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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】粉体状プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 127/12 20060101AFI20230111BHJP
   C09D 181/06 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230111BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C09D127/12
C09D181/06
C09D5/03
C09D5/00 D
C09D7/61
B32B15/082 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037540
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137848
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】中谷 安利
(72)【発明者】
【氏名】今田 博丈
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524663(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163913(WO,A1)
【文献】特許第5967230(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 -10/00,101/00-201/10
B32B 15/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が5~100μmである溶融性フッ素樹脂粉末及びポリエーテルサルフォン粉末を含み、
前記溶融性フッ素樹脂粉末と前記ポリエーテルサルフォン粉末との重量比は50:50~95:5であり、更に、平均粒径が0.1~50μmである硫酸バリウム及び炭酸カルシウムより選択される少なくとも1種を、溶融性フッ素樹脂粉末の固形分に対し、1~20質量%含有することを特徴とする、粉体状プライマー組成物。
【請求項2】
溶融性フッ素樹脂のメルトフローレートが0.1~50g/10分である、請求項1に記載の粉体状プライマー組成物。
【請求項3】
溶融性フッ素樹脂がパーフルオロポリマーである、請求項1または2に記載の粉体状プライマー組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の粉体状プライマー組成物から形成されるプライマー皮膜。
【請求項5】
請求項4に記載のプライマー皮膜の上に、溶融性フッ素樹脂を含む皮膜が設けられた積層体。
【請求項6】
金属基材上に請求項5に記載の積層体が設けられた塗装物品。
【請求項7】
金属基材が配管、パイプ又はダクトであり、その内面に請求項5に記載の積層体が設けられた塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体状プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フッ素樹脂がもつ優れた耐熱性、耐薬品性、難燃性等を利用し、化学工場や半導体工場における耐食ライニング用コーティング材料として、フッ素樹脂、中でもパーフルオロポリマーが広く用いられている。しかし、パーフルオロポリマーは、金属との密着性に劣るため、多くの場合、パーフルオロポリマーからなるトップコート層の下塗り層として金属基材への密着性に優れたプライマー層を金属基材の表面に設けている。
【0003】
従来、各種金属基材と、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)粒子やテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粒子等の溶融性パーフルオロポリマーを主成分とする膜厚50μm以上のトップコート層とを接着させる、プライマーは種々知られている。例えば、有機溶剤を分散媒とするプライマーや、アミド系樹脂をバインダー樹脂の主成分として含む粉体状プライマーなどがある。
【0004】
特許文献1には、アミド基含有性高分子化合物(A)と、抗酸化性物質(B)と、フッ素樹脂(C)とからなる液状塗料組成物が開示されている。具体的には、ポリアミドイミドを用いた有機溶剤系プライマー組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、アミドイミド樹脂、イミド樹脂、エーテルイミド樹脂又はポリエーテルサルフォン樹脂である高分子材料、及び、平均粒径が5~30μmである溶融性フッ素樹脂を、特定比率で配合して得られるプライマー組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、アミド基及び/又はイミド基を有する高分子化合物(A)、抗酸化性物質(B)、及び、 フッ素樹脂(C)を含む粉体状プライマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2004/048489号
【文献】特開2008-45140号公報
【文献】国際公開第2009/119493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、パーフルオロポリマー層を含む積層皮膜においてブリスターの発生を抑制することができる粉体状プライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、平均粒径が5~100μmである溶融性フッ素樹脂粉末及びポリエーテルサルフォン粉末を含み、前記溶融性フッ素樹脂粉末と前記ポリエーテルサルフォン粉末との重量比は50:50~95:5であり、更に、平均粒径が0.1~50μmである硫酸バリウム及び炭酸カルシウムより選択される少なくとも1種を、溶融性フッ素樹脂粉末の固形分に対し、1~20質量%含有することを特徴とする、粉体状プライマー組成物である。
