供を受ける端末100が、そのサービスを受けるために最低限のスループットを表している。従って、自社端末100-11~100-16は、各端末の平均スループットが閾値を超えると、サービスの提供を十分受けることが可能となり、閾値以下のときは、サービスの提供を十分受けることはできない。
【0090】
図6(A)の例では、全自社端末100-11~100-16の平均スループットは「89.3Mbps」(=(89.9Mbps×2+90Mbps×2+88Mbps×2)/6)となる。この平均スループットは、閾値である「89.3Mbps」を超えない。従って、自社端末100-11~100-16は、十分なサービスを受けることができない。そのため、端末100-11~100-16の接続を切り替えるようにする。
【0091】
この場合、上述したように、第1の動作例では、スループットが最も低いキャリアに接続する端末100を、スループットが最も高いキャリアへ接続を切り替える、アルゴリズムを適用する。図6(B)の例では、スループットが最も低いキャリアCに接続された端末100-16を、スループットが最も高いキャリアCへ、その接続を切り替えるようにする。
【0092】
このとき、キャリアBでは、接続端末の台数が「12」台から「13」台へ増加し、キャリアCでは、接続端末の台数が「21」台から「20」台へ減少した。キャリアBでは、接続端末数が「13」台となったため、例えば、スループットが「85Mbps」へ減少した。一方、キャリアCでは、接続端末数が「21」台となったため、スループットが「90Mbps」へ増加した。この場合の全自社端末100-11~100-16の平均スループットは、「87.4Mbps」(≒(89.9Mbps×2+85Mbps×3+88Mbps×1)/6)となる。この平均スループットは、平均スループットの閾値「89.3Mbps」を超えない。
【0093】
この場合、第1の動作例では、図7(A)と図7(B)に示すように、接続の切り替えが行われた端末100-16を、元の状態に戻すように接続を切り替える。すなわち、端末100-16を、キャリアBから元のキャリアCへ接続を切り替えるようにする。そうすると、結局、平均スループットは、図6(A)と同様に、「89.3Mbps」となり、閾値「89.3Mbps」を超えない。
【0094】
第1の動作例に示すように、端末100-16を、あるキャリアから他のキャリアへ接続を切り替えても、全自社端末100の平均スループットが、閾値を超えない場合がある。そのため、第1の動作例では、電波効率の最大化を図ることができない。
【0095】
例えば、ある端末100-16の無線品質や体感品質だけを考慮して、接続基地局を切り替えるようにすると、第1の動作例のように、地域全体において、自社端末100全体の平均スループットが閾値を超えない事態が発生する場合がある。
【0096】
そこで、次に示す第2の動作例がある。
【0097】
<2.第2の動作例>
図8は第2の動作例を表す図である。
【0098】
図8(A)は、図6(A)と同一である。すなわち、キャリアAに接続された端末数は「52」台であり、キャリアAにおいては、各端末100のスループットは「89.9Mbps」となる。また、キャリアBに接続された端末数が「12」台であり、キャリアBにおいては、各端末100のスループットは「90Mbps」となる。さらに、キャリアCに接続された端末数は「21」台であり、キャリアCにおいては、各端末100のスループットは「88Mbps」となる。自社端末100-11~100-16の平均スループットは、「89.3Mbps」となり、閾値「89.3Mbps」を超えない。
【0099】
第2の動作例では、オーケストレータ600は、端末100の接続元と接続先の全組み合わせに対して、組み合わせ毎に、各キャリアA~Cのスループットを求めて、全体の平均スループットを算出する。そして、オーケストレータ600は、平均スループットが最大となる組み合わせを選択する。
【0100】
図8(A)の例では、全組み合わせとして、キャリアAからキャリアBへ、キャリアAからキャリアCへ、キャリアBからキャリアAへ、キャリアBからキャリアCへ、キャリアCからキャリアAへ、及びキャリアCからキャリアBへの6つの組み合わせがある。オーケストレータ600は、これらの組み合わせ全てについて、各キャリアA~Cにおける各端末のスループットを求めて、全体の平均スループットを算出する。そして、オーケストレータ600は、これらの組み合わせの中で、最も平均スループットが高い組み合わせを選択する。図8(A)の例では、図8(B)に示すように、オーケストレータ600は、キャリアBからキャリアAへの組み合わせにおける平均スループットが最も高かったため、この組み合わせを選択している。オーケストレータ600は、キャリアBに接続する自社端末のいずれか一つ、図8(B)の例では、端末100-14に対して、接続基地局をキャリアBの基地局200からキャリアCの基地局200へ切り替えを指示する。そして、端末100-14は、図8(B)に示すように、キャリアAの基地局200へ接続を切り替え、キャリアAの基地局200からサービスの提供を受けることになる。