【0010】
溶融性フッ素樹脂のメルトフローレートは、0.1~50g/10分であることが好ましい。
溶融性フッ素樹脂は、パーフルオロポリマーであることが好ましい。
【0011】
本開示は、上記粉体状プライマー組成物から形成されるプライマー皮膜でもある。
本開示は、上記プライマー皮膜の上に、溶融性パーフルオロポリマーを含む皮膜が設けられた積層体でもある。
【0012】
本開示は、金属基材上に上記積層体が設けられた塗装物品でもある。
本開示は、金属基材が配管、パイプ又はダクトであり、その内面に上記積層体が設けられた塗装物品でもある。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、積層塗膜においてブリスターの発生を抑制することができる、粉体状プライマー組成物を提供することができる。ついては、溶融性パーフルオロポリマー皮膜の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示の粉体状プライマー組成物は、平均粒径が5~100μmである溶融性フッ素樹脂粉末及びポリエーテルサルフォン粉末を含み、前記溶融性フッ素樹脂粉末と前記ポリエーテルサルフォン(PES)粉末との重量比は50:50~95:5であることを特徴とする。
【0015】
プライマー組成物において、液状プライマーとする場合には、水系プライマーとすることが望まれるが、水を分散媒とするプライマー組成物では、溶融性フッ素樹脂粒子の分散安定性に課題がある。また、アミド系樹脂やイミド系樹脂の粉末をバインダー樹脂の主成分として含む粉体状プライマー組成物では、トップコート層との積層塗膜において、ブリスターが発生しやすいという課題があった。
そこで、本開示は、バインダー樹脂として、PES粉末を用いると、ブリスターの発生を抑制できることを見出したものである。ブリスターは、積層塗膜の密着性が十分でない場合等に、積層塗膜内に、水蒸気等の水分が侵入することによって発生する塗膜の膨れであるが、PESは溶融流動性に優れるために金属基材と高い密着力を確保しやすく、よって、水分の透過性が小さくなるため、ブリスターの発生を抑制できる。
【0016】
上述の通り、本開示の粉体状プライマー組成物は、耐熱性樹脂粉末として、ポリエーテルサルフォン(PES)粉末を使用する。
【0017】
PESは、下記一般式:
【0018】
【化1】
【0019】
で表される繰り返し単位を有する重合体からなる樹脂である。
【0020】
PESとしては特に限定されず、例えば、ジハロジフェニル化合物と二価フェノール化合物を重縮合させるか、あるいは、二価フェノールのアルカリ金属二塩とジハロジフェニル化合物とを重縮合させることにより得られるものが好ましく用いられる。
【0021】
前記ジハロジフェニル化合物としては、スルホン基を有するジハロジフェニル化合物、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンなどのジハロジフェニルスルホン類、1,4-ビス(4-クロルフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-フルオロフェニルスルホニル)ベンゼンなどのビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ベンゼン類、4,4’-ビス(4-クロルフェニルスルホニル)ビフェニル、4,4’-ビス(4-フルオロフェニルスルホニル)ビフェニルなどのビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ビフェニル類、などが挙げられる。中でも入手が容易であることから、ジハロジフェニルスルホン類が好ましく、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、または4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンがより好ましく、特に、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが好ましい。これらのジハロジフェニル化合物は、二種類以上を混合して用いることもできる。
【0022】
前記二価フェノール化合物としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’-ビフェノールの他に、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジフェニルスルホン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシジフェニルエーテル類、あるいはそれらのベンゼン環の水素原子の少なくとも一つが、メチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの低級アルコキシ基、あるいは塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。特に価格と入手の容易性から、ハイドロキノン、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニルプロパン)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、または4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンが好ましく、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンが特に好ましい。上記の二価フェノール化合物は、二種以上混合して用いていてもよい。