【0101】
図8(B)の例では、平均スループットは、「89.6Mbps」(≒(3×89Mbps+1×95Mbps+2×88Mbps)/6)となる。この場合、端末100-14をキャリアBからキャリアAへ移動させることで、自社端末100-11~100-16の平均スループットが、閾値を超える結果となった。
【0102】
従って、各自社端末100-11~100-16は、接続切替前と比較して、例えば、平均的にスループットを増加させることが可能である。そのため、ある端末100はより多くの電波を利用し、他の端末100は少ない電波を利用するなどではなく、自社端末100-11~110-16が平均的に電波を利用することが可能となって、電波の利用効率を最大化させることが可能となる。
【0103】
第2の動作例では、オーケストレータ600では、端末100の接続を切り替えたと仮定した場合の、各キャリアA~Cのスループットを、対応テーブル631を利用して、計算(又は推定)する。詳細は、次の<3.第2の動作例を表すフローチャート>で説明する。
【0104】
<3.第2の動作例を表すフローチャート>
図9は第2の動作例を表すフローチャートである。
【0105】
端末100とオーケストレータ600は処理を開始すると(S10)、端末100は、測定したスループットと接続基地局200の識別子などを一定間隔で、オーケストレータ600へ送信する(S11)。例えば、端末100では、以下の処理を行う。
【0106】
すなわち、回線品質収集部111は、接続基地局200から送信された信号に基づいて、スループットを取得する。この場合、回線品質収集部111は、ある時間間隔での平均スループットを計算し、この平均値(又は中央値など)を、測定したスループットとしてもよいし、瞬時スループットを測定したスループットとしてもよい。また、接続情報収集部112は、接続基地局200から送信された信号から接続基地局200の識別子を抽出する。そして、回線品質収集部111は、測定したスループットを、接続情報収集部112は、抽出した接続基地局200の識別子を、それぞれ通信部120などを介して、オーケストレータ600へ送信する。
【0107】
図2の例では、各自社端末100-11~100-16は、測定したスループットと接続基地局200-11~200-13の識別子とを、オーケストレータ600へ送信する。
【0108】
図9に戻り、次に、オーケストレータ600は、同一エリア内の端末100の回線品質を計算する(S12)。
【0109】
例えば、回線品質収集部621は、各端末100の平均スループットを計算する。ここで、端末100から送信された測定スループットが平均スループットの場合は、回線品質収集部621はその測定スループットをそのまま用いる。また、瞬時スループットを測定スループットとして受信したときは、回線品質収集部621は、複数の瞬時スループットに基づいて、平均スループットを計算する。また、回線品質収集部621は、回線品質として、例えば、遅延を計算する。遅延の計算方法は公知の手法でよい。回線品質収集部621は、各端末100の平均スループットを、端末数推定部622へ出力する。
【0110】
例えば、図8(A)の例では、回線品質収集部621は、キャリアAに接続された各端末100-11,100-12からは「89.9Mbps」と同じかこれに近似した数値を得ることが可能である。また、回線品質収集部621は、キャリアBに接続された各端末100-13,100-14からは「90Mbps」と同じがこれに近似した数値を得ることが可能である。さらに、回線品質収集部621は、キャリアCに接続された各端末100-15,100-16からは「88Mbps」と同じがこれに近似した数値を得ることが可能である。このような場合、回線品質収集部621は、キャリアA~Cの平均スループットとして、「89.3Mbps」と同じかこれに近似した数値を得ることが可能である。以下では、図8(A)の例では、自社平均スループットとして、「89.3Mbps」を得たものとして説明する。
【0111】
次に、オーケストレータ600は、同一区域内で、端末100が接続可能な組み合わせパターンを全て列挙する(S13)。
【0112】
例えば、図8(A)の例では、同一区域内にキャリアA~Cの3つのキャリアが存在する。この場合、全ての組み合わせとしては、キャリアAからキャリアB、キャリアAからキャリアCなど、全部で6通りの組み合わせがある。例えば、回線品質収集部621は、同一区域内の各キャリアの基地局200-11~200-13の識別子を内部メモリに保持している。そのため、回線品質収集部621は、受信した接続基地局200の識別子の情報と一致する同一区域内の基地局200が内部メモリに記憶されていれば、その区域内の全キャリアの組み合わせを列挙(又は計算)する。
【0113】
図9に戻り、次に、オーケストレータ600は、全自社端末の平均スループット計算処理(以下、「平均スループット計算処理」と称する場合がある。)を行う(S14)。
【0114】
図10は、平均スループット計算処理の動作例を表すフローチャートである。
【0115】
オーケストレータ600は、平均スループット計算処理を開始すると(S140)、対応テーブル631を用いて、各キャリアの自社以外の端末数を推定する(S141)。
【0116】
例えば、図8(A)の例では、端末数推定部622は、キャリアAに接続する自社以外の端末100-21の端末数を推定する。また、端末数推定部622は、キャリアBに接続する自社以外の端末100-22の端末数を推定する。さらに、端末数推定部622は、キャリアCに接続する自社以外の端末100-23の端末数を推定する。
【0117】
図8(A)では、自社以外の端末数は示されているが、このような端末数は各キャリアにおいて保持されているものの、通常は、他のキャリアへ開示されることはない。
【0118】
そのため、本第1の実施の形態では、オーケストレータ600は、対応テーブル631を用いて、各キャリアについて、自社以外に接続している端末の端末数を推定する。
【0119】
図11は、対応テーブル631のグラフの例を表す図である。例えば、図11に示す対応テーブル631は、キャリアAの基地局200における対応テーブル631の例を表す。横軸は端末数、縦軸はスループットをそれぞれ表す。
【0120】
端末数推定部622は、例えば、以下の処理を行う。
【0121】
すなわち、端末数推定部622は、キャリアAに接続された自社端末の端末数を、回線品質収集部621から取得する。この場合、自社端末100は、端末の識別子と接続基地局の識別子とを送信する(S11)。そのため、回線品質収集部621は、端末の識別子と接続基地局の識別子とに基づいて、キャリア毎に、端末の識別情報をカウントすることで、キャリアAに接続された自社端末の端末数を取得する。端末数推定部622は、自社端末の端末数として、例えば、「7」台を、回線品質収集部621から取得したものとする。
【0122】
この場合、端末数推定部622は、図11に示すように、対応テーブル631の端末数「7」のところに、7台の端末100から取得した平均スループットをプロットする。図11の例では、(X)の範囲に平均スループットがプロットできたとする。
【0123】
そして、端末数推定部622は、平均スループットの範囲(X)と一致する対応テーブル631のグラフの範囲を探索する。すなわち、端末数推定部622は、平均スループットの上限と下限と、対応テーブル631のグラフにおける上限と下限とが、最も一致する部分を探索する。図11の例では、(Y)に示す範囲が探索結果となる。
【0124】
端末数推定部622は、この探索した範囲の部分が、キャリアAに接続する端末数であると推定する。すなわち、図11の例では、端末数推定部622は、探索した範囲(Y)における端末数である「17台」がキャリアAに接続される端末数であると推定する((Z))。従って、端末数推定部622は、推定した端末数「17」から自社端末数「10」を減算した、「10台」がキャリアAに接続された自社以外の端末数であると推定することができる。
【0125】
図11のグラフは、例えば、端末数推定部622の内部メモリに、キャリア毎(又は各キャリアの基地局毎)に記憶されている。端末数推定部622は、回線品質収集部621から、接続基地局200の識別子とともに平均スループットを取得するため、識別子と一致する基地局200の対応テーブル631を内部メモリから読み出すことで、当該基地局200の対応テーブルを読み出すことができる。そして、端末数推定部622は、取得した対応テーブル631を用いて、基地局200に接続された、すなわち各キャリアに接続された自社以外の端末数(又は利用人数)や、各キャリアに接続された全端末数(又は全利用人数)を推定できる。なお、以降では、この全端末数を利用して、処理が行われる。
【0126】