【0023】
本開示で用いられるPESは、二価フェノール化合物とジハロジフェニルスルホン化合物が実質上等モル量で使用されて重縮合されたものが好ましい。
【0024】
PES粉末の平均粒径は、0.1~50μmであることが好ましく、1~30μmであることがより好ましい。PES粒子の平均粒径がこの範囲であれば、金属基材との密着性と塗装性を両立することが可能となる。
【0025】
上記平均粒径は、レーザー回析法により測定する値である。具体的には、マイクロトラック社製MT-3300IIにより測定される体積基準のメジアン径である。
【0026】
本開示に用いる上記溶融性フッ素樹脂としては、単量体成分として、例えば、クロロトリフルオロエチレン等のクロロフルオロビニル単量体;トリフルオロエチレン等のフルオロビニル単量体;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のパーフルオロ単量体等を1種又は2種以上用いて重合することにより得られるもの等が挙げられる。上記単量体成分としては、更に、エチレン、プロピレン等のビニル単量体の1種又は2種以上を含むものであってもよい。上記パーフルオロ単量体は、主鎖が炭素原子及びフッ素原子並びに場合により酸素原子から構成され、CH又はCHを有しないものであり、パーフルオロビニル単量体及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単量体を含むものである。上記酸素原子は、通常、エーテル酸素である。
【0027】
上記溶融性フッ素樹脂としては、また、上記単量体成分とともに少量を共重合させるコモノマーとして、水酸基、カルボニル基等の官能基を有する単量体を用いてもよく、環状の構造を有する単量体を用いてもよい。上記環状の構造としては、例えば、環状アセタール 構造等の環状エーテル構造を有するもの等が挙げられ、好ましくは上記環状エーテル構造を構成する少なくとも2個の炭素原子が上記溶融性フッ素樹脂の主鎖の一部となっているものである。
【0028】
上記溶融性フッ素樹脂としては、例えば、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のアルキレン/フルオロアルキレン共重合体;テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕等のパーフルオロポリマーが挙げられる。上記パーフルオロポリマーは、上記パーフルオロ単量体を単量体成分とするものである。
【0029】
上記溶融性フッ素樹脂としては、用途により異なるが、上記パーフルオロポリマーが好ましい。上記パーフルオロポリマーとしては、コモノマーとしてテトラフルオロエチレンを用いて共重合されたものがより好ましく、その他のコモノマーとしての上記パーフルオロ単量体としては特に限定されない。特に、FEP又はPFAが、基材である金属との密着においても、トップコート層であるパーフルオロポリマー皮膜またはラミネートされたパーフルオロポリマーフィルムとの層間密着においても好ましい結果が得られるという点で好適である。
【0030】
上記溶融性フッ素樹脂としては、溶融性であることが必要である。溶融性であると、後述の焼成により溶融して成膜することができる。
【0031】
上記溶融性フッ素樹脂の溶融性は、一般に、流れ性の指標としてMFRで表される。MFRは、ASTMD3159に従って、5Kgの荷重で直径2mmのノズルから10分間に押し出された重量で示すものである。MFRは、上記溶融性フッ素樹脂がPFA、FEP等のパーフルオロポリマーの場合、372℃で測定し、ETFEの場合、297℃で測定する。
【0032】
上記溶融性フッ素樹脂のMFRは、0.1~50g/10分であることが好ましい。
上記メルトフローレートの範囲内であれば、得られるプライマー皮膜と溶融性パーフルオロポリマー皮膜との密着性が、溶融性フッ素樹脂の流動特性に起因して一層向上する。
【0033】
特に、上記パーフルオロポリマーのMFRは、1~40g/10分であることが好ましい。より好ましい下限は、10g/10分であり、より好ましい上限は、30g/10分である。
上記メルトフローレートの範囲内であれば、層間密着性と耐食性を両立することが可能となる。
【0034】
上記溶融性フッ素樹脂は、上述の分子量を調整することにより、上述の範囲内のメルトフローレートを有するものとすることができる。
【0035】
上記溶融性フッ素樹脂粉末は、その平均粒径が、5~100μmである。平均粒径がこの範囲から外れると、塗装性や塗着効率が低下することがある。また、ブリスターの発生を抑制することが困難となることがある。上記平均粒径の好ましい下限は、10μmであり、より好ましい下限は、15μmであり、さらに好ましい下限は、20μmである。好ましい上限は、90μmである。
【0036】
上記平均粒径は、レーザー回析法により測定する値である。具体的には、マイクロトラック社製MT-3300IIにより測定される体積基準のメジアン径である。
【0037】
上記溶融性フッ素樹脂粉末の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、乳化重合等の従来公知の重合方法等により共重合により得ることができる。共重合により得られる溶融性フッ素樹脂は、上述の範囲内の平均粒径を有する溶融性フッ素樹脂粉末となるように、必要に応じて粉砕する。上記粉砕の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記乳化重合法で得られた溶融性フッ素樹脂乾燥粉末をロールでシート状に圧縮し、粉砕機により粉砕し分級する方法等が挙げられる。