端末数推定部622は、例えば、他のキャリア(キャリアBとキャリアC)についても、各キャリアに接続された自社以外の端末数を、対応テーブル631を用いて、上記の同様に推定する。端末数推定部622は、推定した各キャリアの端末数を、回線品質予測部623へ出力する。
【0127】
なお、対応テーブル631は、横軸を端末数、縦軸をスループットとすると、例えば、図11に示すグラフで表すことができる。以下では、対応テーブル631とグラフとを同じ意味で用いる場合がある。
【0128】
また、対応テーブル631に対して、各基地局200に接続された端末数の上限数が設定されてもよい。例えば、1つの基地局200に上限数と同じ端末数が接続されているとき、その基地局200が利用する電波には上限数の端末100が利用するため、電波の利用効率が必ずしも良いとは言えない。そのため、端末数推定部622は、ある基地局200の接続端末数が上限値になるとき、そのような基地局200に対して接続する端末数を増やさないように処理することも可能である。
【0129】
図10に戻り、次に、オーケストレータ600は、組み合わせパターンのうちの1つについて、接続元キャリアから自社端末100を1台、減らした場合の接続元のキャリアのスループットを、対応テーブル631から計算する(S142)。言い換えると、例えば、オーケストレータ600は、接続基地局から他の基地局へ接続を切り替えたと仮定したときの、接続元の基地局のスループットを対応テーブル631から計算する。本処理は、例えば、図8(B)の例では、自社端末100-14がキャリアBからキャリアAへ接続を切り替えたときのキャリアBのスループットを計算する処理に対応する。
【0130】
例えば、回線品質予測部623は、回線品質収集部621から組み合わせの全パターンの情報を取得し、このうち1つ、例えば、キャリアBからキャリアAへのパターンについて、キャリアBから自社端末100を1台減らした場合のキャリアBのスループットを計算する。
【0131】
図12は、キャリアBの基地局200における対応テーブル631の例を表し、キャリアBにおいて、1台減らした場合のスループットの計算方法の例を表す図である。
【0132】
オーケストレータ600は、例えば、以下のようにして、1台減らした場合のキャリアBのスループットを試算する。
【0133】
すなわち、端末数推定部622は、S141において、各キャリアA~Cに接続された全端末数を推定した。図12の例では、キャリアBに接続された全端末数として「12」台が推定された例を表している。そして、回線品質予測部623は、利用人数「12」に対するスループット、「90Mbps」を得る。そして、回線品質予測部623は、1台端末を減らした場合の、利用人数「11」に対するスループットを、対応テーブル631から得る。図12の例では、「95Mbps」を得る。すなわち、回線品質予測部623は、キャリアBに接続する自社端末100が1台、減少したときのスループット「95Mbps」を得ることができた。
【0134】
このように、回線品質予測部623は、対応テーブル631を利用して、推定された全端末数から1台減らした場合のスループットを得るようにしている。
【0135】
図10に戻り、次に、オーケストレータ600は、接続先キャリアに自社端末100を1台、増やした場合の接続先キャリアのスループットを、対応テーブル631から計算する(S143)。言い換えると、例えば、オーケストレータ600は、接続基地局から他の基地局へ接続を切り替えたと仮定したときの、他の基地局のスループットを対応テーブル631から計算する。本処理は、例えば、図8(B)の例では、自社端末100-14がキャリアBからキャリアAへ接続を切り替えたときのキャリアAのスループットを計算する処理に対応する。
【0136】
図13は、キャリアAにおける対応テーブル631のグラフを表し、キャリアAにおいて、1台増やした場合のキャリアAのスループットの計算方法の例を表す図である。
【0137】
オーケストレータ600は、例えば、以下のようにして、1台増やした場合のキャリアAのスループットを計算する。
【0138】
すなわち、回線品質予測部623は、端末数推定部622で推定されたキャリアAの利用人数「52」に対する、キャリアAのスループットを対応テーブル631から取得する。図13の例では、回線品質予測部623は、利用人数「52」に対するスループット、「89.9Mbps」を得る。そして、回線品質予測部623は、1台増やした場合の、利用人数「53」に対するスループットを、対応テーブル631から得る。図13の例では、「89Mbps」を得る。すなわち、回線品質予測部623は、キャリアAに接続する自社端末100が1台、増えたときのスループット「89Mbps」を得る。