【0038】
上記溶融性フッ素樹脂粉末とポリエーテルサルフォン粉末との固形分質量比は、50:50~95:5である。上記溶融性フッ素樹脂粉末が少なすぎると、得られるプライマー皮膜と溶融性フッ素樹脂皮膜との密着性が低下して層間剥離が起こり、多すぎると、上記プライマー皮膜と被塗装物との密着力が低下する。上記固形分質量比の好ましい下限は、70:30であり、より好ましい下限は76:24であり、好ましい上限は、85:15である。
【0039】
本開示の粉体状プライマー組成物は、更に、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩粉末より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらを含有すると、積層塗膜のブリスターの発生がより抑制される。
【0040】
上記金属塩粉末の平均粒径は、0.1~50μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましい。耐熱性樹脂粒子の粒子径がこの範囲であれば、被塗装物とパーフルオロポリマーを含むトップコート層との高い密着力を確保することが可能である。
【0041】
上記平均粒径は、レーザー回析法により測定する値である。具体的には、マイクロトラック社製MT-3300IIにより測定される体積基準のメジアン径である。
【0042】
上記金属塩粉末は、本開示の粉体状プライマー組成物に含有させる場合は、上記溶融性フッ素樹脂粉末の固形分に対し、1~20質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、3質量%であり、より好ましい上限は、10質量%である。
【0043】
本開示の粉体状プライマー組成物は、熱安定剤を含有するものであってもよい。本開示の粉体状プライマー組成物は、上記熱安定剤を含有することにより、溶融性フッ素樹脂塗膜形成における加熱等による上記溶融性フッ素樹脂粉末の酸化を防止して熱劣化を軽減することができ、その結果、密着安定性を一層向上させることができる。
【0044】
上記熱安定剤としては、上記溶融性フッ素樹脂粉末の酸化を防止する点から、アミン系酸化防止剤及び/又は有機硫黄含有化合物であることが好ましい。
上記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の芳香族性炭化水素基を分子中に有する芳香族アミンが挙げられ、例えば、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物等のフェニレンジアミン系化合物;ジナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、フェニルシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、スチレン化ジフェニルアミン等のその他の芳香族第2級アミン化合物等が挙げられる。
【0045】
上記アミン系酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾールを基本骨格とする化学構造を有するベンゾトリアゾール系化合物が挙げられ、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記ベンゾトリアゾール系化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-テトラオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0046】
上記有機硫黄含有化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-(N,N′-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピルベンゾチアゾール-2-スルフェン等のメルカプトベンゾチアゾール系化合物;2-メルカプトイミダゾリン等のメルカプトイミダゾリン系化合物;ペンタメチレンジチオカルバミン酸、ピペコリルジチオカルバミン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸類等が挙げられ、これらは、例えば、Zn、Sn、Cd、Cu、Fe等の金属塩;ピペリジン塩、ピペコリル塩等の有機塩等であってもよい。
【0047】
上記有機硫黄含有化合物としては、例えば、チウラム系化合物が挙げられ、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラムモノスルフィド;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド;ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のその他のチウラム系化合物等が挙げられる。
上記有機硫黄含有化合物としては、また、例えば、窒素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が炭素数1~6の飽和又は不飽和の炭化水素基に置換されていてもよいチオ尿素が好ましく、チオ尿素、N,N′-ジエチルチオ尿素、N,N′-ジブチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、N,N′-ジフェニルチオ尿素等のチオ尿素誘導体等であってもよい。
【0048】
上記熱安定剤としては、なかでも、本開示の粉体状プライマー組成物や溶融性フッ素樹脂塗料に含まれる溶融性フッ素樹脂の融点付近の温度以上、例えば約250℃以上の高温における安定性が求められる点から、芳香環含有化合物が好ましく、芳香族アミン、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びメルカプトベンゾイミダゾール系化合物等がより好ましい。
【0049】
上記熱安定剤は、従来公知の方法により製造することができるが、通常、市販品を用いることができる。
上記熱安定剤としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組み合わせて用いる場合、上述した熱安定剤の質量は、組み合わせた全ての熱安定剤の合計質量である。
【0050】
上記熱安定剤は、本開示の粉体状プライマー組成物に含有させる場合は、熱安定効果と、上記熱安定剤の分解による発泡を防止する観点から、上記溶融性フッ素樹脂粉末の固形分に対し、0.001~5質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、0.003質量%であり、より好ましい上限は、2質量%である。
【0051】
本開示の溶融性フッ素樹脂塗料用プライマーは、必要に応じ、更に、添加剤を含有するものであってもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、一般的な塗料のプライマーに用いられるもの等が挙げられる。上記添加剤は、例えば、顔料、充填材、レベリング剤、固体潤滑剤、水分吸収剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0052】
上記添加剤として、具体的には、例えば、カーボン、酸化チタン、弁柄、マイカ等の着色顔料、防錆顔料、焼成顔料、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー 、タルク、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化珪素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、クリソベリル、トパーズ、ベリル、ガーネット、ガラス、ガラス粉、マイカ粉、金属粉(金、銀、銅、白金、ステンレス、アルミニウム等)、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。
【0053】
上記添加剤の含有量は、上記粉体状プライマー組成物に対し、0~10.0質量%が好ましく、 0~5.0質量%がより好ましい。
【0054】
本開示の粉体状プライマー組成物は、例えば、従来公知の方法等により調製される。例えば、上述の溶融性フッ素樹脂粉末及びポリエーテルサルフォン粉末、並びに、必要に応じて、熱安定剤等を、混合機により混合することで調製できる。混合機としては特に限定されないが、通常のV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いること ができる。
【0055】
本開示の粉体状プライマー組成物は、溶融性パーフルオロポリマー皮膜の下層に設けられるプライマー皮膜を形成するためのものであり、溶融性パーフルオロポリマー皮膜の下層に直接接するように設けられるプライマー皮膜を形成するためのものであることが好ましい。なお、溶融性パーフルオロポリマー皮膜の下層とは、当該溶融性パーフルオロポリマー皮膜と、被塗装物(基材)との間を意味する。上記溶融性パーフルオロポリマー皮膜については後述する。
また、本開示の粉体状プライマー組成物は、被塗装物に直接塗布されることが好ましい。
【0056】
本開示の粉体状プライマー組成物を被塗装物上に塗布し、適宜加熱を行うことにより、プライマー皮膜を形成することができる。
【0057】
上記被塗装物としては溶融性パーフルオロポリマー皮膜が形成され得るものであれば特に限定されない。
本開示の粉体状プライマー組成物は、金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されるか、又は、耐熱性樹脂からなる層(以下、耐熱層ともいう)の上に塗布されることが好ましく、金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されることがより好ましい。
【0058】
上記金属としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属単体及びこれらの合金類等が挙げられる。上記合金類としては、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。上記非金属無機材料としては、ホーロー、ガラス、セラミック等が挙げられる。 上記基材は、金属又は非金属無機材料とともに、他の材料を含んでもよい。
【0059】
上記基材としては、金属からなるものが好ましく、アルミニウム又はステンレスからなるものがより好ましい。
【0060】
本開示の粉体状プライマー組成物は、特に、金属基材に好適に使用される。上記金属基材としては、具体的には、配管、パイプ、ダクト等の工業部品関連用途等が挙げられる。これらの内面に、粉体状プライマー組成物を塗布する。本開示の粉体状プライマー組成物を、上記金属基材に使用することは、高い接着力を確保することができる点で有利である。
【0061】
上記被塗装物には、必要に応じて、予め洗浄、サンドブラスト等の表面処理を施してもよい。上記サンドブラストは、ケイ砂、アルミナ粉等の砂を吹きつけるものであり、被塗装物の表面を粗面化するので、密着性を向上する点から、行うことが好ましい。
【0062】
上記被塗装物への塗布の方法としては特に限定されず、被塗装物の形態等により適宜選択することができ、例えば、静電塗装等の従来公知の方法等が挙げられる。上記塗布は、乾燥膜厚が20~150μmとなるように行うことができる。上記塗布時に加熱するようにしてもよく、例えば、60~120℃で塗布を行ってもよい。
【0063】
本開示は、本開示の粉体状プライマー組成物から形成されるプライマー皮膜にも関する。