【0139】
このように、回線品質予測部623は、対応テーブル631を利用して、推定された全端末数から1台増やした場合のスループットを得るようにしている。
【0140】
図10に戻り、次に、オーケストレータ600は、自社端末100を1台、その接続を切り替えたと仮定した場合の、全自社端末の平均スループットを計算する(S144)。本処理は、例えば、図8(B)の例では、端末100-14が接続をキャリアBからキャリアAへ切り替えたと仮定した場合のキャリアA~Cに接続された自社端末100-11~100-16の平均スループットを計算する処理に対応する。
【0141】
例えば、回線品質予測部623は、S142とS143で計算したスループットを利用して、平均スループットを計算する。図8(B)の例では、回線品質予測部623は、89.6Mbps(≒(89Mbps×3+95Mbps×1+88Mbps×2)/6)を計算する。「89Mbps」は、S143で計算した数値(図13)、「95Mbps」はS142で計算した数値(図12)に対応する。
【0142】
図10に戻り、オーケストレータ600は、平均スループットを計算すると(S144)、平均スループット計算処理を終了する(S145)。
【0143】
図9に戻り、オーケストレータ600は、次に、全ての組み合わせパターンを計算したか否かを判定する(S15)。S14の処理では、オーケストレータ600は、全ての組み合わせのうち、1つの組み合わせに着目して、その組み合わせにおける平均スループットを計算した。第2の動作例では、オーケストレータ600は、S13で計算した同一区域内における全組み合わせパターンについて、平均スループットを計算するようにしており、本処理では、その全組み合わせパターンを計算したか否かを判定している。
【0144】
例えば、回線品質予測部623は、回線品質収集部621で計算された、同一区域内の全組み合わせの1つ1つについてフラグ情報を内部メモリに記憶し、S14で平均スループットを計算するとフラグ情報をオンにする。回線品質予測部623は、内部メモリに記憶された同一区域内の全組み合わせのフラグ情報がオンになっているか否かにより、本処理を判定してもよい。
【0145】
オーケストレータ600は、全組み合わせを計算していないとき(S15でNo)、計算していない組み合わせについて、平均スループットを計算する(S14)。
【0146】
そして、オーケストレータ600は、全ての組み合わせを計算したとき(S15でYes)、平均スループットが改善された組み合わせが存在するか否かを判定する(S16)。例えば、回線品質予測部623は、S12で計算した平均スループットと、S14で計算した各組み合わせにおける平均スループットとを比較して、各組み合わせの平均スループットのうち、1つでもS12で計算した平均スループットを超えるか否かを判定する。
【0147】
オーケストレータ600は、平均スループットが改善された組み合わせが存在すると判定したとき(S16でYes)、スループットが最大となる組み合わせを1つ選択する(S17)。例えば、回線品質予測部623は、S12で計算した平均スループットを超えるS14で計算した各組み合わせにおける平均スループットのうち、最大のスループットを持つ組み合わせを選択する。例えば、図8(B)の例では、全6パターンある組み合わせのうち、キャリアBからキャリアAへ接続を切り替えたときの平均スループットが最大となった。このため、回線品質予測部623は、キャリアBからキャリアAへの組み合わせを選択する。この場合、回線品質予測部623は、選択した組み合わせの情報を接続先切替指示部624へ出力する。
【0148】
次に、オーケストレータ600は、選択した組み合わせで、端末100の接続を切り替えるよう、当該端末100に対して、eSIM書き換えを指示する(S18)。例えば、接続先切替指示部624は、図8(B)の例では、端末100-14に対して、キャリアBの基地局からキャリアAの基地局へ接続を切り替えるようeSIM書き換え指示を、送信する。書き換え指示には、接続元の基地局の情報と接続先の基地局の情報などが含まれる。
【0149】
書き換え指示を受信した端末100は、例えば、接続先書換部113がeSIM140のSIMカードに記憶された、接続元の基地局の情報を、接続先の基地局の情報に書き換える。これにより、図8(B)の例では、端末100-14は、接続先をキャリアBの基地局からキャリアAの基地局へ切り替えることが可能となる。
【0150】
図9に戻り、オーケストレータ600は、eSIM140の書き換えを指示すると、S11へ移行して、上述した処理を繰り返す。
【0151】
一方、オーケストレータ600は、計算した全組み合わせパターンについての平均スループットが、改善されなかったとき(S16でNo)、一連の処理を終了する(S19)。改善が見られないときは、オーケストレータ600は、接続の切り替えを行っても、切り替え前の平均スループット(S12で計算された平均スループット)を超えないため、接続の切り替えを行わないで、一連の処理を終了させる。
【0152】
以上、説明したように、本第2の動作例においては、オーケストレータ600は、例えば、全組み合わせのパターンの各々の平均スループットに基づいて、その平均スループットが最大となる組み合わせにより、端末100の接続キャリアを切り替えている。従って、平均スループットが最大となる組み合わせにおいて、端末100の接続キャリアを切り替えるようにすれば、スループットは最大になることが予測される。従って、本第2の動作例では、切り替え前と比較して、スループット、すなわち回線品質を向上させることが可能となる。
【0153】
なお、上述した第2の動作例では、S15からS17までの処理は、回線品質予測部623で行われる例について説明した。例えば、S15からS17までの処理は、接続先切替指示部624で行われもよい。この場合、接続先切替指示部624は、回線品質予測部623から各組合せにおける平均スループット(S14)を取得し、回線品質収集部621から全組み合わせの情報(S13)を取得する。接続先切替指示部624は、例えば、内部メモリに全組み合わせの情報を記憶し、平均スループットを取得する毎にフラグ情報を内部メモリに記憶することで、S15の処理を判定することが可能となる。
【0154】
また、上述した第2の動作例では、S142とS143の処理順は逆順でもよい。
【0155】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、オーケストレータ600は、対応テーブル631を用いて、各キャリアの自社以外の端末数を推定した(図10のS141)。これは、例えば、オーケストレータ600は、各キャリアから各基地局200の対応テーブル631に関する情報を取得して、その対応テーブル631に基づいて端末数を推定するようにしていた。本第2の実施の形態は、対応テーブル631を用いることなく、各キャリアに接続された端末数を各キャリアから教えてもらうようにした例である。
【0156】
図14は、本第2の実施の形態における動作例を表すフローチャートである。
【0157】
オーケストレータ600は、平均スループット計算処理を開始すると(S140)、他企業から各キャリアの接続台数を教えてもらい、自社の各キャリアの接続台数と加算して、各キャリアに接続された端末100の全端末数とする(S147)。例えば、端末数推定部622は、各基地局200から送信された、接続中の端末100の端末数を、通信部610などを介して受信する。この場合、各基地局200から送信された端末数が、自社端末100を含む全端末の端末数のときは、端末数推定部622は、受信した端末数をそのまま用いる。一方、端末数推定部622は、自社端末100以外の端末の端末数のときは、受信した端末数と自社端末の端末数とを加算した数を、全端末数とすればよい。
【0158】
本第2の実施の形態では、各キャリアの接続端末数を直接教えてもらっているので、第1の実施の形態の場合と比較して、オーケストレータ600では、平均スループットの計算(S142~S144)の精度を向上させることが可能となる。
【0159】
以上まとめると、付記のようになる。
【0160】
(付記1)
複数の通信事業者が各々運用する基地局装置との接続が切り替え可能な端末装置であって、前記通信事業者と契約している該端末装置を制御するネットワーク制御装置において、
前記端末装置が接続する前記基地局装置に対する回線品質情報を前記端末装置から収集する回線品質収集部と、
前記複数の基地局装置の各々の回線品質情報と前記複数の基地局装置の各々に接続する端末数との関係を表す対応テーブルを記憶するメモリと、
前記端末装置が接続する前記基地局装置と、該基地局装置から前記端末装置が接続可能な他の前記基地局装置との全組み合わせに対して、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報とを、前記端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記対応テーブルから取得する回線品質予測部と、
最も前記回線品質情報が高い組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する接続先切替指示部と
を備えることを特徴とするネットワーク制御装置。