本開示のプライマー皮膜は、被塗装物及び溶融性パーフルオロポリマー皮膜との密着性に優れる。
【0064】
上記プライマー被膜の膜厚は、20~150μmであることが好適である。より好ましくは50~100μmである。
【0065】
上記プライマー皮膜の上に、溶融性パーフルオロポリマー塗料を塗布し、加熱焼成することにより、溶融性パーフルオロポリマー皮膜を形成することができる。
本開示は、プライマー皮膜の上に、溶融性パーフルオロポリマーを含む皮膜が設けられた積層体でもある。
【0066】
上記溶融性パーフルオロポリマー塗料は、溶融性パーフルオロポリマーを主成分とするものであり、必要に応じて適宜添加剤等のその他の成分を含有するものであってよく、特に限定されない。
【0067】
上記溶融性パーフルオロポリマー塗料に使用される溶融性パーフルオロポリマーとしては、コモノマーとしてテトラフルオロエチレンを用いて共重合されたものがより好ましく、その他のコモノマーとしての上記パーフルオロ単量体としては特に限定されない。
また、粉体状プライマー組成物中の溶融性フッ素樹脂と同種のものを使用しても、異なるものを使用するようにしてもよい。
【0068】
上記溶融性パーフルオロポリマー塗料は、粉体塗料であることが好ましい。上記粉体塗料の製法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法等が挙げられ、必要に応じて溶融性パーフルオロポリマー及びその他の成分を溶融混練した後粉砕する方法、上述の溶融性パーフルオロポリマー粉末の粉砕方法について説明した方法により粉砕し分級する方法等を用いることができる。
ただし、フッ素樹脂粒子の液体分散液を噴霧乾燥する工程を経て粉体塗料を製造する方法では、液体分散液を安定化させるための界面活性剤が粉体塗料、さらには、塗布された皮膜に残存することがある。このような場合には、パーフルオロポリマー皮膜の耐熱性や耐薬品性が損なわれるために好ましくない。
【0069】
上記粉体塗料は、一般的に膜厚が20~100μmである薄塗り皮膜を静電塗装法により形成するもの、一般的に膜厚が100~1500μmである厚塗り皮膜を静電塗装法により形成するもの、一般的に膜厚が1000~5000μmである厚塗り皮膜をロトライニング法により形成するものなどとして、使用することができる。静電塗装法によって厚塗り皮膜を得るには、粉体塗料を被塗装物に塗布した後、加熱焼成して製膜させる工程を2回以上繰り返すことが多い。
【0070】
薄塗り皮膜を静電塗装法により形成する粉体塗料に含まれる溶融性パーフルオロポリマーは、平均粒径が5~50μmであることが好ましい。平均粒径が5μm未満であると、塗布する場合に静電反発を生じやすく、平滑皮膜を得ることが困難となる傾向があり、平均粒径が50μmを超えても、平滑皮膜を得ることが困難となる傾向がある。より好ましい平均粒径の範囲は、10~40μmである。
【0071】
厚塗り皮膜を静電塗装法により形成する粉体塗料に含まれる溶融性パーフルオロポリマーは、平均粒径が20~100μmであることが好ましい。平均粒径が20μm未満であると、厚塗り皮膜を得ることが困難となる傾向があり、平均粒径が100μmを超えると、塗着効率が低下する傾向がある。より好ましい平均粒径の範囲は、30~90μmである。
【0072】
厚塗り皮膜をロトライニング法により形成する粉体塗料に含まれる溶融性パーフルオロポリマーは、平均粒径が150~500μmであることが好ましい。平均粒径が150μm未満、もしくは、平均粒径が500μmを超えると、皮膜中に気泡が残りやすい傾向があり、平滑皮膜を得ることが困難となる傾向がある。より好ましい平均粒径の範囲は、200~450μmである。
【0073】
上記粉体塗料の平均粒径は、レーザー回析法により測定する値である。具体的には、マイクロトラック社製MT-3300IIにより測定される体積基準のメジアン径である。
【0074】
本開示に用いる粉体塗料は、被塗装物に塗布した後、加熱焼成して製膜するなどにより施工された上で、耐食ライニング等として、様々な用途に用いることができる。本開示に用いる粉体塗料は、本開示の範囲内において、上述するように平均粒径、メルトフローレート等を調整することにより、上記塗布方法や焼成後の膜厚を得ることに好適な粉体塗料にすることができる。
【0075】
本開示は、被塗装物上に、上記被塗装物上に形成された本開示のプライマー皮膜と、上記プライマー皮膜上に形成された溶融性パーフルオロポリマー皮膜とを有する積層体が設けられた塗装物品にも関する。
本開示の塗装物品は、上記プライマー皮膜と上記被塗装物及び上記溶融性パーフルオロポリマー皮膜との密着性に優れる。また、上記積層塗膜のブリスターの発生が抑制されている。
特に、本開示は、金属基材上に上記積層体が設けられた塗装物品でもある。金属基材である、配管、パイプ、ダクト等の内面に上記積層体が設けられた塗装物品とすることが好ましい。
【0076】
上記被塗装物、上記プライマー皮膜、上記溶融性パーフルオロポリマー皮膜については、上述したとおりである。
【0077】
本開示の塗装物品においては、上記被塗装物と上記プライマー皮膜とが直接接していることが好ましい。また、上記プライマー皮膜と上記パーフルオロポリマー皮膜とが直接接していることが好ましい。また、上記溶融性パーフルオロポリマー皮膜上に更に層が設けられていてもよいが、上記溶融性パーフルオロポリマー皮膜が最外層であることが好ましい。
【実施例
【0078】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。
以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0079】
(実施例1)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)700g、ポリエーテルサルフォン粉末(平均粒径:10μm)300gを混合して、PFA粉体状プライマー組成物を得た。