【0161】
(付記2)
更に、端末数推定部を備え、
前記端末数推定部は、前記ネットワーク制御装置により制御可能な第1及び第2の端末装置が前記基地局装置と前記他の基地局装置にそれぞれ接続された場合において、
前記基地局装置に接続する前記第1の端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第1の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第1の合計端末数を、前記基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第1の対応テーブルから取得し、
前記他の基地局装置に接続する前記第2の端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記他の基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第2の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第2の合計端末数を、前記他の基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第2の対応テーブルから取得し、
前記回線品質予測部は、前記第1の合計端末数に基づいて、前記基地局装置に対する前記回線品質情報を前記第1の対応テーブルから取得し、前記第2の合計端末数に基づいて、前記他の基地局装置に対する前記回線品質情報を前記第2の対応テーブルから取得する
ことを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0162】
(付記3)
前記回線品質予測部は、前記第1の合計端末数を「-1」にしたときの前記回線品質情報を前記第1の対応テーブルから取得し、前記第2の合計端末数を「+1」にしたときの前記回線品質情報を前記第2の対応テーブルから取得することを特徴とする付記2記載のネットワーク制御装置。
【0163】
(付記4)
前記回線品質予測部又は前記接続先切替指示部は、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報との平均が最も高い組み合わせを選択し、
前記接続先切替指示部は、選択した組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を送信することを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0164】
(付記5)
前記回線品質収集部は、複数の前記端末装置がそれぞれ接続された前記複数の基地局装置に対する回線品質情報を前記複数の端末装置からそれぞれ収集し、
前記回線品質予測部は、前記全組み合わせの各々について、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報の平均が、収集した前記回線品質情報の平均よりも高いとき、平均が最も高い組み合わせを選択することを特徴とする付記4記載のネットワーク制御装置。
【0165】
(付記6)
前記端末装置は、第1の通信事業者が運用する第1の基地局装置と、第2又は第3の通信事業者がそれぞれ運用する第2又は第3の基地局装置との接続が切り替え可能であり、
前記回線品質収集部は、前記端末装置が接続する前記第1の基地局装置に対する回線品質情報を収集し、
前記対応テーブルは、前記第1の基地局装置において回線品質情報と前記第1の基地局装置に接続する端末数との関係を表す第1の対応テーブルと、前記第2の基地局装置において回線品質情報と前記第2の基地局装置に接続する端末数との関係を表す第2の対応テーブルと、前記第3の基地局装置において回線品質情報と前記第3の基地局装置に接続する端末数との関係を表す第3の対応テーブルとを含み、
前記回線品質予測部は、前記端末装置が前記第1の基地局装置から前記第2の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記第1の基地局装置に対する前記第1の回線品質情報と前記第2の基地局装置に対する第2の回線品質情報とを、前記第1及び第2の対応テーブルから夫々取得し、前記端末装置が前記第1の基地局装置から前記第3の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記第1の基地局装置に対する前記第1の回線品質情報と前記第3の基地局装置に対する第3の回線品質情報とを前記第1及び第3の対応テーブルから夫々取得し、
前記接続切替指示部は、前記第1の回線品質情報と前記第2の回線品質情報の組み合わせと、前記第1の回線品質情報と前記第3の回線品質情報の組み合わせのうち、最も回線品質情報が高い組み合わせの前記第2又は第3の基地局装置への接続を指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する
ことを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0166】
(付記7)
前記複数の基地局装置の各々の前記対応テーブルは、前記複数の基地局装置を運用する複数の通信事業者からそれぞれ取得したテーブルであることを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0167】
(付記8)
更に、端末数推定部を備え、
前記端末数推定部は、前記ネットワーク制御装置により制御可能な第1及び第2の端末装置が前記基地局装置と前記他の基地局装置にそれぞれ接続された場合において、
前記基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第1の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第1の合計端末数を、第1の通信事業者が運用する前記基地局装置から取得し、
前記他の基地局装置に接続する前記第2の端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記他の基地局装置に接続する、前記通信事業者と契約している前記第2の端末装置の端末数と前記通信事業者と契約していない端末装置の端末数との第2の合計端末数を、第2の通信事業者が運用する前記他の基地局装置から取得し、
前記回線品質予測部は、前記基地局装置に対する前記回線品質情報を、前記第1の合計端末数に基づいて、前記基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第1の対応テーブルから取得し、前記他の基地局装置に対する前記回線品質情報を、前記第2の合計端末数に基づいて、前記他の基地局装置における端末数と回線品質情報との対応関係を示す第2の対応テーブルから取得する
ことを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0168】
(付記9)
前記複数の基地局装置は同一区域内に配置されることを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0169】
(付記10)
前記回線品質情報は、単位時間で送受信可能なデータのビット数を表す情報であることを特徴とする付記1記載のネットワーク制御装置。
【0170】
(付記11)
複数の通信事業者が各々運用する基地局装置との接続が切り替え可能な端末装置であって、前記通信事業者と契約している該端末装置を制御するネットワーク制御装置における制御方法であって、
前記複数の基地局装置の各々の回線品質情報と前記複数の基地局装置の各々に接続する端末数との関係を表す対応テーブルをメモリに記憶し、
前記端末装置が接続する前記基地局装置に対する回線品質情報を前記端末装置から収集し、
前記端末装置が接続する前記基地局装置と、該基地局装置から前記端末装置が接続可能な他の前記基地局装置との全組み合わせに対して、前記端末装置が前記基地局装置から前記他の基地局装置へ接続を切り替えたときの前記基地局装置に対する回線品質情報と前記他の基地局装置に対する回線品質情報とを、前記端末装置から収集した前記回線品質情報に基づいて、前記対応テーブルから取得し、
最も前記回線品質情報が高い組み合わせの前記他の基地局装置への接続の切り替えを指示する接続切替指示を、前記端末装置へ送信する
ことを特徴とする制御方法。
【符号の説明】
【0171】
10:通信システム
100(100-11~100-16,100-21~100-25,100-31~100-33):端末装置
110:制御部 111:回線品質収集機能部
112:接続情報収集機能部 113:接続先書換機能部
120:通信部 140:eSIM
200(200-1~200-4,200-11~200-13):基地局装置
600(600-1,600-3):オーケストレータ(ネットワーク制御装置)
610:通信部 620:制御部
621:自社回線品質収集機能部 622:同一エリア端末数推定機能部
623:接続先変更後の回線品質予測機能部
624:接続先切替指示機能部 630:メモリ
631:平均スループット対応テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14