脱脂されたSUS304基材(200mm×200mm×1.5mm)に80メッシュのアルミナとしてトサエメリー(宇治電化学工業社製)を0.5MPaの圧力でブラストを行い、エアーでブラスト粉を除去した後に、上記により得たPFA粉体状プライマー組成物を静電粉体塗装法にて膜厚が30~50μmとなるように塗装し、350℃で30分間焼成した。
次いで、PFA粉体塗料(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)を静電塗装し、350℃で30分間焼成を行う工程を繰り返して、約300μmの厚みの塗装膜を持つ塗装物品を得た。
この塗装物品を、山崎式ライニングテスターによる浸透試験(試験液:純水、内部温度:100℃、外部温度:20℃、試験時間:24時間)により、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0080】
(実施例2)
PFA粉(A)に代えて、FEP粉末(MFR:19g/10min、平均粒径:45μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してFEP粉体状プライマー組成物を得た。
そして、PFA粉体塗料に代えて、FEP粉体塗料(MFR:19g/10min、平均粒径:45μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0081】
(実施例3)
実施例1で得たPFA粉体プライマー組成物に、さらに炭酸カルシウム粉末(平均粒径:1μm)50gを添加して混合したこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0082】
(実施例4)
PFA粉末(A)に代えて、FEP粉末(MFR:19g/10min、平均粒径:45μm)を用い,さらに硫酸バリウム粉末(平均粒径:1μm)50gを添加して混合したこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してFEP粉体状プライマー組成物を得た。
そして、PFA粉体塗料に代えて、FEP粉体塗料(MFR:19g/10min、平均粒径:45μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0083】
(実施例5)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)に代えて、PFA粉末(B)(MFR:24g/10min、平均粒径:17μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。
そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0084】
(実施例6)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)に代えて、PFA粉末(C)(MFR:6g/10min、平均粒径:32μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。
そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0085】
(実施例7)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)に代えて、PFA粉末(D)(MFR:46g/10min、平均粒径:33μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。
そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0086】
(比較例1)
ポリエーテルサルフォン粉末に代えて、ポリアミドイミド粉末(酸価:80mgKOH/g、平均粒径:20μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。
そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0087】
(比較例2)
ポリエーテルサルフォン粉末に代えて、ポリアミドイミド粉末(酸価:80mgKOH/g、平均粒径:20μm)とポリフェニレンサルファイド粉末(ASTM D1238によるMFR:5000g/10min、平均粒径:35μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を実施してPFA粉体状プライマー組成物を得た。
そして、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0088】
(比較例3)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)400g、ポリエーテルサルフォン粉末(平均粒径:10μm)600gを混合して、PFA粉体状プライマー組成物を得た。
その後は、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0089】
(比較例4)
PFA粉末(A)(MFR:27g/10min、平均粒径:38μm)970g、ポリエーテルサルフォン粉末(平均粒径:10μm)30gを混合して、PFA粉体状プライマー組成物を得た。
その後は、実施例1と同様の手順で塗装物品を作製して、塗装膜にブリスターが発生する面積の割合を評価した。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の粉体状プライマー組成物は、上述の構成を有するので、積層塗膜のブリスターの発生を抑制し、特に、金属基材向けの粉体状プライマー組成物として好適である。